上記のような従来のリーン運転を行うエンジンでは、リーン運転中のNOx浄化性能を確保するために、上記リーンNOx触媒を排気通路に設ける必要があり、コスト的に不利である。また、上記リーンNOx触媒の浄化性能を維持するためには、上述のようにNOx吸着量増大時にNOxの離脱、還元のため追加燃料の供給等による一時的な空燃比のリッチ化を行う必要がある。さらに、使用燃料が硫黄分を多く含む場合には、上記リーンNOx触媒の硫黄被毒を解消するための触媒の加熱処理及び還元材供給等のリジェネレーション処理が必要となり、これらによって燃費改善効果が低下する。しかも、混合気の空燃比がある程度以上にリーンになると、燃焼速度が遅くなりすぎてその終期に近い燃焼が仕事に寄与しなくなるため、成層燃焼でのリーン化による燃費改善には限界があった。
また、燃費改善のための別の手法として、圧縮自己着火が研究されている。この圧縮自己着火は、ディーゼルエンジンと同様に圧縮行程終期に燃焼室内を高温、高圧にして燃料を自己着火させるようにするものであり、空燃比が超リーンの状態や多量のEGRが導入されている状態でも、このような圧縮自己着火が行われれば燃焼室全体が一気に燃焼することにより、仕事に寄与しない遅い燃焼が避けられるため、燃費の改善に有利となる。
しかし、通常の火花点火式のガソリンエンジンでは燃焼のために強制点火が必要であって、圧縮上死点付近での燃焼室内の温度及び圧力が圧縮自己着火を生じさせる程度までには高められず、圧縮自己着火を行わせるためにはノッキングを避けつつ燃焼室内の温度または圧力を大幅に高めるための格別の工夫が必要となる。
そこで、本出願人は、リーン燃焼と圧縮自己着火とを併用して大幅な燃費改善効果をもたせるべく、エンジンの部分負荷域で、排気行程と吸気行程とが重なる一対の気筒間において排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスがそのまま吸気行程にある後続気筒に気筒間ガス通路を介して導入される2気筒接続状態とし、先行気筒では空燃比を理論空燃比よりも大きいリーン空燃比にして、強制点火により燃焼を行わせるとともに、後続気筒では先行気筒から導入されたリーン空燃比の既燃ガスに燃料を供給して圧縮自己着火により燃焼を行わせるようにした火花点火式エンジンの制御装置に関する技術を出願している(特願2002−185242号)。
本発明は、このような技術に基づき、ノッキングの発生を抑制しつつ、さらに広い運転域で効果的に後続気筒での圧縮自己着火による燃焼を行わせることができるようにし、燃費及びエミッションの改善効果を高めることができる火花点火式エンジンの制御装置を提供するものである。
ここで、上記したように、圧縮自己着火による燃焼は、強制点火による燃焼に比べて仕事に寄与しない遅い燃焼が避けられる等のため、燃費の改善に有利となる。従って、さらなる燃費の改善を図るには、特殊運転モードとされる運転領域において圧縮自己着火の燃焼が行われる後続気筒での燃焼の割合を先行気筒での燃焼の割合に比べて増大させ、後続気筒でエンジン出力を確保することが求められる。一方において、エンジンの負荷が高くなると、後続気筒では高温の既燃ガスに多量の燃料が噴射されて燃焼が行われるので、筒内温度が上昇しノッキングの発生が懸念される。この発明は、特殊運転モードとされる運転領域においてエンジンの負荷に応じて後続気筒に導入される新気量を調整することにより、上記後続気筒でのエンジン出力の確保とノッキングの抑制とのバランスを図りつつ、さらに広い運転領域で効果的に後続気筒での圧縮自己着火による燃焼を行わせるようにしたものである。
すなわち、請求項1に係る発明は、各気筒の燃焼サイクルが所定の位相差をもって行われるようになっている多気筒の火花点火式エンジンにおいて、エンジンの部分負荷域でエンジンの吸・排気及び燃焼状態についての制御モードを特殊運転モードとし、この特殊運転モードでは、排気行程と吸気行程が重なる一対の気筒間において排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスがそのまま吸気行程にある後続気筒に気筒間ガス通路を介して導入され、この後続気筒から排出されるガスが排気通路に導かれるような2気筒接続状態としつつ、上記先行気筒では空燃比が理論空燃比よりも大きいリーン空燃比で燃焼を行わせ、この先行気筒から後続気筒にリーン空燃比の既燃ガスを導入させて新たに供給された燃料とともに後続気筒で燃焼を行わせるようにした火花点火式エンジンの制御装置であって、上記特殊運転モードとされる運転領域において、先行気筒及び後続気筒での燃焼状態を制御するとともに、吸気通路から上記後続気筒に対する新気の導入が遮断された状態で上記先行気筒に対する吸入新気量及び燃料噴射量を調整することにより上記先行気筒から後続気筒に導入された既燃ガス中に含まれる新気量を制御する燃焼状態制御手段を備え、上記燃焼状態制御手段は、上記特殊運転モードとされる運転領域のうち少なくとも一部運転領域において、後続気筒で圧縮自己着火により燃焼を行わせるとともに、エンジン負荷が増大するに伴って先行気筒に導入される吸入新気量を増大させ、かつこのエンジン負荷の増大に伴って上記先行気筒への燃料噴射量を増量することにより上記先行気筒で消費される消費新気量が増大するように制御する一方、上記後続気筒の圧縮自己着火が行われる運転領域のうち低負荷側の運転領域において、先行気筒では噴射燃料を成層化させた状態で成層リーン燃焼を行わせるとともに、エンジン負荷の増大に伴って増大する上記先行気筒の吸入新気量の増大率に対する上記先行気筒の消費新気量の増大率が相対的に小さくなるように先行気筒に対する燃料噴射量を制御することによりこの低負荷側の運転領域において負荷が増大するに伴い、上記後続気筒の行程容積に対する当該気筒に導入される実新気量の割合である新気充填割合を増大させるように制御し、上記後続気筒の圧縮自己着火が行われる運転領域のうち高負荷側の運転領域において、先行気筒では噴射燃料を均一に分散化させた状態で均質リーン燃焼を行わせるとともに、後続気筒では上記先行気筒の吸入新気量の増大率に対する上記先行気筒の消費新気量の増大率が相対的に大きくなるように先行気筒に対する燃料噴射量を制御することによりこの高負荷側の運転領域において負荷が増大するに伴い上記後続気筒の上記新気充填割合を減少させるように制御することを特徴とするものである。ここで、後続気筒の新気充填割合とは標準大気状態(標準的な温度、大気圧等)で後続気筒の行程容積中に充填される新気の容積(体積)の割合をいい、この新気の容積は新気重量を標準状態の空気密度で除したものをいう。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の火花点火式エンジンの制御装置において、上記燃焼状態制御手段は、特殊運転モードとされる運転領域において負荷が増大するに伴い上記先行気筒の空燃比を理論空燃比以上のリーン空燃比の範囲でリッチ側に移行させる一方、後続気筒での空燃比を理論空燃比ないしは略理論空燃比に調整することを特徴とするものである。
