JP2004083616A - 複合酸化物系黒色顔料及びその製造法 - Google Patents

複合酸化物系黒色顔料及びその製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】重金属を使用しない環境に優しい新規な黒色顔料を提供する。
【解決手段】構成元素がランタン、プラセオジウム、ネオジウム及びサマリウムから選ばれる少なくとも1種である希土類、アルカリ土類金属及び鉄とからなる複合酸化物系黒色顔料の表面をシリコン、アルミニウム、ジルコニウム、チタン及び亜鉛から選択される1種の元素の水酸化物又は酸化物で表面処理する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、構成元素が希土類、アルカリ土類金属および鉄である環境に優しい複合酸化物系黒色顔料およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
無機系の黒色顔料は、有彩色顔料に比べ使用量が多く、塗料、プラスチック、セラミック、インキ、電子材料などの様々な分野に使用されており、着色剤としては大変重要な顔料である。
黒色顔料は種々の化合物による顔料が上市されており、その中でも最も代表的な顔料はカーボンブラックであり、タイヤ等のゴム製品の補強剤や各種用途の着色剤として使用されている。それ以外の黒色顔料には、Cu−Cr系、Cu−Cr−Mn系、Co−Fe−Cr系、Cu−Fe−Mn系、Mn含有鉄黒などの酸化物系の顔料があり、これらはいずれも堅牢度が高いことから耐熱性、耐候性などを重視する分野で使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来からある黒色顔料は、例えばカーボンブラックは製造工程よって生ずる有害成分のため、人が直接手を触れる部分への使用がしにくくなりつつあり、又、酸化物系顔料は重金属としてCu、Cr、Mn等を含有する場合が少なくない。さらに、最近の趨勢として、こうした重金属を使用した顔料を使用することを控える傾向が強くなっている。特にCrを含有する顔料は環境問題への対応から、Crを使用しない顔料によるアプリケーションへと関心が移って来ていると言える。
本発明はそうした事情を考慮してなされたものであり、本発明の目的は重金属を使用しない環境に優しい新規な黒色顔料を提供することである。
【0004】
本発明者らは、上記目的を達成すべくストロンチウム、鉄を構成成分とする複合酸化物に着目した。例えば、SrFe1219のごとき組成の複合酸化物は、永久磁石に使用されてきたが、その粗粒子を焼き固めて作られるため、顔料適性からは着色力が劣り、各種媒体に分散もできない状態のものであり、着色剤として使用することはできなかった。又、このものを触媒として用いる場合は、通常粉末として使用するが、粉末にしても顔料として使用することはできなかった。
【0005】
また、特開2000−264639公報には、ストロンチウムと鉄を構成成分とする複合酸化物粉末の製造方法が開示されている。しかし、この方法で調製した粉末は仮に顔料として使用したとしても、ストロンチウムの水に対する溶解性のため、高い電導度(1000μs/cm以上)と高いpH値(pH12以上)を示すことから、特に水系で使用することは実質的に不可能である。そのうえ、耐薬品性が充分でなく、特に塩酸に比較的溶解し易く、このことからも使用範囲が限定されてしまう場合が多いと考えられる。
【0006】
本発明者らはさらに検討を重ね、上記構成成分にランタン等の希土類元素を加えた複合酸化物は、着色剤として使用可能な色相や着色力、分散性、耐熱性、耐水性、耐薬品性等の諸適性が従来の黒色顔料と比肩し得るものであることを見いだし、本発明を完成させた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、構成元素が希土類、アルカリ土類金属及び鉄からなる複合酸化物系黒色顔料及びその製造方法が提供される。
