JP2004063138A - 電気光学装置及びその製造方法、並びに電子機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】PEDOT:PSSによる陽極の金属イオンの溶出を抑制しつつ、発光特性を悪化させることなく、発光物質の輝度を維持し、電気光学装置の長寿命化ができると共に、製造コストを低減できる電気光学装置及びその製造方法、並びにそのような電気光学装置を備えた電子機器を提供すること。
【解決手段】発光層60を狭持している一対の電極23、50のうち少なくとも一方の電極の表面に、膜厚が10nm以下の強酸基を備えた薄膜70が形成されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】発光層60を狭持している一対の電極23、50のうち少なくとも一方の電極の表面に、膜厚が10nm以下の強酸基を備えた薄膜70が形成されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気光学装置及びその製造方法、並びに電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する)表示装置などの電気光学装置においては、基板上に複数の回路素子、陽極、正孔注入層、EL物質などの電気光学物質で形成される発光層、また、陰極などが積層され、それらを封止基板によって基板との間に挟んで封止した構成を具備しているものがある。具体的には、ガラス基板等の透明基板上に、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、酸化スズ(SnO2)、等の透明導電材料からなる陽極と、ポリチオフェン誘導体(以下、PEDOTと略記する)のドーピング体からなる正孔注入層と、ポリフルオレン等の発光物質からなる発光層と、Ca等の低仕事関数を有する金属材料や金属化合物からなる陰極とを順次積層したものである。
このような電気光学装置においては、陽極側から注入された正孔と、陰極側から注入された電子とが、蛍光能を有する発光層内で再結合し、励起状態から失活する際に発光する現象を利用している。
【0003】
この電気光学装置の正孔注入層を構成しているPEDOTのドーピング体には、PEDOTにPSS(ポリスチレンスルフォン酸)をドープしたPEDOT:PSSが採用され、その一種であるバイトロン−P(Bytron−P:バイエル社製)などを好適に用いることが多い。
このPSSは、強い酸性材料であり、PSSがドープされたPEDOT:PSSは強酸性(pH=1.3程度)を示すので、陽極上に正孔注入層のPEDOT:PSSを積層形成すると、陽極の一部が溶出、侵食され、陽極の溶解、浸食反応によって中和された界面が形成される。この界面においては、陽極とPEDOT:PSSが混合され、PSSのスルフォン酸基と陽極とが絡み合って密着し、渾然一体となった接合状態となる。
このように陽極とPEDOT:PSSとを密着させた接合状態にすることで、陽極と正孔注入層との間においては、高い導電性が得られ、十分な電荷移動が行われるので、発光層は良好に発光する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の電気光学装置においては、強酸性のPEDOT:PSSによって陽極の一部が溶解し、溶解された陽極の金属イオンが発光層中に拡散することで、発光特性の悪化、発光物質の輝度の低下及び電気光学装置の短寿命化を招いてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、PEDOT:PSSによる陽極の金属イオンの溶出を最小限に抑制しつつ、発光特性を悪化させることなく発光物質の輝度を維持し、電気光学装置の長寿命化ができると共に、製造コストを低減できる電気光学装置及びその製造方法、並びにそのような電気光学装置を備えた電子機器を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用した。
即ち、発光層を狭持している一対の電極のうち少なくとも一方の電極の表面に、膜厚が10nm以下の強酸基を備えた薄膜が形成されている電気光学装置を特徴とするものである。
本発明の電気光学装置について、例えば強酸基を備えた薄膜がPSSであり、また、電極がITOからなる陽極である場合を説明する。
PSSの強酸基であるスルフォン酸基は、陽極のITOと接触することでITOを溶解し、ITOを構成するインジウム及び錫がイオン化された状態となる。スルフォン酸基の薄膜は、10nm以下に形成されているので、インジウムイオン及び錫イオンの量は、従来技術の正孔注入層を構成するPEDOT:PSSよりも少量にすることができる。
即ち、強酸基による電極の溶解を最小限にして、金属イオンの発光層への溶出を抑制することができる。
【0007】
また、本発明は、先に記載の電気光学装置であり、強酸基を備えた薄膜と発光層との間に、導電性高分子層が形成されていることが好ましい。
本発明の電気光学装置について、例えば導電性高分子層がPEDOTである場合について、前述の例示に続いて説明する。
強酸基によるITOの溶解によってイオン化されたインジウムイオン及び錫イオンは、PEDOTを構成する高分子と接触し、渾然一体に絡み合い、ITOとPEDOTは密着した接合状態となる。
このように電極と導電性高分子層とが接合状態になることで、金属イオンの発光層への溶出を最小限に抑制しつつ、陽極の正孔を導電性高分子層に注入することができる。
【0008】
また、本発明は、先に記載の電気光学装置であり、導電性高分子層と発光層との間に、膜厚が10nm以下の強酸基を備えた薄膜が形成されていることが好ましい。
本発明の電気光学装置について、例えば強酸基を備えた薄膜がPSSであり、発光層がポリフルオレン誘導体である場合について、前述の例示に続いて説明する。
PEDOTとポリフルオレン誘導体と間には、PSSのスルフォン酸基が形成されているので、PEDOTを構成する高分子、ポリフルオレン誘導体を構成する高分子及びスルフォン酸基が互いに接触し、渾然一体に絡み合い、PEDOTとポリフルオレン誘導体は密着した接合状態となる。また、スルフォン酸基の薄膜は、10nm以下に形成されているので、PEDOTとポリフルオレン誘導体との導電性が確保される。
このように導電性高分子層と発光層とが接合状態になることで、金属イオンの発光層への溶出を最小限に抑制しつつ、陽極の正孔を、導電性高分子層を介して発光層に注入することができる。
【0009】
また、本発明は、先に記載の電気光学装置であり、強酸基を備えた薄膜は、高分子鎖を含有していることが好ましい。
本発明の電気光学装置について、前述の例示に続いて説明する。
強酸基および高分子を含有する層がITOとPEDOTとの間に形成されることで、強酸基によるITOの溶解によってイオン化されたインジウムイオン及び錫イオンが強酸基とイオン結合し、ITOとPEDOTとの間に留まりつつ、ITOとPEDOTは密着した接合状態となる。
また、強酸基および高分子を含有する層がPEDOTとポリフルオレン誘導体との間に形成されることで、強酸基とポリフルオレン誘導体を構成する高分子が結合し、PEDOTとポリフルオレン誘導体は接合状態となる。
このように電極、導電性高分子層及び発光層とが接合状態になることで、金属イオンの発光層への溶出を最小限に抑制しつつ、分子及びイオンが結合された状態を維持し、陽極の正孔を、導電性高分子層を介して発光層に注入することができる。
【0010】
また、本発明は、先に記載の電気光学装置であり、強酸基はスルフォン酸基であることが好ましい。
本発明の電気光学装置について、前述の例示に続いて説明する。
スルフォン酸基がITOを溶解することによってイオン化されたインジウムイオン及び錫イオンは、PEDOTを構成する高分子と接触し、渾然一体に絡み合い、ITOとPEDOTは密着した接合状態となる。また、PEDOTを構成する高分子、ポリフルオレン誘導体を構成する高分子及びスルフォン酸基が互いに接触し、渾然一体に絡み合い、PEDOTとポリフルオレン誘導体は密着した接合状態となる。
このように電極、導電性高分子層及び発光層とが接合状態になることで、金属イオンの発光層への溶出を最小限に抑制しつつ、陽極の正孔を、導電性高分子層を介して発光層に注入することができる。
【0011】
また、本発明は、先に記載の電気光学装置であり、強酸基を備えた薄膜はPSS(ポリスチレンスルフォン酸)であることが好ましい。
本発明の電気光学装置によれば、PSSはスルフォン酸基を有しているので、電極、導電性高分子層及び発光層とが接合状態となり、好適に金属イオンの発光層への溶出を最小限に抑制しつつ、陽極の正孔を、導電性高分子層を介して発光層に注入することができる。また、高分子であるために、強酸基であるスルフォン酸基が発光層内に拡散することも無く、信頼性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明は、先に記載の電気光学装置であり、導電性高分子層は、ポリチオフェン、ポリアニリン及びポリピロールのうち少なくともいずれか一つを有していることが好ましい。
本発明の電気光学装置によれば、導電性高分子層が好適に採用されるので、陽極の正孔を、導電性高分子層を介して発光層に注入することができる。
【0013】
また、更に本発明の電気光学装置の製造方法は、先に記載の電気光学装置の製造方法であり、印刷法又は材料吐出法によって、強酸基を備えた薄膜及び導電性高分子層のうち少なくとも一方が形成されることを特徴とするものである。
従って、本発明では、先に記載の電気光学装置を製造することができるので、先に記載の電気光学装置と同様の効果を奏する。
また、強酸基を備えた薄膜材料又は導電性高分子材料は、蒸発又は揮発可能な液体が添加されることにより液状化され、材料インクとなり、これを印刷法又は材料吐出法によってパターニングを行い、乾燥させることによって、必要なパターンを成膜することができる。その結果として、一様な層膜を形成してから部分的に層膜を除去してパターンを形成するという材料及び製造工程の無駄が低減され、製造が容易になり、製造コストを低減することができる。
ここで、液状化とは、所定の材料を蒸発又は揮発可能な液体中に含ませることによって液体状とすることを意味する。従って、例えば溶媒に材料を溶かして液体状とすること、及び材料を液体中に分散させて液体状とすることを含むものとする。後者の場合、材料は粉体として形成されてもよいし、粉砕されて砕片とされていてもよい。また、材料吐出法によって製造可能であれば、他の形態をとることにより液状化してもよい。
【0014】
次に、本発明の電子機器は、先に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする。
従って、本発明の電子機器としては、例えば、携帯電話機、移動体情報端末、時計、ワープロ、パソコンなどの情報処理装置などを例示することができる。このように電子機器の表示部に、本発明の表示装置を採用することによって、好適かつ製造コストが低減できる電子機器を提供することが可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る電気光学装置及びその製造方法、並びに電子機器の実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。なお、以下に示す各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならせてある。
【0016】
〔第1の実施形態〕
本発明の電気光学装置の第1の実施形態として、電気光学物質の一例である電界発光型物質、中でも有機EL材料を用いたEL表示装置について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係るEL表示装置の配線構造を示す模式図である。