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2記載の火花点火式エンジンの制御装置において、上記燃焼状態制御手段は、上記先行気筒で成層リーン状態による燃焼が行われる低負荷側の運転領域では、上記先行気筒の空燃比を理論空燃比の略3倍もしくはそれよりも大きい値とするように制御する一方、上記先行気筒で均質リーン状態による燃焼が行われる高負荷側の運転領域では、上記先行気筒の空燃比を理論空燃比の略2倍よりも小さい値とするように制御することを特徴とするものである。
請求項4に係る発明は、請求項3記載の火花点火式エンジンの制御装置において、上記燃焼状態制御手段は、上記後続気筒の圧縮自己着火が行われる運転領域のうち高負荷側の運転領域と低負荷側の運転領域との間の中負荷運転領域において、上記先行気筒の空燃比を理論空燃比の略2倍から略3倍までの値とするように制御することを特徴とするものである。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の火花点火式エンジンの制御装置において、上記燃焼状態制御手段は、上記後続気筒の圧縮自己着火を促進する着火アシスト手段を備え、この着火アシスト手段により上記後続気筒の圧縮自己着火が行われる運転領域のうち少なくとも低負荷側の運転領域において後続気筒の圧縮自己着火を促進することを特徴とするものである。
請求項6に係る発明は、請求項5記載の火花点火式エンジンの制御装置において、上記着火アシスト手段は、圧縮上死点前の上死点近傍で後続気筒内の混合気を点火する火花点火制御手段からなることを特徴とするものである。
請求項7に係る発明は、各気筒の燃焼サイクルが所定の位相差をもって行われるようになっている多気筒の火花点火式エンジンにおいて、エンジンの部分負荷域でエンジンの吸・排気及び燃焼状態についての制御モードを特殊運転モードとし、この特殊運転モードでは、排気行程と吸気行程が重なる一対の気筒間において排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスがそのまま吸気行程にある後続気筒に気筒間ガス通路を介して導入され、この後続気筒から排出されるガスが排気通路に導かれるような2気筒接続状態としつつ、上記先行気筒では空燃比が理論空燃比よりも大きいリーン空燃比で燃焼を行わせ、この先行気筒から後続気筒にリーン空燃比の既燃ガスを導入させて新たに供給された燃料とともに後続気筒で燃焼を行わせるようにした火花点火式エンジンの制御装置であって、運転状態に応じて上記後続気筒の圧縮自己着火を促進する着火アシスト手段を有するとともに、上記特殊運転モードとされる運転領域において吸気通路から上記後続気筒に対する新気の導入が遮断された状態で上記先行気筒及び後続気筒での空燃比を含めた燃焼状態を制御する燃焼状態制御手段を備え、この燃焼状態制御手段は、上記特殊運転モードとされる運転領域のうち少なくとも一部運転領域において後続気筒で圧縮自己着火により燃焼を行わせるように制御する一方、上記後続気筒の圧縮自己着火が行われる運転領域のうち低負荷側の運転領域において、先行気筒では噴射燃料を成層化させた状態で成層リーン燃焼を行わせるとともに、後続気筒では着火アシスト手段により圧縮自己着火を促進し、上記後続気筒の圧縮自己着火が行われる運転領域のうち高負荷側の運転領域において、先行気筒では噴射燃料を均一に分散化させた状態で均質リーン燃焼を行わせるとともに、負荷の増大に伴い上記後続気筒に導入される既燃ガス中に含まれる残存新気の量を減少させるように先行気筒の燃料噴射量を制御することを特徴とするものである。
請求項8に係る発明は、各気筒の燃焼サイクルが所定の位相差をもって行われるようになっている多気筒の火花点火式エンジンにおいて、エンジンの部分負荷域でエンジンの吸・排気及び燃焼状態についての制御モードを特殊運転モードとし、この特殊運転モードでは、排気行程と吸気行程が重なる一対の気筒間において排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスがそのまま吸気行程にある後続気筒に気筒間ガス通路を介して導入され、この後続気筒から排出されるガスが排気通路に導かれるような2気筒接続状態としつつ、上記先行気筒では空燃比が理論空燃比よりも大きいリーン空燃比で燃焼を行わせ、この先行気筒から後続気筒にリーン空燃比の既燃ガスを導入させて新たに供給された燃料とともに後続気筒で燃焼を行わせるようにした火花点火式エンジンの制御装置であって、上記特殊運転モードとされる運転領域において、上記先行気筒及び後続気筒の燃焼状態を制御するとともに、吸気通路から上記後続気筒に対する新気の導入が遮断された状態で上記先行気筒に対する吸入新気量及び燃料噴射量を調整することにより当該先行気筒に吸入された吸入新気量のうち当該先行気筒で消費する消費新気量を調整する燃焼状態制御手段を備え、この燃焼状態制御手段は、上記特殊運転モードとされる運転領域のうち少なくとも一部運転領域において、後続気筒で圧縮自己着火により燃焼を行わせるとともに、エンジン負荷が増大するに伴って先行気筒に導入される吸入新気量を増大させ、かつこのエンジン負荷の増大に伴って上記先行気筒への燃料噴射量を増量することにより上記先行気筒の空燃比を理論空燃比以上のリーン空燃比の範囲でリッチ側に移行させ上記先行気筒で消費される消費新気量が増大するように制御する一方、上記後続気筒の圧縮自己着火が行われる運転領域のうち低負荷側の運転領域において、エンジン負荷の増大に伴って増大する上記先行気筒の吸入新気量の増大率に対する上記先行気筒の消費新気量の増大率が相対的に小さくすることにより上記先行気筒に吸入された吸入新気量と上記消費新気量との差が拡大するように先行気筒に対する燃料噴射量を制御し、上記後続気筒の圧縮自己着火が行われる運転領域のうち高負荷側の運転領域において、上記先行気筒の吸入新気量の増大率に対する上記先行気筒の消費新気量の増大率が相対的に大きくすることにより上記吸入新気量と上記消費新気量との差が縮小するように先行気筒に対する燃料噴射量を制御することを特徴とするものである。
請求項9に係る発明は、請求項8記載の火花点火式エンジンの制御装置において、上記燃焼状態制御手段は、上記後続気筒の圧縮自己着火が行われる運転領域のうち低負荷側の運転領域において、先行気筒に対する噴射燃料を成層化させた状態で成層リーン燃焼を行わせる一方、上記後続気筒の圧縮自己着火が行われる運転領域のうち高負荷側の運転領域において、先行気筒に対する噴射燃料を均一に分散化させた状態で均質リーン燃焼を行わせることを特徴とするものである。
請求項1に係る発明によれば、エンジンの部分負荷域で上記特殊運転モードとされた場合に、先行気筒でのリーン燃焼による熱効率向上及び各気筒でのポンピングロス低減等により燃費改善効果が得られる。また、後続気筒では先行気筒から導入された既燃ガスに燃料が供給されて燃焼が行われるので、高温の既燃ガスにより供給燃料の気化が促進されると共に、上記特殊運転モードにおいて後続気筒で圧縮自己着火により燃焼が行われる場合には、圧縮自己着火によって燃焼室全体に亘り一気に燃焼して仕事に寄与しない遅い燃焼が避けられ、高い燃費改善効果が得られる。また、後続気筒では先行気筒からの既燃ガスが導入されることにより多量のEGR(排気再循環)が行われているのと同等の状態となることからエミッション性の改善効果が得られる。
