JP2004076931A - ボールねじ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】螺旋状の雄ねじ溝が外周面に形成されたねじ軸と、雄ねじ溝と対向する螺旋状の雌ねじ溝が内周面に形成されたナットと、雄ねじ溝及び雌ねじ溝の間に転動自在に介装された複数のボールと、必要に応じて隣接するボール間に配置されるリテーニングピースと、ボール転動空間の一端でボールを掬い上げるとともに他端にボールを移動させるボール循環路とを備え、スルフォン酸塩を含有しないグリース組成物を封入したことを特徴とするボールねじ。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、螺旋状の雄ねじ溝が外周面に形成されたねじ軸と、雄ねじ溝と対向する螺旋状の雌ねじ溝が内周面に形成されたナットと、雄ねじ溝及び雌ねじ溝とで形成されるボール転動空間に転動自在に介装された複数のボールと、ボール転動空間の一端でボールを掬い上げるとともに他端にボールを移動させるボール循環路とを備えるボールねじに関し、例えば電動射出成形機やプレス機械等の高荷重が負荷される装置に組み込まれる比較的大型のボールねじに関する。
【0002】
【従来の技術】
ボールねじは、周知のように、ねじ軸の外周面とナットの内周面とに互いに対応する螺旋状のねじ溝を備え、このねじ溝に多数のボールが密に配置されている。そのため、転動中、隣接するボールは、それぞれ逆方向に転動した状態で接触し、所謂「ボールの競り合い」と呼ばれる現象が起こる。その結果、ボールの表面に損傷が生じ、ボールねじの寿命を縮める大きな要因となっている。
【0003】
また、ねじ溝の転走面がゴシックアーチ形状に加工されたボールねじでは、ボールとねじ軸並びにボールとナットとの接触状態は負荷状態によって2点接触、3点接触または4点接触と変動し、更に転走面が螺旋状に連続していることから、理想的な転がり状態とはならず、スピン滑りが生じる。更には、2点接触や3点接触となった場合、非常に高い面圧となり、ボールとねじ軸との接点における接触楕円が大きくなるため、接触楕円における差動滑りも大きくなり、剥離を生じやすい。
【0004】
また、隣接するボール間にリテーニングピースを配置したボールねじも知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなリテーニングピースを介挿したボールねじでは、ねじ軸が回転運動する際に、リテーニングピースの働きで隣接するボール同士の競り合いが防止され、その結果ボール表面の損傷が低減されてボールねじの寿命が延長される。
【0005】
しかし、リテーニングピースを介挿したボールねじにおいても、ボールの破損が起こることがあり、寿命延長には未だ改善の余地がある。即ち、本発明者は、リテーニングピースを介挿したボールねじの破損モードを検証したところ、潤滑不良による表面を起点とする剥離から、この表面起点型剥離と、内部を起点とする内部起点型剥離とが混在した混合剥離へと変化することを見出した。この内部起点型剥離は、潤滑剤による潤滑性能を高めただけでは完全に回避することはできず、内部起点型剥離を防止しない限りリテーニングピースを備えるボールねじの寿命を最大限に高めることはできない。
【0006】
一方でボールねじには、一般に、リチウム石けん−鉱油系グリースや、リチウム複合石けん−鉱油系グリースが封入されている。しかし、増ちょう剤の強度が不足していることから、耐熱性や油膜保持性に欠けており、例えば電動射出成形機やプレス機械のような高荷重が付加される用途では寿命において満足な結果が得られていない。
【特許文献1】
特開平13−124172号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような実情に鑑みて長寿命のボールねじを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は内部起点型剥離について研究を重ねたところ、この内部起点型剥離を起こす異常組織が、金属組織中のセメンタイトに含まれる炭素原子が拡散して形成されたものであり、一般に金属間の接触領域で静電気に起因して発生すると考えられている「白色組織」等と呼ばれるものと同類であることを見出した。そこで、スルフォン酸塩を含有しないグリース組成物を封入することが効果的であるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、上記目的を達成するために、本発明は下記に示すボールねじを提供する。
(1)螺旋状の雄ねじ溝が外周面に形成されたねじ軸と、雄ねじ溝と対向する螺旋状の雌ねじ溝が内周面に形成されたナットと、雄ねじ溝及び雌ねじ溝とで形成されるボール転動空間に転動自在に介装された複数のボールと、ボール転動空間の一端でボールを掬い上げるとともに他端にボールを移動させるボール循環路とを備え、スルフォン酸塩を含有しないグリース組成物を封入したことを特徴とするボールねじ。