EL表示装置(電気光学装置)1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下では、TFTと略記する)を用いたアクティブマトリクス方式のEL表示装置である。
【0018】
図1に示すように、EL表示装置1は、複数の走査線101…と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102…と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103…とがそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線101…と信号線102…の各交点付近に、画素領域X…が設けられている。
【0019】
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路100が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続されている。
【0020】
更に、画素領域Xの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT112と、このスイッチング用TFT112を介して信号線102から共有される画素信号を保持する保持容量113と、該保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT123と、この駆動用TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに該電源線103から駆動電流が流れ込む陽極(電極)23と、この陽極23と陰極50との間に挟み込まれた機能層110とが設けられている。陽極23と陰極50と機能層110により、発光素子が構成されている。
【0021】
このEL表示装置1によれば、走査線101が駆動されてスイッチング用TFT112がオン状態になると、そのときの信号線102の電位が保持容量113に保持され、該保持容量113の状態に応じて、駆動用TFT123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT123のチャネルを介して、電源線103から陽極23に電流が流れ、更に機能層110を介して陰極50に電流が流れる。機能層110は、これを流れる電流量に応じて発光する。そこで、発光はそれぞれ陽極23…ごとにオン・オフを制御されるから、陽極23は画素電極となっている。
【0022】
次に、本実施形態のEL表示装置1の具体的な態様を、図2〜4を参照して説明する。図2はEL表示装置1の構成を模式的に示す平面図である。図3は図2のA−B線に沿う断面図、図4は図2のC−D線に沿う断面図である。
【0023】
図2に示すように、本実施形態のEL表示装置1は、電気絶縁性を備える基板20と、図示略のスイッチング用TFTに接続された画素電極が基板20上にマトリックス状に配置されてなる図示略の画素電極域と、画素電極域の周囲に配置されるとともに各画素電極に接続される電源線103…(図1参照)と、少なくとも画素電極域上に位置する平面視ほぼ矩形の画素部3(図中一点鎖線枠内)とを具備して構成されている。また、画素部3は、中央部分の実表示領域4(図中二点鎖線枠内)と、実表示領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線及び二点鎖線の間の領域)とに区画されている。
【0024】
実表示領域4には、それぞれ画素電極を有する表示領域R、G、BがA−B方向及びC−D方向に離間して配置されている。
また、実表示領域4の図中両側には、走査線駆動回路80が配置されている。この走査線駆動回路80はダミー領域5の下側に位置して設けられている。
【0025】
更に、実表示領域4の図中上側には、検査回路90が配置されている。この検査回路90はダミー領域5の下側に位置して設けられている。この検査回路90は、EL表示装置1の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する不図示の検査情報出力手段を備え、製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されている。
【0026】
走査線駆動回路80及び検査回路90の駆動電圧は、所定の電源部から駆動電圧導通部310(図3参照)及び駆動電圧導通部340(図4参照)を介して印加されている。また、これら走査線駆動回路80及び検査回路90への駆動制御信号及び駆動電圧は、このEL表示装置1の作動制御を司る所定のメインドライバなどから駆動制御信号導通部320(図3参照)及び駆動電圧導通部350(図4参照)を介して送信及び印加されるようになっている。なお、この場合の駆動制御信号とは、走査線駆動回路80及び検査回路90が信号を出力する際の制御に関連するメインドライバなどからの指令信号である。
【0027】
EL表示装置1は、図3及び図4に示すように、基板20と封止基板30とが封止樹脂40を介して貼り合わされている。基板20、封止基板30及び封止樹脂40とで囲まれた領域には、乾燥剤45が挿入されるとともに、例えば窒素ガスなどの不活性ガスが充填された不活性ガス充填層46が形成されている。
【0028】
基板20は、封止側発光型のEL表示装置の場合には、この基板20の対向側である封止基板30側から発光を取り出す構成であるので、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナ等のセラミック、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0029】
また、基板側発光型のEL表示装置の場合には、基板20側から発光を取り出す構成であるので、基板20は、透明あるいは半透明のものが採用される。例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特に、安価なソーダガラス基板が好適に用いられる。
【0030】
封止基板30は、例えば、電気絶縁性を有する板状部材を採用することができる。また、封止樹脂40は、例えば、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂からなるものであり、特に熱硬化樹脂の一種であるエポキシ樹脂よりなることが好ましい。
【0031】
また、基板20上には、陽極23…を駆動するための駆動用TFT123…などを含む回路部11が形成され、回路部11の上部には、駆動用TFT123…に接続されたそれぞれの陽極23…が図2の表示領域R、G、Bの位置に対応して形成されている。実表示領域4内の陽極23…の上層には、機能層110が形成され、その上層には、陰極50が形成されている。なお、回路部11には、走査線駆動回路80、検査回路90、及びそれらを接続して駆動するための駆動電圧動通部310、340、350、駆動制御信号導通部320などが含まれている。
【0032】
次に、機能層110の概略構成について、図5を参照して説明する。
図5は本実施形態の機能層110の概略構成を説明するための概念図である。機能層110は、陽極23と陰極50に挟まれる多層構造を備えており、陽極23側から順に、強酸基薄膜(強酸基を備えた薄膜)70、PEDOT(導電性高分子層)71、強酸基薄膜70、有機EL層(発光層)60及び電子輸送層52を順に形成されたものである。陽極と有機EL層間の強酸基薄膜と、導電性高分子層と有機EL層間の強酸機薄膜の材料を変えても良い。
【0033】
陽極23は、ITOによって構成され、印加された電圧によって、正孔を有機EL層60に向けて注入するものであり、仕事関数が高く導電性を有している。陽極23を形成するための材料としては、ITOに限るものではなく、封止側発光型のEL表示装置の場合には、特に光透過性を備えた材料を採用する必要はなく、好適な材料であればよい。また、基板側発光型のEL表示装置の場合には、光透過性を備えた公知の材料を採用することができる。例えば、金属酸化物が挙げられるが、インジウム錫酸化物(ITO)、もしくは、金属酸化物に亜鉛(Zn)を含有した材料、例えば、酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス透明導電膜(Indium Zinc Oxide:IZO/アイ・ゼット・オー)(登録商標))(出光興産社製)を採用することができる。
【0034】
強酸基薄膜70は、ポリエチレンスルフォン酸によって構成された薄膜であり、その膜厚が5nmとなるように形成されている。
なお、強酸基薄膜70の膜厚は10nm以下であれば、所望の特性を得られる。
ここで、ポリスチレンスルフォン酸は、強酸基を有した水溶性高分子の一つであり、このような強酸機を有した高分子の例として、種種の材料を好適に用いることができる。例えば、ポリスチレンカルボン酸等を採用することができる。
【0035】
PEDOT71は、導電性高分子材料の一つであり、陽極23の正孔を有機EL層60に注入するための正孔注入層を構成するものであり、その膜厚は、30nmに形成されている。
このような正孔注入層を形成する材料の例として種種の導電性高分子材料が好適に用いられ、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等を採用することができる。
【0036】
有機EL層60は、陽極23から強酸基薄膜70、PEDOT71、強酸基薄膜70を経て注入された正孔と、陰極50からの注入された電子とが結合して蛍光を発生させるようになっている。有機EL層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料を用いることができる。具体的には、ポリフルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料、例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の材料をドープして用いることもできる。
【0037】
電子輸送層52は、有機EL層60に電子を注入する役割を果たすものであり、この形成材料としては、特に限定されることなく、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体等が例示される。具体的には、先の正孔輸送層の形成材料と同様に、特開昭63−70257号、同63−175860号公報、特開平2−135359号、同2−135361号、同2−209988号、同3−37992号、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示され、特に2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウムが好適とされる。
【0038】
陰極50は、図3〜4に示すように、実表示領域4及びダミー領域5の総面積より広い面積を備え、それぞれを覆うように形成されている。陰極50は、陽極23の対向電極として、電子を有機EL層60に注入する機能を備える。また本実施形態では、有機EL層60から発光する光を陰極50側から取り出すので、光透過性を備える必要がある。そのために光透過性であって、仕事関数が低い材料から構成される。
陰極50を形成する材料としては、例えばカルシウム金属又はカルシウムを主成分とする合金を有機EL層60側に積層して第1の陰極層とし、その上層にアルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金、もしくは銀又は銀−マグネシウム合金などを積層して第2の陰極層とした積層体を採用することができる。なお、第2の陰極層は第1の陰極層を覆って、酸素や水分などとの化学反応から保護するとともに、陰極50の導電性を高めるために設けられる。したがって、化学的に安定で仕事関数が低く、単層構造でもよく、また金属材料に限るものではない。