ここで、さらなる燃費改善効果を得るために、後続気筒での燃焼の割合を増大させることが望まれるが、この発明によれば、上記燃焼状態制御手段が、後続気筒の圧縮自己着火が行われる運転領域のうち低負荷側の運転領域において、先行気筒では噴射燃料を成層化させた状態で成層リーン燃焼を行わせるので、ノッキングがほとんど発生しない低負荷側の運転領域において、先行気筒での燃焼を少量の燃料噴射で燃焼可能な成層リーン状態で行わせて先行気筒に導入された新気の消費を極力抑え、これにより後続気筒に導入される既燃ガス中に含まれる残存した新気量を比較的多くすることができる。そして、後続気筒でこの残存新気を利用した圧縮自己着火によって燃焼させることにより後続気筒での燃焼の割合を増大させて後続気筒でのエンジン出力を確保し、さらなる燃費改善効果を得ることができる。
しかも、燃焼状態制御手段が、後続気筒では低負荷側の運転領域において負荷が増大するに伴い後続気筒の行程容積に対する実新気量の割合である新気充填割合を増大させるように制御するので、負荷の増大に伴う燃料消費を可及的に抑制することができる。
一方、上記のように後続気筒での燃焼の割合を増大させると、エンジンの負荷が増大するにつれノッキングの発生が懸念されるが、本発明では、上記燃焼状態制御手段が、上記後続気筒の圧縮自己着火が行われる運転領域のうち高負荷側の運転領域において、先行気筒では噴射燃料を均一に分散化させた状態で均質リーン燃焼を行わせるので、ノッキングの発生が懸念される高負荷側の運転領域では、先行気筒での燃焼を多量の燃料噴射で燃焼可能な均質リーン状態で行わせて先行気筒に導入された新気を大幅に消費して後続気筒に導入される既燃ガス中に含まれる新気量を比較的少なくすることができる。このように先行気筒での燃焼の割合を増大させることにより、多量の不活性ガスを後続気筒に導入させることにより、該後続気筒での燃焼を緩慢にしてノッキングを効果的に抑制することができる。
しかも、燃焼状態制御手段が、後続気筒ではこの高負荷側の運転領域において負荷が増大するに伴い上記新気充填割合を減少させるように制御するので、ノッキングが発生し易い高負荷時に新気量を減少させてノッキングを効果的に防止することができる。従って、さらに広い運転域で効果的に後続気筒での圧縮自己着火による燃焼を行わせることができる。
請求項2に係る発明によれば、特殊運転モードとされる運転領域において負荷が増大するに伴い上記先行気筒の空燃比をリッチ側に移行させるので、エンジンの負荷の増大に伴って適正なエンジン出力を確保することができる。しかも、後続気筒での空燃比を理論空燃比ないしは略理論空燃比に調整するので、先行気筒でリーン燃焼させる場合でも、三元触媒だけで充分な排気ガスの浄化が可能になると共に、比較的高価なリーンNOx触媒を必要としないので、コストの削減にも繋がる。
請求項3に係る発明によれば、低負荷側の運転領域では、先行気筒から後続気筒に導入される既燃ガス中に十分な新気を残存させることができ、この残存新気を利用して後続気筒でのエンジン出力を十分に確保することができる。しかも、高負荷側の運転領域では、先行気筒から後続気筒に導入される既燃ガス中に不活性ガスの割合を高くすることができ、後続気筒での燃焼を確実に抑えてノッキングを効果的に抑制することができる。
請求項4に係る発明によれば、先行気筒の空燃比を段階的に切り換えることにより、空燃比の急変を抑制することができるとともに、ノッキングの発生率に応じて空燃比を移行させることができる。
請求項5に係る発明によれば、後続気筒での圧縮自己着火が行われにくいと想定される低負荷側の運転領域にある場合には、上記着火アシスト手段により後続気筒の圧縮自己着火を促進する制御が適正に実行され、後続気筒で適正に圧縮自己着火させて顕著な燃費改善効果が得られるとともに、エミッション性の改善効果が得られる。
請求項6に係る発明によれば、上記後続気筒の圧縮自己着火が行われる運転領域において、後続気筒での圧縮自己着火が生じにくいと想定される少なくとも低負荷側の運転領域にある場合には後続気筒の圧縮上死点前の上死点近傍で混合気を点火して気筒内圧力を瞬時に高める制御が実行されることにより、後続気筒で適正時期に確実に圧縮自己着火させることができる。
請求項7に係る発明によれば、エンジンの部分負荷域で上記特殊運転モードとされた場合に、先行気筒でのリーン燃焼による熱効率向上及び各気筒でのポンピングロス低減等により燃費改善効果が得られる。また、後続気筒では先行気筒から導入された既燃ガスに燃料が供給されて燃焼が行われるので、高温の既燃ガスにより供給燃料の気化が促進されると共に、上記特殊運転モードにおいて後続気筒で圧縮自己着火により燃焼が行われる場合には、圧縮自己着火によって燃焼室全体に亘り一気に燃焼して仕事に寄与しない遅い燃焼が避けられ、高い燃費改善効果が得られる。また、後続気筒では先行気筒からの既燃ガスが導入されることにより多量のEGR(排気再循環)が行われているのと同等の状態となることからエミッション性の改善効果が得られる。
ここで、さらなる燃費改善効果を得るために、後続気筒での燃焼の割合を増大させることが望まれるが、この発明によれば、上記燃焼状態制御手段が、後続気筒の圧縮自己着火が行われる運転領域のうち低負荷側の運転領域において、先行気筒では噴射燃料を成層化させた状態で成層リーン燃焼を行わせるので、ノッキングがほとんど発生しない低負荷側の運転領域において、先行気筒での燃焼を少量の燃料噴射で燃焼可能な成層リーン状態で行わせて先行気筒に導入された新気の消費を極力抑え、これにより後続気筒に導入される既燃ガス中に含まれる残存した新気量を比較的多くすることができる。そして、後続気筒でこの残存新気を利用した圧縮自己着火により燃焼させることにより後続気筒での燃焼の割合を増大させて後続気筒でのエンジン出力を確保し、さらなる燃費改善効果を得ることができる。
しかも、燃焼状態制御手段が、着火アシスト手段を備え、該着火アシスト手段により後続気筒での圧縮自己着火を促進するので、後続気筒での圧縮自己着火を確実に行わせることができる。
一方、上記のように後続気筒での燃焼の割合を増大させると、エンジンの負荷が増大するにつれノッキングの発生が懸念されるが、本発明では、上記燃焼状態制御手段が、上記後続気筒の圧縮自己着火が行われる運転領域のうち高負荷側の運転領域において、先行気筒では噴射燃料を均一に分散化させた状態で均質リーン燃焼を行わせるとともに、負荷の増大に伴い上記後続気筒に導入される既燃ガス中に含まれる残存新気の量を減少させるように先行気筒の燃料噴射量を制御するので、高負荷側の運転領域では、先行気筒での燃焼を多量の燃料噴射で燃焼可能な均質リーン状態で行わせて先行気筒に導入された新気を大幅に消費して後続気筒に導入される既燃ガス中に含まれる新気量を比較的少なくすることができる。このように先行気筒での燃焼の割合を増大させることにより、不活性ガスを多量に後続気筒に導入することができ、該後続気筒での燃焼を緩慢にしてノッキングを効果的に抑制することができる。従って、さらに広い運転域で効果的に後続気筒での圧縮自己着火による燃焼を行わせることができる。
