JP2004063054A - 磁気記録媒体および磁気記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】低ノイズかつ優れた高密度記録用磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】高密度磁気記録媒体として、非磁性基板上に、あるいは非磁性基板上に設けた軟磁性膜上に、Tiからなる下地層、Ruを主成分とする中間層、酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜および保護層を順次形成する。CoPtCr合金磁性膜に酸素を含有することにより、低ノイズ化が図られ、さらにTi下地層、Ru中間層をもちいることにより酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜の結晶性が高められ、保磁力が増大する。これにより、低ノイズかつ高保磁力の磁気記録媒体さらには高密度記録に適した磁気記録装置を提供することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】高密度磁気記録媒体として、非磁性基板上に、あるいは非磁性基板上に設けた軟磁性膜上に、Tiからなる下地層、Ruを主成分とする中間層、酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜および保護層を順次形成する。CoPtCr合金磁性膜に酸素を含有することにより、低ノイズ化が図られ、さらにTi下地層、Ru中間層をもちいることにより酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜の結晶性が高められ、保磁力が増大する。これにより、低ノイズかつ高保磁力の磁気記録媒体さらには高密度記録に適した磁気記録装置を提供することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は情報の記録再生を行うための磁気ディスク装置に関し、特に高密度記録に適した磁気記録媒体および磁気記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
情報化社会の発展には目覚しいものがあり、文字情報のみならず音声および画像情報を高速に処理することができる装置の1つとしてコンピュータ等に装着されている磁気記録装置が知られている。現在、このような磁気記録装置の記録密度を向上させつつ、磁気記録装置を小型化する方向に開発が進められてきている。
【0003】
典型的な磁気記録装置は1枚または複数の磁気ディスクをスピンドル上に回転可能に装着されている。各磁気ディスクは基板とその上に形成された磁性膜(または記録層ともいう)から構成されており、情報の記録は特定の磁化方向を有する磁気を磁性膜中に形成することにより行われる。
【0004】
磁気記録媒体の記録密度を向上させるための技術としては、高保磁力化、磁性粒子の微細化、磁性粒子間の交換相互作用の低減などがあげられる。粒子間の交換相互作用低減のため、粒子間にCrを偏析させる方法が一般的に行われている。Crの偏析を促進させるためにTa、B等の添加元素を加える方法や、約300℃の基板加熱を行う方法、ガス圧を制御する方法などが行われている。これらの粒子間の交換相互作用低減は媒体ノイズの低減を目的としている。またその他の粒子間の交換相互作用低減の方法として、記録層に酸素を導入することが考えられる。記録層の形成時、アルゴンガスに酸素を混合させることにより、酸素を磁性粒子間に配置することができ、粒子間の交換相互作用を低減させることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
記録層に酸素を含有させずに高保磁力を図ることはCoPtCr媒体を用いて可能だが、その場合の磁気記録媒体は比較的媒体ノイズは大きい。このため、媒体ノイズを低減させるために記録層に酸素を含有することが考えられる。しかしながら非磁性基板上に、または非磁性基板上に配置した裏打ち軟磁性膜の上に直接あるいはRu層を介して酸素を含んだ記録層を形成した場合、その保磁力は小さく、また記録層の酸素含有によって減少することがわかっている。
【0006】
本発明の目的は、高保磁力でかつ低媒体ノイズの磁気記録媒体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に従えば、非磁性基板上にTiからなる下地層(以下、Ti下地層と呼ぶ)、その上にRuあるいはRuを主成分とする合金からなる中間層(以下、Ru中間層と呼ぶ)を備え、さらにその上に酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜を形成することにより粒子間の交換相互作用を低減させ、かつ磁性膜の結晶性を向上できる。この結果として低ノイズかつ高保磁力の磁気記録媒体を提供することができる。
【0008】
一般的にCoPtCr合金磁性膜は六方稠密(hcp)構造をとり、そのc軸が磁化容易軸となる。ここで、膜中の無数の磁性結晶粒においてc軸がほぼ一方向にそろって向いている状態を結晶性がよいといい、その方向に保磁力が大きくなる。
【0009】
酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜を用いた磁気記録媒体において、非磁性基板上または裏打ち軟磁性層の上に直接あるいはRu中間層を介して酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜を形成した場合、その結晶性は不十分で、保磁力は面内方向、垂直方向と同等の値を示すことがわかっている。本発明によると、酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜の下にRu中間層、その下にTi下地層を設けることにより、酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜のc軸をほぼ垂直方向に向けることができる。つまり酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜の結晶性を飛躍的に高め、保磁力を大きくすることができる。また記録層に酸素を含んで、粒子間の交換相互作用を低減させることができる。つまり保磁力が向上し、かつ低ノイズの高記録密度磁気記録媒体を提供することができる。
【0010】
本発明に従えば、Tiからなる下地層として、その膜厚は2〜30nmの範囲であるとなおよい。膜厚が2nm未満の場合、記録層の結晶性を向上させるのに不十分であること、また30nm以上の場合だと結晶粒が大きくなり、媒体ノイズが増大する。
【0011】
本発明に従えば、Ru中間層の膜厚として3〜150nmの範囲でえらぶことにより保磁力が向上し、かつ低ノイズの高記録密度磁気記録媒体を提供することができる。Ruが3nm未満の膜厚だと、酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜に十分な保磁力が得られず、また150nm以上だと結晶粒が大きくなること、またその結晶粒径のばらつきが大きくなり、低ノイズの媒体には適さない。
【0012】
またRu中間層は主にRuから形成されるが、これに限らず、X=Rh、Ir、Hf、Cu、Cr、Ag、Au、Re、Mo、Nb、W、Ta、Ti、V、Zr、B、C等から選ばれる1種以上の元素との合金RuXであってもよい。
【0013】
本発明に従えば、酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜の酸素含有量は5〜20原子%の範囲であることが望ましい。酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜形成時はアルゴンと酸素の混合ガスを用い、この混合比を適宣調節することにより合金磁性膜中に5〜20原子%の酸素を分散した状態で導入することができる。またはターゲット中に含まれる酸素量を調節することにより合金磁性膜中の酸素含有量を変化させることも可能である。この酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜を用いることにより、粒子間の交換相互作用を低減させ低ノイズの媒体を提供することができる。合金磁性膜中の酸素含有量が5%未満の場合、磁性粒子間の分離が不十分で媒体ノイズの低減ができないこと、また酸素含有量が20%以上の場合、保磁力が低下するため、高密度記録媒体には適さない。
【0014】
本発明の磁気記録媒体において酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜は結晶質であって、結晶粒内にCoを主成分とする合金、粒子間に酸素を含む構造をしている。該結晶質層であるCo合金においては、CoにCr、Pt、Ta、Nb、Ti、Si、B、Pd、V、Mg、Gd等、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0015】
ここで、CoPtCr合金磁性膜中に酸素を導入したことにより記録層の結晶粒が微細化される。平面TEMによるEDX測定の結果、CoPtCr合金磁性膜中の酸素はCrを優先的に酸化して、Cr酸化物の形でCo磁性粒子を取り囲んで粒間に存在することがわかっている。上記結晶粒子の微細化と酸化物のCo磁性粒子の取り囲みにより粒子間の交換相互作用が低減され、磁気記録媒体のノイズが低減できると考えられる。
【0016】
以上の結果、本発明の磁気記録媒体は4000Oe以上の高保磁力を得ることができ、かつ低ノイズであり、酸素を導入しない場合と比較し、S/Nは約10dB向上する。CoPtCr合金磁性膜の酸素含有量が5原子%以下ならばS/Nは向上せず、また20原子%以上ならS/Nは向上せず、さらに保磁力が低下する。
【0017】
本発明の磁気記録媒体は非磁性基板材料としてガラス、アルミニウム、ポリカーボネード等のプラスチック、樹脂等を用いることができる。またTiからなる下地層と非磁性基板との間には単数または複数の層を設けることも可能である。
【0018】
本発明の磁気記録媒体において、別の好ましい形態に従うと、非磁性基板とTiからなる下地層との間に軟磁性層があってもよい。この軟磁性層は垂直磁気記録装置において、磁気ヘッドを用いて記録再生するときに、磁気ヘッドから漏れ出した磁束を記録層に集束させる役割を持つ。この軟磁性層にはその役割から考えて、飽和磁化が大きく、保磁力が小さく、透磁率が高い材料が用いられる。本発明に用いられる軟磁性層の材料としてはFeTaC、FeTaN、CoTaZr、CoTaNb、NiFe、CoB、FeC等を用いることができる。またこの軟磁性層の膜厚はその役割から考えて、50nm〜500nmの範囲であることが望ましい。
【0019】
本発明によると、酸素を含んだCoPtCr合金磁性膜を形成するには、アルゴンと酸素の混合ガスを用いること以外に、CoPtCrターゲット中に数%〜十数%のSiO2やMgOを配置させることにより、純アルゴンスパッタリングにより合金磁性膜に酸素を導入することができる。この場合の合金磁性膜はCo磁性結晶粒のまわりにSiO2やMgOが存在する構造をする。低ノイズ、高保磁力の観点からSiやMgの含有率は3原子から15原子%の範囲であることが望ましい。この結果、同様に磁気記録媒体のノイズが低減できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0021】
