JP2004067745A - 導電性高分子の製造方法 - Google Patents
導電性高分子の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004067745A JP2004067745A JP2002225702A JP2002225702A JP2004067745A JP 2004067745 A JP2004067745 A JP 2004067745A JP 2002225702 A JP2002225702 A JP 2002225702A JP 2002225702 A JP2002225702 A JP 2002225702A JP 2004067745 A JP2004067745 A JP 2004067745A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- polymerization
- conductive polymer
- chemical oxidation
- producing
- room temperature
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E60/00—Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
- Y02E60/10—Energy storage using batteries
Landscapes
- Polyoxymethylene Polymers And Polymers With Carbon-To-Carbon Bonds (AREA)
- Macromolecular Compounds Obtained By Forming Nitrogen-Containing Linkages In General (AREA)
- Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)
Abstract
【課題】室温もしくは加温条件下、特段の冷却操作せずに、芳香族モノマーを酸化性金属イオン含有酸化剤により化学酸化重合させて、簡便かつ安価な経済性に優れた導電性高分子を製造する方法を提供。
【解決手段】化学酸化重合により共役系重合体を形成する芳香族モノマーを、酸化剤と、酸化剤中の金属イオンに対して0.5〜5モル当量となる量のアミド類、スルホキシド類及びイミド類から選ばれる少なくとも1種の重合制御剤とにより、室温または加温条件下で化学酸化重合させて、導電性高分子を製造する。
【効果】重合制御剤の添加により、室温または加温条件下、特段の冷却操作せずに穏和に化学酸化重合できるので、冷却設備や冷却用の電力が不要である。
【選択図】 なし
【解決手段】化学酸化重合により共役系重合体を形成する芳香族モノマーを、酸化剤と、酸化剤中の金属イオンに対して0.5〜5モル当量となる量のアミド類、スルホキシド類及びイミド類から選ばれる少なくとも1種の重合制御剤とにより、室温または加温条件下で化学酸化重合させて、導電性高分子を製造する。
【効果】重合制御剤の添加により、室温または加温条件下、特段の冷却操作せずに穏和に化学酸化重合できるので、冷却設備や冷却用の電力が不要である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学酸化重合法による導電性高分子の製造方法に関し、より詳細には、芳香族モノマーを、酸化性金属イオン含有酸化剤及び重合制御剤を用いて化学酸化重合させて共役系重合体を製造させる導電性高分子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高分子化合物の主鎖に共役系を有する重合体からなる導電性高分子は、ドーパントを添加させることにより、導電率を任意に制御することができ、光学的、磁気的性質が大きく変化することにより、種々の機能性材料が開発されている。
【0003】
該導電性高分子の製造方法としては、電解酸化重合法及び化学酸化重合法が知られている。
【0004】
電解酸化重合法は、モノマーと支持電解質とを、適当な溶媒に溶解させた電解液中に、電極を挿入させ、電極間に電流を流し、陽極板上に導電性高分子を生成させるものである。電解酸化重合法では、使用するモノマーの種類によって、さらに最適な溶媒、支持電解質、酸化電位値、電流値を選択することにより、より一層高導電率の導電性高分子を得ることができる。また、電極板上で酸化重合が起こるため、フィルム状の導電性高分子を得ることができる。
【0005】
しかしながら、電解酸化重合法は、設備費用が高く、大量生産に不向きであるという問題がある。また、電極から出る電気力線は歪を有しており、大面積の均一なフィルムを作製することが困難であり、さらに、多積層型や多孔質型の電極では、全表面に均一に形成させた導電層を得ることができなかった。
【0006】
化学酸化重合法は、モノマーを酸化剤により化学酸化重合させる方法であり、電解酸化重合法に比し、設備が安価であり、かつ大量生産が可能であり、さらに、電解酸化重合法では困難であった多積層型や多孔質型の電極にも導電層を形成させることができる。
【0007】
しかしながら、化学酸化重合法は、電解酸化重合法のように、電流値で重合速度を制御する等の微調整が困難であり、低酸化電位のモノマーでは、連鎖的に反応が進行したり、また副反応が起こり易くなり副生成物の過剰生成が起こる等の問題があった。このため、反応速度は冷却操作により制御されているが、なお微調整が困難であり、また大量生産の場合には、高価な冷却設備や冷却用の電力を必要とする等の問題があった。
【0008】
