JP2004073112A - 細胞分離キットおよびそれを用いた細胞分離方法 - Google Patents

細胞分離キットおよびそれを用いた細胞分離方法 Download PDF

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Abstract

【課題】一度に複数種の細胞を大量に選別・捕集することが可能な細胞分離システムを提供する。
【解決手段】特定の温度(転移温度)以上では親水性を示し、その温度以下では疎水性を示す感温性担体と、前記担体の表面に付着した、標的細胞に対する抗原結合構造を有する物質を結合した捕集細胞とを含む細胞分離キットを用いて、次の操作を行う。1)転移温度以上の温度に調整された標的細胞を含む水溶液中に細胞分離キットを混合し、抗原抗体反応に捕集細胞に標的細胞を結合し、2)水溶液から標的細胞を結合した捕集細胞付き担体を分離し、別の媒体に移し、3)この媒体の温度を担体の転移温度以下にして、担体に付着し、標的細胞と結合した捕集細胞を、担体から離脱せしめ、4)担体と、標的細胞と結合した捕集細胞とを分離し、5)標的細胞と捕集細胞との結合体を解離し、標的細胞を捕集細胞から分離する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明は、細胞分離システムに関し、特に不均一な細胞集団の中から、幹細胞等の特定の細胞の均一な細胞分画を得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、未分化の幹細胞を利用した再生医療が大きな期待を集めるようになっている。再生医療は、ES細胞(胚性幹細胞)や生体の組織幹細胞から特定の分化細胞や組織、臓器を再生させ、これを損傷した細胞や組織、臓器に代えて用いる技術であり、例えば、ガンの放射線治療では、放射線照射による骨髄造血系の機能低下を治療するため、予め患者から採取しておいた造血系幹細胞を放射線照射後に患者に戻して造血系の機能を再建する。
【0003】
このような再生医療では、幹細胞を選別して収集する技術が重要であり、現在、磁気ビーズ方式による収集技術やフローサイトメトリーが広く行われている。磁気ビーズ方式では、例えば、造血幹細胞と特異的に反応するモノクローナル抗体を表面に結合した磁気ビーズを用いて、抗原抗体反応により血液中の標的とする造血幹細胞を選択的に磁気ビーズに結合させ、磁気カラムを通してビーズを選別・捕集する。この方法では90%程度の回収率、99%程度の純度が得られ、しかも一度に10個程度の大量の幹細胞を選別できるという利点がある。但し、この方法では異なる細胞を同時に選別することができないという大きな欠点がある。
【0004】
一方、フローサイトメトリーは、蛍光標識したモノクローナル抗体を標的細胞と抗原抗体反応により結合させて、抗体から発せられる蛍光で細胞を識別する方法である。具体的には、ノズルから噴出するジェット流中に細胞を流し、このジェット流に超音波振動を加えて液滴化させる。液滴に分かれる直前に水流に電荷を与え、目的の細胞(即ち、蛍光標識された細胞)を含む液滴を正または負に帯電させて、落下中に帯電した液滴を電場で偏向させることにより目的の細胞を捕集する。この方法では磁気ビーズ方式以上の純度が得られ、また複数のレーザーと複数の蛍光波長を組み合わせて、6種類程度の異なる細胞を同時に選別することが可能である。しかし、選別速度は高々数千個/秒程度と小さいため、研究用途には広く利用されているものの、臨床用としての細胞捕集には適さない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、一度に複数種の細胞を大量に選別・捕集することが可能な細胞分離システムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を解決するため、本発明は、特定の温度(転移温度)以上では親水性を示し、その温度以下では疎水性を示す感温性担体と、前記担体の表面に付着した、標的細胞に対する抗原結合構造を有する物質を結合した捕集細胞とを含む細胞分離キットを提供する。
【0007】
温度変化に応じて表面の性質が親水性から疎水性に変化する感温性高分子材料が知られている。一般に細胞は親水性表面には吸着しないが疎水性表面には吸着するため、このような事実と上記感温性高分子化合物の性質を利用して感温性高分子化合物を細胞の培地として利用することが提案されている(例えば、岡野光男「21世紀の医療:最先端のバイオメディカルエンジニアリング」、特開平11−349643号など)。本発明では、感温性高分子化合物と、標的細胞に対し抗原結合構造を有する物質と結合した捕集細胞とを組み合わせることにより、感温性高分子化合物を利用して、大量の細胞を容易に分離できる方法を提供する。
