図3を参照して、この発明の一実施例である光ディスク装置10は、信号を記録再生する媒体として、たとえばDVD−R/RWのようなディスク12を用いる。なお、この図3では、ディスク12の下方の構成部品を明示するために、ディスク12の外形のみを想像線で表している。ディスク12は保時部14に保持され、スピンドルモータ16によって回転される。ディスク12の下方に、このディスク12に信号を記録したりディスク12から信号を再生するための光ピックアップ18が設けられ、この光ピックアップ18は、シャフト20によって、このシャフト20の軸方向に移動可能に、保持される。そして、このシャフト20はシャフトホルダ22によって保持され、このシャフトホルダ22は、スピンドルモータ16とともに、シャーシ24上に固定される。
図示しないが、ディスク12の表面には透明なカバーガラス層が形成され、その下層の信号面には、周知の方法で信号が記録される。信号の記録方法は、微細な凹凸であるピットによる方法、屈折率や反射率の大小の違いを持たせて記録する方法、または磁気極性の違いを持たせて記録する方法等などがよく知られているが、この発明は、このような任意の光ディスクの物理フォーマットに適用できる。ただし、各種の記録再生原理は周知であり、ここでは説明を省略する。
光ピックアップ18から出射された光は、ディスク12の信号面上に結像され、微小なスポットを形成する。光ピックアップ18はシャフト20に沿って、駆動部(図示せず)によって移動される。したがって、光ピックアップ18によるスポットは、ディスク12上で2次元的に走査される。このスポットの照射によって信号がディスク12の信号面に記録され、また信号面に照射された光によって信号が再生される。
この発明を適用する光学系の構成は、記録再生方式の上述のような違いに応じて若干異なるが、図3実施例ではディスク12がDVD−R/RWである場合の光学系を示す。ただし、この発明はこれに限定されるものではない。
図4に示すように、光ピックアップ18のハウジング62内には、信号の記録再生のための光源であるレーザダイオード26が設けられ、このレーザダイオード26からの光は回折格子28に入射される。回折格子28は入射した光を3つに分け、偏光ビームスプリッタ30に入射する。偏光ビームスプリッタ30は、光をその偏光に応じて、反射あるいは透過させる。偏光ビームスプリッタ30の手前側側面には、光量を検出するためのフロントモニタ32が配置される。また、偏光ビームスプリッタ30の前方には、放射光を平行光に変換するためのコリメータレンズ34が設けられ、このコリメータレンズ34を通過した光は、直線偏光と円偏光との変換を行う1/4(4分の1)波長板36に与えられる。
1/4波長板36を出た光は、反射ミラー38によって反射されて、対物レンズ40を通して、ディスク12上に結像される。対物レンズ40は対物レンズホルダ42によって固定的に保持される。この対物レンズホルダ42の、ディスク12のトラックの接線方向すなわちタンジェンシャル方向における対物レンズ40の近傍の第1位置には、光透過部として機能する貫通孔44が形成される。対物レンズホルダ42は、ワイヤサスペンション46によって保持され、このワイヤサスペンション46は、ワイヤサスペンションプレート48によって保持される。
図6に示すように対物レンズ40の下方には、上述のタンジェンシャル方向において貫通孔44に対して対物レンズ40を挟んで反対側の第2位置に、対物レンズ40のチルトを検出するためのレンズチルトミラー50が、対物レンズホルダ42と一体に設けられる。
また、図4からよくわかるように、偏光ビームスプリッタ30の後面側側面には、チルトを検出するためのチルトプリズム52が配置され、このチルトプリズム52は、図5に示すように、光軸から離れた位置に設けられ、ディスク12での反射光を屈折してその反射光の方向を変えるためのプリズム54と、プリズム54とは逆方向に光軸から離れ、レンズチルトミラー50での反射光を屈折してその反射光の方向をプリズム54とは逆方向に変えるためのプリズム56とを含む。チルトプリズム52の後方には、非点収差を発生させるシリンドリカルレンズ58が設けられ、受光センサ60は、このシリンドリカルレンズ58からの光を受け、その光を電気信号(電流または電圧)に変換する。
ここで、図5−図7を用いて、通常の信号再生に用いられる光の流れを説明する。
