JP2004071441A - カラー陰極線管 - Google Patents
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Abstract
【課題】機械的強度を向上することができ、高品位且つ高精細の画像を表示することが可能なカラー陰極線管を提供することを目的とする。
【解決手段】シャドウマスク本体29は、水平軸Hに略平行な長辺と、短軸に略平行な短辺と、を有する。有孔部29Aでは、水平軸H上における曲率半径が有孔部29Aの中心から水平軸端にかけて単調に減少し、且つ、水平軸Hより長辺29L側の有孔部29Aでは、水平軸Hに平行な線上における曲率半径が垂直軸Vと短辺29Sとの間で最大値を持つことを特徴とする。
【選択図】 図5
【解決手段】シャドウマスク本体29は、水平軸Hに略平行な長辺と、短軸に略平行な短辺と、を有する。有孔部29Aでは、水平軸H上における曲率半径が有孔部29Aの中心から水平軸端にかけて単調に減少し、且つ、水平軸Hより長辺29L側の有孔部29Aでは、水平軸Hに平行な線上における曲率半径が垂直軸Vと短辺29Sとの間で最大値を持つことを特徴とする。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、シャドウマスクを備えたカラー陰極線管に係り、特に、シャドウマスクの曲面形状に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、シャドウマスク方式のカラー陰極線管では、シャドウマスクは、フェースパネルの内面と同様に曲面形状を成している。シャドウマスクの曲面は、任意に形成されるが、一般的には3本の電子ビームの蛍光体スクリーン上における間隔が適切となるよう、電子ビームのシャドウマスク上の通過点と蛍光体スクリーン上における照射点との距離で決定される。
【0003】
最近、外面が略平坦なフェースパネルを具備するカラー陰極線管が主流となっている。フェースパネルの内面は、その周辺部のガラス肉厚が中央部に比べて厚くなるような曲面状に形成されている。しかし、視認性の問題からフェースパネルの周辺部と中央部のガラス肉厚差は小さくすることが望ましい。
【0004】
このため、フェースパネルの内面もできるだけ平坦に近付けた曲面とすることが必要である。また、電子ビームのシャドウマスク上の通過点と蛍光体スクリーン上における照射点との距離を保つためには、シャドウマスクもまた平坦に近付けた曲面とすることが必要である。このようなシャドウマスク曲面の平坦化は、曲率半径が大きくなることを意味するものであり、シャドウマスクの張り強度が低下することは容易に理解される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年盛んになりつつあるデジタルハイビジョン放送などの高精細な画像をカラー陰極線管において、解像度を低下させることなく高品位な画像を表示するには、シャドウマスクの水平方向孔ピッチを小さくしなければならない。これは、シャドウマスクの単位面積当たりの開孔率を上げることを意味し、マスク板厚を薄くしたほうが製造面で有利であり、また、材料コスト面でも望ましい。しかし、シャドウマスクの板厚を薄くすることもまた当然ながら、その機械的強度の劣化を招く原因となる。
【0006】
シャドウマスクの機械的強度の劣化は、カラー陰極線管の製造時及び輸送時においては、そのシャドウマスクの凹状の変形不良を引き起こす要因となる。また、使用時においては、このようなシャドウマスクを組み込むテレビジョン受像機のスピーカから発せられる音声が機械的振動としてシャドウマスクに伝わり、共振することで画像が一定の周期で揺れているように見える、いわゆるハウリング現象として認識される。
【0007】
外面が略平坦なフェースパネルを具備するカラー陰極線管におけるシャドウマスクの曲面は、その製造時及び輸送時の衝撃で変形することのないよう、機械的強度を十分重視して決定される。しかし、上述した理由によりマスク板厚を薄くしようとすると、ハウリング現象への寄与が大きくなる。
【0008】
具体的には、同じ振動エネルギがシャドウマスクに与えられた場合、マスク板厚が薄い方が管軸方向の共振振幅が大きくなる。このため、蛍光体スクリーン上に照射された電子ビームは、水平方向に大きく振幅することになる。これにより、電子ビームが周期的に所望の照射位置から外れてブラックストライプに射突し、輝度の低下を招く。この輝度の低下は、明暗のコントラスト差として認識されてしまう。また、マスク板厚が薄い場合、シャドウマスクが振動する領域も広くなるため、明暗のコントラスト差が認識される領域も広がってしまう。
【0009】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、機械的強度を向上することができ、高品位且つ高精細の画像を表示することが可能なカラー陰極線管を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明の様態によるカラー陰極線管は、
内面に蛍光体スクリーンが配置されたパネルを含む外囲器と、
前記外囲器内に配設され、前記蛍光体スクリーンに向けて電子ビームを放出する電子銃構体と、
前記蛍光体スクリーンに対向して配設され、前記電子銃構体から放出された電子ビームを選別する複数の開孔を有した曲面状の有孔部を含むシャドウマスクと、
を備え、
前記シャドウマスクは、前記有孔部の中心を通って延びる管軸と、この管軸と直交して延びる長軸と、前記管軸及び前記長軸と直交して延びる短軸と、長軸に略平行な長辺と、短軸に略平行な短辺と、を有し、
前記有孔部では、長軸上における曲率半径が前記有孔部の中心から長軸端にかけて単調に減少し、
且つ、長軸より長辺側の前記有孔部では、長軸に平行な線上における曲率半径が短軸と短辺との間で最大値を持つことを特徴とする。
【0011】
