JP2004080891A - 定電力電源装置、及びそれを用いてなるスパッタ装置 - Google Patents
定電力電源装置、及びそれを用いてなるスパッタ装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】定電力曲線となる特性を要求される電源において、単一の出力回路の場合に比べてトランスの必要な電力容量を小さくして、高効率の電源を実現すること。
【解決手段】ブリッジインバータの交流出力に互いに並列接続された第1、2の出力回路5A、5Bを接続し、出力回路5Aは、定格電力かつ定格電圧を出力できるよう設定されており、出力回路5Bは、定格電力のほぼ1/ N、定格出力電圧のほぼ1/ Mを出力できるよう設定されており、出力電圧が定格出力電圧の1/ M以上の範囲では出力回路5Aを通して全て負荷電力を供給し、出力電圧が定格出力電圧の1/ Mよりも小さい場合には、出力回路5Aと5Bとで負荷電力を供給し、第1と第2のトランス8A、8Bの電力容量の和を単一のトランスで構成した場合の電力容量に比べて小さくした定電力電源装置。
【選択図】 図1
【解決手段】ブリッジインバータの交流出力に互いに並列接続された第1、2の出力回路5A、5Bを接続し、出力回路5Aは、定格電力かつ定格電圧を出力できるよう設定されており、出力回路5Bは、定格電力のほぼ1/ N、定格出力電圧のほぼ1/ Mを出力できるよう設定されており、出力電圧が定格出力電圧の1/ M以上の範囲では出力回路5Aを通して全て負荷電力を供給し、出力電圧が定格出力電圧の1/ Mよりも小さい場合には、出力回路5Aと5Bとで負荷電力を供給し、第1と第2のトランス8A、8Bの電力容量の和を単一のトランスで構成した場合の電力容量に比べて小さくした定電力電源装置。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、直流スパッタ装置に使用されるスパッタ電源など、広範囲な定電力出力範囲を必要とする負荷に給電するのに適した定電力電源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、直流スパッタ装置は、真空チャンバ内にアルゴンなどの不活性ガスを導入し、ターゲット電極に数100Vの負極性電圧を印加してプラズマ放電を発生させることにより不活性ガスを正イオン化し、この正イオンを加速してターゲット表面に衝突させてターゲット材料を蒸発させ、この蒸気を半導体表面、光ディスクなどの基板上に沈着させて前記ターゲット材料の薄膜を形成する薄膜形成装置である。真空又はガス中において、比較的低い電圧でプラズマ放電を発生させるスパッタ装置のスパッタ用電源は、広範囲の定電力出力範囲が要求される。
【0003】図7は、一般的な20kWのスパッタ用電源の出力特性の一例を示す。このようなスパッタ用電源では、例えば、定格電圧が1000Vで、そのとき供給可能な電流が20Aであり、しかも、出力電圧が300Vのときには、67Aの電流を供給できることが要求される。通常の電源装置では、1000V−20Aで電源を設計すると、回路方式にもよるが、300Vでの最大電流も高々30A程度であり、定格電圧1000Vとそれよりも低い300Vの両方で20kWを満足させることはできない。このため、トランスの2次巻線に中間電圧タップを設け、その中間電圧タップに切り替えると低電圧大電流となり、300V−67Aを出力可能にするようなタップ切り替え構成が一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、タップ切り替えは、メーカーばかりでなく、ユーザーにとっても、電源のハウジングを開けて切り替え作業を行う手間がかかると同時に、切り替え作業時の残留電荷の放電を確認して安全性図らなければならないなど煩雑である。タップ切り替えの無い電源を実現する方法としては、あらかじめ、最大電流を供給できる大容量の電源を使用することである。例えば、定格出力が20kWの例では、出力電圧1000V−出力電流20Aを定格とする出力20kWの電源では、電流容量の関係から、出力電圧が300Vのときに、67Aの出力電流を供給することは不可能である。この場合には、出力電圧1000V−出力電流50Aを定格とする出力50kWの電源を使用しなければ、出力電圧が300Vのときに、67Aの出力電流を供給することができない。この出力50kWの電源を出力20kW電源と同一コストで実現することは困難である。例えば、トランスの大きさは、概略その最大電圧と最大電流の積に比例するので、最大電圧1000V、最大電流67Aでは、67kVAの大きさのトランスが必要となる。伝達電力20kWの3倍以上の大きさとなり、不経済である。
【0005】
【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するために、この発明は、直流電圧を交流電圧に変換するブリッジインバータと、該ブリッジインバータの交流出力に、共振インダクタンス手段と共振コンデンサとトランスと整流器の組み合わせからなる出力回路とを接続してなるコンバータであって、前記ブリッジインバータが共振周波数に関連する周波数でスイッチング動作を行う並列共振型コンバータ電源において、前記出力回路は、入力と出力の双方が互いに並列接続された第1の出力回路と第2の出力回路とからなり、前記第1の出力回路は、前記ブリッジインバータの交流出力に定格電力かつ定格電圧を出力できるよう設定された第1の共振インダクタンス手段と第1の共振コンデンサと第1のトランスと第1の整流器とからなり、前記第2の出力回路は、定格電力のほぼ1/ N、定格出力電圧のほぼ1/ Mを出力できるよう設定された第2の共振インダクタンスと第2の共振コンデンサと第2のトランスと第2の整流器とからなり、出力電圧が定格出力電圧のほぼ1/ M以上の範囲では前記第1の出力回路を通して全て負荷電力を供給し、出力電圧が定格出力電圧のほぼ1/ Mよりも小さい場合には、前記第1の出力回路と前記第2の出力回路とで負荷電力を供給することを第1の特徴とする定電力電源装置を提供するものである。
