JP2004076089A - 低融点有価物の回収方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】重金属および重金属化合物蒸気を含有する高温のガス中から、回収物の酸化や不純物の混入を最小限にとどめて重金属および重金属化合物等の有価物を除去・分離して回収・再資源化する方法を提供する。
【解決手段】ガス凝縮冷却装置7の下部には、塊成化装置12が設けられており、ここで粉体状の低融点有価物はブリケット状となり回収される。この実施の形態においては、塊成化装置12として、ロールタイプのものを用いている。このように、低融点有価物をまず粉体として取り出し、塊成化装置12よりブリケット状に形成している。よって、回収される低融点有価物は粉体として回収される場合に比して比表面積が小さく、よって、酸化されにくい状態で回収することができ、かつ搬送性、取り扱い性に優れている。
【選択図】 図2
【解決手段】ガス凝縮冷却装置7の下部には、塊成化装置12が設けられており、ここで粉体状の低融点有価物はブリケット状となり回収される。この実施の形態においては、塊成化装置12として、ロールタイプのものを用いている。このように、低融点有価物をまず粉体として取り出し、塊成化装置12よりブリケット状に形成している。よって、回収される低融点有価物は粉体として回収される場合に比して比表面積が小さく、よって、酸化されにくい状態で回収することができ、かつ搬送性、取り扱い性に優れている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃棄物焼却炉排ガス、廃棄物溶融炉生成ガスや金属精錬炉発生ガス等、重金属および重金属化合物等の蒸気、アルカリミスト等の低融点有価物を含有する高温温炉生成ガス中から重金属および重金属化合物等の低下融点有価物を分離し、重金属および重金属化合物を金属状態で、また、その他の有価物を有価物そのものとして回収する方法および装置に関するものである。
【0002】
本発明は、特に製鉄所で発生する表面処理スラッジや電気炉ダストのような亜鉛含有量の多い産業廃棄物や産業汚泥から、金属亜鉛を回収効率よく回収するのに適したものである。
【0003】
【従来の技術】
廃棄物焼却炉排ガス、廃棄物溶融炉生成ガスや金属精錬炉発生ガス等、高温炉生成ガスから重金属および重金属化合物の蒸気、アルカリミスト等を除去する方法としては、従来は主として湿式法が採用されており、その代表的なものが水洗方式である。
【0004】
また乾式方法も種々提案されている。例えば、特開昭62−102811号公報には、輸送用空気を冷却し、これを排ガス中に吹き込んで冷却し、有害ガス成分や金属を集塵装置により捕集する方法が開示されている。
【0005】
また、特開平8−131770号公報には、冷却された金属球を高温ガスと接触させて高温ガスからダストを凝縮させて除去し、その後、金属球から同伴ダストを分離し、表面に重金属および重金属化合物が凝縮した金属球から重金属および重金属化合物を回収する方法が開示されている。
【0006】
さらに、特開平8−131769号公報には、排ガス中に含まれる重金属および重金属化合物の蒸気、アルカリミスト、タールを排ガス中より除去する排ガスの処理方法であって、排ガス温度以下に冷却した金属粒子をその表面温度が50〜300℃の範囲になるように排ガスと接触させ、金属粒子表面に前記物質を凝縮させて排ガス中より除去する排ガスの処理方法およびその装置が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の方法には、次のような問題がある。特開昭62−102811号公報に開示される技術は、輸送用空気を冷却し、これを排ガスに吹き込むため、排ガス温度が著しく低下する。これは、有害ガス成分の除去効率向上の面からは効果的であるが、回収物中に金属状態で微細な重金属類が含まれていることが想定される廃棄物溶融炉生成ガスからの重金属類の回収においては、金属蒸気含有排ガスが水蒸気と接触することにより酸化ロスが増大し、金属状態での回収が困難となる問題がある。
【0008】
また、水以外の不活性ないし還元性流体を用いて排ガスを急冷下場合、亜鉛等の重金属類は微細な粒子となって集塵装置で捕集されることとなる。これを重金属回収物として扱うには、空気や支燃性物質との接触による酸化燃焼や爆発の懸念等から、回収物そのままでの資源化・再利用は困難な状況にある。
【0009】
特開平8−131769号公報及び特開平8−131770号公報に開示される技術においては、金属球を繰り返し使用するためには、表面に付着した重金属類を機械的に剥離させるか溶解して分離する必要があり、いずれも手間がかかる上に分離効率を高めることは困難である。さらに、金属球表面には重金属類との合金層が生成するので、重金属類等を有価物として効率的に分離回収することは困難である。
【0010】
また、重金属類が付着した金属等の球形粒子から付着した重金属類を分離するための機械的な剥離ないし付着物の溶解を試みた場合、表面が酸化される可能性も高く、重金属類等が金属状態で付着していてもそれを金属として回収して資源化・再利用することは困難な状況であった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、廃棄物焼却炉排ガス、廃棄物溶融炉生成ガスや金属精錬炉発生ガスなど、重金属および重金属化合物蒸気を含有する高温のガス中から、回収物の酸化や不純物の混入を最小限にとどめて重金属および重金属化合物等の有価物を除去・分離して回収・再資源化する方法及び装置を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための第1の手段は、高温炉生成ガスに含まれる低融点有価物を生成ガス中より分離して回収する方法であって、前記低融点有価物の蒸気・ミストを凝縮・回収するためのガス冷却凝縮装置を備え、そのガス冷却凝縮装置内温度を当該低融点有価物の融点より低い温度に、不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方を用いて調整しつつ固体状態で回収し、その後、塊状に成形した状態で払い出すことを特徴とする低融点有価物の回収方法(請求項1)である。
