JP2004066479A - 筆記具 - Google Patents
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Abstract
【課題】軸筒内のインキ吸蔵体に含浸された水性インキ、油性インキなどの筆記具用インキを筆記部となるペン先に供給する筆記具において、インキ吸蔵体に含浸されたインキの消費率を向上させた筆記具を提供する。
【解決手段】軸筒10内のインキ吸蔵体20に含浸されたインキを筆記部となるペン先40に供給する筆記具であって、上記インキ吸蔵体20に含浸されたインキをインキ吸蔵体20全長の10%以上の長さまでインキ吸蔵体20内部と接触している中継芯30を介してペン先40に供給されることを特徴とする筆記具。
【選択図】 図1
【解決手段】軸筒10内のインキ吸蔵体20に含浸されたインキを筆記部となるペン先40に供給する筆記具であって、上記インキ吸蔵体20に含浸されたインキをインキ吸蔵体20全長の10%以上の長さまでインキ吸蔵体20内部と接触している中継芯30を介してペン先40に供給されることを特徴とする筆記具。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸筒内のインキ吸蔵体に含浸されたインキを筆記部となるペン先に供給する筆記具に関し、更に詳しくは、この構造の筆記具においてインキ吸蔵体に含浸されたインキの消費率を格段に向上させた筆記具に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、軸筒内のインキ吸蔵体に含浸された水性インキ、油性インキなどの筆記具用インキを筆記部となるペン先に供給する筆記具、所謂中綿式の筆記具におけるインキ消費率は、50〜60%程度で中綿(インキ吸蔵体)中には未だ40〜50%程度インキを貯留したまま描線カスレなどの現象が顕著になり筆記具としての機能を失っていた。
【0003】
そこで、従来の中綿式筆記具にあっては、中綿のペン先側の軸筒内側にリブを形成したり、ペン先側の軸筒を小さくするなどして中綿のインキができるだけペン先側に寄るように工夫がなされていた。
このような工夫により中綿のインキ消費率は、70%程度までアップさせることができたが、それでも30%程度のインキが中綿中に残ってしまう点に課題があり、中綿であるインキ吸蔵体に含浸されたインキの消費率を更に向上した筆記具が切望されているのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、軸筒内のインキ吸蔵体に含浸された水性インキ、油性インキなどの筆記具用インキを筆記部となるペン先に供給する筆記具において、インキ吸蔵体に含浸されたインキの消費率を格段に向上させた筆記具を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来技術の課題等について鋭意検討を重ねた結果、軸筒内のインキ吸蔵体に含浸されたインキを筆記部となるペン先に供給する筆記具において、インキ吸蔵体からペン先にインキを供給する機構を特定の構成等とすることにより、上記目的の筆記具が得られることを見いだし、本発明を完成するに至ったのである。
【0006】
すなわち、本発明の筆記具は、次の(1)〜(17)に存する。
(1) 軸筒内のインキ吸蔵体に含浸されたインキを筆記部となるペン先に供給する筆記具であって、上記インキ吸蔵体に含浸されたインキをインキ吸蔵体全長の10%以上の長さまでインキ吸蔵体内部と接触している中継芯を介してペン先に供給することを特徴とする筆記具。
(2) 中継芯の断面積が、インキ吸蔵体断面積の1〜50%であることを特徴とする上記(1)に記載の筆記具。
(3) 中継芯のインキ吸蔵体側の先端が鋭角な形態であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の筆記具。
(4) インキ吸蔵体に中継芯外層部と接触できる空洞部が軸方向に形成されていることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の筆記具。
(5) インキ吸蔵体に形成される空洞部の断面積が、インキ吸蔵体断面積の0.1〜50%であることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の筆記具。
(6) 中継芯の毛細管力がインキ吸蔵体の毛細管力よりも大きいことを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の筆記具。
(7) 中継芯が全方向でインキ流通可能な多孔体構造であることを特徴とする上記(1)〜(6)の何れか一つに記載の筆記具。
(8) 中継芯の多孔体構造が、繊維束体、フェルト、スポンジ、焼結体の何れか一つであることを特徴とする上記(1)〜(7)の何れか一つに記載の筆記具。
(9) インキ吸蔵体が、繊維束体、フェルト、スポンジ、焼結体の何れか一つであることを特徴とする上記(1)〜(8)の何れか一つに記載の筆記具。
(10) 中継芯の断面構造が、内層部と外層部とを有し、外層部の毛細管力が内層部の毛細管力よりも大きい疎密構造体であることを特徴とする上記(1)〜(9)の何れか一つに記載の筆記具。
(11) 中継芯の断面構造が、内層部と外層部とを有し、外層部の毛細管力が内層部の毛細管力よりも小さい疎密構造体であり、かつ毛細管力分布が、インキ吸蔵体<中継芯外層部<中継芯内層部であることを特徴とする上記(10)に記載の筆記具。
(12) インキ吸蔵体、中継芯、ペン先の毛細管力が、ペン先>中継芯>インキ吸蔵体であることを特徴とする上記(1)〜(11)の何れか一つに記載の筆記具。
(13) インキ吸蔵体の毛細管力の分布が、ペン先側へ向かうほど大きくなることを特徴とする上記(1)〜(12)の何れか一つに記載の筆記具。
(14) 軸筒の内径がペン先側へ向かうほど狭くなる構造となることを特徴とする上記(1)〜(13)の何れか一つに記載の筆記具。
(15) 軸筒のペン先側内側にリブ体を複数軸方向に形成されていることを特徴とする上記(1)〜(14)の何れか一つに記載の筆記具。
(16) インキの表面張力が25℃下で18mN/m以上であることを特徴とする上記(1)〜(15)の何れか一つに記載の筆記具。
(17) インキの粘度係数が25℃下で200mPa・s以下であることを特徴とする上記(1)〜(16)の何れか一つに記載の筆記具。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳しく説明する。
本発明の筆記具は、軸筒内のインキ吸蔵体に含浸されたインキを筆記部となるペン先に供給する筆記具であって、上記インキ吸蔵体に含浸されたインキをインキ吸蔵体全長の10%以上の長さまでインキ吸蔵体内部と接触している中継芯を介してペン先に供給することを特徴とするものである。
【0008】
図1及び図2は、本発明の第1実施形態を示すものであり、サインペン、マーカー、ホワイトボード用マーカー等に好適に適用することができるものである。本第1実施形態の筆記具Aは、図1及び図2に示すように、筆記具本体となる軸筒10、インキ吸蔵体20、中継芯30、ペン先40、尾栓50とを備えている。
軸筒10は、例えば、合成樹脂製から構成されるものであり、先端側がテーパー部を有する小径部10aと、大径部10bとが一体となったものであり、該小径部10a内にはペン先40を嵌着する嵌着部11を有すると共に、大径部10b内は筆記具用インキを含浸したインキ吸蔵体20、中継芯30を収容する構造となっている。
【0009】
インキ吸蔵体20は、水性インキ、油性インキなどの筆記具用インキを含浸したものであり、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維束体、フェルト、スポンジ、または、樹脂粒子焼結体、樹脂繊維焼結体などの焼結体等から構成されるものであり、軸筒10の前方部に形成される嵌着部21と尾栓50とにより軸筒20内に収容されている。
また、インキ吸蔵体20の先端側には、図2に示すように、中継芯30のインキ吸収力を向上させるために、中継芯30の形状に沿い、中継芯30の外層部と接触できる空洞部21が軸方向に形成されている。
【0010】
中継芯30は、全方向でインキ流通可能な多孔体構造からなるものであり、上記インキ吸蔵体20と同様に繊維などからなる繊維束体、フェルト、または、スポンジ、特に硬質スポンジ、並びに、樹脂粒子焼結体、樹脂繊維焼結体等からなる焼結体、スライバー芯等の連続気孔(流路)を有するものであり、インキ吸蔵体20に含浸されたインキを該中継芯30を介してペン先40へ供給できるものであれば、特にその形状、構造等は限定されるものでないが、例えば、図2に示すように、中継芯30のペン先側先端部には、ペン先40の後端部分内部に挿入される挿入部31を有し、その後端部にはインキ吸蔵体20との接触面積を向上させてインキの吸収力を向上させる鋭角な形状となる鋭角部32を有するものが挙げられる。
【0011】
