JP2004082501A - 液滴吐出ヘッド及びその製造方法、インクカートリッジ並びにインクジェット記録装置 - Google Patents

液滴吐出ヘッド及びその製造方法、インクカートリッジ並びにインクジェット記録装置 Download PDF

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Shigeru Kanehara
金原 滋
Makoto Tanaka
田中 誠
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Abstract

【課題】滴吐出特性のバラツキや液供給不足が生じて高速で高画像品質の画像を記録することができない。
【解決手段】流路板1にはノズル4に連通するノズル連通路5、加圧液室6、インク供給路7を形成し、加圧液室6間の隔壁6aの幅D1と加圧液室6の高さH1の比(H1/D1)が3以上6以下になるように各加圧液室6を形成した。
【選択図】 図10

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は液滴吐出ヘッド及びその製造方法、インクカートリッジ、インクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ等の画像記録装置(画像形成装置)として用いるインクジェット記録装置は、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通するインク流路(吐出室、圧力室、加圧液室、加圧室、液室等とも称される。)と、このインク流路内のインクを加圧する駆動手段(圧力発生手段)とを備えた液滴吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッドを搭載したものである。なお、液滴吐出ヘッドとしては例えば液体レジストを液滴として吐出する液滴吐出ヘッド、DNAの試料を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドなどもあるが、以下ではインクジェットヘッドを中心に説明する。
【0003】
インクジェットヘッドとしては、インク流路内のインクを加圧するエネルギーを発生する駆動手段として、圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの、或いは、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させることによる圧力でインク滴を吐出させるいわゆるサーマル型のもの、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで、インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のものなどが知られている。
【0004】
これらの各種ヘッドの内でも、ノズル開口が形成されたノズルプレート(ノズル形成部材)と振動板とをスぺーサ(流路形成部材)の両面に接着して圧力室(液室)を形成し、振動板を圧電素子により変形させる方式のインクジェットヘッドは、インク滴を飛翔させるための駆動源として熱エネルギーを使用しないため熱によるインクの変質がなく、特に熱により劣化しやすいカラーインクを吐出させる上で利点がある。しかも、圧電振動子の変位量を調整してインク滴のインク量を自在に調節することが可能であるため、高品質なカラー印刷のためのインクジェット記録装置を構成するのに最適なヘッドである。
【0005】
ところで、インクジェットヘッドは記録媒体上のドットをインク滴により構成する関係上、インク滴のサイズを小さくすることにより、極めて高い解像度での記録、印刷が可能である。
【0006】
しかしながら、効率よく記録するためには、インク開口の数を多くする(ノズル数を多くする)必要があり、特に、圧電素子を駆動手段とするものにあっては、圧電素子のエネルギーを効率よく使用するために圧力室(加圧液室)を大きくする必要がある。このことは、ヘッドの小型化要請とは相反することである。このような相反する問題を解消するため、通常隣り合う圧力室を区画している壁(隔壁)を薄くすると共に圧力室の形状を長手方向に大きくして容積を稼ぐことが行われている。
【0007】
このような圧力室やリザーバは、振動板とノズルプレートの間隔を所定の値に保持する部材である流路形成部材にて形成するが、上述したように、極めて小さく、しかも複雑な形状を備えた圧力室を形成する必要上、通常エッチング技術が使用されている。このような流路形成部材を形成する材料としては、感光性樹脂膜が使用されることが多いが、これは機械的強度が低いためクロストークや撓み等が生じ高い解像度を得ようとすると印字品質が低下するという問題がある。
【0008】
そこで、比較的簡単な手法で微細な形状を高い精度で加工が可能なシリコン単結晶基板の異方性エッチングを用いた部品製作技術、いわゆるマイクロマシニング技術を適用してインクジェットヘッドを構成する部材を加工することが行われるようになっている。特に、結晶方位(110)の単結晶シリコン基板を流路形成部材に用いて、異方性エッチングを行って、圧力室やリザーバを形成することが行われる。単結晶シリコンを使用したスペーサは、機械的剛性が高いため、圧電素子の変形に伴う記録ヘッド全体のたわみを小さくできるとともに、エッチングを受けた壁面が表面に対してほぼ垂直であるため圧力室を均一に構成することが可能であるという大きな利点を備えている。
【0009】
なお、シリコン基板を流路形成部材に用いたヘッドとしては、例えば、特開平7−125198号公報、特開平9−123448号公報、特開平10−264383号公報に記載されているものなどがある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、流路形成部材に複数の加圧液室を形成する場合には、各加圧液室間は隔壁によって分離されるが、この隔壁の幅と高さの寸法は滴吐出性能に大きな影響を及ぼすものである。例えば、隔壁の幅と高さの比(高さ/幅)が大きい場合は、滴吐出時に隣接する加圧液室からの影響を受けやすくなるため、単発ビットのみでインクを吐出するシングル駆動の場合と複数ビットから同時にインクを吐出するマルチ駆動の場合とでは、インク吐出特性に大きな差が生じてしまい、画像品質が劣化する。
【0011】
他方、隔壁の幅と高さの比(高さ/幅)が小さすぎる場合は、上記の現象は生じないが、高品質画像を高速度で記録する場合は、ノズルピッチ、加圧液室ピッチを小さくする必要があり、その場合加圧液室の体積が小さくなるためにノズルへの液供給量が不足して吐出不良が生じることになる。
【0012】
特にインクジェット記録装置においては、普通紙上に印字した場合、画像の色再現性、耐久性、耐光性、インク乾燥性、文字滲み(フェザリング)、色境界滲み(カラーブリード)、両面印刷性等、インクジェット記録装置特有の画質劣化問題が顕在しており、更に、普通紙にて高速印字しようとした場合には、これら全ての特性を満足して印刷することは極めて難しい課題となっている。
【0013】
そこで、普通紙を使用した場合での従前の染料系インクに対する問題点を改善するために、着色剤として有機顔料、カーボンブラック等を用いる顔料系インクの使用が普通紙印字に対して検討、あるいは実用化がされている。顔料は、染料とは異なり水への溶解性がないため、通常は、顔料を分散剤とともに混合し、分散処理して水に安定分散させた状態の水性インクとして用いられる。
【0014】
このような顔料系インクは粘度が高くなり、隔壁の幅と高さの比(高さ/幅)を適切に設定しても、ノズルへの液供給量が不足して吐出不良が生じることになる。これは、勿論、顔料系インクに限らず、粘度の高い液体を吐出する場合には同様の課題が生じる。
【0015】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、滴速度のバラツキが低減して高い画像品質の記録を行うことができる液滴吐出ヘッド及びその製造方法、このヘッドを一体化することで高い画像品質の記録を行うことができるインクカートリッジ、このヘッド又はインクカートリッジを搭載することで高品質画像を記録できるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、加圧液室間の隔壁の幅と加圧液室の高さの比(高さ/幅)が3以上6以下である構成としたものである。
【0017】
ここで、流路形成部材のノズル形成部材との接合面には加圧液室に似た形状の擬似液室が形成され、この擬似液室間の隔壁の幅と擬似液室の高さの比(高さ/幅)が3以上6以下であることが好ましい。また、流路形成部材がシリコン基板から形成されていることが好ましい。
【0018】
また、流路形成部材にはこの流路形成部材の厚さ方向に加圧液室とノズルとの間を連通するノズル連通路を有し、複数のノズル連通路間の隔壁の幅と、この隔壁の加圧液室長手方向の長さとの比(長さ/幅)が8以下であることが好ましく、この場合、ノズル連通路の高さが600μm以下であることが好ましい。
【0019】
さらに、加圧液室に連通して液体を供給する液体流動部を一つ設け、この液体流動部は加圧液室よりも幅が狭く、且つ、その長さが500μm以上であることが好ましい。
【0020】
また、液体の粘度が5 cP(25℃)以上のインクであることが好ましく、このインクは少なくとも、顔料、水溶性有機溶剤、炭素数8以上のポリオール又はグリコールエーテル及び水を含むことが好ましい。
【0021】
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、本発明に係る液滴吐出ヘッドを製造する製造方法であって、流路形成部材はシリコンのドライエッチングによる深堀、又はドライエッチングによる深堀と異方性ウェットエッチングとを併用して形成する構成としたものである。
【0022】
ここで、異方性ウェットエッチングを併用する場合、シリコン酸化膜/シリコン窒化膜の積層膜、又はシリコン酸化膜、若しくはシリコン窒化膜をマスクとして行うことが好ましい。
【0023】
本発明に係るインクカートリッジは、本発明に係る液滴吐出ヘッドからなるインクジェットヘッドとこのインクジェットヘッドにインクを供給するインクタンクを一体化したものである。
【0024】
本発明に係るインクジェット記録装置は、インク滴を吐出させる本発明に係る液滴吐出ヘッドからなるインクジェットヘッド、又は本発明に係るインクジェットヘッド一体型のインクカートリッジを備えるものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。本発明の液滴吐出ヘッドの実施形態に係るインクジェットヘッドについて図1ないし図4を参照して説明する。なお、図1は同ヘッドの分解斜視説明図、図2は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図、図3は同ヘッドの液室短手方向に沿う断面説明図、図4は同ヘッドの要部平面説明図である。
