JP2004068680A - 火花点火式エンジンの制御装置 - Google Patents

火花点火式エンジンの制御装置 Download PDF

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西本 敏朗
Koji Asaumi
浅海 皓二
Hiroshi Inatomi
稲富 洋
Mitsuo Hitomi
人見 光夫
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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
  • Lubrication Of Internal Combustion Engines (AREA)

Abstract

【課題】エンジンの低・中速域でのオイルポンプの駆動抵抗を小さくしつつ、低速域においてエンジン各部への潤滑油供給および作動油供給の要求を満足する。
【解決手段】特殊運転モードと通常運転モードとに切換可能にし、特殊運転モードでは、排気行程と吸気行程が重なる一対の気筒間で先行気筒2A,2Dから排出される既燃ガスが後続気筒2B,2Cに導入されるようにしつつ、先行気筒ではリーン空燃比で燃焼を行わせ、後続気筒では先行気筒から導入された既燃ガスに燃料を供給して理論空燃比で燃焼を行わせる。また、運転モードに応じて吸・排気流通経路を切換える油圧駆動の切換機構35a,35bを設けるとともに、オイル供給系統にメインオイルポンプとサブオイルポンプ44とを設け、メインオイルポンプの吐出流量特性を、要求流量特性に対し、高速域では略合致して低速域では低くなるように設定する一方、低速域でサブオイルポンプを駆動させる。
【選択図】    図8

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、火花点火式エンジンの制御装置に関し、より詳しくは、低負荷域での燃費改善及びエミッション向上のために吸・排気の流通経路を切換える油圧駆動の切換機構を備えたエンジンの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、火花点火式エンジンにおいて、各気筒内の混合気の空燃比を理論空燃比よりも大きいリーン空燃比とした状態で燃焼を行わせることにより燃費改善を図る技術が知られており、例えば特開平10−274085号公報に示されるように、燃焼室内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁を備え、低速低負荷域等では上記燃料噴射弁から圧縮行程で燃料を噴射することにより成層燃焼を行わせ、これによって超リーン燃焼を実現するようにしたものが知られている。
【0003】
このようなエンジンにおいては、排気ガス浄化用の触媒として通常の三元触媒(HC,CO及びNOxに対して理論空燃比付近で浄化性能の高い触媒)だけではリーン運転時にNOxに対して充分な浄化性能が得られないため、上記公報にも示されるように、酸素過剰雰囲気でNOxを吸着して酸素濃度低下雰囲気でNOxの離脱、還元を行うリーンNOx触媒を設けている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来のリーン運転を行うエンジンでは、リーン運転中のNOx浄化性能の確保のために上記リーンNOx触媒が必要となってコスト的に不利である。また、上記リーンNOx触媒の浄化性能を維持するためには、NOx吸着量増大時にNOxの離脱、還元のため一時的な空燃比のリッチ化を行う必要があり、さらに、使用燃料が硫黄分を多く含む場合、上記リーンNOx触媒の硫黄被毒の解消のために触媒の加熱及び還元材供給等のリジェネレーション処理が必要となり、これらによって燃費改善効果が低下する。
【0005】
そこで、本出願人は、各気筒の燃焼サイクルが所定の位相差をもって行われる多気筒エンジンにおいて、低速低負荷では、排気行程と吸気行程が重なる一対の気筒間において排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスをそのまま吸気行程にある後続気筒に導入し、この後続気筒から排出されるガスを三元触媒を備えた排気通路に導くようにするとともに、このような2気筒接続状態にあるときに、上記先行気筒において理論空燃比よりも所定量大きいリーン空燃比とした状態で燃焼を行わせ、後続気筒では先行気筒から導入されたリーン空燃比の既燃ガスに燃料を供給して理論空燃比とした状態で燃焼を行わせるように燃焼状態等を制御(特殊運転モードという)する一方、高速域や高負荷域では、通常通り、各気筒において理論空燃比で燃焼を行わせるように燃焼状態等を制御(通常運転モードという)することを考えた(特願2002−024548号)。
【0006】
これによると、先行気筒でのリーン燃焼および各気筒ポンピングロス低減等により大幅な燃費改善効果が得られ、しかも、後続気筒から排出される理論空燃比の既燃ガスのみが三元触媒を備えた排気通路に導かれるため、三元触媒だけで充分に排気浄化性能が確保される。
【0007】
この装置においては、特殊運転モードとされる場合と通常運転モードとされる場合とに応じ、上記2気筒接続状態と、各気筒にそれぞれ新気が導入される各気筒独立状態とに吸・排気流通経路を切り換えるための切換機構が設けられる。そして、切換機構が油圧で作動される場合、エンジン各部に潤滑油を供給するオイル供給系統から上記切換機構にも作動油が供給される。
【0008】
ところで、一般にエンジンのオイル供給系統は、エンジンで駆動される機械式ポンプからなるオイルポンプを備え、このオイルポンプから吐出されたオイルがエンジン各部に送られるようになっている。
【0009】
後に図11を参照しつつ詳しく説明するように、上記オイルポンプの吐出流量はエンジン回転数の上昇につれて増加するように、エンジン回転数に略比例して変化する。一方、エンジン各部の潤滑等のための要求流量もエンジンの高速側で多く、低速側で少なくなるが、必ずしもエンジン回転数に比例して変化せず、エンジンのアイドル回転数付近でも潤滑のためにある程度の流量は要求される。さらに、上記のような吸・排気流通経路を切り換えるための油圧駆動の切換機構が設けられているエンジンにおいて、低速域で上記切換機構が駆動されるような場合、そのための作動油の供給も必要となる。
【0010】