このカラー陰極線管は、シャドウマスクの曲面決定において、特に長軸方向の曲率半径をハウリング現象による画像劣化の小さい領域で最大とすることにより、この領域の近傍に位置する画像劣化の大きい領域では曲率半径を相対的に小さくできる。このため、シャドウマスクの板厚を増加させることなくその機械的強度を向上することができる。したがって、ハウリング現象による画像の劣化を抑えることが可能となり、高品位且つ高精細な画像を表示することができる。しかも、マスク板厚を薄くしても機械的強度を確保できることから、コストの低減を図ることが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施の形態に係るカラー陰極線管について図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、カラー陰極線管装置は、ガラスによって形成された真空外囲器10を備えている。この真空外囲器10は、実質的に矩形状のパネル22と、ファンネル24とを有している。パネル22は、略矩形状の有効部20と、有効部20の周辺部から管軸Z方向に沿って延出されたスカート部21を有している。有効部20の外面は、略平坦に形成されている。有効部20の内面は、任意の曲面で構成されている。スカート部21は、その各コーナ部において内方に向かって突設されたスタッドピン31を備えている。
【0014】
蛍光体スクリーン27は、パネル22の有効部20の内面に形成されている。この蛍光体スクリーン27は、図2に示すように、赤、緑、青にそれぞれ発光する垂直軸V方向に伸びたストライプ状の3色蛍光体層62R、62G、62Bと、これらの3色蛍光体層の間を埋める光吸収層(ブラックストライプ)61とによって構成されている。色選別機能を有するシャドウマスクユニット28は、真空外囲器10の内部において蛍光体スクリーン27に対向して配置されている。このシャドウマスクユニット28のシャドウマスク本体29は、複数のスリット状の開孔18を有している。
【0015】
電子銃構体36は、ファンネル24の径小部に相当するネック34の内部に配置されている。この電子銃構体36は、蛍光体スクリーン27に向けて水平軸H方向に一列に配列された3電子ビーム35R、35G、35Bを放出する。この電子銃構体36は、パネル22の有効部20の中心を通り、パネル22に対してほぼ垂直に延びた管軸Zと略同軸的に配設されている。
【0016】
偏向ヨーク37は、ファンネル24の外面に沿って配置されている。この偏向ヨーク37は、電子銃構体36から放出された3電子ビーム35R、35G、35Bを水平軸H方向及び垂直軸V方向に偏向する非斉一な偏向磁界を発生する。この非斉一偏向磁界は、ピンクッション型の水平偏向磁界と、バレル型の垂直偏向磁界とによって形成される。
【0017】
このようなカラー陰極線管装置においては、図2に示すように、電子銃構体36から放出された3電子ビーム35R、35G、35Bは、シャドウマスク本体29の開孔18付近で集中しつつ、偏向ヨーク37から発生された偏向磁界によって偏向される。これにより、3電子ビーム35R、35G、35Bは、シャドウマスクユニット28を介して蛍光体スクリーン27を水平軸H方向及び垂直軸V方向に走査する。このとき、各電子ビーム35R、35G、35Bを整形して特定の色の蛍光体層62R、62G、62Bにランディングすることにより、カラー画像が表示される。
【0018】
上述したシャドウマスクユニット28は、図1乃至図4に示すように、シャドウマスク本体29と、マスクフレーム30と、支持具32とを備えて構成されている。
【0019】
すなわち、シャドウマスク本体29は、電子ビームが通過する多数の開孔18を有する有孔部29Aと、有効面29Aの周辺部から管軸Z方向に沿って延出された矩形枠状のスカート部29Bとを備えて構成されている。このシャドウマスク本体29は、低熱膨張材(熱膨張係数:1.5E−6[mm/℃])としてのアンバー材によって形成されている。
【0020】
また、このシャドウマスク本体29は、有孔部29Aの中心及び電子銃構体36の中心を通って延びる管軸Zと、この管軸Zに直交して延びる長軸すなわち水平軸Hと、管軸Z及び水平軸Hと直交して延びる短軸すなわち垂直軸Vを有する略矩形状に形成されている。また、このシャドウマスク本体29は、水平軸Hに略平行な一対の長辺29Lと、垂直軸Vに略平行な一対の短辺29Sとを有している。
【0021】
有孔部29Aは、蛍光体スクリーン27と対向する略矩形状である。また、この有孔部29Aは、中央部が蛍光体スクリーン27側に突出するような曲面状に形成されている。すなわち、パネル22の有効部20における内面は、中央部の肉厚が周辺部より薄くなるような曲面である。シャドウマスク本体29の有孔部29Aは、このパネル22の内面形状に対応して、電子ビームのシャドウマスク本体29上の通過点とパネル22内面に配置された蛍光体スクリーン27上における照射点との距離を保つような曲面として形成される。
【0022】
マスクフレーム30は、シャドウマスク本体29の周辺部に取り付けられるよう略矩形枠状に形成され、シャドウマスク本体29を保持する。このマスクフレーム30は、板厚が例えば0.9mm程度の鉄材(熱膨張係数:12E−6[mm/℃])によって形成され、ほぼL字型の断面を有している。また、このマスクフレーム30は、シャドウマスク本体29のスカート部29Bに対してほぼ平行に延出されたフレーム側壁部30Aと、フレーム側壁部30Aの終端からほぼ直角に連接されたフレーム底面部30Bとを備えて構成されている。
【0023】
支持具32は、マスクフレーム30の対角部近傍に弾性的に取り付けられている。この支持具32は、パネル22のスカート部21に設けられたスタッドピン31に係止することにより、シャドウマスク本体29をパネル22の内側に脱着可能に支持している。
【0024】
ところで、シャドウマスク本体29の有孔部29Aでは、水平軸H上における曲率半径が有孔部29Aの中心(管軸Zとの交差点)から水平軸端にかけて単調に減少する。また、水平軸Hより長辺29L側の有孔部29Aでは、水平軸Hに平行な線上における曲率半径が垂直軸Vと短辺29Sとの間で最大値を有する。
【0025】
すなわち、図5に示すように、カラー陰極線管において、ハウリング現象による画像劣化が認識され易い領域は、斜線で示したような領域である。この領域は、水平軸H方向に沿って、水平軸Hの略中央部から水平軸端側に渡って分布し、しかも、垂直軸V方向に延びている。したがって、図5に示した斜線領域でのハウリング現象による画像劣化を防止するためには、この斜線領域の機械的強度を向上する、すなわち曲率半径を小さくすることが必要となる。
【0026】
従来のシャドウマスクでは、水平軸H方向の曲率半径は、図6の(a)に示すような分布を有している。つまり、有孔部全域において、水平軸Hに平行な線上における曲率半径は、水平軸H上を含めて垂直軸Vから短辺29Sにかけて単調に減少する分布となっている。垂直軸V近傍における曲率半径は、1×104〜1×105mm程度と比較的大きく、短辺29S近傍における曲率半径は、約5×102〜2×103mm程度である。
【0027】
