JP2004073947A - 水底汚泥の浄化方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】浚渫した水底汚泥にキャビテーション処理をするキャビテーション処理工程と、改質汚泥を濾過して濾過液を分離する濾過工程と、前記濾過に用いて濾過残渣が付着した高炉水砕スラグ濾材に固化剤を混入混練する固化工程と、前記固化処理によって形成された固化物を水底に埋戻す、または埋め立て造成用土材として移送する後処理工程とを含む水底汚泥の浄化方法。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、河川、湖沼、海洋など水域の水底汚泥の浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、ヘドロ(水底汚泥)とは「流れの悪い水底などにたまった柔らかい有機物に富む汚泥、特に腐敗などで悪臭などを発する状態になったものを指す俗語である」と定義されている。また、閉鎖性の強い内湾における水底汚泥としては、特に次の3点を主な特徴としている。
1)漁場や海面養殖施設などに被害を与えるなど、水産サイドからみた黒色有機汚泥。
2)概ねシルト以下(76μm以下の粒子)が50%以上を占める、有機物含有量の極めて多い新生堆積物。
3)底生生物に直接影響を与えるほか、直上水を含む酸素消費や栄養塩などの溶出、硫化水素の発生、さらには底泥の巻き上げなどによる水域への悪影響を及ぼす。
この底泥の水底汚泥は、閉鎖性内湾や漁類養殖場の多くに見られる現象となっており、この水底汚泥は、自然の浄化力を越える有機物の流入、投入(養殖用飼料)、稚積、水域の富栄養化に伴う植物プランクトンの増殖、死滅、沈降の過程によって形成される。このような海底への有機物負荷増大は、海域における生物生産力の低下に大きな影響を与えている。
【0003】
水温が比較的低く、かつ、鉛直的に一様な時期である循環期には、水中の栄養塩類も混合され平均化している。また、水中の酸素も海底表面にまで輸送され、底泥表面は好気的な状態にある。水温の低いこともあり、沈降した易分解性有機物もゆっくりと分解し、窒素、リン等の栄養塩として水中に溶出していく。このような循環期の機構のもとでは、底泥表面にも底生生物が生存できる十分な酸素が供給されている場合が多い。
しかしながら、気温の上昇と共に表層水温が上昇し、地域によっては淡水の流入等により、夏季に向かって躍層が形成されると、上下間の物質輸送は妨げられ、海面から下層への酸素の輸送が減少する。水温の上昇と共に、底泥表面の易分解性有機物の分解が活発化し、直上の水中から溶存酸素を取り込み、水域の一部の底泥で貧酸素化が始まり、次第に広域化していく。底層での酸素消費には、底層に沈降し底層近くに浮遊している懸濁物が形成する底層高濁度層(ネフエロイド層)の役割が大きい。
【0004】
この間、上層では水温の上昇と共に植物プランクトンの増殖も活発化し、時には赤潮の発生に至る。植物プランクトン等の死骸もデトリタスとして海底への有機物負荷となる。また、有機物の分解によって海水中の酸素が消費され、無酸素水中で硫酸還元菌が硫酸イオンを還元して硫化水素を発生させる。
底泥表層では、好気的であった環境がこのように次第に嫌気的な環境に向かい、N、Pの溶出、特に硫化水素が発生するような環境では急激なリンの溶出が起こる。このようにして下層に蓄積された栄養塩類は、気象条件等による躍層の一時的な破壊や風による循環によって表層に浮上し、赤潮形成の要因ともなる。
また、下層の貧酸素または無酸素水は青潮を引き起こすことにもなる。
【0005】
赤潮は、主として毒性のある藻類の大量発生によって水面が赤褐色になる現象であり、そのなかでも、毒性の強い渦鞭毛藻の赤潮はしばしば魚介類の大量死をもたらすため、特に問題視されている。この渦鞭毛藻は、リン酸塩や窒素化合物を食べて繁殖する。
また、青潮は、プランクトンの死骸やへドロの分解によって海水中の酸素が消費され、無酸素で硫化水素を含んだ海水が海底から漂流する現象であり、無酸素水中で硫酸還元菌が海水の硫酸イオンを還元して硫化水素を発生させる。硫化水素が浮上すると水面が青色や乳白色に見える。
【0006】
従来、水底汚泥・水質の浄化技術としては、水底汚泥に覆砂したり、底泥を浚渫したりする方法なとが知られている。