レーザダイオード26から放射状に出射された光64a,64bおよび64cは、球面波であり、回折格子28を通過することで、それぞれに仮想光源を持った3つの球面波に分かれる。光64cは、コリメータレンズ34の光軸上のレーザダイオード26を光源とする0次光の主光線であり、光64aおよび光64bは、光軸に関して対称で、yz平面内に仮想光源を持つ+1次光および−1次光の主光線である。0次光は、光量が大きいメインビームとなり、信号の記録再生に用いられ、±1次光は、光量が小さい2つのサブビームとなり、ディファレンシャル・プッシュプル法と呼ばれるトラッキング・サーボに用いられる。
先ず、0次光の流れを説明する。偏光ビームスプリッタ30は、光のP波成分を所定の割合、たとえば9:1で、透過光と反射光とに分光し、S波成分を所定の割合、たとえば0:10で、透過光と反射光とに分光する。この光学系においては、レーザダイオード26の直線偏光の偏光面をzx平面と平行に配置しているので、レーザダイオード26から出射される光は、全てP波となる。したがって、全光量の10分の1が反射され、光66cとしてフロントモニタ32に入射され、残りの光68cが透過する。
フロントモニタ32に入射した光66cは、電気信号に変換され、オート・パワー・コントロールに利用される。制御回路、たとえば目標光量に対応した電気信号とフロントモニタ32の出力との差に応じた電気信号をレーザドライバICに与え、それによってレーザ26に供給する電流値を変化させるサーボ回路(図示せず)によって、この電気信号が所定の値に保たれるようにレーザダイオード26に供給される電流が制御され、結果的に、対物レンズ40から出射されるメインビーム70cが、所定の光パワーに保たれる。
偏光ビームスプリッタ30を透過した光68cは、コリメータレンズ34によって、球面波から平面波へ、言い換えれば、放射光から平行光に変換される。方向は、光軸に平行である。
コリメータレンズ34で変換された平行光は、1/4波長板36に入射し、直線偏光が円偏光に変換される。円偏光とは、光のP波とS波の位相が1/4波長ずれた状態を言う。そして光68cは、反射ミラー38で向きを変え、光70cとして対物レンズ40に入射する。この光70cは、ディスク12の信号面で結像し(光72c)、反射される(光74c)。このとき、反射によって光は位相が反転するため、言い換えると1/2波長だけ位相が変化するため、位相が1/4波長ずれているP波とS波の後先の関係が逆転する。すなわち、円偏光の回転方向が逆転する。
反射光は、往路を逆に辿り、先ず、対物レンズ40で平行光76cに変換された後、1/4波長板36を通過する(光78c)。このとき、円偏光から直線偏光に変換されるが、往路と違って、円偏光が逆向きであるため、変換された直線偏光の偏光面は、偏光ビームスプリッタ30におけるS波平面、すなわち、yz平面と平行になる。
次に、1/4波長板36からの平行光がコリメータレンズ34で集束光に変換され、光78cとして偏光ビームスプリッタ30に入射する。光78cはS波に直線偏光しているので、偏光ビームスプリッタ30では、100%反射され、その反射光80cは受光センサ60の方向へ向きを変える。
ディスク12で反射された光78cが、レーザダイオード26へ戻ると、再生した信号に乗るノイズが非常に多くなる。いわゆる「戻り光ノイズ」と呼ばれるものである。1/4波長板36と偏光ビームスプリッタ30とを用いることで、前述の作用のように、戻り光を遮断あるいはかなり軽減できる。
受光センサ60へ向かった光80cのうち、有効光束は、1対のチルト検出プリズム54および56の間を通過して、シリンドリカルレンズ58に入射する。シリンドリカルレンズ58の稜線は、光軸をx軸方向として、xy平面と45度を成す方向に傾いている。したがって、この断面内での光軸上の結像位置は、この断面と垂直な断面内での結像位置とは一致しない。このような非点隔差を発生させるのは、フォーカス・サーボに非点収差法を用いるためである。非点収差法はよく用いられている方法であり、原理も周知なことなので、ここでの説明は省略する。
光80cは、コリメータレンズ34とシリンドリカルレンズ58とによって、受光センサ60付近の光軸上で集光する。結像ではなく、「集光」という言葉を使ったのは、非点収差法によって、受光センサ60に集光される光は非点隔差を持っため結像しないからである。受光センサ60は、前述のシリンドリカルレンズ58によって規定された2断面での、それぞれの結像点のおよそ中間位置に置かれる。
光80cは、図8に示す、光軸位置に配置された4分割センサ60a,60b,60cおよび60dに、集光される。この受光センサ60は、記録信号を再生するためと同時に、フォーカス・サーボ用に用いるため4分割されているが、この作用に関しては、周知であるため、ここでは説明を省略する。