【0008】
本発明に係る上記の複合酸化物系黒色顔料は、構成元素が近いのものは結晶解析用のASTMカードにいくつか記載が見られ、例えば、SrFe1219の組成の複合酸化物は、前記のように磁石として使用されてきた。また触媒、電極などの研究及び使用に関する数多くの文献が散見される。更に、最近の特許としてはストロンチウムと鉄を構成元素とする複合酸化物粉体の製造方法として、特開2000−264639公報がある。
しかし、本発明による上記黒色顔料は、今までに顔料として使用された実績のない、前記の既存黒色顔料のどの組成にも属さない新しいタイプの複合酸化物系顔料であり、黒色顔料の発色には欠かせないCu、CrやMnを含まない希土類、アルカリ土類金属及び鉄を構成元素として含み、充分な黒度を持ちながら、かつ一般的な諸物性を満足させた顔料である。更に最近の環境問題への関心の高まりから、Cu、Cr、Mn等の元素を含まないことが望まれており、かかる要望を充分に満たすことができる顔料である。
【0009】
従って、本発明の黒色顔料は、従来の塗料、インキなどの用途の他にガラス用着色剤、電子複写用のトナー、インクジェット用インキ、CRTやフラットパネルディスプレー、例えば液晶(LCD)、フィールドエミッションディスプレー(FED)、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレー等用のニュートラルグレー、ブラックマトリクス用等の黒色顔料として使用可能である。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の複合酸化物系黒色顔料(以下では単に黒色顔料という。)は、希土類、アルカリ土類金属及び鉄の各元素の酸化物から構成される複合酸化物である。希土類元素としては、ランタノイド系のランタン、プラセオジウム及びネオジウム及びサマリウムが好適であり、いずれも使用可能である。アルカリ土類金属元素としては、ベリリウム、マグネシウムは充分な黒度は得られないが、カルシウム、ストロンチウム、バリウムはいずれも必要な黒度が得られ使用可能である。しかし、バリウムは前述の環境問題の観点から使用が難しく、カルシウムは黒度の点で劣るためストロンチウムが最も好適である。本発明では3番目の構成元素として鉄を用いるが、これも他の重金属、例えば、マンガン、コバルト、ニッケルなどで置き換えることが可能であるが、前述の理由から鉄が一番適している。
【0011】
本発明の黒色顔料を構成する各元素の割合は、鉄100モルに対し、希土類元素が40モル未満の割合が好ましく、更に好ましくは5〜35モルの割合であり、アルカリ土類金属元素は60モルを超える割合が好ましく、更に好ましくは65〜95モルの割合である。
【0012】
本発明の黒色顔料を製造する際には、これらの元素の化合物が原材料として用いられるが、製造方法の違いにより、即ち乾式法と湿式法により、異なった原材料が選択される。以下に先ず本発明の黒色顔料を乾式法で製造する場合について説明する。
【0013】
乾式法は、原材料そのものを混合して焼成する方法である。この方法で使用する原材料としては、希土類、アルカリ土類金属及び鉄の各元素の化合物として、例えば、当該元素の酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩等が使用できる。各原材料は、所定の割合で混合されるが、混合割合は鉄100モルに対し、希土類元素は40モル未満の割合が好ましく、更に好ましくは5〜35モルの割合であり、アルカリ土類金属元素は60モルを超える割合が好ましく、更に好ましくは65〜95モルの割合である。この範囲の割合で混合して使用することにより、充分に黒度があり耐熱性、耐薬品性、耐水性を具備した黒色顔料が得られる。しかし希土類元素が上記の割合より更に多くなると黒度が落ち、かつ着色力も減少する傾向にあり実用的でない。
