JP3979196B2 - 火花点火式エンジンの制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、火花点火式エンジンの制御装置に関し、より詳しくは、多気筒エンジンにおいて燃費改善およびエミッション向上のために各気筒の燃焼状態を制御する制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、火花点火式エンジンにおいて、各気筒内の混合気の空燃比を理論空燃比よりも大きいリーン空燃比とした状態で燃焼を行わせることにより燃費改善を図る技術が知られており、例えば特開平10−274085号公報に示されるように、燃焼室内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁を備え、低回転低負荷域等では上記燃料噴射弁から圧縮行程で燃料を噴射することにより成層燃焼を行わせて、超リーン燃焼を実現するようにしたものが知られている。
【0003】
このようなエンジンにおいては、排気ガス浄化用の触媒として通常の三元触媒(HC,COおよびNOxに対して理論空燃比付近で浄化性能の高い触媒)だけではリーン運転時にNOxに対して充分な浄化性能が得られないため、上記公報にも示されるように、酸素過剰雰囲気でNOxを吸着して酸素濃度低下雰囲気でNOxの離脱、還元を行うリーンNOx触媒を設けている。そして、このようなリーンNOx触媒を用いる場合には、リーン運転中にリーンNOx触媒のNOx吸着量が増大したときに、例えば上記公報に示されるように主燃焼以外に膨張行程中に追加燃料を噴射することで排気ガスの空燃比をリッチ化するとともにCOを生成し、これによってNOxの離脱、還元を促進するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来のリーン運転を行うエンジンでは、リーン運転中におけるNOx浄化性能の確保のために上記リーンNOx触媒を排気通路に設ける必要がある。そして、高負荷域等の理論空燃比で運転される領域における排気浄化のために三元触媒も必要であって、この三元触媒に加えて上記リーンNOx触媒が排気通路に設けられている。このリーンNOx触媒は、NOx吸着量をある程度確保するために比較的大容量が必要となり、また三元触媒と比べて高価であるので、コスト的に不利である。
【0005】
しかも、上記リーンNOx触媒の浄化性能を維持するためには、上述のようにNOxの吸着量が増大するような所定の期間毎に、NOxの離脱、還元のため追加燃料の供給等による一時的な空燃比のリッチ化を頻繁に行う必要があり、これにより、リーン燃焼による燃費改善効果が目減りしてしまうことになる。
【0006】
さらに、使用燃料が硫黄分を多く含む場合に、上記リーンNOx触媒は硫黄被毒を受け易く、この硫黄被毒の解消のために触媒の加熱および還元材供給等のリジェネレーション処理が必要となり、これによって燃費改善効果の低減および耐久性の低下等を招くおそれがある。
【0007】
そこで、本出願人は、リーン燃焼による燃費改善効果を持たせつつ、リーンNOx触媒を必要とせず、三元触媒を用いるだけ、排気浄化性能を向上させることができる火花点火式エンジンの制御装置に関する技術を出願している(特願2002−024548号)。
【0008】
本発明は、このような技術に基づき、さらにエンジン始動時の燃焼性向上等を目的とした火花点火式エンジンの制御装置を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、各気筒の燃焼サイクルが所定の位相差をもつように設定されるとともに、各気筒をそれぞれ独立させて燃焼させる通常運転モードと、排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスをそのまま吸気行程にある後続気筒に導入して燃焼させる特殊運転モードとに、エンジンの運転状態に応じて運転モードを切り換えるように構成された多気筒の火花点火式直噴エンジンにおいて、上記特殊運転モードでは気筒間ガス通路を介して先行気筒の既燃ガスを後続気筒に導入させる2気筒接続状態とし、上記通常運転モードでは各気筒にそれぞれ新気を導入させる各気筒独立状態とするように吸気および排気の流通経路を切り換える流通経路切換手段と、上記特殊運転モードでは先行気筒の筒内に燃料を噴射することにより空燃比を理論空燃比よりも所定量だけ大きいリーン状態として燃焼を行わせ、後続気筒に先行気筒から導出されたリーン空燃比の既燃ガスと燃料とを供給することにより筒内の空燃比を略理論空燃比に対応した値に設定して燃焼を行わせるように各気筒の空燃比を制御する空燃比制御手段と、エンジンの始動時には、上記流通経路切換手段により2気筒接続状態とし、先行気筒における最初の燃焼を間引いて後続気筒を燃焼させるとともに、次回の燃焼制御時から先行気筒および後続気筒の両方を燃焼させ、かつこの次回燃焼制御時における先行気筒の燃料噴射量を後続気筒の燃料噴射量よりも多く設定する始動時制御手段とを備えたものである。
【0010】
上記構成によれば、例えばエンジンの低負荷低回転域において、2気筒接続状態で特殊運転モードの燃焼制御が実行されることにより、上記先行気筒ではリーン空燃比での燃焼が行われて熱効率が高められるとともに、ポンピングロスが低減されて顕著な燃費改善効果が得られ、かつ上記後続気筒では先行気筒から導入されたリーン空燃比の既燃ガスに燃料が供給されて略理論空燃比とされた状態で燃焼が行われるため、少なくともポンピングロス低減による燃費改善効果は得られる。また、先行気筒では、大幅なリーン空燃比で燃焼が行われることによりNOxの発生量が比較的少なく抑えられ、後続気筒では、先行気筒から既燃ガスが導入されることで多量のEGRが行われているのと同等の状態となることからNOxの発生が充分に抑制され、エミッションの向上に有利となる。また、先行気筒から排出された高温のガスは気筒間ガス通路を通る間に適度に放熱されて温度調整され、かつ、このガス中の過剰空気と既燃ガスが均一に分散するようにミキシングされた状態で後続気筒に導入されることにより、多量EGRに対しては理想的な状態となり、しかも比較的高温のガス中に燃料が噴射されて、燃料の気化が促進されるため、後続気筒において燃焼が良好に行われる。そして、エンジンの始動時には、吸気および排気の流通経路が2気筒接続状態とされるとともに、先行気筒における最初の燃焼が間引かれることにより、後続気筒に多量の既燃ガスが導入されることに起因した失火の発生が効果的に防止されつつ、次回の燃焼制御時から特殊運転モードの燃焼制御が実行され、かつ始動時における最初の後続気筒の燃料噴射に伴う燃焼トルクに続いて、先行気筒での燃料噴射に伴う燃焼トルクを比較的高くすることにより、始動時の初期におけるエンジン回転数の上昇が効果的に促進されることになる。
【0011】
請求項2に係る発明は、上記請求項1記載の火花点火式エンジンの制御装置において、エンジン始動時における最初の燃焼制御時に、先行気筒への燃料噴射を実行しつつ、その点火を禁止することにより、先行気筒の燃焼を間引くようにしたものである。
【0012】
上記構成によれば、エンジンの始動時における最初の燃焼制御時に、先行気筒に噴射された燃料が吸気と充分に撹拌混合され、かつ未点火の状態で、後続気筒に供給されることにより確実に点火されることになる。
【0013】
請求項3に係る発明は、上記請求項1記載の火花点火式エンジンの制御装置において、エンジン始動時における最初の燃焼制御時に先行気筒への燃料噴射をカットすることにより、先行気筒の燃焼を間引くとともに、後続気筒内の混合気濃度が略理論空燃比に対応した値となるように後続気筒への燃料噴射量を制御するものである。
【0014】
上記構成によれば、エンジン始動時における最初の燃焼制御時に先行気筒への燃料噴射がカットされることにより、後続気筒に多量の既燃ガスが導入されることに起因した失火の発生が防止されるとともに、後続気筒において混合気濃度が略理論空燃比に対応した値に設定されることにより、後続気筒の燃焼性が効果的に確保されることになる。
【0015】
請求項4に係る発明は、各気筒の燃焼サイクルが所定の位相差をもつように設定されるとともに、各気筒をそれぞれ独立させて燃焼させる通常運転モードと、排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスをそのまま吸気行程にある後続気筒に導入して燃焼させる特殊運転モードとに、エンジンの運転状態に応じて運転モードを切り換えるように構成され、かつ排気通路に三元触媒が配設された多気筒の火花点火式エンジンにおいて、上記特殊運転モードでは気筒間ガス通路を介して先行気筒の既燃ガスを後続気筒に導入させる2気筒接続状態とし、上記通常運転モードでは各気筒にそれぞれ新気を導入させる各気筒独立状態とするように吸気および排気の流通経路を切り換える流通経路切換手段と、上記特殊運転モードでは先行気筒の筒内に燃料を噴射することにより空燃比を理論空燃比よりも所定量だけ大きいリーン状態として燃焼を行わせ、後続気筒に先行気筒から導出されたリーン空燃比の既燃ガスと燃料とを供給することにより筒内の空燃比を略理論空燃比に対応した値に設定して燃焼を行わせるように各気筒の空燃比を制御する空燃比制御手段と、エンジンの始動時には、上記流通経路切換手段により2気筒接続状態とし、先行気筒に対する最初の燃料噴射を実行しつつ、その点火を禁止することにより先行気筒の燃焼を間引いて後続気筒を燃焼させるとともに、エンジン始動後における次回の燃焼制御時から先行気筒および後続気筒に噴射された燃料をそれぞれ燃焼させ、かつこの次回燃焼制御時における先行気筒の燃料噴射量を後続気筒の燃料噴射量よりも多く設定する始動時制御手段とを備えたものである。
