JP2004076090A - 低融点有価物の回収方法及び装置 - Google Patents

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岩崎 克博
Takuya Kadowaki
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Abstract

【課題】重金属および重金属化合物蒸気を含有する高温のガス中から、回収物の酸化や不純物の混入を最小限にとどめて重金属および重金属化合物等の有価物を除去・分離して回収・再資源化する方法を提供する。
【解決手段】高温炉ガス(金属亜鉛蒸気含有ガス)は、ガス冷却凝縮装置7に入り、ここで、回収すべき低融点有価物の沸点より低く融点以上の温度まで冷却される。これにより、低融点有価物は凝縮して液体となり、ガス冷却凝縮装置7の下部から排出される。ガス冷却装置8は、この排ガスを低融点有価物の固化温度まで冷却する。排ガスはこの状態で乾式除塵装置9に入り、粉粒体状の物質が排ガスから回収され、粉粒体吹き込み装置12より、の不活性ガス、又は還元性ガスをキャリアガスとして、ガス冷却凝縮装置7中に吹き込まれる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃棄物焼却炉排ガス、廃棄物溶融炉生成ガスや金属精錬炉発生ガス等、重金属および重金属化合物等の蒸気、アルカリミスト等の低融点有価物を含有する高温温炉生成ガス中から重金属および重金属化合物等の低下融点有価物を分離し、重金属および重金属化合物を金属状態で、また、その他の有価物を有価物そのものとして回収する方法および装置に関するものである。
【0002】
本発明は、特に製鉄所で発生する表面処理スラッジや電気炉ダストのような亜鉛含有量の多い産業廃棄物や産業汚泥から、金属亜鉛を回収効率よく回収するのに適したものである。
【0003】
【従来の技術】
廃棄物焼却炉排ガス、廃棄物溶融炉生成ガスや金属精錬炉発生ガス等、高温炉生成ガスから重金属および重金属化合物の蒸気、アルカリミスト等を除去する方法としては、従来は主として湿式法が採用されており、その代表的なものが水洗方式である。
【0004】
また乾式方法も種々提案されている。例えば、特開昭62−102811号公報には、輸送用空気を冷却し、これを排ガス中に吹き込んで冷却し、有害ガス成分や金属を集塵装置により捕集する方法が開示されている。
【0005】
また、特開平8−131770号公報には、冷却された金属球を高温ガスと接触させて高温ガスからダストを凝縮させて除去し、その後、金属球から同伴ダストを分離し、表面に重金属および重金属化合物が凝縮した金属球から重金属および重金属化合物を回収する方法が開示されている。
【0006】
さらに、特開平8−131769号公報には、排ガス中に含まれる重金属および重金属化合物の蒸気、アルカリミスト、タールを排ガス中より除去する排ガスの処理方法であって、排ガス温度以下に冷却した金属粒子をその表面温度が50〜300℃の範囲になるように排ガスと接触させ、金属粒子表面に前記物質を凝縮させて排ガス中より除去する排ガスの処理方法およびその装置が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の方法には、次のような問題がある。特開昭62−102811号公報に開示される技術は、輸送用空気を冷却し、これを排ガスに吹き込むため、排ガス温度が著しく低下する。これは、有害ガス成分の除去効率向上の面からは効果的であるが、回収物中に金属状態で微細な重金属類が含まれていることが想定される廃棄物溶融炉生成ガスからの重金属類の回収においては、金属蒸気含有排ガスが水蒸気と接触することにより酸化ロスが増大し、金属状態での回収が困難となる問題がある。
【0008】
また、水以外の不活性ないし還元性流体を用いて排ガスを急冷した場合、亜鉛等の重金属類は微細な粒子となって集塵装置で捕集されることとなる。これを重金属回収物として扱うには、空気や支燃性物質との接触による酸化燃焼や爆発の懸念等から、回収物そのままでの資源化・再利用は困難な状況にある。
【0009】
特開平8−131769号公報及び特開平8−131770号公報に開示される技術においては、金属球を繰り返し使用するためには、表面に付着した重金属類を機械的に剥離させるか溶解して分離する必要があり、いずれも手間がかかる上に分離効率を高めることは困難である。さらに、金属球表面には重金属類との合金層が生成するので、重金属類等を有価物として効率的に分離回収することは困難である。