【0026】
このインクジェットヘッドは、単結晶シリコン基板で形成した流路形成部材である流路板1と、この流路板1の下面に接合した振動板2と、流路板1の上面に接合したノズル板3とを有し、これらによって液滴であるインク滴を吐出するノズル4がノズル連通路(連通管)5を介して連通するインク流路である加圧液室(加圧液室)6、加圧液室6にインクを供給するための共通液室8にインク供給口9を介して連通する流体抵抗部となる液体流動部(インク流動部)であるインク供給路7を形成している。
【0027】
そして、振動板2の外面側(液室と反対面側)に各加圧液室6に対応して加圧液室6内のインクを加圧するための駆動手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての積層型圧電素子12を接合し、この圧電素子12をベース基板13に接合している。ベース基板13はチタン酸バリウム、アルミナ、フォルステライトなどの絶縁性基板を用いている。
【0028】
また、圧電素子12の間には加圧液室6、6間の隔壁部6aに対応して支柱部14を設けている。ここでは、圧電素子部材にハーフカットのダイシングによるスリット加工を施すことで櫛歯状に分割して、1つ毎に圧電素子12と支柱部14して形成している。支柱部14も構成は圧電素子12と同じであるが、駆動電圧を印加しないので単なる支柱となる。
【0029】
さらに、振動板12の外周部はフレーム部材16にギャップ材を含む接着剤17にて接合している。このフレーム部材16には、共通液室8となる凹部、この共通液室8に外部からインクを供給するためのインク供給穴18(図5参照)を形成している。このフレーム部材16は、例えばエポキシ系樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成している。
【0030】
ここで、流路板1は、後述するように、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板をドライエッチングによる深堀と水酸化カリウム水溶液(KOH)、TMAH液などのエッチング液を用いた異方性エッチングとを併用することで、ノズル連通路5、加圧液室6、インク供給路7となる凹部や穴部を形成したものである。
【0031】
そして、流路板1のインクに接する面(液流路の壁面)となる加圧液室6、インク供給路7の各壁面には酸化膜、窒化チタン膜或いはポリイミドなどの有機樹脂膜からなる耐液性薄膜10を成膜している。このような耐液性薄膜10を形成することで、シリコン基板からなる流路板10がインクに対して溶出しにくく、また濡れ性も向上するため気泡の滞留が生じにくく、安定した滴吐出が可能になる。
【0032】
振動板2は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他の金属板や樹脂板或いは金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。
【0033】
この振動板2は加圧液室6に対応する部分に変形を容易にするための厚みが2〜10μmの薄肉部(ダイアフラム部)21及び圧電素子12と接合するための厚肉部(島状凸部)22を形成するとともに、支柱部14に対応する部分及びフレーム部材16との接合部にも厚肉部23を形成し、平坦面側を流路板1に接着剤接合し、島状凸部22を圧電素子12に接着剤接合し、更に厚肉部23を支柱部14及びフレーム部材16に接着剤17で接合している。なお、ここでは、振動板2を2層構造のニッケル電鋳で形成している。この場合、ダイアフラム部21の厚みは3μm、幅は35μm(片側)としている。
【0034】
ノズル板3は各加圧液室6に対応して直径10〜35μmのノズル4を形成し、流路板1に接着剤接合している。このノズル板3としては、ステンレス、ニッケルなどの金属、金属とポリイミド樹脂フィルムなどの樹脂との組み合せ、、シリコン、及びそれらの組み合わせからなるものを用いることができる。ここでは、電鋳工法によるNiメッキ膜等で形成している。また、ノズル4の内部形状(内側形状)は、ホーン形状(略円柱形状又は略円錘台形状でもよい。)に形成し、このノズル4の穴径はインク滴出口側の直径で約20〜35μmとしている。さらに、各列のノズルピッチは150dpiとし、2列配置により300dpiとしている。
【0035】
また、ノズル板3のノズル面(吐出方向の表面:吐出面)には、図示しない撥水性の表面処理を施した撥水処理層を設けている。撥水処理層としては、例えば、PTFE−Ni共析メッキやフッ素樹脂の電着塗装、蒸発性のあるフッ素樹脂(例えばフッ化ピッチなど)を蒸着コートしたもの、シリコン系樹脂・フッ素系樹脂の溶剤塗布後の焼き付け等、インク物性に応じて選定した撥水処理膜を設けて、インクの滴形状、飛翔特性を安定化し、高品位の画像品質を得られるようにしている。
【0036】
圧電素子12は、厚さ10〜50μm/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電層31と、厚さ数μm/1層の銀・パラジューム(AgPd)からなる内部電極層32とを交互に積層したものであり、内部電極32を交互に端面の端面電極(外部電極)である個別電極33、共通電極34に電気的に接続したものである。この圧電常数がd33である圧電素子12の伸縮により加圧液室6を収縮、膨張させるようになっている。圧電素子12に駆動信号が印加され充電が行われると伸長し、また圧電素子12に充電された電荷が放電すると反対方向に収縮するようになっている。
【0037】
なお、圧電素子部材の一端面の端面電極はハーフカットによるダイシング加工で分割されて個別電極33となり、他端面の端面電極は切り欠き等の加工による制限で分割されずにすべての圧電素子12で導通した共通電極34となる。
【0038】
そして、圧電素子12の個別電極33には駆動信号を与えるために半田接合又はACF(異方導電性膜)接合若しくはワイヤボンディングでFPCケーブル35を接続し、このFPCケーブル35には各圧電素子12に選択的に駆動波形を印加するための駆動回路(ドライバIC)を接続している。また、共通電極34は、圧電素子の端部に電極層を設けて回し込んでFPCケーブル35のグラウンド(GND)電極に接続している。
【0039】
このように構成したインクジェットヘッドにおいては、例えば、記録信号に応じて圧電素子12に駆動波形(10〜50Vのパルス電圧)を印加することによって、圧電素子12に積層方向の変位が生起し、振動板2を介して加圧液室6内のインクが加圧されて圧力が上昇し、ノズル4からインク滴が吐出される。
【0040】
その後、インク滴吐出の終了に伴い、加圧液室6内のインク圧力が低減し、インクの流れの慣性と駆動パルスの放電過程によって加圧液室6内に負圧が発生してインク充填行程へ移行する。このとき、図示しないインクタンクから供給されたインクは共通液室8に流入し、共通液室8からインク供給口9を経てインク供給路7を通り、加圧液室6内に充填される。
【0041】
ここで、インク供給路(流体抵抗部)7は、吐出後の残留圧力振動の減衰に効果が有る反面、表面張力による最充填(リフィル)に対して抵抗になる。このインク供給路7の流体抵抗値を適宜に選択することで、残留圧力の減衰とリフィル時間のバランスが取れ、次のインク滴吐出動作に移行するまでの時間(駆動周期)を短くできる。
【0042】
ここで、このインクジェットヘッドにおいて使用する液体であるインクについて説明する。本発明に係るインクジェットヘッドで使用するインク液(これを「本発明のインク」という。)は、次の構成(1)〜(10)よりなる印字用インク(記録用インク)であるが、これに限るものではない。
【0043】
(1)顔料(自己分散性顔料)6wt%以上
(2)湿潤剤1
(3)湿潤剤2
(4)水溶性有機溶剤
(5)アニオンまたはノニオン系界面活性剤
(6)炭素数8以上のポリオールまたはグリコールエーテル
(7)エマルジョン
(8)防腐剤
(9)pH調製剤
(10)純水
【0044】
すなわち、印字(記録)するための着色剤として顔料を使用し、それを分解、分散させるための溶剤とを必須成分とし、更に添加剤として、湿潤剤、界面活性剤、エマルジョン、防腐剤、pH調整剤とを含んでいる。湿潤剤1と湿潤剤2とを混合するのは各々湿潤剤の特徴を活かすためと、粘度調整が容易にできるためである。
【0045】
以下、上記各インク構成要素について、より具体的に説明する。
(1)の顔料に関しては、特にその種類を限定することなく、無機顔料、有機顔料を使用することができる。無機顔料としては、酸化チタン及び酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。
【0046】
本発明のインクの好ましい態様によれば、これらの顔料のうち、水と親和性の良いものが好ましく用いられる。顔料の粒径は、0.05μmから10μm以下が好ましく、さらに好ましくは1μm以下であり、最も好ましくは0.16μm以下である。インク中の着色剤としての顔料の添加量は、6〜20重量%程度が好ましく、より好ましくは8〜12重量%程度である。
【0047】
本発明のインクの好ましく用いられる顔料の具体例としては、以下のものが挙げられる。
黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
【0048】
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、81、83(ジスアゾイエローHR)、95、97、98、100、101、104、408、109、110、117、120、138、153、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等がある。
【0049】
その他顔料(例えばカーボン)の表面を樹脂等で処理し、水中に分散可能としたグラフト顔料や、顔料(例えばカーボン)の表面にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加し水中に分散可能とした加工顔料等が使用できる。
【0050】
また、顔料をマイクロカプセルに包含させ、該顔料を水中に分散可能なものとしたものであっても良い。
【0051】
本発明のインクの好ましい態様によれば、ブラックインク用の顔料は、顔料を分散剤で水性媒体中に分散させて得られた顔料分散液としてインクに添加されるのが好ましい。好ましい分散剤としては、従来公知の顔料分散液を調整するのに用いられる公知の分散液を使用することができる。
