JP2004071010A - 光ピックアップ、光記録媒体及び光情報処理装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】この発明は、光記録媒体107に光ビームを照射する照明光学系101〜106と、光記録媒体107からの反射光を検知する検出光学系108〜110を備え、この検出光学系は、遠視野における光記録媒体107からの反射0次光と反射±1次回折光とで形成される2つの干渉領域を、光記録媒体107の回転方向にそれぞれ4分割に分離して受光するものである。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光ピックアップ、光記録媒体及び光情報処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
映像情報、音声情報、またはコンピュータ上のデータを保存する手段として、記録容量0.65GBのCD(Compact Disk)、記録容量4.7GBのDVD(Digital Versatile Disc/Digital Video Disc)などの光記録媒体が普及しつつある。そして、近年、さらなる光記録媒体の記録密度の向上および大容量化の要求が強くなっている。このような光記録媒体の記録密度を上げる手段として、光記録媒体に対して情報の書き込みまたは再生を行う光ピックアップにおいて、対物レンズの開口数(NA)を大きくすること、或いは、光源の波長を短くすることにより、対物レンズによって集光されて光記録媒体上に形成されるビームスポットを小径化する方法が有効である。
【0003】
しかしながら、対物レンズの開口数をより大きくし、或いは光源の波長をより短くすると、光記録媒体のチルト(傾き)によって発生するコマ収差が大きくなる問題がある。コマ収差が発生すると、光記録媒体の情報記録面上に形成されるビームスポットが劣化するため、正常な記録再生動作が行えなくなる。光記録媒体のチルトによって発生するコマ収差W31は、一般的に以下の式で与えられる。
【0004】
W31=((n2−1)/(2n3))×(d×NA3×θ/λ)
ここに、nは光記録媒体の透明基板の屈折率、dは透明基板の厚み、NAは対物レンズの開口数、λは光源の波長、θは光記録媒体のチルト量を意味する。この式から、短波長、高NAほどコマ収差が大きくなることがわかる。
【0005】
DVD世代では、このようなコマ収差に伴うスポット劣化を抑制するために、光記録媒体のチルト量を定期的に検出して補正する手段が光情報処理装置に具備されている。
図35はチルト検出手段の従来例を示す。このチルト検出手段は、光ピックアップ31に設けられ、チルトセンサ32と、差動アンプ33とを備えており、チルトセンサ32は、発光源34と、受光素子35a,35bとを備えている(例えば実開昭60−127630号公報参照)。発光源34から光記録媒体30に光が照射され、その反射光が受光素子35a,35bで受光される。差動アンプ33は、受光素子35a,35bからの出力信号の差を演算する。
【0006】
ここで、光記録媒体30のチルトが0°のとき、すなわち光ピックアップ31の対物レンズの光軸と光記録媒体30とが垂直であるとき、光記録媒体30からの反射光が受光素子35a,35bの境界に到達するようになっているので、光記録媒体30のチルトが発生した場合には光記録媒体30からの反射光が受光素子35a,35bのいずれか一方に片寄る。したがって、受光素子35a,35bの出力信号の差を演算する差動アンプ33の出力として、光記録媒体30のチルトの方向および量に応じた電気信号を得ることができる。
【0007】
しかし、上記従来のチルト検出手段では、光ピックアップ31から光記録媒体30の情報記録面上に形成されるスポットの位置とチルトセンサ32の測定位置とが異なるため、検出精度に限界があるとともに、リアルタイムの検出が行えないという問題があった。このような課題を解決する手段としては、特許第3161891号公報、特開2001−297459号公報、特開2001−273660号公報に挙げられているような光記録媒体からの反射光より光記録媒体のチルトの影響を検知するものが知られている。
【0008】
特許第3161891号公報に記載されているチルト検出装置では、図36に示すように、図示しないレーザ光源からのレーザビームが対物レンズ2に入射して光ディスク媒体1の情報トラック1a上に集光され、その反射光は対物レンズ2を経て遠視野領域において受光レンズ3及び分波素子4を通過する。分波素子4の微小プリズム4a、4bの形成されている領域を通過した光は受光素子5a、5bに入射し、分波素子4の他の領域を通過した光は受光素子6a、6bに入射する。受光素子5a、6bの出力信号は加算アンプ7で加算され、受光素子5b、6aの出力信号は加算アンプ8で加算される。差動アンプ9は加算アンプ7の出力信号から加算アンプ8の出力信号を引いてその結果を光ディスク媒体1のラジアル方向チルト量に対応するラジアル方向チルト検出信号として出力する。
【0009】
さらに、レーザビームが照明手段から対物レンズに入射して光ディスク媒体1上の情報トラックに集光され、その反射光は対物レンズを介して、光ディスク媒体1上のタンジェンシャル方向に互いに隣接して配置されている2つの受光素子に入射する。この2つの受光素子の出力信号の差動演算が差動アンプで実行され、この差動アンプの出力信号の極大値と直小値が極大値検出回路と極小値検出回路でそれぞれサンプルホールドされて極大値検出回路の出力信号と極小値検出回路の出力信号との差が差動アンプで演算されることで、光ディスク媒体1のタンジェンシャル方向のチルト量に対応するタンジェンシャル方向チルト検出信号が得られる。
【0010】
特開2001−297459号公報には、光源と、前記光源からの出射光を光記録媒体上に集光する対物レンズと、前記光記録媒体からの反射光を受光する光検出器とを備え、前記光検出器は、前記反射光の前記光記録媒体の接線方向における一端側の領域であって前記光記録媒体の半径方向における両端部、前記反射光の前記光記録媒体の接線方向における他端側の領域であって前記光記録媒体の半径方向における中央部、前記反射光の前記光記録媒体の接線方向における一端側の領域であって前記光記録媒体の半径方向における中央部及び前期反射光の前記光記録媒体の接線方向における他端側の領域であって前記光記録媒体の半径方向における両端部の各々を個別に受光する受光部を有し、光記録媒体の接線方向のチルトを検出する光ヘッド装置が記載されている。
【0011】
特開2001−273660号公報に記載されている第1実施形態によれば、光ピックアップ内において光照射手段からの光がコリメータレンズで平行光とされてビームスプリッタで反射された後に対物レンズにより集光され、光ディスクのトラック上に光スポットが投影される。この光ディスクからの反射光は、再び対物レンズを経由して上記ビームスプリッタを透過し、受光レンズにより受光手段に結像される。
【0012】
図37に示すように、この受光手段19の受光面は、光ディスクの半径方向に2分割され、光ディスク上のトラックの接線方向に3分割されて6つの領域19A1〜19A3、19B1〜19B3に分割されている。受光手段19の各領域19A1〜19A3、19B1〜19B3からの光量信号A1〜A3、B1〜B3は演算手段20に入力され、光ディスク上のトラックの接線方向に配列されている領域19A1〜19A3のうち両端部の領域19A1、19A3からの光量信号A1、A3が加算手段11で加算され、除算手段13にて加算手段11の出力信号が中央部の領域19A2からの光量信号A2にて除算される。
【0013】
同様に、光ディスク上のトラックの接線方向に配列されている領域19B1〜19B3のうち両端部の領域19B1、19B3からの光量信号B1、B3が加算手段10で加算され、除算手段12にて加算手段10の出力信号が中央部の領域19B2からの光量信号B2にて除算される。減算手段14は、除算手段13の出力信号から除算手段12の出力信号を減算し、その減算結果を光ディスクの半径方向のチルト量を示すチルト信号として出力する。
【0014】
特開2001−273660号公報に記載されている第2実施形態によれば、上記第1実施形態において、受光手段19の受光面は、光ディスクのトラックの接線方向に2分割され、光ディスク上の半径方向に3分割されて6つの領域19A1〜19A3、19B1〜19B3に分割されている。演算手段20は、受光手段19の各領域19A1〜19A3、19B1〜19B3からの光量信号A1〜A3、B1〜B3を上記第1実施形態と同様に演算し、光ディスクのトラックの接線方向のチルト量を示すチルト信号を出力する。
【0015】
特開2001−273660号公報に記載されている第3実施形態によれば、図38に示すような碁盤目状の16分割の受光素子15を用い、この受光素子15の各領域からの出力信号を演算手段で演算することにより、ラジアル方向とタンジェンシャル方向の両方向のチルト検出を行う。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
さて、近年、上記DVD世代よりも、さらに大容量化を図るために青色波長帯域の光源を用いたシステムの提案がある。しかしながら、青色波長帯域の光源を用いる青色系光ピックアップでは、DVD世代に比べてコマ収差の影響が波長の比だけ、すなわち約1.6倍大きくなり、高精度の光記録媒体チルト検出および補正が必要となる。
【0017】
これに伴い、DVD系光ピックアップでは、光記録媒体のラジアル方向(半径方向)のみのチルト補正で済んだが、青色系光ピックアップでは、光記録媒体のジッタ方向(回転方向)のチルト補正が必要となる。また、DVD系光ピックアップでは、定期的な光記録媒体のチルト補正で済んだが、青色系光ピックアップでは、リアルタイムな光記録媒体のチルト補正が必要となる。よって、ラジアル方向とジッタ方向の2方向の光記録媒体のチルト検出が必要となり、かつ応答性のよい高精度の光記録媒体のチルト検出が必要となる。
【0018】