従って、このようなエンジンに従来のオイル供給系統を用いる場合、エンジンに対するオイルポンプの増速比を大きくすること等により、低速域でもエンジン各部への潤滑油供給および上記切換機構への作動油供給の要求を満足する程度に吐出流量を多くする必要があるが、このようにするとエンジン回転数の上昇に伴い吐出流量が要求流量と比べて著しく増大する。このため、吐出流量がある程度以上増加するとオイルをリリーフすることが考えられるが、このようにしても、中速域では吐出流量が要求流量をかなり上回ってしまい、それに伴ってオイルポンプの駆動抵抗が大きくなり、それによる駆動損失が増大により燃費改善効果を損ねる結果になる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑み、エンジンの低・中速域でのオイルポンプの駆動抵抗を小さくして駆動損失を低減し、燃費改善効果を高めるようにしつつ、低速域においてエンジン各部への潤滑油供給および上記切換機構への作動油供給の要求を満足することができる火花点火式エンジンの制御装置を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、各気筒の燃焼サイクルが所定の位相差をもって行われるようになっている多気筒の火花点火式エンジンにおいて、排気行程と吸気行程が重なる一対の気筒間で排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスが気筒間ガス通路を介して吸気行程にある後続気筒に導入され、後続気筒から排出されるガスのみが排気通路に導かれる2気筒接続状態と、各気筒にそれぞれ新気が導入され、各気筒からそれぞれ排出されるガスが排気通路に導かれる各気筒独立状態とに吸・排気流通経路を切換え可能とするとともに、上記2気筒接続状態としつつ先行気筒では理論空燃比よりも所定量だけ大きいリーン空燃比とした状態で燃焼を行わせ、後続気筒では先行気筒から導入されたリーン空燃比の既燃ガスに燃料を供給して理論空燃比で燃焼を行わせる特殊運転モードと、上記各気筒独立状態としつつ各気筒においてそれぞれ燃焼を行わせる通常運転モードとに、エンジンの運転状態に応じて運転モードを切換える制御手段を備え、少なくとも低速低負荷域で上記特殊運転モードとし、高負荷域で上記通常運転モードとするようにした火花点火式エンジンの制御装置であって、油圧により駆動されて吸・排気流通経路の切換えを行う切換機構を設けるとともに、エンジンの被潤滑部及び上記切換機構にオイルを供給する経路に、エンジン回転数に応じて吐出量が変化するメインオイルポンプと、エンジンの低速域で油圧を高めるサブオイルポンプとを設け、上記メインオイルポンプのエンジン回転数に応じた吐出流量特性を、要求流量特性に対し、高速域では略合致して低速域では低くなるように設定する一方、低速域でサブオイルポンプを駆動させるように構成したものである。
【0013】
この発明によると、エンジンの低速低負荷域において上記特殊運転モードとされた場合に、先行気筒でのリーン燃焼による熱効率向上および各気筒でのポンピングロス低減により燃費改善効果が得られる。また、後続気筒から排気通路に排出されるガスは理論空燃比であるため、三元触媒だけで充分に排気ガスの浄化が達成される。
【0014】
そして、このような特殊運転モードと通常運転モードとが運転状態等に応じて選択され、それに伴い、油圧駆動の切換機構により吸・排気の流通経路が2気筒接続状態と各気筒独立状態とに切り換えられる。
【0015】
また、この切換機構に対する作動油の供給およびエンジン各部への潤滑油の供給を行うオイル供給系統においては、メインオイルポンプに加えてサブオイルポンプが設けられ、メインオイルポンプの吐出流量特性が要求流量特性に対して高速域で合致して低速域では低くなるように設定されるとともに、低速域でサブオイルポンプが駆動されることにより、低・中速域でのメインオイルポンプの駆動抵抗が小さくされつつ、低速域でも要求されるオイル吐出流量が確保されて、エンジン各部の潤滑および上記切換機構の作動が良好に行われる。
【0016】
なお、上記メインオイルポンプはエンジンで駆動される機械式ポンプであり、上記サブポンプは電動ポンプであればよい。
【0017】
また、エンジン始動時に上記通常運転モードとし、エンジン始動後において低速低負荷域で、上記サブオイルポンプを駆動させるとともに、上記特殊運転モードに切換えるようにすることが好ましい。
【0018】
さらに、エンジン停止状態では上記切換機構が自動的に吸・排気流通経路を各気筒独立状態に保ち、エンジン始動後に上記切換機構に作動油が供給されたときに吸・排気流通経路を2気筒接続状態に切換えるようになっていることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、エンジン始動時には確実に通常運転モードとされることで始動性能が確保されるとともに暖機が促進される。そして、エンジン始動後において低速低負荷域で上記特殊運転モードに切換えられる際、吸・排気流通経路を2気筒接続状態とすべく、上記切換機構に作動油が供給されて切換機構が作動されるが、上記サブオイルポンプの駆動によって切換機構に対する作動油の供給が良好に行われる。
【0020】
エンジン停止状態で自動的に吸・排気流通経路を各気筒独立状態に保つようにするための具体的な構成としては、上記先行気筒に、吸気通路に通じる吸気ポートと、排気通路に通じる第1排気ポートと、気筒間ガス通路に通じる第2排気ポートと、これら第1,第2排気ポートを開閉する第1,第2排気弁とを設けるとともに、上記後続気筒に、吸気通路に通じる第1吸気ポートと、気筒間ガス通路に通じる第2吸気ポートと、排気通路に通じる排気ポートと、上記第1,第2吸気ポートを開閉する第1,第2吸気弁とを設け、上記第1排気弁及び第1吸気弁に対して弁駆動状態と弁停止状態とに動弁機構を切換える第1切換機構と、上記第2排気弁及び第2吸気弁に対して弁駆動手段と弁停止状態とに動弁機構を切換える第2切換機構とを設け、第1切換機構は油圧非供給時に弁駆動状態、油圧供給時に弁停止状態となり、第2切換機構は油圧非供給時に弁停止状態、油圧供給時に弁駆動状態となるように構成すればよい。
【0021】
また、請求項6に係る発明は、各気筒の燃焼サイクルが所定の位相差をもって行われるようになっている多気筒の火花点火式エンジンにおいて、排気通路に三元触媒を設け、排気行程と吸気行程が重なる一対の気筒間で排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスが気筒間ガス通路を介して吸気行程にある後続気筒に導入され、後続気筒から排出されるガスのみが排気通路に導かれる2気筒接続状態と、各気筒にそれぞれ新気が導入され、各気筒からそれぞれ排出されるガスが排気通路に導かれる各気筒独立状態とに吸・排気流通経路を切換え可能とするとともに、上記2気筒接続状態としつつ先行気筒では理論空燃比よりも所定量だけ大きいリーン空燃比とした状態で燃焼を行わせ、後続気筒では先行気筒から導入されたリーン空燃比の既燃ガスに燃料を供給して燃焼を行わせる特殊運転モードと、上記各気筒独立状態としつつ各気筒においてそれぞれ燃焼を行わせる通常運転モードとに、エンジンの運転状態に応じて運転モードを切換える制御手段を備え、エンジンの始動時には上記通常運転モードとし、エンジン始動後において低速低負荷域で、上記サブオイルポンプを駆動させるとともに、上記特殊運転モードに切換えるようにした火花点火式エンジンの制御装置であって、油圧により駆動されて吸・排気流通経路の切換えを行う切換機構を設けるとともに、エンジンの被潤滑部及び上記切換機構にオイルを供給する経路に、エンジンで駆動される機械式ポンプからなるメインオイルポンプと、電動式ポンプからなるサブオイルポンプとを設け、上記メインオイルポンプのエンジン回転数に応じた吐出流量特性を、要求流量特性に対し、高速域では略合致して低速域では低くなるように設定する一方、低速域でサブオイルポンプを駆動させるように構成したものである。