(2)螺旋状の雄ねじ溝が外周面に形成されたねじ軸と、雄ねじ溝と対向する螺旋状の雌ねじ溝が内周面に形成されたナットと、雄ねじ溝及び雌ねじ溝とで形成されるボール転動空間に転動自在に介装された複数のボールと、隣接するボール間に配置されてボールと接する1対の凹面を有するリテーニングピースと、ボール転動空間の一端でボールを掬い上げるとともに他端にボールを移動させるボール循環路とを備え、スルフォン酸塩を含有しないグリース組成物を封入したことを特徴とするボールねじ。
【0010】
特に、上記グリース組成物が、ウレア化合物を増ちょう剤とし、ナフテン酸塩及びコハク酸誘導体から選ばれる少なくとも1種の防錆添加剤を0.1〜10質量%の割合で含有する、更には有機金属塩を0.1〜10質量%の割合で含有することがより好ましく、これにより一層長寿命のボールねじとなる。
【0011】
上述のように、ボールねじではスピン滑りや差動滑りが大きくなることに起因して、ボールとねじ軸、ボールとナットとの間に強い摩擦が生じ、これらの接触領域で静電気が発生し易くなり、結果として静電気による白色組織(異常組織)が発生し易い状況になる。また、電動射出成形機やプレス機械等に使用されるボールねじでは、防錆添加剤を含有するグリース組成物が封入されることが多い。本発明者らは、防錆添加剤の種類と白色組織の発生との相関を調べたところ、防錆性能に優れることから広く使用されているスルフォン酸金属塩が、他の防錆添加剤に比べてこのメカノケミカル反応を起こし易いことが判明した。これは、スルフォン酸塩が金属表面に付着しやすいことに起因するものと考えられる。また、増ちょう剤としてウレア化合物を用いることでより強固な油膜を成膜でき、金属接触を生じ難くすることができる。本発明は、このような知見によるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0013】
本発明においてボールねじの構造には制限がなく、例えば図1(平面図)及び図2(図1のAA断面図)に示されるようなボールねじ1を例示することができる。図示されるボールねじ1は、螺旋状の雄ねじ溝3aが外周面に形成されたねじ軸3と、ねじ軸3に外嵌され、螺旋状の雌ねじ溝5が内周面に形成された円筒形状のナット7とを備える。また、雄ねじ溝3aと雌ねじ溝5とは互いに対向しており、両溝で形成されるボール転動空間に複数のボール9が転動自在に収容される。尚、雄ねじ溝3a及び雌ねじ溝5の断面形状は、例えばゴシックアーチ状とされている。
【0014】
ナット7の一端には、組み込まれる装置(例えばプレス装置;図示せず)にボールねじ1を固定するためのフランジ11が形成されている。また、ナット7の外周面には内周面方向に向かって削り込まれた平坦面13が形成されており、この平坦面上に鋼管にて略U字状に形成された一対の循環チューブ15がチューブ押え17により固着される。各循環チューブ15の両端はそれぞれ、雄ねじ溝3aと雌ねじ溝5との間に形成される空間に臨んでいる。また、ナット7の両端はプラスチック製のシール19で密封されており、後述されるグリース組成物の封止と、外部からの異物の侵入を防止している。
【0015】
尚、ボールねじ1を構成する各部材の材料にも制限はなく、何れも公知の材料を使用できる。例えば、ねじ軸3及びナット7は、SCM420を浸炭し焼き入れを施したもの、ボール9にはSUJ2等の高炭素クロム軸受け用鋼や浸炭窒化等の硬化処理を施した高炭素クロム軸受用鋼等が使用される。
【0016】
また、図3にも拡大して示すように、隣接するボール9間には、リテーニングピース21が介挿される。リテーニングピース21はポリアミドや繊維強化ポリアミド等からなる成形体であり、ボール9と対面する両面に形成された凹面22によりボール9を転動自在に保持する。この凹面22は、例えば円弧状やゴシックアーチ状の断面形状を有する。また、リテーニングピース21の外径は、ボール9の直径の0.5〜0.9倍に設定するのが好ましく、これにより循環中にボール間から離脱することなくなり、ボール9を確実に保持する。
【0017】
ボールねじは、図4に示すような、リテーニングピースを備えない構成のものでもよい。尚、図4は図2に対応する断面図である。図示されるボールねじ1は、雄ねじ溝12が形成されたねじ軸10と、雌ねじ溝24が形成されたナット20と、ボール転動空間に転動自在に介装された多数のボール30と、循環チューブ40とを備えている。また、雄ねじ溝12及び雌ねじ溝24の断面形状は、例えばゴシックアーチ状とされている。循環チューブ40は外形略コ字状で、その両端部42をそれぞれナット20を両ねじ溝12,24の接線方向に貫通するチューブ取付け孔29からナット20内のボール転動空間に差し込み、止め金46でナット20の外面に固定されている。ボール30は、両ねじ溝12,24を複数回回って移動してから、循環チューブ40の一方の端部42で掬い上げられて循環チューブ40の中を通り、他方の端部(図示せず)からナット20内のボール転動空間に戻る循環を繰り返すようになっている。ナット20の両端の開口部には円形の凹部26が形成されており、これに嵌着したシール部材28の内周面がねじ軸10の外周面及び雄ねじ溝12の面に摺接して外部からナット20内部に異物が入り込みボール30のスムーズな循環を阻害したり、ボール30または雄ねじ溝12が異常摩耗するのを防止したり、ボール転動空間に封入されたグリースが外部に流出しないようにシールする。