【0013】
ここで、高温炉とは、高温反応炉一般を指す言葉であり、代表的なものとして、廃棄物焼却炉、廃棄物溶融炉、高炉・シャフト炉・非鉄金属用製錬炉・流動層型・キルン型・回転炉床型その他の金属製錬炉、転炉・電気炉その他の金属精錬炉等があげられる。高温炉生成ガスとは、高温炉から発生するガス一般を指す。また、塊状には、粒状、ブリケット状、コンパクト状のものが含まれる。
【0014】
また、低融点有価物として代表的なものは、重金属および重金属化合物であるが、これらには、亜鉛、塩化亜鉛、鉛、塩化鉛、砒素、塩化砒素、酸化砒素、カドミウム、塩化カドミウム、酸化カドミウム、水銀、塩化水銀、塩化鉛、酸化鉛、燐、塩化燐、酸化燐、塩化ニッケル、塩化鉄、硫黄、硫化亜鉛、硫化鉛、硫化砒素、硫化カドミウム、硫化鉄、硫化ニッケルなどとそれらとほぼ同様の挙動を熱力学的にとると考えられる各種の金属、金属ハロゲン化物、金属硫化物、金属炭化物等がある。
【0015】
また、低融点有価物には、アルカリミストが含まれるが、これらの代表的なものは、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、水酸化カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウムなどのミストである。もちろん、低融点有価物はこれらのものに限られるものではない。
【0016】
本手段によれば、固体状態で回収される低融点有価物を、塊状に成形した状態で払い出しているので、回収される低融点有価物固体の被表面積が小さくできる。よって、酸化され難い有価物として回収することが可能になる。特に亜鉛のような低融点有価物は極めて酸化され易く、通常のダストのように粉粒体として回収するとすぐ酸化されてしまうが、本手段により塊状にして回収すれば、酸化量の少ない状態で回収することができると共に、搬送が容易である。
【0017】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段であって、前記還元性流体がLNG、LPG、CO、H2含有回収プロセスガス、灯油、タール、廃プラ等の炭化水素系化合物含有廃棄物であってガス冷却凝縮装置内温度で流体となるもの、から選ばれた少なくとも1種類であることを特徴とするもの(請求項2)である。
【0018】
還元性流体としてこれらのものを用いることにより、回収有価物が金属状態の場合特に酸化されない状態で回収することができる。LNG、LPGや、灯油、タールは一般的に市場で入手しやすい。また、CO、H2含有回収プロセスガスは製鉄所で入手しやすく、また、前記高温炉生成ガスを除塵、冷却したものをそのまま用いることもできるので、入手しやすい。廃プラ等の炭化水素系化合物含有廃棄物であってガス冷却凝縮装置内温度で流体となるものを使用すれば、廃プラ処理設備からの副生ガスを有効利用することができる。
【0019】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段又は第2の手段であって、ガス冷却凝縮装置出口でのガス温度を600℃以上、ガス組成をCO/CO2比で少なくとも4以上とすることを特徴とするもの(請求項3)である。
【0020】
ガス冷却凝縮装置出口でのガス組成がCO/CO2比で4未満であると、重要な低融点有価物である亜鉛が酸化されやすくなる。よって、本手段においては、ガス冷却凝縮装置出口でのガス組成がCO/CO2比を4以上に限定する。また、ガス温度は、酸化防止の観点から600℃以上とするが、800℃以上とすることが望ましい。また、ガス温度が950℃以上であると、亜鉛が金属状態のままでガス冷却凝縮装置内に入るので、高温炉生成ガスの温度を950℃以上にした後、ガス冷却凝縮装置に導入することが特に好ましい。
【0021】
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第1の手段から第3の手段のいずれかであって、ガス冷却凝縮装置から排出されたガスをガス冷却凝縮装置出口の後段で乾式除塵した後、燃料ないし還元性有価ガスとして回収するか、昇圧して燃料ないし還元性有価ガスとして利用することを特徴とするもの(請求項4)である。
【0022】
本手段によれば、ガス冷却凝縮装置からの排ガスを有効利用することができる。特に、回収された排ガスを低融点有価物を含有する廃棄物の燃焼に使用したり、ガス冷却凝縮装置の冷却用流体の少なくとも一部として利用すれば、廃棄物焼却・低融点有価物回収システム内で消費することができる。
【0023】
前記課題を解決するための第5の手段は、前記第4の手段であって、ガスを乾式除塵して回収したダストを、温度を調整するための不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方をキャリアガスとしてガス冷却凝縮装置へ吹き込むことを特徴とするもの(請求項5)である。
【0024】
本手段によれば、ガスを乾式除塵して回収したダストはガス冷却凝縮装置へ吹き込まれるので、回収物塊状化装置をガス冷却凝縮装置の払い出し部分1箇所に集約することができる。
【0025】
前記課題を解決するための第6の手段は、前記第1の手段から第5の手段のいずれかであって、前記ガス冷却凝縮装置内のガス組成を測定し、この値から前記低融点有価物の融点を求めることを特徴とするもの(請求項6)である。
【0026】
本手段においては、ガス冷却凝縮装置内のガス組成を測定し、この値から前記低融点有価物の融点を求めているので、無駄な冷却を行うことなく、かつ安定してガス冷却凝縮装置内を、低融点有価物の融点以下に保つことができる。
【0027】
前記課題を解決するための第7の手段は、前記第1の手段から第6の手段のいずれかであって、前記高温炉生成ガスが、廃棄物溶融焼却炉からの生成ガスであり、回収された低融点有価物を、当該廃棄物溶融焼却炉に投入することを特徴とするもの(請求項7)である。
【0028】
