JP2004065256A - ヒト免疫不全ウィルスの新規トランスドミナントtat変異体 - Google Patents

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Abstract

【構成】HIVウイルスTAT蛋白質または少なくとも1つの突然変異を含む該蛋白質の機能性フラグメントのトランスドミナント変異体であって、該突然変異が38位、40位、41位、45位または47位には、天然残基と異なるアミノ酸残基が存在し、41位はアラニンまたはスレオニンと異なり、47位はアラニンまたはヒスチジンと異なることを特徴とする変異体、該変異体の製造方法及び害変異体を有効成分とするHIV感染の治療または予防用の薬学的組成物。
【効果】HIV感染の治療または予防を行えるようになった。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のTAT蛋白の新規な変異体、ならびにこの変異体をコードするDNAフラグメント、組換え経路によりその発現を可能とする発現カセットおよびこの発現カセットを含む細胞に関する。TAT蛋白変異体、カセットおよび細胞は、HIV感染の予防或いは治療に特に有用である。
【0002】
【従来技術とその問題点】
後天性免疫不全症候群(エイズ)は、HIVウイルスによる個体のT4リンパ球の感染に引き続いて、進行する。感染後も、多年に亘り無症候性である場合もあるが、細胞が活性化されると直ちに、HIVウイルスは、急速に複製を開始し、細胞を破壊する。エイズは、日和見感染症に対して感染者を特に鋭敏にさせる効果を有する細胞性免疫の欠陥により特徴付けられる。WHOは、1992年7月に世界中で501272件のエイズの症例を記録している(「後天性免疫不全症候群とそれに関連するレトロウイルス類についてのAIDS国際文献」、A.W.ボイルストン編、1992、8、リーズ ユニバーシティー プレス、リーズ)。しかしながら、幾つかのアフリカ諸国においては、この病気は、真の流行病となっているので、これらの数値は、実際の値よりも低い。
【0003】
エイズは、1992年においても、その死亡率が非常に高い病気である。実際、エイズの発病から2年以内に、90%以上のヒトが死亡する。これまでにも、多大の努力が払われてきたにも拘らず、完全に満足すべきことが証明された治療法は存在しない。効果的な治療法の開発は、HIVウイルスの特異的な複雑さの故に、妨げられてきた。
【0004】
HIVは、レンチウイルス科に属するレトロウイルスの一種である。他のレトロウイルスと同様に、HIVは、蛋白性のカプシドを囲むエンベロープにより構成されており、カプシドは、複製サイクルの最初の段階で必要とされる種々のウイルス蛋白と結合したRNA分子からなる遺伝材料を含んでいる。
【0005】
Tリンパ球の感染後、RNA分子は、ウイルスの逆転写酵素によりコピーされ、DNAとなる。DNAは、細胞ゲノム内に組み込まれ、通常プロウイルスと呼ばれるものを形成する。プロウイルス性のDNAは、潜伏状態でそこにとどまり続けることもできるし、或いは細胞の機構によりRNAに転写されて、一方ではウイルスのゲノムRNAを形成し、他方ではウイルス蛋白に翻訳されるべきメッセンジャーRNA(mRNA)を形成する。
【0006】
新しいウイルス粒子、即ちビリオンの形成は、ウイルスのゲノムRNAのカプシド内への包み込みにより、生ずる。この様にして形成された粒子は、ウイルスエンベロープグリコプロテインが組み込まれる細胞膜の一部で発生する破れ(budding)により、細胞から分離する。この様にして放出されたビリオンは、T4リンパ球の表面で発現されるCD4レセプターとHIVエンベロープ蛋白との特異的で且つ相互的な認識により、他のリンパ球に感染することができる。
【0007】
図1に示す様に、一般にHIVゲノムは、以下の構成を備えている:
−3つの構造遺伝子;カプシド、エンベロープおよび逆転写酵素蛋白をそれぞれコードするgag、polおよびenv、
−少なくとも6つの遺伝子;tat、rev、nef、vif、vprおよびvpu。これらは、いまだ僅かにしか判明していないものもある制御機能を恐らく有している蛋白をコードしている、および
−シス−制御配列(cis−regulatory sequences)。これは、転写のために必須であり、LTRs(Long Terminal Repeat)のレベルでプロウイルスDNAの5′末端および3′末端の両方に局在する。5′末端のLTRは、転写の開始に必要なプロモーター配列と制御エレメントとを含むのに対し、3′末端のLTRは、転写の停止に関与する。さらに、ウイルス遺伝子の転写は、特にウイルス蛋白TATおよびREVによりコントロールされる複合制御の対象となる。
【0008】
TAT蛋白は、ウイルスサイクルの初期段階で発現される制御蛋白である。その作用部位は、核である。その役割は、全てのHIV蛋白をコードする遺伝子の発現をトランス活性化すること(transacitivating)にある。TAT蛋白は、ウイルスゲノムの短鎖ヌクレオチド配列と特異的に相互作用する。即ち、TAR(トランス活性化反応性部位(Trans−Activation Responsive Region))配列は、5′末端のLTRの−17と+80ヌクレオチド(nt)の間でHIVゲノムの5′末端に局地的に存在する。従って、この配列は、全てのウイルスmRNAにおいて部分的に存在する。TAT−TARコンプレックスは、恐らく他の細胞性因子(cellular factors)とともにウイルス遺伝子の転写に有利に働き、この様にして得られたmRNAを安定化させ、これらのmRNAの蛋白への翻訳を改善するものと推測される。かくしてウイルスは、tat遺伝子が活性化されるや否や、急速に増殖する。
【0009】
CAT(クロラムフェニコール・アセチル・トランスフェラーゼ(Chloramphenicol Acetyl Transferase)遺伝子の様な、その発現を容易に測定できる指標遺伝子(indicator gene)を使用して、TAT蛋白質により誘導されるトランス活性化(transacitivation)の効果をインビトロで評価することは、可能であった。TAR配列を含むHIVウイルスの5′LTRの制御下に置かれたCAT遺伝子が、トランスフェクションにより、動物細胞内に導入された。TATを発現しない細胞、例えば、HIVウイルスにより感染されていない細胞においては、ウイルスプロモーターからのCAT遺伝子の転写は、ブロックされるか最小限にまで減少するので、CAT遺伝子生成物は全く或いは殆ど検知されない。これに対し、TAT蛋白の存在下では、細胞の種類にもよるが、100〜1000というファクターでの遺伝子発現の増大が観察された。この結果は、翻訳の効率の改善と関連する転与の促進によるものである。
【0010】