【0016】
上記構成によれば、例えばエンジンの低負荷低回転域において、2気筒接続状態で特殊運転モードの燃焼制御が実行されることにより、上記先行気筒ではリーン空燃比での燃焼が行われて熱効率が高められるとともに、ポンピングロスが低減されて顕著な燃費改善効果が得られ、かつ上記後続気筒では先行気筒から導入されたリーン空燃比の既燃ガスに燃料が供給されて略理論空燃比とされた状態で燃焼が行われるため、少なくともポンピングロス低減による燃費改善効果は得られる。また、先行気筒では、大幅なリーン空燃比で燃焼が行われることによりNOxの発生量が比較的少なく抑えられ、後続気筒では、先行気筒から既燃ガスが導入されることで多量のEGRが行われているのと同等の状態となることからNOxの発生が充分に抑制され、エミッションの向上に有利となる。また、先行気筒から排出された高温のガスは気筒間ガス通路を通る間に適度に放熱されて温度調整され、かつ、このガス中の過剰空気と既燃ガスが均一に分散するようにミキシングされた状態で後続気筒に導入されることにより、多量EGRに対しては理想的な状態となり、しかも上記後続気筒から排出される略理論空燃比の既燃ガスのみが三元触媒を備えた排気通路の導かれるため、三元触媒だけで充分に排気浄化性能が確保されることになる。そして、エンジンの始動時には、上記流通経路切換手段により2気筒接続状態で、先行気筒に対する最初の燃焼が間引かれることにより後続気筒の多量の既燃ガスが導入されることに起因した失火の発生が効果的に防止されつつ、次回の燃焼制御時から特殊運転モードの燃焼制御が実行され、かつ始動時における最初の後続気筒の燃料噴射に伴う燃焼トルクに続いて、先行気筒での燃料噴射に伴う燃焼トルクを比較的高くすることにより、始動時の初期におけるエンジン回転数の上昇が効果的に促進されることになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態によるエンジンの概略構成を示し、図2はエンジン本体の一つの気筒とそれに対して設けられた吸・排気弁等の構造を概略的に示している。これらの図において、エンジン本体1は複数の気筒を有し、図示の実施形態では4つの気筒2A〜2Dを有している。各気筒2A〜2Dにはピストン3が嵌挿され、ピストン3の上方に燃焼室4が形成されている。
【0020】
各気筒2の燃焼室4の頂部には点火プラグ7が装備され、そのプラグ先端が燃焼室4内に臨んでいる。この点火プラグ7には、電子制御による点火時期のコントロールが可能な点火回路8が接続されている。
【0021】
燃焼室4の側方部には、燃焼室4内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁9が設けられている。この燃料噴射弁9は、図略のニードル弁およびソレノイドを内蔵し、後述のパルス信号が入力されることにより、そのパルス入力時期に、パルス幅に対応する時間だけ駆動されて開弁し、その開弁時間に応じた量の燃料を噴射するように構成されている。なお、この燃料噴射弁9には、図外の燃料ポンプにより燃料供給通路等を介して燃料が供給され、かつ、圧縮行程での燃焼室内の圧力よりも高い燃料圧力を与え得るように燃料供給系統が構成されている。
【0022】
また、各気筒2A〜2Dの燃焼室4に対して吸気ポート11、11a,11bおよび排気ポート12、12a,12bが開口し、これらのポートに吸気通路15から分岐した分岐吸気通路16および排気通路20から分岐した分岐排気通路21等が接続されるとともに、各ポートが吸気弁31、31a,31bおよび排気弁32、32a,32bにより開閉されるようになっている。
【0023】
そして、吸気、圧縮、膨張および排気の各行程からなる上記各気筒2A〜2Dの燃焼サイクルが、所定の位相差をもつように設定されており、4気筒エンジンにおいて、気筒列方向の一端側から1番気筒2A、2番気筒2B、3番気筒2C、4番気筒2Dと呼ぶ場合には、図10に示すように、1番気筒2A、3番気筒2C、4番気筒2Dおよび2番気筒2Bの順にクランク角で180°ずつの位相差をもつように燃焼サイクルが設定されている。なお、図10において、EXは排気行程、INは吸気行程、Fは燃料噴射、Sは点火を表している。
【0024】
排気行程と吸気行程が重なる一対の気筒間には、排気行程と吸気行程が重なるときの排気行程側の気筒(当明細書ではこれを先行気筒と呼ぶ)から吸気行程側の気筒(当明細書ではこれを後続気筒と呼ぶ)へ既燃ガスをそのまま導くことができるように、気筒間ガス通路22が設けられている。図10に示すように、1番気筒2Aの排気行程(EX)と2番気筒2Bの吸気行程(IN)とが重なり、また4番気筒2Dの排気行程(EX)と3番気筒2Cの吸気行程(IN)が重なるように設定された当実施形態の4気筒エンジンでは、1番気筒2Aと2番気筒2Bとが一対をなすとともに、4番気筒2Dと3番気筒2Cが一対をなし、1番気筒2Aおよび4番気筒2Dが先行気筒、2番気筒2Bおよび3番気筒2Cが後続気筒となる。
【0025】
先行気筒である1番気筒2Aおよび4番気筒2Dには、それぞれ吸気通路15を介して供給された新気を導入するための一対の吸気ポート11,11と、既燃ガス(排気ガス)を排気通路20に排出するための第1排気ポート12aと、既燃ガスを後続気筒である2番気筒2Bおよび3番気筒2Cに導出するための第2排気ポート12bとが配設されている。
【0026】
また、後続気筒である2番気筒2Bおよび3番気筒2Cには、それぞれ吸気通路15を介して供給された新気を導入するための一対の第1吸気ポート11a,11aと、先行気筒である1番気筒2Aおよび4番気筒2Dからの既燃ガスを導入するための第2吸気ポート11bと、既燃ガスを排気通路20に排出するための排気ポート12とが配設されている。
【0027】
図1に示す例では、先行気筒である1番,4番気筒2A,2Dおよび後続気筒である2番,3番気筒2B,2Cには、その燃焼室4の左半部側に一対の吸気ポート11および第1吸気ポート11aがそれぞれ並列的に設けられている。また、上記1番,4番気筒2A,2Dの燃焼室4の右半部側には、第1排気ポート12aおよび第2排気ポート12bが並列的に設けられるとともに、2番,3番気筒2B,2Cの燃焼室4の右半部側には、第2吸気ポート11bおよび排気ポート12が並列的に設けられている。
【0028】
1番,4番気筒(先行気筒)2A,2Dにおける吸気ポート11および2番,3番気筒(後続気筒)2B,2Cにおける第1吸気ポート11aには、吸気通路15における気筒別の分岐吸気通路16の下流端が接続されている。各分岐吸気通路16の下流端近傍には、共通の軸を介して互いに連動する多連スロットル弁17が設けられており、この多連スロットル弁17がアクチュエータ18によって駆動されることにより、吸入空気量が調節されるようになっている。なお、上記吸気通路15における集合部よりも上流に位置する共通吸気通路15aには、吸気流量を検出するエアフローセンサ19が設けられている。
【0029】
1番,4番気筒(先行気筒)2A,2Dにおける第1排気ポート12aおよび2番,3番気筒2B,2C(後続気筒)における排気ポート12には、排気通路20における気筒別の分岐排気通路21の上流端が接続されている。また、1番気筒2Aと2番気筒2Bとの間および3番気筒2Cと4番気筒2Dとの間には、それぞれ気筒間ガス通路22が設けられている。そして、先行気筒である1番,4番気筒2A,2Dの第2排気ポート12bに気筒間ガス通路22の上流端が接続されるとともに、後続気筒である2番,3番気筒2B,2Cの第2吸気ポート11bに気筒間ガス通路22の下流端が接続されている。
【0030】
排気通路20における分岐排気通路21の下流側に位置する集合部には、理論空燃比検出用の排気ガス濃度検出手段であるO2センサ23が設けられ、さらにその下流側に位置する排気通路20には、排気浄化用の三元触媒24が設けられている。この三元触媒24は、一般に知られているように、排気ガスの空燃比が理論空燃比(つまり空気過剰率λがλ=1)付近にあるときにHC,COおよびNOxに対して高い浄化性能を示す触媒である。また、上記O2センサ23は、排気ガス中の酸素濃度を検出することにより空燃比を検出するもので、特に理論空燃比付近で出力が急変するλO2センサにより構成されている。
【0031】
上記気筒間ガス通路22には、排気ガス中における酸素濃度の変化(空燃比の変化)に対して出力がリニアに変化するリニアO2センサ25(リーン空燃比検出用の排気ガス濃度検出手段)が設けられている。
【0032】
各気筒の吸・排気ポートを開閉する吸・排気弁と、これらに対する動弁機構とは、次のように構成されている。すなわち、1番,4番気筒2A,2D(先行気筒)における吸気ポート11、第1排気ポート12aおよび第2排気ポート12bにはそれぞれ吸気弁31、第1排気弁32aおよび第2排気弁32bが設けられ、また、2番,3番気筒2B,2C(後続気筒)における第1吸気ポート11a、第2吸気ポート11bおよび排気ポート12にはそれぞれ第1吸気弁31a、第2吸気弁31bおよび排気弁32が設けられている。
【0033】
そして、各気筒2A〜2Dの吸気行程や排気行程が上述のような所定の位相差をもって行われるように、これらの吸・排気弁がカムシャフトを有する動弁機構によりそれぞれ所定のタイミングで開閉するように駆動される。上記動弁機構のカムシャフトには、各吸・排気弁をリフトさせて開閉駆動する第1カム33と、各吸・排気弁をリフトさせることなく閉止状態に保持する一対の第2カム34との両方がそれぞれ設けられている。