【0052】
分散液としては、例えば以下のものが挙げられる。
ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0053】
本発明のインクの好ましい態様によれば、これらの共重合体は重量平均分子量が3、000〜50、000であるのが好ましく、より好ましくは5、000〜30、000、最も好ましくは7、000〜15、000である。分散剤の添加量は、顔料を安定に分散させ、他の効果を失わせない範囲で適宣添加されて良い。分散剤としては1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、より好ましくは1:0.125〜1:3の範囲である。
【0054】
着色剤に使用する顔料は、記録用インク全重量に対して6重量%〜20重量%含有し、0.05μm〜0.16μm以下の粒子径の粒子であり、分散剤により水中に分散されていて、分散剤が、分子量5、000から100、000の高分子分散剤である。水溶性有機溶剤が少なくとも1種類にピロリドン誘導体、特に、2−ピロリドンを使用すると画像品質が向上する。
【0055】
(2)〜(4)の湿潤剤1、2と水溶性有機溶剤に関しては、本発明のインクの場合、インク中に水を液媒体として使用するものであるが、インクを所望の物性にし、インクの乾燥を防止するために、また、溶解安定性を向上するため等の目的で、例えば下記の水溶性有機溶剤が使用される。これら水溶性有機溶剤は複数混合して使用してもよい。
【0056】
湿潤剤と水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、1,2、6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類;
【0057】
エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;
【0058】
エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;
【0059】
2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;
【0060】
ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N、N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;
【0061】
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;
【0062】
ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類;プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等である。
【0063】
これら有機溶媒の中でも、特にジエチレングリコール、チオジエタノール、ポリエチレングリコール200〜600、トリエチレングリコール、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ペトリオール、1,5−ペンタンジオール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。これらは溶解性と水分蒸発による噴射特性不良の防止に対して優れた効果が得られる。
【0064】
その他の湿潤剤としては、糖を含有してなるのが好ましい。糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類および四糖類を含む)および多糖類があげられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。
【0065】
また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式HOCH(CHOH)nCHOH(ここでn=2〜5の整数を表す。)で表される。)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などがあげられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
【0066】
これら糖類の含有量は、インク組成物の0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜30重量%の範囲が適当である。
【0067】
(5)の界面活性剤に関しても、特に限定はされないが、アニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
【0068】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミドなどが挙げられる。前記界面活性剤は、単独または二種以上を混合して用いることができる。
【0069】
本発明のインクにおける表面張力は紙への浸透性を示す指標であり、特に表面形成されて1秒以下の短い時間での動的表面張力を示し、飽和時間で測定される静的表面張力とは異なる。測定法としては特開昭63−31237号公報等に記載の従来公知の方法で1秒以下の動的な表面張力を測定できる方法であればいずれも使用できるが、本発明ではWilhelmy式の吊り板式表面張力計を用いて測定した。表面張力の値は40mJ/m以下が好ましく、より好ましくは35mJ/m以下とすると優れた定着性と乾燥性が得られる。
【0070】
(6)の炭素数8以上のポリオールまたはグリコールエーテルに関しては、25℃の水中において0.1〜4.5重量%未満の間の溶解度を有する部分的に水溶性のポリオールおよび/またはグリコールエーテルを記録用インク全重量に対してを0.1〜10.0重量%添加することによって、該インクの熱素子への濡れ性が改良され、少量の添加量でも吐出安定性および周波数安定性が得られることが分かった。▲1▼2−エチル−1、3−ヘキサンジオール 溶解度:4.2%(20℃) ▲2▼2、2、4−トリメチル−1、3−ペンタンジオール 溶解度:2.0%(25℃)。
【0071】
25℃の水中において0.1〜4.5重量%未満の間の溶解度を有する浸透剤は溶解度が低い代わりに浸透性が非常に高いという長所がある。したがって、25℃の水中において0.1〜4.5重量%未満の間の溶解度を有する浸透剤と他の溶剤との組み合わせや他の界面活性剤との組み合わせで非常に高浸透性のあるインクを作製することが可能となる。
【0072】
(7)本発明のインクには樹脂エマルジョンが添加されている方が好ましい。樹脂エマルジョンとは、連続相が水であり、分散相が次の様な樹脂成分であるエマルジョンを意味する。分散相の樹脂成分としてはアクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
【0073】
本発明のインクの好ましい態様によれば、この樹脂は親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体であるのが好ましい。また、これらの樹脂成分の粒子径はエマルジョンを形成する限り特に限定されないが、150nm程度以下が好ましく、より好ましくは5〜100nm程度である。
【0074】
これらの樹脂エマルジョンは、樹脂粒子を、場合によって界面活性剤とともに水に混合することによって得ることができる。例えば、アクリル系樹脂またはスチレン−アクリル系樹脂のエマルジョンは、(メタ)アクリル酸エステルまたはスチレンと、(メタ)アクリル酸エステルと、場合により(メタ)アクリル酸エステルと、界面活性剤とを水に混合することによって得ることができる。樹脂成分と界面活性剤との混合の割合は、通常10:1〜5:1程度とするのが好ましい。界面活性剤の使用量が前記範囲に満たない場合、エマルジョンとなりにくく、また前記範囲を超える場合、インクの耐水性が低下したり、浸透性が悪化する傾向があるので好ましくない。
【0075】
前記エマルジョンの分散相成分としての樹脂と水との割合は、樹脂100重量部に対して水60〜400重量部、好ましくは100〜200の範囲が適当である。
【0076】
市販の樹脂エマルジョンとしては、マイクロジェルE−1002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ペイント株式会社製:いずれも商品名)、ボンコート4001(アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製:商品名)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製:商品名)、SAE−1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン株式会社製:商品名)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学株式会社製:商品名)、などが挙げられる。
【0077】
本発明のインクは、樹脂エマルジョンを、その樹脂成分がインクの0.1〜40重量%となるよう含有するのが好ましく、より好ましくは1〜25重量%の範囲である。
【0078】
樹脂エマルジョンは、増粘・凝集する性質を持ち、着色成分の浸透を抑制し、さらに記録材への定着を促進する効果を有する。また、樹脂エマルジョンの種類によっては記録材上で皮膜を形成し、印刷物の耐擦性をも向上させる効果を有する。
【0079】
(8)〜(10)本発明のインクには上記着色剤、溶媒、界面活性剤の他に従来より知られている添加剤を加えることができる。
例えば、防腐防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が使用できる。
【0080】
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずにpHを7以上に調整できるものであれば、任意の物質を使用することができる。その例として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等が挙げられる。
【0081】
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等がある。
【0082】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等がある。
【0083】