【0008】
即ち、本発明の細胞分離方法は、
1)  標的細胞を含む水溶液または懸濁液中に前記細胞分離キットを混合し、抗原抗体反応により前記細胞分離キットの捕集細胞に前記標的細胞を結合する工程と、
2)  前記水溶液又は懸濁液から標的細胞を結合した捕集細胞付き担体を分離する工程と、
3)  分離後の標的細胞を結合した捕集細胞付き担体を含む媒体の温度を前記担体の転移温度以下にして、前記担体に付着し、標的細胞と結合した捕集細胞を、前記担体から離脱せしめる工程と、
4)  前記担体と、標的細胞と結合した捕集細胞とを分離する工程と、
5)  標的細胞と捕集細胞との結合体を解離し、標的細胞を捕集細胞から分離する工程とを含む。
【0009】
この細胞分離方法によれば、密度勾配法等の分離方法によって容易に分離できるサイズの担体ビーズ表面に多数の捕集細胞を付着させた細胞分離キットを用いることによって、その担体上に単一の標的細胞を捕集させて、他の細胞と分離することができる。また担体に捕集された標的細胞は、担体の温度を変化させることにより、容易に担体から切り離し、分離することができる。
【0010】
また本発明は、細胞分離キットとして、転移温度の異なる複数種の担体に、それぞれ異なる標的細胞に対する抗原結合構造を有する物質を結合した捕集細胞を付着させた、複数種の細胞分離キットを用いて、複数種の標的細胞を容易に分離する細胞分離方法を提供する。即ち本発明の細胞分離方法は、
1)  複数種の標的細胞を含む水溶液または懸濁液中に前記複数種の細胞分離キットを混合し、抗原抗体反応により複数種の細胞分離キットの担体にそれぞれ対応する標的細胞を結合させる工程と、
2)  標的細胞が結合した捕集細胞付き担体を前記水溶液又は懸濁液から分離する工程と、
3)  標的細胞が結合した捕集細胞付き担体を含む媒体の温度を、一種の担体の転移温度以下で且つ他の担体の温度以上である温度にして、前記一種の担体に付着した、標的細胞と結合した捕集細胞を、前記一種の担体から離脱せしめる工程と、
4)  前記一種の担体から離脱した、標的細胞と結合した捕集細胞を分離する工程と、
5)  前記3)及び4)の工程を、3)の工程における媒体の温度を変えながら繰り返し、複数種の担体に付着した、標的細胞と結合した捕集細胞を、それぞれ担体から分離する工程と、
6)  複数種の標的細胞について、それぞれ捕集細胞から標的細胞を切り離し、分離する工程とを含む。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の細胞分離方法を詳細に説明する。
【0012】
まず本発明の細胞分離方法で使用する細胞分離キットについて説明する。この細胞分離キットは、図1に示すように、特定の温度(転移温度)以上では親水性を示し、その温度以下では疎水性を示す担体11の表面に多数の捕集細胞12を付着させたものである。捕集細胞12の表面には、標的細胞13の抗原決定基(エピトープ)15と特異的に結合する抗原結合構造を有する物質(例えば、モノクローナル抗体)14が結合されている。この細胞分離キットは、媒体16の温度が転移温度以上の場合には、担体11の表面は疎水性であって捕集細胞12が付着しているが(図1(a))、媒体16の温度が転移温度以下になると、担体11の表面は親水性となり捕集細胞12が離脱する。
【0013】
温度によって特性の変化する感温性物質としては、ポリN置換アクリルアミド誘導体、ポリN置換メタアクリルアミド誘導体及びこれらの共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキサイド、エーテル化メチルセルロース、ポリビニルアルコール部分酸化物等が挙げられる。
【0014】
感温性高分子化合物は、化合物によって転移温度が異なり、例えば温度の低い順に、ポリ−N−アクリロイルピペリジン、ポリ−N−プロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポリ−N,N−エチルメチルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルメタアクリルアミド、ポリ−N−エチルアクリルアミドが挙げられる。
【0015】