HIVトランス活性化遺伝子(tat)は、2つのコード化エクソンを有している。第1のエクソンは、ゲノムの中心領域で、pol遺伝子およびenv遺伝子をコードする配列間に位置しており、蛋白の大部分、即ち、N末端の72個のアミノ酸をコードしている。C末端の14個のアミノ酸のみをコードする第2のエクソンは、生物学的活性のためには、必須ではない。
【0011】
TAT蛋白の構造は、その機能が示唆している。TAT蛋白は、ウイルス遺伝子の転写の活性化を可能とする、活性化ドメインと呼ばれる少なくとも1つのドメイン、TARヌクレオチド配列に結合する1つのドメイン、そのターゲット配列、およびその核局在化(nuclear localization)を可能とする1つのドメインを備えている。
【0012】
多くの研究によれば、TAT蛋白は、以下の5つのドメインを備えている(図2参照):
−第1のドメイン(アミノ酸1〜37)は、システインに富む配列を有しているが、その機能は未だ不明である。幾つかの研究は、この領域が、蛋白の折りたたみおよびTAT分子のダイマー化に関与しており、プロテアーゼに対して蛋白を保護しているものと考えれることを示唆している。
−第1の活性化ドメインに対応するアミノ酸38〜48からなるドメイン。
−アミノ酸49〜57からなるドメインは、核局在化およびTARエレメントへの結合のための配列を有している。
−アミノ酸58〜72からなるドメインは、第2のTAT活性化ドメインに対応する。
−アミノ酸73〜86からなるドメインは、TAT活性には必須ではない。
【0013】
多くのHIV関連レトロウイルスは、LTRからのウイルス遺伝子の転写を活性化し得る蛋白をコード化するトランス活性化遺伝子を有する。過去数年間に、異なるタイプのウイルスから得られたこれらのトランス活性化蛋白の種々の変異体が発表されている。それらの中には、ネガティブおよびドミナント変異体(negative and dominant variants)があり(ワックスマンら、サイエンス、1987,235,674−677;フリードマンら、ネイチャー、1988,335,452−454)、これらを以後トランスドミナント変異体という。
【0014】
トランスドミナント変異体は、以下の様に定義されている。即ち、ウイルスプロモーターの制御下におかれた遺伝子の発現の活性化を誘導する能力の低下(低下したトランス活性化作用)を呈するが、このプロモーターのレベルにおかれたそのターゲット配列を認識する能力を有しているので、野生型(native)トランス活性化蛋白の機能を拮抗的に抑制することができるものである。
【0015】
これらの変異体は、野生型蛋白の機能にドミナント的に(in a dominant manner)干渉するので、感染した細胞の「細胞内免疫化(intracellular immunization)」を促進し得る新たな種類の抗ウイルス剤となり得る。
【0016】
一般にいえば、この技術は、細胞に特異的な利点を付与する蛋白または核酸を合成させる様に、細胞を遺伝学的に改良することにある。例えば、ディー・ボルチモアー(ネイチャー、1988,335,395−396)により定義されている様に、HIVウイルスの様な特定のウイルスによる感染に対する抵抗性を付与することである。
【0017】
かくして、グリーンら(セル、1989,58,215−233)は、HIVウイルスTAT蛋白の第1の活性化ドメインにおいて修飾されたトランスドミナント変異体を生成させている。グリーンらは、TAT蛋白のペプチドフラグメントから得られた4つの変異体を開示している。これらの2つ、即ち、変異体TAT(Lys41−>Ala)およびTAT(Tyr47−>Ala)は、有効なトランスドミナントであると述べられ、他の2つ、即ち、変異体TAT(Ser46−>Ala)および二重変異体TAT(Ser46、Tyr47−>Ala、Ala)は、温和なトランスドミナント(moderate transdominants)であると述べられている。
【0018】
それにも拘らず、上記の文献に記載された変異体には、疑問が投げ掛けられている様である(フランケルら、プロシージャー オブ ナショナル アカデミーオブ サイエンス ユーエスエー、1989,86,7397−7401)。本発明者も、変異体(Lys41−>Ala)について得られた結果を再現しようと試みたが、下記に示すように、不成功に終わった。
【0019】
さらに、ピアソンら(プロシージャー オブ ナショナル アカデミー オブサイエンス ユーエスエー、1990,87.5079−5083)は、トランスドミナント表現型の形成に際してのアミノ酸48〜54からなる領域の重要性を示している。事実、54位においてグルタミン(Gln)をコードするコドンをストップコドンで置換することにより、その様な表現型を示す先端を切断された(truncated)ΔTAT変異体が得られる。
【0020】
現在、トランスドミナント表現型を示し且つ活性化ドメインの或る残基にレベルで修飾された、HIV TAT蛋白の新しい変異体が見出されている。
【0021】
これらの変異体は、より低いトランス活性化作用を示し、且つ天然のTAT蛋白の機能に支配的に関与するので、抗エイズ治療の枠組みにおいて、極めて有用である。これらの新変異体は、HIVウイルスの複製および伝播を抑制するに効果的な抗ウイルス剤となり得るものである。事実、これらのトランスドミナント変異体の作用は、ウイルスが新しいウイルス粒子の形成に必要な蛋白とRNAとを合成することができる以前においてさえも、初めの感染サイクルから生じていると考えられる。
【0022】
従って、本発明の課題は、少なくとも1つの変異を含むHIVウイルス TAT蛋白またはこの蛋白の機能性フラグメントのトランスドミナント変異体を提供することにある;この変異は、38位、40位、41位、45位及び47位で天然の残基と異なるアミノ酸残基の存在により特徴付けられる。しかしながら、該条件において、41位のアミノ酸はアラニンまたはスレオニンとは異なり、47位はアラニンまたはヒスチジンとは異なる。
【0023】
一般に、ウエイン−ホブソンら(セル、1985,40,9−17)により開示されているように、HIV1ウイルスLai単離体(HIV1 virus Lai isolate)のTAT蛋白の配列に基づくTAT蛋白の変異体の配列を記載することが認められている。
【0024】
TAT蛋白およびTAT蛋白をコードするDNAフラグメントは、最初にウイルス株HIV1 Lai単離体から記載された。しかしながら、ウイルス株及びウイルス単離体は、多数存在する同一の株の中で記載された。さらに、特定のウイルスはその増殖中に変異可能である。結果として、TAT蛋白をコードするDNAフラグメントは、ウイルスによって異なるヌクレオチド配列を有するかもしれない。同様に、TAT蛋白は、ウイルスによって異なるアミノ酸配列を有するかもしれない。しかしながら、共通の標準は、ウイルスゲノムの5´LTR中に含まれるHIVウイルスプロモーターのようなTAR標的配列を含むプロモーターの制御下に置かれた遺伝子の発現をトランス活性化する蛋白質の機能である。HIV TAT蛋白は、HIV1ウイルスLai単離体のTAT蛋白により発現されるのと実質的に同一のトランス活性化の結果を与える全ての蛋白であると理解される。