ここで、中継芯30は、インキ吸蔵体20の全長(L)の10%以上の長さでインキ吸蔵体20内部と接触していること、すなわち、中継芯30のインキ吸蔵体20内部と接触する長さL1は、インキ吸蔵体20の全長Lの10%以上、好ましくは20%以上の長さとすることが望ましく、更に好ましくは、50%以上100%以下の長さでインキ吸蔵体20内部と接触していることが望ましい。これにより、インキ吸蔵体20に含まれるインキ消費率を格段に向上させることができる。図2に示す中継芯30の長さL1は、インキ吸蔵体20の全長Lの20%に設定されている。なお、インキ吸蔵体20内部と接触する長さが10%未満であると、目的のインキ消費率を向上させることができず、通常の中綿式の筆記具と同レベルのインキ消費率となってしまうこととなる。
【0012】
また、中継芯30の断面積W1は、インキ吸蔵体20の断面積Wの1〜50%、好ましくは、2〜40%、更に好ましくは、5〜30%とすることが望ましい。
この中継芯25の断面積W1が1%未満であると、中継芯が非常に細くなり元々多孔構造であるため強度が弱くなりインキ吸蔵体への挿入時に折れたり、曲がったりする問題が生じる。更に、ぺン先40の形態にもよるが、インキ吸蔵体20からのインキ供給量が不足し描線カスレや早書き追従性に劣るなどの問題を生じることとなり、好ましくない。また、50%を越えると、インキ吸蔵体20中に挿入し難くなるばかりでなくインキ吸蔵体20に吸蔵されるインキ量が少なくなり筆記寿命が短くなるなどの問題が生じることとなり、好ましくない。
上記中継芯25の断面積W1をインキ吸蔵体20の断面積Wの1〜50%に設定することにより、インキ吸蔵体20に含まれるインキの消費率を更に向上させることができるものとなる。なお、本実施形態における中継芯30の断面積W1は、インキ吸蔵体20の断面積Wの5〜10%に設定されている。
更に、インキ吸蔵体に形成される空洞部の断面積W2は、好ましくは、インキ吸蔵量の点と加工のし易さの点で、インキ吸蔵体断面積Wの0.1〜50%、更に好ましくは、1〜30%とすることが望ましい。
なお、中継芯30が空洞部21に密に接触できるように空洞部21の断面積W2は中継芯30の断面積W1よりも若干小さくなっている。
【0013】
更に、インキ吸蔵体中のインキを中継芯側に流入しやすくし、ペン芯側へのインキ供給性を更に向上させて、インキ消費率を更に向上させるために、▲1▼中継芯30の毛細管力は、インキ吸蔵体20の毛細管力より大きくすること、▲2▼図2(b)に示すように、中継芯30の断面構造を内層部及び外層部を有する構造とし、外層部30aの毛細管力が内層部30bの毛細管力よりも大きい疎密構造体、例えば、外層部を密構造体とし、内層部を疎構造体とすること、または、▲3▼外層部30aの毛細管力が内層部30bの毛細管力よりも小さい疎密構造体、例えば、外層部を疎構造体とし、内層部を密構造体とし、かつ、毛細管力分布を、インキ吸蔵体20<中継芯外層部30a<中継芯内層部30bとすることが望ましい。これらの▲1▼〜▲3▼の少なくとも1つの構成により、中継芯30のインキの吸収力を最大限に発揮せしめてインキ吸蔵体20に含浸されたインキを該中継芯30を介してペン先40へ効率よく供給できるものとなる。
更に、中継芯30の形状は、特に限定されず、例えば、上記図1及び図2に示される形状などが挙げられるが、好ましくは、中継芯の各両端部は、接触面積を大きくして、インキ消費率を更に向上させる点から、鋭角形状とすることが好ましい。
【0014】
ペン先40は、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる平行繊維束、フェルト等の束を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工した繊維芯、または、各種のプラスチック粉末などを融結したポーラス体などからなるペン先からなるものであり、その形状も筆記具の形態、例えば、マーキングペン、サインペン、アンダーラインペン、ボールペン、ホワイトボード用マーカーペン、筆ペン等に応じて各種形状のものが選択されるものである。
また、ぺン先40の後端側には、ペン先40へのインキの供給を最大限に発揮させるために、中継芯30の挿入部31に沿って接触できる空洞部41が軸方向に形成されている。
【0015】
本実施形態において、インキ吸蔵体20、中継芯30、ペン先40の毛細管力を、ペン先40>中継芯30>インキ吸蔵体20とすることにより、インキ吸蔵体20に含浸されたインキを該中継芯30を介してペン先40へ効率よく供給できるものとなる。
また、上記インキ吸蔵体20に含浸せしめるインキとしては、一般に用いられている各配合組成となる水性インキ、油性インキなどの筆記具用インキであれば、特に限定されず、サインペン用、マーキングペン用、ボールペン用、ホワイトボード用など用途に応じた水性又は油性の液状インキが挙げられる。好ましくは、インキ消費率を更に向上させるために、インキの表面張力を25℃下で18mN/m以上、更に好ましくは、20〜60mN/mとすることが望ましい。なお、インキの表面張力の調整は、インキ組成に界面活性剤などを必要に応じて配合することにより、調整することができる。
インキの表面張力が18mN/m未満であると、インキ吸蔵体がインキを支える長さが短くなり多くのインキを貯留するには径方向に大きな所謂太い筆記具になってしまい設計の自由度がなくなることとなり、また、インキ吸蔵体を密にして毛細管力を大きくするとペン先や中継芯の毛細管力もそれに合わせて大きくする必要が生じ結果的に中継芯、ペン先は密な構造となるのでインキの流通が困難化しペン先に十分なインキを供給できなくなり、筆記時の流出量が不足し描線カスレ、描線濃度不足などの不都合が生じることとなる。
更に、インキ吸蔵体20から、中継芯30を介してペン先40へのインキを更に円滑に、かつ、スムーズな供給をするために、好ましくは、インキの粘度係数を25℃下で200mPa・s以下、更に好ましくは、100mPa・s以下、特に好ましくは10mPa・s以下とすることが望ましい。このインキの粘度係数が200mPa・sを越えると、インキの流動性が悪くなり、十分なインキ流出量が出ないため流量不足による描線カスレや早書きできない場合が生じることがある。なお、インキの粘度係数の調整は、インキ組成に増粘剤などを必要に応じて配合することにより、調整することができる。
【0016】
このように構成される本第1実施形態の筆記具Aでは、図1及び図2に示すように、インキ吸蔵体20に含浸されたインキはインキ吸蔵体20全長の10%以上の長さまでインキ吸蔵体20内部と接触している中継芯30を介して導入されるものとなるので、インキ吸蔵体20に含浸されたインキを効率よくスムーズにペン先40へ供給されてインキ吸蔵体に含浸されたインキの消費率は格段に向上することができるものとなる。
【0017】
なお、本実施形態では、尾栓50を軸筒10の後端部に固着されるものであるが、尾栓50を軸筒10の後端部に着脱自在に密閉できる機構として、尾栓50を取り外して補充インキを充填することにより再使用してもよいものである。また、この筆記具Aが高温下等の雰囲気で使用した場合に、インキが中継芯30からペン先40に過剰に供給され、インキがペン先40から漏れ出すことなどを防止するために、ペン先40の後端部分外周にインキ吸収体を設けてもよいものである。このインキ吸収体は、小径部10a内のペン先40の後端部分外周に形成される空間部14に配置されることとなる。
【0018】
図3(a)〜(c)は、上記第1実施形態の変形例である。図3(a)はインキ吸蔵体20の毛細管力の分布をペン先側へ向かうほど大きくする形態、例えば、インキ吸蔵体20を構成する繊維束間の隙間がペン先側へ向かうほど狭くなる構造、すなわち、疎構造体20aと密構造体部20bとにより構成したものである。
図3(b)は、軸筒10の内径がペン先側へ向かうほど狭くなる構造(先細形状)したものであり、インキ吸蔵体20もペン先側へ向かうほど狭くなる構造である。
図3(c)は、インキ吸蔵体20を収容する軸筒10の内壁部内側にリブ体15,15……を複数軸方向に形成した構造である。
このような図3(a)〜(c)の各構成又はこれらの組合わせを更に上記第1実施形態の筆記具Aに採用することにより、インキ吸蔵体20に含浸されたインキは中継芯30を介して更にペン先に流入し、ペン先40に良好に供給され、インキの消費率を更に向上することとなる。
【0019】
図4は、本発明の第2実施形態となるインキの消費率を格段に向上させたアンダーライン用の筆記具の一例を示すものである。本第2実施形態の筆記具Bは、中継芯30の外形形状が異なる点、具体的には、中継芯30のインキ吸蔵体と接触する長さL1をインキ吸蔵体20の全長Lの30%、また、中継芯30の断面積W1をインキ吸蔵体20の断面積Wの5%に設定した点、ペン先40を嵌着する先軸12を設けた点、ペン先形状がアンダーライン用のペン先40とした点で、上記第1実施形態の筆記具Aと異なるものである。なお、図4において、上記第1実施形態と同様の構成は同一符号を付けてその説明を省略する。
本第2実施形態の筆記具Bでは、上記第1実施形態と同様に、インキ吸蔵体20に含浸されたインキは中継芯30を介してペン先40に円滑に供給されて筆記が可能となる。
更に、上記第2実施形態の筆記具Bに、図3(a)〜(c)に示す変形例を適用してもよいものである(以下の実施形態においても同様)。