【0010】
また、重金属類が付着した金属等の球形粒子から付着した重金属類を分離するための機械的な剥離ないし付着物の溶解を試みた場合、表面が酸化される可能性も高く、重金属類等が金属状態で付着していてもそれを金属として回収して資源化・再利用することは困難な状況であった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、廃棄物焼却炉排ガス、廃棄物溶融炉生成ガスや金属精錬炉発生ガスなど、重金属および重金属化合物蒸気を含有する高温のガス中から、回収物の酸化や不純物の混入を最小限にとどめて重金属および重金属化合物等の有価物を除去・分離して回収・再資源化する方法及び装置を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための第1の手段は、高温炉生成ガスに含まれる低融点有価物を生成ガス中より分離して回収する方法であって、前記低融点有価物の蒸気・ミストを凝縮・回収するためのガス冷却凝縮装置を備え、そのガス冷却装置内温度を当該低融点有価物の沸点より低く、融点より高い温度に調整しつつ液体状態で回収すると共に、その後段で当該低融点有価物の融点より低い温度まで冷却して前記ガス冷却凝縮装置で未回収の低融点有価物を固体状態となし、その後段で乾式集塵装置により、未回収低融点有価物を粉粒状態で回収すると共に、前記乾式集塵装置で捕集された当該低融点有価物の粉粒体を前記ガス冷却凝縮装置へ装入することを特徴とする低融点有価物の回収方法(請求項1)である。
【0013】
ここで、高温炉とは、高温反応炉一般を指す言葉であり、代表的なものとして、廃棄物焼却炉、廃棄物溶融炉、高炉・シャフト炉・非鉄金属用製錬炉・流動層型・キルン型・回転炉床型その他の金属製錬炉、転炉・電気炉その他の金属精錬炉等があげられる。高温炉生成ガスとは、高温炉から発生するガス一般を指す。また、塊状には、粒状、ブリケット状、コンパクト状のものが含まれる。
【0014】
また、低融点有価物として代表的なものは、重金属および重金属化合物であるが、これらには、亜鉛、塩化亜鉛、鉛、塩化鉛、砒素、塩化砒素、酸化砒素、カドミウム、塩化カドミウム、酸化カドミウム、水銀、塩化水銀、塩化鉛、酸化鉛、燐、塩化燐、酸化燐、塩化ニッケル、塩化鉄、硫黄、硫化亜鉛、硫化鉛、硫化砒素、硫化カドミウム、硫化鉄、硫化ニッケルなどとそれらとほぼ同様の挙動を熱力学的にとると考えられる各種の金属、金属ハロゲン化物、金属硫化物、金属炭化物等がある。
【0015】
また、低融点有価物には、アルカリミストが含まれるが、これらの代表的なものは、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、水酸化カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウムなどのミストである。もちろん、低融点有価物はこれらのものに限られるものではない。
【0016】
本手段においては、ガス冷却凝縮装置で、冷却装置内温度を低融点有価物の沸点より低く、融点より高い温度に調整しつつ、低融点有価物を液体状態で回収すると共に、その後段で当該低融点有価物の融点以下まで冷却して前段のガス冷却凝縮装置で未回収の低融点有価物を固体状態となし、その後段で乾式集塵装置等により、未回収低融点有価物を粉粒状態で回収するとともに、前記乾式集塵装置で捕集された当該有価物粉粒体を前記ガス冷却凝縮装置へ装入している。これにより、装入された粉粒状態低融点有価物がガス冷却・温度調整材としての作用を果たし、ガス冷却凝縮装置内において重金属等の低融点有価物蒸気は、低融点有価物固体粒子により冷却され、固体粒子を核として凝縮液状化するばかりでなく、固体粒子自体も液体状態の低融点有価物として回収できる。
【0017】
なお、ガス冷却凝縮装置内の温度は、(沸点−融点)=ΔTとすると、(融点+ΔT/2)以下とすることが好ましく、(融点+ΔT/3)以下、(融点+ΔT/4)以下とすることがさらに好ましい。一般にガス冷却凝縮装置内の温度が低いほど低融点有価物の回収率は上がるが、低融点有価物の融点以下とならないように注意が必要である。