さて、このような青色系光ピックアップにおいて、上述した特許第3161891号公報、特開2001−297459号公報、特開2001−273660号公報に挙げられている従来例の適用を検討する。特許第3161891号公報記載のものは、光ディスク媒体のラジアル方向のチルト検出を行い、光ディスク媒体のタンジェンシャル方向のチルト検出を反射光量変化の極大値検出で行う構成であるため、タンジェンシャル方向チルトのリアルタイム検出は行えないという問題がある。
【0019】
特開2001−297459号公報記載のものは、光記録媒体の接線方向のチルトを検出するものであり、光記録媒体のラジアル方向のチルト検出が行えないという問題がある。
特開2001−273660公報記載の第1実施形態あるいは第2実施形態では、光ディスクのラジアル方向、タンジェンシャル方向のいずれかのチルトの検出は行えるが、両方向のチルトの検出は行えない。また、特開2001−273660公報記載の第3実施形態では、図38に示すような碁盤目状の、16分割の受光素子15を用いることにより、ラジアル方向とタンジェンシャル方向の両方向のチルト検出を行うものであるが、受光素子15の各領域からの16個もの出力信号を演算することは演算手段の煩雑化、応答性の低下などの問題がある。また、受光セグメント数は受光素子のパッケージ構成の制約条件となるため、受光セグメント数を少なくする必要がある。具体的には、
http://www.sharp.co.jp/products/device/ctlg/laser/holo.pdf
に紹介されている受光素子などにあるように、生産性のある受光素子としては10セグメント程度である。
【0020】
また、特開2001−273660号公報記載のものでは、チルト信号が除算手段12、13を用いて生成されているが、除算手段を用いると、回路規模が大きくなるために応答性の低下が問題になる。
また、特許第3161891号公報、特開2001−297459号公報、特開2001−273660号公報記載のものでは、いずれも、チルト検出はトラッキングがされているときにのみ可能となる。よって、トラッキング誤差信号のS/Nが確保できない(トラッキング誤差信号の振幅が小さい)大きなチルトが発生した場合、チルト検出は行えないという問題がある。
【0021】
さらに、高精度のチルト検出/補正が必要とされる、青色波長域の光を用いる青色系光ピックアップと、赤色波長域の光を用いるDVD系光ピックアップ、あるいは赤外波長域の光を用いるCD系光ピックアップを搭載した光情報処理装置、所謂コンボドライブでは、青色波長域の光を用いる場合の青色用光記録媒体のチルト検出と合わせて、赤色波長域の光、赤色波長域の光を用いる場合のDVD系光記録媒体、CD系光記録媒体のチルト検出も必要となる。DVD系光記録媒体のチルト検出も、青色波長域の光を用いる場合と同様に行う方法もあるが、DVD系光記録媒体、CD系光記録媒体のチルト検出は、光記録媒体のラジアル方向チルト検出のみで、かつ定期的なチルト検出のみでよいため、青色用光記録媒体で使用するチルト検出はオーバースペックとなり、構成の煩雑化、コストアップとなってしまう。
【0022】
本発明の目的は、光記録媒体のラジアル方向/タンジェンシャル方向の2方向のチルト検出をリアルタイムで実現することができて光記録媒体の情報記録面上に良好なスポットを形成することが可能となり、受光素子のセグメント数の低下を図ることができる光ピックアップ及び光記録媒体を提供することにある。
本発明の他の目的は、トラッキングが出来ないような大きな光記録媒体のチルトが発生した場合でも該チルトを補正して正常な記録再生動作が行えるようにすることができて光記録媒体の情報記録面上に良好なスポットを形成することが可能となる光ピックアップ及び光情報処理装置を提供することにある。
【0023】
本発明の他の目的は、コストアップを招くことなく、青色波長域の光を用いる場合の光記録媒体のチルト検出/赤色波長域の光を用いる場合の光記録媒体のチルト検出、あるいは、青色波長域の光を用いる場合の光記録媒体のチルト検出/赤色波長域の光を用いる場合の光記録媒体のチルト検出/赤色波長域の光を用いる場合の光記録媒体のチルト検出が可能となって光記録媒体の情報記録面上に良好なスポットを形成することが可能となる光情報処理装置を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行う光ピックアップにおいて、前記光記録媒体に光ビームを照射する照明光学系と、前記光記録媒体からの反射光を検出する検出光学系を備え、この検出光学系は、遠視野における前記光記録媒体からの反射0次光と反射±1次回折光とで形成される2つの干渉領域を、前記光記録媒体の回転方向にそれぞれ4つに分離して受光するものである。
【0025】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の光ピックアップにおいて、前記検出光学系は、遠視野における前記光記録媒体からの反射0次光と反射±1次回折光とで形成される2つの干渉領域を、前記光記録媒体の回転方向にそれぞれ4つに分離して受光する複数の受光領域を有する受光素子を具備するものである。
【0026】
請求項3に係る発明は、請求項1記載の光ピックアップにおいて、前記検出光学系は、遠視野における前記光記録媒体からの反射0次光と反射±1次回折光とで形成される2つの干渉領域を、前記光記録媒体の回転方向にそれぞれ4つに分離する回折素子を具備するものである。
【0027】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の光ピックアップにおいて、前記光記録媒体の半径方向チルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化を補正する補正手段を備え、前記光記録媒体の半径方向内側の干渉領域を4つに分離して受光することで得た受光信号を前記光記録媒体の回転方向順にA、B、C、Dとし、前記光記録媒体の半径方向外側の干渉領域を4つに分離して受光することで得た受光信号を前記光記録媒体の回転方向順にE、F、G、Hとしたとき、前記補正手段は、前記受光信号A〜Hの演算結果|(A+D+F+G)−(B+C+E+H)|に基づき、前記光記録媒体の半径方向チルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化を補正するものである。
【0028】
請求項5に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の光ピックアップにおいて、前記光記録媒体の回転方向のチルトによる前記光記録媒体上のスポット劣化を補正する補正手段を備え、前記光記録媒体の半径方向内側の干渉領域を4つに分離して受光することで得た受光信号を前記光記録媒体の回転方向順にA、B、C、Dとし、前記光記録媒体の半径方向外側の干渉領域を4つに分離して受光することで得た受光信号を前記光記録媒体の回転方向順にE、F、G、Hとしたとき、前記補正手段は、前記受光信号A〜Hの演算結果|(A+B+E+F)−(C+D+G+H)|に基づき、前記光記録媒体の回転方向のチルトによる前記光記録媒体上のスポット劣化を補正するものである。
【0029】
請求項6に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の光ピックアップにおいて、前記光記録媒体の半径方向のチルトおよび回転方向のチルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化を補正する補正手段を備え、前記光記録媒体の半径方向内側の干渉領域を4分割に分離して受光することで得た受光信号を前記光記録媒体の回転方向順にA、B、C、Dとし、前記光記録媒体の半径方向外側の干渉領域を4分割に分離して受光することで得た受光信号を前記光記録媒体の回転方向順にE、F、G、Hとしたとき、前記補正手段は、前記受光信号A〜Hの演算結果|(A+F+G+D)−(E+B+C+H)|に基づき前記光記録媒体の半径方向のチルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化を補正し、前記受光信号A〜Hの演算結果|(A+B+E+F)−(C+D+G+H)|に基づき前記光記録媒体の回転方向のチルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化を補正するものである。
【0030】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか1つに記載の光ピックアップにおいて、遠視野における前記光記録媒体からの反射0次光と反射±1次回折光とで形成される2つの干渉領域を、前記光記録媒体の回転方向に4つにそれぞれ分離して受光する受光素子の各受光領域は前記受光素子上の戻り光の直径を1としたときに前記半径方向の長さを0.2〜0.35の範囲としたものである。
【0031】
請求項8に係る発明は、請求項1〜7のいずれか1つに記載の光ピックアップにおいて、遠視野における前記光記録媒体からの反射0次光と反射±1次回折光とで形成される2つの干渉領域を、前記光記録媒体の回転方向に4つにそれぞれ分離して受光する受光素子の各受光領域は前記受光素子上の戻り光の直径を1としたときに前記回転方向の長さを0.3〜0.4の範囲としたものである。
【0032】
請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれか1つに記載の光ピックアップにおいて、前記照明光学系および前記検出光学系の外側に、前記光記録媒体のチルト量を検知するチルト検出装置を具備するものである。
【0033】
請求項10に係る発明は、請求項9記載の光ピックアップにおいて、前記チルト検出装置の出力信号に基づいて前記光記録媒体のチルトを補正し、このチルト補正後に、請求項4〜6のいずれか1つに記載の演算結果に基づき前記光記録媒体のチルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化を補正するものである。
【0034】
請求項11に係る発明は、請求項1〜10のいずれか1つに記載の光ピックアップを用いて情報の記録、再生、消去の1以上を行う光記録媒体であって、使用波長が405nm±10nmの範囲で、光照射側基板厚dblue、開口数:NAblueが次の式(A):
