JP2004075778A - 炭化水素用脱硫剤及び燃料電池用水素の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】炭化水素中の硫黄分を極めて低濃度まで効率よく除去することができ、かつ寿命の長い工業的に有利な炭化水素用脱硫剤、及びこの脱硫剤を用いて脱硫処理された炭化水素を接触改質することにより、燃料電池用水素を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】少なくともニッケル及び銅を担体上に担持した炭化水素用脱硫剤で、各金属量が酸化物換算で、NiO60〜70質量%、CuO10〜20質量%、NiOとCuOの総和が76〜87質量%であり、かつ、ニッケル成分が全ニッケル含有量に対して60質量%以上の金属ニッケルを含有し、かつ水素吸着量が0.15mmol/g以上である炭化水素用脱硫剤、及び該脱硫剤を用いて炭化水素を脱硫した後、接触改質することを特徴とする燃料電池用水素の製造方法。
【解決手段】少なくともニッケル及び銅を担体上に担持した炭化水素用脱硫剤で、各金属量が酸化物換算で、NiO60〜70質量%、CuO10〜20質量%、NiOとCuOの総和が76〜87質量%であり、かつ、ニッケル成分が全ニッケル含有量に対して60質量%以上の金属ニッケルを含有し、かつ水素吸着量が0.15mmol/g以上である炭化水素用脱硫剤、及び該脱硫剤を用いて炭化水素を脱硫した後、接触改質することを特徴とする燃料電池用水素の製造方法。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化水素用脱硫剤及び燃料電池用水素の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、炭化水素中の硫黄分を極めて低濃度まで効率よく除去することができ、かつ寿命の長い炭化水素用脱硫剤、及びこの脱硫剤を用いて脱硫処理された炭化水素を接触改質、特に部分酸化改質、オートサーマル改質又は水蒸気改質処理し、燃料電池用水素を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題から新エネルギー技術が脚光を浴びており、この新エネルギー技術の一つとして燃料電池が注目されている。この燃料電池は、水素と酸素を電気化学的に反応させることにより、化学エネルギーを電気エネルギーに変換するものであって、エネルギーの利用効率が高いという特徴を有しており、民生用、産業用あるいは自動車用などとして、実用化研究が積極的になされている。この燃料電池には、使用する電解質の種類に応じて、リン酸型、溶触炭酸塩型、固体酸化物型、固体高分子型などのタイプが知られている。一方、水素源としては、メタノール、メタンを主体とする液化天然ガス、この天然ガスを主成分とする都市ガス、天然ガスを原料とする合成液体燃料、さらにはLPG、ナフサ、灯油などの石油系炭化水素の使用が研究されている。
【0003】
燃料電池を民生用や自動車用などに利用する場合、上記石油系炭化水素は既に供給システムが整備されていることから、水素源として有利である。しかしながら、石油系炭化水素は、メタノールや天然ガス系のものに比べて、硫黄分の含有量が多いという問題がある。この石油系炭化水素を用いて水素を製造する場合、一般に、該炭化水素を、改質触媒の存在下に部分酸化改質、オートサーマル改質又は水蒸気改質処理する方法が用いられる。このような改質処理においては、上記改質触媒は、炭化水素中の硫黄分により破壊されるため、触媒寿命の点から、該炭化水素に脱硫処理を施し、硫黄分含有量を、極力低濃度にすることが肝要である。又、自動車に直接水素を搭載する場合、安全面から付臭物の添加が検討されており硫黄化合物からなる付臭剤を極力低濃度にすることも同様に肝要である。付臭剤が添加されている都市ガスについても同様である。
【0004】
石油系炭化水素の脱硫方法としては、これまで多くの研究がなされており、例えばCo−Mo/アルミナやNi−Mo/アルミナなどの水素化脱硫触媒とZnOなどの硫化水素吸着剤を用い、常圧〜5MPa・Gの圧力下、200〜400℃の温度で水素化脱硫する方法が知られている。この方法は、厳しい条件下で水素化脱硫を行い、硫黄分を硫化水素にして除去する方法であり、小規模の分散型燃料電池用としては、安全・環境上の配慮、高圧ガス取締法等の関連法規との関係上好ましくない。すなわち、燃料電池用としては、1MPa・G未満の条件で長期間石油系炭化水素を脱硫することのできる脱硫剤が望まれている。一方、石油系炭化水素中の硫黄分を、水素化脱硫処理を行うことなく、温和な条件で吸着除去し、硫黄分を低下させうる脱硫剤としては、ニッケル系あるいはニッケル−銅系吸着剤が知られている〔特公平6−65602号公報、同平7−115842号公報、同平7−115843公報、特開平1−188405号公報、同平2−275701号公報、同平2−204301号公報、同平5−70780号公報、同平6−80972号公報、同平6−91173号公報、同平6−228570号公報、特開2001−279259号公報、特開2001−342465号公報(以上、ニッケル系吸着剤)、特開平6−315628号公報、特開2001−279259号公報(以上、ニッケル−銅系吸着剤)〕。これらのニッケル系あるいはニッケル−銅系吸着剤は、燃料電池用の石油系炭化水素に対して、脱硫剤として適用するのに有利であるが、いずれも脱硫剤としての寿命の面で実用的なレベルに達していない上、石油系炭化水素脱硫用に適した吸着剤の設計条件については、明らかでないのが実状である。特に、上記ニッケル−銅系吸着剤では、硫黄を効率よく脱硫するには未だ不十分であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、炭化水素中の硫黄分を極めて低濃度まで効率よく除去することができ、かつ寿命の長い工業的に有利な炭化水素用脱硫剤、及びこの脱硫剤を用いて脱硫処理された炭化水素を部分酸化改質、オートサーマル改質又は水蒸気改質処理し、燃料電池用水素を製造する方法を提供することを目的とするものである。本発明は、また、硫黄化合物からなる付臭剤が添加された水素や都市ガスの脱硫にも適用可能な脱硫剤を提供することをも目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、少なくともニッケル成分及び銅成分を担体上に担持した炭化水素用脱硫剤であって、各金属成分量が特定量であって、担持されたニッケル成分の特定割合以上が金属ニッケルであり、水素吸着量が特定量以上である脱硫剤が、炭化水素用脱硫剤としてその目的に適合し得ること、そして、この脱硫剤を用いて脱硫処理した炭化水素を部分酸化改質、オートサーマル改質又は水素化改質処理することにより、燃料電池用水素が効率よく得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、少なくともニッケル成分及び銅成分を担体上に担持した炭化水素用脱硫剤で、各金属成分量が酸化物換算で、NiO60〜70質量%、CuO10〜20質量%、NiOとCuOの総和量が76〜87質量%であり、かつ、担持されたニッケル成分の60%以上が金属ニッケルであり、かつ水素吸着量が0.15mmol/g以上である炭化水素用脱硫剤を提供するものである。なお、以下において、担持された全ニッケル成分中における金属ニッケルの割合を「還元度」ということがある。
