JP2004064981A - ブラシレスdcモータおよび圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡単な回転子構造で磁石磁束によるトルクとリラクタンストルクを有効に使うことができ、しかも、誘起電圧を略正弦波状にするためのモータ設計を簡単に達成する。
【解決手段】永久磁石4を挿入する永久磁石収容空間3の端部から連続する回転子磁極間の磁束短絡を防止する磁束短絡防止空間5と、回転子内周側鉄芯と回転子外周側鉄芯7を連結する回転子リブ6とを備え、その回転子リブ6を回転子1極当たりの磁極角度の5%以上15%以下とし、かつ、回転子外周側鉄芯7の角度を80%以上とした。
【選択図】 図1
【解決手段】永久磁石4を挿入する永久磁石収容空間3の端部から連続する回転子磁極間の磁束短絡を防止する磁束短絡防止空間5と、回転子内周側鉄芯と回転子外周側鉄芯7を連結する回転子リブ6とを備え、その回転子リブ6を回転子1極当たりの磁極角度の5%以上15%以下とし、かつ、回転子外周側鉄芯7の角度を80%以上とした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、永久磁石を回転子の内部に埋め込んでなるブラシレスDCモータおよび圧縮機に関し、特に、低損失でかつ、低振動・低騒音なブラシレスDCモータおよびこのブラシレスDCモータを駆動源とする圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、永久磁石を回転子の内部に埋め込んでなるブラシレスDCモータが知られている。
【0003】
このようなブラシレスDCモータ、特にリラクタンストルクを併用する永久磁石を回転子に埋め込んでなるブラシレスDCモータにおいては、回転子鉄芯が回転子の表面に存在しているので、固定子と回転子の間の磁気的エアギャップが小さく、回転子の表面の鉄芯の形状に起因して磁束が流れる経路が複雑になり、ひいてはその磁束の急激な変化などに起因して高調波成分の磁束が発生する。そして、その高調波成分の磁束はトルク発生には寄与せず、単に高調波成分の鉄損として損失になってしまうので、モータ効率が悪くなる。
【0004】
また、上記のように磁束の急激な変化などで発生する高調波成分の磁束は損失以外に、高調波のモータ加振力となり、振動・騒音の要因となっていた。
【0005】
ブラシレスDCモータのこれらの問題点を考慮して、特開平11−98731号公報に記載されたブラシレスDCモータ、および特開2001−112202号公報に記載されたブラシレスDCモータが提案されている。
【0006】
具体的には、特開平11−98731号公報には、回転子表面の鉄芯磁極角度を60°(約67%)として、漏れ磁束を防止し、効率向上とコギングトルク(無負荷トルク脈動)を低減するようにしたブラシレスDCモータが記載されている。
【0007】
また、特開2001−112202号公報には、永久磁石の固定子側の面の周方向幅が回転子の軸に対してなす角度を26°〜36°(約57%〜80%)のあるポイントに設定することにより、誘起電圧の歪みを最小とすることができるブラシレスDCモータが記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特開平11−98731号公報に記載されたブラシレスDCモータでは、磁束の高調波成分に関しては全く記載されておらず、磁束の集中により鉄損が増加してしまう可能性があり、また、鉄芯磁極角度が小さく、かつ、リブが小さいため、リラクタンストルクが大きく使えない。
【0009】
換言すれば、コギングトルクを小さくし(振動・騒音を小さくし)、高効率化を図るためには、リラクタンストルクを犠牲にすることが必要になってしまう。
【0010】
特開2001−112202号公報に記載されたブラシレスDCモータ(永久磁石回転電機)では、永久磁石の固定子側の面の周方向幅が回転子の軸に対してなす角度の範囲内で誘起電圧の歪みが最小になるポイントを設定しなければならないので、ピンポイント設計が必要となり、実用性に欠けることになってしまう。
【0011】
また、永久磁石の横幅を大きくとることができず、効率が悪化してしまう。
【0012】
【発明の目的】
この発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な回転子構造で磁石磁束によるトルクとリラクタンストルクを有効に使うことができ、しかも、誘起電圧を略正弦波状にするためのモータ設計を簡単に達成することができるブラシレスDCモータを提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1のブラシレスDCモータは、永久磁石を挿入する永久磁石収容空間端部から連続する回転子磁極間の磁束短絡を防止する磁束短絡防止空間と、回転子内周側鉄芯と回転子外周側鉄芯を連結する回転子リブとを備え、その回転子リブを回転子1極当たりの磁極角度の5%以上15%以下とし、かつ、回転子外周側鉄芯の角度を80%以上としたものである。
【0014】
請求項2のブラシレスDCモータは、回転子磁極間の磁束短絡を防止する磁束短絡防止空間と、回転子内周側鉄芯と回転子外周側鉄芯を連結する回転子リブとを備え、磁束短絡防止空間を永久磁石の径方向の厚み以上に設定したものである。
【0015】
請求項3のブラシレスDCモータは、固定子の歯に巻線を直巻きしてなるものである。
【0016】
請求項4のブラシレスDCモータは、両側の磁束短絡防止空間に永久磁石を配置してなるものである。
【0017】
請求項5のブラシレスDCモータは、片側のみの磁束短絡防止空間に永久磁石を配置してなるものである。
【0018】
請求項6のブラシレスDCモータは、各磁極に対応する永久磁石として、平板の永久磁石をV字形状に埋め込んでなるものを採用するものである。
【0019】
請求項7のブラシレスDCモータは、各磁極に対応する永久磁石として、板状の永久磁石を回転子外周側を中心とする円弧形状に埋め込んでなるものを採用するものである。
【0020】
請求項8の圧縮機は、請求項1から請求項7の何れかのブラシレスDCモータを駆動源とするものである。
【0021】
【作用】
請求項1のブラシレスDCモータであれば、永久磁石を挿入する永久磁石収容空間端部から連続する回転子磁極間の磁束短絡を防止する目的の磁束短絡防止空間と、回転子内周側鉄芯と回転子外周側鉄芯を連結する回転子リブとを備え、その回転子リブを回転子1極当たりの磁極角度の5%以上15%以下とし、かつ、回転子外周側鉄芯の角度を80%以上としているので、簡単な回転子構造で磁石磁束によるトルクとリラクタンストルクを有効に使うことができ、しかも、誘起電圧を略正弦波状にするためのモータ設計を簡単に達成することができる。
【0022】
さらに説明する。
【0023】
高調波加振力成分を低減するには1極当たりの回転子外周側鉄芯の割合を大きくすることが好ましく、特に磁極角度を70%以上に設定することによって大きく電圧歪を低減できる。
【0024】
また、回転子リブが回転子1極当たりの磁極角度の割合に対して、電圧歪率をみれば、1極当たりの磁極角度の割合が大きくなるほど、電圧歪率が大きくなる。したがって、高調波磁束成分を低減するには1極当たりの回転子外周側鉄芯の割合を小さくすることが好ましい。
【0025】
さらに、回転子リブの役割としては、内周側鉄芯と外周側鉄芯とを接続し、回転子鉄芯を一体化させる役割と、リブを通る磁束(q軸磁束)にてリラクタンストルクを発生させる役割とがある。そして、回転子リブ角度が大きくなるとモータトルクは増加し、モータ電流を低減でき、結果的に巻線に発生するモータ電流による銅損を低減できる。