【0014】
各原材料の混合は、通常、乾式、例えば乳鉢などで充分にすり潰すことで行われるが、各原材料が均一に混ざるように調整をする。又、ボールミルなどの粉砕機を使用する場合には、所定割合の各原材料粉を乾式または湿式で混合粉砕することもできる。
このようにして得られた混合物は、乾式で混合した場合はそのまま焼成に供し、湿式で粉砕混合した場合は、乾燥機で水分を除去したのち、通常600℃〜1000℃で1時間から2時間焼成を行い、各成分元素の酸化物を固溶し、結晶化させることにより黒色の発色を生じさせる。
【0015】
以上のようにして得られた黒色顔料は、粗粒となっているため湿式で解膠し、粉砕、水洗を充分に行う。副生物が多い場合は、濾過液の電導度が300マクロシーメンス(μs/cm)程度となるまで洗い、ヌッチェやフィルタープレスにて水分をしぼり、残存する水分を除去するため通常120℃で12時間程度乾燥させることにより、平均粒径が0.05〜3μm、BET比表面積が10m/g以上の目的の複合酸化物系黒色顔料を得ることができる。
【0016】
得られた黒色顔料は、アルカリ土類元素の溶解性のためpH値が高くなりやすい。粉砕、解膠等を特開2000−264639公報に開示されているような非水系溶媒中で行うこともできるが、本発明においては水系で充分に粉砕、解膠が可能である。顔料物性としてより低いpH値や電導度を顔料に付与するためには、湿式粉砕、解膠後、顔料を無機水酸化物又は酸化物で表面処理することが好ましく、表面処理により顔料の性能を更に向上させることができる。
【0017】
表面処理によって複合酸化物系黒色顔料は、より低いpH値や電導度が顔料に付与されるので、黒色顔料を構成する各元素の好ましい割合も、鉄100モルに対して希土類元素が70モル未満、更に好ましくは5〜50モル、アルカリ土類金属元素は30モル以上、更に好ましくは50〜95モルとすることができる。この割合は、前記の乾式法及び湿式法で顔料を製造する場合も同様である。
【0018】
顔料の無機水酸化物又は酸化物による表面処理は、例えば、3号ケイ酸などのシリコンを含有する物質やアルミニウム、ジルコニウム、チタン又は亜鉛などの水酸化物や酸化物等を水に溶解させ、この溶液を、焼成後、粉砕、解膠後の顔料スラリー中に適宜加え、攪拌しながら、場合によっては無機酸または苛性ソーダなどのアルカリでpHを中性付近に調整することで行うことができる。この処理により顔料のpHを通常の顔料グレード、即ちpHを5〜10の範囲に収めることができ、電導度も100μs/cm以下にすることができる。無機物質は、酸化物換算で黒色顔料100重量部に対して、通常、1〜10重量部の割合で使用される。
【0019】
次に本発明の黒色顔料を湿式法で製造する場合について説明する。
湿式法においては、構成する各元素の化合物の水溶液とアルカリ水溶液を用いて、各元素の水酸化物を沈澱として析出させることにより行われる。
使用する原材料としては、各元素の水可溶性化合物がいずれも使用できる。希土類元素の場合は、例えば、硝酸塩や塩化物等が使用できる。酸化物を使用する場合には硝酸や塩酸等の無機酸に溶解してこれらの酸の塩として使用することも可能である。アルカリ土類金属元素の場合は、例えば、硝酸塩、塩化物等が使用可能である。鉄は硝酸塩、硫酸塩、塩化物とも使用可能であるが、硫酸塩はアルカリ土類金属と反応して不溶性の沈澱を析出させるため、使用に当たっては注意が必要である。
これらの各元素の化合物は、乾式法における場合と同じモル比となるように水に溶解し、混合水溶液とする。混合化合物水溶液の濃度は、通常、5〜50重量%程度である。