【0018】
上記各ボールねじ1には、両ねじ溝の間にグリース組成物が封入される。グリース封入量は特に制限されるものではなく、通常この種のボールねじに封入される量で構わない。以下、グリース組成物について詳細に説明する。
【0019】
(基油)
グリース組成物に使用される基油は、特に限定されず、潤滑剤向け基油はすべて使用することができる。低温環境下で起動したときの異常音の発生や、高温で油膜が十分に形成されないときに生じる焼付きを避けることを考慮すると、40℃における動粘度が50〜600mm2/sの基油が望ましく、より好ましくは70〜500mm2/s(40℃)、特に好ましくは100〜450mm2/s(40℃)の基油である。
【0020】
基油の種類は、鉱油、合成潤滑油、天然潤滑油の何れも可能である。鉱油としては、例えば減圧蒸留、油剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製、水素化精製等を適宜に組み合わせた精製工程を経た鉱油が好ましい。合成潤滑油も制限されるものでないが、例えば、以下にそれぞれの具体例が例示されている炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、エーテル系油等を使用することができる。
【0021】
炭化水素系油としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1−デセンオリゴマー、1−デセンとエチレンコオリゴマー等とのポリ−α−オレフィン、またはこれらの水素化物等が挙げられる。
【0022】
芳香族系油としては、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン類、モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン類等が挙げられる。
【0023】
エステル系油としては、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチル・アセチルシノレート等のジエステル類、トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル類、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネート等のポリオールエステル類、多価アルコールと二塩基酸・一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステルであるコンプレックスエステル類等が挙げられる。
【0024】
エーテル系油としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル等のポリグリコール類、モノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル等のフェニルエーテル類等が挙げられる。
【0025】
また、合成潤滑油としては、その他にもトリクレジルフォスフェート、シリコーン油、パーフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
【0026】
天然潤滑油としては、牛脂、豚脂、大豆油、菜種油、米ぬか油、やし油、パーム油、パーム核油等の油脂系油、あるいはこれらの水素化物等が挙げられる。
【0027】
これらの基油は、単独でまたは混合して使用することができ、上記の好ましい基油粘度に適宜調整される。
【0028】
(増ちょう剤)
グリース組成物に使用される増ちょう剤は、ゲル構造を形成し、このゲル構造中に前述した基油を保持する機能を有すれば特に制限はない。具体的には、LiやNa等を含む金属石けん、Li、Na、Ba、Caから選択される複合金属石けん等の金属石けん類、並びにベントン、シリカゲル、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ウレタン化合物等の非石けん類を適宜選択して使用できるが、強固な油膜が得られること、またグリース組成物の耐熱性を考慮すると、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ウレタン化合物及びこれらの混合物が望ましい。ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ウレタン化合物の具体例としては、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ポリウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物及びこれらの混合物が挙げられる。特にジウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物及びこれらの混合物が好ましく、特にジウレア化合物を配合することが好ましい。