このような曲率半径分布では、周辺部に向かうにしたがって曲率半径が小さくなる。しかしながら、このような単調減少の曲率半径分布では、局所的に小さな曲率半径を有するように有孔部29Aを成形することが困難である。すなわち、図5に示した斜線領域において、所望の機械的強度を確保できる程度の十分に小さな曲率半径を有するように有孔部29Aを成形することは困難である。したがって、図5の斜線領域に対応する有孔部では、十分な機械的強度を確保できず、ハウリング現象により画像劣化を招く結果となる。
【0028】
これに対して、上述した実施の形態に係るシャドウマスクユニット28の有孔部29Aでは、水平軸H方向の曲率半径は、水平軸H上において垂直軸Vとの交点から水平軸端にかけて単調に減少する分布を有している。
【0029】
また、水平軸Hより長辺29L側の有孔部29Aでは、水平軸Hに平行な線上における曲率半径は、図6の(b)に示すような分布を有している。特に、有孔部29Aの中心から垂直軸端までの距離をVとしたとき、有孔部29Aの水平軸上からV/4だけ離れた位置を通る水平軸Hに平行な直線と、長辺と、の間の有孔部29Aでは、水平軸Hに平行な線上における曲率半径が垂直軸Vと短辺29Sとの間で最大値を有する。
【0030】
この曲率半径の最大値は、有孔部29Aの中心から水平軸端までの距離をHとしたとき、垂直軸VからH/2までの距離の間に存在する。つまり、水平軸Hに平行な線上における曲率半径は、垂直軸Vからその途中までは短軸上における曲率半径より単調に増加してH/2より垂直軸V側で最大値となり、さらに短辺29Sに向かって単調に減少する分布となる。例えば、有孔部29Aの中心付近における曲率半径は8×103〜1×104mm程度、水平軸端近傍における曲率半径は4×102〜6×102mm程度、垂直軸V近傍(中心からV/4以上離れた垂直軸上)における曲率半径は6×103〜8×103mm程度、最大値となる曲率半径は7×103〜1×104mm程度、短辺近傍における曲率半径は5×102〜1×103mm程度である。
【0031】
このような曲率半径分布では、水平軸Hに平行な線上において、中途部に最大値を有している。このような曲率半径の最大値の前後では、急峻に曲率半径を小さくすることが可能である。すなわち、曲率半径の最大値付近では、有孔部29Aは平坦に近い形状となり、この前後においては、曲率半径の小さい曲面を成形しやすい。
【0032】
つまり、図5に示した斜線領域より垂直軸側(すなわちH/2より垂直軸側)は、ハウリング現象による画像劣化の小さい領域であり、曲率半径を多少大きくしても差し支えない。したがって、この領域での曲率半径を最大としている。このような曲率半径が最大となる領域より短辺側の領域、すなわち画像劣化が問題となる斜線領域付近では、局所的に小さな曲率半径を有するよう有孔部29Aを成形することができる。これにより、斜線領域の機械的強度を向上することが可能となり、ハウリング現象を効果的に抑制することができる。
【0033】
曲率半径の最大値を上述したように設定するにあたっては、その部分の張り強度が低下することを考慮して、ハウリング現象による画像劣化の影響がより小さく、またシャドウマスク全体の機械的強度劣化に影響を及ぼさない位置を選択することが好ましい。
【0034】
特に、パネル有効部20のアスペクト比が16:9の場合は、シャドウマスク本体29の有孔部29Aにおいて、中心からH/2の地点を境に周辺にかけてはハウリング現象による画像劣化が認識しやすくなる。このため、図7に示すように、H/2より周辺にかけて機械的強度を向上させることが必要となり、曲率半径を十分に小さくすることが必要であるため、曲率半径が最大値となる地点HrmaxはH/2より中心側に設けることが望ましい。
【0035】
また、曲率半径の最大値Rhmaxを大きくしすぎた場合、その部分の有孔部29Aは平坦化しすぎてしまい、機械的強度が弱くなってしまう。シミュレーションによれば、最大値Rhmaxは垂直軸V上における曲率半径Rhcの1.5倍未満であれば、最大値近傍での有孔部29Aの機械的強度に影響を及ぼすことなく、斜線領域での有孔部29Aの機械的強度を向上できることが確認された。
【0036】
なお、シャドウマスク有孔部29Aの長辺29L近傍での曲率半径は、垂直軸V端から対角軸端にかけて、水平軸H上と同様に単調に減少する分布を有している。長辺29L近傍では、図7に示したような曲率半径分布とすると、曲率半径が最大となる中間地点で、熱工程を通過する際に有孔部と無孔部の境界付近に窪み変形が発生することがあるので、上述したような単調減少の分布が望ましい。
【0037】
次に、垂直軸V方向の最適な曲率半径分布について説明する。従来のシャドウマスクでは、水平軸H方向の曲率半径は、有孔部全域において図6の(a)に示すような分布を有するとともに、さらに、垂直軸V方向の曲率半径のうち垂直軸V上の曲率半径を図8の(b)に示すような分布とし、水平軸H上の中間部から長辺29L上の中間部にかけて垂直軸Vに平行な線上の曲率半径を図8の(a)に示すような分布としていた。これは、シャドウマスクの機械的強度を確保するうえで最適な曲面を求めた結果である。
【0038】
これに対して、この実施の形態に係るシャドウマスクユニット28の有孔部29Aでは、有孔部29Aの全域において、垂直軸Vに平行な線上における曲率半径が図8の(b)に示すような水平軸H上から長辺29L上にかけて単調に減少する分布を有している。これは、水平軸H方向の曲率半径分布において略中間部において最大値を既に持たせていることから、垂直軸Vに平行な線上の曲率半径は単調減少の分布としたほうが、シャドウマスクの局部的な張り強度を損なわず、ハウリング現象をより効果的に改善することができるためである。
【0039】
次に、パネル22の外面が略平坦で、有効部20のアスペクト比が16:9、対角寸法が76cmのカラー陰極線管において、上述した実施の形態を適用した構成の具体的な効果を他の構成と比較して説明する。
【0040】
比較評価に用いたカラー陰極線管の仕様を図9に示す。カラー陰極線管(A)乃至(D)は、同一のパネルを有するが、シャドウマスク本体の板厚、開孔ピッチ、及び、有孔部の曲面形状に違いがある。すなわち、(A)は、一般のテレビジョン放送対応の標準的なカラー陰極線管であり、(B)乃至(D)は、水平軸方向の孔ピッチが(A)より細かいことから分かるように、高精細な画像にも対応できるカラー陰極線管である。(D)は、この実施の形態を適用した構成のカラー陰極線管である。
【0041】