【0020】
沈澱剤として使用するアルカリは、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、重曹などの通常使用するアルカリが使用可能である。いずれの場合も使用する各元素の塩を沈澱として析出させることができれば問題ない。これらのアルカリは、通常、濃度が5〜30重量%程度となるように水に溶解して使用される。
【0021】
このようにして調製された各構成成分の元素の化合物の混合水溶液とアルカリの水溶液は、沈澱pH8〜14の間で攪拌しながら同時に沈澱浴に添加され、混合した各元素の水酸化物の沈澱を析出させる。この際のpHは後述する過酸化水素を用いる場合は高いpHを選択する方が効率よく沈澱ができる。又、高いpH領域では沈澱粒子が小さくなり、着色力が向上する傾向にあるため、最低でもpH8以上が好ましく、pH10以上で行うことが更に好ましい。沈澱温度は室温付近で特に問題はなく、15℃〜40℃が適当である。
【0022】
原材料として用いた鉄の化合物が、2価の鉄を用いた化合物である場合には、例えば、過酸化水素や次亜塩素酸ソーダなどの酸化剤を用いて鉄を3価にすると発色が良好になる。酸化剤の沈澱系への添加は、各元素の水酸化物の沈澱時に混合塩水溶液や沈澱浴に添加しても、又、沈澱終了後に沈澱系に後添加してもよい。また原材料として用いたアルカリ土類金属元素の塩が水酸化物として沈澱した場合、水に対する溶解度が大きいため、一部流出する恐れがあるが、炭酸ガスを吹き込むことにより溶解度の小さい炭酸塩にすると溶解を抑えることができる。この操作により組成のずれのない顔料が得られるようになる。沈澱系への炭酸ガスの吹き込みは、沈澱工程中に行ってもよいし、沈澱終了後に行ってもよい。
【0023】
以上のようにして得られた沈澱スラリーは、沈澱を確実なものとするために熟成を行う。通常、熟成は、3価の鉄塩を用いた場合は室温で行い、2価の鉄塩を用いた場合は60℃〜90℃程度に加熱しながら行うとより好ましい結果が得られる。熟成は、通常、上記の温度で約1時間程度行えば充分である。
このようにして得られた沈澱生成物は、副生する残塩を除去するために水洗を充分に行い、濾過液の電導度が300マクロシーメンス(μs/cm)程度になるまで洗い、120℃で12時間程度乾燥させたのち、600℃〜1000℃で1時間から2時間焼成を行い、各成分元素の酸化物を固溶し、結晶化させることにより黒色の発色を生じさせる。
【0024】
以上のようにして得られた黒色顔料は、結晶化により生成する残塩を除去するために解膠して水洗を充分に行い、濾過液の電導度が300マクロシーメンス(μs/cm)程度になるまで洗い、ヌッチェやフィルタープレスにて水分をしぼり、残存する水分を除去するため120℃で12時間程度乾燥させることで、平均粒径が0.05〜3μm、BET比表面積が10m/g以上の目的の黒色顔料を得ることができる。このように湿式法で得られる黒色顔料は、乾式法のものより微細な粒子径となり、従って着色力、黒度に優れ、分散性も向上する。
湿式方による黒色顔料を表面処理する場合も乾式法と同様に、焼成後、生成黒色顔料の解膠、水洗後の顔料スラリーに前記の無機水酸化物又は酸化物を添加して行なう。表面処理の操作は乾式法の場合と全く同じである。
【0025】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下の文中の「部」及び「%」は特に断りのない限り重量基準である。
【0026】
<実施例1>
