JP2004075457A - カーボンナノファイバーの製造方法及び装置 - Google Patents

カーボンナノファイバーの製造方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】流動層方式によるカーボンナノファイバーの製造方法及び装置を提供することを課題とする。
【解決手段】内部に流動材11を充填した上部流動炉12Aと下部流動炉12Bからなる上下2段式の流動流動層反応部12と、炭素原料13を上記流動層反応部12内に供給する原料供給手段14と、触媒金属15を上記流動層反応部12内に供給する触媒供給手段16と、上記流動層反応部12内の流動材11が飛散及び流下する空間を有するフリーボード部17と、上記流動層反応部12に導入し、内部の流動材11を流動させる流動ガス18を供給する流動ガス供給手段19と、流動層反応部12を加熱する加熱手段20と、該フリーボード部17から飛散されたカーボンナノファイバー22及び流動材11を回収する回収ライン23と、回収ライン23で回収された流動材11とカーボンナノファイバー22とを分離する分離手段24とを具備する。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流動層方式によるカーボンナノファイバーの製造方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブは、黒鉛(グラファイト)シートが円筒状に閉じた構造を有するチューブ状の炭素多面体である。このカーボンナノチューブには、黒鉛シートが円筒状に閉じた多層構造を有する多層ナノチューブと、黒鉛シートが円筒状に閉じた単層構造を有する単層ナノチューブとがある。
【0003】
一方の多層ナノチューブは、1991年に飯島により発見された。すなわち、アーク放電法の陰極に堆積した炭素の塊の中に、多層ナノチューブが存在することが発見された。その後、多層ナノチューブの研究が積極的になされ、近年は多層ナノチューブを多量に合成できるまでにもなった。
【0004】
これに対して、単層ナノチューブは概ね0.4〜100ナノメータ(nm)程度の内径を有しており、その合成は、1993年に飯島とIBMのグループにより同時に報告された。単層ナノチューブの電子状態は理論的に予測されており、ラセンの巻き方により電子物性が金属的性質から半導体的性質まで変化すると考えられている。従って、このような単層ナノチューブは、未来の電子材料として有望視されている。
【0005】
単層ナノチューブのその他の用途としては、ナノエレクトロニクス材料、電界電子放出エミッタ、高指向性放射源、軟X線源、一次元伝導材、高熱伝導材、水素貯蔵材等が考えられている。また、表面の官能基化、金属被覆、異物質内包により、単層ナノチューブの用途はさらに広がると考えられている。
【0006】
従来、上述した単層ナノチューブは、鉄、コバルト、ニッケル、ランタン等の金属を陽極の炭素棒に混入し、アーク放電を行うことにより製造されている。しかし、この製造方法では、生成物中に、単層ナノチューブの他、多層ナノチューブ、黒鉛、アモルファスカーボンが混在し、収率が低いだけでなく、単層ナノチューブの糸径・糸長にもばらつきがあり、糸径・糸長の比較的揃った単層ナノチューブを高収率で製造することは困難であった。
【0007】
なお、カーボンナノチューブの製造方法としては、上述したアーク法の他、気相熱分解法、レーザー昇華法、凝縮相の電解法などが提案されている。
【0008】
ところで、これらの製造方法はいずれも実験室レベルの製造方法であり、特に炭素材料の収率が低い、という問題がある。
【0009】
また、上述した方法では、連続して製造することがができないなど、安定した大量生産を行うことは困難であった。
【0010】
一方、近年ナノ単位の炭素材料(いわゆるカーボンナノファイバー)は多方面において、その有用性が嘱望され、工業的な大量製造できることが望まれている。
【0011】
そこで、カーボンナノファイバーを大量製造の方法として、流動材を用いた流動層反応手段による製造方法が提案されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、流動層反応手段を用いてカーボンナノファイバーを製造する場合には、流動層内でのガス滞留時間を十分にとる必要があるので、流速を抑えている。この結果、原料ガスである有機化合物の急激な熱分解による閉塞が生じるという問題がある。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑み、ナノ単位の炭素材料であるカーボンナノファイバーを効率よく連続的に大量生産することができるカーボンナノファイバーの製造方法及び装置を提供をすることを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する第1の発明は、流動層反応手段に炭素原料と触媒金属成分と流動ガスとを供給し、流動材を用いたカーボンナノファイバを製造するカーボンナノファイバーの方法であって、
上記流動層反応手段でカーボンナノファイバーを製造するに際し、流動材の流動開始速度の2〜150倍の流速を保持することを特徴とするカーボンナノファイバーの製造方法にある。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、
