JP2004067974A - 耐候性難燃樹脂組成物及び電線 - Google Patents

耐候性難燃樹脂組成物及び電線 Download PDF

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Abstract

【課題】燃焼時にハロゲン系ガス等の発生がないとともに、機械的強度、耐熱性、電気特性、難燃性及び耐候性をバランス良く兼ね備えた、例えば、照明用機器のリード線の絶縁被覆材料又はシース材料などとして好適な耐候性難燃樹脂組成物と、該樹脂組成物からなる被覆を備えた電線を提供すること。
【解決手段】(a)オレフィン系ポリマー100重量部に対し、(b)金属水和物150〜220重量部、(c)高分子量ヒンダードアミン系光安定剤0.2〜10重量部、(d)低分子量ヒンダードアミン系光安定剤0.2〜10重量部及び(e)紫外線吸収剤0.1〜1重量部を配合すること特徴とする耐候性難燃性樹脂組成物。更に、前記(a)オレフィン系ポリマー100重量部に対し、(f)ヒドラジン系金属不活性化剤0.2〜1重量部を配合すること特徴とする耐候性難燃樹脂組成物。これらの樹脂組成物からなる被覆を備えたことを特徴とする電線。
【選択図】   無し

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃焼時にハロゲン系ガス等の有害ガスの発生がないとともに、機械的強度、耐熱性、電気特性、難燃性及び耐候性をバランス良く兼ね備えた、例えば、屋内や屋外に設置される照明用機器のリード線の絶縁被覆材料又はシース材料などとして好適な耐候性難燃樹脂組成物と、該樹脂組成物からなる被覆を備えた電線に関する。
【0002】
【従来の技術】
オレフィン系ポリマーは、優れた電気特性を有し、安価で加工性も良いことから従来、絶縁電線の絶縁被覆材料又はシース材料などとして広く用いられている。しかし、オレフィン系ポリマーは、それ自体が可燃性物質であるため、安全性、防火上の問題から高度な難燃性を付与する必要があり、その方法としては、オレフィン系ポリマーに、ハロゲン系の難燃剤を配合する方法が広く採用されてきた。しかしながら、これらは燃焼時に多量のハロゲン系ガスを発生し、周囲の機器への腐食性、人体への有害性等が問題となって、近年、ハロゲン系ガスを発生しないことが要望され、難燃剤として水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムのような金属水和物を配合する方法が提案されている。しかしながら、この場合、オレフィン系ポリマーに多量の金属水和物を配合させることにより、ハロゲン系の難燃剤を配合した場合と同程度の高度な難燃性を付与することはできるものの、耐候性、特に耐光性が低下してしまうという欠点があった。耐候性が不充分であると、例えば、屋内や屋外に設置される照明用機器のリード線の絶縁被覆材料又はシース材料などとして使用することが困難である。そこで、従来では、オレフィン系ポリマーに金属水和物を配合した樹脂組成物に、光安定剤や紫外線吸収剤を配合して耐候性を付与するなどの対策が取られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような方法によって得られた樹脂組成物を屋内や屋外に設置される照明用機器のリード線の絶縁被覆材料などとして使用した場合、樹脂組成物中に配合した光安定剤が次第に表面側に移行してブリードアウトし、光安定剤の効果が損なわれて耐候性が長期間持続しないという問題点があった。そこで、本発明者らは、このような従来技術の問題点を解決するべく種々検討した結果、オレフィン系ポリマーに金属水和物を配合した難燃樹脂組成物に、分子量の異なる二種類の光安定剤と紫外線吸収剤とを併用し、更にそれらを特定量配合することにより、機械的強度、耐熱性、電気特性、難燃性及び耐候性をバランス良く兼ね備えた樹脂組成物が得られることを見い出し、本発明に至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の請求項1による耐候性難燃樹脂組成物は、(a)オレフィン系ポリマー100重量部に対し、(b)金属水和物150重量部以上220重量部以下、(c)高分子量ヒンダードアミン系光安定剤0.2重量部以上10重量部以下、(d)低分子量ヒンダードアミン系光安定剤0.2重量部以上10重量部以下及び(e)紫外線吸収剤0.1重量部以上1重量部以下を配合すること特徴とするものである。
又、請求項2による耐候性難燃樹脂組成物は、請求項1記載の耐候性難燃樹脂組成物において、前記(a)オレフィン系ポリマー100重量部に対し、(f)ヒドラジン系金属不活性化剤0.2重量部以上1重量部以下を更に配合することを特徴とするものである。
