JP2004066746A - 金型温度の制御装置及び制御方法 - Google Patents

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Hirotaka Okamoto
岡本 裕貴
Kazuyuki Kishimoto
岸本 和之
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Abstract

【課題】金型温度を短時間に目標温度に到達させるとともに目標温度に安定して維持し、消費電力を削減する金型温度の制御装置及び制御方法を提供する。
【解決手段】比例動作を行う制御装置において、2種類の制御変数が設けられている。最終の目標温度Tdvよりも高い第1の設定温度T1と、目標温度Tdvに等しい第2の設定温度T2とが設定され、設定温度T1,T2に対しては各々比例帯P1,P2が設定され、比例帯P2の下限が比例帯P1の下限よりも低く設定されている。設定温度T1と比例帯P1とが第1の制御変数を、設定温度T2(=Tdv)と比例帯P2とが第2の制御変数を、各々構成する。金型温度は、通常の制御では第1・第2の制御変数の場合には曲線C1・C2を各々描いて変動し、従来の制御では曲線Cwを描いて変動して時間tc後に目標温度Tdvに到達する。本発明によれば、金型温度は時間tn(<tc)後に目標温度Tdvに到達する。
【選択図】  図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂成形用の金型における金型温度を、目標温度に迅速に到達させるとともに目標温度に安定して維持する、金型温度の制御装置及び制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、樹脂成形用の金型における金型温度を、目標温度に到達させ、更にその後に目標温度に維持していくには、PID制御を使用して次のようにして行っている。まず、金型温度の制御装置が、目標温度に等しい所定の設定温度と比例帯とに基づいて、PID制御のうち比例動作(P動作)を行う。ここでは、複数のヒータに交流電圧(動作開始時のデューティ比は100%)を供給して発熱させることにより、金型を加熱する。そして、温度センサにより検出された金型温度が比例帯に入るまでは、時分割されていないデューティ比100%の交流電圧を供給する。その後に、金型温度が比例帯に入ると、制御装置は、デューティ比が次の値をとるようにして比例動作する。すなわち、金型温度が、その比例帯の下限値である場合にはデューティ比100%、その比例帯の中心値(=設定温度)である場合にはデューティ比50%、その比例帯の上限値である場合にはデューティ比0%になるようにして比例動作する。そして、制御装置は、この比例動作に基づいて、複数のヒータに交流電圧を供給する。
次に、金型温度の制御装置は、オフセットに対しては積分動作(I動作)を行い、外乱に基づく温度変動に対しては微分動作(D動作)を行う。これら一連の動作によって、金型温度が、所定の目標温度に維持される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の金型温度の制御によれば、図4に示すような問題が発生する。図4は、従来の金型温度の制御による時間と金型温度との関係を説明する図である。
第1に、金型温度が比例帯Pwに入ってから比例動作が開始されるので、目標温度Tdvに等しい設定温度に到達するまでの所要時間が長くなる。図4の波形Cwに示されているように、金型温度が比例帯Pwに入ると金型温度が上昇する割合が緩やかになり、金型温度が目標温度Tdvに到達するまでに時間tcを要している。
第2に、この所要時間の短縮を図ろうとして比例帯の幅を狭めてPnとした場合には、金型温度が比例帯Pnを超えるオーバーシュートや、図4の波形Cnのような振動的に応答するハンチングが発生する。したがって、金型温度を、短時間に設定温度に安定して到達させることが困難になる。