【0020】
図5は、本発明の第3実施形態となるインキの消費率を格段に向上させたサインペン用の筆記具の一例を示すものである。本第3実施形態の筆記具Cは、中継芯30の外形形状が異なる点、具体的には、中継芯30のインキ吸蔵体と接触する長さL1をインキ吸蔵体20の全長Lの56%、また、中継芯30の断面積W1をインキ吸蔵体20の断面積Wの8%に設定した点、ペン先40を嵌着する先軸13を設けた点、ペン先形状がサインペン用のペン先40とした点で、上記第1実施形態の筆記具Aと異なるものである。なお、図5において、上記第1実施形態と同様の構成は同一符号を付けてその説明を省略する。
本第3実施形態の筆記具Cでは、上記第1実施形態と同様に、インキ吸蔵体20に含浸されたインキは中継芯30を介してペン先40に円滑に供給されて筆記が可能となる。
【0021】
図6(a)及び(b)は、本発明の第4実施形態となるインキの消費率を格段に向上させたボールペン用の筆記具の一例を示すものである。本第3実施形態の筆記具Dは、中継芯30の外形形状が異なる点、具体的には、中継芯30のインキ吸蔵体と接触する長さL1をインキ吸蔵体20の全長Lの56%、また、中継芯30の断面積W1をインキ吸蔵体20の断面積Wの11%に設定した点、ペン先40を嵌着する先軸14を設けた点、ペン先形状がボールペン用のペン先40とした点で、上記第1実施形態の筆記具Aと異なるものである。なお、図6において、上記第1実施形態と同様の構成は同一符号を付けてその説明を省略する。本第4実施形態の筆記具Dでは、上記第1実施形態と同様に、インキ吸蔵体20に含浸されたインキは中継芯30を介してボールペン用のペン先40に円滑に供給されて筆記が可能となる。
【0022】
図7は、本発明の第5実施形態となるインキの消費率を格段に向上させたアンダーライ用とサインペン用の所謂ツインタイプの筆記具の一例を示すものであり、一方の片側に第2実施形態のアンダーライン用の中継芯、ペン先、他方の片側に第3実施形態のサインペン用の中継芯、ペン先と同じ構成となるものを使用したものである。なお、図7において、上記第2、第3実施形態と同様の構成は同一符号を付けてその説明を省略する。
本第5実施形態のツインタイプの筆記具Eでは、インキ吸蔵体20に含浸されたインキは各中継芯30、30を介して夫々のアンダーライ用とサインペン用の各ペン先40、40に円滑に供給されて筆記が可能となる。
なお、本第5実施形態のツインタイプの筆記具Eにおいて、インキ吸蔵体20を収容する軸筒10を区画壁により二室にして、夫々にインキ種が相違するインキを吸蔵させた各インキ吸蔵体を充填せしめてなるツインタイプの筆記具(後述する実施例5)にしてもよいものである。
【0023】
本発明の筆記具は、上記各実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の形態に変更できることはいうまでもない。
例えば、上記第5実施形態において、軸筒10の中央部に隔壁体を設けてインキ吸蔵体の収容室を2つにして、各収容室にインキ組成が異なる2種のインキ吸蔵体を収容せしめることにより、インキ組成、ペン先が異なる筆記具としてもよいものである。
また、本発明の筆記具は、軸筒内のインキ吸蔵体に含浸されたインキを筆記部となるペン先に供給する筆記具であって、上記インキ吸蔵体に含浸されたインキをインキ吸蔵体全長の10%以上の長さまでインキ吸蔵体内部と接触している中継芯を介してペン先に供給される構造を要旨とするので、この要旨を変更しない構成は特に限定されるものではなく、各種公知の筆記具構造が採用でき、また、ペン先、インキ種をボールペン、サインペン、マーキングペン、ホワイトボード用ペン、筆ペンなどの用途などによって変更して好適に各種用途の筆記具に適用することができるものである。
更に、筆記具用インキを修正液、塗布液、化粧品等の液状化粧料等とした塗布具に適用してもよいものである。
【0024】
【実施例】
次に、本発明を具体的な実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0025】
〔実施例1〜5、比較例1〜2〕
下記構成のサインペン、マーカー、ボールペンなどを作製し、下記各組成のインキを夫々充填した。
インキの表面張力の測定は、CBVP−Z型(協和界面科学社製)により測定し、インキの粘度係数は、TV−20L(トキメック社製)により測定した。
なお、以下の実施例及び比較例においてインキ吸蔵体、中継芯、ペン先の毛細管力は、ペン先>中継芯>インキ吸蔵体に設定されている。また、インキ吸蔵体に形成する空洞部は中継芯が密に接触できるように空洞部の断面積W2(直径)は中継芯の断面積W1(直径)よりも直径で1mm程度小さく設定してある。更に、中継芯が全方向でインキ流通可能な多孔体構造となっている。
【0026】
(実施例1)
図1に準拠する下記構成のサインペンを作製した。
インキ吸蔵体:ポリエステル製、気孔率80%、横断面形状:円形状
インキ吸蔵体全長(L):120mm
インキ吸蔵体直径:7mm
中継芯:ポリエステル製、気孔率70%、横断面形状:円形状
中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1):35mm
中継芯直径:2mm
インキ吸蔵体への中継芯の挿入率:約30%
インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率:約8%
ペン先:ポリエステル製、気孔率60%、長さ34mm
インキ組成:下記▲2▼の組成、含浸量3g
【0027】
(実施例2)
図4に準拠する下記構成のアンダーライン用マーカーを作製した。
インキ吸蔵体:ポリエステル製、気孔率80%、横断面形状:円形状
インキ吸蔵体全長(L):110mm
インキ吸蔵体直径:7mm
中継芯:ポリエステル製、気孔率70%、横断面形状:円形状
中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1):35mm
中継芯直径:2mm
インキ吸蔵体への中継芯の挿入率:約32%
インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率:約8%
ペン先:ポリエステル製、気孔率60%、長さ25mm
インキ組成:下記▲1▼の組成、含浸量3g
【0028】
(実施例3)
図5に準拠する下記構成のサインペンを作製した。
インキ吸蔵体:ポリエステル製、気孔率80%、横断面形状:円形状
インキ吸蔵体全長(L):110mm
インキ吸蔵体直径:7mm
中継芯:ポリエステル製、気孔率70%、横断面形状:円形状
中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1):60mm
中継芯直径:2mm
インキ吸蔵体への中継芯の挿入率:約55%
インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率:約8%
ペン先:ポリエステル製、気孔率60%、長さ29mm
インキ組成:下記▲3▼の組成、含浸量3g
【0029】
(実施例4)
図6に準拠する下記構成のボールペンを作製した。
インキ吸蔵体:ポリエステル製、気孔率80%、横断面形状:円形状
インキ吸蔵体全長(L):110mm
インキ吸蔵体直径:8mm
中継芯:ポリエステル製、気孔率70%、横断面形状:円形状
中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1):80mm
中継芯直径:1.5mm
インキ吸蔵体への中継芯の挿入率:約73%
インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率:約3.5%
ペン先:ステンレスチップ製、ボール径0.5mm、
インキ組成:下記▲4▼の組成、含浸量3g
【0030】
(実施例5)
図7に準拠する下記構成のサインペン及びアンダーライン用ツインタイプ筆記具を作製した。
インキ吸蔵体:ポリエステル製、気孔率80%、横断面形状:円形状
インキ吸蔵体全長(L):110mm(サインペン側とアンダーライン側でセパレートし、各々55mm)
インキ吸蔵体直径:7mm
サインペン側
中継芯:ポリエステル製、気孔率70%、横断面形状:円形状
中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1):50mm
中継芯直径:2mm
インキ吸蔵体への中継芯の挿入率:約91%
インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率:約8%
ペン先:ポリエステル製、気孔率60%、長さ25mm
アンダーライン側
中継芯:ポリエステル製、気孔率70%、横断面形状:円形状
中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1):35mm
中継芯直径:2mm
インキ吸蔵体への中継芯の挿入率:約64%
インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率:約8%
ペン先:ポリエステル製、気孔率60%、長さ29mm
インキ組成:下記▲1▼及び▲3▼の組成、各含浸量1.5g
