JP2004075677A - 骨欠損治療および骨損傷の治癒促進剤 - Google Patents

骨欠損治療および骨損傷の治癒促進剤 Download PDF

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Hideki Yoshikawa
吉川 秀樹
Kazuyuki Ito
伊藤 和幸
Koji Kuriyama
栗山 幸治
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Abstract

【課題】事故による骨折や骨腫瘍に伴う骨切除術などにおいて骨の再生、損傷の治癒を促進するための医薬を提供すること。
【解決手段】本発明は、
【化1】
Figure 2004075677

「R、R、R、R、RおよびZは、明細書の記載のとおり。」で表される4H−1−ベンゾピラン−4−オン誘導体またはその塩は、骨芽細胞の骨形成作用を亢進する。従って、上記化合物は、事故による骨折や骨腫瘍に伴う骨切除術などにおいて骨の再生、損傷の治癒を促進し、骨欠損治療および/または骨損傷の治癒促進剤として有用である。
【選択図】
なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般式[1]
【化4】
Figure 2004075677
「式中、Rは、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル、アルケニルまたはアリール基を;Rは、水素原子、アルキル基またはアシル基を;Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アジド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ホルミル基もしくはアルコキシカルボニル基または置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、フェノキシ、シクロアルキル、カルバモイル、アミノもしくはフェニル基を;Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アシル基、ヒドロキシル基もしくはアルコキシカルボニル基または置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、フェニルチオ、アルキニル、アルケニル、スルファモイル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アミジノ、フェニルもしくは複素環式基、または式
【0002】
【化5】
Figure 2004075677
もしくは式
【化6】
Figure 2004075677
(式中、Rは、水素原子、ヒドロキシル基、シアノ基もしくはアルコキシカルボニル基または置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、フェニル、アミノ、アシル、カルバモイル、アルキルスルホニル、イミノメチルもしくはアミジノ基を;Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、フェニル、シクロアルキルもしくは複素環式基を示すかまたはRとRが隣接する窒素原子と一緒になって3〜7員環の置換されていてもよい複素環式基を示す。)で表される基を;Rは、置換されていてもよいフェニル、チエニル、フリルまたはピリジル基を;Zは、酸素原子、硫黄原子またはイミノ基を;および破線は、単結合または二重結合を示す。」
で表される4H−1−ベンゾピラン−4−オン誘導体またはその塩を有効成分とする骨形成促進に基づく骨欠損治療および/または骨損傷の治癒促進剤に関する。
【0003】
【従来の技術】
骨は再生能を有する器官である。骨折を生じるとその直後より部位近傍の骨膜、骨髄および筋肉内に局在する未分化間葉系細胞が遊走・増殖し、軟骨芽細胞や骨芽細胞に分化して仮骨が形成され、骨折の癒合に至る。骨の再生能を利用した骨癒合促進療法は医療現場において既に自家骨移植として定着している。一方、骨の再生を誘起する物質の存在は古くから推測され、1965年、Uristは脱灰骨による異所性骨誘導現象を発見し、生細胞の存在しない脱灰骨中の、骨再生能を有するタンパク性の因子を骨形成タンパク(Bone Morphogenetic Protein、BMP)と命名した[サイエンス(Science)、第150巻、第893−899頁(1965年)]。最近までの分子生物学的研究により、BMPはトランスフォーミング増殖因子−β(Transforming Growth Factor、TGF−β)スーパーファミリーに属し、20種類近くのアイソフォームがクローニングされ、タンパク構造やその機能が明らかにされている。さらに、遺伝子組換産物であるヒト・リコンビナントBMP−2は、骨形成促進剤として整形外科領域や歯科口腔外科領域で臨床応用が試されている[臨床科学、第34巻、第1261−1268頁(1998年)]。