(実施例1〜2)
本発明に従う磁気記録媒体の典型例を図1、2の断面図に示す。磁気記録媒体10はガラス基板1上に、Ti下地層2、Ru中間層3、酸素を含むCoPtCr合金磁性膜4、C保護層18を備える。各層は以下のようにDC/RFマグネトロンスパッタ装置を用いてスパッタリングにより形成した。実施例1、2として以下の表にまとめる構成の試料を作製した。基板は成膜前に340℃まで加熱した。実施例1については、直径2・5インチ(6.25cm)のガラス基板上にTi下地層をDCスパッタリングによりガス圧0.28Pa、投入電力500Wで形成したあと、Ru中間層をガス圧4.1Pa、投入電力500Wで形成、続けて酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜をガス圧4.2Pa、投入電力400Wで形成、さらにC保護層をガス圧0.20Pa、投入電力300Wで順次形成した。磁性膜のみRFスパッタリングで形成し、他の各層はすべてDCスパッタリングにより形成した。実施例2については直径2.5インチのガラス基板上に膜厚5nmのTi膜、膜厚200nmのCoTaZr軟磁性膜をDCスパッタリングによりガス圧0.28Pa、投入電力500Wで順次形成したあと、その上に実施例1と同様にTi下地層、Ru中間層、酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜、C保護層を順次形成した。用いたターゲットは軟磁性膜としてCo88Ta10Zr2(原子%)、Ti下地層としてTiターゲット、Ru中間層としてRuターゲット、CoPtCr合金磁性膜として、Co64Pt20Cr16(原子%)−O(CoPtCr:O=90:10mol%)を用いた。CoPtCr合金磁性膜形成時にはアルゴンと酸素の混合ガスを用い、膜中の酸素含有率が10.5%となるように混合ガスの酸素濃度を調整した。ここで、膜中の酸素含有率はオージェ電子分光法により測定した。膜厚方向に対する酸素含有率はほぼ均一であった。また各層の膜厚は下表のとおりである。実施例1ではTi下地層の膜厚を0〜40nmの範囲で変化させて複数の磁気記録媒体を作製した。
【0022】
【表1】
【0023】
(実施例3)
実施例2における磁気記録媒体のRu中間層を膜厚40nmのRuCr合金膜に変えた以外は同じ構成の磁気記録媒体を作製した。この媒体におけるCoPtCr合金磁性膜の酸素含有率は10.5%であった。RuCr合金中間層はターゲットとしてRu60Cr40(原子%)を用い、DCマグネトロンスパッタにより形成した。Arガス圧は0.28Pa、投入電力は300Wであった。こうして得られた磁気記録媒体の断面図を図3に示す。
【0024】
【表2】
【0025】
(実施例4)
実施例2における酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜に8原子%のSiを含有させて形成した以外は同じ構成の磁気記録媒体を作製した。記録層にはターゲットとしてCo64Pt20Cr16−SiO2(CoPtCr:SiO2=92:8mol%)を用い、RFスパッタリングにより形成した。プロセスガスとして純Arガスを用いた。Arガス圧は4.2Pa、投入電力は500Wであった。こうして得られた磁気記録媒体の断面図を図4に示す。
【0026】
【表3】
【0027】
(静磁気特性、結晶性の評価)
上記のように作製した種々の磁気記録媒体についてその膜面垂直方向の保磁力および面内方向の保磁力を測定した。実施例1の磁気記録媒体について、図5にTi膜厚に対する垂直保磁力Hc(Oe)および面内保磁力Hc//と垂直保磁力Hc⊥の比(Hc///Hc⊥)の変化を示す。図5によると、Ti膜厚の増加に伴い、垂直方向の保磁力のみが増加していることがわかる。また図6にTi膜厚0nmおよび6nmの磁気記録媒体のX線回折グラフの一例を示す。これら媒体の飽和磁化は500emu/cm3であった。さらに図7にTi膜厚に対する磁性膜のCo(002)ピークで測定したロッキングカーブの反値幅Δθ50(度)を示す。図6のX線回折グラフによると、hcp構造のc軸が膜面垂直方向を向いていることを示すCo(002)ピークが膜厚6nmのTi下地層によって著しく増加していることがわかる。これはTi下地層によって、Ru中間層、および酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜の結晶性が向上したことを示す。図7に、Ti下地膜厚と結晶配向性を表すΔθ50の値との関係を示す。Δθ50というのは膜の結晶配向性を表しており、値が小さいほど結晶配向性が高いことを示す。結晶配向性が高いと磁気記録媒体の保磁力が高められ、高記録密度に適する媒体が得られる。図7から、Ti下地膜を設けることによりΔθ50の値が急激に減少すること、すなわち、膜の結晶配向性が向上することがわかる。十分な結晶配向性を得るためには、Ti下地膜厚は2nm以上設けることが望ましい。以上のことから、Ti下地層、Ru中間層、酸素を含有する合金磁性膜を備えた磁気記録媒体において、その保磁力は大幅に上昇したものと考えられる。さらにTi下地層の膜厚が30nm以上だとTEM観察の結果、磁性膜の平均結晶粒が増大することがわかっている。結晶粒径が大きくなると媒体ノイズが増大することを考えると、Ti層の膜厚としては2〜30nmの範囲であることが望ましい。