ここで用いられる覆砂材としては、海砂や山砂など化学反応を伴なわずに底泥を覆う効果のみを有する材料や、石灰のように底泥中の燐の一部を化学反応により除去できる材料が用いられている。海砂や山砂の場合には、覆砂後の海底を砂質域に棲息する貝頬や魚類などの棲息場造成も同時になされることもある。また、築磯効果を期待して天然石を用いる場合もある。
【0007】
しかしながら、水底汚泥・水質に対して化学反応による浄化作用を有しない海砂や山砂などの天然砂を覆砂材として用いる場合は、例えば、夏期の海水停滞期や生物の活動が活発な時期には、ヘドロ(水底汚泥)が堆積していない状態でも間隙水中で硫酸還元菌の作用により数ppmのH2 Sが生成してしまうという問題がある。また、石灰を用いる場合には、費用が高価となることや、水質が高アルカリになる場合があること、石灰が水底で板状になってしまう等の問題がある。天然石を単独で用いる場合は、天然石への海藻の付着繁殖は行われるものの、底泥からの栄養塩類の溶出を防止する効果はほとんどなく、水底汚泥の堆積が問題となっている水域へ適用しても水底汚泥・水質の改善効果には十分なものではない。さらに、天然石や山砂は山を切り崩して採取する必要があり、近年の環境問題から、その確保が難しくなりつつある。
【0008】
前記の覆砂法以外にも閉鎖性水域の汚濁削減対策は水質対策(水中曝気、高酸素水発生など)、水底汚泥対策(浚渫、覆砂、耕耘、水底汚泥改良材散布など)として多く研究されており、現在実用化されているものもあれば、まだ研究段階のものもある。
特開2001−212600号公報、特開平10−230297号公報には、これらの具体的対策方法が開示されている。
【0009】
即ち、特開2001−212600号公報には、浚渫泥土を遠心分離によって分級処理し、該分級処理でオーバーフローした分を沈降分離し、後沈降分離した濃縮泥を脱水処理する浚渫泥土の処理方法が開示されている。
しかしながら、この方法では、水域環境に悪影響を及ぼす有機物や還元性無機物は分解無害化されずに、固形物中に存在するので、これをそのまま、海底へ戻した場合には、海域の根本的な浄化になっていないし、また、固形物を陸上廃棄する場合には、廃棄場所の確保という問題が生じる。
【0010】
また、特開平10−230297号公報には、底泥を吸い上げオゾンを曝露して改質し、改質底泥を固液分離し、分離液を藻類培養層等の他工程に導くと共に分離残分を水域の底に導く底泥の処理方法および装置を開示している。
しかしながら、この処理は、オゾン処理のためのコストが高いこと、残留するオゾンによるオキシダント障害が生じることがあること、従って、脱オゾン装置を設置する必要があることなど、十分なものとは言えない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如く、社会的に大きな影響をもたらす河川、湖沼、海洋など水域の水底汚泥の処理に関しては、多くの研究と実用化が図られているが、未だ満足すべきものは認められておらず、より地球に優しく、安定した、且つ低コストによる水底汚泥の処理方法が強く望まれている。特に、水域環境におおきな影響を与える水底汚泥中の有機物と還元性無機物を無害化する対策、また、赤潮、青潮に対する対策が強く要望されている。
【0012】
上記に鑑み、本発明は、水底汚泥の基本的な解析調査結果を基として、水底汚泥の各構成要素に対する適切な処置を施すことにより、また、高炉水砕スラグを巧みに利用することにより、地球により優しく、効率のよい、安定した、且つ低コストな水底汚泥の処理方法を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の水底汚泥の浄化方法は次の構成よりなる。
1)浚渫した水底汚泥の処理方法において、浚渫した水底汚泥にキャビテーション処理をするキャビテーション処理工程と、前記水底汚泥を濾過して濾過液を分離する濾過工程と、前記濾過に用いて濾過残渣が付着した濾材に固化剤を混入混練し固化処理をする固化工程と、前記固化処理によって形成された固化物を水底に埋戻す、または埋め立て造成用土材として移送する後処理工程とを含むものである。
【0014】
2)浚渫した水底汚泥の処理方法において、浚渫した水底汚泥にキャビテーション処理をするキャビテーション処理工程と、前記水底汚泥を濾過して濾過液を分離する濾過工程と、前記濾過に用いて濾過残渣が付着した濾材に固化剤を混入混練し固化処理をする固化工程とを含むものである。