請求項8に係る発明によれば、エンジンの部分負荷域で上記特殊運転モードとされた場合に、先行気筒でのリーン燃焼による熱効率向上及び各気筒でのポンピングロス低減等により燃費改善効果が得られる。また、後続気筒では先行気筒から導入された既燃ガスに燃料が供給されて燃焼が行われるので、高温の既燃ガスにより供給燃料の気化が促進されると共に、上記特殊運転モードにおいて後続気筒で圧縮自己着火により燃焼が行われる場合には、圧縮自己着火によって燃焼室全体に亘り一気に燃焼して仕事に寄与しない遅い燃焼が避けられ、高い燃費改善効果が得られる。また、後続気筒では先行気筒からの既燃ガスが導入されることにより多量のEGR(排気再循環)が行われているのと同等の状態となることからエミッション性の改善効果が得られる。
ここで、さらなる燃費改善効果を得るために、後続気筒での燃焼の割合を増大させることが望まれるが、この発明によれば、上記燃焼状態制御手段が、後続気筒の圧縮自己着火が行われる運転領域のうち低負荷側の運転領域において、負荷が増大するに伴い先行気筒への吸入新気量と該先行気筒で消費される消費新気量との差が拡大するように先行気筒に対する燃料噴射量を制御するので、低負荷側の運転領域では、負荷の増大に伴って吸入新気量のうち先行気筒で消費されなかった残存新気量が増大する。そして、後続気筒でこの残存新気を利用した圧縮自己着火により燃焼させることにより後続気筒での燃焼の割合を増大させて後続気筒でのエンジン出力を確保することができ、さらなる燃費改善効果を得ることができる。
一方、上記のように後続気筒での燃焼の割合を増大させると、エンジンの負荷が増大するにつれノッキングの発生が懸念されるが、本発明では、上記燃焼状態制御手段が、後続気筒の圧縮自己着火が行われる運転領域のうち高負荷側の運転領域において、負荷が増大するに伴い吸入新気量と消費新気量との差が縮小するように先行気筒に対する燃料噴射を制御するので、高負荷側の運転領域では、負荷の増大に伴って吸入新気量のうち消費新気量が増大する一方、先行気筒で消費されなかった残存新気量が減少する。そして、消費新気量が不活性ガスとなって残存新気量とともに既燃ガスとして後続気筒に導入されるので、該後続気筒での燃焼を緩慢にしてノッキングを効果的に抑制することができる。従って、さらに広い運転域で効果的に後続気筒での圧縮自己着火による燃焼を行わせることができる。
請求項9に係る発明によれば、低負荷側の運転領域では、先行気筒での燃焼を少量の燃料噴射で燃焼可能な成層リーン状態で行わせて先行気筒に導入された新気の消費を極力抑え、これにより後続気筒に導入される既燃ガス中に含まれる新気量を比較的多くすることができ、この新気を利用した圧縮自己着火により燃焼させることにより後続気筒でのエンジン出力を確保することができる。一方、高負荷側の運転領域では、先行気筒での燃焼を多量の燃料噴射で燃焼可能な均質リーン状態で行わせて先行気筒に導入された新気を大幅に消費して後続気筒に導入される既燃ガス中に含まれる新気量を比較的少なくすることができ、このように先行気筒での燃焼の割合を増大させることにより、不活性ガスを多量に導入することができ、後続気筒での燃焼を緩慢にしてノッキングを効果的に抑制することができる。
図1は本発明の一実施形態によるエンジンの概略構成を示し、図2はエンジン本体1の一つの気筒とそれに対して設けられた吸・排気弁等の構造を概略的に示している。これらの図において、エンジン本体1は複数の気筒を有し、図示の実施形態では4つの気筒2A〜2Dを有している。各気筒2A〜2Dにはピストン3が嵌挿され、ピストン3の上方に燃焼室4が形成されている。
各気筒2の燃焼室4の頂部には点火プラグ7が装備され、そのプラグ先端が燃焼室4内に臨んでいる。この点火プラグ7には、電子制御による点火時期のコントロールが可能な点火回路8が接続されている。
燃焼室4の側方部には、燃焼室4内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁9が設けられている。この燃料噴射弁9は、図略のニードル弁及びソレノイドを内蔵し、後述する燃料噴射制御手段からパルス信号が入力されることにより、そのパルス入力時期にパルス幅に対応する時間だけ駆動されて開弁し、その開弁時間に応じた量の燃料を噴射するように構成されている。なお、この燃料噴射弁9には図外の燃料ポンプにより燃料供給通路等を介して燃料が供給され、かつ、圧縮行程での燃焼室内の圧力よりも高い燃料圧力を与え得るように燃料供給系統が構成されている。
また、各気筒2A〜2Dの燃焼室4に対して吸気ポート11、11a,11b及び排気ポート12、12a,12bが開口し、これらのポートに吸気通路15、排気通路20等が接続されるとともに、各ポートが吸気弁31、31a,31b及び排気弁32、32a,32bにより開閉されるようになっている。
そして、吸気、圧縮、膨張及び排気の各行程からなる燃焼サイクルが各気筒2A〜2D毎に所定の位相差をもって行われるようになっており、4気筒エンジンの場合、気筒列方向の一端側から1番気筒2A、2番気筒2B、3番気筒2C、4番気筒2Dと呼ぶと、図5及び図6に示すように、上記燃焼サイクルが1番気筒2A、3番気筒2C、4番気筒2D、2番気筒2Bの順にクランク角で180°ずつの位相差をもって行われるようになっている。なお、図5及び図6において、EXは排気行程、INは吸気行程であり、また、Fは燃料噴射、Sは強制点火を表し、図中の星マークは圧縮自己着火が行われることを表している。
排気行程と吸気行程とが重なる一対の気筒間には、排気行程と吸気行程とが重なるときの排気行程側の気筒(当明細書ではこれを先行気筒と呼ぶ)から吸気行程側の気筒(当明細書ではこれを後続気筒と呼ぶ)へ既燃ガスをそのまま導くことができるように、気筒間ガス通路22が設けられている。当実施形態の4気筒エンジンでは、図5及び図6に示すように1番気筒2Aの排気行程(EX)と2番気筒2Bの吸気行程(IN)とが重なり、また4番気筒2Dの排気行程(EX)と3番気筒2Cの吸気行程(IN)が重なるので、1番気筒2A及び2番気筒2Bと、4番気筒2D及び3番気筒2Cとがそれぞれ一対をなし、1番気筒2A及び4番気筒2Dが先行気筒、2番気筒2B及び3番気筒2Cが後続気筒となる。
各気筒の吸・排気ポートとこれに接続される吸気通路、排気通路及び気筒間ガス通路は、具体的には次のように構成されている。
先行気筒である1番気筒2A及び4番気筒2Dには、それぞれ、新気を導入するための吸気ポート11と、既燃ガス(排気ガス)を排気通路20に送り出すための第1排気ポート12aと、既燃ガスを後続気筒に導出するための第2排気ポート12bとが配設されている。また、後続気筒である2番気筒2B及び3番気筒2Cには、それぞれ、新気を導入するための第1吸気ポート11aと、先行気筒からの既燃ガスを導入するための第2吸気ポート11bと、既燃ガスを排気通路に送り出すための排気ポート12とが配設されている。
図1に示す例では、1番,4番気筒2A,2Dにおける吸気ポート11及び2番,3番気筒2B,2Cにおける第1吸気ポート11aが、1気筒当り2個ずつ、燃焼室の一方側半部に並列的に設けられる一方、1番,4番気筒2A,2Dにおける第1排気ポート12a及び第2排気ポート12bならびに2番,3番気筒2B,2Cにおける第2吸気ポート11b及び排気ポート12が、燃焼室の他方側半部に並列的に設けられている。