一方、低分子合成化合物では、イソフラボン(特開平10−114653号)およびヒドロキシステロイド誘導体(特表2000−513372号)が骨形成促進作用を示すことは知られているが、いまだ臨床応用はなされておらず、それらの有用性は明確にされていない。
【0004】
一般式[1]の4H−1−ベンゾピラン−4−オン誘導体またはその塩は、既知化合物であり、抗炎症作用、解熱鎮痛作用、抗関節炎作用および抗アレルギー作用を有することが知られている(特開平2−49778号)。また、インターロイキン(IL)−1および6の産生抑制作用を有し[ジャーナル・オブ・ファルマコビオ・ダイナミクス(J. Pharmacobio−Dyn.)、第15巻、第649−655頁(1992年)]、さらに免疫調節作用も示し、各種の自己免疫疾患症状の予防および治療に有用であることは知られている(再公表公報:平成6年第823714号)。また、骨吸収抑制作用を有し、骨粗鬆症に対し予防および治療に有用であることは知られている(特開平4−342527号)。しかし、一般式[1]の化合物またはその塩が骨形成促進作用を示し、骨欠損治療および/または骨損傷の治癒促進剤として有用であることは知られていない。
【0005】
骨芽細胞は、軟骨細胞、筋肉、脂肪組織などと共通の骨髄間葉系幹細胞に由来する。間葉系幹細胞から骨芽細胞へと分化が決定されると、それらは前骨芽細胞となり、さらに増殖しながら成熟した骨芽細胞に分化し、骨形成能などの機能を担う細胞となる。骨芽細胞の研究では以前から多くの培養細胞系や樹立細胞株が確立され、それらを用いて種々のホルモンや増殖因子の作用が解析されてきた。マウス骨髄由来の間葉系幹細胞株・ST2細胞[ヨーロピアン・モレキュラー・バイオロジー・オーガニゼーション・ジャーナル(EMBO J.)、第7巻、第1337−1343頁(1988年)]および未分化前駆骨芽細胞株・MC3T3−E1細胞[ジャーナル・オブ・セルラー・バイオケミストリー(J. Cell. Biochem.)、第69巻、第191−198頁(1983年)]は、骨芽細胞の分化や機能に関する研究に多用され、世界的にその価値が認知されている。例えば、骨吸収をつかさどる破骨細胞の分化と機能を調節する破骨細胞分化因子(Receptor Activator of NF−κB Ligand、RANKL)は骨芽細胞/前駆幹細胞に発現することから、これらの細胞株を用いてその詳細な機能解析が行われている[バイオケミカル・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーション(Biochem. Biophys. Res. Commun.)、第257巻、第719−723頁(1999年)]。また、BMPとその受容体との相互作用に基づく細胞の分化や機能の解析にもよく利用されている[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.)、第272巻、第11535−11540頁(1997年)]。
【0006】
自家骨移植術は骨欠損の補填、局所の固定・支持および骨形成の誘導を目的として、整形外科領域では骨腫瘍、事故による骨折や外傷などによる骨欠損の補填および外傷性偽関節(骨折の癒合不全)の骨癒合促進、ならびに脊椎固定の骨性架橋などで頻繁に実施されている。また、歯科口腔外科領域でも骨腫瘍や外傷などにより失われた顎骨の再建術、歯周病などにより吸収された歯槽骨再建のための歯槽堤形成および上顎洞床挙上術に施行されている。自家骨は骨癒合を得るための最良の材料であるが、採取のために新たな手術が必要であり、そのために手術時間の延長、自家骨採取部位の出血、疼痛および感染といった患者の苦痛を伴い、さらに採取量に限りがあるといった物理的な問題点がある。これらの適応症または術式にヒト組換え型のBMPが試用・応用されているが、タンパク製剤であるための問題点、すなわち製剤の不安定性、製造コストが高いことおよび抗原性などが挙げられる。さらにはBMPの適応は自家骨移植と同様、局所への移植術によるものであり、作用を十分に発揮するには目的とする局所に長時間滞留させる必要がある。このため、頻回適応はできず、製剤的な工夫と局所から流失した際の手当てが重要な問題として浮上している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
それ故、骨形成促進作用を示し、かつ経口投与などの全身投与が可能な低分子化合物の骨欠損治療および/または骨損傷の治癒促進剤の開発が望まれていた。また、自家骨移植術やBMPの適応術と併用することにより、骨形成の促進がもたらされる治療剤の開発が望まれていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような状況下において、本発明者らは鋭意研究を行った結果、一般式[1]の4H−1−ベンゾピラン−4−オン誘導体またはその塩により上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明の医薬に関して詳述する。