次に、同じく図5−図7を参照して、±1次光の流れを説明する。仮想光源から出射された拡散光である±1次光の主光線64aおよび64bは、光軸に対して傾きを持って、コリメータレンズ34に入射し、平行光に変換された後も、光軸と同じ傾きを持って進行する。そして、反射ミラー38で方向を変え、対物レンズ40でサブビームとしてディスク12上に結像する。図中、光68aおよび68bは、コリメータ中心を通過する±1次光を表わし、光72aおよび72bは、対物レンズ中心を通過する±1次光を表わしている。
±1次光72a,72bは、ディスク12の信号面上で、光軸からディスク12のトラック長手方向であって互いに逆に離れた位置で結像する。その反射光76aおよび76bは、対物レンズ40で平行光に変換されるが、その方向は、入射したときと同じである。そして、コリメータレンズ34とシリンドリカルレンズ58とによって、受光センサ60上に集光される(80a,80b)。結像ではなく、「集光」という言葉を使ったのは、上述と同様の理由による。光80aおよび80bは、シリンドリカルレンズ中心を通過する光の方向を表わしており、この延長上で集光する。
光80aおよび80bは、図8に示すように、光軸からy方向に、互いに逆に離れた2分割センサ60e,60f,60gおよび60hに入射する。これら2分割センサは前述のディファレンシャル・プッシュプル法におけるサブビームのデトラックを検出するためのものである。この分割方向については、前述同様、原理に含まれ、周知であるため、ここでは説明を省略する。
続いて、チルト・サーボについて説明するが、まず、ディスク12がチルトした場合および対物レンズ40がチルトした場合のそれぞれの場合の、ディスク信号面でのスポットの劣化を説明し、ディスクチルトの影響を、レンズチルトで相殺する方法を説明する。次に、この実施例での光の経路について説明し、チルトの検出方法を説明する。さらに、チルトサーボの動作を説明する。
まず、ディスク12のみがチルトした場合のスポットについて考える。図9はチルトがない場合の光線の状態を示す。対物レンズ40は、ディスク厚みによって発生する球面収差を相殺するように、球面収差を持たせて設計されているので、ディスク12の信号面上のスポットには、球面収差が発生しない。図10は、この場合に、対物レンズとは反対側から観察したディスク信号面上の結像スポットを示す模式図であり、光軸から離れた光線の集光中心は、近軸光線の結像中心と一致している。
ディスク12がチルトした場合の光線の状態を図11に示す。この場合における、対物レンズとは反対側から観察したディスク信号面上の結像スポットが図12に示される。図12からわかるように、ディスク12の傾きによって、光軸から離れた光線の集光中心が、近軸光線の結像中心から、ディスク12と対物レンズ40との間隔が狭くなった側に、離れている。この状態がコマ収差の発生した状態である。
次に、対物レンズ40のみがチルトした場合のスポットについて考える。図13は対物レンズ40のチルトがない場合の光線の状態を示す。図13では、対物レンズチルトの影響のみを考えるためディスク厚みをないのものとし、他方、レンズは単純に球面レンズとしているので、球面収差が発生している。図14は、この場合に、対物レンズ40と反対側から観察したディスク信号面上の結像スポットを示す模式図であり、光軸から離れた光線の集光中心は近軸光線の結像中心と一致している。
これに対して、図15は対物レンズ40がチルトした場合の光線の状態を示す。図16は、この場合の、対物レンズ40と反対側から観察したディスク信号面上の結像スポットを示す。この場合には、先のディスクチルトの場合(図12)と同様に、対物レンズ40の傾きによって、光軸から離れた光線の集光中心が、近軸光線の結像中心から、ディスク12と対物レンズの間隔が狭くなった側に離れて集光している。この状態がコマ収差の発生した状態である。
さらに、対物レンズ40に入射する光線がチルトした場合のスポットについて考える。この場合、レンズチルトと、ディスクチルトとの両方の影響がある。光線チルトがない場合の光線の状態は、先の図13と同様であるが、対物レンズ40は光線追跡しやすい球面レンズを想定していて、かつディスク12には厚みがあるので、この場合には、図17に示すように、ディスク信号面上のスポットには球面収差が発生している。この場合に、対物レンズ40と反対側から観察したディスク信号面上の結像スポットは、先の図14と同様であり、光軸から離れた光線の集光中心は、近軸光線の結像中心と一致している。
これに対して、図18は入射光がチルトした場合の光線の状態を示す。この場合、信号面での結像にコマ収差が発生し、対物レンズ40と反対側からディスク信号面上の結像スポットを観察すると、先の図16のようなスポットになる。つまり、入射光の傾きによって、光軸から離れた光線の集光中心が、近軸光線の結像中心から、入射光進行方向側に離れていて、コマ収差を発生している。