【0018】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段であって、前記固体の低融点有価物をガス冷却凝縮装置に装入する際に、不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方を搬送流体として吹き込むことを特徴とするもの(請求項2)である。
【0019】
本手段においては、前記固体として回収された低融点有価物を、不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方を搬送流体としてガス冷却凝縮装置に吹き込んでいる。よって、低融点有価物をガス冷却凝縮装置に装入する際のハンドリングが容易になると共に、不活性ガス、還元性流体を冷却体として使用することができる。不活性ガス、還元性流体を使用するのは、ガス冷却凝縮装置内での低融点有価物の酸化を避けるためである。
【0020】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第2の手段であって、前記還元性流体がLNG、LPG、CO、H含有回収プロセスガス、灯油、タール、廃プラ等の炭化水素系化合物含有廃棄物であってガス冷却凝縮装置内温度で流体となるもの、から選ばれた少なくとも1種類であることを特徴とするもの(請求項3)である。
【0021】
還元性流体としてこれらのものを用いることにより、回収有価物が金属状態の場合特に酸化されない状態で回収することができる。LNG、LPGや、灯油、タールは一般的に市場で入手しやすい。また、CO、H含有回収プロセスガスは製鉄所で入手しやすく、また、前記高温炉生成ガスを除塵、冷却したものをそのまま用いることもできるので、入手しやすい。廃プラ等の炭化水素系化合物含有廃棄物であってガス冷却凝縮装置内温度で流体となるものを使用すれば、廃プラ処理設備からの副生ガスを有効利用することができる。
【0022】
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第1の手段から第3の手段のいずれかであって、乾式除塵装置で除塵されたガスを、燃料ないし還元性有価ガスとして回収するか、昇圧して燃料ないし還元性有価ガスとして利用することを特徴とするもの(請求項4)である。
【0023】
本手段によれば、乾式除塵装置で除塵されたガスを有効利用することができる。特に、回収された排ガスを低融点有価物を含有する廃棄物の燃焼に使用したり、ガス冷却凝縮装置の冷却用流体の少なくとも一部として利用すれば、廃棄物焼却・低融点有価物回収システム内で消費することができる。
【0024】
前記課題を解決するための第5の手段は、前記第1の手段から第4の手段のいずれかであって、回収された液体状低融点有価物に含まれる不純物を比重分離、遠心力分離の少なくとも一つの方法により分離精製することを特徴とするもの(請求項5)である。
【0025】
本手段によれば、低融点有価物に含まれる不純物を分離し、低融点有価物をより純粋な形で取り出すことができる。特に目的とする低融点有価物が金属亜鉛である場合に問題となる不純物である鉄その他の金属や、金属酸化物等を有効に分離することができる。
【0026】
前記課題を解決するための第6の手段は、前記第5の手段であって、回収された液体状低融点有価物を回収物溶解炉に装入し、回収物溶融炉において溶融した状態で比重差により不純物を分離除去することを特徴とするもの(請求項6)である。
【0027】
回収された低融点有価物を回収物溶融炉において溶融した状態で比重差により不純物を分離除去すれば、比重差を利用して、目的とする低融点有価物を純度の高い状態で回収することができる。
【0028】
前記課題を解決するための第7の手段は、前記第6の手段であって、前記回収物溶融炉の排ガスを、少なくとも前記乾式集塵装置の前においてガス冷却凝縮装置に入る高温炉ガス、又はガス冷却凝縮装置から出た排ガスに混合することを特徴とするもの(請求項7)である。
【0029】
本手段においては、回収物溶融炉の排ガス中に含まれる低融点有価物をも回収することができると共に、その排ガス中のダストを、別に集塵機を使用しなくても除去することができる。
【0030】
前記課題を解決するための第8の手段は、前記第1の手段から第7の手段のいずれかであって、高温炉生成ガスの温度を600℃以上、ガス組成のCO/CO比を少なくとも4以上とした後、ガス冷却凝縮装置に導入することを特徴とすることを特徴とするもの(請求項8)である。
【0031】