【0039】
このように構成された機能層110においては、強酸基薄膜70のポリエチレンスルフォン酸が有する強酸基と陽極23のITOとが接触することで、強酸基がITOを溶解し、インジウム及び錫がイオン化された状態となる。この強酸基薄膜70の膜厚は、5nm以下に形成されているので、インジウムイオン及び錫イオンの溶出量は最小限となり、また、インジウムイオン及び錫イオンは、ポリエチレンスルフォン酸と直接結合し、陽極23とPEDOT71は絡み合って密着した接合状態になる。
また、強酸基薄膜70がPEDOT71と有機EL層60との間に形成されることによって、強酸基薄膜70のポリエチレンスルフォン酸に含まれる強酸基と、PEDOT71を構成する高分子と、有機EL層60を構成する高分子とが渾然一体となりつつ、ポリエチレンスルフォン酸と有機EL層60を構成する分子同士が結合し、強酸基が有機EL層60内へ拡散することがなく、PEDOT71と有機EL層60は接合状態になる。
【0040】
このように強酸基薄膜70によって陽極23、PEDOT71及び有機EL層60が接合された状態で、電源線103(図1参照)から駆動電流が機能層110の陽極23に流れ込むと、陽極23と陰極50の間に電位差が生じ、陽極23の正孔がPEDOT71を介して、有機EL層60に注入され、陰極50の電子が電子輸送層52を介して有機EL層60に注入されるので、有機EL層60に注入された正孔と電子とが結合することにより、有機EL層60は発光する。
【0041】
次に、実表示領域4に設けられた駆動用TFT123の近傍の構成について、図6〜9を参照して簡単に説明する。図6は、図1の画素領域Xの平面視模式図である。図7は、図6のE部におけるF−G方向に沿った断面図である。図8は、図6のH部におけるI−J方向に沿った断面図である。図9は、図6のG部におけるL−M方向に沿った断面図である。
【0042】
図6に示すように、画素領域Xでは、E部に駆動用TFT123が、H部に保持容量113が、K部にスイッチング用TFT112が形成され、それぞれ、図1に示すように、互いに接続され、走査線101、信号線102、ソース電極243(電源線103)とも接続されている。
【0043】
まず、機能層110を含む駆動用TFT123の近傍の構成を、図7を参照して簡単に説明する。
図7に示すように、基板20の表面には、図示略のSiO2を主体とする下地保護層を下地として、その上層にシリコン層241が形成されている。このシリコン層241の表面は、SiO2及びSiNのうちいずれかを主体とするゲート絶縁層282によって覆われている。なお、本明細書において、「主体」とする成分とは、構成成分のうち最も含有率の高い成分を指すこととする。
【0044】
シリコン層241において、ゲート絶縁層282を挟んでゲート電極242と重なる領域がチャネル領域241aとされている。なお、このゲート電極242は図示略の走査線101の一部である。一方、シリコン層241を覆い、ゲート電極242が形成されたゲート絶縁層282の表面は、SiO2を主体とする第1層間絶縁層283によって覆われている。
【0045】
更に、シリコン層241において、チャネル領域241aのソース側にはソース領域241Sが、チャネル領域241aのドレイン側にはドレイン領域241Dが設けられている。ソース領域241S及びドレイン領域241Dには濃度傾斜が設けられ、いわゆるLDD(Light Doped Drain)構造となっている。ソース領域241Sは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール243aを介して、ソース電極243に接続されている。このソース電極243は、上述した電源線103(図1、6参照、図7においてはソース電極243の位置に紙面垂直方向に延在する)の一部として構成される。一方、ドレイン領域241Dは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール243bを介して、ソース電極243と同一層からなるドレイン電極244に接続されている。
【0046】
ソース電極243及びドレイン電極244が形成された第1層間絶縁層283の上層は、例えばアクリル系の樹脂成分を主体とする第2層間絶縁層284によって覆われている。この第2層間絶縁層284は、アクリル系の絶縁膜以外の材料、例えば、SiN、SiO2などを用いることもできる。そして、陽極23が第2層間絶縁層284の面上に形成されるとともに、該第2層間絶縁層284に設けられたコンタクトホール23aを介してドレイン電極244に接続されている。即ち、陽極23は、ドレイン電極244を介して、シリコン層241のドレイン領域241Dに接続されている。
【0047】
陽極23が形成された第2層間絶縁層284の表面は、陽極23と、図示略の例えばSiO2などの親液性材料を主体とする親液性制御層と、アクリルやポリイミドなどからなる有機バンク層221とによって覆われている。図3、4に示すように、有機バンク層221…は、陽極23…の間にその回りを取り囲むように2次元的に配置されており、機能層110…から上側に発光された光が、有機バンク層221によって仕切られる構成とされている。なお、本実施形態における親液性制御層の「親液性」とは、少なくとも有機バンク層221を構成するアクリル、ポリイミドなどの材料と比べて親液性が高いことを意味するものとする。以上に説明した基板20から第2層間絶縁層284までの層は回路部11を構成している。
【0048】
なお、本実施形態のEL表示装置1は、カラー表示を行うべく構成されている。即ち、図2における光の三原色R、G、Bに対応する表示領域R、G、Bごとに機能層110…に含まれる各有機EL層60が、それぞれ三原色に対応して形成されている。即ち、有機EL層60…が表示領域R、G、Bごとに異なるだけなので、詳細の説明は省略する。
【0049】
保持容量113は、図8に示すように、ゲート電極242とソース電極243とが第1層間絶縁層283を介して対向することにより形成されている。
また、スイッチング用TFT112は、図9に示すように、シリコン層241と同様の構成のシリコン層250によって、信号線102に接続するドレイン領域250S、ゲート絶縁層282を挟んで走査線101と対向するキャリア領域250a、コネクタ260を介してゲート電極242に接続するドレイン領域250Dから構成された、駆動用TFT123と同様の構造を備えるスイッチング素子である。
【0050】
次に、本実施形態に係るEL表示装置1の製造方法の一例について、図10を参照して説明する。図10(a)〜(d)に示す各断面図は、図6中のF−G線の断面図に対応しており、各製造工程順に示している。なお以下の説明では、本発明に特に関係する工程、即ち、回路部11が形成されたあとの工程を中心にして説明する。
【0051】
図10(a)は、基板20上に、駆動用TFT123と信号線102などが適宜の方法によって形成された様子を示す。例えば、ポリシリコン層を形成し、ポリシリコン層をフォトリソグラフィ法によりパターニングし、島状のシリコン層241などを形成し、プラズマCVD法、熱酸化法などにより、シリコン酸化膜によって、ゲート絶縁層282を形成し、シリコン層241などにイオン注入法により不純物をドープして、駆動用TFT123などを形成し、金属膜によりゲート電極242などを形成し、それらの上層に第1層間絶縁層283を形成してからパターニングすることによって、コンタクトホール243a、243bなどを形成したものである。
【0052】
同時に、他の断面では、スイッチング用TFT112、保持容量113が形成されていることは言うまでもないが、本質的な差異はないので、以下では本発明に関わりの深い駆動用TFT123の近傍を例にとって説明することにする。
【0053】
次の工程では、図10(b)に示すように、第1層間絶縁層283を覆う第2層間絶縁層284を、例えばアクリル系樹脂などの高分子材料もしくはシリコン酸化膜などの無機材料によって形成する。更に、第2層間絶縁層284のうち、駆動用TFTのドレイン電極244に対応する部分を、例えばエッチングにより除去してコンタクトホール23aを形成する。
【0054】
次に、図10(c)に示すように、第2層間絶縁層284の上に、陽極23が形成される領域を空けて、有機バンク層221、221を形成する。具体的には、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂などのレジストを溶媒に溶かしたものを、スピンコート法、ディップコート法などの各種塗布法により塗布して有機質層を形成してから、エッチングなどによってパターニングすることができる。しかし、印刷法又はインクジェット法(材料吐出法)によって、材料インクを吐出・乾燥して形成すれば、パターンニングの工程が不要となり材料の無駄もなくなることから、より好ましい。
【0055】
次に、図10(d)に示すように、有機バンク層221、221間に、第2層間絶縁層284のコンタクトホール23aを介してドレイン電極244と導通する陽極23を形成する。陽極23は、印刷法又はインクジェット法によって材料インクを吐出・乾燥して所定位置に成膜する。
例えば、インクジェットヘッド(図示略)に材料インクを充填し、インクジェットヘッドの吐出ノズルを第2層間絶縁層284などの陽極形成面に対向させ、インクジェットヘッドと基材(基板20)とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御された液滴を謡曲形成面に吐出する。次に、吐出後の液滴を乾燥処理して材料インクに含まれる溶媒又は液体を蒸発させることにより、陽極23が形成される。
【0056】
また、その際同時に、ダミー領域のダミーパターンも形成する。なお、図3、4では、これら陽極23、ダミーパターンを総称して陽極23としている。ダミーパターンは、第2層間絶縁層284を介して下層のメタル配線へ接続しない構成とされている。即ち、ダミーパターンは、島状に配置され、実表示領域4に形成されている陽極23の形状とほぼ同一の形状を有している。
【0057】
次に、同様にして陽極23の上層に機能層110を形成していく。即ち、強酸基薄膜70、PEDOT71、強酸基薄膜70及び有機EL層60、電子輸送層52を順次成膜する。そして、機能層110、有機バンク層221などを覆う陰極50を透明電極として成膜する。機能層110、陰極50は、上記と同様の印刷法又はインクジェット法、あるいは蒸着法などにより成膜することができる。なお、この機能層110の形成工程以降は、正孔注入層70、正孔輸送層71、有機EL層60及び電子輸送層52などの酸化を防止すべく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの不活性ガス雰囲気で行うことが望ましい。
【0058】
更に、図3、4に示すように、乾燥剤45を内側に形成した封止基板30を、封止樹脂40を介して回路部11上に取り付けて、回路部11を封止する。その際、不活性雰囲気中で行うことにより、不活性ガス充填層46が形成される。
【0059】
上述したように、本実施形態のEL表示装置1によれば、機能層110は強酸基薄膜70を備えた構成となっているので、陽極23、PEDOT71及び有機EL層60を接合状態にして、有機EL層60に正孔を注入することができる。また、強酸基薄膜70の膜厚が5nmとなるように形成されているので、ポリエチレンスルフォン酸の強酸基による陽極23の溶出を最小限にすることができ、金属イオンの有機EL層60への拡散が抑制され、発光物質の輝度が維持され、電気光学装置の長寿命化を達成することができる。
【0060】
また、本実施形態のEL表示装置1の製造方法によれば、印刷法又はインクジェット法によって強酸基薄膜70を形成し、EL表示装置1を製造するので、製造効率が向上するとともに材料の無駄がなくなり、電気光学装置の製造コストを低減することができる。
【0061】