このような本発明のインクを使用することによって、特に普通紙上に印字した場合でも、良好な色調(十分な発色性、色再現性を有する。)、高い画像濃度、文字を含む画像にフェザリング現象やカラーブリード現象のない鮮明な画質、両面印刷にも耐え得るインク裏抜け現象の少ない画像、高速印刷に適したインク乾燥性(定着性)、耐光性、耐水性などの高い堅牢性を有した画像等、これらの画像特性に対して十分に満足できる高画質画像を形成することができるようになる。
【0084】
この本発明のインクのように、特に、粘度が5 CPs以上、より好ましい粘度8 CPs以上のインクを用いた場合には、インク供給路7(インク流動部)の流体抵抗値のバラツキによる滴速度への影響、加圧液室6の隔壁と幅との関係、インク連通路5(連通管)の隔壁などによる滴速度への影響が生じる。
【0085】
そこで、本発明に係るインクジェットヘッドにおける流路形成部材である流路板1の形状の詳細について図5以降をも参照して説明する。
まず、この実施形態においては、図1及び図5ないし図7を参照して、流路板1は、シリコン基板で形成して、振動板2側の面に各加圧液室6、インク供給路7となる凹部をそれぞれ形成しているので、この状態では流路板1の振動板2側表面の凹部以外の面(振動板接合面)の表面積とノズル板3側の凹部(この状態ではノズル連通路5のみ)以外の面(ノズル板接合面)の表面積との差が大きくなる。
【0086】
このように、ノズル板側接合面と振動板接合面との形状や面積が大きく異なると、耐液性薄膜10、特に耐液性に優れたシリコン酸化膜や窒化チタン膜を形成した場合に膜の内部応力によって流路板1に反りが発生することになる。
【0087】
そこで、このヘッドの流路板1には、ノズル板接合面側及び振動板接合面側にそれぞれ接着剤逃がし用の肉抜き部(凹部)45、47を形成するとともに、ノズル板接合面側に液室形状(流路形状)に似た形状の擬似液室(凹部)46を形成することによって、ノズル板接合面の凹部以外の表面積と振動板接合面の凹部以外の表面積とが略同じになるようにしている。
【0088】
このように、流路板1の両面の凹部以外の表面積が略同じになるようにすることで、流路壁面に耐液性薄膜10を形成する場合に、ノズル板接合面側と振動板接合面側の耐液性薄膜の膜応力の差などに起因する流路板1の反りが緩和されるので、流路板1の各面にノズル板3及び振動板2を接着剤接合した場合の接合信頼性が向上するとともに、製造工程における接合不良が低減することで歩留まりが向上して低コスト化を図ることができる。
【0089】
すなわち、流路板1のノズル板接合面1aと振動板接合面1bの凹部形状及び表面積が大きく異なっていると、例えば、耐液性薄膜としてのシリコン酸化膜を7000Åの厚みで成膜した場合に、シリコン流路板1には6μmを越える反りが発生することを確認している。そのため、流路板1の各面にノズル板及び振動板を接合すると接合不良箇所が発生する。勿論接着剤層の厚みを厚くすることで接合不良はある程度解消できるが、接着剤層の厚みを厚くすることは、接着剤のはみ出しが多くなり、液室部材全体の剛性の点でも好ましくない。
【0090】
これに対して、流路板1のように液室形状に対応する擬似液室46を形成することで、ノズル板接合面1aと振動板接合面1bの凹部形状及び表面積がほぼ同じになる。そのため、耐液性薄膜としてのシリコン酸化膜を7000Åの厚みで成膜した場合でも、シリコン流路板1の反りは約2μmに抑えることができ、この程度の反りであれば流路板1の各面のノズル板及び振動板を接合しても接合不良箇所が発生しないことを確認した。
【0091】
ここで、図7にノズル板接合面と振動板接合面の面積比とシリコン酸化膜を膜厚1μmで形成した場合の液室形成部材(流路板)の反り量の関係の実測結果を示している。
【0092】
次に、このインクジェットヘッドにおけるインク供給路(インク流動部)7について図8を参照して説明する。なお、同図は1ビット分の加圧液室及びインク供給路部分の平面説明図である。
インク供給路7の幅W1は加圧液室6の幅W2よりも狭く形成する。これにより、加圧液室6に発生させた圧力をインク供給方向に逃がすことなく効率的にノズル4側に伝えることができる。
【0093】
また、インク供給路7は1つの加圧液室6に対して1箇所に形成している。これにより、インク供給路7を加圧液室6に対して複数設けた場合に比べて、インク流動時の複数のインク流動に起因する干渉及びインクの滞りを低減することができる。
【0094】
さらに、インク供給路7は加圧液室6の幅方向の略中央部に配置し、流体的に、気泡を発生させない構造としている。各加圧液室6に対して加圧液室6よりも狭いインク供給路7が1箇所であれば、加圧液室6の幅方向のいずれかに片寄った位置に配置されていたとしても気泡を発生させにくく、インクの滞りのない形状にすることができるが、加圧液室6の幅方向の略中央部に配置することで、より一層気泡の発生、インクの滞りを低減することができ、信頼性が向上する。
【0095】
また、インク供給路7と加圧液室6とはシリコン基板のハーフエッチングにより形成し、加圧液室6とインク供給路7のエッチング深さを略等しくしている。ハーフエッチングで加圧液室6及びインク供給路7を形成することによりフルエッチングで形成する場合に比べて、流路形成部材である流路板1の剛性を高くすることができ、安定した滴噴射を行うことができる。また。加圧液室6とインク供給路7のエッチング深さを略等しくすることにより、寸法制御がしやすく、少ない工程数で形成することができる。
【0096】
さらに、流路形成部材である流路板1として面方位(110)のシリコン基板を用いてイインク供給路7の幅方向(ノズル配列方向)の壁面を(111)面で規定する配置、形状としている。インク供給路7の流体抵抗値として最も噴射特性に影響を及ぼす最短幅をW1を制御のしやすいシリコン(111)面で規定することにより、噴射ばらつきの少ないヘッドが得られる。
【0097】
また、インク供給路7の長さL1は500μm以上にしている。これにより、流体抵抗値のバラツキによる滴吐出特性(特に滴速度Vj)に対する影響を低減することができ、各チャンネル間の滴速度Vjのばらつきを約1m/s以内の差に抑えることが可能となり、高品質の画像を形成することができるようになる。
【0098】
すなわち、流路形成部材(流路板1)として面方位(110)のシリコン基板を用いた場合、インク供給路7の長さ方向では、加圧液室6と加圧液室6よりも狭いインク流入口との接続部51及び共通液室8側からのインク流入口との接続部52にシリコンの高次面が出現するため、高精度の寸法制御が困難になる。
【0099】
そこで、インク供給路7の長さL1を500μm以上にすることで、加圧液室6よりも幅が狭いインク供給路7に寸法ばらつきが生じた場合でも、インク供給路7の流体抵抗値のばらつきを小さく抑えることができるようになる。
【0100】
ここで、インク供給路7の長さL1と各チャンネル(ノズル)間での最大噴射速度Vjmaxと最小噴射速度Vjminとの差(滴速度Vjのばらつき)の関係を測定した結果を図9に示している。この実験に用いたインクは前述した本発明のインクであり、粘度は5 cPの調整した。
【0101】
実際のシリコン基板を用いて加圧液室6及びインク供給路7を作製し、各チャンネル間でインク供給路7の長さ(幅狭部の長さ)L1を測定したところ、最も長いL1maxと最も短いL1minの差(L1max−L1min)では25μm程度のバラツキが生じた。
【0102】
このとき、インク供給路7の長さL1を250μmとすると、抵抗値としては10%の差が生じることになり、同図に示すように、滴速度Vjの差(Vjmax−Vjmin)が約1.5m/sになってしまい、滴着弾位置がばらついて画像品質が低下する。
【0103】
これに対して、インク供給路7の長さL1を500μm以上にすることで、抵抗値としては5%の差に止まることになり、長さのバラツキが抵抗値のバラツキ、噴射特性のバラツキに与える影響が低減し、同図に示すように、高粘度(5 cP以上)のインクを用いた場合でも、滴速度Vjの差(Vjmax−Vjmin)を約1.0m/sに抑えることができる。このように、各チャンネル間での滴速度Vjのばらつきを約1.0m/s以内に抑えることにより、滴着弾位置のばらつき画像品質に与える影響を大幅に低減できて、画像品質が向上する。
【0104】
また、インク供給路7のインク出口側(接続部51)は加圧液室6に対するインク供給方向で幅が徐々に広くなるように、インク入口側(接続部52)はインク供給方向で幅が徐々に広くなるように形成している。これにより、インクの流れがスムーズになり、インクの滞り、気泡のトラップを低減することができる。
【0105】
このように、インクの滞りのない形状にインク供給路7を形成することによって、高周波でのインク吐出の際にも噴射ダウンのないヘッドを得ることができる。
【0106】
次に、加圧液室6の高さと加圧液室間の隔壁6aの幅との関係について図10を参照して説明する。
加圧液室6間の隔壁6aの幅と高さの寸法はインク吐出性能に大きな影響を及ぼすものである。すなわち、例えば、幅と高さの比(高さ/幅)が大きい場合は、インク吐出時に隣接する加圧液室からの影響を受け易くなる。このため、単発ビットのみでインクを吐出する場合(シングル駆動)と複数ビットから同時にインクを吐出する場合(マルチ駆動)とでインク吐出特性に大きな差が生じてしまい、画像の劣化につながる。
【0107】
一方、隔壁の幅と高さの比(高さ/幅)が小さすぎる場合は、上記の現象は生じないが、高品質画像を高速度で記録する場合は、ノズルピッチ、加圧液室ピッチを小さくする必要があり、その場合加圧液室の体積が小さいためにノズルへの液体供給量が不足することになる。特に、高粘度インクを用いた高周波駆動の場合にインクの供給量の不足が顕著になり、結果駆動周波数が制限されて高速記録が制限されることになる。
【0108】
そこで、このインクジェットヘッドにおいては、図10に示すように、加圧液室6を分離する隔壁6aのノズル配列方向の幅(液室隔壁幅)D1と加圧液室6の高さ(液室高さ)H1(隔壁6aの高さでもある。)とを、液室隔壁幅D1と液室高さH1の比(H1/D1)が3以上6以下になる範囲に形成している。
【0109】
このように、液室隔壁幅D1と液室高さH1の比(H1/D1)が3以上6以下の範囲内とすることで、液滴吐出時に隣接の加圧液室からの影響を受けやすくなるために生じる単発ビットのみで液滴を吐出するシングル駆動の場合と複数ビット同時に液滴を吐出するマルチ駆動の場合とでの液滴吐出特性の大きな差の発生を抑えることができ、画像品質が向上する。それとともに、ノズルへの液供給量不足をなくすることでき、特に普通紙高画質印刷のための高粘度インクを使用したときにおいても、高周波吐出時(高周波駆動時)の液供給を十分に行うことができ、記録速度の高速化を図れる。
【0110】