【0026】
したがって、回転子リブを回転子1極当たりの磁極角度の5%以上15%以下とし、かつ、回転子外周側鉄芯の角度を80%以上にすることによって、高調波磁束の発生を大幅に抑制し、しかも発生トルクを大きくすることができる。
【0027】
この結果、簡単な回転子構造で磁石磁束によるトルクとリラクタンストルクを有効に使うことができ、しかも、誘起電圧を略正弦波状にするためのモータ設計を簡単に達成することができる。
【0028】
請求項2のブラシレスDCモータであれば、回転子磁極間の磁束短絡を防止する磁束短絡防止空間と、回転子内周側鉄芯と回転子外周側鉄芯を連結する回転子リブとを備え、磁束短絡防止空間を永久磁石の径方向の厚み以上に設定したのであるから、請求項1の作用に加え、回転子内部の磁束の漏れを小さくして、トルクの低下を防止することができる。
【0029】
請求項3のブラシレスDCモータであれば、固定子の歯に巻線を直巻きしてなるのであるから、請求項1または請求項2の作用に加え、巻線コイル長を小さくして銅損を大幅に低減し、ひいては一層の高効率化を達成することができる。
【0030】
請求項4のブラシレスDCモータであれば、両側の磁束短絡防止空間に永久磁石を配置してなるのであるから、請求項1から請求項3の何れかの作用に加え、永久磁石を増加させてモータ電流を低減し、銅損を低減するとともに、回転子鉄芯のバリア付近に磁束が集中しやすい傾向を緩和して磁束の急激な変化を低減し、鉄損をも低減することができる。
【0031】
請求項5のブラシレスDCモータであれば、片側のみの磁束短絡防止空間に永久磁石を配置してなるのであるから、請求項1から請求項3の何れかの作用に加え、永久磁石を増加させてモータ電流を低減し、銅損を低減するとともに、回転子鉄芯のバリア付近に磁束が集中しやすい傾向を緩和して磁束の急激な変化を低減し、鉄損をも低減することができる。
【0032】
請求項6のブラシレスDCモータであれば、各磁極に対応する永久磁石として、平板の永久磁石をV字形状に埋め込んでなるものを採用するのであるから、請求項1から請求項
4の何れかの作用に加え、永久磁石の極当たりの枚数を2枚にすることができる。
【0033】
請求項7のブラシレスDCモータであれば、各磁極に対応する永久磁石として、板状の永久磁石を回転子外周側を中心とする円弧形状に埋め込んでなるものを採用するのであるから、請求項1から請求項4の何れかの作用に加え、永久磁石の極当たりの枚数を1枚にし、かつ、円弧状に永久磁石を配置することで表面積を維持するととともにに生産性を向上することができる。
【0034】
請求項8の圧縮機であれば、請求項1から請求項7の何れかのブラシレスDCモータを駆動源とするのであるから、騒音を低減することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、この発明のブラシレスDCモータおよび圧縮機の実施の形態を詳細に説明する。
【0036】
図1はこの発明のブラシレスDCモータに適用される回転子の構成を示す概略図である。なお、固定子の構成は従来のブラシレスDCモータの固定子と同様であるから図示および説明を省略する。
【0037】
この回転子は、回転子鉄芯1の中心部に回転軸を挿通するための軸穴2を有するとともに、回転子の仮想的な中心軸と平行に延び、かつ中心軸を基準とする所定の半径方向と直交する方向に所定長さだけ延びる磁石収容空間3を有し、しかも磁石収容空間3の中央部に板状の永久磁石4を収容している。なお、図1においては、90°づつずれた半径のそれぞれと直交する方向に延びる4つの磁石収容空間3が示されている。
【0038】
そして、各磁石収容空間3の、対応する半径方向と直交する方向の端部から回転子鉄芯1の外周縁に近接する所定位置まで延びる磁束短絡防止空間5を有している。
【0039】
なお、隣り合う磁石収容空間3の互いに近接する磁束短絡防止空間5どうしの間に位置する回転子鉄芯1の部分をリブ6と称し、磁石収容空間3および対応する磁束短絡防止空間5を基準として軸穴2から離れている回転子鉄芯1の部分を回転子外周側鉄芯7と称する。
【0040】
そして、リブ6を回転子1極当たりの磁極角度の5%以上かつ15%以下の所定角度に設定し、仮想的な中心軸を基準とする回転子外周側鉄芯の角度θpを回転子1極当たりの磁極角度の80%以上の所定角度に設定している。なお、図1において、θr1は仮想的な中心軸を基準とする一方の側のリブ6の1/2の角度であり、リブ角度はθr1とθr2の和である。θr2は仮想的な中心軸を基準とする他方の側のリブ6の1/2の角度である。
【0041】
そして、この構成の回転子を有するブラシレスDCモータであれば、簡単な回転子構造で磁石磁束によるトルクとリラクタンストルクを有効に使うことができ、しかも、誘起電圧を略正弦波状にするためのモータ設計を簡単に達成することができる。
【0042】
さらに説明する。
【0043】
ブラシレスDCモータ内部の磁束の総和は固定子巻線に鎖交される磁束で代表される。固定子巻線に鎖交される磁束の変化(V=dφ/dt:ここでφは巻線に鎖交する磁束)がモータ巻線に電圧として現れる。ここで、モータトータルの磁束の変化をモータ電圧で評価することができる。すなわち、磁束の変化が基本波のみの正弦波であれば、基本波のみの磁束の変化によるモータ鉄損が発生するが、例えば、基本波と3次高調波成分が含まれた磁束の変化である場合には、モータ鉄損は基本波に起因する損失と3次高調波成分に起因する損失を含むことになる。以下、鉄損の評価を行う場合、この電圧の高調波成分に着目し、電圧歪率〔%]=(基本波電圧/高調波電圧の総和)*100を用いる。
【0044】
1)回転子外周側鉄芯の角度と高調波成分との関係
1極当たりの回転子外周側鉄芯の割合に対して電圧歪率を見ると、1極当たりの回転子外周側鉄芯の割合が大きくなるほど、電圧歪率が小さくなる。これはその割合が大きいほど、隣り合う極間の距離が小さくなり、回転子内部、またはエアギャップを通る漏れ磁束が発生し、極間のもれ磁束が固定子側に流れないため、発生するモータ電圧の波形が正弦波状に近くなるためである。よって、高調波加振力成分を低減するには1極当たりの回転子外周側鉄芯の割合を大きくする方が良い。磁極角度に対する電圧歪率を表す図2を参照すれば、磁極角度を70%以上にすることにより、電圧歪を大幅に低減することができ、しいては高調波加振力成分を低減できる。
【0045】
2)回転子リブの回転子1極当たりの磁極角度と高調波成分との関係
回転子リブの回転子1極当たりの磁極角度の割合に対して、電圧歪率をみると、1極当たりの磁極角度の割合が大きくなるほど、電圧歪率が大きくなる(図3参照)。これはその割合が大きいほど、隣り合う極間の距離が大きくなり、回転子内部、または磁束短絡防止空間(エアギャップ)を通る漏れ磁束が減少し、極間のもれ磁束が固定子側に急激に流れ、高調波の磁束成分が増加しているためである。よって、高調波磁束成分を低減するためには1極当たりの回転子リブの割合を小さくすればよく、しいては高調波加振力成分を低減できる。
【0046】
しかしながら、回転子リブの役割としては、内周側鉄芯と外周側鉄芯とを接続し、回転子鉄芯を一体化させる役割と、回転子リブを通る磁束(q軸磁束)にてリラクタンストルクを発生させる役割とがある。すなわち、磁石の径方向厚みに平行に流れる磁束をd軸磁束とし、磁石の径方向厚みに直角に流れる磁束=(回転子表面の鉄芯に流れる磁束+リブに流れる磁束)をq軸磁束とすると、q軸磁束とd軸磁束との差がリラクタンストルクとなる。そして、リブに流れる磁束が増えればq軸磁束は増加し、ひいてはリラクタンストルクも増加する。その傾向を図4に示す。図4から分かるように、リブ角度が大きくなるとモータトルクは増加し、モータ電流を低減でき、結果的に巻線に発生するモータ電流による銅損を低減できる。