【0029】
更に高温安定性を良好にするためには、増ちょう剤を下記一般式(1)〜(3)式で表されるジウレア化合物にする。
【0030】
【化1】
【0031】
式中、R1は炭素数7〜12の芳香族環含有炭化水素基、R2は炭素数6〜15の2価の芳香族環含有炭化水素基を示し、R3はシクロヘキシル基または炭素数7〜12のアルキルシクロヘキシル基を示す。特に、一般式(1)〜(3)で表されるジウレア化合物中の[R1のモル数/(R1のモル数+R3のモル数)]値が0〜0.55であるジウレア化合物が好ましい。
【0032】
また、ウレア化合物は、グリース組成物全量中10〜35質量%となるように配合させることが望ましい。
【0033】
〔添加剤〕
グリース組成物には、必要に応じて各種の添加剤が配合される。但し、本発明では、メカノケミカル反応の発生を抑制するために、スルフォン酸塩を除く必要がある。使用可能な添加剤の中でも、錆び止め性能を維持し、耐剥離性を向上するためには、下記に示すナフテン酸塩やコハク酸誘導体を添加することが好ましい。
【0034】
(ナフテン酸塩)
ナフテン核を有する飽和カルボン酸塩であればよく、特に制約はない。主に、飽和単環カルボン酸塩CnH2n−1COOM、飽和複環カルボン酸塩CnH2n−3COOM、脂肪族カルボン酸塩CnH2n+1COOM、及びこれらの誘導体が挙げられる。例えば、単環のカルボン酸塩では、以下を挙げることができる。
【0035】
【化2】
【0036】
上式中、R4は炭化水素基を示しており、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基等が挙げられる。また、Mは金属元素を示しており、Co,Mn,Zn,Al,Ca,Ba,Li,Mg,Cu等である。これらのナフテン酸塩は、単独でも適宜組み合わせて使用してもよい。
【0037】
(コハク酸誘導体)
コハク酸誘導体としては、具体的にそれぞれ以下の化合物を挙げることができる。例えば、コハク酸、アルキルコハク酸、アルキルコハク酸ハーフエステル、アルケニルコハク酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、コハク酸イミド等を挙げることができる。これらのコハク酸誘導体は、単独でも適宜組み合わせて使用してもよい。
【0038】
上記のナフテン酸塩及びコハク酸誘導体は、それぞれ単独でもよいし、併用してもよい。単独使用及び併用の場合とも、その好ましい添加量は、グリース組成物全量に対して0.1〜10質量%である。添加量がこれより少ないと、十分な防錆性を有することができず、これより多く含有するとグリースが軟化し、グリース漏れを発生させる恐れがあるため好ましくない。防錆性を確かにし、グリース漏れによる焼付き寿命を考慮するなら、グリース組成物全量に対して0.25〜5質量%とすることが望ましい。
【0039】
更に、剥離性能を向上させるためには、下記に示す有機金属塩を添加することがより望ましい。
【0040】
(有機金属塩)
有機金属塩として、下記一般式(4)で示されるジアルキルジチオカルバミン酸(DTC)系化合物や、下記一般式(5)で示されるジアルキルジチオリン酸(DTP)系化合物を好適に使用することができる。
【0041】
【化3】
【0042】
式中、Mは金属種を示し、具体的には、Sb,Bi,Sn,Ni,Te,Se,Fe,Cu,Mo,Znが使用される。R5、R6は、同一基であっても、異なる基であってもよく、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、または、アリールアルキル基を示す。特に好ましい基としては、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、1,1,3,3−テトラメチルヘキシル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−メチルウンデカン基、1−メチルヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−ヘプチル基、4−メチルシクロヘキシル基、n−ブチル基、イソブチル基、イソプロピル基、イソヘプチル基,イソペンチル基、ウンデシル基、エイコシル基、エチル基、オクタデシル基、オクチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、シクロペンチル基、ジメチルシクロヘキシル基、デシル基、テトラデシル基、ドコシル基、ドデシル基、トリデシル基、トリメチルシクロヘキシル基、ノニル基、プロピル基、ヘキサデシル基、ヘキシル基、ヘニコシル基、ヘプタデシル基、ヘプチル