室温または加温条件下、特段の冷却操作せずに化学酸化重合させて、導電性高分子を安価かつ経済的に製造する方法が要望されていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、芳香族モノマーを、室温または加温条件下で、特段の冷却操作せずに、酸化性金属イオン含有酸化剤により化学酸化重合させて共役系重合体を製造する簡便かつ安価な経済性に優れた導電性高分子の製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、芳香族モノマーを化学酸化重合させる際、特定の重合制御剤を用いることにより、室温または加温条件下で、穏和に化学酸化重合し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、芳香族モノマーを、酸化性金属イオン含有酸化剤により化学酸化重合させて共役系重合体を製造させる導電性高分子の製造方法において、化学酸化重合の際の重合制御剤として、アミド類、スルホキシド類及びイミド類からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする導電性高分子の製造方法である。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明に用いられるモノマーは、共役系重合体を形成する芳香族モノマーであり、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、アニリン及びこれらの誘導体や塩があげられる。室温下で瞬時に化学酸化重合が進行してしまう酸化電位の低いピロール(Eox=1.2V)、アニリン(Eox=0.9V)及びそれらの誘導体では、本発明に用いられる重合制御剤の使用により、穏和に化学酸化重合させることができる。
【0014】
本発明に用いられる酸化性金属イオン含有酸化剤は、無機金属酸または無機金属塩、有機金属塩である。
【0015】
無機金属酸または無機金属塩としては、例えば、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、無水クロム酸塩、第二鉄塩、第二銅塩等の高原子価金属塩、モリブトリン酸、タングストリン酸、タングストモリブトリン酸等のヘテロポリ酸またはその塩があげられ、少なくとも1種が用いられる。
【0016】
有機金属塩としては、例えば、有機スルホン酸第二鉄塩が用いられ、具体的には、メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、カンファースルホン酸等の脂肪族スルホン酸第二鉄塩、または、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、2,7−ナフタレンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、ビフェニルジスルホン酸等の芳香族スルホン酸第二鉄塩、または、ポリスチレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合体等の高分子スルホン酸第二鉄塩があげられ、少なくとも1種が用いられる。
【0017】
本発明に用いられる、化学酸化重合の際に添加される重合制御剤は、酸化剤中の酸化性金属イオンに配位して錯形成することにより、酸化性金属イオンの酸化力を抑制するものと考えられる。
【0018】
本発明に用いられる重合制御剤は、アミド類、スルホキシド類及びイミド類からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0019】
本発明に用いられるアミド類としては、例えば、ホルムアミド、アセトアミド、プロピオンアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、DMF、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−エチルメチルホルムアミド、N,N−エチルメチルアセトアミド、N,N−エチルメチルプロピオンアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド(以下「DEF」と略記)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−エチルプロピオンアミド、N,N−ジエチルプロピオンアミド、N−tert−ブチルホルムアミド、N−tert−ブチルアセトアミド、N−tert−ブチルプロピオンアミド、N,N−tert−ブチルメチルホルムアミド、N,N−tert−ブチルメチルアセトアミド、N,N−tert−ブチルメチルプロピオンアミド、ホルムアニリド、アセトアニリド、プロピオンアニリド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアニリド、N−メチルプロピオンアニリド、N−エチルホルムアニリド、N−エチルアセトアニリド、N−エチルプロピオンアニリド、ベンズアミド、N−メチルベンズアミド、N,N−ジメチルベンズアミド、N,N−エチルメチルベンズアミド、N−エチルベンズアミド、N,N−ジエチルベンズアミド、N−tert−ブチルベンズアミド、N,N−tert−ブチルメチルベンズアミド、N,N−tert−ブチルエチルベンズアミド、ベンズアニリド、N−メチルベンズアニリド、N−エチルベンズアニリド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミドがあげられる。
【0020】
