JP2004071297A - 固体高分子電解質形燃料電池、固体高分子電解質形燃料電池用セパレータ及びそのセパレータの製造方法 - Google Patents
固体高分子電解質形燃料電池、固体高分子電解質形燃料電池用セパレータ及びそのセパレータの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】更なる発電性能の向上に有利な固体高分子電解質形燃料電池、固体高分子電解質形燃料電池用セパレータ及びそのセパレータの製造方法を提供する。
【解決手段】固体高分子電解質形燃料電池は、固体高分子形の電解質層10と、電解質層10の片側に設けられたアノード触媒層11と、電解質層10の他の片側に設けられたカソード触媒層14と、アノード触媒層11の側に燃料含有物質を供給する凹部をもつアノードセパレータ3と、カソード触媒層14の側に酸化剤含有物質を供給する凹部をもつカソードセパレータ4とを具備する。アノードセパレータ3及びカソードセパレータ4のうちの少なくとも一方は、膨張黒鉛を含むと共に、水を透過可能な多数の保水細孔をもつ多孔質体で形成されている。
【選択図】図1
【解決手段】固体高分子電解質形燃料電池は、固体高分子形の電解質層10と、電解質層10の片側に設けられたアノード触媒層11と、電解質層10の他の片側に設けられたカソード触媒層14と、アノード触媒層11の側に燃料含有物質を供給する凹部をもつアノードセパレータ3と、カソード触媒層14の側に酸化剤含有物質を供給する凹部をもつカソードセパレータ4とを具備する。アノードセパレータ3及びカソードセパレータ4のうちの少なくとも一方は、膨張黒鉛を含むと共に、水を透過可能な多数の保水細孔をもつ多孔質体で形成されている。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は固体高分子電解質形燃料電池、固体高分子電解質形燃料電池用セパレータ及びそのセパレータの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質形燃料電池は、固体高分子形の電解質層と、固体高分子形の電解質層の片側に設けられたアノード触媒層と、固体高分子形の電解質層の他の片側に設けられたカソード触媒層とを有する。ここで、固体高分子形の電解質層は水分を含んだ状態で水素イオン伝導性を示し、飽和状態まで吸湿したとき高い伝導性を示す。従って電解質層が過剰に乾燥していると、電解質層の水素イオン伝導性が低下し、目標とする発電出力が発揮されにくい。そこで、従来より、固体高分子形の電解質層の過剰乾燥を防止すべく、燃料電池に供給する燃料含有ガスや酸素含有ガスを予め加湿させることが行われている。
【0003】
更に、アノードセパレータやカソードセパレータを多孔質体で形成した燃料電池も開発されている(特公平7−95447号公、特表2002−513200号公報)。このものによれば、アノードセパレータやカソードセパレータを構成する多孔質体の内部に形成されている細孔から水分を電解質層に供給することができ、固体高分子形の電解質層の過剰乾燥を防止することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記したアノードセパレータやカソードセパレータを構成する多孔質体の細孔から水分を供給する方式を採用している燃料電池においては、更なる発電性能の向上が要請されている。
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、更なる発電性能の向上に有利な固体高分子電解質形燃料電池、固体高分子電解質形燃料電池用セパレータ及びそのセパレータの製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1)第1発明に係る固体高分子電解質形燃料電池は、固体高分子形の電解質層と、電解質層の片側に設けられたアノード触媒層と、電解質層の他の片側に設けられたカソード触媒層と、アノード触媒層の側に燃料含有物質を供給する凹部をもつアノードセパレータと、カソード触媒層の側に酸化剤含有物質を供給する凹部をもつカソードセパレータとを具備する固体高分子電解質形燃料電池において、アノードセパレータ及びカソードセパレータのうちの少なくとも一方は、膨張黒鉛を含むと共に、水を透過可能な多数の保水細孔をもつ多孔質体で形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
第2発明に係る固体高分子電解質形燃料電池用セパレータは、固体高分子電解質形燃料電池に組み込まれるアノードセパレータ及びカソードセパレータのうちの少なくとも一方であって、膨張黒鉛を含むと共に、水を透過可能な多数の保水細孔をもつ多孔質体で形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
第1発明に係る燃料電池、第2発明に係るセパレータよれば、アノードセパレータ及びカソードセパレータのうちの少なくとも一方は、水を透過可能な多数の保水細孔をもつ多孔質体で形成されている。このため多孔質体の保水細孔に保持された水よって電解質層を保湿することができる。これにより固体高分子形の電解質層の過剰乾燥が抑制され、過剰乾燥に起因する発電出力の低下が抑制される。電解質層付近において水が余剰になったときには、余剰の水によって燃料含有物質とアノード触媒層との接触が制約されたり、酸化剤含有物質とカソード触媒層との接触が制約されたりし、発電反応が妨げられ、燃料電池の発電効率が低下するおそれがある。すなわち、フラティング現象が生じるおそれがある。この点第1発明、第2発明によれば、電解質層付近において水が余剰になったときであっても、アノードセパレータを構成する多孔質体の保水細孔、カソードセパレータを構成する多孔質体の保水細孔に余剰の水を吸収させることもでき、発電性能の向上に一層有利である。
【0009】
更に、アノードセパレータやカソードセパレータを構成する多孔質体は、膨張黒鉛を基材として形成されている。膨張黒鉛は表面に微細な多数の凹凸を有するため、機械的絡み合い性が高い。故に、多孔質体の気孔率が高いときであっても、多孔質体の保水細孔の潰れを抑制しつつ、保水細孔の形状を維持するのに有利となり、適切な保水性、保湿性、余剰水の吸収性を長期にわたって維持するのに有利となる。
【0010】
樹脂バインダ等のバインダを多孔質体に添加していると、多孔質体においてバインダが占める容積が必要とされるため、多孔質体の気孔率を高めるのに不利となる傾向がある。この点本発明によれば、前述したように膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の強度、形状保持性が確保される。故に多孔質体に膨張黒鉛と共に配合する樹脂バインダ等のバインダを廃止したり、減少したりできる。よって多孔質体の気孔率を確保するのに有利であり、保水性、保湿性の向上に貢献できる。
【0011】
本発明によれば、アノードセパレータやカソードセパレータを構成する多孔質体は、膨張黒鉛を基材として形成されている。膨張黒鉛は、セパレータ内において膨張黒鉛間が保水細孔として機能する他に、膨張黒鉛内部の層間も保水細孔として機能することができ、保水細孔の容積の増加に有利である。
【0012】
(2)第3発明に係る固体高分子電解質形燃料電池のセパレータの製造方法は、膨張黒鉛を含むと共に水が透過可能な多数の保水細孔を有する多孔質の素材シートを準備する工程と、凸部を有する加圧体を素材シートに加圧することにより、素材シートの互いに背向する表面のうちの少なくとも一方に凹部を転写する工程とを順に実施することを特徴とするものである。
【0013】
第3発明に係る製造方法によれば、水が透過可能な多数の保水細孔を有する多孔質の素材シートを用い、凸部を有する加圧体を素材シートに加圧することにより、素材シートの互いに背向する表面のうちの少なくとも一方に凹部を転写する。このため水が透過可能な上記したカソードセパレータまたはアノードセパレータを形成することができる。加圧体による加圧量を調整すれば、多孔質体の密度、気孔率を任意に調整することができ、カソードセパレータまたはアノードセパレータの保水性、保湿性、余剰水の吸収性を調整できる。またアノードセパレータやカソードセパレータを構成する多孔質体は、膨張黒鉛で形成されている。膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の保水細孔の形状を維持するのに有利となり、適切な保水性、保湿性を長期にわたって維持するのに有利となる。水が余剰となるときであっても、余剰水の吸収性を長期にわたって維持するのに有利となる。
【0014】
前述したように膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の強度、形状保持性が確保される。故に第3発明に係る製造方法によれば、多孔質体に膨張黒鉛と共に配合する樹脂バインダ等のバインダを廃止したり、減少したりできる。よって多孔質体の気孔率を確保するのに有利であり、多孔質体の保水性、保湿性の向上に貢献できる。本発明によれば、セパレータを構成する多孔質体は膨張黒鉛を基材として含む。膨張黒鉛は、セパレータ内において膨張黒鉛間が保水細孔として機能する他に、膨張黒鉛内部の層間も保水細孔として機能することができ、保水細孔の容積の増加に有利である。
【0015】
(3)第4発明に係る固体高分子電解質形燃料電池用セパレータの製造方法は、膨張黒鉛を含むと共に消失可能な消失可能物質を含む素材シートを準備する工程と、素材シートに含まれている消失可能物質を素材シートから消失させることにより、水が透過可能な多数の保水細孔を素材シートに形成する工程とを順に実施することを特徴とするものである。
【0016】
第4発明に係る製造方法によれば、素材シートの内部に含まれている消失可能物質を素材シートから消失させる。消失可能物質の空隙跡が保水細孔となるため、水が透過可能な保水性を有するカソードセパレータまたはアノードセパレータを形成することができる。消失可能物質の配合量を調整すれば、多孔質体の密度、気孔率を任意に調整することができ、カソードセパレータまたはアノードセパレータの保水性を調整できる。膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の保水細孔の形状を維持するのに有利となる。このように膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の気孔率が高いときであっても、多孔質体の保水細孔の潰れを抑制しつつ、保水細孔の形状を維持するのに有利となる。よって、多孔質体の適切な保水性、保湿性を長期にわたって維持するのに有利となる。水が余剰となるときであっても、余剰水の吸収性を長期にわたって維持するのに有利となる。
【0017】
前述したように膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の強度、形状保持性が確保される。故に第4発明に係る製造方法によれば、多孔質体に膨張黒鉛と共に配合する樹脂バインダ等のバインダを廃止したり、減少したりできる。よって多孔質体の気孔率を確保するのに有利であり、多孔質体の保水性、保湿性の向上に貢献できる。膨張黒鉛はセパレータ内において膨張黒鉛間が保水細孔として機能する他に、膨張黒鉛内部の層間も保水細孔として機能することができ、保水細孔の容積の増加に有利である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に係る固体高分子電解質形燃料電池は、固体高分子形の電解質層と、固体高分子形の電解質層の厚み方向の片側に設けられたアノード触媒層と、固体高分子形の電解質層の厚み方向の他の片側に設けられたカソード触媒層とを有する。アノード触媒層及びカソード触媒層は、一般的には、白金等の触媒金属を主要成分とする。アノードセパレータは、アノード触媒層の側に燃料含有物質を供給する凹部をもつものである。燃料含有物質としては水素含有ガスを例示できる。カソードセパレータは、カソード触媒層の側に酸化剤含有物質を供給する凹部を有するものである。酸化剤含有物質としては空気等の酸素含有ガスを例示できる。
【0019】
本発明に係る固体高分子電解質形燃料電池によれば、アノードセパレータとアノード触媒層との間に設けられたガス透過性をもつアノード側ガス拡散層と、カソードセパレータとカソード触媒層との間に設けられたガス透過性をもつカソード側ガス拡散層とを有することが好ましい。アノード側ガス拡散層及びカソード側ガス拡散層は、一般的には、ガス透過性を有するようにカーボン繊維の集合体を基材する形態を例示できる。
【0020】
本発明に係る固体高分子電解質形燃料電池によれば、アノードセパレータ及びカソードセパレータのうちの少なくとも一方は、膨張黒鉛を含むと共に、水を透過可能な多数の保水細孔をもつ多孔質体で形成されている。膨張黒鉛は層間を膨張させた黒鉛である。膨張黒鉛は原料黒鉛粒子を構成する層の間が拡大しており、膨張前に比較して一般的には膨張(一般的には10〜1000倍程度、50〜600倍程度)し、層間距離が拡大している。このような膨張黒鉛は表面に微細な多数の凹凸を有しており、密度を低めにしつつも機械的絡み合い性を向上させることができる。故に、アノードセパレータやカソードセパレータを形成する多孔質体の機械的強度の向上を図り得るばかりか、機械的絡み合い性の向上により導電接触点、導電接触面積を増加させ、導電性の向上を期待できる。膨張黒鉛は、例えば、酸等の処理液と黒鉛粒子とを接触させた後に、黒鉛粒子を加熱して層間を膨張させることにより形成することができる。酸等の処理液としては硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸等のうちの少なくとも1種を例示できる。加熱は急熱が好ましい。加熱温度としては一般的には200〜1400℃,400〜1200℃を例示できるが、これに限定されるものではない。
【0021】
