JP2004065237A - 遺伝子導入用担体、前記担体を用いた遺伝子導入剤、前記導入剤を用いた遺伝子導入方法、およびそれによって遺伝子を導入した細胞 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた安全性で、遺伝子を細胞に導入できる遺伝子導入方法を提供する。
【解決手段】粘土鉱物からなる遺伝子導入用担体に目的遺伝子を担持させ、これを細胞に添加することによって前記細胞内に前記目的遺伝子を導入することができる。前記粘土鉱物は、層状粘土鉱物であることが好ましく、モンモリロナイト、バーミキュライト、イライト等が使用できる。
【選択図】 図1
【解決手段】粘土鉱物からなる遺伝子導入用担体に目的遺伝子を担持させ、これを細胞に添加することによって前記細胞内に前記目的遺伝子を導入することができる。前記粘土鉱物は、層状粘土鉱物であることが好ましく、モンモリロナイト、バーミキュライト、イライト等が使用できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、細胞内に遺伝子を導入するための遺伝子導入用担体、前記担体を用いた遺伝子導入剤、前記導入剤を用いた遺伝子導入方法、および前記方法によって遺伝子を導入した遺伝子導入細胞に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガンや遺伝子疾患等、種々の疾患の治療法として、例えば、欠損遺伝子や変異した遺伝子の正常型遺伝子、あるいは発現遺伝子のアンチセンス等を細胞内に導入することによって遺伝子レベルで治療を行う、いわゆる遺伝子治療が実用化されるようになってきている。
【0003】
この遺伝子治療を達成するためには、安全性が高く、しかも優れた効率で細胞内に遺伝子を導入できる方法の開発・確立が必要不可欠である。
【0004】
現在、臨床分野で実施が試みられている遺伝子治療法は、その多くが遺伝子導入用の担体としてウイルスベクターを使用しているが、前記ウイルスベクターは安全性の面で多くの問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、安全に優れる、新たな遺伝子導入用担体、遺伝子導入剤、遺伝子導入方法、およびそれによって遺伝子を導入した細胞の提供である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の遺伝子導入用担体は、遺伝子を担持し、かつ、細胞内に前記遺伝子を導入するための担体であって、粘土鉱物を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明者らは、遺伝子工学等の研究分野や臨床医療の分野において、細胞に対する安全性が高い新規の遺伝子導入用担体を見出すべく鋭意研究を行った結果、前記粘土鉱物を遺伝子導入用担体として用いれば、容易に細胞内に遺伝子を導入できることを見出した。前記「粘土鉱物」とは、通常、粘土に含まれるケイ酸塩鉱物を言い、従来から、例えば、化粧品の成分として、また医薬分野において発布剤の基材や制酸剤として、また光学材料や触媒としても広く利用されている。しかしながら、本発明のように、粘土鉱物を、細胞に遺伝子を導入するための担体として使用できることは、本発明者らが初めて見出したことである。本発明の遺伝子導入用担体によれば、例えば、前記遺伝子導入用担体と導入させる遺伝子とを溶液内で混合させるだけで、前記遺伝子が粘土鉱物に担持され、さらに、この遺伝子を担持した遺伝子導入用担体を目的細胞に接触させるだけで、細胞内に遺伝子を導入できる。このため、遺伝子導入の操作も、極めて簡便になる。また、粘土鉱物は、前述のように従来から広く化粧品や医薬品に使用されているという事実からも、生体に対する、特にヒトに対する安全性は十分に立証されているところである。したがって、このような安全に極めて優れる粘土鉱物を含む遺伝子導入用担体は、前記臨床医療の分野等において、広く適用することができ、かつ有用である。
【0008】
なお、本発明の遺伝子導入担体が細胞に遺伝子を導入するメカニズムは明らかではないが、おそらく前記遺伝子導入用担体が、遺伝子を担持した状態で細胞内に取り込まれ、細胞内で遺伝子を離すと考えられる。
【0009】
また、本発明の遺伝子導入剤は、前記本発明の遺伝子導入用担体とこれに担持された遺伝子とを含む遺伝子導入剤である。前述のように本発明の遺伝子導入用担体は極めて安全性に優れる担体であるため、前記担体とこれに担持された遺伝子含む遺伝子導入剤を用いれば、安全性に優れた遺伝子導入が可能になる。また、前述と同様に、例えば、粘土鉱物と遺伝子とを混合すること等によって、前記遺伝子が粘土鉱物に担持されるため、本発明の遺伝子導入剤は、非常に調製が容易であり、遺伝子導入の操作も簡便となる。
【0010】
また、本発明の遺伝子導入方法は、前記本発明の遺伝子導入剤を用いて、細胞に遺伝子を導入する方法である。この遺伝子導入方法は、メカニズムは不明であるが、例えば、遺伝子が粘土鉱物に担持されている前記遺伝子導入剤を、目的細胞に接触させるだけで、容易に遺伝子が前記細胞内に導入されるため、操作も簡便であり、かつ高い安全性での遺伝子導入が実現できる。このような安全性に優れる簡便な方法は、前記臨床医療の分野において非常に有用である。
【0011】
そして、本発明の遺伝子導入細胞は、前記本発明の導入方法により遺伝子を導入した細胞である。前記遺伝子導入細胞は、細胞に対する安全性が非常に高い前記本発明の導入方法によって作製されるため、例えば、従来のように担体としてウイルスベクター等を使用した場合に見られる弊害等も回避できる。このため、本発明の遺伝子導入細胞を、例えば、患部の組織細胞に接触させる治療方法等にも、高い安全性で適用することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
遺伝子導入用担体
本発明の遺伝子導入用担体において、前記粘土鉱物としては、特に制限されないが、例えば、層状粘土鉱物であることが好ましい。このような層状構造の粘土鉱物は、通常、その層間にイオンや水が挟み込まれた構造をとる。このため、前記層状粘土鉱物を遺伝子導入用担体として用いれば、前記層間物質と遺伝子とが置き換わり、層間に遺伝子がインターカレートするため、遺伝子を担持することができると推測される。
【0013】
前記層状粘土鉱物の層間物質は、例えば、交換性陽イオンであることが好ましい。層間物質が交換性陽イオンの場合、通常、この陽イオンは、層の内側面の水酸基(−OH)と結合している。このため、例えば、前記層状粘土鉱物と遺伝子とを溶液中で混合させれば、前記交換性陽イオンと遺伝子とが置き換わって、遺伝子のリン酸基と前記内側面の水酸基とが水素結合し、遺伝子が担持されると考えられるからである。なお、前記交換性陽イオンを層間物質として有する粘土鉱物を、以下、「交換性陽イオン型」の粘土鉱物ともいう。
【0014】
このように水素結合によって遺伝子を担持する粘土鉱物を含む遺伝子導入用担体であれば、例えば、酸性条件下で遺伝子を放出することなく、中性またはアルカリ性条件下で遺伝子を放出することもできるため、条件に応じて選択的に遺伝子を放出させる際に有用である。
【0015】
前記交換性陽イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、第4級アンモニウムイオン等があげられる。これらの中でも、天然型の粘土鉱物の多くが有していることからナトリウムイオンが好ましく、また、大きな立体構造である第4級アンモニウムイオンも好ましい。前記第4級アンモニウムイオンは、例えば、物質の種類が豊富であるため層間距離のコントロールが容易であり、また、電荷調節も可能であるため、遺伝子担持の容易性、遺伝子との結合力、遺伝子の放出の容易性を制御することが可能だからである。前記第4級アンモニウムイオンとしては、例えば、塩化テトラメチルアンモニウムイオン、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムイオン等がある。
【0016】
また、これら以外にも、例えば、α−アミノ酸やβ−アミノ酸等の各種アミノ酸、ドーパミン等のアミン化合物、アクリルアミド等のアミド化合物等の陽イオンでもよいし、アルキルアンモニウム、アルキルトリメチルアンモニウム、テトラメチルホスホニウム、アルキルピリジニウム等のカチオン性界面活性剤や、ルテニウムテトラアンモニウム、トリスフェナンスロリンロジウム等のカチオン性金属錯体の陽イオンでもよい。前記カチオン性金属錯体としては、例えば、ルテニウム等のアンモニア錯体等が使用できる。また、メチルビオロゲン等でもよい。
【0017】
本発明における前記層状粘土鉱物としては、特に制限されず、例えば、カオリナイト、バイロフィライト−タルク、スメクタイト、バーミュキュライト、雲母、脆雲母、緑泥石およびセピオライト−パリゴスカイトの合計8群の結晶質型粘土鉱物が使用できる。結晶質型の中でも、カオリナイト群はケイ酸塩層の型が「1:1型」であり、その他7つのグループは、「2:1型」である。層電荷のない前記カオリナイト群に属する粘土鉱物としては、例えば、カオリナイト、デイッカイト、ハロイサイト、ナクライト、クリソタイル、リザルダイト、同じく層電荷のないバイロフィライト−タルク群に属する粘土鉱物としては、例えば、バイロフィライト、タルクがあげられる。また、層電荷を有するスメクタイト群としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロライト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイトが、バーミュキュライト群としては、例えば、di−バーミュキュライト、tri−バーミュキュライトが、雲母群としては、例えば、白雲母、パラゴライト、イライト、フロゴパイト、黒雲母、レピドライトが、脆雲母群としては、例えば、マーガライト、クリントナイトが、緑泥石群としては、ドンパサイト、スドウ石、クッカイト、クリノクロア、シャモサイトが、それぞれあげられる。また、層電荷のないセピオライト−パリゴスカイト群としては、セピヲライト、パリゴルスカイトがあげられる。これらの中でも、層電荷を有する結晶質粘土鉱物が好ましく、より好ましくは、スメクタイト群、バーミキュライト群、雲母群である。具体的には、モンモリロナイト、バーミキュライト、イライトが好ましく、特にモンモリロナイトが好ましい。
【0018】
また、前記層状粘土鉱物の他にも、例えば、イモゴライト、アロフェン、ヒシンゲライト等の非結晶質型粘土鉱物も使用できる。
【0019】
前記粘土鉱物は、天然の粘土から採取してもよいが、種々の市販品が使用できる。モンモリロナイトとしては、例えば、商品名クニピアF(クニミネ工業社製)、サポナイトとしては、例えば、商品名スメクトンSA(クニミネ工業社製)等がある。また、日本粘土学会からも、各種粘土鉱物を入手することができる。
【0020】
また、粘土鉱物は、特に制限されないが、含有もしくは付着している各種不純物が除去された、精製粘土鉱物であることが好ましい。このように精製されていれば、粘土鉱物への遺伝子のインターカレーションを効率良く行えるからである。前記不純物とは、例えば、土壌中の有機物(各種アミノ酸やリグニン等)や、鉄、カリウム、カルシウム、マグネシウム等がある。
【0021】
具体的には、通常のX線回折または元素分析による純度が、例えば、85%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上である。このX線回折による純度は、一般に行われるように、標準サンプルとの回折パターンを比較した、回折線の強度比から決定することができる。
【0022】
前述のような不純物を除去する方法としては、特に制限されないが、例えば、前記有機物を除去する場合には、以下の方法等が適用できる。
【0023】
この有機物の除去処理は、例えば、粘土鉱物に過酸化水素水を添加して分散させ、この分散液を、加熱処理することによって行うことができる。過酸化水素水の濃度は、例えば、3〜15重量%であり、好ましくは3〜10重量%であり、より好ましくは5〜7重量%である。過酸化水素水の添加割合は、粘土鉱物1gに対して、例えば、10〜30mlであり、好ましくは15〜30mlであり、より好ましくは15〜20mlである。また、加熱処理の条件は、例えば、温度25〜50℃であり、好ましくは25〜40℃であり、より好ましくは30〜40℃である。加温時間は、特に制限されないが、例えば、加温による発泡(酸素)がなくなるまで行うことが好ましく、発泡終了後、残留した過酸化水素を除去するために、さらに加温処理を行うことがより好ましい。なお、これらの条件には限定されない。
【0024】