ここで、液室間隔壁幅D1と液室高さH1との比(H1/D1:アスペクト比)の値の一例を表1に示している。ここで、液室間隔壁幅D1が30μmのとき150dpiに相当し、20μmのとき300dpiに相当し、10μmのとき600dpiに相当するノズルピッチが得られる。
【0111】
また、この表1の液室間隔壁幅D1と液室高さH1に設定して、シングル(単数ビット)駆動で滴噴射を行ったときの滴噴射速度Vjとマルチ(複数ビット)駆動で液滴噴射を行ったときの滴噴射速度Vjとの差の評価結果を表2に示している。なお、同表中、滴噴射速度Vjの差が1.0以下の場合を可「○」とし、1.0を越える場合を不可「×」としている。さらに、高周波駆動を行ったときの噴射不良率の評価結果を表3に示している。なお、同表中、不良ビットがないときを可「○」、不良ビットが発生したときを不可「×」としている。
【0112】
【表1】
Figure 2004082501
【0113】
【表2】
Figure 2004082501
【0114】
【表3】
Figure 2004082501
【0115】
また、液室間隔壁幅D1と液室高さH1との比(H1/D1:アスペクト比)とシングル(単数ビット)/マルチ(複数ビット)駆動間での滴速度Vjの差の測定結果を図11に、液室間隔壁幅D1と液室高さH1との比(H1/D1:アスペクト比)に対する高周波駆動を行ったときの噴射不良率の評価結果を図12にも示している。なお、これらの測定、評価に用いたインクは前述した本発明のインクであり、粘度は5 cPの調整した。
【0116】
これらの表1ないし表3及び図11、図12から分かるように、液室間隔壁幅D1と液室高さH1との比(H1/D1:アスペクト比)を「6」以下にすることにより、隣接ビットとの干渉が小さくなり、シングル(単数ビット)/マルチ(複数ビット)駆動間の液速度Vj差を良好な画像品質が得られる1m/s以下に抑えることができる。
【0117】
また、液室間隔壁幅D1と液室高さH1との比(H1/D1:アスペクト比)を「3」以上にすることによって、高粘度インクを使用し、高周波駆動を行って液滴を噴射させたときでもノズルへのインクの供給が十分行われて、噴射不良が発生しない。
【0118】
このように、液室隔壁幅D1と液室高さH1の比(H1/D1)が3以上6以下の範囲内とすることで、特に高粘度インクを使用して高速、高画質で普通紙への記録を行うことができるようになる。
【0119】
なお、このヘッドにおいては、前述したように流路板1のノズル接合面1aに擬似液室46を形成しているが、この擬似液室46についても、図10に示すように、擬似液室46を分離する隔壁46aのノズル配列方向の幅(擬似液室隔壁幅)D2と擬似液室46の高さ(擬似液室高さ)H2(擬似液室の隔壁46aの高さでもある。)とを、擬似液室隔壁幅D2と擬似液室高さH2の比(H2/D2)が3以上6以下になる範囲に形成している。
【0120】
この場合、液室間隔壁幅D1と擬似液室隔壁幅D2、液室高さH1と擬似液室高さH2とは同じにすることもでき、或いは異ならせることもできるが、上述したように比(H2/D2)が3以上6以下の範囲になるように形成することで、擬似液室46と加圧液室6の高さ及び隔壁幅を同じにすることが可能になる。
【0121】
次に、連通管(ノズル連通路)5の長さと連通管5間の隔壁の幅との関係、連通管5の高さについて図13を参照して説明する。
連通管5は流路板1の厚さ方向に流路板1を貫通して形成しており(流路板1の厚さ方向に部分的に形成することもできる。)、この連通管5は加圧液室6にて加圧されたインクをノズル4へと流動させるための部位であり、各連通管5は図13(a)に示すようにノズル配列方向では隔壁5aにより分離されている。
【0122】
この連通管5の隔壁5aの剛性が低下すると、隣接するビットの連通管5との間で干渉を起こしてしまう場合がある。隣接する連通管5の間で干渉を生じると、単発ビットのみで液滴を吐出するシングル駆動の場合と複数ビット同時に吐出するマルチ駆動の場合との間で液滴吐出特性に大きな差が発生してしまい、画像品質が低下することになる。
【0123】
そこで、このインクジェットヘッドにおいては、図13(a)に示すように、連通管5を分離する隔壁5aのノズル配列方向の幅(連通管隔壁幅又はノズル連通路間隔壁幅)D3と連通管5を分離する隔壁5aの加圧液室6の長さ方向での長さ(連通管隔壁長さ又はノズル連通路間隔壁長さ)L2とを、連通管隔壁幅D3と連通管隔壁長さL2の比(L2/D3)が8以下になる範囲に形成している。
【0124】
このように、連通管隔壁幅D3と連通管隔壁長さL2の比(L2/D3)が8以下になる範囲内とすることで、隔壁5aの剛性不足が原因となって発生する単発ビットのみで液滴を吐出するシングル駆動の場合と複数ビット同時に液滴を吐出するマルチ駆動の場合とでの液滴吐出特性の大きな差の発生を抑えることができ、高精度の噴射特性を得ることできて、画像品質が向上する。
【0125】
なお、このインクジェットヘッドにおいては、連通管5の隔壁5aのノズル配列方向の幅(連通管隔壁幅)D3は、連通管5と加圧液室6とのノズル配列方向の幅を同じに形成しているので、液室間隔壁幅D1と同じであるが、これらの連通管隔壁幅D3と液室間隔壁幅D1とを異ならせることもできる。
【0126】
ここで、連通管隔壁幅D3と連通管隔壁長さL2との比(L2/D3:アスペクト比)の値の一例を表4に示している。なお、連通管隔壁幅D3と液室間隔壁幅D1とが同じ場合には、前述した表1で述べた液室間隔壁幅D1とノズルピッチの関係が成り立つ。
【0127】
また、この表4の連通管隔壁幅D3と連通管隔壁長さL2に設定して、シングル(単数ビット)駆動で滴噴射を行ったときの滴噴射速度Vjとマルチ(複数ビット)駆動で液滴噴射を行ったときの滴噴射速度Vjとの差の評価結果を表5に示している。なお、同表中、滴噴射速度Vjの差が1.0以下の場合を可「○」とし、1.0を越える場合を不可「×」としている。
【0128】
【表4】
Figure 2004082501
【0129】
【表5】
Figure 2004082501
【0130】
また、連通管隔壁幅D3と連通管隔壁長さL2との比(L2/D3:アスペクト比)とシングル(単数ビット)/マルチ(複数ビット)駆動間での滴速度Vjの差の測定結果を図14にも示している。なお、この測定、評価に用いたインクは前述した本発明のインクであり、粘度は5 cPの調整した。
【0131】
これらの表4、表5及び図14から分かるように、連通管隔壁幅D3と連通管隔壁長さL2との比(L2/D3:アスペクト比)を「8」以下にすることにより、隣接ビットとの干渉が小さくなり、シングル(単数ビット)/マルチ(複数ビット)駆動間の液速度Vj差を良好な画像品質が得られる1m/s以下に抑えることができる。
【0132】
ところで、連通管隔壁幅D3と連通管隔壁長さL2との比(L2/D3:アスペクト比)を「8」以下、特により小さな値になるようにすると、連通管5の流体抵抗が大きくなり、特に、高粘度インクを用いた高周波駆動の場合にインクの供給量の不足が顕著になり、結果駆動周波数が制限されて高速記録が制限されることになる。
【0133】
そこで、このインクジェットヘッドでは、図13(b)に示すように、連通管5の高さH3を600μm以下にしている。これにより、連通管5の隔壁5aの剛性を高めるために連通管5を分離する隔壁5aの幅と隔壁5aの加圧液室長手方向の長さの比(長さ/幅)を小さくするために生じる流体抵抗の増大を抑えることができ、特に普通紙高画質画像を高速で得るために必要な高粘度インクを使用し、高周波で噴射させたときにも噴射不良のないヘッドが得られる。
【0134】
ここで、連通管5の高さH3に対する高周波駆動時の噴射不良の発生率の測定結果の一例を図15に示している。なお、ここでも、測定、評価に用いたインクは前述した本発明のインクであり、粘度は5 cPの調整した。
【0135】
この図15から分かるように、連通管5の高さH3、すなわち、流路板1の厚さを600μm以下とすることによって、高粘度インクを使用し、高周波で噴射させたときでもノズルへの液体の供給は十分行われており、噴射不良は発生しない。
【0136】
このように、連通管隔壁幅D3と連通管隔壁長さL2との比(L2/D3:アスペクト比)を「8」以下とし、連通管5の高さH3を600μm以下とすることにより、特に高粘度インクを使用して高速、高画質で普通紙への記録を行うことができるようになる。
【0137】
次に、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法に係る第1実施形態の製造工程について図16及び図17を参照して説明する。
先ず、図16(a)に示すように、厚さ400μmで面方位(110)のシリコン基板(シリコンウエハを用いる。)61を用意し、このシリコン基板61両表面に厚さ1.0μmのシリコン酸化膜62a、62b及び厚さ0.15μmのシリコン窒化膜63a、63を形成した。なお、窒化膜63a、63bはLP−CVDで形成した。
【0138】
なお、使用するウエハの種類は両面研磨ウエハ、両面未研磨ウエハ、片面未研磨ウエハのいずれのウエハであっても良く、また比抵抗も揃っている必要はなく、例えばここでは、比抵抗0.1−100Ωcmのウエハを使用している。また、ウエハの厚さは連通管(ノズル連通路)5の高さを規定することになるので、前述したように高粘度インクを使用することから600μm以下の厚さのものを使用している。
【0139】
次いで、同図(b)に示すように、シリコン基板61のノズル板接合面側のシリコン窒化膜63a表面に、ノズル連通路5を形成するための開口と、ノズル板3との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる凹部(肉抜き部)45、擬似液室46を形成するための各開口とを有するレジストパターン64aを形成した。
【0140】
そして、ドライエッチングを行って、シリコン窒化膜63aに、ノズル連通路5を形成するための開口65と、ノズル板3との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる凹部45を形成するための開口66、擬似液室46を形成するための開口68をパターニングする。この工程では擬似液室26を形成するための開口68は加圧液室6とほぼ同じ平面形状に形成した。
【0141】
その後、同図(c)に示すように、シリコン基板61のノズル板接合面側のシリコン窒化膜63aを埋め込み、ノズル連通路5を形成するための開口を有するレジストパターン64c形成し、ドライエッチングを行って、シリコン窒化膜63aの開口65に連続してシリコン酸化膜62aにノズル連通路5を形成するための開口(以下では両開口を単に「開口65」と表記する。)をパターニングする。
【0142】