【0025】
実際に、TAT蛋白の変異体の配列は、HIV1ウイルスTAT蛋白の変異体の配列と整列させる。TAT蛋白の変異体の配列におけるアミノ酸の番号付けは、それゆえHIV1ウイルスTAT蛋白で確立された配列に基づくであろう。例えば、TAT蛋白の変異体の配列における41位のアミノ酸残基は、実際、整列後のHIV1ウイルスの天然のTAT蛋白の配列の41位に相当するアミノ酸である。
【0026】
より詳細には、本発明のTAT蛋白変異体は、トランス活性化作用が天然型TAT蛋白の約50%以下、有利には20%以下、好ましくは10%以下であり、変異体/天然型TATが10/1の濃度比で測定されたものとして、天然型TAT機能阻害活性が、50%以上、有利には75%以上、好ましくは90%以上であることで特徴付けられるトランスドミナント表現型を示す。トランス活性化作用を測定する種々の方法が現在知られている。それらは使用されるリポーター遺伝子により変化するが、以下の実施例に記載される、HIVウイルスの5´LTRの制御下におかれたCAT遺伝子を用いる方法が挙げられる。
【0027】
本発明のTAT蛋白変異体は、該蛋白の機能性フラグメントから得ることもでき、上記に記載されたような残基のレベルで変異することもでき、アミノ酸の番号付けは対照のHIV1ウイルスの天然のTAT蛋白で確立されたものと整列させる。TAT蛋白の機能性フラグメントは、HIVウイルスプロモーターのようなTAR配列を含むプロモーターの制御下に置かれた遺伝子の発現のトランス活性化を誘導することのできる前記蛋白の全てのフラグメントとして理解される。例えば、本発明のTAT蛋白変異体は、アミノ酸1位から始まりアミノ酸72位で終わるフラグメントのようなTAT蛋白のフラグメントの突然変異後に製造できる。
【0028】
本願に従うTATタンパク質の変異体は、HIVの天然のTATタンパク質と比べて、幾つかの突然変異を含み得る。それは、上述のように、少なくとも2個の突然変異の組合せを含み得る。
【0029】
より詳細には、本願に従うTATタンパク質変異体は、特に、HIV1の天然のTAT配列との相同性の程度が、75%より多く、有利には90%より多く、好ましくは95%より多い配列を有する。
【0030】
無論、突然変異されるべき残基は、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グリシン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トリプトファン、チロシンおよびバリンで置換され得る41位の残基、およびアルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グリシン、グルタミン酸、グルタミン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファンおよびバリンで置換され得る47位の残基を除き、天然の残基以外のあらゆるアミノ酸残基で置換されることができる。
【0031】
本願の特に有利な局面に従うと、TATの変異体は、以下のものから選択される。
(1)38位に、酸性の側鎖を有するアミノ酸、例えばグルタミン酸、アスパラギン酸、好ましくはアスパラギン酸を含む変異体、
(2)40位に、非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、好ましくはアラニンを含む変異体、
(3)41位に、酸性の側鎖を有するアミノ酸、例えばグルタミン酸、アスパラギン酸、好ましくはグルタミン酸を含む変異体、
(4)45位に、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸、例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン、または好ましくはセリンを含む変異体、
(5)47位に、塩基性の側鎖を有するアミノ酸、例えばリシン、アルギニン、ヒスチジンまたは好ましくは、アルギニンを含む変異体、
(6)59位に、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸、例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン、または好ましくは、グリシンを含む変異体、
(7)60位に、非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンまたは好ましくは、トリプトファンを含む変異体、
(8)61位に、塩基性の側鎖を有するアミノ酸、例えばリシン、アルギニン、ヒスチジンまたは好ましくは、アルギニンを含む変異体、
(9)62位に、非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンまたは好ましくは、アラニンを含む変異体、
(10)63位に、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸、例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン、または好ましくは、セリンを含む変異体、
(11)64位に、非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンまたは好ましくは、ロイシンを含む変異体、
(12)65位に、非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンまたは好ましくは、ロイシンを含む変異体、
(13)66位に、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸、例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン、または好ましくは、チロシンを含む変異体、
(14)67位に、塩基性の側鎖を有するアミノ酸、例えばリシン、アルギニン、ヒスチジンまたは好ましくは、アルギニンを含む変異体、
(15)68位に、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸、例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン、または好ましくは、アスパラギンを含む変異体、
(16)69位に、塩基性の側鎖を有するアミノ酸、例えばリシン、アルギニン、ヒスチジンまたは好ましくは、アルギニンを含む変異体、
(17)70位に、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸、例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン、または好ましくは、グルタミンを含む変異体、