このような有機物処理によって、通常、純度が85〜100%の粘土鉱物を得ることができる。また、使用する粘土鉱物における有機物の含有量は、例えば、5%以下であることが好ましく、より好ましくは2%であることが好ましく、特に好ましくは1%以下である。
【0025】
前記有機処理後の粘土鉱物を遺伝子導入用担体とする場合は、例えば、ろ過や遠心分離等によって前記粘度鉱物分散液から粘土鉱物を回収し、水、緩衝液、生理食塩水等の溶液で洗浄したものを使用すればよい。なお、このように有機物処理を行った粘土鉱物の層間物質は、原料として用いた処理前の粘土鉱物と同様であり、例えば、ナトリウムイオンの他にも、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の各種交換性陽イオンがあげられる。
【0026】
また、前記粘土鉱物は、例えば、粘土鉱物に付着または含まれる鉄を除去するために、前記有機物の除去処理に代えて、またはそれに加えて、以下に示す脱鉄処理を施すことが好ましい。脱鉄処理された粘土鉱物であれば、例えば、鉄による結晶構造評価が安定するばかりでなく、鉱物の物理化学特性も一定になり、実用面でも安定した品質となるため、さらに粘土鉱物の層間への遺伝子のインターカレーションを容易にすることができるからである。この脱鉄処理は、例えば、以下に示す方法によって行うことができる。
【0027】
前記過酸化水素水で処理した前記粘土鉱物分散液を加熱し、ここにクエン酸ナトリウム水溶液および炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して十分に攪拌する。この混合液に、さらにハイドロサルファイトナトリウム(ハイドロ亜硫酸ナトリウム)水溶液を加えて攪拌し、この混合液を静置する。この脱鉄処理後の粘土鉱物を遺伝子導入用担体とする場合には、前記有機物処理の場合と同様に各種溶媒で洗浄したものを使用すればよい。
【0028】
前記方法において、粘土鉱物1gに対する各物質の添加割合は、例えば、クエン酸ナトリウム50〜70mmol、炭酸水素ナトリウム15〜30mmol、ハイドロサルファイト20〜35mmolの範囲であり、好ましくはクエン酸ナトリウム55〜65mmol、炭酸水素ナトリウム22〜28mmol、ハイドロサルファイト26〜29mmolの範囲である。
【0029】
また、有機物処理後または脱鉄処理後の粘土鉱物は、例えば、粘土鉱物層間への遺伝子のインターカレーション効率をより一層向上するために、さらに、イオン交換反応による各種交換性陽イオン型への誘導処理を施してもよい。処理前から層間にナトリウム等の交換性陽イオンを含む場合であっても、この誘導処理を施すことによって、例えば、層間距離が広がり、さらに、遺伝子との親和性の高い物質を用いてイオン交換することで、遺伝子のインターカレーション効率が向上するからである。具体例として、以下に、交換性ナトリウム型への誘導処理の一例を示す。
【0030】
粘土鉱物を交換性ナトリウム型への誘導処理する場合には、例えば、前記有機物除去処理または脱鉄処理を行った粘土鉱物を、塩化ナトリウム飽和水溶液に添加・分散し、ろ過や遠心分離によって前記粘土鉱物を回収すればよい。前記塩化ナトリウムの添加と粘土鉱物の回収とは、1回でもよいが、十分にナトリウム型への誘導を行うために二回以上行うことが好ましく、より好ましくは3〜5回である。また粘土鉱物に対する塩化ナトリウム飽和水溶液の添加割合は、粘土鉱物1gに対して、例えば、30〜80mLの範囲であり、好ましくは40〜60mL、より好ましくは50〜60mLの範囲である。塩化ナトリウム飽和水溶液に対する粘土鉱物の懸濁は、特に制限されないが、例えば、10秒以上であることが好ましく、より好ましくは30〜60分である。
【0031】
交換性ナトリウム型への誘導に使用する溶媒としては、前記塩化ナトリウム水溶液には限定されず、この他にも、例えば、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム等のナトリウム塩を含む水溶液が使用できる。また、これらの溶液におけるナトリウム塩濃度は、特に制限されないが、前述のように飽和溶液であることが好ましい。
【0032】
また、より一層完全にナトリウム型への誘導を行う場合は、前記塩化ナトリウム飽和溶液による誘導処理に代えて、若しくはこれに加えて、例えば、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、アジ化ナトリウム等のナトリウム塩の水溶液や、前記ナトリウム塩を二種以上含む水溶液等によって誘導処理を行えばよい。
【0033】
一方、交換性アンモニウム型への誘導処理を行う場合には、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩を含む溶液で、前述のナトリウム型への誘導方法と同様に処理を行えばよい。また、第4級アンモニウム型の場合は、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム等の4級アンモニウム塩を含む溶液が使用できる。また、例えば、前述のようなカチオン性界面活性剤を用いたピラー化や、前述のようなアミン化合物、アミド化合物、カチオン性金属錯体等による置換によっても、鉱物機能の修飾が可能である。
【0034】
このように交換性陽イオン型への誘導処理を行った粘土鉱物は、例えば、透析を行った後に遺伝子導入用担体として使用すればよい。
【0035】
また、以上に示した各種粘土鉱物は、例えば、溶液に分散させた状態でそのまま遺伝子導入用担体として使用することもできるが、凍結乾燥等により乾燥させた乾燥物を遺伝子導入用担体としてもよい。前記乾燥物であれば、後述する遺伝子導入剤を調製する際に、分散液を所望の濃度に調製し易いからである。
【0036】
(実施形態2)
遺伝子導入剤
本発明の遺伝子導入剤は、前述のように、粘土鉱物を含む前記遺伝子導入用担体と、これに担持された遺伝子とを含む。
【0037】
前記遺伝子導入剤において、前記遺伝子(A)と粘土鉱物(B)との混合割合(重量比A:B)は、1:0.001〜1:1の範囲であることが好ましく、より好ましくは1:0.01〜1:0.1の範囲、特に好ましくは1:0.01〜1:0.05の範囲である。
【0038】
前記遺伝子導入用担体に担持させる遺伝子は、特に制限されないが、例えば、目的遺伝子を発現ベクターに組込んだ組換えプラスミド、あるいは、2本鎖cDNA、1本鎖DNA、RNA等があげられる。また、このような遺伝子の種類は、本発明の用途等によっても適宜決定でき、例えば、遺伝子治療等のために目的遺伝子からのタンパク質合成を目的とする場合には、組換えプラスミドが好ましく、また、アンチセンス療法等を目的とする場合には、1本鎖DNA、RNAが好ましい。
【0039】
この遺伝子導入剤の形態としては、前記遺伝子導入用担体とこれに担持された遺伝子とを含んでいれば特に制限されず、例えば、これらが分散された分散液であってもよいし、凍結乾燥品であってもよい。また、前記分散液を凍結させた形態でもよく、この場合は、使用時に解凍すればよい。
【0040】
次に、本発明の遺伝子導入剤について、遺伝子として組換えプラスミドを使用する場合の調製方法の一例を示す。まず、目的の遺伝子を組込んだ組換えプラスミドを含むプラスミド分散液と、前記粘土鉱物(遺伝子導入用担体)を含む粘土鉱物分散液とを調製する。
【0041】
前記プラスミド分散液における組換えプラスミドの濃度は、特に制限されないが、例えば、10〜100μg/mLの範囲であり、好ましくは10〜50μg/mL、特に好ましくは15〜25μg/mLである。この分散液の分散媒は、特に制限されず、例えば、蒸留水、生理食塩水、PBS(phosphate buffered saline)等があげられ、また、後述するように培養細胞への遺伝子導入に使用する場合には、これらの他に液体培地等を用いてもよい。なお、これらの分散媒は、コンタミネーションを防止するために滅菌処理されていることが好ましい。前記プラスミド分散液のpHは、特に制限されず、例えば、中性付近があげられる。
【0042】
前記粘土鉱物分散液における粘土鉱物の濃度は、特に制限されないが、例えば、0.01〜100μg/mLの範囲であり、好ましくは0.1〜50μg/mL、特に好ましくは0.2〜25μg/mLである。この分散液の分散媒としては、前述と同様のものが使用できる。前記粘土鉱物分散液のpHも、前記プラスミド分散液と同様に特に制限されない。
【0043】
そして、前記プラスミド分散液と粘土鉱物分散液とを混合することによって、遺伝子導入剤を調製できる。このように液中で組換えプラスミドと粘土鉱物とを混合することによって、粘土鉱物の層間に組換えプラスミドが入り込み、遺伝子が担持された複合体が形成できる。なお、前記プラスミド分散液と粘土鉱物分散液とを混合した前記遺伝子導入剤における、組換えプラスミド(A)と粘土鉱物(B)との割合(重量比A:B)は、前述と同様である。
【0044】
また、前記プラスミド分散液と粘土鉱物分散液とを混合した混合液(遺伝子導入剤)は、さらに、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリリジン、ポリヒスチジン等のカチオン性ポリマーを含有してもよく、好ましくはPEIである。このようにPEI等を含有することによって、より一層細胞内への導入効率を向上することができる。
【0045】
このPEIの添加順序は、例えば、前記プラスミド分散液と粘土鉱物分散液とを混合した後に添加することが好ましい。
【0046】
また、前記PEIの添加割合は、特に制限されないが、例えば、プラスミド(A)とPEI(C)の重量比(A:C)が、例えば、1:1であることが好ましい。
【0047】
前記プラスミド分散液と粘土鉱物分散液とを混合した混合液(遺伝子導入剤)は、通常、細胞や生体を対象とするため、そのpHは特に制限されないが、例えば、pHは中性付近(例えば、pH約6.5〜7.5)に設定すればよい。また、前述のように、粘土鉱物の層間に交換性陽イオンを含み、前記層間に遺伝子がインターカレートし、前記層間の陽イオンに配位する場合あるいは粘土層との水素結合によって前記層間に担持される場合にも、同様に制限されず、例えば、中性付近のpHに調整すればよい。なお、このような遺伝子導入剤によれば、例えば、プラスミドを保持させた状態で、酸性条件下におかれた後であっても、影響を受けることとなく遺伝子の導入を行うことができる。このため、例えば、強酸性条件である胃を通過しても遺伝子導入が影響を受けることがなく、後述のような経口投与に適しているといえる。
【0048】
この分散液形態の遺伝子導入剤は、このまま使用してもよいし、前述のように使用時まで凍結させてもよい。また、乾燥状態にする場合には、例えば、凍結乾燥、スプレードライ等の方法が適用でき、使用時に前述のような分散媒に分散させればよい。
【0049】
(実施形態3)
in vitro での遺伝子導入方法
つぎに、in vitro で、培養細胞に前記遺伝子導入剤を用いて目的遺伝子を導入する遺伝子導入方法の一例を説明する。この方法では、目的遺伝子を導入する対象の培養細胞に、前記遺伝子導入剤を添加してインキュベートすればよい。本発明によれば、このように前記遺伝子導入剤を添加後インキュベートするだけで、前記目的細胞に目的遺伝子を導入することができる。
【0050】
培養細胞は、予め、その種類に応じた液体培地で一定時間プレインキュベートした後に、前記遺伝子導入剤を添加して、さらにインキュベートすることが好ましい。このように、前記複合体溶液の添加前に予めプレインキュベートすることによって、例えば、培養細胞への遺伝子導入剤による遺伝子導入をスムーズに行うことができ、また、添加後、一定時間インキュベートを行うことによって、確実に導入遺伝子が核に到達し、転写あるいは翻訳が行われる。
【0051】
前記液体培地の種類は、前述のように細胞に応じて適宜決定でき、特に制限されないが、例えば、細胞の成育環境を安定化できることから、血清を含むことが好ましい。リポフェクトアミンのような従来の遺伝子導入剤は、血清中のタンパク質が遺伝子導入を阻害する場合があるため、血清非存在下で細胞への導入を行う必要があったが、本発明の遺伝子導入剤であれば、血清存在下であっても十分に効率よく遺伝子の導入を行うことができる。
【0052】
培養細胞に対する前記遺伝子導入剤の添加割合は特に制限されないが、例えば、細胞1×106個に対する粘土鉱物の添加割合が0.01〜100μgの範囲となるように、前記遺伝子導入剤を添加することが好ましく、より好ましくは粘土鉱物の添加割合0.1〜50μg、特に好ましくは0.2〜25μgである。また、細胞1×106に対するプラスミドの割合が10〜100μgの範囲となるように、前記遺伝子導入剤を添加することが好ましく、より好ましくはプラスミドの添加割合10〜50μg、特に好ましくは15〜25μgである。