上記流動層反応手段を上下2段構造とし、上部流動炉内の流速を流動材の流動開始速度の2〜90倍の流速を保持すると共に、下部流動炉の流速を上部流動炉の1.5倍とすることを特徴とするカーボンナノファイバーの製造方法にある。
【0016】
第3の発明は、内部に流動材を充填した流動層反応部と、
炭素原料を上記流動層反応部内に供給する原料供給手段と、
触媒金属を上記流動層反応部内に供給する触媒供給手段と、
上記流動層反応部に導入し、内部の流動材を流動させる流動ガスを供給する流動ガス供給手段と、
上記流動層反応部を加熱する加熱手段とを具備すると共に、
上記流動層反応部を上部流動炉と下部流動炉の上下2段とし、下部流動炉の内径を上部流動炉の内径よりも小さくすることを特徴とするカーボンナノファイバーの製造装置にある。
【0017】
第4の発明は、第3の発明において、
上記原料ガス供給手段の供給管が2重管であり、2重管内部を原料ガス通路とすると共に、2重管外部を温度制御媒体通路とすることを特徴とするカーボンナノファイバーの製造装置にある。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明によるカーボンナノファイバーの製造方法の実施の形態を以下に説明するが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0019】
[第1の実施の形態]
図1にカーボンナノファイバーを製造する装置の一例を示す。
図1に示すように、カーボンナノファイバーの製造装置は、内部に流動材11を充填した上部流動炉12Aと下部流動炉12Bからなる上下2段式の流動層反応部12と、炭素原料13を上記流動層反応部12内に供給する原料供給手段14と、触媒金属15を上記流動層反応部12内に供給する触媒供給手段16と、上記流動層反応部12内の流動材11が飛散及び流下する空間を有するフリーボード部17と、上記流動層反応部12に導入し、内部の流動材11を流動させる流動ガス18を供給する流動ガス供給手段19と、流動層反応部12を加熱する加熱手段20と、該フリーボード部17から飛散されたカーボンナノファイバー22及び流動材11を回収する回収ライン23と、回収ライン23で回収された流動材11とカーボンナノファイバー22とを分離する分離手段24とを具備するものである。
【0020】
上記上部流動炉12Aと下部流動炉12Bからなる上下2段式の流動層反応部12において、上部流動炉12Aを流動層反応部とし、その流速を流動開始速度の2〜90倍、より好ましくは2〜60倍としている。
また、下部流動炉12Bを流動層攪拌部とし、その流速は上部流動層の流速の1.5倍とし、流動開始速度の3〜150程度としている。
また、上部流動炉12Aはその内径d1 を下部流動炉12Bの内径d2 よりも広くしている。
【0021】
流動開始速度は流動材の粒径に大きく依存するので、粒径を規定する場合には、例えば300μmの流動材の場合には、図2に示すように、流動化開始速度が0.03m/s、終端速度は3m/sとなる。
上部流動炉と下部流動炉とを合わせた流動層反応部12の層高さH(h1 +h2 )は、上記流動層内の流速を満足するように、適宜設定することができる。
【0022】
上記流動層反応部12の流動床反応形式には気泡型流動層型と噴流型流動層型とがあるが、本発明ではいずれのものを用いてもよい。
本実施の形態では、流動層反応部12とフリーボード部17とから流動層反応器25を構成している。
また、フリーボード部17は、流動層反応部12よりもその流路断面積の大きいものが好ましい。
【0023】
上記炭素材料供給手段14より供給される炭素原料13は、炭素を含有する化合物であれば、いずれのものでもよく、例えばCO、CO2 の他、メタン,エタン,プロパン及びヘキサンなどのアルカン類、エチレン,プロピレン及びアセチレン等の不飽和有機化合物、ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物、ポリエチレン、ポリプロピレン等の高分子材料、又は石油や石炭(石炭転換ガスを含む)等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、C、Hの他にS成分やCl成分を含有する有機化合物を用いるようにしてもよい。
【0024】
この炭素原料13は、流動層反応部12内にガス状態で供給し、流動材11による攪拌により均一な反応が行われ、カーボンナノファイバを成長させている。この際、所定の流動条件となるように、別途流動ガスとしてガス供給手段20により不活性ガスを流動層反応部17内に導入している。
【0025】
上記触媒金属15としては、例えば鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)に代表される転移金属を単独またはこれら金属からなる合金を挙げることができる。
上記合金としては、例えばCo−Mo系の触媒金属成分を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
そして、上記触媒金属15を用い、400℃から1200℃の温度範囲でベンゼン等の炭素原料を、水素分圧0%乃至90%の混合ガス中で一定時間触媒に接触することによってカーボンファイバを合成している。