また、本発明は、上記炭化水素用脱硫剤を用いて炭化水素を脱硫したのち、接触改質、特に部分酸化改質、オートサーマル改質又は水蒸気改質することを特徴とする燃料電池用水素の製造方法をも提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の炭化水素用脱硫剤の、担体上のニッケル成分としては、通常酸化ニッケル、これを還元して得られる金属ニッケル、その他、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等が挙げられ、本発明の脱硫剤においては、このうち、担持されたニッケル成分の60%以上が金属ニッケルであることが必要である。金属ニッケルが60%未満であると、脱硫剤表面の活性点の数が少なく、所望の脱硫性能が得られない恐れがある。
【0008】
本発明の脱硫剤においては、担体として、多孔質担体が好ましく用いられ、特に多孔質の無機酸化物が好ましい。このようなものとしては、例えばシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、酸化亜鉛、白土、粘土及び珪藻土などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、特にシリカ−アルミナが好適である。本発明において、これらの担体に担持させる金属成分は、少なくともニッケル成分及び銅成分を含有するものである。また、必要に応じ、コバルト、鉄、マンガン、クロムなどの他の金属成分を少量混在させてもよい。
【0009】
本発明においては、ニッケル成分の担持量は、脱硫剤全量に基づき、NiO量として60〜70質量%であることが必要である。この担持量が60質量%未満では充分な脱硫性能が発揮されない恐れがある。また、担持量が70質量%を超えると担体の割合が少なくなって、脱硫剤の表面積が低下し脱硫性能が低下する原因となる。また、銅成分の担持量は脱硫剤全量に基づき、CuO量として10〜20質量%であることが必要である。この担持量が10質量%未満ではニッケルの還元が十分でなく本発明の効果が得られない場合がある。また、20質量%を超える場合は、ニッケルの奏する効果が失われる恐れがあり、好ましくない場合がある。本発明の脱硫触媒においては、また、NiOとCuOの総和量が、脱硫剤全量に基づき、76〜87質量%であることが必要である。この総和量が76質量%未満であると、脱硫に必要な活性点数が少なく、所望の脱硫性能が得られない恐れがあり、また、87質量%を超えると、担体の割合が少なくなって、脱硫剤の表面積が低下し脱硫性能が低くなるという不都合を生じる。
本発明の脱硫触媒は、また、0.15mmol/g以上の水素吸着量を有することが必要である。この水素吸着量が0.15mmol/g未満であると、脱硫に必要な活性点数が得られず、脱硫性能が低くなるという不都合を生じる。
【0010】
該担体にニッケル成分、銅成分及びその他の金属成分を担持させる方法については特に制限はなく、含浸法、共沈法、混練法などの公知の任意の方法を採用することができる。本発明の好ましい脱硫剤である、シリカ−アルミナ担体上にニッケル−銅を担持させてなる脱硫剤は、例えば以下に示すような共沈法によって製造することができる。この共沈法においては、まずニッケル源、アルミニウム源、及び銅源を含む酸性水溶液又は酸性水性分散液と、ケイ素源及び無機塩基を含む塩基性水溶液を調製する。前者の酸性水溶液又は酸性水分散液に用いられるニッケル源としては、例えば塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル、炭酸ニッケル及びこれらの水和物などが挙げられる。また銅源としては、例えば塩化銅、硝酸銅、硫酸銅、酢酸銅及びこれらの水和物などが挙げられる。更にアルミニウム源としては、硝酸アルミニウム、擬ベーマイト、ベーマイトアルミナ、バイヤライト、ジブサイトなどのアルミナ水和物や、γ−アルミナなどが挙げられる。
【0011】
一方、塩基性水溶液に用いられるケイ素源としては、アルカリ水溶液に可溶であって、焼成によりシリカになるものであればよく、特に制限されず、例えばオルトケイ酸、メタケイ酸及びそれらのナトリウム塩やカリウム塩、水ガラスなどが挙げられる。また、無機塩基としては、アルカリ金属の炭酸塩や水酸化物などが挙げられる。次に、このようにして調製した酸性の水溶液又は水分散液と塩基性水溶液をそれぞれ50〜90℃程度に加温して、両者を混合し、さらに50〜90℃程度の温度に保持して反応を完結させる。次に、生成した固形物を充分に洗浄したのち固液分離するか、あるいは生成した固形物を固液分離したのち充分に洗浄し、次いで、この固形物を公知の方法により80〜150℃程度の温度で乾燥処理する。このようにして得られた乾燥処理物を、好ましくは200〜400℃の範囲の温度において焼成することにより、シリカ−アルミナ担体上に金属成分が担持された脱硫剤が得られる。
【0012】
担体として、アルミナ−シリカ以外の担体を用いる場合も、適宜上記の方法に準じて行うことができる。また、上記得られた脱硫剤を更に還元処理して、金属ニッケルの量及び水素吸着量を本発明の範囲内とするには、当業界において通常用いられる方法が適宜用いられる。還元処理は、燃料電池用水素の製造においては、その脱硫処理工程の直前に行うか、あるいは脱硫剤製造工程終了後に行う。脱硫剤製造後に還元を行う場合には、空気、希釈酸素、二酸化炭素などを用いて脱硫剤の安定化処理を行う必要がある。この安定化処理脱硫剤を用いる場合には、脱硫反応器に充填した後、再度還元処理を行うことが必要である。還元処理を行った後は不活性ガス、脱硫灯油で封入するとよい。
【0013】
本発明の脱硫剤は、炭化水素用、例えば灯油、軽油、LPG、ナフサ、ガソリン、天然ガス等、好ましくは灯油の脱硫剤として用いられ、特に硫黄分含有量が80質量%ppm以下のJIS1号灯油に適用するのが好ましい。このJIS1号灯油は、原油を常圧蒸留して得た粗灯油を脱硫することにより得られる。該粗灯油は、通常硫黄分が多く、そのままではJIS1号灯油とはならず、硫黄分を低減させる必要がある。この硫黄分を低減させる方法としては、一般に工業的に実施されている水素化精製法で脱硫処理するのが好ましい。この場合、脱硫触媒として、通常ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステンなどの遷移金属を適当な割合で混合したものを金属、酸化物、硫化物などの形態でアルミナを主成分とする担体に担持させたものが用いられる。反応条件は、例えば反応温度250〜400℃、圧力2〜10MPa・G、水素/油モル比2〜10、液時空間速度(LHSV)1〜5hr−1などの条件が用いられる。
【0014】
