JP2004068952A - ベルト伝動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ベルトを駆動させる駆動プーリのベルト走行方向後方でのベルトの弛みに起因して発生するベルトの弦を効果的に抑制することのできるベルト伝動装置を提供する。
【解決手段】ベルト駆動装置1には、伝動ベルト8の走行方向において、クランクシャフト3aに取り付けられたクランクプーリ3より、M/Gプーリ4、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6、A/Cプーリ7の順に各種補機類に取り付けられたプーリが配置されている。M/Gプーリ4では、その単位巻掛け長さにおける伝動ベルト8との接触面積が、他のプーリ3,5,6,7に比して約20%低減されている。
【選択図】 図1
【解決手段】ベルト駆動装置1には、伝動ベルト8の走行方向において、クランクシャフト3aに取り付けられたクランクプーリ3より、M/Gプーリ4、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6、A/Cプーリ7の順に各種補機類に取り付けられたプーリが配置されている。M/Gプーリ4では、その単位巻掛け長さにおける伝動ベルト8との接触面積が、他のプーリ3,5,6,7に比して約20%低減されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベルトを駆動させる駆動プーリと、その駆動プーリによるベルトの駆動を通じて駆動される複数の被動プーリとを備えるベルト伝動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用内燃機関においては、スタータモータ、ウォータポンプ、パワーステアリング用ポンプ、エアコンディショナ用コンプレッサ等の各種補機類が設けられている。こうした補機類の駆動装置としては、これら補機類の回転軸、及び機関出力軸であるクランクシャフトにそれぞれプーリを取り付けるとともに、それらプーリ間にベルトを巻き掛けて、エンジン出力軸の回転に応じて補機類を駆動させるベルト伝動装置が広く採用されている。
【0003】
従来、特開2001−99259号公報には、こうしたベルト伝動装置において、ベルト、プーリ間のすべり率を制御して、ベルトの騒音を低減する技術が記載されている。この技術は、補機類やクランクシャフトに加え、機関始動用のモータもベルト伝動系に組み込んで、ベルトを介してモータ回転力をクランクシャフトに伝達させて機関始動を行う構成のベルト伝動装置をその前提としている。このようなベルト伝動装置では、エンジン始動時にモータから伝達される大きい伝動トルクのため、各プーリに対するベルトのすべり量が増大してベルトとプーリとが擦れ合うことから、ベルトの「鳴き」と言われる異音が発生する。上記公報には、エンジン始動時の各プーリにおけるベルトのすべり量を一律に0.05m以下とすることで、そうした異音の発生を有効に低減できることが示されている。要するに、上記公報に記載の技術では、各プーリでのベルトのすべりを一律に制限することで、ベルトに発生する異音の低減を図っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一方、以下に述べるような、ベルト走行方向におけるクランクプーリ後方でのベルトの弛みに起因したベルトの弦共振によって、上記「鳴き」とは別のベルト騒音が発生することが確認されている。こうした弦共振によるベルト騒音に対しては、上記公報のすべり量の設定態様では低減効果は得られず、未だ有効な対策が取られていないのが実情である。
【0005】
以下、こうした弦共振によるベルト騒音の原因について、図6及び図7を参照して詳細に説明する。クランクシャフトに取り付けられてベルト73を駆動させるクランクプーリ70と、ベルト走行方向においてそのクランクプーリ70直後方に配設された補機類などのプーリ(以下、「被動プーリ」という)71との間の部分には、一定のベルト73の弛みが発生してしまう。通常、そうした弛みの発生する部位には、図6に示されるように、テンショナ74が設けられ、その付勢力Fによりベルト73の張力が保持されるようになっている。
【0006】
ところが、設置される補機類の構成やその配置態様などによっては、そうした弛みの発生する部位にテンショナ74を設けることができないことがある。例えば、上記被動プーリ71として機関始動用モータのプーリを配置する場合には、上記部位にテンショナ74が介在されていると、モータの回転力により生じたベルト73の張力の一部がテンショナ74により吸収されてしまう。その結果、モータからクランクシャフトへのトルクの伝達率が低下してしまうことがあり、上記部位へのテンショナ74の設置が困難となる場合がある。
【0007】
こうした場合、上記部位でのベルト73の弛みは残されたままとなる。そのため、内燃機関の回転変動に起因したベルト73の張力変動の周波数が特定の値となると、図7に示すように、クランクプーリ70と被動プーリ71との間に掛け渡された部分のベルト73が弦共振を起こしてしまい、異音が発生してしまう。こうした異音に対しては、上記公報に記載されているように、各プーリでのベルトのすべりを一律に制限しても、何らの低減効果は望めないことは明らかである。
【0008】
なお、こうした弦共振による異音の発生は、上記のような車載内燃機関の補機類を駆動する装置に限らず、それ以外のベルト駆動装置でも、ベルトを駆動させる駆動プーリと、そのベルト走行方向後方に配置された被動プーリとの間の部分に掛け渡されたベルトで発生する普遍的な問題である。
【0009】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ベルトを駆動させる駆動プーリのベルト走行方向後方でのベルトの弛みに起因して発生するベルトの弦を効果的に抑制することのできるベルト伝動装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の発明は、ベルトを駆動させる駆動プーリと、その駆動プーリによる前記ベルトの駆動を通じて駆動される複数の被動プーリとを備えるベルト伝動装置において、前記ベルトの走行方向において前記駆動プーリの直後方に配置された特定の被動プーリ、及び前記駆動プーリの少なくとも一方は、他のプーリに比して、前記ベルトに対するすべり量が大きく設定された緩衝用プーリとされていることをその要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、ベルトを駆動される駆動プーリと、ベルトの走行方向においてその駆動プーリの直後方に配置された特定の被動プーリとの間の部位では、ベルトには弛みが生じ、それによりその部位に掛け渡されたベルトの弦共振が発生することがある。上記構成では、そうした弦共振発生部位の両端のプーリ、すなわち駆動プーリ及び上記特定の被動プーリの少なくとも一方は、ベルトに対するすべりが生じ易くなっている。そのため、上記のような弦共振の発生時に、ベルトの振動エネルギを、ベルトとプーリとのすべりに伴う摩擦による熱エネルギに変換して吸収することができる。このように、上記構成では、ベルトの弛みが生じて弦共振の発生する部位に隣接するプーリでのベルトのすべり量を選択的に大きく設定することで、弦共振の抑制を図っている。従って、ベルトを駆動させる駆動プーリのベルト走行方向後方でのベルトの弛みに起因して発生するベルトの弦共振を効果的に抑制することができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、ベルトを駆動させる駆動プーリと、その駆動プーリによる前記ベルトの駆動を通じて駆動される複数の被動プーリとを備えるベルト伝動装置において、前記ベルトの走行方向において前記駆動プーリの直後方に配置された特定の被動プーリ、及び前記駆動プーリのいずれか一方は、単位巻掛け長さにおける前記ベルトに対する接触面積が、他のプーリに比して10%以上かつ25%以下の範囲で低減された緩衝用プーリとされていることをその要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、弦共振発生部位の両端のプーリ、すなわち駆動プーリ及び上記特定の被動プーリのいずれか一方は、ベルトに対する接触面積が、他のプーリに比して低減されており、ベルトに対するすべりが生じ易くなっている。