【0053】
目的遺伝子を導入する培養細胞としては、制限されないが、例えば、小腸、鼻粘膜、皮膚組織、皮下組織、骨組織、軟骨組織および歯周等の種々の細胞に本発明の方法を適用することができる。また、ヒト細胞やヒト以外の動物細胞、これらの他にも、例えば、微生物、魚類、爬虫類、両生類、鳥類、昆虫等、全ての生物種の細胞にも適用できる。前記細胞培養に関しても、前述のように特に制限されず、細胞の種類に応じた公知の液体培地を用いて、公知の培養条件に従って行うことができる。
【0054】
以下に培養条件の具体例を示すが、前述のように条件は培養細胞の種類に応じて適宜決定すればよいため、これらには限定されない。例えば、培養細胞に前記遺伝子導入剤を添加する前、予め、細胞を培養(プレインキュベート)する場合、その培養時間は、例えば、18〜30時間であることが好ましく、より好ましくは18〜24時間、特に好ましくは22〜24時間である。一方、前記遺伝子導入剤添加後のインキュベート時間は、例えば、前記組換えプラスミドが細胞内に導入されればよく、特に制限されないが、例えば、3時間以上であり、好ましくは18時間以上、より好ましくは24時間以上、特に好ましくは48時間以上である。この時間の上限は、特に制限されないが、例えば、3時間〜72時間程度に設定してもよい。培養温度は、通常、37℃であり、5%二酸化炭素の存在下で培養することが好ましい。
【0055】
以上の方法によって得られた、遺伝子を導入した細胞は、以下のような治療に使用することも可能である。例えば、ある疾患の原因となる欠損遺伝子等を本発明の導入方法によって培養細胞に導入する。そして、得られた遺伝子導入細胞を、その疾患の患部に投与する。そうすれば、投与した細胞における導入遺伝子より、コードされたタンパク質が発現し、この発現したタンパク質の供給によって、疾患の症状の緩和や治癒を図ることができる。なお、前記投与方法としては、例えば、患部への注射、担体に前記遺伝子導入細胞を担持させて、患部や皮下もしくは腹腔に埋め込む外科的処置等がある。
【0056】
(実施形態4)
つぎに、in vivo で、細胞が生体細胞であって、生体に前記遺伝子導入剤を投与して、前記遺伝子導入剤により器官または組織の細胞に遺伝子を導入する一例を説明する。この方法では、前記遺伝子導入剤を、例えば、経口投与によって、または目的の器官や組織に外科的処置や注射等により投与するだけで、生体内の目的の細胞に前記目的遺伝子(アンチセンスも含む)を導入することができる。
【0057】
生体の中でも、例えば、小腸細胞に遺伝子を導入する場合には、前記遺伝子導入剤を経口投与することが好ましい。経口投与は簡便であり、また投与量も治療の結果に応じて調整し易いことからも好ましく、しかも、本発明の遺伝子導入剤を使用した場合、目的遺伝子を選択的に確実に前記小腸細胞へ導入できるからである。このように小腸に選択的に遺伝子を導入できるのは、以下の理由によると考えられる。
【0058】
前述のように、例えば、交換陽イオン型の層状粘土鉱物と遺伝子を混合させることによって、前記遺伝子は層間の前記陽イオンと置き換わり、そのリン酸基が前記層の水酸基と水素結合して前記層間に担持されることとなる。このように水素結合によって遺伝子が担持された、遺伝子と粘土鉱物との複合体は、pHが酸性条件下であると電荷が大きくなるため、前記遺伝子は前記層間でしっかりと担持される。一方、中性またはアルカリ性条件下では、電荷が小さくなるために、水素結合が解離して遺伝子は遊離し放出される。前記粘土鉱物は、このようなメカニズムを持つため、前記遺伝子導入剤を経口投与すると、遺伝子を放出することなく酸性条件の胃を通過し、小腸へと達するのである。また、粘土鉱物であるため胃で消化されることもない。そして、小腸は中性付近のpHであって、胃に比べて電荷が小さくなるため、前記遺伝子導入剤の粘土鉱物から遺伝子が放出されるのである。従来の遺伝子導入用担体であるリポゾーム等は、経口投与すると胃で消化されてしまい、また、静脈注射した場合も様々な細胞に入り込むため、小腸への選択的投与が困難であった。しかし、このように本発明によれば、簡便な経口投与によって、小腸への選択的投与を容易に行うことが可能となるのである。
【0059】
このような小腸への選択的な遺伝子導入剤の接触により、腸管免疫を利用したアレルギー治療を、簡便な経口投与で実現することもできる。例えば、各種アレルギーの原因となる遺伝子を遺伝子導入用担体に担持させて、遺伝子導入剤を調製し、これを定期的にアレルギー患者に経口投与する。すると、前記遺伝子導入剤は、小腸に運ばれ、小腸細胞内で選択的に目的遺伝子を放出するため、腸管免疫において免疫寛容の現象がおき、アレルギー症状が減退されるのである。このような方法は、従来の減感作療法に比べて、例えば、注射による頻回投与の必要性がなく、また、遺伝子を投与するため一度に大量のタンパク質が投与された際にみられるアナフィラキシーショックの危険性も少ないという理由等からも、患者への負担が少なく優れた療法であるといえる。また、腸内細胞は、通常、二週間程度で剥がれ落ちるため、遺伝子導入された細胞が長期間にわたって体内に残ることもないため、本発明を適用すれば、より一層安全性に優れた治療方法を提供できるといえる。
【0060】
in vivo での前記遺伝子導入方法は、例えば、ヒトの生体にも適用でき、また、ヒト以外の動物の生体にも適用することができる。また、前記遺伝子導入剤の投与量は、その目的や生体の種類等に応じて適宜決定できるが、例えば、細胞と粘土鉱物または遺伝子の割合は、前述のin vitro での導入と同じ割合でもよい。
【0061】
以上のように本発明のin vivo での遺伝子導入方法によれば、安全性に優れた遺伝子の導入が可能になり、さらに経口投与を行えば、外科的処置や注射を行うことなしに、選択的に小腸への遺伝子導入が可能になるため、遺伝子治療に有用な方法であるといえる。
【0062】
【実施例】
(実施例1)
粘土鉱物を用いて、in vitroでの、小腸上皮細胞への緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子の導入を行った。
【0063】
1.粘土鉱物の精製
粘土鉱物としては、クニミネ工業製「クニピアF」(鉱物種:モンモリロナイト)を以下の方法で精製した精製品を使用した。
【0064】
a)有機物処理
前記粘土5gに、6重量%過酸化水素水(和光、特級)100mlを加え、30〜40℃で発泡がなくなるまで加温した。発泡終了後、残留した過酸化水素を除くため、さらに20分加温処理を行った。
【0065】
b)脱鉄処理
前記過酸化水素水で処理した前記粘土分散液20ml(粘土含有量1g)を、ウォーターバスで80℃に加熱した。ここに0.3Mクエン酸ナトリウム(和光、特級)水溶液200mlおよび1M炭酸水素ナトリウム(和光、特級)水溶液25mlを加えマグネティックスターラーで撹拌した。十分に混合した後、さらに、ハイドロサルファイトナトリウム(和光、化学用)5gを加えて撹拌し、この混合溶液を15分間静置した。この過程は全て80℃で行った。
【0066】
c)ナトリウム型への誘導
脱鉄処理を行った混合溶液に塩化ナトリウム飽和水溶液50mlを加えて遠心分離を行った。回収した粘土に、前記飽和水溶液を再度添加して懸濁し、遠心分離を行った、遠心分離は、商品名クボタ KR−20000T(クボタ工業社製)を使用して、3000G、10分の条件で、計3回行った。
【0067】
遠心分離によって回収した粘土に、0.3Mクエン酸ナトリウム水溶液200mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液 50mlを加えて懸濁洗浄し、再度遠心分離によって粘土を回収した。次に、回収した粘土に2重量%炭酸水素ナトリウム水溶液250mlを加えて懸濁し、90℃で15分間加熱処理した後遠心分離を行った。さらに回収した粘土に、1M酢酸ナトリウム(和光純薬工業社製、特級)水溶液と1M塩化ナトリウム水溶液との混合液(体積比1:1)200mlを加えて洗浄し、遠心分離を行った。この洗浄処理は3回行った。つぎに、1M塩化ナトリウム水溶液を用いて、同様にして3回洗浄処理を行った。
【0068】
d)透析
遠心分離によって回収した粘土を蒸留水に懸濁し、この懸濁液を透析膜(商品名Seamless Cellulose Tubing (20/32):VISKASE SALES CORP.製)に入れ、蒸留水で透析した。透析後の粘土は、遠心分離によって回収し、凍結乾燥した。この凍結乾燥品をナトリウム型モンモリロナイト(遺伝子導入用担体)として使用した。
【0069】
2.粘土と遺伝子の複合化
小腸上皮細胞に導入するプラスミドとしては、文献(Niwa, H., Yamamura, K., and Miyazaki, J.: Efficient selection for high−expression transfectants with a novel eukaryotic vector. Gene, 108, 193−199 (1991).)に記載の方法で構築したプラスミドベクター pCAGGS に、緑色蛍光タンパク質(EGFP)遺伝子(プロメガ社製)組み込んだ 組換えプラスミド pCAGGS−EGFP を使用した。
【0070】
前記組換えプラスミドpCAGGS−EGFP を含むプラスミド分散液(100μg/ml)を、下記組成の液体培地(以下同じ)で5倍に希釈した。一方、凍結乾燥したナトリウム型モンモリロナイトを蒸留水に懸濁し、所定の濃度(20、10、2μg/ml)のモンモリロナイト分散液を調製した。さらに、前記モンモリロナイト分散液に液体培地を加えて、10倍(体積)に希釈した。そして、前記希釈プラスミド分散液500μlと前記希釈モンモリロナイト分散液500μlとを混合して、トータル1mlのプラスミド・モンモリロナイト複合体分散液とした。これらの複合体分散液におけるモンモリロナイトの最終濃度はそれぞれ1μg/ml、0.5μg/ml、0.1μg/mlであり、また、プラスミド10μg当たりのモンモリロナイト量はそれぞれ1μg、0.5μg、0.1μgである。この複合体分散液を、ゴミ等の夾雑物を除去するために、30Gで2分程度遠心して、その上澄み溶液500μLを遺伝子導入剤として、以下の工程に使用した。
【0071】
(液体培地組成)
Dulbecco’s modified Eagle medium (日水製薬社製)
10% fetal bovine serum(大日本製薬社製)
0.1 unit/ml インシュリン(Sigma社製)
100 unit/ml ペニシリン(明治薬品社製)
100μg/ml ストレプトマイシン(ナカライテスク社製)
50 ng/ml fungisone(ナカライテスク社製)
【0072】
3.In vitro での遺伝子導入
小腸上皮細胞は、ATCCより分譲されたIEC−6(ATCC−CRL1592)を使用した。前記小腸上皮細胞の培養は、前記液体培地を使用し、炭酸ガス濃度が5%となるように炭酸ガスインキュベーターで調整した。
【0073】
具体的には、6cm培養ディッシュ(ファルコン社製)に液体培地2.5mlを加え、ここに小腸上皮細胞を1×106個播種して37℃で24時間培養した後、前記遺伝子導入剤500μlを加えた。これを37℃で24時間培養した後、全細胞を回収した。
【0074】
なお、ブランクとして、組換えプラスミドを導入していない細胞を、対照例と、非ウイルスベクターであるPEIによって前記組換えプラスミドpCAGGS−EGFP を導入した細胞をそれぞれ調製した。PEIによる組換えプラスミドの導入は、以下に示す方法により行った。
【0075】
前記プラスミド・モンモリロナイト複合体分散液の調製に使用した前記希釈プラスミド分散液500μL(プラスミド20μg)と、30重量%PEI溶液(商品名P−70、和光純薬工業社製)を前記液体培地で5倍(体積)希釈した希釈液500μLとを混合した(プラスミド/PEI重量比=1/1)。この混合液500μLを、前記上澄み溶液の代りに遺伝子導入剤として使用する以外は、前述と同様にして培養細胞への遺伝子の導入を行った。
【0076】
4.遺伝子導入の確認
前記回収した全細胞からtotal RNA を抽出し、RT−PCR 法によってEGFP遺伝子の転写産物を増幅させ、組換えプラスミド pCAGGS−EGFP による細胞内へのEGFP遺伝子の導入を確認した。
【0077】
まず、回収した前記全細胞から商品名Isogene (ニッポンジーン社製)を用いてそのプロトコールに従って total RNA を抽出した。
【0078】
つぎに、このtotal RNA から、商品名BcaBest RNA kit (Ver. 1.1)(宝酒造社製)を用いてcDNAを調製した。前記BcaBest RNA kitの使用条件は、キット添付のプロトコールに従った。