なお、上記の説明では製造方法の概略を説明したものであり、成膜対象によっては、インクジェット法によって成膜する際、材料吐出に先立って、例えばプラズマ処理などによって、親インク化工程、撥インク化工程を施すなどの周知の適宜処理を行うことは言うまでもない。
また、インクジェット法によって重ねて成膜を行う際、下層の再溶解を防止するために、上層の材料インクの溶媒などに下層を溶解させないものを用いることは言うまでもない。
【0062】
〔第2の実施形態〕
次に本発明の第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態では、強酸基薄膜70の材料として、PSS(ポリスチレンスルフォン酸)を採用したが、本実施形態では、ポリビニルスルフォン酸を採用したことを特徴としている。
【0063】
強酸基薄膜70となるポリビニルスルフォン酸は、その膜厚が3nmとなるように、陽極23、PEDOT71及び有機EL層60の各界面に形成されており、また、前述のインクジェット法を用いて好適に形成されている。
ここでポリビニルスルフォン酸は、スルフォン酸基を有した化合物の一つであり、このような強酸基を備えた材料、又は、スルフォン基に限らず所望の強酸基を備えた材料であれば、ポリビニルスルフォン酸に限らず種種の材料を好適に用いることができる。本実施例ではビニルスルフォン酸を塗布した後に紫外線によりポリビニルスルフォン酸とした。このように光で重合するモノマーの他、熱で重合するモノマーも用いることができる。
【0064】
このようにスルフォン酸基を備えた強酸基薄膜70は、陽極23のITOを最小限に溶解し、イオン化されたインジウムイオン及び錫イオンは、PEDOT71を構成する高分子と接触し、渾然一体に絡み合い、ITOとPEDOTは密着した接合状態となる。また、PEDOT71の高分子、ポリビニルスルフォン酸のスルフォン酸基及び有機EL層60が互いに接触し、渾然一体に絡み合い、PEDOT71と有機EL層60は接合状態になる。
そして、電源線103(図1参照)から陽極23に駆動電流が流れた際には、陽極23の正孔は、PEDOT71を介して有機EL層60に注入され、有機EL層60で正孔と電子が結合することにより、有機EL層60は発光する。
【0065】
上述したように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に発光物質の輝度の維持による電気光学装置の長寿命化を達成することができる。
【0066】
〔第3の実施形態〕
次に本発明の第3の実施形態について説明する。
第1及び第2の実施形態では、強酸基薄膜70の材料として、ポリエチレンスルフォン酸を採用した場合と、ポリビニルスルフォン酸を採用した場合について説明したが、本実施形態では、両者を共に採用したことを特徴としている。
【0067】
強酸基薄膜70となるポリビニルスルフォン酸は、その膜厚が5nmとなるように、陽極23及びPEDOT71の界面に形成されており、また、ポリスチレンスルフォン酸はその膜厚が5nmとなるように、PEDOT71及び有機EL層60の界面に形成されている。ビニルスルフォン酸及びポリスチレンスルフォン酸は、前述のインクジェット法を用いて好適に形成されている。
ここでビニルスルフォン酸及びポリスチレンスルフォン酸は、強酸基を備えた材料の一つであって、限定されたものではない。このような強酸基を備えた材料であれば、種種の材料を好適に用いることができる。また、ビニルスルフォン酸は高分子型強酸の一つにすぎず、高分子または高分子前駆体で強酸基を有した材料であれば、好適に用いることができる。ここではビニルスルフォン酸を製膜した後に紫外線で重合した。
【0068】
このようにポリビニルスルフォン酸を備えた強酸基薄膜70は、陽極23のITOを最小限に溶解し、イオン化されたインジウムイオン、錫イオンは、ポリビニルスルフォン酸と直接結合しつつ、PEDOT71を構成する高分子と接触し、渾然一体に絡み合い、ITOとPEDOTは密着した接合状態となる。また、ポリスチレンスルフォン酸を備えた強酸基薄膜70においては、PEDOT71の高分子、ポリスチレンスルフォン酸のスルフォン酸基及び有機EL層60が互いに接触し、渾然一体に絡み合い、PEDOT71と有機EL層60は接合状態になる。
そして、電源線103(図1参照)から陽極23に駆動電流が流れた際には、陽極23の正孔は、PEDOT71を介して有機EL層60に注入され、有機EL層60で正孔と電子が結合することにより、有機EL層60は発光する。
【0069】
上述したように、本実施形態よれば、第1及び第2の実施形態と同様に発光物質の輝度の維持による電気光学装置の長寿命化を達成することができる。
【0070】
〔第4の実施形態〕
以下、第1、第2又は第3の実施形態のEL表示装置を備えた電子機器の具体例について図11に基づき説明する。
図11(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図11(a)において、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は前記のEL表示装置を用いた表示部を示している。
図11(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図11(b)において、符号1100は時計本体を示し、符号1101は前記のEL表示装置を用いた表示部を示している。
図11(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図11(c)において、符号1200は情報処理装置、符号1201はキーボードなどの入力部、符号1202は前記のEL表示装置を用いた表示部、符号1203は情報処理装置本体を示している。
【0071】
図11(a)〜(c)に示すそれぞれの電子機器は、前記の第1、第2又は第3の実施形態のEL表示装置を用いた表示部を備えたものであり、先の第1、第2又は第3の実施形態のEL表示装置の特徴を有するので、表示特性、信頼性が向上するとともに、製造コストが低減された電子機器となる。
これらの電子機器を製造するには、第1、第2又は第3の実施形態のEL表示装置1を、携帯電話、携帯型情報処理装置、腕時計型電子機器などの各種電子機器の表示部に組み込むことにより製造される。
【0072】
【実施例】
ガラス基板上にTFTを形成した後に、陽極としてITOをパターニングし、陽極の上層にポリビニルスルフォン酸薄膜を5nmの厚さに形成し、更に導電性高分子膜としてPEDOT薄膜を30nmの厚みで形成し、更にポリスチレンスルフォン酸を厚み5nmで製膜した。この基板を200℃10分焼成した。
この上にポリジオクチルフルオレンを70nmの厚みに製膜し、陰極としてLiFを2nm、Caを20nm、Alを200nmで製膜した。更にエポキシ系接着剤及びガラス基板を用いて封止した。
このような一連の製膜においては、インクジェット法によって成膜する際に材料吐出に先立って、例えばプラズマ処理などによって、親インク化工程、撥インク化工程を施すなどの周知の処理と、また、プレベーク等の処理を適宜行っている。
このように形成したEL表示装置を発光させたところ、400Cd/m2からの半減寿命が70時間となった。従来のEL発光装置を発光させた場合には、400Cd/m2からの半減寿命が40時間であるのに対して、本発明のEL発光装置の半減寿命は30時間延長した。
【0073】
また、次に別の実施例について説明する。
ガラス基板上にTFTを形成した後に、陽極としてITOをパターニングし、陽極の上層にポリスチレンスルフォン酸を有した薄膜を5nmの厚さに形成し、更に導電性高分子膜としてポリピロール薄膜を30nmの厚みで形成し、更にポリスチレンスルフォン酸を厚み3nmで製膜した。この基板を200℃10分焼成した。
この上にポリパラフェニレンビニレンを70nmの厚みに製膜し、陰極としてLi/Al合金を200nmで製膜した。更にエポキシ系接着剤及びガラス基板を用いて封止した。
このような一連の製膜においては、インクジェット法によって成膜する際に材料吐出に先立って、例えばプラズマ処理などによって、親インク化工程、撥インク化工程を施すなどの周知の処理と、また、プレベーク等の処理を適宜行っている。
このように形成したEL表示装置を発光させたところ、100Cd/m2からの半減寿命が1000時間となった。従来のEL発光装置を発光させた場合には、100Cd/m2からの半減寿命が600時間であるのに対して、本発明のEL発光装置の半減寿命は、400時間延長した。
【0074】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明に係る電気光学装置によれば、強酸基を備えた薄膜によって、陽極、導電性高分子層及び発光層を接合状態にすることで発光層に正孔を注入することができる効果が得られる。
また、強酸基を備えた薄膜の膜厚が10nm以下となるように形成されているので、陽極の溶出を最小限にすることができ、金属イオンの発光層への拡散が抑制され、発光物質の輝度が維持され、電気光学装置の長寿命化を達成することができる効果が得られる。
【0075】
また、本発明に係る電気光学装置の製造方法によれば、印刷法又はインクジェット法によって強酸基を備えた薄膜を形成し、電気光学装置を製造するので、製造効率が向上するとともに材料の無駄がなくなり、電気光学装置の製造コストを低減することができるという効果を奏する。
【0076】
また、本発明に係る電子機器によれば、本発明に係る電気光学装置を備えるので本発明に係る電気光学装置と同様の効果を備えた電子機器となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の、EL表示装置の配線構造を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の、EL表示装置の構成を模式的に示す平面図である。
【図3】図2のA−B線に沿う断面図である。
【図4】図2のC−D線に沿う断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の、機能層の概略構成を説明するための概念図である。
【図6】図1の画素領域Xの平面視模式図である。
【図7】図6のE部におけるF−G方向に沿った断面図である。
【図8】図6のH部におけるI−J方向に沿った断面図である。
【図9】図6のG部におけるL−M方向に沿った断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態の、EL表示装置の製造方法を説明する工程図である。
【図11】本発明の第4の実施形態の電子装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 EL表示装置(電気光学装置)
23 陽極(電極)
50 陰極(電極)
60 有機EL層(発光層)
70 強酸基薄膜(強酸基を備えた薄膜)
71 導電性高分子層
1000、1100、1200 電子機器
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気光学装置及びその製造方法、並びに電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する)表示装置などの電気光学装置においては、基板上に複数の回路素子、陽極、正孔注入層、EL物質などの電気光学物質で形成される発光層、また、陰極などが積層され、それらを封止基板によって基板との間に挟んで封止した構成を具備しているものがある。具体的には、ガラス基板等の透明基板上に、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、酸化スズ(SnO2)、等の透明導電材料からなる陽極と、ポリチオフェン誘導体(以下、PEDOTと略記する)のドーピング体からなる正孔注入層と、ポリフルオレン等の発光物質からなる発光層と、Ca等の低仕事関数を有する金属材料や金属化合物からなる陰極とを順次積層したものである。