基、ペンタデシル基、ペンチル基、メチル基、第三ブチルシクロヘキシル基、第三ブチル基、2−ヘキセニル基、2−メタリル基、アリル基、ウンデセニル基、オレイル基、デセニル基、ビニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘプタデセニル基、トリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、第三ブチルフェニル基、第二ペンチルフェニル基、n−ヘキシルフェニル基、第三オクチルフェニル基、イソノニルフェニル基、n−ドデシルフェニル基、フェニル基、ベンジル基、1−フェニルメチル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、1,1−ジメチルベンジル基、2−フェニルイソプロピル基、3−フェニルヘキシル基、ベンズヒドリル基、ビフェニル基等があり、またこれらの基はエーテル結合を有しても良い。
【0043】
また、その他の有機金属塩として、下記一般式(6)〜(8)で示される有機亜鉛化合物も使用することができる。
【0044】
【化4】
【0045】
式中、R7、R8は、炭素数Cnがn=1〜18の炭化水素基または水素原子を示し、R7、R8は同一の基であっても異なる基であってもよい。特に、R7、R8が共に水素原子であるメチルカプトベンゾチアゾール亜鉛(一般式(6))、ベンゾアミドチオフェノール亜鉛(一般式(7))、及びメルカプトペンゾイミダゾール亜鉛(一般式(8))を好適に使用することができる。
【0046】
更に、その他の有機金属塩として、下記一般式(9)で示されるアルキルキサントゲン酸亜鉛も使用することができる。
【0047】
【化5】
【0048】
式中、R9は、炭素数Cnがn=1〜18の炭化水素基を示す。
【0049】
尚、上記の一般式(4)〜(9)で表される有機金属塩は、各々単独で、または2種以上混合して使用することができるが、組合せについては特に限定されるものではない。また、有機金属塩は微小隙間に反応膜を形成して白色組織変化剥離を抑制する作用効果を有するが、添加量0.1質量%未満では十分な効果を発揮することができない。一方、添加量の上限は特に限定する必要は無いとも考えられるが、上述した有機金属塩は比較的高価であり、また過剰な添加は軸受材料との反応を異常に促進して、逆に焼付き性能を阻害するため、添加量を0.1〜10質量%にすることが好ましい。より好ましくは、0.5〜10質量%である。
【0050】
(その他の添加剤)
上記のグリース組成物には、必要に応じて、例えばアミン系やフェノール系、イオウ系、チオリン亜鉛系等の酸化防止剤;塩素系やイオウ系、リン系、ジチオリン系亜鉛系、有機モリブデン系等の極圧剤;脂肪酸や動植物油等の油性剤;ベンゾトリアゾール等の金属不活性剤;ポリメタクリレートやポリイソブチレン、ポリスチレン等の粘度指数向上剤等、通常グリース組成物に添加される各種の添加剤を添加してもよい。
【0051】
また、上記のグリース組成物のちょう度は、NLGI No.1〜3であることが望ましい。
【0052】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を示して更に具体的に本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0053】
(試験−1:リテーニングピースを備えるボールねじ)
日本精工(株)製ボールねじ「呼び番号25×10×500−C5」を用い、ナイロン製で図3に示したように凹面が形成されたリテーニングピースをボール間に介挿し、これに表1に示す配合で調製したグリース封入して試験用ボールねじを準備した。尚、ねじ軸及びナットには、SCM420を浸炭して焼き入れしたものを使用し、ボールには、ボール径4.76mmのSUJ2製鋼球を使用した。また、リテーニングピースには、ナイロン製で図3に示したように凹面が形成されたものを使用した。
【0054】
【表1】
【0055】
各試験用ボールねじについて、日本精工(株)製ボールねじ耐久寿命試験機を用いて耐久寿命試験を実施した。試験条件は以下の通りであり、判定は一定時間ごとに試験を停止してねじ軸の剥離の有無を確認し、剥離が生じるまでの時間を寿命時間とした。
・ アキシアル荷重:5800N(P/C=0.5)
・ 最高回転数:500min−1
・ ストローク:40mm
【0056】
実施例1の試験用ボールねじは、ナフテン酸亜鉛の含有量が0.05〜12質量%の範囲で異なるグリース組成物を封入したものであり、実施例2の試験用ボールねじは、コハク酸ハーフエステルの含有量が0.05〜12質量%の範囲で異なるグリース組成物を封入したものであり、実施例3の試験用ボールねじは、ジチオカルバミン酸ニッケルの含有量が0.05〜12質量%の範囲で異なるグリース組成物を封入したものである。
【0057】