【0047】
したがって、高調波磁束の発生とトルクの発生を考慮すれば、リブを回転子1極当たりの磁極角度の5%以上15%以下の所定角度とし、かつ、回転子外周側鉄芯の角度を80%以上の所定角度にすればよい。
【0048】
例えば、固定子として3相6スロットの巻線を歯部に直巻きした形状のものを用いる場合には、リブを回転子1極当たりの磁極角度の6.9%に設定し、かつ、回転子外周側鉄芯の角度を82%に設定することが最も好ましく、最も高調波成分が小さくすることができ、低騒音、高効率化を達成することができる。
【0049】
上記の構成の回転子において、磁束短絡防止空間5の幅(磁束短絡防止空間幅:磁束短絡防止空間5の、延びる方向とほぼ直交する方向のサイズ)を永久磁石4の厚み(磁石厚み:永久磁石4の、半径方向のサイズ)以上に設定することが好ましい(図5参照)。
【0050】
この構成を採用すれば、ロータ内部の磁極間の磁束の短絡を大幅に低減できる。
【0051】
磁束バリア幅と磁石厚みとの比率を横軸にとり、トルクの傾向を見ると、磁束バリアと磁石厚みの比率が1以上である場合に発生トルクはほぼピーク値となることが分かる(図6参照)。
【0052】
この理由は、磁束バリア幅と磁石厚みの比率が1以上であれば、磁石から発生する磁束のうち、磁束短絡防止空間5を通って隣の極に漏れる磁束の割合が大幅に減り、発生トルクに対して無視できるためである。
【0053】
また、この場合には、永久磁石4の減磁耐力が大きいので、ブラシレスDCモータの性能を低下させることなく永久磁石4の体積を小さくすることができる。
【0054】
例えば、3相6スロットの巻線を歯部に直巻きしてなる固定子を用いる場合、磁束バリア幅と磁石厚みとの比率を1.2に設定することができ、この場合には、回転子内部の磁束の漏れが小さくなり、しかもトルクの低下は発生しない。
【0055】
また、上記のブラシレスDCモータにおいて、固定子の歯に巻線を直巻きしてなるものを採用することが好ましく、銅損を大幅に低減して低鉄損化を達成することができる。
【0056】
さらに説明する。
【0057】
ブラシレスDCモータを横成する固定子は大きく2つの種類に分類されることが知られている。すなわち、固定子の複数の歯を跨いで巻線を施す分布巻方式のものと、固定子の歯の各々に1つづつの巻線を施す直巻方式のものである。そして、分布巻方式は固定子の複数の歯を跨いで巻線を施すため、固定子に発生する電磁力が複数の歯に分散され低騒音にでき、ひいては磁束の流れもスムーズになり、鉄損が低減できる特長を有している。反面、直巻方式では固定子の各々の歯に集中して巻線を施すため、巻線コイル長を小さくして銅損を大幅に低減でき、高効率化できる特徴を有しているが、電磁力が各々の歯に集中して、騒音が増加し、かつ、磁束が集中するため鉄損も増加するという問題を有している。そのため、一般的には、低騒音、低鉄損の何れを重視するかによって何れの固定子を採用するかを選択することになるが、この発明のブラシレスDCモータでは上述の構成を採用して低騒音化を達成するようにしているので、直巻方式の固定子を採用することによって、低騒音、低鉄損なブラシレスDCモータを得ることができる。
【0058】
3相6スロットの巻線を歯部に直巻きしてなる固定子を有するブラシレスDCモータを用いる場合、リブを回転子1極当たりの磁極角度の6.9%、回転子外周側鉄芯の角度を82%、かつ、磁束バリア幅と磁石厚みとの比率を1.2に設定することが好ましく、同じ3相6スロットの巻線を歯部に直巻きしてなる固定子を用いた従来機(リブが3.5%、回転子外周側鉄芯の角度が55%、比率が1.0)に比べ大幅に低騒音・低振動で、高効率な(図7参照)モータを実現することができる。
【0059】
図8はブラシレスDCモータの回転子の他の実施の形態を示す概略図である。
【0060】
この回転子が上記の回転子と異なる点は、各永久磁石収容空間3の両側に位置する磁束短絡防止空間5にも永久磁石8を配置した点のみである。
【0061】
図9はブラシレスDCモータの回転子のさらに他の実施の形態を示す概略図である。
【0062】
この回転子が図8の回転子と異なる点は、各永久磁石収容空間3の両側に位置する磁束短絡防止空間5のうち、一方のみに永久磁石8を配置した点のみである。
【0063】
磁束短絡防止空間5は回転子磁極間の漏れ磁束を防止することを目的として設けられているが、これらの実施の形態では、比透磁率が空気とほぼ同等な特性を示す永久磁石8を磁束短絡防止空間5に配置することで、磁石の表面積を拡大しつつも、漏れ磁束を低減できる効果を併せ持たせることができる。このように永久磁石を増加させれば、モータ電流を低減し、銅損を低減する効果と、回転子鉄芯の磁束短絡防止空間5付近に磁束が集中しやすい傾向を磁束短絡防止空間5にある永久磁石8が緩和することによって磁束の急激な変化を低減し、鉄損も低減する効果とを得ることができる。
【0064】
図10は、何れの磁束短絡防止空間にも永久磁石を設けない場合、両磁束短絡防止空間に永久磁石を設けた場合、回転方向側の磁束短絡防止空間のみに永久磁石を設けた場合、反回転方向側の磁束短絡防止空間のみに永久磁石を設けた場合、のそれぞれについて、負荷点1(定格ポイント)、負荷点2(定格の1/2のポイント)でのモータ効率を示す図である。
【0065】
尚、図中のバリアは磁束短絡防止空間のことである。
【0066】
図10から分かるように、磁束短絡防止空間に永久磁石を配置することでモータ効率が向上している。
【0067】
図11はブラシレスDCモータの回転子のさらに他の実施の形態を示す概略図である。
【0068】
この回転子が上記の回転子と異なる点は、前記永久磁石収容空間3および対応する1対の磁束短絡防止空間5に代えて、V字状に形成された永久磁石収容兼磁束短絡防止空間9を設けた点、および各永久磁石収容兼磁束短絡防止空間9に1対の永久磁石10を互いに対称な状態で収容した点のみである。
【0069】
この構成の回転子を採用した場合には、図8の回転子と比較して、極当たりの永久磁石の枚数を3枚から2枚に減らすことができ、生産性を向上させることができるほか、図8の回転子を採用する場合と同様の作用を達成することができる。
【0070】
図12はブラシレスDCモータの回転子のさらに他の実施の形態を示す概略図である。
【0071】
この回転子が図11の回転子と異なる点は、V字状に形成された永久磁石収容兼磁束短絡防止空間9に代えて、回転子の外周側を中心とする円弧状の永久磁石収容兼磁束短絡防止空間11を設けた点、および各永久磁石収容兼磁束短絡防止空間11に円弧状に湾曲する1つの永久磁石12を収容した点のみである。
【0072】
この構成の回転子を採用した場合には、図11の回転子と比較して、極当たりの永久磁石の枚数を2枚から1枚に減らすことができ、生産性を向上させることができるほか、円弧状に永久磁石を配置することで表面積を維持することができる。
【0073】
図13はブラシレスDCモータを駆動するための装置の構成を示すブロック図である。
【0074】
この装置は、交流電源21からの交流電圧をコンバータ22により直流電圧に変換し、平滑コンデンサ23により平滑化し、平滑化された直流電圧をインバータ24に供給して交流電圧に変換し、ブラシレスDCモータ25に供給している。
【0075】