【0031】
(比較例1)
上記実施例1(図1)におけるサインペンにおいて、中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1)を5mm、インキ吸蔵体への中継芯の挿入率を約4%とし、また、中継芯の直径を5mmとし、インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率を約51%とした以外は、上記第1実施例と同様にして作製した。
【0032】
(比較例2)
上記実施例2(図4)におけるアンダーラインペンにおいて、中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1)を5mm、インキ吸蔵体への中継芯の挿入率を約4.5%とし、また、中継芯の直径を2mmとし、インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率を約8%とした以外は、上記第2実施例と同様にして作製した。
【0033】
(比較例3)
上記実施例3(図5)におけるサインペンにおいて、中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1)を5mm、インキ吸蔵体への中継芯の挿入率を約4.5%とし、また、中継芯の直径を5mmとし、インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率を約51%とした以外は、上記第3実施例と同様にして作製した。
【0034】
(比較例4)
上記実施例3(図5)におけるサインペンにおいて、中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1)を5mm、インキ吸蔵体への中継芯の挿入率を約4.5%とし、また、中継芯の直径を2mmとし、インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率を約8%とした以外は、上記第3実施例と同様にして作製した。
【0035】
(比較例5)
上記実施例4(図6)におけるボールペンにおいて、中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1)を5mm、インキ吸蔵体への中継芯の挿入率を約4.5%とし、また、中継芯の直径を2mmとし、インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率を約6.3%とした以外は、上記第4実施例と同様にして作製した。
【0036】
(比較例6)
上記実施例5(図7)におけるツインタイプ筆記具において、サインペン側では、中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1)を5mm、インキ吸蔵体への中継芯の挿入率を約9%とし、また、中継芯の直径を0.5mmとし、インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率を約0.5%とした。
また、アンダーライン側では、中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1)を5mm、インキ吸蔵体への中継芯の挿入率を約9%とし、また、中継芯の直径を0.5mmとし、インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率を約0.5%とした。
上記以外は、第5実施例と同様にして作製した。
【0037】
(インキ組成)
▲1▼蛍光アンダーライン用インキ組成(配合単位:重量%、全量100重量%)
グリセリン 25.0重量%
防腐剤(プロキセルGXL、ICI社製) 0.7重量%
蛍光桃色トナー(NKW−3907、日本蛍光社製)30.0重量%
精製水 残 部
インキ表面張力:35mN/m
インキ粘度係数:3mPa・s
▲2▼油性サインペン用インキ組成(配合単位:重量%、全量100重量%)
ベンジルアルコール 3.5重量%
アルキルフェノール樹脂 10.0重量%
SBNブルー701(保土ヶ谷化学社製) 4.0重量%
界面活性剤(サンソフトQ−182F、太陽化学社製)0.6重量%
乳酸エチル 3.0重量%
エタノール 残 部
インキ表面張力:21mN/m
インキ粘度係数:2.2mPa・s
▲3▼水性サインペン用インキ組成(配合単位:重量%、全量100重量%)
カーボンブラック(Degussa社製、Printex25) 11.0重量%
アクリル樹脂 6.0重量%
エチレングリコール 2.76重量%
界面活性剤(サーフロンS−111、旭硝子社製) 0.1重量%
アミノメチルプロパノール 0.22重量%
防腐剤(プロキセルGXL、ICI社製) 0.7重量%
精製水 残 部
インキ表面張力:25mN/m
インキ粘度係数:3mPa・s
▲4▼水性ボールペン用インキ組成(配合単位:重量%、全量100重量%)
C.I.Direct Black−154 4.5重量%
C.I.Direct Black−154 1.5重量%
エチレングリコール 10.0重量%
グリセリン 10.0重量%
ゲル化剤(キサンタンガム) 0.18重量%
防腐剤(プロキセルGXL、ICI社製) 0.5重量%
スチレンアクリル酸樹脂(アンモニア中和) 3.0重量%
界面活性剤(ECTD3NEX、日光ケミカルズ社製)0.2重量%
精製水 残 部
インキ表面張力:40mN/m
インキ粘度係数:5mPa・s
【0038】
上記で得た各実施例1〜5、比較例1〜6のサインペンなどを用いて下記方法によりインキ消費率を測定した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0039】
(インキ消費率の評価方法)
(1)ペン先下向きで、普通紙に手書きで筆記して、描線がかすれるまで筆記して消費したインキ量M1と初期に充填したインキ量M0から下記式(I)によりインキ消費率Xとした。
X=(M0−M1)/M0×100(%) ………(I)
(2)ペン先上向きで、普通紙に手書きで筆記して、描線がかすれるまで筆記して消費したインキ量M2と初期に充填したインキ量M0から下記式(II)によりインキ消費率Yとした。
Y=(M0−M2)/M0×100(%) ………(II)
【0040】
【表1】
【0041】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜5は、本発明の範囲外となる比較例1〜6と較べて、格段にインキの消費率が向上していることが判明した。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、インキ吸蔵体に含浸されたインキの消費率を格段に向上させた筆記具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す筆記具の縦断面図である。
【図2】(a)は本発明の第1実施形態の要部を示す分解斜視図であり、(b)は中継芯の一例を示す部分縦断面図である。
【図3】(a)はインキ吸蔵体の変形例を示す縦断面図であり、(b)は軸筒10及びインキ吸蔵体の変形例を示す部分縦断面図であり、(c)は、軸筒の変形例を示す部分縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示す筆記具の縦断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態を示す筆記具の縦断面図である。
【図6】(a)は本発明の第4実施形態を示す筆記具の部分縦断面図であり、(b)はその要部を示す部分縦断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態を示す筆記具の縦断面図である。
【符号の説明】
A 筆記具
10 軸筒
20 インキ吸蔵体
30 中継芯
40 ペン先
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸筒内のインキ吸蔵体に含浸されたインキを筆記部となるペン先に供給する筆記具に関し、更に詳しくは、この構造の筆記具においてインキ吸蔵体に含浸されたインキの消費率を格段に向上させた筆記具に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、軸筒内のインキ吸蔵体に含浸された水性インキ、油性インキなどの筆記具用インキを筆記部となるペン先に供給する筆記具、所謂中綿式の筆記具におけるインキ消費率は、50〜60%程度で中綿(インキ吸蔵体)中には未だ40〜50%程度インキを貯留したまま描線カスレなどの現象が顕著になり筆記具としての機能を失っていた。
【0003】
そこで、従来の中綿式筆記具にあっては、中綿のペン先側の軸筒内側にリブを形成したり、ペン先側の軸筒を小さくするなどして中綿のインキができるだけペン先側に寄るように工夫がなされていた。
