JP2004073559A - 画像診断装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】生体光計測を行なう光トポグラフィユニット10と、超音波画像を形成する超音波ユニット20とを組み合わせた画像診断装置であり、生体光計測用の光照射部及び光計測部が設けられたプローブ30には、光照射部と光計測部との間に超音波探触子が配置されている。超音波ユニット20で形成した超音波画像をもとに、生体光計測の対象部位における光経路(光路長及び深度)を推定し、推定された光路長及び深度から、生体光計測における最適な光照射部−光計測部間距離を求めるとともに、得られた生体内の吸収物質の変化量の絶対値を求める。
【選択図】 図1
Description
【発明が属する技術分野】
この発明は画像診断装置に関し、特に生体光計測装置と超音波診断装置とを組み合わせ、散乱体である生体内の吸収物質の変化量を画像化するための画像診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
可視から近赤外領域の波長の光を用いて、生体の酸素代謝機能を簡便かつ非侵襲的に計測する診断装置として、生体光計測装置が開発、実用化されている。生体光計測装置では、生体内に存在するヘモグロビン等の特定の吸収物質が、酸素状態と脱酸素状態とで特定波長の光の吸収性が変化することを利用して、生体の酸素代謝機能を画像として表示するようにしたものである。さらに生体光計測装置を発展させたものとして、複数の光照射部と複数の光計測部とをマトリックス状に配置して、比較的広い範囲の生体機能情報を画像として表示できる光トポグラフィ装置がある。光トポグラフィ装置は、例えば脳の活性部位の特定やてんかん患者の発作時における焦点位置などの生体情報を得ることができ、診断装置としての重要性が増している。
【0003】
しかし、このような生体光計測装置は、光照射部から光測定部までの光路における光の減衰量(その変化)を測定するものであるため、吸収物質の絶対値を直接計測することはできない。即ち、光照射部と光測定部との間で照射された光が通る経路は、光照射部−光測定部間の距離のみならず生体の構造にも依存し、光路長が異なれば光の減衰量も異なることとなり、生体光計測で計測された値には、このような構造に依存する光路長のファクタも含まれることになる。
【0004】
従って、吸収物質の絶対値を求めるためには、生体表面から生体内に照射された光が光計測部に達するまでの生体内での光路長と、その光路長における散乱特性や吸収特性を知る必要がある。
【0005】
光路長を解析する手法としては、モンテカルロシミュレーションや光拡散方程式の数値解析などが知られており、またそれらを応用して複雑な境界形状からなる領域について吸収物質の定量を可能にした手法やアルゴリズムが提案されている(例えば、「光強度に依存しない吸収成分定量法−光路長平均と分散を用いるMVS法−」、土屋ら、pp.118〜121、OSJ−BIOP 2000−34、「有限差分法を用いた新生児頭部モデルにおける光伝播解析」、福井ら、pp.20〜23、OSJ−BIOP 2001−6など)。また特開平8−29329号公報には、散乱体である生体内の吸収物質の吸光係数と、モンテカルロ法により求めた模擬的な散乱体(吸収物質を含まない散乱体)における光路長とを用いて吸収物質濃度の空間分布を求め表示する手法が提案されている。
【0006】
これらの技術を実際の患者に適用する場合には、その患者について計測部位の構造を知る必要があるが、上記技術はファントムや頭部モデルを用いた光路長解析手法に限定されており、そのまま実用することはできない。一般に、生体の形態を計測する装置として、MRI、X線CT、超音波診断装置等が実用化されているが、他のモダリティから得た形態情報は、同一患者の情報であっても測定箇所によって異なるため、そのまま用いることはできず、形態情報と生体光計測装置の計測部位との位置合わせのための処理が必要となる。また生体光計測とは別にこのような形態の計測を行っておく必要があるため、リアルタイム性を充足できない。
【0007】
ところで超音波診断装置はMRIやX線CTに比べ簡便に形態情報を得ることができる装置であり、この超音波診断装置を生体光計測装置と組み合わせて、生体光計測装置で得られる生体機能情報を補い、形態情報をも表示できるようにした装置が提案されている(特許第3251417号)。しかしこの装置では、生体機能情報と併せて形態情報を観察することはできるが、吸収物質の絶対値表示を行えない点は、従来の生体光計測装置と同様である。