1番,4番気筒2A,2Dにおける吸気ポート11及び2番,3番気筒2B,2Cにおける第1吸気ポート11aには、吸気通路15における気筒別の分岐吸気通路16の下流端が接続されている。各分岐吸気通路16の下流端近傍には、共通の軸を介して互いに連動する多連スロットル弁17が設けられており、この多連スロットル弁17は制御信号に応じてアクチュエータ18により駆動され、吸入空気量を調節するようになっている。なお、吸気通路15における集合部より上流の共通吸気通路には吸気流量を検出するエアフローセンサ19が設けられている。
1番,4番気筒2A,2Dにおける第1排気ポート12a及び2番,3番気筒2B,2Cにおける排気ポート12には、排気通路20における気筒別の分岐排気通路21の上流端が接続されている。また、1番気筒2Aと2番気筒2Bとの間及び3番気筒2Cと4番気筒2Dとの間にそれぞれ気筒間ガス通路22が設けられ、先行気筒である1番,4番気筒2A,2Dの第2排気ポート12bに気筒間ガス通路22の上流端が接続されるとともに、後続気筒である2番,3番気筒2B,2Cの第2吸気ポート11bに気筒間ガス通路22の下流端が接続されている。
上記気筒間ガス通路22は、互いに隣接する気筒間を接続する比較的短い通路であり、先行気筒2A,2Dから排出される既燃ガスがこの気筒間ガス通路22を通る間の放熱量が比較的に少なく抑えられるようになっている。
排気通路20における分岐排気通路21の下流の集合部には排気ガス中の酸素濃度を検出することにより空燃比を検出するO2センサ23が設けられている。さらにO2センサ23の下流の排気通路20には排気浄化のために三元触媒24が設けられている。この三元触媒24は、一般に知られているように、排気ガスの空燃比が理論空燃比(つまり空気過剰率λがλ=1)付近にあるときにHC,CO及びNOxに対して高い浄化性能を示す触媒である。
各気筒の吸・排気ポートを開閉する吸・排気弁とこれらに対する動弁機構は、次のようになっている。
先行気筒2A,2Dにおける吸気ポート11、第1排気ポート12a及び第2排気ポート12bにはそれぞれ吸気弁31、第1排気弁32a及び第2排気弁32bが設けられ、また、後続気筒2B,2Cにおける第1吸気ポート11a、第2吸気ポート11b及び排気ポート12にはそれぞれ第1吸気弁31a、第2吸気弁31b及び排気弁32が設けられている。そして、各気筒2A〜2Dの吸気行程や排気行程が上述のような所定の位相差をもって行われるように、これら吸・排気弁がそれぞれカムシャフト33,34等からなる動弁機構により所定のタイミングで開閉するように駆動される。
さらに、これらの吸・排気弁のうちで第1排気弁32a、第2排気弁32b、第1吸気弁31a及び第2吸気弁31bに対しては、各弁を作動状態と停止状態とに切換える弁停止機構35が設けられている。この弁停止機構35は、従来から知られているため詳しい図示は省略するが、例えば、カムシャフト33,34のカムと弁軸との間に介装されたタペットに作動油の給排が可能な油圧室が設けられ、この油圧室に作動油が供給されている状態ではカムの作動が弁に伝えられて弁が開閉作動され、油圧室から作動油が排出されたときにはカムの作動が弁に伝えられなくなることで弁が停止されるようになっている。
上記第1排気弁32aの弁停止機構35と第1吸気弁31aの弁停止機構35とに対する作動油給排用の通路36には第1コントロール弁37が設けられ、また上記第2排気弁32bの弁停止機構35と第2吸気弁31bの弁停止機構35とに対する作動油給排用の通路38には第2コントロール弁39が設けられている(図3参照)。
図3は駆動、制御系統の構成を示している。この図において、マイクロコンピュータ等からなるエンジン制御用のECU(コントロールユニット)40には、エアフローセンサ19及びO2センサ23からの信号が入力され、さらに運転状態を判別するためにエンジン回転数を検出する回転数センサ47及びアクセル開度(アクセルペダル踏込み量)を検出するアクセル開度センサ48等からの信号も入力されている。また、このECU40から、各燃料噴射弁9と、多連スロットル弁17のアクチュエータ18と、上記第1,第2のコントロール弁39とに対して制御信号が出力されている。
上記ECU40は、運転状態判別手段41、弁停止機構制御手段42、及び燃焼状態制御手段44を備えている。
運転状態判別手段41は、図4に示すように、エンジンの運転領域が低負荷低回転側の運転領域Aと、高負荷側ないし高回転側の運転領域Bとに分けられた制御用マップを有し、上記回転数センサ47及びアクセル開度センサ48等からの信号により調べられるエンジンの運転状態(エンジン回転数及びエンジン負荷)が上記運転領域A,Bのいずれの領域にあるかを判別するものである。そして、運転状態判別手段41は、この判別に基づき、低負荷低回転側の運転領域Aでは、排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスをそのまま吸気行程にある後続気筒に導入して燃焼させる特殊運転モードを選択し、高負荷側ないし高回転側の運転領域Bでは、各気筒をそれぞれ独立させ燃焼させる通常運転モードを選択するようになっている。
また、運転状態判別手段41は、運転状態が特殊運転モード領域Aにある場合に、この領域Aのうちの低負荷側運転領域A1、中負荷運転領域A2、高負荷側運転領域A3のいずれにあるかを判別するようになっている。
弁停止機構制御手段42は、特殊運転モードでは気筒間ガス通路22を介して先行気筒の既燃ガスを後続気筒に導入させる2気筒接続状態とし、通常運転モードでは各気筒にそれぞれ新気を導入させる各気筒独立状態とするように吸・排気流通状態を変更すべく弁停止機構35を制御するもので、具体的には制御モードが特殊運転モード(運転領域A)、通常運転モード(運転領域B)のいずれにあるかに応じ、上記各コントロール弁37,39を制御することにより、各弁停止機構35を次のように制御する。
特殊運転モード:第1排気弁32a及び第1吸気弁31aを停止状態
第2排気弁32b及び第2吸気弁31bを作動状態
通常運転モード:第1排気弁32a及び第1吸気弁31aを作動状態
第2排気弁32b及び第2吸気弁31bを停止状態
上記燃焼状態制御手段44は、各気筒2A〜2Dに設けられた燃料噴射弁9からの燃料噴射量及び噴射タイミングや各気筒2A〜2Dに導入される新気量をエンジンの運転状態に応じて制御し、また運転状態に応じた点火時期の制御及び点火停止等の制御を行う。さらに、エンジンの運転状態が図4中の運転領域Aにある場合と運転領域Bにある場合とで、燃焼の制御状態が変更される。
具体的には、この燃焼状態制御手段44は、負荷に応じて要求されるエンジンの総出力を算出し、このエンジンの総出力を発生させるように各気筒2A〜2Dの燃焼状態を制御するものであり、特殊運転モードとされる運転領域Aでは、先行気筒2A,2Dでの燃焼による出力と後続気筒2B,2Cでの燃焼による出力との和が上記エンジンの総出力となるように先行気筒2A,2Dと後続気筒2B,2Cに噴射される燃料やこの燃料とともに消費される新気量の割合(燃焼の割合)を制御する。