また上記高分子化合物は、一般に親水性モノマーまたは疎水性モノマーとの共重合体とすることにより転移温度を調節することができる。具体的には、親水性モノマーとの共重合により転移温度を高くすることができ、また疎水性モノマーとの共重合により転移温度を低くすることができる。
【0016】
共重合可能な親水性モノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、酸性基を有するアクリル酸、及びそれらの塩等を挙げることができる。
【0017】
共重合可能な疎水性モノマーとしては、例えば、エチルアクリレート、メチルアクリレート、グリシジルメタクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体等が挙げられる。
【0018】
担体は、上述した感温性高分子化合物(他のモノマーとの共重合体を含む)をビーズにしたものでも、公知のプラスチックビーズを上記感温性高分子化合物でコートしたものでもよい。ビーズの大きさは特に限定されないが、後述するビーズと細胞との分離工程においてメッシュを用いた分離を可能にするために、50〜200μm程度が好適である。
【0019】
本発明の細胞分離キットは、このような感温性高分子化合物を含む担体に、疎水性を示す温度下で捕集細胞を付着させる。例えば、ポリ―N―イソプロピルアクリルアミドの場合、転移温度は32℃であるので、温度32℃以下に設定した媒体中で、担体と捕集細胞とを混合することにより、その表面に捕集細胞を吸着させることができる。
【0020】
捕集細胞は、上述したように、標的細胞の抗原決定基(エピトープ)と特異的に結合する抗原結合構造を有する物質(例えば、モノクローナル抗体)を備えたものである。標的細胞としては、具体的には血液幹細胞、造血前駆細胞、神経幹細胞、免疫系細胞などが挙げられ、これらに対するモノクローナル抗体は市販されていて入手可能である。
【0021】
捕集細胞に、モノクローナル抗体等の抗原結合構造を有する物質を結合する方法としては、例えば、1)捕集細胞表面のタンパク質等の化合物と結合可能な活性基でモノクローナル抗体を修飾し、捕集細胞に結合する、2)モノクローナル抗体を前述した感温性高分子化合物の微粒子(マイクロビーズ)と結合し、この微粒子を介してモノクローナル抗体と捕集細胞とを結合する、などの方法を採用することができる。また標的細胞に対する抗原結合構造であるアミノ酸配列をコードする塩基配列がわかっている場合には、遺伝子操作技術により、捕集細胞自体に、このような抗原結合構造を発現させることも可能である。
【0022】
捕集細胞としては単一クローンの細胞であって、標的細胞との分離(例えば、密度勾配法による分離)が容易なものであれば、種類は問わない。
【0023】
次にこのような細胞分離キットを用いた細胞分離方法を説明する。
図2は、本発明の細胞分離方法の最も単純化された実施形態を示す図で、この実施形態では不均一な細胞集団、例えば抹消血試料の中から、一種類の標的細胞を分離する。まず、標的細胞13と非標的細胞21が混在する試料(水溶液または懸濁液)の温度Tを、使用する細胞分離キットの転移温度(Tc)よりも高く且つ細胞に損傷を与えない範囲の温度、具体的には36℃程度に保持し、捕集細胞を付着させた担体ビーズ22を加え、混合する(図2(a))。標的細胞上の抗原と捕集細胞に結合されたモノクローナル抗体とが特異的に結合し、標的細胞は間接的に担体ビーズ22に捕集される(図2(b))。
【0024】
試料溶液を所定サイズのメッシュ23を通すことにより、標的細胞が結合した担体ビーズを試料溶液から分離する(図2(c))。収集した標的細胞が結合した担体ビーズを、転移温度より高い液温の媒体24に移す(図2(c))。媒体24としては、蒸留水、生理食塩水、リン酸塩緩衝液等の水溶液を用いることができる。この水溶液の温度を転移温度よりも低い温度に下げる。これにより担体ビーズの表面が疎水性となり、標的細胞と結合した捕集細胞が、担体ビーズから分離する(図2(d))。
【0025】
これらが混合した水溶液を所定のサイズのメッシュ23に通して、担体ビーズを水溶液から回収、除去し、標的細胞と捕集細胞のみが存在する水溶液を得る(図2(f))。標的細胞と捕集細胞とは、モノクローナル抗体を介して抗原抗体反応によって結合しているので、酸、アルカリ、高濃度の中性塩、タンパク質変性剤等を用いた公知の技術により解離させることができるが、好適には、競合的な第2の抗体を反応させて、第1の抗体をこれが付着している捕集細胞とともに標的細胞から分離させる。具体的には、Dynal社から販売されているDHTACHaBEAD等の試薬を使用することができる。また解離後の標的細胞と捕集細胞は、例えば密度勾配法や、細胞の比重差を利用した細胞分離システム(日立エルトリエータ細胞分離システムCR21)等の公知の方法で分離する。