なお、膨張黒鉛としては、膨張処理後に粉砕処理を経たものでも良いし、あるいは、膨張処理後に粉砕処理を経ていないものでも良い。膨張黒鉛の機械的絡み合い性にもよるが、多孔質体の気孔率が大きいと、多孔質体が損傷し易くなる。多孔質体の気孔率が小さいと、多孔質体への水の含浸性が充分に得られない。そこで多孔質体の気孔率としては一般的には体積比で2〜95%とすることができ、殊に5〜85%、5〜80%とすることができる。気孔率は、(多孔質体に形成されている保水細孔の総体積/多孔質体の見かけ体積)×100%を意味する。なお、気孔率の上限としては95%,90%,85%等を例示でき、下限としては2%,5%,7%等を例示できる。多孔質体に形成されている保水細孔の最短間隔サイズとしては、平均で、0.1〜100μm、殊に1〜10μmとすることができるが、これに限定されるものではない。なお、気孔率としては例えば水銀ポロシメータ(水銀圧入法)で測定できる。
【0022】
本発明に係る固体高分子電解質形燃料電池によれば、アノードセパレータは、アノードセパレータの厚み方向においてアノード触媒層に近い側に形成され且つ燃料含有物質が供給されるアノード側供給凹部と、アノードセパレータの厚み方向においてアノード触媒層に背向する側に形成され且つ水が供給されるアノード側保水凹部とを有する形態を例示できる。アノードセパレータのアノード側供給凹部に燃料含有物質が供給される。これにより燃料含有物質はアノードセパレータを経てアノード触媒層に供給され、発電反応に提供される。アノードセパレータのアノード側保水凹部に水が供給される。これによりアノードセパレータのアノード側保水凹部に保持された水によって固体高分子形の電解質層が保湿され、ひいては電解質層の過剰乾燥が抑制され、電解質層は湿潤状態に維持され、電解質の過剰乾燥に起因する発電性能の低下が抑えられる。
【0023】
カソードセパレータは、カソードセパレータの厚み方向においてカソード触媒層に近い側に形成され且つ酸化剤含有物質が供給されるカソード側供給凹部と、カソードセパレータの厚み方向においてカソード触媒層に背向する側に形成され且つ水が供給されるカソード側保水凹部とを有する形態を例示できる。カソードセパレータのカソード側供給凹部に酸化剤含有物質(一般的には空気などの酸素含有物質)が供給される。これにより酸化剤含有物質はカソードセパレータを経てカソード触媒層に供給され、発電反応に供される。カソードセパレータのカソード側保水凹部に水が供給される。これによりカソードセパレータのカソード側保水凹部に保持された水により固体高分子形の電解質層が保湿され、電解質層は湿潤状態に維持され、電解質層の過剰乾燥が抑制される。
【0024】
本発明に係る固体高分子電解質形燃料電池によれば、多孔質体は、加圧体で加圧成形されている形態を例示できる。加圧体で加圧成形するとき、素材シートに対する加圧体の加圧量を調整すれば、素材シートで形成される多孔質体の細孔の大きさ、あるいは、多孔質体の気孔率を調整することができる。例えば、多孔質体の比重を高めとし、気孔率を低めにするときには、素材シートに対する加圧量を大きくすることができる。逆に、多孔質体の比重を低めとし、気孔率を高めにするときには、素材シートに対する加圧量を小さくすることができる。また加圧体で加圧成形するとき、加圧前の素材シートの厚み及び目付け量のうちの少なくとも一方を調整すれば、加圧後の素材シートで形成される多孔質体の細孔の大きさ、あるいは、多孔質体の気孔率を調整することができる。即ち、加圧する前の素材シートのうち、加圧後の気孔率を相対的に高めとするシート部分では、加圧する前のシート部分の厚みが相対的に薄く設定されているか、あるいは、目付量が相対的に小さく設定されている形態を採用できる。且つ、加圧後の気孔率を相対的に低めとするシート部分では、加圧する前のシート部分の厚みが相対的に厚く設定されているか、あるいは、目付量が相対的に大きく設定されている形態を採用できる。
【0025】
第3発明に係る燃料電池用のセパレータの製造方法によれば、膨張黒鉛を含むと共に水が透過可能な多数の保水細孔を有する多孔質の素材シートを準備する工程と、凸部を有する加圧体を素材シートに加圧することにより、素材シートの互いに背向する表面のうちの少なくとも一方に凹部を転写する工程とを順に実施する。転写された凹部としては、アノードセパレータの場合には、燃料含有物質が供給されるアノード側供給凹部と、水が供給されるアノード側保水凹部とのうちの少なくともいずれか一方とすることができる。また転写された凹部としては、カソードセパレータの場合には、酸化剤含有物質が供給されるカソード側供給凹部と、水が供給されるカソード側保水凹部とのうちの少なくともいずれか一方とすることができる。凸部を有する加圧体としては、凸部を有するロール成形型、または、凸部を有するプレス成形型を例示できる。
【0026】
第3発明に係る燃料電池用のセパレータの製造方法によれば、加圧する前の素材シートは厚みが均等でも良いし、あるいは、部位によって異なっていても良い。この場合、加圧する前の素材シートの厚みを部位によって調整すれば、アノードセパレータやカソードセパレータの部位に応じて、その比重、気孔率を調整することができる。この場合、加圧する前の素材シートのうち、気孔率を相対的に高めとするシート部分では、加圧代を小さくすべく、シート部分の厚みが相対的に薄く設定されている。加圧する前の素材シートのうち、気孔率を相対的に低めとするシート部分では、加圧代を大きくすべく、シート部分の厚みが相対的に厚く設定されている形態を採用できる。
【0027】
また本発明によれば、加圧する前の素材シートは厚みが部位によって異なり、加圧する前の素材シートのうち、気孔率を相対的に高めとするシート部分では、加圧する前のシート部分の厚みが相対的に薄く設定されているか、あるいは、目付量が相対的に小さく設定されており、且つ、気孔率を相対的に低めとするシート部分では、加圧する前のシート部分の厚みが相対的に厚く設定されているか、あるいは、目付量が相対的に大きく設定されている形態を採用することができる。目付量は、シートの単位面積当たりの重量を意味する。
【0028】
加圧する前のシート部分の厚みが相対的に薄く設定されているか、あるいは、加圧する前のシート部分の目付量が相対的に小さく設定されていれば、加圧後のシートの気孔率を相対的に高めとするのに有利である。また加圧する前のシート部分の厚みが相対的に厚く設定されているか、あるいは、目付量が相対的に大きく設定されていれば、加圧後のシートの気孔率を相対的に低めとするのに有利である。
【0029】
第4発明に係る燃料電池用のセパレータの製造方法によれば、膨張黒鉛を含むと共に消失可能な消失可能物質を含む素材シートを形成する工程と、素材シートに含まれている消失可能物質を素材シートから消失させることにより、水が透過可能な多数の保水細孔を素材シートの内部に形成する工程とを順に実施する。消失可能物質の空隙跡が保水細孔となる。素材シートに含まれている消失可能物質を素材シートから消失させることにより、水が透過可能な多数の保水細孔を素材シートの内部に積極的に形成する。このため水が透過可能な上記したカソードセパレータまたはアノードセパレータを形成することができる。消失可能な消失可能物質としては、焼失可能な紙やパルプ等の紙系物質、あるいは、蒸散可能な熱可塑性樹脂などの樹脂系物質、あるいは、固体から気体へ昇華する昇華系物質、あるいは、水に溶出可能な塩化ナトリウム等の溶出物質等を例示できる。昇華系物質としてはアントラセン、フェナントレン、ナフタレン、ドライアイスなどを例示できる。消失可能物質の形状としては粉末状でも良いし、繊維形状でも良い。消失可能物質が繊維形状である場合には、長く延びる保水細孔を形成するのに有利であり、水透過性を確保するのに有利となる。消失可能物質の配合割合としては、多孔質体に要請される気孔率に応じて適宜設定することができる。消失可能物質のサイズ、形状割合としては、多孔質体に形成される保水細孔のサイズ、形状に応じて適宜設定することができる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の第1実施例について図1〜図4を参照して説明する。本実施例に係る固体高分子電解質形燃料電池によれば、図1に示すように、固体高分子形の電解質層10(例えばナフィオン膜,デュポン社製)と、固体高分子形の電解質層10の厚み方向の片側に設けられたアノード触媒層11と、固体高分子形の電解質層10の厚み方向の他の片側に設けられたカソード触媒層14とを有する。更に図1に示すように、アノード触媒層11の側に水素含有ガス(燃料含有物質)を供給するアノードセパレータ3と、カソード触媒層14の側に空気等の酸素含有ガス(酸化剤含有物質)を供給するカソードセパレータ4とが設けられている。
【0031】
図1に示すように、アノードセパレータ3とアノード触媒層11との間には、ガス透過性をもつアノード側ガス拡散層12が設けられている。カソードセパレータ4とカソード触媒層14との間には、ガス透過性をもつカソード側ガス拡散層15が設けられている。アノード側ガス拡散層12は、水素含有ガスの拡散性と導電性とを有するものであり、カーボン繊維の集合体と撥水材とを基材としている。カソード側ガス拡散層15は、空気などの酸素含有ガスの拡散性と導電性とを有するものであり、カーボン繊維の集合体と、通気性を確保するために撥水する撥水材とを基材としている。上記した撥水材としてはフッ素樹脂系が採用されている。アノード触媒層11及びカソード触媒層14は、一般的には、白金等の微粒子状の触媒金属を表面に担持したカーボン粉末粒子の集合体で形成されている。
【0032】
アノードセパレータ3は、アノード触媒層11の側に水素含有ガスを供給する機能を有し、導電性が要請されている。カソードセパレータ4は、カソード触媒層14の側に空気などの酸素含有ガスを供給する機能を有し、導電性が要請されている。アノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の双方は、水を透過可能な多数の微細な保水細孔を有する炭素系の多孔質体で形成されている。この多孔質体は、膨張黒鉛を基材として形成されており、樹脂バインダ及びカーボン繊維は配合されていない。機械的絡み合い性が高い膨張黒鉛を基材とする多孔質体は、樹脂バインダが配合されていないにもかかわらず、形状保持性が高められている。
【0033】
具体的には、膨張黒鉛の集合体をシート状に圧縮成形した多孔性の素材シート8を加圧体で加圧成形することにより形成されている。多孔質体に形成されている保水細孔の大部分または全部は、連続孔とされている。このためアノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の双方は、水透過性、保水性、保湿性が高められている。なお多孔質体の気孔率としては、強度、保水性、保湿性等を考慮し、一般的には体積比で5〜95%の範囲内、殊に10〜85%の範囲内でで適宜設定されている。
【0034】
図1に示すように、アノードセパレータ3は、アノードセパレータ3の厚み方向においてアノード触媒層11に近い表面側に溝状に形成されたアノード側供給凹部31と、アノード触媒層11に近い表面側に形成された凸部32と、アノードセパレータ3の厚み方向においてアノード触媒層11に背向する表面側に連続溝状に形成されたアノード側保水凹部33とを有する。アノード側供給凹部31には水素含有ガス(燃料含有ガス)が供給される。アノード側保水凹部33には水が供給される。図1に示すように、アノード側供給凹部31は、互いに対向する側面31s及び底面31bをもつ。アノード側保水凹部33は、互いに対向する側面33s及び底面33bをもつ。
【0035】
図1に示すように、カソードセパレータ4は、カソードセパレータ4の厚み方向においてカソード触媒層14に近い表面側に連続溝状に形成されたカソード側供給凹部41と、カソード触媒層14に近い表面側に形成された凸部42と、前記カソードセパレータ4の厚み方向においてカソード触媒層14に背向する表面側に連続溝状に形成されたカソード側保水凹部43とを有する。カソード側供給凹部41には空気などの酸素含有ガスが供給される。カソード側保水凹部43には水が供給される。図1に示すように、カソード側供給凹部41は、互いに対向する側面41s及び底面41bをもつ。カソード側保水凹部43は、互いに対向する側面43s及び底面43bをもつ。本実施例によれば、保水性を高めるべく、アノード側保水凹部33の溝幅、流路断面積は、アノード側供給凹部31の溝幅、流路断面積よりも大きく設定されている。保水性を高めるべく、カソード側保水凹部43の溝幅、流路断面積は、カソード側供給凹部41の溝幅、流路断面積よりも大きくされている。
【0036】
本実施例によれば、アノードセパレータ3およびカソードセパレータ4となるセパレータは、次のように形成されている。まず、図2に示すように、頂面70及び互いに背向する側面71をもつ凸部7を有する加圧体としての1組の加圧ロール5A,5Bを用いる。更に図3に示すように、膨張黒鉛を基材とすると共に水が透過可能な多数の保水細孔を有する実質的に均等厚みの多孔質の素材シート8を用いる。更に、図2及び図4に示すように、頂面70及び互いに背向する側面71をもつ複数の凸部7を有する加圧体としての1組の円筒形状の加圧ロール5A,5Bを用いる。そして、加圧ロール5A,5Bを搬送方向(矢印RA方向)に回転させつつ、加圧ロール5A,5Bのロール外周面50の間に素材シート8を矢印A1方向に挿入し、凸部7を素材シート8にこれの厚み方向に加圧する。これにより、図4に示すように、アノード側供給凹部31またはカソード側供給凹部41となる供給凹部81を素材シート8の一方の表面に刻印で転写する。同様に、アノード側保水凹部33またはカソード側保水凹部43となる保水凹部83を素材シート8の他方の表面に刻印で転写する。
【0037】
図4に示すように、加圧ロール5Aの凸部7の頂面70は、アノード側供給凹部31またはカソード側供給凹部41となる供給凹部81の底面81bを刻印で転写する。加圧ロール5Bの凸部7の頂面70は、アノード側保水凹部33またはカソード側保水凹部43となる保水凹部83の底面83bを刻印で転写する。
【0038】
燃料電池の使用の際には、図1に示すように、アノードセパレータ3のアノード側供給凹部31にはガス供給源(燃料源)100を経て水素含有ガス(燃料含有物質)が供給されると共に、アノード側保水凹部33には水供給源102を経て水が供給される。カソードセパレータ4のカソード側供給凹部41にはガス供給源104を経て空気などの酸素含有ガス(酸化剤含有物質)が供給されると共に、カソード側保水凹部43には水供給源102を経て水が供給される。アノード側供給凹部31に供給された水素含有ガスは、アノード側ガス拡散層12の内部を拡散し、アノード触媒層11に至る。アノード触媒層11の触媒作用により、水素含有ガスの水素から水素イオンと電子とが生成される。水素イオンは電解質層10の内部をカソードに向けて移動すると共に、電子は導電通路200、外部負荷201を流れてカソードに至る。また、カソード側供給凹部41に供給された空気などの酸素含有ガスは、カソード側ガス拡散層15の内部を拡散し、カソード触媒層14に至る。そして、アノードから移行してきた水素イオンと電子と酸素とが反応して水がカソードにおいて生成される。このようにして発電が行われる。