このような工夫により中綿のインキ消費率は、70%程度までアップさせることができたが、それでも30%程度のインキが中綿中に残ってしまう点に課題があり、中綿であるインキ吸蔵体に含浸されたインキの消費率を更に向上した筆記具が切望されているのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、軸筒内のインキ吸蔵体に含浸された水性インキ、油性インキなどの筆記具用インキを筆記部となるペン先に供給する筆記具において、インキ吸蔵体に含浸されたインキの消費率を格段に向上させた筆記具を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来技術の課題等について鋭意検討を重ねた結果、軸筒内のインキ吸蔵体に含浸されたインキを筆記部となるペン先に供給する筆記具において、インキ吸蔵体からペン先にインキを供給する機構を特定の構成等とすることにより、上記目的の筆記具が得られることを見いだし、本発明を完成するに至ったのである。
【0006】
すなわち、本発明の筆記具は、次の(1)〜(17)に存する。
(1) 軸筒内のインキ吸蔵体に含浸されたインキを筆記部となるペン先に供給する筆記具であって、上記インキ吸蔵体に含浸されたインキをインキ吸蔵体全長の10%以上の長さまでインキ吸蔵体内部と接触している中継芯を介してペン先に供給することを特徴とする筆記具。
(2) 中継芯の断面積が、インキ吸蔵体断面積の1〜50%であることを特徴とする上記(1)に記載の筆記具。
(3) 中継芯のインキ吸蔵体側の先端が鋭角な形態であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の筆記具。
(4) インキ吸蔵体に中継芯外層部と接触できる空洞部が軸方向に形成されていることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の筆記具。
(5) インキ吸蔵体に形成される空洞部の断面積が、インキ吸蔵体断面積の0.1〜50%であることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の筆記具。
(6) 中継芯の毛細管力がインキ吸蔵体の毛細管力よりも大きいことを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の筆記具。
(7) 中継芯が全方向でインキ流通可能な多孔体構造であることを特徴とする上記(1)〜(6)の何れか一つに記載の筆記具。
(8) 中継芯の多孔体構造が、繊維束体、フェルト、スポンジ、焼結体の何れか一つであることを特徴とする上記(1)〜(7)の何れか一つに記載の筆記具。
(9) インキ吸蔵体が、繊維束体、フェルト、スポンジ、焼結体の何れか一つであることを特徴とする上記(1)〜(8)の何れか一つに記載の筆記具。
(10) 中継芯の断面構造が、内層部と外層部とを有し、外層部の毛細管力が内層部の毛細管力よりも大きい疎密構造体であることを特徴とする上記(1)〜(9)の何れか一つに記載の筆記具。
(11) 中継芯の断面構造が、内層部と外層部とを有し、外層部の毛細管力が内層部の毛細管力よりも小さい疎密構造体であり、かつ毛細管力分布が、インキ吸蔵体<中継芯外層部<中継芯内層部であることを特徴とする上記(10)に記載の筆記具。
(12) インキ吸蔵体、中継芯、ペン先の毛細管力が、ペン先>中継芯>インキ吸蔵体であることを特徴とする上記(1)〜(11)の何れか一つに記載の筆記具。
(13) インキ吸蔵体の毛細管力の分布が、ペン先側へ向かうほど大きくなることを特徴とする上記(1)〜(12)の何れか一つに記載の筆記具。
(14) 軸筒の内径がペン先側へ向かうほど狭くなる構造となることを特徴とする上記(1)〜(13)の何れか一つに記載の筆記具。
(15) 軸筒のペン先側内側にリブ体を複数軸方向に形成されていることを特徴とする上記(1)〜(14)の何れか一つに記載の筆記具。
(16) インキの表面張力が25℃下で18mN/m以上であることを特徴とする上記(1)〜(15)の何れか一つに記載の筆記具。
(17) インキの粘度係数が25℃下で200mPa・s以下であることを特徴とする上記(1)〜(16)の何れか一つに記載の筆記具。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳しく説明する。
本発明の筆記具は、軸筒内のインキ吸蔵体に含浸されたインキを筆記部となるペン先に供給する筆記具であって、上記インキ吸蔵体に含浸されたインキをインキ吸蔵体全長の10%以上の長さまでインキ吸蔵体内部と接触している中継芯を介してペン先に供給することを特徴とするものである。
【0008】
図1及び図2は、本発明の第1実施形態を示すものであり、サインペン、マーカー、ホワイトボード用マーカー等に好適に適用することができるものである。本第1実施形態の筆記具Aは、図1及び図2に示すように、筆記具本体となる軸筒10、インキ吸蔵体20、中継芯30、ペン先40、尾栓50とを備えている。
軸筒10は、例えば、合成樹脂製から構成されるものであり、先端側がテーパー部を有する小径部10aと、大径部10bとが一体となったものであり、該小径部10a内にはペン先40を嵌着する嵌着部11を有すると共に、大径部10b内は筆記具用インキを含浸したインキ吸蔵体20、中継芯30を収容する構造となっている。
【0009】
インキ吸蔵体20は、水性インキ、油性インキなどの筆記具用インキを含浸したものであり、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維束体、フェルト、スポンジ、または、樹脂粒子焼結体、樹脂繊維焼結体などの焼結体等から構成されるものであり、軸筒10の前方部に形成される嵌着部21と尾栓50とにより軸筒20内に収容されている。
また、インキ吸蔵体20の先端側には、図2に示すように、中継芯30のインキ吸収力を向上させるために、中継芯30の形状に沿い、中継芯30の外層部と接触できる空洞部21が軸方向に形成されている。
【0010】
中継芯30は、全方向でインキ流通可能な多孔体構造からなるものであり、上記インキ吸蔵体20と同様に繊維などからなる繊維束体、フェルト、または、スポンジ、特に硬質スポンジ、並びに、樹脂粒子焼結体、樹脂繊維焼結体等からなる焼結体、スライバー芯等の連続気孔(流路)を有するものであり、インキ吸蔵体20に含浸されたインキを該中継芯30を介してペン先40へ供給できるものであれば、特にその形状、構造等は限定されるものでないが、例えば、図2に示すように、中継芯30のペン先側先端部には、ペン先40の後端部分内部に挿入される挿入部31を有し、その後端部にはインキ吸蔵体20との接触面積を向上させてインキの吸収力を向上させる鋭角な形状となる鋭角部32を有するものが挙げられる。
【0011】
ここで、中継芯30は、インキ吸蔵体20の全長(L)の10%以上の長さでインキ吸蔵体20内部と接触していること、すなわち、中継芯30のインキ吸蔵体20内部と接触する長さL1は、インキ吸蔵体20の全長Lの10%以上、好ましくは20%以上の長さとすることが望ましく、更に好ましくは、50%以上100%以下の長さでインキ吸蔵体20内部と接触していることが望ましい。これにより、インキ吸蔵体20に含まれるインキ消費率を格段に向上させることができる。図2に示す中継芯30の長さL1は、インキ吸蔵体20の全長Lの20%に設定されている。なお、インキ吸蔵体20内部と接触する長さが10%未満であると、目的のインキ消費率を向上させることができず、通常の中綿式の筆記具と同レベルのインキ消費率となってしまうこととなる。
【0012】
また、中継芯30の断面積W1は、インキ吸蔵体20の断面積Wの1〜50%、好ましくは、2〜40%、更に好ましくは、5〜30%とすることが望ましい。
この中継芯25の断面積W1が1%未満であると、中継芯が非常に細くなり元々多孔構造であるため強度が弱くなりインキ吸蔵体への挿入時に折れたり、曲がったりする問題が生じる。更に、ぺン先40の形態にもよるが、インキ吸蔵体20からのインキ供給量が不足し描線カスレや早書き追従性に劣るなどの問題を生じることとなり、好ましくない。また、50%を越えると、インキ吸蔵体20中に挿入し難くなるばかりでなくインキ吸蔵体20に吸蔵されるインキ量が少なくなり筆記寿命が短くなるなどの問題が生じることとなり、好ましくない。
上記中継芯25の断面積W1をインキ吸蔵体20の断面積Wの1〜50%に設定することにより、インキ吸蔵体20に含まれるインキの消費率を更に向上させることができるものとなる。なお、本実施形態における中継芯30の断面積W1は、インキ吸蔵体20の断面積Wの5〜10%に設定されている。
更に、インキ吸蔵体に形成される空洞部の断面積W2は、好ましくは、インキ吸蔵量の点と加工のし易さの点で、インキ吸蔵体断面積Wの0.1〜50%、更に好ましくは、1〜30%とすることが望ましい。
なお、中継芯30が空洞部21に密に接触できるように空洞部21の断面積W2は中継芯30の断面積W1よりも若干小さくなっている。
【0013】