【0079】
調製したcDNAを鋳型として、商品名 ExTaq (宝酒造社製)および商品名i−Cycler サーマルサイクラー(バイオラッド社製)を用いたPCR法により、EGFP遺伝子転写産物を増幅させた。前記 ExTaq キットの使用条件および試薬溶液等は、商品に添付のプロトコールに従った。なお、PCRによる増幅反応が正常に行われていることを確認するために、ポジティブコントロールとしてβ−アクチンのRNAの増幅を共に行った。以下に、使用したプライマー配列およびPCRの条件を示す。
【0080】
(使用したプライマー)
センスプライマー ; 5’−AGCAAGGGCGAGGAGCTGTT−3’ (配列番号1)
アンチセンスプライマー; 5’−GTAGGTCAGGGTGGTCACGA−3’ (配列番号2)
【0081】
【0082】
得られたPCR産物について、0.8%アガロースゲルを用いたアガロースゲル電気泳動を行った。マーカーとして、バイオラボ社製の 100bp ladder マーカーを使用した。これら電気泳動の結果を図1に示す。
【0083】
図1において、レーン1〜6は、小腸上皮細胞から抽出したmRNAの結果であり、レーンMがマーカーである。レーン1および3は組換えプラスミドを導入してない細胞、レーン2はPEIにより組換えプラスミドを導入した細胞についての結果である。そして、レーン4は、前記重量比が1:0.10である遺伝子導入剤、レーン5は、前記重量比が1:0.05である遺伝子導入剤、レーン6は、前記重量比が1:0.01である遺伝子導入剤で、それぞれ処理した細胞の結果である。これらの中で、レーン4〜6が実施例、レーン1および3がブランク、レーン2が対照例である。なお、EGFP遺伝子の増幅長は250bpであり、PCRポジティブコントロールのβ−アクチン遺伝子の増幅長は350bpである。
【0084】
図1に示すように、組換えプラスミドを導入していないブランクのレーン1および3には、PEIを用いた対照例のレーン2と同じ移動度にEGFP遺伝子のバンドが検出されなかったのに対して、実施例のレーン4〜6では、前記対照例におけるEGFP遺伝子のバンドと同じ移動度にバンドが検出された。このことから、モンモリロナイトを用いた実施例によれば、in vitro において、従来のPEIと同様に遺伝子導入を行えることがわかった。なお、レーン1〜6の全てのPCR産物についてβ−アクチンのバンドが検出されていることから、PCRが確実に行われていることは明らかである。
【0085】
(実施例2)
粘土鉱物を用いて、in vivoでの小腸上皮細胞への緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子の導入を行った。なお、導入する組換えプラスミドとしては、前記実施例1で調製した pCAGGS−EGFP を使用し、粘土鉱物は、前記実施例1で調製したナトリウム型モンモリロナイトを使用した。
【0086】
1.粘土と遺伝子の複合化
組換えプラスミドの希釈、ナトリウム型モンモリロナイトの懸濁・希釈には、滅菌済みの蒸留水を使用し、組換えプラスミド濃度が50μg/300μlであるプラスミド分散液、ナトリウム型モンモリロナイト濃度が2.5μg/300μlのモンモリロナイト分散液を調製した。そして、前記両者を300μLずつ混合した分散液を、夾雑物除去のために30G(50rpm)で2分程度遠心して、その上澄み溶液を遺伝子導入剤とする以外は、前記実施例1と同様にして、粘土と遺伝子の複合化を行った。
【0087】
2.In vivo での遺伝子導入
BALB/C マウス(♂)6週令に、ゾンデを用いて前記遺伝子導入剤500μlを投与した。そして、48時間後、解剖して胃および小腸を取り出し、図2に示すように、胃と小腸とに分画して、それぞれホモジナイザーで破砕した。なお、小腸は長さ約1.5cmとなるよう3つに分画した(同図において、小腸1、小腸2、小腸3)。破砕した各分画から、前記実施例1と同様にして、total RNAの抽出および cDNA の調製を行い、増幅させたPCR産物についてアガロースゲル電気泳動を行った。この電気泳動によって、 EGFP遺伝子の転写産物を検出し、in vitroにおける、組換えプラスミド pCAGGS−EGFP による各組織細胞内へのEGFP遺伝子の導入を確認した。なお、アガロースゲル電気泳動の条件は、前記実施例1と同様とした。
【0088】
これらの電気泳動の結果を図3に示す。図3において、レーン1,5,9は胃についての結果、レーン2,6,10は、小腸1についての結果、レーン3,7,11は小腸2についての結果、レーン4,8,12は、小腸3についての結果であり、レーンMがマーカー(図1と同じ)である。また、レーン1〜4のグループA(同図においてA)は、組換えプラスミドを導入していないマウス、レーン5〜8のグループB(同図においてB、レーンMは除く)は、PEIにより組換えプラスミドを導入したマウスの結果である。レーン9〜12のグループC(同図においてC)は、組換えプラスミドとモンモリロナイトの重量比が1:0.02である遺伝子導入剤で処理したマウスの結果である。これらの中で、グループAがブランク、グループBが対照例、グループCが実施例である。なお、EGFP遺伝子の増幅長は250bpであり、PCRコントロールのβ−アクチン遺伝子の増幅長は350bpである。
【0089】
図3の電気泳動に示すように、組換えプラスミドを導入していないブランクのレーン1〜4には、PEIを用いた対照例のレーン5〜8と同じ移動度にEGFP遺伝子のバンドが検出されなかったのに対して、実施例のレーン9〜12では、前記対照例におけるEGFP遺伝子のバンドと同じ移動度にバンドが検出された。このことから、モンモリロナイトを用いた実施例によれば、in vivo において、従来のPEIと同様に遺伝子導入を行えることがわかった。なお、レーン1〜12の全てにおいてβ−アクチンのバンドが検出されていることから、全てについてPCRによって増幅されていることは明らかである。
【0090】
(実施例3)
粘土鉱物およびPEIを用いて、in vitroでの小腸上皮細胞へのβ−ガラクトシダーゼ(lacZ)遺伝子の導入を行った。なお、導入する組換えプラスミドとしては、前記実施例1と同じプラスミドベクターに、lacZ遺伝子を組み込んだ組換えプラスミド pCAGGS−lacZ を使用した。
【0091】
前記実施例1で調製した上澄み溶液(実施例1における遺伝子導入剤)100μlに、さらにPEI 1μgを添加した。これを遺伝子導入剤として使用し、前記実施例1と同様にして小腸上皮細胞に遺伝子導入を行った。なお、前記遺伝子導入剤におけるプラスミドと粘土鉱物とPEIの重合比は、「1:0.01:1」である。また、比較例として、前記組換えプラスミドのみ1μgを投与し、対照例として、前記実施例1と同じ条件でPEIにより前記組換えプラスミドを導入した(プラスミド:PEI重合比=1:1)。
【0092】
そして、遺伝子導入の後、細胞を24時間培養(培養液100ml)した。培養後、前記培養液にグルタルアルデヒドを終濃度1%となるように添加し、細胞を5〜10分固定した。そして、前記細胞を洗浄した後、下記組成のX−gal溶液を添加して37℃でインキュベートした。このX−gal(5−フ゛ロモ−4−クロロ−3−イント゛リル−β−D−カ゛ラコヒ゜ラノシト゛)染色によって、lacZ遺伝子の導入および発現を確認した。なお、lacZ遺伝子が導入され、lacZを発現した細胞は、X−galの分解により青色に染色され、lacZ遺伝子が導入されていない細胞は染色されない。
【0093】
【0094】
これらの結果を図4に示す。図4は、遺伝子導入を行った細胞について、発現したlacZによるX−gal分解(青色発色)の有無を示す写真であり、同図(A)はプラスミドのみを添加した比較例であり、(B)はPEIにより遺伝子導入を行った対照例、(C)が実施例3の結果である。前記(A)に示すように、プラスミドのみを添加した場合、青色コロニーは確認されず、プラスミドが導入されなかったことがわかる。また、前記(C)に示す実施例3は、(B)に示すPEIのみで遺伝子導入を行った対照例に比べて、青色コロニーが多く確認された。このことから、プラスミドと粘土鉱物との複合体である本発明の遺伝子導入剤に、さらにPEIを添加することによって、遺伝子導入効率がさらに向上されるといえる。
【0095】
(実施例4)
本発明の遺伝子導入剤について、pH(強酸性)の影響を確認した。前記実施例1で調製した上澄み溶液(実施例1における遺伝子導入剤)100μlに、さらにPEI 1μgを添加した。そして、この溶液を塩酸によってpH1に調整し、室温で30分間処理した後、水酸化ナトリウムによって再度pHを中性に戻した。これを遺伝子導入剤として使用した以外は、前記実施例3と同様に遺伝子導入を行い、lacZの発現を同様にして確認した。
【0096】
これらの結果を図5に示す。図5は、遺伝子導入を行った細胞について、発現したlacZによるX−gal分解(青色発色)の有無を示す写真であり、同図(A)はプラスミドのみを添加した比較例であり、(B)はPEIにより遺伝子導入を行った対照例、(C)が実施例4の結果である。前記(A)に示すように、プラスミドのみを添加した場合、青色コロニーは確認されず、プラスミドが導入されなかったことがわかる。また、前記(C)に示す実施例3は、(B)に示すPEIのみで遺伝子導入を行った対照例に比べて、青色コロニーが多く確認された。さらに、前記実施例3の結果を示す図4(B)と、図5(B)とをそれぞれ比較した結果、図4(B)に比べて、図5(B)では青色コロニーがかなり減少していることがわかる。つまり、PEIのみを使用した場合、強酸条件下での処理によって、遺伝子導入効率が低下したといえる。これに対して、図5(C)と図4(C)とを比較しても、青色コロニーの数はほとんど違いが見られてなかった。つまり、本発明の遺伝子導入剤によれば、強酸条件にさらされても遺伝子導入が影響を受けにくく、優れた効率で遺伝子導入を行うことができるといえる。したがって、例えば、強酸条件である胃を通過できるといえ、前述のような経口投与での使用に適していると言える。
【0097】
【発明の効果】
このように、本発明の遺伝子導入用担体を用いれば、高い安全性で細胞に目的遺伝子を導入することができる。このため、前記遺伝子導入用担体を用いた本発明の遺伝子導入方法は、遺伝子工学の研究分野や臨床医療の分野において、非常に有用である。
【0098】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例において、遺伝子導入細胞の転写産物の電気泳動図である。
【図2】本発明のその他の実施例において、遺伝子を導入したマウスの胃および小腸の切断部位を示した概略図である。
【図3】前記実施例において、遺伝子導入細胞の転写産物の電気泳動図である。
【図4】本発明のさらにその他の実施例において、遺伝子導入を行った細胞について、発現したlacZによるX−gal分解(青色発色)の有無を示す写真である。
【図5】本発明のさらにその他の実施例において、遺伝子導入を行った細胞について、発現したlacZによるX−gal分解(青色発色)の有無を示す写真である。
【発明が属する技術分野】
本発明は、細胞内に遺伝子を導入するための遺伝子導入用担体、前記担体を用いた遺伝子導入剤、前記導入剤を用いた遺伝子導入方法、および前記方法によって遺伝子を導入した遺伝子導入細胞に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガンや遺伝子疾患等、種々の疾患の治療法として、例えば、欠損遺伝子や変異した遺伝子の正常型遺伝子、あるいは発現遺伝子のアンチセンス等を細胞内に導入することによって遺伝子レベルで治療を行う、いわゆる遺伝子治療が実用化されるようになってきている。
【0003】
この遺伝子治療を達成するためには、安全性が高く、しかも優れた効率で細胞内に遺伝子を導入できる方法の開発・確立が必要不可欠である。
【0004】