dblue<4.3×NAblue 2−8.0×NAblue+4.0 …(A)
を満足するものである。
【0035】
請求項12に係る発明は、使用波長が405nm±10nmの範囲で、光照射側基板厚dblue、開口数:NAblueが次の式(A):
dblue<4.3×NAblue 2−8.0×NAblue+4.0 …(A)
を満足する光ピックフップを用いて第1の光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行い、使用波長が660nm±10nmの範囲で開口数:0.60〜0.65である光ピックアップを用いて第2の光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行う光情報処理装置において、前記光ピックアップは、前記第1の光記録媒体については、請求項4〜6のいずれか1つに記載の前記光記録媒体のチルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化の補正を行い、前記第2の光記録媒体については、照明光学系および検出光学系の外側に配置されたチルト検出装置の出力値に基づいて前記光記録媒体のチルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化を補正するものである。
【0036】
請求項13に係る発明は、使用波長が405nm±10nmの範囲で、光照射側基板厚dblue、開口数:NAblueが次の式(A):
dblue<4.3×NAblue 2−8.0×NAblue+4.0 …(A)
を満足する光ピックフップを用いて第1の光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行い、使用波長が660nm±10nmの範囲で開口数:0.60〜0.65である光ピックアップを用いて第2の光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行い、使用波長が780nm±10nmの範囲で開口数:0.45〜0.50である光ピックアップを用いて第3の光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行う光情報処理装置において、前記光ピックアップは、前記第1の光記録媒体については請求項4〜6のいずれか1つに記載の前記光記録媒体のチルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化の補正を行い、前記第2の光記録媒体及び前記第3の光記録媒体については照明光学系および検出光学系の外側に配置されたチルト検出装置の出力値に基づいて前記光記録媒体のチルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化の補正を行うものである。
【0037】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施形態1の光ピックアップを示す。この光ピックアップは、使用波長が405nm±10nmの範囲で、光記録媒体の光照射側基板厚dblue、開口数:NAblueが次の式(A):
dblue<4.3×NAblue 2−8.0×NAblue+4.0 …(A)
を満足する光ピックアップであり、例えば使用波長405nm、NA0.65、光照射側基板厚0.6mmの青色系光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行う光ピックアップである。なお、この青色系光記録媒体の光照射側基板厚は0.3mm〜0.6mmの範囲内で任意に設定することができる。この光ピックアップは、青色波長域の光を発する光源としての半導体レーザ101と、コリメートレンズ102と、偏光ビームスプリッタ103と、プリズム104と、1/4波長板105と、対物レンズ106と、検出レンズ108と、円筒レンズ109と、受光手段としての受光素子110とを有する。
【0038】
半導体レーザ101から出射された直線偏光の波長407nmの発散光は、コリメートレンズ102で略平行光とされて偏光ビームスプリッタ103を透過し、プリズム104で光路が90度偏向され、1/4波長板105を通過して円偏光とされ、対物レンズ106に入射して光記録媒体107上に微小スポットとして集光される。このスポットにより、光記録媒体107は情報の再生、記録、消去が選択的に行われる。光記録媒体107は図示しない駆動部により回転駆動され、かつ、本実施形態1の光ピックアップは図示しないシーク手段により光記録媒体107の半径方向に移送される。
【0039】
光記録媒体107で反射された光は、往路とは反対回りの円偏光となり、対物レンズ106により再び略平行光とされ、1/4波長板105を通過して往路と直交した直線偏光になり、プリズム104及び偏光ビームスプリッタ103で反射され、検出レンズ108及び円筒レンズ109で集光されて受光素子110に至る。
【0040】
次に、本実施形態1の動作を説明する。光記録媒体107には、図2に示すように案内溝107aがスパイラル状(もしくは同心円状)に形成されている。この案内溝107aからの反射光には、直接の反射光である0次光と、回折された±1次回折光とが含まれ、これらの光が干渉し合っている。図3は、受光素子110の受光面で受光される0次光(直進光)と±1次回折光とを、受光素子110の受光面の上から見た図である。0次光(直進光)と1次回折光とは重なる部分120、121があり、この重なる部分を干渉領域とよぶ。
【0041】
この干渉領域120、121が光記録媒体107のチルトに伴いどのように変化するかを、図4を用いて説明する。図4(a)は、光記録媒体107が半径方向(ラジアル方向)に傾いていたときの光記録媒体107のチルト角と干渉領域120、121の変化を示している。光記録媒体107のチルトに伴い図4(a)の左右方向に光記録媒体107のチルト角に応じて干渉領域120、121の光量に偏りが生じる。これは、光記録媒体107の傾きにより、光記録媒体107上に投影されるスポットにコマ収差が発生するためである。この干渉領域120,121の光量の偏りは、一方の干渉領域120と、もう一方の干渉領域121とで、逆方向に生じる。図4(a)では、光記録媒体107のチルトが大きくなるほど、図4(a)中の右側の領域120が強くなり、左側の領域121が徐々に弱くなっていくのがわかる。
【0042】
同様に、図4(b)は光記録媒体107が回転方向(タンジェンシャル方向)に傾いたときの光記録媒体107のチルト角と干渉領域120、121の変化を示している。また、図4(c)は光記録媒体107が半径方向(ラジアル方向)と回転方向(タンジェンシャル方向)に同時に同量傾いたときの光記録媒体107のチルト角と干渉領域120、121の変化を示している。
【0043】
次に、図5を参照して受光素子110および演算手段111を詳細に説明する。受光素子110が反射光を受光する受光面は、8つの受光領域110a、110b、110c、110d、110e、110f、110g、110hに分割されている。すなわち、受光素子110の受光面は、光記録媒体107の半径方向(ラジアル方向)に分離された2つの受光領域110a〜110d、110e〜110hを有し、この2つの受光領域110a〜110d、110e〜110hは光記録媒体107の回転方向(タンジェンシャル方向)にそれぞれ4分割されて分離されている。
【0044】
光記録媒体107の半径方向(ラジアル方向)に配列されている2つの受光領域110a〜110d、110e〜110hのうちの一方に含まれる4つの受光領域110a〜110dは光記録媒体107の回転方向順に110a、110b、110c、110dとする。そして、これらの受光領域110a、110b、110c、110dから出力される光量信号は、それぞれA,B,C,Dとする。
【0045】
光記録媒体107のラジアル方向に配置されている2つの受光領域110a〜110d、110e〜110hのうちのもう一方に含まれる4つの受光領域110e〜110hは光記録媒体107の回転方向順に110e、110f、110g、110hとする。そして、これらの受光領域110e、110f、110g、110hから出力される光量信号は、それぞれE,F,G,Hとする。受光素子110の各受光領域110a〜110hはそれぞれ受光量に比例した光量信号A〜Hを出力する。
【0046】
演算手段111は、加算手段111a、111b、111c、111dおよび減算手段111e、111fから構成されている。受光素子110の各受光領域110a〜110hから出力された光量信号A〜Hは演算手段111に入力されて所定の演算がなされる。すなわち、受光領域110a〜110dの両端側受光領域110a、110dからの光量信号A、Dと、受光領域110e〜110hの中央側受光領域110f、110gからの光量信号F、Gが加算手段111aにより加算される。受光領域110a〜110dの中央側受光領域110b、110cからの光量信号B、Cと、受光領域110e〜110hの両端側受光領域110e、110hからの光量信号E、Hが加算手段111bにより加算される。減算手段111eは、加算手段111aの出力信号から加算手段111bの出力信号を引くことで、光記録媒体107のラジアル方向のチルト(ラジアルチルト)を示すチルト信号(ラジアルチルト信号)Tradを出力する。
【0047】
受光領域110a〜110dの上側受光領域110a、110bからの光量信号A、Bと、受光領域110e〜110hの上側受光領域110e、110fからの光量信号E、Fが加算手段111cにより加算される。受光領域110a〜110dの下側受光領域110c、110dからの光量信号C、Dと、受光領域110e〜110hの下側受光領域110g、110hからの光量信号G、Hが加算手段111dにより加算される。減算手段111fは、加算手段111cの出力信号から加算手段111dの出力信号を引くことで、光記録媒体107の回転方向(タンジェンシャル方向)のチルト(タンジェンシャルチルト)を示すチルト信号(タンジェンシャルチルト信号)Ttanを出力する。