【0015】
3)上述の1)または2)における濾材に高炉水砕スラグを用いるものであり、
4)上述の1)から3)における前記キャビテーション処理が、流路の一部を絞った構造のキャビテーション発生装置内に水底汚泥を通過させることによって、有機物と還元性無機物のうち少なくとも一つを分解させるものであり、
5)上述の1)から4)における前記キャビテーション処理が、キャビテーション発生装置の上流側において水底汚泥に対して酸化剤を添加するものであり、
6)上述の1)から5)におけるキャビテーション処理を施す前に、浚渫した水底汚泥から粗大粒子を除去するものであり、
7)上述の1)から5)における水底汚泥の浄化方法のうち、キャビテーション処理工程と、濾過工程と、固化工程と後処理工程のうち少なくとも一つの工程を浚渫した水域の水上で実施するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る水底汚泥の処理工程流れ図である。
図において、1は浚渫泥、2は粗大粒子除去工程、3はキャビテーション処理工程、4は改質汚泥、5は濾過処理工程、6は固形物/濾材、7は分離液、8は固化工程、9は固化(造粒)泥、10は後処理工程、11は排水処理工程、12は処理水、13は放流工程である。
【0017】
浚渫船により水底から浚渫された浚渫泥を土運船などで運搬し浄化処理を施す。
本実施の形態における粗大粒子除去処理工程2は、下記要領による。
1)浄化効率を高めることと、キャビテーション発生装置やポンプの閉塞・磨耗を避けるため、粒径1mm以上の粗大粒子を除去する。1段目を10mmメッシュ、2段目を1mmメッシュとした2段スクリーンの振動篩を用い、粗大粒子(貝殻、レキ、砂等)を除去する。
粒径10mm以上の粗大物(貝殻、レキ)は洗浄して海へ廃棄する。1〜10mmの大粒径物は後述する固化工程の固化原料として用いる。
【0018】
2)海洋水底汚泥の場合、1mm以上の粗大粒子の量は、重量分率で全固形物の数%から二十数%程度であるが、この粗大粒子に含有される有機物量と還元性無機物量は、ほとんど無視できる程度の量である。
したがって、1mm以上の粗大粒子を取除いてキャビテーション処理をすれば、1mm未満の細粒子中の有機物(生物易分解性有機物)と還元性無機物を効率的に除去でき、最終的に充分に無害化された固化土が得られる。
【0019】
本実施の形態におけるキャビテーション処理工程3は下記要領による。
キャビテーション処理は、ベンチュリ管の絞り効果によるキャビテーション気泡の発生、崩壊作用を利用して、崩壊圧、OHラジカルの酸化分解作用によって水底汚泥中の有機物と還元性無機物を分解し、水底汚泥のSOD(好気懸濁状態における酸素摂取量)を低減するものである。また、これに酸化剤(過酸化水素、次亜塩素酸、オゾン等)を添加することにより、その酸化反応によって有機物と還元性無機物の酸化分解が促進される。
本キャビテーション処理は前記粗大粒子除去処理により有機物と還元性無機物を多く含む細粒子物を処理するので、効率のよいSODの低減化を図ることができる。
【0020】
図3はキャビテーション処理におけるキャビテーション発生装置として使用されるベンチュリ管とキャビテーション気泡発生、崩壊の関係を模式的にあらわした説明図である。 図において、30はベンチュリ管、31はのど部、32はキャビテーション気泡、33はキャビテーション気泡発生部、34はキャビテーション気泡崩壊部である。
ベンチュリ管30ののど部31において、流体は高速、低圧となり、蒸気圧以下の部分でキャビテーション気泡32が発生する。また、キャビテーション気泡32によりOHラジカルが生成されることが知られており、キャビテーション気泡32内は高温高圧となっている。前記酸化分解作用はこのキャビテーション気泡32の発生分解の過程において生じる。
【0021】
図4はキャビテーション処理工程3に使用されるキャビテーション処理装置の1実施例の説明図である。図において、40はキャビテーション処理装置、41は泥水タンク、42は送出管、43は流量計、44はポンプ、45は酸化剤供給部、46は圧力計、47はベンチュリ管、48は戻り管である。
【0022】
一旦泥水タンク41に溜められた水底汚泥は送出管42より送りだされ、途中流量計43により流量計測される。この計測値によりポンプ44の駆動モータ(図示せず)のインバータ制御を行い流量を制御する。