【0028】
実施例2においては、垂直磁気記録用媒体として、膜厚200nmの軟磁性層をTi層の基板側に設けた。今回は軟磁性層としてCoTaZr膜を用いた。しかし、垂直磁気記録用として一般的に知られているほかの軟磁性膜、例えば、FeTaC、FeAlSi、FeC、CoTaNb、NiFeや、またそれらとC膜の積層膜であってもよい。さらに軟磁性膜としての効果を示すためには軟磁性膜の膜厚は50〜500nmの範囲であることが望ましい。実施例2における磁気記録媒体の磁気特性をKerr効果測定装置により評価したところ、保磁力は5.1kOeと高保磁力であった。またX線回折測定から得られるΔθ50は5.0度であり、高い結晶配向性が得られた。
【0029】
実施例3、実施例4の磁気記録媒体の磁気特性を評価したところ、保磁力はそれぞれ、4.0kOe、4.5kOeと高保磁力であった。またX線回折測定から得られるΔθ50はそれぞれ5.0度、5.1度であり、高い結晶配向性が得られた。
【0030】
(実施例5:記録再生特性の評価)
実施例1から実施例4までそれぞれ複数枚の磁気ディスクを作製し、各ディスクの保護層上に潤滑材を塗布したあと、それらを磁気記録装置のスピンドルの同軸上に取り付けた。磁気記録装置の概略構成を図8および図9に示す。図8は磁気記録装置の上面の図であり、図9は図8の破線A−A’における磁気記録装置60の断面図である。記録用ヘッドとして2.1Tの高飽和磁束密度を有する軟磁性膜を用いた薄膜磁気ヘッドを用い、再生のための巨大磁気抵抗効果を有するスピンバルブ型磁気ヘッドを用いた。記録用磁気ヘッド、再生用磁気ヘッドは一体化されており、図8および図9では磁気ヘッド53として示した。この一体型磁気ヘッド53は磁気ヘッド用駆動系54により制御される。磁気ディスク10は回転駆動系51のスピンドル52により回転される。磁気ディスク装置の磁気ヘッド面と磁気ディスク面との距離は10nmに保った。この磁気ディスクに記録密度700kfciに相当する信号を記録して磁気ディスクの記録再生特性(S/N比)を評価した。
【0031】
評価した結果を下表にまとめる。また比較例として、記録層にCoCrPtTa膜を用いた磁気記録媒体を作製し、同様に評価を行った。試料の作製手順は記録層以外は実施例2と同様である。実施例1については、Ti下地層の膜厚に対し、S/N比の変化を図10に示した。Ti下地層が2nm以上の膜厚の場合、S/Nが向上することがわかった。また実施例2〜4の磁気記録媒体についても同様に比較例と比較して、S/N比が大幅に向上した。
【0032】
【表4】
【0033】
【発明の効果】
本発明の磁気記録媒体はTiからなる下地層、Ruを主成分とする中間層、酸素を含有するCoPtCr記録層を備える。酸素を含有させたCoPtCr記録層を用いかつ、Tiからなる下地層、Ruを主成分とする中間層をもちいることにより、媒体ノイズが低減でき、さらに記録層の結晶性が向上し、保磁力が高められる。結果として、低ノイズで高記録密度の磁気記録媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の磁気記録媒体の断面構造を示す図である。
【図2】実施例2の磁気記録媒体の断面構造を示す図である。
【図3】実施例3の磁気記録媒体の断面構造を示す図である。
【図4】実施例4の磁気記録媒体の断面構造を示す図である。
【図5】実施例1においてTi膜厚に対する磁気記録媒体の保磁力および面内保磁力Hc//と垂直保磁力Hc⊥の比(Hc///Hc⊥)の変化を表す。
【図6】実施例1におけるTi膜厚0nmおよび6nmの磁気記録媒体についてX線回折グラフの一例を示す。
【図7】実施例1の磁気記録媒体についてTi膜厚に対する磁性膜のCo(002)ピークにおけるロッキングカーブの反値幅Δθ50の変化を表す。
【図8】本発明の実施例5に従う磁気記録装置の一例を上方から見た概略構成図である。
【図9】図8に示す磁気記録装置のA−A’方向の断面図である。
【図10】実施例6において、実施例1の磁気記録媒体の記録再生時におけるS/N特性を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 Ti下地層
3 Ru中間層
4 酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜
5 軟磁性層
6 RuCr合金中間層
7 Siおよび酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜
10 磁気記録媒体
11 接着層
18 保護層
52 スピンドル
53 磁気ヘッド
54 磁気ヘッド用駆動系
60 磁気記録装置
【発明の属する技術分野】
本発明は情報の記録再生を行うための磁気ディスク装置に関し、特に高密度記録に適した磁気記録媒体および磁気記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
情報化社会の発展には目覚しいものがあり、文字情報のみならず音声および画像情報を高速に処理することができる装置の1つとしてコンピュータ等に装着されている磁気記録装置が知られている。現在、このような磁気記録装置の記録密度を向上させつつ、磁気記録装置を小型化する方向に開発が進められてきている。
【0003】
典型的な磁気記録装置は1枚または複数の磁気ディスクをスピンドル上に回転可能に装着されている。各磁気ディスクは基板とその上に形成された磁性膜(または記録層ともいう)から構成されており、情報の記録は特定の磁化方向を有する磁気を磁性膜中に形成することにより行われる。
【0004】