カラー陰極線管(A)及び(B)のシャドウマスク本体は、比較的厚い同一の板厚を有するため、十分な機械的強度を確保できる。このため、カラー陰極線管(B)のシャドウマスク本体は、カラー陰極線管(A)のシャドウマスク本体と同一の金型を用いてプレス成形した。
【0042】
カラー陰極線管(C)のシャドウマスク本体は、(A)及び(B)のシャドウマスク本体より板厚を薄くしている。このため、(C)のシャドウマスク本体は、その機械的強度を補うために、曲率半径分布は(A)と概略同じでありながら、より曲面を最適化した別の金型を用いてプレス成形した。
【0043】
すなわち、これらカラー陰極線管(A)乃至(C)のシャドウマスク本体は、水平軸に平行な線上の曲率半径分布を図6の(a)に示したような分布とするとともに、垂直軸に平行な線上の曲率半径分布を図8の(a)に示したような分布とした。
【0044】
一方、カラー陰極線管(D)のシャドウマスク本体は、(C)のシャドウマスク本体と同一の比較的薄い板厚を有している。このため、カラー陰極線管(D)のシャドウマスク本体は、機械的強度を向上するために、さらに別の金型を用いてプレス成形した。すなわち、カラー陰極線管(D)のシャドウマスク本体は、上述したように、水平軸に平行な線上の曲率半径分布を図6の(b)に示したような分布とするとともに、垂直軸に平行な線上の曲率半径分布を図8の(b)に示したような分布とした。
【0045】
これらカラー陰極線管(A)乃至(D)について、ハウリング現象における電子ビームの最大振幅、見た目の画像劣化、及びシャドウマスク本体の機械的強度(面圧)を測定、評価した。この測定評価結果を図10に示す。また、図11の(a)乃至(c)にそれぞれのハウリング現象による見た目の画像劣化を比較して示す。
【0046】
カラー陰極線管(B)乃至(D)の評価にあたっては、カラー陰極線管(A)の測定評価結果を基準とし、ハウリング現象の総合評価及びシャドウマスク本体の面圧の2点においてカラー陰極線管(A)と同等以上の性能が得られることを目標とする。
【0047】
カラー陰極線管(B)によれば、ハウリング現象の総合評価では、電子ビームの最大振幅及び見た目の画像劣化(図11の(a)参照)ともにカラー陰極線管(A)と略同等であった。これは、カラー陰極線管(A)とシャドウマスク本体の板厚及び曲面形状が同じであることから容易に理解される。しかしながら、有孔部における水平方向の開孔ピッチを小さくしたことから、シャドウマスク本体の面圧は低下している。さらに、シャドウマスク本体の板厚を薄くしていない分、その製造面及びコスト面でも不利であることは明白である。
【0048】
カラー陰極線管(C)によれば、シャドウマスク本体の板厚が薄くなる分、面圧を重視して曲面形状を最適化した結果、カラー陰極線管(A)より高い面圧が得られた。しかしながら、ハウリング現象の総合評価では、板厚を薄くした影響が出ており、図11の(b)に示すように、カラー陰極線管(A)と比べて画像劣化が認識される領域が広がってしまった。
【0049】
カラー陰極線管(D)によれば、シャドウマスク本体の板厚が薄くなる分、ハウリング重視で曲面形状を最適化した結果、ハウリング現象の総合評価ではカラー陰極線管(A)よりも改善した結果が得られ、同時に、カラー陰極線管(C)と同等の面圧を得ることができた。図11の(c)に示すように、カラー陰極線管(C)と比べて画像劣化が認識される領域が小さくなっており、なお且つ、電子ビームの最大振幅が小さくなったことで明暗のコントラスト差も低減できた。
【0050】
以上の結果より、高精細対応のカラー陰極線管(B)乃至(D)のうち、この実施の形態を適用した(D)がハウリング現象による画像劣化が小さく、シャドウマスクの面圧も保たれ、且つ製造コストにも優れていることが分かる。
【0051】
上述したように、この実施の形態に係るカラー陰極線管によれば、シャドウマスク本体の曲面形状を上述したように形成することにより、高精細化に伴いシャドウマスクの板厚が薄くなっても特別な補強物を付加することなくその機械的強度を保つことができる。このため、ハウリング現象による画像の劣化が小さく、シャドウマスクの変形が少ない、且つコスト的にも優れたカラー陰極線管を提供することができる。
【0052】
なお、この発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々な変形・変更が可能である。また、各実施の形態は可能な限り適宜組み合わせて実施されてもよく、その場合組み合わせによる効果が得られる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、機械的強度を向上することができ、高品位且つ高精細の画像を表示することが可能なカラー陰極線管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態にかかるカラー陰極線管の構造を概略的に示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示したカラー陰極線管における電子ビームの蛍光体層へのランディングを説明するための図である。
【図3】図3は、図1に示したカラー陰極線管におけるシャドウマスクユニットの構造を概略的に示す正面図である。
【図4】図4は、図1に示したカラー陰極線管におけるシャドウマスクユニットの構造を概略的に示す断面図である。
【図5】図5は、シャドウマスク本体におけるハウリング現象による画像劣化が認識されやすい領域を説明するための図である。
【図6】図6は、水平軸上の座標に対する水平軸方向の曲率半径分布を示す図である。
【図7】図7は、水平軸上の座標に対する水平軸に平行な線上の曲率半径分布を示す図である。
【図8】図8は、垂直軸上の座標に対する垂直軸方向の曲率半径分布を示す図である。
【図9】図9は、比較評価に用いたカラー陰極線管の仕様を示す図である。
【図10】図10は、測定評価結果を示す図である。
【図11】図11の(a)乃至(c)は、ハウリング現象による見た目の画像劣化を説明するための図である。
【符号の説明】
22…パネル
24…ファンネル
28…シャドウマスクユニット
29…シャドウマスク本体
29A…有孔部
29L…長辺
29S…短辺
30…マスクフレーム
36…電子銃構体
【発明の属する技術分野】
この発明は、シャドウマスクを備えたカラー陰極線管に係り、特に、シャドウマスクの曲面形状に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、シャドウマスク方式のカラー陰極線管では、シャドウマスクは、フェースパネルの内面と同様に曲面形状を成している。シャドウマスクの曲面は、任意に形成されるが、一般的には3本の電子ビームの蛍光体スクリーン上における間隔が適切となるよう、電子ビームのシャドウマスク上の通過点と蛍光体スクリーン上における照射点との距離で決定される。