第3に、動作開始から金型温度が比例帯Pw又はPnに入るまでの期間、すなわち、金型温度の立上り期間においては、複数のヒータのすべてにデューティ比100%の交流電圧が供給される。これにより、金型温度が比例帯Pw又はPnに入った後の安定期間に比べて、立上り期間では大きな消費電力が必要となる。したがって、短時間においてのみ要求される大きな消費電力に対応する電源が、必要になる。この点で、省エネルギー・省コストという要請に応えることができない。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、金型温度が目標温度に到達するまでの所要時間を短縮し、金型温度を目標温度に安定して維持するとともに、消費電力の削減を図ることができる、金型温度の制御装置及び制御方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述の技術的課題を解決するために、本発明に係る金型温度の制御装置は、供給された電気信号によって発熱することにより樹脂成形用の金型を加熱する発熱手段と、金型温度を検出する検出手段と、金型温度と所定の目標温度とを比較して金型温度が目標温度に近づくように電気信号を決定して供給する制御手段とを備えており、金型温度を目標温度に到達させるとともに該目標温度に維持する金型温度の制御装置であって、制御手段は、金型温度が所定の温度になるまでの第1の期間に適用される第1の制御変数群と、金型温度が所定の温度になった後の第2の期間に適用される第2の制御変数群とを有することを特徴とする。
【0006】
これによれば、金型温度が所定の温度になるまでの第1の期間と、所定の温度になった後の第2の期間とにおいて、異なる制御変数群を使用して金型温度が制御される。
【0007】
また、本発明に係る金型温度の制御装置は、上述した制御装置において、発熱手段は、第2の期間のほうが第1の期間よりも金型温度が変動する割合が緩やかになるように、金型を加熱することを特徴とする。
【0008】
これによれば、金型温度が所定の温度になるまでの第1の期間に金型温度が上昇し、その後の第2の期間においては金型温度が緩やかに変動することによって目標温度に近づくように、金型が加熱される。
【0009】
また、本発明に係る金型温度の制御装置は、上述した制御装置において、制御手段は比例動作を行うとともに、第1の制御変数群は、目標温度よりも高い第1の設定温度と第1の比例帯とを有し、第2の制御変数群は、目標温度に等しい第2の設定温度と第2の比例帯とを有していることを特徴とする。
【0010】
これによれば、金型温度が所定の温度になるまでの第1の期間に、目標温度よりも高い第1の設定温度を目指して金型温度が上昇し、その後の第2の期間においては、目標温度に等しい第2の設定温度を目指して金型温度が緩やかに変動する。
【0011】
また、本発明に係る金型温度の制御装置は、上述した制御装置において、発熱手段は複数のヒータからなり、制御手段は、複数のヒータのうち一部のヒータに対して電気信号を供給して該一部のヒータ近傍の金型温度を目標温度に到達させるとともに複数のヒータのうち残りのヒータに対して電気信号を時分割して供給する動作と、複数のヒータのうちすべてのヒータに対して電気信号を時分割して供給することによりすべてのヒータ近傍の金型温度を目標温度に維持する動作とを行うことを特徴とする。
【0012】
これによれば、金型を加熱する際に必要な消費電力が、すべてのヒータ近傍の金型温度を同時に目標温度に到達させるために必要な消費電力よりも小さい値に抑制される。すなわち、消費電力の最大値が、一部のヒータ近傍の金型温度を目標温度に到達させる際に必要な消費電力と、残りのヒータに対して電気信号を時分割して供給する際に必要な消費電力との和に抑制される。
【0013】
上述の技術的課題を解決するために、本発明に係る金型温度の制御方法は、樹脂成形用の金型における金型温度を、目標温度に迅速に到達させるとともに目標温度に維持する金型温度の制御方法であって、金型温度を検出する工程と、検出された金型温度と目標温度とを比較し、金型温度が目標温度に近づくように、金型を加熱するためにヒータに供給する電気信号を決定する工程と、決定された電気信号をヒータに供給する工程とを備えるとともに、決定する工程では、金型温度が所定の温度になるまでの第1の期間よりも該所定の温度になった後の第2の期間のほうが、金型温度が変動する割合が緩やかになるように電気信号を決定することを特徴とする。
【0014】
これによれば、金型温度が所定の温度になるまでの第1の期間に金型温度を上昇させ、その後の第2の期間においては金型温度を緩やかに変動させることによって目標温度に近づけるように、金型を加熱することができる。
【0015】
また、本発明に係る金型温度の制御方法は、上述した制御方法において、決定する工程では、比例動作による制御に基づいて電気信号を決定するとともに、第1の期間においては目標温度よりも高い第1の設定温度と第1の比例帯とに基づいて比例動作を行い、第2の期間においては目標温度に等しい第2の設定温度と第2の比例帯とに基づいて比例動作を行うことを特徴とする。