(18)71位に、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸、例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン、または好ましくは、スレオニンを含む変異体、
(19)72位に、非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンまたは好ましくは、ロイシンを含む変異体。
【0032】
本願はまた、該TATタンパク質変異体をコードするDNAフラグメントにも関する。TATタンパク質変異体をコードする配列は、慣用されている遺伝子工学的技術、例えば、部位特異的突然変異誘発によって得ることができる。従って、HIVの天然TATタンパク質または該配列の一部をコードする遺伝子を含むDNAフラグメントが、M13タイプのファージにクローン化される。この配列は、所望の突然変異(1箇所または複数箇所)を得るために、適切なオリゴヌクレオチドを使用して、改変される。
【0033】
本発明はまた、本発明に従うTATタンパク質変異体をコードするDNAフラグメントを含む発現カセットをも包含し、該発現カセットは、その発現を可能にする適切なエレメントの制御下に置かれる。発現カセットは、異種の発現システム中でTATタンパク質変異体を合成することを可能にするために、または代替的に、遺伝子治療に意図されるベクター、例えばレトロウィルスあるいはアデノウィルスベクターのエレメントとして、特に有用である。TATタンパク質変異体をコードするDNAフラグメントの発現を可能にする適切なエレメントとして、該DNAフラグメントのmRNAへの転写およびmRNAのタンパク質への翻訳を可能にする全てのエレメントが包含される。
【0034】
これらのエレメントは、特に、適切なプロモーターを含む。本発明における用語「プロモーター」は、保持される宿主細胞によるDNAフラグメントの発現に関連するあらゆる転写の制御用のエレメントを意味する。そのような制御用エレメントは、当業者に周知であり、慣用されている遺伝子工学技術によって、発現カセット中に挿入される。
【0035】
保持されるプロモーターは、細胞またはウィルス起源のものであって良い。プロモーターは、DNAフラグメントの恒久的発現を可能にする遍在性タイプのものであって良い。酵母中で機能するPGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ)プロモーターまたはSV40ウィルス(Simian Virus 40)の後期プロモーター(late promoter)、HMG(ヒドロキシ−メチル−グルタリル補酵素Aリダクターゼ)遺伝子のプロモーター、単純ヘルペスI型ウィルス(HSV1)のチミジンキナーゼ(TK)遺伝子のプロモーター、動物細胞で機能するアデノウィルスのEIIIプロモーターおよびMLP(主要後期プロモーター(Major late promoter))、並びにMoMuLVウィルス(Moloneyマウスリンパ白血病ウィルス)のLTRなどが、そのようなプロモーターとして例示される。
【0036】
用語「プロモーター」はまた、調節可能なタイプのプロモーター、例えば、リンパ球細胞に特異的な免疫グロブリン遺伝子のプロモーターのような、組織特異的プロモーターも含む。さらに、発現カセットは、以下を含み得る。
(1)UAS(上流活性化配列)、例えば酵母のGAL4(ガラクトース)遺伝子のUAS、
(2)プロモーターの上流またはDNAフラグメントの下流に設置され得、発現レベルを増加させることが可能なエンハンサーで、例えばヒトCD2遺伝子のエンハンサー。さらに、後者は、T型リンパ球細胞中のDNAフラグメントの発現を選択的に標的とすることが可能なエレメントを含む、
(3)高等な真核生物中での遺伝子発現を改善するものとして知られる介在配列、例えばSV40ウィルスのイントロン、
(4)タンパク質に翻訳されることを意図して、mRNAから介在配列を除去可能にする、例えばSV40ウィルスのもののような、スプライシングシグナル、(5)転写の終結に関連するエレメント、例えばSV40ウィルスのポリアデニル化シグナル。
【0037】
一般に、発現カセットは、宿主細胞の中で、好ましくはリンパ球の中で、TATタンパク質変異体の発現を行わせることができる。
【0038】
発現カセットはまた、TATタンパク質変異体の、それが容易に回収され得る培養培地においての産生を行わせることもできる。この場合、DNAフラグメントは、宿主細胞から該変異体の分泌を行わせるシグナルペプチドを成熟配列の上流に含む、TATタンパク質変異体の前駆体をコードしている。そのようなシグナルペプチドは、当業者に周知であり、例えば酵母のMatアルファ因子のシグナル配列である。
【0039】
発現カセットは、発現ベクターに挿入され、プロモーターおよび適切なエレメントが機能する宿主細胞を形質転換するのに使用される。そのようなベクターは、プラスミドまたはウィルスベクターの形態で有り得、例えばMoMuLV由来のレトロウィルスベクターまたはアデノウィルス5型由来のアデノウィルスベクターである。
【0040】
本発明は、本発明に従う発現カセットを含む細胞まで範囲が広がり、真核または原核起源の細胞に対しても可能である。宿主細胞は、細菌、真菌、例えば酵母、または哺乳動物細胞であり得る。好ましくは、宿主細胞は、造血系のヒト細胞である。
【0041】
本発明はまた、本発明に従うTATタンパク質変異体の調製のための方法にも関する。それは、以下の通りである。
(1)該変異体をコードするDNAフラグメントを含む、本発明に従う、真核または原核細胞が、適切な培養培地で培養され、および
(2)変異体は、培養培地または該細胞から回収される。
【0042】
本発明はまた、該方法を使用して得られるTATタンパク質変異体をも包含する。
【0043】
本発明はまた、HIVウィルスの複製を阻害するために、本発明に従うTATタンパク質変異体、発現カセット、または該変異体を産生する細胞を治療的に使用することにも範囲が広がる。好ましくは、本発明は、哺乳動物、特にヒトにおける、AIDSの治療または予防を意図した医薬生成物の生産のための、TATタンパク質変異体、発現カセット、該変異体を産生する細胞の使用に関する。
【0044】
有利には、本発明に従う発現カセットまたは細胞は、抗AIDS遺伝子治療の目的のために使用され得る。発現カセットは、レトロウィルスのタイプのベクターに挿入され、該ベクターは、個体(好ましくは、HIVに感染している個体)の骨髄から採集される造血系の幹細胞に導入される。
【0045】
このようにしてトランスフェクトされた幹細胞は、ドナーに再注入される。それらは、分裂し、なかんずくリンパ球に分化することができる。レトロウィルスベクターを含むリンパ球は、TATタンパク質のトランスドミナント(transdominant)変異体をコードする遺伝子を、長期間にわたって発現するレトロウィルスベクターを含み、該細胞をHIV感染に耐性とさせる。
