JP2009256741A - 廃電池よりの有価金属回収方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】乾式法によって、廃電池から各種の有価金属を効率よく多量に回収するための技術を提案する。
【解決手段】移動型炉床炉内を移動する移動床上に、金属含有物等を装入積載して加熱、還元することにより、特定の金属を分離回収する方法において、前記移動床上に、廃電池を積載し、その移動床が炉内を移動する間の加熱過程で、高揮発性金属を揮発させ、このとき発生した炉内ガスから高揮発金属の粉末を回収する一方、低揮発性金属については、前記移動床上において回収する。
【選択図】図1
【解決手段】移動型炉床炉内を移動する移動床上に、金属含有物等を装入積載して加熱、還元することにより、特定の金属を分離回収する方法において、前記移動床上に、廃電池を積載し、その移動床が炉内を移動する間の加熱過程で、高揮発性金属を揮発させ、このとき発生した炉内ガスから高揮発金属の粉末を回収する一方、低揮発性金属については、前記移動床上において回収する。
【選択図】図1
Description
本発明は、金属含有物、特に廃電池を移動型炉床炉内で加熱、還元することにより、有価金属を回収する方法に関する。
現在、使われている各種の電池は、様々な形で多くの有用な金属を利用して製作されている。例えば、図1は、最も一般的なアルカリ電池等の一次電池の構造を示すものである。これらの電池は、正極には二酸化マンガンが用いられ、負極には亜鉛が用いられ、集電体には黄銅が用いられている他、さらには亜鉛や鉄、銅、マンガン等の金属(以下、「有価金属」という)を用いて構成されている。また、ニッケル−カドミウム電池の場合には、ニッケルやカドミウムなども含まれており、蓄電池には鉛が含まれている。
つまり、電池はこれら有価金属の塊ともいえるものである。しかし、使用済みの廃電池からこうした有価金属を回収する事業は、あまり進んでいないのが実情である。電池の業界団体である電池工業会の統計によると、日本国内での年間生産量は約5万7000トン程度であり、外国産電池も含めるとそれ以上の電池が使われているが、その大半が埋め立て廃棄されているものと推定されている。それは、電池のリサイクルを手掛けている企業が数社しかなく、処理能力が不足しているのと、処理技術が未熟なためである。
上述したように、電池は、多種類の有価金属成分(以下、合金を含めてこれらを金属という)を含む複合材料である。例えば、電池中の含有金属は、これを大別すると、主として高揮発性金属とそれ以外の低揮発性金属とに分けることができる。ここで、高揮発性金属とは金属もしくは塩化物が、1200℃において蒸気圧10−5atm以上である金属を言う。例えば、亜鉛、鉛、マグネシウム、カドミウム、ナトリウム、リチウム、カリウムなどである。一方、低揮発性金属とは、金属および塩化物が、少なくとも1200℃の温度において蒸気圧10−5atm未満である金属を言う。具体的には鉄、ニッケル、マンガン、クロム、銅を指す。
ところで、製鉄所では、従来、所内で発生する製鉄ダストのリサイクル技術を持っている。この製鉄ダストもまた、高揮発性金属である亜鉛や、低揮発性金属である鉄を含有している点で、上述した電池と類似しているものである。
このように、揮発特性の異なる複数種の金属を含有する物質から、その構成金属を乾式法で分離回収する技術としては、廃電池の処理ではないが、その類似技術として、特許文献1に開示されているような方法がある。この方法は、回転炉床炉(RHF)内を水平に移動する炉床(移動床)上に、主として製鉄ダストを積載し、上方からの輻射伝熱によって原料を加熱し、還元することにより、このダスト中に含まれる亜鉛や鉛等を蒸発させた上で集塵装置にて回収し、一方、炉床には還元鉄が残るようにしてこれをスクリューフィーダなどで直接取り出して回収する技術である。
特許第3513832号
上記従来技術(特許文献1)は、主として製鉄ダストやスラッジから、これらを加熱、還元して、亜鉛や鉛などを揮発させて粗酸化亜鉛や粗酸化鉛として回収する一方、残存物を還元鉄として回収する方法である。しかし、この方法は、製鉄ダストに比べてより多くの有価金属を含む電池から、個々の有価金属を効率よく分別回収する方法を提案するものではない。
本発明の目的は、電池から各種の有価金属を乾式法によって効率よく分別回収する技術が未だ確立されていないという現状に鑑み、そうした技術を開発し提案することにある。