本手段においては、廃棄物溶融焼却炉からの生成ガス中の低融点有価物を回収し、回収した低融点有価物を廃棄物溶融焼却炉に投入して、廃棄物溶融焼却炉から溶融された低融点有価物を回収して固体とするようにしている。よって、閉じられた系の中で、低融点有価物を、効率的に回収することができる。
【0029】
前記課題を解決するための第8の手段は、高温炉生成ガスに含まれる低融点有価物を生成ガス中より分離して回収する装置であって、前記低融点有価物の蒸気・ミストを凝縮・回収するためのガス冷却凝縮装置と、当該ガス冷却装置において固体化された前記低融点有価物を塊状にする塊状化装置を備えたことを特徴とする低融点有価物の回収装置(請求項8)である。
【0030】
前記課題を解決するための第9の手段は、前記第8の手段であって、前記ガス冷却凝縮装置の後段に、ガスを乾燥しガス中のダストを捕集する乾式集塵装置を備えたことを特徴とするもの(請求項9)である。
【0031】
前記課題を解決するための第10の手段は、前記第9の手段であって、前記乾式集塵装置で回収されたダストを、不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方をキャリアガスとしてガス冷却凝縮装置へ吹き込む、粉粒体吹き込み装置を有することを特徴とするもの(請求項10)である。
【0032】
これら第8の手段から第10の手段によれば、それぞれ前記第1の手段、第4の手段、第5の手段である低融点有価物の回収方法を実施することができる。
【0033】
前記課題を解決するための第11の手段は、前記第8の手段から第10の手段のいずれかであって、前記ガス冷却凝縮装置、前乾式集塵装置、前記粉粒体吹き込み装置、ガス流路となる配管のうち少なくとも一箇所に、付着物の機械的掻き取り装置を有することを特徴とするもの(請求項11)である。
【0034】
本手段によれば、付着物の機械的掻き取り装置により、内壁に付着した付着物を掻き落とすことができるので、低融点有価物の回収率を高めることができると共に、ガス流路の閉塞や圧力損失の増大を招きにくくすることができる。
【0035】
前記課題を解決するための第12の手段は、前記第8の手段から第11の手段のいずれかであって、前記ガス冷却凝縮装置中のガス組成を測定する装置と、測定されたガス組成から低融点有価物の融点を決定する装置と、ガス冷却凝縮装置中の温度が、決定された融点以下となるように、不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方の吹き込み量を調整する装置を有することを特徴とするもの(請求項12)である。
【0036】
本手段によれば、前記第第6の方法である低融点有価物の回収方法を実施することができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1は、本発明を廃棄物の溶融焼却炉に応用した例であり、廃棄物溶融焼却炉1が高温炉に相当する。亜鉛を含有する廃棄物・汚泥は、湿潤状態で原料乾燥・予熱装置2に装入され、乾燥・予熱されて、還元材と共に廃棄物溶融焼却炉1に装入される。廃棄物溶融焼却炉1では、黒鉛電極3に通電され抵抗加熱により装入物19が加熱され、可燃物は燃焼し、燃焼しない物質は溶融される。溶融物4は廃棄物溶融焼却炉1の底部に溜まり、スラグ・メタルとして出湯口5から取り出される。
【0038】
出湯口を開けたとき、初めに底に溜まっているメタルが排出され、その後メタルの上に浮いているスラグが排出されるので、メタルとスラグを分離して取り出すことができる。
【0039】
可燃物が燃焼することにより発生した排ガスは、排ガス口6から金属亜鉛蒸気含有ガスとして排出され、ガス冷却凝縮装置7で凝縮・冷却された後、ガス冷却装置8でさらに冷却され、その後、乾式除塵装置9でダストを取り除かれて清浄化され、回収ガスとして、回収される。
【0040】
回収された回収ガスは、コンプレッサ10で昇圧され、空気と共に原料乾燥・予熱装置2の燃焼バーナ11に吹き込まれて燃焼し、原料乾燥・予熱装置2内を加熱する。
【0041】
これらの装置のうち、ガス冷却凝縮装置7、ガス冷却装置8、乾式除塵装置9の構成が、本発明の主要部に直接関係する。これらの装置の詳細を図2に示す。以下の図において、前出の図に示された構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略することがある。
【0042】
高温炉ガス(金属亜鉛蒸気含有ガス)は、ガス冷却凝縮装置7に入り、ここで、回収すべき低融点有価物(この場合主として亜鉛)の融点以下の温度まで冷却される。これにより、低融点有価物は凝固して粉粒体となり、ガス冷却凝縮装置7の下部から排出される。
【0043】
ガス冷却凝縮装置7の下部には、塊成化装置12が設けられており、ここで粉粒体状の低融点有価物はブリケット状となり回収される。この実施の形態においては、塊成化装置12として、ロールタイプのものを用いている。
【0044】
このように、本実施の形態においては、低融点有価物をまず粉粒体として取り出し、塊成化装置12よりブリケット状に形成している。よって、回収される低融点有価物は粉粒体として回収される場合に比して比表面積が小さく、よって、酸化されにくい状態で回収することができ、かつ搬送性、取り扱い性に優れている。
【0045】
このようにして大部分の低融点有価物はガス冷却凝縮装置7で回収されるが、一部は排ガス中に残留してガス冷却凝縮装置7から排ガスと共に排出される。ガス冷却装置8は、乾式除塵装置9の使用可能温度まで排ガスを冷却する。
【0046】
排ガスはこの状態で乾式除塵装置9に入り、粉粒体状の物質が排ガスから回収される。この回収物は、乾式除塵装置9の下部から取り出され、ブリケッティングマシン13によってブリケット化されて回収される。この回収物も粉粒体として回収される場合に比して比表面積が小さく、よって、酸化されにくく、搬送性、取り扱いに優れた状態で回収される。
【0047】
このようにして乾式除塵装置9から回収される低融点有価物を含んだダストを、塊状として回収するのでなく、粉粒体のまま粉粒体吹き込み装置14に回収し、窒素ガス等の不活性ガス、又はLPG、LNG等の還元性ガスをキャリアガスとして、ガス冷却凝縮装置7中に吹き込むようにしてもよい。
【0048】
