JP2004084026A - 板状物質の表面付着物剥離方法および剥離装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属または非金属からなる板状物質3の表面に液体を介在させて振動体2を近接配置し、振動体2を高周波振動させることによって発生するキャビテーション作用により、板状物質3の表面に付着または形成された物質を剥離する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば鋼板、非鉄金属板材、非金属板材等の各種板状物質の表面からスケールその他の物質を除去するための剥離方法および剥離装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば鋼板等を圧延加工する鋼板メーカーにおいては、鋼板材料を所要の板厚に加工した後にメッキなどの処理を施すのが一般的である。この場合、板厚調整のために圧延加工を行なうと、板材の表面に圧縮応力が加わり、板材の表面が加工硬化を起こして脆くなる。
【0003】
このため、板厚整形のあと、板材を一旦加熱炉に入れて焼鈍等の熱処理を行い、板材の表面に発生した加工硬化を除去する手法が用いられている。この場合、一旦加熱された板材の表面には、大気中での酸化反応により、酸化被膜が形成される。
【0004】
メッキなどの処理を板材に施す場合には、板材の表面に酸化被膜が付着しているとメッキの剥離の原因になるため、この酸化被膜を塩酸の浴槽にて溶融除去するのが一般的である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した塩酸の浴槽を使用する場合には、板材の予熱により塩酸が蒸気となって大気中に飛散するため、浴槽をカバーによって被覆したり、発生した塩酸蒸気を中和する中和設備を設ける等、塩酸によって外部環境に与えられる被害を最小限に留めるために大規模な設備を必要とする。
【0006】
また、塩酸は、板材表面の酸化皮膜を溶かしていくと次第に濃度が薄まるため、新たな塩酸の液補充を必要とする一方、使用済みの塩酸液は廃却処理する必要があり、これらのコストや環境面に対する影響等が大きな課題となる。
【0007】
なお、近年では非鉄金属の板材、あるいは非金属の板状物質、例えばカーボンあるいはプラスチック等の多くの板状物質が開発されており、それらの各加工段階における表面処理についても種々の剥離剤等が必要とされ、それらの場合にも上記同様の課題が発生している。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、板材の表面に付着または形成される酸化皮膜その他各種の物質を、塩酸等の有害化学物質を使用する必要なく除去することができ、それにより板材表面の酸化皮膜等除去のための特別な溶液供給や、使用済み物質の処理等の必要を無くして板材剥離加工に伴うコストの低減、さらに大気中への有害物質の放出等による環境面の問題も皆無とすることができる皮膜等の剥離方法およびそれに使用する剥離装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明者においては、板状物質の無害な表面剥離技術について種々検討を行なった結果、清水等の液体を用いた振動作用によって当該剥離が達成できることを見出した。すなわち、振動体を液体中で、または液体に接している状態で高周波振動させると、その振動体が液体に対して負圧を与える方向に移動する際に、瞬間的にキャビテーション気泡と呼ばれる気泡が発生する。次に、振動体が瞬間的に液体の加圧方向へ移動すると、先に発生したキャビテーション気泡は、瞬間的に崩壊する。この気泡の崩壊に伴い、数百Mpaもある大きな衝撃波が発生し、周囲に伝達される。
【0010】
キャビテーション気泡の崩壊時に発生する衝撃波は大きな値を示すが、発生するエネルギ量がそれほど大きくないため、大きな空間部では衝撃波の減衰が生じる。しかし、振動体の振動方向に沿う領域を例えば25mm以下、特に数mm以下の狭い領域とした場合には、衝撃波があまり大きな減衰をせず、その領域を画成する反対側の面に到達する。このような狭い領域で振動体を継続して高周波振動させると、発生した衝撃波が衝撃波反射波となって狭い領域に閉じこめられる。
【0011】
この時、上記キャビテーション発生領域内に板状物質を配置しておくと、衝撃波は板状物質の表層部分に衝撃的に作用し、ショットブラストによる剥離作用と同様な剥離作用を及ぼすことが見出された。
【0012】