そこで、発明者らは、従来技術の現状を踏まえ、使用済み廃電池(以下、単に「電池」という)の処理、即ち電池に含まれる各種の金属成分について、これらが主として高揮発性の金属とその他のたとえば低揮発性の金属とに分けられることに着目し、これらの金属を揮発性の違いを利用して分離回収するに当たり、移動型炉床炉を利用して処理することを発案した。
即ち、本発明は、移動型炉床炉内を移動する移動床上に、金属含有物を装入積載して加熱、還元することにより、特定の金属を分離回収する方法において、前記移動床上に、廃電池を積載し、その移動床が炉内を移動する加熱過程で、高揮発性金属を揮発させ、このとき発生した炉内ガスから、このガスを冷却することによって高揮発性金属の粉末を回収する一方、その他の例えば低揮発性の金属成分については、前記移動床上において回収することを特徴とする廃電池からの有価金属回収方法である。
本発明においては、
(1)前記移動床上に、廃電池と共に、金属含有物および固体炭素含有物を含む粉状もしくは塊状の物質を装入すること、
(2)加熱炉内の最高温度を1200℃以上に加熱すること、
(3)加熱炉内の最高温度を1400℃以上に加熱すること、
(4)前記移動床上に、固体炭素を80mass%以上含有する固体還元剤を積載すること、
が、より好ましい解決手段である。
(1)前記移動床上に、廃電池と共に、金属含有物および固体炭素含有物を含む粉状もしくは塊状の物質を装入すること、
(2)加熱炉内の最高温度を1200℃以上に加熱すること、
(3)加熱炉内の最高温度を1400℃以上に加熱すること、
(4)前記移動床上に、固体炭素を80mass%以上含有する固体還元剤を積載すること、
が、より好ましい解決手段である。
(1)本発明によれば、廃電池から多種類の有価金属を一挙に効率よく多量に回収することができる。
(2)本発明によれば、金属のもつ揮発特性の差を利用して電池の有価金属の回収を行うので、処理方法、処理設備が簡素化し、有価金属の回収を安価に行うことができる。
(3)本発明によれば、既設の移動型炉床炉を利用して処理することができるので、設備投資を抑制することができる。
(4)本発明によれば、廃電池だけでなく製鉄ダストや製鉄所発生スラッジなども一緒に処理することができるので、設備稼働率が高く、処理コストの低減を図ることができる。
(2)本発明によれば、金属のもつ揮発特性の差を利用して電池の有価金属の回収を行うので、処理方法、処理設備が簡素化し、有価金属の回収を安価に行うことができる。
(3)本発明によれば、既設の移動型炉床炉を利用して処理することができるので、設備投資を抑制することができる。
(4)本発明によれば、廃電池だけでなく製鉄ダストや製鉄所発生スラッジなども一緒に処理することができるので、設備稼働率が高く、処理コストの低減を図ることができる。
本発明方法において特徴的な移動型炉床炉とは、例えば、環状の加熱炉内に、水平移動する移動床が配設された形式の炉などであって、その移動床が加熱炉内を水平移動する過程で、該移動床上に積載した原料、例えば、上記電池やこの電池とともに装入される金属含有物質を加熱して還元する炉である。一般に、このような炉は、図2に示すように、回転する形式をとることから、回転炉床炉とも呼ばれている。
図2に示す移動型炉床炉は、予熱帯10a、還元帯10b、溶融帯10cおよび冷却帯10dに区画された環状型加熱炉の加熱炉本体10内に、連続的に水平移動する環状の移動床11を配置してなるものである。そして、この炉では、前記移動床11上に、被処理原料、例えば、電池や塊状、粉状の金属含有物質ならびに固体還元剤からなる混合物12を積載して加熱し、さらには還元し、その後、その混合物12を少なくとも一度は溶融させるようになっている。なお、上記移動床11は、通常、耐火物でライニングされた加熱炉本体10によって囲われているが、炉床耐火物保護のために、上記混合原料層の積載とは別に、床敷材となる炭材の層を設けてもよい。また、この加熱炉本体10の側部および/または上部には、バーナー13が配設され、このバーナー13の燃焼を熱源として、該移動床11上の電池や金属等が加熱される。なお、この図において、14は被処理原料(廃電池)を該移動床11上に装入する装入装置、15は加熱・還元生成物を排出する排出装置である。本炉においては前記バーナーの燃料を調整することで、炉内温度を特定の温度に保持することができる。