【0008】
また従来の生体光計測装置では、光照射部と光計測部の間隔は、頭部の計測の場合、深度約30mmを計測するのに適した間隔に固定されており、被検体や目的部位に応じた調整を行うことはできなかった。このため、生体光計測で得られる情報の精度に限界があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、生体光計測においてリアルタイムで吸収物質やその変化量の絶対値を画像化することができる画像診断装置を提供することを目的とする。また本発明は、被検体に応じて光路長の調整、即ち光照射部と光計測部との間隔の最適化を行うことができ、これにより精度の高い計測を行うことが可能な画像診断装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の画像診断装置は、光照射部と、光照射部から生体内に照射され、生体内又は生体表層で散乱・透過した光を検出する光計測部と、光計測部が検出した光の強度に対応する信号を処理し、生体内の吸収物質の変化量を求め、画像化する信号処理部と、光照射部と光計測部との間に配置され、生体に超音波を送波すると共に生体内部で反射された超音波を受波する超音波探触子と、超音波探触子で受波した超音波に対応する信号を処理し、生体の形態画像を形成する超音波画像形成部とを備え、前記信号処理部は、前記超音波画像形成部で形成された形態画像をもとに生体内に照射された光の光路長を推定する手段と、推定された光路長及び前記吸収物質の変化量をもとに前記変化量の絶対値を算出する手段とを備える。
【0011】
この画像診断装置によれば、超音波画像をもとに生体光計測における光路長を推定し、これによって生のデータである吸収物質の変化量を補正できるので、測定部位の光路長に依存しない正確な情報を得ることができる。
【0012】
また本発明の画像診断装置は、光照射部と、光照射部から生体内に照射され、生体内又は生体表層で散乱・透過した光を検出する光計測部と、光計測部が検出した光の強度に対応する信号を処理し、生体内の吸収物質の変化量を求め、画像化する信号処理部と、光照射部と光計測部との間に配置され、生体に超音波を送波すると共に生体内部で反射された超音波を受波する超音波探触子と、超音波探触子で受波した超音波に対応する信号を処理し、生体の形態画像を形成する超音波画像形成部とを備え、前記信号処理部は、前記超音波画像形成部で形成された形態画像をもとに生体内に照射された光の光路長及び到達深度を推定する手段と、推定された光路長及び到達深度をもとに光照射部及び光計測部の最適な位置を算出する手段とを備える。
【0013】
この画像診断装置によれば、超音波画像をもとに生体光計測における光路長を推定し、これによって光照射部及び光計測部の位置を最適化できるので、目的とする深度の情報を得ることができる。
【0014】
さらに最適化した光照射部及び光計測部の位置における光計測結果について、光路長を用いた補正を行なうことにより、目的の測定部位について光路長に依存しない正確な情報を得ることができる。
【0015】
本発明の画像診断装置は、光照射部及び光計測部がそれぞれ複数備えられた装置に好適に適用することができる。
【0016】
また本発明の画像診断装置は、表示の機能として、超音波画像形成部で形成された超音波形態画像と生体光計測で計測された吸収物質の変化量或いはその絶対値を同時に表示する手段を備える。
この画像診断装置によれば、各測定位置における形態画像と生体光計測による測定結果とを併せて観察できるほか、光路長やパラメータの設定を確実に行なうことができる。
【0017】
さらに、本発明の画像診断装置は、光照射部及び光計測部がそれぞれ複数備えられている場合には、表示の機能として、信号処理部は、全ての測定点について、変化量の絶対値を表示する手段を備える。
これにより複数の光照射部及び光計測部がカバーする広い領域について、吸収物質の変化を観察することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の画像診断装置の実施形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明の画像診断装置の一実施形態の概要を示す図である。この画像診断装置は、光トポグラフィユニット10と、超音波ユニット20と、プローブ30と、制御ユニット40とから構成される。プローブ30は、被検体50の光計測と超音波計測とを同時に行なうために、複数の光照射部と複数の光計測部とを所定の配列で配置すると共に、光照射部と光計測部との間に超音波探触子を配置したものであり、その構成の詳細は後述するが、複数の光照射部及び光計測部は光ファイバー60a、60bを介して光トポグラフィユニット10に接続され、超音波探触子はケーブルを介して超音波ユニット20に接続されている。