すなわち、発明者において種々の実験の結果、上述した鋼板材表面の酸化被膜の如く、板状物質の表面に付着または形成されている物質に対し、清水等の無害な液体中において前記キャビテーション作用を付与することにより、これらを剥離できるとの確信が得られた。
【0013】
本発明は以上の点に着目してなされたものであり、請求項1に係る発明では、金属または非金属からなる板状物質の表面に液体を介在させて振動体を近接配置し、前記振動体を高周波振動させることによって発生するキャビテーション作用により、前記板状物質の表面に付着または形成された物質を剥離することを特徴とする板状物質の表面付着物剥離方法を提供する。
【0014】
ここで、液体としては、清水等の無害な液体のほか、各種コロイド溶液、あるいは湿り蒸気等も適用することができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、前記液体中にてキャビテーション気泡の連続的な生成と崩壊とを繰返させ、そのキャビテーション気泡の崩壊時に発生する衝撃波を前記板状物質の表面に連続的に与えることにより、前記板状物質の表面の剥離を行なうことを特徴とする請求項1記載の板状物質の表面付着物剥離方法を提供する。
【0016】
請求項3に係る発明では、キャビテーション気泡の崩壊時に発生する衝撃波を狭隘な空間部内で反射させ、この反射波を前記衝撃波とともに前記板状物質に作用させることにより、前記板状物質の表面の剥離を行なうことを特徴とする請求項1記載の板状物質の表面付着物剥離方法を提供する。
【0017】
請求項4に係る発明では、前記液体に与える高周波振動を超音波領域の振動とすることを特徴とする請求項1記載の板状物質の表面付着物剥離方法を提供する。
【0018】
請求項5に係る発明では、前記振動体の表面と前記板状物質の表面との間隙値を25mm以下にすることを特徴とする請求項1記載の板状物質の表面付着物剥離方法を提供する。ここで、板状物質と、上下1対の水平な振動体2との間の間隙値は望ましくは10mm以下、さらに望ましくは0.1〜数mmである。
【0019】
請求項6に係る発明では、金属または非金属からなる板状物質の両面に液体を介在させて1対の振動体を対向配置し、前記各振動体を高周波振動させることによって発生するキャビテーション作用により、前記板状物質の両表面に付着または形成された物質を同時に剥離することを特徴とする請求項1記載の板状物質の表面付着物剥離方法を提供する。
【0020】
請求項7に係る発明では、前記板状体の長さ方向に沿って複数の振動体を配置し、前記板状物質をその長さ方向に移動させて表面剥離を行なわせることを特徴とする請求項1記載の板状物質の表面付着物剥離方法を提供する。
【0021】
請求項8に係る発明では、高周波電源およびこの電源により駆動される振動子を有する高周波振動発生装置と、前記振動子と一体もしくはこれに連結された振動体と、この振動体の表面に対して平行に配された金属または非金属からなる板状物質と、前記振動体と前記板状物質との間隙に液体を保持させる液体保持装置とを備え、前記振動体の高周波振動により前記液体にキャビテーションを発生させて前記板状物質の表面に付着または形成された物質を剥離可能としたことを特徴とする板状物質の表面付着物剥離装置を提供する。
【0022】
請求項9に係る発明では、前記振動体は平板形状であり、その一側面側に板状物質を配したことを特徴とする請求項8記載の板状物質の表面付着物剥離装置を提供する。
【0023】
請求項10に係る発明では、前記振動体は互いに対向配置された1対の平板形状のものであり、その対向面側を前記板状物質の各面に対向させて配置したことを特徴とする請求項8記載の板状物質の表面付着物剥離装置を提供する。
【0024】
請求項11に係る発明では、前記振動体にキャビテーション発生部分から前記液体を異なる部位に吸引する吸引手段を設けたことを特徴とする請求項8記載の板状物質の表面付着物剥離装置を提供する。
【0025】
請求項12に係る発明では、前記板状体の長さ方向に沿って複数の振動体を配置し、前記板状物質をその長さ方向に移動させて表面剥離を行なわせる構成としたことを特徴とする請求項8記載の板状物質の表面付着物剥離装置を提供する。
【0026】
請求項13に係る発明では、前記高周波振動発生装置の振動子は、圧電型セラミックス、磁歪材料または超磁歪材料により構成されていることを特徴とする請求項8記載の板状物質の表面付着物剥離装置を提供する。
【0027】
請求項14に係る発明では、前記振動体の表面と前記板状物質の表面との間隙値を25mm以下にしたことを特徴とする請求項8記載の板状物質の表面付着物剥離装置を提供する。ここで、板状物質と、上下1対の水平な振動体2との間の間隙値は望ましくは10mm以下、さらに望ましくは0.1〜数mmである。