【0046】
本発明はまた、本発明に従う変異体、発現カセットまたはそのような変異体を産生する細胞を治療または予防剤として含む薬学的組成物にも関する。本発明に従う薬学的組成物は、通常の使用における技術に従って調製され得る。例えば、受容可能な担体、希釈剤またはアジュバントが、治療的に有効な量の、治療または予防剤と組み合わせられる。
【0047】
最後に、本発明は、本発明に従うTATタンパク質変異体、発現カセットまたはそのような変異体を産生する細胞の、治療的に有効な量が患者に投与される、治療方法に関する。
【0048】
【実施例】
実施例1:発現プラスミドpTC2332の構築、変異TAT(Phe 38 →Asp)の発現及びトランスドミナント表現型の確認。
【0049】
HIV−Lai単離体ゲノムのtat遺伝子の2エクソンに対応するコピーDNAを包含するDNAフラグメント(ヴアイン−ホブソン〔Wain−Hobson〕ら,セル〔Cell〕,1985,40,9−17;ゾドロスキ〔Sodroski〕ら,サイエンス〔Science〕,1985,229,74−77)を修飾してイニシエーターATGの5´にBamHIを形成した。さらに、BamHI部位は、天然にtat遺伝子の停止コドンの下流53bpに存在する。突然変異していないtat遺伝子を包含する300bpのBamHIフラグメントを、ジーン クリーン キット〔Gene Clean kit〕(バイオ〔Bio〕 101,Inc,P.O.Box 2284,ラ ジョラ〔LaJolla〕)を用いて精製し、ベクターM13TG130に導入して(キニー〔Kieny〕ら,ジーン〔Gene〕,1983,26,91−99)ベクターM13TG2306を得た。該ベクター上で突然変異誘発を行う。
【0050】
M13TG2306における残基38をコードするコドンの突然変異には、アメルシャム キット〔Amersham kit〕(インビトロでの突然変異誘発システム バージョン〔version〕2.1 RPN 1523に関与するオリゴヌクレオチド)を使用し、該オリゴヌクレオチドは配列番号1に記載する。
【0051】
オリゴヌクレオチドを設計して、38位のフェニルアラニン(Phe)残基をコードするコドンをアスパラギン酸(Asp)で置換し、また、コードするアミノ酸を修飾することなくTAT配列の42位の残基をコードするコドンのレベルでHindIIIの制限部位を形成した。制限部位の存在により、マニアティス〔Maniatis〕ら(モレキュラー クローニング〔Molecularcloning〕:ア ラボラトリー マニュアル〔a laboratorymanual〕,1989,コールドスプリグハーバーラボラトリー〔Cold Spring Harbor Laboratory〕)に記載のミニプレパレイション法〔minipreparation technique〕により、バクテリオファージDNAの解析において、突然変異ベクターを、親のもの〔parentals〕から容易に同定できる。
【0052】
突然変異誘発させた後、突然変異したtat遺伝子を包含するBamHIフラグメントを、図3に記載の真核発現ベクターpSG5(グリーン〔Green〕ら,ヌクレイック アシッド レス〔Nucleic Acids Res〕,1988,16,369)に挿入する。結果として得られるプラスミドpTG2332は変異体TAT(Phe38→Asp)を発現できる。
【0053】
従来技術のトランスドミナントTAT変異型、即ち、変異体TAT(Lys41→Ala)及びΔTAT(Gln54→停止)のそれぞれの合成を、配列番号2に記載のオリゴヌクレオチド(41位のリシン残基をコードするコドンをアラニンに変更することを可能にする)及び配列番号3に記載の(54位のグルタミン残基をコードするコドンの位置に停止コドンを形成することを可能にする)オリゴヌクレオチドを使用し、ベクターM13TG2306の部位特異的突然変異により行った。
【0054】
突然変異誘発させた後、突然変異したtat遺伝子を真核発現ベクターpSG5に挿入し、それぞれ、突然変異TAT(Lys41→Ala)の合成を可能にするpTG2351、及び、ΔTATの合成を可能にするpTG2352を得る。これら従来技術の突然変異体〔mutants〕は、トランスドミナンスに対するポジティブ・コントロールとして有用である。それらのトランス活性化作用及び、天然のTATタンパク質を阻害する能力は、以下に記載される本発明のTAT変異型に適用するのと完全に同一の条件で評価される。
【0055】
変異体TAT(Phe38→Asp)のトランス活性化作用は、リポーターベクターLTR−CAT(エメルマン〔Emerman〕ら,EMBO J.,1987,6,37−55)を用いた発現ベクターpTG2332のHeLa細胞への一時的なトランスフェクションにより評価する。細胞のトランスフェクションは、リン酸カルシウム法により行う(マニアティス〔Maniatis〕ら,モレキュラー クローニング〔Molecular cloning〕:ア ラボラトリー マニュアル〔a laboratory manual〕,1989,コールドスプリングハーバーラボラトリー〔Cold Spring HarborLaboratory〕)。核酸を細胞に導入できる他の手段も利用できる。例えば、デキストラン硫酸法、電気溶出、浸透圧ショック、又は、選択細胞〔selected cell〕へのマイクロインジェクションに基づく方法も利用できる。
【0056】
ヒトHeLa細胞の培養は、37℃で、5%COの存在下、MEM培地(イーグルの〔Eagle´s〕最小必須培地)中で、10%のウシ胎児血清、1%の非必須アミノ酸、1%のグルタミン及び1%のゲンタマイシンを添加して行う。
【0057】
プラスミドDNAは、塩化セシウムグラジエントで精製する。pTG 2332 1μg及びプラスミドLTR−CAT 0.5μgを培地中のHeLa細胞にトランスフェクトし、ディッシュ当り4×10個の細胞の割合でプレートに配置する。pHMG−Tat(図4)1μg及びLTR−CAT 0.5μgのトランスフェクションにより、トランス活性化に対するポジティブ・コントロールを構築する。ベクターpHMG−tatは、TATタンパク質の86のアミノ酸をコードするtat遺伝子のコピーDNAを包含するBamHIフラグメントのベクターpHMGのBamHI部位へのクローニングに由来する(メエタリ〔Mehtali〕ら,ジーン〔Gene〕,1990,91,179−184)。トランスフェクトされるべきプラスミドDNAをTE(10mMトリス−HCl、pH 7.5;1mM EDTA)420μl中に回収し、2M CaCl 60μlと混合する。該混合物をチューブを静かに振りながら、2×HBS(280mM NaCl;50mM HEPES;1.5mM NaHPO−2HOを、NaOHでpH7.12に調節したもの)480μlに加える。15分後、沈殿物を滴状に細胞の上に注ぐ。培地をトランスフェクションの24時間後に取替えて、過剰の沈殿物を除去する。細胞抽出液の分析を形質転換の48時間後に行ってCAT遺伝子の発現を評価する。