【0020】
光トポグラフィユニット10は、光計測を行なうためのユニットで、既存の生体光計測装置と同様の構成を有している。簡単に説明すると、生体内の特定の吸収物質が吸収する可視から近赤外の波長の光を発生するとともに、この光に複数の光照射部に対応して異なる変調を与えるレーザー発生部11と、この特定波長の光を生体に照射し、生体の表層を透過した光或いは表層で散乱した光(以下、まとめて透過光ともいう)を、複数の光計測部毎に検出するための光電変換器、例えばアバランシェダイオード12と、複数の光計測部からの信号をもとに、光照射部と光計測部との位置で決まる測定チャンネル毎の信号に変換するロックインアンプ13と、連続可変アンプ14とを備えている。連続可変アンプ14の信号は制御ユニット40に送られ、ここで吸収物質の変化量を示す信号(例えばヘモグロビン信号)に変換される。
【0021】
超音波ユニット20は、プローブ30に備えられた超音波探触子からの信号を受けて、被検体の超音波画像を形成するもので、通常の超音波診断装置と同様の構成を有している。この場合、複数の超音波探触子からの信号をそれぞれ処理するために、複数の超音波探触子と同数の接続を備え、複数の超音波探触子からの信号を同時処理することが可能なように構成されている。或いは、複数の超音波ユニット20を択一的に接続するための切り替え器が設けられ、この切り替え器を介して連続的に切り替えを行い、データを取得し、擬似的に同時計測を実現する。
【0022】
超音波ユニット20は、簡単に説明すると、超音波探触子に備えられた複数の超音波振動子に特定周波数のパルス信号を送出するとともに各超音波振動子からの信号を受信するアナログ送受信回路21、アナログ送受信回路21による信号の送受信を制御する制御回路22、アナログ送受信回路21からの信号を整相して加算し、受信ビーム信号を形成するデジタル整相回路23、受信ビーム信号に対しフィルタリング処理、圧縮処理、検波処理、エンハンス等の信号処理を施す信号処理回路24及び信号処理後の受信信号を画像データに変換するデジタルスキャンコンバータ(DSC)25を備えている。また図示していないが、通常の超音波診断装置が備えるドップラ演算部を備えていても良い。
【0023】
制御回路22、信号処理回路24及びDSC25はデータバス26に接続されており、互いに必要な信号の受け渡しを行なう。
【0024】
制御ユニット40は、例えば、中央演算装置(CPU)、記憶装置(HDD)、キイボード46やモニター44等の入出力装置等を備えたパーソナルコンピューター(PC)上に構築することができ、光トポグラフィユニットからの信号をA/D変換してPCに入力するための光トポグラフィインターフェイス部41、超音波ユニット20のDSC25からの画像信号をPCに入力するための画像インターフェイス部42、超音波ユニット20の制御回路22との間で制御信号の受け渡しを行なう制御インターフェイス部43を備えている。
【0025】
また図示していないが、CPUは光トポグラフィインターフェイス部41を介して入力された信号を元に、生体内の吸収物質の変化信号、例えばヘモグロビン信号を作成し、これをタイムコースとして或いは2次元トポグラフィ画像としてモニター44に表示させる。このようなCPUの機能は、通常の生体光計測装置の機能と同様である。更に本発明においてCPUは、画像インターフェイス部42或いはキイボード46を介して入力された超音波計測から得た情報やパラメータを利用して、生のデータ(吸収物質の変化信号)に対する絶対値演算や計測点の最適化処理などを行なう。
【0026】
光トポグラフィインターフェイス部41、画像インターフェイス部42及び制御インターフェイス部43は、PCバス45に接続されており、互いに必要な信号の受け渡しを行なう。また画像インターフェイス部42は、モニター44に接続されており、超音波ユニット20で形成された画像をモニター44に表示させる。
【0027】