ガス冷却凝縮装置7は、不活性ガス、還元性ガス又はこれらの混合気体により冷却されるが、その冷却用気体をキャリアガスとして乾式除塵装置9から回収されたダストをガス冷却凝縮装置7に吹き込むわけである。これにより、冷却凝縮装置7内に吹き込まれたダストは、ガス冷却凝縮装置7内で固化する低融点有価物と共に、ガス冷却凝縮装置7の下部に落下し、塊成化装置12よりブリケット化されて回収される。よって、ブリケッティングマシン13を省略することができる。
【0049】
なお、いずれの場合に置いても、回収された低融点有価物は、ダスト類を含んでいるので、図1に示した廃棄物溶融焼却炉1に入れて還元溶融し、金属類とスラグ類を分離して出湯口から取り出すようにすると、純粋に近い金属として取り出すことができる。
【0050】
図3に本発明の別の実施の形態である、低融点有価物の回収装置の主要部を示す。前述のように、大部分の低融点有価物はガス冷却凝縮装置7で回収されるが、一部は排ガス中に残留してガス冷却凝縮装置7から排ガスと共に排出される。ガス冷却装置8は、乾式除塵装置9の使用可能温度まで排ガスを冷却する。
【0051】
排ガスはこの状態で乾式除塵装置9に入り、粉粒体状の物質が排ガスから粉粒体吹き込み装置14に回収される。そして、窒素ガス等の不活性ガス、又はLPG、LNG等の還元性ガスをキャリアガスとして、ガス冷却凝縮装置7中に吹き込まれる。
【0052】
ガス冷却凝縮装置7には、ガス冷却凝縮装置7内の温度とガス組成(CO、CO2、O2他)を測定する温度・ガス組成測定装置15が設けられており、その出力が冷却ガス・粉粒体吹き込み量調節装置16に入力される。冷却ガス・粉粒体吹き込み量調節装置は、ガス冷却凝縮装置7中のガス組成に応じて、低融点有価物の融点を算出し、ガス冷却凝縮装置7内の温度がこの融点以下となるように、冷却ガス・粉粒体流量調節弁17を駆動して、冷却ガスと粉粒体流量を調節する。これにより、吹き込まれる冷却ガスを無駄にすることなく、かつ、安定して低融点有価物を固化して回収することができる。
【0053】
図4に、本発明のさらに別の実施の形態である、低融点有価物の回収装置の主要部を示す。この実施の形態の設備は、図2、図3に示したものとほぼ同じであるが、ガス冷却凝縮装置7の中に、その内壁に付着した付着物を掻き落とす付着物掻き取り装置18が設けられているところが特徴とするところである。
【0054】
この付着物掻き取り装置18は、上下可能なスクレーパ式クリーナで構成されており、上下運動させることにより、ガス冷却凝縮装置7の内壁に付着した付着物を掻き落とす。よって、ガス冷却凝縮装置7の内壁に付着した低融点有価物を回収でき、回収効率が上がると共に、ガス冷却凝縮装置7内での詰まりや圧力損失の発生を防止することも可能となる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、廃棄物焼却炉排ガス、廃棄物溶融炉生成ガスや金属精錬炉発生ガスなど、重金属および重金属化合物蒸気を含有する高温のガス中から、回収物の酸化や不純物の混入を最小限にとどめて重金属および重金属化合物等の有価物を除去・分離して回収・再資源化する方法及び装置を提供することができる。
【0056】
特に製鉄所で発生する表面処理スラッジや電気炉ダストのような亜鉛含有量の多い産業廃棄物や産業汚泥から金属亜鉛を回収効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を廃棄物の溶融焼却炉に応用した実施の形態の例を示すブロック図である。
【図2】本発明の主要部の実施の形態の例を示す概要図である。
【図3】本発明の主要部の別の実施の形態の例を示す概要図である。
【図4】本発明のさらに別の実施の形態である、低融点有価物の回収装置の主要部を示す図である。
【符号の説明】
1:廃棄物溶融焼却炉
2:原料乾燥・予熱装置
3:黒鉛電極
4:溶融物
5:出湯口
6:排ガス口
7:ガス冷却凝縮装置
8:ガス冷却装置
9:乾式除塵装置
10:コンプレッサ
11:燃焼バーナ
12:塊成化装置
13:ブリケッティングマシン
14:粉粒体吹き込み装置
15:温度・ガス組成測定装置
16:冷却ガス・粉粒体吹き込み量調節装置
17:冷却ガス・粉粒体流量調節弁
18:付着物掻き取り装置
19:装入物
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃棄物焼却炉排ガス、廃棄物溶融炉生成ガスや金属精錬炉発生ガス等、重金属および重金属化合物等の蒸気、アルカリミスト等の低融点有価物を含有する高温温炉生成ガス中から重金属および重金属化合物等の低下融点有価物を分離し、重金属および重金属化合物を金属状態で、また、その他の有価物を有価物そのものとして回収する方法および装置に関するものである。
【0002】
本発明は、特に製鉄所で発生する表面処理スラッジや電気炉ダストのような亜鉛含有量の多い産業廃棄物や産業汚泥から、金属亜鉛を回収効率よく回収するのに適したものである。
【0003】
【従来の技術】
廃棄物焼却炉排ガス、廃棄物溶融炉生成ガスや金属精錬炉発生ガス等、高温炉生成ガスから重金属および重金属化合物の蒸気、アルカリミスト等を除去する方法としては、従来は主として湿式法が採用されており、その代表的なものが水洗方式である。
【0004】
また乾式方法も種々提案されている。例えば、特開昭62−102811号公報には、輸送用空気を冷却し、これを排ガス中に吹き込んで冷却し、有害ガス成分や金属を集塵装置により捕集する方法が開示されている。
【0005】
また、特開平8−131770号公報には、冷却された金属球を高温ガスと接触させて高温ガスからダストを凝縮させて除去し、その後、金属球から同伴ダストを分離し、表面に重金属および重金属化合物が凝縮した金属球から重金属および重金属化合物を回収する方法が開示されている。
【0006】