本明細書において各用語は、特にことわらない限り、以下の意味を有する。
【0009】
アルキル基とは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルおよびオクチルなどのC1−8アルキル基を;シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルなどのC3−8シクロアルキル基を;低級アルキル基とは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチルおよびペンチルなどのC1−5アルキル基を;アルケニル基とは、例えば、ビニル、アリール、1−プロペニルおよび1−ブテニルなどのC2−8アルケニル基を;アルコキシ基とは、例えば、−O−アルキル基(アルキル基は、上記したC1−8アルキル基を示す。)を;アシル基とは、例えば、ホルミル基またはアセチル、プロピオニルおよびブチリル基などのC2−8アルカノイル基またはメトキサリルおよびエトキサリルなどのアルコキシオキサリル基、シクロヘキサンカルボニルなどのC3−8シクロアルキルカルボニル基またはベンゾイル基などのアロイル基などを;アルコキシカルボニル基とは、例えば、−COOアルキル基(アルキル基は、上記したC1−8アルキル基を示す。)を;アルコキシカルボニルアミノ基とは、例えば、−NHCOOアルキル基(アルキル基は、上記したC1−8アルキル基を示す。)を;ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子などを;アルキルチオ基とは、例えば、−S−アルキル基(アルキル基は、上記したC1−8アルキル基を示す。)を;アルキルスルフィニル基とは、例えば、メチルスルフィニルおよびエチルスルフィニルなどのC1−4アルキルスルフィニル基を;アルキルスルホニル基とは、例えば、メチルスルホニルおよびエチルスルホニルなどのC1−4アルキルスルホニル基を;アリール基とは、例えば、フェニルおよびナフチルなどの基を;アシルアミノ基とは、例えば、−NH−アシル基(アシル基は、上記したと同様の意味を有する。)を;アルキルアミノ基とは、例えば、−NH−アルキル基(アルキル基は、上記したC1−8アルキル基を示す。)を;ジアルキルアミノ基とは、例えば、−N(アルキル)基(アルキル基は、上記したC1−8アルキル基を示す。)を;ハロアルキル基とは、例えば、クロロメチル、フルオロメチル、ジクロロメチル、トリフルオロメチル、ジクロロエチルおよびトリクロロエチルなどのハロ−C1−8アルキル基を;アルキニル基とは、例えば、エチニルおよび2−プロピニルなどのC2−8アルキニル基を;複素環式基とは、例えば、チエニル、フリル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、キノリル、イソキノリル、ピリミジニル、ピペラジニル、ピラジニル、ピリダジニル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリル、1,2,4−トリアジニル、イミダゾ[1,2−b][1,2,4]トリアジニル、ピロリジニル、モルホリニルおよびキヌクリジニルなどの酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1つの異項原子を含有する4〜6員または縮合複素環式基を示す。
【0010】
一般式[1]の化合物またはその塩において、RとRが隣接する窒素原子と一緒になって3〜7員環の複素環式基を形成する場合、その複素環式基としては、例えば、アゼチジン−1−イル、ピロリジン−1−イル、ピペリジン−1−イルおよびピロ−ル−1−イルなどの3〜7員環の含窒素複素環式基が挙げられる。
【0011】
また、Rにおけるアルキル、アルコキシ、フェノキシ、シクロアルキル、カルバモイル、アミノおよびフェニル基;Rにおけるアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、フェニルチオ、アルキニル、アルケニル、スルファモイル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アミジノ、フェニルおよび複素環式基;Rにおけるアルキル、シクロアルキル、フェニル、アミノ、アシル、カルバモイル、アルキルスルホニル、イミノメチルおよびアミジノ基;Rにおけるアルキル、アルコキシ、フェニル、シクロアルキルおよび複素環式基;RとRが隣接する窒素原子と一緒になって形成される3〜7員環の複素環式基並びにRにおけるフェニル、チエニル、フリルおよびピリジル基は、ハロゲン原子、アルコキシ、アルキルチオ、フェノキシ、カルボキシル、アシル、アルコキシカルボニル、カルバモイル、スルファモイル、シアノ、アルキルスルホニル、ヒドロキシル、メルカプト、アシルアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキル、シクロアルキル、オキソ、ニトロ、ハロアルキル、アミノ、フェニル、アルコキシカルボニルアミノ、ヒドロキシイミノおよび複素環式基から選ばれる一種以上の置換基で置換されていてもよい。