また制御ユニット40は、好適には、本発明の画像診断装置の動作モードを切り替えるための手段を備えている。動作モードは、光トポグラフィユニット20のみを動作させる光トポモード、超音波ユニット30のみを動作させる超音波モード、光トポグラフィと超音波計測の複合計測を行なう複合計測モードである。動作モードの切り替えためは、例えば、動作切り替えボタンによって実現できる。或いは、PCのモニターにモード選択メニューを表示し、ユーザーが所望のモードを選択するようにしてもよい。
【0028】
プローブ30は、被検体への光の照射及び被検体からの透過光の検出を行なうとともに、超音波探触子として機能するものであり、図2に示すように、フレキシブルな薄板状の装着部材(頭部の場合にはヘッドギア)31に、光照射部32a及び光計測部32bから成る光トポプローブ32と、超音波探触子35とが固定されている。装着部材31には、図示しない固定用の紐或いはベルトが備えられ、これによって被検体の所定部位、例えば頭部にプローブ30を固定することができる。
【0029】
光トポプローブ32は、それぞれ着脱可能な一対のソケット33、34から構成され、ソケット33の一方は光ファイバ60(a,b)の先端に固定され、他方は装着部材31に固定されている。光ファイバ先端に固定された一方のソケットを装着部材31に固定された他方に嵌着することにより、光ファイバ先端を被検体の装着部位に当接することができる。光トポプローブ32は光照射部32aと光計測部32bとが交互に配列し、これらの中間点が測定点となる。なお、図では一列の配列しか示していないが、光照射部32aと光計測部32bは、図示する配列方向と直交する方向(紙面に垂直な方向)にも配列し、広がりのある領域について計測するようになっている。
【0030】
超音波探触子35は、上述のように配列した光照射部32aと光計測部32bとの間に、固定治具36によって装着部材31に固定される。従って光照射部32aと光計測部32bとで決まる測定チャンネル毎に超音波探触子35からの情報が得られることになる。
【0031】
超音波探触子35の構造は、通常の超音波探触子と同様であり、例えば図3に示すように、被検体50に接触する側から順に、音響レンズ351、マッチング層352、積層振動子353、ソフトバッキング354、バッキング材355から成り、積層振動子353とソフトバッキング354との間に積層振動子353に信号を送るためのフレキシブル基板356が挿入されている。フレキシブル基板356の図示しない端部は、超音波ユニット20のアナログ送受信回路21に接続されている。
【0032】
次に、以上のような構成における画像診断装置の動作を説明する。本発明の画像診断装置は、上述のように光トポグラフィユニット10と超音波ユニット20とを備えているものであるから、これらを別個に動作させて通常の生体光計測装置や超音波診断装置として使用することも可能であり、またこれら各ユニットで得られた画像を別個に或いは同時にモニターに表示させることも可能である。しかし、本発明の特徴の一つは、超音波診断装置で得られた画像情報を元に光計測における光経路(光路長や到達深度)を導出し、この情報を生体光計測に反映させることである。具体的には、推定された光路長をもとに生体内吸収物質の変化量の絶対値を求めること、推定された光路長及び到達深度をもとに光照射部及び光計測部の最適な位置を算出し、光計測の高精度化を図ることである。以下、そのような動作について説明する。
【0033】
最初に、本発明の画像診断装置を用いた生体内吸収物質の変化量の絶対値を求める手順を図4を参照して説明する。図4は、絶対値算出のための手順の一例を示すフロー図である。この実施形態では、生体光計測の代表的な計測部位である頭部を対象として、その血流内ヘモグロビン値を計測する場合を説明する。
【0034】
プローブ30に設けられた複数の超音波探触子35の順次を駆動し、それぞれ脳表画像を作成する(ステップ401)。DSC25で作成された画像信号は、画像インターフェイス42を介して、制御ユニット40の記憶装置に記憶されるとともにモニター44に表示される。次にこれら画像を用いて頭部の構造をモデル化する(ステップ402)。頭部構造のモデル化は、例えば図5(a)、(b)に示すように、各超音波探触子35に対応するチャンネル毎に、モニター44にステップ401で作成した超音波画像を表示させ、各層(頭皮、頭蓋骨、脳髄液)の厚さd1、d2、d3を求めることにより行なう。次いで生体光計測で用いる光に対する各層の吸収係数、散乱係数等のパラメータを設定する(ステップ403)。光トポグラフィユニット10で発生する光は近赤外光であり、例えば780nm、830nmの二波長の光が用いられる。これら波長の光について各層の吸収係数及び散乱係数は、文献で知られた値であり、予め設定しておいたものを選択するようにしてもよい。