本発明の脱硫剤を用いて、炭化水素を脱硫処理する方法としては、例えば以下に示す方法を用いることができる。炭化水素、例えばJIS1号灯油を、液相で本発明の脱硫剤を充填した脱硫塔中を上向き又は下向きの流れで通過させ、温度130〜230℃程度、圧力常圧〜1Mpa・G程度、LHSV2hr−1以下程度の条件で脱硫処理する。この際、必要により、少量の水素を共存させてもよい。脱硫条件を上記範囲で適当に選択することにより、硫黄分3ppm以下の炭化水素を得ることができる。
【0015】
次に本発明の燃料電池用水素の製造方法(以下、本発明の方法ということがある)は、上記のようにして脱硫処理した炭化水素を、接触改質、好ましくは部分酸化改質、オートサーマル改質又は水蒸気改質して、より具体的には部分酸化改質触媒、オートサーマル改質触媒又は水蒸気改質触媒(以下、全てをまとめて、単に改質触媒ということもある)と接触させることにより、燃料電池用水素を製造するものである。
本発明の方法において用いられる改質触媒としては特に制限はなく、従来から炭化水素の改質触媒として知られている公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような改質触媒としては、例えば適当な担体にニッケルやジルコニウム、あるいはルテニウム、ロジウム、白金などの貴金属を担持したものを挙げることができる。上記担持金属は一種でもよく、二種以上を組み合わせてもよい。これらの触媒の中で、ニッケルを担持させたもの(以下、ニッケル系触媒という)とルテニウムを担持させたもの(以下、ルテニウム系触媒という)が好ましく、これらは、部分酸化改質処理、オートサーマル改質処理又は水蒸気改質処理中の炭素析出を抑制する効果が大きい。
上記改質触媒を担持させる担体には、酸化マンガン、酸化セリウム、ジルコニア等が含まれていることが好ましい。
【0016】
ニッケル系触媒の場合、ニッケルの担持量は担体基準で3〜60質量%の範囲が好ましい。この担持量が3質量%未満では、部分酸化改質触媒、オートサーマル改質触媒又は水蒸気改質触媒の活性が十分に発揮されないおそれがあり、一方、60質量%を越えると、その担持量に見合った触媒活性の向上効果があまり認められず、むしろ経済的に不利となる。触媒活性及び経済性などを考慮すると、ニッケルのより好ましい担持量は5〜50質量%であり、特に10〜30質量%の範囲が好ましい。
また、ルテニウム系触媒の場合、ルテニウムの担持量は担体基準で0.05〜20質量%の範囲が好ましい。ルテニウムの担持量が0.05質量%未満では、部分酸化改質触媒、オートサーマル改質触媒又は水蒸気改質触媒の活性が十分に発揮されないおそれがあり、一方、20質量%を越えると、その担持量に見合った触媒活性の向上効果があまり認められず、むしろ経済的に不利となる。触媒活性及び経済性などを考慮すると、ルテニウムのより好ましい担持量は0.05〜15質量%であり、特に0.1〜2質量%の範囲が好ましい。
【0017】
部分酸化改質処理における反応条件としては、通常、圧力は常圧〜5MPa・G、温度は400〜1100℃、酸素(O2)/カーボン(モル比)は0.2〜0.8、液時空間速度(LHSV)は0.1〜100hr−1の条件が採用される。
また、オートサーマル改質処理における反応条件としては、通常、圧力は常圧〜5MPa・G、温度は400〜1100℃、スチーム/カーボン(モル比)は0.1〜10、酸素(O2)/カーボン(モル比)は0.1〜1、液時空間速度(LHSV)は0.1〜2hr−1、ガス時空間速度(GHSV)は1000〜100000hr−1の条件が採用される。
【0018】
さらに、水蒸気改質処理における反応条件としては、水蒸気と燃料油に由来する炭素との比であるスチーム/カーボン(モル比)は、通常1.5〜10、好ましくは1.5〜5、より好ましくは2〜4の範囲で選定される。スチーム/カーボン(モル比)が1.5未満では、水素の生成量が低下するおそれがあり、また10を超えると、過剰の水蒸気を必要とし、熱ロスが大きく、水素製造の効率が低下するので好ましくない。
また、水蒸気改質触媒層の入口温度を630℃以下、さらには600℃以下に保って水蒸気改質を行うのが好ましい。入口温度が630℃を超えると、燃料油の熱分解が促進され、生成したラジカルを経由して触媒あるいは反応管壁に炭素が析出して、運転が困難になる場合がある。なお、触媒層出口温度は特に制限はないが、650〜800℃の範囲が好ましい。650℃未満では水素の生成量が十分でないおそれがあり、800℃を超えると、反応装置を耐熱材料で構成する必要が生じる場合があり、経済的に好ましくない。
【0019】
反応圧力は、通常常圧〜3MPa・G、好ましくは常圧〜1MPa・Gの範囲であり、また、LHSVは、通常0.1〜100hr−1、好ましくは0.2〜50hr−1の範囲である。
本発明の方法においては、上記部分酸化改質、オートサーマル改質又は水蒸気改質により得られるCOが水素生成に悪影響を及ぼすため、COを反応によりCO2に変換して除くことが好ましい。
このように、本発明の方法によれば、燃料電池用水素を効率よく製造することができる。
【0020】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
灯油の脱硫試験
実施例1〜2、比較例1〜7
灯油:蒸留性状:初留温度153℃、10%留出温度176℃、30%留出温度194℃、50%留出温度209℃、70%留出温度224℃、90%留出温度249℃、終点267℃
硫黄分:48ppm
のJIS−1号灯油
【0021】
実施例1
脱硫剤▲1▼:NiO量=65.0wt%、CuO量=15.0wt%、
シリカ−アルミナ量=20.0wt%、Si/Al比=5.6
製造方法:
硫酸ニッケル・6水和物(特級、和光純薬株式会社)730.2gおよび硫酸銅・5水和物(特級、和光純薬株式会社)151.3gを80℃に加湿したイオン交換水8Lに溶解し、これに擬ベーマート(C−AP、Al2O3として67wt%、触媒化成工業株式会社)を16.0g混合した(調製液A)。これに、1規定硫酸を300mL加えてpHを2にした。別に用意した、80℃に加温したイオン交換水に炭酸ナトリウム600.0gを溶解し、水ガラス180.2(J−1号、Si濃度量29wt%、日本化学工業)を加えた(調製液B)。A,B両液の温度を80℃に保ちながら、両者を瞬時に混合し、1時間攪拌した。その後、イオン交換水60Lを用いて沈殿ケーキの洗浄・ろ過を行い、120℃送風乾燥機にて生成物を12時間乾燥し、350℃で3時間焼成した。焼成によって得られた生成物を圧縮成形により成形し、粉砕することにより、平均粒径0.8mmの脱硫剤▲1▼を得た。
試験方法▲1▼:
脱硫剤▲1▼15ccを内径17mmのSUS製反応管に充填した。常圧下、水素気流中120℃に昇温し、30分保持した後、さらに1時間をかけて昇温し、300℃で3時間保持し脱硫剤を活性化した(還元度=85%、水素吸着量=0.25mmol/g)。その後、温度を180℃に降温、保持した。ついで、JIS1号灯油(硫黄濃度48wtppm)を常圧下、液空間速度10h−1で反応管に流通させた。16時間経過後の硫黄濃度を分析し、脱硫性能を調べた。
【0022】
実施例2
脱硫剤▲1▼:NiO量=65.0wt%、CuO量=15.0wt%、
シリカ−アルミナ量=20.0wt%、Si/Al比=5.6
試験方法:
脱硫剤▲1▼を用い、脱硫剤の活性化を300℃で1時間行なった以外は試験方法▲1▼と同様に行った。尚、活性化された脱硫剤の還元度は62%、水素吸着量は、0.17mmol/gであった。
【0023】
比較例1
脱硫剤▲1▼:NiO量=65.0wt%、CuO量=15.0wt%、
シリカ−アルミナ量=20.0wt%、Si/Al比=5.6
試験方法:
脱硫剤▲1▼を用い、脱硫剤の活性化を250℃で3時間行なった以外は試験方法▲1▼と同様に行った。活性化された脱硫剤の還元度は55%、水素吸着量は0.16mmol/gであった。
比較例2
脱硫剤▲1▼:NiO量=65.0wt%、CuO量=15.0wt%、
シリカ−アルミナ量=20.0wt%、Si/Al比=5.6
試験方法:
脱硫剤▲1▼を用い、脱硫剤の活性化を500℃で3時間行なった以外は試験方法▲1▼と同様に行った。活性化された脱硫剤の還元度は99%、水素吸着量は0.10mmol/gであった。
【0024】
比較例3
脱硫剤▲2▼:NiO量=80.0wt%、CuO量=15.0wt%、
シリカ−アルミナ量=5.0wt%、Si/Al比=5.6
製造方法:
脱硫剤▲1▼と同様の製造方法において、硫酸ニッケル・6水和物898.7g、硫酸銅・5水和物151.3g、擬ベーマイト4.0g、水ガラス45.1gを用いて脱硫剤▲2▼を製造した。
試験方法:
脱硫剤▲2▼を用い、試験方法▲1▼と同様の試験方法で脱硫剤▲2▼を活性化し、脱硫性能を調べた。尚、活性化された脱硫剤の還元度は70%、水素吸着量は0.18mmol/gであった。
比較例4
脱硫剤▲3▼:NiO量=55.0wt%、CuO量=15.0wt%、
シリカ−アルミナ量=30.0wt%、Si/Al比=5.6
製造方法:
脱硫剤▲1▼と同様の製造方法において、硫酸ニッケル・6水和物617.9g、硫酸銅・5水和物151.3g、擬ベーマイト23.9g、水ガラス270.3gを用いて脱硫剤▲3▼を製造した。
試験方法:
脱硫剤▲3▼を用い、試験方法▲1▼と同様の試験方法で脱硫剤▲3▼を活性化し、脱硫性能を調べた。活性化された脱硫剤の還元度は75%、水素吸着量は0.16mmol/gであった。
【0025】
比較例5
脱硫剤▲4▼:NiO量=65.0wt%、CuO量=25.0wt%、
シリカ−アルミナ量=10.0wt%、Si/Al比=5.6
製造方法:
脱硫剤▲1▼と同様の製造方法において、硫酸ニッケル・6水和物730.2g、硫酸銅・5水和物252.2g、擬ベーマイト8.0g、水ガラス90.1gを用いて脱硫剤▲4▼を製造した。
試験方法:
脱硫剤▲4▼を用い、試験方法▲1▼と同様の試験方法で脱硫剤▲4▼を活性化し、脱硫性能を調べた。活性化された脱硫剤の還元度は68%、水素吸着量は0.17mmol/gであった。
比較例6
脱硫剤▲5▼:NiO量=65.0wt%、CuO量=5.0wt%、
シリカ−アルミナ量=30.0wt%、Si/Al比=5.6
製造方法:
脱硫剤▲1▼と同様の製造方法において、硫酸ニッケル・6水和物730.2g、硫酸銅・5水和物50.4g、擬ベーマイト24.0g、水ガラス270.3gを用いて脱硫剤▲5▼を調製した。
試験方法:
脱硫剤▲5▼を用い、試験方法▲1▼と同様の試験方法で脱硫剤▲5▼を活性化し、脱硫性能を調べた。活性化された脱硫剤の還元度は72%、水素吸着量は0.18mmol/gであった。
【0026】
実施例3 LPGの脱硫試験
脱硫剤▲1▼:NiO量=65.0wt%、CuO量=15.0wt%、
シリカ−アルミナ量=20.0wt%、Si/Al比=5.6
試験方法
以下の条件により脱硫試験を実施した。
1)脱硫剤▲1▼を15cc、内径17mmのSUS製反応管に充填した。
2)常圧下、水素気流中120℃に昇温し、30分保持した後、さらに昇温し、300℃で3時間保持し脱硫剤を活性化した。その後、温度を180℃に降温、保持した。活性化された脱硫剤の還元度は85%、水素吸着量は0.25mmol/gであった。3)JIS−1種1号LPGを常圧下、ガス空間速度4000hr−1で反応管に流通させた。
4)800時間経過後の硫黄濃度を分析し、脱硫性能を比較した。
LPG:性状
C3H8 97.9%
C2H6 0.9%
i−C4H10 0.9%
n−C4H10 0.3%
硫黄濃度=5ppm
結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
水素吸着量測定法−パルス法
水素吸着量の測定は、株式会社 大蔵理研社製の全自動触媒ガス水素吸着測定装置(R−6015)を用いて行った。
まず、活性化した脱硫剤0.2gを空気に触れない様に試料管につめ、試料管を装置に装着した。その後、50℃に加温し、1ccの水素を10分間隔でパルス注入し試料管を通過してきた水素量をTCD検出器で測定した。消費された水素ピーク量より水素吸着量を求めた。
還元度の測定−昇温還元測定(TPR)
TPR測定は、株式会社 大蔵理研社製 TP2000を用いて行った。
まず始めに、未還元脱硫剤20mgを試料管に充填し、100%−Arを流通させて、1時間空気を置換した。その後、水素(65%)/Ar(35%)のガスを20cc/minで流通させ、室温で90分保持した。次に、10℃/minで昇温しながら827℃まで加熱しながら、TCD検出器で水素の消費量を測定した。そして、元素分析で求めたCuとNiの比率を用いて全NiO量を求めた。
次に、活性化した脱硫剤を上記と同様の方法で測定し、未還元のNiO量を求めた。未還元NiO量と全NiO量より還元度を求めた。
還元度=(全NiO量−未還元NiO量)/全NiO量×100
【0029】
実施例4(水蒸気改質処理による燃料電池用水素の製造)
実施例1の脱硫器(反応管)の下流にルテニウム系改質触媒(ルテニウム担持量3質量%、担体基準)20mLを充填した改質器を配置し、上記脱硫器で1ppmまで脱硫された灯油を水蒸気改質処理した。
改質処理条件は、圧力:大気圧、スチーム/カーボン(モル比)3、LHSV:1.0hr−1、入口温度:550℃、出口温度:750℃であった。
その結果、100時間後の改質出口での水素への転化率は100%であった。
また、この反応期間中の脱硫処理灯油の硫黄分は1ppm以下であり、本発明の脱硫剤を用いることにより、水蒸気改質触媒の硫黄分による被害が大きく低減されることがわかる。
【0030】
上記表1の結果から、Si/Alモル比が5〜7の範囲のシリカ−アルミナを担体として、NiO量が60〜70質量%の範囲、CuO量が10〜20質量%の範囲、NiOとCuOの総和量が76〜87質量%の範囲の及びニッケル成分が全ニッケル含有量に対して60質量%以上の金属ニッケルを含有する(=還元度60%以上の)本発明のニッケル−銅系脱硫剤によれば、硫黄分48ppmのJIS−1号灯油中の硫黄分を2ppm以下という低濃度まで極めて効率よく除去できることがわかる。
さらに、本発明の脱硫剤は、LPGの脱硫において、800時間もの間劣化することがなく、極めて長い寿命を有することがわかる。
【0031】
【発明の効果】