【0022】
この発明によると、上記特殊運転モードとされた場合に、先行気筒でのリーン燃焼による熱効率向上および各気筒でのポンピングロス低減により燃費改善効果が得られる。また、後続気筒から排気通路に排出されるガスは理論空燃比であるため、三元触媒だけで充分に排気ガスの浄化が達成される。
【0023】
また、エンジン始動時には通常運転モードとされることで始動性能が確保されるとともに暖機が促進される。そして、エンジン始動後において低速低負荷域で上記特殊運転モードに切換えられ、この際、吸・排気流通経路を2気筒接続状態とすべく、上記切換機構に作動油が供給されて切換機構が作動されるが、上記サブオイルポンプの駆動によって切換機構に対する作動油の供給が良好に行われる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
図1は本発明の一実施形態によるエンジンの概略構成を示し、図2はエンジン本体1の一つの気筒とそれに対して設けられた吸・排気弁等の構造を概略的に示している。これらの図において、エンジン本体1は複数の気筒を有し、図示の実施形態では4つの気筒2A〜2Dを有している。各気筒2A〜2Dにはピストン3が嵌挿され、ピストン3の上方に燃焼室4が形成されている。
【0026】
各気筒2の燃焼室4の頂部には点火プラグ7が装備され、そのプラグ先端が燃焼室4内に臨んでいる。この点火プラグ7には、電子制御による点火時期のコントロールが可能な点火回路8が接続されている。
【0027】
燃焼室4の側方部には、燃焼室4内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁9が設けられている。この燃料噴射弁9は、図略のニードル弁及びソレノイドを内蔵し、後述のパルス信号が入力されることにより、そのパルス入力時期にパルス幅に対応する時間だけ駆動されて開弁し、その開弁時間に応じた量の燃料を噴射するように構成されている。なお、この燃料噴射弁9には図外の燃料ポンプにより燃料供給通路等を介して燃料が供給され、かつ、圧縮行程での燃焼室内の圧力よりも高い燃料圧力を与え得るように燃料供給系統が構成されている。
【0028】
また、各気筒2A〜2Dの燃焼室4に対して吸気ポート11、11a,11b及び排気ポート12、12a,12bが開口し、これらのポートに吸気通路15、排気通路20等が接続されるとともに、各ポートが吸気弁31、31a,31b及び排気弁32、32a,32bにより開閉されるようになっている。
【0029】
そして、各気筒が所定の位相差をもって吸気、圧縮、膨張、排気の各行程からなるサイクルを行うようになっており、4気筒エンジンの場合、気筒列方向一端側から1番気筒2A、2番気筒2B、3番気筒2C、4番気筒2Dと呼ぶと、図10に示すように上記サイクルが1番気筒2A、3番気筒2C、4番気筒2D、2番気筒2Bの順にクランク角で180°ずつの位相差をもって行われるようになっている。なお、図10は4サイクル4気筒エンジンにおいて後に詳述するように特殊運転モードとされたときの各気筒の行程、燃料噴射時期、点火時期等を示すものであり、この図において、EXは排気行程、INは吸気行程、Fは燃料噴射、Sは強制点火を表し、図中の星マークは圧縮自己着火が行われることを表している。
【0030】
排気行程と吸気行程が重なる一対の気筒間には、排気行程と吸気行程が重なるときの排気行程側の気筒(当明細書ではこれを先行気筒と呼ぶ)から吸気行程側の気筒(当明細書ではこれを後続気筒と呼ぶ)へ既燃ガスをそのまま導くことができるように、気筒間ガス通路22が設けられている。当実施形態の4サイクル4気筒エンジンでは、図10に示すように1番気筒2Aの排気行程(EX)と2番気筒2Bの吸気行程(IN)とが重なり、また4番気筒2Dの排気行程(EX)と3番気筒2Cの吸気行程(IN)が重なるので、1番気筒2Aと2番気筒2B、及び、4番気筒2Dと3番気筒2Cがそれぞれ一対をなし、1番気筒2A及び4番気筒2Dが先行気筒、2番気筒2B及び3番気筒2Cが後続気筒となる。
【0031】
各気筒の吸・排気ポートとこれに接続される吸気通路、排気通路及び気筒間ガス通路は、具体的には次のように構成されている。
【0032】
先行気筒である1番気筒2A及び4番気筒2Dには、それぞれ、新気を導入するための吸気ポート11と、既燃ガス(排気ガス)を排気通路に送り出すための第1排気ポート12aと、既燃ガスを後続気筒に導出するための第2排気ポート12bとが配設されている。また、後続気筒である2番気筒2B及び3番気筒2Cには、それぞれ、新気を導入するための第1吸気ポート11aと、先行気筒からの既燃ガスを導入するための第2吸気ポート11bと、既燃ガスを排気通路に送り出すための排気ポート32とが配設されている。
【0033】
図1に示す例では、1番,4番気筒2A,2Dにおける吸気ポート11および2番,3番気筒2B,2Cにおける第1吸気ポート11aが、1気筒当り2個ずつ、燃焼室の左半部側に並列的に設けられる一方、1番,4番気筒2A,2Dにおける第1排気ポート12a及び第2排気ポート12bならびに2番,3番気筒2B,2Cにおける第2吸気ポート11b及び排気ポート12が、燃焼室の右半部側に並列的に設けられている。
【0034】
1番,4番気筒2A,2Dにおける吸気ポート11および2番,3番気筒2B,2Cにおける第1吸気ポート11aには、吸気通路15における気筒別の分岐吸気通路16の下流端が接続されている。各分岐吸気通路16の下流端近傍には、共通の軸を介して互いに連動する多連スロットル弁17が設けられており、この多連スロットル弁17は制御信号に応じてアクチュエータ18により駆動され、吸入空気量を調節するようになっている。なお、吸気通路15における集合部より上流の共通吸気通路15aには、吸気流量を検出するエアフローセンサ19が設けられている。
【0035】
1番,4番気筒2A,2Dにおける第1排気ポート12aおよび2番,3番気筒2B,2Cにおける排気ポート12には、排気通路20における気筒別の分岐排気通路21の上流端が接続されている。また、1番気筒2Aと2番気筒2Bとの間及び3番気筒2Cと4番気筒2Dとの間にそれぞれ気筒間ガス通路22が設けられ、先行気筒である1番,4番気筒2A,2Dの第2排気ポート12bに気筒間ガス通路22の上流端が接続されるとともに、後続気筒である2番,3番気筒2B,2Cの第2吸気ポート11bに気筒間ガス通路22の下流端が接続されている。
【0036】