さらに、特開平8−131769号公報には、排ガス中に含まれる重金属および重金属化合物の蒸気、アルカリミスト、タールを排ガス中より除去する排ガスの処理方法であって、排ガス温度以下に冷却した金属粒子をその表面温度が50〜300℃の範囲になるように排ガスと接触させ、金属粒子表面に前記物質を凝縮させて排ガス中より除去する排ガスの処理方法およびその装置が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の方法には、次のような問題がある。特開昭62−102811号公報に開示される技術は、輸送用空気を冷却し、これを排ガスに吹き込むため、排ガス温度が著しく低下する。これは、有害ガス成分の除去効率向上の面からは効果的であるが、回収物中に金属状態で微細な重金属類が含まれていることが想定される廃棄物溶融炉生成ガスからの重金属類の回収においては、金属蒸気含有排ガスが水蒸気と接触することにより酸化ロスが増大し、金属状態での回収が困難となる問題がある。
【0008】
また、水以外の不活性ないし還元性流体を用いて排ガスを急冷下場合、亜鉛等の重金属類は微細な粒子となって集塵装置で捕集されることとなる。これを重金属回収物として扱うには、空気や支燃性物質との接触による酸化燃焼や爆発の懸念等から、回収物そのままでの資源化・再利用は困難な状況にある。
【0009】
特開平8−131769号公報及び特開平8−131770号公報に開示される技術においては、金属球を繰り返し使用するためには、表面に付着した重金属類を機械的に剥離させるか溶解して分離する必要があり、いずれも手間がかかる上に分離効率を高めることは困難である。さらに、金属球表面には重金属類との合金層が生成するので、重金属類等を有価物として効率的に分離回収することは困難である。
【0010】
また、重金属類が付着した金属等の球形粒子から付着した重金属類を分離するための機械的な剥離ないし付着物の溶解を試みた場合、表面が酸化される可能性も高く、重金属類等が金属状態で付着していてもそれを金属として回収して資源化・再利用することは困難な状況であった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、廃棄物焼却炉排ガス、廃棄物溶融炉生成ガスや金属精錬炉発生ガスなど、重金属および重金属化合物蒸気を含有する高温のガス中から、回収物の酸化や不純物の混入を最小限にとどめて重金属および重金属化合物等の有価物を除去・分離して回収・再資源化する方法及び装置を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための第1の手段は、高温炉生成ガスに含まれる低融点有価物を生成ガス中より分離して回収する方法であって、前記低融点有価物の蒸気・ミストを凝縮・回収するためのガス冷却凝縮装置を備え、そのガス冷却凝縮装置内温度を当該低融点有価物の融点より低い温度に、不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方を用いて調整しつつ固体状態で回収し、その後、塊状に成形した状態で払い出すことを特徴とする低融点有価物の回収方法(請求項1)である。
【0013】
ここで、高温炉とは、高温反応炉一般を指す言葉であり、代表的なものとして、廃棄物焼却炉、廃棄物溶融炉、高炉・シャフト炉・非鉄金属用製錬炉・流動層型・キルン型・回転炉床型その他の金属製錬炉、転炉・電気炉その他の金属精錬炉等があげられる。高温炉生成ガスとは、高温炉から発生するガス一般を指す。また、塊状には、粒状、ブリケット状、コンパクト状のものが含まれる。
【0014】
また、低融点有価物として代表的なものは、重金属および重金属化合物であるが、これらには、亜鉛、塩化亜鉛、鉛、塩化鉛、砒素、塩化砒素、酸化砒素、カドミウム、塩化カドミウム、酸化カドミウム、水銀、塩化水銀、塩化鉛、酸化鉛、燐、塩化燐、酸化燐、塩化ニッケル、塩化鉄、硫黄、硫化亜鉛、硫化鉛、硫化砒素、硫化カドミウム、硫化鉄、硫化ニッケルなどとそれらとほぼ同様の挙動を熱力学的にとると考えられる各種の金属、金属ハロゲン化物、金属硫化物、金属炭化物等がある。
【0015】
また、低融点有価物には、アルカリミストが含まれるが、これらの代表的なものは、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、水酸化カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウムなどのミストである。もちろん、低融点有価物はこれらのものに限られるものではない。
【0016】
本手段によれば、固体状態で回収される低融点有価物を、塊状に成形した状態で払い出しているので、回収される低融点有価物固体の被表面積が小さくできる。よって、酸化され難い有価物として回収することが可能になる。特に亜鉛のような低融点有価物は極めて酸化され易く、通常のダストのように粉粒体として回収するとすぐ酸化されてしまうが、本手段により塊状にして回収すれば、酸化量の少ない状態で回収することができると共に、搬送が容易である。
【0017】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段であって、前記還元性流体がLNG、LPG、CO、H2含有回収プロセスガス、灯油、タール、廃プラ等の炭化水素系化合物含有廃棄物であってガス冷却凝縮装置内温度で流体となるもの、から選ばれた少なくとも1種類であることを特徴とするもの(請求項2)である。
【0018】
還元性流体としてこれらのものを用いることにより、回収有価物が金属状態の場合特に酸化されない状態で回収することができる。LNG、LPGや、灯油、タールは一般的に市場で入手しやすい。また、CO、H2含有回収プロセスガスは製鉄所で入手しやすく、また、前記高温炉生成ガスを除塵、冷却したものをそのまま用いることもできるので、入手しやすい。廃プラ等の炭化水素系化合物含有廃棄物であってガス冷却凝縮装置内温度で流体となるものを使用すれば、廃プラ処理設備からの副生ガスを有効利用することができる。
【0019】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段又は第2の手段であって、ガス冷却凝縮装置出口でのガス温度を600℃以上、ガス組成をCO/CO2比で少なくとも4以上とすることを特徴とするもの(請求項3)である。
【0020】
