JP2004061472A - コア採取方法、コアバーレル及びコアビット - Google Patents

コア採取方法、コアバーレル及びコアビット Download PDF

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Abstract

【課題】コアが掘削水によりスライムとともに洗い流されることを防止することにより、砂礫地盤や粘土地盤のような細粒地盤又は軟質地盤の地質試料を、自然状態のままのきれいな形で採取することが可能なコア採取技術を提供する。
【解決手段】筒状のコアビット4と、先端にコアビット4が固定され、かつ、コアビット4の筒内に連通しているコア収容部を内部に有する筒状のアウターチューブ2とを備えたコアバーレル1により、地盤内部から地質試料であるコアを採取するにあたり、コア収容部とは隔離して設けられた掘削水供給路2aを通して、コアビット4の筒外側に掘削水を供給するとともに、掘削水供給路2aの下流側端部から、コアビット4の先端方向に向けて掘削水を噴射させつつ、コアバーレル1を回転させることにより地盤を掘進しながらコア収容部の内部にコアを採取する。
【選択図】   図6

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地盤内部から地質標本であるコアを採取するためのコア採取方法及びその方法において使用するコアバーレル並びにコアビットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の地盤中から土質試料であるコアを採取するコアバーレルとして、軟質地盤に使用するコアバーレルは、特開昭54−5802号公報に記載のものが知られている。また、硬質地盤に使用するコアバーレルは特開平4−55589号公報、登録実用新案第3023321号公報に記載のものが知られている。以下、これらの公報に記載されたコアバーレルについて説明する。
【0003】
図29は従来の軟質地盤に使用されるコアバーレルの先端部分を表す断面図である。なお、図29はダブルチューブコアバーレルを表している。
【0004】
図29において、軟岩用のコアバーレル100は、円筒形のアウターチューブ101の内部に、円筒形のインナーチューブ102が回転自在に配設された構造を有しており、アウターチューブ101とインナーチューブ102とは同軸に配置されている。アウターチューブ101の先端には円筒形のコアビット103が接続されており、コアビット103の先端には、地盤を切削するための超硬チップからなる切刃103aが植設されている。一方、インナーチューブ102の先端には、円筒形のシュー104が接続されており、シュー104の先端部は、コアビット103の先端よりも突出するように構成されている。また、シュー104の外側面は先端に向かって縮径するテーパー状に形成されており、シュー104の筒内の直径は一定に形成されている。
【0005】
以上のような構成の軟岩用のコアバーレル100によって軟質地盤105を掘削する場合、コアバーレル100のアウターチューブ101を回転させると、それとともにコアビット103が回転し、切刃103aにより軟質地盤105が掘削される。この際、掘削によりスライムが生じるが、アウターチューブ101とインナーチューブ102との間の間隙106を通してコアビット103の先端に供給される掘削水により、スライムはアウターチューブ101の外壁と掘削孔の外壁105aとの間隙を通って上方へ排出される。また、コアビット103が軟質地盤105を掘削するのに伴い、コアビット103の先端部で摩擦熱が発生するが、コアビット103の先端部には常に掘削水が供給されているため、冷却され、切刃の焼き付きが防止される。
【0006】
一方、インナーチューブ102は、アウターチューブ101に回転自在に接続されているため、インナーチューブ102は回転しない。また、アウターチューブ101の掘進に伴って、シュー104の先端部は軟質地盤105に食い込み、シュー104の内部に地盤から切り出されたコアがインナーチューブ102の内部に収容される。こうして、インナーチューブ102の内部にコアが採取される。
【0007】
図30は従来の硬質地盤に使用するコアバーレルの先端部分を表す図である。なお、図30もダブルチューブコアバーレルを表している。
【0008】
図30において、硬岩用のコアバーレル110は、円筒形のアウターチューブ111の内部に、円筒形のインナーチューブ112が回転自在に配設された構造を有しており、アウターチューブ111とインナーチューブ112とは同軸に配置されている。アウターチューブ111の先端には円筒形のコアビット113が接続されており、コアビット113の先端には、地盤を切削するための超硬チップからなる切刃113aが植設されている。一方、インナーチューブ112の先端には、円筒形のシュー114が接続されており、コアビット113の先端部は、シュー114の先端部よりも突出するように構成されている。また、シュー114の先端部には超硬チップからなる切刃104aが植設されており、シュー104の筒内の直径はコアビット113の筒内直径よりも小さいか若しくは等しく形成されている。
【0009】
以上のような構成の硬岩用のコアバーレル110によって硬質地盤115を掘削する場合、コアバーレル110のアウターチューブ111を回転させると、それとともにコアビット113が回転し、切刃113aにより硬質地盤115が掘削される。この際、掘削によりスライムが生じるが、アウターチューブ111とインナーチューブ112との間の間隙116を通してコアビット113の先端に供給される掘削水により、スライムはアウターチューブ111の外壁と掘削孔の外壁115aとの間隙を通って上方へ排出される。また、コアビット113が硬質地盤115を掘削するのに伴い、コアビット113の先端部で摩擦熱が発生するが、コアビット113の先端部には常に掘削水が供給されているため、冷却され、切刃の焼き付きが防止される。
【0010】
一方、インナーチューブ112は、アウターチューブ111に回転自在に接続されているため、インナーチューブ112は回転しない。また、アウターチューブ111の掘進に伴って、地盤内部からコア115bが切り出され、シュー114を通ってインナーチューブ112の内部に収容される。こうして、インナーチューブ112の内部にコアが採取される。なお、この際、コア115bは、シュー114の先端に設けられた切刃114aによって、インナーチューブ112の筒内に収まる径に切削される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の軟岩用のコアバーレル100においては、シュー104の先端には切刃が設けられていないため、シュー104の先端が硬質地盤や礫地盤に突き当たった場合、掘進することができなくなる。この場合、無理に掘進しようとすると、掘削水がシュー104の先端部の砂又は泥土までをも洗い流し、延いてはシュー104の内部に採取したコアまでもを洗い流してしまう。このため、軟質地盤と硬質地盤とが交互に重なった地盤や、砂礫の多い地盤においては、自然状態に近い良好な状態でのコアの採取が困難である。
【0012】
一方、硬岩用のコアバーレル110は、コアビット113の先端がシュー114の先端よりも突出しているため、硬岩や砂礫地盤のような硬質地盤であっても掘削が可能である。また、軟質地盤でも掘削することは可能である。しかしながら、硬岩用のコアバーレル110は、コアビット113の内側のコアビット内壁とシュー114の先端の切刃114aの間隙から掘削水が供給される構造となっているため、コアビット113によって切り取られたコア115bは、コアビットの筒内で掘削水に洗われることとなる。従って、軟質地盤や砂礫地盤を掘削する場合、掘削水により採取されたコアが流亡し、自然状態に近い良好な状態でのコアの採取が困難である。
【0013】
このように、従来のコアバーレルにおいては、軟岩用、硬岩用ともに、上記のような欠点を有していたため、軟質地盤、硬質地盤、砂礫地盤などが交互に重なった地盤を掘削する場合には、掘削している地盤の性状が変化するたびに、コアバーレル又はコアビットを交換して掘削する必要があり、掘削作業の作業能率が低い。
【0014】
また、掘削において、コアビットが地盤を切削するのに伴って、コアバーレルに振動が発生する。この振動は、コアバーレルの上部に接続されるボーリングロッドや、ボーリングロッドを回転駆動するボーリング機器に伝わり、ボーリングロッドやボーリング機器の故障や破壊の原因となる。また、掘削時の騒音も大きくなる。従って、このような掘削時の振動を小さくする対策も求められていた。