【0006】前述の課題を解決するために、この発明の第2の特徴は、請求項1において、前記1/N及び1/Mは、1/3ないし2/3の範囲内、好ましくはほぼ1/2であって、前記第1と第2のトランスの電力容量の和を、単一のトランスで構成した場合の電力容量に比べて小さくした定電力電源装置を提供するものである。
【0007】前述の課題を解決するために、この発明の第3の特徴は、請求項1において、前記ブリッジインバータは、複数のスイッチング半導体素子をフルブリッジ構成に接続してなるフルブリッジインバータであり、前記複数のスイッチング半導体素子には逆並列にダイオードが備えられている定電力電源装置を提供するものである。
【0008】前述の課題を解決するために、この発明の第4の特徴は、請求項1において、前記複数のスイッチング半導体素子の内で、前記フルブリッジインバータのオン期間を形成する一対の前記スイッチング半導体素子は、その一方が固定のオン幅で駆動され、他方がパルス幅制御されて、前記一方よりも早い時点でオフすることにより、前記一方がオン、前記他方がオフの期間に、前記第1及び/又は第2の共振インダクタンス手段のエネルギーを負荷側に供給する定電力電源装置を提供するものである。
【0009】前述の課題を解決するために、この発明の第5の特徴は、請求項1において、前記ブリッジインバータは、複数のスイッチング半導体素子と複数のコンデンサとをハーフブリッジ構成に接続してなるハーフブリッジインバータである定電力電源装置を提供するものである。
【0010】前述の課題を解決するために、この発明の第6の特徴は、請求項1において、並列接続された前記第1、第2の出力回路の出力端子には出力フィルタコンデンサが接続され、その出力フィルタコンデンサの両端には負荷であるスパッタ装置が接続される定電力電源装置を提供するものである。
【0011】前述の課題を解決するために、この発明の第7の特徴は、前記第1と第2のトランスの電力容量の和を、単一のトランスで構成した場合の電力容量に比べて小さくした請求項1の定電力電源装置を用いてなるスパッタ装置を提供するものである。。
【0012】
【発明を実施するための形態】本発明は、スパッタ電源のような定電力負荷性に適した特性を、タップ切り替えを行うことなく、ほぼ全出力範囲を満足でき、またトランスの電力容量の最小化を実現できるコンバータを提供することを主目的としている。図1は、本発明にかかるスパッタ電源を並列共振型コンバータで構成した回路を示す。
【0013】1は、単相又は3相の商用交流電源を整流して得られた直流電源を示す。3相400V入力の場合、直流電源1の出力電圧、つまり電圧型ブリッジインバータ2の直流入力電圧は約530Vであり、そのブリッジインバータ2は、その約530Vの直流入力電圧を高周波交流に変換する。ブリッジインバータ2は、スイッチング半導体素子として用いられる4個のIGBT3A−3Dと、各IGBTに逆並列接続されたダイオード4A−4Dからなる。この実施例では、ブリッジインバータ2の交流出力側に第1の出力回路5Aと第2の出力回路5Bとが並列接続される。第1の出力回路5Aは、定格電力かつ最大出力電圧を出力できるよう設計された第1の共振インダクタンス6A、第1の共振コンデンサ7A、第1のトランス8A、第1のブリッジ整流器9Aの組み合わせからなる。第2の出力回路5Bは、定格電力のほぼ1/2よりも小さく、かつ定格出力電圧のほぼ1/2の出力電圧を出力できるよう設計された第2の共振インダクタンス6B、第2の共振コンデンサ7B、第2のトランス8B、第2のブリッジ整流器9Bの組み合わせからなる。ブリッジ整流回路9A、9Bは、それぞれ4個の整流ダイオードからなる。2つのブリッジ整流回路9A、9Bの負出力はフィルタコンデンサ10に並列接続され、さらに負荷であるスパッタ装置11に接続される。また、12はIGBT3A−3Dの制御回路であり、IGBT3A―3Dを一定周波数で、そのオン時間比率をパルス幅変調(PWM)で制御する。
【0014】第1の制御方法では、ブリッジインバータ2のIGBT3A−3Dは、高周波、例えば15kHzでスイッチングし、半周期33μsの90%程度である期間30μsを最大オン時間とする、パルス幅変調(PWM)で制御される。このとき、上下アームのIGBT3Aと3D、又はIGBT3Bと3Cに同じPWM信号が送られ、同時にオン・オフする。これらIGBT3A−3Dのスイッチングにより、直流電圧はブリッジインバータ2で15kHzの高周波交流に変換される。トランス8A又は8Bで1000V程度のスパッタリングに適当な電圧に変圧され、ブリッジ整流器9A又は9Bとフィルタコンデンサ11で直流化され、スパッタ装置12に加えられる。