【0028】
請求項15に係る発明では、前記振動子および振動体は、少なくとも前記液体との接液部に、キャビテーション気泡に壊触されにくい高硬度の材料を適用して構成されていることを特徴とする請求項8記載の板状物質の表面付着物剥離装置を提供する。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態においては、一例として、剥離作用を施す板状物質として、圧延加工後の鋼板材を適用し、その板材の表面から酸化皮膜を剥離するための剥離装置および同装置を使用した剥離方法について説明する。ただし、これに限らず、各種板状物質の表面に形成または付着される各種物質の剥離に適用できることは勿論である。
【0030】
第1実施形態(図1〜図3)
図1は、本発明に係る剥離装置の第1実施形態を示す基本構成図であり、図2は図1のA−A線断面図である。図3は、剥離作用を説明するための概念図であり、図1のB部を拡大して示している。
【0031】
図1および図2に示すように、本実施形態の剥離装置は、高周波振動を発生させるための上側配置の高周波振動発生装置(上側高周波振動発生装置)1aと、同じく高周波振動を発生させるための下側配置の高周波振動発生装置(下側高周波振動発生装置)1bとを備えている。
【0032】
上側高周波振動発生装置1aは、振動体としての水平板状の剥離用上振動コマ2aと、この剥離用上振動コマ2aの表面(下面)を剥離処理対象となる板材3の表面(上面)に対向させる上側支持装置4aとを備えている。また、下側高周波振動発生装置生装置1bは、振動体としての水平板状の剥離用下振動コマ2bと、この剥離用下振動コマ2bの表面(上面)を剥離処理対象となる板材3の表面(下面)に対向させる下側支持装置4aとを備えている。そして、これらの剥離用上下振動コマ2a,2bおよび上下側支持装置4a,4b等を清水5に浸漬するための液体保持装置として水槽6が設けられている。
【0033】
上側高周波振動発生装置1aおよび下側高周波振動発生装置1bは、それぞれ商用電源(AC100V)に接続された高周波電源装置7a,7bと、これらの高周波電源装置7a,7bに電源ケーブル8a,8bを介して接続された振動子9a,9bとを備え、各振動子9a,9bは例えば超音波領域の振動を行なう構成とされている。これらの各振動子9a,9bは、例えばブロック状のもので、圧電型セラミックス、磁歪材料または超磁歪材料によって構成されており、その振動方向は上下方向(矢印a方向)に設定されている。これらの振動子9a,9bが、それぞれ支持アーム10a,10bを介して基台等の静止部11a,11bに吊下げおよび載置状態で強固に支持されている。
【0034】
そして、上側配置の振動子9aの下面側に剥離用上部振動コマ2aの外周面が連結され、この剥離用上部振動コマ2aが水槽6内に配置され、清水5に例えば略全体的に浸漬された状態となっている。なお、振動子9aの下部の一部も清水5に浸る状態となっている。この振動子9aおよび剥離用上部振動コマ2aの清水5との接液部、例えば振動子9aの全体および剥離用上部振動コマ2aの下部は、高硬度の材料、例えば超合金である炭化タングステン、あるいは硬化セラミックス等を適用して構成され、これにより後述するキャビテーション気泡に壊触されにくいものとされている。
【0035】
また、下側配置の振動子9bの下面側に剥離用下部振動コマ2bの外周面が連結され、この剥離用下部振動コマ2bも水槽6内に配置され、清水5に例えば略全体的に浸漬された状態となっている。なお、下側の振動子9bは水槽6の底部に配置されて全体が清水5に浸る状態となっている。この振動子9bおよび剥離用下部部振動コマ2bの清水5との接液部も、高硬度の材料、例えば超合金である炭化タングステン、あるいは硬化セラミックス等を適用して構成され、これにより後述するキャビテーション気泡に壊触されにくいものとされている。
【0036】
板材3は、上述したように例えば圧延後の鋼板であり、その表面には酸化被膜3aが形成されている。この板材3は剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bの略上下方向中間高さ位置に水平に挿通されており、図示しない送りローラ等の搬送手段によって長さ方向(矢印b方向)に連続的に移動されるようになっている。そして板材3と、この板材3が挿通されている剥離用上部振動コマ2aの下面および剥離用下部振動コマ2bの上面との間には、それぞれ板面の全体に亘り、上下方向に沿って25mm以下、望ましくは10mm以下、さらに望ましくは0.1〜数mmの間隔(ギャップ)δが設定されている。