演算手段111による演算を式で表すと、下記の式(1)、(2)となる。
Trad=(A+D+F+G)−(B+C+E+H) …(1)
Ttan=(A+B+E+F)−(C+D+G+H) …(2)
図6(a)(b)は光記録媒体107のチルトに伴う干渉領域120、121の変化を演算手段111にて演算した結果を示す。図6(a)は光記録媒体107が半径方向(ラジアル方向)に傾いたときのチルト特性を示し、図6(b)は光記録媒体107が回転方向(タンジェンシャル方向)に傾いたときのチルト特性を示す。なお、このときの光記録媒体107の案内溝107aの形状は以下の通りである。
案内溝107aの周期(トラックピッチ):0.46μm
案内溝107aの幅(グルーブ幅) :0.23μm
案内溝107aの深さ(グルーブ深さ) :0.051μm
また、受光素子110の受光領域110a〜110hは、受光素子110上の戻り光の直径を1としたとき、チルト特性が図7に示すようになる受光領域区分とした。ここに、xは、受光素子110上の戻り光の直径を1としたとき、受光領域110a〜110hの半径方向(ラジアル方向)の長さを示す。例えば、受光領域110aは光記録媒体107の半径方向(ラジアル方向)に0.2、光記録媒体107の回転方向(タンジェンシャル方向)に0.375の長方形の領域とした。
【0048】
図6(a)(b)において横軸は光記録媒体107のチルト量、縦軸は受光素子110の出力信号A〜Hの和信号で規格化したチルト信号である。チルトの検出感度は、図6(a)(b)の零度近傍チルト信号の傾き絶対値で与えられる。図6(a)のチルト検出感度は約67%/deg、図6(b)のチルト検出感度は約40%/degであり、十分なチルト検出精度が得られる。このように、光記録媒体107で反射された光の各受光領域110a〜110hにおける強度の変化から光記録媒体107の半径方向(ラジアル方向)と回転方向(タンジェンシャル方向)の両方向のチルトを検出することが可能となる。特に本実施形態1では、従来例(特開2001−273660号公報記載のもの)のように除算手段を用いることなく、加算手段111a〜111dと減算手段111e、111fのみの演算でチルト信号を生成しているため、従来例に比べて回路構成の単純化、さらには高速な応答性を確保できる。
【0049】
図7は、各受光領域110a〜110hの半径方向(ラジアル方向)の長さ:xとラジアルチルトとチルト信号の関係を示したものである。同様に、図11は、各受光領域110a〜110hの回転方向(タンジェンシャル方向)の長さ:yとラジアルチルトとチルト信号の関係を示したものである。ここで、各受光領域110a〜110hの半径方向(ラジアル方向)の長さx、回転方向(タンジェンシャル方向)の長さyとは、受光素子110上の戻り光の直径を1としたときの各受光領域110a〜110hの半径方向(ラジアル方向)の長さ、回転方向(タンジェンシャル方向)の長さを意味するものであり、図9は各受光領域110a、110d、110e、110hについてx=0.2、y=0.375のときの受光素子110の受光領域区分例、図10は各受光領域110a、110d、110e、110hについてx=0.5、y=0.375のときの受光素子110の受光領域区分例を示したものである。
【0050】
再度、図7を説明すると、図7はy=0.375のときのチルト信号とラジアルチルト(光記録媒体107のラジアル方向のチルト)との関係について、各受光領域110a、110d、110e、110hのxをパラメータにしたときの状態を示すものである。また、図11は各受光領域110a、110d、110e、110hのx=0.2のときのチルト信号とラジアルチルトの関係について、yをパラメータにしたときの状態を示すものである。図8は、図7の各xに対して、チルト信号の0deg近傍の傾き(チルト信号の感度)をプロットしたものであり、x=0.3のとき、検出感度が最も大きくなることがわかる。
【0051】
図8に示すように、各受光領域110a、110d、110e、110hのxをx=0.2〜0.35の範囲とすることにより、感度60%/deg以上と十分な検出感度を確保できることがわかる。また、y方向についても、y=0.3〜0.4の範囲でyを選択することにより、高感度検出が可能となる。以上から、干渉領域120、121のみで、式(1)(2)に示す演算を実行することにより十分な検出感度となり、高精度のチルト検出が行えることがわかる。
【0052】
また、図12は、図9に示す受光素子110の受光領域区分例において、光記録媒体107が図4(a)に示すように半径方向(ラジアル方向)にチルトしたときのラジアルチルト信号と、光記録媒体107が図4(c)に示すように半径方向(ラジアル方向)と回転方向(タンジェンシャル方向)の両方向に同時にチルトしたときのラジアルチルト信号を示すものである。これら2つのラジアルチルト信号は同等の変化を示しており、光記録媒体107の回転方向(タンジェンシャル方向)のチルトが発生しても、ラジアルチルト信号の変化はないことがわかる。
【0053】
同様に、図13は、光記録媒体107が図4(b)に示すように回転方向(タンジェンシャル方向)にチルトしたときのタンジェンシャルチルト信号と、図4(c)に示すように半径方向(ラジアル方向)と回転方向(タンジェンシャル方向)の両方向に同時にチルトしたときのタンジェンシャルチルト信号を示すものである。図13から、図12と同様に半径方向(ラジアル方向)のチルトが発生しても、そのチルトが所定の範囲内ならばタンジェンシャルチルト信号の変化はないことがわかる。これらの結果から、本実施形態1におけるチルト信号生成方式によれば、光記録媒体107のラジアルチルトとタンジェンシャルチルトを、クロストークなく独立に検出できることがわかる。
【0054】
また、図14、図15は、図9に示す受光素子110の受光領域区分例において、対物レンズ(OL)106がシフトしたときのラジアルチルト信号とタンジェンシャルチルト信号の変化を示したものである。対物レンズ106のシフトが発生しても、半径方向(ラジアル方向)と回転方向(タンジェンシャル方向)のチルト信号はほとんど変化しない。すなわち、本実施形態1におけるチルト信号生成方式によれば、光記録媒体107のチルトと、対物レンズ106のシフトが同時に発生しても、光記録媒体107のチルト信号は良好に検出できることがわかる。これは、本実施形態1におけるチルト信号生成方式が0次と±1次の干渉領域の光に対して、式(1)のような襷がけの演算を行うため、対物レンズ106のシフトに伴う光量分布の変化をキャンセルできることに因る。
【0055】
また、図16、17は、図9に示す受光素子110の受光領域区分例において、光記録媒体107の案内溝107aの深さと、ラジアルチルト信号とタンジェンシャルチルト信号の変化を示したものである。案内溝107aの深さが変化しても、半径方向(ラジアル方向)と回転方向(タンジェンシャル方向)のチルト信号はほとんど変化しない。すなわち、本実施形態1におけるチルト信号生成方式によれば、案内溝107aの深さにもほとんど依存せずに、複数種類の光記録媒体に対して、良好なチルト信号を生成できる。
【0056】
次に、本実施形態1において、以上のチルト信号に基づいて、光記録媒体107のチルトに伴い発生するコマ収差を補正するコマ収差補正手段について説明する。コマ収差補正手段としては、対物レンズ106のフォーカス制御・トラッキング制御(トラッキング誤差信号、フォーカス誤差信号による対物レンズ106の2方向制御)だけでなく、対物レンズの2軸周りのチルト制御(ラジアルチルト信号、タンジェンシャルチルト信号による対物レンズの2軸周りの制御)が可能である4軸アクチュエータ(図示せず)を用いればよい。
【0057】
この4軸アクチュエータは、対物レンズ106の光軸の、本実施形態1における光学系の光軸に対する傾きを演算手段111からのラジアルチルト信号及びタンジェンシャルチルト信号に応じて調整する対物レンズ傾き調整手段を含むように構成されている。この4軸アクチュエータの対物レンズ傾き調整手段で対物レンズ106の傾きを変化させると、対物レンズ106を透過する光束にコマ収差が発生するので、このコマ収差と光記録媒体107のチルトに伴い発生するコマ収差とを相殺するようにすることが可能である。すなわち、4軸アクチュエータの対物レンズ傾き調整手段は、対物レンズ106の光軸の、本実施形態1における光学系の光軸に対する傾きを、演算手段111からのラジアルチルト信号及びタンジェンシャルチルト信号により、光記録媒体107のチルトに伴い発生するコマ収差と対物レンズ106の傾きの変化による透過光束のコマ収差とが相殺されるように調整する。
【0058】
図18は、光記録媒体107のチルトと補正前後の波面収差との関係を示す。図18から対物レンズ106を4軸アクチュエータの対物レンズ傾き調整手段でチルトさせることにより、波面収差の劣化が十分に抑制されることがわかる。図19は、図18において、光記録媒体107が1度傾いたときの補正前の波面収差を示し、図20は対物レンズ106を約0.8degチルトさせたときの波面収差の様子を示す。対物レンズ106に光源側から入射する光束に対して、対物レンズ106の傾きを変化させると、補正後の波面収差がもとの波面収差よりも格段に小さくなることがわかる。
【0059】
このような4軸アクチュエータの対物レンズ傾き調整手段を図示しない制御手段にて式(1)(2)に示されるチルト信号に基づいて制御することにより、光記録媒体107のチルトに伴う波面劣化を伴わず、すなわち常に光記録媒体107上の良好なスポットを維持することができる。
【0060】
また、コマ収差補正手段は、4軸アクチュエータに限られるものでなく、図21に示すように平行光路中に所定の電極パターンを有する液晶素子112をコマ収差補正手段として配置してもよい。この液晶素子112は、図22に示すように、少なくとも一方の透明電極50a〜50rが左右上下対称に分割され、各電極部分50a〜50rと共通電極との間に独立して電圧を印加できるようになっており、この電圧を制御することにより、各電極部分50a〜50rと共通電極との間の液晶の屈折率:nをn1からn2まで自在に変えることができる。各電極部分50a〜50rと共通電極との間の液晶の屈折率:nを変化させると、各領域(各電極部分50a〜50rと共通電極との間の液晶)を通過する光線に光路差:Δn・d(Δnは屈折率変化分、dは液晶のセル厚)、即ち、波長をλとして、位相差Δn・d(2π/λ)を与えることができる。