【0039】
ところで電解質層10が過剰乾燥すると、電解質層10の水素イオン伝導性が低下し、燃料電池の発電性能が充分に得られないおそれがある。そこで本実施例によれば前述したように、アノードセパレータ3のアノード側保水凹部33に水が供給されて保持される。同様に、カソードセパレータ4のカソード側保水凹部43に水が供給されて保持される。ここで本実施例によれば、アノードセパレータ3及びカソードセパレータ4は、水を透過可能な多数の保水細孔をもつ炭素系の多孔質体で形成されているため、電解質層10が過剰乾燥するようなときであっても、多数の保水細孔に保持された水によって電解質層10を保湿することができる。これにより固体高分子形の電解質層10の過剰乾燥が抑制され、電解質層10の過剰乾燥に起因する発電出力の低下が抑制される。
【0040】
また、カソードセパレータ4の保水細孔に水が含浸されると、保水細孔が埋められるため、保水細孔のシール性が高められ、酸素含有ガスに対するカソードセパレータ4のガスバリヤ性が確保されている。同様にアノードセパレータ3の保水細孔に水が含浸されると、その保水細孔が埋められるため、保水細孔のシール性が高められ、水素含有ガスに対するアノードセパレータ3のガスバリヤ性が確保されている。
【0041】
前述したように発電反応で水が生成される。電解質層10付近において水が余剰になったときには、水素含有ガスとアノード触媒層11との接触が制約されたり、酸素含有ガスとカソード触媒層14との接触が制約されたりし、発電効率が低下するおそれがある。即ち、フラティング現象が生じる。この点本実施例によれば、余剰の水が生成されたときであっても、アノードセパレータ3を構成する多孔質体の保水細孔、カソードセパレータ4を構成する多孔質体の保水細孔に、余剰の水を吸収させることもでき、発電性能の向上に一層有利である。特に、図1に示すように、アノードセパレータ3の凸部32がアノード側ガス拡散層12に密着していると共に、カソードセパレータ4の凸部42がカソード側ガス拡散層15に密着している。このため、電解質層10が乾燥するときには、凸部32,42を介して電解質層10を保湿する効果、電解質層10付近に余剰の水が生成するときには、電解質層10側の余剰の水を吸収し、フラティング現象を抑える効果を期待できる。従って、凸部32,42は水分通過路として機能することができる。
【0042】
更に本実施例に係るアノードセパレータ3及びカソードセパレータ4によれば、膨張黒鉛が基材として用いられている。膨張黒鉛は表面に微細な凹凸を有しており、機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の形状保持性を向上させることができる。故に、多孔質体の内部に形成されている保水細孔の形状を維持するのに有利となり、多孔質体の適切な保水性、保湿性を長期にわたって維持するのに有利となる。加えて、アノードセパレータ3にアノード側供給凹部31、アノード側保水凹部33を形成するときであっても、アノード側供給凹部31の流路形状、アノード側保水凹部33の流路形状を適切に維持するのに有利となる。同様に、カソードセパレータ4にカソード側供給凹部41,カソード側保水凹部43を形成するときであっても、カソード側供給凹部41の流路形状,カソード側保水凹部43の流路形状を適切に維持するのに有利となる。
【0043】
また、機械的絡み合い性が高い膨張黒鉛を基材とする多孔質体は、樹脂バインダが配合されていないにもかかわらず、形状保持性を有している。このため樹脂バインダが多孔質体の保水細孔を埋めることを避けることができる。従って、多孔質体の気孔率を確保するのに有利となり、保水性、保湿性を高めるのに有利となる。
【0044】
加えて膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、機械的絡み合い部分の増加により、導電接触点の増加が期待でき、高い導電性をもつアノードセパレータ3及びカソードセパレータ4を得るのに有利となる。従ってアノードセパレータ3では、アノード側で生成された電子を導電通路200に流すのに有利である。カソードセパレータ4では、アノード側から導電通路200を経てカソード側に移行した電子をカソード触媒層14に流すのに有利である。これにより発電反応を良好に行うことができる。また膨張黒鉛はアノードセパレータ3及びカソードセパレータ4内において膨張黒鉛間が保水細孔として機能する他に、膨張黒鉛内部の層間も保水細孔として機能することができ、保水細孔の容積の増加に有利である。
【0045】
更に本実施例によれば、膨張黒鉛を基材として含むと共に水が透過可能な多数の保水細孔を有する実質的に均等厚みの多孔質の素材シート8(図3参照)を用い、そして凸部7を有する加圧ロール5A,5Bのロール外周面50の間に素材シート8を挿入し、加圧ロール5A,5Bの凸部7を素材シート8に加圧して(図4参照)、素材シート8のうち互いに背向する表面の双方に凹部81,83を刻印で転写する工程を経て、アノードセパレータ3及びカソードセパレータ4は形成されている。このため加圧前の素材シート8の厚みと、加圧後の素材シート8の厚みとを予め設定すれば、素材シート8の厚み方向の圧縮度を任意に調整することができる。ひいては素材シート8から形成されたアノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の比重、気孔率を調整することができる。しかも加圧ロール5A,5Bにおける凸部7の位置を調整すれば、アノードセパレータ3の部位に応じて密度、気孔率を調整することができ、且つ、カソードセパレータ4の部位に応じて密度、気孔率を調整することができる。この結果、アノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の保水性、保湿性を部位に応じて調整することができ、電解質層10の目標とする保湿状態を得るのに有利である。具体的には、電解質層10のうち乾燥し易い部位では、アノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の保湿性を高め、あるいは、電解質層10のうち余剰の水が生成し易い部位では、アノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の保湿性を低めにすることができる。
【0046】
加圧ロール5A,5Bは回転により連続的に成形を行うことができる。しかも加圧ロール5A,5Bのロール外周面50間の隙間C1(図2参照)を調整すれば、素材シート8の加圧率を容易に調整できる。また上記したように本実施例によれば、アノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の保水性、保湿性の調整を加圧ロール5A,5Bの回転で行うため、アノードセパレータ3のアノード側供給凹部31及びアノード側保水凹部33を迅速に且つ連続的に形成することができる。同様に、カソードセパレータ4のカソード側供給凹部41及びカソード側保水凹部43を迅速に且つ連続的に形成することができる。よって生産性の向上を図ることができ、コスト低廉化に貢献できる。
【0047】
なお、第1実施例に係る多孔質体は、膨張黒鉛を基材として形成されており、カーボン繊維は配合されていないが、これに限らず、必要に応じて、膨張黒鉛及びカーボン繊維を含むことにしても良い。更に場合によっては、必要に応じて、少量の樹脂バインダなどのバインダを膨張黒鉛に混在させることもできる。
【0048】
(第2実施例)
図5及び図6は第2実施例を示す。第2実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。図5は、加圧前の素材シート8の断面図を模式的に示す。図5に示すように、加圧前の素材シート8では、幅方向の一端部8eの肉厚T3が相対的に厚く、幅方向の他端部8fの肉厚T4が相対的に薄くなるように厚みが傾斜状態に設定されている。これに対して加圧ロール5A,5Bのロール外周面50の間隔は均等とされている。このため加圧した後の素材シート8の密度を幅方向(矢印B1方向)において調整することができる。具体的には、加圧した後の素材シート8については、幅方向において一端部8eが密の状態に設定され、一端部8eの気孔率は低めに設定される。また、素材シート8の他端部8fが疎の状態に設定され、他端部8fの気孔率は相対的に高めに設定される。このように加圧前の素材シート8の厚みを部位に応じて変化させれば、加圧後の素材シート8の密度、気孔率を部位に応じて調整することができる。この結果、加圧後の素材シート8で形成されるアノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の部位に応じて、その密度、気孔率を調整することができる。
【0049】
なお上記した実施例では、素材シート8の幅方向の一端部8eの肉厚T3が相対的に厚く、幅方向の他端部8fの肉厚T4が相対的に薄くなるように厚みが傾斜状態に設定されているが、これに限らず、素材シート8の幅方向の中間部の肉厚が相対的に厚く、幅方向の端部の肉厚が相対的に薄くなるように設定さけていても良い。あるいは、素材シート8の幅方向の中間部の肉厚が相対的に薄く、幅方向の端部の肉厚が相対的に厚くなるように設定されていても良い。場合によっては、素材シート8の長さ方向の一端部の肉厚が相対的に厚く、長さ方向の他端部の肉厚が相対的に薄くなるように傾斜状態に設定されていても良い。
【0050】
(第3実施例)
図7は第3実施例を示す。第3実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。この場合においても、素材シート8の一方の表面には、アノード側供給凹部31またはカソード側供給凹部41となる供給凹部81が形成されている。また素材シート8の他方の表面には、アノード側保水凹部33またはカソード側保水凹部43となる保水凹部83が形成されている。図7に示すように、供給凹部81と保水凹部83とは素材シート8の幅方向(矢印B1方向)において同じ位相に形成されており、互いに背向して背中合わせとされている。このため、素材シート8のうち、供給凹部81と保水凹部83とで挟まれた薄肉部分8hでは、密度は高めに設定され、気孔率は低めに設定されている。また、供給凹部81と保水凹部83とで挟まれていない厚肉部分8kでは、密度は低めに設定され、気孔率は高めに設定されている。このように互いに背中合わせに配置されている供給凹部81及び保水凹部83の位置の位相を変化させれば、素材シート8の部位に応じて密度、気孔率を調整できる。ひいてはアノードセパレータ3の部位に応じて、カソードセパレータ4の部位に応じて、密度、気孔率を調整できる。なお、図7に示すように、カソード側保水凹部43またはアノード側保水凹部33となる保水凹部83の溝幅L1は、カソード側供給凹部41またはアノード側供給凹部31となる供給凹部81の溝幅L2と実質的に同じ程度とされている。なお本実施例によれば、供給凹部81と保水凹部83とは素材シート8の幅方向(矢印B1方向)において同じ位相に形成されているが、これに限らず、素材シート8の長さ方向において同じ位相に形成されていても良い。要するに、供給凹部81と保水凹部83とは、素材シート8において互いに背向して背中合わせとされている。
【0051】
(第4実施例)
図8は第4実施例を示す。第4実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。この場合においても、素材シート8の一方の表面には、アノード側供給凹部31またはカソード側供給凹部41となる供給凹部81が形成されている。また素材シート8の他方の表面には、アノード側保水凹部33またはカソード側保水凹部43となる保水凹部83が形成されている。カソード側保水凹部43またはアノード側保水凹部33となる保水凹部83の溝幅をL3とし、カソード側供給凹部41またはアノード側供給凹部31となる供給凹部81の溝幅をL4とすると、溝幅L3は溝幅L4よりも大きくされている。カソード側保水凹部43またはアノード側保水凹部33における保水性を高め、保湿性を高めるためである。
【0052】
本実施例によれば、図8に示すように、カソード側供給凹部41またはアノード側供給凹部31となる供給凹部81と、カソード側保水凹部43またはアノード側保水凹部33となる保水凹部83とは、図8に示すように、互い違いに形成されており、この結果、素材シート8の幅方向(矢印B1方向)において異なる位相に形成されている。このため、素材シート8のうち、供給凹部81が形成されているシート部分8mの肉厚をT3とし、保水凹部83が形成されているシート部分8nの肉厚をT4とすると、肉厚T3は肉厚T4と基本的には同じ程度とされている。換言すれば、素材シート8のうちシート部分8mの密度とシート部分8nの密度とは基本的には同じ程度とされている。更に換言すれば、素材シート8のうち、シート部分8mの気孔率とシート部分8nの気孔率とは基本的には同じ程度とされている。このように供給凹部81と保水凹部83との位置の位相を変えることにより、素材シート8における密度、気孔率の均一化に貢献できる。ひいてはアノードセパレータ3及びカソードセパレータ4において、密度、気孔率の均一化に貢献できる。
【0053】
(第5実施例)
図9は第5実施例を示す。第5実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。この場合においても、アノード側供給凹部31またはカソード側供給凹部41となる供給凹部81が素材シート8の一方の表面に形成されている。またアノード側保水凹部33またはカソード側保水凹部43となる保水凹部83が素材シート8の他方の表面に形成されている。図9に示すように、カソード側保水凹部43またはアノード側保水凹部33となる保水凹部83の溝幅をL5とし、カソード側供給凹部41またはアノード側供給凹部31となる供給凹部81の溝幅をL6とすると、溝幅L5は溝幅L6よりも大きく設定されている。カソード側保水凹部43またはアノード側保水凹部33における保水性を高め、保湿性を高めるためである。