【0037】
このような構成の高周波振動発生装置において、各高周波電源装置7a,7bから各振動子9a,9bに高周波電流が供給されると、この電流によって各振動子9a,9bが上下方向(矢印a方向)に超音波領域で高周波振動する。そして、これらの振動子9a、9bの振動は、これらに接している剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bにそれぞれ伝達され、剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bは常時、各振動子9a,9bの振動に追随した同量の上下振動を行う。
【0038】
図3は図1のB部を拡大して、剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bの下部と板材3の下面側との間隙部に発生するキャビテーション現象を示している。すなわち、清水5中に発生する気泡の発生と崩壊とにより、板材3の表面から酸化被膜3aが除去される様子を模式的に示している。
【0039】
今、各振動子1a,1bが高周波で振動すると、各振動子1a,1bの振動が剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bに伝達される。剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bが高周波で振動すると、板材3との間隙部にキャビテーションと呼ばれる泡の発生と崩壊が繰り返して発生するキャビテーション発生部2’a,2’bがそれぞれ形成される。キャビテーション発生部2’a,2’bでは、局所的に大きな衝撃波が連続で形成される。この衝撃波発生のメカニズムを、図3に模式的に表している。
【0040】
図3に示すように、キャビテーション発生部2’a,2’bでは、剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bの振動により、これらの剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bが瞬間的に板材3の表面から遠ざかる方向に移動すると、キャビテーション発生部2’a,2’bの狭隘な領域は瞬間的に負圧となり、それにより気泡(以下、「キャビテーション気泡」という)12が発生する。次に、剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bが瞬間的に板材3の表面に接近する方向に移動すると、先に発生したキャビテーション気泡には、瞬間的に崩壊する。このキャビテーション気泡12の崩壊に伴って、数百Mpaもある大きな衝撃波13が発生し、周囲に伝達される。このキャビテーション気泡12の崩壊時に発生する衝撃波13は大きな値を示すが、発生するエネルギ量がそれほど大きくないために大きな空間部では衝撃波13の減衰が生ずる。しかし、剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bと板材3との各間隙値(ギャップδ)を数mm以下に保つと、衝撃波13はあまり大きな減衰をしなくて、反対側の面に到達する。剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bを高周波で振動させると、発生した衝撃波13が衝撃波反射波14となって狭い領域に閉じこめることが可能となる。
【0041】
この時、衝撃波13は、板材3の酸化皮膜3aに衝撃的に作用し、ショットブラストブラストなどの剥離作用と同様な剥離作用を板材3の表面の酸化皮膜3aに及ぼす。板材3が図3の右側から左側の方向(矢印b方向)へ移動すると、板材3の酸化皮膜3aは、図1に示したように、剥離した酸化皮膜3bとなって剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bの板材3への対向面から側方を経て、水槽6の下方へと排出される。
【0042】
以上のように、剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bのが高周波で振動することにより、キャビテーション気泡12の発生が多くなり、発生する衝撃波の密度も高めることができる。なお、剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bの表面にも被改質材3の表面3aと同じく高衝撃波が発生するが、超硬合金である炭化タングステンや硬質セラミックスなどの材料を使用することにより、高衝撃波による材料の壊触を防止することができる。