ガス冷却凝縮装置出口でのガス組成がCO/CO2比で4未満であると、重要な低融点有価物である亜鉛が酸化されやすくなる。よって、本手段においては、ガス冷却凝縮装置出口でのガス組成がCO/CO2比を4以上に限定する。また、ガス温度は、酸化防止の観点から600℃以上とするが、800℃以上とすることが望ましい。また、ガス温度が950℃以上であると、亜鉛が金属状態のままでガス冷却凝縮装置内に入るので、高温炉生成ガスの温度を950℃以上にした後、ガス冷却凝縮装置に導入することが特に好ましい。
【0021】
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第1の手段から第3の手段のいずれかであって、ガス冷却凝縮装置から排出されたガスをガス冷却凝縮装置出口の後段で乾式除塵した後、燃料ないし還元性有価ガスとして回収するか、昇圧して燃料ないし還元性有価ガスとして利用することを特徴とするもの(請求項4)である。
【0022】
本手段によれば、ガス冷却凝縮装置からの排ガスを有効利用することができる。特に、回収された排ガスを低融点有価物を含有する廃棄物の燃焼に使用したり、ガス冷却凝縮装置の冷却用流体の少なくとも一部として利用すれば、廃棄物焼却・低融点有価物回収システム内で消費することができる。
【0023】
前記課題を解決するための第5の手段は、前記第4の手段であって、ガスを乾式除塵して回収したダストを、温度を調整するための不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方をキャリアガスとしてガス冷却凝縮装置へ吹き込むことを特徴とするもの(請求項5)である。
【0024】
本手段によれば、ガスを乾式除塵して回収したダストはガス冷却凝縮装置へ吹き込まれるので、回収物塊状化装置をガス冷却凝縮装置の払い出し部分1箇所に集約することができる。
【0025】
前記課題を解決するための第6の手段は、前記第1の手段から第5の手段のいずれかであって、前記ガス冷却凝縮装置内のガス組成を測定し、この値から前記低融点有価物の融点を求めることを特徴とするもの(請求項6)である。
【0026】
本手段においては、ガス冷却凝縮装置内のガス組成を測定し、この値から前記低融点有価物の融点を求めているので、無駄な冷却を行うことなく、かつ安定してガス冷却凝縮装置内を、低融点有価物の融点以下に保つことができる。
【0027】
前記課題を解決するための第7の手段は、前記第1の手段から第6の手段のいずれかであって、前記高温炉生成ガスが、廃棄物溶融焼却炉からの生成ガスであり、回収された低融点有価物を、当該廃棄物溶融焼却炉に投入することを特徴とするもの(請求項7)である。
【0028】
本手段においては、廃棄物溶融焼却炉からの生成ガス中の低融点有価物を回収し、回収した低融点有価物を廃棄物溶融焼却炉に投入して、廃棄物溶融焼却炉から溶融された低融点有価物を回収して固体とするようにしている。よって、閉じられた系の中で、低融点有価物を、効率的に回収することができる。
【0029】
前記課題を解決するための第8の手段は、高温炉生成ガスに含まれる低融点有価物を生成ガス中より分離して回収する装置であって、前記低融点有価物の蒸気・ミストを凝縮・回収するためのガス冷却凝縮装置と、当該ガス冷却装置において固体化された前記低融点有価物を塊状にする塊状化装置を備えたことを特徴とする低融点有価物の回収装置(請求項8)である。
【0030】
前記課題を解決するための第9の手段は、前記第8の手段であって、前記ガス冷却凝縮装置の後段に、ガスを乾燥しガス中のダストを捕集する乾式集塵装置を備えたことを特徴とするもの(請求項9)である。
【0031】
前記課題を解決するための第10の手段は、前記第9の手段であって、前記乾式集塵装置で回収されたダストを、不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方をキャリアガスとしてガス冷却凝縮装置へ吹き込む、粉粒体吹き込み装置を有することを特徴とするもの(請求項10)である。
【0032】
これら第8の手段から第10の手段によれば、それぞれ前記第1の手段、第4の手段、第5の手段である低融点有価物の回収方法を実施することができる。
【0033】
前記課題を解決するための第11の手段は、前記第8の手段から第10の手段のいずれかであって、前記ガス冷却凝縮装置、前乾式集塵装置、前記粉粒体吹き込み装置、ガス流路となる配管のうち少なくとも一箇所に、付着物の機械的掻き取り装置を有することを特徴とするもの(請求項11)である。
【0034】
本手段によれば、付着物の機械的掻き取り装置により、内壁に付着した付着物を掻き落とすことができるので、低融点有価物の回収率を高めることができると共に、ガス流路の閉塞や圧力損失の増大を招きにくくすることができる。
【0035】
前記課題を解決するための第12の手段は、前記第8の手段から第11の手段のいずれかであって、前記ガス冷却凝縮装置中のガス組成を測定する装置と、測定されたガス組成から低融点有価物の融点を決定する装置と、ガス冷却凝縮装置中の温度が、決定された融点以下となるように、不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方の吹き込み量を調整する装置を有することを特徴とするもの(請求項12)である。
【0036】
本手段によれば、前記第第6の方法である低融点有価物の回収方法を実施することができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1は、本発明を廃棄物の溶融焼却炉に応用した例であり、廃棄物溶融焼却炉1が高温炉に相当する。亜鉛を含有する廃棄物・汚泥は、湿潤状態で原料乾燥・予熱装置2に装入され、乾燥・予熱されて、還元材と共に廃棄物溶融焼却炉1に装入される。廃棄物溶融焼却炉1では、黒鉛電極3に通電され抵抗加熱により装入物19が加熱され、可燃物は燃焼し、燃焼しない物質は溶融される。溶融物4は廃棄物溶融焼却炉1の底部に溜まり、スラグ・メタルとして出湯口5から取り出される。
【0038】
出湯口を開けたとき、初めに底に溜まっているメタルが排出され、その後メタルの上に浮いているスラグが排出されるので、メタルとスラグを分離して取り出すことができる。