次に、同図(d)に示すように、シリコン基板61の振動板接合面側のシリコン窒化膜63b表面に、加圧液室6及びインク供給路(インク流動部)7を形成するための開口と、振動板2との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる凹部(肉抜き部)47を形成するための開口とを有するレジストパターン64bを形成した。
【0143】
そして、ドライエッチングを行って、シリコン窒化膜63aに、加圧液室6及びインク供給路(インク流動部)7を形成するための開口70と、振動板2との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる凹部(肉抜き部)47を形成するための開口71をパターニングする。
【0144】
次いで、同図(e)に示すように、シリコン基板61の振動板接合面側のシリコン窒化膜63bを埋め込み、ノズル連通路5を形成するための開口を有するレジストパターン64d形成し、ドライエッチングを行って、シリコン酸化膜62aにノズル連通路5を形成するための開口72をパターニングする。
【0145】
その後、図17(a)に示すように、レジストでシリコン窒化膜63aの開口65、66、68を埋め込み、ノズル連通路5を形成するための開口73を有するレジストパターン72を形成した。このときのレジストの膜厚は8μmとした。
【0146】
そして、同図(e)に示すように、シリコン基板61のノズル板接合面側のシリコン窒化膜63a、シリコン酸化膜63aを埋め込み、I CPドライエッチャーによりシリコンエッチングのためのマスク73を形成して、I CPドライエッチャーを使用して、シリコン基板61にノズル連通路5を形成するための深堀74を形成した。ここでは、深堀74の深さを300μmとした。また、I CPエッチングはノズル板接合面側から行っているが、振動板接合面側から行うこともできる。
【0147】
次いで、同図(b)に示すように、マスク73を除去して、水酸化カリウム水溶液によりシリコン基板61の異方性エッチングを行ってノズル連通路5となる連通管75を形成した。
【0148】
その後、同図(c)に示すように、ウエットエッチングにより、ノズル板との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる凹部(肉抜き部)45を形成するための開口66と、擬似液室46を形成するための開口68に対応するシリコン酸化膜62aを除去するとともに、加圧液室6及びインク供給路(インク流動部)7を形成するための開口70と、振動板2との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる凹部(肉抜き部)47を形成するための開口71に対応するシリコン酸化膜62bを除去する。
【0149】
そして、同図(d)に示すように、再度水酸化カリウム水溶液により、シリコン基板61の異方性エッチングを行って、シリコン基板61に、加圧液室6となる凹部76、この凹部76に連続し、インク供給路7となる凹部77(仮想線で図示した部分)、凹部45、47、擬似液室46となる各凹部を形成した。ここで、加圧液室部形成時のシリコンの異方性エッチングは、水酸化カリウム水溶液として溶液濃度30%のものを用いて、処理温度85℃で行った。
【0150】
この場合、加圧液室6となる凹部76とインク供給路7となる凹部77は一度の異方性エッチングで凹部を形成するので略等しい深さとなっている。同様に、加圧液室6となる凹部76と擬似液室46となる凹部の深さは一度の異方性エッチングで凹部を形成するので略等しい深さとなっている。
【0151】
そして、同図(e)に示すように、シリコン窒化膜63a、63b及びシリコン酸化膜62a、62bを除去し、その後図示しないが、耐インク接液膜(耐液性薄膜)10としてシリコン酸化膜を1μmの厚さで形成して、インクジェット用流路板1を得た。
【0152】
このように、上記実施形態ではノズル板接合面と振動板接合面との接合面積がほぼ同じになるように、またノズル接合面の形状は加圧液室の形状に似た形状の擬似液室形状になるようにパターニングを行ったので、流路板1は接液保護膜(耐液性薄膜)形成時でも反り量を1μm以下に抑えることができた。
【0153】
そして、この製造工程においては、液室形成部材をシリコンから形成し、ドライエッチングによる深堀と異方性ウェットエッチングとを併用して、必要なノズル連通路や加圧液室などの流路を形成したので、精度よく加圧液室を形成することが可能となり、吐出特性にばらつきのないヘッドが得られた。
【0154】
また、シリコン酸化膜/シリコン窒化膜の積層膜をマスクとして異方性ウェットエッチングを行ったので、シリコン窒化膜膜、シリコン酸化膜をそれぞれエッチングのマスクとして使用することでき、寸法制御性に優れたヘッドが得られる。
【0155】
そして、この場合、各加圧液室6を分離するための隔壁6aの幅と液室高さの比を3以上6以下にするように、各加圧液室6及び隔壁6aを形成した。ここでは、液室間隔壁幅D=130μm、液室高さH1=100μmとした。
【0156】
このように液室間隔壁幅と液室高さの比(高さ/幅)を6以下にすることにより、液滴吐出時に隣接の加圧液室からの影響を受けにくくなるため、単発ビットのみで液滴を吐出する場合と複数ビット同時に液滴を吐出する場合とでの液滴吐出特性の大きな差の発生を抑えることができる。また、液室間隔壁幅と液室高さの比(高さ/幅)を3以上にすることにより、ノズルへの液供給量の不足を無くすことができ、特に普通紙高画質印刷のための高粘度インクを使用したときにおいても、高周波吐出時の液滴の供給を十分に行うことが可能となり、普通紙による高速、高画質画像の形成を行うことができるようになる。
【0157】
このように形成した流路板を用いることで、高性能、高信頼性のインクジェットヘッドが得られる。
【0158】
次に、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法に係る第2実施形態の製造工程について図18及び図19を参照して説明する。
先ず、図18(a)に示すように、厚さ400μmで面方位(110)のシリコン基板(シリコンウエハを用いる。)91を用意し、このシリコン基板91両表面に厚さ1.0μmのシリコン酸化膜92a、92bを形成した。
【0159】
なお、使用するウエハの種類は両面研磨ウエハ、両面未研磨ウエハ、片面未研磨ウエハのいずれのウエハであっても良く、また比抵抗も揃っている必要はなく、例えばここでは、比抵抗0.1−100Ωcmのウエハを使用している。また、ウエハの厚さは連通管(ノズル連通路)5の高さを規定することになるので、前述したように高粘度インクを使用することから600μm以下の厚さのものを使用している。
【0160】
次いで、同図(b)に示すように、シリコン基板91のノズル板接合面側のシリコン酸化膜92a表面に、ノズル連通路5を形成するための開口と、ノズル板3との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる凹部(肉抜き部)45及び擬似液室46を形成するための各開口とを有するレジストパターン94を形成した。
【0161】
そして、ドライエッチングを行って、シリコン酸化膜92aに、ノズル連通路5を形成するための開口95と、ノズル板3との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる凹部45を形成するための開口96及び擬似液室46を形成するための開口98とをパターニングする。なお、擬似液室46を形成するための開口98は加圧液室6とほぼ同じ平面形状に形成した。
【0162】
その後、同図(c)に示すように、シリコン基板91の振動板接合面側のシリコン酸化膜92b表面に、加圧液室6及びインク供給路7を形成するための開口と振動板2との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる凹部(肉抜き部)47を形成するための開口とを有するレジストパターン102を形成し、ドライエッチングを行ってシリコン酸化膜92bに加圧液室6及びインク供給路7を形成するための開口103と振動板2との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる凹部47を形成するための開口104とをパターニングする。
【0163】
その後、同図(d)に示すように、レジストでシリコン酸化膜92aの開口95、96、98を埋め込み、ノズル連通路5を形成するための開口105を有するレジストパターン106を形成した。このときのレジストの膜厚は8μmとした。
【0164】
そして、図14(a)に示すように、レジストパターン106をマスクとしてI CPドライエッチャーを使用して、シリコン基板91にノズル連通路5を形成するための掘り込み107を形成した。ここでは、I CPエッチングはノズル板接合面側から行っている。
【0165】
次いで、同図(b)に示すように、レジストパターン106を除去して、水酸化カリウム水溶液によりシリコン基板91の異方性エッチングを行ってノズル連通路5となる貫通孔115、加圧液室6となる凹部116、インク供給路7となる凹部117、凹部45、47、擬似液室46となる凹部を形成した。ここで、加圧液室部形成時のシリコンの異方性エッチングは、水酸化カリウム水溶液として溶液濃度30%のものを用いて、処理温度85℃で行った。
【0166】
そして、同図(d)に示すように、シリコン酸化膜92a、92bを除去し、その後図示しないが、耐インク接液膜(耐液性薄膜)10としてシリコン酸化膜を1μmの厚さで形成して、インクジェット用流路板1を得た。
【0167】
このように、この製造工程においては、液室形成部材をシリコンから形成し、ドライエッチングによる深堀と異方性ウェットエッチングとを併用して、必要なノズル連通路や加圧液室などの流路を形成したので、精度よく加圧液室を形成することが可能となり、吐出特性にばらつきのないヘッドが得られた。
【0168】
そして、シリコン酸化膜をマスクとして異方性ウェットエッチングを行ったので、マスク作製工程を非常に簡単でかつ短工期に行うことができるので、低コスト化を図れる。なお、その他の作用効果は前記第1実施形態と同様である。
【0169】
次に、本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法に係る第3実施形態の製造工程について図20及び図21を参照して説明する。
先ず、図19(a)に示すように、厚さ400μmで面方位(110)のシリコン基板(シリコンウエハを用いる。)121を用意し、このシリコン基板121両表面に厚さ0.15μmのシリコン酸化膜122a、122bをLP−CVDで形成した。
【0170】