図11に示すようなディスクチルトによって発生したコマ収差を相殺するために、図15で示したのとは逆方向に対物レンズ40をチルトさせればよい。対物レンズ40が、ディスク12と平行になる方向に、対物レンズ40を傾けるわけであるが、全く平行になると、図18で示した光線チルトと同じ状況になり、コマ収差は相殺されないので、それに至る前のチルト状態がよい。
光ピックアップでは、ビームスポットをできるだけ絞るために、光量分布ができるだけ均一な状態で、平行光を対物レンズに入射する。つまり、ガウス分布を成す平行光の強度分布の内、中心部付近の比較的平坦な部分のみ入射させる。したがって、残りの部分は対物レンズ瞳でけられる(eclipse)ことになる。この発明では、チルト検出のために、このけられる光を有効に用いるので、別途光源が必要ではないし、本来のビームを生成するための半導体レーザの出力を余分に上げる必要もない。
図19−図22に基づいてチルト検出について説明するが、これらの図において、それぞれの光を示す参照符号としては、先の通常動作を示す図5−図7と同じまたは類似の参照符号を用いることを予め指摘しておく。
レーザ26から出射された拡散光の一部である光64aおよび64bは、偏光ビームスプリッタ30を透過して光67aおよび67bとなり、コリメータ34によって平行光68aおよび68bとなる。次に、反射ミラー38で反射された光70aおよび70bは、対物レンズ40に入射せず、光70aは、図4で示す貫通孔44を通過して、ディスク12表面に照射され、光76aとして反射される。別の光70bは、対物レンズ40を固定し保持するレンズホルダ42の一部に装着されたミラー50で反射して、光76bとなる。
ただし、ミラー50を省略し、光76bとして、対物レンズ40のレンズ効果のない平坦な部分からの反射光を利用するようにしてもよい。つまり、反射部としてミラー50を設けてもよく、あるいは対物レンズ40の平坦フランジ部分を用いるようにしてもよい。
対物レンズ40は、トラッキングのため、ラジアル方向すなわち図中x方向に移動するため、ラジアル方向でけられる光をチルト検出に利用するのは困難である。一方、タンジェンシャル方向すなわち図中z方向にはレンズシフトはないので、レンズ近傍でけられる光を利用しやすい。この場合、対物レンズホルダ42のレンズ近傍で、タンジェンシャル方向に離れた場所に、貫通孔44を形成して光透過部としたり、あるいは対物レンズホルダ42の一部を削除して(切り欠いて)光透過部を形成する。
対物レンズ40のチルトを検出するための反射面には、反射光の光束を制限し、迷光として記録信号の検出に悪影響を及ぼさないようにするために、アパーチャを用いてもよい。
反射光76aおよび76bは、反射ミラー38で方向を変えて光77aおよび77bとなり、さらにコリメータレンズ34で集束光78aおよび78bに変換されたあと、偏光ビームスプリッタ30で反射し、チルト検出プリズム52に入射する(光79a,79b)。
ディスク12での反射光79aは、チルト検出プリズム54によって、ラジアル方向、すなわち図中z方向に光の向きを変えて、光80aとして、図8に示す、ディスクチルト検出用の4分割センサ60i,60j,60kおよび60lに入射する。
レンズチルドミラーでの反射光79bは、チルト検出プリズム56によって、ラジアル方向であってかつ光79aとは逆方向に、光の向きを変え、光80bとして、図8に示すレンズチルト検出用の4分割センサ60m,60n,60oおよび60pに入射する。
光80aおよび80bは、光軸からラジアル方向にずれて落射するので、センサ60i,60j,60k,60l,60m,60n,60o,60pは、光軸からラジアル方向にずれて位置する。これは、トラッキングにディファレンシャル・プッシュプル法を利用する場合に、タンジェンシャル方向に離れて落射する±1次ビームを避けるためである。
また、光80aおよび80bは、逆向きの角度であるので、光軸を挟んで別々にセンサを配置することによって、互いの光を分離して検出することが可能となる。
ここでは、ラジアルおよびタンジェンシャルの両方のチルトに対応するため、4分割センサを用いているが、ラジアルあるいはタンジェンシャルの単独の検出でよい場合には、2分割センサでよい。ラジアルチルトのみを検出する場合の分割センサの状態を、図23に示す。
光67aおよび78a、光68aおよび77a、光70aおよび76aは、図中、同じ角度で逆方向であるように表しているが、これは、光70aがディスク12に対して垂直に照射された場合のみである。垂直に照射されなかった場合には、これらの光の角度はずれて、向きはおよそ逆向きとなる。また、光67bおよび78b、光68bおよび77b、光70bおよび76bは、図中、同じ角度で逆方向であるように表しているが、これは、光70bがレンズチルドミラー50に対して垂直に照射された場合のみである。垂直に照射されなかった場合には、角度はずれて、向きはおよそ逆向きとなる。