【0058】
HeLa細胞をCAT緩衝液(150mMトリス−HCl pH8;60mM KCl;15mM NaCl;2mM EDTA、0.15mMスペルミン;1mMジチオスレイトール(DTT);0.4mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF))にすり落として回収する。3凍結融解サイクル〔3freeze−thaw cycles〕を液化窒素中で行った後、37℃で4分間インキュベーションする。このようにして得られたライゼートを65℃で10分間インキュベートし、遠心分離を10,000rpmで10分間行って細胞破壊片〔cellular debris〕を分離する。上澄みを回収し、そのタンパク質濃度をバイオラド比色試験〔Biorad colorimetric test〕により測定する。
【0059】
必要に応じて水で希釈して800μlに調節した細胞抽出液15μlと水中のバイオラド試薬〔Biorad reagent〕200μlとを室温で10〜60分間インキュベートする。タンパク質濃度は、595nmにおける光学密度をウシ血清アルブミン検定系列〔calibration series〕と対比して測定して決定する。
【0060】
CAT遺伝子の発現は、タンパク質10〜20μgに対応する抽出液の一部で測定する。細胞抽出液の適当量を事前に300μlに0.25Mトリス−HCl緩衝液(pH7.8)で調節し、5mMアセチル補酵素A 32μl及び14C−クロラムフェニコール20μl(0.5μCi)と一緒に37℃で1時間30分間インキュベートする。酢酸エチルで抽出して10,000rpmで5分間遠心分離した後、上相を凍結乾燥する。後者を酢酸エチル15μlに取り、60F234シリカゲルプレート(メルク)上に保持させて薄層クロマトグラフィーにより分析する(クロロホルム/メタノール 19/1緩衝液中で1時間30分間泳動する)。クロマトグラムをオートラジオグラフィーで視覚化し、アセチル化クロラムフェニコールに対応するバンドを切り出す。放射能レベルをシンチレーション計数により評価する。突然変異体のトランス活性化のパーセントを、ポジティブ・コントロール(pHMG−Tat + LTR−CAT)(これは100%のトランス活性化作用を示す)により測定したレベルと対比して計算する。
【0061】
変異体TAT(Phe38→Asp)のトランスドミナント活性は、天然のTATタンパク質のトランス活性化機能を阻害する能力を測定することにより評価する。トランスドミナント活性は、レポーターベクターLTR−CAT及び天然のTATタンパク質発現ベクターpHMG−Tatを用いた、HeLa細胞への発現ベクターpTG2332の一時的なトランスフェクションにより決定する。すなわち、pTG2332 10μg、pHMG−Tat 1μg及びLTR−CAT 0.5μgを上記の手順に従って一緒にトランスフェクトする〔cotransfected〕。
【0062】
トランスフェクションの48時間後、細胞抽出液を調製し、それらのタンパク質濃度を測定する。タンパク質10〜20μgに対応する抽出液の一部をCATアッセイにより検定する。適用する技術的条件は、既に詳細に記載してある。天然のTATタンパク質の変異体TAT(Phe38→Asp)による阻害パーセントは、0%を示すpHMG−TatとLTR−CATとのコトランスフェクション〔co−transfection〕に由来する活性化のためのポジティブ・コントロールと対比して計算する。得られた結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
Figure 2004065256
【0064】
変異体TAT(Phe38→Asp)は、そのトランス活性化作用が非常に小さいために(CAT遺伝子の発現は、天然のTATタンパク質により測定されたものと対比して1.4%と評価された)、また、それが天然のTATタンパク質の活性を強く阻害するために(pTG2332の存在下において98%阻害)、効果的なトランスドミナント突然変異体である。
【0065】
グリーン〔Green〕らにより報告されたTAT変異体(Lys41→Ala)は、報告者によりトランスドミナント表現型を有すると考えられているが、完全に反対の結果が、これらの実験で得られた。確かに、それは、特に高いトランス活性化作用(172%)を示し、その結果、天然のTATタンパク質と共同作用するように見える。加えて、このベクターは、天然のTAT機能に対し優性の効果を与えない(0%トランスドミナント活性)。
【0066】
従来技術のpRG2352によって合成される変異体ΔTATは、事実上、トランスドミナンスに関して、コントロールを形成し、これらの実験の正当性を裏付ける。それは、天然のTATタンパク質のトランス活性化作用を92%阻害する。それにもかかわらず、この変異型は、HIV LTR(28%)の制御下にあるCAT遺伝子の発現を誘発する能力を有する。そのトランス活性化は、しかしながら、ポジティブ・コントロールのpHMG−Tatで測定したものより少ない。
【0067】
実施例2:発現ベクターpTG2333の構築、TAT変異体(Thr 40 →Ala)の発現及びトランスドミナント表現型の確認
ベクターM13TG2306を部位特異的に突然変異誘発させて、HIV TATタンパク質の40位のスレオニン(Thr)残基をコードするコドンを、アラニン(Ala)残基をコードするコドンで置換し、更に、サイレント突然変異を導入し、突然変異ベクターの速やかな決定を可能にするHindIII制限部位を、残基42をコードするコドンのレベルに形成する。使用するオリゴヌクレオチドは配列番号4に記載されている。突然変異tat遺伝子をベクターpSG5中に転移し、pTG2333を生じさせる。これにより変異体TAT(Thr40→Ala)を生産することができる。
【0068】
ベクターpTG2333を、ベクター LTR−CATとともにHeLa細胞に一時的にコトランスフェクトし、変異体TAT(Thr40→Ala)のトランス活性化作用を上記の手順に従って測定する。同時に、そのトランスドミナント活性を、pTG2333、pHMG−Tat及びLTR−CATの10:1:0.5の濃度比でのコトランスフェクションにより測定する。
【0069】
結果を表1に示す。変異体TAT(THR40→Ala)が、本発明が規定するトランスドミナント表現型を示すことが観察される。それは、天然のTATタンパク質の機能を83%阻害し、15.6%の小さいトランス活性化作用を保持する。
【0070】
実施例3:発現ベクターpTG2340の構築、変異体TAT(Lys 41 →Glu)の発現及びトランスドミナント表現型の確認