排気通路20における分岐排気通路21の下流の集合部には排気ガス中の酸素濃度を検出することにより空燃比を検出するOセンサ23が設けられている。さらにOセンサ23の下流の排気通路21には排気浄化のために三元触媒24が設けられている。この三元触媒24は、一般に知られているように、排気ガスの空燃比が理論空燃比(つまり空気過剰率λがλ=1)付近にあるときにHC,CO及びNOxに対して高い浄化性能を示す触媒である。また、上記Oセンサ23は、排気ガス中の酸素濃度を検出することにより空燃比を検出するもので、特に理論空燃比付近で出力が急変するλOセンサにより構成されている。
【0037】
上記気筒間ガス通路22には、排気ガス中における酸素濃度の変化(空燃比の変化)に対して出力がリニアに変化するリニアOセンサ25が設けられている。
【0038】
各気筒の吸・排気ポートを開閉する吸・排気弁とこれらに対する動弁機構は、次のようになっている。
【0039】
1番,4番気筒2A,2Dにおける吸気ポート11、第1排気ポート12a及び第2排気ポート12bにはそれぞれ吸気弁31、第1排気弁32a及び第2排気弁32bが設けられ、また、2番,3番気筒2B,2Cにおける第1吸気ポート11a、第2吸気ポート11b及び排気ポート12にはそれぞれ第1吸気弁31a、第2吸気弁31b及び排気弁32が設けられている。そして、各気筒の吸気行程や排気行程が上述のような所定の位相差をもって行われるように、これら吸・排気弁がそれぞれカムシャフト33,34等からなる動弁機構により所定のタイミングで開閉するように駆動される。
【0040】
上記動弁機構のカムシャフトには、各吸・排気弁をリフトさせて開閉駆動する第1カム33と、各吸・排気弁をリフトさせることなく閉止状態に保持する一対の第2カム34との両方がそれぞれ設けられている。
【0041】
さらに、上記各吸・排気弁のうち先行気筒2A,2Dに設けられた第1排気弁32aおよび後続気筒2B,2Cに設けられた第1吸気弁31aに対しては、これらを作動状態から閉止状態に切り換える第1切換機構35aが設けられるとともに、先行気筒2A,2Dに設けられた第2排気弁32bおよび後続気筒2B,2Cに設けられた第2吸気弁31bに対しては、これらを閉止状態から作動状態に切り換える第2切換機構35bが設けられている。これら第1,第2切換機構35a,35bにより、吸・排気流通経路を後記2気筒接続状態と各気筒独立状態とに切り換える切換機構が構成されている。
【0042】
上記第1切換機構35aには、図3〜図5に示すように、動弁機構の第1カム33に対応した位置に設置されるセンタタペット61と、第2カム34に対応した位置に設置される一対の突部63を備えたサイドタペット62とが設けられ、このサイドタペット62の底部と、上記センタタペット61の底面との間には、センタタペット61の上面を第1カム33に圧接させる方向に付勢する一対の圧縮コイルばね64が配設されている。
【0043】
また、センタタペット61およびサイドタペット62の両突部63には、相対応したロック孔65,66がそれぞれ形成され、センタタペット61が図3に示す上昇位置にある場合に、上記両ロック孔65,66が連通状態となるように構成されている。また、上記センタタペット61のロック孔65内には、フランジ部67aを有するロックピン67がその軸方向に摺動可能に配設されている。上記サイドタペット62の両突部63の一方に設けられたロック孔66には、第1プランジャ75と、この第1プランジャ75を上記ロックピン67側に付勢する圧縮コイルばねからなる付勢部材76が収容される凹部を備えた第1ホルダ68が配設されるとともに、上記両突部63の他方に設けられたロック孔66には、第2プランジャ69を保持する第2ホルダ70が配設されている。
【0044】
上記センタタペット61のロック孔65内には、ロックピン67の両端部を支持する第1,第2ブッシュ71,72と、ロックピン67を基端部側(プランジャ69側)に付勢する圧縮コイルばねからなる付勢部材73とが配設されている。そして、通常時には、図3,図4に示すように、上記付勢部材73および付勢部材76の付勢力に応じてロックピン67のフランジ部67aが第2ブッシュ72の先端部に当接した原点位置に支持されることにより、上記ロックピン67がセッタータペット62のロック孔65と第2ホルダ70と離間に跨った状態で収容されるとともに、第1プランジャ75が上記第1ホルダー68と第1ブッシュ71との間に跨った状態で収容されて、上記センタタペット61とサイドタペット62とが連結状態に保持される。これによって上記第1カム33により駆動されるセンタタペット61の駆動力が、上記サイドタペット61を介して第1排気弁32aおよび第2吸気弁31aのステムエンド74に伝達されて、上記第1排気弁32aおよび第1吸気弁31aが開閉駆動されるようになっている。
【0045】
また、後述する作動油給排用の通路36から上記第2プランジャ69の基端部と第2ホルダ7の底部との間に作動油が供給されると、上記付勢部材73の付勢力に抗してロックピン67が、矢印に示すように、第1プランジャ75側に押されてセンタタペット61のロック孔65内に収容された作動位置に変位するとともに、上記付勢部材76の付勢力に抗して第1プランジャ75が、矢印に示すように、第2ホルダ68側に押されてその内部に収容された作動位置に変位することにより、センタタペット61とサイドタペット62との連結が切り離される。これによって上記第1カム33の駆動力が、上記サイドタペット62を介して第1排気弁32aおよび第1吸気弁31aのステムエンド74に伝達されることが阻止されて、上記第1排気弁32aおよび第1吸気弁31aが閉止状態に保持されることになる。
【0046】
一方、上記第2排気弁32bおよび第2吸気弁31bの動弁機構に設けられた第2切換機構35bは、図6に示すように、通常時に、ロックピン67がセンタタペット61のロック孔66内に収容されるとともに、プランジャ69が第2ホルダ70内に収容された原点位置に保持されることにより、センタタペット61とサイドタペット62との連結状態が切り離されている点を除いて上記第1切換機構35aと同様に構成されている。
【0047】
そして、通常時には、上記第2切換機構35bへの作動油の供給が停止されることにより、上記第2排気弁32bおよび第2吸気弁31bが閉止状態に保持されるようなっている。また、後述する作動油給排用の通路38から上記プランジャ69の基端部と第2ホルダ70の底部との間に作動油が供給されて、プランジャ69の先端部がセンタタペット61のロック孔65内に侵入するとともに、上記プランジャ69により押されたロックピン67が上記付勢部材73の付勢力に抗して第1ホルダ68側に押され、矢印に示すように、ロックピン67の先端部が第1ホルダー68内に進入した作動位置に変位することにより、センタタペット61とサイドタペット62とが連結される。これによって上記第1カム33の駆動力がサイドタペット62を介して上記第2排気弁32bおよび第2吸気弁31bのステムエンド74に伝達されることにより、上記第2排気弁32bおよび第2吸気弁31bが開閉駆動されることになる。
【0048】