本発明の炭化水素用脱硫剤は、炭化水素中の硫黄分を極めて低濃度まで効率よく除去することができ、かつ寿命の長い工業的に有利な脱硫剤である。この脱硫剤を用いて脱硫処理した炭化水素を接触改質処理することにより、燃料電池用水素を効率よく製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化水素用脱硫剤及び燃料電池用水素の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、炭化水素中の硫黄分を極めて低濃度まで効率よく除去することができ、かつ寿命の長い炭化水素用脱硫剤、及びこの脱硫剤を用いて脱硫処理された炭化水素を接触改質、特に部分酸化改質、オートサーマル改質又は水蒸気改質処理し、燃料電池用水素を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題から新エネルギー技術が脚光を浴びており、この新エネルギー技術の一つとして燃料電池が注目されている。この燃料電池は、水素と酸素を電気化学的に反応させることにより、化学エネルギーを電気エネルギーに変換するものであって、エネルギーの利用効率が高いという特徴を有しており、民生用、産業用あるいは自動車用などとして、実用化研究が積極的になされている。この燃料電池には、使用する電解質の種類に応じて、リン酸型、溶触炭酸塩型、固体酸化物型、固体高分子型などのタイプが知られている。一方、水素源としては、メタノール、メタンを主体とする液化天然ガス、この天然ガスを主成分とする都市ガス、天然ガスを原料とする合成液体燃料、さらにはLPG、ナフサ、灯油などの石油系炭化水素の使用が研究されている。
【0003】
燃料電池を民生用や自動車用などに利用する場合、上記石油系炭化水素は既に供給システムが整備されていることから、水素源として有利である。しかしながら、石油系炭化水素は、メタノールや天然ガス系のものに比べて、硫黄分の含有量が多いという問題がある。この石油系炭化水素を用いて水素を製造する場合、一般に、該炭化水素を、改質触媒の存在下に部分酸化改質、オートサーマル改質又は水蒸気改質処理する方法が用いられる。このような改質処理においては、上記改質触媒は、炭化水素中の硫黄分により破壊されるため、触媒寿命の点から、該炭化水素に脱硫処理を施し、硫黄分含有量を、極力低濃度にすることが肝要である。又、自動車に直接水素を搭載する場合、安全面から付臭物の添加が検討されており硫黄化合物からなる付臭剤を極力低濃度にすることも同様に肝要である。付臭剤が添加されている都市ガスについても同様である。
【0004】
石油系炭化水素の脱硫方法としては、これまで多くの研究がなされており、例えばCo−Mo/アルミナやNi−Mo/アルミナなどの水素化脱硫触媒とZnOなどの硫化水素吸着剤を用い、常圧〜5MPa・Gの圧力下、200〜400℃の温度で水素化脱硫する方法が知られている。この方法は、厳しい条件下で水素化脱硫を行い、硫黄分を硫化水素にして除去する方法であり、小規模の分散型燃料電池用としては、安全・環境上の配慮、高圧ガス取締法等の関連法規との関係上好ましくない。すなわち、燃料電池用としては、1MPa・G未満の条件で長期間石油系炭化水素を脱硫することのできる脱硫剤が望まれている。一方、石油系炭化水素中の硫黄分を、水素化脱硫処理を行うことなく、温和な条件で吸着除去し、硫黄分を低下させうる脱硫剤としては、ニッケル系あるいはニッケル−銅系吸着剤が知られている〔特公平6−65602号公報、同平7−115842号公報、同平7−115843公報、特開平1−188405号公報、同平2−275701号公報、同平2−204301号公報、同平5−70780号公報、同平6−80972号公報、同平6−91173号公報、同平6−228570号公報、特開2001−279259号公報、特開2001−342465号公報(以上、ニッケル系吸着剤)、特開平6−315628号公報、特開2001−279259号公報(以上、ニッケル−銅系吸着剤)〕。これらのニッケル系あるいはニッケル−銅系吸着剤は、燃料電池用の石油系炭化水素に対して、脱硫剤として適用するのに有利であるが、いずれも脱硫剤としての寿命の面で実用的なレベルに達していない上、石油系炭化水素脱硫用に適した吸着剤の設計条件については、明らかでないのが実状である。特に、上記ニッケル−銅系吸着剤では、硫黄を効率よく脱硫するには未だ不十分であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、炭化水素中の硫黄分を極めて低濃度まで効率よく除去することができ、かつ寿命の長い工業的に有利な炭化水素用脱硫剤、及びこの脱硫剤を用いて脱硫処理された炭化水素を部分酸化改質、オートサーマル改質又は水蒸気改質処理し、燃料電池用水素を製造する方法を提供することを目的とするものである。本発明は、また、硫黄化合物からなる付臭剤が添加された水素や都市ガスの脱硫にも適用可能な脱硫剤を提供することをも目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、少なくともニッケル成分及び銅成分を担体上に担持した炭化水素用脱硫剤であって、各金属成分量が特定量であって、担持されたニッケル成分の特定割合以上が金属ニッケルであり、水素吸着量が特定量以上である脱硫剤が、炭化水素用脱硫剤としてその目的に適合し得ること、そして、この脱硫剤を用いて脱硫処理した炭化水素を部分酸化改質、オートサーマル改質又は水素化改質処理することにより、燃料電池用水素が効率よく得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、少なくともニッケル成分及び銅成分を担体上に担持した炭化水素用脱硫剤で、各金属成分量が酸化物換算で、NiO60〜70質量%、CuO10〜20質量%、NiOとCuOの総和量が76〜87質量%であり、かつ、担持されたニッケル成分の60%以上が金属ニッケルであり、かつ水素吸着量が0.15mmol/g以上である炭化水素用脱硫剤を提供するものである。なお、以下において、担持された全ニッケル成分中における金属ニッケルの割合を「還元度」ということがある。
また、本発明は、上記炭化水素用脱硫剤を用いて炭化水素を脱硫したのち、接触改質、特に部分酸化改質、オートサーマル改質又は水蒸気改質することを特徴とする燃料電池用水素の製造方法をも提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の炭化水素用脱硫剤の、担体上のニッケル成分としては、通常酸化ニッケル、これを還元して得られる金属ニッケル、その他、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等が挙げられ、本発明の脱硫剤においては、このうち、担持されたニッケル成分の60%以上が金属ニッケルであることが必要である。金属ニッケルが60%未満であると、脱硫剤表面の活性点の数が少なく、所望の脱硫性能が得られない恐れがある。
【0008】
本発明の脱硫剤においては、担体として、多孔質担体が好ましく用いられ、特に多孔質の無機酸化物が好ましい。このようなものとしては、例えばシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、酸化亜鉛、白土、粘土及び珪藻土などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、特にシリカ−アルミナが好適である。本発明において、これらの担体に担持させる金属成分は、少なくともニッケル成分及び銅成分を含有するものである。また、必要に応じ、コバルト、鉄、マンガン、クロムなどの他の金属成分を少量混在させてもよい。
