JP2004068074A - 高温環境下ですぐれた耐摩耗性を示すEGR式内燃機関の再循環排ガス流量制御弁の焼結Cu合金製軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】EGR式内燃機関の再循環排ガス流量制御弁を作動させるオーステナイト系ステンレス鋼製往復動シャフトの軸受を、質量%で、Ni:10〜30%、Sn:5〜12%、C:3〜10%、を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成、並びにCu−Ni−Sn系固溶体の素地に遊離黒鉛が分散分布した組織を有する焼結Cu合金で構成する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、オーステナイト系ステンレス鋼製往復動シャフトと実質的に同じ熱膨張係数を有し、したがって、高温環境に曝されても前記往復動シャフトとの間にはすぐれた摺動特性が保持されるので、すぐれた耐摩耗性を発揮するEGR式内燃機関の再循環排ガス流量制御弁の焼結Cu合金製軸受に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ガソリンエンジンやLPGエンジンなどの内燃機関の排ガス対策の一環として、これらの内燃機関には、一度排出されたガスを再び吸入空気と混合させて燃焼温度を低下させることで、NOXの低減を図るEGR(排出ガス再循環システム)が広く採用されている。
また、EGRの排ガス取出し配管に設けられた再循環排ガス流量制御弁を作動させるオーステナイト系ステンレス鋼製往復動シャフト(以下、ステンレス・シャフトという)の軸受として、例えば黒鉛製のものや、質量%で、Cu−7〜10%Sn−5〜9%Cの組成を有する焼結Cu合金製のものなどが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特表2002−521610号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一方、近年の内燃機関の高出力化および低燃費化はめざましく、かつ軽量化およびコンパクト化に対する要求も強く、これに伴ない、上記の再循環排ガス流量制御弁は、エンジンの燃焼室の近傍に配置されるようになり、この結果高出力化に伴なうエンジン発熱量の増大と相俟って、450℃にも達する高温環境に曝される現状が生じつつある。
通常再循環排ガス流量制御弁の往復動シャフトと軸受は室温環境での摺動特性を基準にして設計されているため、これが高温環境に曝されると両者間には大きな熱膨張差が生じるようになり、この結果両者の摺動面のクリアランスが大きくなったり、摺動面抵抗が増大するなどの摺動特性を著しく損なう現象が発生するようになる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、EGRの再循環排ガス流量制御弁に用いられているステンレス・シャフトの熱膨張に対応した熱膨張を示す軸受を開発すべく研究を行なった結果、上記の黒鉛は3〜4×10−6/K、Cu−7〜10%Sn−5〜9%Cの組成を有する焼結Cu合金は19〜21×10−6/Kの熱膨張係数を示すが、質量%(以下、%は質量%を示す)で、
Ni:10〜30%、
Sn:5〜12%、
C:3〜10%、
を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成、並びにCu−Ni−Sn系固溶体の素地に遊離黒鉛が分散分布した組織を有する焼結Cu合金は、合金成分として含有するNiの作用で、15〜17×10−6/Kの熱膨張係数を示し、したがって、この結果の焼結Cu合金で軸受を構成すると、前記の15〜17×10−6/Kの熱膨張係数は上記ステンレス・シャフトのもつ15〜17×10−6/Kの熱膨張係数と実質的に同じものとなることから、上記再循環排ガス流量制御弁が450℃にも達する高温環境にあっても前記ステンレス・シャフトと前記焼結Cu合金製軸受との間には、室温環境での摺動特性と同じ摺動特性が保持されることになり、環境温度に影響を受けることなく、すぐれた耐摩耗性を発揮するようになる、という研究結果を得たのである。
【0006】
この発明は、上記の研究結果にもとづいてなされたものであって、EGR式内燃機関の再循環排ガス流量制御弁を作動させるステンレス・シャフトの軸受を、
Ni:10〜30%、
Sn:5〜12%、
C:3〜10%、
を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成、並びにCu−Ni−Sn系固溶体の素地に遊離黒鉛が分散分布した組織を有する焼結Cu合金で構成することにより、高温環境下でもすぐれた耐摩耗性を発揮せしめるようにした点に特徴を有するものである。
【0007】
つぎに、この発明の軸受において、これを構成する焼結Cu合金の組成を上記の通りに数値限定した理由を説明する。
(a)Ni
Ni含有量と軸受の熱膨張係数との間には、Ni:10%の含有で、実質的に軸受:17×10−6/Kの熱膨張係数を示し、また同30%の含有で、同じく15×10−6/Kの熱膨張係数を示す関係があり、これらの熱膨張係数は上記の通りステンレス・シャフトのもつ15〜17×10−6/Kの熱膨張係数に相当するものであり、このようにステンレス・シャフトのもつ熱膨張係数との整合性から、その含有量を10〜30%と定めた。
さらに述べれば、その含有量が10%未満では熱膨張抑制効果が不十分で、軸受の熱膨張係数が17×10−6/Kを越えて大きなものなり、この結果高温環境ではステンレス・シャフトとの摺動面間のクリアランスが増大し、これが摺動面における局部的摩耗発生の原因となり、一方その含有量が30%を越えると、軸受の熱膨張係数が15×10−6/K未満となってしまい、高温環境ではステンレス・シャフトとの摺動面間の抵抗が大きくなって摩耗が急速に増大するようになることから、その含有量を10〜30%と定めた。