【0015】並列共振型コンバータは、出力回路5Aを例にとれば、ブリッジインバータ2の交流出力に、直列に共振インダクタンス6Aと共振コンデンサ7Aを接続し、コンデンサ7Aと並列にトランス8Aの1次巻線N1を接続し、トランス2次巻線N2に整流回路9Aを接続したものである。なお、図1では、共振コンデンサ7Aをトランス8Aの1次側に接続しているが、実際には、2次側に接続することもできる。出力電力は、共振インダクタンス6Aのインダクタンス値をL、共振コンデンサ7Aの容量値をCとすれば、共振インピーダンスZ=(L/C)1/2 に反比例し、ブリッジインバータ2のスイッチング周波数fsに関連する共振周波数fr=1/2π(LC)1/2 の両条件を満足するLCの組み合わせで決定される。通常fr=1.5fsである。この内容の詳細は、本発明者らの発明に係る下記特許文献1に詳述されているので、詳しい説明は省略するが、特徴としては、共振インダクタンス6A、共振コンデンサ7AによりIGBTのスイッチング電流はほぼ共振電流波形となり、またトランス8Aには、共振作用により電源電圧の1.2〜1.8倍の電圧が加えることができる。制御は一般的で容易なPWM制御、すなわちブリッジインバータ2のIGBT3A〜3Dのオン時間比率で行えることである。
〔特許文献1〕特許第1928584号(特公平6−48904号)
【0016】次に、第1の実施例の具体的例を説明する。第1の出力回路5Aでは、直流入力電圧530Vが並列型共振インバータの共振作用により1.6倍程度上昇して、トランス8Aの1次巻線に加わるとし、定格出力電圧1000Vを出力できるように、1次巻線対2次巻線(N2/N1)の巻数比nを1.2に設定する。また、共振インダクタンス6Aと共振コンデンサ7Bが定格電力20kWを出力できることと、共振周波数fr=1/2π(LC)1/2 がブリッジインバータ2のスイッチング周波数に関連することの双方の条件を満足するLCの組み合わせで決定される。第2の出力回路5Bのトランス8Bは、最大出力電圧500Vを出力できるよう1次巻線と2次巻線との巻数比nが0.6に設定される。共振インダクタンス6Bと、共振コンデンサ7Bは定格電力の1/2である5kWを出力できることと、共振周波数fr=1/2π(LC)1/2 がブリッジインバータ2のスイッチング周波数に関連することの両条件を満足するLCの組み合わせで決定される。
【0017】第1の出力回路5Aと第2の出力回路5Bの各部品の定数は、例えば、第1の出力回路5Aでは、共振インダクタンス6Aが110μH、共振コンデンサ7Aが450nF、トランス8Aの巻数比nが1.2である。また、第2の出力回路5Bでは、共振インダクタンス6Bが220μH、共振コンデンサ7Bが225nF、トランス8Bの巻数比nが0.6である。
【0018】次に、定格出力電圧1000V、定格電流20Aの20kW定格の定電力電源の実施例についての機能と動作について説明する。本発明では、前述のような条件の2つの出力回路5A、5Bを並列に設けたことにより、出力電圧の高い範囲では、第1の出力回路5Aがほとんどの電力(最大20kW)を伝達し、第2の出力回路5Bはブリッジ整流回路9Bが逆バイアスされてカットオフされ、無負荷状態となる。したがって、出力電圧が500Vを越える範囲では、実質的に第1の出力回路5Aを通して負荷電力のすべてが供給される。一方、出力電圧が低い領域、例えば、出力電圧が定格出力電圧の1/2の500Vでは、第1の出力回路5Aは、出力電圧が500Vで、定格電流20Aを供給し、10kWの出力を分担する。他方、第2の出力回路5Bは出力電圧500V、最大出力電流24Aの能力を有するよう設計されているので、出力電圧500V、出力電流20Aの10kWの出力を分担する。すなわち、第1の出力回路5Aと第2の出力回路5Bが共同して20kWの電力伝達する。ここでトランス8A、8Bの大きさを検討すると、トランス8Aは1000V、20Aでは、前述したように定格電流20Aの約1.5倍の電流容量をもつよう設計されるから、電流を30Aとして30kVAになり、また、トランス8Bは電圧500V、電流24A(同様に1.5倍で36Aとなる)で18kVAとなり、合計48kVAとなる。伝達電力20kWの2.4倍となり、単一トランスで設計した場合には前述のように67kVAが必要であったから、これに比べて72%程度と小さくなることが分かる。なお、技術思想の説明の都合上、第1と第2の出力回路5A、5Bの電力分担を単純な数字で説明したが、実際には多少複雑になる。
【0019】なお、以上の実施例では、第2の出力回路5Bは、説明を分かりやすくするため、及び最も好ましい値として、電源全体の定格電力のほぼ1/2、定格出力電圧のほぼ1/2の定格電力と定格出力電圧を呈するものとして説明したが、1/3〜2/3の範囲ならば、図7に示したような要求される定電力出力特性を呈することができ、また単一のトランスで構成した場合よりも2個のトランスの和の必要なkVAを小さくすることができる。第2の出力回路5Bの定格電力に対する割合と、定格出力電圧に対する割合とは必ずしも等しくなくても良い。
【0020】図2において、波形Iinv は1000V−20Aの出力でのブリッジインバータ2の出力電流(2つの出力回路に分流する前)、Ia は第1の出力回路5Aの入力電流、すなわちインダクタンス7Aの電流、Ib は第2の出力回路5Bの入力電流、すなわちインダクタンス7Bの電流を示す。
図3の波形Iinv 、Ia 、Ib は300V−67Aの出力での同様な電流波形を示す。
図4は、図1の実施例回路のIGBTを第2の制御方法で制御するIGBTのゲート信号を示す。