現在、臨床分野で実施が試みられている遺伝子治療法は、その多くが遺伝子導入用の担体としてウイルスベクターを使用しているが、前記ウイルスベクターは安全性の面で多くの問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、安全に優れる、新たな遺伝子導入用担体、遺伝子導入剤、遺伝子導入方法、およびそれによって遺伝子を導入した細胞の提供である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の遺伝子導入用担体は、遺伝子を担持し、かつ、細胞内に前記遺伝子を導入するための担体であって、粘土鉱物を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明者らは、遺伝子工学等の研究分野や臨床医療の分野において、細胞に対する安全性が高い新規の遺伝子導入用担体を見出すべく鋭意研究を行った結果、前記粘土鉱物を遺伝子導入用担体として用いれば、容易に細胞内に遺伝子を導入できることを見出した。前記「粘土鉱物」とは、通常、粘土に含まれるケイ酸塩鉱物を言い、従来から、例えば、化粧品の成分として、また医薬分野において発布剤の基材や制酸剤として、また光学材料や触媒としても広く利用されている。しかしながら、本発明のように、粘土鉱物を、細胞に遺伝子を導入するための担体として使用できることは、本発明者らが初めて見出したことである。本発明の遺伝子導入用担体によれば、例えば、前記遺伝子導入用担体と導入させる遺伝子とを溶液内で混合させるだけで、前記遺伝子が粘土鉱物に担持され、さらに、この遺伝子を担持した遺伝子導入用担体を目的細胞に接触させるだけで、細胞内に遺伝子を導入できる。このため、遺伝子導入の操作も、極めて簡便になる。また、粘土鉱物は、前述のように従来から広く化粧品や医薬品に使用されているという事実からも、生体に対する、特にヒトに対する安全性は十分に立証されているところである。したがって、このような安全に極めて優れる粘土鉱物を含む遺伝子導入用担体は、前記臨床医療の分野等において、広く適用することができ、かつ有用である。
【0008】
なお、本発明の遺伝子導入担体が細胞に遺伝子を導入するメカニズムは明らかではないが、おそらく前記遺伝子導入用担体が、遺伝子を担持した状態で細胞内に取り込まれ、細胞内で遺伝子を離すと考えられる。
【0009】
また、本発明の遺伝子導入剤は、前記本発明の遺伝子導入用担体とこれに担持された遺伝子とを含む遺伝子導入剤である。前述のように本発明の遺伝子導入用担体は極めて安全性に優れる担体であるため、前記担体とこれに担持された遺伝子含む遺伝子導入剤を用いれば、安全性に優れた遺伝子導入が可能になる。また、前述と同様に、例えば、粘土鉱物と遺伝子とを混合すること等によって、前記遺伝子が粘土鉱物に担持されるため、本発明の遺伝子導入剤は、非常に調製が容易であり、遺伝子導入の操作も簡便となる。
【0010】
また、本発明の遺伝子導入方法は、前記本発明の遺伝子導入剤を用いて、細胞に遺伝子を導入する方法である。この遺伝子導入方法は、メカニズムは不明であるが、例えば、遺伝子が粘土鉱物に担持されている前記遺伝子導入剤を、目的細胞に接触させるだけで、容易に遺伝子が前記細胞内に導入されるため、操作も簡便であり、かつ高い安全性での遺伝子導入が実現できる。このような安全性に優れる簡便な方法は、前記臨床医療の分野において非常に有用である。
【0011】
そして、本発明の遺伝子導入細胞は、前記本発明の導入方法により遺伝子を導入した細胞である。前記遺伝子導入細胞は、細胞に対する安全性が非常に高い前記本発明の導入方法によって作製されるため、例えば、従来のように担体としてウイルスベクター等を使用した場合に見られる弊害等も回避できる。このため、本発明の遺伝子導入細胞を、例えば、患部の組織細胞に接触させる治療方法等にも、高い安全性で適用することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
遺伝子導入用担体
本発明の遺伝子導入用担体において、前記粘土鉱物としては、特に制限されないが、例えば、層状粘土鉱物であることが好ましい。このような層状構造の粘土鉱物は、通常、その層間にイオンや水が挟み込まれた構造をとる。このため、前記層状粘土鉱物を遺伝子導入用担体として用いれば、前記層間物質と遺伝子とが置き換わり、層間に遺伝子がインターカレートするため、遺伝子を担持することができると推測される。
【0013】
前記層状粘土鉱物の層間物質は、例えば、交換性陽イオンであることが好ましい。層間物質が交換性陽イオンの場合、通常、この陽イオンは、層の内側面の水酸基(−OH)と結合している。このため、例えば、前記層状粘土鉱物と遺伝子とを溶液中で混合させれば、前記交換性陽イオンと遺伝子とが置き換わって、遺伝子のリン酸基と前記内側面の水酸基とが水素結合し、遺伝子が担持されると考えられるからである。なお、前記交換性陽イオンを層間物質として有する粘土鉱物を、以下、「交換性陽イオン型」の粘土鉱物ともいう。
【0014】
このように水素結合によって遺伝子を担持する粘土鉱物を含む遺伝子導入用担体であれば、例えば、酸性条件下で遺伝子を放出することなく、中性またはアルカリ性条件下で遺伝子を放出することもできるため、条件に応じて選択的に遺伝子を放出させる際に有用である。
【0015】
前記交換性陽イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、第4級アンモニウムイオン等があげられる。これらの中でも、天然型の粘土鉱物の多くが有していることからナトリウムイオンが好ましく、また、大きな立体構造である第4級アンモニウムイオンも好ましい。前記第4級アンモニウムイオンは、例えば、物質の種類が豊富であるため層間距離のコントロールが容易であり、また、電荷調節も可能であるため、遺伝子担持の容易性、遺伝子との結合力、遺伝子の放出の容易性を制御することが可能だからである。前記第4級アンモニウムイオンとしては、例えば、塩化テトラメチルアンモニウムイオン、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムイオン等がある。
【0016】
また、これら以外にも、例えば、α−アミノ酸やβ−アミノ酸等の各種アミノ酸、ドーパミン等のアミン化合物、アクリルアミド等のアミド化合物等の陽イオンでもよいし、アルキルアンモニウム、アルキルトリメチルアンモニウム、テトラメチルホスホニウム、アルキルピリジニウム等のカチオン性界面活性剤や、ルテニウムテトラアンモニウム、トリスフェナンスロリンロジウム等のカチオン性金属錯体の陽イオンでもよい。前記カチオン性金属錯体としては、例えば、ルテニウム等のアンモニア錯体等が使用できる。また、メチルビオロゲン等でもよい。
【0017】
本発明における前記層状粘土鉱物としては、特に制限されず、例えば、カオリナイト、バイロフィライト−タルク、スメクタイト、バーミュキュライト、雲母、脆雲母、緑泥石およびセピオライト−パリゴスカイトの合計8群の結晶質型粘土鉱物が使用できる。結晶質型の中でも、カオリナイト群はケイ酸塩層の型が「1:1型」であり、その他7つのグループは、「2:1型」である。層電荷のない前記カオリナイト群に属する粘土鉱物としては、例えば、カオリナイト、デイッカイト、ハロイサイト、ナクライト、クリソタイル、リザルダイト、同じく層電荷のないバイロフィライト−タルク群に属する粘土鉱物としては、例えば、バイロフィライト、タルクがあげられる。また、層電荷を有するスメクタイト群としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロライト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイトが、バーミュキュライト群としては、例えば、di−バーミュキュライト、tri−バーミュキュライトが、雲母群としては、例えば、白雲母、パラゴライト、イライト、フロゴパイト、黒雲母、レピドライトが、脆雲母群としては、例えば、マーガライト、クリントナイトが、緑泥石群としては、ドンパサイト、スドウ石、クッカイト、クリノクロア、シャモサイトが、それぞれあげられる。また、層電荷のないセピオライト−パリゴスカイト群としては、セピヲライト、パリゴルスカイトがあげられる。これらの中でも、層電荷を有する結晶質粘土鉱物が好ましく、より好ましくは、スメクタイト群、バーミキュライト群、雲母群である。具体的には、モンモリロナイト、バーミキュライト、イライトが好ましく、特にモンモリロナイトが好ましい。
【0018】
また、前記層状粘土鉱物の他にも、例えば、イモゴライト、アロフェン、ヒシンゲライト等の非結晶質型粘土鉱物も使用できる。
【0019】
前記粘土鉱物は、天然の粘土から採取してもよいが、種々の市販品が使用できる。モンモリロナイトとしては、例えば、商品名クニピアF(クニミネ工業社製)、サポナイトとしては、例えば、商品名スメクトンSA(クニミネ工業社製)等がある。また、日本粘土学会からも、各種粘土鉱物を入手することができる。
【0020】
また、粘土鉱物は、特に制限されないが、含有もしくは付着している各種不純物が除去された、精製粘土鉱物であることが好ましい。このように精製されていれば、粘土鉱物への遺伝子のインターカレーションを効率良く行えるからである。前記不純物とは、例えば、土壌中の有機物(各種アミノ酸やリグニン等)や、鉄、カリウム、カルシウム、マグネシウム等がある。
【0021】
具体的には、通常のX線回折または元素分析による純度が、例えば、85%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上である。このX線回折による純度は、一般に行われるように、標準サンプルとの回折パターンを比較した、回折線の強度比から決定することができる。
【0022】
前述のような不純物を除去する方法としては、特に制限されないが、例えば、前記有機物を除去する場合には、以下の方法等が適用できる。
【0023】
この有機物の除去処理は、例えば、粘土鉱物に過酸化水素水を添加して分散させ、この分散液を、加熱処理することによって行うことができる。過酸化水素水の濃度は、例えば、3〜15重量%であり、好ましくは3〜10重量%であり、より好ましくは5〜7重量%である。過酸化水素水の添加割合は、粘土鉱物1gに対して、例えば、10〜30mlであり、好ましくは15〜30mlであり、より好ましくは15〜20mlである。また、加熱処理の条件は、例えば、温度25〜50℃であり、好ましくは25〜40℃であり、より好ましくは30〜40℃である。加温時間は、特に制限されないが、例えば、加温による発泡(酸素)がなくなるまで行うことが好ましく、発泡終了後、残留した過酸化水素を除去するために、さらに加温処理を行うことがより好ましい。なお、これらの条件には限定されない。
【0024】
このような有機物処理によって、通常、純度が85〜100%の粘土鉱物を得ることができる。また、使用する粘土鉱物における有機物の含有量は、例えば、5%以下であることが好ましく、より好ましくは2%であることが好ましく、特に好ましくは1%以下である。
【0025】
前記有機処理後の粘土鉱物を遺伝子導入用担体とする場合は、例えば、ろ過や遠心分離等によって前記粘度鉱物分散液から粘土鉱物を回収し、水、緩衝液、生理食塩水等の溶液で洗浄したものを使用すればよい。なお、このように有機物処理を行った粘土鉱物の層間物質は、原料として用いた処理前の粘土鉱物と同様であり、例えば、ナトリウムイオンの他にも、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の各種交換性陽イオンがあげられる。
【0026】
また、前記粘土鉱物は、例えば、粘土鉱物に付着または含まれる鉄を除去するために、前記有機物の除去処理に代えて、またはそれに加えて、以下に示す脱鉄処理を施すことが好ましい。脱鉄処理された粘土鉱物であれば、例えば、鉄による結晶構造評価が安定するばかりでなく、鉱物の物理化学特性も一定になり、実用面でも安定した品質となるため、さらに粘土鉱物の層間への遺伝子のインターカレーションを容易にすることができるからである。この脱鉄処理は、例えば、以下に示す方法によって行うことができる。
【0027】
前記過酸化水素水で処理した前記粘土鉱物分散液を加熱し、ここにクエン酸ナトリウム水溶液および炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して十分に攪拌する。この混合液に、さらにハイドロサルファイトナトリウム(ハイドロ亜硫酸ナトリウム)水溶液を加えて攪拌し、この混合液を静置する。この脱鉄処理後の粘土鉱物を遺伝子導入用担体とする場合には、前記有機物処理の場合と同様に各種溶媒で洗浄したものを使用すればよい。
【0028】
前記方法において、粘土鉱物1gに対する各物質の添加割合は、例えば、クエン酸ナトリウム50〜70mmol、炭酸水素ナトリウム15〜30mmol、ハイドロサルファイト20〜35mmolの範囲であり、好ましくはクエン酸ナトリウム55〜65mmol、炭酸水素ナトリウム22〜28mmol、ハイドロサルファイト26〜29mmolの範囲である。
【0029】
また、有機物処理後または脱鉄処理後の粘土鉱物は、例えば、粘土鉱物層間への遺伝子のインターカレーション効率をより一層向上するために、さらに、イオン交換反応による各種交換性陽イオン型への誘導処理を施してもよい。処理前から層間にナトリウム等の交換性陽イオンを含む場合であっても、この誘導処理を施すことによって、例えば、層間距離が広がり、さらに、遺伝子との親和性の高い物質を用いてイオン交換することで、遺伝子のインターカレーション効率が向上するからである。具体例として、以下に、交換性ナトリウム型への誘導処理の一例を示す。