又、請求項3による電線は、請求項1又は請求項2記載の樹脂組成物からなる被覆を備えたことを特徴とするものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
(a)オレフィン系ポリマー
本発明で使用されるオレフィン系ポリマーとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のホモポリマー、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−スチレングラフト共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸グラフト共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等のエチレン系共重合体が挙げられる。これらのオレフィン系ポリマーの内、いずれを使用しても良いが、後述する光安定剤や紫外線吸収剤との相溶性の点から、ポリエチレン(LDPE、LLDPE、VLDPE)や、EVA、EEAなどが好ましい。これらのポリオレフィン系ポリマーは、1種のみを単独で使用しても2種以上併用しても良い。
【0006】
(b)金属水和物
本発明で使用される金属水和物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイト、ドーソナイト、アルミン酸カルシウムなどが挙げられる。これらの金属水和物の内、いずれを使用しても良いが、オレフィン系ポリマーの分解温度付近で結晶水を放出し、しかも吸熱量の大きい水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムは、特に難燃効果が高いため好ましい。又、これらの金属水和物は、例えば、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸、又はこれらのアルミニウム、マグネシウム、カルシウム塩などの高級脂肪酸塩、シラン系やチタネート系の表面処理剤によって表面処理されたものが、オレフィン系ポリマーとの親和性を良くし、分散性を良くするために好ましく用いられる。
【0007】
金属水和物は、オレフィン系ポリマー100重量部に対し、150重量部以上220重量部以下配合することが好ましい。金属水和物の配合量が150重量部未満では、目的とする充分な難燃性(例えば、JIS C 3005に規定される60度傾斜難燃試験に合格するレベル)を得ることが困難となってしまい、又、220重量部を超えると、樹脂組成物の機械的強度が低下し、更には、耐候性が低下してしまう。
【0008】
本発明においては、耐候性を付与する目的で光安定剤を配合するのであるが、この際、分子量の異なる二種類の光安定剤(高分子量ヒンダードアミン系光安定剤と、低分子量ヒンダードアミン系光安定剤)、を併用する必要がある。それぞれを単独で使用した場合には、充分な耐候性を付与することができない。これは以下のような理由による。つまり、通常、太陽光や照明器具から発せられる紫外線によって電線の絶縁被覆材料やシース材料が劣化する場合は、その表面から進行する。このため、光安定剤としては、内部から表面に拡散し易いものが有効と言える。低分子量のヒンダードアミン系光安定剤は、分子の大きさが小さく拡散し易いため、初期段階においては有効に劣化を防止することができるのであるが、これらは次第にブリードアウトして外部に逸散してしまうため、光安定剤の効果が損なわれて耐候性が長期間持続しなくなってしまう。一方、高分子量のヒンダードアミン系光安定剤は、拡散速度が遅いため、表面劣化に対して内部からの拡散による劣化防止効果は短期的にはあまり期待できないが、逸散しにくい性質を有していることから劣化防止効果が持続し、耐候性が長期間持続する。従って、これら二種類のヒンダードアミン系光安定剤をそれぞれ一定量以上配合することにより、初期においては低分子量の光安定剤が、長期においては高分子量の光安定剤がそれぞれ劣化防止効果を発揮し、少量の配合量で長期間の耐候性を付与することができる。
【0009】
(c)高分子量ヒンダードアミン系光安定剤
高分子量ヒンダードアミン系光安定剤としては、分子量が1000を超えるものが用いられる。このようなものとしては、例えば、オリゴマー型のHALSであるポリ[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]や、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物などが挙げられる。より具体的には、キマソーブ944LD、チヌビン622LDなどの商品名で市販されているものを使用することができる。