酸化剤供給部45において適量の酸化剤(過酸化水素水など)が供給され、ベンチュリ管47においてキャビテーション処理を行う。処理された改質汚泥は戻り管48より泥水タンク41に戻され、適当回数循環流送される。なお、ベンチュリ管47入り口側における流量は、例えば約3〜4.5m/sec、圧力は、例えば約98kPa(G)である。
【0023】
キャビテーション処理をされ改質された水底汚泥は、濾過処理工程5に導入される。
【0024】
本実施の形態における濾過処理工程5は、下記要領による。
図5は、本実施の形態における、濾過装置の1実施例の説明図である。図において、50は濾過装置、51は高炉水砕スラグ濾材、52はメッシュ、53は改質汚泥入口、54は分離液出口である。
【0025】
本実施の形態における濾過処理工程5は、濾材として高炉水砕スラグ51を使用するところに特徴があり、また、この濾過による残渣を、濾過に使用された濾材と共に固化処理をするところに発明のポイントがある。
即ち、キャビテーション処理工程により処理された改質汚泥は、所定のサイズに粒度分級された高炉水砕スラグの所定量を濾材51に使用した濾過装置50に投入される。濾過装置50の改質汚泥入口53より投入された前記改質汚泥4は濾材51を通過させることにより、液分を分離する。分離された分離液は分離液出口54から排水処理工程11を経て外部に放流13される。濾過処理工程5において所定の時間濾過されて残された濾過残渣は、使用された濾材51と共に固化工程8に送られる。従って、濾材51としての高炉水砕スラグの所定サイズ、所定量は、改質汚泥4の供給量、濾過速度と次の固化工程8の固化処理能力とのバランスにより決められる。
【0026】
高炉水砕スラグ濾材51と固形物(濾過残渣)を固化工程8により固化造粒した固化(造粒)泥9を覆砂材として用いる場合には次のような作用効果がある。
即ち、汚泥水底を改善する場合、高炉水砕スラグ濾材51と固形物(濾過残渣)による固化(造粒)泥9は、へドロに蓋をするという物理的効果だけではなく、高炉水砕スラグの主成分であるカルシウム(Ca)とケイ素(Si)により、赤潮と青潮の発生を化学的に抑制することができる。
【0027】
前記のごとく、赤潮は主として毒性のある藻類の大量発生によって水面が赤褐色になる現象であり、そのなかでも、毒性の強い渦鞭毛藻の赤潮が特に問題視される。渦鞭毛藻は、リン酸塩や窒素化合物を栄養源として繁殖する。一方、高炉水砕スラグに含まれるケイ素は、珪藻の繁殖に必要な栄養素であり、この珪藻は食物連鎖のスタートとなる生物であり、渦鞭毛藻とは競合関係にある。高炉水砕スラグから供給されるケイ素によって珪藻が繁殖し、渦鞭毛藻の発生を抑制することができる。
【0028】
また青潮は、プランクトンの死骸やヘドロの分解によって海水中の酸素が消費され、無酸素で硫化水素を含んだ海水が海底から漂流する現象であり、無酸素水中で硫酸還元菌が海水の硫酸イオンを還元して硫化水素を発生させる。これに対し、高炉水砕スラグに含まれるカルシウムが少しずつ海水に溶けることにより、海底の状態をpH8.5程度の弱アルカリ性に保つことができ、硫酸還元菌の活動が抑制される。
高炉水砕スラグは、上記のように底泥からの硫化水素発生を抑制する効果を有し、さらに嵩比重が1.1〜1.3程度と軽く、しかも角張った粒子形状のため、高炉水砕スラグ同士のかみ合わせが良く、このため底泥の中に沈み込まないで覆砂を維持することができる。
【0029】
即ち、高炉水砕スラグは、それ自身が底泥からの硫化水素発生を抑制する効果を有し、さらにガラス質であることから含有成分の溶解や海水中または底泥中の成分との反応が非常にゆっくり進行するため、石灰の様に急激にpHを上昇させたり、底質・水質の改善効果が短期間でなくなったりはしない。さらに、白色で天然の砂と同様の外観であり、砂質域の生物が棲息する域を創造するのに適している。
本実施の形態の、前記高炉水砕スラグ濾材51と固形物(濾過残渣)を固化工程8により固化造粒した固化(造粒)泥9は、長期的な底質・水質浄化の効果を有している。
【0030】
本実施の形態における固化工程8は下記要領による。
前記濾過処理工程5により濾過された固形物(濾過残渣)は、その濾過に使用された高炉水砕スラグ濾材51と固形物(濾過残渣)を固化工程8により固化造粒処理される。