なお、使用するウエハの種類は両面研磨ウエハ、両面未研磨ウエハ、片面未研磨ウエハのいずれのウエハであっても良く、また比抵抗も揃っている必要はなく、例えばここでは、比抵抗0.1−100Ωcmのウエハを使用している。また、ウエハの厚さは連通管(ノズル連通路)5の高さを規定することになるので、前述したように高粘度インクを使用することから600μm以下の厚さのものを使用している。
【0171】
次いで、同図(b)に示すように、シリコン基板121のノズル板接合面側のシリコン窒化膜122a表面に、ノズル連通路5を形成するための開口と、ノズル板3との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる凹部(肉抜き部)45及び擬似液室46を形成するための各開口とを有するレジストパターン124を形成した。
【0172】
そして、ドライエッチングを行って、シリコン窒化膜122aに、ノズル連通路5を形成するための開口125と、ノズル板3との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる凹部45を形成するための開口126及び擬似液室46を形成するための開口128とをパターニングする。なお、擬似液室26を形成するための開口128は加圧液室6とほぼ同じ平面形状に形成した。
【0173】
その後、同図(c)に示すように、シリコン基板121の振動板接合面側のシリコン窒化膜122b表面に、加圧液室6及びインク供給路7を形成するための開口と振動板2との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる凹部(肉抜き部)47を形成するための開口とを有するレジストパターン132を形成し、ドライエッチングを行ってシリコン窒化膜122bに加圧液室6及びインク供給路7を形成するための開口133と振動板2との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる凹部47を形成するための開口134とをパターニングする。
【0174】
その後、同図(d)に示すように、レジストでシリコン窒化膜122aの開口125、126、128を埋め込み、ノズル連通路5を形成するための開口135を有するレジストパターン136を形成した。このときのレジストの膜厚は8μmとした。
【0175】
そして、図16(a)に示すように、レジストパターン136をマスクとしてI CPドライエッチャーを使用して、シリコン基板121にノズル連通路5を形成するための掘り込み137を形成した。ここでは、I CPエッチングはノズル板接合面側から行っている。
【0176】
次いで、同図(b)に示すように、レジストパターン136を除去して、水酸化カリウム水溶液によりシリコン基板121の異方性エッチングを行ってノズル連通路5となる貫通孔145、加圧液室6となる凹部146、インク供給路7となる凹部147、凹部45、47、擬似液室46となる凹部を形成した。ここで、加圧液室部形成時のシリコンの異方性エッチングは、水酸化カリウム水溶液として溶液濃度30%のものを用いて、処理温度85℃で行った。
【0177】
そして、同図(d)に示すように、シリコン窒化膜122a、122bを除去し、その後図示しないが、耐インク接液膜(耐液性薄膜)10としてシリコン酸化膜を1μmの厚さで形成して、インクジェット用流路板1を得た。
【0178】
このように、この製造工程においては、シリコン窒化膜をマスクとして異方性ウェットエッチングを行ったので、マスク膜厚を薄くすることが可能となり、エッチング時に生じるCDロスを抑えることができ、寸法制御性を向上することが可能となる。また、マスク作製工程が非常に簡単かつ短工期のプロセスであり、低コスト化を図れる。その他の作用効果は前記第1実施形態と同様である。
【0179】
次に、本発明に係るインクジェットヘッドとインクタンクとを一体化したインクカートリッジについて図22を参照して説明する。
このインクカートリッジ(インクタンク一体型ヘッド)200は、ノズル孔201等を有する上記実施形態のインクジェットヘッド202と、このインクジェットヘッド202に対してインクを供給するインクタンク203とを一体化したものである。
【0180】
このようにインクタンク一体型のヘッドの場合、ヘッドの信頼性はただちに全体の信頼性につながるので、上述したように滴噴射特性のバラツキが少なく、噴射不良が生じないインクジェットヘッドを一体化することで、全体の歩留まりが向上して低コスト化を図れ、また、信頼性が向上する。
【0181】
次に、本発明に係る液滴吐出ヘッドからなるインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置の一例について図23及び図24を参照して説明する。なお、図23は同記録装置の斜視説明図、図24は同記録装置の機構部の側面説明図である。
【0182】
このインクジェット記録装置は、記録装置本体211の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載した本発明に係るインクジェットヘッドからなる記録ヘッド、記録ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印字機構部212等を収納し、装置本体211の下方部には前方側から多数枚の用紙213を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)214を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙213を手差しで給紙するための手差しトレイ215を開倒することができ、給紙カセット214或いは手差しトレイ215から給送される用紙213を取り込み、印字機構部212によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ216に排紙する。
【0183】
印字機構部212は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド221と従ガイドロッド222とでキャリッジ223を主走査方向(図24で紙面垂直方向)に摺動自在に保持し、このキャリッジ223にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する本発明に係る液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドからなるヘッド224を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。またキャリッジ223にはヘッド224に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ225を交換可能に装着している。なお、上述したインクタンク一体型ヘッドである本発明に係るインクカートリッジを搭載するようにすることもできる。
【0184】
インクカートリッジ225は上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。
【0185】
また、記録ヘッドとしてここでは各色のヘッド224を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
【0186】
ここで、キャリッジ223は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド221に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド222に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ223を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ227で回転駆動される駆動プーリ228と従動プーリ229との間にタイミングベルト230を張装し、このタイミングベルト230をキャリッジ223に固定しており、主走査モーター227の正逆回転によりキャリッジ223が往復駆動される。
【0187】
一方、給紙カセット214にセットした用紙213をヘッド224の下方側に搬送するために、給紙カセット214から用紙213を分離給装する給紙ローラ231及びフリクションパッド232と、用紙213を案内するガイド部材233と、給紙された用紙213を反転させて搬送する搬送ローラ234と、この搬送ローラ234の周面に押し付けられる搬送コロ235及び搬送ローラ234からの用紙213の送り出し角度を規定する先端コロ236とを設けている。搬送ローラ234は副走査モータ237によってギヤ列を介して回転駆動される。
【0188】
そして、キャリッジ223の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ234から送り出された用紙213を記録ヘッド224の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材239を設けている。この印写受け部材239の用紙搬送方向下流側には、用紙213を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ241、拍車242を設け、さらに用紙213を排紙トレイ216に送り出す排紙ローラ243及び拍車244と、排紙経路を形成するガイド部材245,246とを配設している。
【0189】
記録時には、キャリッジ223を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド224を駆動することにより、停止している用紙213にインクを吐出して1行分を記録し、用紙213を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙213の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙213を排紙する。
【0190】
また、キャリッジ223の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、ヘッド224の吐出不良を回復するための回復装置247を配置している。回復装置247はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ223は印字待機中にはこの回復装置247側に移動されてキャッピング手段でヘッド224をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
【0191】