【0054】
本実施例によれば、図9に示すように、供給凹部81と保水凹部83とは互いに背中合わせに背向している。このため、素材シート8のうち供給凹部81と保水凹部83とで挟まれた薄肉部分8pは、圧縮度が相対的に高く、密度が相対的に高めで気孔率が相対的に低めに設定されている。また、供給凹部81と保水凹部83とで挟まれていない厚肉部分8rは、圧縮度が相対的に低く、その密度は相対的に低めで気孔率が高めに設定されている。このように素材シート8の部位に応じて密度、気孔率を調整できる。ひいてはアノードセパレータ3の部位に応じて、カソードセパレータ4の部位に応じて、密度、気孔率を調整できる。
【0055】
(第6実施例)
図10及び図11は第6実施例を示す。第6実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。この場合、凸部7を有する昇降方式のプレス成形型55を加圧体として用いる。プレス成形型55は、凸部7を有する上型56と、凸部7を有する下型57とで形成されている。型開き状態の上型56及び下型57の間に素材シート8に配置し、上型56を矢印Y1方向に相対的に下降させることより上型56及び下型57を互いに接近させ、型締めする。これにより上型56及び下型57の凸部7を素材シート8に加圧し、素材シート8の互いに背向する表面に、アノード側供給凹部31またはカソード側供給凹部41となる供給凹部81を転写する。同様に、素材シート8の互いに背向する表面に、アノード側保水凹部33またはカソード側保水凹部43となる保水凹部83を転写する。上型56の凸部7の頂面70は、供給凹部81の底面81bを刻印で転写する。下型57の凸部7の頂面70は保水凹部83の底面83bを刻印で転写する。なおプレス成形型55は広い面積で加圧するため、素材シート8に対する拘束性が高い。
【0056】
(第7実施例)
図12は第7施例を示す。第7実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。この場合、素材シート8は、膨張黒鉛とカーボン繊維とを主要成分として含む混合材料で形成されている。膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、膨張黒鉛とカーボン繊維との機械的絡み合い性が高められており、カーボン繊維の直線線が強い場合であっても、導電接触点の増加に貢献でき、導電性を向上させ得る。
【0057】
(第8実施例)
図13及び図14は第8実施例を示す。第8実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。この場合、膨張黒鉛を含むと共に消失可能な微小体である消失可能物質89を含む素材シート8を準備する。消失可能物質89の配合割合は、多孔質体において要請される気孔率に応じて選択できる。例えば、素材シート8を100%としたとき、消失可能物質89の配合割合としては、体積比で、0.2〜80%を例示できる。
【0058】
そして図14に示すように、複数の凸部7を有する加圧ロール5A,5Bの外周面の間に素材シート8を挿入し、加圧ロール5A,5Bの凸部7を素材シート8に加圧して、素材シート8の互いに背向する表面に凹部81,83を刻印で転写する。加圧が終了した後に、消失可能物質89を蒸散させ得る所定温度域に素材シート8を加熱し、素材シート8の内部に含まれている消失可能物質89を蒸散させて素材シート8から消失させる。消失可能物質89の空隙跡が保水細孔となる。これにより水が透過可能な多数の保水細孔を素材シート8の内部に積極的に形成する。更に必要に応じて、仕上げロールで素材シート8の形状を整えることができる。上記した消失可能な消失可能物質89としては、パルプ等の紙系物質、熱可塑性樹脂などの樹脂系物質、アントラセン、フェナントレン、ナフタレン、ドライアイスなど昇華系物質等のうちの少なくとも1種を例示できる。消失可能物質89のサイズ、形状、配合量を調整することにより、保水細孔のサイズ、形状、気孔率を調整できる。消失可能物質89の形状としては粉末状でも良いし、繊維形状でも良い。消失可能物質89がパルプなどのように繊維形状である場合には、長く延びる保水細孔をアノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の内部に形成するのに有利であり、水透過性を確保するのに有利となる。なお消失可能物質89の種類によっては、消失可能物質89を蒸散させる加熱を省いても良い。
【0059】
(第9実施例)
図15は第9実施例を示す。第9実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。この場合、アノードセパレータ3の外側、カソードセパレータ4の外側に、水及びガスの遮断性を高めるバリヤ部材90が配置されている。この結果、隣設するセル間におけるガス遮断性がバリヤ部材90により高められている。バリヤ部材90の材質はガスバリヤ性の他に導電性を有することが好ましく、その材質としては金属材料または緻密な炭素系材料を例示できる。
【0060】
(第10実施例)
図16は第10実施例を示す。第10実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。この場合、固体高分子電解質形燃料電池は、固体高分子形の電解質層10と、固体高分子形の電解質層10の厚み方向の片側に設けられたアノード触媒層11と、固体高分子形の電解質層10の厚み方向の他の片側に設けられたカソード触媒層14とを有する。燃料含有物質を供給するアノードセパレータ3は膜構造体のアノード触媒層11に隣接されている。酸化剤含有物質を供給するカソードセパレータ4は、カソード触媒層14に隣接されている。
【0061】
その他、本発明は上記した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
【0062】
【発明の効果】
(1)第1発明に係る固体高分子電解質形燃料電池、第2発明に係るセパレータによれば、アノードセパレータ及びカソードセパレータのうちの少なくとも一方は、膨張黒鉛を含むと共に、水を透過可能な多数の保水細孔をもつ多孔質体で形成されている。このため多孔質体の保水細孔に水を保持させることができ、固体高分子形の電解質層に対して保湿機能を発揮することができる。これにより電解質層の過剰乾燥が抑制され、過剰乾燥に起因する発電出力の低下が抑制され、発電性能を向上させるのに有利となる。更に電解質層付近において水が余剰になったときには、余剰の水を多孔質体の保水細孔に吸収させることも期待できる。このため余剰の水に起因するフラティング現象が抑制され、発電性能を向上させるのに一層有利となる。
【0063】
更にアノードセパレータやカソードセパレータを構成する多孔質体は、膨張黒鉛で形成されている。膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の形状保持性を確保できる。故に、多孔質体の内部に形成されている保水細孔の形状を長期にわたって維持するのに有利となり、多孔質体の適切な保水性、保湿性を長期にわたって維持するのに有利となる。更に、アノードセパレータにアノード供給凹部、アノード保水凹部を形成するときであっても、アノード供給凹部の凹形状、アノード保水凹部の凹形状を適切に維持するのに有利となる。またカソードセパレータにカソード供給凹部、カソード保水凹部を形成するときであっても、カソード供給凹部の凹形状、カソード保水凹部の凹形状を適切に維持するのに有利となる。
【0064】
前述したように膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の強度、形状保持性が確保される。故に多孔質体に膨張黒鉛と共に配合する樹脂バインダ等のバインダを廃止したり、減少したりできる。よって樹脂バインダ等のバインダが多孔質体の保水細孔を埋めることを抑制でき、多孔質体の気孔率を確保するのに有利である。故に、アノードセパレータやカソードセパレータを構成する多孔質体の保水性、保湿性の向上に貢献でき、発電性能の向上に有利である。また膨張黒鉛は膨張黒鉛間が保水細孔として機能する他に、膨張黒鉛内部の層間も保水細孔として機能することができ、保水細孔の容積の増加に一層有利である。
【0065】
(2)第3発明に係るセパレータの製造方法によれば、上記した、保水性、保湿性や余剰の水を吸収するといった効果を有するセパレータを提供することができる。また、凸部を有する加圧体が素材シートを加圧する加圧量を調整すれば、素材シートの密度、気孔率を調整することができ、ひいてはアノードセパレータやカソードセパレータを構成する多孔質体の保水性、保湿性、余剰水の吸収性を調整することができる。更に加圧体の凸部を転写して凹部を形成するため、燃料含有物質や酸化材含有物質を流したり、水を保水させるため凹部を容易に形成できる。またセパレータに含まれている膨張黒鉛は膨張黒鉛間が保水細孔として機能する他に、膨張黒鉛内部の層間も保水細孔として機能することができ、保水細孔の容積の増加に一層有利である。
【0066】
第3発明に係るセパレータの製造方法によれば、素材シートを形成している膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、素材シートの強度、形状保持性が確保される。故に素材シートに膨張黒鉛と共に配合する樹脂バインダ等のバインダを廃止したり、減少したりできる。よって樹脂バインダ等のバインダが多孔質体の保水細孔を埋めることを抑制できる。故に、素材シートで形成されるアノードセパレータやカソードセパレータにおける気孔率を確保するのに有利であり、保水性、保湿性の向上に貢献でき、発電性能の向上に有利である。またセパレータに含まれている膨張黒鉛は膨張黒鉛間が保水細孔として機能する他に、膨張黒鉛内部の層間も保水細孔として機能することができ、保水細孔の容積の増加に一層有利である。
【0067】
(3)第4発明に係るセパレータの製造方法によれば、素材シートの内部に含まれている消失可能物質を素材シートから消失させる。消失可能物質の空隙跡が保水細孔となるため、水が透過可能な保水性、保湿性、余剰水の吸収性を有するカソードセパレータまたはアノードセパレータを形成することができる。消失可能物質のサイズ、形状、配合量を調整すれば、保水細孔のサイズ、形状、多孔質体の密度、気孔率を任意に調整することができ、カソードセパレータまたはアノードセパレータの保水性、保湿性、余剰水の吸収性を調整できる。また、膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の保水細孔の形状を維持するのに有利となり、長期にわたって適切な保水性、保湿性、余剰水の吸収性を維持するのに有利となる。
【0068】
第4発明に係るセパレータの製造方法によれば、素材シートを形成している膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、素材シートの強度、形状保持性が確保される。故に素材シートに膨張黒鉛と共に配合する樹脂バインダ等のバインダを廃止したり、減少したりできる。よって樹脂バインダ等のバインダが多孔質体の保水細孔を埋めることを抑制できる。よって素材シートで形成されるアノードセパレータやカソードセパレータにおける気孔率を確保するのに有利であり、保水性、保湿性の向上に貢献でき、発電性能の向上に有利である。膨張黒鉛は膨張黒鉛間が保水細孔として機能する他に、膨張黒鉛内部の層間も保水細孔として機能することができ、保水細孔の容積の増加に一層有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体高分子電解質形の燃料電池の概念図である。
【図2】素材シートを加圧ロールで加圧する過程を模式的に示す概念図である。
【図3】加圧前の素材シートの断面図である。
【図4】加圧ロールで加圧した後の素材シートの断面図である。
【図5】第2実施例に係り、加圧前の素材シートの断面図である。
【図6】第2実施例に係り、加圧後の素材シートの断面図である。
【図7】第3実施例に係り、加圧後の素材シートの断面図である。
【図8】第4実施例に係り、加圧後の素材シートの断面図である。
【図9】第5実施例に係り、加圧後の素材シートの断面図である。
【図10】第6実施例に係り、加圧前の素材シートの断面図である。
【図11】第6実施例に係り、加圧後の素材シートの断面図である。
【図12】第7実施例に係り、加圧後の素材シートの断面図である。
【図13】第8実施例に係り、加圧前の素材シートの断面図である。
【図14】第8実施例に係り、加圧後の素材シートの断面図である。
【図15】第9実施例に係り、固体高分子電解質形の燃料電池の概念図である。
【図16】第10実施例に係り、固体高分子電解質形の燃料電池の概念図である。
【符号の説明】
図中、10は電解質層、11はアノード触媒層、14はカソード触媒層、12はアノード側ガス拡散層、15はカソード側ガス拡散層、3はアノードセパレータ、31はアノード側供給凹部、33はアノード側保水凹部、4はカソードセパレータ、41はカソード側供給凹部、43はカソード側保水凹部、5は加圧ロール(加圧体)、7は凸部、70は頂面、55はプレス成形型(加圧体)、8は素材シート、89は消失可能物質を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は固体高分子電解質形燃料電池、固体高分子電解質形燃料電池用セパレータ及びそのセパレータの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質形燃料電池は、固体高分子形の電解質層と、固体高分子形の電解質層の片側に設けられたアノード触媒層と、固体高分子形の電解質層の他の片側に設けられたカソード触媒層とを有する。ここで、固体高分子形の電解質層は水分を含んだ状態で水素イオン伝導性を示し、飽和状態まで吸湿したとき高い伝導性を示す。従って電解質層が過剰に乾燥していると、電解質層の水素イオン伝導性が低下し、目標とする発電出力が発揮されにくい。そこで、従来より、固体高分子形の電解質層の過剰乾燥を防止すべく、燃料電池に供給する燃料含有ガスや酸素含有ガスを予め加湿させることが行われている。