磁気記録媒体の記録密度を向上させるための技術としては、高保磁力化、磁性粒子の微細化、磁性粒子間の交換相互作用の低減などがあげられる。粒子間の交換相互作用低減のため、粒子間にCrを偏析させる方法が一般的に行われている。Crの偏析を促進させるためにTa、B等の添加元素を加える方法や、約300℃の基板加熱を行う方法、ガス圧を制御する方法などが行われている。これらの粒子間の交換相互作用低減は媒体ノイズの低減を目的としている。またその他の粒子間の交換相互作用低減の方法として、記録層に酸素を導入することが考えられる。記録層の形成時、アルゴンガスに酸素を混合させることにより、酸素を磁性粒子間に配置することができ、粒子間の交換相互作用を低減させることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
記録層に酸素を含有させずに高保磁力を図ることはCoPtCr媒体を用いて可能だが、その場合の磁気記録媒体は比較的媒体ノイズは大きい。このため、媒体ノイズを低減させるために記録層に酸素を含有することが考えられる。しかしながら非磁性基板上に、または非磁性基板上に配置した裏打ち軟磁性膜の上に直接あるいはRu層を介して酸素を含んだ記録層を形成した場合、その保磁力は小さく、また記録層の酸素含有によって減少することがわかっている。
【0006】
本発明の目的は、高保磁力でかつ低媒体ノイズの磁気記録媒体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に従えば、非磁性基板上にTiからなる下地層(以下、Ti下地層と呼ぶ)、その上にRuあるいはRuを主成分とする合金からなる中間層(以下、Ru中間層と呼ぶ)を備え、さらにその上に酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜を形成することにより粒子間の交換相互作用を低減させ、かつ磁性膜の結晶性を向上できる。この結果として低ノイズかつ高保磁力の磁気記録媒体を提供することができる。
【0008】
一般的にCoPtCr合金磁性膜は六方稠密(hcp)構造をとり、そのc軸が磁化容易軸となる。ここで、膜中の無数の磁性結晶粒においてc軸がほぼ一方向にそろって向いている状態を結晶性がよいといい、その方向に保磁力が大きくなる。
【0009】
酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜を用いた磁気記録媒体において、非磁性基板上または裏打ち軟磁性層の上に直接あるいはRu中間層を介して酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜を形成した場合、その結晶性は不十分で、保磁力は面内方向、垂直方向と同等の値を示すことがわかっている。本発明によると、酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜の下にRu中間層、その下にTi下地層を設けることにより、酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜のc軸をほぼ垂直方向に向けることができる。つまり酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜の結晶性を飛躍的に高め、保磁力を大きくすることができる。また記録層に酸素を含んで、粒子間の交換相互作用を低減させることができる。つまり保磁力が向上し、かつ低ノイズの高記録密度磁気記録媒体を提供することができる。
【0010】
本発明に従えば、Tiからなる下地層として、その膜厚は2〜30nmの範囲であるとなおよい。膜厚が2nm未満の場合、記録層の結晶性を向上させるのに不十分であること、また30nm以上の場合だと結晶粒が大きくなり、媒体ノイズが増大する。
【0011】
本発明に従えば、Ru中間層の膜厚として3〜150nmの範囲でえらぶことにより保磁力が向上し、かつ低ノイズの高記録密度磁気記録媒体を提供することができる。Ruが3nm未満の膜厚だと、酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜に十分な保磁力が得られず、また150nm以上だと結晶粒が大きくなること、またその結晶粒径のばらつきが大きくなり、低ノイズの媒体には適さない。
【0012】
またRu中間層は主にRuから形成されるが、これに限らず、X=Rh、Ir、Hf、Cu、Cr、Ag、Au、Re、Mo、Nb、W、Ta、Ti、V、Zr、B、C等から選ばれる1種以上の元素との合金RuXであってもよい。
【0013】
本発明に従えば、酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜の酸素含有量は5〜20原子%の範囲であることが望ましい。酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜形成時はアルゴンと酸素の混合ガスを用い、この混合比を適宣調節することにより合金磁性膜中に5〜20原子%の酸素を分散した状態で導入することができる。またはターゲット中に含まれる酸素量を調節することにより合金磁性膜中の酸素含有量を変化させることも可能である。この酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜を用いることにより、粒子間の交換相互作用を低減させ低ノイズの媒体を提供することができる。合金磁性膜中の酸素含有量が5%未満の場合、磁性粒子間の分離が不十分で媒体ノイズの低減ができないこと、また酸素含有量が20%以上の場合、保磁力が低下するため、高密度記録媒体には適さない。