センサ上の光は、非点収差法のため、デフォーカスしているが、非点収差法を用いない場合には、結像していてもよい。
平行光をディスクに照射するので、光パワーの集中はなく、もし、記録パワーで照射させたとしても、記録済みの部分を、消去や上書きして、劣化させることはない。また、平行光であるため、ディスクでの反射光を集光しても、ディスク上のピットや溝による回折作用を受けることはない。
先ず、チルト検出の原理を、図24を用いて説明する。図24は一般的な凸レンズと、光軸に対して、角度θだけ傾いた光線が入射する平行光を示している。光線は、光軸から像高yだけ離れた位置で結像する。レンズの焦点距離をfとすると、y=f*sinθの関係がある。θが小さい場合、sinθ≒θと近似できるので、y≒f*θとなり、yはθに比例する。したがって、像高を検出できれば、入射光の傾きを検出することができる。
この原理をこの実施例の光の経路に当てはめてみる。反りを持ったディスク12が装着されると、ラジアルチルトおよびタンジェンシャルチルトの状態になる。ディスク12に照射された平行光70aの反射光76aは、ディスク12の傾きに応じて向きを変える。コリメータレンズ34に入射する方向も傾くため、これに応じて像高が変化する。
また、対物レンズ40を搭載したアクチュエータ22(図3)が何らかの手段によって、傾きが変えられると、この一部に形成されたレンズチルドミラー50に照射された平行光70bの反射光76bは、アクチュエータ22の傾きに応じて、方向を変える。すると、コリメータレンズ34に入射する方向も傾くため、これに応じて像高が変化する。
次に、像高を検出する方法を、受光センサが4分割センサの場合で説明する。簡単のため、ディスクチルトがない状態では、反射光80aは4分割センサ60i,60j,60kおよび60lの中央に落射すると仮定する。
光量に応じて流れる電流をIi,Ij,IkおよびIlとする。ビームが4分割センサ全体の中央に落ちればIi=Ij=Ik=Ilである。中央からずれれば、これらはアンバランスとなる。
ディスク12がラジアル方向に傾くと、反射光80aが落射する位置は、センサ60iとセンサ60jとの並び方向、あるいはセンサ60lとセンサ60kとの並び方向に移動する。タンジェンシャル方向に傾くと、反射光80aが落射する位置は、センサ60iとセンサ60lとの並び方向、あるいはセンサ60jとセンサ60kとの並び方向に移動する。
像高すなわち電流のアンバランスさを表す特性値として、ラジアル方向については、(Ii+Il)−(Ij+Ik)を用いる。タンジェンシャル方向については、(Ii+Ij)−(Ii+Ik)を用いる。
同様にして、対物レンズが傾いた場合を説明する。簡単のため、レンズチルトがない状態では、反射光80bは、4分割センサ60m,60n,60oおよび60pの中央に落射すると仮定する。光量に応じて流れる電流をIm、In、Io、Ipとする。ビーム4分割センサ全体の中央に落ちればIm=In=Io=Ipである。中央からずれればこれらはアンバランスとなる。
対物レンズ40すなわちレンズチルドミラー50がラジアル方向に傾くと、反射光80bが落射する位置は、センサ60mとセンサ60nとの並び方向、あるいはセンサ60pとセンサ60oとの並び方向に移動する。タンジェンシャル方向に傾くと、反射光80bが落射する位置は、センサ60mとセンサ60pとの並び方向、あるいはセンサ60nとセンサ60oとの並び方向に移動する。
像高、すなわち電流のアンバランスさを表す特性値として、ラジアル方向については、(Im+Ip)−(In+Io)を用いる。タンジェンシャル方向については、(Im+In)−(Ip+Io)を用いる。
これら特性値の符号によって、チルト方向すなわち角度の正負が検出できる。いずれも図示しないが、これらの計算は専用のハードウェア回路で実現してもよいし、電流値をAD変換した後、コンピュータに入力し、コンピュータによって計算してもよい。つまり、実施例の光ディスク装置10は制御回路(図示せず)を有するが、その制御回路に計算回路やコンピュータが含まれる。
以上は4分割センサの場合で説明したが、ラジアルチルトあるいはタンジェンシャルチルトのどちらか一方の検出をする場合には、2分割センサでよく、この場合も同様に検出できる。ラジアルチルトを検出する場合を例にとって、図23を用いて、4分割センサの場合との相違点のみ説明する。