このような電気光学装置においては、陽極側から注入された正孔と、陰極側から注入された電子とが、蛍光能を有する発光層内で再結合し、励起状態から失活する際に発光する現象を利用している。
【0003】
この電気光学装置の正孔注入層を構成しているPEDOTのドーピング体には、PEDOTにPSS(ポリスチレンスルフォン酸)をドープしたPEDOT:PSSが採用され、その一種であるバイトロン−P(Bytron−P:バイエル社製)などを好適に用いることが多い。
このPSSは、強い酸性材料であり、PSSがドープされたPEDOT:PSSは強酸性(pH=1.3程度)を示すので、陽極上に正孔注入層のPEDOT:PSSを積層形成すると、陽極の一部が溶出、侵食され、陽極の溶解、浸食反応によって中和された界面が形成される。この界面においては、陽極とPEDOT:PSSが混合され、PSSのスルフォン酸基と陽極とが絡み合って密着し、渾然一体となった接合状態となる。
このように陽極とPEDOT:PSSとを密着させた接合状態にすることで、陽極と正孔注入層との間においては、高い導電性が得られ、十分な電荷移動が行われるので、発光層は良好に発光する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の電気光学装置においては、強酸性のPEDOT:PSSによって陽極の一部が溶解し、溶解された陽極の金属イオンが発光層中に拡散することで、発光特性の悪化、発光物質の輝度の低下及び電気光学装置の短寿命化を招いてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、PEDOT:PSSによる陽極の金属イオンの溶出を最小限に抑制しつつ、発光特性を悪化させることなく発光物質の輝度を維持し、電気光学装置の長寿命化ができると共に、製造コストを低減できる電気光学装置及びその製造方法、並びにそのような電気光学装置を備えた電子機器を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用した。
即ち、発光層を狭持している一対の電極のうち少なくとも一方の電極の表面に、膜厚が10nm以下の強酸基を備えた薄膜が形成されている電気光学装置を特徴とするものである。
本発明の電気光学装置について、例えば強酸基を備えた薄膜がPSSであり、また、電極がITOからなる陽極である場合を説明する。
PSSの強酸基であるスルフォン酸基は、陽極のITOと接触することでITOを溶解し、ITOを構成するインジウム及び錫がイオン化された状態となる。スルフォン酸基の薄膜は、10nm以下に形成されているので、インジウムイオン及び錫イオンの量は、従来技術の正孔注入層を構成するPEDOT:PSSよりも少量にすることができる。
即ち、強酸基による電極の溶解を最小限にして、金属イオンの発光層への溶出を抑制することができる。
【0007】
また、本発明は、先に記載の電気光学装置であり、強酸基を備えた薄膜と発光層との間に、導電性高分子層が形成されていることが好ましい。
本発明の電気光学装置について、例えば導電性高分子層がPEDOTである場合について、前述の例示に続いて説明する。
強酸基によるITOの溶解によってイオン化されたインジウムイオン及び錫イオンは、PEDOTを構成する高分子と接触し、渾然一体に絡み合い、ITOとPEDOTは密着した接合状態となる。
このように電極と導電性高分子層とが接合状態になることで、金属イオンの発光層への溶出を最小限に抑制しつつ、陽極の正孔を導電性高分子層に注入することができる。
【0008】
また、本発明は、先に記載の電気光学装置であり、導電性高分子層と発光層との間に、膜厚が10nm以下の強酸基を備えた薄膜が形成されていることが好ましい。
本発明の電気光学装置について、例えば強酸基を備えた薄膜がPSSであり、発光層がポリフルオレン誘導体である場合について、前述の例示に続いて説明する。
PEDOTとポリフルオレン誘導体と間には、PSSのスルフォン酸基が形成されているので、PEDOTを構成する高分子、ポリフルオレン誘導体を構成する高分子及びスルフォン酸基が互いに接触し、渾然一体に絡み合い、PEDOTとポリフルオレン誘導体は密着した接合状態となる。また、スルフォン酸基の薄膜は、10nm以下に形成されているので、PEDOTとポリフルオレン誘導体との導電性が確保される。
このように導電性高分子層と発光層とが接合状態になることで、金属イオンの発光層への溶出を最小限に抑制しつつ、陽極の正孔を、導電性高分子層を介して発光層に注入することができる。
【0009】
また、本発明は、先に記載の電気光学装置であり、強酸基を備えた薄膜は、高分子鎖を含有していることが好ましい。
本発明の電気光学装置について、前述の例示に続いて説明する。
強酸基および高分子を含有する層がITOとPEDOTとの間に形成されることで、強酸基によるITOの溶解によってイオン化されたインジウムイオン及び錫イオンが強酸基とイオン結合し、ITOとPEDOTとの間に留まりつつ、ITOとPEDOTは密着した接合状態となる。
また、強酸基および高分子を含有する層がPEDOTとポリフルオレン誘導体との間に形成されることで、強酸基とポリフルオレン誘導体を構成する高分子が結合し、PEDOTとポリフルオレン誘導体は接合状態となる。
このように電極、導電性高分子層及び発光層とが接合状態になることで、金属イオンの発光層への溶出を最小限に抑制しつつ、分子及びイオンが結合された状態を維持し、陽極の正孔を、導電性高分子層を介して発光層に注入することができる。
【0010】
また、本発明は、先に記載の電気光学装置であり、強酸基はスルフォン酸基であることが好ましい。
本発明の電気光学装置について、前述の例示に続いて説明する。
スルフォン酸基がITOを溶解することによってイオン化されたインジウムイオン及び錫イオンは、PEDOTを構成する高分子と接触し、渾然一体に絡み合い、ITOとPEDOTは密着した接合状態となる。また、PEDOTを構成する高分子、ポリフルオレン誘導体を構成する高分子及びスルフォン酸基が互いに接触し、渾然一体に絡み合い、PEDOTとポリフルオレン誘導体は密着した接合状態となる。
このように電極、導電性高分子層及び発光層とが接合状態になることで、金属イオンの発光層への溶出を最小限に抑制しつつ、陽極の正孔を、導電性高分子層を介して発光層に注入することができる。
【0011】
また、本発明は、先に記載の電気光学装置であり、強酸基を備えた薄膜はPSS(ポリスチレンスルフォン酸)であることが好ましい。
本発明の電気光学装置によれば、PSSはスルフォン酸基を有しているので、電極、導電性高分子層及び発光層とが接合状態となり、好適に金属イオンの発光層への溶出を最小限に抑制しつつ、陽極の正孔を、導電性高分子層を介して発光層に注入することができる。また、高分子であるために、強酸基であるスルフォン酸基が発光層内に拡散することも無く、信頼性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明は、先に記載の電気光学装置であり、導電性高分子層は、ポリチオフェン、ポリアニリン及びポリピロールのうち少なくともいずれか一つを有していることが好ましい。
本発明の電気光学装置によれば、導電性高分子層が好適に採用されるので、陽極の正孔を、導電性高分子層を介して発光層に注入することができる。
【0013】
また、更に本発明の電気光学装置の製造方法は、先に記載の電気光学装置の製造方法であり、印刷法又は材料吐出法によって、強酸基を備えた薄膜及び導電性高分子層のうち少なくとも一方が形成されることを特徴とするものである。
従って、本発明では、先に記載の電気光学装置を製造することができるので、先に記載の電気光学装置と同様の効果を奏する。
また、強酸基を備えた薄膜材料又は導電性高分子材料は、蒸発又は揮発可能な液体が添加されることにより液状化され、材料インクとなり、これを印刷法又は材料吐出法によってパターニングを行い、乾燥させることによって、必要なパターンを成膜することができる。その結果として、一様な層膜を形成してから部分的に層膜を除去してパターンを形成するという材料及び製造工程の無駄が低減され、製造が容易になり、製造コストを低減することができる。
ここで、液状化とは、所定の材料を蒸発又は揮発可能な液体中に含ませることによって液体状とすることを意味する。従って、例えば溶媒に材料を溶かして液体状とすること、及び材料を液体中に分散させて液体状とすることを含むものとする。後者の場合、材料は粉体として形成されてもよいし、粉砕されて砕片とされていてもよい。また、材料吐出法によって製造可能であれば、他の形態をとることにより液状化してもよい。
【0014】
次に、本発明の電子機器は、先に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする。
従って、本発明の電子機器としては、例えば、携帯電話機、移動体情報端末、時計、ワープロ、パソコンなどの情報処理装置などを例示することができる。このように電子機器の表示部に、本発明の表示装置を採用することによって、好適かつ製造コストが低減できる電子機器を提供することが可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る電気光学装置及びその製造方法、並びに電子機器の実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。なお、以下に示す各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならせてある。
【0016】
〔第1の実施形態〕
本発明の電気光学装置の第1の実施形態として、電気光学物質の一例である電界発光型物質、中でも有機EL材料を用いたEL表示装置について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係るEL表示装置の配線構造を示す模式図である。
EL表示装置(電気光学装置)1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下では、TFTと略記する)を用いたアクティブマトリクス方式のEL表示装置である。
【0018】
図1に示すように、EL表示装置1は、複数の走査線101…と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102…と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103…とがそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線101…と信号線102…の各交点付近に、画素領域X…が設けられている。
【0019】
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路100が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続されている。
【0020】
更に、画素領域Xの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT112と、このスイッチング用TFT112を介して信号線102から共有される画素信号を保持する保持容量113と、該保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT123と、この駆動用TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに該電源線103から駆動電流が流れ込む陽極(電極)23と、この陽極23と陰極50との間に挟み込まれた機能層110とが設けられている。陽極23と陰極50と機能層110により、発光素子が構成されている。
【0021】