固化処理においては、前記高炉水砕スラグ濾材51と固形物(濾過残渣)に先の粗大粒子除去工程において分級された大粒径物質(1〜10mm)も混入され、また、固化剤として例えば無機系固化材か粉末スラグを添加する。粉末スラグは高炉スラグから出てくる水砕スラグを微粉化したものである。
【0031】
さらに、固化されたものは押出方式などの造粒装置により造粒処理される。また、造粒処理された造粒物は、所定の硬さになるまで基本的に気中静置により固化養生処理を施すことができる。前記造粒処理された造粒物は、所定量蓄積されたのち覆砂船などにより所定水底に埋め戻され、汚濁水底の覆砂、干潟造成、藻場造成に用いられたり、ブロック成型され魚礁ブロックに用いられたり、あるいは、埋立造成用土材として陸上に移送される。
【0032】
本実施の形態における排水処理工程11は下記要領による。
上述の濾過処理工程5において濾過された分離液7は、さらに凝集沈殿法またはスプリングフィルタ等により懸濁質成分を除去し、所定の排水基準まで処理する。排水処理された浄水は水域へ放流する。
排水基準としては、SS濃度:50mg/l以下、pH値:5.8〜8.6を目安とする。
【0033】
[実施例]
図2は、実施の形態1基づく、実際の「水底汚泥処理プラント台船」のプラント概念図である。
図において、100は水底汚泥処理プラント台船、101は水底汚泥浚渫船、102はスクリーン、103はサイクロン、104は水底汚泥貯蔵タンク、105は給水タンク、106A、106Bはスラリータンク(各1基)、107A、107Bは泥水タンク(各2基)、108A、108Bはキャビテーション処理装置(各1基)、109は処理スラリー貯蔵タンク、110は濾過装置、111は排水処理装置、112は固化装置、113は造粒装置、114は固化養生スペース、115は処理泥土貯蔵タンク、116は排水、117は処理泥土覆砂船、118は発電機その他ユーティリティ室(含む管理室)等の配置スペースである。
【0034】
水底汚泥浚渫船101により浚渫された水底汚泥(揚土量約60m3 /h)は、水底汚泥中のゴミをスクリーン102により、砂礫分はサイクロン103により分離除去され、スラリータンク106A、Bのバファタンクとしての水底汚泥貯蔵タンク104に一旦貯蔵される。水底汚泥貯蔵タンク104には沈殿防止用の攪拌機が設置されている。一旦貯蔵された水底汚泥は適宜給水されて、沈殿防止用攪拌機を備えた2基のスラリータンク106A、Bへ導入され、さらに時間切り替えされる各2基の泥水タンク107A、Bを介してキャビテーション処理装置108A、Bに送られ、前記キャビテーション処理を施行される。
【0035】
キャビテーション処理装置108A、Bには、圧送ポンプ、ベンチユリ管、薬液タンク、その他が装備されている。また、キャビテーション処理装置108A、Bは2組装備されており、1組のキャビテーション処理装置に2組の泥水タンク107A、Bを設けて、これを所定時間ごとに切り替え、安定したキャビテーション効果を図る。スラリ発生量は約48m3 /hである。
【0036】
キャビテーション処理をされ発生したスラリー状の水底汚泥は、処理スラリ貯蔵タンク109に一旦滞留され、適宜に濾過装置110に移送される。
濾過装置110の濾材には所定サイズの高炉水砕スラグ51を所定量使用する。
濾過装置110により所定の時間濾過されて残された濾過残渣は、濾過に使用された高炉水砕スラグ濾材51と共に固化装置112に送られる。従って、高炉水砕スラグ濾材51としての高炉水砕スラグの所定サイズ、所定量は、改質汚泥4の供給量、濾過速度と次の固化装置112の固化処理能力とのバランスにより決められる。
濾過装置により濾過された分離液7は排水処理装置110により所定の排水基準まで処理され水域に排水される。
【0037】
濾過装置110による、固形物(濾過残渣)は、濾過に使用された高炉水砕スラグ濾材51と共に固化装置に移送され、固化剤を添加されて固化する。また造粒装置113により固化した水底汚泥はさらに造粒処理される。
造粒装置113には押出方式造粒装置を使用する。
【0038】
固化造粒された水底汚泥は造粒強度を高めるために、固化養生スペース115において、気中静置して固化養生される。固化養生された水底汚泥は一時的に貯蔵タンク115に保管され、タンクが一杯になると覆砂船117により移送され、水中への埋戻し等がされる。