【0003】
更に、アノードセパレータやカソードセパレータを多孔質体で形成した燃料電池も開発されている(特公平7−95447号公、特表2002−513200号公報)。このものによれば、アノードセパレータやカソードセパレータを構成する多孔質体の内部に形成されている細孔から水分を電解質層に供給することができ、固体高分子形の電解質層の過剰乾燥を防止することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記したアノードセパレータやカソードセパレータを構成する多孔質体の細孔から水分を供給する方式を採用している燃料電池においては、更なる発電性能の向上が要請されている。
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、更なる発電性能の向上に有利な固体高分子電解質形燃料電池、固体高分子電解質形燃料電池用セパレータ及びそのセパレータの製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1)第1発明に係る固体高分子電解質形燃料電池は、固体高分子形の電解質層と、電解質層の片側に設けられたアノード触媒層と、電解質層の他の片側に設けられたカソード触媒層と、アノード触媒層の側に燃料含有物質を供給する凹部をもつアノードセパレータと、カソード触媒層の側に酸化剤含有物質を供給する凹部をもつカソードセパレータとを具備する固体高分子電解質形燃料電池において、アノードセパレータ及びカソードセパレータのうちの少なくとも一方は、膨張黒鉛を含むと共に、水を透過可能な多数の保水細孔をもつ多孔質体で形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
第2発明に係る固体高分子電解質形燃料電池用セパレータは、固体高分子電解質形燃料電池に組み込まれるアノードセパレータ及びカソードセパレータのうちの少なくとも一方であって、膨張黒鉛を含むと共に、水を透過可能な多数の保水細孔をもつ多孔質体で形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
第1発明に係る燃料電池、第2発明に係るセパレータよれば、アノードセパレータ及びカソードセパレータのうちの少なくとも一方は、水を透過可能な多数の保水細孔をもつ多孔質体で形成されている。このため多孔質体の保水細孔に保持された水よって電解質層を保湿することができる。これにより固体高分子形の電解質層の過剰乾燥が抑制され、過剰乾燥に起因する発電出力の低下が抑制される。電解質層付近において水が余剰になったときには、余剰の水によって燃料含有物質とアノード触媒層との接触が制約されたり、酸化剤含有物質とカソード触媒層との接触が制約されたりし、発電反応が妨げられ、燃料電池の発電効率が低下するおそれがある。すなわち、フラティング現象が生じるおそれがある。この点第1発明、第2発明によれば、電解質層付近において水が余剰になったときであっても、アノードセパレータを構成する多孔質体の保水細孔、カソードセパレータを構成する多孔質体の保水細孔に余剰の水を吸収させることもでき、発電性能の向上に一層有利である。
【0009】
更に、アノードセパレータやカソードセパレータを構成する多孔質体は、膨張黒鉛を基材として形成されている。膨張黒鉛は表面に微細な多数の凹凸を有するため、機械的絡み合い性が高い。故に、多孔質体の気孔率が高いときであっても、多孔質体の保水細孔の潰れを抑制しつつ、保水細孔の形状を維持するのに有利となり、適切な保水性、保湿性、余剰水の吸収性を長期にわたって維持するのに有利となる。
【0010】
樹脂バインダ等のバインダを多孔質体に添加していると、多孔質体においてバインダが占める容積が必要とされるため、多孔質体の気孔率を高めるのに不利となる傾向がある。この点本発明によれば、前述したように膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の強度、形状保持性が確保される。故に多孔質体に膨張黒鉛と共に配合する樹脂バインダ等のバインダを廃止したり、減少したりできる。よって多孔質体の気孔率を確保するのに有利であり、保水性、保湿性の向上に貢献できる。
【0011】
本発明によれば、アノードセパレータやカソードセパレータを構成する多孔質体は、膨張黒鉛を基材として形成されている。膨張黒鉛は、セパレータ内において膨張黒鉛間が保水細孔として機能する他に、膨張黒鉛内部の層間も保水細孔として機能することができ、保水細孔の容積の増加に有利である。
【0012】
(2)第3発明に係る固体高分子電解質形燃料電池のセパレータの製造方法は、膨張黒鉛を含むと共に水が透過可能な多数の保水細孔を有する多孔質の素材シートを準備する工程と、凸部を有する加圧体を素材シートに加圧することにより、素材シートの互いに背向する表面のうちの少なくとも一方に凹部を転写する工程とを順に実施することを特徴とするものである。
【0013】
第3発明に係る製造方法によれば、水が透過可能な多数の保水細孔を有する多孔質の素材シートを用い、凸部を有する加圧体を素材シートに加圧することにより、素材シートの互いに背向する表面のうちの少なくとも一方に凹部を転写する。このため水が透過可能な上記したカソードセパレータまたはアノードセパレータを形成することができる。加圧体による加圧量を調整すれば、多孔質体の密度、気孔率を任意に調整することができ、カソードセパレータまたはアノードセパレータの保水性、保湿性、余剰水の吸収性を調整できる。またアノードセパレータやカソードセパレータを構成する多孔質体は、膨張黒鉛で形成されている。膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の保水細孔の形状を維持するのに有利となり、適切な保水性、保湿性を長期にわたって維持するのに有利となる。水が余剰となるときであっても、余剰水の吸収性を長期にわたって維持するのに有利となる。
【0014】
前述したように膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の強度、形状保持性が確保される。故に第3発明に係る製造方法によれば、多孔質体に膨張黒鉛と共に配合する樹脂バインダ等のバインダを廃止したり、減少したりできる。よって多孔質体の気孔率を確保するのに有利であり、多孔質体の保水性、保湿性の向上に貢献できる。本発明によれば、セパレータを構成する多孔質体は膨張黒鉛を基材として含む。膨張黒鉛は、セパレータ内において膨張黒鉛間が保水細孔として機能する他に、膨張黒鉛内部の層間も保水細孔として機能することができ、保水細孔の容積の増加に有利である。
【0015】
(3)第4発明に係る固体高分子電解質形燃料電池用セパレータの製造方法は、膨張黒鉛を含むと共に消失可能な消失可能物質を含む素材シートを準備する工程と、素材シートに含まれている消失可能物質を素材シートから消失させることにより、水が透過可能な多数の保水細孔を素材シートに形成する工程とを順に実施することを特徴とするものである。
【0016】
第4発明に係る製造方法によれば、素材シートの内部に含まれている消失可能物質を素材シートから消失させる。消失可能物質の空隙跡が保水細孔となるため、水が透過可能な保水性を有するカソードセパレータまたはアノードセパレータを形成することができる。消失可能物質の配合量を調整すれば、多孔質体の密度、気孔率を任意に調整することができ、カソードセパレータまたはアノードセパレータの保水性を調整できる。膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の保水細孔の形状を維持するのに有利となる。このように膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の気孔率が高いときであっても、多孔質体の保水細孔の潰れを抑制しつつ、保水細孔の形状を維持するのに有利となる。よって、多孔質体の適切な保水性、保湿性を長期にわたって維持するのに有利となる。水が余剰となるときであっても、余剰水の吸収性を長期にわたって維持するのに有利となる。
【0017】
前述したように膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の強度、形状保持性が確保される。故に第4発明に係る製造方法によれば、多孔質体に膨張黒鉛と共に配合する樹脂バインダ等のバインダを廃止したり、減少したりできる。よって多孔質体の気孔率を確保するのに有利であり、多孔質体の保水性、保湿性の向上に貢献できる。膨張黒鉛はセパレータ内において膨張黒鉛間が保水細孔として機能する他に、膨張黒鉛内部の層間も保水細孔として機能することができ、保水細孔の容積の増加に有利である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明に係る固体高分子電解質形燃料電池は、固体高分子形の電解質層と、固体高分子形の電解質層の厚み方向の片側に設けられたアノード触媒層と、固体高分子形の電解質層の厚み方向の他の片側に設けられたカソード触媒層とを有する。アノード触媒層及びカソード触媒層は、一般的には、白金等の触媒金属を主要成分とする。アノードセパレータは、アノード触媒層の側に燃料含有物質を供給する凹部をもつものである。燃料含有物質としては水素含有ガスを例示できる。カソードセパレータは、カソード触媒層の側に酸化剤含有物質を供給する凹部を有するものである。酸化剤含有物質としては空気等の酸素含有ガスを例示できる。
【0019】
本発明に係る固体高分子電解質形燃料電池によれば、アノードセパレータとアノード触媒層との間に設けられたガス透過性をもつアノード側ガス拡散層と、カソードセパレータとカソード触媒層との間に設けられたガス透過性をもつカソード側ガス拡散層とを有することが好ましい。アノード側ガス拡散層及びカソード側ガス拡散層は、一般的には、ガス透過性を有するようにカーボン繊維の集合体を基材する形態を例示できる。
【0020】
本発明に係る固体高分子電解質形燃料電池によれば、アノードセパレータ及びカソードセパレータのうちの少なくとも一方は、膨張黒鉛を含むと共に、水を透過可能な多数の保水細孔をもつ多孔質体で形成されている。膨張黒鉛は層間を膨張させた黒鉛である。膨張黒鉛は原料黒鉛粒子を構成する層の間が拡大しており、膨張前に比較して一般的には膨張(一般的には10〜1000倍程度、50〜600倍程度)し、層間距離が拡大している。このような膨張黒鉛は表面に微細な多数の凹凸を有しており、密度を低めにしつつも機械的絡み合い性を向上させることができる。故に、アノードセパレータやカソードセパレータを形成する多孔質体の機械的強度の向上を図り得るばかりか、機械的絡み合い性の向上により導電接触点、導電接触面積を増加させ、導電性の向上を期待できる。膨張黒鉛は、例えば、酸等の処理液と黒鉛粒子とを接触させた後に、黒鉛粒子を加熱して層間を膨張させることにより形成することができる。酸等の処理液としては硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸等のうちの少なくとも1種を例示できる。加熱は急熱が好ましい。加熱温度としては一般的には200〜1400℃,400〜1200℃を例示できるが、これに限定されるものではない。
【0021】
なお、膨張黒鉛としては、膨張処理後に粉砕処理を経たものでも良いし、あるいは、膨張処理後に粉砕処理を経ていないものでも良い。膨張黒鉛の機械的絡み合い性にもよるが、多孔質体の気孔率が大きいと、多孔質体が損傷し易くなる。多孔質体の気孔率が小さいと、多孔質体への水の含浸性が充分に得られない。そこで多孔質体の気孔率としては一般的には体積比で2〜95%とすることができ、殊に5〜85%、5〜80%とすることができる。気孔率は、(多孔質体に形成されている保水細孔の総体積/多孔質体の見かけ体積)×100%を意味する。なお、気孔率の上限としては95%,90%,85%等を例示でき、下限としては2%,5%,7%等を例示できる。多孔質体に形成されている保水細孔の最短間隔サイズとしては、平均で、0.1〜100μm、殊に1〜10μmとすることができるが、これに限定されるものではない。なお、気孔率としては例えば水銀ポロシメータ(水銀圧入法)で測定できる。
【0022】
本発明に係る固体高分子電解質形燃料電池によれば、アノードセパレータは、アノードセパレータの厚み方向においてアノード触媒層に近い側に形成され且つ燃料含有物質が供給されるアノード側供給凹部と、アノードセパレータの厚み方向においてアノード触媒層に背向する側に形成され且つ水が供給されるアノード側保水凹部とを有する形態を例示できる。アノードセパレータのアノード側供給凹部に燃料含有物質が供給される。これにより燃料含有物質はアノードセパレータを経てアノード触媒層に供給され、発電反応に提供される。アノードセパレータのアノード側保水凹部に水が供給される。これによりアノードセパレータのアノード側保水凹部に保持された水によって固体高分子形の電解質層が保湿され、ひいては電解質層の過剰乾燥が抑制され、電解質層は湿潤状態に維持され、電解質の過剰乾燥に起因する発電性能の低下が抑えられる。
【0023】
カソードセパレータは、カソードセパレータの厚み方向においてカソード触媒層に近い側に形成され且つ酸化剤含有物質が供給されるカソード側供給凹部と、カソードセパレータの厚み方向においてカソード触媒層に背向する側に形成され且つ水が供給されるカソード側保水凹部とを有する形態を例示できる。カソードセパレータのカソード側供給凹部に酸化剤含有物質(一般的には空気などの酸素含有物質)が供給される。これにより酸化剤含有物質はカソードセパレータを経てカソード触媒層に供給され、発電反応に供される。カソードセパレータのカソード側保水凹部に水が供給される。これによりカソードセパレータのカソード側保水凹部に保持された水により固体高分子形の電解質層が保湿され、電解質層は湿潤状態に維持され、電解質層の過剰乾燥が抑制される。
【0024】