そのため、ベルトの振動エネルギを、ベルトとプーリとのすべりに伴う摩擦による熱エネルギに変換して吸収することができる。このように、上記構成では、ベルトの弛みが生じて弦共振の発生する部位に隣接するプーリでのベルトのすべり量を選択的に大きく設定することで、弦共振の抑制を図っている。また、そうした振動エネルギの吸収により弦共振を緩和させるプーリ、すなわち緩衝用プーリの上記接触面積を、上記のように設定することで、弦共振の抑制に望ましい適度なすべりが得られることが、発明者等によって確認されている。従って、上記構成によれば、ベルトを駆動させる駆動プーリのベルト走行方向後方でのベルトの弛みに起因して発生するベルトの弦共振を、更に効果的に抑制することができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載のベルト伝動装置において、前記ベルトは、その走行方向に延びるリブが内周に形成されたリブベルトであり、前記駆動プーリ及び前記複数の被動プーリには、そのベルトのリブに係合されるリブ溝が形成されたものであって、前記緩衝用プーリは、それに形成される前記リブ溝の数を、他のプーリに形成された前記リブ溝の数に比して少なくすることで、前記接触面積の低減がなされていることをその要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、緩衝用プーリに形成されるリブ溝の数を減らせば、その分、ベルトに対する上記接触面積を低減させることができる。このとき、低減させる接触面積をリブ溝の数で管理できるため、その設定は非常に容易である。なお、上記接触面積の低減率の設定のため、ベルト等に形成されるリブの数を増加させる必要が生じても、それによりベルトの耐久性が損なわれることはない。そのため、ベルトの耐久性、信頼性についても、これを好適に保持できる。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項2に記載のベルト伝動装置において、前記ベルトは、その走行方向に延びるリブが内周に形成されたリブベルトであり、前記駆動プーリ及び前記複数の被動プーリには、そのベルトのリブに係合されるリブ溝が形成されたものであって、前記緩衝用プーリに形成される前記リブ溝の深さを、他のプーリに形成された前記リブ溝の深さに比して小さくすることで、前記接触面積の低減がなされていることをその要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、緩衝用プーリに形成されるリブ溝の深さを小さくすれば、その分、ベルトに対する上記接触面積を低減させることができる。こうした接触面積の低減は、ベルトの構成を変更することなく行えるため、ベルトの耐久性、信頼性についても、これを好適に保持できる。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項2に記載のベルト伝動装置において、前記ベルトは、その走行方向に延びるリブが内周に形成されたリブベルトであり、前記駆動プーリ及び前記複数の被動プーリには、そのベルトのリブに係合されるリブ溝が形成されたものであって、前記緩衝用プーリに形成される前記リブ溝の幅を、他のプーリに形成された前記リブ溝の幅に比して大きくすることで、前記接触面積の低減がなされていることをその要旨とする。
【0019】
上記構成によれば、緩衝用プーリに形成されるリブ溝の幅を大きくすれば、その分、ベルトに対する上記接触面積を低減させることができる。こうした接触面積の低減は、ベルトの構成を変更することなく行えるため、ベルトの耐久性、信頼性についても、これを好適に保持できる。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載のベルト伝動装置において、前記特定の被動プーリは、前記ベルトを通じて伝達された動力により発電を行う発電機としての作動と、前記ベルトを駆動させる電動機としての作動とを、状況に応じて切り替え可能な発電電動機に取り付けられていることをその要旨とする。
【0021】
上記構成によれば、ベルトの走行方向において駆動プーリの直後方に配置された特定の被動プーリに、発電電動機に取り付けた場合、その特定の被動プーリによってベルトを駆動して、駆動プーリを駆動する状況になることもある。そうした構成では、駆動プーリと上記特定の被動プーリとの間の部位にテンショナを設けると、特定の被動プーリから駆動プーリへのトルクの伝達率の低下を招いてしまう。その点、上記構成では、テンショナを設けることなく弦共振を抑制できるため、特定の被動プーリから駆動プーリへのトルクの伝達率の保持と、弦共振の抑制との両立を図ることができる。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載のベルト伝動装置において、前記緩衝用プーリは、前記特定の被動プーリであることをその要旨とする。
【0023】
上記構成によれば、弦共振の抑制に係るすべりの発生が特定の被動プーリの側であるため、ベルトを駆動させる駆動プーリのトルク伝達効率についてもこれを好適に維持できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のベルト伝動装置を具体化した一実施形態を、図1〜図4を参照して詳細に説明する。ここでは、本発明のベルト伝動装置を、図1に示すような車載内燃機関の補機駆動用のベルト伝動装置1に適用した場合について説明する。
【0025】
このベルト伝動装置1では、内燃機関2の出力軸であるクランクシャフト3aの回転力を、その内燃機関2の周囲に配置された各補機類に伝動ベルト8を通じて伝達してこれらを駆動させている。この内燃機関2の周囲には補機類として、発電電動機4a、ウォータポンプ5a、パワーステアリング用のオイルポンプ6a、空調装置用のコンプレッサ7aが設けられている。
【0026】
発電電動機4aは、伝動ベルト8を通じてクランクシャフト3aから伝達された動力により発電を行う発電機としての作動と、自身が動力を発生してベルト8を駆動する電動機としての作動とを、状況に応じて切り替えられるようになっている。ウォータポンプ5aは、その駆動に応じて、機関冷却用の冷却水を循環させる。オイルポンプ6aは、その駆動に応じて、パワーステアリング装置に供される油圧を発生する。更にコンプレッサ7aは、その駆動に応じて、空調装置に使用される冷媒を循環させる。
【0027】
これら各補機類の回転軸及びクランクシャフト3aには、それぞれプーリが取り付けられている。すなわち、クランクシャフト3aにはクランクプーリ3が、発電電動機4aの回転軸にはM/Gプーリ4が、ウォータポンプ5aの回転軸にはW/Pプーリ5が、オイルポンプ6aの回転軸にはP/Sプーリ6が、更にコンプレッサ7aの回転軸にはA/Cプーリ7がそれぞれ取り付けられている。
【0028】
これらの各プーリ3〜7には、伝動ベルト8が巻き掛けられている。このベルト伝動装置1では、ベルト走行方向においてクランクプーリ3から、M/Gプーリ4、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6、A/Cプーリ7の順に伝動ベルト8が巻き掛けられている。クランクプーリ3とM/Gプーリ4との間には、それら各プーリ3,4に対する伝動ベルト8の巻き掛け量を増大させたり、伝動ベルト8のぶれを抑制したりするためのアイドラ9,10,11が配設されている。またW/Pプーリ5とP/Sプーリ6との間には、伝動ベルト8に張力を付与するテンショナ12が配設されている。
【0029】