【0026】
このように本実施形態の方法によれば、簡単な操作で一度に大量の細胞を選別することが可能となる。
【0027】
次に本発明の第2の実施形態として、複数種の標的細胞を分離する方法を図3を参照して説明する。この方法では、例えば、2種類の標的細胞に対するモノクローナル抗体をそれぞれ結合させた捕集細胞を用意し、これら2種類の捕集細胞を、それぞれ転移温度の異なる2種の感温性担体ビーズに付着させる。即ち、モノクローナル抗体と転移温度がそれぞれ異なる2種の捕集細胞付き担体ビーズ33、34が用意される。
【0028】
一方、2種類の標的細胞31、32と非標的細胞21が混在する試料溶液の温度を、2種の捕集細胞付き担体ビーズの各転移温度(Tc1、Tc2、Tc1>Tc2)よりも高く且つ細胞に損傷を与えない温度、例えば36℃に保持した状態で、2種の捕集細胞付き担体ビーズ33、34を加える(図3(a))。これにより、2種の捕集細胞付き担体ビーズ33、34の表面(正確には捕集細胞に結合したモノクローナル抗体)にそのモノクローナル抗体と特異的に反応する標的細胞31、32がそれぞれ捕集される(図3(b))。
【0029】
標的細胞を捕集した担体ビーズを、メッシュ23を通して試料溶液から分離し(図3(c))、別の水溶液35に移す。この水溶液の温度を第1の転移温度(Tc1)と第2の転移温度(Tc2)との間の温度に調整する。この温度において、第1の担体ビーズ33からは捕集細胞が離脱するが、第2の担体ビーズ34では捕集細胞が結合した状態が保たれる(図3(e))。この温度に保ったままメッシュ23に通し、第1の担体ビーズ及び捕集細胞が結合した第2の担体ビーズを分離する(図3(f))。メッシュを通過した水溶液には、第1の標的細胞と捕集細胞との結合体のみが含まれるので、この結合体を第1の実施例と同様に、解離し、標的細胞と捕集細胞とを分離し、第1の標的細胞31を得る。
【0030】
一方、メッシュ上に残った第1の担体ビーズ及び捕集細胞が結合した第2の担体ビーズを、さらに別の水溶液36に移し(図3(g))、この水溶液の温度を第2の転移温度(Tc2)以下に調整する。これにより第2の担体ビーズから捕集細胞が離脱する(図3(h))。さらにメッシュ23を通し、第1及び第2の担体ビーズを分離・回収するとともに、第2の標的細胞と捕集細胞との結合体のみを含む水溶液を得る。この結合体を、第1の実施例と同様に、解離し、標的細胞と捕集細胞とを分離し、第2の標的細胞32を得る。
【0031】
尚、図3では2種の標的細胞が混在する系から2種の標的細胞を分離する場合を説明したが、転移温度の異なる3種以上の担体を用いるとともに、担体と捕集細胞とを切り離す工程(e)の温度を段階的に変化させながら、図3(e)〜(h)の操作を繰り返すことにより、3種以上の標的細胞についても同様に細胞分離を行うことができる。
【0032】
このように本実施形態によれば、簡単な操作で複数の標的細胞を大量に処理し分離することが可能である。
【0033】
尚、第2の実施形態では担体ビーズとして、それぞれ転移温度が異なるものを用いたが、サイズの異なるビーズを用いるとともに担体ビーズと細胞との分離に用いるメッシュのサイズを変えることにより、複数種の細胞を分離することも可能である。このような実施形態を図4に示す。
【0034】
この実施形態では、例えば2種の標的細胞に対し、それぞれ抗原結合構造を有する2種の物質(抗体)を捕集細胞に結合させ、これら2種の捕集細胞をそれぞれ粒径の異なるビーズに付着させる。この場合、捕集細胞の種類、ビーズ材料は同一でも異なっていてもよい。2種の標的細胞と非標的細胞が混在する試料を、担体ビーズの転移温度以上の温度に調整した後、2種のサイズ及び抗体の異なる捕集細胞付き担体ビーズ33、34を加える(図4(a))。これにより試料中の2種の標的細胞は、それぞれ対応する抗体が付着した捕集細胞付き担体ビーズ33、34に捕集される。
【0035】