【0010】
これらの高分子量ヒンダードアミン系光安定剤は、オレフィン系ポリマー100重量部に対し、0.2重量部以上10重量部以下配合することが好ましい。高分子量ヒンダードアミン系光安定剤の配合量が0.2重量部未満では、目的とする充分な耐候性を得ることができず、又、10重量部を超えると、増量による耐候性向上効果が期待できないだけでなく、分散性の問題により機械的強度が低下し、更には、ブルーミングが生じてしまう。
【0011】
(d)低分子量ヒンダードアミン系光安定剤
低分子量ヒンダードアミン系光安定剤としては、分子量が1000以下、好ましくは900以下、更に好ましくは600以上900以下程度のものが用いられる。分子量が600未満であると、拡散速度が速すぎるため、極短期間で外部に逸散してしまう可能性があり、分子量が900を超えると、拡散速度が遅くなるため、初期段階における劣化防止効果が薄くなってしまう可能性がある。このようなものとしては、例えば、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−アセトキシプロパン−1,2,3−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)トリアジン−2,4,6−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3−トリカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロパン−1,1,2,3−テトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などが挙げられる。より具体的には、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−52、チヌビン144などの商品名で市販されているものを使用することができる。
【0012】
これらの低分子量ヒンダードアミン系光安定剤は、オレフィン系ポリマー100重量部に対し、0.2重量部以上10重量部以下配合することが好ましい。低分子量ヒンダードアミン系光安定剤の配合量が0.2重量部未満では、目的とする充分な耐候性を得ることができず、又、10重量部を超えると、増量による耐候性向上効果が期待できないだけでなく、分散性の問題により機械的強度が低下し、更には、ブルーミングが生じてしまう。
【0013】
(e)紫外線吸収剤
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロ−フタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノールなどのベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル酸,n−ヘクサデシルエステル、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)ブタン、1,6−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)ヘキサンなどのベンゾフェノン系、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートに代表されるシアノアクリレート系などが挙げられる。より具体的には、チヌビン320、チヌビン328、チヌビン234、アデカスタブLA31、SEESORB102、SEESORB103、SEESORB501などの商品名で市販されているものを使用することができる。
【0014】
これらの紫外線吸収剤は、オレフィン系ポリマー100重量部に対し、0.1重量部以上1重量部以下配合することが好ましい。紫外線吸収剤の配合量が0.1重量部未満では、目的とする充分な耐候性を得ることができず、又、1重量部を超えると、紫外線吸収剤自身の色相により樹脂組成物が黄色く着色され、機械的強度及び耐熱性も低下し、更には、ブルーミングが生じてしまう。
【0015】
(f)ヒドラジン系金属不活性化剤
本発明においては、上記の成分の加えて、(f)ヒドラジン系金属不活性化剤を更に配合しても良い。ヒドラジン系金属不活性化剤を配合することにより、得られる樹脂組成物の耐候性を保持しつつ、銅害を防止することができ、更に耐熱性を向上することができる。ヒドラジン系金属不活性化剤としては、例えば、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドなどが挙げられる。これらの金属不活性化剤は、オレフィン系ポリマー100重量部に対し、0.2重量部以上1重量部以下配合することが好ましい。金属不活性化剤の配合量が0.2重量部未満では、銅害防止の作用が充分でなく、耐熱性を向上する作用が得られない。又、1重量部を超えると耐候性が低下してしまい、更には高価となってしまう。