また、スルホキシド類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、エチルメチルスルホキシド、ジ−n−ブチルスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、ジベンジルスルホキシド、4−クロロフェニルスルホキシド、p−トルイルスルホキシド、フェニルビニルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、メチルメチルスルフィニルメチルスルホキシドがあげられる。
【0021】
また、イミド類としては、例えば、N−アセチルフタル酸イミド、N−(4−アミノフェニル)マレイン酸イミド、N−アミノフタル酸イミド、4−アミノフタル酸イミド、N−アリルオキシフタル酸イミド、4−アミノ−N−メチルフタル酸イミド、0−スルホ安息香酸イミド、コハク酸イミド、N−n−ブチルフタル酸イミド、N−ベンジルマレイン酸イミド、N−(3−ブテン−1−イル)フタル酸イミド、N−ベンジルフタル酸イミド、N−シクロヘキシルマレイン酸イミド、N−(シクロヘキシルチオ)フタル酸イミド、3,3−ジメチルグルタル酸イミド、ジフェニルスルホン酸イミド、N−エチルマレイン酸イミド、N−エチルコハク酸イミド、3−エチル−3−メチルグルタル酸イミド、N,N−エチレンジマレイン酸イミド、グルタル酸イミド、マレイン酸イミド、N−メチルフタル酸イミド、N−メチルマレイン酸イミド、N−メチル−4−ニトロフタル酸イミド、4−ニトロフタル酸イミド、1,8−ナフタル酸イミド、N−フェニル−4−ニトロフタル酸イミド、N−(4−ニトロフェニル)マレイン酸イミド、3−ニトロフタル酸イミド、フタル酸イミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイン酸イミド、N−フェニルマレイン酸イミド、N,N’−1,3−フェニレンジマレイン酸イミド、N−アセトニルフタル酸イミドがあげられる。
【0022】
上記重合制御剤は、酸化剤中の酸化性金属イオンに対して、0.5〜5モル当量となる量が添加され、好ましくは、1〜4モル当量である。0.5モル当量未満の場合、重合制御効果が弱過ぎて、化学酸化重合が急速に進行し、また、5モル当量超の場合、重合制御効果が強過ぎて、化学酸化重合が困難となり、不都合である。
【0023】
上記化学酸化重合は、特段の冷却操作せずに、温度5〜50℃の範囲である室温または加温条件下で穏和に進行させることができる。
【0024】
温度5℃未満の場合、重合制御剤による重合制御効果及び冷却効果により、重合速度が著しく低下し、得られる導電性高分子の収率が低下する。また、50℃超の場合、温度上昇により分子運動が増大するため、重合速度が増加し、重合制御効果が低下してしまい、また重合制御効果が低下した状態で高温下に置かれるため、過剰な連鎖反応や副反応等が起こり易くなり、不都合である。
【0025】
本発明では、高価な冷却設備を必要とする従来の化学酸化重合法に比し、冷却操作せずに重合速度を十分制御することができる。
【0026】
本発明では、多積層物や多孔質体への導電層の形成を行うことができ、半導体や2次電池電極への応用が可能である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を、実施例に基づき説明する。なお、本発明は実施例によりなんら限定されない。
【0028】
実施例1
酸化性金属イオン含有酸化剤であるp−トルエンスルホン酸第二鉄の40質量%ブタノール溶液10g中に、重合制御剤であるDEF2.7g(鉄イオンに対して3.7モル当量)を添加し、酸化剤溶液を調製した。
【0029】
上記酸化剤溶液中に、室温下、共役系重合体を形成する芳香族モノマーであるピロール0.67gを滴下した後、室温下、10分間攪拌し、次に、水浴中、温度45℃で、2〜9時間攪拌し、化学酸化重合させた。ついで、ろ別し、水、エタノールで洗浄した後、温度45℃で減圧乾燥し、導電性高分子の粉末ポリピロールを製造した。
【0030】
得られたポリピロールは、攪拌時間2時間では0.07g、5時間では0.16g、9時間では0.24gであった。
【0031】
実施例2
実施例1において、重合制御剤としてDEF1.8g(鉄イオンに対して2.7モル当量)及び攪拌時間5時間とした以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子の粉末ポリピロール0.19gを得た。
【0032】
比較例
氷冷下、温度0℃で、酸化剤であるp−トルエンスルホン酸第二鉄の40質量%ブタノール溶液10g中に、共役系重合体を形成する芳香族モノマーであるピロール0.67gを滴下した後、1分間攪拌し、化学酸化重合させた。ついで、ろ別し、水、エタノールで洗浄した後、温度45℃で減圧乾燥し、導電性高分子の粉末ポリピロール0.37gを得た。
【0033】
図は、実施例1、実施例2及び比較例で得られた結果について、比較例での収量を基準として実施例と対比したものである。
【0034】
図中、縦軸は、比較例において重合制御剤を添加せず冷却下で得られたポリピロールの収量0.37gを100として、実施例で得られたポリピロールの収量との比を示したポリピロール(PPy)収率を、横軸は攪拌時間を示している。
【0035】
重合制御剤を添加しない場合は、化学酸化重合が瞬時に進行する。重合制御剤であるDEFを3.7モル当量加えた場合(実施例1)では、1時間当たりのポリピロールの収量は約0.032gであり、2.7モル等量加えた場合(実施例2)では約0.038gであり、また実施例1よりポリピロールの収量は経時的に直線的に増加しており、重合制御剤の添加量により、反応速度、すなわち化学酸化重合を制御することが可能であることがわかる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、冷却設備を要する従来の化学酸化重合法に比し、特段の冷却操作せずに重合速度を十分制御することができるため、導電性高分子を製造するための冷却設備や、冷却用の電力が不要である。