【0016】
これによれば、金型温度が所定の温度になるまでの第1の期間に、目標温度よりも高い第1の設定温度を目指して金型温度を上昇させ、その後の第2の期間においては、目標温度に等しい第2の設定温度を目指して金型温度を緩やかに変動させる。
【0017】
また、本発明に係る金型温度の制御方法は、上述した制御方法において、加熱する工程では、複数のヒータが発熱することにより金型を加熱するとともに、供給する工程は、複数のヒータのうちの一部のヒータに対して該一部のヒータ近傍の金型温度が目標温度になるまで電気信号を供給する工程と、一部のヒータに対して電気信号を時分割して供給することにより一部のヒータ近傍の金型温度を目標温度に維持する工程と、複数のヒータ近傍の金型温度のすべてが目標温度になるまで一部のヒータ以外のヒータに対して電気信号を供給する工程とを有することを特徴とする。
【0018】
これによれば、金型を加熱する際に必要な消費電力を、すべてのヒータ近傍の金型温度を同時に目標温度に到達させるために必要な消費電力よりも小さい値に抑制できる。すなわち、消費電力の最大値を、一部のヒータ近傍の金型温度を目標温度に到達させる際に必要な消費電力と、残りのヒータに対して電気信号を時分割して供給する際に必要な消費電力との和に、抑制することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る金型温度の制御装置の第1の実施形態を、図1を参照して説明する。図1は、本発明に係る金型温度の制御装置による制御の対象である、樹脂成形用の金型を示す概略断面図である。図1では、樹脂成形用の金型の例として、電子部品をトランスファー成形によって樹脂封止する樹脂封止用の金型を示す。
【0020】
図1において、相対向する金型である下型1と上型2とが設けられている。下型1においては、ベース3Lにホルダ4Lが嵌装され、更にホルダ4Lにはキャビティブロック5Lが嵌装されている。キャビティブロック5Lには、溶融樹脂が注入される空間であるキャビティ6Lが設けられている。また、樹脂タブレット(図示なし)が配置される円柱状の空間であるポット7が設けられ、ポット7にはプランジャ8が昇降自在に設けられている。
【0021】
上型2には、下型1と同様にベース3U,ホルダ4U,キャビティブロック5Uが設けられ、キャビティ6L及びポット7に対向する位置には、それぞれキャビティ6U及びカル9が設けられている。また、キャビティ6Uとカル9とを連通する樹脂流路10が設けられている。下型1と上型2とが型合わせ面P.L.で型締めされた状態で、キャビティ6L,6Uの少なくとも一方に、回路基板に装着された電子部品が収容される。
【0022】
図1に示されているように、下型1の右側には4個のヒータHAが、下型1の左側には4個のヒータHBが、それぞれ配線(図示なし)により制御部11に接続されて設けられている。また、下型1の右側及び左側には、下型1の金型温度を検出する温度センサSA,SBが、それぞれ配線(図示なし)により制御部11に接続されて設けられている。同様に、上型2の右側には2個のヒータHCと温度センサSCとが、また、左側には2個のヒータHDと温度センサSDとが、それぞれ配線12により制御部11に接続されて設けられている。
【0023】
以下、本実施形態に係る金型温度の制御装置の動作、すなわち、制御方法を、図1と図2とを参照して説明する。図2は、本実施形態に係る金型温度の制御方法による時間と金型温度との関係を説明する図である。本実施形態では、制御装置は比例動作を行い、比例動作の制御変数が2種類設けられている。図2において、制御変数として、最終の目標温度Tdvよりも高い第1の設定温度T1と、目標温度Tdvに等しい第2の設定温度T2とが設定されている。また、制御変数として、設定温度T1,T2に対してそれぞれ比例帯P1,P2が設定され、比例帯P2の下限が比例帯P1の下限よりも低くなっている。
設定温度T1と比例帯P1とが第1の制御変数を、設定温度T2と比例帯P2とが第2の制御変数を、それぞれ構成する。通常の比例動作によれば、図2に破線で示したように、第1の制御変数の場合には波形C1を、第2の制御変数の場合には波形C2を、それぞれ描くようにして金型温度が変動する。
【0024】