【0012】
一般式[1]の4H−1−ベンゾピラン−4−オン誘導体の塩としては、医薬として許容される塩、例えば、ナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属との塩;カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;トリエチルアミンおよびピリジンなどの有機アミン類との塩;リジン、アルギニンおよびオルニチンなどのアミノ酸との塩;塩酸、臭化水素酸および硫酸などの鉱酸との塩;フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸およびクエン酸などの有機カルボン酸との塩;並びにメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびナフタレンジスルホン酸などのスルホン酸との塩などが挙げられる。
【0013】
一般式[1]の4H−1−ベンゾピラン−4−オン誘導体またはその塩は、さらに全ての異性体(幾何異性体、光学異性体)、水和物、溶媒和物および結晶形を包含するものである。
一般式[1]の4H−1−ベンゾピラン−4−オン誘導体またはその塩は、例えば、特開平2−49778号公報、特開5−97840号公報、特開平5−125072号公報などに記載された方法によって製造することができる。
【0014】
一般式[1]の4H−1−ベンゾピラン−4−オン誘導体またはその塩は、骨形成促進作用に基づく骨欠損治療剤または骨損傷の治癒促進剤として有効である。また、一般式[1]の4H−1−ベンゾピラン−4−オン誘導体またはその塩は、骨形成促進作用に基づく、自家骨移植術およびBMPの適応術の併用治療剤として有用である。
【0015】
本発明の薬剤を医薬品として使用する場合は適当な製剤担体を用いて通常の方法に従い、製剤組成物とすることができる。
錠剤、散剤、細粒剤または顆粒剤等の経口用固形製剤の形態に成形するに際しては、担体として、例えば、賦形剤(乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、無水第二リン酸カルシウム、アルギン酸等);結合剤(単シロップ、ブドウ糖液、デンプン溶液、ゼラチン溶液;ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース並びにこれらの水および/またはエタノール溶液等);崩壊剤(デンプン、アルギン酸、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム等);放出制御剤(高級脂肪酸,高級脂肪族アルコール、カカオ脂、水素添加油、水溶性高分子、胃溶性高分子、腸溶性高分子等);吸収促進剤(第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンモノオレエート等の界面活性剤等);吸着剤(デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、コロイド状ケイ酸等);滑沢剤(精製タルク、ステアリン酸塩、ケイ酸類、ポリエチレングリコール等)を使用することができる。
錠剤は、必要に応じ、通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、胃溶性被覆錠、腸溶性被覆錠または水溶性フィルムコーティング錠とすることができる。
カプセル剤は、上記で例示した各種の担体と混合し、硬質ゼラチンカプセルまたは軟質カプセル等に充填して調製することができる。
液体製剤は、水性または油性の懸濁液、溶液、シロップまたはエリキシル剤であることができ、これらは通常の添加剤を用いて常法に従い、調製することができる。
坐剤の形態に成形するに際しては、担体として、例えば、ポリエチレングリコール、カカオ脂、ラノリン、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、ハードファット等に適当な吸収促進剤を添加して使用することができる。
【0016】
注射剤の形態に成形するに際しては、担体として、例えば、希釈剤(水、エチルアルコール、マクロゴール、プロピレングリコール等);pH調整剤または緩衝剤(クエン酸、酢酸、リン酸、乳酸、およびこれらの塩;硫酸、水酸化ナトリウム等);安定化剤(ピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、チオグリコール酸、チオ乳酸等)を使用することができる。なお、この場合、等張性の溶液を調整するに充分な量の食塩、ブドウ糖、マンニトールまたはグリセリンを医薬製剤中に含有することができ、通常の溶解補助剤、無痛化剤または局所麻酔剤等を添加することもできる。