ところで、後述するように、この特殊運転モードとされる運転領域Aでは、後続気筒2B,2Cで圧縮自己着火による燃焼となされ、この圧縮自己着火による燃焼は、強制点火による燃焼に比べて仕事に寄与しない遅い燃焼が避けられる等のため、燃費の改善に有利となる。従って、さらなる燃費の改善を図るには、特殊運転モードとされる運転領域Aにおいて圧縮自己着火の燃焼が行われる後続気筒2B,2Cでの燃焼の割合を先行気筒2A,2Dでの燃焼の割合に比べて増大させ、後続気筒2B,2Cでエンジン出力を確保することが求められる。一方において、エンジンの負荷が高くなると、後続気筒2B,2Cでは高温の既燃ガスに多量の燃料が噴射されて燃焼が行われるので、筒内温度が上昇することによるノッキングの発生が懸念される。
従って、本実施形態では、この燃焼状態制御手段44が、上記運転領域Aの低負荷側運転領域A1、中負荷運転領域A2、高負荷側運転領域A3の各運転領域ごとに、先行気筒2A,2Dでの燃焼により消費される新気量等の制御を切り換え、先行気筒2A,2Dと後続気筒2B,2Cとの燃焼の割合を制御し、燃費のさらなる向上とノッキングの抑制とのバランスを図っている。
以下、この燃焼状態制御手段44による各気筒2A〜2Dの燃焼状態等の制御を詳しく説明する。
燃焼状態制御手段44は、吸入空気量制御手段43と燃料噴射制御手段45と点火制御手段46とを備える。
吸入空気量制御手段43は、アクチュエータ18を制御することによりスロットル弁17の開度(スロットル開度)を制御するものであり、運転状態に応じてマップ等から目標吸入新気量を求め、その目標吸入新気量に応じてスロットル開度を制御する。
すなわち、吸入空気量制御手段43は、運転状態に応じてスロットル開度を制御することにより、各気筒2内に所定量の新気(吸入新気)を吸入するように制御する。この吸入新気の量(吸入新気量Vv)は、図7に示すように、特殊運転モードとされる運転領域Aでは、先行気筒2A,2Dでの燃焼により消費される新気量(消費新気量Vf)と後続気筒2B,2Cでの燃焼により消費される新気量(残存新気量Va)との和であり、各気筒2の行程容積(1行程でピストンが排除する容積)Vsの範囲内で設定されている。また、この吸入新気量Vvは、本実施形態では、先行気筒2A,2Dおよび後続気筒2B,2Cの2気筒に噴射される燃料の総噴射量に対して理論空燃比となるように設定され、要求出力に応じた燃料の燃焼に必要な量であって、エンジンの負荷増大に伴って増大されるようになっている。
燃料噴射制御手段45は、各気筒2A〜2Dに設けられた燃料噴射弁9からの燃料噴射量及び噴射タイミングをエンジンの運転状態に応じて制御する。燃料噴射制御手段45は、エンジンの負荷が増大するのに応じて上記先行気筒2A,2Dおよび後続気筒2B,2Cの2気筒に噴射される燃料の総噴射量を負荷に応じて増大させるように調整しつつ、この特殊運転モードにおいて一対の気筒の両方に対する燃料噴射量の和が先行気筒2A,2Dに導入される空気の量に対して理論空燃比となる量に調整するとともに、燃料の総噴射量を各気筒2A〜2Dに分配することにより先行気筒2A,2Dに噴射する燃料を調整して先行・後続の各気筒における燃焼の割合を制御する。すなわち、燃料噴射制御手段45は、上記先行気筒2A,2Dに噴射する燃料を制御することによりこの先行気筒2A,2Dで消費される新気量を制御して、この結果、先行気筒2A,2Dから後続気筒2B,2Cに導入される既燃ガス中に含まれる新気量(残存新気量Va)を制御することになる。なお、本実施形態では新気量は標準大気状態での容積として表しており、新気重量を標準状態の空気密度で除したものをいう。
また、燃料噴射制御手段45は、本実施形態では、負荷が増大するに伴い先行気筒2A,2Dでの空燃比を、高負荷になるほど順次リッチ側に移行するように設定されている。
一方、点火制御手段46は、運転状態に応じて、先行気筒2A,2Dや後続気筒2B,2Cにおける点火時期の制御および点火停止等の制御を行う。
具体的には、燃焼状態制御手段44は、エンジンの運転状態が上記運転状態判別手段41により低負荷側運転領域A1にあると判定された場合に、先行気筒2A,2Dに対しては、空燃比が理論空燃比よりも大きい超リーン空燃比、好ましくは理論空燃比の略3倍(A/F≒45)以上になるように燃料噴射量を制御するとともに、圧縮行程で燃料を噴射して混合気の成層化を行わせるように噴射時期を設定し、かつ、圧縮上死点近傍で点火時期を設定する(図5参照)。
また、燃焼状態制御手段44は、燃料噴射制御手段45により、低負荷側運転領域A1での先行気筒2A,2Dに対する燃料噴射量について、上記制御に加えて、図8に示すように、負荷の増大に伴いスロットル弁17の開度が増大することにより、吸入新気量Vvは増加するので、後続気筒2B,2Cに導入される残存新気量Vaを増大させるように先行気筒2A,2Dでの燃料噴射量を調整制御する。そして、このように制御することにより、図8にも示すように、負荷が先行気筒2A,2Dに吸入される吸入新気量Vvとこの先行気筒2A,2Dで燃焼により消費される消費新気量Vfの差Vaが拡大することになる。
また、上記低負荷側運転領域A1にある場合に、後続気筒2B,2Cに対しては、先行気筒2A,2Dから導入されたリーン空燃比の既燃ガスに対して燃料を供給し、後続気筒2B,2Cでの燃焼の際に実質的に理論空燃比となるように燃料噴射量を制御する。そして、吸気行程で燃料を噴射して混合気を均一化するように噴射時期を設定するとともに、圧縮自己着火を行わせるべく、強制点火を停止させる。なお、後続気筒2B,2C内の温度等の状態を判別する手段を設け、特殊運転モードの中で後続気筒2B,2C内の温度等の状態を判別し、後続気筒2B,2C内の温度が比較的高くて圧縮自己着火が可能であるとされた場合に、上記のように圧縮自己着火を実行するように制御する一方、後続気筒2B,2C内温度が比較的低くて圧縮自己着火が不可能であるとされた場合、圧縮上死点付近の所定時期に強制点火を行わせるように点火時期を設定するように制御してもよい。
一方、燃料噴射制御手段45は、エンジンの運転状態が上記運転状態判別手段41により中負荷運転領域A2にあると判定された場合に、先行気筒2A,2Dに対しては、低負荷側運転領域A1にある場合の空燃比よりも小さい(リッチ側の)リーン空燃比であって、好ましくは理論空燃比の略2倍(A/F≒30)以上になるように燃料噴射量を制御するとともに、圧縮行程で燃料を噴射して混合気の成層化を行わせるように噴射時期を設定し、かつ、圧縮上死点近傍で点火時期を設定する(図5参照)。このとき、先行気筒2A,2Dの燃料噴射量について、本実施形態では、図8に示すように、負荷の増大に拘わらず後続気筒2B,2Cに導入される残存新気量Vaの絶対量を略一定(上記新気充填割合が略一定)になるように先行気筒2A,2Dでの燃料噴射量を調整制御する。
また、上記中負荷運転領域A2にある場合に、後続気筒2B,2Cに対しては、後続気筒2B,2Cでの燃焼の際に実質的に理論空燃比となるように燃料噴射量を制御する。そして、後続気筒2B,2Cに対しては、吸気行程で燃料を噴射して混合気を均一化するように噴射時期を設定するとともに、圧縮自己着火を行わせる。