【0034】
さらに、上記各吸・排気弁のうち先行気筒2A,2Dに設けられた第1排気弁32aおよび後続気筒2B,2Cに設けられた第1吸気弁31aに対しては、これらを閉止状態から作動状態に切り換える第1切換機構35aが設けられるとともに、先行気筒2A,2Dに設けられた第2排気弁32bおよび後続気筒2B,2Cに設けられた第2吸気弁31bに対しては、これらを作動状態から閉止状態に切り換える第2切換機構35bが設けられている。
【0035】
上記第1切換機構35aには、図3〜図5に示すように、動弁機構の第1カム33に対応した位置に設置されるセンタタペット61と、第2カム34に対応した位置に設置される一対の突部63を備えたサイドタペット62とが設けられ、このサイドタペット62の底部と、上記センタタペット61の底面との間には、センタタペット61の上面を第1カム33に圧接させる方向に付勢する一対の圧縮コイルばね64が配設されている。
【0036】
また、センタタペット61およびサイドタペット62の両突部63には、相対応したロック孔65,66がそれぞれ形成され、センタタペット61が図3に示す上昇位置にある場合に、上記両ロック孔65,66が連通状態となるように構成されている。また、上記センタタペット61のロック孔65内には、フランジ部67aを有するロックピン67がその軸方向に摺動可能に配設されている。上記サイドタペット62の両突部63の一方に設けられたロック孔66には、上記ロックピン67の先端部が嵌入される凹部を有する第1ホルダ68が配設されるとともに、上記両突部63の他方に設けられたロック孔66には、プランジャ69を保持する第2ホルダ70が配設されている。
【0037】
上記センタタペット61のロック孔65内には、ロックピン67の両端部を支持する第1,第2ブッシュ71,72と、ロックピン67を基端部側(プランジャ69側)に付勢する圧縮コイルばねからなる付勢部材73とが配設されている。そして、通常時には、図3,図4に示すように、上記付勢部材73の付勢力に応じてロックピン67のフランジ部67aが第2ブッシュ72の先端部に当接した非ロック位置に支持されることにより、上記ロックピン67がセンタタペット61のロック孔65内に収容されてセンタタペット61とサイドタペット62との連結が切り離された状態となる。これによって上記第1カム33により駆動されるセンタタペット61の駆動力が、上記サイドタペット62を介して第1排気弁32aおよび第1吸気弁31aのステムエンド74に伝達されることが阻止され、上記第1排気弁32aおよび第1吸気弁31aが閉止状態に保持されるようになっている。
【0038】
また、後述する作動油給排用の通路36から上記プランジャ69の基端部と第2ホルダ70の底部との間に作動油が供給されて、プランジャ69の先端部がセンタタペット61のロック孔65内に進入すると、上記付勢部材73の付勢力に抗してロックピン67が第1ホルダ68側に押され、矢印に示すように、ロックピン67の先端部が第1ホルダ68の凹部内に嵌入されることにより、センタタペット61とサイドタペット62とが連結される。これによって上記第1カム33の駆動力が、上記サイドタペット62を介して第1排気弁32aおよび第1吸気弁31a弁のステムエンド74に伝達され、上記第1排気弁32aおよび第1吸気弁31aが開閉駆動されることになる。
【0039】
一方、上記第2排気弁32bおよび第2吸気弁31bの動弁機構に設けられた第2切換機構35bは、図6に示すように、通常時に、基端部が第2ホルダー70内に嵌入された状態で配設された第1ロックピン67と、このロックピン67の先端部側に配設された第2ロックピン75と、この第2ロックピン75を上記第1ロックピン67側に付勢する圧縮コイルばね76とを有し、上記第1ロックピン67が第2ホルダー70とセンタタペット61のロック孔65とに跨った状態で収容されるとともに、上記第2プランジャ75が第1ホルダ68と第1ブッシュ71との間に跨って状態で収容されることにより、センタタペット61とサイドタペット62とが連結状態に保持されている点を除いて上記第1切換機構35aと同様に構成されている。
【0040】
そして、通常時には、上記第2切換機構35bへの作動油の供給が停止されることにより、上記第2排気弁32bおよび第2吸気弁31bが開閉駆動されるようなっている。また、後述する作動油給排用の通路37から上記プランジャ69の基端部と第2ホルダ70の底部との間に作動油が供給されて、プランジャ69により押された第1ロックピン67がセンタタペット61のロック孔65内に収容されるとともに、上記第2ロックピン75が、第1ホルダー68内に収容されることにより、センタタペット61とサイドタペット62との連結状態が切り離れると、上記第2排気弁32bおよび第2吸気弁31bが閉止状態に保持されることになる。
【0041】
図7に示すように、上記第1排気弁32a用の第1切換機構35aと、第1吸気弁31a用の第1切換機構35aとに対する作動油給排用の通路36には、第1コントロール弁37が設けられ、また上記第2排気弁32b用の第2切換機構35bと、第2吸気弁31b用の第2切換機構35bとに対する作動油給排用の通路38には、第2コントロール弁39がそれぞれ設けられている。
【0042】
図7は、エンジンの駆動、制御系統の構成を示している。この図において、マイクロコンピュータ等からなるエンジン制御用のECU(エンジンコントロールユニット)40には、エアフローセンサ19、O2センサ23およびリニアO2センサ25からの信号が入力され、さらに運転状態を判別するためにエンジン回転数を検出する回転数センサ45、アクセル開度(アクセルペダル踏込み量)を検出するアクセル開度センサ46およびエンジンの冷却水温度を検出する水温センサ47等からの信号も入力されている。また、上記ECU40から、各燃料噴射弁9、多連スロットル弁17のアクチュエータ18および上記第1,第2のコントロール弁37,39に、それぞれ制御信号が出力されるようになっている。
【0043】
上記ECU40は、エンジンの運転状態を判別する運転状態判別手段41と、第1,第2切換機構35a,35bを制御する弁停止機構制御手段42と、エンジンの燃焼室4への吸入空気量を制御する吸入空気量制御手段43と、燃料の噴射状態を制御する燃料噴射制御手段44と、エンジン始動時に後述する始動時制御を実行する始動時制御手段52とを備えている。
【0044】
運転状態判別手段41は、上記回転数センサ45およびアクセル開度センサ46等からの信号に基づき、エンジン回転数およびエンジン負荷等に対応したエンジンの運転状態を判別し、図8に示すような低負荷低回転側の運転領域Aにある場合には、後述する2気筒接続状態で特殊運転モードの運転制御を実行し、高負荷側ないし高回転側の運転領域Bにある場合には、後述する各気筒独立状態で通常運転モードの燃焼制御を実行するように構成されている。
【0045】
弁停止機構制御手段42は、上記運転状態判別手段41において判別されたエンジンの運転領域A,Bに応じ、上記各コントロール弁37,39を開閉制御して第1,第2切換機構35a,35bを駆動制御することにより、吸気および排気の流通経路を後に詳述するように2気筒接続状態と各気筒接続状態とに切り換えるものであり、上記弁停止機構制御手段42と、コントロール弁37,39を有する駆動機構と、第1,第2切換機構35a,35b等とにより、吸気および排気の流通経路を2気筒接続状態と各気筒独立状態とに切り換える流通経路切換手段が構成されている。
【0046】
すなわち、低負荷低回転の運転領域Aでは、上記各コントロール弁37,39を閉止状態として、第1,第2切換機構35a,35bへの作動油の供給を停止することにより、第1排気弁32aおよび第1吸気弁31aに対する駆動力の伝達が遮断されてこれらが閉止状態に保持されるとともに、第2排気弁32bおよび第2吸気弁31bに対する駆動力の伝達が許容されてこれらが開閉駆動されることにより、吸気および排気の流通経路が図9に示す2気筒接続状態となる。
【0047】
また、高負荷高回転の運転領域Bでは、上記各コントロール弁37,39を開放状態として、第1,第2切換機構35a,35bへの作動油の供給を行うことにより、上記第1排気弁32aおよび第1吸気弁31aに対する駆動力の伝達が許容されてこれらが開閉駆動されるとともに、第2排気弁32bおよび第2吸気弁31bに対する駆動力の伝達が遮断されてこれらが閉止状態に保持されることにより、吸気および排気の流通経路が図11に示す各気筒独立状態となる。
【0048】
上記吸入空気量制御手段43は、アクチュエータ18を制御することによりスロットル弁17の開度(スロットル開度)を制御するものであり、運転状態に応じてマップ等から目標吸入空気量を求め、その目標吸入空気量に基づいてスロットル開度を制御する。この場合、低負荷低回転側の運転領域Aでは、後述のように後続気筒(2番、3番気筒2B,2C)に対する分岐吸気通路16からの吸気導入が遮断された状態で、先行気筒(1番、4番気筒2A,2D)から導入されるガス中の過剰空気が燃焼に供せられるように、先行気筒と後続気筒との2気筒分に相当する燃料を燃焼させるのに必要な量の空気が上記先行気筒に供給されるように、スロットル開度を調節する特殊運転モードの制御が実行される。
【0049】