【0043】
このようなキャビテーションによる剥離作用を、実験結果に基づいて説明する。
【0044】
図4は、本発明の効果を示す実験例に基づく酸化皮膜剥離量の特性図であり、たて軸に酸化皮膜剥離量、よこ軸にギャップ値を示している。
【0045】
実験は、剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bと板材3とのギャップ値を変化させた場合に1分間当りで酸化皮膜が剥離する量を電子天びんはかりにて測定したものである。
【0046】
図4に示すように、本実施形態では、ギャップ値が0.3〜1mmでは、約30g/分の酸化皮膜が板材3より剥離することが確認された。ギャップ値が25mm程度までは、酸化皮膜の剥離効果があるのが認められた。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、板材3と高周波で振動する剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bとを清水5に浸漬した状態で、板材3の表面の酸化被膜3aにキャビテーション気泡12の生成と崩壊とを繰り返して作用させ、それによりキャビテーション気泡12の崩壊時に発生する衝撃波を板材3の両表面の酸化被膜3aに作用させ、この酸化被膜3aを剥離除去することができる。
【0048】
したがって、板材3の表面に付着または形成される酸化皮膜3aその他各種の物質を、塩酸等の有害化学物質を使用する必要なく除去することができ、それにより板材3の両表面の酸化皮膜等除去のための特別な溶液供給や、使用済み物質の処理等の必要を無くして、板材剥離加工に伴うコストの低減、さらに大気中への有害物質の放出等による環境面の問題も皆無とすることができる。
【0049】
なお、板材3の左右方向の両側が開放状態となっているため、剥離した酸化皮膜3bが大きな場合でも、間隙部に目詰まりを生じることを防ぐ効果が大きい。
【0050】
また、板材3を装置にセットする場合には、両側が開放状態になっていると、人の手などが入り易いため、セットに要する時間を短縮できる利点がある。
【0051】
第2実施形態(図5)
図5は、本発明の第2実施形態を示す要部説明図である。
【0052】
本実施形態は、剥離用下部振動コマ2bのキャビテーション発生部分から清水5を異なる部位に吸引する吸引手段を設け、剥離用下部振動コマ2bの内面と板材3との間隙部に剥離後の酸化皮膜が目詰まりすることを防止できる構成としたものである。
【0053】
図5は、本実施形態の一例として、前述した第1実施形態の剥離用下部振動コマ2bに吸引手段を設けた構成を示す説明図である。なお、第1実施形態で説明した構成部分については、図5に図1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
この図5に示すように、本実施形態では、剥離用下部振動コマ2bに上下面を貫通する複数の吸い込み口21が設けられ、これらの各吸込み口21の下端部に吸込みパイプ22がそれぞれ接続されている。各吸込みパイプ22は水槽6の底壁を貫通して外部に引出され、その引出端がストレーナ23を介して吸引ポンプ24に接続されている。
【0055】
そして、板材3の剥離作業に際して吸引ポンプ24を駆動することにより、板材3より剥離した酸化皮膜は吸い込み口から清水5と一緒に吸引し、剥離用下部振動コマ2bの内面と板材3との間に剥離した酸化皮膜で目詰まりが生じるのを防止することができる。吸い込み口21の中間部には、ストレーナ23が配置されているので、吸引時に回収された剥離した酸化皮膜3bを分離回収することができる。
【0056】
このような本実施形態によると、板材3の下方に位置する剥離用下部振動コマ2bの下部において、その板材3から剥離した酸化皮膜3aを清水5とともに吸込み口21を介して外部に吸引することができるので、剥離用下部振動コマ2bの上面と板材3との間隙部に剥離後の酸化皮膜3aによる目詰まりが生じるのを防止することができる。
【0057】
また、吸引ポンプ24の吸引によって吸い込み口21の入口部には負圧発生部25が形成される。この負圧発生部25が形成されると、剥離用下部振動コマ2bの振動によるキャビテーション気泡12がより発生し易くなり、更に高密度のキャビテーション気泡12の生成と崩壊が可能となる利点がある。
【0058】
第3実施形態(図6)
本実施形態では、板材3の長さ方向に沿って複数の剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bを配置し、板材3をその長さ方向(矢印b方向)に移動させて表面剥離を行なわせる構成とし、キャビテーションが板材3の表面全体に万遍なく行き渡るようにしたものである。