酸化ランタン325. 8部、炭酸ストロンチウム35. 4部、及び酸化第2鉄24部を乳鉢で均一に粉砕混合した後、この一部をコーデイエライト製ルツボに入れ、これを電気炉に静置し、昇温時間4時間で900℃まで上げ、その温度で120分間混合物を焼成した。焼成後、そのまま電気炉の中で自然放冷し、ルツボの中身を乳鉢でザラツキがなくなるまで粉砕した。粉砕した黒色粉末をビーカーに入れ、その容積の約半分程度まで水を加え、ホモミキサーにて1 時間解膠を行った。解膠終了後デカンテーションを行い、濾過液の電導度が300マイクロシーメンス(μs/cm)以下となるまで水洗を行った。水洗後、ヌッチェにて濾別を行い、得られた顔料ケーキを120℃で12間乾燥し、目的とする黒色顔料を得た。このものは、平均粒径が1.6μmで、やや硬めではあるが、充分に分散可能であり、以下の方法により顔料特性を評価した。
【0027】
(1)色相及び着色力
メラミン・アルキッド樹脂に、原色は5PHR(樹脂100部に対する顔料の部数。以下同様)、淡色は酸化チタン:顔料=9:1(重量比)の配合物を30PHRで分散させ、それぞれを白色アート紙に6ミルアプリケータにて10μの厚みで展色をし、色調及び着色力を目視で観察した。又、原色展色したものは同時に分光光度計(大日精化工業社製、カラコムC)にて測色(L)を行った。
(2)pH
300mlの三角フラスコに顔料5gを秤り取り、精製水または純水(電導度2μs/cm以下)を100ml加え、加熱し、液が沸騰したら5分間保持する。冷却後、蒸発水分を補給して全体を100mlとし、顔料分を濾過し、濾液のpHをpHメーター(HORIBA社製)で測定する。
(3)電導度
(2)における濾液の電導度を電導計(横河電機社製)で測定する。
以上の結果を他の実施例、比較例及び参考例としての既存黒色顔料との比較で表1に示す。
【0028】
(4)耐薬品性
5%塩酸水溶液、5%硫酸水溶液、及び5%NaOH水溶液を調製し、それぞれの水溶液に、アクリル・ウレタン樹脂に顔料を30PHRで分散させた塗料を6ミルアプリケーターにてPETフィルムに塗布したものを、25℃で1週間浸漬し、浸漬前後の色差(ΔE)を前記の分光光度計で測色して、耐薬品性データーとした。
(5)耐熱性
上記の塗布物を電気炉で加熱し、色の変化が起こらないと思われる上限の温度を目視で確認した。
以上の結果を他の実施例、比較例及び参考例の既存黒色顔料との比較で表2に示す。
【0029】
<比較例1>
塩化ストロンチウム98.6部と塩化第一鉄92.6を水500部を加えて溶解し、塩の混合水溶液を調製した。一方、苛性ソーダ90部を水500部に溶解し、これに35%の過酸化水素水30部を加えて沈澱用アルカリ水溶液を作製した。
次いで、塩の混合水溶液とアルカリ水溶液を、沈澱浴としての水1200部を入れたビーカー(25℃)に、沈澱浴のpHを12に保って同時添加し、各成分元素の水酸化物の沈澱を析出させた。この操作を約25分で行い、沈澱終了後、沈澱スラリーの温度を80℃まで加温し、同時に炭酸ガスのバブリングを行い、pHが9になるまで継続した。引き続き熟成を80℃で1時間行い、終了後沈澱スラリー中の副成した塩を除去するため、デカンテーションを行い、濾過液の電導度が200マイクロシーメンス(μs/cm)以下になるまで水洗を行った。次に沈澱スラリーをヌッチェにて濾別し、得られた顔料ケーキを120℃で12時間乾燥し、目的とする黒色顔料前駆体(クルード)を得た。
この様にして得られた顔料前駆体は、実施例1と同様の操作にて700℃で焼成を行い、目的の黒色顔料(平均粒径0.4μm)を得た。色相及び着色力を目視及び分光光度計により評価した。また、pH、電導度、耐薬品性と耐熱性を実施例1と同様に評価した。得られた黒色顔料は分散性も良く、顔料として十分に使用可能であった。評価結果を表1及び表2に示す。
【0030】
<実施例2>
混合希土元素化合物(La67%、Nd26%、Pr5%、Sm2%)   の約2%硝酸水溶液37.3部と硝酸ストロンチウム88.7部と塩化第一鉄92.6部に水500部を加えて塩の混合水溶液を調製した。一方、塩の沈澱用溶液として苛性ソーダ102部を水500部に加えて溶解し、これに35%の過酸化水素水30部を投入して沈澱用アルカリ水溶液とした。