こうしたベルト伝動装置1では、内燃機関2の運転中は、クランクシャフト3aの回転力を、伝動ベルト8を通じて上記各補機類に伝達してこれらを駆動させる。すなわち、内燃機関2の発生する動力によりクランクシャフト3aが回転されると、それに取り付けられたクランクプーリ3が回転し、伝動ベルト8がそのクランクプーリ3からM/Gプーリ4側に向けて送り出される。これにより、伝動ベルト8が駆動され、各補機類のプーリ、すなわちM/Gプーリ4、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6及びA/Cプーリ7が回転され、各補機類が駆動される。なお、このときの発電電動機4aは、発電機として作動されている。
【0030】
一方、内燃機関2の始動時には、発電電動機4aが電動機として作動され、その回転力を、伝動ベルト8を通じて、クランクシャフト3a、及びその他の補機類(ウォータポンプ5a、オイルポンプ6a、コンプレッサ7a)に伝達してこれらを駆動させる。すなわち、発電電動機4aの発生する動力によりM/Gプーリ4が回転されると、伝動ベルト8がそのM/Gプーリ4からW/Pプーリ5側に向けて送り出される。これにより、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6、A/Cプーリ7及びクランクプーリ3が回転され、上記その他の補機類が駆動されるとともに、クランクシャフト3aが回転される。
【0031】
こうした本実施形態のベルト伝動装置1では、その伝動ベルト8として、図2に示されるようなVリブド・ベルトが採用されている。すなわち、この伝動ベルト8の内周の巻掛け面には、その走行方向に延伸された複数の(ここでは10本の)リブ8bが突出形成されている。このリブ8bは、先端に向かって縮幅する断面略V字形状に形成されている。
【0032】
一方、こうした伝動ベルト8が巻き掛けられる各プーリ3〜7の外周の巻掛け面にも、上記リブ8bが噛み合わされる複数のリブ溝3b〜7bがそれぞれ形成されている。これらのリブ溝3b〜7bは、各プーリ3〜7の周方向に延伸されており、断面略V字形状に形成されている。なお、同図2では、M/Gプーリ4の伝動ベルト8の巻き掛け態様が例として示されている。
【0033】
以上説明したように構成された本実施形態のベルト伝動装置1では、内燃機関2の運転中のクランクシャフト3aによる伝動ベルト8の駆動に際して、クランクプーリ3のベルト走行方向後方では、すなわちクランクプーリ3のM/Gプーリ4側では、伝動ベルト8の弛みが生じる。この弛みは、伝動ベルト8の走行速度が、各補機類の駆動抵抗を受けて減速されることに起因して生じる。一方、このベルト伝動装置1では、伝動ベルト8に張力を付与するテンショナ12がW/Pプーリ5とP/Sプーリ6との間に配設されているため、クランクプーリ3とM/Gプーリ4との間の部位での伝動ベルト8の弛みは、十分に解消することができなくなっている。そのため、クランクシャフト3aの回転速度変動などに起因する伝動ベルト8の張力変動の周波数が、伝動ベルト8の上記弛み発生部位に掛け渡された部位の固有振動数と一致すると、弦共振が発生してしまう。
【0034】
これに対して本実施形態では、上記各プーリ3〜7のリブ溝3b〜7bの設置態様により、各プーリ3〜7での伝動ベルト8のすべり量を適宜に調整することで、弦共振の抑制を図るようにしている。詳しくは、上記弦共振の発生部位の両側に位置するクランクプーリ3とM/Gプーリ4のうち、M/Gプーリ4については、その伝動ベルト8に対するすべり量が、他のプーリ3,5〜7のそれに比して大きくなるような調整がなされている。こうしたすべり量の調整は、M/Gプーリ4での単位巻掛け長さにおける伝動ベルト8との接触面積を、他のプーリ3,5〜7のそれに比して低減させることで行える。すなわち、上記接触面積が低減されるほど、M/Gプーリ4と伝動ベルト8との摩擦が低減されることから、それらのすべりが生じ易くすることができる。
【0035】
こうして弦共振の発生部位の一端に位置するM/Gプーリ4にて、伝動ベルト8のすべりが生じると、伝動ベルト8の振動エネルギが、そのすべりに伴う摩擦によって生じる熱エネルギに変換されて吸収されるようになる。そしてその結果、弦共振の振動レベルは、効果的に低減されるようになる。
【0036】
なお発明者等は、こうしたM/Gプーリ4での単位巻掛け長さにおける伝動ベルト8との接触面積を、他のプーリ3,5〜7に比して10%以上、25%以下の範囲で低減することで、そのM/Gプーリ4にて、弦共振の抑制に望ましい適度な伝動ベルト8のすべりを発生できることを見出している。そこで本実施形態では、各プーリ3〜7のリブ溝3b〜7bの設置態様を通じて、そうした接触面積の調整を図るようにしている。
【0037】
次に、本実施形態での上記接触面積の調整にかかるリブ溝設置態様の詳細を説明する。M/Gプーリ4以外の各プーリ(クランクプーリ3、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6、A/Cプーリ7)では、図4に示されるような態様で、リブ溝3b〜7bが形成されている。すなわち、これらのプーリ3,5〜7では、伝動ベルト8に形成された10本のリブ8bのすべてが、それぞれ噛み合わされるように10本のリブ溝3b,5b,6b,7bが形成されている。なお、同図4では、クランクプーリ3のリブ溝3bの設置態様が示されているが、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6、及びA/Cプーリ7においてもこれと同様のリブ溝の設置がなされている。これに対してM/Gプーリ4では、図3に示されるように、それらよりも2本少ない9本のリブ溝4bしか形成されていない。これにより、リブ8bとリブ溝4bとの噛み合いを通じた、M/Gプーリ4と伝動ベルト8との単位巻掛け長さあたりの接触面積は、他のプーリ3,5,6,7に比して約20%低減されることとなる。よって、以上のような各プーリ3〜7のリブ溝3b〜7bの設定態様により、M/Gプーリ4にて適度な伝動ベルト8のすべりが得られ、弦共振の効果的な抑制が可能となる。
【0038】
なお、こうした本実施形態では、クランクプーリ3が上記駆動プーリに、M/Gプーリ4、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6、及びA/Cプーリ7が上記被動プーリにそれぞれ相当する構成となっている。また本実施形態では、上記特定の被動プーリ、及び上記緩衝用プーリに相当する構成は、M/Gプーリ4となっている。また他のプーリに相当する構成は、クランクプーリ3、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6、及びA/Cプーリ7となる。
【0039】
以上説明した本実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。(1)本実施形態では、伝動ベルト8の走行方向においてクランクプーリ3の後方に位置するM/Gプーリ4での伝動ベルト8のすべり量を、他のプーリ3,5,6,7に比して大きくするようにしている。そのため、伝動ベルト8の振動エネルギをM/Gプーリ4での伝動ベルト8のすべりによって吸収し、伝動ベルト8の弦共振を効果的に抑制することができる。また弦共振の発生部位の両側に位置する2つのプーリ3,4のうち、M/Gプーリ4側について上記すべりを発生させているため、クランクプーリ3による伝動ベルト8の駆動時のトルク伝達効率についてもこれを好適に維持できる。
【0040】
(2)本実施形態では、M/Gプーリ4での単位巻掛け長さにおける伝動ベルト8に対する接触面積を、他のプーリ3,5,6,7に比して約20%低減している。従って、伝動ベルト8の弦共振を、更に効果的に抑制することができる。またこれにより、過度のすべりの発生によるトルク伝達効率の低下についても、好適に回避できる。
【0041】