上記燃料噴射制御手段44は、各気筒2A〜2Dに設けられた燃料噴射弁9からの燃料噴射量および噴射タイミングをエンジンの運転状態に応じて制御するもので、特に運転状態が図8中の運転領域Aにある特殊運転モードと、運転領域Bにある通常運転モードとに、燃料噴射の制御状態を変更するものであり、この燃料噴射制御手段44と、上記吸入空気量制御手段43とにより空燃比制御手段が構成されている。
【0050】
すなわち、運転状態が低負荷低回転側の運転領域Aにある特殊運転モードでは、先行気筒(1番、4番気筒2A,2D)に対して、空燃比が理論空燃比よりも大幅にリーンな空燃比、例えば理論空燃比の略2倍もしくはそれ以上となるように燃料噴射量が制御されるとともに、圧縮行程で燃料が噴射されて成層燃焼が行われるように噴射タイミングが設定される。一方、後続気筒(2番、3番気筒2B,2C)に対しては、先行気筒から導入されたリーン空燃比の既燃ガスに燃料が供給されることにより、空燃比が理論空燃比となるように燃料噴射量が制御されるとともに、既燃ガスが多い状況下で着火、燃焼が可能なように噴射タイミングが設定され、例えば着火性確保のため圧縮行程で燃料が噴射されるようになっている。
【0051】
上記燃料噴射量の制御は、エアフローセンサ19およびO2センサ23等からの出力に基づくフィードバック制御により行われる。具体的には、先行気筒2A,2Dで所定のリーン空燃比、後続気筒2B,2Cで理論空燃比となるように、エアフローセンサ19により検出される吸入空気量に応じてそれぞれの気筒に対する基本噴射量が演算されるとともに、気筒間ガス通路22に設けられたリニアO2センサ25からの出力に基づいて先行気筒2A,2Dに対する燃料噴射量がフィードバック補正され、さらに排気通路20に設けられたO2センサ23からの出力に基づいて後続気筒2B,2Cに対する燃料噴射量がフィードバック補正されるようになっている。
【0052】
また、運転状態が高負荷側ないし高回転側の運転領域Bにある通常運転モードでは、各気筒2A〜2Dの空燃比を理論空燃比もしくはそれ以下とするように燃料噴射量を制御し、例えばこの運転領域Bにおける大部分の領域で理論空燃比とし、全開負荷およびその付近の運転領域で理論空燃比よりリッチとする。そして、この場合に、各気筒2A〜2Dに対して吸気行程で燃料を噴射することにより均一燃焼を行わせるように噴射タイミングを設定する。
【0053】
上記始動時制御手段52は、エンジンの始動時に、上記弁停止機構制御手段42および各切換機構35a,35b等からなる流通経路切換手段により吸気および排気の流通経路を2気筒接続状態に設定した状態で、後述するようにエンジン始動時に、各先行気筒2A,2Dにおける最初の燃焼を間引いて後続気筒2B,2Cを燃焼させるとともに、次回の燃焼制御時から先行気筒2A,2Dおよび後続気筒2B,2Cの両方を燃焼させる特殊運転モードの燃焼制御を実行するように構成されている。
【0054】
以上のような当実施形態の装置の作用を、図9〜図11を参照しつつ説明する。すなわち、低負荷低回転側の運転領域Aにおける特殊運転モードでは、前述のように各コントロール弁37,39を閉止状態として、第1,第2切換機構35a,35bに対する作動油の供給を停止することにより、第1排気弁32aおよび第1吸気弁31aが閉止状態とされるとともに、第2排気弁32bおよび第2吸気弁31bが作動状態とされることにより、実質的な新気およびガスの流通経路は図9に示すように、先行気筒(1番,4番気筒)2A,2Dから排出される既燃ガスがそのまま気筒間ガス通路22を介して後続気筒(2番,3番気筒)2B,2Cに導入されるとともに、この後続気筒2B,2Cから排出される既燃ガスのみが三元触媒24を備えた排気通路20に導かれる2気筒接続状態とされる。
【0055】
この状態において、先行気筒2A,2Dにそれぞれ吸気行程で吸気通路15から新気が導入され(図9中の矢印a)、先行気筒2A,2DではリニアO2センサ25により検出される空燃比が所定リーン空燃比となるように燃料噴射量がフィードバック制御されつつ圧縮行程で燃料が噴射され、かつ、所定点火時期に点火が行われて、リーン空燃比での成層燃焼が行われる(図10参照)。
【0056】
その後、先行気筒2A,2Dの吸気行程と後続気筒2B,2Cの排気行程が重なる期間に、先行気筒2A,2Dから排出された既燃ガスが気筒間ガス通路22を通って後続気筒2B,2Cに導入される(図9中の矢印bおよび図10中の白抜き矢印)。そして、後続気筒2B,2Cでは、先行気筒2A,2Dから導入されたリーン空燃比の既燃ガスに燃料が供給されて理論空燃比となるように、O2センサ23の出力に基づいて燃料噴射量が制御されつつ、適当なタイミング(例えば圧縮行程)で燃料が噴射され、かつ、所定の点火時期に点火が行われて燃焼が行われる(図10参照)。後続気筒2B,2Cでの燃焼後の既燃ガスは、三元触媒24を備えた排気通路20に排出される(図9中の矢印c)。
【0057】
このように、先行気筒2A,2Dでは、大幅にリーンな空燃比での成層燃焼が行われることにより、熱効率が高められるとともにポンピングロスが低減され、これらの相乗効果で顕著に燃費が改善される。また、後続気筒2B,2Cでは、空気過剰状態の既燃ガスに対し燃料が供給されて理論空燃比に制御されつつ燃焼が行われることにより、先行気筒2A,2Dのようにリーン空燃比で成層燃焼が行われるものと比べると熱効率では多少劣るものの、ポンピングロス低減による燃費改善効果は充分に得られる。
【0058】
しかも、後続気筒2B,2Cから排気通路20に排出されるガスは理論空燃比であるため、従来のリーンバーンエンジンのようにリーンNOx触媒を設ける必要がなく、三元触媒24だけで充分に排気浄化性能が確保される。
【0059】
そして、リーンNOx触媒を設ける必要がないことから、リーンNOx触媒のNOx吸蔵量増大時におけるNOxの放出、還元のための一時的な空燃比のリッチ化を行う必要がなく、燃費改善の目減りが避けられる。さらに、リーンNOx触媒の硫黄被毒の問題が生じることもない。
【0060】
また、先行気筒2A,2Dでは理論空燃比の略2倍もしくはそれ以上の大幅なリーンな空燃比とされることでNOxの発生量が比較的少なく抑えられとともに、後続気筒2B,2Cでは、先行気筒2A,2Dから既燃ガスが導入されることで多量のEGRが行われているのと同等の状態となることからNOxの発生が充分に抑制される。このような点からもエミッションの向上に有利となる。
【0061】
上記後続気筒2B,2Cには先行気筒2A,2Dからの既燃ガスが気筒間ガス通路22を介して導入されるが、この気筒間ガス通路22で通路長に応じた放熱作用が得られるため、この通路長を適正値に設定することにより、後続気筒2B,2Cに導入される既燃ガスの温度を調整することが可能である。そして、このように既燃ガスの温度を調整するとともに、後続気筒2B,2Cに対する燃料噴射タイミングを適宜調整することにより、多量の既燃ガスが導入される後続気筒2B,2Cにおいても、着火、燃焼性を良好に保つことができる。
【0062】
なお、先行気筒2A,2Dから後続気筒2B,2Cに導入されるガス中の過剰酸素の割合が少なくなると後続気筒2B,2Cでの燃焼安定性が損なわれるが、先行気筒2A,2Dにおいて理論空燃比の略2倍もしくはそれ以上の大幅にリーンな空燃比とすれば、後続気筒2B,2Cでの燃焼安定性は確保される。
【0063】
一方、エンジンが高負荷側ないし高回転側の運転領域Bにある場合には、前述のように上記各コントロール弁37,39を開放状態として、第1,第2切換機構35a,35bに対する作動油の供給を行うことにより、第1排気弁32aおよび第1吸気弁31aが作動状態とされるとともに、第2排気弁32bおよび第2吸気弁31bが閉止状態とされることにより、実質的な吸気および排気の流通経路が図11に示すように、各気筒2A〜2Dの吸気ポート31,31aおよび排気ポート12a,12が独立し、分岐吸気通路16を介して各気筒2A〜2Dの吸気ポート11,11aに新気が導入されるとともに、各気筒2A〜2Dの排気ポート12,11aから排気通路20に既燃ガスが排出される各気筒独立状態とされる。
【0064】
上記のように各気筒2A〜2Dの燃焼サイクルが所定の位相差をもつように設定されるとともに、各気筒2A〜2Dをそれぞれ独立させて燃焼させる通常運転モードと、排気行程にある先行気筒2A,2Dから排出される既燃ガスをそのまま吸気行程にある後続気筒2B,2Cに導入して燃焼させる特殊運転モードとに、エンジンの運転状態に応じて運転モードを切り換えるように構成された多気筒の火花点火式エンジンにおいて、エンジンの高負荷側ないし高回転側の運転領域Bでは、吸気および排気の流通経路を各気筒独立状態として各気筒2A〜2Dにそれぞれ新気を導入させるとともに、各気筒2A〜2D内の空燃比を理論空燃比もしくはそれよりリッチとなるように吸入空気量および燃料噴射量を制御することにより、エンジンの運転状態に対応した出力性能を確保することができる。
【0065】
また、エンジンの始動時には、上記流通経路切換手段により、先行気筒2A,2Dと後続気筒2B,2Cとを接続した2気筒接続状態とし、かつエンジン始動時に先行気筒2A,2Dおける最初の燃焼を間引いて後続気筒2B,2Cを燃焼させるとともに、次回の燃焼制御時から先行気筒2A,2Dおよび後続気筒2B,2Cの両方を燃焼させる特殊運転モードの燃焼制御を、上記始動時制御手段52において実行するようになっている。
【0066】