【0015】
そこで、本発明の目的は、コアが掘削水によりスライムとともに洗い流されるのを防止することにより、砂礫地盤や粘土地盤のような細粒地盤又は軟質地盤の地質試料を、自然状態のままのきれいな形で採取することが可能なコア採取技術を提供することにある。
【0016】
また、他の目的は、硬岩・軟岩を問わず、地盤を掘削してコアを採取することができるコアバーレル及びコアビットを提供することにある。
【0017】
更に、他の目的は、地盤を掘削中に掘削により生じる振動の小さいコアバーレル及びコアビットを提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明のコア採取方法の構成は、筒状のコアビットと、先端に前記コアビットが固定され、かつ、前記コアビットの筒内に連通しているコア収容部を内部に有する筒状のチューブとを備えたコアバーレルにより、地盤内部から地質試料であるコアを採取するためのコア採取方法であって、前記コア収容部とは隔離して設けられた掘削水供給路を通して、前記コアビットの筒外側に掘削水を供給するとともに、前記掘削水供給路の下流側端部から、前記コアビットの先端方向に向けて掘削水を噴射させつつ、前記コアバーレルを回転させることにより地盤を掘進しながら前記コア収容部の内部にコアを採取することを特徴とする。
【0019】
まず、コアバーレルを回転させることによって、アウターチューブの先端のコアビットが、その下部にある地盤を掘削しながら掘進する。これに伴い、地質試料がアウターチューブの内部のコア収容部に取り込まれる。このとき、コアビットによって地盤が削られることにより、スライムが発生すると同時に摩擦によりコアビットの先端が加熱される。
一方、掘削水供給路を通してコアビットの筒外側からコアビットの先端方向に向けて掘削水が噴射される。この掘削水が、コアビットを冷却するとともに、スライムを外側壁に沿って掘削孔の外に向かう方向におし流す。このとき、掘削水は、コアビットの先端方向に向けて噴射されるため、掘削水はコアビットの先端に効率よく供給され、コアビットの先端が冷却される。
一方、掘進時において、コアビットの先端からコアビットの筒内に押し込まれるコアは、コアビットの筒の孔径とほぼ同一の径であるため、コアビットの筒内に水が流れ込みにくい。従って、コアビットの筒外側からコアビットの先端部へ掘削水を供給することで、掘削水がコアとともにコアビットの筒内に流れ込むことを極力防ぐことができる。これにより、コアが掘削水によりスライムとともに洗い流されることが防止される。
また、掘削水供給路はコア収容部とは隔離して設けられているため、コア収容部に収容されたコアが掘削水により洗い流されることもない。
従って、自然状態に近いコアを採取することが可能となる。
【0020】
ここで、「コアビット」とは、掘削器具の最先端部分に取り付けて使用され、先端やその周囲に超硬チップやダイヤモンドチップなどのビット切刃が設けられてた、直接地盤を掘削するのに用いられる器具をいう。「コアビット」の種類については特に限定するものではなく、例えば、メタルクラウン、ウィングクラウン、カッタクラウン、ダイヤモンドコアビット、インプリグネーティッドビットなどの各種コアビットが使用される。「コアバーレル」とは、コアビットで切り取ったコアを採取するパイプ状の器具をいう。「コアバーレル」の種類については特に限定するものではなく、例えば、シングルチューブコアバーレル、ダブルチューブコアバーレル、トリプルチューブコアバーレル、破砕帯用ダブルチューブコアバーレル、ワイヤラインコアバーレルなどを使用することができる。「アウターチューブ」とは、コアバーレルの外殻を構成する管状体をいう。アウターチューブの材質については特に特定するものではなく、鉄の他、軽量化のため、強化塩化ビニル、強化ポリエチレン等を使用することもできる。「コア収容部」とは、地殻からコアビットにより切り出して採取したコアを収容する部分をいう。例えば、シングルチューブコアバーレルの場合には、アウターチューブの管内空間そのものがコア収容部に該当し、ダブルチューブコアバーレルの場合には、アウターチューブの内部に設けられるインナーチューブの管内空間がコア収容部に該当する。「掘削水供給路」とは、コアビットが地盤を掘削する際にコアビットを冷却するとともに掘削により生じるスライムを地上に排出するための掘削水を供給する水路をいい、水路の形状は特に限定するものではない。
【0021】
本発明のコアバーレルの第1の構成は、筒状のコアビットと、先端に前記コアビットが固定され、かつ、前記コアビットの筒内に連通するコア収容部を内部に有する筒状のチューブと、を備えたコアバーレルにおいて、前記コア収容部とは隔離して設けられ、掘削水を通水する掘削水供給路を具備し、前記掘削水供給路は、下流側端部が前記コアビットの筒外側に開口し、かつ、前記下流側端部から噴射される掘削水の噴流軸線が、前記コアビットの先端方向に向くように形成されていることを特徴とする。
【0022】
まず、アウターチューブとそれに固定されたコアビットが回転することにより、コアビットが、地盤内を掘進する。このコアビットの掘進に伴い、地質試料がコアビットの筒内を通してアウターチューブの内部のコア収容部に取り込まれる。このとき、コアビットによって地盤が掘削されることにより、スライムが発生すると同時に掘削時の摩擦によりコアビットが加熱される。そこで、掘削水供給路を通してコアビットの筒外側からコアビットの先端部に向けて掘削水を供給し、コアビットを冷却するとともに、この掘削水により、スライムをコアバーレルの外側壁に沿って掘削孔の外に向かう方向に押し流す。掘削水供給路は、その下流側端部から噴射される掘削水の噴流軸線が、コアビットの先端方向に向くように形成されているから、掘削水供給路の下流側端部からは、掘削水がコアビットの先端部に向けて噴射される。従って、掘削水はコアビットの先端に効率よく供給され、コアビットの先端が冷却される。
一方、掘進時において、コアビットの先端からコアビットの筒内に押し込まれるコアは、コアビットの筒の孔径とほぼ同一の径であるため、掘削水はコアビットの筒内には流入しにくい。従って、コアビットの筒外側からコアビットの先端部へ掘削水を供給することで、掘削水がコアとともにコアビットの筒内に流れ込むことを極力防止することができる。これにより、コアが掘削水によりスライムとともに洗い流されることが防止される。また、掘削水供給路はコア収容部とは隔離して設けられているため、コア収容部に収容されたコアが掘削水により洗い流されることもない。従って、自然状態に近いコアを採取することが可能となる。
【0023】
ここで、「アウターチューブ」とは、コアバーレルの最外殻を構成する管状体をいう。「コアビット」の種類については特に限定するものではなく、例えば、メタルクラウン、ウィングクラウン、カッタクラウン、ダイヤモンドコアビット、インプリグネーティッドビットなどの各種コアビットが使用される。「掘削水供給路」の形状は、特に限定するものではなく、例えば、アウターチューブの管内に管を設けて構成したり、アウターチューブの管壁に通水穴を設けることによって構成される。
【0024】
本発明のコアバーレルの第2の構成は、前記第1の構成において、前記掘削水供給路は、前記アウターチューブの管壁内部を貫いて形成された一又は二以上の通水穴であることを特徴とする。
【0025】
この構成により、アウターチューブの管壁内部を貫いて形成された一又は二以上の通水穴を通してアウターチューブの先端(コアビットが接続された側)に掘削水が供給される。そのため、アウターチューブ先端部の管内を通すことなく、掘削水をコアビットの外壁から供給することが可能となり、コア収容部と掘削水供給路とが隔離された状態となる。また、アウターチューブの内部に掘削水を供給するための配管を設ける必要がないため、コアバーレルの内部構造を簡単にすることができる。
【0026】
ここで、「通水穴」の数は特に限定するものではないが、スライムの排出の効率をよくするという点及びコアビットの充分な冷却を行うという点から、アウターチューブの中心線に対して対称に4以上の通水穴を形成することが好ましい。掘削水供給路の流軸線の線路形状は、特に限定するものではなく、直線状に形成されたものであっても、アウターチューブの中心軸を取り巻く螺旋状に形成されたものであっても、また、管壁内部に沿ってジグザグ状に形成されたものであってもよい。また、掘削水供給路の断面形状も、特に限定するものではなく、円形、四角形、部分円環形等、いずれの形状であってもよい。