【0027】
上記流動材11の粒度は特に限定されるものではないが、例えば0.02〜20mmの範囲のものを用いることができる。
この流動材としては、公知のケイ砂、アルミナ、シリカ、アルミノシリート、ゼオライト等の酸化物粒子等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
上記分離手段としてサイクロン5以外の分離手段としては、例えばバグフィルタ、セラミックフィルタ、篩等の公知の分離手段を用いることができる。
【0029】
また、回収された流動材11は分離手段24により分離され、再利用するために、新規流動材11と混合して流動材供給手段26により流動層反応部12内に供給するようにしている。
【0030】
そして、流動層反応部12内に、炭素原料10と触媒金属15及び流動材11とを各々供給し、流動材ガス19を供給することで、流動材11を流動させ、所定の圧力及び温度とすることで、流動層による均一な反応を行うことにより、カーボンナノファイバー24を製造することになる。
【0031】
上記構成の流動層反応手段によれば、流動層反応手段でカーボンナノファイバーを製造するに際し、流動材の流動開始速度の2〜150倍の流速を保持することができるので、炭素原料と触媒金属15とが激しく混合されるので、炭素原料が熱分解する以前に反応することができ、閉塞等が生じることが防止される。
【0032】
[第2の実施の形態]
図3にカーボンナノファイバーを製造する装置の部分拡大図を示す。
図3に示すように、図1に示したカーボンナノファイバーの製造装置において、複数の細孔32を設け、該細孔32から炭素原料13及び流動ガス18を炉内部に供給している。
なお、図3中、符号35は、所定時間反応させた後に、流動材11を抜き出す抜出管を図示する。
【0033】
また、この際、ガスを旋回させるように供給するようにしてもよい。これにより、炉周壁にガスが当接するので炉全体での攪拌効率が向上する。
【0034】
[第3の実施の形態]
図4に炭素原料を炉内に供給する供給管の斜視図を示す。
図4に示すように、炭素原料13を炉内に供給する供給管を内管41と外管42とからなる2重管43とし、内管41内に炭素原料13を供給すると共に、外管42内に温度制御媒体44を供給するようにして、温度制御媒体44により、適宜温度制御(加熱又は冷却)することで、熱分解を防止するようにしている。
【0035】
上記温度制御媒体44は、水、水蒸気、空気、窒素等を用いることができる。
また、水は加圧して使用するようにしてもよい。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、流動層反応手段でカーボンナノファイバーを製造するに際し、流動材の流動開始速度の2〜150倍の流速を保持することができるので、炭素原料と触媒金属とが激しく混合されるので、炭素原料が熱分解する以前に反応することができ、閉塞等が生じることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態にかかるカーボンナノファイバーの製造装置の概略を示す図である。
【図2】流動材の粒径と流動化開始速度、終端速度との関係を示す図である。
【図3】下部流動炉の概略図である。
【図4】原料供給管の概略図である。
【符号の説明】
11 流動材
12 流動層反応部
12A 上部流動炉
12B 下部流動炉
13 炭素原料
14 原料供給手段
15 触媒金属
16 触媒供給手段
17 フリーボード部
18 流動ガス
19 流動ガス供給手段
20 加熱手段
22 カーボンナノファイバー
23 回収ライン
24 分離手段

Claims (4)

  1. 流動層反応手段に炭素原料と触媒金属成分と流動ガスとを供給し、流動材を用いたカーボンナノファイバを製造するカーボンナノファイバーの方法であって、
    上記流動層反応手段でカーボンナノファイバーを製造するに際し、流動材の流動開始速度の2〜150倍の流速を保持することを特徴とするカーボンナノファイバーの製造方法。
  2. 請求項1において、
    上記流動層反応手段を上下2段構造とし、上部流動炉内の流速を流動材の流動開始速度の2〜90倍の流速を保持すると共に、下部流動炉の流速を上部流動炉の1.5倍とすることを特徴とするカーボンナノファイバーの製造方法。
  3. 内部に流動材を充填した流動層反応部と、
    炭素原料を上記流動層反応部内に供給する原料供給手段と、
    触媒金属を上記流動層反応部内に供給する触媒供給手段と、
    上記流動層反応部に導入し、内部の流動材を流動させる流動ガスを供給する流動ガス供給手段と、
    上記流動層反応部を加熱する加熱手段とを具備すると共に、
    上記流動層反応部を上部流動炉と下部流動炉の上下2段とし、下部流動炉の内径を上部流動炉の内径よりも小さくすることを特徴とするカーボンナノファイバーの製造装置。
  4. 請求項3において、
    上記原料ガス供給手段の供給管が2重管であり、2重管内部を原料ガス通路とすると共に、2重管外部を温度制御媒体通路とすることを特徴とするカーボンナノファイバーの製造装置。
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