本実施形態では、所定の設定切替温度Ttrが、比例帯P2内であって比例帯P1の下限よりも低い温度になるようにして、設けられていることが好ましい。そして、制御部11は、各温度センサSA,SB,SC,SDにより検出された金型温度が設定切替温度Ttrに到達するまで(第1の期間t1)は、第1の制御変数、すなわち、設定温度T1と比例帯P1とに基づいて各ヒータHA,HB,HC,HDを制御する。そして、金型温度が設定切替温度Ttrに到達した後(第2の期間t2及びそれ以降)は、第2の制御変数、すなわち、設定温度T2と比例帯P2とに基づいて各ヒータHA,HB,HC,HDを制御する。
【0025】
ここで、本実施形態に係る金型温度の制御方法の特徴は、設定切替温度Ttrに到達するまでは、目標温度Tdvよりも高い設定温度T1と、設定切替温度Ttrよりも高温の側に位置する比例帯P1とに基づいて、各ヒータを制御することである。これにより、金型温度が上昇して比例帯P2に入っても設定切替温度Ttrに到達するまでは、各ヒータには時分割されていないデューティ比100%の交流電圧を供給する。したがって、波形C2の場合よりも短時間に設定切替温度Ttrに到達する。
また、金型温度が比例帯P2内にある設定切替温度Ttrに到達すると、目標温度Tdvに等しい設定温度T2と比例帯P2とに基づいて各ヒータを制御することになるので、各ヒータに供給する交流電圧のデューティ比は一気に小さな値になる。したがって、金型温度は、温度上昇が急速に頭打ちになり、短時間に下降に転じ、目標温度Tdv(=設定温度T2)に到達して維持される。そして、金型温度は、従来の金型温度の制御による到達時間tcよりも大幅に短い時間tnで、目標温度Tdvに到達し、その後に、制御部11は通常のPID制御を行う。
【0026】
以上説明したように、本実施形態によれば、2種類の制御変数を切り替えて比例動作を行う。これにより、設定切替温度Ttrに到達するまでの昇温時間の短縮と、設定切替温度Ttrに到達した後における目標温度Tdvに到達するまでの温度変動の時間の短縮とを、併せて図ることができる。したがって、樹脂成形用の金型における金型温度を、目標温度に迅速に到達させて維持することができる。
【0027】
なお、本実施形態では、2種類の制御変数を切り替えを、温度(設定切替温度Ttr)に基づいて行った。これに限らず、加熱時間に基づいて2種類の制御変数を切り替えてもよい。この場合には、事前に金型温度と加熱時間との関係を実験的に調べて、第1の期間t1を定めておくとよい。
【0028】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について、図3を参照しながら説明する。図3は、本発明の第2の実施形態に係る金型温度の制御方法による時間と金型温度との関係を説明する図である。
【0029】
本実施形態は、図1のヒータHA,HB,HC,HDを2つの群に分けて、各群を、時間差を設けて順次昇温させることを特徴とする。下型1における右側の4個のヒータHAと上型2における右側の2個のヒータHCとをA群とし、下型1における左側の4個のヒータHBと上型2における左側の2個のヒータHDとをB群とする。
【0030】
まず、ヒータのうちのA群に、第1の実施形態に係る制御方法によって、交流電圧を供給して、A群近傍の金型温度を目標温度Tdvに到達させる(図3の波形Ca)。この間、ヒータのうちのB群には交流電圧をまったく供給しない。
次に、ヒータのうちのA群には、A群近傍の金型温度を目標温度Tdvに維持することができる程度のデューティ比を有する交流電圧を供給する。一方、ヒータのうちのB群に、第1の実施形態に係る制御方法によって交流電圧を供給し、B群近傍の金型温度を目標温度Tdvに到達させる(図3の波形Cb)。
次に、A群とB群の双方、すなわち、すべてのヒータHA,HB,HC,HDに、金型温度を目標温度Tdvに維持できる程度のデューティ比を有する交流電圧を供給する。その後、制御部11は通常のPID制御を行うので、金型温度を目標温度Tdvに維持することができる。
【0031】
ここで、2つの群のうち1つに、時分割されていないデューティ比100%の交流電圧を供給した場合の消費電力を、P(kW・h)とする。また、ヒータのうちの1つの群近傍の金型温度を目標温度Tdvに維持できる場合の、時分割された交流電圧のデューティ比の理論値は、50%である。