【0003】
最近、外面が略平坦なフェースパネルを具備するカラー陰極線管が主流となっている。フェースパネルの内面は、その周辺部のガラス肉厚が中央部に比べて厚くなるような曲面状に形成されている。しかし、視認性の問題からフェースパネルの周辺部と中央部のガラス肉厚差は小さくすることが望ましい。
【0004】
このため、フェースパネルの内面もできるだけ平坦に近付けた曲面とすることが必要である。また、電子ビームのシャドウマスク上の通過点と蛍光体スクリーン上における照射点との距離を保つためには、シャドウマスクもまた平坦に近付けた曲面とすることが必要である。このようなシャドウマスク曲面の平坦化は、曲率半径が大きくなることを意味するものであり、シャドウマスクの張り強度が低下することは容易に理解される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年盛んになりつつあるデジタルハイビジョン放送などの高精細な画像をカラー陰極線管において、解像度を低下させることなく高品位な画像を表示するには、シャドウマスクの水平方向孔ピッチを小さくしなければならない。これは、シャドウマスクの単位面積当たりの開孔率を上げることを意味し、マスク板厚を薄くしたほうが製造面で有利であり、また、材料コスト面でも望ましい。しかし、シャドウマスクの板厚を薄くすることもまた当然ながら、その機械的強度の劣化を招く原因となる。
【0006】
シャドウマスクの機械的強度の劣化は、カラー陰極線管の製造時及び輸送時においては、そのシャドウマスクの凹状の変形不良を引き起こす要因となる。また、使用時においては、このようなシャドウマスクを組み込むテレビジョン受像機のスピーカから発せられる音声が機械的振動としてシャドウマスクに伝わり、共振することで画像が一定の周期で揺れているように見える、いわゆるハウリング現象として認識される。
【0007】
外面が略平坦なフェースパネルを具備するカラー陰極線管におけるシャドウマスクの曲面は、その製造時及び輸送時の衝撃で変形することのないよう、機械的強度を十分重視して決定される。しかし、上述した理由によりマスク板厚を薄くしようとすると、ハウリング現象への寄与が大きくなる。
【0008】
具体的には、同じ振動エネルギがシャドウマスクに与えられた場合、マスク板厚が薄い方が管軸方向の共振振幅が大きくなる。このため、蛍光体スクリーン上に照射された電子ビームは、水平方向に大きく振幅することになる。これにより、電子ビームが周期的に所望の照射位置から外れてブラックストライプに射突し、輝度の低下を招く。この輝度の低下は、明暗のコントラスト差として認識されてしまう。また、マスク板厚が薄い場合、シャドウマスクが振動する領域も広くなるため、明暗のコントラスト差が認識される領域も広がってしまう。
【0009】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、機械的強度を向上することができ、高品位且つ高精細の画像を表示することが可能なカラー陰極線管を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明の様態によるカラー陰極線管は、
内面に蛍光体スクリーンが配置されたパネルを含む外囲器と、
前記外囲器内に配設され、前記蛍光体スクリーンに向けて電子ビームを放出する電子銃構体と、
前記蛍光体スクリーンに対向して配設され、前記電子銃構体から放出された電子ビームを選別する複数の開孔を有した曲面状の有孔部を含むシャドウマスクと、
を備え、
前記シャドウマスクは、前記有孔部の中心を通って延びる管軸と、この管軸と直交して延びる長軸と、前記管軸及び前記長軸と直交して延びる短軸と、長軸に略平行な長辺と、短軸に略平行な短辺と、を有し、
前記有孔部では、長軸上における曲率半径が前記有孔部の中心から長軸端にかけて単調に減少し、
且つ、長軸より長辺側の前記有孔部では、長軸に平行な線上における曲率半径が短軸と短辺との間で最大値を持つことを特徴とする。
【0011】
このカラー陰極線管は、シャドウマスクの曲面決定において、特に長軸方向の曲率半径をハウリング現象による画像劣化の小さい領域で最大とすることにより、この領域の近傍に位置する画像劣化の大きい領域では曲率半径を相対的に小さくできる。このため、シャドウマスクの板厚を増加させることなくその機械的強度を向上することができる。したがって、ハウリング現象による画像の劣化を抑えることが可能となり、高品位且つ高精細な画像を表示することができる。しかも、マスク板厚を薄くしても機械的強度を確保できることから、コストの低減を図ることが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施の形態に係るカラー陰極線管について図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、カラー陰極線管装置は、ガラスによって形成された真空外囲器10を備えている。この真空外囲器10は、実質的に矩形状のパネル22と、ファンネル24とを有している。パネル22は、略矩形状の有効部20と、有効部20の周辺部から管軸Z方向に沿って延出されたスカート部21を有している。有効部20の外面は、略平坦に形成されている。有効部20の内面は、任意の曲面で構成されている。スカート部21は、その各コーナ部において内方に向かって突設されたスタッドピン31を備えている。
【0014】
蛍光体スクリーン27は、パネル22の有効部20の内面に形成されている。この蛍光体スクリーン27は、図2に示すように、赤、緑、青にそれぞれ発光する垂直軸V方向に伸びたストライプ状の3色蛍光体層62R、62G、62Bと、これらの3色蛍光体層の間を埋める光吸収層(ブラックストライプ)61とによって構成されている。色選別機能を有するシャドウマスクユニット28は、真空外囲器10の内部において蛍光体スクリーン27に対向して配置されている。このシャドウマスクユニット28のシャドウマスク本体29は、複数のスリット状の開孔18を有している。
【0015】
電子銃構体36は、ファンネル24の径小部に相当するネック34の内部に配置されている。この電子銃構体36は、蛍光体スクリーン27に向けて水平軸H方向に一列に配列された3電子ビーム35R、35G、35Bを放出する。この電子銃構体36は、パネル22の有効部20の中心を通り、パネル22に対してほぼ垂直に延びた管軸Zと略同軸的に配設されている。