次に塩の混合水溶液とアルカリ水溶液を、沈澱浴として水1200部を入れたビーカー(25℃)に、沈澱浴のpHを12に保って同時添加し、各塩の対応する水酸化物の沈澱を析出させた。沈澱終了後炭酸ガスのバブリングを沈澱浴のpHが9になるまで継続し、同時に80℃に昇温し、その温度で熟成を1時間行った。熟成後、沈澱物を濾過、水洗及び乾燥を行い、得られた顔料前駆体を焼成温度700℃とする以外は実施例1と同様の操作により焼成を行い、目的とする黒色顔料(平均粒径0.2μm)を得た。
得られた黒色顔料を実施例1と同様に色相及び着色力を目視及び分光光度計により評価した。また、pH、電導度、耐薬品性と耐熱性を実施例1 と同様に評価した。得られた黒色顔料は分散性も良く、顔料として十分に使用可能であった。評価結果を表1及び表2に示す。
【0031】
<実施例3>
実施例2で合成した黒色顔料20部を水200中に投入し、ホモミキサーで約1時間解膠した後、3号ケイ酸(SiO濃度29%)3.3部を水に溶解して投入し、しばらく放置後、硫酸ジルコニウム溶液(ZrO濃度15%)を2部加えて攪拌放置し、30分経過後このスラリーを濾別し、デカンテーションで水洗を行い、残塩を洗い流した後120℃で12時間乾燥し、得られた表面処理顔料(平均粒径0.2μm)を実施例1と同様にして評価した。この結果、得られた黒色顔料は電導度、pH値とも充分に実用の範囲であった。評価結果を表1及び表2に示す。
【0032】
<実施例4>
混合希土元素化合物(組成:同上)の約2%硝酸水溶液186.4部と塩化ストロンチウム49.3部と塩化第一鉄92.6部を水500部を溶解して塩の混合水溶液を調製した。一方、塩の沈澱用溶液として苛性ソーダ102部を水500部に溶解し、これに35%の過酸化水素水30部を投入して沈澱用アルカリ水溶液とした。
次に、混合塩水溶液とアルカリ水溶液を、沈澱浴としての水1200部を入れたビーカー(25℃)に、沈澱浴のpHを12に保って同時添加し、各塩の対応する水酸化物の沈澱を析出させた。沈澱終了後炭酸ガスのバブリングをpHが9になるまで継続した。同時に80℃に昇温し、熟成を1時間行った後、沈澱物を濾過、水洗及び乾燥し、得られた顔料前駆体を実施例1と同様の操作により焼成を行い、黒色顔料を得た。
得られた黒色顔料を実施例3と同様にして表面処理し、目的とする表面処理黒色顔料(平均粒径0.4μm)を得た。実施例1と同様にして評価を行った。この結果、得られた黒色顔料は電導度、pH値とも充分に実用の範囲であった。得られた黒色顔料は分散性も良く、顔料として十分に使用可能であった。評価結果を表1及び表2に示す。
【0033】
Figure 2004083616
(注)
(1)黒度、着色力は小さいが耐久性に優れる顔料
(大日精化工業社製ダイピロサイトブラック#9510)
(2)着色力重視で使用される顔料
(大日精化工業社製ダイピロサイトブラック#9550)
(3)La67%、Nd26%、Pr5%、Sm2%
(4)参考例1の黒度を100とする指数で表示
【0034】
Figure 2004083616
【0035】
以上の結果から、本発明による顔料は既存顔料(参考例1、2)と比較して、性能的に既存品に充分比肩しうるものであり、新しい組成の顔料として、また現状の環境問題への関心の高まりを考慮すれば、他と代替ができない顔料として、充分使用可能であることが分かる。
【0036】
実施例5
混合希土溶液の代わりに酸化ネオジウム7.8部を濃硝酸12部に溶解し、全量を200部とした水溶液を使用する以外は実施例2と同様にして黒色顔料を得た。このようにして得られた黒色顔料の特性は実施例2の場合と殆ど同じであった。