このEL表示装置1によれば、走査線101が駆動されてスイッチング用TFT112がオン状態になると、そのときの信号線102の電位が保持容量113に保持され、該保持容量113の状態に応じて、駆動用TFT123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT123のチャネルを介して、電源線103から陽極23に電流が流れ、更に機能層110を介して陰極50に電流が流れる。機能層110は、これを流れる電流量に応じて発光する。そこで、発光はそれぞれ陽極23…ごとにオン・オフを制御されるから、陽極23は画素電極となっている。
【0022】
次に、本実施形態のEL表示装置1の具体的な態様を、図2〜4を参照して説明する。図2はEL表示装置1の構成を模式的に示す平面図である。図3は図2のA−B線に沿う断面図、図4は図2のC−D線に沿う断面図である。
【0023】
図2に示すように、本実施形態のEL表示装置1は、電気絶縁性を備える基板20と、図示略のスイッチング用TFTに接続された画素電極が基板20上にマトリックス状に配置されてなる図示略の画素電極域と、画素電極域の周囲に配置されるとともに各画素電極に接続される電源線103…(図1参照)と、少なくとも画素電極域上に位置する平面視ほぼ矩形の画素部3(図中一点鎖線枠内)とを具備して構成されている。また、画素部3は、中央部分の実表示領域4(図中二点鎖線枠内)と、実表示領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線及び二点鎖線の間の領域)とに区画されている。
【0024】
実表示領域4には、それぞれ画素電極を有する表示領域R、G、BがA−B方向及びC−D方向に離間して配置されている。
また、実表示領域4の図中両側には、走査線駆動回路80が配置されている。この走査線駆動回路80はダミー領域5の下側に位置して設けられている。
【0025】
更に、実表示領域4の図中上側には、検査回路90が配置されている。この検査回路90はダミー領域5の下側に位置して設けられている。この検査回路90は、EL表示装置1の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する不図示の検査情報出力手段を備え、製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されている。
【0026】
走査線駆動回路80及び検査回路90の駆動電圧は、所定の電源部から駆動電圧導通部310(図3参照)及び駆動電圧導通部340(図4参照)を介して印加されている。また、これら走査線駆動回路80及び検査回路90への駆動制御信号及び駆動電圧は、このEL表示装置1の作動制御を司る所定のメインドライバなどから駆動制御信号導通部320(図3参照)及び駆動電圧導通部350(図4参照)を介して送信及び印加されるようになっている。なお、この場合の駆動制御信号とは、走査線駆動回路80及び検査回路90が信号を出力する際の制御に関連するメインドライバなどからの指令信号である。
【0027】
EL表示装置1は、図3及び図4に示すように、基板20と封止基板30とが封止樹脂40を介して貼り合わされている。基板20、封止基板30及び封止樹脂40とで囲まれた領域には、乾燥剤45が挿入されるとともに、例えば窒素ガスなどの不活性ガスが充填された不活性ガス充填層46が形成されている。
【0028】
基板20は、封止側発光型のEL表示装置の場合には、この基板20の対向側である封止基板30側から発光を取り出す構成であるので、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナ等のセラミック、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0029】
また、基板側発光型のEL表示装置の場合には、基板20側から発光を取り出す構成であるので、基板20は、透明あるいは半透明のものが採用される。例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特に、安価なソーダガラス基板が好適に用いられる。
【0030】
封止基板30は、例えば、電気絶縁性を有する板状部材を採用することができる。また、封止樹脂40は、例えば、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂からなるものであり、特に熱硬化樹脂の一種であるエポキシ樹脂よりなることが好ましい。
【0031】
また、基板20上には、陽極23…を駆動するための駆動用TFT123…などを含む回路部11が形成され、回路部11の上部には、駆動用TFT123…に接続されたそれぞれの陽極23…が図2の表示領域R、G、Bの位置に対応して形成されている。実表示領域4内の陽極23…の上層には、機能層110が形成され、その上層には、陰極50が形成されている。なお、回路部11には、走査線駆動回路80、検査回路90、及びそれらを接続して駆動するための駆動電圧動通部310、340、350、駆動制御信号導通部320などが含まれている。
【0032】
次に、機能層110の概略構成について、図5を参照して説明する。
図5は本実施形態の機能層110の概略構成を説明するための概念図である。機能層110は、陽極23と陰極50に挟まれる多層構造を備えており、陽極23側から順に、強酸基薄膜(強酸基を備えた薄膜)70、PEDOT(導電性高分子層)71、強酸基薄膜70、有機EL層(発光層)60及び電子輸送層52を順に形成されたものである。陽極と有機EL層間の強酸基薄膜と、導電性高分子層と有機EL層間の強酸機薄膜の材料を変えても良い。
【0033】
陽極23は、ITOによって構成され、印加された電圧によって、正孔を有機EL層60に向けて注入するものであり、仕事関数が高く導電性を有している。陽極23を形成するための材料としては、ITOに限るものではなく、封止側発光型のEL表示装置の場合には、特に光透過性を備えた材料を採用する必要はなく、好適な材料であればよい。また、基板側発光型のEL表示装置の場合には、光透過性を備えた公知の材料を採用することができる。例えば、金属酸化物が挙げられるが、インジウム錫酸化物(ITO)、もしくは、金属酸化物に亜鉛(Zn)を含有した材料、例えば、酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス透明導電膜(Indium Zinc Oxide:IZO/アイ・ゼット・オー)(登録商標))(出光興産社製)を採用することができる。
【0034】
強酸基薄膜70は、ポリエチレンスルフォン酸によって構成された薄膜であり、その膜厚が5nmとなるように形成されている。
なお、強酸基薄膜70の膜厚は10nm以下であれば、所望の特性を得られる。
ここで、ポリスチレンスルフォン酸は、強酸基を有した水溶性高分子の一つであり、このような強酸機を有した高分子の例として、種種の材料を好適に用いることができる。例えば、ポリスチレンカルボン酸等を採用することができる。
【0035】
PEDOT71は、導電性高分子材料の一つであり、陽極23の正孔を有機EL層60に注入するための正孔注入層を構成するものであり、その膜厚は、30nmに形成されている。
このような正孔注入層を形成する材料の例として種種の導電性高分子材料が好適に用いられ、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等を採用することができる。
【0036】
有機EL層60は、陽極23から強酸基薄膜70、PEDOT71、強酸基薄膜70を経て注入された正孔と、陰極50からの注入された電子とが結合して蛍光を発生させるようになっている。有機EL層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料を用いることができる。具体的には、ポリフルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料、例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の材料をドープして用いることもできる。
【0037】
電子輸送層52は、有機EL層60に電子を注入する役割を果たすものであり、この形成材料としては、特に限定されることなく、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体等が例示される。具体的には、先の正孔輸送層の形成材料と同様に、特開昭63−70257号、同63−175860号公報、特開平2−135359号、同2−135361号、同2−209988号、同3−37992号、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示され、特に2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウムが好適とされる。
【0038】
陰極50は、図3〜4に示すように、実表示領域4及びダミー領域5の総面積より広い面積を備え、それぞれを覆うように形成されている。陰極50は、陽極23の対向電極として、電子を有機EL層60に注入する機能を備える。また本実施形態では、有機EL層60から発光する光を陰極50側から取り出すので、光透過性を備える必要がある。そのために光透過性であって、仕事関数が低い材料から構成される。
陰極50を形成する材料としては、例えばカルシウム金属又はカルシウムを主成分とする合金を有機EL層60側に積層して第1の陰極層とし、その上層にアルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金、もしくは銀又は銀−マグネシウム合金などを積層して第2の陰極層とした積層体を採用することができる。なお、第2の陰極層は第1の陰極層を覆って、酸素や水分などとの化学反応から保護するとともに、陰極50の導電性を高めるために設けられる。したがって、化学的に安定で仕事関数が低く、単層構造でもよく、また金属材料に限るものではない。
【0039】
このように構成された機能層110においては、強酸基薄膜70のポリエチレンスルフォン酸が有する強酸基と陽極23のITOとが接触することで、強酸基がITOを溶解し、インジウム及び錫がイオン化された状態となる。この強酸基薄膜70の膜厚は、5nm以下に形成されているので、インジウムイオン及び錫イオンの溶出量は最小限となり、また、インジウムイオン及び錫イオンは、ポリエチレンスルフォン酸と直接結合し、陽極23とPEDOT71は絡み合って密着した接合状態になる。
また、強酸基薄膜70がPEDOT71と有機EL層60との間に形成されることによって、強酸基薄膜70のポリエチレンスルフォン酸に含まれる強酸基と、PEDOT71を構成する高分子と、有機EL層60を構成する高分子とが渾然一体となりつつ、ポリエチレンスルフォン酸と有機EL層60を構成する分子同士が結合し、強酸基が有機EL層60内へ拡散することがなく、PEDOT71と有機EL層60は接合状態になる。
【0040】
このように強酸基薄膜70によって陽極23、PEDOT71及び有機EL層60が接合された状態で、電源線103(図1参照)から駆動電流が機能層110の陽極23に流れ込むと、陽極23と陰極50の間に電位差が生じ、陽極23の正孔がPEDOT71を介して、有機EL層60に注入され、陰極50の電子が電子輸送層52を介して有機EL層60に注入されるので、有機EL層60に注入された正孔と電子とが結合することにより、有機EL層60は発光する。
【0041】
次に、実表示領域4に設けられた駆動用TFT123の近傍の構成について、図6〜9を参照して簡単に説明する。図6は、図1の画素領域Xの平面視模式図である。図7は、図6のE部におけるF−G方向に沿った断面図である。図8は、図6のH部におけるI−J方向に沿った断面図である。図9は、図6のG部におけるL−M方向に沿った断面図である。
【0042】