【0016】
偏向ヨーク37は、ファンネル24の外面に沿って配置されている。この偏向ヨーク37は、電子銃構体36から放出された3電子ビーム35R、35G、35Bを水平軸H方向及び垂直軸V方向に偏向する非斉一な偏向磁界を発生する。この非斉一偏向磁界は、ピンクッション型の水平偏向磁界と、バレル型の垂直偏向磁界とによって形成される。
【0017】
このようなカラー陰極線管装置においては、図2に示すように、電子銃構体36から放出された3電子ビーム35R、35G、35Bは、シャドウマスク本体29の開孔18付近で集中しつつ、偏向ヨーク37から発生された偏向磁界によって偏向される。これにより、3電子ビーム35R、35G、35Bは、シャドウマスクユニット28を介して蛍光体スクリーン27を水平軸H方向及び垂直軸V方向に走査する。このとき、各電子ビーム35R、35G、35Bを整形して特定の色の蛍光体層62R、62G、62Bにランディングすることにより、カラー画像が表示される。
【0018】
上述したシャドウマスクユニット28は、図1乃至図4に示すように、シャドウマスク本体29と、マスクフレーム30と、支持具32とを備えて構成されている。
【0019】
すなわち、シャドウマスク本体29は、電子ビームが通過する多数の開孔18を有する有孔部29Aと、有効面29Aの周辺部から管軸Z方向に沿って延出された矩形枠状のスカート部29Bとを備えて構成されている。このシャドウマスク本体29は、低熱膨張材(熱膨張係数:1.5E−6[mm/℃])としてのアンバー材によって形成されている。
【0020】
また、このシャドウマスク本体29は、有孔部29Aの中心及び電子銃構体36の中心を通って延びる管軸Zと、この管軸Zに直交して延びる長軸すなわち水平軸Hと、管軸Z及び水平軸Hと直交して延びる短軸すなわち垂直軸Vを有する略矩形状に形成されている。また、このシャドウマスク本体29は、水平軸Hに略平行な一対の長辺29Lと、垂直軸Vに略平行な一対の短辺29Sとを有している。
【0021】
有孔部29Aは、蛍光体スクリーン27と対向する略矩形状である。また、この有孔部29Aは、中央部が蛍光体スクリーン27側に突出するような曲面状に形成されている。すなわち、パネル22の有効部20における内面は、中央部の肉厚が周辺部より薄くなるような曲面である。シャドウマスク本体29の有孔部29Aは、このパネル22の内面形状に対応して、電子ビームのシャドウマスク本体29上の通過点とパネル22内面に配置された蛍光体スクリーン27上における照射点との距離を保つような曲面として形成される。
【0022】
マスクフレーム30は、シャドウマスク本体29の周辺部に取り付けられるよう略矩形枠状に形成され、シャドウマスク本体29を保持する。このマスクフレーム30は、板厚が例えば0.9mm程度の鉄材(熱膨張係数:12E−6[mm/℃])によって形成され、ほぼL字型の断面を有している。また、このマスクフレーム30は、シャドウマスク本体29のスカート部29Bに対してほぼ平行に延出されたフレーム側壁部30Aと、フレーム側壁部30Aの終端からほぼ直角に連接されたフレーム底面部30Bとを備えて構成されている。
【0023】
支持具32は、マスクフレーム30の対角部近傍に弾性的に取り付けられている。この支持具32は、パネル22のスカート部21に設けられたスタッドピン31に係止することにより、シャドウマスク本体29をパネル22の内側に脱着可能に支持している。
【0024】
ところで、シャドウマスク本体29の有孔部29Aでは、水平軸H上における曲率半径が有孔部29Aの中心(管軸Zとの交差点)から水平軸端にかけて単調に減少する。また、水平軸Hより長辺29L側の有孔部29Aでは、水平軸Hに平行な線上における曲率半径が垂直軸Vと短辺29Sとの間で最大値を有する。
【0025】
すなわち、図5に示すように、カラー陰極線管において、ハウリング現象による画像劣化が認識され易い領域は、斜線で示したような領域である。この領域は、水平軸H方向に沿って、水平軸Hの略中央部から水平軸端側に渡って分布し、しかも、垂直軸V方向に延びている。したがって、図5に示した斜線領域でのハウリング現象による画像劣化を防止するためには、この斜線領域の機械的強度を向上する、すなわち曲率半径を小さくすることが必要となる。
【0026】
従来のシャドウマスクでは、水平軸H方向の曲率半径は、図6の(a)に示すような分布を有している。つまり、有孔部全域において、水平軸Hに平行な線上における曲率半径は、水平軸H上を含めて垂直軸Vから短辺29Sにかけて単調に減少する分布となっている。垂直軸V近傍における曲率半径は、1×104〜1×105mm程度と比較的大きく、短辺29S近傍における曲率半径は、約5×102〜2×103mm程度である。
【0027】
このような曲率半径分布では、周辺部に向かうにしたがって曲率半径が小さくなる。しかしながら、このような単調減少の曲率半径分布では、局所的に小さな曲率半径を有するように有孔部29Aを成形することが困難である。すなわち、図5に示した斜線領域において、所望の機械的強度を確保できる程度の十分に小さな曲率半径を有するように有孔部29Aを成形することは困難である。したがって、図5の斜線領域に対応する有孔部では、十分な機械的強度を確保できず、ハウリング現象により画像劣化を招く結果となる。
【0028】
これに対して、上述した実施の形態に係るシャドウマスクユニット28の有孔部29Aでは、水平軸H方向の曲率半径は、水平軸H上において垂直軸Vとの交点から水平軸端にかけて単調に減少する分布を有している。
【0029】
また、水平軸Hより長辺29L側の有孔部29Aでは、水平軸Hに平行な線上における曲率半径は、図6の(b)に示すような分布を有している。特に、有孔部29Aの中心から垂直軸端までの距離をVとしたとき、有孔部29Aの水平軸上からV/4だけ離れた位置を通る水平軸Hに平行な直線と、長辺と、の間の有孔部29Aでは、水平軸Hに平行な線上における曲率半径が垂直軸Vと短辺29Sとの間で最大値を有する。
【0030】
この曲率半径の最大値は、有孔部29Aの中心から水平軸端までの距離をHとしたとき、垂直軸VからH/2までの距離の間に存在する。つまり、水平軸Hに平行な線上における曲率半径は、垂直軸Vからその途中までは短軸上における曲率半径より単調に増加してH/2より垂直軸V側で最大値となり、さらに短辺29Sに向かって単調に減少する分布となる。例えば、有孔部29Aの中心付近における曲率半径は8×103〜1×104mm程度、水平軸端近傍における曲率半径は4×102〜6×102mm程度、垂直軸V近傍(中心からV/4以上離れた垂直軸上)における曲率半径は6×103〜8×103mm程度、最大値となる曲率半径は7×103〜1×104mm程度、短辺近傍における曲率半径は5×102〜1×103mm程度である。