反射光80aは、2分割センサ60iおよび60jに落射する。光量に応じて流れる電流をIiおよびIjとする。ディスク12がラジアル方向に傾くと、反射光80aが落射する位置は、センサ60iとセンサ60jとの並び方向に移動する。像高、すなわち電流のアンバランスさを表す特性値として、ラジアル方向について、(Ii−Ij)を用いる。
同様にして、反射光80bは、センサ60kおよび60lに落射する。光量に応じて流れる電流をIkおよびIlとする。レンズ40すなわちレンズチルドミラー50がラジアル方向に傾くと、反射光80bが落射する位置は、センサ60kとセンサ601との並び方向に移動する。像高、すなわち電流のアンバランスさを表す特性値として、ラジアル方向について、(Ik−Il)を用いる。
ディスクチルトによって発生するコマ収差を、対物レンズチルトによって発生するコマ収差によって相殺するには、対物レンズをディスクチルトと同じ方向に傾ければよい。レンズがディスクと平行になる方向にレンズを傾けるわけであるが、全く平行になると、光線チルトと同じ状況になり、コマ収差は相殺されないので、それに至る前のチルト状態がよい。
そこで、ディスクチルト量と、これによるコマ収差を打ち消す対物レンズのチルト量とを、予め調べておき、ディスクチルト量を検出したあと、前述の関係に応じてレンズをチルトさせればよい。これは、レンズ設計によって決まるものなので、ピックアップ個々に設定する必要はない。
実際の動作としては、ディスクチルト特性値と、レンズチルト特性値どちらかの特性値に係数を掛けたのち、両者の差がゼロになるように、対物レンズの傾きを調整して、サーボ制御をかける。すなわち、演算結果の符号によって対物レンズを傾ける方向を決定し、演算結果の絶対値で傾ける量を決定し、検出、演算、調整のループを絶えず繰り返す。
チルトがない場合、光80aおよび80bは、それぞれ、4分割センサ全体の概略中央に入射するが、必ずしもちょうど中央という必要はない。中央から外れると、特性値はゼロにはならないが、その値をオフセット値と認識して、特性値からその分を減じてもよいし、チルトサーボでの目標値を、その分だけ増加しておけばよい。また、仮にちょうど中央に位置させても、4分割センサ出力や、その他の回路出力のオフセットによって、特性値にはオフセットが発生する。このオフセット値は、製造過程で、あらかじめ測定可能である。反りのないディスクに対して、ピックアップがディスクに対して正規の姿勢にして、ディスク上でコマ収差が発生しないように、対物レンズを傾けた状態での、各特性値を測定すればよい。
DVDおよびCDの両ディスクを、1つの光ピックアップで記録または再生する場合には、同じ対物レンズで2種類のディスク厚みのチルトに対応する必要がある。このような場合には、CD使用時とDVD使用時とで、ディスクチルト量と、これによるコマ収差を打ち消す対物レンズのチルト量とを、別々に調べておき、これに応じて各々チルトサーボをかければよい。
また、DVDとCDの両ディスクを1つの光ピックアップで記録または再生する場合で、光ピックアップ内部に別々の光源を用いる場合には、反りがなく水平なディスクを装着したときのチルト検出信号が両光源の場合で必ずしも一致しない。これは、両光源位置に誤差があると、コリメータレンズを通過してディスクヘ向かう平行光の方向が一致しないからである。このようなときには、別々にオフセット値を測定しておけばよい。ここでは、CDとDVDを例に挙げたが、ディスクの種類は問わない。
ディスクチルトの検出を受けて、実際に対物レンズの傾きを調整する方法については、各種既に報告されており、この発明は特定の方法にこだわらない。
図25−図31を参照して、第1実施例で述べた、ディスクチルトの検出方法のみを、従来技術1に応用した場合を、第2の実施例として説明する。
図25に示す光ディスク装置10において、信号の記録再生体であるディスク12は、保持部14に保持され、スピンドルモータ16によって回転され、光ピックアップ18からの光照射を受け、それによってディスク12に信号が記録されあるいはディスク12からの信号が再生される。光ピックアップ18はシャフト20aによってシャフト20の軸方向に移動可能に保持され、そのシャフト20はシャフトホルダ22によって保持される。シャフトホルダ22はシャフトホルダシャーシ24上に固定される。
上述のスピンドルモータ16は、スピンドルモータシャーシ84上に固定され、このスピンドルモータシャーシ84とシャフトホルダシャーシ24とが支軸86によって連結される。そして、シャフトホルダシャーシ24の端を上下に揺動させるカム88がスピンドルモータシャーシ84上に設けられる。