軟膏剤、例えば、ペースト、クリームまたはゲルの形態に調整する際には、通常使用される基剤、安定剤、湿潤剤または保存剤等が必要に応じて配合され、常法により混合および製剤化することができる。基剤としては、例えば、白色ワセリン、ポリエチレン、パラフィン、グリセリン、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ジメチルポリシロキサン類、カルボキシビニルポリマーまたはベントナイト等を使用することができる。保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類等を使用することができる。
貼付剤を製造する場合には、通常の支持体に、前記軟膏、クリーム、ゲルまたはペースト等を常法により塗布することができる。支持体としては、綿;スフ;化学繊維からなる織布または不織布;軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン等のフィルム等を使用することができる。
【0017】
また、本発明の製剤は、例えば、特開2001−240540号公報、特開平4−208230号公報、特開平2−268178号公報などに記載の方法と同様にして製造することができる。
【0018】
本発明製剤の有効成分の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の形態、その他の条件などに応じて適宜選択されるが、通常成人に対して1日5〜1000mgを1回から数回に分割して投与すればよい。
【0019】
【実施例】
つぎに、一般式[1]の化合物またはその塩の代表的化合物である3−ホルミルアミノ−7−メチルスルホニルアミノ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン(化合物1)の骨形成促進作用について試験例でもって説明する。
【0020】
試験例1 骨芽細胞分化誘導(アルカリホスファターゼ活性)実験
山口らの方法[ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J. Cell. Biol.)、第113巻、第681−687頁(1991年)]に準じて行った。マウスのST2細胞およびMC3T3−E1細胞はいずれも理研ジーンバンク・細胞開発銀行より購入した。10%の牛胎児血清(FCS)を含むRPMI 1640培地で維持培養されたST2細胞を1.5×10個/cmで24穴プレート(スミロン・セルタイトC−1プレート、MS0024K)に撒き、5%CO/95%airで24時間培養後、化合物1を添加/非添加(対照)した10%FCS加αMEM培地に交換した。同様に10%FCS加αMEM培地で維持培養されたMC3T3−E1細胞を2.5×10個/cmでプレートに撒き、24時間培養後同操作を行った。なお、培養はヒトリコンビナントBMP−2 50ng/mlの存在下/非存在下で実施した。さらに72時間培養後、骨芽細胞への分化をアルカリホスファターゼ(ALP)活性を指標にして評価した。すなわち、細胞を溶解した後、アルカリ性フォスファB−テスト(和光純薬)にてALP活性を測定し、総タンパク量をBCA プロテイン・アッセイ・試薬(PIERCE)にて測定した。タンパク量当りのALP活性(U/mgタンパク)を求め、結果は化合物1を添加しない対照培養に対する割合(%)で示した。
結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
Figure 2004075677
【0022】
試験例2 骨芽細胞分化誘導(オステオカルシンの発現)実験
試験例1と同様に維持培養されたST2細胞を9cmプレート(スミロン・セルタイトC−1プレート、MS−0390K)に撒き、化合物1の5μg/mlおよびBMP−2の50ng/ml存在下/非存在下、6日間培養した。その後細胞から全RNAを抽出し、常法に従ってオステオカルシンおよび内部標準としてのGAPDHのmRNAレベルをノーザン・ブロット法にて観察した。なお、検出に用いたプローブはセレステ(Celeste)らの方法[ヨーロピアン・モレキュラー・バイオロジー・オーガニゼーション・ジャーナル(EMBO J.)、第5巻、第1885−1890頁(1986年)]を参考にして調製した。ノーザン・ブロットの画像から画像解析ソフトウェア(NIH image)にてそれぞれの発現量を定量し、GAPDHの発現量に対するオステオカルシンの発現量の割合を求めた。対照培養との比較によって化合物1のオステオカルシン発現誘導作用を求めた。
結果を表2に示す。
【0023】
【表2】
化合物1のオステオカルシン発現誘導作用
−−−−−−−−−−−−−−−−
BMPの   誘導率
添加     (%)
−−−−−−−−−−−−−−−−
−     179
+     273
−−−−−−−−−−−−−−−−