【0021】前記実施例では、上下アームのIGBT3Aと3D、又はIGBT3Bと3Cに同じPWM信号を送り、同時にオン・オフさせる制御を採用した。これに対して、この第2の制御方法では、15kHzで説明すると、上アームのIGBT3A、3Bは最大の固定パルス幅30μsでオンオフさせるものとし、下アームのIGBT3C、3DのみPWM制御する。上記第1の制御方法では、上下アームのIGBT3Aと3D、又はIGBT3Bと3Cが同時にオフするので、共振インダクタンス6A、6Bの電流がほとんど電源に帰還する。したがって、2次側で同一の整流電流、すなわち、平均電流を流すためには、電流ピーク値が増加せざるを得ない。各IGBT3A〜3Dにそれぞれ逆並列に接続されたダイオード4A〜4Dの電流、すなわち電源帰還する電流は無効電流であり、出力には寄与しない。この無効電流が大きい分だけ、IGBTの順電流のピーク値が大きくなる。
【0022】この第2の制御方法によれば、下アームのIGBT3C、又は3Dが先行してオフした後、上アームのIGBT3A、又は3Bがその30μs間、まだオンしているので、共振インダクタンスの電流がIGBT3A、3Bを通して回路を循環して負荷電力となり、電源に帰還する電流が減少する。すなわち、第2の制御方法によれば、無効電流が減少し、順電流が減少する効果があり、IGBTによる電力損失を低減できる。さらに、この制御方法によれば、電源電圧上昇時におけるIGBTを流れる電流の増加をも抑制できる。
【0023】通常の商用交流電源を入力とするコンバータは、定格入力電圧の−10%から+10%まで入力変動に対して定格出力を補償しなければならない。すなわち、設計上では最低入力電圧が定格入力電圧の−10%に対して、20%の電圧上昇がある。第2の制御方法によれば、入力電圧上昇時にインダクタンス電流のdi/dtが大きくなっても、下アームのIGBTのオン時間が減少して電流ピークを抑制しながら、インダクタンス電流の循環で負荷電流を供給するので、IGBT電流の増加が少ない。
【0024】図5は、入力電源電圧が530Vで、1000V−20Aの定格出力でのインバータ出力電流Iinv 、第1の出力回路5Aの入力電流、すなわちインダクタンス7Aの電流Ia 、第2の出力回路5Bの入力電流、すなわちインダクタンス7Bの電流Ib を示す。
図6は入力電源電圧が20%上昇した630Vで、1000V−20Aの定格出力でのインバータ出力電流Iinv 、第1の出力回路5Aの入力電流Ia 、第2の出力回路5の入力電流Ib を示す。
図5と図6とを比較すると、図6では入力電源電圧が20%上昇したにも関わらず、ブリッジインバータ2の出力電流Iinv のピーク値が増大していないことが分かる。
【0025】また、この発明では、それぞれ共振回路を備えた第1の出力回路5Aと第2の出力回路5Bとを並列接続しているので、動作中、それぞれの出力回路における共振回路が同一の共振周波数で共振を行っているが、部品のバラツキなどにより位相が若干ずれることが多い。この場合には、第2の出力回路5Bを流れる電流のうち、位相のずれた電流が第1の出力回路5Aを流れる電流に重畳されるために、その分だけスイッチング半導体素子を流れる電流が少なくなり、スイッチング半導体素子にとって有利になる。
【0026】以上の説明ではフルブリッジインバータとして説明したが、フルブリッジインバータに代えてコンデンサとスイッチング半導体素子とをブリッジ構成にしたハーフブリッジインバータを用いることができる。ハーフブリッジインバータの構成は、例えば、図1のIGBT3A、3C又は3B、3Dをそれぞれコンデンサに代えてブリッジ構成にしたものであり、スイッチング半導体素子3B、3D又は3A、3Cをパルス幅制御して交互にスイッチングさせれば良い。また、実施例ではスイッチング半導体素子としてIGBTを用いたが、MOSFETなど他のスイッチング半導体素子でも勿論よい。
【0027】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、1つのフルブリッジインバータ、又はハーフブリッジインバータの交流出力側に、定格電圧、定格電力で設計された第1の出力回路と、定格電圧の1/Nの電圧と定格電力の1/Mで設計された第2の出力回路を並列接続したことにより、スパッタ電源など定電力曲線となる特性を要求される電源を、単一の出力回路の場合に比べてトランスの電力容量を小さくすることができ、高効率の電源を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる定電力電源装置の実施例を示す図である。
【図2】本発明にかかる実施例の電流波形を示す図である。
【図3】本発明にかかる実施例の別の電流波形を示す図である。
【図4】本発明にかかる実施例におけるスイッチング半導体素子のゲート信号を示す図である。
【図5】本発明にかかる実施例における第1の制御方法によるインバータの電流波形を示す図である。
【図6】本発明にかかる実施例における第2の制御方法によるインバータの電流波形を示す図である。
【図7】スパッタ電源の一般的な出力電圧−電流特性を示す図である。
【符号の説明】
1・・・入力側の直流電源
2・・・ブリッジインバータ
3A−3D・・スイッチング半導体素子
5A・・第1の出力回路
5B・・第2の出力回路
6A、6B・・共振インダクタンス
7A、7B・・共振コンデンサ
8A、8B・・トランス
9A、9B・・整流回路
11・・・負荷であるスパッタ装置
12・・・制御回路
【産業上の利用分野】本発明は、直流スパッタ装置に使用されるスパッタ電源など、広範囲な定電力出力範囲を必要とする負荷に給電するのに適した定電力電源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、直流スパッタ装置は、真空チャンバ内にアルゴンなどの不活性ガスを導入し、ターゲット電極に数100Vの負極性電圧を印加してプラズマ放電を発生させることにより不活性ガスを正イオン化し、この正イオンを加速してターゲット表面に衝突させてターゲット材料を蒸発させ、この蒸気を半導体表面、光ディスクなどの基板上に沈着させて前記ターゲット材料の薄膜を形成する薄膜形成装置である。真空又はガス中において、比較的低い電圧でプラズマ放電を発生させるスパッタ装置のスパッタ用電源は、広範囲の定電力出力範囲が要求される。