ガス冷却凝縮装置内でのガス組成がCO/CO比で4未満であると、重要な低融点有価物である亜鉛が酸化されやすくなる。よって、本手段においては、ガス冷却凝縮装置出口でのガス組成がCO/CO比を4以上に限定する。また、ガス温度は、酸化防止の観点から600℃以上とする。800℃以上とすることが望ましく、また、ガス温度が950℃以上であると、亜鉛が金属状態のままでガス冷却凝縮装置内に入るので、高温炉生成ガスの温度を950℃以上にした後、ガス冷却凝縮装置に導入することが特に好ましい。
【0032】
前記課題を解決するための第9の手段は、前記ガス冷却凝縮装置内のガス組成を測定し、この値から前記低融点有価物の沸点と融点を求めることを特徴とするもの(請求項9)である。
【0033】
本手段においては、ガス冷却凝縮装置内のガス組成を測定し、この値から前記低融点有価物の沸点と融点を求めているので、無駄な冷却を行うことなく、かつ安定してガス冷却凝縮装置内を、低融点有価物の沸点より低く融点以上の温度に保つことができる。
【0034】
前記課題を解決するための第10の手段は、高温炉生成ガスに含まれる低融点有価物を生成ガス中より分離して回収する装置であって、前記低融点有価物の蒸気・ミストを凝縮して液体状で回収するためのガス冷却凝縮装置と、当該ガス冷却凝縮装置から排出される排ガスを、前記低融点有価物が固体状になるまで冷却するガス冷却装置と、冷却された排ガス中の固体を回収する乾式集塵装置と、当該乾式集塵装置により回収された固体を前記ガス冷却凝縮装置中に装入する装置を備えたことを特徴とする低融点有価物の回収装置(請求項10)である。
【0035】
前記課題を解決するための第11の手段は、前記第10の手段であって、前記乾式集塵装置により回収された固体をガス冷却凝縮装置中に装入する装置が、当該固体を、不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方を搬送流体として前記ガス冷却凝縮装置中に吹き込む粉粒体吹き込み装置であることを特徴とするもの(請求項11)である。
【0036】
前記課題を解決するための第12の手段は、前記第10の手段又は第11の手段であって、回収された液体状低融点有価物に含まれる不純物を分離する比重分離式分離装置、又は遠心分離式分離装置の少なくとも一方を有することを特徴とする低融点有価物の回収装置(請求項12)である。
【0037】
前記課題を解決するための第13の手段は、前記第12の手段であって、前記比重分離式分離装置が、回収物溶融炉であることを特徴とするもの(請求項13)である。
【0038】
前記課題を解決するための第14の手段は、前記第13の手段であって、前記回収物溶融炉の排ガスを、少なくとも前記乾式集塵装置の前においてガス冷却凝縮装置に入る高温炉ガス、又はガス冷却凝縮装置から出た排ガスに混合するような配管系統を有することを特徴とするもの(請求項14)である。
【0039】
前記課題を解決するための第15の手段は、前記第10の手段から第14の手段であって、前記ガス冷却凝縮装置中のガス組成を測定する装置と、測定されたガス組成から低融点有価物の沸点と融点とを決定する装置と、ガス冷却凝縮装置中の温度が、決定された沸点以下で融点より高い温度となるように、不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方の吹き込み量を調整する装置を有することを特徴とするもの(請求項15)である。
【0040】
これら第10の手段から第15の手段においては、それぞれ、前記第1の手段、第2の手段、第5の手段、第6の手段、第7の手段、第9の手段である低融点有価物の回収方法を実施することができる。
【0041】
前記課題を解決するための第16の手段は、前記第10の手段から第15の手段のいずれかであって、前記ガス冷却凝縮装置、前乾式集塵装置、前記粉粒体吹き込み装置、ガス流路となる配管のうち少なくとも一箇所に、付着物の機械的掻き取り装置を有することを特徴とするもの(請求項16)である。
【0042】
本手段によれば、付着物の機械的掻き取り装置により、内壁に付着した付着物を掻き落とすことができるので、低融点有価物の回収率を高めることができると共に、ガス流路の閉塞や圧力損失の増大を招きにくくすることができる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1は、本発明を廃棄物の溶融焼却炉に応用した例であり、廃棄物溶融焼却炉1が高温炉に相当する。亜鉛を含有する廃棄物・汚泥は、湿潤状態で原料乾燥・予熱装置2に装入され、乾燥・予熱されて、還元材と共に廃棄物溶融焼却炉1に装入される。廃棄物溶融焼却炉1では、黒鉛電極3に通電され抵抗加熱により装入物19が加熱され、可燃物は燃焼し、燃焼しない物質は溶融される。溶融物4は廃棄物溶融焼却炉1の底部に溜まり、スラグ・メタルとして出湯口5から取り出される。