【0039】
可燃物が燃焼することにより発生した排ガスは、排ガス口6から金属亜鉛蒸気含有ガスとして排出され、ガス冷却凝縮装置7で凝縮・冷却された後、ガス冷却装置8でさらに冷却され、その後、乾式除塵装置9でダストを取り除かれて清浄化され、回収ガスとして、回収される。
【0040】
回収された回収ガスは、コンプレッサ10で昇圧され、空気と共に原料乾燥・予熱装置2の燃焼バーナ11に吹き込まれて燃焼し、原料乾燥・予熱装置2内を加熱する。
【0041】
これらの装置のうち、ガス冷却凝縮装置7、ガス冷却装置8、乾式除塵装置9の構成が、本発明の主要部に直接関係する。これらの装置の詳細を図2に示す。以下の図において、前出の図に示された構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略することがある。
【0042】
高温炉ガス(金属亜鉛蒸気含有ガス)は、ガス冷却凝縮装置7に入り、ここで、回収すべき低融点有価物(この場合主として亜鉛)の融点以下の温度まで冷却される。これにより、低融点有価物は凝固して粉粒体となり、ガス冷却凝縮装置7の下部から排出される。
【0043】
ガス冷却凝縮装置7の下部には、塊成化装置12が設けられており、ここで粉粒体状の低融点有価物はブリケット状となり回収される。この実施の形態においては、塊成化装置12として、ロールタイプのものを用いている。
【0044】
このように、本実施の形態においては、低融点有価物をまず粉粒体として取り出し、塊成化装置12よりブリケット状に形成している。よって、回収される低融点有価物は粉粒体として回収される場合に比して比表面積が小さく、よって、酸化されにくい状態で回収することができ、かつ搬送性、取り扱い性に優れている。
【0045】
このようにして大部分の低融点有価物はガス冷却凝縮装置7で回収されるが、一部は排ガス中に残留してガス冷却凝縮装置7から排ガスと共に排出される。ガス冷却装置8は、乾式除塵装置9の使用可能温度まで排ガスを冷却する。
【0046】
排ガスはこの状態で乾式除塵装置9に入り、粉粒体状の物質が排ガスから回収される。この回収物は、乾式除塵装置9の下部から取り出され、ブリケッティングマシン13によってブリケット化されて回収される。この回収物も粉粒体として回収される場合に比して比表面積が小さく、よって、酸化されにくく、搬送性、取り扱いに優れた状態で回収される。
【0047】
このようにして乾式除塵装置9から回収される低融点有価物を含んだダストを、塊状として回収するのでなく、粉粒体のまま粉粒体吹き込み装置14に回収し、窒素ガス等の不活性ガス、又はLPG、LNG等の還元性ガスをキャリアガスとして、ガス冷却凝縮装置7中に吹き込むようにしてもよい。
【0048】
ガス冷却凝縮装置7は、不活性ガス、還元性ガス又はこれらの混合気体により冷却されるが、その冷却用気体をキャリアガスとして乾式除塵装置9から回収されたダストをガス冷却凝縮装置7に吹き込むわけである。これにより、冷却凝縮装置7内に吹き込まれたダストは、ガス冷却凝縮装置7内で固化する低融点有価物と共に、ガス冷却凝縮装置7の下部に落下し、塊成化装置12よりブリケット化されて回収される。よって、ブリケッティングマシン13を省略することができる。
【0049】
なお、いずれの場合に置いても、回収された低融点有価物は、ダスト類を含んでいるので、図1に示した廃棄物溶融焼却炉1に入れて還元溶融し、金属類とスラグ類を分離して出湯口から取り出すようにすると、純粋に近い金属として取り出すことができる。
【0050】
図3に本発明の別の実施の形態である、低融点有価物の回収装置の主要部を示す。前述のように、大部分の低融点有価物はガス冷却凝縮装置7で回収されるが、一部は排ガス中に残留してガス冷却凝縮装置7から排ガスと共に排出される。ガス冷却装置8は、乾式除塵装置9の使用可能温度まで排ガスを冷却する。
【0051】
排ガスはこの状態で乾式除塵装置9に入り、粉粒体状の物質が排ガスから粉粒体吹き込み装置14に回収される。そして、窒素ガス等の不活性ガス、又はLPG、LNG等の還元性ガスをキャリアガスとして、ガス冷却凝縮装置7中に吹き込まれる。
【0052】
ガス冷却凝縮装置7には、ガス冷却凝縮装置7内の温度とガス組成(CO、CO2、O2他)を測定する温度・ガス組成測定装置15が設けられており、その出力が冷却ガス・粉粒体吹き込み量調節装置16に入力される。冷却ガス・粉粒体吹き込み量調節装置は、ガス冷却凝縮装置7中のガス組成に応じて、低融点有価物の融点を算出し、ガス冷却凝縮装置7内の温度がこの融点以下となるように、冷却ガス・粉粒体流量調節弁17を駆動して、冷却ガスと粉粒体流量を調節する。これにより、吹き込まれる冷却ガスを無駄にすることなく、かつ、安定して低融点有価物を固化して回収することができる。
【0053】
図4に、本発明のさらに別の実施の形態である、低融点有価物の回収装置の主要部を示す。この実施の形態の設備は、図2、図3に示したものとほぼ同じであるが、ガス冷却凝縮装置7の中に、その内壁に付着した付着物を掻き落とす付着物掻き取り装置18が設けられているところが特徴とするところである。
【0054】
この付着物掻き取り装置18は、上下可能なスクレーパ式クリーナで構成されており、上下運動させることにより、ガス冷却凝縮装置7の内壁に付着した付着物を掻き落とす。よって、ガス冷却凝縮装置7の内壁に付着した低融点有価物を回収でき、回収効率が上がると共に、ガス冷却凝縮装置7内での詰まりや圧力損失の発生を防止することも可能となる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、廃棄物焼却炉排ガス、廃棄物溶融炉生成ガスや金属精錬炉発生ガスなど、重金属および重金属化合物蒸気を含有する高温のガス中から、回収物の酸化や不純物の混入を最小限にとどめて重金属および重金属化合物等の有価物を除去・分離して回収・再資源化する方法及び装置を提供することができる。
【0056】
特に製鉄所で発生する表面処理スラッジや電気炉ダストのような亜鉛含有量の多い産業廃棄物や産業汚泥から金属亜鉛を回収効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を廃棄物の溶融焼却炉に応用した実施の形態の例を示すブロック図である。