【0003】図7は、一般的な20kWのスパッタ用電源の出力特性の一例を示す。このようなスパッタ用電源では、例えば、定格電圧が1000Vで、そのとき供給可能な電流が20Aであり、しかも、出力電圧が300Vのときには、67Aの電流を供給できることが要求される。通常の電源装置では、1000V−20Aで電源を設計すると、回路方式にもよるが、300Vでの最大電流も高々30A程度であり、定格電圧1000Vとそれよりも低い300Vの両方で20kWを満足させることはできない。このため、トランスの2次巻線に中間電圧タップを設け、その中間電圧タップに切り替えると低電圧大電流となり、300V−67Aを出力可能にするようなタップ切り替え構成が一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、タップ切り替えは、メーカーばかりでなく、ユーザーにとっても、電源のハウジングを開けて切り替え作業を行う手間がかかると同時に、切り替え作業時の残留電荷の放電を確認して安全性図らなければならないなど煩雑である。タップ切り替えの無い電源を実現する方法としては、あらかじめ、最大電流を供給できる大容量の電源を使用することである。例えば、定格出力が20kWの例では、出力電圧1000V−出力電流20Aを定格とする出力20kWの電源では、電流容量の関係から、出力電圧が300Vのときに、67Aの出力電流を供給することは不可能である。この場合には、出力電圧1000V−出力電流50Aを定格とする出力50kWの電源を使用しなければ、出力電圧が300Vのときに、67Aの出力電流を供給することができない。この出力50kWの電源を出力20kW電源と同一コストで実現することは困難である。例えば、トランスの大きさは、概略その最大電圧と最大電流の積に比例するので、最大電圧1000V、最大電流67Aでは、67kVAの大きさのトランスが必要となる。伝達電力20kWの3倍以上の大きさとなり、不経済である。
【0005】
【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するために、この発明は、直流電圧を交流電圧に変換するブリッジインバータと、該ブリッジインバータの交流出力に、共振インダクタンス手段と共振コンデンサとトランスと整流器の組み合わせからなる出力回路とを接続してなるコンバータであって、前記ブリッジインバータが共振周波数に関連する周波数でスイッチング動作を行う並列共振型コンバータ電源において、前記出力回路は、入力と出力の双方が互いに並列接続された第1の出力回路と第2の出力回路とからなり、前記第1の出力回路は、前記ブリッジインバータの交流出力に定格電力かつ定格電圧を出力できるよう設定された第1の共振インダクタンス手段と第1の共振コンデンサと第1のトランスと第1の整流器とからなり、前記第2の出力回路は、定格電力のほぼ1/ N、定格出力電圧のほぼ1/ Mを出力できるよう設定された第2の共振インダクタンスと第2の共振コンデンサと第2のトランスと第2の整流器とからなり、出力電圧が定格出力電圧のほぼ1/ M以上の範囲では前記第1の出力回路を通して全て負荷電力を供給し、出力電圧が定格出力電圧のほぼ1/ Mよりも小さい場合には、前記第1の出力回路と前記第2の出力回路とで負荷電力を供給することを第1の特徴とする定電力電源装置を提供するものである。
【0006】前述の課題を解決するために、この発明の第2の特徴は、請求項1において、前記1/N及び1/Mは、1/3ないし2/3の範囲内、好ましくはほぼ1/2であって、前記第1と第2のトランスの電力容量の和を、単一のトランスで構成した場合の電力容量に比べて小さくした定電力電源装置を提供するものである。
【0007】前述の課題を解決するために、この発明の第3の特徴は、請求項1において、前記ブリッジインバータは、複数のスイッチング半導体素子をフルブリッジ構成に接続してなるフルブリッジインバータであり、前記複数のスイッチング半導体素子には逆並列にダイオードが備えられている定電力電源装置を提供するものである。
【0008】前述の課題を解決するために、この発明の第4の特徴は、請求項1において、前記複数のスイッチング半導体素子の内で、前記フルブリッジインバータのオン期間を形成する一対の前記スイッチング半導体素子は、その一方が固定のオン幅で駆動され、他方がパルス幅制御されて、前記一方よりも早い時点でオフすることにより、前記一方がオン、前記他方がオフの期間に、前記第1及び/又は第2の共振インダクタンス手段のエネルギーを負荷側に供給する定電力電源装置を提供するものである。
【0009】前述の課題を解決するために、この発明の第5の特徴は、請求項1において、前記ブリッジインバータは、複数のスイッチング半導体素子と複数のコンデンサとをハーフブリッジ構成に接続してなるハーフブリッジインバータである定電力電源装置を提供するものである。
【0010】前述の課題を解決するために、この発明の第6の特徴は、請求項1において、並列接続された前記第1、第2の出力回路の出力端子には出力フィルタコンデンサが接続され、その出力フィルタコンデンサの両端には負荷であるスパッタ装置が接続される定電力電源装置を提供するものである。