そして、電流検出部26a、電圧検出部26bにより検出されたモータ電流およびモータ電圧を入力とし、ブラシレスDCモータ25の機器定数を用いて所定の演算を行って回転子位置および回転速度を出力する位置・速度検出部27と、回転速度および速度指令を入力として速度制御演算を行って電流指令を出力する速度制御部28と、電流指令および位相指令を入力として位相制御演算を行う位相制御部29と、位相制御演算結果、回転子位置、およびモータ電流を入力として電流制御演算を行ってインバータ24に供給すべき電圧指令を出力する電流制御部30とを有している。
【0076】
なお、前記機器定数は予め測定されていればよい。また、各部の構成は従来公知であるから、詳細な説明を省略する。
【0077】
上記の装置を用いれば、エンコーダなどの回転子位置検出装置を用いることなくブラシレスDCモータ25の回転子位置を検出してインバータ24を制御することによって、ブラシレスDCモータ25を駆動することができる。
【0078】
さらに説明する。
【0079】
ブラシレスDCモータを高温高圧環境などで使用するとき、ブラシレスDCモータの回転子位置を検出するためのセンサーを内蔵することが困難、もしくは不可能である。そこで回転子位置を検出するためのセンサーを内蔵しないブラシレスDCモータ駆動装置が必要となる。
【0080】
具体的な手法の1つとしては、モータに発生する速度起電力に着目し、回転子の位置と速度を推定する方法がある。この方法は、制御部内部にモータの数式モデルを持ち、推定位置と推定速度起電力に基づいて演算された推定電流と実際に流れているモータ電流により、回転子の位置と速度を同定するものである。(「電流推定誤差に基づくセンサレスブラシレスDCモータ制御」:竹下他、参照)また、突極性を持つブラシレスDCモータの場合、巻線インダクタンスが回転子の位置により変化するため、位置推定が困難になるが、モータの数式モデルを突極型モータヘ拡張することで位置推定が可能となる(「速度起電力推定に基づくセンサレス突極形ブラシレスDCモータ制御」:竹下他、電気学会論文誌D vol.115−D,No.4,1995参照)。
【0081】
本方式は、ブラシレスDCモータに電圧を印加する通電期間には影響を受けず、原理的には180度区間すべてにわたって回転子位置検出が可能となり、ひいては180度すべての区間において位相を制御できることになる。
【0082】
この手法を用いることにより、高温高圧部にセンサーを内蔵することなしに、安価に、かつ高信頼性の回転子位置検出が可能となる。また、モータに供給する電流の通電期間を制限することがなくなるため、正弦波通電を達成することが可能となり、ブラシレスDCモータの高効率化に寄与する。また、電流位相を自由に進める制御を行うことができることにより、磁石トルクとリラクタンストルクの併用ができ、さらに高効率なブラシレスDCモータ駆動ができる。さらに、弱め磁界制御も行えるため、ブラシレスDCモータの運転範囲の拡大も達成することができる。
【0083】
図13の装置で回転子位置を正確に検出するためには、モータ電流、モータ電圧を正確に検出する必要がある。そして、この要請を考慮すれば、前記の何れかの実施の形態のブラシレスDCモータを採用することでモータ電圧の歪を著しく小さくすることができ、回転子位置の検出精度を著しく高めることができる。
【0084】
高温高圧環境以外の環境で使用されるブラシレスDCモータの駆動にも適用できることはもちろんである。
【0085】
冷凍・空調用の圧縮機の内部は高温高圧であり、上記のようにブラシレスDCモータの回転子位置を検出するためのセンサーを内蔵することが困難、もしくは不可能である。
【0086】
したがって、図13の装置を用いてブラシレスDCモータを駆動するようにすることによって、冷凍・空調用の圧縮機の密閉容器内にブラシレスDCモータを組み込むことができる。また、密閉容器などの部材とブラシレスDCモータの振動とが共振し、大きな騒音を発生するおそれがあるが、上記の何れかの実施の形態のブラシレスDCモータを用いることで騒音を大幅に低減することができる。
【0087】
【発明の効果】
請求項1の発明は、簡単な回転子構造で磁石磁束によるトルクとリラクタンストルクを有効に使うことができ、しかも、誘起電圧を略正弦波状にするためのモータ設計を簡単に達成することができるという特有の効果を奏する。
【0088】
請求項2の発明は、請求項1の効果に加え、回転子内部の磁束の漏れを小さくして、トルクの低下を防止することができるという特有の効果を奏する。
【0089】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の効果に加え、巻線コイル長を小さくして銅損を大幅に低減し、ひいては一層の高効率化を達成することができるという特有の効果を奏する。
【0090】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3の何れかの効果に加え、永久磁石を増加させてモータ電流を低減し、銅損を低減するとともに、回転子鉄芯のバリア付近に磁束が集中しやすい傾向を緩和して磁束の急激な変化を低減し、鉄損をも低減することができるという特有の効果を奏する。
【0091】
請求項5の発明は、請求項1から請求項3の何れかの効果に加え、永久磁石を増加させてモータ電流を低減し、銅損を低減するとともに、回転子鉄芯のバリア付近に磁束が集中しやすい傾向を緩和して磁束の急激な変化を低減し、鉄損をも低減することができるという特有の効果を奏する。
【0092】
請求項6の発明は、請求項1から請求項4の何れかの効果に加え、永久磁石の極当たりの枚数を2枚にすることができるという特有の効果を奏する。
【0093】
請求項7の発明は、請求項1から請求項4の何れかの効果に加え、永久磁石の極当たりの枚数を1枚にし、かつ、円弧状に永久磁石を配置することで表面積を維持するとともにに生産性を向上することができるという特有の効果を奏する。
【0094】
請求項8の発明は、騒音を低減することができるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のブラシレスDCモータに適用される回転子の一実施の形態の構成を示す概略図である。
【図2】磁極角度に対する電圧歪率を表す図である。
【図3】リブ角度に対する電圧歪率を表す図である。
【図4】リブ角度に対するトルクを表す図である。
【図5】磁束短絡防止空間の幅を永久磁石4の厚み以上に設定した回転子を示す概略図である。
【図6】バリア幅/磁石厚みに対するトルクを表す図である。
【図7】巻線を歯に直巻きしてなる固定子を有する、この発明、および従来のブラシレスDCモータの回転数に対するモータ効率を表す図である。
【図8】ブラシレスDCモータの回転子の他の実施の形態を示す概略図である。
【図9】ブラシレスDCモータの回転子のさらに他の実施の形態を示す概略図である。
【図10】磁束短絡防止空間に永久磁石を装着した場合、および装着しない場合におけるモータ効率を表す図である。
【図11】ブラシレスDCモータの回転子のさらに他の実施の形態を示す概略図である。
【図12】ブラシレスDCモータの回転子のさらに他の実施の形態を示す概略図である。
【図13】ブラシレスDCモータ駆動装置の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
3 永久磁石収容空間 4、8、10、12 永久磁石
5 磁束短絡防止空間 6 回転子リブ
7 回転子外周側鉄芯
【発明の属する技術分野】