【0044】
出湯口を開けたとき、初めに底に溜まっているメタルが排出され、その後メタルの上に浮いているスラグが排出されるので、メタルとスラグを分離して取り出すことができる。
【0045】
可燃物が燃焼することにより発生した排ガスは、排ガス口6から金属亜鉛蒸気含有ガスとして排出され、ガス冷却凝縮装置7で凝縮・冷却された後、ガス冷却装置8でさらに冷却され、その後、乾式除塵装置9でダストを取り除かれて清浄化され、回収ガスとして、回収される。
【0046】
回収された回収ガスは、コンプレッサ10で昇圧され、空気と共に原料乾燥・予熱装置2の燃焼バーナ11に吹き込まれて燃焼し、原料乾燥・予熱装置2内を加熱する。
【0047】
これらの装置のうち、ガス冷却凝縮装置7、ガス冷却装置8、乾式除塵装置9の構成が、本発明の主要部に直接関係する。これらの装置の詳細を図2に示す。以下の図において、前出の図に示された構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略することがある。
【0048】
高温炉ガス(金属亜鉛蒸気含有ガス)は、ガス冷却凝縮装置7に入り、ここで、回収すべき低融点有価物(この場合主として亜鉛)の沸点より低く融点以上の温度まで冷却される。これにより、低融点有価物は凝縮して液体となり、ガス冷却凝縮装置7の下部から排出される。
【0049】
このようにして大部分の低融点有価物はガス冷却凝縮装置7で回収されるが、一部は排ガス中に残留してガス冷却凝縮装置7から排ガスと共に排出される。ガス冷却装置8は、この排ガスを低融点有価物の固化温度まで冷却する。
【0050】
排ガスはこの状態で乾式除塵装置9に入り、粉粒体状の物質が排ガスから回収される。この回収物は、乾式除塵装置9の下部から取り出され、粉粒体吹き込み装置12に回収されて、窒素ガス等の不活性ガス、又はLPG、LNG等の還元性ガスをキャリアガスとして、ガス冷却凝縮装置7中に吹き込まれる。
【0051】
ガス冷却凝縮装置7は、不活性ガス、還元性ガス又はこれらの混合気体により冷却されるが、その冷却用気体をキャリアガスとして乾式除塵装置9から回収されたダストをガス冷却凝縮装置7に吹き込むわけである。これにより、冷却凝縮装置7内が冷却されると共に、ガス冷却凝縮装置内において重金属等の低融点有価物蒸気は、低融点有価物固体粒子の融解熱よっても冷却され、固体粒子を核として凝縮液状化するばかりでなく、固体粒子自体も溶解するので液体状態の低融点有価物として回収できる。
【0052】
図2に示す実施の形態においては、凝縮された低融点有価物は、回収物溶解炉13中に投入される。回収物溶解炉13は、還元性雰囲気の中で低融点有価物をさらに加熱して完全に溶解させるようになっている。回収物溶解炉13中では、比重の軽い不純物は上部に浮き、比重の重い低融点有価物は、その比重の差に従って層状に分離される。よって、溶解が終了した時点で、出湯口14を開けると、比重の大きい物質から順番に溶融した液状で出てくるので、時間差による分離を行い、目的とする低融点有価物を純度の高い状態で回収することができる。
【0053】
回収物溶解炉の排ガスは排ガス口15から出て、乾式除塵装置9に導かれる。よって、回収物溶解炉の排ガス中に含まれる低融点有価物も、回収することができる。
【0054】
図3に本発明の別の実施の形態である、低融点有価物の回収装置の主要部を示す。前述のように、大部分の低融点有価物はガス冷却凝縮装置7で回収されるが、一部は排ガス中に残留してガス冷却凝縮装置7から排ガスと共に排出される。ガス冷却装置8は、排ガス中の低融点有価物が固化する温度まで排ガスを冷却する。
【0055】
排ガスはこの状態で乾式除塵装置9に入り、粉粒体状の物質が排ガスから粉粒体吹き込み装置12に回収される。そして、窒素ガス等の不活性ガス、又はLPG、LNG等の還元性ガスをキャリアガスとして、ガス冷却凝縮装置7中に吹き込まれる。
【0056】