積載原料である上記の混合物12には回収しようとする有価金属のほかに、二酸化珪素や酸化アルミナなどの化合物からなる、いわゆるスラグ形成成分も含まれている。従って、本発明に係る有価金属回収方法おいては、前記移動床11上には、高揮発性金属以外の金属、例えば、低揮発性金属が上記スラグ成分と共に残留することになる。その結果、これらのスラグ成分が、金属の還元作用を助け、含有金属、例えば、還元鉄の生成に大きく寄与すると共に、炉温を高くすることによって、還元鉄とスラグとの溶融分離を容易に実現することができる。
以上説明したように、本発明は、移動型炉床炉内の移動床上に、電池等の被処理物を積載し、これらを移動床が炉内を移動する間に加熱することによって、まず、高揮発性金属のみを揮発させ、このとき発生した炉内ガス(高揮発性金属含有蒸気)を別工程に導いて冷却することにより、該炉内ガス含有成分を固体粉末状にして回収する。一方、低揮発性金属については、より高温に加熱することによって、これらを該移動床上で溶融させて、冷却により固化させた後にスクリューフィーダーなどを介し回収することにより、廃電池から、それぞれの有価金属を分離回収することができるようになる。
本発明においては、炉内最高温度、即ち、溶融帯10cにおける温度は、高揮発性金属を揮発させるために1200℃以上に加熱することが好ましい。これは電池内に含まれる高揮発性金属である亜鉛や鉛、カドミウム、ナトリム、リチウム、カリウムなどの蒸気圧の高い金属を揮発させるために必要な温度である。
一方、加熱炉内の移動床11上において金属成分とスラグ成分とからなる低揮発性金属、例えば、鉄、マンガン、ニッケル、クロム、銅などとスラグとの分離を確実に行うために、望ましくは前記溶融帯10cおける炉内最高温度は、1400℃以上に加熱し還元して溶融させることが更に好ましい。
本発明において、移動床上に単独で、または他の塊状・粉状の金属含有物(製鉄ダスト、製鉄スラッジ等)と共に装入し積載される電池とは、具体的には、アルカリマンガン電池、アルカリ電池、リチウム電池、鉛電池、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池などである。なお、本発明においては、使用する全ての電池が、高揮発性金属と低揮発性金属の両方を含有する電池である必要はなく、一部であってもかまわない。
これらの電池は、一般に、酸化もしくは一部がイオン化した金属を含有しているのが普通である。従って、これらの金属を還元するには、還元剤、とくに炭素材料が共存していることが有効である。もっとも電池の中にはもともと少量の炭素を含む種類のものがあり、これらは還元剤として有効に利用できる。また、前記ダスト中には炭素分が含まれているのでこれを利用するようにしてもよい。さらには廃電池の堆積層下の前記移動床上に固体還元剤からなる炭材層を形成する場合には、その固体還元剤(炭素濃度が50mass%以上含有する物質)もまた有効に利用することができる。
本発明の好ましい実施形態では、炉内に装入された電池は、常温から急激に加熱される。このとき、最初はまず水分が蒸発し、次に紙やプラスチックなどが燃焼する。そして、炉内が900℃から1100℃の領域まで昇温すると、特に亜鉛や鉛など揮発性の高い金属やハロゲン化物が揮発し始める。
また、この廃電池に加え、金属および固定炭素を含有する粉状もしくは塊状の物質を併せて装入して加熱・還元処理する場合、炉内温度を1000℃以上に加熱すると該固定炭素が酸素もしくは酸化物と反応してCOガスを発生し、装入されている該廃電池の近傍である炉床表面の酸素ポテンシャルが急激に低下し、強い還元雰囲気となる。
電池中に含まれる亜鉛や鉛などは一部が酸化亜鉛、酸化鉛で存在する。その比率は電池の使用状況もしくは充電状況によって変化する。このような還元雰囲気の下で、前述の酸化亜鉛や酸化鉛、さらには揮発性の低い他の金属成分である鉄やマンガンなどは還元される。その結果、酸化亜鉛や酸化鉛などは、金属化した後に蒸発する。蒸発したこれらの高揮発性金属成分は、炉内ガスと共に排出される。一方、揮発性の低い鉄やマンガンなどは移動床上に残り、上述したようにして回収される。
回転炉における加熱時間は、該当設備の最高速度より遅ければ(最低回転時間が長ければ)どのようにでも設定することが可能である。十分な時間をかければ前述のように炉最高温度900℃であったとしても、低揮発金属と高揮発金属とを分離することが可能である。
一方で、分離を工業的に実現するためには、分離に必要な温度および加熱時間に関して明確に規定することが必要である。一般に回転炉における加熱時間は10〜20分であるため、通常の回転炉の操業をシミュレートするためには、この加熱時間内で揮発反応が完結することが望ましい。