この発明は、永久磁石を回転子の内部に埋め込んでなるブラシレスDCモータおよび圧縮機に関し、特に、低損失でかつ、低振動・低騒音なブラシレスDCモータおよびこのブラシレスDCモータを駆動源とする圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、永久磁石を回転子の内部に埋め込んでなるブラシレスDCモータが知られている。
【0003】
このようなブラシレスDCモータ、特にリラクタンストルクを併用する永久磁石を回転子に埋め込んでなるブラシレスDCモータにおいては、回転子鉄芯が回転子の表面に存在しているので、固定子と回転子の間の磁気的エアギャップが小さく、回転子の表面の鉄芯の形状に起因して磁束が流れる経路が複雑になり、ひいてはその磁束の急激な変化などに起因して高調波成分の磁束が発生する。そして、その高調波成分の磁束はトルク発生には寄与せず、単に高調波成分の鉄損として損失になってしまうので、モータ効率が悪くなる。
【0004】
また、上記のように磁束の急激な変化などで発生する高調波成分の磁束は損失以外に、高調波のモータ加振力となり、振動・騒音の要因となっていた。
【0005】
ブラシレスDCモータのこれらの問題点を考慮して、特開平11−98731号公報に記載されたブラシレスDCモータ、および特開2001−112202号公報に記載されたブラシレスDCモータが提案されている。
【0006】
具体的には、特開平11−98731号公報には、回転子表面の鉄芯磁極角度を60°(約67%)として、漏れ磁束を防止し、効率向上とコギングトルク(無負荷トルク脈動)を低減するようにしたブラシレスDCモータが記載されている。
【0007】
また、特開2001−112202号公報には、永久磁石の固定子側の面の周方向幅が回転子の軸に対してなす角度を26°〜36°(約57%〜80%)のあるポイントに設定することにより、誘起電圧の歪みを最小とすることができるブラシレスDCモータが記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特開平11−98731号公報に記載されたブラシレスDCモータでは、磁束の高調波成分に関しては全く記載されておらず、磁束の集中により鉄損が増加してしまう可能性があり、また、鉄芯磁極角度が小さく、かつ、リブが小さいため、リラクタンストルクが大きく使えない。
【0009】
換言すれば、コギングトルクを小さくし(振動・騒音を小さくし)、高効率化を図るためには、リラクタンストルクを犠牲にすることが必要になってしまう。
【0010】
特開2001−112202号公報に記載されたブラシレスDCモータ(永久磁石回転電機)では、永久磁石の固定子側の面の周方向幅が回転子の軸に対してなす角度の範囲内で誘起電圧の歪みが最小になるポイントを設定しなければならないので、ピンポイント設計が必要となり、実用性に欠けることになってしまう。
【0011】
また、永久磁石の横幅を大きくとることができず、効率が悪化してしまう。
【0012】
【発明の目的】
この発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な回転子構造で磁石磁束によるトルクとリラクタンストルクを有効に使うことができ、しかも、誘起電圧を略正弦波状にするためのモータ設計を簡単に達成することができるブラシレスDCモータを提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1のブラシレスDCモータは、永久磁石を挿入する永久磁石収容空間端部から連続する回転子磁極間の磁束短絡を防止する磁束短絡防止空間と、回転子内周側鉄芯と回転子外周側鉄芯を連結する回転子リブとを備え、その回転子リブを回転子1極当たりの磁極角度の5%以上15%以下とし、かつ、回転子外周側鉄芯の角度を80%以上としたものである。
【0014】
請求項2のブラシレスDCモータは、回転子磁極間の磁束短絡を防止する磁束短絡防止空間と、回転子内周側鉄芯と回転子外周側鉄芯を連結する回転子リブとを備え、磁束短絡防止空間を永久磁石の径方向の厚み以上に設定したものである。
【0015】
請求項3のブラシレスDCモータは、固定子の歯に巻線を直巻きしてなるものである。
【0016】
請求項4のブラシレスDCモータは、両側の磁束短絡防止空間に永久磁石を配置してなるものである。
【0017】
請求項5のブラシレスDCモータは、片側のみの磁束短絡防止空間に永久磁石を配置してなるものである。
【0018】
請求項6のブラシレスDCモータは、各磁極に対応する永久磁石として、平板の永久磁石をV字形状に埋め込んでなるものを採用するものである。
【0019】
請求項7のブラシレスDCモータは、各磁極に対応する永久磁石として、板状の永久磁石を回転子外周側を中心とする円弧形状に埋め込んでなるものを採用するものである。
【0020】
請求項8の圧縮機は、請求項1から請求項7の何れかのブラシレスDCモータを駆動源とするものである。
【0021】
【作用】
請求項1のブラシレスDCモータであれば、永久磁石を挿入する永久磁石収容空間端部から連続する回転子磁極間の磁束短絡を防止する目的の磁束短絡防止空間と、回転子内周側鉄芯と回転子外周側鉄芯を連結する回転子リブとを備え、その回転子リブを回転子1極当たりの磁極角度の5%以上15%以下とし、かつ、回転子外周側鉄芯の角度を80%以上としているので、簡単な回転子構造で磁石磁束によるトルクとリラクタンストルクを有効に使うことができ、しかも、誘起電圧を略正弦波状にするためのモータ設計を簡単に達成することができる。
【0022】
さらに説明する。
【0023】
高調波加振力成分を低減するには1極当たりの回転子外周側鉄芯の割合を大きくすることが好ましく、特に磁極角度を70%以上に設定することによって大きく電圧歪を低減できる。
【0024】
また、回転子リブが回転子1極当たりの磁極角度の割合に対して、電圧歪率をみれば、1極当たりの磁極角度の割合が大きくなるほど、電圧歪率が大きくなる。したがって、高調波磁束成分を低減するには1極当たりの回転子外周側鉄芯の割合を小さくすることが好ましい。
【0025】
さらに、回転子リブの役割としては、内周側鉄芯と外周側鉄芯とを接続し、回転子鉄芯を一体化させる役割と、リブを通る磁束(q軸磁束)にてリラクタンストルクを発生させる役割とがある。そして、回転子リブ角度が大きくなるとモータトルクは増加し、モータ電流を低減でき、結果的に巻線に発生するモータ電流による銅損を低減できる。
【0026】
したがって、回転子リブを回転子1極当たりの磁極角度の5%以上15%以下とし、かつ、回転子外周側鉄芯の角度を80%以上にすることによって、高調波磁束の発生を大幅に抑制し、しかも発生トルクを大きくすることができる。
【0027】
この結果、簡単な回転子構造で磁石磁束によるトルクとリラクタンストルクを有効に使うことができ、しかも、誘起電圧を略正弦波状にするためのモータ設計を簡単に達成することができる。
【0028】
請求項2のブラシレスDCモータであれば、回転子磁極間の磁束短絡を防止する磁束短絡防止空間と、回転子内周側鉄芯と回転子外周側鉄芯を連結する回転子リブとを備え、磁束短絡防止空間を永久磁石の径方向の厚み以上に設定したのであるから、請求項1の作用に加え、回転子内部の磁束の漏れを小さくして、トルクの低下を防止することができる。
【0029】
請求項3のブラシレスDCモータであれば、固定子の歯に巻線を直巻きしてなるのであるから、請求項1または請求項2の作用に加え、巻線コイル長を小さくして銅損を大幅に低減し、ひいては一層の高効率化を達成することができる。
【0030】
請求項4のブラシレスDCモータであれば、両側の磁束短絡防止空間に永久磁石を配置してなるのであるから、請求項1から請求項3の何れかの作用に加え、永久磁石を増加させてモータ電流を低減し、銅損を低減するとともに、回転子鉄芯のバリア付近に磁束が集中しやすい傾向を緩和して磁束の急激な変化を低減し、鉄損をも低減することができる。