【0039】
水底汚泥処理プラント台船100には、台船上に装置駆動用の発電機、その他必要な機器を配置、作業を制御する管制室、作業員休憩室等の簡易居住区を配置する配置スペース118が設けられている。また、水底汚泥処理プラント台船100の4隅には係留装置が配備されている。
【0040】
上記実施例により水底汚泥(含水率75wt%、粒度組成:砂25%、シルト45%、粘土30%,COD30mg/g、強熱減量IL:15%、貝殻等が多数混在)を処理した結果、1)粗大粒径分(10mm以上)は洗浄廃棄し、2)大粒径分(1〜10mm)を濾材と共に固化造粒して固化泥とし、3)粒径1mm以下の小粒径分は有機物を分解無害化し固化造粒泥とした。また分離液は所定の排水基準まで処理され水域に排水された。
図2は、「水底汚泥処理プラント台船」に配置した各装置の構成の一例を示したもので、これ以外の構成でもかまわないことは勿論である。また、上記の実施例ではキャビテーション処理工程と濃縮工程と固化工程と後処理工程を水底汚泥処理プラント台船上で行う例を示したが、前記の工程のうちいずれかを水域の水上でなく陸上で行ってもかまわない。
【0041】
[実施の形態2]
キャビテーション処理による効果を確認するため確認試験を行った。
海域から採取した水底汚泥をサンプルとして、キャビテーション処理をしたもの(試料A、B)、無処理のもの(試料C)を作成した。
各試料A、B、Cを同一条件にて遠心分離し泥分を採取した。
各泥分のSOD(好気懸濁状態における酸素摂取量)を測定し、有機物と還元性無機物に由来するSOD値を算出した。120時間目の測定値を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
結果、水質に悪影響を及ぼす易分解性有機物と還元性無機物の量は、キャビテーション処理により分解され、約1/4程度に削減された。
また、キャビテーション処理後、濃縮処理した濃縮泥、固液分離処理した固形物中に含まれる易分解性有機物と還元性無機物は大幅に削減されている。
そのため、固化処理した固化物を水域に戻しても、有機物と還元性無機物の溶出がなく水域環境への影響が無いようにすることができる。
【0044】
さらにキャビテーション処理をした改質汚泥を高炉水砕スラグ濾材を使用した濾過装置を用いて濾過し、濾過固形物を高炉水砕スラグ濾材に付着させ分離した。
濾過固形物(濾過残渣)を付着した高炉水砕スラグ濾材を濾過装置より抜き取り、無機系固化剤を添加して固化造粒し、養生後固化物を作成した。
硫化水素の発生している海域から採取した水底汚泥を海域環境を模した2つの大形水槽に入れ、一方の水槽には水底汚泥層上に上記の固形物を覆砂材として覆った(実施例)。他方の水槽には、覆砂せずにそのままとした(比較例)。
海水中の硫化水素濃度を測定した結果、実施例では硫化水素を検出しなかったが、比較例では硫化水素を数ppm程度検出した。
高炉水砕スラグを用いた濾材と改質汚泥からの濾過残渣により作成した固化物で硫化水素を発生させる硫酸還元菌の棲息する水底汚泥を覆砂することにより、硫酸還元菌の活性を抑制し硫化水素の発生を抑制できることが確認された。
【0045】
【発明の効果】
本発明は、
1)浚渫した水底汚泥の処理方法において、浚渫した水底汚泥にキャビテーション処理をするキャビテーション処理工程と、前記水底汚泥を濾過して濾過液を分離する濾過工程と、前記濾過に用いて濾過残渣が付着した濾材に固化剤を混入混練し固化処理をする固化工程と、前記固化処理によって形成された固化物を水底に埋戻す、または埋め立て造成用土材として移送する後処理工程とを含むことにより、より地球に優しく、安定した、且つ低コストによる水底汚泥の処理方法を提供することができる。
【0046】
2)前記濾材に高炉水砕スラグを用いることにより、
3)前記キャビテーション処理は、流路の一部を絞った構造のキャビテーション発生装置内に水底汚泥を通過させ、有機物を分解することにより、
4)前記キャビテーション発生装置の上流側において水底汚泥に対して酸化剤を添加することにより、
5)前記キャビテーション処理を施す前に、浚渫した水底汚泥から粗大粒子を除去することにより