図6に示すように、画素領域Xでは、E部に駆動用TFT123が、H部に保持容量113が、K部にスイッチング用TFT112が形成され、それぞれ、図1に示すように、互いに接続され、走査線101、信号線102、ソース電極243(電源線103)とも接続されている。
【0043】
まず、機能層110を含む駆動用TFT123の近傍の構成を、図7を参照して簡単に説明する。
図7に示すように、基板20の表面には、図示略のSiO2を主体とする下地保護層を下地として、その上層にシリコン層241が形成されている。このシリコン層241の表面は、SiO2及びSiNのうちいずれかを主体とするゲート絶縁層282によって覆われている。なお、本明細書において、「主体」とする成分とは、構成成分のうち最も含有率の高い成分を指すこととする。
【0044】
シリコン層241において、ゲート絶縁層282を挟んでゲート電極242と重なる領域がチャネル領域241aとされている。なお、このゲート電極242は図示略の走査線101の一部である。一方、シリコン層241を覆い、ゲート電極242が形成されたゲート絶縁層282の表面は、SiO2を主体とする第1層間絶縁層283によって覆われている。
【0045】
更に、シリコン層241において、チャネル領域241aのソース側にはソース領域241Sが、チャネル領域241aのドレイン側にはドレイン領域241Dが設けられている。ソース領域241S及びドレイン領域241Dには濃度傾斜が設けられ、いわゆるLDD(Light Doped Drain)構造となっている。ソース領域241Sは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール243aを介して、ソース電極243に接続されている。このソース電極243は、上述した電源線103(図1、6参照、図7においてはソース電極243の位置に紙面垂直方向に延在する)の一部として構成される。一方、ドレイン領域241Dは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール243bを介して、ソース電極243と同一層からなるドレイン電極244に接続されている。
【0046】
ソース電極243及びドレイン電極244が形成された第1層間絶縁層283の上層は、例えばアクリル系の樹脂成分を主体とする第2層間絶縁層284によって覆われている。この第2層間絶縁層284は、アクリル系の絶縁膜以外の材料、例えば、SiN、SiO2などを用いることもできる。そして、陽極23が第2層間絶縁層284の面上に形成されるとともに、該第2層間絶縁層284に設けられたコンタクトホール23aを介してドレイン電極244に接続されている。即ち、陽極23は、ドレイン電極244を介して、シリコン層241のドレイン領域241Dに接続されている。
【0047】
陽極23が形成された第2層間絶縁層284の表面は、陽極23と、図示略の例えばSiO2などの親液性材料を主体とする親液性制御層と、アクリルやポリイミドなどからなる有機バンク層221とによって覆われている。図3、4に示すように、有機バンク層221…は、陽極23…の間にその回りを取り囲むように2次元的に配置されており、機能層110…から上側に発光された光が、有機バンク層221によって仕切られる構成とされている。なお、本実施形態における親液性制御層の「親液性」とは、少なくとも有機バンク層221を構成するアクリル、ポリイミドなどの材料と比べて親液性が高いことを意味するものとする。以上に説明した基板20から第2層間絶縁層284までの層は回路部11を構成している。
【0048】
なお、本実施形態のEL表示装置1は、カラー表示を行うべく構成されている。即ち、図2における光の三原色R、G、Bに対応する表示領域R、G、Bごとに機能層110…に含まれる各有機EL層60が、それぞれ三原色に対応して形成されている。即ち、有機EL層60…が表示領域R、G、Bごとに異なるだけなので、詳細の説明は省略する。
【0049】
保持容量113は、図8に示すように、ゲート電極242とソース電極243とが第1層間絶縁層283を介して対向することにより形成されている。
また、スイッチング用TFT112は、図9に示すように、シリコン層241と同様の構成のシリコン層250によって、信号線102に接続するドレイン領域250S、ゲート絶縁層282を挟んで走査線101と対向するキャリア領域250a、コネクタ260を介してゲート電極242に接続するドレイン領域250Dから構成された、駆動用TFT123と同様の構造を備えるスイッチング素子である。
【0050】
次に、本実施形態に係るEL表示装置1の製造方法の一例について、図10を参照して説明する。図10(a)〜(d)に示す各断面図は、図6中のF−G線の断面図に対応しており、各製造工程順に示している。なお以下の説明では、本発明に特に関係する工程、即ち、回路部11が形成されたあとの工程を中心にして説明する。
【0051】
図10(a)は、基板20上に、駆動用TFT123と信号線102などが適宜の方法によって形成された様子を示す。例えば、ポリシリコン層を形成し、ポリシリコン層をフォトリソグラフィ法によりパターニングし、島状のシリコン層241などを形成し、プラズマCVD法、熱酸化法などにより、シリコン酸化膜によって、ゲート絶縁層282を形成し、シリコン層241などにイオン注入法により不純物をドープして、駆動用TFT123などを形成し、金属膜によりゲート電極242などを形成し、それらの上層に第1層間絶縁層283を形成してからパターニングすることによって、コンタクトホール243a、243bなどを形成したものである。
【0052】
同時に、他の断面では、スイッチング用TFT112、保持容量113が形成されていることは言うまでもないが、本質的な差異はないので、以下では本発明に関わりの深い駆動用TFT123の近傍を例にとって説明することにする。
【0053】
次の工程では、図10(b)に示すように、第1層間絶縁層283を覆う第2層間絶縁層284を、例えばアクリル系樹脂などの高分子材料もしくはシリコン酸化膜などの無機材料によって形成する。更に、第2層間絶縁層284のうち、駆動用TFTのドレイン電極244に対応する部分を、例えばエッチングにより除去してコンタクトホール23aを形成する。
【0054】
次に、図10(c)に示すように、第2層間絶縁層284の上に、陽極23が形成される領域を空けて、有機バンク層221、221を形成する。具体的には、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂などのレジストを溶媒に溶かしたものを、スピンコート法、ディップコート法などの各種塗布法により塗布して有機質層を形成してから、エッチングなどによってパターニングすることができる。しかし、印刷法又はインクジェット法(材料吐出法)によって、材料インクを吐出・乾燥して形成すれば、パターンニングの工程が不要となり材料の無駄もなくなることから、より好ましい。
【0055】
次に、図10(d)に示すように、有機バンク層221、221間に、第2層間絶縁層284のコンタクトホール23aを介してドレイン電極244と導通する陽極23を形成する。陽極23は、印刷法又はインクジェット法によって材料インクを吐出・乾燥して所定位置に成膜する。
例えば、インクジェットヘッド(図示略)に材料インクを充填し、インクジェットヘッドの吐出ノズルを第2層間絶縁層284などの陽極形成面に対向させ、インクジェットヘッドと基材(基板20)とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御された液滴を謡曲形成面に吐出する。次に、吐出後の液滴を乾燥処理して材料インクに含まれる溶媒又は液体を蒸発させることにより、陽極23が形成される。
【0056】
また、その際同時に、ダミー領域のダミーパターンも形成する。なお、図3、4では、これら陽極23、ダミーパターンを総称して陽極23としている。ダミーパターンは、第2層間絶縁層284を介して下層のメタル配線へ接続しない構成とされている。即ち、ダミーパターンは、島状に配置され、実表示領域4に形成されている陽極23の形状とほぼ同一の形状を有している。
【0057】
次に、同様にして陽極23の上層に機能層110を形成していく。即ち、強酸基薄膜70、PEDOT71、強酸基薄膜70及び有機EL層60、電子輸送層52を順次成膜する。そして、機能層110、有機バンク層221などを覆う陰極50を透明電極として成膜する。機能層110、陰極50は、上記と同様の印刷法又はインクジェット法、あるいは蒸着法などにより成膜することができる。なお、この機能層110の形成工程以降は、正孔注入層70、正孔輸送層71、有機EL層60及び電子輸送層52などの酸化を防止すべく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの不活性ガス雰囲気で行うことが望ましい。
【0058】
更に、図3、4に示すように、乾燥剤45を内側に形成した封止基板30を、封止樹脂40を介して回路部11上に取り付けて、回路部11を封止する。その際、不活性雰囲気中で行うことにより、不活性ガス充填層46が形成される。
【0059】
上述したように、本実施形態のEL表示装置1によれば、機能層110は強酸基薄膜70を備えた構成となっているので、陽極23、PEDOT71及び有機EL層60を接合状態にして、有機EL層60に正孔を注入することができる。また、強酸基薄膜70の膜厚が5nmとなるように形成されているので、ポリエチレンスルフォン酸の強酸基による陽極23の溶出を最小限にすることができ、金属イオンの有機EL層60への拡散が抑制され、発光物質の輝度が維持され、電気光学装置の長寿命化を達成することができる。
【0060】
また、本実施形態のEL表示装置1の製造方法によれば、印刷法又はインクジェット法によって強酸基薄膜70を形成し、EL表示装置1を製造するので、製造効率が向上するとともに材料の無駄がなくなり、電気光学装置の製造コストを低減することができる。
【0061】
なお、上記の説明では製造方法の概略を説明したものであり、成膜対象によっては、インクジェット法によって成膜する際、材料吐出に先立って、例えばプラズマ処理などによって、親インク化工程、撥インク化工程を施すなどの周知の適宜処理を行うことは言うまでもない。
また、インクジェット法によって重ねて成膜を行う際、下層の再溶解を防止するために、上層の材料インクの溶媒などに下層を溶解させないものを用いることは言うまでもない。
【0062】
〔第2の実施形態〕
次に本発明の第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態では、強酸基薄膜70の材料として、PSS(ポリスチレンスルフォン酸)を採用したが、本実施形態では、ポリビニルスルフォン酸を採用したことを特徴としている。
【0063】
強酸基薄膜70となるポリビニルスルフォン酸は、その膜厚が3nmとなるように、陽極23、PEDOT71及び有機EL層60の各界面に形成されており、また、前述のインクジェット法を用いて好適に形成されている。
ここでポリビニルスルフォン酸は、スルフォン酸基を有した化合物の一つであり、このような強酸基を備えた材料、又は、スルフォン基に限らず所望の強酸基を備えた材料であれば、ポリビニルスルフォン酸に限らず種種の材料を好適に用いることができる。本実施例ではビニルスルフォン酸を塗布した後に紫外線によりポリビニルスルフォン酸とした。このように光で重合するモノマーの他、熱で重合するモノマーも用いることができる。
【0064】
このようにスルフォン酸基を備えた強酸基薄膜70は、陽極23のITOを最小限に溶解し、イオン化されたインジウムイオン及び錫イオンは、PEDOT71を構成する高分子と接触し、渾然一体に絡み合い、ITOとPEDOTは密着した接合状態となる。また、PEDOT71の高分子、ポリビニルスルフォン酸のスルフォン酸基及び有機EL層60が互いに接触し、渾然一体に絡み合い、PEDOT71と有機EL層60は接合状態になる。