一方、燃料噴射制御手段45は、エンジンの運転状態が上記運転状態判別手段41により高負荷側運転領域A3にあると判定された場合に、先行気筒2A,2Dに対しては、中負荷運転領域A2にある場合の空燃比よりも小さい(リッチ側の)リーン空燃比であって、好ましくは理論空燃比の略2倍(A/F≒30)よりも小さくなるように燃料噴射量を制御するとともに、吸気行程で燃料を噴射して混合気を均一に分散させて均質化を行わせるように噴射時期を設定し、かつ、圧縮上死点付近で強制点火を行わせるように点火時期を設定する(図6参照)。
また、燃料噴射制御手段45は、高負荷側運転領域A3での先行気筒2A,2Dに対する燃料噴射量について、上記制御に加えて、図8に示すように、負荷の増大に伴い後続気筒2B,2Cに導入される残存新気量Vaを減少させるように先行気筒2A,2Dでの燃料噴射量を調整制御する。言い換えれば、先行気筒2A,2Dでの燃焼の割合を多くして消費新気量Vfの増大率を大きくすることにより、後続気筒2B,2Cの行程容積Vsに対する標準大気状態での残存新気量Vaの割合(新気充填割合ηa)を負荷に応じて減少させるように先行気筒2A,2Dに対する燃料噴射量を制御する。そして、このように制御することにより、図8にも示すように、負荷が先行気筒2A,2Dに吸入される吸入新気量Vvとこの先行気筒2A,2Dで燃焼により消費される消費新気量Vfの差Vaが縮小することとなる。
より具体的には、本実施形態では、燃焼状態制御手段44は、図9に示すように、先行気筒2A,2Dの空燃比、吸入新気量Vvを制御している。この図9において、ηvは行程容積Vsに対する吸入新気量Vvの割合(吸入新気充填割合)であり、従ってエンジンの負荷を間接的に表すものであり、ηaは行程容積Vsに対する残存新気量Vaの割合(新気充填割合)である。この図9において、縦軸は後続気筒2B,2Cに導入される既燃ガスの温度を示すものであり、吸入新気割合ηvから間接的に導き出せる負荷の増大に伴って既燃ガス温度が上昇していることが分かる。
この図9に示すように、先行気筒2A,2Dへの吸入新気量Vvの増大に伴い、すなわち吸入新気割合ηvの増大に応じた負荷の増大に伴い、新気充填割合ηaが、低負荷側の運転領域では増大し、中負荷運転領域では略40%よりもやや小さい一定値Nとなり、高負荷側の運転領域では減少するように先行気筒2A,2Dの燃料噴射量、吸入新気量Vvを燃焼状態制御手段44において調整制御する。
このように、低負荷側運転領域A1では、先行気筒2A,2Dで燃料の噴射量を極力抑えて成層超リーン状態における燃焼として先行気筒2A,2Dでの燃焼の割合を小さくし、先行気筒2A,2Dで消費する新気量Vfを可及的に抑制することにより、後続気筒2B,2Cに導入される残存新気量Vaを増大させて後続気筒2B,2Cでの燃焼の割合を増大させることができる。そして、後続気筒2B,2Cでの燃焼の割合を増大させることにより、圧縮自己着火による燃費改善効果を得ることができる。
一方、高負荷側運転領域A3では、先行気筒2A,2Dで燃料の噴射量を多くし均質リーン状態における燃焼として先行気筒2A,2Dでの燃焼の割合を大きくし、先行気筒2A,2Dで消費する新気量Vfを増大させることにより、後続気筒2B,2Cに導入される不活性ガスを増大させて後続気筒2B,2Cでの燃焼を緩慢にすることができる。そして、後続気筒2B,2Cでの燃焼を緩慢にすることにより、高温の既燃ガスが導入されて気筒内温度が上昇した状態でもノッキングの発生を効果的に抑制することができる。
なお、高負荷側運転領域A3で先行気筒2A,2Dの燃焼の割合を増大させると、先行気筒2A,2Dから後続気筒2B,2Cに導入される既燃ガスが図9に示すように高温になることから、既燃ガス温度上昇に伴って後続気筒2B,2Cでのノッキングの発生が懸念されるが、本実施形態のように先行気筒2A,2Dでの燃焼の割合を増大させることにより生じる比較的多量の不活性ガスを既燃ガスとして後続気筒2B,2Cに導入することによりノッキングの発生を確実に抑制することができることが分かった。
以上のような本実施形態の装置の作用を、図10及び図11を参照しつつ説明する。
すなわち、上記低負荷低回転側の運転領域Aでは特殊運転モードとされ、前述のように第1排気弁32a及び第1吸気弁31aが停止状態、第2排気弁32b及び第2吸気弁31bが作動状態とされることにより、実質的な新気及びガスの流通経路は図10に示すようになり、先行気筒2A,2Dから排出される既燃ガスがそのまま気筒間ガス通路22を介して後続気筒2B,2Cに導入されるとともに、この後続気筒2B,2Cから排出される排気ガスのみが排気通路20に導かれるような2気筒接続状態とされる。
運転領域Aのうち中低負荷側運転領域A1,A2では、この状態において、先行気筒2A,2Dにそれぞれ吸気行程で吸気通路15から新気がエンジン負荷に応じた所定の量の新気(吸入新気)が導入されるとともに(図10中の矢印a)、この先行気筒2A,2Dの空燃比が理論空燃比よりも大きな値、例えば低負荷側運転領域では理論空燃比の略3倍ないしそれよりやや大きい値、中負荷運転領域A2では理論空燃比の略2倍ないしそれより大きい値となるように燃料噴射量が制御されつつ圧縮行程で燃料が噴射され、かつ、所定点火時期に点火が行われることにより、リーン空燃比での成層燃焼が行われる(図5参照)。
運転領域Aのうち高負荷側運転領域A3では、この状態において、先行気筒2A,2Dにそれぞれ吸気行程で吸気通路15から新気がエンジン負荷に応じた所定の量の新気(吸入新気)が導入されるとともに(図10中の矢印a)、この先行気筒2A,2Dの空燃比が理論空燃比よりも大きな値、例えば理論空燃比の略2倍より小さい値となるように燃料噴射量が制御されつつ吸気行程で燃料が噴射され、かつ、所定点火時期に点火が行われることにより、リーン空燃比での均質燃焼が行われる(図6参照)。
また、先行気筒2A,2Dの吸気行程と後続気筒2B,2Cの排気行程が重なる期間に、先行気筒2A,2Dから排出された既燃ガスが気筒間ガス通路22を通って後続気筒2B,2C内に導入される(図5、図6中の白抜き矢印)。そして、先行気筒2A,2Dから導入されたリーン空燃比の上記既燃ガスに燃料が供給されるとともに、後続気筒2B,2Cの空燃比が理論空燃比となるように燃料噴射量が制御されつつ、圧縮行程の上死点付近で燃焼室内の圧力、温度の上昇により圧縮自己着火が上記後続気筒2B,2Cにおいて行われる。
この場合に、先行気筒2A,2Dから排出された高温の既燃ガスが短い気筒間ガス通路22を通って後続気筒2B,2Cに直ちに導入されるため、後続気筒2B,2Cでは吸気行程で燃焼室内の温度が高くなり、この状態からさらに圧縮行程で圧力、温度が上昇することにより、圧縮行程終期の上死点付近では混合気が自己着火し得る程度まで燃焼室内の温度が上昇する。しかも、上記既燃ガスは先行気筒2A,2Dから排出されて後続気筒2B,2Cに導入されるまでの間に充分にミキシングされて均一に分布する。特に、上記のように吸気行程で燃料が噴射された場合には、この燃料が圧縮行程終期までの間に燃焼室全体に均一に分散するため、理想的な同時圧縮自己着火条件を満たすような均一な混合気分布状態が得られ、同時圧縮自己着火による燃焼が急速に行われることにより、熱効率が大幅に向上する。