(3)本実施形態では、そうした接触面積の調整を、M/Gプーリ4に形成されるリブ溝4bの数を、他のプーリ3,5,6,7よりも少なくすることで行っている。そのため、低減させる接触面積を各プーリのリブ溝の数で管理でき、その設定が非常に容易となる。ちなみに本実施形態では、そうした接触面積の低減率の設定を可能とするため、一般に使用されているVリブドベルトよりもリブ数の多いものを、あえて採用している。ただし、そうしたリブ数の増加によっては、伝動ベルト8の耐久性が損なわれることはなく、伝動ベルト8の耐久性、信頼性についても、これを好適に保持できる。
【0042】
(4)クランクプーリ3とM/Gプーリ4との間にテンショナを介設して伝動ベルト8の弛みを取るようにせずとも弦共振を抑制できるため、内燃機関2の始動時の発電電動機4aからクランクシャフト3aへのトルクの伝達率についても、これを好適に保持できる。
【0043】
なお、上記実施形態では、M/Gプーリ4のリブ溝4bの数を削減することにより、その単位巻掛け長さ当たりの伝動ベルト8との接触面積を低減するようにしているが、そうした接触面積の調整は、これに限らず、任意の態様で行っても良い。次にそうした接触面積の調整態様の変更例を、図5を参照して説明する。
【0044】
同図(c)には、すべり量を大きくする接触面積の調整対象とならないプーリ103、すなわち上記実施形態でのクランクプーリ3、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6及びA/Cプーリ7に対応するプーリでの伝動ベルト108の巻掛け態様を示している。ここでは、同図(c)に示されるように、4本のリブ108bの形成された伝動ベルト108を使用する場合を例に説明する。同図(c)に示されるプーリ103には、伝動ベルト108のリブ108bと同数の、4本のリブ溝103bが形成されている。
【0045】
これに対して同図(a)は、すべり量を大きくする接触面積の調整対象となるプーリ104、すなわち上記実施形態でのM/Gプーリ4に対応するプーリでの伝動ベルト108の巻掛け態様を示している。このプーリ104には、他のプーリ103と同じく4本のリブ溝104bが形成されている。ただし、このリブ溝104bの幅Aは、他のプーリ103のリブ溝103bの幅Bに比して大きく形成されている。このようにリブ溝104bの幅Bを大きくすることによっても、単位巻掛け長さあたりの伝動ベルト108との接触面積は低減されることとなる。よって、こうした接触面積の調整態様を採用した場合にも、上記(1)(2)(4)に記載の効果を奏することができる。また、この場合にも、伝動ベルト108の構成をあえて変更する必要はなく、その耐久性や信頼性を好適に保持することができる。
【0046】
更にリブ溝104bの深さCの設定によっても、同様の接触面積の調整を行うことができる。同図(b)に示されるプーリ104は、そうした深さ設定によって、すべり量を大きくするための接触面積の調整が行われている。すなわち、このプーリ104のリブ溝104bの深さCは、他のプーリ103のリブ溝103bよりも小さく形成されており、このプーリ104での単位巻掛け長さあたりの伝動ベルト108との接触面積は低減されている。よって、この場合にも、上記(1)(2)(4)に記載の効果を奏することができる。また、この場合にも、伝動ベルト108の構成をあえて変更する必要はなく、その耐久性や信頼性を好適に保持することができる。
【0047】
以上説明した実施形態及びその変更例は、更に次のように変更して実施することもできる。
・上記実施形態では、M/Gプーリ4における単位巻掛け長さあたりの伝動ベルト8との接触面積を約20%低減することで、弦共振の抑制を図るようにしているが、こうした接触面積の低減率は、これに限らず適宜変更しても良い。例えば、そうした低減率が10%以上かつ25%以下の範囲であれば、効果的に弦共振を低減可能であることは上述した通りである。更にそうした低減率が10%未満であっても、一定の弦共振の抑制効果は得られる。また、ベルト伝動装置1でのM/Gプーリ4を通じたトルク伝達を十分に行えるのであれば、その低減率を25%よりも大きくすることも可能ではある。
【0048】
・上記実施形態では、弦共振の発生部位の両側に位置する2つのプーリのうち、M/Gプーリ4を上記緩衝用プーリとしているが、クランクシャフト3aによるベルト駆動時のトルク伝達効率を十分に確保できるのであれば、クランクプーリ3を緩衝用プーリとして接触面積の調整を行うようにしてもよい。その場合にも、弦共振の抑制を図ることはできる。また、M/Gプーリ4とクランクプーリ3との双方を上記緩衝用プーリとする構成も可能である。
【0049】
・もっとも、発電電動機4aにて伝動ベルト8を駆動する際にも、条件によっては、M/Gプーリ4のベルト走行方向後方で伝動ベルト8の弛みが生じ、弦共振が発生することもあり得る。こうした発電電動機4aによる伝動ベルト8の駆動に際しての弦共振についても、上記実施形態に準じた態様でその抑制を図ることができる。この場合、上記ベルト伝動装置1では、M/Gプーリ4が上記駆動プーリに、そのベルト走行方向直後に配置されたW/Pプーリ5が上記特定の被動プーリに相当する構成となる。よってM/Gプーリ4及びW/Pプーリ5の少なくとも一方を、上記緩衝用プーリとして設定すれば、そうした弦共振の抑制が可能となる。
【0050】
・上記実施形態では、伝動ベルト8としてVリブド・ベルトを使用した場合を説明したが、すべりが許容された状態でプーリに巻き掛けられるベルトであれば、他のタイプのベルトを使用しても良い。
【0051】
・また接触面積の調整についても、上記実施形態及び上記変更例に示した以外の態様で行うようにしても良い。
・更に接触面積の調整以外の方法であれ、上記緩衝用プーリでのベルトのすべり量のみを格別に変更できるのであれば、その方法を用いて、上記緩衝用プーリでのベルトのすべり量を他のプーリに比して大きくするようにしても良い。例えば、上記緩衝用プーリのみに潤滑油を供給したり、緩衝用プーリの材質を他のプーリの材質と異ならせたりして、緩衝用プーリでのベルトのすべり量を他のプーリよりも大きくし、それによって弦共振を抑制することも可能である。
【0052】
・上記実施形態で例示した構成のベルト伝動装置に限らず、任意のベルト伝動装置に対して本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の全体構成を示す模式図。
【図2】プーリ及び伝動ベルトの斜視図。
【図3】M/Gプーリのベルト巻き掛け部分の部分断面図。
【図4】クランクプーリ等のベルト巻き掛け部分の部分断面図。
【図5】同実施形態の変更例を示す部分断面図。
【図6】ベルト伝動装置におけるベルト巻掛け態様を示す模式図。
【図7】ベルト伝動装置におけるベルト巻掛け態様を示す模式図。
【符号の説明】
1…ベルト伝動装置、2…内燃機関、3…クランクプーリ、3a…クランクシャフト、4…M/Gプーリ、4a…発電電動機、5…W/Pプーリ、5a…ウォータポンプ、6…P/Sプーリ、6a…オイルポンプ、7…A/Cプーリ、7a…コンプレッサ、3b,4b,5b,6b,7b,103b,104b…リブ溝、8,108…伝動ベルト、8b…リブ、9,10,11…アイドラ、12…テンショナ、103…他のプーリ、104…緩衝用プーリ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベルトを駆動させる駆動プーリと、その駆動プーリによるベルトの駆動を通じて駆動される複数の被動プーリとを備えるベルト伝動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用内燃機関においては、スタータモータ、ウォータポンプ、パワーステアリング用ポンプ、エアコンディショナ用コンプレッサ等の各種補機類が設けられている。こうした補機類の駆動装置としては、これら補機類の回転軸、及び機関出力軸であるクランクシャフトにそれぞれプーリを取り付けるとともに、それらプーリ間にベルトを巻き掛けて、エンジン出力軸の回転に応じて補機類を駆動させるベルト伝動装置が広く採用されている。
【0003】