ベクターM13TG2306を部位特異的に突然変異誘発させて、HIV TATタンパク質の41位のリシン(Lys)残基をコードするコドンを、グルタミン酸(Glu)残基をコードするコドンで置換し、更に、サイレント突然変異を導入し、突然変異ベクターの速やかな決定を可能にするHindIII制限部位を、残基42をコードするコドンのレベルに形成する。使用するオリゴヌクレオチドは配列番号5に記載されている。突然変異tat遺伝子をベクターpSG5中に転移し、pTG2340を生じさせる。これにより変異体TAT(Lys41→Glu)を生産することができる。
【0071】
ベクターpTG2340を、ベクターLTR−CATとともにHeLa細胞に一時的にコトランスフェクトし、変異体TAT(Lys41→Glu)のトランス活性化作用を上記の手順に従って測定する。同時に、そのトランスドミナント活性を、pTG2340、pHMG−Tat及びLTR−CATの10:1:0.5の濃度比でのコトランスフェクションにより測定する。
【0072】
結果を表1に示す。変異体TAT(Lys41→Glu)が、本発明が規定するトランスドミナント表現型を示すことが判る。該変異体のトランス活性化作用は低く(天然のTATタンパク質と比較して3%の活性)、また、天然のTATタンパク質のトランス活性化機能を効果的に阻害する(97%の阻害)。
【0073】
pTG2340により合成される変異体TAT(Lys41→Glu)と、従来技術の天然TATタンパク質と同様に作用する変異体TAT(Lys41→Ala)とは、同じ残基において突然変異されると認められる。行われた修飾によれば、得られる変異体の表現型は全体として異なっていることもできる。こうして、Lys41をGluにより置換することにより、ここに開示されているように、生成する変異型がトランスドミナント表現型を与えられる。
【0074】
実施例4:発現ベクターpTG2358の構築、変異体TAT(Ile 45 →Ser)の発現及びトランスドミナント表現型の確認
ベクターM13TG2306を部位特異的に突然変異誘発させて、HIV TATタンパク質の45位のイソロイシン(Ile)残基をコードするコドンを、セリン(Ser)残基をコードするコドンで置換し、更に、突然変異ベクターの速やかな決定を可能にするBamHI制限部位を、残基45をコードするコドンのレベルに形成する。使用するオリゴヌクレオチドは配列番号6に記載されている。突然変異tat遺伝子をベクターpSG5中に転移し、pTG2358を生じさせる。これにより変異体TAT(Ile45→Ser)を生産することができる。
【0075】
ベクターpTG2358を、ベクターLTR−CATとともにHeLa細胞に一時的にコトランスフェクトし、変異体TAT(Ile44→Ser)のトランス活性化作用を上記の手順に従って測定する。同時に、そのトランスドミナント活性を、pTG2358、pHMG−Tat及びLTR−CATの10:1:0.5の濃度比でのコトランスフェクションにより測定する。
【0076】
結果を表1に示す。変異体TAT(Ile45→Ser)が、本発明が規定するトランスドミナント表現型を示すことが判る。それは、天然のTAT蛋白質の機能を62.5%部分阻害し、47%の温和なトランス活性化作用を保持する。
【0077】
実施例5:発現ベクターpTG2348の構築、変異体TAT(Tyr 47 →Arg)の発現及びトランスドミナント表現型の確認
ベクターM13TG2306を部位特異的に突然変異誘発させて、HIV TATタンパク質の47位のチロシン(Tyr)残基をコードするコドンを、アルギニン(Arg)残基をコードするコドンで置換し、更に、突然変異ベクターの速やかな決定を可能にするXbaI制限部位を、残基47をコードするコドンのレベルに形成する。使用するオリゴヌクレオチドは配列番号7に記載されている。突然変異tat遺伝子をベクターpSG5中に転移し、pTG2348を生じさせる。これにより変異体TAT(Tyr47→Arg)を生産することができる。
【0078】
ベクターpTG2348を、ベクターLTR−CATとともにHeLa細胞に一時的にコトランスフェクトし、変異体TAT(Tyr47→Arg)のトランス活性化作用を上記の手順に従って測定する。同時に、そのトランスドミナント活性を、pTG2348、pHMG−Tat及びLTR−CATの10:1:0.5の濃度比でのコトランスフェクションにより測定する。
【0079】
結果を表1に示す。変異体TAT(Tyr45→Arg)が、本発明が規定する温和なトランスドミナント表現型を示すことが判る。それは、天然のTAT蛋白質の機能を78%阻害し、56%のトランス活性化作用を保持する。
【0080】
実施例6:トランスドミナントTAT変異体を発現する安定な細胞株の確立及びHIVウイルスによる感染抵抗性の評価
トランスドミナントTAT変異体(Phe38→Asp)を生産する安定な細胞株が、インビボでの可能性のある用途、例えば遺伝子治療手順のため変異体の効率を確認するために確立された。細胞のHIV感染に対する抵抗性を評価するために、それらがウイルスにより感染されることが必要であり、すなわち、該変異体が細胞表面にヒトCDレセプターを発現することが必要である。
【0081】
2種のタイプの細胞系が確立されている。
− ヒトT細胞由来でCDレセプターを有するCEM−A3細胞(ATCCCCL119)は、それゆえ当然にHIV感染性である。
− HIV感染に対する感受性を与えるために、ヒトCDレセプター pTG620のために普遍性の発現ベクターでコトランスフェクトされたHeLa細胞(ATCC CCL2)。ベクターpTG620は、ヒトCDレセプターのコピーDNAを含む大腸菌DNAポリメラーゼ・クレノウ・フラグメントで処理されたEcoRIフラグメントのベクターpHMGのEcoRV部位への導入により得られる(マドンら、セル、1986、47、333−348)。
【0082】
トランスドミナント変異体TAT(Phe38→Asp)をコードする遺伝子を含有するBamHIフラグメントが、レトロウイルスベクターpLXSP(図5)のBamHI部位に挿入され、pTG2350を得る。ベクターpLXSPは、pLXSNに由来し(ミラー及びロスマン、バイオテクニークス、7、1989、980−988)、ピューロマイシン耐性を与える遺伝子によりネオマイシン遺伝子を置換し、並びにMPSV由来のそれによりMSV由来の3´LTRを置換することにより得られる。
【0083】
pTG2350のプラスミドDNAは、エレクトロポレーションによりCEM−A3細胞に導入される。塩化セシウム・グラジエントで精製されたDNA20μgを、20μlのPBS緩衝液(1mMKHPO;2mM KCl;136mM NaCl;3mM NaHPO)に加えた。DNA調製物をエレクトロポレーション・タンク(バイオラド)中、180μlのPBSに再懸濁させた。該混合物は、室温で10分間プレインキュベートする。エレクトロポレーション後(Gene Pulser Biorad,電圧210ボルト、静電容量960μF)、細胞は室温に10分間保たれ、5%のCOの存在下にRPMI(Gibco−BRL)6ml中、37℃でインキュベートする。ピューロマイシン耐性CEM−A3クローンが、限界希釈(ピューロマイシン0.5μg/ml)により単離される。