更に、インキ吸蔵体中のインキを中継芯側に流入しやすくし、ペン芯側へのインキ供給性を更に向上させて、インキ消費率を更に向上させるために、▲1▼中継芯30の毛細管力は、インキ吸蔵体20の毛細管力より大きくすること、▲2▼図2(b)に示すように、中継芯30の断面構造を内層部及び外層部を有する構造とし、外層部30aの毛細管力が内層部30bの毛細管力よりも大きい疎密構造体、例えば、外層部を密構造体とし、内層部を疎構造体とすること、または、▲3▼外層部30aの毛細管力が内層部30bの毛細管力よりも小さい疎密構造体、例えば、外層部を疎構造体とし、内層部を密構造体とし、かつ、毛細管力分布を、インキ吸蔵体20<中継芯外層部30a<中継芯内層部30bとすることが望ましい。これらの▲1▼〜▲3▼の少なくとも1つの構成により、中継芯30のインキの吸収力を最大限に発揮せしめてインキ吸蔵体20に含浸されたインキを該中継芯30を介してペン先40へ効率よく供給できるものとなる。
更に、中継芯30の形状は、特に限定されず、例えば、上記図1及び図2に示される形状などが挙げられるが、好ましくは、中継芯の各両端部は、接触面積を大きくして、インキ消費率を更に向上させる点から、鋭角形状とすることが好ましい。
【0014】
ペン先40は、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる平行繊維束、フェルト等の束を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工した繊維芯、または、各種のプラスチック粉末などを融結したポーラス体などからなるペン先からなるものであり、その形状も筆記具の形態、例えば、マーキングペン、サインペン、アンダーラインペン、ボールペン、ホワイトボード用マーカーペン、筆ペン等に応じて各種形状のものが選択されるものである。
また、ぺン先40の後端側には、ペン先40へのインキの供給を最大限に発揮させるために、中継芯30の挿入部31に沿って接触できる空洞部41が軸方向に形成されている。
【0015】
本実施形態において、インキ吸蔵体20、中継芯30、ペン先40の毛細管力を、ペン先40>中継芯30>インキ吸蔵体20とすることにより、インキ吸蔵体20に含浸されたインキを該中継芯30を介してペン先40へ効率よく供給できるものとなる。
また、上記インキ吸蔵体20に含浸せしめるインキとしては、一般に用いられている各配合組成となる水性インキ、油性インキなどの筆記具用インキであれば、特に限定されず、サインペン用、マーキングペン用、ボールペン用、ホワイトボード用など用途に応じた水性又は油性の液状インキが挙げられる。好ましくは、インキ消費率を更に向上させるために、インキの表面張力を25℃下で18mN/m以上、更に好ましくは、20〜60mN/mとすることが望ましい。なお、インキの表面張力の調整は、インキ組成に界面活性剤などを必要に応じて配合することにより、調整することができる。
インキの表面張力が18mN/m未満であると、インキ吸蔵体がインキを支える長さが短くなり多くのインキを貯留するには径方向に大きな所謂太い筆記具になってしまい設計の自由度がなくなることとなり、また、インキ吸蔵体を密にして毛細管力を大きくするとペン先や中継芯の毛細管力もそれに合わせて大きくする必要が生じ結果的に中継芯、ペン先は密な構造となるのでインキの流通が困難化しペン先に十分なインキを供給できなくなり、筆記時の流出量が不足し描線カスレ、描線濃度不足などの不都合が生じることとなる。
更に、インキ吸蔵体20から、中継芯30を介してペン先40へのインキを更に円滑に、かつ、スムーズな供給をするために、好ましくは、インキの粘度係数を25℃下で200mPa・s以下、更に好ましくは、100mPa・s以下、特に好ましくは10mPa・s以下とすることが望ましい。このインキの粘度係数が200mPa・sを越えると、インキの流動性が悪くなり、十分なインキ流出量が出ないため流量不足による描線カスレや早書きできない場合が生じることがある。なお、インキの粘度係数の調整は、インキ組成に増粘剤などを必要に応じて配合することにより、調整することができる。
【0016】
このように構成される本第1実施形態の筆記具Aでは、図1及び図2に示すように、インキ吸蔵体20に含浸されたインキはインキ吸蔵体20全長の10%以上の長さまでインキ吸蔵体20内部と接触している中継芯30を介して導入されるものとなるので、インキ吸蔵体20に含浸されたインキを効率よくスムーズにペン先40へ供給されてインキ吸蔵体に含浸されたインキの消費率は格段に向上することができるものとなる。
【0017】
なお、本実施形態では、尾栓50を軸筒10の後端部に固着されるものであるが、尾栓50を軸筒10の後端部に着脱自在に密閉できる機構として、尾栓50を取り外して補充インキを充填することにより再使用してもよいものである。また、この筆記具Aが高温下等の雰囲気で使用した場合に、インキが中継芯30からペン先40に過剰に供給され、インキがペン先40から漏れ出すことなどを防止するために、ペン先40の後端部分外周にインキ吸収体を設けてもよいものである。このインキ吸収体は、小径部10a内のペン先40の後端部分外周に形成される空間部14に配置されることとなる。
【0018】
図3(a)〜(c)は、上記第1実施形態の変形例である。図3(a)はインキ吸蔵体20の毛細管力の分布をペン先側へ向かうほど大きくする形態、例えば、インキ吸蔵体20を構成する繊維束間の隙間がペン先側へ向かうほど狭くなる構造、すなわち、疎構造体20aと密構造体部20bとにより構成したものである。
図3(b)は、軸筒10の内径がペン先側へ向かうほど狭くなる構造(先細形状)したものであり、インキ吸蔵体20もペン先側へ向かうほど狭くなる構造である。
図3(c)は、インキ吸蔵体20を収容する軸筒10の内壁部内側にリブ体15,15……を複数軸方向に形成した構造である。
このような図3(a)〜(c)の各構成又はこれらの組合わせを更に上記第1実施形態の筆記具Aに採用することにより、インキ吸蔵体20に含浸されたインキは中継芯30を介して更にペン先に流入し、ペン先40に良好に供給され、インキの消費率を更に向上することとなる。
【0019】
図4は、本発明の第2実施形態となるインキの消費率を格段に向上させたアンダーライン用の筆記具の一例を示すものである。本第2実施形態の筆記具Bは、中継芯30の外形形状が異なる点、具体的には、中継芯30のインキ吸蔵体と接触する長さL1をインキ吸蔵体20の全長Lの30%、また、中継芯30の断面積W1をインキ吸蔵体20の断面積Wの5%に設定した点、ペン先40を嵌着する先軸12を設けた点、ペン先形状がアンダーライン用のペン先40とした点で、上記第1実施形態の筆記具Aと異なるものである。なお、図4において、上記第1実施形態と同様の構成は同一符号を付けてその説明を省略する。
本第2実施形態の筆記具Bでは、上記第1実施形態と同様に、インキ吸蔵体20に含浸されたインキは中継芯30を介してペン先40に円滑に供給されて筆記が可能となる。
更に、上記第2実施形態の筆記具Bに、図3(a)〜(c)に示す変形例を適用してもよいものである(以下の実施形態においても同様)。
【0020】
図5は、本発明の第3実施形態となるインキの消費率を格段に向上させたサインペン用の筆記具の一例を示すものである。本第3実施形態の筆記具Cは、中継芯30の外形形状が異なる点、具体的には、中継芯30のインキ吸蔵体と接触する長さL1をインキ吸蔵体20の全長Lの56%、また、中継芯30の断面積W1をインキ吸蔵体20の断面積Wの8%に設定した点、ペン先40を嵌着する先軸13を設けた点、ペン先形状がサインペン用のペン先40とした点で、上記第1実施形態の筆記具Aと異なるものである。なお、図5において、上記第1実施形態と同様の構成は同一符号を付けてその説明を省略する。
本第3実施形態の筆記具Cでは、上記第1実施形態と同様に、インキ吸蔵体20に含浸されたインキは中継芯30を介してペン先40に円滑に供給されて筆記が可能となる。
【0021】
図6(a)及び(b)は、本発明の第4実施形態となるインキの消費率を格段に向上させたボールペン用の筆記具の一例を示すものである。本第3実施形態の筆記具Dは、中継芯30の外形形状が異なる点、具体的には、中継芯30のインキ吸蔵体と接触する長さL1をインキ吸蔵体20の全長Lの56%、また、中継芯30の断面積W1をインキ吸蔵体20の断面積Wの11%に設定した点、ペン先40を嵌着する先軸14を設けた点、ペン先形状がボールペン用のペン先40とした点で、上記第1実施形態の筆記具Aと異なるものである。なお、図6において、上記第1実施形態と同様の構成は同一符号を付けてその説明を省略する。本第4実施形態の筆記具Dでは、上記第1実施形態と同様に、インキ吸蔵体20に含浸されたインキは中継芯30を介してボールペン用のペン先40に円滑に供給されて筆記が可能となる。
【0022】
図7は、本発明の第5実施形態となるインキの消費率を格段に向上させたアンダーライ用とサインペン用の所謂ツインタイプの筆記具の一例を示すものであり、一方の片側に第2実施形態のアンダーライン用の中継芯、ペン先、他方の片側に第3実施形態のサインペン用の中継芯、ペン先と同じ構成となるものを使用したものである。なお、図7において、上記第2、第3実施形態と同様の構成は同一符号を付けてその説明を省略する。
本第5実施形態のツインタイプの筆記具Eでは、インキ吸蔵体20に含浸されたインキは各中継芯30、30を介して夫々のアンダーライ用とサインペン用の各ペン先40、40に円滑に供給されて筆記が可能となる。