図7および図8に示すように、上記第1排気弁32a用の第1切換機構35aと、第1吸気弁31a用の第1切換機構35aとに対する作動油給排用の通路36には、第1コントロール弁37が設けられ、また上記第2排気弁32b用の第2切換機構35bと、第2吸気弁31b用の第2切換機構35bとに対する作動油給排用の通路38には、第2コントロール弁39がそれぞれ設けられている。
【0049】
図7はエンジンの各被潤滑部に対する潤滑油供給および上記切換機構35a,35bに対する作動油供給のためのオイル供給系統を示している。このオイル供給系統には機械式のオイルポンプからなるメインオイルポンプ42が設けられ、このメインオイルポンプ42が図外のエンジン出力軸に伝動手段を介して連結されて、エンジンにより駆動されるようになっているが、このメインオイルポンプ42に加えてさらに、電動ポンプからなるサブオイルポンプ44が設けられている。
【0050】
すなわち、オイルパン40に接続されたオイル通路41にメインオイルポンプ42およびオイルフィルター43が配設されるとともに、オイル通路41のメインオイルポンプ42の上流側から分岐したオイル通路41aにサブオイルポンプ44及びオイルフィルター45が設けられている。サブオイルポンプ44の下流(正確にはオイルフィルター45の下流)とメインオイルポンプ42の下流(正確にはオイルフィルター43の下流)との間には、これらを連通するチェックバルブ46を備えたオイル通路41bが設けられている。このチェックバルブ46は、サブオイルポンプ44が停止されている時(例えば高速域での運転時)に、メインオイルポンプ42から吐出された潤滑油がサブオイルポンプ44側のオイル通路41aにリークしないように機能し、また、後述するように、サブオイルポンプ44がメインオイルポンプ42の吐出量を補うように、サブオイルポンプ44で吐出したオイルの少なくとも一部をオイル通路41a側に流通させるように機能する一方弁である。
【0051】
そして、上記メインオイルポンプ42から吐出されたオイルがエンジンの被潤滑部47に送られるとともに、上記サブオイルポンプ44から吐出されたオイルはコントロール弁37,39を介して切換機構35a,35bに送られるようになっている。なお、メインオイルポンプの吐出流量がエンジンの駆動損失を少なくするために低目に設定されており、エンジンの被潤滑部47へ供給される潤滑油が不足する運転域では、サブオイルポンプが駆動されて、オイル通路41bのチェックバルブ46を介して不足分の潤滑油が補充される。また、メインオイルポンプ42の吐出側とオイルパン40との間には、メインオイルポンプ42の吐出圧が過度に高くなる異常時にオイルの一部をリリーフするために、リリーフバルブ49を備えたリリーフ通路48が設けられている。
【0052】
図8はエンジンの駆動、制御系統の構成を示している。この図において、マイクロコンピュータ等からなるエンジン制御用のECU(エンジンコントロールユニット)50には、エアフローセンサ19、Oセンサ23およびリニアOセンサ25からの信号が入力され、さらに運転状態を判別するためにエンジン回転数を検出する回転数センサ57及びアクセル開度(アクセルペダル踏込み量)を検出するアクセル開度センサ58等からの信号も入力されている。また、このECU50から、各燃料噴射弁9と、多連スロットル弁17のアクチュエータ18と、上記第1,第2のコントロール弁37,39とに対して制御信号が出力されている。
【0053】
上記ECU50は、運転状態判別手段51、モード設定手段52、切換機構制御手段53、吸入空気量制御手段54、燃料噴射制御手段55及びオイルポンプ制御手段56を備えている。
【0054】
上記運転状態判別手段51は、図9に示すようにエンジンの運転領域が低速低負荷側の領域A(部分負荷域)と高速側ないし高負荷側の領域Bとに分けられた制御用マップを有し、低速低負荷側の領域Aを特殊運転モード領域、高速側ないし高負荷側の領域Bを通常運転モード領域とする。そして、上記回転数センサ57及びアクセル開度センサ58等からの信号により調べられるエンジンの運転状態(エンジン回転数及びエンジン負荷)が上記領域A,Bのいずれにあるかを判別するようになっている。
【0055】
上記モード設定手段52は、運転状態判別手段51による判別に基づき、上記特殊運転モード領域Aでは、排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスをそのまま吸気行程にある後続気筒に導入して燃焼させる特殊運転モードを選択し、上記通常運転モード領域Bでは、各気筒をそれぞれ独立させ燃焼させる通常運転モードを選択するようになっている。
【0056】
上記切換機構制御手段53は、モード設定手段52による運転モードの設定に応じ、特殊運転モードでは気筒間ガス通路22を介して先行気筒の既燃ガスを後続気筒に導入させる2気筒接続状態とし、通常運転モードでは各気筒にそれぞれ新気を導入させる各気筒独立状態とするように吸・排気流通経路を変更すべく第1,第2切換機構35a,35bを制御するもので、具体的には運転状態が領域A,Bのいずれにあるかに応じ、上記各コントロール弁37,39を制御することにより、第1,第2切換機構35a,35bを次のように制御する。
【0057】
Figure 2004068680
上記吸入空気量制御手段54は、アクチュエータ18を制御することによりスロットル弁17の開度(スロットル開度)を制御するものであり、運転状態に応じてマップ等から目標吸入空気量を求め、その目標吸入空気量に応じてスロットル開度を制御する。この場合、特殊運転モードとされる運転領域Aでは、後続気筒2B,2Cにおいては分岐吸気通路16からの吸気導入が遮断された状態で先行気筒2A,2Dから導入されるガス中の過剰空気と新たに供給される燃料との比が理論空燃比とされつつ燃焼が行われるので、先行、後続の2気筒分の要求トルクに応じた燃料の燃焼に必要な量の空気(2気筒分の燃料の量に対して理論空燃比となる量の空気)が先行気筒2A,2Dに供給されるように、スロットル開度が調節される。
【0058】
上記燃料噴射制御手段55は、各気筒2A〜2Dに設けられた燃料噴射弁9からの燃料噴射量及び噴射タイミングをエンジンの運転状態に応じて制御する。そして、特に上記モード設定手段52により設定される運転モードに応じ、燃料噴射量及び噴射タイミングが変更される。
【0059】
すなわち、特殊運転モードが設定された場合、先行気筒2A,2Dに対しては、空燃比が理論空燃比よりも大幅にリーンな空燃比、例えば理論空燃比の略2倍もしくはそれ以上となるように燃料噴射量を制御するとともに、圧縮行程で燃料を噴射して混合気の成層化を行わせるように噴射時期を設定する。そして、圧縮上死点付近で点火が行われることにより成層燃焼が行われるようにする。
【0060】
一方、後続気筒2B,2Cに対しては、先行気筒2A,2Dから導入されたリーン空燃比の既燃ガスに対して燃料を供給し、後続気筒2B,2Cでの燃焼の際に実質的に理論空燃比となるように燃料噴射量を制御するとともに、既燃ガスが多い状況下で着火、燃焼が可能なように噴射タイミングを設定する。例えば、先行気筒から導入される既燃ガスの温度が充分に高くて圧縮行程で自己着火し得るような温度状態となる場合は、吸気行程で燃料を噴射して混合気を均一化するように噴射時期を設定する。