【0031】
請求項5のブラシレスDCモータであれば、片側のみの磁束短絡防止空間に永久磁石を配置してなるのであるから、請求項1から請求項3の何れかの作用に加え、永久磁石を増加させてモータ電流を低減し、銅損を低減するとともに、回転子鉄芯のバリア付近に磁束が集中しやすい傾向を緩和して磁束の急激な変化を低減し、鉄損をも低減することができる。
【0032】
請求項6のブラシレスDCモータであれば、各磁極に対応する永久磁石として、平板の永久磁石をV字形状に埋め込んでなるものを採用するのであるから、請求項1から請求項
4の何れかの作用に加え、永久磁石の極当たりの枚数を2枚にすることができる。
【0033】
請求項7のブラシレスDCモータであれば、各磁極に対応する永久磁石として、板状の永久磁石を回転子外周側を中心とする円弧形状に埋め込んでなるものを採用するのであるから、請求項1から請求項4の何れかの作用に加え、永久磁石の極当たりの枚数を1枚にし、かつ、円弧状に永久磁石を配置することで表面積を維持するととともにに生産性を向上することができる。
【0034】
請求項8の圧縮機であれば、請求項1から請求項7の何れかのブラシレスDCモータを駆動源とするのであるから、騒音を低減することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、この発明のブラシレスDCモータおよび圧縮機の実施の形態を詳細に説明する。
【0036】
図1はこの発明のブラシレスDCモータに適用される回転子の構成を示す概略図である。なお、固定子の構成は従来のブラシレスDCモータの固定子と同様であるから図示および説明を省略する。
【0037】
この回転子は、回転子鉄芯1の中心部に回転軸を挿通するための軸穴2を有するとともに、回転子の仮想的な中心軸と平行に延び、かつ中心軸を基準とする所定の半径方向と直交する方向に所定長さだけ延びる磁石収容空間3を有し、しかも磁石収容空間3の中央部に板状の永久磁石4を収容している。なお、図1においては、90°づつずれた半径のそれぞれと直交する方向に延びる4つの磁石収容空間3が示されている。
【0038】
そして、各磁石収容空間3の、対応する半径方向と直交する方向の端部から回転子鉄芯1の外周縁に近接する所定位置まで延びる磁束短絡防止空間5を有している。
【0039】
なお、隣り合う磁石収容空間3の互いに近接する磁束短絡防止空間5どうしの間に位置する回転子鉄芯1の部分をリブ6と称し、磁石収容空間3および対応する磁束短絡防止空間5を基準として軸穴2から離れている回転子鉄芯1の部分を回転子外周側鉄芯7と称する。
【0040】
そして、リブ6を回転子1極当たりの磁極角度の5%以上かつ15%以下の所定角度に設定し、仮想的な中心軸を基準とする回転子外周側鉄芯の角度θpを回転子1極当たりの磁極角度の80%以上の所定角度に設定している。なお、図1において、θr1は仮想的な中心軸を基準とする一方の側のリブ6の1/2の角度であり、リブ角度はθr1とθr2の和である。θr2は仮想的な中心軸を基準とする他方の側のリブ6の1/2の角度である。
【0041】
そして、この構成の回転子を有するブラシレスDCモータであれば、簡単な回転子構造で磁石磁束によるトルクとリラクタンストルクを有効に使うことができ、しかも、誘起電圧を略正弦波状にするためのモータ設計を簡単に達成することができる。
【0042】
さらに説明する。
【0043】
ブラシレスDCモータ内部の磁束の総和は固定子巻線に鎖交される磁束で代表される。固定子巻線に鎖交される磁束の変化(V=dφ/dt:ここでφは巻線に鎖交する磁束)がモータ巻線に電圧として現れる。ここで、モータトータルの磁束の変化をモータ電圧で評価することができる。すなわち、磁束の変化が基本波のみの正弦波であれば、基本波のみの磁束の変化によるモータ鉄損が発生するが、例えば、基本波と3次高調波成分が含まれた磁束の変化である場合には、モータ鉄損は基本波に起因する損失と3次高調波成分に起因する損失を含むことになる。以下、鉄損の評価を行う場合、この電圧の高調波成分に着目し、電圧歪率〔%]=(基本波電圧/高調波電圧の総和)*100を用いる。
【0044】
1)回転子外周側鉄芯の角度と高調波成分との関係
1極当たりの回転子外周側鉄芯の割合に対して電圧歪率を見ると、1極当たりの回転子外周側鉄芯の割合が大きくなるほど、電圧歪率が小さくなる。これはその割合が大きいほど、隣り合う極間の距離が小さくなり、回転子内部、またはエアギャップを通る漏れ磁束が発生し、極間のもれ磁束が固定子側に流れないため、発生するモータ電圧の波形が正弦波状に近くなるためである。よって、高調波加振力成分を低減するには1極当たりの回転子外周側鉄芯の割合を大きくする方が良い。磁極角度に対する電圧歪率を表す図2を参照すれば、磁極角度を70%以上にすることにより、電圧歪を大幅に低減することができ、しいては高調波加振力成分を低減できる。
【0045】
2)回転子リブの回転子1極当たりの磁極角度と高調波成分との関係
回転子リブの回転子1極当たりの磁極角度の割合に対して、電圧歪率をみると、1極当たりの磁極角度の割合が大きくなるほど、電圧歪率が大きくなる(図3参照)。これはその割合が大きいほど、隣り合う極間の距離が大きくなり、回転子内部、または磁束短絡防止空間(エアギャップ)を通る漏れ磁束が減少し、極間のもれ磁束が固定子側に急激に流れ、高調波の磁束成分が増加しているためである。よって、高調波磁束成分を低減するためには1極当たりの回転子リブの割合を小さくすればよく、しいては高調波加振力成分を低減できる。
【0046】
しかしながら、回転子リブの役割としては、内周側鉄芯と外周側鉄芯とを接続し、回転子鉄芯を一体化させる役割と、回転子リブを通る磁束(q軸磁束)にてリラクタンストルクを発生させる役割とがある。すなわち、磁石の径方向厚みに平行に流れる磁束をd軸磁束とし、磁石の径方向厚みに直角に流れる磁束=(回転子表面の鉄芯に流れる磁束+リブに流れる磁束)をq軸磁束とすると、q軸磁束とd軸磁束との差がリラクタンストルクとなる。そして、リブに流れる磁束が増えればq軸磁束は増加し、ひいてはリラクタンストルクも増加する。その傾向を図4に示す。図4から分かるように、リブ角度が大きくなるとモータトルクは増加し、モータ電流を低減でき、結果的に巻線に発生するモータ電流による銅損を低減できる。
【0047】
したがって、高調波磁束の発生とトルクの発生を考慮すれば、リブを回転子1極当たりの磁極角度の5%以上15%以下の所定角度とし、かつ、回転子外周側鉄芯の角度を80%以上の所定角度にすればよい。
【0048】
例えば、固定子として3相6スロットの巻線を歯部に直巻きした形状のものを用いる場合には、リブを回転子1極当たりの磁極角度の6.9%に設定し、かつ、回転子外周側鉄芯の角度を82%に設定することが最も好ましく、最も高調波成分が小さくすることができ、低騒音、高効率化を達成することができる。
【0049】
上記の構成の回転子において、磁束短絡防止空間5の幅(磁束短絡防止空間幅:磁束短絡防止空間5の、延びる方向とほぼ直交する方向のサイズ)を永久磁石4の厚み(磁石厚み:永久磁石4の、半径方向のサイズ)以上に設定することが好ましい(図5参照)。
【0050】
この構成を採用すれば、ロータ内部の磁極間の磁束の短絡を大幅に低減できる。
【0051】
磁束バリア幅と磁石厚みとの比率を横軸にとり、トルクの傾向を見ると、磁束バリアと磁石厚みの比率が1以上である場合に発生トルクはほぼピーク値となることが分かる(図6参照)。
【0052】