なお、本第5実施形態のツインタイプの筆記具Eにおいて、インキ吸蔵体20を収容する軸筒10を区画壁により二室にして、夫々にインキ種が相違するインキを吸蔵させた各インキ吸蔵体を充填せしめてなるツインタイプの筆記具(後述する実施例5)にしてもよいものである。
【0023】
本発明の筆記具は、上記各実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の形態に変更できることはいうまでもない。
例えば、上記第5実施形態において、軸筒10の中央部に隔壁体を設けてインキ吸蔵体の収容室を2つにして、各収容室にインキ組成が異なる2種のインキ吸蔵体を収容せしめることにより、インキ組成、ペン先が異なる筆記具としてもよいものである。
また、本発明の筆記具は、軸筒内のインキ吸蔵体に含浸されたインキを筆記部となるペン先に供給する筆記具であって、上記インキ吸蔵体に含浸されたインキをインキ吸蔵体全長の10%以上の長さまでインキ吸蔵体内部と接触している中継芯を介してペン先に供給される構造を要旨とするので、この要旨を変更しない構成は特に限定されるものではなく、各種公知の筆記具構造が採用でき、また、ペン先、インキ種をボールペン、サインペン、マーキングペン、ホワイトボード用ペン、筆ペンなどの用途などによって変更して好適に各種用途の筆記具に適用することができるものである。
更に、筆記具用インキを修正液、塗布液、化粧品等の液状化粧料等とした塗布具に適用してもよいものである。
【0024】
【実施例】
次に、本発明を具体的な実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0025】
〔実施例1〜5、比較例1〜2〕
下記構成のサインペン、マーカー、ボールペンなどを作製し、下記各組成のインキを夫々充填した。
インキの表面張力の測定は、CBVP−Z型(協和界面科学社製)により測定し、インキの粘度係数は、TV−20L(トキメック社製)により測定した。
なお、以下の実施例及び比較例においてインキ吸蔵体、中継芯、ペン先の毛細管力は、ペン先>中継芯>インキ吸蔵体に設定されている。また、インキ吸蔵体に形成する空洞部は中継芯が密に接触できるように空洞部の断面積W2(直径)は中継芯の断面積W1(直径)よりも直径で1mm程度小さく設定してある。更に、中継芯が全方向でインキ流通可能な多孔体構造となっている。
【0026】
(実施例1)
図1に準拠する下記構成のサインペンを作製した。
インキ吸蔵体:ポリエステル製、気孔率80%、横断面形状:円形状
インキ吸蔵体全長(L):120mm
インキ吸蔵体直径:7mm
中継芯:ポリエステル製、気孔率70%、横断面形状:円形状
中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1):35mm
中継芯直径:2mm
インキ吸蔵体への中継芯の挿入率:約30%
インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率:約8%
ペン先:ポリエステル製、気孔率60%、長さ34mm
インキ組成:下記▲2▼の組成、含浸量3g
【0027】
(実施例2)
図4に準拠する下記構成のアンダーライン用マーカーを作製した。
インキ吸蔵体:ポリエステル製、気孔率80%、横断面形状:円形状
インキ吸蔵体全長(L):110mm
インキ吸蔵体直径:7mm
中継芯:ポリエステル製、気孔率70%、横断面形状:円形状
中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1):35mm
中継芯直径:2mm
インキ吸蔵体への中継芯の挿入率:約32%
インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率:約8%
ペン先:ポリエステル製、気孔率60%、長さ25mm
インキ組成:下記▲1▼の組成、含浸量3g
【0028】
(実施例3)
図5に準拠する下記構成のサインペンを作製した。
インキ吸蔵体:ポリエステル製、気孔率80%、横断面形状:円形状
インキ吸蔵体全長(L):110mm
インキ吸蔵体直径:7mm
中継芯:ポリエステル製、気孔率70%、横断面形状:円形状
中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1):60mm
中継芯直径:2mm
インキ吸蔵体への中継芯の挿入率:約55%
インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率:約8%
ペン先:ポリエステル製、気孔率60%、長さ29mm
インキ組成:下記▲3▼の組成、含浸量3g
【0029】
(実施例4)
図6に準拠する下記構成のボールペンを作製した。
インキ吸蔵体:ポリエステル製、気孔率80%、横断面形状:円形状
インキ吸蔵体全長(L):110mm
インキ吸蔵体直径:8mm
中継芯:ポリエステル製、気孔率70%、横断面形状:円形状
中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1):80mm
中継芯直径:1.5mm
インキ吸蔵体への中継芯の挿入率:約73%
インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率:約3.5%
ペン先:ステンレスチップ製、ボール径0.5mm、
インキ組成:下記▲4▼の組成、含浸量3g
【0030】
(実施例5)
図7に準拠する下記構成のサインペン及びアンダーライン用ツインタイプ筆記具を作製した。
インキ吸蔵体:ポリエステル製、気孔率80%、横断面形状:円形状
インキ吸蔵体全長(L):110mm(サインペン側とアンダーライン側でセパレートし、各々55mm)
インキ吸蔵体直径:7mm
サインペン側
中継芯:ポリエステル製、気孔率70%、横断面形状:円形状
中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1):50mm
中継芯直径:2mm
インキ吸蔵体への中継芯の挿入率:約91%
インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率:約8%
ペン先:ポリエステル製、気孔率60%、長さ25mm
アンダーライン側
中継芯:ポリエステル製、気孔率70%、横断面形状:円形状
中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1):35mm
中継芯直径:2mm
インキ吸蔵体への中継芯の挿入率:約64%
インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率:約8%
ペン先:ポリエステル製、気孔率60%、長さ29mm
インキ組成:下記▲1▼及び▲3▼の組成、各含浸量1.5g
【0031】
(比較例1)
上記実施例1(図1)におけるサインペンにおいて、中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1)を5mm、インキ吸蔵体への中継芯の挿入率を約4%とし、また、中継芯の直径を5mmとし、インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率を約51%とした以外は、上記第1実施例と同様にして作製した。
【0032】
(比較例2)
上記実施例2(図4)におけるアンダーラインペンにおいて、中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1)を5mm、インキ吸蔵体への中継芯の挿入率を約4.5%とし、また、中継芯の直径を2mmとし、インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率を約8%とした以外は、上記第2実施例と同様にして作製した。
【0033】
(比較例3)
上記実施例3(図5)におけるサインペンにおいて、中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1)を5mm、インキ吸蔵体への中継芯の挿入率を約4.5%とし、また、中継芯の直径を5mmとし、インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率を約51%とした以外は、上記第3実施例と同様にして作製した。
【0034】
(比較例4)
上記実施例3(図5)におけるサインペンにおいて、中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1)を5mm、インキ吸蔵体への中継芯の挿入率を約4.5%とし、また、中継芯の直径を2mmとし、インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率を約8%とした以外は、上記第3実施例と同様にして作製した。
【0035】
(比較例5)
上記実施例4(図6)におけるボールペンにおいて、中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1)を5mm、インキ吸蔵体への中継芯の挿入率を約4.5%とし、また、中継芯の直径を2mmとし、インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率を約6.3%とした以外は、上記第4実施例と同様にして作製した。