【0059】
図6は、本実施形態の一例として、第1実施形態の剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bを複数、間隔的に配置した状態を示す説明図である。この図6に示すように、剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bが複数、所定の間隔で板材3の長さ方向に沿って配置されている。これらの各剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bには、高周波振動のための振動子9a,9bがそれぞれ連結されており、その各振動子9a,9bは、例えば板材3の長さ方向に沿って順次に所定の間隔で配置されている。したがって、板材3が各剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2b内を通過する場合に、順次に剥離作用が行われる。
【0060】
本実施形態によれば、複数の剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bを配置したことにより、キャビテーションが鋼板の表面に万遍なく行き渡るようにすることができる。
【0061】
以上の第1〜第3各実施形態によると、高周波の振動子9a,9bの振動を利用してキャビテーションを発生させることにより、鋼板などの板材3の酸化被膜3a等のスケール除去を清水5中の環境で行なうことができる。また、特殊な化学薬品などを使用しないので、良好な作業環境を得ることができるとともに、塩酸などの化学薬品などを使用した場合に比べて中和設備などが不要になり、大幅にランニングコストを低減することができる。さらに、キャビテーション気泡が崩壊するときに発生する衝撃波を利用するため、鋼板などの酸化スケールを除去する能力は、ブラスト等の他の方式と比較して同等以上である。さらにまた、ブラスト方式などでは、ブラスト剤の定期的な交換が必要であるが、本発明では、振動体がキャビテーションに壊触されない高硬度の材料で製作された場合には、消耗品に相当する部品がないため、半永久的に装置を稼動することが可能である。
【0062】
なお、以上の各実施形態においては、剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bによって1枚の板材3の上下両面に一度にキャビテーションによる剥離作用を施したが、本発明では同時に剥離用上部振動コマ2aおよび剥離用下部振動コマ2bを使用する場合のほか、いずれか一方の剥離用振動コマを使用して、板材3の上下いずれかの面にのみ剥離作用を施す態様で実施することも可能である。
【0063】
【発明の効果】
以上で詳述したように、本発明によれば、板材の表面に付着または形成される酸化皮膜その他各種の物質を、塩酸等の有害化学物質を使用する必要なく除去することができ、それにより板材表面の酸化皮膜等除去のための特別な溶液供給や、使用済み物質の処理等の必要を無くして板材剥離加工に伴うコストの低減、さらに大気中への有害物質の放出等による環境面の問題も皆無とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る剥離装置の第1実施形態を示す基本構成図。
【図2】図1の側面図。
【図3】前記実施形態におけるキャビテーションの作用を示す原理図。
【図4】本発明の効果を示す実施例に基づく酸化皮膜剥離量の特性図。
【図5】本発明の第2実施形態を示す構成図。
【図6】本発明の第3実施形態を示す構成図。
【符号の説明】
1a,1b 高周波振動発生装置
2a 剥離用上部振動コマ(振動体)
2b 剥離用下部振動コマ(振動体)
2’a,2’b キャビテーション発生部
3 板材
3a 酸化皮膜
4a,4b 支持装置
5 清水
6 水槽
7a,7b 高周波電源装置
8a,8b 電源ケーブル
9a,9b 振動子
10a,10b 支持アーム
11a,11b 静止部
12 キャビテーション気泡
13 衝撃波
14 衝撃波反射波
20 隙間
21 吸い込み口
22 吸込みパイプ
23 ストレーナ
24 吸引ポンプ
Claims (15)
- 金属または非金属からなる板状物質の表面に液体を介在させて振動体を近接配置し、前記振動体を高周波振動させることによって発生するキャビテーション作用により、前記板状物質の表面に付着または形成された物質を剥離することを特徴とする板状物質の表面付着物剥離方法。