従来、特開2001−99259号公報には、こうしたベルト伝動装置において、ベルト、プーリ間のすべり率を制御して、ベルトの騒音を低減する技術が記載されている。この技術は、補機類やクランクシャフトに加え、機関始動用のモータもベルト伝動系に組み込んで、ベルトを介してモータ回転力をクランクシャフトに伝達させて機関始動を行う構成のベルト伝動装置をその前提としている。このようなベルト伝動装置では、エンジン始動時にモータから伝達される大きい伝動トルクのため、各プーリに対するベルトのすべり量が増大してベルトとプーリとが擦れ合うことから、ベルトの「鳴き」と言われる異音が発生する。上記公報には、エンジン始動時の各プーリにおけるベルトのすべり量を一律に0.05m以下とすることで、そうした異音の発生を有効に低減できることが示されている。要するに、上記公報に記載の技術では、各プーリでのベルトのすべりを一律に制限することで、ベルトに発生する異音の低減を図っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一方、以下に述べるような、ベルト走行方向におけるクランクプーリ後方でのベルトの弛みに起因したベルトの弦共振によって、上記「鳴き」とは別のベルト騒音が発生することが確認されている。こうした弦共振によるベルト騒音に対しては、上記公報のすべり量の設定態様では低減効果は得られず、未だ有効な対策が取られていないのが実情である。
【0005】
以下、こうした弦共振によるベルト騒音の原因について、図6及び図7を参照して詳細に説明する。クランクシャフトに取り付けられてベルト73を駆動させるクランクプーリ70と、ベルト走行方向においてそのクランクプーリ70直後方に配設された補機類などのプーリ(以下、「被動プーリ」という)71との間の部分には、一定のベルト73の弛みが発生してしまう。通常、そうした弛みの発生する部位には、図6に示されるように、テンショナ74が設けられ、その付勢力Fによりベルト73の張力が保持されるようになっている。
【0006】
ところが、設置される補機類の構成やその配置態様などによっては、そうした弛みの発生する部位にテンショナ74を設けることができないことがある。例えば、上記被動プーリ71として機関始動用モータのプーリを配置する場合には、上記部位にテンショナ74が介在されていると、モータの回転力により生じたベルト73の張力の一部がテンショナ74により吸収されてしまう。その結果、モータからクランクシャフトへのトルクの伝達率が低下してしまうことがあり、上記部位へのテンショナ74の設置が困難となる場合がある。
【0007】
こうした場合、上記部位でのベルト73の弛みは残されたままとなる。そのため、内燃機関の回転変動に起因したベルト73の張力変動の周波数が特定の値となると、図7に示すように、クランクプーリ70と被動プーリ71との間に掛け渡された部分のベルト73が弦共振を起こしてしまい、異音が発生してしまう。こうした異音に対しては、上記公報に記載されているように、各プーリでのベルトのすべりを一律に制限しても、何らの低減効果は望めないことは明らかである。
【0008】
なお、こうした弦共振による異音の発生は、上記のような車載内燃機関の補機類を駆動する装置に限らず、それ以外のベルト駆動装置でも、ベルトを駆動させる駆動プーリと、そのベルト走行方向後方に配置された被動プーリとの間の部分に掛け渡されたベルトで発生する普遍的な問題である。
【0009】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ベルトを駆動させる駆動プーリのベルト走行方向後方でのベルトの弛みに起因して発生するベルトの弦を効果的に抑制することのできるベルト伝動装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の発明は、ベルトを駆動させる駆動プーリと、その駆動プーリによる前記ベルトの駆動を通じて駆動される複数の被動プーリとを備えるベルト伝動装置において、前記ベルトの走行方向において前記駆動プーリの直後方に配置された特定の被動プーリ、及び前記駆動プーリの少なくとも一方は、他のプーリに比して、前記ベルトに対するすべり量が大きく設定された緩衝用プーリとされていることをその要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、ベルトを駆動される駆動プーリと、ベルトの走行方向においてその駆動プーリの直後方に配置された特定の被動プーリとの間の部位では、ベルトには弛みが生じ、それによりその部位に掛け渡されたベルトの弦共振が発生することがある。上記構成では、そうした弦共振発生部位の両端のプーリ、すなわち駆動プーリ及び上記特定の被動プーリの少なくとも一方は、ベルトに対するすべりが生じ易くなっている。そのため、上記のような弦共振の発生時に、ベルトの振動エネルギを、ベルトとプーリとのすべりに伴う摩擦による熱エネルギに変換して吸収することができる。このように、上記構成では、ベルトの弛みが生じて弦共振の発生する部位に隣接するプーリでのベルトのすべり量を選択的に大きく設定することで、弦共振の抑制を図っている。従って、ベルトを駆動させる駆動プーリのベルト走行方向後方でのベルトの弛みに起因して発生するベルトの弦共振を効果的に抑制することができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、ベルトを駆動させる駆動プーリと、その駆動プーリによる前記ベルトの駆動を通じて駆動される複数の被動プーリとを備えるベルト伝動装置において、前記ベルトの走行方向において前記駆動プーリの直後方に配置された特定の被動プーリ、及び前記駆動プーリのいずれか一方は、単位巻掛け長さにおける前記ベルトに対する接触面積が、他のプーリに比して10%以上かつ25%以下の範囲で低減された緩衝用プーリとされていることをその要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、弦共振発生部位の両端のプーリ、すなわち駆動プーリ及び上記特定の被動プーリのいずれか一方は、ベルトに対する接触面積が、他のプーリに比して低減されており、ベルトに対するすべりが生じ易くなっている。そのため、ベルトの振動エネルギを、ベルトとプーリとのすべりに伴う摩擦による熱エネルギに変換して吸収することができる。このように、上記構成では、ベルトの弛みが生じて弦共振の発生する部位に隣接するプーリでのベルトのすべり量を選択的に大きく設定することで、弦共振の抑制を図っている。また、そうした振動エネルギの吸収により弦共振を緩和させるプーリ、すなわち緩衝用プーリの上記接触面積を、上記のように設定することで、弦共振の抑制に望ましい適度なすべりが得られることが、発明者等によって確認されている。従って、上記構成によれば、ベルトを駆動させる駆動プーリのベルト走行方向後方でのベルトの弛みに起因して発生するベルトの弦共振を、更に効果的に抑制することができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載のベルト伝動装置において、前記ベルトは、その走行方向に延びるリブが内周に形成されたリブベルトであり、前記駆動プーリ及び前記複数の被動プーリには、そのベルトのリブに係合されるリブ溝が形成されたものであって、前記緩衝用プーリは、それに形成される前記リブ溝の数を、他のプーリに形成された前記リブ溝の数に比して少なくすることで、前記接触面積の低減がなされていることをその要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、緩衝用プーリに形成されるリブ溝の数を減らせば、その分、ベルトに対する上記接触面積を低減させることができる。このとき、低減させる接触面積をリブ溝の数で管理できるため、その設定は非常に容易である。なお、上記接触面積の低減率の設定のため、ベルト等に形成されるリブの数を増加させる必要が生じても、それによりベルトの耐久性が損なわれることはない。そのため、ベルトの耐久性、信頼性についても、これを好適に保持できる。