【0035】
各チャンネルについて、頭部モデル化、パラメータの設定がなされると、それをもとにチャンネル毎に当該超音波探触子を挟んで配置された光照射部と光計測部との間の光経路、光路長、光最深部到達位置を推定する(ステップ404)。既に述べたように、頭部モデルについて光路長等を求める手法は公知であり、例えばモンテカルロ法、光拡散方程式の数値解析、これらの改良法(例えば、「有限差分法を用いた新生児頭部モデルにおける光伝播解析」、福井ら、OSJ−BIOP 6001−6)を採用することができる。
【0036】
図6に、一つのチャンネル(第kチャンネル)について求めた光経路、平均光路長Lk、最深部到達距離Mkを模式的に示す。これら光経路、平均光路長及び最深部到達距離を、例えば図7に示すように、超音波画像に重ねてプローブ30の配列に対応させて表示する(ステップ405)。この表示を利用して、超音波画像に推定処理結果を順次重ねていくことにより、チャンネル毎のモデル化及びパラメータ設定(ステップ402、403)と(ステップ404)を確認的に実行することができる。
【0037】
各チャンネルについて光経路、平均光路長Lk、最深部到達距離Mkを推定した後、光トポグラフィユニット10を駆動し、プローブ30の各光照射部32aを介して被検体50の頭部に所定の波長の光を照射すると共に透過光を光測定部32bを介して光トポグラフィユニット10で検出する(ステップ406)。ここで計測される値は、各測定点(チャンネル)毎のヘモグロビンの変化量であり、各チャンネル毎の光路長のバラツキを含む値である。そこで、各チャンネル毎の計測値C1、C2・・・Cnを、そのチャンネルについて推定された推定光路長Lで除し、バラツキを補正した絶対値としての変化量C’1、C’2・・・C’nを得る(ステップ407)。
【0038】
【数1】
【0039】
この変化量の絶対値を用いて、光計測信号のタイムコース及び2次元トポグラフィを作成し、表示する(ステップ408)。表示の一例を図8に示す。この表示では、表示部(a)、(b)にそれぞれ所定のチャンネルの超音波断層画像と光計測信号を表示し、表示部(c)に各チャンネルの光計測信号値を等高線状に表示した画像(トポグラフィ画像)を、(d)に頭部全体における測定位置を示す画像を表示している。表示部(a)、(b)については、例えば、表示部(d)に表示された測定位置のチャンネルをマウス等の入力装置で選択することにより、所望のチャンネルの情報を表示するようにしてもよい。
【0040】
こうして表示されたトポグラフィは、チャンネルの光路長のバラツキを含まない画像であるので、測定点のヘモグロビン変化を正確に反映したものであり、診断の信頼性を向上することができる。
【0041】
尚、以上の実施形態では、ヘモグロビンの変化量について、それを推定された光路長で除した絶対値を求めた場合を示したが、ヘモグロビン濃度について、このような絶対値を求めることも可能である。即ち、照射光強度をI0、検出光強度をId、光路長Lkに存在する吸収物質(例えばヘモグロビン)の吸収係数をε、その濃度をCとすると、次式が成り立つ。
【0042】
【数2】
【0043】
ここでDsは減衰定数であり、直接求めることは困難であるため、照射光として波長の異なる2種類の光を用い、各波長毎に計測を行いDsを消去する。こうして求めた吸収物質の濃度を光路長で除することにより、光路長のバラツキを補正したヘモグロビン濃度(光路長における平均値)を求めることができる。
【0044】
次に本発明の画像診断装置を用いて、光照射部及び光計測部の位置の最適化を行なう実施形態を説明する。光照射部及び光計測部の位置の最適化を実現するのに好適なプローブ30’の一実施形態を図9に示す。
【0045】
このプローブ30’は、光トポプローブ32として光照射部Sと光計測部Dとが交互にマトリックス状に配列し、これらの間に超音波探触子35が設けられる点は、図2のプローブ30と同様である。また光ファイバ先端を装着部材に固定するための機構(ソケット)及び超音波探触子35の固定方法も図2のプローブ30と同様である。
【0046】