【0061】
また、通常運転モードが選択された場合には、各気筒2A〜2Dの空燃比を理論空燃比もしくはそれ以下とするように燃料噴射量を制御し、例えば通常運転モード領域Bのうちの大部分の領域において理論空燃比とし、全開負荷及びその付近の運転領域で理論空燃比よりリッチとする。そして、この場合に、各気筒2A〜2Dに対して吸気行程で燃料を噴射して混合気を均一化するように噴射時期を設定する。
【0062】
上記オイルポンプ制御手段56は、オイル供給系統(図7参照)に設けられているサブオイルポンプ44を運転状態に応じて制御する。
【0063】
とくに、メインオイルポンプ42のエンジン回転数に応じた吐出流量特性が、要求流量特性に対し、高速域で略合致して低速域で低くなるように予め設定されており、一方、このような設定による場合にメインオイルポンプ42の吐出流量が要求流量よりも低くなることがある低速域で、上記オイルポンプ制御手段56によりサブオイルポンプ44が駆動されるようになっている。
【0064】
すなわち、図11に示すように、エンジンにより駆動されるメインオイルポンプ42の吐出流量(実線Fn)は、エンジン回転数に略比例して変化し、回転数が高くなると増加し、回転数が低くなると減少する。一方、エンジン各部の潤滑等のための要求流量(破線Fd)は、概略的にはエンジンの高速側で多く、低速側で少なくなるが、必ずしもエンジン回転数に比例せず、アイドル回転数付近でも潤滑のためにある程度のオイルが必要になり、さらに、特殊運転モード領域A(図9)が属する所定回転数以下の低速域では、上記第1,第2切換機構35a,35bに対して作動油を供給する必要があることから、それに見合うだけオイル供給系統の油圧を高めることが要求される。
【0065】
このような条件下で、当実施形態では、メインオイルポンプ42のエンジン回転数に応じた吐出流量特性(実線Fn)が、要求流量特性(破線Fd)に対し、高速域で略合致して低速域で低くなるように設定されている。そして、このように設定される一方で、低速域において、エンジン各部への潤滑油供給の不足分を補うため、また、第1,第2切換機構35a,35bに対して作動油を供給するため、サブオイルポンプ44が駆動される。とくに、第1,第2切換機構35a,35bに対して作動油の供給が必要な特殊運転モード領域Aと略一致する低速低負荷側の領域で、サブオイルポンプ44が駆動されるようになっている。
【0066】
以上のような当実施形態の装置の作用を、図10〜図13を参照しつつ説明する。
【0067】
低速低負荷側の領域Aでは、特殊運転モードとされ、前述のように第1排気弁32a及び第1吸気弁31aが停止状態、第2排気弁32b及び第2吸気弁31bが作動状態とされることにより、実質的な新気及びガスの流通経路は図12に示すような2気筒接続状態とされ、先行気筒2A,2Dから排出される既燃ガスがそのまま気筒間ガス通路22を介して後続気筒2B,2Cに導入されるとともに、この後続気筒2B,2Cから排出されるガスのみが排気通路20に導かれる。
【0068】
この状態において、先行気筒2A,2Dにそれぞれ吸気行程で吸気通路15から新気が導入され(図12中の矢印a)、先行気筒2A,2Dでは空燃比が理論空燃比よりも大きいリーン空燃比となるように燃料噴射量が制御されつつ圧縮行程で燃料が噴射され、かつ、所定点火時期に点火が行われて、成層燃焼が行われる(図10参照)。
【0069】
それから、先行気筒2A,2Dの吸気行程と後続気筒2B,2Cの排気行程が重なる期間に、先行気筒2A,2Dから排出された既燃ガスがガス通路22を通って後続気筒2B,2Cに導入される(図10中の白抜き矢印及び図12中の矢印b)。そして、後続気筒2B,2Cでは、先行気筒2A,2Dから導入されたリーン空燃比の既燃ガスに燃料が供給されて理論空燃比となるように、Oセンサ23の出力に基いて燃料噴射量が制御されつつ、適当なタイミングで燃料が噴射され、燃焼が行われる。例えば、先行気筒2A,2Dから導入される既燃ガスの温度が充分に高い場合、後続気筒2B,2Cにおいて吸気行程で燃料が噴射され、この燃料が均一に分散した状態で圧縮行程上死点付近で自己着火が生じ、この自己着火による燃焼が行われる(図10参照)。そして、後続気筒2B,2Cでの燃焼後の既燃ガスは、三元触媒24を備えた排気通路20に排出される(図12中の矢印c)。
【0070】
このように、先行気筒2A,2Dではリーン空燃比での成層燃焼が行われることにより、熱効率が高められるとともにポンピングロスが低減され、これらの相乗効果で大幅に燃費が改善される。また、後続気筒2B,2Cでは、先行気筒から押出された既燃ガスが導入されるためポンピングロス低減効果が高められ、さらに、圧縮自己着火が行われる場合、略均一な混合気分布状態での同時圧縮自己着火により燃焼が急速に行われ、これによって熱効率が大幅に向上される。これらの作用で後続気筒でも大幅に燃費が改善される。
【0071】
しかも、後続気筒2B,2Cから排気通路20に排出されるガスは理論空燃比であるため、従来のリーンバーンエンジンのようにリーンNOx触媒を設ける必要がなく、三元触媒24だけで充分に排気浄化性能が確保される。
【0072】
そして、リーンNOx触媒を設ける必要がないことから、リーンNOx触媒のNOx吸蔵量増大時におけるNOxの放出、還元のための一時的な空燃比のリッチ化を行う必要がなく、燃費改善の目減りが避けられる。さらに、リーンNOx触媒の硫黄被毒の問題が生じることもない。
【0073】
また、先行気筒2A,2Dでは理論空燃比の略2倍もしくはそれ以上のリーン空燃比とされることでNOx発生量が比較的少なく抑えられ、後続気筒2B,2Cでは、先行気筒2A,2Dから既燃ガスが導入されることで多量のEGRが行われているのと同等の状態となることからNOxの発生が充分に抑制される。このような点からもエミッションの向上に有利となる。
【0074】
一方、高負荷側ないし高回転側の領域Bでは、通常運転モードとされ、前述のように第1排気弁32a及び第1吸気弁31aが作動状態、第2排気弁32b及び第2吸気弁31bが停止状態とされることにより、実質的な新気及びガスの流通経路は図13に示すような各気筒独立状態とされ、実質的に各気筒2A〜2Dの吸気ポート31,31a及び排気ポート12a,12が独立し、吸気通路15から各気筒2A〜2Dの吸気ポート31,31aに新気が導入されるとともに各気筒2A〜2Dの排気ポート31,31aから排気通路20に既燃ガスが排出される。そしてこの場合は、理論空燃比もしくはそれよりリッチとなるように吸入空気量及び燃料噴射量が制御されることにより、出力性能が確保される。
【0075】