【0030】
粘土鉱物を交換性ナトリウム型への誘導処理する場合には、例えば、前記有機物除去処理または脱鉄処理を行った粘土鉱物を、塩化ナトリウム飽和水溶液に添加・分散し、ろ過や遠心分離によって前記粘土鉱物を回収すればよい。前記塩化ナトリウムの添加と粘土鉱物の回収とは、1回でもよいが、十分にナトリウム型への誘導を行うために二回以上行うことが好ましく、より好ましくは3〜5回である。また粘土鉱物に対する塩化ナトリウム飽和水溶液の添加割合は、粘土鉱物1gに対して、例えば、30〜80mLの範囲であり、好ましくは40〜60mL、より好ましくは50〜60mLの範囲である。塩化ナトリウム飽和水溶液に対する粘土鉱物の懸濁は、特に制限されないが、例えば、10秒以上であることが好ましく、より好ましくは30〜60分である。
【0031】
交換性ナトリウム型への誘導に使用する溶媒としては、前記塩化ナトリウム水溶液には限定されず、この他にも、例えば、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム等のナトリウム塩を含む水溶液が使用できる。また、これらの溶液におけるナトリウム塩濃度は、特に制限されないが、前述のように飽和溶液であることが好ましい。
【0032】
また、より一層完全にナトリウム型への誘導を行う場合は、前記塩化ナトリウム飽和溶液による誘導処理に代えて、若しくはこれに加えて、例えば、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、アジ化ナトリウム等のナトリウム塩の水溶液や、前記ナトリウム塩を二種以上含む水溶液等によって誘導処理を行えばよい。
【0033】
一方、交換性アンモニウム型への誘導処理を行う場合には、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩を含む溶液で、前述のナトリウム型への誘導方法と同様に処理を行えばよい。また、第4級アンモニウム型の場合は、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム等の4級アンモニウム塩を含む溶液が使用できる。また、例えば、前述のようなカチオン性界面活性剤を用いたピラー化や、前述のようなアミン化合物、アミド化合物、カチオン性金属錯体等による置換によっても、鉱物機能の修飾が可能である。
【0034】
このように交換性陽イオン型への誘導処理を行った粘土鉱物は、例えば、透析を行った後に遺伝子導入用担体として使用すればよい。
【0035】
また、以上に示した各種粘土鉱物は、例えば、溶液に分散させた状態でそのまま遺伝子導入用担体として使用することもできるが、凍結乾燥等により乾燥させた乾燥物を遺伝子導入用担体としてもよい。前記乾燥物であれば、後述する遺伝子導入剤を調製する際に、分散液を所望の濃度に調製し易いからである。
【0036】
(実施形態2)
遺伝子導入剤
本発明の遺伝子導入剤は、前述のように、粘土鉱物を含む前記遺伝子導入用担体と、これに担持された遺伝子とを含む。
【0037】
前記遺伝子導入剤において、前記遺伝子(A)と粘土鉱物(B)との混合割合(重量比A:B)は、1:0.001〜1:1の範囲であることが好ましく、より好ましくは1:0.01〜1:0.1の範囲、特に好ましくは1:0.01〜1:0.05の範囲である。
【0038】
前記遺伝子導入用担体に担持させる遺伝子は、特に制限されないが、例えば、目的遺伝子を発現ベクターに組込んだ組換えプラスミド、あるいは、2本鎖cDNA、1本鎖DNA、RNA等があげられる。また、このような遺伝子の種類は、本発明の用途等によっても適宜決定でき、例えば、遺伝子治療等のために目的遺伝子からのタンパク質合成を目的とする場合には、組換えプラスミドが好ましく、また、アンチセンス療法等を目的とする場合には、1本鎖DNA、RNAが好ましい。
【0039】
この遺伝子導入剤の形態としては、前記遺伝子導入用担体とこれに担持された遺伝子とを含んでいれば特に制限されず、例えば、これらが分散された分散液であってもよいし、凍結乾燥品であってもよい。また、前記分散液を凍結させた形態でもよく、この場合は、使用時に解凍すればよい。
【0040】
次に、本発明の遺伝子導入剤について、遺伝子として組換えプラスミドを使用する場合の調製方法の一例を示す。まず、目的の遺伝子を組込んだ組換えプラスミドを含むプラスミド分散液と、前記粘土鉱物(遺伝子導入用担体)を含む粘土鉱物分散液とを調製する。
【0041】
前記プラスミド分散液における組換えプラスミドの濃度は、特に制限されないが、例えば、10〜100μg/mLの範囲であり、好ましくは10〜50μg/mL、特に好ましくは15〜25μg/mLである。この分散液の分散媒は、特に制限されず、例えば、蒸留水、生理食塩水、PBS(phosphate buffered saline)等があげられ、また、後述するように培養細胞への遺伝子導入に使用する場合には、これらの他に液体培地等を用いてもよい。なお、これらの分散媒は、コンタミネーションを防止するために滅菌処理されていることが好ましい。前記プラスミド分散液のpHは、特に制限されず、例えば、中性付近があげられる。
【0042】
前記粘土鉱物分散液における粘土鉱物の濃度は、特に制限されないが、例えば、0.01〜100μg/mLの範囲であり、好ましくは0.1〜50μg/mL、特に好ましくは0.2〜25μg/mLである。この分散液の分散媒としては、前述と同様のものが使用できる。前記粘土鉱物分散液のpHも、前記プラスミド分散液と同様に特に制限されない。
【0043】
そして、前記プラスミド分散液と粘土鉱物分散液とを混合することによって、遺伝子導入剤を調製できる。このように液中で組換えプラスミドと粘土鉱物とを混合することによって、粘土鉱物の層間に組換えプラスミドが入り込み、遺伝子が担持された複合体が形成できる。なお、前記プラスミド分散液と粘土鉱物分散液とを混合した前記遺伝子導入剤における、組換えプラスミド(A)と粘土鉱物(B)との割合(重量比A:B)は、前述と同様である。
【0044】
また、前記プラスミド分散液と粘土鉱物分散液とを混合した混合液(遺伝子導入剤)は、さらに、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリリジン、ポリヒスチジン等のカチオン性ポリマーを含有してもよく、好ましくはPEIである。このようにPEI等を含有することによって、より一層細胞内への導入効率を向上することができる。
【0045】
このPEIの添加順序は、例えば、前記プラスミド分散液と粘土鉱物分散液とを混合した後に添加することが好ましい。
【0046】
また、前記PEIの添加割合は、特に制限されないが、例えば、プラスミド(A)とPEI(C)の重量比(A:C)が、例えば、1:1であることが好ましい。
【0047】
前記プラスミド分散液と粘土鉱物分散液とを混合した混合液(遺伝子導入剤)は、通常、細胞や生体を対象とするため、そのpHは特に制限されないが、例えば、pHは中性付近(例えば、pH約6.5〜7.5)に設定すればよい。また、前述のように、粘土鉱物の層間に交換性陽イオンを含み、前記層間に遺伝子がインターカレートし、前記層間の陽イオンに配位する場合あるいは粘土層との水素結合によって前記層間に担持される場合にも、同様に制限されず、例えば、中性付近のpHに調整すればよい。なお、このような遺伝子導入剤によれば、例えば、プラスミドを保持させた状態で、酸性条件下におかれた後であっても、影響を受けることとなく遺伝子の導入を行うことができる。このため、例えば、強酸性条件である胃を通過しても遺伝子導入が影響を受けることがなく、後述のような経口投与に適しているといえる。
【0048】
この分散液形態の遺伝子導入剤は、このまま使用してもよいし、前述のように使用時まで凍結させてもよい。また、乾燥状態にする場合には、例えば、凍結乾燥、スプレードライ等の方法が適用でき、使用時に前述のような分散媒に分散させればよい。
【0049】
(実施形態3)
in vitro での遺伝子導入方法
つぎに、in vitro で、培養細胞に前記遺伝子導入剤を用いて目的遺伝子を導入する遺伝子導入方法の一例を説明する。この方法では、目的遺伝子を導入する対象の培養細胞に、前記遺伝子導入剤を添加してインキュベートすればよい。本発明によれば、このように前記遺伝子導入剤を添加後インキュベートするだけで、前記目的細胞に目的遺伝子を導入することができる。
【0050】
培養細胞は、予め、その種類に応じた液体培地で一定時間プレインキュベートした後に、前記遺伝子導入剤を添加して、さらにインキュベートすることが好ましい。このように、前記複合体溶液の添加前に予めプレインキュベートすることによって、例えば、培養細胞への遺伝子導入剤による遺伝子導入をスムーズに行うことができ、また、添加後、一定時間インキュベートを行うことによって、確実に導入遺伝子が核に到達し、転写あるいは翻訳が行われる。
【0051】
前記液体培地の種類は、前述のように細胞に応じて適宜決定でき、特に制限されないが、例えば、細胞の成育環境を安定化できることから、血清を含むことが好ましい。リポフェクトアミンのような従来の遺伝子導入剤は、血清中のタンパク質が遺伝子導入を阻害する場合があるため、血清非存在下で細胞への導入を行う必要があったが、本発明の遺伝子導入剤であれば、血清存在下であっても十分に効率よく遺伝子の導入を行うことができる。
【0052】
培養細胞に対する前記遺伝子導入剤の添加割合は特に制限されないが、例えば、細胞1×106個に対する粘土鉱物の添加割合が0.01〜100μgの範囲となるように、前記遺伝子導入剤を添加することが好ましく、より好ましくは粘土鉱物の添加割合0.1〜50μg、特に好ましくは0.2〜25μgである。また、細胞1×106に対するプラスミドの割合が10〜100μgの範囲となるように、前記遺伝子導入剤を添加することが好ましく、より好ましくはプラスミドの添加割合10〜50μg、特に好ましくは15〜25μgである。
【0053】
目的遺伝子を導入する培養細胞としては、制限されないが、例えば、小腸、鼻粘膜、皮膚組織、皮下組織、骨組織、軟骨組織および歯周等の種々の細胞に本発明の方法を適用することができる。また、ヒト細胞やヒト以外の動物細胞、これらの他にも、例えば、微生物、魚類、爬虫類、両生類、鳥類、昆虫等、全ての生物種の細胞にも適用できる。前記細胞培養に関しても、前述のように特に制限されず、細胞の種類に応じた公知の液体培地を用いて、公知の培養条件に従って行うことができる。
【0054】
以下に培養条件の具体例を示すが、前述のように条件は培養細胞の種類に応じて適宜決定すればよいため、これらには限定されない。例えば、培養細胞に前記遺伝子導入剤を添加する前、予め、細胞を培養(プレインキュベート)する場合、その培養時間は、例えば、18〜30時間であることが好ましく、より好ましくは18〜24時間、特に好ましくは22〜24時間である。一方、前記遺伝子導入剤添加後のインキュベート時間は、例えば、前記組換えプラスミドが細胞内に導入されればよく、特に制限されないが、例えば、3時間以上であり、好ましくは18時間以上、より好ましくは24時間以上、特に好ましくは48時間以上である。この時間の上限は、特に制限されないが、例えば、3時間〜72時間程度に設定してもよい。培養温度は、通常、37℃であり、5%二酸化炭素の存在下で培養することが好ましい。
【0055】
以上の方法によって得られた、遺伝子を導入した細胞は、以下のような治療に使用することも可能である。例えば、ある疾患の原因となる欠損遺伝子等を本発明の導入方法によって培養細胞に導入する。そして、得られた遺伝子導入細胞を、その疾患の患部に投与する。そうすれば、投与した細胞における導入遺伝子より、コードされたタンパク質が発現し、この発現したタンパク質の供給によって、疾患の症状の緩和や治癒を図ることができる。なお、前記投与方法としては、例えば、患部への注射、担体に前記遺伝子導入細胞を担持させて、患部や皮下もしくは腹腔に埋め込む外科的処置等がある。
【0056】
(実施形態4)
つぎに、in vivo で、細胞が生体細胞であって、生体に前記遺伝子導入剤を投与して、前記遺伝子導入剤により器官または組織の細胞に遺伝子を導入する一例を説明する。この方法では、前記遺伝子導入剤を、例えば、経口投与によって、または目的の器官や組織に外科的処置や注射等により投与するだけで、生体内の目的の細胞に前記目的遺伝子(アンチセンスも含む)を導入することができる。
【0057】