すなわち、エンジンの始動時に、吸気および排気の流通経路を2気筒接続状態して、図12に示すように、各先行気筒2A,2Dに対する最初の燃料噴射F1を実行しつつ、その点火S1を禁止することにより、その燃焼を間引くようにする。そして、上記先行気筒2A,2Dに噴射された燃料を新気と充分に撹拌混合した状態で、後続気筒2B,2Cに供給するとともに、この後続気筒2B,2Cに燃料噴射F2を行うとともに、点火S2を行った後、次回の燃焼制御時から、から先行気筒2A,2Dおよび後続気筒2B,2Cに対する噴射燃料F3,F4および点火S3,S4を行う特殊運転モードの燃焼状態とする。
【0067】
このようにエンジンの始動時に先行気筒2A,2Dに対する最初の燃料噴射F1を実行しつつ、その点火S1を禁止することにより、後続気筒2B,2Cに多量の既燃ガスが導入されることに起因した失火の発生を効果的に防止することができるとともに、上記先行気筒2A,2Dから後続気筒2B,2Cに供給された燃料(F1)および後続気筒2B,2C内に新た噴射された燃料(F2)の気化・霧化を促進するとともに、新気と適正に混合した状態で、点火S2を行うことにより、混合気を確実に燃焼させることができる。したがって、エンジンの始動時に、後続気筒2B,2Cに多量の既燃ガスが導入されることに起因した失火の発生を効果的に防止してエンジンの始動性を確保することができる。
【0068】
そして、エンジンの始動時における次回の燃焼制御時から先行気筒2A,2Dおよび後続気筒2B,2Cに対する噴射燃料F3,F4および点火S3,S4を行う特殊運転モードの燃焼状態とすることにより、各気筒2A〜2Dを連続的に燃焼させてエンジンをスムーズに始動させることができる。しかも、エンジンの頻繁に運転モードを切り換える等の煩雑な制御を実行することなく、燃費の改善効果およびエミッションの向上効果が得られるという利点がある。
【0069】
また、エンジンの始動時における最初の燃焼制御時に先行気筒2A,2Dへの燃料噴射を実行しつつ、その点火を禁止することにより、先行気筒2A,2Dの燃焼を間引くように構成された上記実施形態において、エンジン始動時における最初の燃焼制御時に先行気筒2A,2Dへの燃料噴射F1を、図13の破線で示すように、気筒識別後で膨張行程から排気行程の初期までの間に行うようにしてもよい。このように構成した場合には、エンジンの始動時の早い段階で燃料噴射が行われることに起因して燃料の噴射圧力が低くなるという事態の発生を効果的に防止することができるため、先行気筒2A,2Dへの燃料噴射量を正確に制御できるという利点がある。
【0070】
さらに、上記エンジン始動時における先行気筒2A,2Dの燃料噴射F3の噴射量を、その次の後続気筒2B,2Cでの燃料噴射F4の燃料噴射F4の燃料噴射量に対して多く設定している。またエンジン始動時における先行気筒2A,2Dの燃料噴射F3の噴射量を、略理論空燃比に対応した値に設定してもよい。
【0071】
上記のようにエンジン始動時における先行気筒2A,2Dの燃料噴射F3の噴射量を、その次の後続気筒2B,2Cでの燃料噴射F4の燃料噴射F4の燃料噴射量に対して多く設定したため、始動時における最初の後続気筒2B,2Cの燃料噴射F1,F2に伴う燃焼トルクに続いて、先行気筒2B,2Dでの燃料噴射F3に伴う燃焼トルクを比較的高くすることにより、始動時の初期におけるエンジン回転数の上昇を効果的に促進することができる。また、先行気筒2A,2Dの燃料噴射F3の燃料噴射量を略理論空燃比に対応した値に設定した場合には、その次の後続気筒2B,2Cでの燃料噴射F4がカットされるようになるものの、略理論空燃比で連続して4回の燃焼トルクが得られるため、一気に高いエンジン回転数まで上昇させることができる。
【0072】
また、エンジンの始動時における最初の燃焼制御時に先行気筒2A,2Dへの燃料噴射を実行しつつ、その点火を禁止することにより燃焼を間引くように構成した上記実施形態に代え、図13に示すように、エンジン始動時における最初の燃焼制御時に先行気筒2A,2Dへの燃料噴射F1をカットすることにより、先行気筒2A,2Dの燃焼を間引くとともに、後続気筒2B,2C内の混合気濃度が略理論空燃比に対応した値となるように後続気筒2B,2Cへの燃料噴射F2を行う際の噴射量を制御するようにしてもよい。
【0073】
上記の構成によっても、エンジンの始動時に、先行気筒2A,2Dに供給された新気をそのまま後続気筒2B,2Cに導入させるとともに、この後続気筒2B,2Cに導入された新気に適正量の燃料を噴射して混合気を確実に燃焼させることにより、上記後続気筒2B,2Cに大量の既燃ガスが導入されることに起因した失火の発生を防止しつつ、各気筒2A〜2Dを連続的に燃焼させてエンジンをスムーズに始動させることができる。
【0074】
また、上記実施形態に示すように、各気筒2A〜2Dの燃焼サイクルが所定の位相差をもつように設定されるとともに、各気筒2A〜2Dをそれぞれ独立させて燃焼させる通常運転モードと、排気行程にある先行気筒2A,2Dから排出される既燃ガスをそのまま吸気行程にある後続気筒2B,2Cに導入して燃焼させる特殊運転モードとに、エンジンの運転状態に応じて運転モードを切り換えるように構成され、かつ排気通路20に三元触媒24が配設された多気筒の火花点火式エンジンにおいて、上記特殊運転モードでは気筒間ガス通路22を介して先行気筒2A,2Dの既燃ガスを後続気筒2B,2Cに導入させる2気筒接続状態とし、上記通常運転モードでは各気筒2A〜2Dにそれぞれ新気を導入させる各気筒独立状態とするように吸気および排気の流通経路を切り換える流通経路切換手段と、上記特殊運転モードでは先行気筒2A,2Dの筒内に燃料を噴射することにより空燃比を理論空燃比よりも所定量だけ大きいリーン状態として燃焼を行わせ、後続気筒2B,2Cに先行気筒2A,2Dから導出されたリーン空燃比の既燃ガスと燃料とを供給することにより筒内の空燃比を略理論空燃比に対応した値に設定して燃焼を行わせるように各気筒の空燃比を制御する空燃比制御手段と、エンジンの始動時には、上記流通経路切換手段により2気筒接続状態とし、エンジン始動時の最初の燃焼制御時における先行気筒2A,2Dへの燃料噴射を実行しつつ、その点火を禁止することにより先行気筒2A,2Dの燃焼を間引いて後続気筒を燃焼させるとともに、次回の燃焼制御時から先行気筒2A,2Dおよび後続気筒2B,2Cに噴射された燃料をそれぞれ燃焼させる始動時制御手段52とを設け場合には、エンジンの始動時に、後続気筒2B,2Cに大量の既燃ガスが導入されることに起因した失火の発生を防止しつつ、各気筒2A〜2Dを連続的に燃焼させてエンジンをスムーズに始動させることができる。しかも、大容量かつ高価なリーンNOx触媒を排気通路20に設けることなく、簡単な構成でエミッション性を確保しつつ、運転状態に対応したエンジン出力を充分に確保することができるとともに、燃費の改善効果が得られるという利点がある。
【0075】
また、上記実施形態では、原点位置から作動位置に変位するロックピン69等からなる作動部材と、この作動部材を原点位置に自動的に復帰させるように付勢する付勢部材73等を有する第1,第2切換機構35a,35bを、各吸・排気弁の動弁機構に設けるとともに、上記作動油給排用の通路36,38に設けられた第1,第2コントロール弁37,39を開放して上記第1,第2切換機構35a,35bに作動油を供給することにより、付勢部材73の付勢力に抗して作動部材を作動位置に変位させるよう構成された駆動機構を上記流通経路切換手段に設けたため、エンジンの始動時には、上記吸気および排気の流通経路を自動的に2気筒接続状態として、エンジンの始動時における先行気筒の燃焼を間引いて後続気筒を燃焼させる始動時制御を迅速かつ適正に実行することができる。
【0076】
すなわち、エンジンが停止状態となると、上記駆動機構による第1,第2切換機構35a,35bへの作動油の供給が停止されて上記作動部材(ロックピン69が)が付勢部材73の付勢力に応じて原点位置に復帰する。したがって、エンジンの始動時には、第1排気弁32aおよび第1吸気弁31aが閉止状態に維持されるとともに、第2排気弁32bおよび第2吸気弁31bがカム33により駆動されて開閉駆動される状態、つまり図9に示す2気筒接続状態となっているため、上記流通経路切換手段により吸気および排気の流通経路を切り換える操作を要することなく、エンジンの始動開始時点から上記始動時制御を実行することができる。
【0077】
なお、上記ように各吸気弁および排気弁のステムエンド74と、カム33,34との間に配設された第1,第2切換機構35a,35bに対する作動油の給排を制御することにより、吸気および排気の流通経路を切り換えるようにした上記実施形態に代え、図14〜図16に示すように、カム81により駆動されて上記各吸気弁および排気弁を駆動するロッカーアーム82に設けられた第1〜第3切換機構83a〜83cにより、吸気および排気の流通経路を2気筒接続状態と各気筒独立状態とに切り換えるように構成してもよい。なお、図15は、先行気筒である1気筒2Aに設けられたロッカーアーム82および第1切換機構83aを示し、図16は、後続気筒である2番気筒2Bに設けられたロッカーアーム82および第2,第3切換機構83b,83cを示している。
【0078】
上記第1切換機構83aは、図15に示すように、ロッカーアーム82の揺動支点となる支持軸84により揺動可能に支持されるとともに、上記ロッカーアーム82の作動部の両側に配設された第1,第2アーム85,86を有し、この両アーム85,86および上記ロッカーアーム82の作動部には、相対応したロック孔87〜89が形成されている。これらのロック孔87〜89内には、プランジャ90と、このプランジャ90を押動する第1ロックピン91と、プランジャ90により押動される第2ロックピン92とがそれぞれスライド自在に支持されている。また、上記第2アーム86のロック孔89内には、上記第2ロックピン92をプランジャ90側に付勢する圧縮コイルばねからなる付勢部材93が配設されている。