この理由は、磁束バリア幅と磁石厚みの比率が1以上であれば、磁石から発生する磁束のうち、磁束短絡防止空間5を通って隣の極に漏れる磁束の割合が大幅に減り、発生トルクに対して無視できるためである。
【0053】
また、この場合には、永久磁石4の減磁耐力が大きいので、ブラシレスDCモータの性能を低下させることなく永久磁石4の体積を小さくすることができる。
【0054】
例えば、3相6スロットの巻線を歯部に直巻きしてなる固定子を用いる場合、磁束バリア幅と磁石厚みとの比率を1.2に設定することができ、この場合には、回転子内部の磁束の漏れが小さくなり、しかもトルクの低下は発生しない。
【0055】
また、上記のブラシレスDCモータにおいて、固定子の歯に巻線を直巻きしてなるものを採用することが好ましく、銅損を大幅に低減して低鉄損化を達成することができる。
【0056】
さらに説明する。
【0057】
ブラシレスDCモータを横成する固定子は大きく2つの種類に分類されることが知られている。すなわち、固定子の複数の歯を跨いで巻線を施す分布巻方式のものと、固定子の歯の各々に1つづつの巻線を施す直巻方式のものである。そして、分布巻方式は固定子の複数の歯を跨いで巻線を施すため、固定子に発生する電磁力が複数の歯に分散され低騒音にでき、ひいては磁束の流れもスムーズになり、鉄損が低減できる特長を有している。反面、直巻方式では固定子の各々の歯に集中して巻線を施すため、巻線コイル長を小さくして銅損を大幅に低減でき、高効率化できる特徴を有しているが、電磁力が各々の歯に集中して、騒音が増加し、かつ、磁束が集中するため鉄損も増加するという問題を有している。そのため、一般的には、低騒音、低鉄損の何れを重視するかによって何れの固定子を採用するかを選択することになるが、この発明のブラシレスDCモータでは上述の構成を採用して低騒音化を達成するようにしているので、直巻方式の固定子を採用することによって、低騒音、低鉄損なブラシレスDCモータを得ることができる。
【0058】
3相6スロットの巻線を歯部に直巻きしてなる固定子を有するブラシレスDCモータを用いる場合、リブを回転子1極当たりの磁極角度の6.9%、回転子外周側鉄芯の角度を82%、かつ、磁束バリア幅と磁石厚みとの比率を1.2に設定することが好ましく、同じ3相6スロットの巻線を歯部に直巻きしてなる固定子を用いた従来機(リブが3.5%、回転子外周側鉄芯の角度が55%、比率が1.0)に比べ大幅に低騒音・低振動で、高効率な(図7参照)モータを実現することができる。
【0059】
図8はブラシレスDCモータの回転子の他の実施の形態を示す概略図である。
【0060】
この回転子が上記の回転子と異なる点は、各永久磁石収容空間3の両側に位置する磁束短絡防止空間5にも永久磁石8を配置した点のみである。
【0061】
図9はブラシレスDCモータの回転子のさらに他の実施の形態を示す概略図である。
【0062】
この回転子が図8の回転子と異なる点は、各永久磁石収容空間3の両側に位置する磁束短絡防止空間5のうち、一方のみに永久磁石8を配置した点のみである。
【0063】
磁束短絡防止空間5は回転子磁極間の漏れ磁束を防止することを目的として設けられているが、これらの実施の形態では、比透磁率が空気とほぼ同等な特性を示す永久磁石8を磁束短絡防止空間5に配置することで、磁石の表面積を拡大しつつも、漏れ磁束を低減できる効果を併せ持たせることができる。このように永久磁石を増加させれば、モータ電流を低減し、銅損を低減する効果と、回転子鉄芯の磁束短絡防止空間5付近に磁束が集中しやすい傾向を磁束短絡防止空間5にある永久磁石8が緩和することによって磁束の急激な変化を低減し、鉄損も低減する効果とを得ることができる。
【0064】
図10は、何れの磁束短絡防止空間にも永久磁石を設けない場合、両磁束短絡防止空間に永久磁石を設けた場合、回転方向側の磁束短絡防止空間のみに永久磁石を設けた場合、反回転方向側の磁束短絡防止空間のみに永久磁石を設けた場合、のそれぞれについて、負荷点1(定格ポイント)、負荷点2(定格の1/2のポイント)でのモータ効率を示す図である。
【0065】
尚、図中のバリアは磁束短絡防止空間のことである。
【0066】
図10から分かるように、磁束短絡防止空間に永久磁石を配置することでモータ効率が向上している。
【0067】
図11はブラシレスDCモータの回転子のさらに他の実施の形態を示す概略図である。
【0068】
この回転子が上記の回転子と異なる点は、前記永久磁石収容空間3および対応する1対の磁束短絡防止空間5に代えて、V字状に形成された永久磁石収容兼磁束短絡防止空間9を設けた点、および各永久磁石収容兼磁束短絡防止空間9に1対の永久磁石10を互いに対称な状態で収容した点のみである。
【0069】
この構成の回転子を採用した場合には、図8の回転子と比較して、極当たりの永久磁石の枚数を3枚から2枚に減らすことができ、生産性を向上させることができるほか、図8の回転子を採用する場合と同様の作用を達成することができる。
【0070】
図12はブラシレスDCモータの回転子のさらに他の実施の形態を示す概略図である。
【0071】
この回転子が図11の回転子と異なる点は、V字状に形成された永久磁石収容兼磁束短絡防止空間9に代えて、回転子の外周側を中心とする円弧状の永久磁石収容兼磁束短絡防止空間11を設けた点、および各永久磁石収容兼磁束短絡防止空間11に円弧状に湾曲する1つの永久磁石12を収容した点のみである。
【0072】
この構成の回転子を採用した場合には、図11の回転子と比較して、極当たりの永久磁石の枚数を2枚から1枚に減らすことができ、生産性を向上させることができるほか、円弧状に永久磁石を配置することで表面積を維持することができる。
【0073】
図13はブラシレスDCモータを駆動するための装置の構成を示すブロック図である。
【0074】
この装置は、交流電源21からの交流電圧をコンバータ22により直流電圧に変換し、平滑コンデンサ23により平滑化し、平滑化された直流電圧をインバータ24に供給して交流電圧に変換し、ブラシレスDCモータ25に供給している。
【0075】
そして、電流検出部26a、電圧検出部26bにより検出されたモータ電流およびモータ電圧を入力とし、ブラシレスDCモータ25の機器定数を用いて所定の演算を行って回転子位置および回転速度を出力する位置・速度検出部27と、回転速度および速度指令を入力として速度制御演算を行って電流指令を出力する速度制御部28と、電流指令および位相指令を入力として位相制御演算を行う位相制御部29と、位相制御演算結果、回転子位置、およびモータ電流を入力として電流制御演算を行ってインバータ24に供給すべき電圧指令を出力する電流制御部30とを有している。
【0076】
なお、前記機器定数は予め測定されていればよい。また、各部の構成は従来公知であるから、詳細な説明を省略する。
【0077】
上記の装置を用いれば、エンコーダなどの回転子位置検出装置を用いることなくブラシレスDCモータ25の回転子位置を検出してインバータ24を制御することによって、ブラシレスDCモータ25を駆動することができる。
【0078】
さらに説明する。
【0079】
ブラシレスDCモータを高温高圧環境などで使用するとき、ブラシレスDCモータの回転子位置を検出するためのセンサーを内蔵することが困難、もしくは不可能である。そこで回転子位置を検出するためのセンサーを内蔵しないブラシレスDCモータ駆動装置が必要となる。
【0080】