【0031】
このような曲率半径分布では、水平軸Hに平行な線上において、中途部に最大値を有している。このような曲率半径の最大値の前後では、急峻に曲率半径を小さくすることが可能である。すなわち、曲率半径の最大値付近では、有孔部29Aは平坦に近い形状となり、この前後においては、曲率半径の小さい曲面を成形しやすい。
【0032】
つまり、図5に示した斜線領域より垂直軸側(すなわちH/2より垂直軸側)は、ハウリング現象による画像劣化の小さい領域であり、曲率半径を多少大きくしても差し支えない。したがって、この領域での曲率半径を最大としている。このような曲率半径が最大となる領域より短辺側の領域、すなわち画像劣化が問題となる斜線領域付近では、局所的に小さな曲率半径を有するよう有孔部29Aを成形することができる。これにより、斜線領域の機械的強度を向上することが可能となり、ハウリング現象を効果的に抑制することができる。
【0033】
曲率半径の最大値を上述したように設定するにあたっては、その部分の張り強度が低下することを考慮して、ハウリング現象による画像劣化の影響がより小さく、またシャドウマスク全体の機械的強度劣化に影響を及ぼさない位置を選択することが好ましい。
【0034】
特に、パネル有効部20のアスペクト比が16:9の場合は、シャドウマスク本体29の有孔部29Aにおいて、中心からH/2の地点を境に周辺にかけてはハウリング現象による画像劣化が認識しやすくなる。このため、図7に示すように、H/2より周辺にかけて機械的強度を向上させることが必要となり、曲率半径を十分に小さくすることが必要であるため、曲率半径が最大値となる地点HrmaxはH/2より中心側に設けることが望ましい。
【0035】
また、曲率半径の最大値Rhmaxを大きくしすぎた場合、その部分の有孔部29Aは平坦化しすぎてしまい、機械的強度が弱くなってしまう。シミュレーションによれば、最大値Rhmaxは垂直軸V上における曲率半径Rhcの1.5倍未満であれば、最大値近傍での有孔部29Aの機械的強度に影響を及ぼすことなく、斜線領域での有孔部29Aの機械的強度を向上できることが確認された。
【0036】
なお、シャドウマスク有孔部29Aの長辺29L近傍での曲率半径は、垂直軸V端から対角軸端にかけて、水平軸H上と同様に単調に減少する分布を有している。長辺29L近傍では、図7に示したような曲率半径分布とすると、曲率半径が最大となる中間地点で、熱工程を通過する際に有孔部と無孔部の境界付近に窪み変形が発生することがあるので、上述したような単調減少の分布が望ましい。
【0037】
次に、垂直軸V方向の最適な曲率半径分布について説明する。従来のシャドウマスクでは、水平軸H方向の曲率半径は、有孔部全域において図6の(a)に示すような分布を有するとともに、さらに、垂直軸V方向の曲率半径のうち垂直軸V上の曲率半径を図8の(b)に示すような分布とし、水平軸H上の中間部から長辺29L上の中間部にかけて垂直軸Vに平行な線上の曲率半径を図8の(a)に示すような分布としていた。これは、シャドウマスクの機械的強度を確保するうえで最適な曲面を求めた結果である。
【0038】
これに対して、この実施の形態に係るシャドウマスクユニット28の有孔部29Aでは、有孔部29Aの全域において、垂直軸Vに平行な線上における曲率半径が図8の(b)に示すような水平軸H上から長辺29L上にかけて単調に減少する分布を有している。これは、水平軸H方向の曲率半径分布において略中間部において最大値を既に持たせていることから、垂直軸Vに平行な線上の曲率半径は単調減少の分布としたほうが、シャドウマスクの局部的な張り強度を損なわず、ハウリング現象をより効果的に改善することができるためである。
【0039】
次に、パネル22の外面が略平坦で、有効部20のアスペクト比が16:9、対角寸法が76cmのカラー陰極線管において、上述した実施の形態を適用した構成の具体的な効果を他の構成と比較して説明する。
【0040】
比較評価に用いたカラー陰極線管の仕様を図9に示す。カラー陰極線管(A)乃至(D)は、同一のパネルを有するが、シャドウマスク本体の板厚、開孔ピッチ、及び、有孔部の曲面形状に違いがある。すなわち、(A)は、一般のテレビジョン放送対応の標準的なカラー陰極線管であり、(B)乃至(D)は、水平軸方向の孔ピッチが(A)より細かいことから分かるように、高精細な画像にも対応できるカラー陰極線管である。(D)は、この実施の形態を適用した構成のカラー陰極線管である。
【0041】
カラー陰極線管(A)及び(B)のシャドウマスク本体は、比較的厚い同一の板厚を有するため、十分な機械的強度を確保できる。このため、カラー陰極線管(B)のシャドウマスク本体は、カラー陰極線管(A)のシャドウマスク本体と同一の金型を用いてプレス成形した。
【0042】
カラー陰極線管(C)のシャドウマスク本体は、(A)及び(B)のシャドウマスク本体より板厚を薄くしている。このため、(C)のシャドウマスク本体は、その機械的強度を補うために、曲率半径分布は(A)と概略同じでありながら、より曲面を最適化した別の金型を用いてプレス成形した。
【0043】
すなわち、これらカラー陰極線管(A)乃至(C)のシャドウマスク本体は、水平軸に平行な線上の曲率半径分布を図6の(a)に示したような分布とするとともに、垂直軸に平行な線上の曲率半径分布を図8の(a)に示したような分布とした。
【0044】
一方、カラー陰極線管(D)のシャドウマスク本体は、(C)のシャドウマスク本体と同一の比較的薄い板厚を有している。このため、カラー陰極線管(D)のシャドウマスク本体は、機械的強度を向上するために、さらに別の金型を用いてプレス成形した。すなわち、カラー陰極線管(D)のシャドウマスク本体は、上述したように、水平軸に平行な線上の曲率半径分布を図6の(b)に示したような分布とするとともに、垂直軸に平行な線上の曲率半径分布を図8の(b)に示したような分布とした。
【0045】
これらカラー陰極線管(A)乃至(D)について、ハウリング現象における電子ビームの最大振幅、見た目の画像劣化、及びシャドウマスク本体の機械的強度(面圧)を測定、評価した。この測定評価結果を図10に示す。また、図11の(a)乃至(c)にそれぞれのハウリング現象による見た目の画像劣化を比較して示す。