図4に示されている従来の技術によれば、金型温度が比例帯に入るまでには、2つの群の消費電力として2P(kW・h)を必要とする。一方、本実施形態によれば、まず、ヒータのうちのA群を昇温させている期間tnaにおいては、消費電力はP(kW・h)である。次に、A群近傍における金型温度を目標温度Tdvに維持することができる程度のデューティ比の交流電圧をA群に供給するとともにB群を昇温させている期間tnbにおいては、消費電力はP+P/2=1.5P(kW・h)である。次に、金型温度を維持することができる程度のデューティ比の交流電圧をA群とB群との双方に供給している期間においては、消費電力は2×P/2=P(kW・h)である。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、理論値に基づいて算出した場合において、ヒータを2つの群に分けて順次昇温させることにより、従来よりも消費電力の最大値を2P(kW・h)から1.5P(kW・h)へと25%削減することができる。また、第1の実施形態と組み合わせることにより、金型全体の金型温度が目標温度Tdvに到達するまでの時間tna+tnbを、従来の金型温度の制御(図3の波形Cw)による所要時間tcに比較して大差ない程度にまで抑制することができる。
【0033】
また、樹脂封止装置を使用した実測結果によれば、昇温時における全ヒータの消費電力は2.9kW・hであり、金型温度を目標温度Tdvに維持する場合における全ヒータの消費電力は1.1kW・hであった。したがって、金型温度を目標温度Tdvに維持するためには、昇温時の38%の消費電力で足りるといえる。このパーセンテージと理論値との差異は、樹脂封止装置に設けられた断熱材等に起因するものと考えられる。
これに基づいて、理論値の50%に代えて実測値の38%を使用して消費電力を算出した場合には、次のようになる。まず、A群を昇温させている期間tnaにおいては、消費電力はP(kW・h)である。次に、A群近傍の金型温度を目標温度Tdvに維持することができる程度のデューティ比の交流電圧をA群に供給するとともにB群を昇温させている期間tnbにおいては、消費電力はP+0.38P=1.38P(kW・h)である。次に、金型温度を維持することができる程度のデューティ比の交流電圧をA群とB群との双方に供給している期間においては、消費電力は2×0.38P=0.76P(kW・h)である。したがって、実測結果に基づいて算出した場合においては、消費電力の最大値を2P(kW・h)から1.38P(kW・h)へと31%削減することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、2つの群のうち最初に昇温させるA群にデューティ比100%の交流電圧を供給する間(期間tna)においては、B群には交流電圧をまったく供給しないこととした。これに限らず、期間tnaにおいてB群に時分割された交流電圧を供給することによりB群近傍の金型を予熱してもよい。この場合には、期間tnaでの消費電力はP(kW・h)よりも大きくなるが、B群を昇温させる期間tnbを短縮することができる。
【0035】
なお、ここまでの各実施形態では、トランスファー成形による樹脂封止用の金型を例にとって説明した。これに限らず、他の方式による樹脂成形用の金型一般に対して、本発明を適用することができる。
【0036】
また、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に変更・選択して採用できるものである。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、2種類の制御変数群を切り替えて比例動作を行うことによって、樹脂成形用の金型における金型温度を、目標温度に迅速に到達させて維持することができる。また、複数のヒータを群に分けて順次昇温させることにより、消費電力の削減を図ることができる。
したがって、金型温度が目標温度に到達するまでの所要時間を短縮し、金型温度を目標温度に安定して維持するとともに、消費電力の削減を図ることができる金型温度の制御装置及び制御方法を提供することができるという、優れた実用的な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る金型温度の制御装置による制御の対象である、樹脂成形用の金型を示す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係る金型温度の制御方法による時間と金型温度との関係を説明する図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態に係る金型温度の制御方法による時間と金型温度との関係を説明する図である。
【図4】図4は、従来の金型温度の制御による時間と金型温度との関係を説明する図である。
【符号の説明】