【0061】
例えば、図23に示すようなコマ収差が発生したとする。この波面収差を3次元曲線として示したのが図24の上の実線部分である。このような波面収差に対し、対物レンズ106に光源側から入射する光束に、図24の下側の破線部分に示すような位相差が与えられるように、液晶素子112の各電極50a〜50rに印加する電圧を制御手段にて演算手段111からのラジアルチルト信号及びタンジェンシャルチルト信号に応じて調整すると、液晶素子112を透過する光束の各部での波面の遅れにより上記波面収差を打ち消すことができる。図25は、図24における実線(波面収差)と破線(液晶素子112による波面の遅れ)の和、すなわち補正後の波面収差を示す。補正後の波面収差はもとの波面収差(図24の実線部分)よりも格段に小さくなる。
【0062】
さらに、本実施形態1は、図5に示す受光素子110の受光領域分割の代わりに図26に示すような受光領域110p、110q、110r、110sを追加することも可能である。これらの受光領域110p、110q、110r、110sからの出力信号をそれぞれP、Q、R、Sとしたとき、以下の式(3)〜(5)の演算を演算手段にて行うことにより、チルト信号に加えて、再生信号:RFやトラッキング誤差信号:TEやフォーカス誤差信号:FEを同時に検出することができる。
RF=(A+B+C+D+E+F+G+H)+(P+Q+R+S) …(3)
TE=((A+B+C+D)+(P+Q))−((E+F+G+H)+(R+S)) …(4)
FE=((A+B+G+H)+(P+S))−((C+D+E+F)+(Q+R)) …(5)
図示しないトラッキングサーボ系はトラッキング誤差信号:TEにより対物レンズ106を光記録媒体107の半径方向に移動させて光記録媒体107上のスポットを光記録媒体107上のトラックに追従させ、図示しないフォーカスサーボ系はフォーカス誤差信号:FEにより対物レンズ106を光軸方向に移動させて光記録媒体107上のスポットを合焦させる。
【0063】
図34は、使用波長が405nm±10nmの範囲である光ピックアップにおいてその対物レンズの開口数:NAと、光記録媒体の光照射側基板厚と、許容される光記録媒体のチルト(許容チルト)との関係を示す。この許容チルト量は、マーシャル・クライテリオンとして一般に知られる波面収差0.07λrms以下を満足するチルト上限値に相当する。本実施形態1においては、使用波長:405nm±10nm、開口数:0.65、光照射側基板厚:0.6mmの光記録媒体107に対して、十分なチルト検出感度が得られることが分かる。本実施形態1以外の後述する実施形態などでも、使用波長が405nm±10nmの範囲で、光照射側基板厚dblue、開口数:NAblueが次の式(A):
dblue<4.3×NAblue 2−8.0×NAblue+4.0 …(A)
を満足すれば、光記録媒体の許容チルトが本実施形態1と同等であるため、十分なチルト検出感度を得ることができる。
【0064】
この実施形態1によれば、遠視野における光記録媒体107からの反射0次光と反射±1次回折光とで形成される2つの干渉領域120、121を、光記録媒体107の回転方向にそれぞれ4分割に分離して受光する検出光学系(集光レンズ108、円筒レンズ109及び受光素子110)を備え、分離された各受光ビームの光量から光記録媒体107の傾き(チルト)によって発生するコマ収差を直接検出して、ラジアルチルト信号、タンジェンシャルチルト信号を生成するので、精度の高いチルト検出が可能となり、青色波長帯域の光により情報の記録・再生・消去の1以上を行う光記録媒体に対しても良好な記録再生動作が可能である。
【0065】
また、本実施形態1におけるチルト検出方式は、受光領域が8分割の受光素子110で構成されているため、従来の受光素子の製造工法をそのまま適用できる。
また、本実施形態1におけるチルト検出方式は、対物レンズ106のシフトによってもチルト信号に誤差を発生させず、精度の高いチルト検出が可能である。
また、本実施形態1におけるチルト検出方式は、光記録媒体107の溝深さの違いによる誤差は発生せず、精度の高いチルト検出が可能である。
また、本実施形態1におけるチルト検出方式は、ラジアル方向とタンジェンシャル方向それぞれの間で、クロストークなく各方向のチルト信号を生成でき、精度の高いチルト検出が可能である。
【0066】
図27は、本発明の実施形態2の光ピックアップを示す。この光ピックアップは、使用波長が405nm±10nmの範囲で、光照射側基板厚dblue、開口数:NAblueが次の式(A):
dblue<4.3×NAblue 2−8.0×NAblue+4.0 …(A)
を満足する光ピックアップであり、例えば使用波長405nm、NA0.65、光照射側基板厚0.6mmの青色系光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行う光ピックアップ装置である。なお、青色系光記録媒体の光照射側基板厚は0.3mm〜0.6mmの範囲内で任意に設定することができる。この光ピックアップが図1に示す上記光ピックアップと異なる点は、円筒レンズ109に替えて同位置に回折素子としてのホログラム光学素子113を配置し、受光素子110の代わりに受光素子114を配置した点である。この受光素子114は受光素子110とは異なる受光領域を有する。
【0067】
図28及び図29を参照してホログラム光学素子113及び受光素子114の詳細な構成を説明する。図28はホログラム光学素子113を示す平面図である。ホログラム光学素子113は入射面に回折格子が形成された構成であり、この回折格子は、図28中に点線の円122で示す対物レンズ106の有効径を含み、8つの領域113a〜113hに分割されている。
【0068】
この回折格子は、光記録媒体107の半径方向(ラジアル方向)に分離された2つの領域113a〜113d、113e〜113hを有し、この2つの領域113a〜113d、113e〜113hはさらに回転方向(タンジェンシャル方向)に4分割されている。回折格子は、各領域113a〜113hの断面形状がいずれにおいても鋸歯状であり、鋸歯の上部と下部の位相差を2πとすると、各領域113a〜113hは入射光(光記録媒体107からの反射光)を+1次回折光としてそれぞれほぼ100%回折する。図29に示すように、領域113a〜113dにおける鋸歯の向きは+1次回折光が図29の左側に偏向されるように設定されており、領域113e〜113hにおける鋸歯の向きは+1次回折光が図29の左側に偏向されるように設定されており、各領域113a〜113hからの+1次回折光が受光素子114上の対応する受光部分114a〜114hにそれぞれ集光される。
【0069】
受光素子114は、図29に示すように受光部(受光領域)114a〜114hから構成される。この受光部114a〜114hは、光記録媒体107の半径方向(ラジアル方向)に分離された2つの受光部114a〜114d、114e〜114hを有し、この2つの受光部114a〜114d、114e〜114hは光記録媒体107の回転方向(タンジェンシャル方向)にそれぞれ4つに分離されている。この受光部114a〜114hからの信号をそれぞれA,B,C,D、E、F、G、Hとすると、上記実施形態1と同様に加算手段111a〜111dおよび減算手段111e、111fから構成された演算手段111にて受光部114a〜114hからの信号A〜Hにより、式(1)(2)で示されるチルト信号:Trad、Ttanが生成される。
この実施形態2によれば、上記実施形態1と同様な効果が得られる。
【0070】
図30は、本発明の実施形態3の光ピックアップの構成を示す。この光ピックアップは、使用波長が405nm±10nmの範囲で、光照射側基板厚dblue、開口数:NAblueが次の式(A):
dblue<4.3×NAblue 2−8.0×NAblue+4.0 …(A)
を満足する光ピックアップであり、例えば使用波長405nm、NA0.65、光照射側基板厚0.6mmの青色系光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行う光ピックアップである。なお、青色系光記録媒体の光照射側基板厚は0.3mm〜0.6mmの範囲内で任意に設定することができる。この光ピックアップが図27に示す上記光ピックアップと異なる点は、レーザ光を出射する光源としての半導体レーザ115aと、光記録媒体107から対物レンズ106、1/4波長板105及びプリズム104を経由して入射する反射光を回折する回折素子としてのホログラム光学素子115bと、このホログラム光学素子115bで回折された光記録媒体107からの反射光を複数の受光部(受光領域)にて受光する光検出器115cとを一つのパッケージに収めた受発光素子115を備えている点である。このような受発光素子115を具備することにより、上述した各構成要素が半導体レーザ115aから光記録媒体107までの間で一列に配設されており、従って、図1、27のような偏光ビームスプリッタ103が不要となる構成になっている。
【0071】
上記ホログラム光学素子115bは図27に示したホログラム光学素子113と同じであり、光検出器115cは図27に示した受光素子114と同様に光記録媒体107の半径方向(ラジアル方向)に分離された2つの受光部が光記録媒体107の回転方向(タンジェンシャル方向)にそれぞれ4つに分離される8つの受光部を有する。本実施形態3では、上記実施形態2と同様に、加算手段111a〜111dおよび減算手段111e、111fから構成された演算手段111にて光検出器115cの各受光部からの信号A〜Hにより、式(1)(2)で示されるチルト信号:Trad、Ttanが生成される。
この実施形態3によれば、上記実施形態1と同様な効果が得られる。
【0072】