6)また、前記水底汚泥の浄化方法のうち、キャビテーション処理工程と、濾過工程と、固化工程と後処理工程のうち少なくとも一つの工程を浚渫した水域の水上で実施することにより、より確実で安定した、且つ低コストによる水底汚泥の処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の工程における、処理工程流れ図である。
【図2】本発明の実施例の、水底汚泥処理プラント台船のプラント概念図である。
【図3】本発明のキャビテーション処理に使用するベンチュリ管とキャビテーション気泡発生、崩壊の関係を模式的にあらわした説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1に使用するキャビテーション処理装置の1実施例を示す説明図である。
【図5】本実施の形態における、濾過装置の1実施例の説明図である。
【符号の説明】
1 浚渫泥、2 粗大粒子除去工程、3 キャビテーション処理工程、4 改質汚泥、5 濾過処理工程、6 固形物/濾材、7 分離液、8 固化工程、9固化(造粒)泥、10 後処理工程、11 排水処理工程、12 処理水、13 放流工程、30 ベンチュリ管、31 のど部、32 キャビテーション気泡、33 キャビテーション気泡発生部、34 キャビテーション気泡崩壊部、40 キャビテーション処理装置、41 泥水タンク、42 送出管、43 流量計、44 ポンプ、45 酸化剤供給部、46 圧力計、47 ベンチュリ管、48 戻り管、50 濾過装置、51 高炉水砕スラグ濾材、52 メッシュ、53 改質汚泥入口、54 分離液出口、100 水底汚泥処理プラント台船、101 水底汚泥浚渫船、102 スクリーン、103 サイクロン、104水底汚泥貯蔵タンク、105 給水タンク、106A、106B スラリータンク(各1基)、107A、107B 泥水タンク(各2基)、108A、108B キャビテーション処理装置(各1基)、109 処理スラリー貯蔵タンク、110 濾過装置、111 排水処理装置、112 固化装置、113 造粒装置、114 固化養生スペース、115 処理泥土貯蔵タンク、116 排水、117 処理泥土覆砂船、118 発電機その他ユーティリティ室(含む管理室)等の配置スペース。
Claims (7)
- 浚渫した水底汚泥の処理方法において、浚渫した水底汚泥にキャビテーション処理をするキャビテーション処理工程と、前記水底汚泥を濾過して濾過液を分離する濾過工程と、前記濾過に用いて濾過残渣が付着した濾材に固化剤を混入混練し固化処理をする固化工程と、前記固化処理によって形成された固化物を水底に埋戻す、または埋め立て造成用土材として移送する後処理工程とを含むことを特徴とする水底汚泥の浄化方法。
- 浚渫した水底汚泥の処理方法において、浚渫した水底汚泥にキャビテーション処理をするキャビテーション処理工程と、前記水底汚泥を濾過して濾過液を分離する濾過工程と、前記濾過に用いて濾過残渣が付着した濾材に固化剤を混入混練し固化処理をする固化工程とを含むことを特徴とする水底汚泥の浄化方法。
- 前記濾材に高炉水砕スラグを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の水底汚泥の浄化方法。
- 前記キャビテーション処理は、流路の一部を絞った構造のキャビテーション発生装置内に水底汚泥を通過させることによって、有機物と還元性無機物のうち少なくとも一つを分解させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の水底汚泥の浄化方法。
- 前記キャビテーション処理は、キャビテーション発生装置の上流側において水底汚泥に対して酸化剤を添加することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の水底汚泥の浄化方法。
- 前記キャビテーション処理を施す前に、浚渫した水底汚泥から粗大粒子を除去することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の水底汚泥の浄化方法。
- 前記水底汚泥の浄化方法のうち、キャビテーション処理工程と、濾過工程と、固化工程と後処理工程のうち少なくとも一つの工程を浚渫した水域の水上で実施することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の水底汚泥の浄化方法。
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