【0011】前述の課題を解決するために、この発明の第7の特徴は、前記第1と第2のトランスの電力容量の和を、単一のトランスで構成した場合の電力容量に比べて小さくした請求項1の定電力電源装置を用いてなるスパッタ装置を提供するものである。。
【0012】
【発明を実施するための形態】本発明は、スパッタ電源のような定電力負荷性に適した特性を、タップ切り替えを行うことなく、ほぼ全出力範囲を満足でき、またトランスの電力容量の最小化を実現できるコンバータを提供することを主目的としている。図1は、本発明にかかるスパッタ電源を並列共振型コンバータで構成した回路を示す。
【0013】1は、単相又は3相の商用交流電源を整流して得られた直流電源を示す。3相400V入力の場合、直流電源1の出力電圧、つまり電圧型ブリッジインバータ2の直流入力電圧は約530Vであり、そのブリッジインバータ2は、その約530Vの直流入力電圧を高周波交流に変換する。ブリッジインバータ2は、スイッチング半導体素子として用いられる4個のIGBT3A−3Dと、各IGBTに逆並列接続されたダイオード4A−4Dからなる。この実施例では、ブリッジインバータ2の交流出力側に第1の出力回路5Aと第2の出力回路5Bとが並列接続される。第1の出力回路5Aは、定格電力かつ最大出力電圧を出力できるよう設計された第1の共振インダクタンス6A、第1の共振コンデンサ7A、第1のトランス8A、第1のブリッジ整流器9Aの組み合わせからなる。第2の出力回路5Bは、定格電力のほぼ1/2よりも小さく、かつ定格出力電圧のほぼ1/2の出力電圧を出力できるよう設計された第2の共振インダクタンス6B、第2の共振コンデンサ7B、第2のトランス8B、第2のブリッジ整流器9Bの組み合わせからなる。ブリッジ整流回路9A、9Bは、それぞれ4個の整流ダイオードからなる。2つのブリッジ整流回路9A、9Bの負出力はフィルタコンデンサ10に並列接続され、さらに負荷であるスパッタ装置11に接続される。また、12はIGBT3A−3Dの制御回路であり、IGBT3A―3Dを一定周波数で、そのオン時間比率をパルス幅変調(PWM)で制御する。
【0014】第1の制御方法では、ブリッジインバータ2のIGBT3A−3Dは、高周波、例えば15kHzでスイッチングし、半周期33μsの90%程度である期間30μsを最大オン時間とする、パルス幅変調(PWM)で制御される。このとき、上下アームのIGBT3Aと3D、又はIGBT3Bと3Cに同じPWM信号が送られ、同時にオン・オフする。これらIGBT3A−3Dのスイッチングにより、直流電圧はブリッジインバータ2で15kHzの高周波交流に変換される。トランス8A又は8Bで1000V程度のスパッタリングに適当な電圧に変圧され、ブリッジ整流器9A又は9Bとフィルタコンデンサ11で直流化され、スパッタ装置12に加えられる。
【0015】並列共振型コンバータは、出力回路5Aを例にとれば、ブリッジインバータ2の交流出力に、直列に共振インダクタンス6Aと共振コンデンサ7Aを接続し、コンデンサ7Aと並列にトランス8Aの1次巻線N1を接続し、トランス2次巻線N2に整流回路9Aを接続したものである。なお、図1では、共振コンデンサ7Aをトランス8Aの1次側に接続しているが、実際には、2次側に接続することもできる。出力電力は、共振インダクタンス6Aのインダクタンス値をL、共振コンデンサ7Aの容量値をCとすれば、共振インピーダンスZ=(L/C)1/2 に反比例し、ブリッジインバータ2のスイッチング周波数fsに関連する共振周波数fr=1/2π(LC)1/2 の両条件を満足するLCの組み合わせで決定される。通常fr=1.5fsである。この内容の詳細は、本発明者らの発明に係る下記特許文献1に詳述されているので、詳しい説明は省略するが、特徴としては、共振インダクタンス6A、共振コンデンサ7AによりIGBTのスイッチング電流はほぼ共振電流波形となり、またトランス8Aには、共振作用により電源電圧の1.2〜1.8倍の電圧が加えることができる。制御は一般的で容易なPWM制御、すなわちブリッジインバータ2のIGBT3A〜3Dのオン時間比率で行えることである。
〔特許文献1〕特許第1928584号(特公平6−48904号)
【0016】次に、第1の実施例の具体的例を説明する。第1の出力回路5Aでは、直流入力電圧530Vが並列型共振インバータの共振作用により1.6倍程度上昇して、トランス8Aの1次巻線に加わるとし、定格出力電圧1000Vを出力できるように、1次巻線対2次巻線(N2/N1)の巻数比nを1.2に設定する。また、共振インダクタンス6Aと共振コンデンサ7Bが定格電力20kWを出力できることと、共振周波数fr=1/2π(LC)1/2 がブリッジインバータ2のスイッチング周波数に関連することの双方の条件を満足するLCの組み合わせで決定される。第2の出力回路5Bのトランス8Bは、最大出力電圧500Vを出力できるよう1次巻線と2次巻線との巻数比nが0.6に設定される。共振インダクタンス6Bと、共振コンデンサ7Bは定格電力の1/2である5kWを出力できることと、共振周波数fr=1/2π(LC)1/2 がブリッジインバータ2のスイッチング周波数に関連することの両条件を満足するLCの組み合わせで決定される。
【0017】第1の出力回路5Aと第2の出力回路5Bの各部品の定数は、例えば、第1の出力回路5Aでは、共振インダクタンス6Aが110μH、共振コンデンサ7Aが450nF、トランス8Aの巻数比nが1.2である。また、第2の出力回路5Bでは、共振インダクタンス6Bが220μH、共振コンデンサ7Bが225nF、トランス8Bの巻数比nが0.6である。