図5に、実施例1及び実施例2の試験用ボールねじによる剥離寿命の測定結果を、比較例1で使用した試験用ボールねじの寿命時間を1.0とした剥離寿命比にて示す。図5より、ナフテン酸亜鉛またはコハク酸ハーフエステルを0.1〜10質量%含有するグリース組成物を封入することにより、ボールねじの剥離寿命が大きく改善されることがわかる。
【0058】
また、図6に、実施例3の試験用ボールねじによる剥離寿命の測定結果を、比較例1及び比較例2で使用した試験用ボールねじの寿命時間を1.0とした剥離寿命比にて示す。図6より、ジチオカルバミン酸ニッケルを0.1〜10質量%含有するグリース組成物を封入することにより、ボールねじの剥離寿命が大きく改善されることがわかる。
【0059】
(試験−2:リテーニングピースを備えないボールねじ)
試験ボールねじがリテーニングピースを備えないこと以外は試験−1と同様にして、耐久寿命試験を行った。ナフテン酸亜鉛またはコハク酸ハーフエステルを添加したときの結果を図7に、またジチオカルバミン酸ニッケルを添加した結果を図8に示すが、本発明に従いナフテン酸亜鉛またはコハク酸ハーフエステルを0.1〜10質量%含有するグリース組成物、並びにジチオカルバミン酸ニッケルを0.1〜10質量%含有するグリース組成物を封入することにより、同様に耐久寿命が大幅に改善することがわかる。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、従来よりも長寿命のボールねじが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のボールねじの一実施形態(リテーニングピース有り)を概略的に示す上面図である。
【図2】図1のAA断面図である。
【図3】リテーニングピースの配置の様子を示す部分拡大断面図である。
【図4】本発明のボールねじの他の実施形態(リテーニングピース無し)を概略的に示す断面図である。
【図5】試験−1で得られた、ナフテン酸塩またはコハク酸誘導体の配合量と、剥離寿命との関係を示すグラフである。
【図6】試験−1で得られた、有機金属塩の配合量と剥離寿命との関係を示すグラフである。
【図7】試験−2得られた、ナフテン酸塩またはコハク酸誘導体の配合量と、剥離寿命との関係を示すグラフである。
【図8】試験−2得られた、有機金属塩の配合量と剥離寿命との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ボールねじ
3、10 ねじ軸
3a、12 雄ねじ溝
5、24 雌ねじ溝
7、20 ナット
9、30 ボール
15、40 循環チューブ
21 リテーニングピース
22 凹面
Claims (4)
- 螺旋状の雄ねじ溝が外周面に形成されたねじ軸と、雄ねじ溝と対向する螺旋状の雌ねじ溝が内周面に形成されたナットと、雄ねじ溝及び雌ねじ溝とで形成されるボール転動空間に転動自在に介装された複数のボールと、ボール転動空間の一端でボールを掬い上げるとともに他端にボールを移動させるボール循環路とを備え、スルフォン酸塩を含有しないグリース組成物を封入したことを特徴とするボールねじ。
- 螺旋状の雄ねじ溝が外周面に形成されたねじ軸と、雄ねじ溝と対向する螺旋状の雌ねじ溝が内周面に形成されたナットと、雄ねじ溝及び雌ねじ溝とで形成されるボール転動空間に転動自在に介装された複数のボールと、隣接するボール間に配置されてボールと接する1対の凹面を有するリテーニングピースと、ボール転動空間の一端でボールを掬い上げるとともに他端にボールを移動させるボール循環路とを備え、スルフォン酸塩を含有しないグリース組成物を封入したことを特徴とするボールねじ。
- 前記グリース組成物が、ウレア化合物を増ちょう剤とし、ナフテン酸塩及びコハク酸誘導体から選ばれる少なくとも1種の防錆添加剤を0.1〜10質量%の割合で含有することを特徴とする請求項1または2記載のボールねじ。
- 前記グリース組成物が、有機金属塩を0.1〜10質量%の割合で含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のボールねじ。
Priority Applications (1)
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JP2003149302A JP2004076931A (ja) | 2002-06-17 | 2003-05-27 | ボールねじ |
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JP2003149302A JP2004076931A (ja) | 2002-06-17 | 2003-05-27 | ボールねじ |
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-
2003
- 2003-05-27 JP JP2003149302A patent/JP2004076931A/ja active Pending
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