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項2に記載のベルト伝動装置において、前記ベルトは、その走行方向に延びるリブが内周に形成されたリブベルトであり、前記駆動プーリ及び前記複数の被動プーリには、そのベルトのリブに係合されるリブ溝が形成されたものであって、前記緩衝用プーリに形成される前記リブ溝の深さを、他のプーリに形成された前記リブ溝の深さに比して小さくすることで、前記接触面積の低減がなされていることをその要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、緩衝用プーリに形成されるリブ溝の深さを小さくすれば、その分、ベルトに対する上記接触面積を低減させることができる。こうした接触面積の低減は、ベルトの構成を変更することなく行えるため、ベルトの耐久性、信頼性についても、これを好適に保持できる。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項2に記載のベルト伝動装置において、前記ベルトは、その走行方向に延びるリブが内周に形成されたリブベルトであり、前記駆動プーリ及び前記複数の被動プーリには、そのベルトのリブに係合されるリブ溝が形成されたものであって、前記緩衝用プーリに形成される前記リブ溝の幅を、他のプーリに形成された前記リブ溝の幅に比して大きくすることで、前記接触面積の低減がなされていることをその要旨とする。
【0019】
上記構成によれば、緩衝用プーリに形成されるリブ溝の幅を大きくすれば、その分、ベルトに対する上記接触面積を低減させることができる。こうした接触面積の低減は、ベルトの構成を変更することなく行えるため、ベルトの耐久性、信頼性についても、これを好適に保持できる。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載のベルト伝動装置において、前記特定の被動プーリは、前記ベルトを通じて伝達された動力により発電を行う発電機としての作動と、前記ベルトを駆動させる電動機としての作動とを、状況に応じて切り替え可能な発電電動機に取り付けられていることをその要旨とする。
【0021】
上記構成によれば、ベルトの走行方向において駆動プーリの直後方に配置された特定の被動プーリに、発電電動機に取り付けた場合、その特定の被動プーリによってベルトを駆動して、駆動プーリを駆動する状況になることもある。そうした構成では、駆動プーリと上記特定の被動プーリとの間の部位にテンショナを設けると、特定の被動プーリから駆動プーリへのトルクの伝達率の低下を招いてしまう。その点、上記構成では、テンショナを設けることなく弦共振を抑制できるため、特定の被動プーリから駆動プーリへのトルクの伝達率の保持と、弦共振の抑制との両立を図ることができる。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載のベルト伝動装置において、前記緩衝用プーリは、前記特定の被動プーリであることをその要旨とする。
【0023】
上記構成によれば、弦共振の抑制に係るすべりの発生が特定の被動プーリの側であるため、ベルトを駆動させる駆動プーリのトルク伝達効率についてもこれを好適に維持できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のベルト伝動装置を具体化した一実施形態を、図1〜図4を参照して詳細に説明する。ここでは、本発明のベルト伝動装置を、図1に示すような車載内燃機関の補機駆動用のベルト伝動装置1に適用した場合について説明する。
【0025】
このベルト伝動装置1では、内燃機関2の出力軸であるクランクシャフト3aの回転力を、その内燃機関2の周囲に配置された各補機類に伝動ベルト8を通じて伝達してこれらを駆動させている。この内燃機関2の周囲には補機類として、発電電動機4a、ウォータポンプ5a、パワーステアリング用のオイルポンプ6a、空調装置用のコンプレッサ7aが設けられている。
【0026】
発電電動機4aは、伝動ベルト8を通じてクランクシャフト3aから伝達された動力により発電を行う発電機としての作動と、自身が動力を発生してベルト8を駆動する電動機としての作動とを、状況に応じて切り替えられるようになっている。ウォータポンプ5aは、その駆動に応じて、機関冷却用の冷却水を循環させる。オイルポンプ6aは、その駆動に応じて、パワーステアリング装置に供される油圧を発生する。更にコンプレッサ7aは、その駆動に応じて、空調装置に使用される冷媒を循環させる。
【0027】
これら各補機類の回転軸及びクランクシャフト3aには、それぞれプーリが取り付けられている。すなわち、クランクシャフト3aにはクランクプーリ3が、発電電動機4aの回転軸にはM/Gプーリ4が、ウォータポンプ5aの回転軸にはW/Pプーリ5が、オイルポンプ6aの回転軸にはP/Sプーリ6が、更にコンプレッサ7aの回転軸にはA/Cプーリ7がそれぞれ取り付けられている。
【0028】
これらの各プーリ3〜7には、伝動ベルト8が巻き掛けられている。このベルト伝動装置1では、ベルト走行方向においてクランクプーリ3から、M/Gプーリ4、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6、A/Cプーリ7の順に伝動ベルト8が巻き掛けられている。クランクプーリ3とM/Gプーリ4との間には、それら各プーリ3,4に対する伝動ベルト8の巻き掛け量を増大させたり、伝動ベルト8のぶれを抑制したりするためのアイドラ9,10,11が配設されている。またW/Pプーリ5とP/Sプーリ6との間には、伝動ベルト8に張力を付与するテンショナ12が配設されている。
【0029】
こうしたベルト伝動装置1では、内燃機関2の運転中は、クランクシャフト3aの回転力を、伝動ベルト8を通じて上記各補機類に伝達してこれらを駆動させる。すなわち、内燃機関2の発生する動力によりクランクシャフト3aが回転されると、それに取り付けられたクランクプーリ3が回転し、伝動ベルト8がそのクランクプーリ3からM/Gプーリ4側に向けて送り出される。これにより、伝動ベルト8が駆動され、各補機類のプーリ、すなわちM/Gプーリ4、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6及びA/Cプーリ7が回転され、各補機類が駆動される。なお、このときの発電電動機4aは、発電機として作動されている。
【0030】
一方、内燃機関2の始動時には、発電電動機4aが電動機として作動され、その回転力を、伝動ベルト8を通じて、クランクシャフト3a、及びその他の補機類(ウォータポンプ5a、オイルポンプ6a、コンプレッサ7a)に伝達してこれらを駆動させる。すなわち、発電電動機4aの発生する動力によりM/Gプーリ4が回転されると、伝動ベルト8がそのM/Gプーリ4からW/Pプーリ5側に向けて送り出される。これにより、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6、A/Cプーリ7及びクランクプーリ3が回転され、上記その他の補機類が駆動されるとともに、クランクシャフト3aが回転される。
【0031】
こうした本実施形態のベルト伝動装置1では、その伝動ベルト8として、図2に示されるようなVリブド・ベルトが採用されている。すなわち、この伝動ベルト8の内周の巻掛け面には、その走行方向に延伸された複数の(ここでは10本の)リブ8bが突出形成されている。このリブ8bは、先端に向かって縮幅する断面略V字形状に形成されている。
【0032】
一方、こうした伝動ベルト8が巻き掛けられる各プーリ3〜7の外周の巻掛け面にも、上記リブ8bが噛み合わされる複数のリブ溝3b〜7bがそれぞれ形成されている。これらのリブ溝3b〜7bは、各プーリ3〜7の周方向に延伸されており、断面略V字形状に形成されている。なお、同図2では、M/Gプーリ4の伝動ベルト8の巻き掛け態様が例として示されている。
【0033】