【0016】
本発明においては、上記の各構成材料以外にも、本発明の目的を阻害しない範囲内で、従来、電線、ケーブルにおいて一般的に使用されている各種の添加剤を配合しても良い。このような添加剤としては、例えば、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、滑剤、軟化剤、分散剤、酸化防止剤、加工助剤、安定剤、着色剤、顔料などが挙げられる。これらの各種添加剤を上記の各構成材料に必要に応じて配合したものを、インターナルミキサー、一軸混練機、二軸混練機等の公知の混練機を使用して充分に混練りすることによって本発明の樹脂組成物を得ることができる。
【0017】
このようにして得られた本発明の樹脂組成物を公知の方法によって導体周上に押出被覆し、その後、適宜に架橋を施すことにより、本発明の他の態様による電線を得ることができる。この際、被覆の厚さが0.3mm以上である電線などに本発明の樹脂組成物を適用した場合には、特に本発明の樹脂組成物の有する優れた特徴が顕著に発現することになる。被覆の厚さが0.3mm未満の場合、絶縁体内部に存在する光安定剤の量が不足するため、耐候性に問題が生じてしまう可能性がある。
【0018】
架橋方法は特に限定されず、例えば、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物を架橋剤として使用した化学架橋法、X線、γ線、電子線、陽子線、重陽子線、α線、β線等の電離性放射線を使用した照射架橋法などが挙げられる。
【0019】
【実施例】
以下に本発明の実施例を比較例と併せて説明する。この実施例で使用した各配合材料の詳細は表4に示す通りである。
【0020】
表4に示した配合材料を二軸混練機で充分に混練りし、得られた樹脂組成物をペレット化した後、L/D=24の25mmφ押出機に供給して、シリンダー150℃、ヘッド160℃の温度条件にて、0.8φの錫めっき軟銅線からなる導体周上に0.8mmの肉厚で押出被覆した。その後、加速電圧650kV、照射線量100kGyの条件で電子線を照射し、仕上外径2.4mmφの架橋電線を製造した。
【0021】
ここで、このようにして得られた合計17種類の架橋電線を試料として、機械的強度(引張強度、伸び)、耐熱性、電気特性、難燃性及び耐候性について、それぞれ評価を行った。結果は表1及び表2に示した。
【0022】
評価方法は以下の通りである。
機械的強度
JIS C 3005(2000)に準拠して、引張強度と伸びを測定した。各々の要求特性は、電気用品安全法の絶縁体要求特性から引用し、引張強度が10MPa以上、伸びが200%以上とした。
【0023】
耐熱性
180℃に保持された恒温槽内に168時間放置した後取り出し、JIS C3005(2000)に準拠して、引張強度残率、伸び残率をそれぞれ測定した。各々の要求特性は、引張強度残率が70%以上、伸び残率が50%以上とした。
【0024】
電気特性
JIS C 3005(2000)に準拠して、水中耐電圧試験を実施した。試験の判断基準は、電気用品安全法の絶縁体要求特性から引用し、AC1.5kVで1分間保持して絶縁破壊が起きなかったものを合格とした。
【0025】
難燃性
JIS C 3005(2000)に準拠して、60度難燃性試験を実施した。試験の判断基準は、60秒以内に自己消火したものを合格とした。
【0026】
耐候性
回転式ギヤオーブンの中央に位置している400W透明型高圧水銀ランプ光源から240mm離れた位置に試料をセットし、120℃、1500時間放置した後取り出し、伸びを測定した。要求特性は、伸びが50%以上とした。
【0027】
【表1】
Figure 2004067974
【0028】
【表2】
Figure 2004067974
【0029】
【表3】
Figure 2004067974
【0030】
【表4】
Figure 2004067974
【0031】
実施例1〜3及び比較例1、2
金属水和物の配合量が本発明の範囲内に入っている実施例1〜3は、諸特性を満足していることが確認された。これに対し、比較例1は、金属水和物の配合量が100重量部と本発明の下限値である150重量部を下回るため、その結果、難燃性が不合格となり、又、比較例2は、金属水和物の配合量が250重量部と本発明の上限値である220重量部を超えているため、その結果、機械的強度(伸び)と耐候性が不合格となることが確認された。