【0079】
そして、通常時には、上記付勢部材93の付勢力に応じてプランジャ90および第1ロックピン91が、ロック孔87および88内にそれぞれ収容されてロッカーアーム82と第1アーム85との連結が切り離されるとともに、上記第2ロックピン82の先端部がロッカーアーム82のロック孔81内に嵌入されてロッカーアーム82と第2アーム86とが連結された状態となっている。これによって上記カム81により駆動されるロッカーアーム82の駆動力が上記第1排気弁32aに伝達されることなく、排気通路20に連通する第1排気ポート12aに設けられた第1排気弁32aが閉止状態に保持されるとともに、上記ロッカーアーム82の駆動力が第2排気弁32bに伝達されることにより、気筒間ガス通路22に連通する第2排気ポート12bに設けられた第2排気弁32bが開閉駆動されることになる。
【0080】
また、上記第1ロック孔88の底部と第1ロックピン91の基端部との間に設けられた油圧室95内に図外の作動油供給通路から作動油が供給されると、上記付勢部材93の付勢力に抗して第1ロックピン91が矢印に示す方向に押されて、その先端部がロッカーアーム71のロック孔87内に進入することにより、ロッカーアーム82と第1アーム85とが連結された状態となる。これによって上記カム81により駆動されるロッカーアーム82の駆動力が上記第1排気弁32aに伝達されて排気通路20に連通する第1排気ポート12aに設けられた第1排気弁32aが開閉駆動される。これと同時に、上記第2ロックピン92が第2アーム86の第2ロック孔89内に収容されることにより、ロッカーアーム82と第2アーム86との連結が切り離されるため、気筒間ガス通路22に連通する第2排気ポート12bに設けられた第2排気弁32bが閉止状態に維持されることになる。
【0081】
なお、吸気通路15に連通する吸気ポート11に設けられた一対の吸気弁31側に位置するロッカーアーム82の作動部には、その揺動支点となる支持軸84により揺動可能に支持された一対のアーム85,86が、連結ピン95により一体に連結されている。これによって上記カム81により駆動されるロッカーアーム82の駆動力が上記両吸気弁31に伝達されることにより、両吸気弁31が常に開閉駆動されるようになっている。
【0082】
一方、後続気筒2B,2Cの第1吸気弁31a側に設けられた第2切換機構83bは、図16に示すように、通常時に、第2ロックピン92が第2アーム86のロック孔89内に収容されることにより、ロッカーアーム82と第2アーム85との連結が切り離されている。そして、第1ロック孔88の底部と第1ロックピン91の基端部との間に設けられた油圧室95内に図外の作動油供給通路から作動油が供給されることにより、プランジャ90の先端部が第2ロック孔89内に進入してロッカーアーム82と第2アーム86とが連結されるように構成されている点を除いて、上記第1切換機構83aと同様に構成されている。
【0083】
また、後続気筒2B,2Cの第2吸気弁31bおよび排気弁32側に設けられた第3切換機構83cは、図16に示すように、通常時に、プランジャ90の基端部および先端部が第1,第2ロック孔88,89内にそれぞれ進入した状態で保持されることにより、ロッカーアーム82と第1,第2アーム85,86とがそれぞれ連結されている。そして、第1ロック孔88の底部と第1ロックピン91の基端部との間に設けられた油圧室95内に図外の作動油供給通路から作動油が供給されることにより、プランジャ90の基端部が第2ロック孔89内に収容されてロッカーアーム82と第1アーム85との連結が切り離されるとともに、ロッカーアーム82と第2アーム86とが常時連結されている点を除いて、上記第1切換機構83aと同様に構成されている。
【0084】
上記第1〜第3切換機構83a〜83cを吸・排気弁の動弁機構に設けることにより、上記油圧室95に対する作動油圧の供給が停止された通常時には、図9に示すように、先行気筒(1番,4番気筒)2A,2Dから排出される既燃ガスがそのまま気筒間ガス通路22を介して後続気筒(2番,3番気筒)2B,2Cに導入される2気筒接続状態となり、上記油圧室95に作動油が供給された時点で、図10に示すように、各気筒独立状態に切り換えられることになる。
【0085】
また、上記実施形態では、動弁機構に設けられた第1,第2切換機構35a,35bまたは第1〜第3切換機構83a〜83cを用いて流通経路切換手段を構成しているが、図17に示すように、通路中に設けた開閉弁を用いて流通経路切換手段を構成してもよい。すなわち、図17において、後続気筒である2番気筒2Bおよび3番気筒2Cの各第1吸気ポート11aに通じる分岐吸気通路16に吸気側開閉弁48a,49aが設けられるとともに、先行気筒である1番気筒2Aおよび4番気筒2Dの各第1排気ポート12aに通じる分岐排気通路21に排気側開閉弁48b,49bが設けられ、さらに、1番気筒2Aと2番気筒2Bとの間および4番気筒2Dと3番気筒2Cとの間の各気筒間ガス通路22にガス通路開閉弁48c,49cが設けられている。これらの開閉弁48a,49a,48b,49b,48c,49cは、それぞれが設けられた通路を開通する状態と遮断する状態とに切換可能とされ、図外のアクチュエータにより作動されるようになっている。
【0086】
そして、図外の制御手段により、運転状態が低負荷低回転側の運転領域Aにある場合と高負荷側ないし高回転側の運転領域Bにある場合とに応じ、上記各開閉弁が次のように制御される。
【0087】
Figure 0003979196
運転領域AとBとの間での運転状態の移行時において各開閉弁の状態を切り換える時の切換作動は、図18中に示す切換可能期間内に行えばよい。つまり、一対の気筒の排気行程と吸気行程とが重なる期間中に各開閉弁の状態を切り換えると、後続気筒2B,2Cに先行気筒2A,2Dからの既燃ガスと新気とが入り混じって導入される等の不具合が生じるので、1番気筒2Aの排気行程と2番気筒2Bの吸気行程とが重なる期間を除いた期間内に開閉弁48a,48b,48cを切換作動させるとともに、4番気筒2Dの排気行程と3番気筒2Cの吸気行程とが重なる期間を除いた期間内に開閉弁48a,48b,48cを切換作動させるようにすればよい。
【0088】
こうして、開閉弁48a,49a,48b,49b,48c,49cとこれを制御する制御手段により流通経路切換手段が構成される。また、各気筒のポートに設けられた吸気弁31、第1,第2排気弁32a,32b、第1,第2吸気弁31a,31bおよび排気弁32は、いずれも、図外の動弁機構により常に開閉作動されるようになっている。各燃料噴射弁9からの燃料噴射の制御等は上記実施形態と同様である。なお、図17において、50は吸気通路15に設けられたスロットル弁である。
【0089】
この実施形態によっても、運転領域Aでは2気筒接続状態とされて、先行気筒2A,2Dで超リーン燃焼が行われ、この先行気筒2A,2Dから排出される既燃ガスが気筒間ガス通路22を介して後続気筒2B,2Cに導入され、後続気筒2B,2Cでリーン空燃比の既燃ガスに燃料が供給されて理論空燃比とされた状態で燃焼が行われ、この後続気筒2B,2Cから排出されるガスのみが三元触媒24を備えた排気通路20に導かれる。一方、運転領域Bでは、各気筒2A〜2Dの吸気ポートと排気ポートとが独立して、吸気通路15から各気筒の吸気ポートに新気が導入されるとともに各気筒の排気ポートから排出される排気ガスが上記排気通路20に導かれる。こうして、基本実施形態と同様の作用、効果が得られる。
【0090】
また、当実施形態のような流通経路切換手段によれば、その構造が比較的簡単になるとともに、運転状態移行時における開閉弁の切換動作は図18中に示すような切換可能期間内に行えばよく、切換タイミングに著しく高い精度が要求されることはないので、制御も容易である。
【0091】
前述のように後続気筒2B,2Cで燃料を均一に分散させても着火性を確保し得る場合には、後続気筒2B,2Cに設ける燃料噴射弁は必ずしも気筒内に直接燃料を噴射する直噴タイプに限定されず、例えば気筒間ガス通路22を構成する後続気筒2B,2Cの吸気通路に、後続気筒2B,2Cに燃料を供給する燃料噴射弁を設けてもよい。この場合、後続気筒2B,2Cにおいては理論空燃比としつつ上記燃料噴射弁から吸気行程で燃料を噴射することにより均一燃焼を行わせるようにする。
【0092】
このようにすると、先行気筒2A,2Dから後続気筒2B,2Cに導入されるガスが適度に放熱されるとともに過剰空気と既燃ガスがミキシングされた理想的な多量のEGRガス中に、このガスが後続気筒2B,2Cへ導入される過程で燃料が供給され、燃料の気化、さらにはこのガスとのミキシングが向上し、後続気筒2B,2Cにおいて多量のEGRが行われつつ燃焼性がさらに向上する。
【0093】
また、本発明の装置は4気筒以外の多気筒エンジンにも適用可能である。そして、例えば6気筒等では1つの気筒の排気行程と別の気筒の吸気行程が完全に重なり合うことはないが、このような場合は、一方の気筒の排気行程が他方の気筒の吸気行程より先行するとともに、両行程が部分的に重なり合う2つの気筒を先行、後続の一対の気筒とすればよい。
【0094】