図31は、本発明の実施形態4の光ピックアップの構成を示す。この光ピックアップは、使用波長が405nm±10nmの範囲で、光照射側基板厚dblue、開口数:NAblueが次の式(A):
dblue<4.3×NAblue 2−8.0×NAblue+4.0 …(A)
を満足する光ピックフップを用いて青色系光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行い、使用波長660nm±10nm、開口数:0.60〜0.65でDVD系光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行う光ピックフップであり、例えば使用波長407nm、NA0.65、光照射側基板厚0.6mmの青色系光記録媒体と、使用波長660nm、NA0.65、光照射側基板厚0.6mmのDVD系光記録媒体とに対して共に情報の記録、再生、消去の1以上を行う青色系光記録媒体/DVD系光記録媒体互換型光ピックアップである。なお、青色系光記録媒体の光照射側基板厚は0.3mm〜0.6mmの範囲内で任意に設定することができる。
【0073】
この光ピックアップは、青色波長域の受発光素子115、コリメートレンズ102、ダイクロイックプリズム203、プリズム104、1/4波長板105、対物レンズ106より構成される、青色波長域の光が通過する青色用光学系と、受発光素子201、コリメートレンズ202、ダイクロイックプリズム203、プリズム104、1/4波長板105、対物レンズ106から構成される、赤色波長域の光が通過するDVD系光学系とを有する。すなわち、ダイクロイックプリズム203、プリズム104、1/4波長板105、対物レンズ106は青色用光学系とDVD系光学系との2つの光学系の共通部品である。また、受発光素子115、201は、いずれも半導体レーザ115a,201a、ホログラム光学素子115b,201b、光検出器115c,201cから構成されている。
さらに、この光ピックアップは、以上の光路とは別の光路に、光記録媒体107の傾き(チルト量)を直接的に検知するチルト検出装置401が配置されている。
【0074】
まず、使用波長407nm、NA0.65、光照射側基板厚0.6mmの青色系光記録媒体に対する情報の記録、再生、消去の1以上を行う場合について説明する。半導体レーザ115aから出射された直線偏光の波長407nmの発散光は、ホログラム光学素子115bを透過し、コリメートレンズ102で略平行光とされ、ダイクロイックプリズム203を透過し、プリズム104で光路が90度偏向され、1/4波長板105を通過して円偏光とされ、対物レンズ106に入射して光記録媒体107上に微小スポットとして集光される。
【0075】
このスポットにより、光記録媒体107は情報の再生、記録、消去の1以上が行われる。光記録媒体107で反射された光は、往路とは反対回りの円偏光となり、対物レンズ106により再び略平行光とされ、1/4波長板105を通過して往路と直交した直線偏光になり、プリズム104で光路が90度偏向され、ダイクロイックプリズム203を透過し、コリメートレンズ102で収束光とされ、ホログラム光学115bにより複数の光路に偏向分割されて光検出器115cに至る。ホログラム光学素子115bは、図27に示したホログラム光学素子113と同じであり、光検出器115cは図27に示した受光素子114と同様に光記録媒体107の半径方向(ラジアル方向)に分離された2つの受光部が光記録媒体107の回転方向(タンジェンシャル方向)にそれぞれ4つに分離された8つの受光部を有する。本実施形態4では、上記実施形態3と同様に、加算手段111a〜111dおよび減算手段111e、111fから構成された演算手段111にて光検出器115cの各受光部からの信号A〜Hにより、式(1)(2)で示されるチルト信号:Trad、Ttanが生成される。
【0076】
次に、使用波長660nm、NA0.65、光照射側基板厚0.6mmのDVD系光記録媒体に対する情報の記録、再生、消去の1以上を行う場合について説明する。受発光素子201の半導体レーザ201aから出射された660nmの光は、ホログラム光学素子201bを透過し、コリメートレンズ202で平行光とされ、ダイクロイックプリズム203によってプリズム104の方向に反射され、プリズム104によって光路が90度偏向され、1/4波長板105を通過して円偏光とされ、対物レンズ106に入射して光記録媒体107上に微小スポットとして集光される。
【0077】
このスポットにより、光記録媒体107は情報の再生、記録、消去の1以上が行われる。光記録媒体107で反射された光は、往路とは反対回りの円偏光となり、対物レンズ106により再び略平行光とされ、1/4波長板105を通過して往路と直交した直線偏光になり、プリズム104で光路が90度偏向され、ダイクロイックプリズム203で反射され、コリメートレンズ202で収束光とされ、ホログラム光学素子201bにより半導体レーザ201aと同一キャン内にある光検出器201c方向に回折されて光検出器201cで受光される。
【0078】
光検出器201cは複数に分離された受光部を有し、図示しない演算手段は光検出器201cの各受光部からの信号を演算して再生信号やフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号を生成する。図示しないトラッキングサーボ系は上記トラッキング誤差信号により対物レンズ106を光記録媒体107の半径方向に移動させて光記録媒体107上のスポットを光記録媒体107上のトラックに追従させ、図示しないフォーカスサーボ系は上記フォーカス誤差信号により対物レンズ106を光軸方向に移動させて光記録媒体107上のスポットを合焦させる。
【0079】
さて、実施形態1〜3のチルト検出はトラッキングが行われているときにのみチルト検出が可能であった。よって、トラッキングが行えないような大きなチルトが発生した場合は、光記録媒体107のチルトの検出および補正が行えず、トラッキングも行えないという問題があった。これに対して本実施形態4では、光ピックアップ光学系とは別の光路にチルト検出装置401を併用することにより、実施形態1〜3で説明した高検出精度のチルト検出と、検出精度は低いものの広レンジのチルト検出がチルト検出装置401により行えるようにした。チルト検出装置401は、前述した図35に示すような発光源34と、受光素子35a,35bとを有するチルトセンサ32と、差動アンプ33が用いられる。発光源34から光記録媒体107に光が照射され、その反射光が受光素子35a,35bで受光される。差動アンプ33は受光素子35a,35bからの出力信号の差を演算して光記録媒体107のラジアル方向のチルトを示すチルト信号を出力し、図示しないチルト補正手段は差動アンプ33からのチルト信号により対物レンズ106をチルトさせることで光記録媒体107のラジアル方向のチルトによるコマ収差を補正する。
【0080】
次に、本実施形態4の具体的な動作を説明する。
▲1▼光記録媒体107を本実施形態4の光ピックアップを有する情報処理装置に導入すると同時に、まずフォーカス誤差信号の検出を行いながら、フォーカスサーボ系にてフォーカス誤差信号が零の位置、すなわち合焦位置に対物レンズ106の位置をサーボ制御する。
▲2▼チルト検出装置401からの信号に基づいて、予め決められた所定位置に対物レンズ106をチルトさせる。
▲3▼トラック誤差信号の検出を行いながら、トラッキングサーボ系にてトラック誤差信号が零の位置、すなわちグルーブ上にスポットが位置するように対物レンズ106の位置をサーボ制御する。
▲3▼干渉領域120、121の変化を検出しながら、コマ収差補正手段にてコマ収差信号(演算手段111からのラジアルチルト信号及びタンジェンシャルチルト信号)が零の位置になるように、すなわちコマ収差がなくなるように対物レンズ106の位置をサーボ制御する。
【0081】
また、本実施形態4においては、DVD系光記録媒体に対する情報の記録、再生動作時には、チルト検出装置401を用いればよい。DVD系光記録媒体のチルト検出も、青色系光記録媒体と同様のチルト検出を行う方法もあるが、DVD系光記録媒体のチルト検出はラジアル方向のみで、かつ定期的な検出のみでよいため、青色系光記録媒体で使用するチルト検出手段はオーバースペックとなる。そのため、本実施形態4はDVD系光記録媒体のチルト検出には、青色系光記録媒体の粗チルト調整用チルト検出装置401を併用することにより、コストアップを招くことなく、青色系光記録媒体/DVD系光記録媒体それぞれのチルト検出を可能とした。
【0082】
この実施形態4によれば、光記録媒体107の傾きを直接検知するチルト検出装置401を具備し、このチルト検出装置401の出力信号に基づくチルト補正を行う工程と、このチルト補正工程の後、演算手段111からのコマ収差信号に基づくチルト補正を行う工程を実行するため、トラッキング動作が行えないような大きなチルトが発生した場合も、そのチルトを補正し、正常な記録再生動作を行うことができる。すなわち、広レンジ、高精度の光記録媒体チルト補正が実現可能である。
【0083】
さらに、本実施形態4によれば、青色系光記録媒体/DVD系光記録媒体互換型光ピックアップにおいて、青色系光ピックアップはチルト検出装置401からのチルトセンサ信号および演算手段111からのコマ収差信号に基づくチルト補正を行い、DVD系光ピックアップはチルトセンサ信号に基づくチルト補正を行うため、各光記録媒体に対して、最適なスポットを形成することが可能である。
【0084】
図32は、本発明の実施形態5の光ピックアップの構成を示す。この光ピックアップは、使用波長が405nm±10nmの範囲で、光照射側基板厚dblue、開口数:NAblueが次の式(A):
dblue<4.3×NAblue 2−8.0×NAblue+4.0 …(A)