発明者らはこの点について検討を続けた。そこで、この検討のために、市販のアルカリ電池を黒鉛ルツボ゛内に置き、1000℃−1500℃の電気炉内に投入し、一般的な回転炉操業の加熱時間に対応した約15分間の急速加熱(このような加熱を行うことで、回転炉の場合と同様の急速加熱状態を再現することが可能である。)を実施した。各温度における15分加熱後の状況(写真)を図5に示した。この図に示すように、電池は加熱によって黒く変色しており、塗装などの有機物や内部に含まれる水分は蒸発もしくはガス化した。また、加熱中の観察では白煙が上がっていたことから、高揮発金属すなわち、ここでは亜鉛分の蒸発も起こっていたと考えられる。
次に、得られた加熱後のサンプル(電池)を解体し、粉体分(電池内部)と固体分(電池の外側および電極部分)にわけて重量測定と成分分析を実施した。これらのデーターから、加熱前を100%とした場合の亜鉛、鉄、マンガンの固形分への残存率を求めて図6に示した。この図に示すように、マンガン、鉄は90〜100mass%が残存しているのに対して、亜鉛分は1200℃以上では残存率10%以下となった。
本発明は、回転炉における加熱によって、高揮発性金属を電池から分離することを主眼としており、亜鉛の残存率は10%以下が望ましい。従って、その目的を達成するためには、1200℃以上に加熱することが必要である。
このように、加熱により発生し、炉外に排出される亜鉛や鉛などの高揮発性金属の蒸気、高揮発性金属酸化物微粒子は、排ガスとともに冷却塔やバグフィルターなどからなる排ガス処理装置へ導かれる。この排ガス処理装置では、冷却塔において冷却、散水あるいは常温の空気による希釈などの処理が行われて、200℃程度まで冷却される。この時点で金属亜鉛や金属鉛の蒸気もしくはハロゲン化物蒸気は、微粒子状の固体となる。これをバグフィルターで除塵すると、排ガス中に含まれていた高揮発性金属酸化物や高揮発性金属、高揮発性塩化物の微粒子から、これらの微粒子に含まれている亜鉛、鉛、カドミウム、ナトリウム、リチウム、カリウムなどの高揮発性金属が、混合物として回収される。
このようにして回収されたバクダストのことを2次ダスト(なお、原料として使用した前記製鉄ダストを1次ダストと呼ぶ)と呼ぶ。かかる2次ダストは、少なくとも一度は熱処理を受けているため、希少金属である亜鉛、鉛、カドミウムを含んでおり、そのまま亜鉛精錬用原料として使用することもできる。ただし、いくつかの電池は塩化亜鉛などのハロゲン化物が含まれる場合がある。ハロゲン化物濃度が高い場合は、精錬の邪魔になるので、この2次ダストを水洗し、水に溶解しやすい塩化物の形態にして除去してもよい。
一方、低揮発性の金属、例えば、廃電池内のマンガン、ケースの鉄などは、移動炉床上に残留させて回収する。前述のとおり、移動床上は、低酸素ポテンシャルの高還元雰囲気であり、低揮発性の金属の酸化物が存在すれば、還元されて金属となる。これらの金属は冷却後、例えば、該移動床からスクリューフィーダで排出する。排出された低揮発性の金属、例えば鉄、ニッケル、マンガン、クロムなどは、電気炉、転炉などの合金化成分として再利用できる。
このようにして回収される低揮発性金属成分である鉄などは、例えば、乾電池であれば筒状の形状をしているため、移動床上に回収した後に再利用しようとした場合、運搬などで困難を生じることが考えられる。そこで、本発明では、前記移動型炉床炉の加熱炉の最高温度を1400℃以上とする。このような高温に加熱すると、その一部は浸炭して融点を低下させるため、溶融させることができるようになる。このようにして、一旦、溶融させるとそれぞれ形状の異なるものが混ざり合って、一定の形状および組成となり、利用しやすくなる。このとき、移動床上に、固体炭素を80mass%以上含有する物質を積載しておくことによって、炉床上に金属溶湯が生成した時に、その融液が炉床に付着するのを防止することができるようになる。
このようにして、電池を移動型炉床炉内に装入して加熱することにより、酸化金属成分を還元し、高揮発性金属成分は2次ダストへ、一方、低揮発性金属成分は、塊状の回収物としてそれぞれ分別し、リサイクル金属として回収することができる。