【0037】
本発明の製造方法は、重合制御剤を用いて重合速度を制御することにより、室温または加温条件下で穏和に化学酸化重合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例における、ポリピロール収率と攪拌時間との関係を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学酸化重合法による導電性高分子の製造方法に関し、より詳細には、芳香族モノマーを、酸化性金属イオン含有酸化剤及び重合制御剤を用いて化学酸化重合させて共役系重合体を製造させる導電性高分子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高分子化合物の主鎖に共役系を有する重合体からなる導電性高分子は、ドーパントを添加させることにより、導電率を任意に制御することができ、光学的、磁気的性質が大きく変化することにより、種々の機能性材料が開発されている。
【0003】
該導電性高分子の製造方法としては、電解酸化重合法及び化学酸化重合法が知られている。
【0004】
電解酸化重合法は、モノマーと支持電解質とを、適当な溶媒に溶解させた電解液中に、電極を挿入させ、電極間に電流を流し、陽極板上に導電性高分子を生成させるものである。電解酸化重合法では、使用するモノマーの種類によって、さらに最適な溶媒、支持電解質、酸化電位値、電流値を選択することにより、より一層高導電率の導電性高分子を得ることができる。また、電極板上で酸化重合が起こるため、フィルム状の導電性高分子を得ることができる。
【0005】
しかしながら、電解酸化重合法は、設備費用が高く、大量生産に不向きであるという問題がある。また、電極から出る電気力線は歪を有しており、大面積の均一なフィルムを作製することが困難であり、さらに、多積層型や多孔質型の電極では、全表面に均一に形成させた導電層を得ることができなかった。
【0006】
化学酸化重合法は、モノマーを酸化剤により化学酸化重合させる方法であり、電解酸化重合法に比し、設備が安価であり、かつ大量生産が可能であり、さらに、電解酸化重合法では困難であった多積層型や多孔質型の電極にも導電層を形成させることができる。
【0007】
しかしながら、化学酸化重合法は、電解酸化重合法のように、電流値で重合速度を制御する等の微調整が困難であり、低酸化電位のモノマーでは、連鎖的に反応が進行したり、また副反応が起こり易くなり副生成物の過剰生成が起こる等の問題があった。このため、反応速度は冷却操作により制御されているが、なお微調整が困難であり、また大量生産の場合には、高価な冷却設備や冷却用の電力を必要とする等の問題があった。
【0008】
室温または加温条件下、特段の冷却操作せずに化学酸化重合させて、導電性高分子を安価かつ経済的に製造する方法が要望されていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、芳香族モノマーを、室温または加温条件下で、特段の冷却操作せずに、酸化性金属イオン含有酸化剤により化学酸化重合させて共役系重合体を製造する簡便かつ安価な経済性に優れた導電性高分子の製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、芳香族モノマーを化学酸化重合させる際、特定の重合制御剤を用いることにより、室温または加温条件下で、穏和に化学酸化重合し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、芳香族モノマーを、酸化性金属イオン含有酸化剤により化学酸化重合させて共役系重合体を製造させる導電性高分子の製造方法において、化学酸化重合の際の重合制御剤として、アミド類、スルホキシド類及びイミド類からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする導電性高分子の製造方法である。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明に用いられるモノマーは、共役系重合体を形成する芳香族モノマーであり、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、アニリン及びこれらの誘導体や塩があげられる。室温下で瞬時に化学酸化重合が進行してしまう酸化電位の低いピロール(Eox=1.2V)、アニリン(Eox=0.9V)及びそれらの誘導体では、本発明に用いられる重合制御剤の使用により、穏和に化学酸化重合させることができる。
【0014】
本発明に用いられる酸化性金属イオン含有酸化剤は、無機金属酸または無機金属塩、有機金属塩である。
【0015】
無機金属酸または無機金属塩としては、例えば、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、無水クロム酸塩、第二鉄塩、第二銅塩等の高原子価金属塩、モリブトリン酸、タングストリン酸、タングストモリブトリン酸等のヘテロポリ酸またはその塩があげられ、少なくとも1種が用いられる。
【0016】
有機金属塩としては、例えば、有機スルホン酸第二鉄塩が用いられ、具体的には、メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、カンファースルホン酸等の脂肪族スルホン酸第二鉄塩、または、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、2,7−ナフタレンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、ビフェニルジスルホン酸等の芳香族スルホン酸第二鉄塩、または、ポリスチレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合体等の高分子スルホン酸第二鉄塩があげられ、少なくとも1種が用いられる。