生体の中でも、例えば、小腸細胞に遺伝子を導入する場合には、前記遺伝子導入剤を経口投与することが好ましい。経口投与は簡便であり、また投与量も治療の結果に応じて調整し易いことからも好ましく、しかも、本発明の遺伝子導入剤を使用した場合、目的遺伝子を選択的に確実に前記小腸細胞へ導入できるからである。このように小腸に選択的に遺伝子を導入できるのは、以下の理由によると考えられる。
【0058】
前述のように、例えば、交換陽イオン型の層状粘土鉱物と遺伝子を混合させることによって、前記遺伝子は層間の前記陽イオンと置き換わり、そのリン酸基が前記層の水酸基と水素結合して前記層間に担持されることとなる。このように水素結合によって遺伝子が担持された、遺伝子と粘土鉱物との複合体は、pHが酸性条件下であると電荷が大きくなるため、前記遺伝子は前記層間でしっかりと担持される。一方、中性またはアルカリ性条件下では、電荷が小さくなるために、水素結合が解離して遺伝子は遊離し放出される。前記粘土鉱物は、このようなメカニズムを持つため、前記遺伝子導入剤を経口投与すると、遺伝子を放出することなく酸性条件の胃を通過し、小腸へと達するのである。また、粘土鉱物であるため胃で消化されることもない。そして、小腸は中性付近のpHであって、胃に比べて電荷が小さくなるため、前記遺伝子導入剤の粘土鉱物から遺伝子が放出されるのである。従来の遺伝子導入用担体であるリポゾーム等は、経口投与すると胃で消化されてしまい、また、静脈注射した場合も様々な細胞に入り込むため、小腸への選択的投与が困難であった。しかし、このように本発明によれば、簡便な経口投与によって、小腸への選択的投与を容易に行うことが可能となるのである。
【0059】
このような小腸への選択的な遺伝子導入剤の接触により、腸管免疫を利用したアレルギー治療を、簡便な経口投与で実現することもできる。例えば、各種アレルギーの原因となる遺伝子を遺伝子導入用担体に担持させて、遺伝子導入剤を調製し、これを定期的にアレルギー患者に経口投与する。すると、前記遺伝子導入剤は、小腸に運ばれ、小腸細胞内で選択的に目的遺伝子を放出するため、腸管免疫において免疫寛容の現象がおき、アレルギー症状が減退されるのである。このような方法は、従来の減感作療法に比べて、例えば、注射による頻回投与の必要性がなく、また、遺伝子を投与するため一度に大量のタンパク質が投与された際にみられるアナフィラキシーショックの危険性も少ないという理由等からも、患者への負担が少なく優れた療法であるといえる。また、腸内細胞は、通常、二週間程度で剥がれ落ちるため、遺伝子導入された細胞が長期間にわたって体内に残ることもないため、本発明を適用すれば、より一層安全性に優れた治療方法を提供できるといえる。
【0060】
in vivo での前記遺伝子導入方法は、例えば、ヒトの生体にも適用でき、また、ヒト以外の動物の生体にも適用することができる。また、前記遺伝子導入剤の投与量は、その目的や生体の種類等に応じて適宜決定できるが、例えば、細胞と粘土鉱物または遺伝子の割合は、前述のin vitro での導入と同じ割合でもよい。
【0061】
以上のように本発明のin vivo での遺伝子導入方法によれば、安全性に優れた遺伝子の導入が可能になり、さらに経口投与を行えば、外科的処置や注射を行うことなしに、選択的に小腸への遺伝子導入が可能になるため、遺伝子治療に有用な方法であるといえる。
【0062】
【実施例】
(実施例1)
粘土鉱物を用いて、in vitroでの、小腸上皮細胞への緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子の導入を行った。
【0063】
1.粘土鉱物の精製
粘土鉱物としては、クニミネ工業製「クニピアF」(鉱物種:モンモリロナイト)を以下の方法で精製した精製品を使用した。
【0064】
a)有機物処理
前記粘土5gに、6重量%過酸化水素水(和光、特級)100mlを加え、30〜40℃で発泡がなくなるまで加温した。発泡終了後、残留した過酸化水素を除くため、さらに20分加温処理を行った。
【0065】
b)脱鉄処理
前記過酸化水素水で処理した前記粘土分散液20ml(粘土含有量1g)を、ウォーターバスで80℃に加熱した。ここに0.3Mクエン酸ナトリウム(和光、特級)水溶液200mlおよび1M炭酸水素ナトリウム(和光、特級)水溶液25mlを加えマグネティックスターラーで撹拌した。十分に混合した後、さらに、ハイドロサルファイトナトリウム(和光、化学用)5gを加えて撹拌し、この混合溶液を15分間静置した。この過程は全て80℃で行った。
【0066】
c)ナトリウム型への誘導
脱鉄処理を行った混合溶液に塩化ナトリウム飽和水溶液50mlを加えて遠心分離を行った。回収した粘土に、前記飽和水溶液を再度添加して懸濁し、遠心分離を行った、遠心分離は、商品名クボタ KR−20000T(クボタ工業社製)を使用して、3000G、10分の条件で、計3回行った。
【0067】
遠心分離によって回収した粘土に、0.3Mクエン酸ナトリウム水溶液200mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液 50mlを加えて懸濁洗浄し、再度遠心分離によって粘土を回収した。次に、回収した粘土に2重量%炭酸水素ナトリウム水溶液250mlを加えて懸濁し、90℃で15分間加熱処理した後遠心分離を行った。さらに回収した粘土に、1M酢酸ナトリウム(和光純薬工業社製、特級)水溶液と1M塩化ナトリウム水溶液との混合液(体積比1:1)200mlを加えて洗浄し、遠心分離を行った。この洗浄処理は3回行った。つぎに、1M塩化ナトリウム水溶液を用いて、同様にして3回洗浄処理を行った。
【0068】
d)透析
遠心分離によって回収した粘土を蒸留水に懸濁し、この懸濁液を透析膜(商品名Seamless Cellulose Tubing (20/32):VISKASE SALES CORP.製)に入れ、蒸留水で透析した。透析後の粘土は、遠心分離によって回収し、凍結乾燥した。この凍結乾燥品をナトリウム型モンモリロナイト(遺伝子導入用担体)として使用した。
【0069】
2.粘土と遺伝子の複合化
小腸上皮細胞に導入するプラスミドとしては、文献(Niwa, H., Yamamura, K., and Miyazaki, J.: Efficient selection for high−expression transfectants with a novel eukaryotic vector. Gene, 108, 193−199 (1991).)に記載の方法で構築したプラスミドベクター pCAGGS に、緑色蛍光タンパク質(EGFP)遺伝子(プロメガ社製)組み込んだ 組換えプラスミド pCAGGS−EGFP を使用した。
【0070】
前記組換えプラスミドpCAGGS−EGFP を含むプラスミド分散液(100μg/ml)を、下記組成の液体培地(以下同じ)で5倍に希釈した。一方、凍結乾燥したナトリウム型モンモリロナイトを蒸留水に懸濁し、所定の濃度(20、10、2μg/ml)のモンモリロナイト分散液を調製した。さらに、前記モンモリロナイト分散液に液体培地を加えて、10倍(体積)に希釈した。そして、前記希釈プラスミド分散液500μlと前記希釈モンモリロナイト分散液500μlとを混合して、トータル1mlのプラスミド・モンモリロナイト複合体分散液とした。これらの複合体分散液におけるモンモリロナイトの最終濃度はそれぞれ1μg/ml、0.5μg/ml、0.1μg/mlであり、また、プラスミド10μg当たりのモンモリロナイト量はそれぞれ1μg、0.5μg、0.1μgである。この複合体分散液を、ゴミ等の夾雑物を除去するために、30Gで2分程度遠心して、その上澄み溶液500μLを遺伝子導入剤として、以下の工程に使用した。
【0071】
(液体培地組成)
Dulbecco’s modified Eagle medium (日水製薬社製)
10% fetal bovine serum(大日本製薬社製)
0.1 unit/ml インシュリン(Sigma社製)
100 unit/ml ペニシリン(明治薬品社製)
100μg/ml ストレプトマイシン(ナカライテスク社製)
50 ng/ml fungisone(ナカライテスク社製)
【0072】
3.In vitro での遺伝子導入
小腸上皮細胞は、ATCCより分譲されたIEC−6(ATCC−CRL1592)を使用した。前記小腸上皮細胞の培養は、前記液体培地を使用し、炭酸ガス濃度が5%となるように炭酸ガスインキュベーターで調整した。
【0073】
具体的には、6cm培養ディッシュ(ファルコン社製)に液体培地2.5mlを加え、ここに小腸上皮細胞を1×106個播種して37℃で24時間培養した後、前記遺伝子導入剤500μlを加えた。これを37℃で24時間培養した後、全細胞を回収した。
【0074】
なお、ブランクとして、組換えプラスミドを導入していない細胞を、対照例と、非ウイルスベクターであるPEIによって前記組換えプラスミドpCAGGS−EGFP を導入した細胞をそれぞれ調製した。PEIによる組換えプラスミドの導入は、以下に示す方法により行った。
【0075】
前記プラスミド・モンモリロナイト複合体分散液の調製に使用した前記希釈プラスミド分散液500μL(プラスミド20μg)と、30重量%PEI溶液(商品名P−70、和光純薬工業社製)を前記液体培地で5倍(体積)希釈した希釈液500μLとを混合した(プラスミド/PEI重量比=1/1)。この混合液500μLを、前記上澄み溶液の代りに遺伝子導入剤として使用する以外は、前述と同様にして培養細胞への遺伝子の導入を行った。
【0076】
4.遺伝子導入の確認
前記回収した全細胞からtotal RNA を抽出し、RT−PCR 法によってEGFP遺伝子の転写産物を増幅させ、組換えプラスミド pCAGGS−EGFP による細胞内へのEGFP遺伝子の導入を確認した。
【0077】
まず、回収した前記全細胞から商品名Isogene (ニッポンジーン社製)を用いてそのプロトコールに従って total RNA を抽出した。
【0078】
つぎに、このtotal RNA から、商品名BcaBest RNA kit (Ver. 1.1)(宝酒造社製)を用いてcDNAを調製した。前記BcaBest RNA kitの使用条件は、キット添付のプロトコールに従った。
【0079】
調製したcDNAを鋳型として、商品名 ExTaq (宝酒造社製)および商品名i−Cycler サーマルサイクラー(バイオラッド社製)を用いたPCR法により、EGFP遺伝子転写産物を増幅させた。前記 ExTaq キットの使用条件および試薬溶液等は、商品に添付のプロトコールに従った。なお、PCRによる増幅反応が正常に行われていることを確認するために、ポジティブコントロールとしてβ−アクチンのRNAの増幅を共に行った。以下に、使用したプライマー配列およびPCRの条件を示す。
【0080】
(使用したプライマー)
センスプライマー ; 5’−AGCAAGGGCGAGGAGCTGTT−3’ (配列番号1)
アンチセンスプライマー; 5’−GTAGGTCAGGGTGGTCACGA−3’ (配列番号2)
【0081】
【0082】
得られたPCR産物について、0.8%アガロースゲルを用いたアガロースゲル電気泳動を行った。マーカーとして、バイオラボ社製の 100bp ladder マーカーを使用した。これら電気泳動の結果を図1に示す。
【0083】
図1において、レーン1〜6は、小腸上皮細胞から抽出したmRNAの結果であり、レーンMがマーカーである。レーン1および3は組換えプラスミドを導入してない細胞、レーン2はPEIにより組換えプラスミドを導入した細胞についての結果である。そして、レーン4は、前記重量比が1:0.10である遺伝子導入剤、レーン5は、前記重量比が1:0.05である遺伝子導入剤、レーン6は、前記重量比が1:0.01である遺伝子導入剤で、それぞれ処理した細胞の結果である。これらの中で、レーン4〜6が実施例、レーン1および3がブランク、レーン2が対照例である。なお、EGFP遺伝子の増幅長は250bpであり、PCRポジティブコントロールのβ−アクチン遺伝子の増幅長は350bpである。
【0084】
図1に示すように、組換えプラスミドを導入していないブランクのレーン1および3には、PEIを用いた対照例のレーン2と同じ移動度にEGFP遺伝子のバンドが検出されなかったのに対して、実施例のレーン4〜6では、前記対照例におけるEGFP遺伝子のバンドと同じ移動度にバンドが検出された。このことから、モンモリロナイトを用いた実施例によれば、in vitro において、従来のPEIと同様に遺伝子導入を行えることがわかった。なお、レーン1〜6の全てのPCR産物についてβ−アクチンのバンドが検出されていることから、PCRが確実に行われていることは明らかである。
【0085】
(実施例2)