この実施例では、図2に示す回転炉床炉を用いた。この炉は、図3に示すように、加熱炉1の溶融帯10c頂部に、炉内で発生する金属蒸気を排気するための排ガス通路10eを有し、その延在位置に冷却スプレー4を備える冷却塔5を設け、さらにその延在位置にはバグフィルター6と煙突7とを設けてなるものである。また、この炉は、天然ガスやプロパンガスを用いるバーナー13によって炉内温度を最高1500℃程度まで加熱でき、これらのガス量および窒素ガス量を適切に管理することで、目標の炉内温度に容易に制御できる。実施に当たっては、炉内を回転移動する移動床11上に、床敷とする炭材8を介して、その上に製鉄ダスト2および廃電池3を積載し、加熱時間が約15分となるように、該移動床11の速度を調整し、発生する各種金属の排ガスは冷却スプレー4を具える冷却塔5を経てバグフィルター6で除塵し、亜鉛などの高揮発性金属を2次ダストとして回収した。
この実施例で使用した製鉄粉(高炉ダスト、焼結粉)およびアルカリ乾電池の化学成分を表1に示した。使用した高炉ダストには、鉄鉱石もしくは焼結鉱由来の亜鉛、酸化鉄およびコークス由来のカーボン分が多量に含まれている。また、亜鉛分および鉄分の被還元酸素(O)とカーボン(C)の物質量比をとるとC/Oは1.2を超えている。これは被還元酸素に対して還元剤であるカーボンが過剰に含有していることを示している。そこで、実施に当たっては、そのC/Oの調整を行うために、カーボン分を殆ど含まない焼結粉を表2に示すような配合比で混合した。また、高炉ダストと焼結粉の混合物は、直径20mmのブリケットにしてから使用した。比較例1、2および発明法1、2では、移動床11上に直接、高炉ダスト、焼結粉および乾電池を層厚15mmの厚さに積載して実験を行った。一方、発明法3〜5については、炭材として層厚50mmの石炭を積載してから、乾電池を層厚15mmの厚さに積載して実験を行った。図4に原料積載時の移動床上の断面図を示す。
なお、移動床上に積載しておく前記石炭は、表3に示す化学成分を有するものを使用した。この石炭は低揮発炭の例であるが、高揮発炭、コークスや電極用の黒鉛などでも同様の効果を得ることができる。
表4は、実施結果を示したものであり、配合粉と該電池の配合量、加熱炉の最高温度および乾電池の比率を変化させて加熱処理したときの結果を示す。
表5に回収されたメタル、スラグ、ダストの重量を示す。比較例1、2および発明法1、2ではメタルスラグは分離していないので合計で記載した。また、得られた2次ダストの組成を表6に示す。
各例示の方法の亜鉛、鉄、マンガンの2次ダストへの分配率を表7に示した。
表4に示すとおり、比較例1,2は、製鉄ダストと焼結粉との混合粉のみを加熱した場合である。炉内最高温度が1300℃である比較例1では、メタルとスラグは分離していなかった。一方、炉内最高温度が1500℃の比較例2では、ダストはメタルとスラグに分離して粒鉄になった。この時、粒鉄の一部は、炉床上に固着しているのが確認された。そのため、鉄分の回収率が90mass%程度に低下した。
これに対し、発明法1は、1100℃で乾電池とダストを同時に加熱し、分離を試みた例である。表からわかるように、発明法を用いることで高揮発金属分を分離することが可能となった。しかし、発明法1では亜鉛分の蒸発による回収は可能であるものの、蒸発量は十分でない。
また、発明法2と3は、混合粉13kg/m2に加えて乾電池を2.0kg/m2加えて最高温度1200℃と1300℃で加熱した場合の例である。発明法4は、同じ配合で最高温度を1500℃にした実施例である。発明法5−7は、製鉄ダスト混合粉および乾電池の下層として炭材を積載した例である。比較例と同様に発明法1−3では還元鉄が、発明法4では粒鉄が得られた。発明法1−3では乾電池は形状を保っていたが、内部に含有していた亜鉛分は揮発しており、乾電池内からはほとんど検出されなかった。このように1200℃以上で実施することで、高揮発性金属と低揮発性金属との分離が完全に達成されることがわかる。
発明法4では、乾電池は形状を保たず粒鉄と溶融混合したものになった。また、内部に含有していた亜鉛分は揮発しており、乾電池内からはほとんど検出されなかった。この場合、乾電池中の亜鉛成分はリサイクルが容易な2次ダストとして回収することができた。ただし、発明法4ではスラグおよび、メタルの一部が炉床に付着し、回収に手間取った。
発明法5−7では、還元鉄とスラグとが分離した粒鉄が得られた。即ち、乾電池のケースは溶融して粒鉄になった。しかも、比較例2や発明法4のように、移動床に対して付着するスラグやメタル分はなく、鉄分の回収率が上昇した。
表6の2次ダスト組成に着目すると、電池を配合した2次ダストの方が、亜鉛濃度が高くなっていることがわかる.これは乾電池の方が亜鉛の含有量が多いためである。亜鉛濃度が高いほど、2次ダストから亜鉛を回収することが容易になるため、発明法の2次ダストの方が利用価値が高いということができる。