そして、電源線103(図1参照)から陽極23に駆動電流が流れた際には、陽極23の正孔は、PEDOT71を介して有機EL層60に注入され、有機EL層60で正孔と電子が結合することにより、有機EL層60は発光する。
【0065】
上述したように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に発光物質の輝度の維持による電気光学装置の長寿命化を達成することができる。
【0066】
〔第3の実施形態〕
次に本発明の第3の実施形態について説明する。
第1及び第2の実施形態では、強酸基薄膜70の材料として、ポリエチレンスルフォン酸を採用した場合と、ポリビニルスルフォン酸を採用した場合について説明したが、本実施形態では、両者を共に採用したことを特徴としている。
【0067】
強酸基薄膜70となるポリビニルスルフォン酸は、その膜厚が5nmとなるように、陽極23及びPEDOT71の界面に形成されており、また、ポリスチレンスルフォン酸はその膜厚が5nmとなるように、PEDOT71及び有機EL層60の界面に形成されている。ビニルスルフォン酸及びポリスチレンスルフォン酸は、前述のインクジェット法を用いて好適に形成されている。
ここでビニルスルフォン酸及びポリスチレンスルフォン酸は、強酸基を備えた材料の一つであって、限定されたものではない。このような強酸基を備えた材料であれば、種種の材料を好適に用いることができる。また、ビニルスルフォン酸は高分子型強酸の一つにすぎず、高分子または高分子前駆体で強酸基を有した材料であれば、好適に用いることができる。ここではビニルスルフォン酸を製膜した後に紫外線で重合した。
【0068】
このようにポリビニルスルフォン酸を備えた強酸基薄膜70は、陽極23のITOを最小限に溶解し、イオン化されたインジウムイオン、錫イオンは、ポリビニルスルフォン酸と直接結合しつつ、PEDOT71を構成する高分子と接触し、渾然一体に絡み合い、ITOとPEDOTは密着した接合状態となる。また、ポリスチレンスルフォン酸を備えた強酸基薄膜70においては、PEDOT71の高分子、ポリスチレンスルフォン酸のスルフォン酸基及び有機EL層60が互いに接触し、渾然一体に絡み合い、PEDOT71と有機EL層60は接合状態になる。
そして、電源線103(図1参照)から陽極23に駆動電流が流れた際には、陽極23の正孔は、PEDOT71を介して有機EL層60に注入され、有機EL層60で正孔と電子が結合することにより、有機EL層60は発光する。
【0069】
上述したように、本実施形態よれば、第1及び第2の実施形態と同様に発光物質の輝度の維持による電気光学装置の長寿命化を達成することができる。
【0070】
〔第4の実施形態〕
以下、第1、第2又は第3の実施形態のEL表示装置を備えた電子機器の具体例について図11に基づき説明する。
図11(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図11(a)において、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は前記のEL表示装置を用いた表示部を示している。
図11(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図11(b)において、符号1100は時計本体を示し、符号1101は前記のEL表示装置を用いた表示部を示している。
図11(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図11(c)において、符号1200は情報処理装置、符号1201はキーボードなどの入力部、符号1202は前記のEL表示装置を用いた表示部、符号1203は情報処理装置本体を示している。
【0071】
図11(a)〜(c)に示すそれぞれの電子機器は、前記の第1、第2又は第3の実施形態のEL表示装置を用いた表示部を備えたものであり、先の第1、第2又は第3の実施形態のEL表示装置の特徴を有するので、表示特性、信頼性が向上するとともに、製造コストが低減された電子機器となる。
これらの電子機器を製造するには、第1、第2又は第3の実施形態のEL表示装置1を、携帯電話、携帯型情報処理装置、腕時計型電子機器などの各種電子機器の表示部に組み込むことにより製造される。
【0072】
【実施例】
ガラス基板上にTFTを形成した後に、陽極としてITOをパターニングし、陽極の上層にポリビニルスルフォン酸薄膜を5nmの厚さに形成し、更に導電性高分子膜としてPEDOT薄膜を30nmの厚みで形成し、更にポリスチレンスルフォン酸を厚み5nmで製膜した。この基板を200℃10分焼成した。
この上にポリジオクチルフルオレンを70nmの厚みに製膜し、陰極としてLiFを2nm、Caを20nm、Alを200nmで製膜した。更にエポキシ系接着剤及びガラス基板を用いて封止した。
このような一連の製膜においては、インクジェット法によって成膜する際に材料吐出に先立って、例えばプラズマ処理などによって、親インク化工程、撥インク化工程を施すなどの周知の処理と、また、プレベーク等の処理を適宜行っている。
このように形成したEL表示装置を発光させたところ、400Cd/m2からの半減寿命が70時間となった。従来のEL発光装置を発光させた場合には、400Cd/m2からの半減寿命が40時間であるのに対して、本発明のEL発光装置の半減寿命は30時間延長した。
【0073】
また、次に別の実施例について説明する。
ガラス基板上にTFTを形成した後に、陽極としてITOをパターニングし、陽極の上層にポリスチレンスルフォン酸を有した薄膜を5nmの厚さに形成し、更に導電性高分子膜としてポリピロール薄膜を30nmの厚みで形成し、更にポリスチレンスルフォン酸を厚み3nmで製膜した。この基板を200℃10分焼成した。
この上にポリパラフェニレンビニレンを70nmの厚みに製膜し、陰極としてLi/Al合金を200nmで製膜した。更にエポキシ系接着剤及びガラス基板を用いて封止した。
このような一連の製膜においては、インクジェット法によって成膜する際に材料吐出に先立って、例えばプラズマ処理などによって、親インク化工程、撥インク化工程を施すなどの周知の処理と、また、プレベーク等の処理を適宜行っている。
このように形成したEL表示装置を発光させたところ、100Cd/m2からの半減寿命が1000時間となった。従来のEL発光装置を発光させた場合には、100Cd/m2からの半減寿命が600時間であるのに対して、本発明のEL発光装置の半減寿命は、400時間延長した。
【0074】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明に係る電気光学装置によれば、強酸基を備えた薄膜によって、陽極、導電性高分子層及び発光層を接合状態にすることで発光層に正孔を注入することができる効果が得られる。
また、強酸基を備えた薄膜の膜厚が10nm以下となるように形成されているので、陽極の溶出を最小限にすることができ、金属イオンの発光層への拡散が抑制され、発光物質の輝度が維持され、電気光学装置の長寿命化を達成することができる効果が得られる。
【0075】
また、本発明に係る電気光学装置の製造方法によれば、印刷法又はインクジェット法によって強酸基を備えた薄膜を形成し、電気光学装置を製造するので、製造効率が向上するとともに材料の無駄がなくなり、電気光学装置の製造コストを低減することができるという効果を奏する。
【0076】
また、本発明に係る電子機器によれば、本発明に係る電気光学装置を備えるので本発明に係る電気光学装置と同様の効果を備えた電子機器となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の、EL表示装置の配線構造を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の、EL表示装置の構成を模式的に示す平面図である。
【図3】図2のA−B線に沿う断面図である。
【図4】図2のC−D線に沿う断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の、機能層の概略構成を説明するための概念図である。
【図6】図1の画素領域Xの平面視模式図である。
【図7】図6のE部におけるF−G方向に沿った断面図である。
【図8】図6のH部におけるI−J方向に沿った断面図である。
【図9】図6のG部におけるL−M方向に沿った断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態の、EL表示装置の製造方法を説明する工程図である。
【図11】本発明の第4の実施形態の電子装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 EL表示装置(電気光学装置)
23 陽極(電極)
50 陰極(電極)
60 有機EL層(発光層)
70 強酸基薄膜(強酸基を備えた薄膜)
71 導電性高分子層
1000、1100、1200 電子機器
Claims (9)
- 発光層を狭持している一対の電極のうち少なくとも一方の電極の表面に、膜厚が10nm以下の強酸基を備えた薄膜が形成されていることを特徴とする電気光学装置。
- 請求項1記載の電気光学装置において、
前記強酸基を備えた薄膜と、前記発光層との間に導電性高分子層が形成されていることを特徴とする電気光学装置。 - 請求項1又は請求項2記載の電気光学装置において、
前記導電性高分子層と、前記発光層との間に、膜厚が10nm以下の強酸基を備えた薄膜が形成されていることを特徴とする電気光学装置。 - 請求項1から請求項3のうちいずれかに記載の電気光学装置において、
前記強酸基を備えた薄膜は、高分子鎖を含有していることを特徴とする電気光学装置。 - 請求項1から請求項4のうちいずれかに記載の電気光学装置において、
前記強酸基は、スルフォン酸基であることを特徴とする電気光学装置。 - 請求項5記載の電気光学装置において、
前記強酸基を備えた薄膜は、ポリスチレンスルフォン酸であることを特徴とする電気光学装置。 - 請求項1から請求項6のうちいずれかに記載の電気光学装置において、
前記導電性高分子層は、ポリチオフェン、ポリアニリン及びポリピロールのうち少なくともいずれか一つを有していることを特徴とする電気光学装置。 - 一対の電極間に、強酸基を備えた薄膜及び導電性高分子層を備える電気光学装置の製造方法であって、
印刷法又は材料吐出法によって、前記強酸基を備えた薄膜及び前記導電性高分子層のうち少なくとも一方が形成されることを特徴とする電気光学装置の製造方法。 - 請求項1から請求項7のうちいずれかに記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。
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JP2002216864A JP2004063138A (ja) | 2002-07-25 | 2002-07-25 | 電気光学装置及びその製造方法、並びに電子機器 |
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US7892607B2 (en) | 2005-05-16 | 2011-02-22 | Seiko Epson Corporation | Multilayer film, electrooptic device, electronic apparatus, and process for forming multilayer film |
-
2002
- 2002-07-25 JP JP2002216864A patent/JP2004063138A/ja active Pending
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