ガス冷却凝縮装置7には、ガス冷却凝縮装置7内の温度とガス組成(CO、CO、O他)を測定する温度・ガス組成測定装置16が設けられており、その出力が冷却ガス・粉粒体吹き込み量調節装置17に入力される。冷却ガス・粉粒体吹き込み量調節装置は、ガス冷却凝縮装置7中のガス組成に応じて、低融点有価物の沸点と融点を算出し、ガス冷却凝縮装置7内の温度が沸点より低くかつ融点以上となるように、冷却ガス・粉粒体流量調節弁18を駆動して、冷却ガスと粉粒体流量を調節する。これにより、吹き込まれる冷却ガスを無駄にすることなく、かつ、安定して低融点有価物を固化して回収することができる。
【0057】
回収する低融点有価物が亜鉛の場合、ガス冷却凝縮装置7に吹き込む高温ガスの温度を950℃以上とし、ガス中のCO/CO比を4以上とする。そして、ガス冷却凝縮装置7内の温度は、亜鉛の融点である420℃以上とし、通常430〜490℃の間に維持する。
【0058】
図4に、本発明のさらに別の実施の形態である、低融点有価物の回収装置の主要部を示す。この実施の形態の設備は、図2、図3に示したものとほぼ同じであるが、ガス冷却凝縮装置7の中に、その内壁に付着した付着物を掻き落とす付着物掻き取り装置20が設けられているところが特徴とするところである。
【0059】
この付着物掻き取り装置20は、上下可能なスクレーパ式クリーナで構成されており、上下運動させることにより、ガス冷却凝縮装置7の内壁に付着した付着物を掻き落とす。よって、ガス冷却凝縮装置7の内壁に付着した低融点有価物を回収でき、回収効率が上がると共に、ガス冷却凝縮装置7内での詰まりや圧力損失の発生を防止することも可能となる。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、廃棄物焼却炉排ガス、廃棄物溶融炉生成ガスや金属精錬炉発生ガスなど、重金属および重金属化合物蒸気を含有する高温のガス中から、回収物の酸化や不純物の混入を最小限にとどめて重金属および重金属化合物等の有価物を除去・分離して回収・再資源化する方法及び装置を提供することができる。
特に製鉄所で発生する表面処理スラッジや電気炉ダストのような亜鉛含有量の多い産業廃棄物や産業汚泥から金属亜鉛を回収効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を廃棄物の溶融焼却炉に応用した実施の形態の例を示すブロック図である。
【図2】本発明の主要部の実施の形態の例を示す概要図である。
【図3】本発明の主要部の別の実施の形態の例を示す概要図である。
【図4】本発明のさらに別の実施の形態である、低融点有価物の回収装置の主要部を示す図である。
【符号の説明】
1:廃棄物溶融焼却炉
2:原料乾燥・予熱装置
3:黒鉛電極
4:溶融物
5:出湯口
6:排ガス口
7:ガス冷却凝縮装置
8:ガス冷却装置
9:乾式除塵装置
10:コンプレッサ
11:燃焼バーナ
12:粉粒体吹き込み装置
13:回収物溶解炉
14:出湯口
15:排ガス口
16:温度・ガス組成測定装置
17:冷却ガス・粉粒体吹き込み量調節装置
18:冷却ガス・粉粒体流量調節弁
19:装入物
20:付着物掻き取り装置

Claims (16)

  1. 高温炉生成ガスに含まれる低融点有価物を生成ガス中より分離して回収する方法であって、前記低融点有価物の蒸気・ミストを凝縮・回収するためのガス冷却凝縮装置を備え、そのガス冷却装置内温度を当該低融点有価物の沸点より低く、融点より高い温度に調整しつつ、低融点有価物を液体状態で回収すると共に、その後段で当該低融点有価物の融点より低い温度まで冷却して前記ガス冷却凝縮装置で未回収の低融点有価物を固体状態となし、その後段で乾式集塵装置により、未回収低融点有価物を粉粒状態で回収すると共に、前記乾式集塵装置で捕集された当該低融点有価物の粉粒体を前記ガス冷却凝縮装置へ装入することを特徴とする低融点有価物の回収方法。
  2. 請求項1に記載の低融点有価物の回収方法であって、前記固体の低融点有価物をガス冷却凝縮装置に装入する際に、不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方を搬送流体として吹き込むことを特徴とする低融点有価物の回収方法。
  3. 請求項2に記載の低融点有価物の回収方法であって、前記還元性流体がLNG、LPG、CO、H含有回収プロセスガス、灯油、タール、廃プラ等の炭化水素系化合物含有廃棄物であってガス冷却凝縮装置内温度で流体となるもの、から選ばれた少なくとも1種類であることを特徴とする低融点有価物の回収方法。