また、ステンレス・シャフトを構成するオーステナイト系ステンレス鋼は、JIS・G4303(1979年版)の「ステンレス鋼棒」に、「オーステナイト系」として規定されるものを示す。
【0008】
(b)Sn
Sn成分には、CuおよびNiと素地の固溶体を形成して、軸受の強度を向上させ、もって軸受の耐摩耗性向上に寄与する作用があるが、その含有量が5%未満では所望の強度向上効果が得られず、一方その含有量が12%を越えると相手材であるステンレス・シャフトに対する攻撃性が急激に増大し、ステンレス・シャフトの摩耗が促進されるようになることから、その含有量を5〜12%と定めた。
【0009】
(c)C
C成分は、主体が素地に分散分布する遊離黒鉛として存在し、軸受の潤滑性を向上させ、もって軸受およびステンレス・シャフトの耐摩耗性向上に寄与する作用をもつが、その含有量が3%未満では遊離黒鉛の分散分布割合が不十分で、所望のすぐれた潤滑性を確保することができず、一方その含有量が12%を越えると、軸受の強度が急激に低下し、摩耗が急激に進行するようになることから、その含有量を3〜12%と定めた。
【0010】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の軸受を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも150μmの平均粒径を有するが、Niを5.9〜41.2%の範囲内で含有する各種のアトマイズCu−Ni合金粉末、平均粒径:200μmのアトマイズSn粉末、および平均粒径:200μmの炭素粉末を用意し、これら原料粉末を表1に示される配合組成に配合し、これに0.2%のステアリン酸亜鉛を潤滑材として加えてV型ミキサーで20分間混合した後、200MPaの圧力でプレス成形して圧粉体とし、この圧粉体を真空中、1020〜1270Kの範囲内の所定温度に1時間保持の条件で焼結し、最終的に200MPaの圧力でサイジング処理することにより、外径:20mm×内径:5mm×長さ:20mmの寸法をもった本発明焼結Cu合金製軸受(以下、本発明軸受という)1〜9および比較焼結Cu合金製軸受(以下、比較軸受という)1〜7をそれぞれ製造した。
なお、比較軸受1〜7は、いずれも合金成分のうちのいずれかの含有量がこの発明の範囲から外れた焼結Cu合金で構成されたものであり、19〜21×10−6/Kの熱膨張係数を示した。
また、比較軸受8として3.2×10−6/Kの熱膨張係数を有する黒鉛製のものも用意した。
【0011】
ついで、これらの軸受を、排気量:3000ccのEGR型ガソリンエンジンの燃焼室から300mm離れた位置に設置された再循環排ガス流量制御弁に、直径:5mm×長さ:60mmの寸法をもったJIS・SUS303製ステンレス・シャフトと共に組み込み、
エンジン回転数:3000回転/分、
ステンレス・シャフト往復動距離:10mm、
ステンレス・シャフト往復動回数:150回/分、
試験時間:500時間、
の条件で摩耗試験を行ない、摩耗試験後の軸受およびステンレス・シャフトのそれぞれの摺動面における最大摩耗深さを測定した。これらの測定結果を表1に示した。
なお、上記の摩耗試験中、軸受の温度を測定したところ、常に420〜435℃の範囲内の温度を示した。
【0012】
【表1】
【0013】
【発明の効果】
表1に示される結果から、本発明軸受1〜9は、いずれもステンレス・シャフトと実質的に同じ熱膨張係数をもつので、420〜435℃の高温環境に曝されても前記ステンレス・シャフトとの間ですぐれた潤滑特性を保持することから、小さな相手攻撃性で、すぐれた耐摩耗性を示すのに対して、比較軸受1〜8に見られるように、合金成分としてNiを含有しない、あるいは含有してもその含有量がこの発明の範囲から低い方に外れた焼結Cu合金構成された軸受の場合は、ステンレス・シャフトに比して大きな熱膨張を示すことから、摺動面のクリアランスが増大し、これが摺動面に局部的摩耗の発生を促し、かつ前記局部的摩耗部分は、その摩耗が急速に進行するようになり、また、Ni含有量がこの発明の範囲から高い方に外れた場合や、黒鉛製のものでは、ステンレス・シャフトに比して相対的に熱膨張の小さいものとなることから、高温環境下では摺動面抵抗が著しく増大し、摩耗の進行が促進されるようになり、さらにSnおよびC成分の含有量がこの発明の範囲から外れた場合にも、軸受の摩耗が相対的に大きくなったり、相手攻撃性が増大したりすることが明らかである。
上述のように、この発明の軸受は、高温環境に曝されても相手材であるステンレス・シャフトとの間にすぐれた潤滑特性が保持されるので、内燃機関の高出力化および低燃費化、さらに軽量化およびコンパクト化に十分満足に対応できるものである。
Claims (1)
- EGR式内燃機関の再循環排ガス流量制御弁を作動させるオーステナイト系ステンレス鋼製往復動シャフトの軸受にして、
上記軸受を、質量%で、
Ni:10〜30%、
Sn:5〜12%、
C:3〜10%、
を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成、並びにCu−Ni−Sn系固溶体の素地に遊離黒鉛が分散分布した組織を有する焼結Cu合金で構成したことを特徴とする高温環境下ですぐれた耐摩耗性を示すEGR式内燃機関の再循環排ガス流量制御弁の焼結Cu合金製軸受。
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