【0046】
カラー陰極線管(B)乃至(D)の評価にあたっては、カラー陰極線管(A)の測定評価結果を基準とし、ハウリング現象の総合評価及びシャドウマスク本体の面圧の2点においてカラー陰極線管(A)と同等以上の性能が得られることを目標とする。
【0047】
カラー陰極線管(B)によれば、ハウリング現象の総合評価では、電子ビームの最大振幅及び見た目の画像劣化(図11の(a)参照)ともにカラー陰極線管(A)と略同等であった。これは、カラー陰極線管(A)とシャドウマスク本体の板厚及び曲面形状が同じであることから容易に理解される。しかしながら、有孔部における水平方向の開孔ピッチを小さくしたことから、シャドウマスク本体の面圧は低下している。さらに、シャドウマスク本体の板厚を薄くしていない分、その製造面及びコスト面でも不利であることは明白である。
【0048】
カラー陰極線管(C)によれば、シャドウマスク本体の板厚が薄くなる分、面圧を重視して曲面形状を最適化した結果、カラー陰極線管(A)より高い面圧が得られた。しかしながら、ハウリング現象の総合評価では、板厚を薄くした影響が出ており、図11の(b)に示すように、カラー陰極線管(A)と比べて画像劣化が認識される領域が広がってしまった。
【0049】
カラー陰極線管(D)によれば、シャドウマスク本体の板厚が薄くなる分、ハウリング重視で曲面形状を最適化した結果、ハウリング現象の総合評価ではカラー陰極線管(A)よりも改善した結果が得られ、同時に、カラー陰極線管(C)と同等の面圧を得ることができた。図11の(c)に示すように、カラー陰極線管(C)と比べて画像劣化が認識される領域が小さくなっており、なお且つ、電子ビームの最大振幅が小さくなったことで明暗のコントラスト差も低減できた。
【0050】
以上の結果より、高精細対応のカラー陰極線管(B)乃至(D)のうち、この実施の形態を適用した(D)がハウリング現象による画像劣化が小さく、シャドウマスクの面圧も保たれ、且つ製造コストにも優れていることが分かる。
【0051】
上述したように、この実施の形態に係るカラー陰極線管によれば、シャドウマスク本体の曲面形状を上述したように形成することにより、高精細化に伴いシャドウマスクの板厚が薄くなっても特別な補強物を付加することなくその機械的強度を保つことができる。このため、ハウリング現象による画像の劣化が小さく、シャドウマスクの変形が少ない、且つコスト的にも優れたカラー陰極線管を提供することができる。
【0052】
なお、この発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々な変形・変更が可能である。また、各実施の形態は可能な限り適宜組み合わせて実施されてもよく、その場合組み合わせによる効果が得られる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、機械的強度を向上することができ、高品位且つ高精細の画像を表示することが可能なカラー陰極線管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態にかかるカラー陰極線管の構造を概略的に示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示したカラー陰極線管における電子ビームの蛍光体層へのランディングを説明するための図である。
【図3】図3は、図1に示したカラー陰極線管におけるシャドウマスクユニットの構造を概略的に示す正面図である。
【図4】図4は、図1に示したカラー陰極線管におけるシャドウマスクユニットの構造を概略的に示す断面図である。
【図5】図5は、シャドウマスク本体におけるハウリング現象による画像劣化が認識されやすい領域を説明するための図である。
【図6】図6は、水平軸上の座標に対する水平軸方向の曲率半径分布を示す図である。
【図7】図7は、水平軸上の座標に対する水平軸に平行な線上の曲率半径分布を示す図である。
【図8】図8は、垂直軸上の座標に対する垂直軸方向の曲率半径分布を示す図である。
【図9】図9は、比較評価に用いたカラー陰極線管の仕様を示す図である。
【図10】図10は、測定評価結果を示す図である。
【図11】図11の(a)乃至(c)は、ハウリング現象による見た目の画像劣化を説明するための図である。
【符号の説明】
22…パネル
24…ファンネル
28…シャドウマスクユニット
29…シャドウマスク本体
29A…有孔部
29L…長辺
29S…短辺
30…マスクフレーム
36…電子銃構体
Claims (6)
- 内面に蛍光体スクリーンが配置されたパネルを含む外囲器と、
前記外囲器内に配設され、前記蛍光体スクリーンに向けて電子ビームを放出する電子銃構体と、
前記蛍光体スクリーンに対向して配設され、前記電子銃構体から放出された電子ビームを選別する複数の開孔を有した曲面状の有孔部を含むシャドウマスクと、
を備え、
前記シャドウマスクは、前記有孔部の中心を通って延びる管軸と、この管軸と直交して延びる長軸と、前記管軸及び前記長軸と直交して延びる短軸と、長軸に略平行な長辺と、短軸に略平行な短辺と、を有し、
前記有孔部では、長軸上における曲率半径が前記有孔部の中心から長軸端にかけて単調に減少し、
且つ、長軸より長辺側の前記有孔部では、長軸に平行な線上における曲率半径が短軸と短辺との間で最大値を持つことを特徴とするカラー陰極線管。 - 前記有孔部の中心から短軸端までの距離をVとしたとき、前記有孔部の長軸上からV/4だけ離れた位置を通る長軸に平行な直線と、長辺と、の間の前記有孔部では、長軸に平行な線上における曲率半径が短軸と短辺との間で最大値を持つことを特徴とする請求項1に記載のカラー陰極線管。
- 前記曲率半径の最大値は、前記有孔部の中心から長軸端までの距離をHとしたとき、短軸からH/2までの距離の間に存在することを特徴とする請求項1に記載のカラー陰極線管。
- 長軸に平行な線上では、曲率半径の最大値をRhmax、短軸上における曲率半径をRhcとしたとき、
1< Rhmax/Rhc <1.5
の関係が成り立つことを特徴とする請求項1に記載のカラー陰極線管。 - 長辺上における曲率半径は、短軸端から対角軸端にかけて単調に減少することを特徴とする請求項1に記載のカラー陰極線管。
- 前記有孔部の全域では、短軸に平行な線上における曲率半径が長軸上から長辺上にかけて単調に減少することを特徴とする請求項1に記載のカラー陰極線管。
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