【0036】
(比較例6)
上記実施例5(図7)におけるツインタイプ筆記具において、サインペン側では、中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1)を5mm、インキ吸蔵体への中継芯の挿入率を約9%とし、また、中継芯の直径を0.5mmとし、インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率を約0.5%とした。
また、アンダーライン側では、中継芯のインキ吸蔵体への挿入長(L1)を5mm、インキ吸蔵体への中継芯の挿入率を約9%とし、また、中継芯の直径を0.5mmとし、インキ吸蔵体断面積に対する中継芯断面積比率を約0.5%とした。
上記以外は、第5実施例と同様にして作製した。
【0037】
(インキ組成)
▲1▼蛍光アンダーライン用インキ組成(配合単位:重量%、全量100重量%)
グリセリン 25.0重量%
防腐剤(プロキセルGXL、ICI社製) 0.7重量%
蛍光桃色トナー(NKW−3907、日本蛍光社製)30.0重量%
精製水 残 部
インキ表面張力:35mN/m
インキ粘度係数:3mPa・s
▲2▼油性サインペン用インキ組成(配合単位:重量%、全量100重量%)
ベンジルアルコール 3.5重量%
アルキルフェノール樹脂 10.0重量%
SBNブルー701(保土ヶ谷化学社製) 4.0重量%
界面活性剤(サンソフトQ−182F、太陽化学社製)0.6重量%
乳酸エチル 3.0重量%
エタノール 残 部
インキ表面張力:21mN/m
インキ粘度係数:2.2mPa・s
▲3▼水性サインペン用インキ組成(配合単位:重量%、全量100重量%)
カーボンブラック(Degussa社製、Printex25) 11.0重量%
アクリル樹脂 6.0重量%
エチレングリコール 2.76重量%
界面活性剤(サーフロンS−111、旭硝子社製) 0.1重量%
アミノメチルプロパノール 0.22重量%
防腐剤(プロキセルGXL、ICI社製) 0.7重量%
精製水 残 部
インキ表面張力:25mN/m
インキ粘度係数:3mPa・s
▲4▼水性ボールペン用インキ組成(配合単位:重量%、全量100重量%)
C.I.Direct Black−154 4.5重量%
C.I.Direct Black−154 1.5重量%
エチレングリコール 10.0重量%
グリセリン 10.0重量%
ゲル化剤(キサンタンガム) 0.18重量%
防腐剤(プロキセルGXL、ICI社製) 0.5重量%
スチレンアクリル酸樹脂(アンモニア中和) 3.0重量%
界面活性剤(ECTD3NEX、日光ケミカルズ社製)0.2重量%
精製水 残 部
インキ表面張力:40mN/m
インキ粘度係数:5mPa・s
【0038】
上記で得た各実施例1〜5、比較例1〜6のサインペンなどを用いて下記方法によりインキ消費率を測定した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0039】
(インキ消費率の評価方法)
(1)ペン先下向きで、普通紙に手書きで筆記して、描線がかすれるまで筆記して消費したインキ量M1と初期に充填したインキ量M0から下記式(I)によりインキ消費率Xとした。
X=(M0−M1)/M0×100(%) ………(I)
(2)ペン先上向きで、普通紙に手書きで筆記して、描線がかすれるまで筆記して消費したインキ量M2と初期に充填したインキ量M0から下記式(II)によりインキ消費率Yとした。
Y=(M0−M2)/M0×100(%) ………(II)
【0040】
【表1】
【0041】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜5は、本発明の範囲外となる比較例1〜6と較べて、格段にインキの消費率が向上していることが判明した。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、インキ吸蔵体に含浸されたインキの消費率を格段に向上させた筆記具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す筆記具の縦断面図である。
【図2】(a)は本発明の第1実施形態の要部を示す分解斜視図であり、(b)は中継芯の一例を示す部分縦断面図である。
【図3】(a)はインキ吸蔵体の変形例を示す縦断面図であり、(b)は軸筒10及びインキ吸蔵体の変形例を示す部分縦断面図であり、(c)は、軸筒の変形例を示す部分縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示す筆記具の縦断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態を示す筆記具の縦断面図である。
【図6】(a)は本発明の第4実施形態を示す筆記具の部分縦断面図であり、(b)はその要部を示す部分縦断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態を示す筆記具の縦断面図である。
【符号の説明】
A 筆記具
10 軸筒
20 インキ吸蔵体
30 中継芯
40 ペン先
Claims (17)
- 軸筒内のインキ吸蔵体に含浸されたインキを筆記部となるペン先に供給する筆記具であって、上記インキ吸蔵体に含浸されたインキをインキ吸蔵体全長の10%以上の長さまでインキ吸蔵体内部と接触している中継芯を介してペン先に供給することを特徴とする筆記具。
- 中継芯の断面積が、インキ吸蔵体断面積の1〜50%であることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
- 中継芯のインキ吸蔵体側の先端が鋭角な形態であることを特徴とする請求項1又は2に記載の筆記具。
- インキ吸蔵体に中継芯外層部と接触できる空洞部が軸方向に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の筆記具。
- インキ吸蔵体に形成される空洞部の断面積が、インキ吸蔵体断面積の0.1〜50%であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の筆記具。
- 中継芯の毛細管力がインキ吸蔵体の毛細管力よりも大きいことを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の筆記具。
- 中継芯が全方向でインキ流通可能な多孔体構造であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の筆記具。
- 中継芯の多孔体構造が、繊維束体、フェルト、スポンジ、焼結体の何れか一つであることを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載の筆記具。
- インキ吸蔵体が、繊維束体、フェルト、スポンジ、焼結体の何れか一つであることを特徴とする請求項1〜8の何れか一つに記載の筆記具。
- 中継芯の断面構造が、内層部と外層部とを有し、外層部の毛細管力が内層部の毛細管力よりも大きい疎密構造体であることを特徴とする請求項1〜9の何れか一つに記載の筆記具。
- 中継芯の断面構造が、内層部と外層部とを有し、外層部の毛細管力が内層部の毛細管力よりも小さい疎密構造体であり、かつ毛細管力分布が、インキ吸蔵体<中継芯外層部<中継芯内層部であることを特徴とする請求項10に記載の筆記具。
- インキ吸蔵体、中継芯、ペン先の毛細管力が、ペン先>中継芯>インキ吸蔵体であることを特徴とする請求項1〜11の何れか一つに記載の筆記具。
- インキ吸蔵体の毛細管力の分布が、ペン先側へ向かうほど大きくなることを特徴とする請求項1〜12の何れか一つに記載の筆記具。
- 軸筒の内径がペン先側へ向かうほど狭くなる構造となることを特徴とする請求項1〜13の何れか一つに記載の筆記具。
- 軸筒のペン先側内側にリブ体を複数軸方向に形成されていることを特徴とする請求項1〜14の何れか一つに記載の筆記具。
- インキの表面張力が25℃下で18mN/m以上であることを特徴とする請求項1〜15の何れか一つに記載の筆記具。
- インキの粘度係数が25℃下で200mPa・s以下であることを特徴とする請求項1〜16の何れか一つに記載の筆記具。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009269251A (ja) * | 2008-05-02 | 2009-11-19 | Ikeda Corp | 筆記具の筆先構造 |
JP2021066043A (ja) * | 2019-10-18 | 2021-04-30 | 三菱鉛筆株式会社 | マーキングペン |
-
2002
- 2002-08-01 JP JP2002225126A patent/JP2004066479A/ja not_active Withdrawn
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