図19および図20は、複数の気筒2A〜2Dを有し、各気筒2内に燃料を直接噴射して吸気行程と排気行程との間に1回の燃焼を行う通常運転モードと、吸気行程と排気行程との間に2回の燃焼を行わせるように行程数を増加する特殊運転モードとにエンジンの運転状態に応じて燃焼サイクルを切り換えるとともに、排気通路20に排出される排気ガスの酸素濃度が略理論空燃比の燃焼状態に対応した値となるように上記吸気行程で各気筒2A〜2D内に導入される吸気量および上記2回の燃焼を行うための燃料噴射量を制御するように構成され、かつ排気通路20に三元触媒24が配設された火花点火式エンジンの制御装置を示している。
【0095】
上記各気筒2A〜2Dに対してそれぞれ一対の吸気ポート11,11および排気ポート12,12が開口し、これらのポート11,11,12,12が吸気弁31,31および排気弁32,32により開閉されるようになっている。そして、各気筒2A〜2Dが所定の位相差、つまり4気筒エンジンの場合には、クランク角で180°ずつの位相差をもって所定の順番で燃焼が行われるようになっている。
【0096】
上記吸・排気弁31,32は、それぞれ動弁機構53により駆動されるように構成されている。この動弁機構53は、図20に示すように、非磁性材料からなるハウジング54と、このハウジング54内に摺動自在に配設されるとともに、上記吸・排気弁31,32と一体に連結されたアーマチュア・コア55と、ハウジング34内の上下両端部に配設された一対の電磁石56,57および戻しばね58,59とを備えている。そして、上方の電磁石56に通電してアーマチュア・コア55を上方に吸引することにより、吸気弁31および排気弁32をそれぞれ所定のタイミングで開放状態とし、下方の電磁石57に通電してアーマチュア・コア55を下方に吸引することにより、吸気弁31および排気弁32をそれぞれ所定のタイミングで閉止状態とするようになっている。
【0097】
上記動弁機構53等を制御するマイクロコンピュータ等からなるエンジン制御用のECU(コントロールユニット)40には、エアフローセンサ19、O2センサ23およびリニアO2センサからの信号が入力され、さらに運転状態を判別するためにエンジン回転数を検出する回転数センサ45およびアクセル開度(アクセルペダル踏込み量)を検出するアクセル開度センサ46等からの信号も入力されている。
【0098】
上記ECU40は、エンジンの運転状態を判別する運転状態判別手段41、上記吸気弁31および排気弁32の開閉タイミングを制御する弁開閉制御手段60と、エンジンの燃焼室4への吸入空気量を制御する吸入空気量制御手段43と、燃料の噴射状態を制御する燃料噴射制御手段44と、後述する始動時制御を実行する始動時制御手段52とを備えている。
【0099】
上記弁開閉制御手段60は、運転状態判別手段41において判別されたエンジンの運転状態が低負荷ないし低回転側の運転領域Aにある場合と、高負荷側ないし高回転側の運転領域Bにある場合とで、動弁機構53に出力される制御信号の出力タイミングを変化させて吸気弁31および排気弁32の開閉タイミングを次のように制御するように構成されている。
【0100】
高負荷側ないし高回転側の運転領域Bでは、図21(a)に示すように、燃料噴射(破線F)を伴う吸気行程INと、後期に点火Sを伴う圧縮行程と、燃焼を伴う膨張行程と、排気行程EXとからなる通常運転モード、つまり吸気行程INと排気行程EXとの間に一回の燃焼を行う一般的な4サイクルの燃焼制御を実行するように上記吸気弁31および排気弁32の開閉タイミングが設定される。なお、図21において、Tはピストン行程の上死点、Bは下死点である。
【0101】
低負荷側ないし低回転側の運転領域Aでは、図21(b)に示すように、吸気行程IN(第1行程)と、後期に燃料噴射Fおよび点火Sを伴う第1圧縮行程(第2行程)と、燃焼を伴う第1膨張行程(第3行程)と、第2圧縮行程(第4行程)と、燃焼を伴わない第2膨張行程(第5行程)と、後期に燃料噴射Fおよび点火Sを伴う第3圧縮行程(第6行程)と、燃焼を伴う第3膨張行程(第7行程)と、排気行程EX(第8行程)とからなる特殊運転モード、つまり吸気行程INと排気行程EXとの間に二回の燃焼を行う8サイクルの燃焼制御を実行するように上記吸気弁31および排気弁32の開閉タイミングが設定される。
【0102】
上記吸入空気量制御手段43は、アクチュエータ18を制御することによりスロットル弁17の開度(スロットル開度)を制御するものであり、予め設定されたマップ等から運転状態に対応した目標吸入空気量を求め、その目標吸入空気量に応じてスロットル開度を制御することにより、吸入空気量を制御するように構成されている。
【0103】
すなわち、低負荷・低回転側の運転領域Aにおいて実行される特殊運転モードでは、上記二回の燃焼後における排気行程EXで排気通路20に排出される排気ガスの既燃ガス濃度が、略理論空燃比の燃焼状態に対応した値となるようにスロットル開度が調節される。また、高負荷・高回転側の運転領域Bにおいて実行される通常運転モードでは、気筒2A〜2D内の空燃比がλ≦1となるようにスロットル開度が調節される。
【0104】
上記燃料噴射制御手段44は、各気筒2A〜2Dに設けられた燃料噴射弁9からの燃料噴射量および噴射タイミングをエンジンの運転状態に応じて制御するもので、特に運転状態が図8中の運転領域Aにある場合と、運転領域Bにある場合とで燃料噴射の制御状態を変更するように構成されている。
【0105】
すなわち、低負荷・低回転側の運転領域Aにおいて実行される特殊運転モードでは、図21(b)に示すように、第1膨張行程(第3行程)で行われる最初の燃焼が成層燃焼状態となるように、空燃比が理論空燃比よりも大きいリーン空燃比、好ましくは理論空燃比の略2倍もしくはそれ以上となるように第1圧縮行程(第2行程)の燃料噴射量を設定するとともに、燃料噴射Fのタイミングを設定する。また、上記最初の燃焼により生じたリーン空燃比の既燃ガス中に燃料を供給することにより、理論空燃比の条件下において第3膨張行程(第7行程)で2回目の燃焼が行われるように、燃料噴射量を制御するとともに、既燃ガスが多い状況下で着火、燃焼が可能なように燃料噴射Fのタイミングが設定され、例えば着火性確保のため第3圧縮行程(第6行程)で燃料噴射Fが行われる。
【0106】
なお、上記燃料噴射量の制御は、エアフローセンサ19およびO2センサ23等からの出力に基づくフィードバック制御により行われる。
【0107】
一方、運転状態が高負荷側ないし高回転側の運転領域Bにある場合には、各気筒2A〜2Dの空燃比を理論空燃比もしくはそれ以下とするように燃料噴射量を制御し、例えば上記運転領域Bの大部分の領域において理論空燃比とし、全開負荷およびその付近の運転領域で理論空燃比よりリッチとする。そして、この場合には、図21(a)の破線で示すように、各気筒2A〜2Dに対して吸気行程IN(第1行程)で燃料を噴射することにより均一燃焼を行わせるように燃料噴射Fのタイミングを設定する。
【0108】
また、上記始動時制御段52は、図3に示す実施形態の始動時制御手段52と同様に構成されたものであり、エンジンの始動時に、図21(b)に示す特殊運転モードの制御状態とするとともに、エンジン始動時おける最初の燃焼制御時において、第1回目に噴射された燃料の点火Sを禁止する等の制御を上記始動時制御手段52において実行するように構成されている。
【0109】
上記のように運転状態が低負荷側ないし低回転側の運転領域Aにある場合に、吸気行程と排気行程との間に二回の燃焼が行われる特殊運転モードとし、第1膨張行程で行われる最初の燃焼を、リーン空燃比での成層燃焼状態とすることにより、熱効率が高められるとともにポンピングロスが低減され、これらの相乗効果で大幅に燃費が改善される。また、上記最初の燃焼により生成された空気過剰状態の既燃ガス中に燃料を供給して理論空燃比に制御しつつ、第3膨張行程において2回目の燃焼を行わせることにより、通常のエンジンのようにリーン空燃比で成層燃焼させるものと比べると熱効率では劣るものの、ポンピングロス低減による燃費効果は得られることになる。
【0110】
しかも、上記2回目の燃焼が行われた後に、排出行程で排気通路20に排出される既燃ガスの濃度が理論空燃比に対応した値となるように構成することにより、従来のリーンバーンエンジンのようにリーンNOx触媒を設ける必要がなくなり、三元触媒24だけで充分に排気浄化性能が確保される。このようにリーンNOx触媒を設ける必要がないことから、リーンNOx触媒のNOx吸蔵量の増大時におけるNOxの放出、還元のための一時的な空燃比のリッチ化を行う必要がなく、燃費改善の目減りが避けられる。さらに、リーンNOx触媒の硫黄被毒の問題が生じることもない。
【0111】
上記のように特殊運転モードにおいて、吸気行程INと、第1圧縮行程と、燃焼を伴う第1膨張行程と、第2圧縮行程と、燃焼を伴わない第2膨張行程と、第3圧縮行程と、燃焼を伴う第3膨張行程と、排気行程EXとからなる8サイクルの燃焼制御を実行することにより、吸気行程INと排気行程EXとの間で2回の燃焼を行うように構成した実施形態に代え、図21(c)に示すように、吸気行程INと、第1圧縮行程と、燃焼を伴う第1膨張行程と、第2圧縮行程と、燃焼を伴う第3膨張行程と、排気行程EXとからなる6サイクルの燃焼制御を実行することにより、吸気行程と排気行程との間で2回の燃焼を行うように構成しもよい。
【0112】
しかし、図21(a)に示す4サイクルの燃焼状態と、図21(c)に示す6サイクルの燃焼状態とを比較すると、4サイクルの燃焼状態で吸気行程INとなる時期(第5行程)に、6サイクル燃焼状態では、燃焼を伴う第2膨張行程が実行される。このため、上記4サイクルの燃焼制御を実行する通常運転モードから、6サイクルの燃焼制御を実行する特殊運転モードに移行する際に、爆発時期がずれることに起因してエンジン回転が不安定になる等の問題が生じることになる。