図26に示す光ピックアップ18は、以下の点を除いて、図4に示す光ピックアップ18と同様であり、ここでは、同一または類似の参照符号を用いて、重複する説明は省略する。すなわち、この第2実施例では、ディスクチルトだけを検出するために、偏光ビームスプリッタ30とシリンドリカルレンズ58との間に1つのプリズム54だけが設けられる。
第2実施例の光線の状態を示す図27−図30では、第1実施例を示す先の図19−図22において、対物レンズチルトを検出するための光、すなわち「b」が付された光を省略している。したがって、図27−図30において図19−図22と同一または類似の参照符号を用いることによって、重複する説明は省略する。
そして、ディスクチルト検出用の光79aは、図27−図30に示すように、ディスクチルト検出プリズム54によって、ラジアル方向すなわち図中z方向に光の向きを変えて光80aとなり、図31に示すディスクチルト検出用の2分割センサ60iおよび60jに入射する。
光80aは、光軸からラジアル方向にずれて落射するので、センサ60iおよび60jは、光軸からラジアル方向にずれて配置される。これは、トラッキングにディファレンシャル・プッシュプル法を利用する場合に、タンジェンシャル方向に離れて落射する±1次ビームを避けるためである。ここでは、ラジアルチルトのみに対応するため、2分割センサを用いている。
チルト検出の原理は、第1実施例で説明したので、これを省略する。
ラジアルチルトが発生するような反りを持ったディスク12に照射された平行光70aの反射光76aは、ディスク12の傾きに応じて向きを変える。したがって、コリメータレンズ34に入射する方向も傾くため、これに応じて像高が変化する。
像高を検出する方法は、第1実施例と同じであるので、簡単に説明する。ラジアルチルトのみの検出であるので受光センサが2分割センサの場合で説明する。簡単のため、ディスクチルトがない状態では、反射光80aは、2分割センサ60iおよび60jの中央に落射すると仮定する。光量に応じて流れる電流をIiおよびIjとする。
ビームが2分割センサ全体の中央に落ちればIi=Ijである。中央から外れれば、これらはアンバランスとなる。
ディスク12が、ラジアル方向に傾くと、反射光80aが落射する位置は、センサ60iおよび60jの並び方向に移動する。像高、すなわち、電流のアンバランスさを表す特性値として、ラジアル方向について、(Ii−Ij)を用いる。
これら特性値の符号によって、チルト方向、すなわち角度の正負が検出できる。また、センサ出力の差を、総和で割った比率を用いることで、落射位置を2分割センサの大きさを基準にした相対的な値として検出することができるので、2分割センサの大きさや形状、配置が同じであれば、反射率の異なる様々のディスクにおいても、それら特性値を同様に扱うことができる。
先の実施例と同様に、これらの計算はハードウェア回路で実現してもよいし、電流値をAD変換した後コンピュータで計算して求めてもよい。
先ず、前述の方法で、ディスクのラジアルチルト量を検出する。そして、図25に示すカム88が図示しない駆動源によって回転され、シャフトホルダシャーシ84の端を上下に揺動させる。その結果、支軸86を中心にこのシャーシ84上に装着された光ピックアップ18は、傾きを変える。光ピックアップ18の傾きを変えつつ、ディスク12とピックアップの相対的な角度を、前述の方法で検出し、ちょうど、ディスク上のスポットが良好となるであろう状態で、カム88を停止れば、ディスク上のスポットからコマ収差が解消される。
チルトがない場合、光80aは、それぞれ、2分割センサ全体の概略中央に入射するが、必ずしもちょうど中央という必要はない。中央から外れると、特性値はゼロにはならないが、その値をオフセット値と認識して、特性値からその分を減じてもよいし、チルトサーボでの目標値を、その分だけ増加しておけばよい。また、仮にちょうど中央に位置させても、2分割センサ出力や、その他の回路出力のオフセットによって、特性値にはオフセットが発生する。このオフセット値は、製造過程で、あらかじめ測定可能である。反りのないディスクに対して、ピックアップがディスクに対して正規の姿勢にして、ディスク上でコマ収差が発生しないように、対物レンズを傾けた状態での、各特性値を測定すればよい。
DVDとCDの両ディスクを1つの光ピックアップで記録または再生する場合で、光ピックアップ内部に別々の光源を用いる場合には、反りがなく水平なディスクを装着したときの、チルト検出信号が、両光源の場合で必ずしも一致しない。これは、両光源位置に誤差があると、コリメータレンズを通過してディスクヘ向かう平行光の方向が一致しないからである。このような時には、別々にオフセット値を測定しておけばよい。ここでは、CDとDVDを例に挙げたが、ディスクの種類は問わない。