【0018】次に、定格出力電圧1000V、定格電流20Aの20kW定格の定電力電源の実施例についての機能と動作について説明する。本発明では、前述のような条件の2つの出力回路5A、5Bを並列に設けたことにより、出力電圧の高い範囲では、第1の出力回路5Aがほとんどの電力(最大20kW)を伝達し、第2の出力回路5Bはブリッジ整流回路9Bが逆バイアスされてカットオフされ、無負荷状態となる。したがって、出力電圧が500Vを越える範囲では、実質的に第1の出力回路5Aを通して負荷電力のすべてが供給される。一方、出力電圧が低い領域、例えば、出力電圧が定格出力電圧の1/2の500Vでは、第1の出力回路5Aは、出力電圧が500Vで、定格電流20Aを供給し、10kWの出力を分担する。他方、第2の出力回路5Bは出力電圧500V、最大出力電流24Aの能力を有するよう設計されているので、出力電圧500V、出力電流20Aの10kWの出力を分担する。すなわち、第1の出力回路5Aと第2の出力回路5Bが共同して20kWの電力伝達する。ここでトランス8A、8Bの大きさを検討すると、トランス8Aは1000V、20Aでは、前述したように定格電流20Aの約1.5倍の電流容量をもつよう設計されるから、電流を30Aとして30kVAになり、また、トランス8Bは電圧500V、電流24A(同様に1.5倍で36Aとなる)で18kVAとなり、合計48kVAとなる。伝達電力20kWの2.4倍となり、単一トランスで設計した場合には前述のように67kVAが必要であったから、これに比べて72%程度と小さくなることが分かる。なお、技術思想の説明の都合上、第1と第2の出力回路5A、5Bの電力分担を単純な数字で説明したが、実際には多少複雑になる。
【0019】なお、以上の実施例では、第2の出力回路5Bは、説明を分かりやすくするため、及び最も好ましい値として、電源全体の定格電力のほぼ1/2、定格出力電圧のほぼ1/2の定格電力と定格出力電圧を呈するものとして説明したが、1/3〜2/3の範囲ならば、図7に示したような要求される定電力出力特性を呈することができ、また単一のトランスで構成した場合よりも2個のトランスの和の必要なkVAを小さくすることができる。第2の出力回路5Bの定格電力に対する割合と、定格出力電圧に対する割合とは必ずしも等しくなくても良い。
【0020】図2において、波形Iinv は1000V−20Aの出力でのブリッジインバータ2の出力電流(2つの出力回路に分流する前)、Ia は第1の出力回路5Aの入力電流、すなわちインダクタンス7Aの電流、Ib は第2の出力回路5Bの入力電流、すなわちインダクタンス7Bの電流を示す。
図3の波形Iinv 、Ia 、Ib は300V−67Aの出力での同様な電流波形を示す。
図4は、図1の実施例回路のIGBTを第2の制御方法で制御するIGBTのゲート信号を示す。
【0021】前記実施例では、上下アームのIGBT3Aと3D、又はIGBT3Bと3Cに同じPWM信号を送り、同時にオン・オフさせる制御を採用した。これに対して、この第2の制御方法では、15kHzで説明すると、上アームのIGBT3A、3Bは最大の固定パルス幅30μsでオンオフさせるものとし、下アームのIGBT3C、3DのみPWM制御する。上記第1の制御方法では、上下アームのIGBT3Aと3D、又はIGBT3Bと3Cが同時にオフするので、共振インダクタンス6A、6Bの電流がほとんど電源に帰還する。したがって、2次側で同一の整流電流、すなわち、平均電流を流すためには、電流ピーク値が増加せざるを得ない。各IGBT3A〜3Dにそれぞれ逆並列に接続されたダイオード4A〜4Dの電流、すなわち電源帰還する電流は無効電流であり、出力には寄与しない。この無効電流が大きい分だけ、IGBTの順電流のピーク値が大きくなる。
【0022】この第2の制御方法によれば、下アームのIGBT3C、又は3Dが先行してオフした後、上アームのIGBT3A、又は3Bがその30μs間、まだオンしているので、共振インダクタンスの電流がIGBT3A、3Bを通して回路を循環して負荷電力となり、電源に帰還する電流が減少する。すなわち、第2の制御方法によれば、無効電流が減少し、順電流が減少する効果があり、IGBTによる電力損失を低減できる。さらに、この制御方法によれば、電源電圧上昇時におけるIGBTを流れる電流の増加をも抑制できる。
【0023】通常の商用交流電源を入力とするコンバータは、定格入力電圧の−10%から+10%まで入力変動に対して定格出力を補償しなければならない。すなわち、設計上では最低入力電圧が定格入力電圧の−10%に対して、20%の電圧上昇がある。第2の制御方法によれば、入力電圧上昇時にインダクタンス電流のdi/dtが大きくなっても、下アームのIGBTのオン時間が減少して電流ピークを抑制しながら、インダクタンス電流の循環で負荷電流を供給するので、IGBT電流の増加が少ない。
【0024】図5は、入力電源電圧が530Vで、1000V−20Aの定格出力でのインバータ出力電流Iinv 、第1の出力回路5Aの入力電流、すなわちインダクタンス7Aの電流Ia 、第2の出力回路5Bの入力電流、すなわちインダクタンス7Bの電流Ib を示す。
図6は入力電源電圧が20%上昇した630Vで、1000V−20Aの定格出力でのインバータ出力電流Iinv 、第1の出力回路5Aの入力電流Ia 、第2の出力回路5の入力電流Ib を示す。
図5と図6とを比較すると、図6では入力電源電圧が20%上昇したにも関わらず、ブリッジインバータ2の出力電流Iinv のピーク値が増大していないことが分かる。