次いで第1のメッシュ41で、サイズの大きな担体ビーズを分離し、メッシュ41上に残った第1の捕集細胞付き担体ビーズを回収する(図4(b))。これを別の水溶液に移し、第1の実施形態と同様に、担体ビーズからの捕集細胞の分離(図4(d))、捕集細胞と標的細胞との結合体の解離、標的細胞の捕集細胞からの分離を行う。一方、メッシュを通った水溶液を更に第1のメッシュよりもサイズの小さいメッシュ42に通し、第2の捕集細胞付き担体ビーズを回収する(図4(c))。第2の捕集細胞付き担体ビーズについても同様の分離工程を行い、第2の標的細胞を分離する(図4(e))。
【0036】
この場合にも、大きさの異なる担体ビーズを3種以上用いることにより、3種以上の標的細胞を一度に分離することが可能である。
なお、以上説明した本発明の細胞分離方法で行う一連の工程は、コンピューター、温度制御装置がついた恒温槽、マニピュレータ等を用いて自動化することが可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、感温性高分子化合物と特定の抗原結合構造を持たせた捕集細胞とを組み合わせることにより、不均一な細胞集団の中から目的の細胞を高純度で分離することができる。また一度に大量の細胞を処理することができる。さらに目的とする細胞が複数種含まれる系からも一連の工程で複数種の標的細胞を分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の細胞分離キットを説明する図
【図2】本発明の細胞分離方法の一実施形態を説明する図
【図3】本発明の細胞分離方法の他の実施形態を説明する図
【図4】本発明の細胞分離方法の他の実施形態を説明する図
【符号の説明】
11・・・担体ビーズ
12・・・捕集細胞
13・・・標的細胞
14・・・モノクローナル抗体
15・・・抗原決定基

Claims (5)

  1. 特定の温度(転移温度)以上では親水性を示し、その温度以下では疎水性を示す感温性担体と、前記担体の表面に付着した、標的細胞に対する抗原結合構造を有する物質を結合した捕集細胞とを含む細胞分離キット。
  2. 前記担体は、感温性高分子化合物からなるビーズであることを特徴とする請求項1に記載の細胞分離キット。
  3. 前記担体は、感温性高分子化合物をコートしたビーズであることを特徴とする請求項1に記載の細胞分離キット。
  4. 請求項1ないし3いずれか1項記載の細胞分離キットを用いた細胞分離方法であって、
    1)  転移温度以上の温度に調整された標的細胞を含む水溶液または懸濁液中に前記細胞分離キットを混合し、抗原抗体反応により前記細胞分離キットの捕集細胞に前記標的細胞を結合する工程と、
    2)  前記水溶液又は懸濁液から標的細胞を結合した捕集細胞付き担体を分離する工程と、
    3)  分離後の標的細胞を結合した捕集細胞付き担体を含む媒体の温度を前記担体の転移温度以下にして、前記担体に付着し、標的細胞と結合した捕集細胞を、前記担体から離脱せしめる工程と、
    4)  前記担体と、標的細胞と結合した捕集細胞とを分離する工程と、
    5)  標的細胞と捕集細胞との結合体を解離し、標的細胞を捕集細胞から分離する工程と
    を含む細胞分離方法。
  5. 請求項1ないし3いずれか1項記載の細胞分離キットを用いた細胞分離方法であって、
    1)  前記細胞分離キットとして、転移温度の異なる複数種の担体に、それぞれ異なる標的細胞に対する抗原結合構造を有する物質を結合した捕集細胞を付着させて、複数種の細胞分離キットを用意し、各単体の転移温度以上の温度に調整された複数種の標的細胞を含む水溶液または懸濁液中に前記複数種の細胞分離キットを混合し、抗原抗体反応により複数種の細胞分離キットの捕集細胞にそれぞれ対応する標的細胞を結合させる工程と、
    2)  標的細胞が結合した捕集細胞付き担体を前記水溶液又は懸濁液から分離する工程と、
    3)  標的細胞が結合した捕集細胞付き担体を含む媒体の温度を、一種の担体の転移温度以下で且つ他の担体の温度以上である温度にして、前記一種の担体に付着した、標的細胞と結合した捕集細胞を、前記一種の担体から離脱せしめる工程と、
    4)  前記一種の担体から離脱した、標的細胞と結合した捕集細胞を分離する工程と、
    5)  前記3)及び4)の工程を、3)の工程における媒体の温度を変えながら繰り返し、複数種の担体に付着した、標的細胞と結合した捕集細胞を、それぞれ担体から分離する工程と、
    6)  複数種の標的細胞について、それぞれ捕集細胞から標的細胞を切り離し、分離する工程と、
    を含む細胞分離方法。
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