【0017】
本発明に用いられる、化学酸化重合の際に添加される重合制御剤は、酸化剤中の酸化性金属イオンに配位して錯形成することにより、酸化性金属イオンの酸化力を抑制するものと考えられる。
【0018】
本発明に用いられる重合制御剤は、アミド類、スルホキシド類及びイミド類からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0019】
本発明に用いられるアミド類としては、例えば、ホルムアミド、アセトアミド、プロピオンアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、DMF、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−エチルメチルホルムアミド、N,N−エチルメチルアセトアミド、N,N−エチルメチルプロピオンアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド(以下「DEF」と略記)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−エチルプロピオンアミド、N,N−ジエチルプロピオンアミド、N−tert−ブチルホルムアミド、N−tert−ブチルアセトアミド、N−tert−ブチルプロピオンアミド、N,N−tert−ブチルメチルホルムアミド、N,N−tert−ブチルメチルアセトアミド、N,N−tert−ブチルメチルプロピオンアミド、ホルムアニリド、アセトアニリド、プロピオンアニリド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアニリド、N−メチルプロピオンアニリド、N−エチルホルムアニリド、N−エチルアセトアニリド、N−エチルプロピオンアニリド、ベンズアミド、N−メチルベンズアミド、N,N−ジメチルベンズアミド、N,N−エチルメチルベンズアミド、N−エチルベンズアミド、N,N−ジエチルベンズアミド、N−tert−ブチルベンズアミド、N,N−tert−ブチルメチルベンズアミド、N,N−tert−ブチルエチルベンズアミド、ベンズアニリド、N−メチルベンズアニリド、N−エチルベンズアニリド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミドがあげられる。
【0020】
また、スルホキシド類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、エチルメチルスルホキシド、ジ−n−ブチルスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、ジベンジルスルホキシド、4−クロロフェニルスルホキシド、p−トルイルスルホキシド、フェニルビニルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、メチルメチルスルフィニルメチルスルホキシドがあげられる。
【0021】
また、イミド類としては、例えば、N−アセチルフタル酸イミド、N−(4−アミノフェニル)マレイン酸イミド、N−アミノフタル酸イミド、4−アミノフタル酸イミド、N−アリルオキシフタル酸イミド、4−アミノ−N−メチルフタル酸イミド、0−スルホ安息香酸イミド、コハク酸イミド、N−n−ブチルフタル酸イミド、N−ベンジルマレイン酸イミド、N−(3−ブテン−1−イル)フタル酸イミド、N−ベンジルフタル酸イミド、N−シクロヘキシルマレイン酸イミド、N−(シクロヘキシルチオ)フタル酸イミド、3,3−ジメチルグルタル酸イミド、ジフェニルスルホン酸イミド、N−エチルマレイン酸イミド、N−エチルコハク酸イミド、3−エチル−3−メチルグルタル酸イミド、N,N−エチレンジマレイン酸イミド、グルタル酸イミド、マレイン酸イミド、N−メチルフタル酸イミド、N−メチルマレイン酸イミド、N−メチル−4−ニトロフタル酸イミド、4−ニトロフタル酸イミド、1,8−ナフタル酸イミド、N−フェニル−4−ニトロフタル酸イミド、N−(4−ニトロフェニル)マレイン酸イミド、3−ニトロフタル酸イミド、フタル酸イミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイン酸イミド、N−フェニルマレイン酸イミド、N,N’−1,3−フェニレンジマレイン酸イミド、N−アセトニルフタル酸イミドがあげられる。
【0022】
上記重合制御剤は、酸化剤中の酸化性金属イオンに対して、0.5〜5モル当量となる量が添加され、好ましくは、1〜4モル当量である。0.5モル当量未満の場合、重合制御効果が弱過ぎて、化学酸化重合が急速に進行し、また、5モル当量超の場合、重合制御効果が強過ぎて、化学酸化重合が困難となり、不都合である。
【0023】
上記化学酸化重合は、特段の冷却操作せずに、温度5〜50℃の範囲である室温または加温条件下で穏和に進行させることができる。
【0024】
温度5℃未満の場合、重合制御剤による重合制御効果及び冷却効果により、重合速度が著しく低下し、得られる導電性高分子の収率が低下する。また、50℃超の場合、温度上昇により分子運動が増大するため、重合速度が増加し、重合制御効果が低下してしまい、また重合制御効果が低下した状態で高温下に置かれるため、過剰な連鎖反応や副反応等が起こり易くなり、不都合である。
【0025】
本発明では、高価な冷却設備を必要とする従来の化学酸化重合法に比し、冷却操作せずに重合速度を十分制御することができる。
【0026】