【0027】
本発明のコアバーレルの第3の構成は、前記第1の構成において、前記アウターチューブは、外管と、前記外管の内部に密接して挿入された内管とを具備する二重円筒壁構造を有し、前記掘削水供給路は、前記内管の外壁に形成された一又は二以上の通水溝と外管の内壁とで囲まれた空間として形成されていることを特徴とする。
【0028】
この構成により、アウターチューブの外管内壁と内管に形成された通水溝とにより形成された一又は二以上の掘削水供給路を通してアウターチューブの先端(コアビットが接続された側)に掘削水が供給されるため、アウターチューブ先端部の管内には掘削水を通すことなくコアビットの外壁から掘削水を供給することが可能となる。また、アウターチューブの内管に通水溝を形成する加工は容易であるため、アウターチューブの製造が容易となる。
【0029】
本発明のコアバーレルの第4の構成は、前記第1の構成において、前記アウターチューブの先端面又は前記アウターチューブの先端面と接触する前記コアビットの基端側の面に形成された環状の水溝を具備していることを特徴とする。
【0030】
この構成により、アウターチューブの先端面の水溝に供給された水は、水溝を通ってアウターチューブの先端面全体に廻ることができる。つまり、例えば、コアビットに通水路を設け、この通水路を通して掘削水をコアビットの先端に噴射させる構成とした場合において、コアビットはアウターチューブ先端に螺着することにより固定する構成とすると、ネジを切る際の公差や多数回の使用によるネジの摩耗によって、コアビットの通水路の位置とアウターチューブの掘削水供給の路下流側端部の開口の位置とがぴったり一致しない場合がある。しかし、かかる場合でも、掘削水は、アウターチューブの先端面又はアウターチューブの先端面と接触するコアビットの基端側の面の水溝を廻ってコアビットの通水路に流れ込む。そのため、上述のような掘削水供給の路下流側端部の開口とコアビットの通水路との位置ずれが生じても、掘削水をコアビットの先端に噴射させることができる。
【0031】
ここで、環状の水溝の深さは、3乃至8mm、より好ましくは、4乃至6mmとすることができる。かかる深さとすることにより、水溝を通る水の水量を適度な量とすることができ、かつ、水溝内の水の流速が遅いことにより泥が水溝に侵入して水溝が閉塞する事態を避けることができるからである。
【0032】
本発明のコアバーレルの第5の構成は、前記第1の構成において、前記コアビットは、中心部に貫通孔が設けられ、外周径が基端側から先端側へ向かうに従って段階的に縮径する複数の円筒部からなる多段円筒形状に形成されたコアビット本体と、前記コアビット本体の先端面に設けられた先行ビット切刃と、前記コアビット本体の外側壁の各段の段差面のそれぞれに設けられた削孔ビット切刃と、を備えていることを特徴とする。
【0033】
コアビットが回転して地盤を掘削する際に、多段円筒形状に形成されたコアビット本体の先端に設けられた先行ビット切刃がコアを切り出しながら掘進する。更に、コアビット本体の外側壁の各段の段差面のそれぞれに設けられた削孔ビット切刃が、先行ビット切刃が掘削した掘削孔の側面を掘削し、掘削孔の径を拡張する。この際、掘削水は、コアビットの筒外側から供給されるため、上部の削孔ビット切刃には多量の掘削水が供給され、コアビットの先端に向かうにつれて供給される掘削水の量は減少し、コアビットの最先端の先行ビット切刃には少量の掘削水が供給されることとなる。先行ビット切刃が地盤を掘削することによって生じるスライムは、その上方に配置された削孔ビット切刃によって排除され、掘削水によってアウターチューブと掘削孔壁の間を通って上方に排出される。従って、先行ビット切刃に対しては、スライム排出のための多量の掘削水は必要なく、先行ビット切刃の冷却のための掘削水が少量供給されるだけで充分である。すなわち、先行ビット切刃に少量の掘削水しか供給されなくても、コアビットの掘進に支障が生じることはない。また、コアビットの先端には、最小限の量の掘削水のみが供給されることとなるため、掘削する地盤が細粒地盤又は軟質地盤であっても、先行ビット切刃が切り出したコアが掘削水により洗い流されることが防止される。それに加えて、コアビットの掘進時において、先行ビット切刃が切り出すコアの径は、筒の孔径とほぼ同一の径であるため、コアビットの筒外側からコアビットの先端部へ掘削水を供給することで、掘削水がコアとともにコアビットの筒内に流入することが極力防止される。また、コアビットが地盤内部を掘進する際には、コアビットは、コアビット本体の先端面と、コアビット本体の外側壁の各段の段差面、及びそれらの間のコアビット本体側壁において、地盤により振動が制限された状態となる。そのため、掘削時におけるコアビットの振動が極めて小さくなる。また、採取されるコアが掘削水により流亡しないため、軟弱地盤、砂礫地盤、破砕地盤等における地質標本の採取にも使用でき、さらに、コアビット先端には先行ビット切刃が設けられているため、硬質地盤における地質標本の採取にも使用することができる。
【0034】
ここで、「貫通孔」の形状については、特に特定するものではなく、例えば、円柱形状やテーパー状に形成される。「多段円筒形状」とは、円筒の軸方向に対して円筒径がステップ状に変化するような、複数の径の異なる円筒が軸方向に結合したような形状をいう。コアビットの外側壁は、「多段円筒形状」であればよく、2段に限らず、3段以上であってもよい。「外周径が基端側から先端側へ向かうに従って段階的に縮径する」とは、基端側から先端側にいくほど円筒が段状に細くなっていることを意味する。「基端側」とは、アウターチューブに接続される側をいい、「先端側」とは、基端側と反対の側、すなわち、掘進面に接する側をいう。「コアビット本体の外側壁の各段の段差面」とは、段状に形成された2つの径の異なる円筒部間を結ぶ、コアビットの中心軸に垂直な又は傾斜して形成された面をいう。「ビット切刃」とは、地盤を掘削する切刃をいい、超硬ビット、ダイヤモンドビット、ダイヤモンド粉末を粉末金属に混合し焼結したマトリックス、硬質合金製の切刃などが使用される。「ビット切刃」の数は、特に限定するものではないが、コアビットの外周全体に渡って均一に掘削が行われるようにするため、コアビットの外側壁の各段の段差面の全周に渡って、コアビットの中心軸に対して回転対称となるようにビット切刃を配置することが好ましい。
【0035】
本発明のコアバーレルの第6の構成は、前記第1の構成において、前記コアビットは、中心部に貫通孔が設けられ、基端側の大径円筒部と前記大径円筒部の外周径よりも小さい外周径を有する先端側の小径円筒部との2つの円筒部からなる2段円筒形状に形成されたコアビット本体と、前記コアビット本体の先端面に設けられた先行ビット切刃と、前記大径円筒部と前記小径円筒部との段差面に設けられた削孔ビット切刃と、前記コアビット本体の大径円筒部の外側壁に溝状又は管状に形成されており、前記掘削水供給路の下流側端部と連通する一又は二以上の通水路と、を具備していることを特徴とする。
【0036】
コアビットが回転して地盤を掘削する際に、2段円筒形状に形成されたコアビット本体の先端に設けられた先行ビット切刃がコアを切り出しながら掘進する。更に、コアビット本体の大径円筒部と前記小径円筒部との段差面に設けられた削孔ビット切刃が、先行ビット切刃が掘削した掘削孔の側面を掘削し、掘削孔の径を拡張する。この際、掘削水は、コアビットの筒外側から供給されるため、上部の削孔ビット切刃には多量の掘削水が供給されるが、コアビットの先端の先行ビット切刃には少量の掘削水が供給されることとなる。すなわち、大径円筒部には通水路が設けられており、掘削水供給路の下流側端部は大径円筒部の通水路と連通しているため、掘削水供給路から供給される掘削水は、通水路を通って容易に削孔ビット切刃に達する。その一方、小径円筒部には通水路は設けられていないため、掘削水は先行ビット切刃までは達しにくく、先行ビット切刃には少量の掘削水のみが供給されることとなる。先行ビット切刃が地盤を掘削することによって生じるスライムは、その上方に配置された削孔ビット切刃によって排除され、掘削水により、アウターチューブと掘削孔壁の間を通って上方に排出される。従って、先行ビット切刃に対しては、スライム排出のための多量の掘削水は必要なく、先行ビット切刃の冷却のための掘削水が少量供給されるだけで充分である。すなわち、先行ビット切刃に少量の掘削水しか供給されなくても、コアビットの掘進に支障が生じることはない。