【0032】
実施例4、5及び比較例3、4
高分子量ヒンダードアミン系光安定剤の配合量が本発明の範囲内に入っている実施例4、5は、諸特性を満足していることが確認された。これに対し、比較例3は、高分子量ヒンダードアミン系光安定剤を配合していないため、その結果、耐候性が不合格となり、又、比較例4は、高分子量ヒンダードアミン系光安定剤の配合量が20重量部と本発明の上限値である10重量部を超えているため、その結果、機械的強度(引張強度、伸び)が不合格となることが確認された。
【0033】
実施例6、7及び比較例5、6
低分子量ヒンダードアミン系光安定剤の配合量が本発明の範囲内に入っている実施例6、7は、諸特性を満足していることが確認された。これに対し、比較例5は、高分子量ヒンダードアミン系光安定剤を配合していないため、その結果、耐候性が不合格となり、又、比較例6は、低分子量ヒンダードアミン系光安定剤の配合量が20重量部と本発明の上限値である10重量部を超えているため、その結果、機械的強度(引張強度、伸び)が不合格となることが確認された。
【0034】
実施例8、9及び比較例7、8
紫外線吸収剤の配合量が本発明の範囲内に入っている実施例8、9は諸特性を満足していることが確認された。これに対し、比較例7は、紫外線吸収剤を配合していないため、その結果、耐候性が不合格となり、又、比較例8は、紫外線吸収剤の配合量が3重量部と本発明の上限値である1重量部を超えているため、その結果、機械的強度(引張強度、伸び)及び耐熱性(伸び残率)が不合格となることが確認された。
【0035】
配合材料として、更に金属不活性化剤を加えて得られた合計6種類の架橋電線を試料として、機械的強度(引張強度、伸び)、耐熱性、電気特性、難燃性、耐候性に加え、耐銅害性について、それぞれ評価を行った。結果は表3に示した。
【0036】
耐銅害性の評価方法は以下の通りである。
耐銅害性
導体を取り出したチューブ状サンプルの表面に銅粉末を塗布した状態で、180℃の恒温槽内に168時間放置した後取り出し、伸びを測定した。要求特性は、伸びが50%以上とした。
【0037】
実施例10、11及び比較例9〜12
ヒドラジン系金属不活性化剤の配合量が本発明の範囲内に入っている実施例10、11は、諸特性に加えて耐銅害性も満足し、更に、金属不活性化剤を配合していない実施例2と比べて耐熱性の伸び残率が向上し、70%台となっていることが確認された。これに対し、比較例9は、ヒドラジン系金属不活性化剤の配合量が5重量部と本発明の上限値である1重量部を超えているため、耐熱性は向上しているものの、耐候性が不合格となることが確認された。又、比較例10〜12では、ヒドラジン系以外の金属不活性化剤を使用しているため、耐熱性の向上はなく、耐候性も不合格となるとともに、耐銅害性の試験では激しく劣化してしまい、伸びを測定することができなかった。
【0038】
本発明は上記の実施例に限定されるものではない。上記の実施例では本発明に係る樹脂組成物を電線の絶縁被覆材料として使用したが、複数の電線を組み合わせたケーブルのシース材料、コード状ヒータの絶縁被覆材料、チューブの構成材料などとしても使用可能である。
【0039】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、オレフィン系ポリマーに金属水和物を配合した難燃樹脂組成物に、分子量の異なる二種類の光安定剤と紫外線吸収剤とを併用し、更にそれらを特定量配合することにより、機械的強度、耐熱性、電気特性、難燃性及び耐候性をバランス良く兼ね備えた樹脂組成物を得ることができた。この樹脂組成物は、屋内や屋外に設置される照明用機器のリード線の絶縁被覆材料又はシース材料などとして好適である。

Claims (3)

  1. (a)オレフィン系ポリマー100重量部に対し、(b)金属水和物150重量部以上220重量部以下、(c)高分子量ヒンダードアミン系光安定剤0.2重量部以上10重量部以下、(d)低分子量ヒンダードアミン系光安定剤0.2重量部以上10重量部以下及び(e)紫外線吸収剤0.1重量部以上1重量部以下を配合すること特徴とする耐候性難燃樹脂組成物。
  2. 前記(a)オレフィン系ポリマー100重量部に対し、(f)ヒドラジン系金属不活性化剤0.2重量部以上1重量部以下を更に配合することを特徴とする請求項1記載の耐候性難燃樹脂組成物。
  3. 請求項1又は請求項2記載の樹脂組成物からなる被覆を備えたことを特徴とする電線。
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