以上説明したように構成された本実施形態のベルト伝動装置1では、内燃機関2の運転中のクランクシャフト3aによる伝動ベルト8の駆動に際して、クランクプーリ3のベルト走行方向後方では、すなわちクランクプーリ3のM/Gプーリ4側では、伝動ベルト8の弛みが生じる。この弛みは、伝動ベルト8の走行速度が、各補機類の駆動抵抗を受けて減速されることに起因して生じる。一方、このベルト伝動装置1では、伝動ベルト8に張力を付与するテンショナ12がW/Pプーリ5とP/Sプーリ6との間に配設されているため、クランクプーリ3とM/Gプーリ4との間の部位での伝動ベルト8の弛みは、十分に解消することができなくなっている。そのため、クランクシャフト3aの回転速度変動などに起因する伝動ベルト8の張力変動の周波数が、伝動ベルト8の上記弛み発生部位に掛け渡された部位の固有振動数と一致すると、弦共振が発生してしまう。
【0034】
これに対して本実施形態では、上記各プーリ3〜7のリブ溝3b〜7bの設置態様により、各プーリ3〜7での伝動ベルト8のすべり量を適宜に調整することで、弦共振の抑制を図るようにしている。詳しくは、上記弦共振の発生部位の両側に位置するクランクプーリ3とM/Gプーリ4のうち、M/Gプーリ4については、その伝動ベルト8に対するすべり量が、他のプーリ3,5〜7のそれに比して大きくなるような調整がなされている。こうしたすべり量の調整は、M/Gプーリ4での単位巻掛け長さにおける伝動ベルト8との接触面積を、他のプーリ3,5〜7のそれに比して低減させることで行える。すなわち、上記接触面積が低減されるほど、M/Gプーリ4と伝動ベルト8との摩擦が低減されることから、それらのすべりが生じ易くすることができる。
【0035】
こうして弦共振の発生部位の一端に位置するM/Gプーリ4にて、伝動ベルト8のすべりが生じると、伝動ベルト8の振動エネルギが、そのすべりに伴う摩擦によって生じる熱エネルギに変換されて吸収されるようになる。そしてその結果、弦共振の振動レベルは、効果的に低減されるようになる。
【0036】
なお発明者等は、こうしたM/Gプーリ4での単位巻掛け長さにおける伝動ベルト8との接触面積を、他のプーリ3,5〜7に比して10%以上、25%以下の範囲で低減することで、そのM/Gプーリ4にて、弦共振の抑制に望ましい適度な伝動ベルト8のすべりを発生できることを見出している。そこで本実施形態では、各プーリ3〜7のリブ溝3b〜7bの設置態様を通じて、そうした接触面積の調整を図るようにしている。
【0037】
次に、本実施形態での上記接触面積の調整にかかるリブ溝設置態様の詳細を説明する。M/Gプーリ4以外の各プーリ(クランクプーリ3、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6、A/Cプーリ7)では、図4に示されるような態様で、リブ溝3b〜7bが形成されている。すなわち、これらのプーリ3,5〜7では、伝動ベルト8に形成された10本のリブ8bのすべてが、それぞれ噛み合わされるように10本のリブ溝3b,5b,6b,7bが形成されている。なお、同図4では、クランクプーリ3のリブ溝3bの設置態様が示されているが、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6、及びA/Cプーリ7においてもこれと同様のリブ溝の設置がなされている。これに対してM/Gプーリ4では、図3に示されるように、それらよりも2本少ない9本のリブ溝4bしか形成されていない。これにより、リブ8bとリブ溝4bとの噛み合いを通じた、M/Gプーリ4と伝動ベルト8との単位巻掛け長さあたりの接触面積は、他のプーリ3,5,6,7に比して約20%低減されることとなる。よって、以上のような各プーリ3〜7のリブ溝3b〜7bの設定態様により、M/Gプーリ4にて適度な伝動ベルト8のすべりが得られ、弦共振の効果的な抑制が可能となる。
【0038】
なお、こうした本実施形態では、クランクプーリ3が上記駆動プーリに、M/Gプーリ4、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6、及びA/Cプーリ7が上記被動プーリにそれぞれ相当する構成となっている。また本実施形態では、上記特定の被動プーリ、及び上記緩衝用プーリに相当する構成は、M/Gプーリ4となっている。また他のプーリに相当する構成は、クランクプーリ3、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6、及びA/Cプーリ7となる。
【0039】
以上説明した本実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。(1)本実施形態では、伝動ベルト8の走行方向においてクランクプーリ3の後方に位置するM/Gプーリ4での伝動ベルト8のすべり量を、他のプーリ3,5,6,7に比して大きくするようにしている。そのため、伝動ベルト8の振動エネルギをM/Gプーリ4での伝動ベルト8のすべりによって吸収し、伝動ベルト8の弦共振を効果的に抑制することができる。また弦共振の発生部位の両側に位置する2つのプーリ3,4のうち、M/Gプーリ4側について上記すべりを発生させているため、クランクプーリ3による伝動ベルト8の駆動時のトルク伝達効率についてもこれを好適に維持できる。
【0040】
(2)本実施形態では、M/Gプーリ4での単位巻掛け長さにおける伝動ベルト8に対する接触面積を、他のプーリ3,5,6,7に比して約20%低減している。従って、伝動ベルト8の弦共振を、更に効果的に抑制することができる。またこれにより、過度のすべりの発生によるトルク伝達効率の低下についても、好適に回避できる。
【0041】
(3)本実施形態では、そうした接触面積の調整を、M/Gプーリ4に形成されるリブ溝4bの数を、他のプーリ3,5,6,7よりも少なくすることで行っている。そのため、低減させる接触面積を各プーリのリブ溝の数で管理でき、その設定が非常に容易となる。ちなみに本実施形態では、そうした接触面積の低減率の設定を可能とするため、一般に使用されているVリブドベルトよりもリブ数の多いものを、あえて採用している。ただし、そうしたリブ数の増加によっては、伝動ベルト8の耐久性が損なわれることはなく、伝動ベルト8の耐久性、信頼性についても、これを好適に保持できる。
【0042】
(4)クランクプーリ3とM/Gプーリ4との間にテンショナを介設して伝動ベルト8の弛みを取るようにせずとも弦共振を抑制できるため、内燃機関2の始動時の発電電動機4aからクランクシャフト3aへのトルクの伝達率についても、これを好適に保持できる。
【0043】
なお、上記実施形態では、M/Gプーリ4のリブ溝4bの数を削減することにより、その単位巻掛け長さ当たりの伝動ベルト8との接触面積を低減するようにしているが、そうした接触面積の調整は、これに限らず、任意の態様で行っても良い。次にそうした接触面積の調整態様の変更例を、図5を参照して説明する。
【0044】
同図(c)には、すべり量を大きくする接触面積の調整対象とならないプーリ103、すなわち上記実施形態でのクランクプーリ3、W/Pプーリ5、P/Sプーリ6及びA/Cプーリ7に対応するプーリでの伝動ベルト108の巻掛け態様を示している。ここでは、同図(c)に示されるように、4本のリブ108bの形成された伝動ベルト108を使用する場合を例に説明する。同図(c)に示されるプーリ103には、伝動ベルト108のリブ108bと同数の、4本のリブ溝103bが形成されている。
【0045】
これに対して同図(a)は、すべり量を大きくする接触面積の調整対象となるプーリ104、すなわち上記実施形態でのM/Gプーリ4に対応するプーリでの伝動ベルト108の巻掛け態様を示している。このプーリ104には、他のプーリ103と同じく4本のリブ溝104bが形成されている。ただし、このリブ溝104bの幅Aは、他のプーリ103のリブ溝103bの幅Bに比して大きく形成されている。このようにリブ溝104bの幅Bを大きくすることによっても、単位巻掛け長さあたりの伝動ベルト108との接触面積は低減されることとなる。よって、こうした接触面積の調整態様を採用した場合にも、上記(1)(2)(4)に記載の効果を奏することができる。また、この場合にも、伝動ベルト108の構成をあえて変更する必要はなく、その耐久性や信頼性を好適に保持することができる。