また、コアビット本体の大径円筒部の外側壁には1又は2以上の通水路が形成され、掘削水供給路の下流側端部は、通水路に連通しているため、掘削水供給路から供給される掘削水は、この通水路を通って削孔ビット切刃に効率的に供給される。従って、先行ビット切刃の地盤掘削により生じ掘進に伴って削孔ビット切刃に運ばれたスライム及び削孔ビット切刃の孔壁掘削により生じたスライムは、掘削水により効率的に上方へ排出される。これにより、掘進時のコアチューブの回転抵抗が小さくなる。
また、コアビットの小径円筒部には通水路は設けられていないため、コアビットの先端には、最小限の量の掘削水のみが供給されることとなる。そのため、掘削する地盤が細粒地盤又は軟質地盤であっても、先行ビット切刃が切り出したコアが掘削水により洗い流されることが防止される。それに加えて、コアビットの掘進時において、先行ビット切刃が切り出すコアの径は、筒の孔径とほぼ同一の径であるため、掘削水はコアとコアビットの筒内壁との間を通り難い。そのため、コアビットの筒外側からコアビットの先端部へ掘削水を供給することで、掘削水がコアとともにコアビットの筒内に流入することを極力防止することができ、掘削水により採取されるコアが流亡することが防止される。また、採取されるコアが掘削水により流亡しないことから、本発明のコアバーレルは、軟弱地盤、砂礫地盤、破砕地盤等における地質標本の採取にも使用することができ、さらに、コアビット先端には先行ビット切刃が設けられているため、硬質地盤における地質標本の採取にも使用することができる。
【0037】
ここで、「2段円筒形状」とは、円筒の軸方向に対して円筒径がステップ状に変化するような、2つの径の異なる円筒が軸方向に結合したような形状をいう。「大径円筒部と前記小径円筒部との段差面」とは、段状に形成された2つの径の異なる大径円筒部と前記小径円筒部との間を結ぶ、コアビットの中心軸に垂直な又は傾斜して形成された面をいう。「溝状」とは、凹んだ溝のような形状をいう。「通水路」の数は、特に特定するものではないが、コアビットの回転抵抗を減少させるという点から、コアビットの中心線に対して回転対称となる位置に4本以上の通水路を設けることが好ましい。
また、通水路は、直線状のものに限られず、コアビットの軸を中心とする螺旋状に形成されたものであってもよい。また、通水路の断面形状は特に特定するものではない。例えば、通水路を溝状に形成する場合には、断面形状が円弧形の水溝とすることができる。このように形成することによって、掘削時に溝内に泥が溜まりにくくなる。
【0038】
本発明のコアバーレルの第7の構成は、前記第6の構成において、前記貫通孔は、前記コアビットの先端部分に、前記貫通孔全体の中で最も孔径が小さい最小孔径部分が形成されていることを特徴とする。
【0039】
コアビット先端の先行ビット切刃で切り出されたコアの直径は、コアビットの貫通孔の最小孔径部分の直径とほぼ同じとなる。従って、コアビットが掘進するのに伴って、コアビットの貫通孔の内部に押し込まれるコアは、貫通孔の最小孔径部分においては貫通孔の孔壁と擦れながら擦過するが、当該最小孔径部分の上方に達すると、コアビットの管壁と接触することはなくなるため、コアがコアビットからアウターチューブの内部にスムーズに取り込まれる。また、コアがコアビットと擦れるのは貫通孔の最小孔径部分に限られているため、コアとコアビットとの摩擦によって摩擦熱が発生することが最小限に抑えられる。そのため、冷却のための掘削水の量が少量でよいこととなる。また、コアとの摩擦によるコアビットの摩耗も最小限に抑えられる。また、採取されるコアの表面が摩擦熱によって変成することも最小限に抑えられる。
【0040】
本発明のコアバーレルの第8の構成は、前記第7の構成において、前記貫通孔の前記最小孔径部分の内壁に溝状に形成された一又は二以上の水溝を備えていることを特徴とする。
【0041】
この構成により、最小孔径部分においては、地盤中から切り出されたコアがコアビットの貫通孔の内壁と擦れるが、最小孔径部分の内壁に設けられた水溝(ウォーターウェイ)から少量の掘削水が流入するため、当該最小孔径部分におけるコアと貫通孔内壁との摩擦が減少する。これにより、コアがスムーズに回転することが可能となるとともに、コアビットの先端部における摩擦熱の発生も抑制される。また、最小孔径部分の内壁に設けられた水溝に流入する掘削水により、当該最小孔径部分の貫通孔内壁が冷却され、コアビットの耐久性が低下するのを防止することができる。
【0042】
本発明のコアバーレルの第9の構成は、前記第7又は8の構成において、前記アウターチューブの管内に、前記アウターチューブと同軸に配設された円管状のインナーチューブと、前記インナーチューブの基端部に接続され、前記インナーチューブを前記アウターチューブの内部に回転自在に接続するスイベルヘッドと、を備え、前記インナーチューブの先端側は前記コアビットと連通しており、前記インナーチューブの孔径は前記コアビットの前記最小孔径部分の孔径よりも大きい孔径に形成されていることを特徴とする。
【0043】
この構成により、コアビットにより地盤内部から切り出されたコアは、コアビットの掘進に伴い、アウターチューブ内部に配設されたインナーチューブの内部に取り込まれる。インナーチューブは、スイベルヘッドによりアウターチューブの内部に回転自在に接続されているため、アウターチューブが回転してもインナーチューブは回転せず、切り出されたコアはインナーチューブにより保護される。これにより、地殻内部から切り出したコアを型崩れさせずに自然状態のままのきれいな状態で採取することが容易となる。
なお、インナーチューブの材質については特に特定するものではなく、鉄の他、軽量化のため、強化塩化ビニル、強化ポリエチレン等を使用することもできる。
【0044】
本発明のコアビットの第1の構成は、中心部に貫通孔が設けられ、外周径が基端側から先端側へ向かうに従って段階的に縮径する複数の円筒部からなる多段円筒形状に形成されたコアビット本体と、前記コアビット本体の先端面に設けられた先行ビット切刃と、前記コアビット本体の外側壁の各段の段差面のそれぞれに設けられた削孔ビット切刃と、を備えていることを特徴とする。
【0045】
この構成により、コアビットが回転して地盤を掘削する際に、多段円筒形状に形成されたコアビット本体の先端に設けられた先行ビット切刃がコアを切り出しながら掘進する。更に、コアビット本体の外側壁の各段の段差面のそれぞれに設けられた削孔ビット切刃が、先行ビット切刃が掘削した掘削孔の側面を掘削し、掘削孔の径を拡張する。従って、コアビットが地盤内部を掘進する際には、コアビットは、コアビット本体の先端面と、コアビット本体の外側壁の各段の段差面、及びそれらの間のコアビット本体側壁において、地盤により振動が制限された状態となる。そのため、掘削時におけるコアビットの振動が極めて小さくなる。
【0046】
本発明のコアビットの第2の構成は、中心部に貫通孔が設けられ、基端側の大径円筒部と前記大径円筒部の外周径よりも小さい外周径を有する先端側の小径円筒部との2つの円筒部からなる2段円筒形状に形成されたコアビット本体と、前記コアビット本体の先端面に設けられた先行ビット切刃と、前記大径円筒部と前記小径円筒部との段差面に設けられたビット切刃と、前記コアビット本体の大径円筒部の外側壁に溝状又は管状に形成された一又は二以上の通水路と、を備えたことを特徴とする。この構成により、以下のような作用が得られる。
【0047】
まず、コアビットが回転して地盤を掘削する際に、2段円筒形状に形成されたコアビット本体の先端に設けられた先行ビット切刃がコアを切り出しながら掘進する。更に、コアビット本体の大径円筒部と前記小径円筒部との段差面に設けられた削孔ビット切刃が、先行ビット切刃が掘削した掘削孔の側面を掘削し、掘削孔の径を拡張する。このとき、コアビット本体の大径円筒部の外側壁には1又は2以上の通水路が形成されているため、掘削の際に循環して流される掘削水は、この通水路を通って削孔ビット切刃に効率的に供給される。従って、先行ビット切刃の地盤掘削により生じ掘進に伴って削孔ビット切刃に運ばれたスライム及び削孔ビット切刃の孔壁掘削により生じたスライムは、掘削水により効率的に上方へ排出される。これにより、掘進時のコアチューブの回転抵抗が小さくなる。また、コアビットの小径円筒部には通水路は設けられていないため、コアビットの先端には、最小限の量の掘削水のみが供給されることとなる。そのため、掘削する地盤が細粒地盤又は軟質地盤であっても、先行ビット切刃が切り出したコアが掘削水により洗い流されることが防止される。それに加えて、コアビットの掘進時において、先行ビット切刃が切り出すコアの径は、筒の孔径とほぼ同一の径であるため、掘削水はコアとコアビットとの間を通りにくい。従って、コアビットの筒外側からコアビットの先端部へ掘削水を供給することで、掘削水がコアとともにコアビットの筒内に流入することを極力防止することができる。