【0009】
本発明においては、ニッケル成分の担持量は、脱硫剤全量に基づき、NiO量として60〜70質量%であることが必要である。この担持量が60質量%未満では充分な脱硫性能が発揮されない恐れがある。また、担持量が70質量%を超えると担体の割合が少なくなって、脱硫剤の表面積が低下し脱硫性能が低下する原因となる。また、銅成分の担持量は脱硫剤全量に基づき、CuO量として10〜20質量%であることが必要である。この担持量が10質量%未満ではニッケルの還元が十分でなく本発明の効果が得られない場合がある。また、20質量%を超える場合は、ニッケルの奏する効果が失われる恐れがあり、好ましくない場合がある。本発明の脱硫触媒においては、また、NiOとCuOの総和量が、脱硫剤全量に基づき、76〜87質量%であることが必要である。この総和量が76質量%未満であると、脱硫に必要な活性点数が少なく、所望の脱硫性能が得られない恐れがあり、また、87質量%を超えると、担体の割合が少なくなって、脱硫剤の表面積が低下し脱硫性能が低くなるという不都合を生じる。
本発明の脱硫触媒は、また、0.15mmol/g以上の水素吸着量を有することが必要である。この水素吸着量が0.15mmol/g未満であると、脱硫に必要な活性点数が得られず、脱硫性能が低くなるという不都合を生じる。
【0010】
該担体にニッケル成分、銅成分及びその他の金属成分を担持させる方法については特に制限はなく、含浸法、共沈法、混練法などの公知の任意の方法を採用することができる。本発明の好ましい脱硫剤である、シリカ−アルミナ担体上にニッケル−銅を担持させてなる脱硫剤は、例えば以下に示すような共沈法によって製造することができる。この共沈法においては、まずニッケル源、アルミニウム源、及び銅源を含む酸性水溶液又は酸性水性分散液と、ケイ素源及び無機塩基を含む塩基性水溶液を調製する。前者の酸性水溶液又は酸性水分散液に用いられるニッケル源としては、例えば塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル、炭酸ニッケル及びこれらの水和物などが挙げられる。また銅源としては、例えば塩化銅、硝酸銅、硫酸銅、酢酸銅及びこれらの水和物などが挙げられる。更にアルミニウム源としては、硝酸アルミニウム、擬ベーマイト、ベーマイトアルミナ、バイヤライト、ジブサイトなどのアルミナ水和物や、γ−アルミナなどが挙げられる。
【0011】
一方、塩基性水溶液に用いられるケイ素源としては、アルカリ水溶液に可溶であって、焼成によりシリカになるものであればよく、特に制限されず、例えばオルトケイ酸、メタケイ酸及びそれらのナトリウム塩やカリウム塩、水ガラスなどが挙げられる。また、無機塩基としては、アルカリ金属の炭酸塩や水酸化物などが挙げられる。次に、このようにして調製した酸性の水溶液又は水分散液と塩基性水溶液をそれぞれ50〜90℃程度に加温して、両者を混合し、さらに50〜90℃程度の温度に保持して反応を完結させる。次に、生成した固形物を充分に洗浄したのち固液分離するか、あるいは生成した固形物を固液分離したのち充分に洗浄し、次いで、この固形物を公知の方法により80〜150℃程度の温度で乾燥処理する。このようにして得られた乾燥処理物を、好ましくは200〜400℃の範囲の温度において焼成することにより、シリカ−アルミナ担体上に金属成分が担持された脱硫剤が得られる。
【0012】
担体として、アルミナ−シリカ以外の担体を用いる場合も、適宜上記の方法に準じて行うことができる。また、上記得られた脱硫剤を更に還元処理して、金属ニッケルの量及び水素吸着量を本発明の範囲内とするには、当業界において通常用いられる方法が適宜用いられる。還元処理は、燃料電池用水素の製造においては、その脱硫処理工程の直前に行うか、あるいは脱硫剤製造工程終了後に行う。脱硫剤製造後に還元を行う場合には、空気、希釈酸素、二酸化炭素などを用いて脱硫剤の安定化処理を行う必要がある。この安定化処理脱硫剤を用いる場合には、脱硫反応器に充填した後、再度還元処理を行うことが必要である。還元処理を行った後は不活性ガス、脱硫灯油で封入するとよい。
【0013】
本発明の脱硫剤は、炭化水素用、例えば灯油、軽油、LPG、ナフサ、ガソリン、天然ガス等、好ましくは灯油の脱硫剤として用いられ、特に硫黄分含有量が80質量%ppm以下のJIS1号灯油に適用するのが好ましい。このJIS1号灯油は、原油を常圧蒸留して得た粗灯油を脱硫することにより得られる。該粗灯油は、通常硫黄分が多く、そのままではJIS1号灯油とはならず、硫黄分を低減させる必要がある。この硫黄分を低減させる方法としては、一般に工業的に実施されている水素化精製法で脱硫処理するのが好ましい。この場合、脱硫触媒として、通常ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステンなどの遷移金属を適当な割合で混合したものを金属、酸化物、硫化物などの形態でアルミナを主成分とする担体に担持させたものが用いられる。反応条件は、例えば反応温度250〜400℃、圧力2〜10MPa・G、水素/油モル比2〜10、液時空間速度(LHSV)1〜5hr−1などの条件が用いられる。
【0014】
本発明の脱硫剤を用いて、炭化水素を脱硫処理する方法としては、例えば以下に示す方法を用いることができる。炭化水素、例えばJIS1号灯油を、液相で本発明の脱硫剤を充填した脱硫塔中を上向き又は下向きの流れで通過させ、温度130〜230℃程度、圧力常圧〜1Mpa・G程度、LHSV2hr−1以下程度の条件で脱硫処理する。この際、必要により、少量の水素を共存させてもよい。脱硫条件を上記範囲で適当に選択することにより、硫黄分3ppm以下の炭化水素を得ることができる。
【0015】
次に本発明の燃料電池用水素の製造方法(以下、本発明の方法ということがある)は、上記のようにして脱硫処理した炭化水素を、接触改質、好ましくは部分酸化改質、オートサーマル改質又は水蒸気改質して、より具体的には部分酸化改質触媒、オートサーマル改質触媒又は水蒸気改質触媒(以下、全てをまとめて、単に改質触媒ということもある)と接触させることにより、燃料電池用水素を製造するものである。
本発明の方法において用いられる改質触媒としては特に制限はなく、従来から炭化水素の改質触媒として知られている公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような改質触媒としては、例えば適当な担体にニッケルやジルコニウム、あるいはルテニウム、ロジウム、白金などの貴金属を担持したものを挙げることができる。上記担持金属は一種でもよく、二種以上を組み合わせてもよい。これらの触媒の中で、ニッケルを担持させたもの(以下、ニッケル系触媒という)とルテニウムを担持させたもの(以下、ルテニウム系触媒という)が好ましく、これらは、部分酸化改質処理、オートサーマル改質処理又は水蒸気改質処理中の炭素析出を抑制する効果が大きい。