【図2】本発明の主要部の実施の形態の例を示す概要図である。
【図3】本発明の主要部の別の実施の形態の例を示す概要図である。
【図4】本発明のさらに別の実施の形態である、低融点有価物の回収装置の主要部を示す図である。
【符号の説明】
1:廃棄物溶融焼却炉
2:原料乾燥・予熱装置
3:黒鉛電極
4:溶融物
5:出湯口
6:排ガス口
7:ガス冷却凝縮装置
8:ガス冷却装置
9:乾式除塵装置
10:コンプレッサ
11:燃焼バーナ
12:塊成化装置
13:ブリケッティングマシン
14:粉粒体吹き込み装置
15:温度・ガス組成測定装置
16:冷却ガス・粉粒体吹き込み量調節装置
17:冷却ガス・粉粒体流量調節弁
18:付着物掻き取り装置
19:装入物
Claims (12)
- 高温炉生成ガスに含まれる低融点有価物を生成ガス中より分離して回収する方法であって、前記低融点有価物の蒸気・ミストを凝縮・回収するためのガス冷却凝縮装置を備え、そのガス冷却凝縮装置内温度を当該低融点有価物の融点より低い温度に、不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方を用いて調整しつつ固体状態で回収し、その後、塊状に成形した状態で払い出すことを特徴とする低融点有価物の回収方法。
- 請求項1に記載の低融点有価物の回収方法であって、前記還元性流体がLNG、LPG、CO、H2含有回収プロセスガス、灯油、タール、廃プラ等の炭化水素系化合物含有廃棄物であってガス冷却凝縮装置内温度で流体となるもの、から選ばれた少なくとも1種類であることを特徴とする低融点有価物の回収方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の低融点有価物の回収方法であって、ガス冷却凝縮装置出口でのガス温度を600℃以上、ガス組成をCO/CO2比で少なくとも4以上とすることを特徴とする低融点有価物の回収方法。
- 請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の低融点有価物の回収方法であって、ガス冷却凝縮装置から排出されたガスをガス冷却凝縮装置出口の後段で乾式除塵した後、燃料ないし還元性有価ガスとして回収するか、昇圧して燃料ないし還元性有価ガスとして利用することを特徴とする低融点有価物の回収方法。
- 請求項4に記載の低融点有価物の回収方法であって、ガスを乾式除塵して回収したダストを、温度を調整するための不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方をキャリアガスとしてガス冷却凝縮装置へ吹き込むことを特徴とする低融点有価物の回収方法。
- 請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の低融点有価物の回収方法であって、前記ガス冷却凝縮装置内のガス組成を測定し、この値から前記低融点有価物の融点を求めることを特徴とする低融点有価物の回収方法。
- 請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の低融点有価物の回収方法であって、前記高温炉生成ガスが、廃棄物溶融焼却炉からの生成ガスであり、回収された低融点有価物を、当該廃棄物溶融焼却炉に投入することを特徴とする低融点有価物の回収方法。
- 高温炉生成ガスに含まれる低融点有価物を生成ガス中より分離して回収する装置であって、前記低融点有価物の蒸気・ミストを凝縮・回収するためのガス冷却凝縮装置と、当該ガス冷却装置において固体化された前記低融点有価物を塊状にする塊状化装置を備えたことを特徴とする低融点有価物の回収装置。
- 請求項8に記載の低融点有価物の回収装置であって、前記ガス冷却凝縮装置の後段に、ガスを乾燥しガス中のダストを捕集する乾式集塵装置を備えたことを特徴とする低融点有価物の回収装置。
- 請求項9に記載の低融点有価物の回収装置であって、前記乾式集塵装置で回収されたダストを、不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方をキャリアガスとしてガス冷却凝縮装置へ吹き込む、粉粒体吹き込み装置を有することを特徴とする低融点有価物の回収装置。
- 請求項8から請求項10のうちいずれか1項に記載の低融点有価物の回収装置であって、前記ガス冷却凝縮装置、前乾式集塵装置、前記粉粒体吹き込み装置、ガス流路となる配管のうち少なくとも一箇所に、付着物の機械的掻き取り装置を有することを特徴とする低融点有価物の回収装置。
- 請求項8から請求項11のうちいずれか1項に記載の低融点有価物の回収装置であって、前記ガス冷却凝縮装置中のガス組成を測定する装置と、測定されたガス組成から低融点有価物の融点を決定する装置と、ガス冷却凝縮装置中の温度が、決定された融点以下となるように、不活性ガス、還元性流体の少なくとも一方の吹き込み量を調整する装置を有することを特徴とする低融点有価物の回収装置。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN1323176C (zh) * | 2005-05-25 | 2007-06-27 | 华中科技大学 | 废弃物焚烧过程中重金属元素的回收方法和装置 |
JP2009024121A (ja) * | 2007-07-23 | 2009-02-05 | Ihi Corp | 石油残渣からの重金属分離方法及び装置 |
-
2002
- 2002-08-16 JP JP2002237448A patent/JP2004076089A/ja active Pending
Cited By (2)
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JP2009024121A (ja) * | 2007-07-23 | 2009-02-05 | Ihi Corp | 石油残渣からの重金属分離方法及び装置 |
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