【0048】
本発明のコアビットの第3の構成は、前記第1又は2の構成において、前記貫通孔は、前記コアビットの先端部分に、前記貫通孔全体の中で最も孔径が小さい最小孔径部分が形成されていることを特徴とする。
【0049】
この構成により、コアビット先端の先行ビット切刃で切り出されたコアの直径は、コアビットの貫通孔の最小孔径部分の直径とほぼ同じとなる。従って、コアビットが掘進するのに伴って、コアビットの貫通孔の内部に押し込まれるコアは、貫通孔の最小孔径部分においては貫通孔の孔壁と擦れながら擦過するが、当該最小孔径部分の上方に達すると、コアビットの間壁と接触することがなくなるため、コアがコアビットからアウターチューブの内部にスムーズに取り込まれる。また、コアがコアビットと擦れるのは貫通孔の最小孔径部分に限られているため、コアとコアビットとの摩擦によって摩擦熱が発生することが最小限に抑えられる。そのため、冷却のための掘削水の量が少量でよいこととなる。また、コアとの摩擦によるコアビットの摩耗も最小限に抑えられる。また、採取されるコアの表面が摩擦熱によって変成することも最小限に抑えられる。さらに、地盤中から切り出したコアに加わるトルクが小さくなるため、コアがコアビットの回転に伴い捻り切られることが防止され、軟弱地盤や砂礫地盤、破砕地盤においても自然状態のままでのコアの採取が容易となる。
【0050】
本発明のコアバーレルの第4の構成は、前記第3の構成において、前記貫通孔の前記最小孔径部分の内壁に溝状に形成された一又は二以上の水溝を備えていることを特徴とする。
【0051】
この構成により、最小孔径部分においては、地盤中から切り出されたコアがコアビットの貫通孔の内壁と擦れるが、最小孔径部分の内壁に設けられた水溝(ウォーターウェイ)から少量の掘削水が流入するため、当該最小孔径部分におけるコアと貫通孔内壁との摩擦が減少する。これにより、コアがスムーズに回転することが可能となるとともに、コアビットの先端部における摩擦熱の発生も抑制される。また、最小孔径部分の内壁に設けられた水溝に流入する掘削水により、当該最小孔径部分の貫通孔内壁が冷却され、コアビットの耐久性が低下するのを防止することができる。
【0052】
本発明のコアバーレルの第5の構成は、前記第2の構成において、前記小径円筒部は、前記大径円筒部に取り外し可能に螺着されていることを特徴とする。
【0053】
この構成により、先行ビット切刃が摩耗した場合、又は削孔ビット切刃が摩耗した場合、小径円筒部と大径円筒部とを分離して何れか一方を新品のものに交換することができる。また、掘削する地層の土質により、先行ビット切刃を最適なものに交換することができる。例えば、超硬岩層を掘削する場合には、先行ビット切刃をダイヤモンドビットに交換して掘削し、砂礫層を掘削する場合には、先行ビット切刃をメタルビットに交換するというように、簡単に交換が可能となる。
【0054】
本発明のコアビットの第6の構成は、前記第2の構成において、前記アウターチューブの先端面と接触する前記コアビットの基端側の面に形成された環状の水溝を具備していることを特徴とする。
【0055】
この構成により、アウターチューブの掘削水供給路から供給される掘削水を、環状の水溝を通してコアビットの周囲全体に廻すことができるため、各通水路から均等に掘削水を噴射することができる。また、アウターチューブの掘削水供給路の下流側端部の開口とコアビットの各通水路の位置がずれていても、環状の水溝を通してコアビットの各通水路に掘削水を供給できる。
【0056】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0057】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るコアバーレルの外観斜視図であり、図2は本発明の実施の形態1に係るコアバーレルの分解図であり、図3は図2のインナーチューブの分解斜視図であり、図4は図2のアウターチューブの先端部分の拡大図であり、図5は本発明の実施の形態1に係るコアバーレルの断面図である。
【0058】
図1乃至図5において、本発明の実施の形態1に係るコアバーレル1は、円管状のアウターチューブ2と、アウターチューブ2の管内に、アウターチューブ2と同軸に配設された円管状のインナーチューブ3とを備えた、ダブルチューブコアバーレルとして構成されている。本実施の形態では、インナーチューブ3の筒内がコア収容部となる。アウターチューブ2の管壁の内部を貫いて、当該アウターチューブ2の中心線に平行に4つの通水穴2aが形成されている。この通水穴2aの下流側端部2bは、アウターチューブ2の先端側の先端面2cに開口している。一方、通水穴2aの上流側端部2dは、アウターチューブ2の基端部付近の筒内に開口している。この通水穴2aが、掘削水を供給する掘削水供給路として機能する。
【0059】
アウターチューブ2の先端部には、アウターチューブ2と同軸にコアビット4が螺着されている。コアビット4の本体は、中心部に直円孔状の貫通孔4aが設けられており、基端側の大径円筒部4bと大径円筒部4bの外周径よりも小さい外周径を有する先端側の小径円筒部4cとの2つの円筒部からなる2段円筒形状に形成されている。コアビット4の本体の先端面4dには、先行ビット切刃5が複数個設けられている。また、大径円筒部4bと小径円筒部4cとの段差面4eには、削孔ビット切刃6が複数個設けられている。これらの先行ビット切刃5及び削孔ビット切刃6は、タングステンを主成分とする超硬チップが使用されている。コアビット4の基端部の外壁には、雄螺子4fが切られており、アウターチューブ2の先端部の筒内壁には雌螺子2eが切られている。この雄螺子4fを雌螺子2eに螺着することにより、コアビット4はアウターチューブ2の先端に固定して接続される。また、コアビット4の本体の大径円筒部4bの外側壁には、4つの溝状の水溝4gが形成されている。この水溝4gは、コアビット4の円筒中心線に平行な断面四角形の溝状に形成されている。コアビット4がアウターチューブ2の先端部に螺着された状態においては、各通水穴2aの下流側端部2bは、それぞれの水溝4gの溝内に向けて開口するように形成されている(図1参照)。更に、コアビット4の先端部分には、貫通孔4a全体の中で最も孔径が小さい最小孔径部分4hが形成されている。この最小孔径部分4hの長さは、2〜4cm程度の長さとされている。
【0060】
一方、アウターチューブ2の基端部には、厚肉円筒形状のヘッドカップリング9が螺着されている。このヘッドカップリング9の基端部の筒内には、雌螺子が切られており、この螺子によって、コアバーレル1がボーリングロッド(図示せず)に接続される。
【0061】
インナーチューブ3の先端側はコアビット4と連通しており、インナーチューブ3の筒内孔径は、コアビット4の最小孔径部分4hの孔径よりも大きい孔径に形成されている。また、インナーチューブ3の基端部には、スイベルヘッド7が螺着されており、インナーチューブ3の先端部には、円筒形状のスリーブチューブ8が嵌合されている。
【0062】
スイベルヘッド7は、先端側に蓋部7a、基端側に止水部7bを備えており、蓋部7aと止水部7bとは円柱状の緩衝軸7cにより接続されている。蓋部7aは、有底2段円筒状に形成されている。蓋部7aの底面側の端部7a’の外径は、インナーチューブ3の内径と同径に形成され、雄螺子が切られている。また、蓋部7aの筒開口端側にはフランジ7a”が形成されており、フランジ7a”の外径は、インナーチューブ3の外径と同径となるように形成されている。一方、インナーチューブ3の基端側の筒内壁には雌螺子が切られており、この蓋部7aの端部7a’に形成された雄螺子を雌螺子に螺着することにより、スイベルヘッド7はインナーチューブ3の基端に接続される。蓋部7aの筒の内径は、緩衝軸7cの外径とほぼ同径に形成されており、緩衝軸7cは蓋部7aの筒内に嵌合されている。また、緩衝軸7cは蓋部7aの筒内底面においてボルト7dにより固定されている。また、緩衝軸7cの中心線に沿って抜気孔7eが貫通して形成されており、同様に、ボルト7dも、中心線に沿って抜気孔7fが貫通して形成されている。また、蓋部7aとは反対側に位置する抜気孔7eの開口部には、蓋球10が載置されている。この蓋球10は、逆止弁の機能を果たすものであり、抜気孔7eに上方から掘削水が進入するのを防止すると同時に、抜気孔7e内から空気圧が加わると浮き上がり、抜気孔7eから空気を上方へ排気する。