本発明に係る固体高分子電解質形燃料電池によれば、多孔質体は、加圧体で加圧成形されている形態を例示できる。加圧体で加圧成形するとき、素材シートに対する加圧体の加圧量を調整すれば、素材シートで形成される多孔質体の細孔の大きさ、あるいは、多孔質体の気孔率を調整することができる。例えば、多孔質体の比重を高めとし、気孔率を低めにするときには、素材シートに対する加圧量を大きくすることができる。逆に、多孔質体の比重を低めとし、気孔率を高めにするときには、素材シートに対する加圧量を小さくすることができる。また加圧体で加圧成形するとき、加圧前の素材シートの厚み及び目付け量のうちの少なくとも一方を調整すれば、加圧後の素材シートで形成される多孔質体の細孔の大きさ、あるいは、多孔質体の気孔率を調整することができる。即ち、加圧する前の素材シートのうち、加圧後の気孔率を相対的に高めとするシート部分では、加圧する前のシート部分の厚みが相対的に薄く設定されているか、あるいは、目付量が相対的に小さく設定されている形態を採用できる。且つ、加圧後の気孔率を相対的に低めとするシート部分では、加圧する前のシート部分の厚みが相対的に厚く設定されているか、あるいは、目付量が相対的に大きく設定されている形態を採用できる。
【0025】
第3発明に係る燃料電池用のセパレータの製造方法によれば、膨張黒鉛を含むと共に水が透過可能な多数の保水細孔を有する多孔質の素材シートを準備する工程と、凸部を有する加圧体を素材シートに加圧することにより、素材シートの互いに背向する表面のうちの少なくとも一方に凹部を転写する工程とを順に実施する。転写された凹部としては、アノードセパレータの場合には、燃料含有物質が供給されるアノード側供給凹部と、水が供給されるアノード側保水凹部とのうちの少なくともいずれか一方とすることができる。また転写された凹部としては、カソードセパレータの場合には、酸化剤含有物質が供給されるカソード側供給凹部と、水が供給されるカソード側保水凹部とのうちの少なくともいずれか一方とすることができる。凸部を有する加圧体としては、凸部を有するロール成形型、または、凸部を有するプレス成形型を例示できる。
【0026】
第3発明に係る燃料電池用のセパレータの製造方法によれば、加圧する前の素材シートは厚みが均等でも良いし、あるいは、部位によって異なっていても良い。この場合、加圧する前の素材シートの厚みを部位によって調整すれば、アノードセパレータやカソードセパレータの部位に応じて、その比重、気孔率を調整することができる。この場合、加圧する前の素材シートのうち、気孔率を相対的に高めとするシート部分では、加圧代を小さくすべく、シート部分の厚みが相対的に薄く設定されている。加圧する前の素材シートのうち、気孔率を相対的に低めとするシート部分では、加圧代を大きくすべく、シート部分の厚みが相対的に厚く設定されている形態を採用できる。
【0027】
また本発明によれば、加圧する前の素材シートは厚みが部位によって異なり、加圧する前の素材シートのうち、気孔率を相対的に高めとするシート部分では、加圧する前のシート部分の厚みが相対的に薄く設定されているか、あるいは、目付量が相対的に小さく設定されており、且つ、気孔率を相対的に低めとするシート部分では、加圧する前のシート部分の厚みが相対的に厚く設定されているか、あるいは、目付量が相対的に大きく設定されている形態を採用することができる。目付量は、シートの単位面積当たりの重量を意味する。
【0028】
加圧する前のシート部分の厚みが相対的に薄く設定されているか、あるいは、加圧する前のシート部分の目付量が相対的に小さく設定されていれば、加圧後のシートの気孔率を相対的に高めとするのに有利である。また加圧する前のシート部分の厚みが相対的に厚く設定されているか、あるいは、目付量が相対的に大きく設定されていれば、加圧後のシートの気孔率を相対的に低めとするのに有利である。
【0029】
第4発明に係る燃料電池用のセパレータの製造方法によれば、膨張黒鉛を含むと共に消失可能な消失可能物質を含む素材シートを形成する工程と、素材シートに含まれている消失可能物質を素材シートから消失させることにより、水が透過可能な多数の保水細孔を素材シートの内部に形成する工程とを順に実施する。消失可能物質の空隙跡が保水細孔となる。素材シートに含まれている消失可能物質を素材シートから消失させることにより、水が透過可能な多数の保水細孔を素材シートの内部に積極的に形成する。このため水が透過可能な上記したカソードセパレータまたはアノードセパレータを形成することができる。消失可能な消失可能物質としては、焼失可能な紙やパルプ等の紙系物質、あるいは、蒸散可能な熱可塑性樹脂などの樹脂系物質、あるいは、固体から気体へ昇華する昇華系物質、あるいは、水に溶出可能な塩化ナトリウム等の溶出物質等を例示できる。昇華系物質としてはアントラセン、フェナントレン、ナフタレン、ドライアイスなどを例示できる。消失可能物質の形状としては粉末状でも良いし、繊維形状でも良い。消失可能物質が繊維形状である場合には、長く延びる保水細孔を形成するのに有利であり、水透過性を確保するのに有利となる。消失可能物質の配合割合としては、多孔質体に要請される気孔率に応じて適宜設定することができる。消失可能物質のサイズ、形状割合としては、多孔質体に形成される保水細孔のサイズ、形状に応じて適宜設定することができる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の第1実施例について図1〜図4を参照して説明する。本実施例に係る固体高分子電解質形燃料電池によれば、図1に示すように、固体高分子形の電解質層10(例えばナフィオン膜,デュポン社製)と、固体高分子形の電解質層10の厚み方向の片側に設けられたアノード触媒層11と、固体高分子形の電解質層10の厚み方向の他の片側に設けられたカソード触媒層14とを有する。更に図1に示すように、アノード触媒層11の側に水素含有ガス(燃料含有物質)を供給するアノードセパレータ3と、カソード触媒層14の側に空気等の酸素含有ガス(酸化剤含有物質)を供給するカソードセパレータ4とが設けられている。
【0031】
図1に示すように、アノードセパレータ3とアノード触媒層11との間には、ガス透過性をもつアノード側ガス拡散層12が設けられている。カソードセパレータ4とカソード触媒層14との間には、ガス透過性をもつカソード側ガス拡散層15が設けられている。アノード側ガス拡散層12は、水素含有ガスの拡散性と導電性とを有するものであり、カーボン繊維の集合体と撥水材とを基材としている。カソード側ガス拡散層15は、空気などの酸素含有ガスの拡散性と導電性とを有するものであり、カーボン繊維の集合体と、通気性を確保するために撥水する撥水材とを基材としている。上記した撥水材としてはフッ素樹脂系が採用されている。アノード触媒層11及びカソード触媒層14は、一般的には、白金等の微粒子状の触媒金属を表面に担持したカーボン粉末粒子の集合体で形成されている。
【0032】
アノードセパレータ3は、アノード触媒層11の側に水素含有ガスを供給する機能を有し、導電性が要請されている。カソードセパレータ4は、カソード触媒層14の側に空気などの酸素含有ガスを供給する機能を有し、導電性が要請されている。アノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の双方は、水を透過可能な多数の微細な保水細孔を有する炭素系の多孔質体で形成されている。この多孔質体は、膨張黒鉛を基材として形成されており、樹脂バインダ及びカーボン繊維は配合されていない。機械的絡み合い性が高い膨張黒鉛を基材とする多孔質体は、樹脂バインダが配合されていないにもかかわらず、形状保持性が高められている。
【0033】
具体的には、膨張黒鉛の集合体をシート状に圧縮成形した多孔性の素材シート8を加圧体で加圧成形することにより形成されている。多孔質体に形成されている保水細孔の大部分または全部は、連続孔とされている。このためアノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の双方は、水透過性、保水性、保湿性が高められている。なお多孔質体の気孔率としては、強度、保水性、保湿性等を考慮し、一般的には体積比で5〜95%の範囲内、殊に10〜85%の範囲内でで適宜設定されている。
【0034】
図1に示すように、アノードセパレータ3は、アノードセパレータ3の厚み方向においてアノード触媒層11に近い表面側に溝状に形成されたアノード側供給凹部31と、アノード触媒層11に近い表面側に形成された凸部32と、アノードセパレータ3の厚み方向においてアノード触媒層11に背向する表面側に連続溝状に形成されたアノード側保水凹部33とを有する。アノード側供給凹部31には水素含有ガス(燃料含有ガス)が供給される。アノード側保水凹部33には水が供給される。図1に示すように、アノード側供給凹部31は、互いに対向する側面31s及び底面31bをもつ。アノード側保水凹部33は、互いに対向する側面33s及び底面33bをもつ。
【0035】
図1に示すように、カソードセパレータ4は、カソードセパレータ4の厚み方向においてカソード触媒層14に近い表面側に連続溝状に形成されたカソード側供給凹部41と、カソード触媒層14に近い表面側に形成された凸部42と、前記カソードセパレータ4の厚み方向においてカソード触媒層14に背向する表面側に連続溝状に形成されたカソード側保水凹部43とを有する。カソード側供給凹部41には空気などの酸素含有ガスが供給される。カソード側保水凹部43には水が供給される。図1に示すように、カソード側供給凹部41は、互いに対向する側面41s及び底面41bをもつ。カソード側保水凹部43は、互いに対向する側面43s及び底面43bをもつ。本実施例によれば、保水性を高めるべく、アノード側保水凹部33の溝幅、流路断面積は、アノード側供給凹部31の溝幅、流路断面積よりも大きく設定されている。保水性を高めるべく、カソード側保水凹部43の溝幅、流路断面積は、カソード側供給凹部41の溝幅、流路断面積よりも大きくされている。
【0036】
本実施例によれば、アノードセパレータ3およびカソードセパレータ4となるセパレータは、次のように形成されている。まず、図2に示すように、頂面70及び互いに背向する側面71をもつ凸部7を有する加圧体としての1組の加圧ロール5A,5Bを用いる。更に図3に示すように、膨張黒鉛を基材とすると共に水が透過可能な多数の保水細孔を有する実質的に均等厚みの多孔質の素材シート8を用いる。更に、図2及び図4に示すように、頂面70及び互いに背向する側面71をもつ複数の凸部7を有する加圧体としての1組の円筒形状の加圧ロール5A,5Bを用いる。そして、加圧ロール5A,5Bを搬送方向(矢印RA方向)に回転させつつ、加圧ロール5A,5Bのロール外周面50の間に素材シート8を矢印A1方向に挿入し、凸部7を素材シート8にこれの厚み方向に加圧する。これにより、図4に示すように、アノード側供給凹部31またはカソード側供給凹部41となる供給凹部81を素材シート8の一方の表面に刻印で転写する。同様に、アノード側保水凹部33またはカソード側保水凹部43となる保水凹部83を素材シート8の他方の表面に刻印で転写する。
【0037】
図4に示すように、加圧ロール5Aの凸部7の頂面70は、アノード側供給凹部31またはカソード側供給凹部41となる供給凹部81の底面81bを刻印で転写する。加圧ロール5Bの凸部7の頂面70は、アノード側保水凹部33またはカソード側保水凹部43となる保水凹部83の底面83bを刻印で転写する。
【0038】
燃料電池の使用の際には、図1に示すように、アノードセパレータ3のアノード側供給凹部31にはガス供給源(燃料源)100を経て水素含有ガス(燃料含有物質)が供給されると共に、アノード側保水凹部33には水供給源102を経て水が供給される。カソードセパレータ4のカソード側供給凹部41にはガス供給源104を経て空気などの酸素含有ガス(酸化剤含有物質)が供給されると共に、カソード側保水凹部43には水供給源102を経て水が供給される。アノード側供給凹部31に供給された水素含有ガスは、アノード側ガス拡散層12の内部を拡散し、アノード触媒層11に至る。アノード触媒層11の触媒作用により、水素含有ガスの水素から水素イオンと電子とが生成される。水素イオンは電解質層10の内部をカソードに向けて移動すると共に、電子は導電通路200、外部負荷201を流れてカソードに至る。また、カソード側供給凹部41に供給された空気などの酸素含有ガスは、カソード側ガス拡散層15の内部を拡散し、カソード触媒層14に至る。そして、アノードから移行してきた水素イオンと電子と酸素とが反応して水がカソードにおいて生成される。このようにして発電が行われる。
【0039】
ところで電解質層10が過剰乾燥すると、電解質層10の水素イオン伝導性が低下し、燃料電池の発電性能が充分に得られないおそれがある。そこで本実施例によれば前述したように、アノードセパレータ3のアノード側保水凹部33に水が供給されて保持される。同様に、カソードセパレータ4のカソード側保水凹部43に水が供給されて保持される。ここで本実施例によれば、アノードセパレータ3及びカソードセパレータ4は、水を透過可能な多数の保水細孔をもつ炭素系の多孔質体で形成されているため、電解質層10が過剰乾燥するようなときであっても、多数の保水細孔に保持された水によって電解質層10を保湿することができる。これにより固体高分子形の電解質層10の過剰乾燥が抑制され、電解質層10の過剰乾燥に起因する発電出力の低下が抑制される。
【0040】
また、カソードセパレータ4の保水細孔に水が含浸されると、保水細孔が埋められるため、保水細孔のシール性が高められ、酸素含有ガスに対するカソードセパレータ4のガスバリヤ性が確保されている。同様にアノードセパレータ3の保水細孔に水が含浸されると、その保水細孔が埋められるため、保水細孔のシール性が高められ、水素含有ガスに対するアノードセパレータ3のガスバリヤ性が確保されている。
【0041】
前述したように発電反応で水が生成される。電解質層10付近において水が余剰になったときには、水素含有ガスとアノード触媒層11との接触が制約されたり、酸素含有ガスとカソード触媒層14との接触が制約されたりし、発電効率が低下するおそれがある。即ち、フラティング現象が生じる。この点本実施例によれば、余剰の水が生成されたときであっても、アノードセパレータ3を構成する多孔質体の保水細孔、カソードセパレータ4を構成する多孔質体の保水細孔に、余剰の水を吸収させることもでき、発電性能の向上に一層有利である。特に、図1に示すように、アノードセパレータ3の凸部32がアノード側ガス拡散層12に密着していると共に、カソードセパレータ4の凸部42がカソード側ガス拡散層15に密着している。このため、電解質層10が乾燥するときには、凸部32,42を介して電解質層10を保湿する効果、電解質層10付近に余剰の水が生成するときには、電解質層10側の余剰の水を吸収し、フラティング現象を抑える効果を期待できる。従って、凸部32,42は水分通過路として機能することができる。