上記改質触媒を担持させる担体には、酸化マンガン、酸化セリウム、ジルコニア等が含まれていることが好ましい。
【0016】
ニッケル系触媒の場合、ニッケルの担持量は担体基準で3〜60質量%の範囲が好ましい。この担持量が3質量%未満では、部分酸化改質触媒、オートサーマル改質触媒又は水蒸気改質触媒の活性が十分に発揮されないおそれがあり、一方、60質量%を越えると、その担持量に見合った触媒活性の向上効果があまり認められず、むしろ経済的に不利となる。触媒活性及び経済性などを考慮すると、ニッケルのより好ましい担持量は5〜50質量%であり、特に10〜30質量%の範囲が好ましい。
また、ルテニウム系触媒の場合、ルテニウムの担持量は担体基準で0.05〜20質量%の範囲が好ましい。ルテニウムの担持量が0.05質量%未満では、部分酸化改質触媒、オートサーマル改質触媒又は水蒸気改質触媒の活性が十分に発揮されないおそれがあり、一方、20質量%を越えると、その担持量に見合った触媒活性の向上効果があまり認められず、むしろ経済的に不利となる。触媒活性及び経済性などを考慮すると、ルテニウムのより好ましい担持量は0.05〜15質量%であり、特に0.1〜2質量%の範囲が好ましい。
【0017】
部分酸化改質処理における反応条件としては、通常、圧力は常圧〜5MPa・G、温度は400〜1100℃、酸素(O2)/カーボン(モル比)は0.2〜0.8、液時空間速度(LHSV)は0.1〜100hr−1の条件が採用される。
また、オートサーマル改質処理における反応条件としては、通常、圧力は常圧〜5MPa・G、温度は400〜1100℃、スチーム/カーボン(モル比)は0.1〜10、酸素(O2)/カーボン(モル比)は0.1〜1、液時空間速度(LHSV)は0.1〜2hr−1、ガス時空間速度(GHSV)は1000〜100000hr−1の条件が採用される。
【0018】
さらに、水蒸気改質処理における反応条件としては、水蒸気と燃料油に由来する炭素との比であるスチーム/カーボン(モル比)は、通常1.5〜10、好ましくは1.5〜5、より好ましくは2〜4の範囲で選定される。スチーム/カーボン(モル比)が1.5未満では、水素の生成量が低下するおそれがあり、また10を超えると、過剰の水蒸気を必要とし、熱ロスが大きく、水素製造の効率が低下するので好ましくない。
また、水蒸気改質触媒層の入口温度を630℃以下、さらには600℃以下に保って水蒸気改質を行うのが好ましい。入口温度が630℃を超えると、燃料油の熱分解が促進され、生成したラジカルを経由して触媒あるいは反応管壁に炭素が析出して、運転が困難になる場合がある。なお、触媒層出口温度は特に制限はないが、650〜800℃の範囲が好ましい。650℃未満では水素の生成量が十分でないおそれがあり、800℃を超えると、反応装置を耐熱材料で構成する必要が生じる場合があり、経済的に好ましくない。
【0019】
反応圧力は、通常常圧〜3MPa・G、好ましくは常圧〜1MPa・Gの範囲であり、また、LHSVは、通常0.1〜100hr−1、好ましくは0.2〜50hr−1の範囲である。
本発明の方法においては、上記部分酸化改質、オートサーマル改質又は水蒸気改質により得られるCOが水素生成に悪影響を及ぼすため、COを反応によりCO2に変換して除くことが好ましい。
このように、本発明の方法によれば、燃料電池用水素を効率よく製造することができる。
【0020】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
灯油の脱硫試験
実施例1〜2、比較例1〜7
灯油:蒸留性状:初留温度153℃、10%留出温度176℃、30%留出温度194℃、50%留出温度209℃、70%留出温度224℃、90%留出温度249℃、終点267℃
硫黄分:48ppm
のJIS−1号灯油
【0021】
実施例1
脱硫剤▲1▼:NiO量=65.0wt%、CuO量=15.0wt%、
シリカ−アルミナ量=20.0wt%、Si/Al比=5.6
製造方法:
硫酸ニッケル・6水和物(特級、和光純薬株式会社)730.2gおよび硫酸銅・5水和物(特級、和光純薬株式会社)151.3gを80℃に加湿したイオン交換水8Lに溶解し、これに擬ベーマート(C−AP、Al2O3として67wt%、触媒化成工業株式会社)を16.0g混合した(調製液A)。これに、1規定硫酸を300mL加えてpHを2にした。別に用意した、80℃に加温したイオン交換水に炭酸ナトリウム600.0gを溶解し、水ガラス180.2(J−1号、Si濃度量29wt%、日本化学工業)を加えた(調製液B)。A,B両液の温度を80℃に保ちながら、両者を瞬時に混合し、1時間攪拌した。その後、イオン交換水60Lを用いて沈殿ケーキの洗浄・ろ過を行い、120℃送風乾燥機にて生成物を12時間乾燥し、350℃で3時間焼成した。焼成によって得られた生成物を圧縮成形により成形し、粉砕することにより、平均粒径0.8mmの脱硫剤▲1▼を得た。
試験方法▲1▼:
脱硫剤▲1▼15ccを内径17mmのSUS製反応管に充填した。常圧下、水素気流中120℃に昇温し、30分保持した後、さらに1時間をかけて昇温し、300℃で3時間保持し脱硫剤を活性化した(還元度=85%、水素吸着量=0.25mmol/g)。その後、温度を180℃に降温、保持した。ついで、JIS1号灯油(硫黄濃度48wtppm)を常圧下、液空間速度10h−1で反応管に流通させた。16時間経過後の硫黄濃度を分析し、脱硫性能を調べた。
【0022】
実施例2
脱硫剤▲1▼:NiO量=65.0wt%、CuO量=15.0wt%、
シリカ−アルミナ量=20.0wt%、Si/Al比=5.6
試験方法:
脱硫剤▲1▼を用い、脱硫剤の活性化を300℃で1時間行なった以外は試験方法▲1▼と同様に行った。尚、活性化された脱硫剤の還元度は62%、水素吸着量は、0.17mmol/gであった。
【0023】
比較例1
脱硫剤▲1▼:NiO量=65.0wt%、CuO量=15.0wt%、
シリカ−アルミナ量=20.0wt%、Si/Al比=5.6
試験方法:
脱硫剤▲1▼を用い、脱硫剤の活性化を250℃で3時間行なった以外は試験方法▲1▼と同様に行った。活性化された脱硫剤の還元度は55%、水素吸着量は0.16mmol/gであった。
比較例2
脱硫剤▲1▼:NiO量=65.0wt%、CuO量=15.0wt%、
シリカ−アルミナ量=20.0wt%、Si/Al比=5.6
試験方法:
脱硫剤▲1▼を用い、脱硫剤の活性化を500℃で3時間行なった以外は試験方法▲1▼と同様に行った。活性化された脱硫剤の還元度は99%、水素吸着量は0.10mmol/gであった。
【0024】
比較例3
脱硫剤▲2▼:NiO量=80.0wt%、CuO量=15.0wt%、
シリカ−アルミナ量=5.0wt%、Si/Al比=5.6
製造方法:
脱硫剤▲1▼と同様の製造方法において、硫酸ニッケル・6水和物898.7g、硫酸銅・5水和物151.3g、擬ベーマイト4.0g、水ガラス45.1gを用いて脱硫剤▲2▼を製造した。
試験方法:
脱硫剤▲2▼を用い、試験方法▲1▼と同様の試験方法で脱硫剤▲2▼を活性化し、脱硫性能を調べた。尚、活性化された脱硫剤の還元度は70%、水素吸着量は0.18mmol/gであった。