を満足する大容量(青色系)光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行い、使用波長660nm±10nm、開口数:0.60〜0.65でDVD系光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行い、使用波長780nm±10nm、開口数:0.45〜0.50でCD系光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行う光ピックアップであり、例えば使用波長407nm、NA0.65、光照射側基板厚0.6mmの大容量光記録媒体と、使用波長660nm、NA0.65、光照射側基板厚0.6mmのDVD系光記録媒体と、使用波長780nm、NA0.50、光照射側基板厚1.2mmのCD系光記録媒体とに対して共に情報の記録、再生、消去の1以上を行う。なお、大容量光記録媒体の光照射側基板厚は0.3mm〜0.6mmの範囲内で任意に設定することができる。
【0085】
この光ピックアップでは、上記実施形態4において、受発光素子201の代わりに受発光素子301が配置されている。受発光素子301は、DVD用の半導体レーザ201a、回折素子としてのホログラム光学素子201b、光検出器201cと、CD用の半導体レーザ301a、回折素子としてのホログラム光学素子301b、光検出器301cから構成されている。
【0086】
DVD系光記録媒体に対する情報の記録、再生、消去の1以上を行う場合には、半導体レーザ201aから出射された660nmの光は、ホログラム光学素子201bを透過し、コリメートレンズ202で平行光とされ、ダイクロイックプリズム203によってプリズム104の方向に反射され、プリズム104によって光路が90度偏向され、1/4波長板105を通過して円偏光とされ、対物レンズ106に入射して光記録媒体107上に微小スポットとして集光される。
【0087】
このスポットにより、光記録媒体107は情報の再生、記録、消去の1以上が行われる。光記録媒体107で反射された光は、往路とは反対回りの円偏光となり、対物レンズ106により再び略平行光とされ、1/4波長板105を通過して往路と直交した直線偏光になり、プリズム104で光路が90度偏向され、ダイクロイックプリズム203で反射され、コリメートレンズ202で収束光とされ、ホログラム光学素子201bにより半導体レーザ201aと同一キャン内にある光検出器201c方向に回折されて光検出器201cで受光される。
【0088】
光検出器201cは複数に分離された受光部を有し、図示しない演算手段は光検出器201cの各受光部からの信号を演算して再生信号やフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号を生成する。図示しないトラッキングサーボ系は上記トラッキング誤差信号により対物レンズ106を光記録媒体107の半径方向に移動させて光記録媒体107上のスポットを光記録媒体107上のトラックに追従させ、図示しないフォーカスサーボ系は上記フォーカス誤差信号により対物レンズ106を光軸方向に移動させて光記録媒体107上のスポットを合焦させる。
【0089】
CD系光記録媒体に対する情報の記録、再生、消去の1以上を行う場合には、半導体レーザ301aから出射された780nmの光は、ホログラム光学素子301bを透過し、コリメートレンズ202で平行光とされ、ダイクロイックプリズム203によってプリズム104の方向に反射され、プリズム104によって光路が90度偏向され、1/4波長板105を通過して円偏光とされ、対物レンズ106に入射して光記録媒体107上に微小スポットとして集光される。
【0090】
このスポットにより、光記録媒体107は情報の再生、記録、消去の1以上が行われる。光記録媒体107で反射された光は、往路とは反対回りの円偏光となり、対物レンズ106により再び略平行光とされ、1/4波長板105を通過して往路と直交した直線偏光になり、プリズム104で光路が90度偏向され、ダイクロイックプリズム203で反射され、コリメートレンズ202で収束光とされ、ホログラム光学素子301bにより半導体レーザ301aと同一キャン内にある光検出器301c方向に回折されて光検出器301cで受光される。
【0091】
光検出器301cは複数に分離された受光部を有し、図示しない演算手段は光検出器301cの各受光部からの信号を演算して再生信号やフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号を生成する。図示しないトラッキングサーボ系は上記トラッキング誤差信号により対物レンズ106を光記録媒体107の半径方向に移動させて光記録媒体107上のスポットを光記録媒体107上のトラックに追従させ、図示しないフォーカスサーボ系は上記フォーカス誤差信号により対物レンズ106を光軸方向に移動させて光記録媒体107上のスポットを合焦させる。
【0092】
このような青色系光記録媒体/DVD系光記録媒体/CD系光記録媒体互換型光ピックアップにおいては、青色系光記録媒体は上記実施形態1〜4と同様にチルト検出を行い、DVD系光記録媒体及びCD系光記録媒体はチルト検出装置401にてチルト検出を行うことにより、各光記録媒体において、良好なスポット特性を確保することが可能である。
【0093】
この実施形態5によれば、青色系光記録媒体/DVD系光記録媒体/CD系光記録媒体互換型光ピックアップにおいて、青色系光ピックアップはチルト検出装置401からのチルトセンサ信号および演算手段111からのコマ収差信号に基づくチルト補正を行い、DVD系光ピックアップ、CD系光ピックアップはチルトセンサ信号に基づくチルト補正を行うため、各光記録媒体に対して最適なスポットを形成することが可能である。
【0094】
図33は、本発明の実施形態6の光情報処理装置を示す。
この光情報処理装置36は、光記録媒体107に対して、光ピックアップを用いて情報の記録・再生・消去の1以上を行う装置である。この実施形態6においては、光記録媒体107は、ディスク状であり、保護ケース37内に格納されている。光記録媒体107は、保護ケース37ごと、挿入口38から光情報処理装置36に矢印方向へ挿入されてセットされ、スピンドルモータ39により回転され、光ピックアップ40により情報の記録や再生、消去の1以上が行われる。光ピックアップ40は、上記実施形態1〜5の光ピックアップのいずれかが用いられる。
この実施形態6によれば、上記実施形態1〜5と同様な効果が得られる。
なお、本発明において、青色波長域は395〜415nmの範囲を意味し、赤色波長域は645〜670nmの範囲を意味し、赤外波長域は775〜795nmの範囲を意味するものとする。上記実施形態において、上記青色波長域の光は青色波長域内の任意の波長の光としてもよく、上記赤色波長域の光は赤色波長域内の任意の波長の光としてもよく、上記赤外波長域の光は赤外波長域内の任意の波長の光としてもよい。
【0095】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、精度の高い光記録媒体のチルト検出が可能となり、青色波長帯域の光により情報の記録・再生・消去の1以上を行う光記録媒体に対しても良好な記録再生動作が可能である。
また、従来の受光素子の製造工法をそのまま適用できる。また、対物レンズのシフトによってもチルト信号に誤差を発生させず、精度の高いチルト検出が可能である。また、光記録媒体の溝深さの違いによる誤差は発生せず、精度の高い光記録媒体チルト検出が可能である。また、ラジアル方向とタンジェンシャル方向それぞれの間で、クロストークなく各方向のチルト信号を生成でき、精度の高いチルト検出が可能である。
【0096】
また、トラッキング動作が行えないような大きなチルトが発生した場合も、このチルトを補正して正常な記録再生動作を行うことができる。すなわち、広レンジ、高精度のチルト補正が実現可能である。
さらに、各光記録媒体に対して最適なスポットを形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1を示す図である。
【図2】同実施形態1の光記録媒体と干渉領域を説明するための図である。
【図3】同実施形態1において受光素子の受光面で受光される0次光と±1次回折光とを受光素子の受光面の上から見た図である。
【図4】同実施形態1のラジアルチルトに伴う干渉領域の変化、タンジェンシャルチルトに伴う干渉領域の変化、ラジアル方向・タンジェンシャル方向同時チルトに伴う干渉領域の変化を示す図である。
【図5】同実施形態1の受光素子および演算手段を示すブロック図である。
【図6】同実施形態1における光記録媒体のチルトに伴う干渉領域の変化を演算した結果を示す図である。
【図7】同実施形態1の光記録媒体チルト特性例を示す特性図である。
【図8】同実施形態1におけるラジアル方向受光領域区分値対チルト信号感度特性例を示す特性図である。
【図9】同実施形態1における受光素子の受光領域区分例を示す図である。
【図10】同実施形態1における受光素子の他の受光領域区分例を示す図である。
【図11】同実施形態1における各受光領域のタンジェンシャル方向長さとチルト信号の関係を示す図である。
【図12】同実施形態1におけるラジアルチルトとチルト信号との関係例を示す図である。
【図13】同実施形態1におけるタンジェンシャルチルトとチルト信号との関係例を示す図である。
【図14】同実施形態1における対物レンズがシフトしたときのラジアルチルト信号の変化を示す図である。
【図15】同実施形態1における対物レンズがシフトしたときのタンジェンシャルチルト信号の変化を示す図である。
【図16】同実施形態1における光記録媒体の案内溝の深さとラジアルチルト信号の変化の関係を示す図である。
【図17】同実施形態1における光記録媒体の案内溝の深さとタンジェンシャルチルト信号の変化の関係を示す図である。
【図18】同実施形態1における光記録媒体のチルトと補正前後の波面収差との関係を示す図である。
【図19】図18において光記録媒体が1度傾いたときの補正前の波面収差を示す図である。
【図20】図18において対物レンズを約0.8degチルトさせたときの波面収差の様子を示す図である。
【図21】同実施形態1の他の構成を示す図である。
【図22】同実施形態1で用いる液晶素子の電極パターンの例を示す平面図である。
【図23】同実施形態1における光記録媒体のチルトに伴うコマ収差の例を示す図である。