【0042】
更に本実施例に係るアノードセパレータ3及びカソードセパレータ4によれば、膨張黒鉛が基材として用いられている。膨張黒鉛は表面に微細な凹凸を有しており、機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の形状保持性を向上させることができる。故に、多孔質体の内部に形成されている保水細孔の形状を維持するのに有利となり、多孔質体の適切な保水性、保湿性を長期にわたって維持するのに有利となる。加えて、アノードセパレータ3にアノード側供給凹部31、アノード側保水凹部33を形成するときであっても、アノード側供給凹部31の流路形状、アノード側保水凹部33の流路形状を適切に維持するのに有利となる。同様に、カソードセパレータ4にカソード側供給凹部41,カソード側保水凹部43を形成するときであっても、カソード側供給凹部41の流路形状,カソード側保水凹部43の流路形状を適切に維持するのに有利となる。
【0043】
また、機械的絡み合い性が高い膨張黒鉛を基材とする多孔質体は、樹脂バインダが配合されていないにもかかわらず、形状保持性を有している。このため樹脂バインダが多孔質体の保水細孔を埋めることを避けることができる。従って、多孔質体の気孔率を確保するのに有利となり、保水性、保湿性を高めるのに有利となる。
【0044】
加えて膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、機械的絡み合い部分の増加により、導電接触点の増加が期待でき、高い導電性をもつアノードセパレータ3及びカソードセパレータ4を得るのに有利となる。従ってアノードセパレータ3では、アノード側で生成された電子を導電通路200に流すのに有利である。カソードセパレータ4では、アノード側から導電通路200を経てカソード側に移行した電子をカソード触媒層14に流すのに有利である。これにより発電反応を良好に行うことができる。また膨張黒鉛はアノードセパレータ3及びカソードセパレータ4内において膨張黒鉛間が保水細孔として機能する他に、膨張黒鉛内部の層間も保水細孔として機能することができ、保水細孔の容積の増加に有利である。
【0045】
更に本実施例によれば、膨張黒鉛を基材として含むと共に水が透過可能な多数の保水細孔を有する実質的に均等厚みの多孔質の素材シート8(図3参照)を用い、そして凸部7を有する加圧ロール5A,5Bのロール外周面50の間に素材シート8を挿入し、加圧ロール5A,5Bの凸部7を素材シート8に加圧して(図4参照)、素材シート8のうち互いに背向する表面の双方に凹部81,83を刻印で転写する工程を経て、アノードセパレータ3及びカソードセパレータ4は形成されている。このため加圧前の素材シート8の厚みと、加圧後の素材シート8の厚みとを予め設定すれば、素材シート8の厚み方向の圧縮度を任意に調整することができる。ひいては素材シート8から形成されたアノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の比重、気孔率を調整することができる。しかも加圧ロール5A,5Bにおける凸部7の位置を調整すれば、アノードセパレータ3の部位に応じて密度、気孔率を調整することができ、且つ、カソードセパレータ4の部位に応じて密度、気孔率を調整することができる。この結果、アノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の保水性、保湿性を部位に応じて調整することができ、電解質層10の目標とする保湿状態を得るのに有利である。具体的には、電解質層10のうち乾燥し易い部位では、アノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の保湿性を高め、あるいは、電解質層10のうち余剰の水が生成し易い部位では、アノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の保湿性を低めにすることができる。
【0046】
加圧ロール5A,5Bは回転により連続的に成形を行うことができる。しかも加圧ロール5A,5Bのロール外周面50間の隙間C1(図2参照)を調整すれば、素材シート8の加圧率を容易に調整できる。また上記したように本実施例によれば、アノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の保水性、保湿性の調整を加圧ロール5A,5Bの回転で行うため、アノードセパレータ3のアノード側供給凹部31及びアノード側保水凹部33を迅速に且つ連続的に形成することができる。同様に、カソードセパレータ4のカソード側供給凹部41及びカソード側保水凹部43を迅速に且つ連続的に形成することができる。よって生産性の向上を図ることができ、コスト低廉化に貢献できる。
【0047】
なお、第1実施例に係る多孔質体は、膨張黒鉛を基材として形成されており、カーボン繊維は配合されていないが、これに限らず、必要に応じて、膨張黒鉛及びカーボン繊維を含むことにしても良い。更に場合によっては、必要に応じて、少量の樹脂バインダなどのバインダを膨張黒鉛に混在させることもできる。
【0048】
(第2実施例)
図5及び図6は第2実施例を示す。第2実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。図5は、加圧前の素材シート8の断面図を模式的に示す。図5に示すように、加圧前の素材シート8では、幅方向の一端部8eの肉厚T3が相対的に厚く、幅方向の他端部8fの肉厚T4が相対的に薄くなるように厚みが傾斜状態に設定されている。これに対して加圧ロール5A,5Bのロール外周面50の間隔は均等とされている。このため加圧した後の素材シート8の密度を幅方向(矢印B1方向)において調整することができる。具体的には、加圧した後の素材シート8については、幅方向において一端部8eが密の状態に設定され、一端部8eの気孔率は低めに設定される。また、素材シート8の他端部8fが疎の状態に設定され、他端部8fの気孔率は相対的に高めに設定される。このように加圧前の素材シート8の厚みを部位に応じて変化させれば、加圧後の素材シート8の密度、気孔率を部位に応じて調整することができる。この結果、加圧後の素材シート8で形成されるアノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の部位に応じて、その密度、気孔率を調整することができる。
【0049】
なお上記した実施例では、素材シート8の幅方向の一端部8eの肉厚T3が相対的に厚く、幅方向の他端部8fの肉厚T4が相対的に薄くなるように厚みが傾斜状態に設定されているが、これに限らず、素材シート8の幅方向の中間部の肉厚が相対的に厚く、幅方向の端部の肉厚が相対的に薄くなるように設定さけていても良い。あるいは、素材シート8の幅方向の中間部の肉厚が相対的に薄く、幅方向の端部の肉厚が相対的に厚くなるように設定されていても良い。場合によっては、素材シート8の長さ方向の一端部の肉厚が相対的に厚く、長さ方向の他端部の肉厚が相対的に薄くなるように傾斜状態に設定されていても良い。
【0050】
(第3実施例)
図7は第3実施例を示す。第3実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。この場合においても、素材シート8の一方の表面には、アノード側供給凹部31またはカソード側供給凹部41となる供給凹部81が形成されている。また素材シート8の他方の表面には、アノード側保水凹部33またはカソード側保水凹部43となる保水凹部83が形成されている。図7に示すように、供給凹部81と保水凹部83とは素材シート8の幅方向(矢印B1方向)において同じ位相に形成されており、互いに背向して背中合わせとされている。このため、素材シート8のうち、供給凹部81と保水凹部83とで挟まれた薄肉部分8hでは、密度は高めに設定され、気孔率は低めに設定されている。また、供給凹部81と保水凹部83とで挟まれていない厚肉部分8kでは、密度は低めに設定され、気孔率は高めに設定されている。このように互いに背中合わせに配置されている供給凹部81及び保水凹部83の位置の位相を変化させれば、素材シート8の部位に応じて密度、気孔率を調整できる。ひいてはアノードセパレータ3の部位に応じて、カソードセパレータ4の部位に応じて、密度、気孔率を調整できる。なお、図7に示すように、カソード側保水凹部43またはアノード側保水凹部33となる保水凹部83の溝幅L1は、カソード側供給凹部41またはアノード側供給凹部31となる供給凹部81の溝幅L2と実質的に同じ程度とされている。なお本実施例によれば、供給凹部81と保水凹部83とは素材シート8の幅方向(矢印B1方向)において同じ位相に形成されているが、これに限らず、素材シート8の長さ方向において同じ位相に形成されていても良い。要するに、供給凹部81と保水凹部83とは、素材シート8において互いに背向して背中合わせとされている。
【0051】
(第4実施例)
図8は第4実施例を示す。第4実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。この場合においても、素材シート8の一方の表面には、アノード側供給凹部31またはカソード側供給凹部41となる供給凹部81が形成されている。また素材シート8の他方の表面には、アノード側保水凹部33またはカソード側保水凹部43となる保水凹部83が形成されている。カソード側保水凹部43またはアノード側保水凹部33となる保水凹部83の溝幅をL3とし、カソード側供給凹部41またはアノード側供給凹部31となる供給凹部81の溝幅をL4とすると、溝幅L3は溝幅L4よりも大きくされている。カソード側保水凹部43またはアノード側保水凹部33における保水性を高め、保湿性を高めるためである。
【0052】
本実施例によれば、図8に示すように、カソード側供給凹部41またはアノード側供給凹部31となる供給凹部81と、カソード側保水凹部43またはアノード側保水凹部33となる保水凹部83とは、図8に示すように、互い違いに形成されており、この結果、素材シート8の幅方向(矢印B1方向)において異なる位相に形成されている。このため、素材シート8のうち、供給凹部81が形成されているシート部分8mの肉厚をT3とし、保水凹部83が形成されているシート部分8nの肉厚をT4とすると、肉厚T3は肉厚T4と基本的には同じ程度とされている。換言すれば、素材シート8のうちシート部分8mの密度とシート部分8nの密度とは基本的には同じ程度とされている。更に換言すれば、素材シート8のうち、シート部分8mの気孔率とシート部分8nの気孔率とは基本的には同じ程度とされている。このように供給凹部81と保水凹部83との位置の位相を変えることにより、素材シート8における密度、気孔率の均一化に貢献できる。ひいてはアノードセパレータ3及びカソードセパレータ4において、密度、気孔率の均一化に貢献できる。
【0053】
(第5実施例)
図9は第5実施例を示す。第5実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。この場合においても、アノード側供給凹部31またはカソード側供給凹部41となる供給凹部81が素材シート8の一方の表面に形成されている。またアノード側保水凹部33またはカソード側保水凹部43となる保水凹部83が素材シート8の他方の表面に形成されている。図9に示すように、カソード側保水凹部43またはアノード側保水凹部33となる保水凹部83の溝幅をL5とし、カソード側供給凹部41またはアノード側供給凹部31となる供給凹部81の溝幅をL6とすると、溝幅L5は溝幅L6よりも大きく設定されている。カソード側保水凹部43またはアノード側保水凹部33における保水性を高め、保湿性を高めるためである。
【0054】
本実施例によれば、図9に示すように、供給凹部81と保水凹部83とは互いに背中合わせに背向している。このため、素材シート8のうち供給凹部81と保水凹部83とで挟まれた薄肉部分8pは、圧縮度が相対的に高く、密度が相対的に高めで気孔率が相対的に低めに設定されている。また、供給凹部81と保水凹部83とで挟まれていない厚肉部分8rは、圧縮度が相対的に低く、その密度は相対的に低めで気孔率が高めに設定されている。このように素材シート8の部位に応じて密度、気孔率を調整できる。ひいてはアノードセパレータ3の部位に応じて、カソードセパレータ4の部位に応じて、密度、気孔率を調整できる。
【0055】
(第6実施例)
図10及び図11は第6実施例を示す。第6実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。この場合、凸部7を有する昇降方式のプレス成形型55を加圧体として用いる。プレス成形型55は、凸部7を有する上型56と、凸部7を有する下型57とで形成されている。型開き状態の上型56及び下型57の間に素材シート8に配置し、上型56を矢印Y1方向に相対的に下降させることより上型56及び下型57を互いに接近させ、型締めする。これにより上型56及び下型57の凸部7を素材シート8に加圧し、素材シート8の互いに背向する表面に、アノード側供給凹部31またはカソード側供給凹部41となる供給凹部81を転写する。同様に、素材シート8の互いに背向する表面に、アノード側保水凹部33またはカソード側保水凹部43となる保水凹部83を転写する。上型56の凸部7の頂面70は、供給凹部81の底面81bを刻印で転写する。下型57の凸部7の頂面70は保水凹部83の底面83bを刻印で転写する。なおプレス成形型55は広い面積で加圧するため、素材シート8に対する拘束性が高い。
【0056】
(第7実施例)
図12は第7施例を示す。第7実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。この場合、素材シート8は、膨張黒鉛とカーボン繊維とを主要成分として含む混合材料で形成されている。膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、膨張黒鉛とカーボン繊維との機械的絡み合い性が高められており、カーボン繊維の直線線が強い場合であっても、導電接触点の増加に貢献でき、導電性を向上させ得る。