【0113】
これに対して上記特殊運転モードにおいて図21(b)に示すように、吸気行程INと、第1圧縮行程と、燃焼を伴う第1膨張行程と、第2圧縮行程と、燃焼を伴わない第2膨張行程と、第3圧縮行程と、燃焼を伴う第3膨張行程と、排気行程EXとからなる8サイクルの燃焼制御を実行するように構成した場合には、図21(a)に示す通常運転モードにおける燃焼を伴う2番目の膨張行程(第7行程)と、特殊運転モードにおける燃焼を伴う第3膨張行程(第7行程)とが同時期となるため、運転モードの移行時に、爆発時期がずれることに起因してエンジンの回転が不安定になるという事態を生じることがなく、エンジンの運転状態に応じて4サイクルの燃焼制御状態から8サイクルの燃焼制御状態にスムーズに移行させることができるという利点がある。
【0114】
そして、上記のようにエンジンの始動時には、最初の燃焼制御時において、第1回目、つまり第2行程で噴射された燃料の点火Sを禁止することにより、多量の既燃ガスが存在下で2回目の燃焼が行われることに起因した失火の発生を効果的に防止できるとともに、第1回目に噴射された燃料をピストンの上下動に応じて燃焼室内の新気と充分に撹拌混合した状態で効果的に燃焼させることにより、エンジンの始動性を確保することができる。
【0115】
【発明の効果】
以上のように本発明は、各気筒の燃焼サイクルが所定の位相差をもつように設定されるとともに、各気筒をそれぞれ独立させて燃焼させる通常運転モードと、排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスをそのまま吸気行程にある後続気筒に導入して燃焼させる特殊運転モードとに、エンジンの運転状態に応じて運転モードを切り換えるように構成された多気筒の火花点火式直噴エンジンにおいて、上記特殊運転モードでは気筒間ガス通路を介して先行気筒の既燃ガスを後続気筒に導入させる2気筒接続状態とし、上記通常運転モードでは各気筒にそれぞれ新気を導入させる各気筒独立状態とするように吸気および排気の流通経路を切り換える流通経路切換手段と、上記特殊運転モードでは先行気筒の筒内に燃料を噴射することにより空燃比を理論空燃比よりも所定量だけ大きいリーン状態として燃焼を行わせ、後続気筒に先行気筒から導出されたリーン空燃比の既燃ガスと燃料とを供給することにより筒内の空燃比を略理論空燃比に対応した値に設定して燃焼を行わせるように各気筒の空燃比を制御する空燃比制御手段と、エンジンの始動時には、上記流通経路切換手段により2気筒接続状態とし、先行気筒における最初の燃焼を間引いて後続気筒を燃焼させるとともに、次回の燃焼制御時から先行気筒および後続気筒の両方を燃焼させ、かつこの次回燃焼制御時における先行気筒の燃料噴射量を後続気筒の燃料噴射量よりも多く設定する始動時制御手段とを設けたため、エンジンの始動時に、後続気筒に大量の既燃ガスが導入されることに起因した失火の発生を防止しつつ、各気筒を連続的に燃焼させてエンジンをスムーズに始動させることができる。しかも、大容量かつ高価なリーンNOx触媒を排気通路に設けることなく、簡単な構成でエミッション性を確保しつつ、運転状態に対応したエンジン出力を充分に確保することができるとともに、燃費の改善効果が得られるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による装置を備えたエンジン全体の概略平面図である。
【図2】エンジン本体等の概略断面図である。
【図3】第1切換機構の具体的構成を示す正面断面図である。
【図4】第1切換機構の具体的構成を示す平面断面図である。
【図5】センタタペットおよびサイドタペットの具体的構成を示す斜視図である。
【図6】第2切換機構の具体的構成を示す正面断面図である。
【図7】制御系統のブロック図である。
【図8】運転領域を示す説明図である。
【図9】低負荷低回転時の実質的な新気およびガスの流通経路を示す説明図である。
【図10】各気筒の排気行程、吸気行程、燃料噴射時期および点火時期等を示す説明図である。
【図11】高負荷高低回転側の運転領域にある時の実質的な新気およびガスの流通経路を示す説明図である。
【図12】後続気筒の燃料噴射時期の別の例を示す図である。
【図13】後続気筒の燃料噴射時期のさらに別の例を示す図である。
【図14】動弁機構に設けられた切換機構の別の具体例を示す正面断面図である。
【図15】第1切換機構の具体的構成を示す平面断面図である。
【図16】第2,第3切換機構の具体的構成を示す平面断面図である。
【図17】吸・排気ポートおよび気筒間ガス通路等の構成の別の実施形態を示す概略平面図である。
【図18】図17の実施形態による場合の運転状態移行時の開閉弁の切換可能期間を示す説明図である。
【図19】本発明のさらにの別の実施形態を示す概略平面図である。
【図20】図19の実施形態における制御ユニットおよび動弁機構の具体的構成を示す説明図である。
【図21】図19の実施形態における燃焼サイクルの具体的構成を示す説明図である。
【符号の説明】
1 エンジン本体
2A〜2D 気筒
9 燃料噴射弁
11 吸気ポート
11a 第1吸気ポート
11b 第2吸気ポート
12 排気ポート
12a 第1排気ポート
12b 第2排気ポート
15 吸気通路
20 排気通路
22 気筒間ガス通路
24 三元触媒
31 吸気弁
31a 第1吸気弁
31b 第2吸気弁
32 排気弁
32a 第1排気弁
32b 第2排気弁
35a,35b 切換機構
40 ECU
41 運転状態判別手段
42 弁停止機構制御手段
43 吸入空気量制御手段
44 燃料噴射制御手段
52 始動時制御手段

Claims (4)

  1. 各気筒の燃焼サイクルが所定の位相差をもつように設定されるとともに、各気筒をそれぞれ独立させて燃焼させる通常運転モードと、排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスをそのまま吸気行程にある後続気筒に導入して燃焼させる特殊運転モードとに、エンジンの運転状態に応じて運転モードを切り換えるように構成された多気筒の火花点火式直噴エンジンにおいて、上記特殊運転モードでは気筒間ガス通路を介して先行気筒の既燃ガスを後続気筒に導入させる2気筒接続状態とし、上記通常運転モードでは各気筒にそれぞれ新気を導入させる各気筒独立状態とするように吸気および排気の流通経路を切り換える流通経路切換手段と、上記特殊運転モードでは先行気筒の筒内に燃料を噴射することにより空燃比を理論空燃比よりも所定量だけ大きいリーン状態として燃焼を行わせ、後続気筒に先行気筒から導出されたリーン空燃比の既燃ガスと燃料とを供給することにより筒内の空燃比を略理論空燃比に対応した値に設定して燃焼を行わせるように各気筒の空燃比を制御する空燃比制御手段と、エンジンの始動時には、上記流通経路切換手段により2気筒接続状態とし、先行気筒における最初の燃焼を間引いて後続気筒を燃焼させるとともに、次回の燃焼制御時から先行気筒および後続気筒の両方を燃焼させ、かつこの次回燃焼制御時における先行気筒の燃料噴射量を後続気筒の燃料噴射量よりも多く設定する始動時制御手段とを備えたことを特徴とする火花点火式エンジンの制御装置。
  2. エンジン始動時における最初の燃焼制御時に、先行気筒への燃料噴射を実行しつつ、その点火を禁止することにより、先行気筒の燃焼を間引くようにしたことを特徴とする請求項1記載の火花点火式エンジンの制御装置。
  3. エンジン始動時における最初の燃焼制御時に先行気筒への燃料噴射をカットすることにより、先行気筒の燃焼を間引くとともに、後続気筒内の混合気濃度が略理論空燃比に対応した値となるように後続気筒への燃料噴射量を制御することを特徴とする請求項1記載の火花点火式エンジンの制御装置。
  4. 各気筒の燃焼サイクルが所定の位相差をもつように設定されるとともに、各気筒をそれぞれ独立させて燃焼させる通常運転モードと、排気行程にある先行気筒から排出される既燃ガスをそのまま吸気行程にある後続気筒に導入して燃焼させる特殊運転モードとに、エンジンの運転状態に応じて運転モードを切り換えるように構成され、かつ排気通路に三元触媒が配設された多気筒の火花点火式エンジンにおいて、上記特殊運転モードでは気筒間ガス通路を介して先行気筒の既燃ガスを後続気筒に導入させる2気筒接続状態とし、上記通常運転モードでは各気筒にそれぞれ新気を導入させる各気筒独立状態とするように吸気および排気の流通経路を切り換える流通経路切換手段と、上記特殊運転モードでは先行気筒の筒内に燃料を噴射することにより空燃比を理論空燃比よりも所定量だけ大きいリーン状態として燃焼を行わせ、後続気筒に先行気筒から導出されたリーン空燃比の既燃ガスと燃料とを供給することにより筒内の空燃比を略理論空燃比に対応した値に設定して燃焼を行わせるように各気筒の空燃比を制御する空燃比制御手段と、エンジンの始動時には、上記流通経路切換手段により2気筒接続状態とし、先行気筒に対する最初の燃料噴射を実行しつつ、その点火を禁止することにより先行気筒の燃焼を間引いて後続気筒を燃焼させるとともに、エンジン始動後における次回の燃焼制御時から先行気筒および後続気筒に噴射された燃料をそれぞれ燃焼させ、かつこの次回燃焼制御時における先行気筒の燃料噴射量を後続気筒の燃料噴射量よりも多く設定する始動時制御手段とを備えたことを特徴とする火花点火式エンジンの制御装置。
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