- 前記液体中にてキャビテーション気泡の連続的な生成と崩壊とを繰返させ、そのキャビテーション気泡の崩壊時に発生する衝撃波を前記板状物質の表面に連続的に与えることにより、前記板状物質の表面の剥離を行なうことを特徴とする請求項1記載の板状物質の表面付着物剥離方法。
- キャビテーション気泡の崩壊時に発生する衝撃波を狭隘な空間部内で反射させ、この反射波を前記衝撃波とともに前記板状物質に作用させることにより、前記板状物質の表面の剥離を行なうことを特徴とする請求項1記載の板状物質の表面付着物剥離方法。
- 前記液体に与える高周波振動を超音波領域の振動とすることを特徴とする請求項1記載の板状物質の表面付着物剥離方法。
- 前記振動体の表面と前記板状物質の表面との間隙値を25mm以下にすることを特徴とする請求項1記載の板状物質の表面付着物剥離方法。
- 金属または非金属からなる板状物質の両面に液体を介在させて1対の振動体を対向配置し、前記各振動体を高周波振動させることによって発生するキャビテーション作用により、前記板状物質の両表面に付着または形成された物質を同時に剥離することを特徴とする請求項1記載の板状物質の表面付着物剥離方法。
- 前記板状体の長さ方向に沿って複数の振動体を配置し、前記板状物質をその長さ方向に移動させて表面剥離を行なわせることを特徴とする請求項1記載の板状物質の表面付着物剥離方法。
- 高周波電源およびこの電源により駆動される振動子を有する高周波振動発生装置と、前記振動子と一体もしくはこれに連結された振動体と、この振動体の表面に対して平行に配された金属または非金属からなる板状物質と、前記振動体と前記板状物質との間隙に液体を保持させる液体保持装置とを備え、前記振動体の高周波振動により前記液体にキャビテーションを発生させて前記板状物質の表面に付着または形成された物質を剥離可能としたことを特徴とする板状物質の表面付着物剥離装置。
- 前記振動体は平板形状であり、その一側面側に板状物質を配したことを特徴とする請求項8記載の板状物質の表面付着物剥離装置。
- 前記振動体は互いに対向配置された1対の平板形状のものであり、その対向面側を前記板状物質の各面に対向させて配置したことを特徴とする請求項8記載の板状物質の表面付着物剥離装置。
- 前記振動体にキャビテーション発生部分から前記液体を異なる部位に吸引する吸引手段を設けたことを特徴とする請求項8記載の板状物質の表面付着物剥離装置。
- 前記板状体の長さ方向に沿って複数の振動体をそれぞれ配置し、前記板状物質をその長さ方向に移動させて表面剥離を行なわせる構成としたことを特徴とする請求項8記載の板状物質の表面付着物剥離装置。
- 前記高周波振動発生装置の振動子は、圧電型セラミックス、磁歪材料または超磁歪材料により構成されていることを特徴とする請求項8記載の板状物質の表面付着物剥離装置。
- 前記振動体の表面と前記板状物質の表面との間隙値を25mm以下にしたことを特徴とする請求項8記載の板状物質の表面付着物剥離装置。
- 前記振動子および振動体は、少なくとも前記液体との接液部に、キャビテーション気泡に壊触されにくい高硬度の材料を適用して構成されていることを特徴とする請求項8記載の板状物質の表面付着物剥離装置。
Priority Applications (1)
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JP2002248423A JP2004084026A (ja) | 2002-08-28 | 2002-08-28 | 板状物質の表面付着物剥離方法および剥離装置 |
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JP2002248423A JP2004084026A (ja) | 2002-08-28 | 2002-08-28 | 板状物質の表面付着物剥離方法および剥離装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006341322A (ja) * | 2005-06-07 | 2006-12-21 | Toshiba Plant Systems & Services Corp | 無機材料ナノ構造体の加工方法および同加工装置 |
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2002
- 2002-08-28 JP JP2002248423A patent/JP2004084026A/ja active Pending
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