このように、運転領域によって特殊運転モードと通常運転モードとが選択され、それに応じ、吸・排気の流通経路が2気筒接続状態と各気筒独立状態とに切り換えられ、この吸・排気流通経路の切り換えは、油圧により作動される第1,第2切換機構35a,35bによって行われる。すなわち、上記特殊運転モード領域で2気筒接続状態とされるときは、上記第1,第2切換機構35a,35bに対して作動油が供給され、通常運転モード領域で各気筒独立状態とされるときは、上記第1,第2切換機構35a,35bに対する作動油の供給が停止される。
【0076】
また、エンジン停止中は第1,第2切換機構35a,35bに対する作動油の供給が停止されているため各気筒独立状態となっており、エンジン始動時にも各気筒独立状態が保たれて通常運転モードとされ、エンジン始動後においてエンジンが暖機したときに、上記特殊運転モード領域Aにあれば、上記第1,第2切換機構35a,35bに作動油が供給されることにより2気筒接続状態とされ、特殊運転モードに切換えられる。
【0077】
ところで、上記第1,第2切換機構35a,35bに対する作動油の供給およびエンジン各部への潤滑油の供給のためのオイル供給系統においては、エンジン駆動のメインオイルポンプ42と電動ポンプからなるサブオイルポンプ44が設けられ、図11に示すようにメインオイルポンプ42の吐出流量特性が要求流量特性に対して高速域で合致するように設定されるとともに、低速域でサブオイルポンプ44が駆動されることにより、エンジン各部の潤滑および切換機構作動のためのオイル供給作用が確保されつつ、中速域でのオイルポンプ駆動損失が低減される。
【0078】
すなわち、図11に破線Fdで示すような要求流量に対し、従来のようにエンジン駆動の1つのオイルポンプだけを用い低速域での要求を満足しようとすると、同図に二点鎖線F´で示すように、オイルポンプの増速比を大きくすること等でエンジン回転数に対して比較的大きな比例係数で吐出流量が変化するような特性に設定する必要がある。このようにすると高速域では吐出流量が要求流量と比べて著しく増大することから、流量が所定上限値αに達するとオイルをリリーフすることで吐出流量の上昇を抑えるようにしているが、このようにしても、中速域では吐出流量が要求流量をかなり上回ってしまい、それに伴ってオイルポンプの駆動抵抗が大きくなり、駆動損失が増大する。
【0079】
これに対し、当実施形態の装置では、メインオイルポンプ42の吐出流量特性(Fn)が、要求流量(Fd)に対し、高速域で合致して低速域では低くなるように設定されているため、従来の場合(F´)と比べ、低、中速域でのメインオイルポンプの吐出流量が少なくなり、その分だけ駆動抵抗が低減される。従って、駆動損失の低減により燃費改善効果が高められる。
【0080】
しかも、このように設定した場合に要求に対してメインオイルポンプ42の吐出流量が不足する低速域では、サブオイルポンプ44が駆動されることによりオイル供給作用が補われ、エンジンの被潤滑部47に潤滑用のオイルが充分に供給されるとともに、低速低負荷側の特殊運転モード領域で2気筒接続状態とするための第1,第2切換機構35a,35bの作動油の供給も良好に行われる。
【0081】
とくに、エンジンが始動後に通常運転モードから特殊運転モードに切換わるときにも、サブオイルポンプ44の駆動により第1,第2切換機構35a,35bへの作動油の供給が良好に行われ、2気筒接続状態への切換わりが確実に、かつ速やかに行われることとなる。
【0082】
なお、本発明の装置の具体的構成は上記実施形態に限定されず、種々変更可能である。他の実施形態を以下に説明する。
【0083】
▲1▼特殊運転モードとされる場合に、図10に示す例では、後続気筒の燃焼が圧縮自己着火により行われるようになっているが、エンジンの低温時等、後続気筒での圧縮自己着火が困難な温度状態にある場合には、後続気筒も先行気筒と同様に強制点火により燃焼を行わせるようにしてもよく、この場合、着火性確保のため、後続気筒に対する燃料噴射は圧縮行程で行うようにすることが好ましい。
【0084】
▲2▼吸・排気流通経路を後記2気筒接続状態と各気筒独立状態とに切り換える切換機構(第1,第2切換機構35a,35b)は図3〜図6に示すような構造に限定されず、例えばカムの回転をロッカーアームを介して吸・排気弁に伝えるような動弁機構においてそのロッカーアームに組み込むようにしてもよい。
【0085】
▲3▼上記基本実施形態では先行気筒2A,2D、後続気筒2B,2Cのいずれに対しても燃料噴射弁9は燃焼室に直接燃料を噴射する直噴タイプとしているが、後続気筒2B,2Cに対する燃料噴射弁は必ずしも直噴タイプに限定されず、例えば吸気ポートおよび気筒間ガス通路に燃料噴射弁を設け、通常運転モードでは吸気ポートの燃料噴射弁を駆動し、特殊運転モードでは気筒間ガス通路の燃料噴射弁を駆動するようにしてもよい。
【0086】
▲4▼本発明の装置は4気筒以外の多気筒エンジンにも適用可能である。そして、例えば6気筒等では1つの気筒の排気行程と別の気筒の吸気行程が完全に重なり合うことはないが、このような場合は、一方の気筒の排気行程が他方の気筒の吸気行程より先行するとともに、両行程が部分的に重なり合う2つの気筒を先行、後続の一対の気筒とすればよい。
【0087】
【発明の効果】
以上のように本発明の装置によると、エンジンの低速低負荷域で特殊運転モードに制御し、この特殊運転モードでは、排気行程と吸気行程が重なる一対の気筒間で排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスが気筒間ガス通路を介して吸気行程にある後続気筒に導入される2気筒接続状態としつつ、先行気筒ではリーン空燃比とした状態で燃焼を行わせ、後続気筒では先行気筒から導入されたリーン空燃比の既燃ガスに燃料を供給して理論空燃比で燃焼を行わせるようにしているため、先行気筒でのリーン燃焼による熱効率向上および各気筒でのポンピングロス低減等により燃費を改善することができ、しかも、三元触媒だけで充分に排気ガスの浄化が達成することができる。
【0088】
また、上記特殊運転モードにする場合と通常運転モードにする場合とに応じて吸・排気流通経路を切換えるため、油圧により駆動される切換機構を設けるとともに、エンジンの被潤滑部及び上記切換機構に対してオイルを供給する経路にメインオイルポンプとサブオイルポンプとを設け、メインオイルポンプのエンジン回転数に応じた吐出流量特性を、要求流量特性に対し、高速域では略合致して低速域では低くなるように設定する一方、低速域でサブオイルポンプを駆動させるように構成しているため、低・中速域でのメインオイルポンプの駆動抵抗を低減しつつ、低速域でもエンジン各部の潤滑および上記切換機構の作動を良好に行わせることができる。そして、オイルポンプの駆動抵抗の低減により、燃費改善効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による制御装置を備えたエンジン全体の概略平面図である。
【図2】エンジン本体等の概略断面図である。
【図3】第1切換機構の具体的構成を示す正面断面図である。
【図4】第1切換機構の具体的構成を示す平面断面図である。