但し、このプローブ30’は、装着部材31の光トポプローブ固定位置にソケット34を移動するための溝37が形成されており、ソケット34の固定位置を調整できるように構成されている。溝37は、例えば、光トポプローブ32の配列方向に対し45°の角度を持つ十字形であり、ソケット34は、装着部材31の面に垂直な方向への移動が規制された状態で溝37に嵌合している。このような構成において、ソケット34を十字の溝37に沿って移動することにより、隣接するソケットとの相対位置を変化させることができる。
【0047】
次に、このような装置の機構を前提として、光照射部及び光計測部の位置の最適化の手順を図10を参照して説明する。図10は、最適化の手順の一例を示すフロー図である。
【0048】
まずプローブ30’に設けられた複数の超音波探触子35の順次を駆動し、それぞれ脳表画像を作成する(ステップ101)。これら画像を用いて各層(頭皮、頭蓋骨、脳髄液)の厚さd1、d2、d3を求め、頭部の構造をモデル化する(ステップ102)。次いで各層の近赤外光の吸収係数、散乱係数等のパラメータを設定する(ステップ103)。これら頭部モデル及びパラメータを用いて、各チャンネル毎にモンテカルロ法等により光経路、光路長Lk及び光最深部到達位置Mkを求め(ステップ104)、これを超音波画像に重ねて表示する(ステップ105)。以上のステップ101〜105は、図4に示したステップ401〜405と同様である。
【0049】
次に各チャンネル毎に表示された画像を確認しながら、光照射部と光計測部間の理想距離r’1、r’2、・・・r’nを設定する(ステップ106)。即ち、計測しようとする部位が表示された光最深部到達位置Mkがよりも深い場合には、距離を大きく設定し、計測しようとする部位がMkよりも浅い場合には距離を小さく設定する。
【0050】
こうして各チャンネルについて理想距離が設定されると、次式で表される実際の距離r1、r2、・・・rnと理想距離との差の評価量eを最小とするプローブ位置を算出する(ステップ107)。
【0051】
【数3】
【0052】
プローブ位置は、例えば図9に示す十字溝37の交差部を原点として、右上、右下、左上、左下の4つの方向のいずれかについて何ミリメートルというように求める。これは図9に示す複数の光トポプローブ32の一つを原点とする座標を設定し、その座標上で上述の計算により、各光トポプローブの最適位置を算出し、算出された位置に最も近い溝37上の位置を指定することにより実現できる。
【0053】
こうして実質的に理想距離となるプローブ位置が求められたならば、それに従い光トポプローブ32を移動した後(ステップ108)、光トポグラフィユニットを作動させて光計測を行なう(ステップ109)。これにより測定すべき部位からの情報を確実に測定することができる。
【0054】
この場合にも、新たに設定された光照射部と光測定部の位置について、ステップ104に戻り光路長を求めることができ(ステップ110)、この光路長を用いることにより、計測したヘモグロビン変化量の絶対値を算出し(ステップ111)、それを用いた光トポグラフィを表示することができる(ステップ112)。またステップ104に戻るのではなく、光路長と光照射部及び光測定部間の距離との相関の概算を予め求めておき、ステップ106で設定した光照射部及び光測定部間の理想距離に対応する光路長を用いることも可能である。この場合には、光路長自体の正確性は劣るが、時間のかかるモンテカルロ法等の演算を省くことができ、測定のリアルタイム性を向上することができる。
【0055】
尚、以上の実施形態では、光照射部と光測定部とをマトリックス状に配置し、2次元の生体光計測を行なう場合を説明したが、例えば、図11に示すように、一対の光照射部と光測定部との間に超音波探触子を配置した構造についても適用することができる。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、生体光計測装置と超音波診断装置とを組み合わせ、超音波画像から得られる情報を利用して生体光計測の高精度化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像診断装置の概要を示す図
【図2】本発明の画像診断装置用のプローブの一実施形態を示す図
【図3】本発明の画像診断装置用の超音波探触子の一実施形態を示す図
【図4】本発明の画像診断装置の動作の一実施形態を示すフロー図
【図5】本発明による頭部構造のモデル化を説明する図
【図6】本発明による光経路の推定結果を示す図
【図7】本発明の画像診断装置の表示例を示す図
【図8】本発明の画像診断装置の表示例を示す図
【図9】本発明の画像診断装置用のプローブの他の実施形態を示す図
【図10】本発明の画像診断装置の動作の他の実施形態を示すフロー図