【0063】
止水部7bは、アウターチューブ2の筒内径とほぼ同径の厚円板状の止水蓋7gと、止水蓋7gの一側面に突出形成された円筒状の整水筒7hとから構成されている。止水蓋7gの中央部には、緩衝軸7cとほぼ同径の貫通孔が形成されており、緩衝軸7cはこの貫通孔に摺動自在に挿入されている。これにより、スイベルヘッド7は、インナーチューブ3をアウターチューブ2に回転自在に接続している。緩衝軸7cの基端部には、フランジ部7iが形成されており(図5参照)、これにより、緩衝軸7cが止水蓋7gの貫通孔から抜脱することが防止されている。また、蓋部7aと止水部7bとの間の緩衝軸7cには、スプリング7jが装着されており、このスプリング7jは、止水部7bを蓋部7aから引き離す方向に付勢している。このスプリング7jにより、インナーチューブ3に無理な外力が加わらないように、緩衝されている。
【0064】
なお、ボルト7dを外して緩衝軸7cを蓋部7aから抜き取り、スプリング7jを交換することができる。従って、掘削する地層の硬さによって、スプリング7jを交換することができる。すなわち、軟質地盤の場合には、スプリング7jをバネ定数の小さいものを使用し、硬質地盤の場合には、スプリング7jをバネ定数の小さいものを使用するように交換することができる。
【0065】
止水蓋7gの外周には、Oリング7kが装着されており、アウターチューブ2の基端側から供給される掘削水が止水蓋7gよりも先端側に漏れ出すことを防止している。この止水蓋7gは、アウターチューブ2内に装着された状態においては、通水穴2aの上流側端部2dよりもアウターチューブ2の先端側に位置するように配置される。従って、アウターチューブ2の基端側から供給される掘削水は、止水蓋7gで阻まれて、通水穴2a内へ流れることとなる。緩衝軸7cが挿入された止水蓋7gの中央部の貫通孔に近接した位置に、止水蓋7gの板面を貫通して、2つの抜気孔7lが形成されている。これらの抜気孔7lの上部開口部にも、蓋球11が載置されている。また、整水筒7hの側面には、複数の通水穴7mが貫通形成されている。アウターチューブ2の基端側から供給された掘削水は、この整水筒7h内に流れ込むと、通水穴7mを通って整水筒7hの外側に流出し、通水穴2aへ流入する。
【0066】
インナーチューブ3の先端部に嵌合されたスリーブチューブ8は、円筒形状に形成されており、その側面中央部付近にフランジ8aが設けられている。スリーブチューブ8は、このフランジ8aよりも基端側の挿入部8bが、インナーチューブ3の先端部筒内に挿入されている。インナーチューブ3の先端部は、スリーブチューブ8の挿入部8bが挿入される嵌合部分3aにおいて、筒内径が僅かに拡径した形状に形成されており、スリーブチューブ8の挿入部8bの外径は、この嵌合部分3aの内径よりも僅かに小径の円筒形状に形成されている。挿入部8bには、採取したコアを包むためのビニール袋(図示せず)が折りたたんで装着される。また、スリーブチューブ8の先端部分8cには、脱着可能な円筒状の脱着部8dが取り付けられている。
【0067】
尚、本実施の形態においては、コアビット4の本体は2段円筒状に構成した例を示すが、本発明においては、この形状は2段円筒状に限るものではなく、外周径が基端側から先端側へ向かうに従って段階的に縮径する複数の円筒部からなる多段円筒形状に形成してもよい。この場合、コアビット4の本体の先端面に先行ビット切刃を複数個設けるとともに、コアビット4の本体の外側壁の各段の段差面のそれぞれに削孔ビット切刃を複数個設けてコアビット4が形成される。
また、インナーチューブやアウターチューブ、スリーブチューブの材質については、鉄の他、軽量化のため、強化塩化ビニル、強化ポリエチレン等を使用することもできる。
【0068】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係るコアバーレルについて、以下、それを使用したコア採取方法について説明する。
【0069】
図6は本発明の実施の形態1に係るコアバーレルの掘削時の状態を表す図である。
【0070】
図6において、アウターチューブ2、通水穴2a、下流側端部2b、インナーチューブ3、コアビット4、貫通孔4a、大径円筒部4b、小径円筒部4c、先端面4d、段差面4e、水溝4g、最小孔径部分4h、先行ビット切刃5、削孔ビット切刃6、及びスリーブチューブ8は、図1乃至図5と同様のものであるため、同一の符号を付して説明は省略する。
【0071】
掘削時において、コアバーレル1は、ボーリングロッド(図示せず)を介して、地上に設けられた掘削機(図示せず)により回転駆動される。ボーリングロッドの回転に伴い、コアバーレル1のアウターチューブ2が回転し、それに伴い、アウターチューブ2の先端に接続されたコアビット4が回転する。コアビット4の回転により、先行ビット切刃5は、その下部の地盤12を掘削しながら、コアバーレル1及びボーリングロッドの荷重により掘進する。また、コアビット4の回転により、削孔ビット切刃6は、先行ビット切刃5により掘削された掘削孔の孔壁12bを切削し、掘削孔の孔径を拡張する。
【0072】
一方、これと同時に、通水穴2aを通してコアビット4の外壁に設けられた水溝4gに掘削水が供給される。掘削水は、通水穴2aの下流側端部2bから流出した後、水溝4gを通って、削孔ビット切刃6に達する。そして、削孔ビット切刃6を冷却する。また、掘削水は、削孔ビット切刃6の掘削によって発生するスライムを、アウターチューブ2の外壁と掘削孔壁12cとの間の間隙14を通して、上方へ排出する。また、この際、少量の掘削水は、掘削孔の掘削孔壁12bとの間隙13を通って、その下方の先行ビット切刃5に達し、先行ビット切刃5を冷却する。また、先行ビット切刃5の掘削により生じるスライムは、コアビット4の掘進に伴い、コアビット4の小径円筒部4cの外壁と、掘削孔の掘削孔壁12bとの間隙13を通って上方に排出される。そして、削孔ビット切刃6により除去され、掘削水により上方へと排出される。
【0073】
コアビット4の掘進に伴い、コアビット4によって地盤12中から切り出されたコア12aは、コアビット4の筒内を経てインナーチューブ3の筒内へ収容される。このとき、スリーブチューブ8の挿入部8bの外周に折りたたんで収容されているビニール袋15がコア12aを包み込む。このコア12aの径は、コアビット4の先端の最小孔径部分4hの内径とほぼ同じとなる。
【0074】
ここで、掘削水はスライムを排出するために、高い水圧を加えて供給されるため、通水穴2aからは強い勢いで掘削水が噴出する。しかし、掘削水は、削孔ビット切刃6の先端付近の掘削孔壁にあたり、その勢いは弱められる。そして、先行ビット切刃5の付近には、先行ビット切刃5を冷却するのに充分なだけの少量の掘削水のみが供給される。従って、地盤12が軟質地盤や砂礫地盤であっても、先行ビット切刃5が切り出したコア12aが掘削水により洗い流されることはない。また、コアビット4の先端部で切り出されたコア12aの径は、最小孔径部分4hの内径とほぼ同じであるため、コアビット4の先端から貫通孔4aの内部へ掘削水が流入することも防止される。従って、自然状態のままのきれいな状態でコア12aを採取することが可能となる。
【0075】
また、地盤12が硬質地盤であっても、コアビット4の先端面4dには先行ビット切刃5が設けられているため、掘進することが可能であり、掘削する地盤の性質を問わず掘削することが可能である。従って、硬質地盤と軟質地盤又は砂礫地盤とが交互に重なった地盤のコアを採取する場合でも、いちいちコアビットを取り替える必要はないため、コアの採取作業の作業効率が向上する。
【0076】
また、コアビット4は、ます先行ビット切刃5が、小径円筒部4c程度の小径の掘削孔を掘削した後に、削孔ビット切刃6が、大径円筒部4b程度の大径の掘削孔に拡張しながら掘進する。そのため、コアビット4が地盤12の内部を掘進する際には、コアビット4は、コアビット4の本体の先端面4dと、コアビット4の本体の大径円筒部4bと小径円筒部4cとの段差面、及びそれらの間のコアビット4の本体側壁において、地盤12により振動が制限された状態となる。そのため、掘削時におけるコアビット4の振動が極めて小さくなる。これにより、コアチューブ(アウターチューブ2やインナーチューブ3等)やコアチューブに回転動力を伝えるボーリングロッド等のボーリング機械が振動により破損したり、ボルトやナットが緩んで事故の原因となったりすることが防止される。