本発明では、多積層物や多孔質体への導電層の形成を行うことができ、半導体や2次電池電極への応用が可能である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を、実施例に基づき説明する。なお、本発明は実施例によりなんら限定されない。
【0028】
実施例1
酸化性金属イオン含有酸化剤であるp−トルエンスルホン酸第二鉄の40質量%ブタノール溶液10g中に、重合制御剤であるDEF2.7g(鉄イオンに対して3.7モル当量)を添加し、酸化剤溶液を調製した。
【0029】
上記酸化剤溶液中に、室温下、共役系重合体を形成する芳香族モノマーであるピロール0.67gを滴下した後、室温下、10分間攪拌し、次に、水浴中、温度45℃で、2〜9時間攪拌し、化学酸化重合させた。ついで、ろ別し、水、エタノールで洗浄した後、温度45℃で減圧乾燥し、導電性高分子の粉末ポリピロールを製造した。
【0030】
得られたポリピロールは、攪拌時間2時間では0.07g、5時間では0.16g、9時間では0.24gであった。
【0031】
実施例2
実施例1において、重合制御剤としてDEF1.8g(鉄イオンに対して2.7モル当量)及び攪拌時間5時間とした以外は、実施例1と同様にして、導電性高分子の粉末ポリピロール0.19gを得た。
【0032】
比較例
氷冷下、温度0℃で、酸化剤であるp−トルエンスルホン酸第二鉄の40質量%ブタノール溶液10g中に、共役系重合体を形成する芳香族モノマーであるピロール0.67gを滴下した後、1分間攪拌し、化学酸化重合させた。ついで、ろ別し、水、エタノールで洗浄した後、温度45℃で減圧乾燥し、導電性高分子の粉末ポリピロール0.37gを得た。
【0033】
図は、実施例1、実施例2及び比較例で得られた結果について、比較例での収量を基準として実施例と対比したものである。
【0034】
図中、縦軸は、比較例において重合制御剤を添加せず冷却下で得られたポリピロールの収量0.37gを100として、実施例で得られたポリピロールの収量との比を示したポリピロール(PPy)収率を、横軸は攪拌時間を示している。
【0035】
重合制御剤を添加しない場合は、化学酸化重合が瞬時に進行する。重合制御剤であるDEFを3.7モル当量加えた場合(実施例1)では、1時間当たりのポリピロールの収量は約0.032gであり、2.7モル等量加えた場合(実施例2)では約0.038gであり、また実施例1よりポリピロールの収量は経時的に直線的に増加しており、重合制御剤の添加量により、反応速度、すなわち化学酸化重合を制御することが可能であることがわかる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、冷却設備を要する従来の化学酸化重合法に比し、特段の冷却操作せずに重合速度を十分制御することができるため、導電性高分子を製造するための冷却設備や、冷却用の電力が不要である。
【0037】
本発明の製造方法は、重合制御剤を用いて重合速度を制御することにより、室温または加温条件下で穏和に化学酸化重合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例における、ポリピロール収率と攪拌時間との関係を示す図である。
Claims (4)
- 芳香族モノマーを、酸化性金属イオン含有酸化剤により化学酸化重合させて共役系重合体を製造させる導電性高分子の製造方法において、重合制御剤として、アミド類、スルホキシド類及びイミド類からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする導電性高分子の製造方法。
- 芳香族モノマーが、ピロール、アニリン及びそれらの誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子の製造方法。
- 重合制御剤が、酸化剤中の酸化性金属イオンに対して、0.5〜5モル当量であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導電性高分子の製造方法。
- 化学酸化重合が、温度5〜50℃の範囲で行われることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の導電性高分子の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002225702A JP2004067745A (ja) | 2002-08-02 | 2002-08-02 | 導電性高分子の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002225702A JP2004067745A (ja) | 2002-08-02 | 2002-08-02 | 導電性高分子の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004067745A true JP2004067745A (ja) | 2004-03-04 |
Family
ID=32013260
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002225702A Pending JP2004067745A (ja) | 2002-08-02 | 2002-08-02 | 導電性高分子の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004067745A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006310383A (ja) * | 2005-04-26 | 2006-11-09 | Japan Carlit Co Ltd:The | 多孔性導電性高分子膜を含む多孔性電極、及び電気化学デバイス |