【0046】
更にリブ溝104bの深さCの設定によっても、同様の接触面積の調整を行うことができる。同図(b)に示されるプーリ104は、そうした深さ設定によって、すべり量を大きくするための接触面積の調整が行われている。すなわち、このプーリ104のリブ溝104bの深さCは、他のプーリ103のリブ溝103bよりも小さく形成されており、このプーリ104での単位巻掛け長さあたりの伝動ベルト108との接触面積は低減されている。よって、この場合にも、上記(1)(2)(4)に記載の効果を奏することができる。また、この場合にも、伝動ベルト108の構成をあえて変更する必要はなく、その耐久性や信頼性を好適に保持することができる。
【0047】
以上説明した実施形態及びその変更例は、更に次のように変更して実施することもできる。
・上記実施形態では、M/Gプーリ4における単位巻掛け長さあたりの伝動ベルト8との接触面積を約20%低減することで、弦共振の抑制を図るようにしているが、こうした接触面積の低減率は、これに限らず適宜変更しても良い。例えば、そうした低減率が10%以上かつ25%以下の範囲であれば、効果的に弦共振を低減可能であることは上述した通りである。更にそうした低減率が10%未満であっても、一定の弦共振の抑制効果は得られる。また、ベルト伝動装置1でのM/Gプーリ4を通じたトルク伝達を十分に行えるのであれば、その低減率を25%よりも大きくすることも可能ではある。
【0048】
・上記実施形態では、弦共振の発生部位の両側に位置する2つのプーリのうち、M/Gプーリ4を上記緩衝用プーリとしているが、クランクシャフト3aによるベルト駆動時のトルク伝達効率を十分に確保できるのであれば、クランクプーリ3を緩衝用プーリとして接触面積の調整を行うようにしてもよい。その場合にも、弦共振の抑制を図ることはできる。また、M/Gプーリ4とクランクプーリ3との双方を上記緩衝用プーリとする構成も可能である。
【0049】
・もっとも、発電電動機4aにて伝動ベルト8を駆動する際にも、条件によっては、M/Gプーリ4のベルト走行方向後方で伝動ベルト8の弛みが生じ、弦共振が発生することもあり得る。こうした発電電動機4aによる伝動ベルト8の駆動に際しての弦共振についても、上記実施形態に準じた態様でその抑制を図ることができる。この場合、上記ベルト伝動装置1では、M/Gプーリ4が上記駆動プーリに、そのベルト走行方向直後に配置されたW/Pプーリ5が上記特定の被動プーリに相当する構成となる。よってM/Gプーリ4及びW/Pプーリ5の少なくとも一方を、上記緩衝用プーリとして設定すれば、そうした弦共振の抑制が可能となる。
【0050】
・上記実施形態では、伝動ベルト8としてVリブド・ベルトを使用した場合を説明したが、すべりが許容された状態でプーリに巻き掛けられるベルトであれば、他のタイプのベルトを使用しても良い。
【0051】
・また接触面積の調整についても、上記実施形態及び上記変更例に示した以外の態様で行うようにしても良い。
・更に接触面積の調整以外の方法であれ、上記緩衝用プーリでのベルトのすべり量のみを格別に変更できるのであれば、その方法を用いて、上記緩衝用プーリでのベルトのすべり量を他のプーリに比して大きくするようにしても良い。例えば、上記緩衝用プーリのみに潤滑油を供給したり、緩衝用プーリの材質を他のプーリの材質と異ならせたりして、緩衝用プーリでのベルトのすべり量を他のプーリよりも大きくし、それによって弦共振を抑制することも可能である。
【0052】
・上記実施形態で例示した構成のベルト伝動装置に限らず、任意のベルト伝動装置に対して本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の全体構成を示す模式図。
【図2】プーリ及び伝動ベルトの斜視図。
【図3】M/Gプーリのベルト巻き掛け部分の部分断面図。
【図4】クランクプーリ等のベルト巻き掛け部分の部分断面図。
【図5】同実施形態の変更例を示す部分断面図。
【図6】ベルト伝動装置におけるベルト巻掛け態様を示す模式図。
【図7】ベルト伝動装置におけるベルト巻掛け態様を示す模式図。
【符号の説明】
1…ベルト伝動装置、2…内燃機関、3…クランクプーリ、3a…クランクシャフト、4…M/Gプーリ、4a…発電電動機、5…W/Pプーリ、5a…ウォータポンプ、6…P/Sプーリ、6a…オイルポンプ、7…A/Cプーリ、7a…コンプレッサ、3b,4b,5b,6b,7b,103b,104b…リブ溝、8,108…伝動ベルト、8b…リブ、9,10,11…アイドラ、12…テンショナ、103…他のプーリ、104…緩衝用プーリ。
Claims (7)
- ベルトを駆動させる駆動プーリと、その駆動プーリによる前記ベルトの駆動を通じて駆動される複数の被動プーリとを備えるベルト伝動装置において、
前記ベルトの走行方向において前記駆動プーリの直後方に配置された特定の被動プーリ、及び前記駆動プーリの少なくとも一方は、他のプーリに比して、前記ベルトに対するすべり量が大きく設定された緩衝用プーリとされている
ことを特徴とするベルト伝動装置。 - ベルトを駆動させる駆動プーリと、その駆動プーリによる前記ベルトの駆動を通じて駆動される複数の被動プーリとを備えるベルト伝動装置において、
前記ベルトの走行方向において前記駆動プーリの直後方に配置された特定の被動プーリ、及び前記駆動プーリのいずれか一方は、単位巻掛け長さにおける前記ベルトに対する接触面積が、他のプーリに比して10%以上かつ25%以下の範囲で低減された緩衝用プーリとされている
ことを特徴とするベルト伝動装置。 - 前記ベルトは、その走行方向に延びるリブが内周に形成されたリブベルトであり、前記駆動プーリ及び前記複数の被動プーリには、そのベルトのリブに係合されるリブ溝が形成されたものであって、
前記緩衝用プーリは、それに形成される前記リブ溝の数を、他のプーリに形成された前記リブ溝の数に比して少なくすることで、前記接触面積の低減がなされている請求項2に記載のベルト伝動装置。 - 前記ベルトは、その走行方向に延びるリブが内周に形成されたリブベルトであり、前記駆動プーリ及び前記複数の被動プーリには、そのベルトのリブに係合されるリブ溝が形成されたものであって、
前記緩衝用プーリに形成される前記リブ溝の深さを、他のプーリに形成された前記リブ溝の深さに比して小さくすることで、前記接触面積の低減がなされている請求項2に記載のベルト伝動装置。 - 前記ベルトは、その走行方向に延びるリブが内周に形成されたリブベルトであり、前記駆動プーリ及び前記複数の被動プーリには、そのベルトのリブに係合されるリブ溝が形成されたものであって、
前記緩衝用プーリに形成される前記リブ溝の幅を、他のプーリに形成された前記リブ溝の幅に比して大きくすることで、前記接触面積の低減がなされている請求項2に記載のベルト伝動装置。 - 前記特定の被動プーリは、前記ベルトを通じて伝達された動力により発電を行う発電機としての作動と、前記ベルトを駆動させる電動機としての作動とを、状況に応じて切り替え可能な発電電動機に取り付けられている請求項1〜5のいずれかに記載のベルト伝動装置。
- 前記緩衝用プーリは、前記特定の被動プーリである請求項1〜6のいずれかに記載のベルト伝動装置。
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2002
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WO2009065717A3 (de) * | 2007-11-21 | 2009-12-17 | Schaeffler Kg | Laufscheibe, spann- und/oder umlenkrolle sowie keilrippenriementrieb |
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