第1実施例では、チルト量に比例した像高、すなわち、分割センサに落射する光の位置を検出する方法として、検出したいチルトの方向と直交した対称軸で二分して、そのセンサ出力の差を特性値としたが、ここでは、出力の差を、総和で割った比率を特性値とした方法を説明する。この第3の実施例は、第2実施例にも適用できる。
光ディスク装置10やその光学系および光の経路、さらにはチルトの検出方法については、第1実施例と全く同じであるので、説明を省略する。
次に、像高を検出する方法を受光センサが4分割センサの場合で説明する。簡単のため、ディスクチルトがない状態では、反射光80a(図22および図30)は、図8に示す4分割センサ60i,60j,60および60lの中央に落射すると仮定する。
光量に応じて流れる電流をIi,Ij,IkおよびIlとする。ビームが4分割センサ全体の中央に落ちればIi=Ij=Ik=Ilである。中央からずれれば、これらはアンバランスとなる。
ディスク12がラジアル方向に傾くと、反射光80aが落射する位置は、センサ60iとセンサ60jとの並び方向、あるいはセンサ60lとセンサ60kとの並び方向に移動する。タンジェンシャル方向に傾くと、反射光80aが落射する位置は、センサ60iとセンサ60lとの並び方向、あるいはセンサ60jとセンサ60kとの並び方向に移動する。
像高、すなわち電流のアンバランスさを表す特性値として、ラジアル方向については、((Ii+Il)−(Ij+Ik))/(Ii+Il+Ij+Ik)を用いる。タンジェンシャル方向については、((Ii+Ij)−(Il+Ik))/(Ii+Il+Ij+Ik)を用いる。
同様にして、対物レンズが傾いた場合を説明する。簡単のため、レンズチルトがない状態では、反射光80(図22,図30)は、4分割センサ60m,60n,60oおよび60pの中央に落射すると仮定する。光量に応じて流れる電流をIm,In,IoおよびIpとする。ビーム4分割センサ全体の中央に落ちればIm=In=Io=Ipである。中央からずれればこれらはアンバランスとなる。
対物レンズ40すなわちレンズチルドミラー50がラジアル方向に傾くと、反射光80bが落射する位置は、センサ60mとセンサ60nとの並び方向、あるいはセンサ60pとセンサ60oとの並び方向に移動する。タンジェンシャル方向に傾くと、反射光80bが落射する位置は、センサ60mとセンサ60pとの並び方向、あるいはセンサ60mとセンサ60oとの並び方向に移動する。
像高、すなわち電流のアンバランスさを表す特性値として、ラジアル方向については、((Im+Ip)−(In+Io))/(Im+Ip+Io+Ip)を用いる。タンジェンシャル方向については、((In+Im)−(Ip+Io))/(Im+In+Io+Ip)を用いる。
これら特性値の符号によって、チルト方向、すなわち角度の正負が検出できる。また、検出したいチルトの方向と直交した対称軸で二分して、足し合わせたセンサ出力の差を、総和で割った比率を用いることで、落射位置を4分割センサの大きさを基準にした相対的な値として検出することができるので、4分割センサの大きさや形状、配置が同じであれば、反射率の異なる、ディスクと、レンズチルドミラーの、それぞれの反射光においても、それら特性値は同様に扱うことができる。当然、同じ理由で、反射率の異なる様々なディスクにも対応できる。
先の第1実施例や第2実施例と同様に、これらの計算は回路で実現してもよいし、電流値をAD変換した後、計算して求めてもよい。
以上は4分割センサの場合で説明したが、ラジアル、あるいはタンジェンシャルのチルトのどちらか一方の検出をする場合には2分割センサでよく、この場合も同様に検出できる。ラジアルチルトを検出する場合を例にとって、図23を用いて、4分割センサの場合との相連点のみ説明する。
反射光80aは、図23示す2分割センサ60iおよび60jに落射する。光量に応じて流れる電流をIiおよびIjとする。ディスク12がラジアル方向に傾くと、反射光80aが落射する位置は、センサ60iとセンサ60jとの並び方向に移動する。像高、すなわち電流のアンバランスさを表す特性値として、ラジアル方向について、(Ii−Ij)/(Ii+Ij)を用いる。
同様にして、反射光80bはセンサ60kおよび60lに落射する。光量に応じて流れる電流をIkおよびIlとする。対物レンズ40すなわちレンズチルドミラー50がラジアル方向に傾くと、反射光80bが落射する位置は、センサ60kとセンサ601との並び方向に移動する。像高、すなわち電流のアンバランスさを表す特性値として、ラジアル方向について、((Ik−Il)/(Ik+Il)を用いる。
チルトサーボの動作については、第1実施例と同じであるので、説明を省略する。