【図5】センタタペットおよびサイドタペットの具体的構成を示す斜視図である。
【図6】第2切換機構の具体的構成を示す正面断面図である。
【図7】オイル供給系統の概略図である。
【図8】制御系統のブロック図である。
【図9】運転状態に応じた制御を行うための運転領域設定の一例を示す説明図である。
【図10】特殊運転モードにあるときの、各気筒の排気行程、吸気行程、燃料噴射時期および点火時期等を示す図である。
【図11】エンジン回転数とオイルポンプ吐出流量との関係を示す説明図である。
【図12】特殊運転モードにあるときの実質的な新気およびガスの流通経路を示す説明図である。
【図13】通常運転モードにあるときの実質的な新気およびガスの流通経路を示す説明図である。
【符号の説明】
1 エンジン本体
2A〜2D 気筒
9 燃料噴射弁
11 吸気ポート
11a 第1吸気ポート
11b 第2吸気ポート
12 排気ポート
12a 第1排気ポート
12b 第2排気ポート
22 気筒間ガス通路
31 吸気弁
31a 第1吸気弁
31b 第2吸気弁
32 排気弁
32a 第1排気弁
32b 第2排気弁
35a 第1切換機構
35b 第2切換機構
42 メインオイルポンプ
44 サブオイルポンプ
50 ECU
53 切換機構制御手段
56 オイルポンプ制御手段

Claims (6)

  1. 各気筒の燃焼サイクルが所定の位相差をもって行われるようになっている多気筒の火花点火式エンジンにおいて、
    排気行程と吸気行程が重なる一対の気筒間で排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスが気筒間ガス通路を介して吸気行程にある後続気筒に導入され、後続気筒から排出されるガスのみが排気通路に導かれる2気筒接続状態と、各気筒にそれぞれ新気が導入され、各気筒からそれぞれ排出されるガスが排気通路に導かれる各気筒独立状態とに吸・排気流通経路を切換え可能とするとともに、
    上記2気筒接続状態としつつ先行気筒では理論空燃比よりも所定量だけ大きいリーン空燃比とした状態で燃焼を行わせ、後続気筒では先行気筒から導入されたリーン空燃比の既燃ガスに燃料を供給して理論空燃比で燃焼を行わせる特殊運転モードと、上記各気筒独立状態としつつ各気筒においてそれぞれ燃焼を行わせる通常運転モードとに、エンジンの運転状態に応じて運転モードを切換える制御手段を備え、
    少なくとも低速低負荷域で上記特殊運転モードとし、高負荷域で上記通常運転モードとするようにした火花点火式エンジンの制御装置であって、
    油圧により駆動されて吸・排気流通経路の切換えを行う切換機構を設けるとともに、
    エンジンの被潤滑部及び上記切換機構にオイルを供給する経路に、エンジン回転数に応じて吐出量が変化するメインオイルポンプと、エンジンの低速域で油圧を高めるサブオイルポンプとを設け、
    上記メインオイルポンプのエンジン回転数に応じた吐出流量特性を、要求流量特性に対し、高速域では略合致して低速域では低くなるように設定する一方、低速域でサブオイルポンプを駆動させるように構成したことを特徴とする火花点火式エンジンの制御装置。
  2. 上記メインオイルポンプはエンジンで駆動される機械式ポンプであり、上記サブポンプは電動ポンプであることを特徴とする請求項1記載の火花点火式エンジンの制御装置。
  3. エンジン始動時に上記通常運転モードとし、エンジン始動後において低速低負荷域で、上記サブオイルポンプを駆動させるとともに、上記特殊運転モードに切換えるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の火花点火式エンジンの制御装置。
  4. エンジン停止状態では上記切換機構が自動的に吸・排気流通経路を各気筒独立状態に保ち、エンジン始動後に上記切換機構に作動油が供給されたときに吸・排気流通経路を2気筒接続状態に切換えるようになっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の火花点火式エンジンの制御装置。
  5. 上記先行気筒に、吸気通路に通じる吸気ポートと、排気通路に通じる第1排気ポートと、気筒間ガス通路に通じる第2排気ポートと、これら第1,第2排気ポートを開閉する第1,第2排気弁とを設けるとともに、上記後続気筒に、吸気通路に通じる第1吸気ポートと、気筒間ガス通路に通じる第2吸気ポートと、排気通路に通じる排気ポートと、上記第1,第2吸気ポートを開閉する第1,第2吸気弁とを設け、上記第1排気弁及び第1吸気弁に対して弁駆動状態と弁停止状態とに動弁機構を切換える第1切換機構と、上記第2排気弁及び第2吸気弁に対して弁駆動手段と弁停止状態とに動弁機構を切換える第2切換機構とを設け、第1切換機構は油圧非供給時に弁駆動状態、油圧供給時に弁停止状態となり、第2切換機構は油圧非供給時に弁停止状態、油圧供給時に弁駆動状態となるように構成したことを特徴とする請求項4記載の火花点火式エンジンの制御装置。
  6. 各気筒の燃焼サイクルが所定の位相差をもって行われるようになっている多気筒の火花点火式エンジンにおいて、
    排気通路に三元触媒を設け、
    排気行程と吸気行程が重なる一対の気筒間で排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスが気筒間ガス通路を介して吸気行程にある後続気筒に導入され、後続気筒から排出されるガスのみが排気通路に導かれる2気筒接続状態と、各気筒にそれぞれ新気が導入され、各気筒からそれぞれ排出されるガスが排気通路に導かれる各気筒独立状態とに吸・排気流通経路を切換え可能とするとともに、
    上記2気筒接続状態としつつ先行気筒では理論空燃比よりも所定量だけ大きいリーン空燃比とした状態で燃焼を行わせ、後続気筒では先行気筒から導入されたリーン空燃比の既燃ガスに燃料を供給して燃焼を行わせる特殊運転モードと、上記各気筒独立状態としつつ各気筒においてそれぞれ燃焼を行わせる通常運転モードとに、エンジンの運転状態に応じて運転モードを切換える制御手段を備え、
    エンジンの始動時には上記通常運転モードとし、エンジン始動後において低速低負荷域で、上記サブオイルポンプを駆動させるとともに、上記特殊運転モードに切換えるようにした火花点火式エンジンの制御装置であって、
    油圧により駆動されて吸・排気流通経路の切換えを行う切換機構を設けるとともに、
    エンジンの被潤滑部及び上記切換機構にオイルを供給する経路に、エンジンで駆動される機械式ポンプからなるメインオイルポンプと、電動式ポンプからなるサブオイルポンプとを設け、
    上記メインオイルポンプのエンジン回転数に応じた吐出流量特性を、要求流量特性に対し、高速域では略合致して低速域では低くなるように設定する一方、低速域でサブオイルポンプを駆動させるように構成したことを特徴とする火花点火式エンジンの制御装置。
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