【0077】
(実施の形態2)
図7は本発明の実施の形態2に係るコアビットの斜視図である。
図7において、貫通孔4a、大径円筒部4b、小径円筒部4c、先端面4d、段差面4e、雄螺子4f、水溝4g、最小孔径部分4h、先行ビット切刃5、及び削孔ビット切刃6は図1乃至5に示したコアビット4と同様であるため、同一の符号を付して説明は省略する。
【0078】
本実施の形態に係るコアビット4’は、貫通孔4aの最小孔径部分4hの内壁に溝状に形成された8つの水溝4iと、それに連なって先端面4dに溝状に形成された水溝4jを備えていることを特徴とする。
【0079】
このように、最小孔径部分4hに水溝4i,4jを形成したことにより、コアビット4の先端部分に少量だけ回り込んだ掘削水が、水溝4i,4jを通って、最小孔径部分4hの内部に僅かに回り込む。この回り込んだ掘削水が、潤滑剤・冷却材として機能し、コアビット4’が切り出したコアと最小孔径部分4hとの摩擦を減少させ、摩擦熱の発生を抑えるとともに、コアビット4’に余分なトルク負荷が加わるのを防止する。従って、コアビット4’の最小孔径部分4hの焼き付き、摩耗、及び切り出したコアの摩擦熱による変性を最小限に抑えることが可能となる。
【0080】
(実施の形態3)
本実施の形態のコアバーレルは、基本的には実施の形態1で説明したコアバーレルと同様であるが、アウターチューブの構成のみが異なる。
【0081】
図8は本発明の実施の形態3に係るコアバーレルのアウターチューブの分解斜視図である。
【0082】
図8において、本実施の形態に係るコアバーレルのアウターチューブ2’は、円筒形の外管2iと、外管2iの内部に密接して挿入された円筒形の内管2fとを具備する二重円筒壁構造を有する。また、内管2fの外壁には4つの通水溝2hが、内管2fの中心線に平行に形成されている。この通水溝2hと外管2iの内壁とで囲まれた空間として掘削水供給路である通水穴が形成される。
【0083】
このように、アウターチューブ2’の外管2i内壁と内管2fに形成された通水溝2hとにより形成された4つの通水穴を通してアウターチューブ2’の先端(コアビットが接続された側)に掘削水が供給されるため、アウターチューブ2’先端部の管内には掘削水を通すことなくコアビットの外壁から掘削水を供給することが可能となる。また、アウターチューブ2’の内管に通水溝2hを形成する加工は容易であるため、アウターチューブ2’の製造が容易となる。従って、低廉なコストでアウターチューブ2’を製造することができる。
【0084】
尚、本実施の形態においては、アウターチューブ2’の内部に形成する通水穴の流路形状を、アウターチューブ2’の中心軸と平行な直線状に形成した例を示したが、通水穴の流路形状は直線状である必要はなく、図9のように、アウターチューブ2’の中心軸を中心とした螺旋状に形成してもよいし、図10に示すように、ジグザグ状に形成してもよい。
【0085】
(実施の形態4)
図11は本発明の実施の形態4に係るコアバーレルの先端部分の断面図、図12は本発明の実施の形態4に係るコアバーレルのアウターチューブの先端部分の平面図、図13は図12のA−A線断面図、図14は実施の形態4に係るコアバーレルのアウターチューブの先端部分の斜視破断面図、図15は実施の形態4に係るコアビットの側面図、図16は実施の形態4に係るコアビットの断面図、図17は実施の形態4に係るスリーブチューブの側面図、図18は実施の形態4に係るスリーブチューブの断面図である。
【0086】
図11〜18において、コアバーレル1、アウターチューブ2、通水穴2a、下流側端部2b、先端面2c、内管2f、外管2i、雌螺子2e、コアビット4、貫通孔4a、大径円筒部4b、小径円筒部4c、先端面4d、段差面4e、雄螺子4f、水溝4g,4i,4j、最小孔径部分4h、先行ビット切刃5、削孔ビット切刃6、スリーブチューブ8、フランジ8a、挿入部8b、先端部分8c、脱着部8d、及びビニール袋15は、実施の形態1又は実施の形態2若しくは実施の形態3と同様のものであるため、同一の符号を付して説明は省略する。
【0087】
本実施の形態に係るコアバーレル1は、インナーチューブを有さないシングルチューブコアバーレルとして構成されている。従って、本実施の形態では、アウターチューブの筒内がコア収容部となる。アウターチューブ2の先端部分2kには雌螺子2eが形成されている。一方、コアビット4の基端部には雄螺子4fが形成されている。そして、コアビット4は、雄螺子4fにより、アウターチューブ2の先端部分2kの雌螺子2eに螺着され固定されている。
【0088】
アウターチューブ2の管壁は、図8と同様に、内管2fが外管2iに密着して嵌め込まれた二重円筒壁構造とされており、内管2fの外壁には、内管2fの軸に平行な4本の通水溝が設けられており、この通水溝と外管2iの内壁とで囲まれた空間として、掘削水供給路である通水穴2aが構成されている。
【0089】
また、アウターチューブ2の先端面2cには、環状の水溝2jが形成されている。そして、アウターチューブ2の管壁内部に形成された通水穴2aの下流側端部は、この水溝2jの溝底面に開口している。
【0090】
コアビット4の筒内及びアウターチューブ2の先端部分2kの筒内には、筒状のスリーブチューブ8が回転自在に嵌合されている。スリーブチューブ8は、円筒形状に形成されており、その側面中央部付近にフランジ8aが設けられている。スリーブチューブ8は、このフランジ8aよりも基端側の挿入部8bが、アウターチューブ2の先端部筒内に挿入されている。アウターチューブ2は、先端部分2kにおいて、筒内径が僅かに拡径した段差円筒形状に形成されている。スリーブチューブ8の挿入部8bの外径は、アウターチューブ2の内径よりもわずかに小さいために、この先端部分2kよりも奥に挿入される。一方、フランジ8aは、アウターチューブ2の内径よりもわずかに大きく、拡径されたアウターチューブ2の先端部分2kの内径よりも僅かに小さい。従って、スリーブチューブ8がアウターチューブ2に挿入された状態では、フランジ8aが、先端部分2kの奥の段差部分2lに当接した状態で止められる。そして、この段差部分2lとフランジ8aとの間には、回転摩擦を小さくするために、ボールベアリング16が入れられている。
【0091】
一方、コアビット4の筒内は、先端部の内径が最も小さい最小孔径部分4hとされており、それよりも基端側が段差状に拡径し、段差面4kが形成されている。そして、コアビット4をアウターチューブ2の先端部分2kに螺着した状態において、スリーブチューブ8の先端部分8cの先端面8eが段差面4kに接触した状態又は僅かに隙間があいた状態となり、また、コアビット4の基端面4lはスリーブチューブ8のフランジ8aと略接触した状態となる。そして、このコアビット4の基端面4lとフランジ8aとの間には、回転摩擦を小さくするために、ボールベアリング17が入れられている。
【0092】
このように、スリーブチューブ8は、フランジ8aが、ボールベアリング16,17を介して、アウターチューブ2の段差部分2lとコアビット4の基端面4lとで挟み込まれた状態で、回転自在に固定される。
【0093】
また、スリーブチューブ8の挿入部8bには、採取したコアを包むためのビニール袋15が折りたたんで装着される。また、スリーブチューブ8の筒内は、先端側8fが小径で、基端側8gが先端側8fよりも僅かに大径の2段円筒形状に形成されている。
【0094】
以上のように構成された本実施の形態のコアバーレルにおいて、以下、その動作について説明する。
【0095】
掘削時には、通水穴2aを通して掘削水が供給され、掘削水は、通水穴2aの下流側端部2bから水溝2jに流入し、環状の水溝2j内を廻る。そして、水溝2jに流入した掘削水は、コアビット4の大径円筒部4bに形成された水溝4gと通って、コアビット4の先端方向に噴射される。
【0096】
ここで、コアビット4は、アウターチューブ2の先端に螺着することにより固定されるため、螺子の公差や、螺子の摩耗等によって、アウターチューブ2の先端にコアビット4を螺着した際に、通水穴2aの下流側端部2bと水溝4gの位置とが必ずしもぴったり一致するとは限らない。従って、もし、水溝2jが設けられていない場合には、水溝4gと通水穴2aの下流側端部2bとの位置を一致させるために、螺子2e又は4fを切り直す必要がある。
【0097】