  4. 請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の低融点有価物の回収方法であって、乾式除塵装置で除塵されたガスを、燃料ないし還元性有価ガスとして回収するか、昇圧して燃料ないし還元性有価ガスとして利用することを特徴とする低融点有価物の回収方法。
  5. 請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の低融点有価物の回収方法であって、回収された液体状低融点有価物に含まれる不純物を比重分離、遠心力分離の少なくとも一つの方法により分離精製することを特徴とする低融点有価物の回収方法。
  6. 請求項5に記載の低融点有価物の回収方法であって、回収された液体状低融点有価物を回収物溶解炉に装入し、回収物溶融炉において溶融した状態で比重差により不純物を分離除去することを特徴とする低融点有価物の回収方法。
  7. 請求項6に記載の低融点有価物の回収方法であって、前記回収物溶融炉の排ガスを、少なくとも前記乾式集塵装置の前においてガス冷却凝縮装置に入る高温炉ガス、又はガス冷却凝縮装置から出た排ガスに混合することを特徴とする低融点有価物の回収方法。
  8. 請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の低融点有価物の回収方法であって、高温炉生成ガスの温度を600℃以上、ガス組成のCO/CO比を少なくとも4以上とした後、ガス冷却凝縮装置に導入することを特徴とすることを特徴とする低融点有価物の回収方法。
  9. 請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載の低融点有価物の回収方法であって、前記ガス冷却凝縮装置内のガス組成を測定し、この値から前記低融点有価物の沸点と融点を求めることを特徴とする低融点有価物の回収方法。
  10. 高温炉生成ガスに含まれる低融点有価物を生成ガス中より分離して回収する装置であって、前記低融点有価物の蒸気・ミストを凝縮して液体状で回収するためのガス冷却凝縮装置と、当該ガス冷却凝縮装置から排出される排ガスを、前記低融点有価物が固体状になるまで冷却するガス冷却装置と、冷却された排ガス中の固体を回収する乾式集塵装置と、当該乾式集塵装置により回収された固体を前記ガス冷却凝縮装置中に装入する装置を備えたことを特徴とする低融点有価物の回収装置。
  11. 請求項10に記載の低融点有価物の回収装置であって、前記乾式集塵装置により回収された固体をガス冷却凝縮装置中に装入する装置が、当該固体を、不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方を搬送流体として前記ガス冷却凝縮装置中に吹き込む粉粒体吹き込み装置であることを特徴とする低融点有価物の回収装置。
  12. 請求項10又は請求項11に記載の低融点有価物の回収装置であって、回収された液体状低融点有価物に含まれる不純物を分離する比重分離式分離装置、又は遠心分離式分離装置の少なくとも一方を有することを特徴とする低融点有価物の回収装置。
  13. 請求項12に記載の低融点有価物の回収装置であって、前記比重分離式分離装置が、回収物溶融炉であることを特徴とする低融点有価物の回収装置。
  14. 請求項13に記載の低融点有価物の回収装置であって、前記回収物溶融炉の排ガスを、少なくとも前記乾式集塵装置の前においてガス冷却凝縮装置に入る高温炉ガス、又はガス冷却凝縮装置から出た排ガスに混合するような配管系統を有することを特徴とする低融点有価物の回収装置。
  15. 請求項10から請求項14のうちいずれか1項に記載の低融点有価物の回収装置であって、前記ガス冷却凝縮装置中のガス組成を測定する装置と、測定されたガス組成から低融点有価物の沸点と融点とを決定する装置と、ガス冷却凝縮装置中の温度が、決定された沸点以下で融点より高い温度となるように、不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方の吹き込み量を調整する装置を有することを特徴とする低融点有価物の回収装置。
  16. 請求項10から請求項15のうちいずれか1項に記載の低融点有価物の回収装置であって、前記ガス冷却凝縮装置、前乾式集塵装置、前記粉粒体吹き込み装置、ガス流路となる配管のうち少なくとも一箇所に、付着物の機械的掻き取り装置を有することを特徴とする低融点有価物の回収装置。
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