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド224の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0192】
このように、このインクジェット記録装置においては本発明を実施したインクジェットヘッドを搭載しているので、信頼性が高く、長期にわたり、安定したインク滴吐出特性が得られて、高画質記録を行うことができる。
【0193】
なお、上記実施形態においては、本発明に係る液滴吐出ヘッドをインクジェットヘッドに適用したが、インク以外の液体の滴、例えば、パターニング用の液体レジストを吐出する液滴吐出ヘッド、遺伝子分析試料を吐出する液滴吐出ヘッドなどにも適用することできる。また、上記各実施形態においては圧電素子を用いるヘッドで説明したが、前述したようなサーマル型、あるいは静電型のヘッドにも同様に適用できる。
【0194】
また、上記実施形態においては、本発明のインクを使用する液滴吐出ヘッドに本発明を適用した例を説明したが、使用するインクは本発明のインク限るものではなく、また、高粘度インク以外のインクを使用する液滴吐出ヘッドにも同様に適用できる。
【0195】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る液滴吐出ヘッドによれば、加圧液室間の隔壁の幅と加圧液室の高さの比(高さ/幅)が3以上6以下である構成としたので、滴吐出特性のバラツキが低減し、ノズルへの液供給量の不足を防止することができて、高速、高画質記録が可能になり、特に、高粘度液体を用いて高速で高い画像品質の普通紙印刷を行うことができるようになる。
【0196】
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法によれば、液室形成部材をシリコンで形成した本発明に係る液滴吐出ヘッドを製造する製造方法であって、液室形成部材はドライエッチングによる深堀又はドライエッチングによる深堀と異方性ウェットエッチングとを併用して形成する構成としたので、低コストで信頼性の高いヘッドを得ることができる。
【0197】
本発明に係るインクカートリッジによれば、本発明に係る液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドとインクタンクを一体化したので、滴吐出特性のバラツキが低減し、ノズルへの液供給量の不足を防止することができて、高速で高い画像品質で画像を記録できるようになる。
【0198】
本発明に係るインクジェット記録装置によれば、インクジェットヘッドが本発明に係る液滴吐出ヘッドである構成としたので、高速で高品質画像を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液滴吐出ヘッドの実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視説明図
【図2】同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図
【図3】同ヘッドの液室短手方向に沿う要部断面説明図
【図4】同ヘッドの要部平面説明図
【図5】同ヘッドの流路形成部材の断面説明図
【図6】同流路形成部材のノズル板接合面側の平面説明図
【図7】同流路形成部材の振動板接合面側の平面説明図
【図8】同ヘッドの流路形成部材のインク供給路(インク流動部)の説明に供する平面説明図
【図9】インク供給路の長さに対する噴射速度のバラツキの関係の説明に供する説明図
【図10】同ヘッドの流路形成部材の液室間隔壁幅と液室高さの説明に供する断面説明図
【図11】液室間隔壁のアスペクト比に対するシングル/マルチ噴射速度差の説明に供する説明図
【図12】液室間隔壁のアスペクト比に対する高周波噴射時の噴射不良率の説明に供する説明図
【図13】同ヘッドの流路形成部材の連通管隔壁幅、連通管隔壁長さ、連通管隔壁高さの説明に供する断面説明図
【図14】連通管隔壁の幅と長さの比に対するシングル/マルチ噴射速度差の説明に供する説明図
【図15】連通管隔壁高さに対する高周波噴射時の噴射不良率の説明に供する説明図
【図16】本発明に係る製造方法の第1実施形態の製造工程を説明する説明図
【図17】図16に続く工程を説明する説明図
【図18】本発明に係る製造方法の第2実施形態の製造工程を説明する説明図
【図19】図18に続く工程を説明する説明図
【図20】本発明に係る製造方法の第3実施形態の製造工程を説明する説明図
【図21】図20に続く工程を説明する説明図
【図22】本発明に係るインクカートリッジの説明に供する斜視説明図
【図23】本発明に係る液滴吐出ヘッドを搭載したインクジェット記録装置の一例を示す斜視説明図
【図24】同記録装置の機構部の側面説明図
【符号の説明】
1…流路板、2…振動板、3…ノズル板、4…ノズル、5…ノズル連通路(連通管)、5a…連通管隔壁、6…加圧液室、6a…液室間隔壁、7…インク供給路(液体流動部)、8…共通液室、10…耐液性薄膜、12…圧電素子、13…ベース基板、61…シリコン基板、62a…シリコン酸化膜、63b…シリコン窒化膜、200…インクカートリッジ、214…記録ヘッド。

Claims (15)

  1. 液滴を吐出するノズルを形成したノズル形成部材と、前記ノズルが連通する加圧液室を形成する流路形成部材を備えた液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室間の隔壁の幅と加圧液室の高さの比(高さ/幅)が3以上6以下であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 請求項1に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記流路形成部材のノズル形成部材との接合面には前記加圧液室に似た形状の擬似液室が形成され、この擬似液室間の隔壁の幅と擬似液室の高さの比(高さ/幅)が3以上6以下であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  3. 請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記流路形成部材がシリコン基板から形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記流路形成部材にはこの流路形成部材の厚さ方向に前記加圧液室とノズルとの間を連通するノズル連通路を有し、複数のノズル連通路間の隔壁の幅と、この隔壁の加圧液室長手方向の長さとの比(長さ/幅)が8以下であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  5. 請求項4に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記ノズル連通路の高さが600μm以下であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室に連通して液体を供給する液体流動部を一つ設け、この液体流動部は前記加圧液室よりも幅が狭く、且つ、その長さが500μm以上であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  7. 請求項1ないし6のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室及び/又は液体流動部の壁面には酸化膜又は窒化チタン膜が形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  8. 請求項1ないし10のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記液体の粘度が5  cP(25℃)以上のインクであることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  9. 請求項8に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記インクは少なくとも、顔料、水溶性有機溶剤、炭素数8以上のポリオール又はグリコールエーテル及び水を含むことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  10. 請求項1ないし9のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを製造する製造方法であって、前記流路形成部材はシリコンのドライエッチングによる深堀で形成することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  11. 請求項1ないし9のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを製造する製造方法であって、前記流路形成部材はシリコンのドライエッチングによる深堀と異方性ウェットエッチングとを併用して形成することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  12. 請求項11に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、前記異方性ウエットエッチングはシリコン酸化膜/シリコン窒化膜の積層膜、又はシリコン酸化膜、若しくはシリコン窒化膜をマスクとして行うことを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  13. インク滴を吐出するインクジェットヘッドとこのインクジェットヘッドにインクを供給するインクタンクを一体化したインクカートリッジにおいて、前記インクジェットヘッドが請求項1ないし9のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドであることを特徴とするインクカートリッジ。
  14. インク滴を吐出させるインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドが請求項1ないし9のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドであることを特徴とするインクジェット記録装置。
  15. インク滴を吐出させるインクジェットヘッドにインクを供給するインクタンクを一体化したインクカートリッジを備えたインクジェット記録装置において、前記インクカートリッジが請求項13に記載のインクカートリッジであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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