JP2014072381A (ja) * | 2012-09-28 | 2014-04-21 | Asahi Kasei Fibers Corp | 固体電解コンデンサの製造方法 |
-
2002
- 2002-08-02 JP JP2002225702A patent/JP2004067745A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006310383A (ja) * | 2005-04-26 | 2006-11-09 | Japan Carlit Co Ltd:The | 多孔性導電性高分子膜を含む多孔性電極、及び電気化学デバイス |
JP2014072381A (ja) * | 2012-09-28 | 2014-04-21 | Asahi Kasei Fibers Corp | 固体電解コンデンサの製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Pu et al. | Synthesis and characterization of fluorine‐containing polybenzimidazole for proton conducting membranes in fuel cells | |
WO2010113991A1 (ja) | 電極用バインダー樹脂前駆体溶液組成物 | |
CN110903204A (zh) | 一种含双芳胺-芘结构的二胺化合物及其制备方法、一种聚酰胺和一种聚酰亚胺及其应用 | |
Rao et al. | Synthesis of electrically conducting copolymers of o-/m-toluidines and o-/m-amino benzoic acid in an organic peroxide system and their characterization | |
JP2004067745A (ja) | 導電性高分子の製造方法 | |
JP5403601B2 (ja) | 炭素材料及びその製造方法 | |
CN114651037A (zh) | 石墨片用聚酰亚胺膜、其制备方法和由其制备的石墨片 | |
Chao et al. | Electroactive polyimide with oligoaniline in the main chain via oxidative coupling polymerization | |
Kan et al. | Studies on synthesis and properties of uniform and ordered polyaniline nanoparticles in the magnetic field | |
Li et al. | Redox-initiated polymerization of N-vinylcarbazole based on carbon dots for modification and beyond | |
JP4720179B2 (ja) | ポリイミドベンゾオキサゾール前駆体の製造方法 | |
JPH0853566A (ja) | 導電性高分子成形体およびその製造方法 | |
CN101100513B (zh) | 聚酰亚胺前体 | |
JPS6363567B2 (ja) | ||
Manisankar et al. | Synthesis and characterization of novel nano size electroactive poly 4, 4′‐diaminodiphenyl sulphone | |
Lehr et al. | Comparative study of polypyrrole films electrosynthesized in alkaline and acid solutions | |
JP2949554B2 (ja) | 複合成形体およびその製造方法 | |
KR102360593B1 (ko) | 전극용 결합제 수지 조성물, 전극 합제 페이스트, 및 전극 | |
Yang et al. | Synthesis and properties of new polymerized monomer reactants matrix resins of pyrrolone–benzimidazole copolymers containing pyridine unit | |
CN104130412A (zh) | 一种n取代聚苯并咪唑酰亚胺及其制备方法 | |
JP2005132903A (ja) | ポリイミドベンゾオキサゾール前駆体の製造方法 | |
Chen et al. | Diacid architecture effect on the synthesis and microstructure of rigid‐rod poly (benzobisthiazole) s | |
JP2911382B2 (ja) | ポリマーコンポジットフィルムの製造法 | |
JP2006165288A (ja) | 固体電解コンデンサの製造方法 | |
JP2023123935A (ja) | 溶剤可溶性ポリイミド樹脂 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050729 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20070921 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20071023 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20080415 |