このように、先行気筒2A,2Dでは、リーン燃焼により熱効率が高められるとともに、リーン燃焼を行わない通常のエンジンと比べて吸気負圧が小さくなることでポンピングロスが低減され、一方、後続気筒2B,2Cでは、空燃比が略理論空燃比とされつつ、均一な混合気分布状態で圧縮自己着火が行われることにより熱効率が高められるとともに、先行気筒2A,2Dから押出されたガスが送り込まれるため先行気筒2A,2Dよりもさらにポンピングロスが低減される。これらの作用により、燃費が大幅に改善される。
また、低負荷側運転領域A1では、負荷に応じて先行気筒2A,2Dと後続気筒2B,2Cとの間で燃焼の割合を変更しているので、低負荷側では後続気筒2B,2Cでの燃焼の割合を先行気筒2A,2Dに対して増大させ、圧縮自己着火によってエンジン出力を確保することにより燃費改善効果をさらに向上させることができる。しかも、負荷が増大するに伴い後続気筒2B,2Cに導入される残存新気量Vaを増大させて効率よくエンジン出力を確保することにより、負荷の増大に伴う燃料消費を可及的に抑制することができる。
ところで、負荷が増大するに伴い先行気筒2A,2Dから後続気筒2B,2Cに導入される既燃ガスの温度が上昇するとともに、後続気筒2B,2Cへの燃料噴射量が増大して後続気筒2B,2Cでのノッキングの発生が問題となるが、本実施形態では高負荷側運転領域A3では後続気筒2B,2Cでの燃焼の割合を減少させると同時に先行気筒2A,2Dでの燃焼の割合を増大させて後続気筒2B,2Cに導入される新気量を減少させるとともに不活性ガスを増大させてノッキングの発生を効果的に抑制している。しかも、負荷が増大するに伴い後続気筒2B,2Cに導入される残存新気量Vaを減少させているので、該後続気筒での燃焼を緩慢にしてノッキングを効果的に抑制することができる。
さらに、後続気筒2B,2Cから排気通路20に排出される排気ガスは理論空燃比であるため、従来のリーンバーンエンジンのようにリーンNOx触媒を設ける必要がなく、三元触媒24だけで充分に排気浄化性能が確保される。そして、リーンNOx触媒を設ける必要がないことから、リーンNOx触媒のNOx吸蔵量増大時におけるNOxの放出、還元のための一時的な空燃比のリッチ化を行う必要がなく、燃費改善の目減りが避けられる。さらに、リーンNOx触媒の硫黄被毒の問題が生じることもない。
しかも、後続気筒2B,2Cでの圧縮自己着火が先行気筒2A,2Dから排出される既燃ガスの熱を利用して達成されるため、格別の加熱手段を用いたりエンジンの圧縮比を極端に高くしたりする必要がなく、容易に圧縮自己着火を達成することができる。また、上記特殊運転モードの制御が実行される運転領域Aでの後続気筒2B,2Cに対する燃料噴射時期が、運転状態に応じて前述のように調整されることにより、ノッキングを生じることなく、広い運転領域に亘って圧縮自己着火を有効に行わせることができる。
一方、高負荷側ないし高回転側の運転領域Bでは通常運転モードとされ、前述のように第1排気弁32a及び第1吸気弁31aが作動状態、第2排気弁32b及び第2吸気弁31bが停止状態とされることにより、実質的な新気及びガスの流通経路は図11に示すようになり、各気筒2A〜2Dの吸気ポート11,11a及び排気ポート12a,12が独立し、吸気通路15から各気筒2A〜2Dの吸気ポート11,11aに新気が導入されるとともに各気筒2A〜2Dの排気ポート12,12aから排気通路20に既燃ガスが排出される。そして、この場合は、理論空燃比もしくはそれよりリッチとなるように吸入空気量及び燃料噴射量が制御されることにより、出力性能が確保される。
なお、上記ECU40にノッキングの発生時の振動を検出する圧電素子からなるノックセンサを接続し、上記特殊運転モードとされる運転領域Aのうち高負荷側の運転領域A3で、上記ノックセンサからの出力に基づいてノッキングの発生が検出された場合に先行気筒2A,2Dに対する燃焼の割合を増大させるように制御してもよい。
なお、本発明の装置の具体的構成は上記実施形態に限定されず、種々変更可能である。他の実施形態を以下に説明する。
(1)上記実施形態では、点火制御手段46は、低負荷側運転領域A1で強制点火を停止し、自然着火による圧縮自己着火を行わせる制御を実行するように構成されているが、点火制御手段46による制御はこれに限定するものではない。例えば、少なくとも低負荷側運転領域A1で、圧縮上死点前の上死点近傍で後続気筒2B,2C内の混合気を点火すし、着火アシストによる圧縮自己着火を行わせる制御を実行するように点火制御手段46を構成してもよい。
すなわち、図12は、図5に対応するものであり、特殊運転モードにおいて先行気筒で成層リーン燃焼とされ後続気筒で着火アシストによる圧縮自己着火とされる場合の各気筒の排気行程、吸気行程、燃料噴射時期および点火時期等を示す図である。
この図11に示すように、後続気筒2B,2Cの混合気を、圧縮上死点前の上死点近傍で点火(SA)することにより、後続気筒2B,2Cの圧縮自己着火をアシスト(促進)する制御を上記点火制御手段46が実行するように構成してもよい。
このように構成すれば、特殊運転モードの制御が実行される運転領域Aの少なくも低負荷側運転領域A1において、後続気筒2B,2Cの気筒内圧力を瞬時に高めて後続気筒2B,2Cの圧縮自己着火をアシストすることができ、これにより先行気筒2A,2Dから導出される既燃ガスの温度が低い上記低負荷側運転領域A1においても、後続気筒2B,2Cを確実に圧縮自己着火させて熱効率を改善することができるとともに、後続気筒2B,2C内における酸素と窒素との反応を可及的に会費してNOxの発生を効果的に低減することができる。
なお、気筒内温度を測定する気筒内温度測定手段を別途設け、この気筒内温度測定手段により後続気筒2B,2Cの気筒内温度を測定して、圧縮自己着火がし難い状況等にある場合に、点火制御手段46により圧縮自己着火をアシストするように構成してもよい。
(2)上記実施形態では、燃焼状態制御手段44により後続気筒2B,2Cから排気通路20に排出される排気ガスが理論空燃比となるように制御されているが、このような制御に限定するものではなく、上記排気ガスの空燃比がリーン空燃比となるものであってもよい。この場合でも、後続気筒2B,2Cでの燃焼が圧縮自己着火により行われているので、エミッション性を改善することができ、しかもNOx触媒を設けるにしても比較的コンパクトなものを採用することができ、経済的にも有利となる。
(3)上記実施形態では、先行気筒2A,2Dでは強制点火による燃焼が行われるように構成しているが、先行気筒2A,2Dにおいても圧縮自己着火による燃焼と強制点火による燃焼をエンジンの温度状態等に応じて切り換えて行わせるものであってもよい。
(4)上記実施形態では弁停止機構を用いて2気筒接続状態と各気筒独立状態とに吸・排気流通状態を切換可能としているが、吸・排気通路及び気筒間ガス通路に開閉弁を設けてこれらの通路の開閉により2気筒接続状態と各気筒独立状態とに切換え得るようにしておいてもよい。
(5)本発明の装置は4気筒以外の多気筒エンジンにも適用可能である。そして、例えば6気筒等では1つの気筒の排気行程と別の気筒の吸気行程が完全に重なり合うことはないが、このような場合は、一方の気筒の排気行程が他方の気筒の吸気行程より先行するとともに、両行程が部分的に重なり合う2つの気筒を先行、後続の一対の気筒とすればよい。