【0014】
本発明の磁気記録媒体において酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜は結晶質であって、結晶粒内にCoを主成分とする合金、粒子間に酸素を含む構造をしている。該結晶質層であるCo合金においては、CoにCr、Pt、Ta、Nb、Ti、Si、B、Pd、V、Mg、Gd等、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0015】
ここで、CoPtCr合金磁性膜中に酸素を導入したことにより記録層の結晶粒が微細化される。平面TEMによるEDX測定の結果、CoPtCr合金磁性膜中の酸素はCrを優先的に酸化して、Cr酸化物の形でCo磁性粒子を取り囲んで粒間に存在することがわかっている。上記結晶粒子の微細化と酸化物のCo磁性粒子の取り囲みにより粒子間の交換相互作用が低減され、磁気記録媒体のノイズが低減できると考えられる。
【0016】
以上の結果、本発明の磁気記録媒体は4000Oe以上の高保磁力を得ることができ、かつ低ノイズであり、酸素を導入しない場合と比較し、S/Nは約10dB向上する。CoPtCr合金磁性膜の酸素含有量が5原子%以下ならばS/Nは向上せず、また20原子%以上ならS/Nは向上せず、さらに保磁力が低下する。
【0017】
本発明の磁気記録媒体は非磁性基板材料としてガラス、アルミニウム、ポリカーボネード等のプラスチック、樹脂等を用いることができる。またTiからなる下地層と非磁性基板との間には単数または複数の層を設けることも可能である。
【0018】
本発明の磁気記録媒体において、別の好ましい形態に従うと、非磁性基板とTiからなる下地層との間に軟磁性層があってもよい。この軟磁性層は垂直磁気記録装置において、磁気ヘッドを用いて記録再生するときに、磁気ヘッドから漏れ出した磁束を記録層に集束させる役割を持つ。この軟磁性層にはその役割から考えて、飽和磁化が大きく、保磁力が小さく、透磁率が高い材料が用いられる。本発明に用いられる軟磁性層の材料としてはFeTaC、FeTaN、CoTaZr、CoTaNb、NiFe、CoB、FeC等を用いることができる。またこの軟磁性層の膜厚はその役割から考えて、50nm〜500nmの範囲であることが望ましい。
【0019】
本発明によると、酸素を含んだCoPtCr合金磁性膜を形成するには、アルゴンと酸素の混合ガスを用いること以外に、CoPtCrターゲット中に数%〜十数%のSiO2やMgOを配置させることにより、純アルゴンスパッタリングにより合金磁性膜に酸素を導入することができる。この場合の合金磁性膜はCo磁性結晶粒のまわりにSiO2やMgOが存在する構造をする。低ノイズ、高保磁力の観点からSiやMgの含有率は3原子から15原子%の範囲であることが望ましい。この結果、同様に磁気記録媒体のノイズが低減できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0021】
(実施例1〜2)
本発明に従う磁気記録媒体の典型例を図1、2の断面図に示す。磁気記録媒体10はガラス基板1上に、Ti下地層2、Ru中間層3、酸素を含むCoPtCr合金磁性膜4、C保護層18を備える。各層は以下のようにDC/RFマグネトロンスパッタ装置を用いてスパッタリングにより形成した。実施例1、2として以下の表にまとめる構成の試料を作製した。基板は成膜前に340℃まで加熱した。実施例1については、直径2・5インチ(6.25cm)のガラス基板上にTi下地層をDCスパッタリングによりガス圧0.28Pa、投入電力500Wで形成したあと、Ru中間層をガス圧4.1Pa、投入電力500Wで形成、続けて酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜をガス圧4.2Pa、投入電力400Wで形成、さらにC保護層をガス圧0.20Pa、投入電力300Wで順次形成した。磁性膜のみRFスパッタリングで形成し、他の各層はすべてDCスパッタリングにより形成した。実施例2については直径2.5インチのガラス基板上に膜厚5nmのTi膜、膜厚200nmのCoTaZr軟磁性膜をDCスパッタリングによりガス圧0.28Pa、投入電力500Wで順次形成したあと、その上に実施例1と同様にTi下地層、Ru中間層、酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜、C保護層を順次形成した。用いたターゲットは軟磁性膜としてCo88Ta10Zr2(原子%)、Ti下地層としてTiターゲット、Ru中間層としてRuターゲット、CoPtCr合金磁性膜として、Co64Pt20Cr16(原子%)−O(CoPtCr:O=90:10mol%)を用いた。CoPtCr合金磁性膜形成時にはアルゴンと酸素の混合ガスを用い、膜中の酸素含有率が10.5%となるように混合ガスの酸素濃度を調整した。ここで、膜中の酸素含有率はオージェ電子分光法により測定した。膜厚方向に対する酸素含有率はほぼ均一であった。また各層の膜厚は下表のとおりである。実施例1ではTi下地層の膜厚を0〜40nmの範囲で変化させて複数の磁気記録媒体を作製した。
【0022】
【表1】
【0023】
(実施例3)
実施例2における磁気記録媒体のRu中間層を膜厚40nmのRuCr合金膜に変えた以外は同じ構成の磁気記録媒体を作製した。この媒体におけるCoPtCr合金磁性膜の酸素含有率は10.5%であった。RuCr合金中間層はターゲットとしてRu60Cr40(原子%)を用い、DCマグネトロンスパッタにより形成した。Arガス圧は0.28Pa、投入電力は300Wであった。こうして得られた磁気記録媒体の断面図を図3に示す。