粘土鉱物を用いて、in vivoでの小腸上皮細胞への緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子の導入を行った。なお、導入する組換えプラスミドとしては、前記実施例1で調製した pCAGGS−EGFP を使用し、粘土鉱物は、前記実施例1で調製したナトリウム型モンモリロナイトを使用した。
【0086】
1.粘土と遺伝子の複合化
組換えプラスミドの希釈、ナトリウム型モンモリロナイトの懸濁・希釈には、滅菌済みの蒸留水を使用し、組換えプラスミド濃度が50μg/300μlであるプラスミド分散液、ナトリウム型モンモリロナイト濃度が2.5μg/300μlのモンモリロナイト分散液を調製した。そして、前記両者を300μLずつ混合した分散液を、夾雑物除去のために30G(50rpm)で2分程度遠心して、その上澄み溶液を遺伝子導入剤とする以外は、前記実施例1と同様にして、粘土と遺伝子の複合化を行った。
【0087】
2.In vivo での遺伝子導入
BALB/C マウス(♂)6週令に、ゾンデを用いて前記遺伝子導入剤500μlを投与した。そして、48時間後、解剖して胃および小腸を取り出し、図2に示すように、胃と小腸とに分画して、それぞれホモジナイザーで破砕した。なお、小腸は長さ約1.5cmとなるよう3つに分画した(同図において、小腸1、小腸2、小腸3)。破砕した各分画から、前記実施例1と同様にして、total RNAの抽出および cDNA の調製を行い、増幅させたPCR産物についてアガロースゲル電気泳動を行った。この電気泳動によって、 EGFP遺伝子の転写産物を検出し、in vitroにおける、組換えプラスミド pCAGGS−EGFP による各組織細胞内へのEGFP遺伝子の導入を確認した。なお、アガロースゲル電気泳動の条件は、前記実施例1と同様とした。
【0088】
これらの電気泳動の結果を図3に示す。図3において、レーン1,5,9は胃についての結果、レーン2,6,10は、小腸1についての結果、レーン3,7,11は小腸2についての結果、レーン4,8,12は、小腸3についての結果であり、レーンMがマーカー(図1と同じ)である。また、レーン1〜4のグループA(同図においてA)は、組換えプラスミドを導入していないマウス、レーン5〜8のグループB(同図においてB、レーンMは除く)は、PEIにより組換えプラスミドを導入したマウスの結果である。レーン9〜12のグループC(同図においてC)は、組換えプラスミドとモンモリロナイトの重量比が1:0.02である遺伝子導入剤で処理したマウスの結果である。これらの中で、グループAがブランク、グループBが対照例、グループCが実施例である。なお、EGFP遺伝子の増幅長は250bpであり、PCRコントロールのβ−アクチン遺伝子の増幅長は350bpである。
【0089】
図3の電気泳動に示すように、組換えプラスミドを導入していないブランクのレーン1〜4には、PEIを用いた対照例のレーン5〜8と同じ移動度にEGFP遺伝子のバンドが検出されなかったのに対して、実施例のレーン9〜12では、前記対照例におけるEGFP遺伝子のバンドと同じ移動度にバンドが検出された。このことから、モンモリロナイトを用いた実施例によれば、in vivo において、従来のPEIと同様に遺伝子導入を行えることがわかった。なお、レーン1〜12の全てにおいてβ−アクチンのバンドが検出されていることから、全てについてPCRによって増幅されていることは明らかである。
【0090】
(実施例3)
粘土鉱物およびPEIを用いて、in vitroでの小腸上皮細胞へのβ−ガラクトシダーゼ(lacZ)遺伝子の導入を行った。なお、導入する組換えプラスミドとしては、前記実施例1と同じプラスミドベクターに、lacZ遺伝子を組み込んだ組換えプラスミド pCAGGS−lacZ を使用した。
【0091】
前記実施例1で調製した上澄み溶液(実施例1における遺伝子導入剤)100μlに、さらにPEI 1μgを添加した。これを遺伝子導入剤として使用し、前記実施例1と同様にして小腸上皮細胞に遺伝子導入を行った。なお、前記遺伝子導入剤におけるプラスミドと粘土鉱物とPEIの重合比は、「1:0.01:1」である。また、比較例として、前記組換えプラスミドのみ1μgを投与し、対照例として、前記実施例1と同じ条件でPEIにより前記組換えプラスミドを導入した(プラスミド:PEI重合比=1:1)。
【0092】
そして、遺伝子導入の後、細胞を24時間培養(培養液100ml)した。培養後、前記培養液にグルタルアルデヒドを終濃度1%となるように添加し、細胞を5〜10分固定した。そして、前記細胞を洗浄した後、下記組成のX−gal溶液を添加して37℃でインキュベートした。このX−gal(5−フ゛ロモ−4−クロロ−3−イント゛リル−β−D−カ゛ラコヒ゜ラノシト゛)染色によって、lacZ遺伝子の導入および発現を確認した。なお、lacZ遺伝子が導入され、lacZを発現した細胞は、X−galの分解により青色に染色され、lacZ遺伝子が導入されていない細胞は染色されない。
【0093】
【0094】
これらの結果を図4に示す。図4は、遺伝子導入を行った細胞について、発現したlacZによるX−gal分解(青色発色)の有無を示す写真であり、同図(A)はプラスミドのみを添加した比較例であり、(B)はPEIにより遺伝子導入を行った対照例、(C)が実施例3の結果である。前記(A)に示すように、プラスミドのみを添加した場合、青色コロニーは確認されず、プラスミドが導入されなかったことがわかる。また、前記(C)に示す実施例3は、(B)に示すPEIのみで遺伝子導入を行った対照例に比べて、青色コロニーが多く確認された。このことから、プラスミドと粘土鉱物との複合体である本発明の遺伝子導入剤に、さらにPEIを添加することによって、遺伝子導入効率がさらに向上されるといえる。
【0095】
(実施例4)
本発明の遺伝子導入剤について、pH(強酸性)の影響を確認した。前記実施例1で調製した上澄み溶液(実施例1における遺伝子導入剤)100μlに、さらにPEI 1μgを添加した。そして、この溶液を塩酸によってpH1に調整し、室温で30分間処理した後、水酸化ナトリウムによって再度pHを中性に戻した。これを遺伝子導入剤として使用した以外は、前記実施例3と同様に遺伝子導入を行い、lacZの発現を同様にして確認した。
【0096】
これらの結果を図5に示す。図5は、遺伝子導入を行った細胞について、発現したlacZによるX−gal分解(青色発色)の有無を示す写真であり、同図(A)はプラスミドのみを添加した比較例であり、(B)はPEIにより遺伝子導入を行った対照例、(C)が実施例4の結果である。前記(A)に示すように、プラスミドのみを添加した場合、青色コロニーは確認されず、プラスミドが導入されなかったことがわかる。また、前記(C)に示す実施例3は、(B)に示すPEIのみで遺伝子導入を行った対照例に比べて、青色コロニーが多く確認された。さらに、前記実施例3の結果を示す図4(B)と、図5(B)とをそれぞれ比較した結果、図4(B)に比べて、図5(B)では青色コロニーがかなり減少していることがわかる。つまり、PEIのみを使用した場合、強酸条件下での処理によって、遺伝子導入効率が低下したといえる。これに対して、図5(C)と図4(C)とを比較しても、青色コロニーの数はほとんど違いが見られてなかった。つまり、本発明の遺伝子導入剤によれば、強酸条件にさらされても遺伝子導入が影響を受けにくく、優れた効率で遺伝子導入を行うことができるといえる。したがって、例えば、強酸条件である胃を通過できるといえ、前述のような経口投与での使用に適していると言える。
【0097】
【発明の効果】
このように、本発明の遺伝子導入用担体を用いれば、高い安全性で細胞に目的遺伝子を導入することができる。このため、前記遺伝子導入用担体を用いた本発明の遺伝子導入方法は、遺伝子工学の研究分野や臨床医療の分野において、非常に有用である。
【0098】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例において、遺伝子導入細胞の転写産物の電気泳動図である。
【図2】本発明のその他の実施例において、遺伝子を導入したマウスの胃および小腸の切断部位を示した概略図である。
【図3】前記実施例において、遺伝子導入細胞の転写産物の電気泳動図である。
【図4】本発明のさらにその他の実施例において、遺伝子導入を行った細胞について、発現したlacZによるX−gal分解(青色発色)の有無を示す写真である。
【図5】本発明のさらにその他の実施例において、遺伝子導入を行った細胞について、発現したlacZによるX−gal分解(青色発色)の有無を示す写真である。
Claims (31)
- 遺伝子を担持し、かつ、細胞内に前記遺伝子を導入するための担体であって、粘土鉱物を含むことを特徴とする遺伝子導入用担体。
- 粘土鉱物が層状粘土鉱物である請求項1記載の遺伝子導入用担体。
- 粘土鉱物が、カオリナイト群、バイロフィライト−タルク群、スメクタイト群、バーミュキュライト群、雲母群、脆雲母群、緑泥石群およびセピオライト−パリゴスカイト群からなる群から選択された少なくとも一つの結晶質型粘土鉱物である請求項1または2記載の遺伝子導入用担体。
- 粘土鉱物が、モンモリロナイト、バーミキュライトおよびイライトからなる群から選択された少なくとも一つの粘土鉱物である請求項3記載の遺伝子導入用担体。
- 粘土鉱物が、有機物が除去された粘土鉱物である請求項1〜4のいずれか一項に記載の遺伝子導入用担体。
- 粘土鉱物が、脱鉄処理された粘土鉱物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の遺伝子導入用担体。
- 粘土鉱物の純度が、85%以上である請求項1〜6のいずれか一項に記載の遺伝子導入用担体。
- 粘土鉱物が、層間に交換性陽イオンを有する請求項2〜7のいずれか一項に記載の遺伝子導入用担体。
- 交換性陽イオンが、ナトリウムイオン、アンモニウムイオンおよび第4級アンモニウムイオンからなる群から選択された少なくとも一つの陽イオンである請求項8記載の遺伝子導入用担体。
- 交換性陽イオンが、アミノ酸、アミン化合物、アミド化合物、カチオン性界面活性剤およびカチオン性金属錯体からなる群から選択された少なくとも一つの物質の陽イオンである請求項8記載の遺伝子導入用担体
- 酸性条件下では遺伝子を放出せず、中性またはアルカリ性条件下で遺伝子を放出する請求項1〜10のいずれか一項に記載の遺伝子導入用担体。
- 請求項1〜11のいずれか一項に記載の遺伝子導入用担体と、これに担持された遺伝子とを含む遺伝子導入剤。
- 前記遺伝子(A)と粘土鉱物(B)との混合割合(重量比A:B)が、1:0.001〜1.1の範囲である請求項12記載の遺伝子導入剤。
- 前記遺伝子が、目的遺伝子をベクターに組込んだ組換えベクターである請求項12または13記載の遺伝子導入剤。
- ベクターがプラスミドである請求項14記載の導入方法。
- 形態が分散液の形態である請求項12〜15のいずれか一項に記載の遺伝子導入剤。
- pHが、6.5〜7.5の範囲である請求項16記載の遺伝子導入剤。
- さらにカチオン性ポリマーを含む請求項12〜17のいずれか一項に記載の遺伝子導入剤。
- カチオン性ポリマーが、ポリエチレンイミン、ポリリジンおよびポリヒスチジンからなる群から選択された少なくとも一つのポリマーである請求項18記載の遺伝子導入剤。
- 請求項12〜19のいずれか一項に記載の遺伝子導入剤を用いて、細胞に遺伝子を導入させる遺伝子導入方法。
- 細胞と遺伝子導入剤に含まれる粘土鉱物との割合が、細胞1×106個に対して、粘土鉱物0.01〜100μgの範囲である請求項20記載の遺伝子導入剤。
- 細胞と遺伝子導入剤に含まれる担持された遺伝子との割合が、細胞1×106個に対して、遺伝子10〜100μgの範囲である請求項20または21記載の導入方法。
- 細胞が培養細胞である請求項20〜22のいずれか一項に記載の導入方法。
- 培養細胞に前記遺伝子導入剤を添加して遺伝子を導入する前に、前記培養細胞をインキュベートする請求項21記載の導入方法。
- 遺伝子を導入するために培養細胞に前記遺伝子導入剤を添加した後、3〜72時間の範囲でインキュベートする請求項21または22記載の導入方法。
- 細胞が生体細胞であって、生体内に前記遺伝子導入剤を投与して、前記遺伝子導入剤により器官または組織の細胞に遺伝子を導入する請求項18〜20のいずれか一項に記載の導入方法。
- 投与が経口投与である請求項24記載の導入方法。
- 遺伝子を導入する器官が、小腸である請求項24または25記載の導入方法。
- 生体がヒトである請求項24〜26のいずれか一項に記載の導入方法。
- 生体がヒト以外の動物である請求項24〜26のいずれか一項に記載の導入方法。
- 請求項18〜28のいずれか一項に記載の導入方法により遺伝子を導入した細胞。
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