【図11】本発明の画像診断装置用のプローブの他の実施形態を示す図
【符号の説明】
10・・・光トポグラフィユニット
20・・・超音波ユニット
30・・・プローブ
32・・・光トポプローブ
35・・・超音波探触子
40・・・制御ユニット
60・・・光ファイバ
Claims (10)
- 光照射部と、光照射部から生体内に照射され、生体内又は生体表層で散乱・透過した光を検出する光計測部と、光計測部が検出した光の強度に対応する信号を処理し、生体内の吸収物質の変化量を求め、画像化する信号処理部と、光照射部と光計測部との間に配置され、生体に超音波を送波すると共に生体内部で反射された超音波を受波する超音波探触子と、超音波探触子で受波した超音波に対応する信号を処理し、生体の形態画像を形成する超音波画像形成部とを備えた画像診断装置であって、
前記信号処理部は、前記超音波画像形成部で形成された形態画像をもとに生体内に照射された光の光路長を推定する手段と、推定された光路長及び前記吸収物質の変化量をもとに前記変化量の絶対値を算出する手段とを備えたことを特徴とする画像診断装置。 - 請求項1記載の画像診断装置であって、前記光照射部及び光測定部をそれぞれ複数備え、超音波探触子は、光照射部とそれに隣接する光計測部との間に配置されていることを特徴とする画像診断装置。
- 請求項1又は2に記載の画像診断装置であって、前記信号処理部は、所定の光照射部と光計測部で決まる測定点について、超音波形態画像及び前記変化量の絶対値を同時に表示する手段を備えたことを特徴とする画像診断装置。
- 請求項2または3に記載の画像診断装置であって、前記信号処理部は、全ての測定点について、前記変化量の絶対値を表示する手段を備えたことを特徴とする画像診断装置。
- 光照射部と、光照射部から生体内に照射され、生体内又は生体表層で散乱・透過した光を検出する光計測部と、光計測部が検出した光の強度に対応する信号を処理し、生体内の吸収物質の変化量を求め、画像化する信号処理部と、光照射部と光計測部との間に配置され、生体に超音波を送波すると共に生体内部で反射された超音波を受波する超音波探触子と、超音波探触子で受波した超音波に対応する信号を処理し、生体の形態画像を形成する超音波画像形成部とを備えた画像診断装置であって、
前記信号処理部は、前記超音波画像形成部で形成された形態画像をもとに生体内に照射された光の光路長及び到達深度を推定する手段と、推定された光路長及び到達深度をもとに光照射部及び光計測部の最適な位置を算出する手段とを備えたことを特徴とする画像診断装置。 - 請求項5記載の画像診断装置であって、前記光照射部及び光測定部をそれぞれ複数備え、超音波探触子は、光照射部とそれに隣接する光計測部との間に配置されていることを特徴とする画像診断装置。
- 複数の光照射部と、光照射部から生体内に照射され、生体内又は生体表層で散乱・透過した光を検出する複数の光計測部と、光計測部が検出した光の強度に対応する信号を処理し、生体内の吸収物質の変化量を求め、画像化する信号処理部と、各光照射部とそれに隣接する光計測部との間に配置され、生体に超音波振動子からの超音波を送波すると共に生体内部で反射された超音波を受波する超音波探触子と、超音波探触子で受波した超音波に対応する信号を処理し、生体の形態画像を形成する超音波画像形成部とを備えた画像診断装置であって、
前記信号処理部は、前記超音波画像形成部で形成された形態画像をもとに生体内に照射された光の光路長及び到達深度を推定する手段と、推定された光路長及び到達深度をもとに光照射部及び光計測部の最適な位置を算出する手段と、光照射部及び光計測部の最適位置における、推定された光路長及び吸収物質の変化量をもとに前記変化量の絶対値を算出する手段とを備えたことを特徴とする画像診断装置。 - 請求項1ないし7のいずれか1項記載の画像診断装置であって、前記光照射部及び光計測部は、それぞれ相対位置を変更する位置調整手段を備えたことを特徴とする画像診断装置。
- 被検体の所望の位置に固定される装着部材と、前記装着部材に着脱自在に固定される少なくとも一対の光計測用プローブと、前記一対の光計測用プローブの間で固定された超音波探触子とを備えた画像診断装置用プローブ。
- 請求項9記載の画像診断装置用プローブであって、前記一対の光計測用プローブの装着部材に対する装着位置を調整する手段を備えたことを特徴とする画像診断装置用プローブ。
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