【図24】同実施形態1における上記コマ収差と、対物レンズに光源側から入射する光束に与える位相差を示す図である。
【図25】同実施形態1の補正後の波面収差を示す図である。
【図26】同実施形態1で用いられる受光素子および演算手段の他の例を示すブロック図である。
【図27】本発明の実施形態2を示す図である。
【図28】同実施形態2のホログラム光学素子を示す平面図である。
【図29】同実施形態2のホログラム光学素子及び受光素子を示す斜視図である。
【図30】本発明の実施形態3の構成を示す図である。
【図31】本発明の実施形態4の構成を示す図である。
【図32】本発明の実施形態5の構成を示す図である。
【図33】本発明の実施形態6を示す斜視図である。
【図34】使用波長が405nm±10nmの範囲である光ピックアップにおいてその対物レンズの開口数:NAと、光記録媒体の光照射側基板厚と、許容される光記録媒体のチルト(許容チルト)との関係を示す図である。
【図35】チルト検出装置の従来例を示す概略図である。
【図36】従来のチルト検出装置を示す概略図である。
【図37】従来の他のチルト検出装置を示すブロック図である。
【図38】従来の他のチルト検出装置で用いている16分割受光素子を示す平面図である。
【符号の説明】
101 半導体レーザ
102、202 コリメートレンズ
103 偏光ビームスプリッタ
104 プリズム
105 1/4波長板
106 対物レンズ
107 光記録媒体
108 検出レンズ
109 円筒レンズ
110、114 受光素子
110a〜110h 受光領域
111 演算手段
111a〜111d 加算手段
111e、111f 減算手段
112 液晶素子
113 ホログラム素子
115、201、301 受発光素子
401 チルト検出装置
Claims (13)
- 光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行う光ピックアップにおいて、前記光記録媒体に光ビームを照射する照明光学系と、前記光記録媒体からの反射光を検出する検出光学系を備え、この検出光学系は、遠視野における前記光記録媒体からの反射0次光と反射±1次回折光とで形成される2つの干渉領域を、前記光記録媒体の回転方向にそれぞれ4つに分離して受光することを特徴とする光ピックアップ。
- 請求項1記載の光ピックアップにおいて、前記検出光学系は、遠視野における前記光記録媒体からの反射0次光と反射±1次回折光とで形成される2つの干渉領域を、前記光記録媒体の回転方向にそれぞれ4つに分離して受光する複数の受光領域を有する受光素子を具備することを特徴とする光ピックアップ。
- 請求項1記載の光ピックアップにおいて、前記検出光学系は、遠視野における前記光記録媒体からの反射0次光と反射±1次回折光とで形成される2つの干渉領域を、前記光記録媒体の回転方向にそれぞれ4つに分離する回折素子を具備することを特徴とする光ピックアップ。
- 請求項1〜3のいずれか1つに記載の光ピックアップにおいて、前記光記録媒体の半径方向チルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化を補正する補正手段を備え、前記光記録媒体の半径方向内側の干渉領域を4つに分離して受光することで得た受光信号を前記光記録媒体の回転方向順にA、B、C、Dとし、前記光記録媒体の半径方向外側の干渉領域を4つに分離して受光することで得た受光信号を前記光記録媒体の回転方向順にE、F、G、Hとしたとき、前記補正手段は、前記受光信号A〜Hの演算結果|(A+D+F+G)−(B+C+E+H)|に基づき、前記光記録媒体の半径方向チルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化を補正することを特徴とする光ピックアップ。
- 請求項1〜3のいずれか1つに記載の光ピックアップにおいて、前記光記録媒体の回転方向のチルトによる前記光記録媒体上のスポット劣化を補正する補正手段を備え、前記光記録媒体の半径方向内側の干渉領域を4つに分離して受光することで得た受光信号を前記光記録媒体の回転方向順にA、B、C、Dとし、前記光記録媒体の半径方向外側の干渉領域を4つに分離して受光することで得た受光信号を前記光記録媒体の回転方向順にE、F、G、Hとしたとき、前記補正手段は、前記受光信号A〜Hの演算結果|(A+B+E+F)−(C+D+G+H)|に基づき、前記光記録媒体の回転方向のチルトによる前記光記録媒体上のスポット劣化を補正することを特徴とする光ピックアップ。
- 請求項1〜3のいずれか1つに記載の光ピックアップにおいて、前記光記録媒体の半径方向のチルトおよび回転方向のチルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化を補正する補正手段を備え、前記光記録媒体の半径方向内側の干渉領域を4つに分離して受光することで得た受光信号を前記光記録媒体の回転方向順にA、B、C、Dとし、前記光記録媒体の半径方向外側の干渉領域を4つに分離して受光することで得た受光信号を前記光記録媒体の回転方向順にE、F、G、Hとしたとき、前記補正手段は、前記受光信号A〜Hの演算結果|(A+F+G+D)−(E+B+C+H)|に基づき前記光記録媒体の半径方向のチルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化を補正し、前記受光信号A〜Hの演算結果|(A+B+E+F)−(C+D+G+H)|に基づき前記光記録媒体の回転方向のチルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化を補正することを特徴とする光ピックアップ。
- 請求項1〜6のいずれか1つに記載の光ピックアップにおいて、遠視野における前記光記録媒体からの反射0次光と反射±1次回折光とで形成される2つの干渉領域を、前記光記録媒体の回転方向に4つにそれぞれ分離して受光する受光素子の各受光領域は前記受光素子上の戻り光の直径を1としたときに前記半径方向の長さを0.2〜0.35の範囲としたことを特徴とする光ピックアップ。
- 請求項1〜7のいずれか1つに記載の光ピックアップにおいて、遠視野における前記光記録媒体からの反射0次光と反射±1次回折光とで形成される2つの干渉領域を、前記光記録媒体の回転方向に4つにそれぞれ分離して受光する受光素子の各受光領域は前記受光素子上の戻り光の直径を1としたときに前記回転方向の長さを0.3〜0.4の範囲としたことを特徴とする光ピックアップ。
- 請求項1〜8のいずれか1つに記載の光ピックアップにおいて、前記照明光学系および前記検出光学系の外側に、前記光記録媒体のチルト量を検知するチルト検出装置を具備することを特徴とする光ピックアップ。
- 請求項9記載の光ピックアップにおいて、前記チルト検出装置の出力信号に基づいて前記光記録媒体のチルトを補正し、このチルト補正後に、請求項4〜6のいずれか1つに記載の演算結果に基づき前記光記録媒体のチルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化を補正することを特徴とする光ピックアップ。
- 請求項1〜10のいずれか1つに記載の光ピックアップを用いて情報の記録、再生、消去の1以上を行う光記録媒体であって、使用波長が405nm±10nmの範囲で、光照射側基板厚dblue、開口数:NAblueが次の式(A):
dblue<4.3×NAblue 2−8.0×NAblue+4.0 …(A)
を満足することを特徴とする光記録媒体。 - 使用波長が405nm±10nmの範囲で、光照射側基板厚dblue、開口数:NAblueが次の式(A):
dblue<4.3×NAblue 2−8.0×NAblue+4.0 …(A)
を満足する光ピックフップを用いて第1の光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行い、使用波長が660nm±10nmの範囲で開口数:0.60〜0.65である光ピックアップを用いて第2の光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行う光情報処理装置において、前記光ピックアップは、前記第1の光記録媒体については、請求項4〜6のいずれか1つに記載の前記光記録媒体のチルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化の補正を行い、前記第2の光記録媒体については、照明光学系および検出光学系の外側に配置されたチルト検出装置の出力値に基づいて前記光記録媒体のチルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化を補正することを特徴とする光情報処理装置。 - 使用波長が405nm±10nmの範囲で、光照射側基板厚dblue、開口数:NAblueが次の式(A):
dblue<4.3×NAblue 2−8.0×NAblue+4.0 …(A)
を満足する光ピックフップを用いて第1の光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行い、使用波長が660nm±10nmの範囲で開口数:0.60〜0.65である光ピックアップを用いて第2の光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行い、使用波長が780nm±10nmの範囲で開口数:0.45〜0.50である光ピックアップを用いて第3の光記録媒体に対して情報の記録、再生、消去の1以上を行う光情報処理装置において、前記光ピックアップは、前記第1の光記録媒体については請求項4〜6のいずれか1つに記載の前記光記録媒体のチルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化の補正を行い、前記第2の光記録媒体及び前記第3の光記録媒体については照明光学系および検出光学系の外側に配置されたチルト検出装置の出力値に基づいて前記光記録媒体のチルトによる前記光記録媒体上のスポットの劣化の補正を行うことを特徴とする光情報処理装置。
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