【0025】また、この発明では、それぞれ共振回路を備えた第1の出力回路5Aと第2の出力回路5Bとを並列接続しているので、動作中、それぞれの出力回路における共振回路が同一の共振周波数で共振を行っているが、部品のバラツキなどにより位相が若干ずれることが多い。この場合には、第2の出力回路5Bを流れる電流のうち、位相のずれた電流が第1の出力回路5Aを流れる電流に重畳されるために、その分だけスイッチング半導体素子を流れる電流が少なくなり、スイッチング半導体素子にとって有利になる。
【0026】以上の説明ではフルブリッジインバータとして説明したが、フルブリッジインバータに代えてコンデンサとスイッチング半導体素子とをブリッジ構成にしたハーフブリッジインバータを用いることができる。ハーフブリッジインバータの構成は、例えば、図1のIGBT3A、3C又は3B、3Dをそれぞれコンデンサに代えてブリッジ構成にしたものであり、スイッチング半導体素子3B、3D又は3A、3Cをパルス幅制御して交互にスイッチングさせれば良い。また、実施例ではスイッチング半導体素子としてIGBTを用いたが、MOSFETなど他のスイッチング半導体素子でも勿論よい。
【0027】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、1つのフルブリッジインバータ、又はハーフブリッジインバータの交流出力側に、定格電圧、定格電力で設計された第1の出力回路と、定格電圧の1/Nの電圧と定格電力の1/Mで設計された第2の出力回路を並列接続したことにより、スパッタ電源など定電力曲線となる特性を要求される電源を、単一の出力回路の場合に比べてトランスの電力容量を小さくすることができ、高効率の電源を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる定電力電源装置の実施例を示す図である。
【図2】本発明にかかる実施例の電流波形を示す図である。
【図3】本発明にかかる実施例の別の電流波形を示す図である。
【図4】本発明にかかる実施例におけるスイッチング半導体素子のゲート信号を示す図である。
【図5】本発明にかかる実施例における第1の制御方法によるインバータの電流波形を示す図である。
【図6】本発明にかかる実施例における第2の制御方法によるインバータの電流波形を示す図である。
【図7】スパッタ電源の一般的な出力電圧−電流特性を示す図である。
【符号の説明】
1・・・入力側の直流電源
2・・・ブリッジインバータ
3A−3D・・スイッチング半導体素子
5A・・第1の出力回路
5B・・第2の出力回路
6A、6B・・共振インダクタンス
7A、7B・・共振コンデンサ
8A、8B・・トランス
9A、9B・・整流回路
11・・・負荷であるスパッタ装置
12・・・制御回路
Claims (7)
- 直流電圧を交流電圧に変換するブリッジインバータと、該ブリッジインバータの交流出力に、共振インダクタンス手段と共振コンデンサとトランスと整流器の組み合わせからなる出力回路とを接続してなるコンバータであって、前記ブリッジインバータが共振周波数に関連する周波数でスイッチング動作を行う並列共振型コンバータ電源において、
前記出力回路は、入力と出力の双方が互いに並列接続された第1の出力回路と第2の出力回路とからなり、
前記第1の出力回路は、前記ブリッジインバータの交流出力に定格電力かつ定格電圧を出力できるよう設定された第1の共振インダクタンス手段と第1の共振コンデンサと第1のトランスと第1の整流器とからなり、
前記第2の出力回路は、定格電力のほぼ1/ N、定格出力電圧のほぼ1/ Mを出力できるよう設定された第2の共振インダクタンスと第2の共振コンデンサと第2のトランスと第2の整流器とからなり、
出力電圧が定格出力電圧のほぼ1/ M以上の範囲では前記第1の出力回路を通して全て負荷電力を供給し、出力電圧が定格出力電圧のほぼ1/ Mよりも小さい場合には、前記第1の出力回路と前記第2の出力回路とで負荷電力を供給することを特徴とする定電力電源装置。 - 請求項1において、
前記1/N及び1/Mは、1/3ないし2/3の範囲内、好ましくはほぼ1/2であって、前記第1と第2のトランスの電力容量の和を、単一のトランスで構成した場合の電力容量に比べて小さくしたことを特徴とする定電力電源装置。 - 請求項1において、
前記ブリッジインバータは、複数のスイッチング半導体素子をフルブリッジ構成に接続してなるフルブリッジインバータであり、前記複数のスイッチング半導体素子には逆並列にダイオードが備えられていることを特徴とする定電力電源装置。 - 請求項1において、
前記複数のスイッチング半導体素子の内で、前記フルブリッジインバータのオン期間を形成する一対の前記スイッチング半導体素子は、その一方が固定のオン幅で駆動され、他方がパルス幅制御されて、前記一方よりも早い時点でオフすることにより、前記一方がオン、前記他方がオフの期間に、前記第1及び/又は第2の共振インダクタンス手段のエネルギーを負荷側に供給することを特徴とする定電力電源装置。 - 請求項1において、
前記ブリッジインバータは、複数のスイッチング半導体素子と複数のコンデンサとをハーフブリッジ構成に接続してなるハーフブリッジインバータであることを特徴とする定電力電源装置。 - 請求項1において、
並列接続された前記第1、第2の出力回路の出力端子には出力フィルタコンデンサが接続され、その出力フィルタコンデンサの両端には負荷であるスパッタ装置が接続されることを特徴とする定電力電源装置。 - 前記第1と第2のトランスの電力容量の和を、単一のトランスで構成した場合の電力容量に比べて小さくした請求項1の定電力電源装置を用いてなることを特徴とするスパッタ装置。
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