【0084】
プラスミドDNA pTG2350は、上記のリン酸カルシウムトランスフェクション技術によりpTG620とともにHeLa細胞にコトランスフェクトされる。ピューロマイシン耐性のHeLa細胞クローンの連続継代培養(successive subculture)(ピューロマイシン 2μg/ml)により単離される。細胞表面のヒトCDレセプターの発現を、該レセプター対するフィコエリスリン(phycoerythrin)で標識されたLeu3A抗体(ベクトン ディキンソン)を用い、フルオロサイトメトリー(FACS:蛍光活性化細胞選別機、スキャン ベクトン ディキンソン(Fluorescence Activated Cell sorter,Scan Becton Dickinson))により分析する。
【0085】
CEM−A3細胞系におけるTAT蛋白(proten)の発現は、上記技術によるLTR−CATおよびpHMG−Tatベクターの一時的なトランスフェクションを行うことにより検出される。
【0086】
CEM−A3細胞系に由来し、ピューロマイシンに対し耐性で、トランスドミナントTAT変異体を発現し、天然のTAT蛋白の阻害の種々の程度が観察される3種のクローンが、HIVウイルスで感染される。ウイルスの増殖は、培養上清の逆転写酵素活性を測定することにより評価できる。ウイルス増殖の2日のシフトが、トランスドミナントを発現しないCEM−A3細胞で得られた結果と比較して、トランスドミナント変異体を発現するCEM−A3細胞系のクローンの1つで観察された。さらに、逆転写酵素活性は、該酵素で90%減少した。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、HIVウィルスのゲノムの構成図であり、タンパク質をコードする遺伝子は使用されるリーディングフレームに従って表示される;LTR:黒枠、構造蛋白をコードする遺伝子:灰色枠;調節タンパク質をコードする遺伝子:白枠が示されている。
【図2】図2は、HIVウィルスの天然TATタンパク質を構成する種々のドメインの構成図であり、各ドメインを構成するアミノ酸は、各ドメインの上に示されている。
【図3】図3は、真核発現ベクターpSG5の構成図であり、順に、SV40のプロモーター(SV40 pro;黒枠)、ウサギβ−グロビン遺伝子の非コーディング・エクソン1の3´フラグメント(白枠)、ウサギβ−グロビン遺伝子のイントロン(連続線)、ウサギβ−グロブリン遺伝子のエクソン2の非コーディングの開始部(白枠)、T7バクテリオファージのプロモーター(T7 pro;黒枠)、所望の遺伝子のクローニングを可能にするユニークなEcoRI、BamHIおよびBglII部位、およびSV40ウィルスのポリアデニル化シグナル(pA SV40;灰色枠)を含む。
【図4】図4は、天然のTAT蛋白質発現ベクターであるpHMG−Tatの構成図であり、順に、HMG遺伝子のプロモーター(HMG pro)、HMG遺伝子の非コーディング・エクソンI(斜線枠)、イントロンIおよびHMG遺伝子のスプライシングのためのアクセプター部位、TATタンパク質の86アミノ酸をコードするコピーDNA(黒枠)、およびSV40ウィルスのポリアデニル化シグナル(pA;白枠)を含む。
【図5】図5は、レトロウィルスベクターpLXSPの構成図であり、順に、ウィルスプロモーター領域を含むMSVウィルス(マウスサルコーマウィルス)の5´LTR、カプセル化領域(psi)、ウィルスgag遺伝子(gag°)の5´部分、異種遺伝子(遺伝子 x)の挿入を行わせる多重クローニング部位、ピューロマイシン耐性遺伝子(PAC)の発現を指令するSV40ウィルスプロモーター、およびポリアデニル化シグナルを含むMPSVのウィルス(骨髄増殖性サルコーマウィルス)の3´LTRを含む。
【配列表】
Figure 2004065256
Figure 2004065256
Figure 2004065256

Claims (8)

  1. トランス活性化作用が天然型HIV−1 TAT蛋白の50%以下であり、変異体TAT/天然型TATが10/1の濃度比に基づいて、天然型TAT機能阻害活性が、50%以上であるHIV−1 TAT蛋白のトランスドミナント変異体であって、以下の変異体:
    (i)38位の野生型アミノ酸を、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群から選択される酸性の側鎖を有するアミノ酸へ変化させる、38位での単一置換変異を含む変異体;
    (ii)40位の野生型アミノ酸を、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニンおよびトリプトファンからなる群から選択される非極性の側鎖を有するアミノ酸へ変化させる、40位での単一置換変異を含む変異体;
    (iii)41位の野生型アミノ酸を、グルタミン酸およびアスパラギン酸からなる群から選択される酸性の側鎖を有するアミノ酸へ変化させる、41位での単一置換変異を含む変異体;および
    (iv)45位の野生型アミノ酸を、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニンおよびチロシンからなる群から選択される非荷電極性側鎖を有するアミノ酸へ変化させる、45位での単一置換変異を含む変異体;
    からなる群から選択される、変異体。
    [但し、以下の変異体:
    (1)38位にアスパラギン酸を含む変異体;
    (2)40位にアラニンを含む変異体;
    (3)41位にグルタミン酸を含む変異体;および
    (4)45位にセリンを含む変異体;
    を除く。]
  2. 請求項1記載のTAT蛋白質変異体をコードするDNAフラグメント。
  3. その発現を許容する適切なエレメントの制御下に置かれる請求項2記載のDNAフラグメントを含む発現カセット。
  4. 請求項3記載の発現カセットを含む原核または真核細胞。
  5. 以下の工程:
    − 請求項4記載の原核または真核細胞を適切な培養培地で培養すること、および
    − 生産された変異体を培養培地または前記細胞から採集することを含む請求項1記載の変異体の製造方法。
  6. 請求項5記載の方法を用いて得たTAT蛋白質変異体。
  7. HIVウイルスの複製を阻害するための医薬生成物を製造するための、請求項1記載の変異体、請求項3記載の発現カセットまたは請求項4記載の細胞の使用。
  8. 治療または予防剤として、請求項1記載の変異体、請求項3記載の発現カセットまたは請求項4記載の細胞を含むHIV感染の治療または予防用の薬学的組成物。
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