【0024】
試験例3 石灰化促進作用
試験例1と同様にST2細胞を24穴プレート(スミロン・セルタイトC−1プレート、MS−0024K)に撒き、50ng/mlのBMP−2および10mMのβ−グリセロリン酸存在下、化合物1の5μg/mlを添加/非添加し、15日間培養を継続した。その後細胞を洗浄した後、細胞内に沈着したカルシウム(Ca)量をカルシウムC−テストワコー(和光純薬)を用いて定量した。併せて、総タンパク量をBCAプロテイン・アッセイ・試薬(PIERCE)にて測定し、タンパク量当りのCa含量(μg/μgタンパク)を求めた。
結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
Figure 2004075677
以上の実験結果から化合物1が骨髄間葉系幹細胞/前駆骨芽細胞に作用して骨芽細胞への分化を強く誘導していることは明らかである。また、この作用はBMPとの併用においても認められ、化合物1はBMPによる骨形成促進作用に対して相加的・相乗的に作用することが示された。
【0026】
以下に、本発明の製剤例を説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
製剤例1
以下の成分を用いて常法により硬ゼラチンカプセルを調製する。
Figure 2004075677
【0027】
製剤例2
以下の成分を用いて常法により錠剤を調製する。
Figure 2004075677
【0028】
製剤例3
以下の成分を用いて常法により錠剤を調製する。
Figure 2004075677
【0029】
製剤例4
以下の成分を用いて常法により錠剤を調製する。
Figure 2004075677
【0030】
【発明の効果】
一般式[1]の4H−1−ベンゾピラン−4−オン誘導体またはその塩は、骨芽細胞の骨形成作用を亢進することにより、事故による骨折や骨腫瘍に伴う骨切除術などにおいて骨の再生、損傷の治癒を促進するための、骨欠損治療および/または骨損傷の治癒促進剤として有用である。

Claims (2)

  1. 一般式
    Figure 2004075677
    「式中、Rは、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル、アルケニルまたはアリール基を;Rは、水素原子、アルキル基またはアシル基を;Rは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アジド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ホルミル基もしくはアルコキシカルボニル基または置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、フェノキシ、シクロアルキル、カルバモイル、アミノもしくはフェニル基を;Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アシル基、ヒドロキシル基もしくはアルコキシカルボニル基または置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、フェニルチオ、アルキニル、アルケニル、スルファモイル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アミジノ、フェニルもしくは複素環式基、または式
    Figure 2004075677
    もしくは式
    Figure 2004075677
    (式中、Rは、水素原子、ヒドロキシル基、シアノ基もしくはアルコキシカルボニル基または置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、フェニル、アミノ、アシル、カルバモイル、アルキルスルホニル、イミノメチルもしくはアミジノ基を;Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、フェニル、シクロアルキルもしくは複素環式基を示すかまたはRとRが隣接する窒素原子と一緒になって3〜7員環の置換されていてもよい複素環式基を示す。)で表される基を;Rは、置換されていてもよいフェニル、チエニル、フリルまたはピリジル基を;Zは、酸素原子、硫黄原子またはイミノ基を;および破線は、単結合または二重結合を示す。」
    で表される4H−1−ベンゾピラン−4−オン誘導体またはその塩を有効成分とする骨欠損治療および/または骨損傷の治癒促進剤。
  2. 3−ホルミルアミノ−7−メチルスルホニルアミノ−6−フェノキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オンまたはその塩を有効成分とする骨欠損治療および/または骨損傷の治癒促進剤。
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