【0037】
実施例6
混合希土溶液の代わりに酸化プラセオジウム7.9部を濃硝酸12部に溶解し、全量を200部とした水溶液を使用する以外は実施例2と同様にして黒色顔料を得た。このようにして得られた黒色顔料の特性は実施例2の場合と殆ど同じであった。
【0038】
【発明の効果】
以上の本発明によれば従来からある黒色顔料の発色に必要なCu、CrやMn等を含まない、希土類、アルカリ土類金属及び鉄を構成元素とする従来品に比肩しうる色相、着色力を具備する品質の複合酸化物系黒色顔料が提供される。
本発明の顔料は、環境問題により使用が制限されつつあるCu、Cr、Mn、Co、Niを含んでおらず、環境にやさしい顔料として、環境に配慮した各種用途の着色材として使用可能である。又、一般的な用途の塗料やインキへの使用が可能な他、ガラス用着色剤、電子複写機のトナー、インクジェット用インキ、CRTやフラットパネルディスプレー、例えば液晶(LCD)、フィールドエミッションディスプレー(FED)、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレー等のニュートラルグレー、ブラックマトリクス用黒色顔料として使用可能である。

Claims (12)

  1. 構成元素が希土類、アルカリ土類金属及び鉄とからなる複合酸化物系黒色顔料。
  2. 希土類元素がランタン、プラセオジウム、ネオジウムおよびサマリウムから選ばれる少なくとも1種で、アルカリ土類金属元素がカルシウム、ストロンチウムおよびバリウムから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の複合酸化物系黒色顔料。
  3. 顔料を構成する各元素の割合が、鉄100モルに対し、希土類元素が40モル未満、アルカリ土類金属元素が60モルを超える割合である請求項1又は2に記載の複合酸化物系黒色顔料。
  4. 構成元素が希土類、アルカリ土類金属及び鉄とからなる複合酸化物であって、その表面が無機水酸化物又は酸化物で処理されたことを特徴とする複合酸化物系黒色顔料。
  5. 無機水酸化物又は酸化物が、シリコン、アルミニウム、ジルコニウム、チタン及び亜鉛から選択される少なくとも1種の元素の水酸化物又は酸化物である請求項4に記載の複合酸化物系黒色顔料。
  6. 顔料を構成する各元素の割合が、鉄100モルに対し、希土類元素が70モル未満、アルカリ土類金属元素が30モル以上である請求項5に記載の複合酸化物系黒色顔料。
  7. 構成元素が希土類、アルカリ土類金属及び鉄とからなる複合酸化物系黒色顔料を製造するに際し、上記の各元素の化合物を混合し、焼成することを特徴とする複合酸化物系黒色顔料の製造方法。
  8. 構成元素が希土類、アルカリ土類金属及び鉄とからなる複合酸化物系黒色顔料を製造するに際し、上記の各元素の化合物の混合水溶液とアルカリ水溶液とにより上記各元素の水酸化物の沈澱を生成させ、得られた沈澱を焼成することを特徴とする複合酸化物系黒色顔料の製造方法。
  9. 沈澱時又は沈澱生成後に沈澱系に炭酸ガスを吹き込む請求項8に記載の複合酸化物系黒色顔料の製造方法。
  10. 沈澱時又は沈澱生成後に沈澱系に過酸化水素を添加する請求項8に記載の複合酸化物系黒色顔料の製造方法。
  11. さらに、焼成後、粉砕及び解膠した又は解膠した黒色顔料を無機水酸化物又は酸化物で表面処理する請求項7又は8に記載の複合酸化物系黒色顔料の製造方法。
  12. 無機水酸化物又は酸化物が、シリコン、アルミニウム、ジルコニウム、チタン及び亜鉛から選択される少なくとも1種の元素の水酸化物又は酸化物である請求項11に記載の複合酸化物系黒色顔料の製造方法。
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