表7に示すとおり、鉄分およびマンガン分のダスト移行率は10mass%以下でほとんどがスラグメタルまたは還元鉄として回収されることがわかった。一方、亜鉛分は90mass%以上が2次ダストに移行しており、2次ダストとして回収可能であることがわかった。
以上の実施結果をまとめると、発明法のように製鉄ダストと乾電池を同時に加熱すると、亜鉛分は2次ダストとして、鉄分、マンガン分はメタルスラグもしくは還元鉄として回収が可能である。また、その回収率は比較例の製鉄ダスト単独を処理した場合とほとんど変わらない。つまり、本発明法を使用することで、電池から製鉄ダストと同様の高効率で有価金属を回収できることが実証できた。
本発明は、廃電池から有価金属を回収する技術として有用であるだけでなく、製鉄ダストの処理技術としても有効である(製鉄ダストの発生量は廃電池の10倍以上)。
また、本発明は、可採年数が短い希少金属である亜鉛、鉛などの高揮発性金属の回収技術として、地球環境保全に寄与する技術として有効である。
また、本発明は、可採年数が短い希少金属である亜鉛、鉛などの高揮発性金属の回収技術として、地球環境保全に寄与する技術として有効である。
1 加熱炉
2 ダスト
3 乾電池
4 冷却スプレー
5 冷却塔
6 バグフィルター
7 煙突
8 炭材
10 炉本体
10a 予熱帯
10b 還元帯
10c 溶融帯
10d 冷却帯
10e 排ガス通路
11 移動床
12 混合物
13 バーナー
14 装入装置
15 排出装置
2 ダスト
3 乾電池
4 冷却スプレー
5 冷却塔
6 バグフィルター
7 煙突
8 炭材
10 炉本体
10a 予熱帯
10b 還元帯
10c 溶融帯
10d 冷却帯
10e 排ガス通路
11 移動床
12 混合物
13 バーナー
14 装入装置
15 排出装置
Claims (5)
- 移動型炉床炉内を移動する移動床上に、金属含有物を装入積載して加熱することにより、特定の金属を分離回収する方法において、前記移動床上に、廃電池を積載し、その移動床が炉内を移動する加熱過程で、高揮発性金属を揮発させ、このとき発生した炉内ガスから、このガスを冷却することによって高揮発性金属の粉末を回収する一方、その他の金属成分については、前記移動床上において回収することを特徴とする廃電池からの有価金属回収方法。
- 前記移動床上に、廃電池と共に、金属含有物および固体炭素含有物を含む粉状もしくは塊状の物質を装入することを特徴とする請求項1に記載の有価金属回収方法。
- 加熱炉内の最高温度を1200℃以上に加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の有価金属回収方法。
- 加熱炉内の最高温度を1400℃以上に加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の有価金属回収方法。
- 前記移動床上に、固体炭素を80mass%以上含有する固体還元剤を積載することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の有価金属回収方法。
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017131795A (ja) * | 2016-01-25 | 2017-08-03 | 太平洋セメント株式会社 | 廃リチウムイオン電池の処理装置及び処理方法 |
CN114250369A (zh) * | 2021-12-31 | 2022-03-29 | 湘潭大学 | 一种废铅蓄电池与废锂离子电池协同回收的工艺 |
JP7359062B2 (ja) | 2020-03-30 | 2023-10-11 | 住友金属鉱山株式会社 | 廃リチウムイオン電池からの有価金属の回収方法 |
KR102633903B1 (ko) * | 2023-01-09 | 2024-02-07 | 고려아연 주식회사 | 제강 분진으로부터 철 및 유가금속을 회수하는 방법 |
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2008
- 2008-04-18 JP JP2008108936A patent/JP2009256741A/ja active Pending
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