【0024】
【表2】
【0025】
(実施例4)
実施例2における酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜に8原子%のSiを含有させて形成した以外は同じ構成の磁気記録媒体を作製した。記録層にはターゲットとしてCo64Pt20Cr16−SiO2(CoPtCr:SiO2=92:8mol%)を用い、RFスパッタリングにより形成した。プロセスガスとして純Arガスを用いた。Arガス圧は4.2Pa、投入電力は500Wであった。こうして得られた磁気記録媒体の断面図を図4に示す。
【0026】
【表3】
【0027】
(静磁気特性、結晶性の評価)
上記のように作製した種々の磁気記録媒体についてその膜面垂直方向の保磁力および面内方向の保磁力を測定した。実施例1の磁気記録媒体について、図5にTi膜厚に対する垂直保磁力Hc(Oe)および面内保磁力Hc//と垂直保磁力Hc⊥の比(Hc///Hc⊥)の変化を示す。図5によると、Ti膜厚の増加に伴い、垂直方向の保磁力のみが増加していることがわかる。また図6にTi膜厚0nmおよび6nmの磁気記録媒体のX線回折グラフの一例を示す。これら媒体の飽和磁化は500emu/cm3であった。さらに図7にTi膜厚に対する磁性膜のCo(002)ピークで測定したロッキングカーブの反値幅Δθ50(度)を示す。図6のX線回折グラフによると、hcp構造のc軸が膜面垂直方向を向いていることを示すCo(002)ピークが膜厚6nmのTi下地層によって著しく増加していることがわかる。これはTi下地層によって、Ru中間層、および酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜の結晶性が向上したことを示す。図7に、Ti下地膜厚と結晶配向性を表すΔθ50の値との関係を示す。Δθ50というのは膜の結晶配向性を表しており、値が小さいほど結晶配向性が高いことを示す。結晶配向性が高いと磁気記録媒体の保磁力が高められ、高記録密度に適する媒体が得られる。図7から、Ti下地膜を設けることによりΔθ50の値が急激に減少すること、すなわち、膜の結晶配向性が向上することがわかる。十分な結晶配向性を得るためには、Ti下地膜厚は2nm以上設けることが望ましい。以上のことから、Ti下地層、Ru中間層、酸素を含有する合金磁性膜を備えた磁気記録媒体において、その保磁力は大幅に上昇したものと考えられる。さらにTi下地層の膜厚が30nm以上だとTEM観察の結果、磁性膜の平均結晶粒が増大することがわかっている。結晶粒径が大きくなると媒体ノイズが増大することを考えると、Ti層の膜厚としては2〜30nmの範囲であることが望ましい。
【0028】
実施例2においては、垂直磁気記録用媒体として、膜厚200nmの軟磁性層をTi層の基板側に設けた。今回は軟磁性層としてCoTaZr膜を用いた。しかし、垂直磁気記録用として一般的に知られているほかの軟磁性膜、例えば、FeTaC、FeAlSi、FeC、CoTaNb、NiFeや、またそれらとC膜の積層膜であってもよい。さらに軟磁性膜としての効果を示すためには軟磁性膜の膜厚は50〜500nmの範囲であることが望ましい。実施例2における磁気記録媒体の磁気特性をKerr効果測定装置により評価したところ、保磁力は5.1kOeと高保磁力であった。またX線回折測定から得られるΔθ50は5.0度であり、高い結晶配向性が得られた。
【0029】
実施例3、実施例4の磁気記録媒体の磁気特性を評価したところ、保磁力はそれぞれ、4.0kOe、4.5kOeと高保磁力であった。またX線回折測定から得られるΔθ50はそれぞれ5.0度、5.1度であり、高い結晶配向性が得られた。
【0030】
(実施例5:記録再生特性の評価)
実施例1から実施例4までそれぞれ複数枚の磁気ディスクを作製し、各ディスクの保護層上に潤滑材を塗布したあと、それらを磁気記録装置のスピンドルの同軸上に取り付けた。磁気記録装置の概略構成を図8および図9に示す。図8は磁気記録装置の上面の図であり、図9は図8の破線A−A’における磁気記録装置60の断面図である。記録用ヘッドとして2.1Tの高飽和磁束密度を有する軟磁性膜を用いた薄膜磁気ヘッドを用い、再生のための巨大磁気抵抗効果を有するスピンバルブ型磁気ヘッドを用いた。記録用磁気ヘッド、再生用磁気ヘッドは一体化されており、図8および図9では磁気ヘッド53として示した。この一体型磁気ヘッド53は磁気ヘッド用駆動系54により制御される。磁気ディスク10は回転駆動系51のスピンドル52により回転される。磁気ディスク装置の磁気ヘッド面と磁気ディスク面との距離は10nmに保った。この磁気ディスクに記録密度700kfciに相当する信号を記録して磁気ディスクの記録再生特性(S/N比)を評価した。
【0031】
評価した結果を下表にまとめる。また比較例として、記録層にCoCrPtTa膜を用いた磁気記録媒体を作製し、同様に評価を行った。試料の作製手順は記録層以外は実施例2と同様である。実施例1については、Ti下地層の膜厚に対し、S/N比の変化を図10に示した。Ti下地層が2nm以上の膜厚の場合、S/Nが向上することがわかった。また実施例2〜4の磁気記録媒体についても同様に比較例と比較して、S/N比が大幅に向上した。
【0032】
【表4】
【0033】
【発明の効果】
本発明の磁気記録媒体はTiからなる下地層、Ruを主成分とする中間層、酸素を含有するCoPtCr記録層を備える。酸素を含有させたCoPtCr記録層を用いかつ、Tiからなる下地層、Ruを主成分とする中間層をもちいることにより、媒体ノイズが低減でき、さらに記録層の結晶性が向上し、保磁力が高められる。結果として、低ノイズで高記録密度の磁気記録媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の磁気記録媒体の断面構造を示す図である。