【0057】
(第8実施例)
図13及び図14は第8実施例を示す。第8実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。この場合、膨張黒鉛を含むと共に消失可能な微小体である消失可能物質89を含む素材シート8を準備する。消失可能物質89の配合割合は、多孔質体において要請される気孔率に応じて選択できる。例えば、素材シート8を100%としたとき、消失可能物質89の配合割合としては、体積比で、0.2〜80%を例示できる。
【0058】
そして図14に示すように、複数の凸部7を有する加圧ロール5A,5Bの外周面の間に素材シート8を挿入し、加圧ロール5A,5Bの凸部7を素材シート8に加圧して、素材シート8の互いに背向する表面に凹部81,83を刻印で転写する。加圧が終了した後に、消失可能物質89を蒸散させ得る所定温度域に素材シート8を加熱し、素材シート8の内部に含まれている消失可能物質89を蒸散させて素材シート8から消失させる。消失可能物質89の空隙跡が保水細孔となる。これにより水が透過可能な多数の保水細孔を素材シート8の内部に積極的に形成する。更に必要に応じて、仕上げロールで素材シート8の形状を整えることができる。上記した消失可能な消失可能物質89としては、パルプ等の紙系物質、熱可塑性樹脂などの樹脂系物質、アントラセン、フェナントレン、ナフタレン、ドライアイスなど昇華系物質等のうちの少なくとも1種を例示できる。消失可能物質89のサイズ、形状、配合量を調整することにより、保水細孔のサイズ、形状、気孔率を調整できる。消失可能物質89の形状としては粉末状でも良いし、繊維形状でも良い。消失可能物質89がパルプなどのように繊維形状である場合には、長く延びる保水細孔をアノードセパレータ3及びカソードセパレータ4の内部に形成するのに有利であり、水透過性を確保するのに有利となる。なお消失可能物質89の種類によっては、消失可能物質89を蒸散させる加熱を省いても良い。
【0059】
(第9実施例)
図15は第9実施例を示す。第9実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。この場合、アノードセパレータ3の外側、カソードセパレータ4の外側に、水及びガスの遮断性を高めるバリヤ部材90が配置されている。この結果、隣設するセル間におけるガス遮断性がバリヤ部材90により高められている。バリヤ部材90の材質はガスバリヤ性の他に導電性を有することが好ましく、その材質としては金属材料または緻密な炭素系材料を例示できる。
【0060】
(第10実施例)
図16は第10実施例を示す。第10実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。以下、第1実施例と異なる部分を中心として説明する。この場合、固体高分子電解質形燃料電池は、固体高分子形の電解質層10と、固体高分子形の電解質層10の厚み方向の片側に設けられたアノード触媒層11と、固体高分子形の電解質層10の厚み方向の他の片側に設けられたカソード触媒層14とを有する。燃料含有物質を供給するアノードセパレータ3は膜構造体のアノード触媒層11に隣接されている。酸化剤含有物質を供給するカソードセパレータ4は、カソード触媒層14に隣接されている。
【0061】
その他、本発明は上記した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
【0062】
【発明の効果】
(1)第1発明に係る固体高分子電解質形燃料電池、第2発明に係るセパレータによれば、アノードセパレータ及びカソードセパレータのうちの少なくとも一方は、膨張黒鉛を含むと共に、水を透過可能な多数の保水細孔をもつ多孔質体で形成されている。このため多孔質体の保水細孔に水を保持させることができ、固体高分子形の電解質層に対して保湿機能を発揮することができる。これにより電解質層の過剰乾燥が抑制され、過剰乾燥に起因する発電出力の低下が抑制され、発電性能を向上させるのに有利となる。更に電解質層付近において水が余剰になったときには、余剰の水を多孔質体の保水細孔に吸収させることも期待できる。このため余剰の水に起因するフラティング現象が抑制され、発電性能を向上させるのに一層有利となる。
【0063】
更にアノードセパレータやカソードセパレータを構成する多孔質体は、膨張黒鉛で形成されている。膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の形状保持性を確保できる。故に、多孔質体の内部に形成されている保水細孔の形状を長期にわたって維持するのに有利となり、多孔質体の適切な保水性、保湿性を長期にわたって維持するのに有利となる。更に、アノードセパレータにアノード供給凹部、アノード保水凹部を形成するときであっても、アノード供給凹部の凹形状、アノード保水凹部の凹形状を適切に維持するのに有利となる。またカソードセパレータにカソード供給凹部、カソード保水凹部を形成するときであっても、カソード供給凹部の凹形状、カソード保水凹部の凹形状を適切に維持するのに有利となる。
【0064】
前述したように膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の強度、形状保持性が確保される。故に多孔質体に膨張黒鉛と共に配合する樹脂バインダ等のバインダを廃止したり、減少したりできる。よって樹脂バインダ等のバインダが多孔質体の保水細孔を埋めることを抑制でき、多孔質体の気孔率を確保するのに有利である。故に、アノードセパレータやカソードセパレータを構成する多孔質体の保水性、保湿性の向上に貢献でき、発電性能の向上に有利である。また膨張黒鉛は膨張黒鉛間が保水細孔として機能する他に、膨張黒鉛内部の層間も保水細孔として機能することができ、保水細孔の容積の増加に一層有利である。
【0065】
(2)第3発明に係るセパレータの製造方法によれば、上記した、保水性、保湿性や余剰の水を吸収するといった効果を有するセパレータを提供することができる。また、凸部を有する加圧体が素材シートを加圧する加圧量を調整すれば、素材シートの密度、気孔率を調整することができ、ひいてはアノードセパレータやカソードセパレータを構成する多孔質体の保水性、保湿性、余剰水の吸収性を調整することができる。更に加圧体の凸部を転写して凹部を形成するため、燃料含有物質や酸化材含有物質を流したり、水を保水させるため凹部を容易に形成できる。またセパレータに含まれている膨張黒鉛は膨張黒鉛間が保水細孔として機能する他に、膨張黒鉛内部の層間も保水細孔として機能することができ、保水細孔の容積の増加に一層有利である。
【0066】
第3発明に係るセパレータの製造方法によれば、素材シートを形成している膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、素材シートの強度、形状保持性が確保される。故に素材シートに膨張黒鉛と共に配合する樹脂バインダ等のバインダを廃止したり、減少したりできる。よって樹脂バインダ等のバインダが多孔質体の保水細孔を埋めることを抑制できる。故に、素材シートで形成されるアノードセパレータやカソードセパレータにおける気孔率を確保するのに有利であり、保水性、保湿性の向上に貢献でき、発電性能の向上に有利である。またセパレータに含まれている膨張黒鉛は膨張黒鉛間が保水細孔として機能する他に、膨張黒鉛内部の層間も保水細孔として機能することができ、保水細孔の容積の増加に一層有利である。
【0067】
(3)第4発明に係るセパレータの製造方法によれば、素材シートの内部に含まれている消失可能物質を素材シートから消失させる。消失可能物質の空隙跡が保水細孔となるため、水が透過可能な保水性、保湿性、余剰水の吸収性を有するカソードセパレータまたはアノードセパレータを形成することができる。消失可能物質のサイズ、形状、配合量を調整すれば、保水細孔のサイズ、形状、多孔質体の密度、気孔率を任意に調整することができ、カソードセパレータまたはアノードセパレータの保水性、保湿性、余剰水の吸収性を調整できる。また、膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、多孔質体の保水細孔の形状を維持するのに有利となり、長期にわたって適切な保水性、保湿性、余剰水の吸収性を維持するのに有利となる。
【0068】
第4発明に係るセパレータの製造方法によれば、素材シートを形成している膨張黒鉛は機械的絡み合い性が高いため、素材シートの強度、形状保持性が確保される。故に素材シートに膨張黒鉛と共に配合する樹脂バインダ等のバインダを廃止したり、減少したりできる。よって樹脂バインダ等のバインダが多孔質体の保水細孔を埋めることを抑制できる。よって素材シートで形成されるアノードセパレータやカソードセパレータにおける気孔率を確保するのに有利であり、保水性、保湿性の向上に貢献でき、発電性能の向上に有利である。膨張黒鉛は膨張黒鉛間が保水細孔として機能する他に、膨張黒鉛内部の層間も保水細孔として機能することができ、保水細孔の容積の増加に一層有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体高分子電解質形の燃料電池の概念図である。
【図2】素材シートを加圧ロールで加圧する過程を模式的に示す概念図である。
【図3】加圧前の素材シートの断面図である。
【図4】加圧ロールで加圧した後の素材シートの断面図である。
【図5】第2実施例に係り、加圧前の素材シートの断面図である。
【図6】第2実施例に係り、加圧後の素材シートの断面図である。
【図7】第3実施例に係り、加圧後の素材シートの断面図である。
【図8】第4実施例に係り、加圧後の素材シートの断面図である。
【図9】第5実施例に係り、加圧後の素材シートの断面図である。
【図10】第6実施例に係り、加圧前の素材シートの断面図である。
【図11】第6実施例に係り、加圧後の素材シートの断面図である。
【図12】第7実施例に係り、加圧後の素材シートの断面図である。
【図13】第8実施例に係り、加圧前の素材シートの断面図である。
【図14】第8実施例に係り、加圧後の素材シートの断面図である。
【図15】第9実施例に係り、固体高分子電解質形の燃料電池の概念図である。
【図16】第10実施例に係り、固体高分子電解質形の燃料電池の概念図である。
【符号の説明】
図中、10は電解質層、11はアノード触媒層、14はカソード触媒層、12はアノード側ガス拡散層、15はカソード側ガス拡散層、3はアノードセパレータ、31はアノード側供給凹部、33はアノード側保水凹部、4はカソードセパレータ、41はカソード側供給凹部、43はカソード側保水凹部、5は加圧ロール(加圧体)、7は凸部、70は頂面、55はプレス成形型(加圧体)、8は素材シート、89は消失可能物質を示す。
Claims (8)
- 固体高分子形の電解質層と、前記電解質層の片側に設けられたアノード触媒層と、前記電解質層の他の片側に設けられたカソード触媒層と、前記アノード触媒層の側に燃料含有物質を供給する凹部をもつアノードセパレータと、前記カソード触媒層の側に酸化剤含有物質を供給する凹部をもつカソードセパレータとを具備する固体高分子電解質形燃料電池において、
前記アノードセパレータ及び前記カソードセパレータのうちの少なくとも一方は、膨張黒鉛を含むと共に、水を透過可能な多数の保水細孔をもつ多孔質体で形成されていることを特徴とする固体高分子電解質形燃料電池。 - 請求項1において、前記アノードセパレータと前記アノード触媒層との間に設けられたガス透過性をもつアノード側ガス拡散層と、前記カソードセパレータと前記カソード触媒層との間に設けられたガス透過性をもつカソード側ガス拡散層とを有することを特徴とする固体高分子電解質形燃料電池。
- 請求項1または請求項2において、前記アノードセパレータは、前記アノードセパレータの厚み方向において前記アノード触媒層に近い側に形成され且つ燃料含有物質が供給されるアノード側供給凹部と、前記アノードセパレータの厚み方向において前記アノード触媒層に背向する側に形成され且つ水が供給されるアノード側保水凹部とを有し、
前記カソードセパレータは、前記カソードセパレータの厚み方向において前記カソード触媒層に近い側に形成され且つ酸化剤含有物質が供給されるカソード側供給凹部と、前記カソードセパレータの厚み方向において前記カソード触媒層に背向する側に形成され且つ水が供給されるカソード側保水凹部とを有することを特徴とする固体高分子電解質形燃料電池。 - 請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項において、前記多孔質体は、その厚み方向に加圧体で加圧成形されていることを特徴とする固体高分子電解質形燃料電池。
- 固体高分子電解質形燃料電池に組み込まれるアノードセパレータ及びカソードセパレータのうちの少なくとも一方であって、膨張黒鉛を含むと共に、水を透過可能な多数の保水細孔をもつ多孔質体で形成されていることを特徴とする固体高分子電解質形燃料電池用セパレータ。
- 膨張黒鉛を含むと共に水が透過可能な多数の保水細孔を有する多孔質の素材シートを準備する工程と、
凸部を有する加圧体を前記素材シートに加圧することにより、前記素材シートの互いに背向する表面のうちの少なくとも一方に凹部を転写する工程とを順に実施することを特徴とする固体高分子電解質形燃料電池用セパレータの製造方法。 - 請求項6において、加圧する前の前記素材シートは厚みが部位によって異なり、加圧する前の前記素材シートのうち、気孔率を相対的に高めとするシート部分では、加圧する前のシート部分の厚みが相対的に薄く設定されているか、あるいは、目付量が相対的に小さく設定されており、且つ、
気孔率を相対的に低めとするシート部分では、加圧する前のシート部分の厚みが相対的に厚く設定されているか、あるいは、目付量が相対的に大きく設定されていることを特徴とする固体高分子電解質形燃料電池用セパレータの製造方法。 - 膨張黒鉛を含むと共に消失可能な消失可能物質を含む素材シートを準備する工程と、
前記素材シートに含まれている前記消失可能物質を前記素材シートから消失させることにより、水が透過可能な多数の保水細孔を前記素材シートに形成する工程とを順に実施することを特徴とする固体高分子電解質形燃料電池用セパレータの製造方法。
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