1 下型
2 上型
3L,3U ベース
4L,4U ホルダ
5L,5U キャビティブロック
6L,6U キャビティ
7 ポット
8 プランジャ
9 カル
10 樹脂流路
11 制御部
12 配線
HA,HB,HC,HD ヒータ
P1,P2 比例帯
SA,SB,SC,SD 温度センサ
t1 第1の期間
t2 第2の期間
T1,T2 設定温度
Tdv 目標温度
Ttr 設定切替温度(所定の温度)

Claims (7)

  1. 供給された電気信号によって発熱することにより樹脂成形用の金型を加熱する発熱手段と、金型温度を検出する検出手段と、前記金型温度と所定の目標温度とを比較して前記金型温度が前記目標温度に近づくように前記電気信号を決定して供給する制御手段とを備えており、前記金型温度を前記目標温度に到達させるとともに該目標温度に維持する金型温度の制御装置であって、
    前記制御手段は、前記金型温度が所定の温度になるまでの第1の期間に適用される第1の制御変数群と、前記金型温度が前記所定の温度になった後の第2の期間に適用される第2の制御変数群とを有することを特徴とする金型温度の制御装置。
  2. 請求項1に記載された金型温度の制御装置において、
    前記発熱手段は、前記第2の期間のほうが前記第1の期間よりも前記金型温度が変動する割合が緩やかになるように、前記金型を加熱することを特徴とする金型温度の制御装置。
  3. 請求項2に記載された金型温度の制御装置において、
    前記制御手段は比例動作を行うとともに、
    前記第1の制御変数群は、前記目標温度よりも高い第1の設定温度と第1の比例帯とを有し、
    前記第2の制御変数群は、前記目標温度に等しい第2の設定温度と第2の比例帯とを有していることを特徴とする金型温度の制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載された金型温度の制御装置において、
    前記発熱手段は複数のヒータからなり、
    前記制御手段は、前記複数のヒータのうち一部のヒータに対して前記電気信号を供給して該一部のヒータ近傍の金型温度を前記目標温度に到達させるとともに前記複数のヒータのうち残りのヒータに対して前記電気信号を時分割して供給する動作と、前記複数のヒータのうちすべてのヒータに対して前記電気信号を時分割して供給することにより前記すべてのヒータ近傍の金型温度を前記目標温度に維持する動作とを行うことを特徴とする金型温度の制御装置。
  5. 樹脂成形用の金型における金型温度を、目標温度に迅速に到達させるとともに前記目標温度に維持する金型温度の制御方法であって、
    前記金型温度を検出する工程と、
    前記検出された金型温度と前記目標温度とを比較し、前記金型温度が前記目標温度に近づくように、前記金型を加熱するためにヒータに供給する電気信号を決定する工程と、
    前記決定された電気信号を前記ヒータに供給する工程とを備えるとともに、
    前記決定する工程では、前記金型温度が所定の温度になるまでの第1の期間よりも該所定の温度になった後の第2の期間のほうが、前記金型温度が変動する割合が緩やかになるように前記電気信号を決定することを特徴とする金型温度の制御方法。
  6. 請求項5に記載された金型温度の制御方法において、
    前記決定する工程では、比例動作による制御に基づいて前記電気信号を決定するとともに、
    前記第1の期間においては前記目標温度よりも高い第1の設定温度と第1の比例帯とに基づいて比例動作を行い、
    前記第2の期間においては前記目標温度に等しい第2の設定温度と第2の比例帯とに基づいて比例動作を行うことを特徴とする金型温度の制御方法。
  7. 請求項5又は6のいずれかに記載された金型温度の制御方法において、
    前記加熱する工程では、複数のヒータが発熱することにより前記金型を加熱するとともに、
    前記供給する工程は、前記複数のヒータのうちの一部のヒータに対して該一部のヒータ近傍の金型温度が前記目標温度になるまで前記電気信号を供給する工程と、前記一部のヒータに対して前記電気信号を時分割して供給することにより前記一部のヒータ近傍の金型温度を前記目標温度に維持する工程と、前記複数のヒータ近傍の金型温度のすべてが前記目標温度になるまで前記一部のヒータ以外のヒータに対して前記電気信号を供給する工程とを有することを特徴とする金型温度の制御方法。
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