比較例4
脱硫剤▲3▼:NiO量=55.0wt%、CuO量=15.0wt%、
シリカ−アルミナ量=30.0wt%、Si/Al比=5.6
製造方法:
脱硫剤▲1▼と同様の製造方法において、硫酸ニッケル・6水和物617.9g、硫酸銅・5水和物151.3g、擬ベーマイト23.9g、水ガラス270.3gを用いて脱硫剤▲3▼を製造した。
試験方法:
脱硫剤▲3▼を用い、試験方法▲1▼と同様の試験方法で脱硫剤▲3▼を活性化し、脱硫性能を調べた。活性化された脱硫剤の還元度は75%、水素吸着量は0.16mmol/gであった。
【0025】
比較例5
脱硫剤▲4▼:NiO量=65.0wt%、CuO量=25.0wt%、
シリカ−アルミナ量=10.0wt%、Si/Al比=5.6
製造方法:
脱硫剤▲1▼と同様の製造方法において、硫酸ニッケル・6水和物730.2g、硫酸銅・5水和物252.2g、擬ベーマイト8.0g、水ガラス90.1gを用いて脱硫剤▲4▼を製造した。
試験方法:
脱硫剤▲4▼を用い、試験方法▲1▼と同様の試験方法で脱硫剤▲4▼を活性化し、脱硫性能を調べた。活性化された脱硫剤の還元度は68%、水素吸着量は0.17mmol/gであった。
比較例6
脱硫剤▲5▼:NiO量=65.0wt%、CuO量=5.0wt%、
シリカ−アルミナ量=30.0wt%、Si/Al比=5.6
製造方法:
脱硫剤▲1▼と同様の製造方法において、硫酸ニッケル・6水和物730.2g、硫酸銅・5水和物50.4g、擬ベーマイト24.0g、水ガラス270.3gを用いて脱硫剤▲5▼を調製した。
試験方法:
脱硫剤▲5▼を用い、試験方法▲1▼と同様の試験方法で脱硫剤▲5▼を活性化し、脱硫性能を調べた。活性化された脱硫剤の還元度は72%、水素吸着量は0.18mmol/gであった。
【0026】
実施例3 LPGの脱硫試験
脱硫剤▲1▼:NiO量=65.0wt%、CuO量=15.0wt%、
シリカ−アルミナ量=20.0wt%、Si/Al比=5.6
試験方法
以下の条件により脱硫試験を実施した。
1)脱硫剤▲1▼を15cc、内径17mmのSUS製反応管に充填した。
2)常圧下、水素気流中120℃に昇温し、30分保持した後、さらに昇温し、300℃で3時間保持し脱硫剤を活性化した。その後、温度を180℃に降温、保持した。活性化された脱硫剤の還元度は85%、水素吸着量は0.25mmol/gであった。3)JIS−1種1号LPGを常圧下、ガス空間速度4000hr−1で反応管に流通させた。
4)800時間経過後の硫黄濃度を分析し、脱硫性能を比較した。
LPG:性状
C3H8 97.9%
C2H6 0.9%
i−C4H10 0.9%
n−C4H10 0.3%
硫黄濃度=5ppm
結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
水素吸着量測定法−パルス法
水素吸着量の測定は、株式会社 大蔵理研社製の全自動触媒ガス水素吸着測定装置(R−6015)を用いて行った。
まず、活性化した脱硫剤0.2gを空気に触れない様に試料管につめ、試料管を装置に装着した。その後、50℃に加温し、1ccの水素を10分間隔でパルス注入し試料管を通過してきた水素量をTCD検出器で測定した。消費された水素ピーク量より水素吸着量を求めた。
還元度の測定−昇温還元測定(TPR)
TPR測定は、株式会社 大蔵理研社製 TP2000を用いて行った。
まず始めに、未還元脱硫剤20mgを試料管に充填し、100%−Arを流通させて、1時間空気を置換した。その後、水素(65%)/Ar(35%)のガスを20cc/minで流通させ、室温で90分保持した。次に、10℃/minで昇温しながら827℃まで加熱しながら、TCD検出器で水素の消費量を測定した。そして、元素分析で求めたCuとNiの比率を用いて全NiO量を求めた。
次に、活性化した脱硫剤を上記と同様の方法で測定し、未還元のNiO量を求めた。未還元NiO量と全NiO量より還元度を求めた。
還元度=(全NiO量−未還元NiO量)/全NiO量×100
【0029】
実施例4(水蒸気改質処理による燃料電池用水素の製造)
実施例1の脱硫器(反応管)の下流にルテニウム系改質触媒(ルテニウム担持量3質量%、担体基準)20mLを充填した改質器を配置し、上記脱硫器で1ppmまで脱硫された灯油を水蒸気改質処理した。
改質処理条件は、圧力:大気圧、スチーム/カーボン(モル比)3、LHSV:1.0hr−1、入口温度:550℃、出口温度:750℃であった。
その結果、100時間後の改質出口での水素への転化率は100%であった。
また、この反応期間中の脱硫処理灯油の硫黄分は1ppm以下であり、本発明の脱硫剤を用いることにより、水蒸気改質触媒の硫黄分による被害が大きく低減されることがわかる。
【0030】
上記表1の結果から、Si/Alモル比が5〜7の範囲のシリカ−アルミナを担体として、NiO量が60〜70質量%の範囲、CuO量が10〜20質量%の範囲、NiOとCuOの総和量が76〜87質量%の範囲の及びニッケル成分が全ニッケル含有量に対して60質量%以上の金属ニッケルを含有する(=還元度60%以上の)本発明のニッケル−銅系脱硫剤によれば、硫黄分48ppmのJIS−1号灯油中の硫黄分を2ppm以下という低濃度まで極めて効率よく除去できることがわかる。
さらに、本発明の脱硫剤は、LPGの脱硫において、800時間もの間劣化することがなく、極めて長い寿命を有することがわかる。
【0031】
【発明の効果】
本発明の炭化水素用脱硫剤は、炭化水素中の硫黄分を極めて低濃度まで効率よく除去することができ、かつ寿命の長い工業的に有利な脱硫剤である。この脱硫剤を用いて脱硫処理した炭化水素を接触改質処理することにより、燃料電池用水素を効率よく製造することができる。
Claims (7)
- 少なくともニッケル及び銅を担体上に担持した炭化水素用脱硫剤で、各金属量が酸化物換算で、NiO60〜70質量%、CuO10〜20質量%、NiOとCuOの総和量が76〜87質量%であり、かつ、担持されたニッケルの60%以上が金属ニッケルであり、かつ水素吸着量が0.15mmol/g以上である炭化水素用脱硫剤。
- 担体がシリカ−アルミナで、Si/Alモル比が5〜7の請求項1記載の炭化水素用脱硫剤。
- 炭化水素が灯油、軽油、LPG、ナフサ、ガソリン及び天然ガスから選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載の炭化水素用脱硫剤。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の脱硫剤を用いて炭化水素を脱硫した後、改質することを特徴とする燃料電池用水素の製造方法。
- 改質が、部分酸化改質、オートサーマル改質又は水蒸気改質である請求項4に記載の燃料電池用水素の製造方法。
- 部分酸化改質、オートサーマル改質又は水蒸気改質のための触媒が、ルテニウム系又はニッケル系触媒である請求項5記載の燃料電池用水素の製造方法。
- 触媒に用いる担体成分が、酸化マンガン、酸化セリウム又はジルコニアを含む請求項6記載の燃料電池用水素の製造方法。
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