具体的な手法の1つとしては、モータに発生する速度起電力に着目し、回転子の位置と速度を推定する方法がある。この方法は、制御部内部にモータの数式モデルを持ち、推定位置と推定速度起電力に基づいて演算された推定電流と実際に流れているモータ電流により、回転子の位置と速度を同定するものである。(「電流推定誤差に基づくセンサレスブラシレスDCモータ制御」:竹下他、参照)また、突極性を持つブラシレスDCモータの場合、巻線インダクタンスが回転子の位置により変化するため、位置推定が困難になるが、モータの数式モデルを突極型モータヘ拡張することで位置推定が可能となる(「速度起電力推定に基づくセンサレス突極形ブラシレスDCモータ制御」:竹下他、電気学会論文誌D vol.115−D,No.4,1995参照)。
【0081】
本方式は、ブラシレスDCモータに電圧を印加する通電期間には影響を受けず、原理的には180度区間すべてにわたって回転子位置検出が可能となり、ひいては180度すべての区間において位相を制御できることになる。
【0082】
この手法を用いることにより、高温高圧部にセンサーを内蔵することなしに、安価に、かつ高信頼性の回転子位置検出が可能となる。また、モータに供給する電流の通電期間を制限することがなくなるため、正弦波通電を達成することが可能となり、ブラシレスDCモータの高効率化に寄与する。また、電流位相を自由に進める制御を行うことができることにより、磁石トルクとリラクタンストルクの併用ができ、さらに高効率なブラシレスDCモータ駆動ができる。さらに、弱め磁界制御も行えるため、ブラシレスDCモータの運転範囲の拡大も達成することができる。
【0083】
図13の装置で回転子位置を正確に検出するためには、モータ電流、モータ電圧を正確に検出する必要がある。そして、この要請を考慮すれば、前記の何れかの実施の形態のブラシレスDCモータを採用することでモータ電圧の歪を著しく小さくすることができ、回転子位置の検出精度を著しく高めることができる。
【0084】
高温高圧環境以外の環境で使用されるブラシレスDCモータの駆動にも適用できることはもちろんである。
【0085】
冷凍・空調用の圧縮機の内部は高温高圧であり、上記のようにブラシレスDCモータの回転子位置を検出するためのセンサーを内蔵することが困難、もしくは不可能である。
【0086】
したがって、図13の装置を用いてブラシレスDCモータを駆動するようにすることによって、冷凍・空調用の圧縮機の密閉容器内にブラシレスDCモータを組み込むことができる。また、密閉容器などの部材とブラシレスDCモータの振動とが共振し、大きな騒音を発生するおそれがあるが、上記の何れかの実施の形態のブラシレスDCモータを用いることで騒音を大幅に低減することができる。
【0087】
【発明の効果】
請求項1の発明は、簡単な回転子構造で磁石磁束によるトルクとリラクタンストルクを有効に使うことができ、しかも、誘起電圧を略正弦波状にするためのモータ設計を簡単に達成することができるという特有の効果を奏する。
【0088】
請求項2の発明は、請求項1の効果に加え、回転子内部の磁束の漏れを小さくして、トルクの低下を防止することができるという特有の効果を奏する。
【0089】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の効果に加え、巻線コイル長を小さくして銅損を大幅に低減し、ひいては一層の高効率化を達成することができるという特有の効果を奏する。
【0090】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3の何れかの効果に加え、永久磁石を増加させてモータ電流を低減し、銅損を低減するとともに、回転子鉄芯のバリア付近に磁束が集中しやすい傾向を緩和して磁束の急激な変化を低減し、鉄損をも低減することができるという特有の効果を奏する。
【0091】
請求項5の発明は、請求項1から請求項3の何れかの効果に加え、永久磁石を増加させてモータ電流を低減し、銅損を低減するとともに、回転子鉄芯のバリア付近に磁束が集中しやすい傾向を緩和して磁束の急激な変化を低減し、鉄損をも低減することができるという特有の効果を奏する。
【0092】
請求項6の発明は、請求項1から請求項4の何れかの効果に加え、永久磁石の極当たりの枚数を2枚にすることができるという特有の効果を奏する。
【0093】
請求項7の発明は、請求項1から請求項4の何れかの効果に加え、永久磁石の極当たりの枚数を1枚にし、かつ、円弧状に永久磁石を配置することで表面積を維持するとともにに生産性を向上することができるという特有の効果を奏する。
【0094】
請求項8の発明は、騒音を低減することができるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のブラシレスDCモータに適用される回転子の一実施の形態の構成を示す概略図である。
【図2】磁極角度に対する電圧歪率を表す図である。
【図3】リブ角度に対する電圧歪率を表す図である。
【図4】リブ角度に対するトルクを表す図である。
【図5】磁束短絡防止空間の幅を永久磁石4の厚み以上に設定した回転子を示す概略図である。
【図6】バリア幅/磁石厚みに対するトルクを表す図である。
【図7】巻線を歯に直巻きしてなる固定子を有する、この発明、および従来のブラシレスDCモータの回転数に対するモータ効率を表す図である。
【図8】ブラシレスDCモータの回転子の他の実施の形態を示す概略図である。
【図9】ブラシレスDCモータの回転子のさらに他の実施の形態を示す概略図である。
【図10】磁束短絡防止空間に永久磁石を装着した場合、および装着しない場合におけるモータ効率を表す図である。
【図11】ブラシレスDCモータの回転子のさらに他の実施の形態を示す概略図である。
【図12】ブラシレスDCモータの回転子のさらに他の実施の形態を示す概略図である。
【図13】ブラシレスDCモータ駆動装置の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
3 永久磁石収容空間 4、8、10、12 永久磁石
5 磁束短絡防止空間 6 回転子リブ
7 回転子外周側鉄芯
Claims (8)
- 永久磁石(4)を回転子の内部に埋め込んでなるブラシレスDCモータにおいて、永久磁石(4)を挿入する永久磁石収容空間(3)端部から連続する回転子磁極間の磁束短絡を防止する磁束短絡防止空間(5)と、回転子内周側鉄芯と回転子外周側鉄芯(7)を連結する回転子リブ(6)とを備え、その回転子リブ(6)を回転子1極当たりの磁極角度の5%以上15%以下とし、かつ、回転子外周側鉄芯(7)の角度を80%以上としたことを特徴とするブラシレスDCモータ。
- 磁束短絡防止空間(5)の幅が永久磁石(4)の径方向の厚み以上である請求項1に記載のブラシレスDCモータ。
- 固定子の歯に巻線を直巻きしてなる請求項1または請求項2に記載のブラシレスDCモータ。
- 両側の磁束短絡防止空間(5)に永久磁石(8)を配置してなる請求項1から請求項3の何れかに記載のブラシレスDCモータ。
- 片側のみの磁束短絡防止空間(5)に永久磁石(8)を配置してなる請求項1から請求項3の何れかに記載のブラシレスDCモータ。
- 各磁極に対応する永久磁石として、平板の永久磁石(10)をV字形状に埋め込んでなるものを採用する請求項1から請求項4の何れかに記載のブラシレスDCモータ。
- 各磁極に対応する永久磁石として、板状の永久磁石(12)を回転子外周側を中心とする円弧形状に埋め込んでなるものを採用する請求項1から請求項4の何れかに記載のブラシレスDCモータ。
- 請求項1から請求項7の何れかのブラシレスDCモータを駆動源とする冷凍もしくは空調用の圧縮機。
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