【図2】実施例2の磁気記録媒体の断面構造を示す図である。
【図3】実施例3の磁気記録媒体の断面構造を示す図である。
【図4】実施例4の磁気記録媒体の断面構造を示す図である。
【図5】実施例1においてTi膜厚に対する磁気記録媒体の保磁力および面内保磁力Hc//と垂直保磁力Hc⊥の比(Hc///Hc⊥)の変化を表す。
【図6】実施例1におけるTi膜厚0nmおよび6nmの磁気記録媒体についてX線回折グラフの一例を示す。
【図7】実施例1の磁気記録媒体についてTi膜厚に対する磁性膜のCo(002)ピークにおけるロッキングカーブの反値幅Δθ50の変化を表す。
【図8】本発明の実施例5に従う磁気記録装置の一例を上方から見た概略構成図である。
【図9】図8に示す磁気記録装置のA−A’方向の断面図である。
【図10】実施例6において、実施例1の磁気記録媒体の記録再生時におけるS/N特性を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 Ti下地層
3 Ru中間層
4 酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜
5 軟磁性層
6 RuCr合金中間層
7 Siおよび酸素を含有したCoPtCr合金磁性膜
10 磁気記録媒体
11 接着層
18 保護層
52 スピンドル
53 磁気ヘッド
54 磁気ヘッド用駆動系
60 磁気記録装置
Claims (9)
- 非磁性基板上に、Tiからなる下地層があり、前記Tiからなる下地層の直上にRuあるいは、Ruを主成分とする合金からなる中間層を形成し、さらにその上に、酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜を形成したことを特徴とする磁気記録媒体。
- 上記Tiからなる下地層の膜厚が2〜30nmであることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
- 上記Ruあるいは,Ruを主成分とする合金からなる中間層の膜厚が3及至150nmであることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
- 上記Ruを主成分とする合金からなる中間層がRuX (XはRh、Ir、Hf、Cu、Cr、Ag、Au、Re、Mo、Nb、W、Ta、Ti、V、Zr、Pt、Pd、B、Cの群から少なくとも1種あるいは,2種以上の元素から選ばれる)であらわされることを特徴とする請求項1から3記載のいずれかの磁気記録媒体。
- 上記酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜中の酸素含有率が5原子%〜20原子%であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
- 上記酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜に3原子%〜15原子%のSiまたはMgを含有することを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の磁気記録媒体。
- 上記非磁性基板とTiからなる下地層の間に、軟磁性膜を形成したことを特徴とする請求項1から6のいずれか記載の磁気記録媒体。
- 上記軟磁性膜の膜厚が50nm〜500nmであることを特徴とする請求項7記載の磁気記録媒体。
- 非磁性基板上に、少なくともTiからなる下地層、RuあるいはRuを主成分とする合金中間層、酸素を含有するCoPtCr合金磁性膜、保護膜、潤滑膜を順に積層してなる磁気記録媒体と、これを膜面方向に駆動する駆動部と、記録部と再生部からなる磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドを前記磁気記録媒体に対して相対運動させる手段と、前記磁気ヘッドの信号入力と該磁気ヘッドからの出力信号再生を行うための記録再生信号処理手段を有する磁気記録装置において、前記磁気記録媒体が請求項1から8のいずれかに記載の磁気記録媒体で構成されることを特徴とする磁気記録装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002224023A JP2004063054A (ja) | 2002-07-31 | 2002-07-31 | 磁気記録媒体および磁気記録装置 |
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JP2006147130A (ja) * | 2004-10-21 | 2006-06-08 | Showa Denko Kk | 垂直磁気記録媒体の製造方法及び垂直磁気記録媒体 |
US7799447B2 (en) | 2004-10-27 | 2010-09-21 | Hitachi Global Storage Technologies Netherlands B.V. | Perpendicular magnetic recording medium having grain boundary layer containing ferromagnetic element |
-
2002
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