しかしながら、水溝2jを設けることによって、通水穴2aの下流側端部2bと水溝4gの位置とが一致しない場合でも、掘削水は、アウターチューブ2の先端面2cの水溝2jを廻ってコアビット4の水溝4gに流れ込む。従って、かかる位置ずれが生じた場合でも、掘削水をコアビット4の先端に向かって噴射させることができる。
【0098】
尚、水溝2jの深さをあまり深くすると、水溝を通る掘削水の流速が下がるため、掘削中に水溝2jに砂泥が侵入して詰まりやすくなる。一方、水溝2jの深さをあまり浅くすると、掘削水が水溝2jを通りにくくなり、水流が減少する。従って、水溝2jの深さは、適度な流速で適度な流量の掘削水が流れることが可能な深さとする必要がある。具体的には、本発明者が試験を行ったところ、水溝2jの深さとしては、好ましくは3〜7mm、より好ましくは4〜6mmとするのがよい。
【0099】
次に、先行ビット切刃5により地殻から切り出されたコアは、コアバーレル1が掘進することによって、コアビット4の最小孔径部分4hを通ってスリーブチューブ8内へ入る。この際、コアの切り出し径は、コアビット4の最小孔径部分4hの径により決まるが、実際には、コアビット4の最小孔径部分4hを通過する際のコアは、圧縮された状態にあるため、この最小孔径部分4hを通り抜けた後に径が多少膨張する。特に、流動性の大きな軟質地盤を掘削する場合には、この膨張は大きくなる。この切り出されたコアは、スリーブチューブ8の先端側8fの筒内で整形され、基端側8gに移動し、ビニール袋15を押し上げながらアウターチューブ2の基端側へと移動していく。このようにして、切り出されたコアは、ビニール袋15に包装された状態でアウターチューブ2内に収容される。この際、スリーブチューブ8は、アウターチューブ2及びコアビット4に対して回転自在とされているため、アウターチューブ2及びコアビット4が回転してもスリーブチューブ8は回転しない。
【0100】
ここで、スリーブチューブ8は、先端側8fの内径が小径で、基端側8gの内径が先端側8fの内径よりも僅かに大きな径とされているため、切り出されたコアは、スリーブチューブ8の先端側8fの内壁面には接触するが、基端側8gの内壁面には接触しないため、スリーブチューブ8とコアとの接触面積が小さく、両者間の摩擦抵抗が小さいために、コアをスリーブチューブ8内に滑らかに収容することができる。これにより、コアの収容時に、ビニール袋15が裂けるのを防止することができる。
【0101】
ここで、スリーブチューブ8の先端側8fの筒内径は、基端側8gの筒内径よりも0.5乃至5mmだけ小径に形成することが好ましい。この内径差が0.5mmよりも小さいと、切り出されたコアが、スリーブチューブ8の先端側8fのみならず基端側8gの内壁とも接触して擦れ、摩擦抵抗が大きくなるため、コアの収容時に、ビニール袋15が破損するおそれが大きい。一方、内径差が5mmよりも大きいと、アウターチューブ2の径に対して採取されるコアの径が小さくなるため、充分な大きさの径のコアを採取することができない。
【0102】
また、スリーブチューブ8の先端側8fの小径部分の長さは、45〜60mmとすることが好ましい。この長さが45mmよりも短いと、スリーブチューブ8の先端側8fの小径部分を通過したコアが、その後部で膨張し、スリーブチューブ8の基端側8gの筒内と擦れたり、採取されるコアの長さが短くなったりすることが経験的に認められる。また、この長さが60mmよりも長いと、スリーブチューブ8の先端側8fの小径部分でのコアとスリーブチューブ8の内壁との摩擦が大きくなり、上述のような摩擦抵抗低減による効果を得ることができなくなるからである。
【0103】
また、スリーブチューブ8の先端面8eと、コアビット4の筒内の段差面4kとが接触した状態又は僅かに隙間があいた状態とされているため、スリーブチューブ8とコアビット4との間に砂泥が侵入することが防止され、砂泥が詰まることによりスリーブチューブ8が回転しにくくなるのが防止される。
【0104】
(実施の形態5)
図19は本発明の実施の形態5に係るコアビットの平面図、図20は実施の形態5に係るコアビットの側面図、図21は実施の形態5に係るコアビットの底面図、図22は図19のA−A線矢視断面図である。
【0105】
図19〜22において、コアビット4、貫通孔4a、大径円筒部4b、小径円筒部4c、先端面4d、段差面4e、雄螺子4f、最小孔径部分4h、水溝4i,4j、段差面4k、基端面4lは、図15及び図16と同様のものであるため、同一の符号を付して説明は省略する。
【0106】
本実施の形態においては、コアビット4の大径円筒部4bに形成された通水路4mが溝状ではなく管状に形成されていることを特徴としている。このように、通水路4mを管状に形成すると、実施の形態1や実施の形態4のように溝状に形成した場合よりも、掘削水をより効率的に削孔ビット切刃6や先行ビット切刃5の部分に供給することができ、掘削水によるスライムの排出作用及び各ビット切刃の冷却作用をより高めることが可能となる。
【0107】
(実施の形態6)
図23は本発明の実施の形態6に係るコアビットの側面図である。
【0108】
図23において、コアビット4、大径円筒部4b、小径円筒部4c、先端面4d、段差面4e、雄螺子4f、水溝4jは、図15及び図16と同様のものであるため、同一の符号を付して説明は省略する。
【0109】
本実施の形態においては、大径円筒部4bの側壁に形成された通水路である水溝4g’がコアビット4の中心軸に対して傾斜状に形成されていることを特徴とする。この傾斜は、コアビット4の回転方向と水溝の流軸方向とが為す角が90度より大きくなるように形成される。
【0110】
このような構成とすることで、コアビット4が回転したときでも、掘削水は水溝4g’をスムーズに通過することが可能となる。
尚、本実施の形態においても、水溝4g’の代わりに、実施の形態5に示したような管状の通水路を傾斜状に形成した構成としてもよう。
【0111】
(実施の形態7)
図24は本発明の実施の形態7に係るコアビットの平面図、図25は実施の形態7に係るコアビットの側面図、図26は実施の形態7に係るコアビットの底面図、図27は図24のA−A線矢視断面図、図28は実施の形態7に係るコアビットの分解斜視図である。
【0112】
図24〜28において、コアビット4、貫通孔4a、大径円筒部4b、小径円筒部4c、先端面4d、段差面4e、雄螺子4f、最小孔径部分4h、水溝4i,4j、段差面4k、基端面4l、通水路4mは、図19〜22と同様のものであるため、同一の符号を付して説明は省略する。
【0113】
本実施の形態のコアビット4は、大径円筒部4bの基端側側面に、円環状に水溝4nが形成されていることを特徴とする。そして、通水路4mの上流側端部はこの水溝4nの溝底面に開口している。このように、水溝4nをコアビット4に設けることにより、掘削水供給路から供給された掘削水は水溝4nを廻って各通水路4mに供給される。従って、実施の形態4で、アウターチューブ2に水溝2jを設けた場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0114】
また、本実施の形態においては、図28に示すように、コアビット4の小径円筒部4cと大径円筒部4bとは、それぞれ別体に構成されており、両者は螺着されてコアビット4を構成する。このように、小径円筒部4cと大径円筒部4bとを別体とすることで、掘削する土質によって、小径円筒部4cを交換し、先行ビット切刃5を掘削する土質に適合したものに交換するのが容易となる。また、先行ビット切刃5又は削孔ビット切刃6のいずれか一方が摩耗した場合に、小径円筒部4c又は大径円筒部4bを交換することで、一方のみを交換することができる。
【0115】
【発明の効果】
以上のように、本発明のコア採取方法によれば、コアビットの筒外側からコアビットの先端部へ掘削水を供給することで、コアが掘削水によりスライムとともに洗い流されることが防止される。そのため、砂礫地盤や粘土地盤のような細粒地盤又は軟質地盤の地質試料を、自然状態のままのきれいな形で採取することが可能となる。従って、かかる細粒地盤又は軟質地盤の地質調査が容易となり、精度の高い地質調査が可能となる。
【0116】
本発明のコアバーレルの第1の構成によれば、コアビットの筒外側からコアビットの先端部へ掘削水を供給することで、コアが掘削水によりスライムとともに洗い流されることが防止される。そのため、砂礫地盤や粘土地盤のような細粒地盤、破砕地盤、軟質地盤等の地質試料を、自然状態のままのきれいな形で採取することが可能となる。従って、かかる細粒地盤、破砕地盤、軟質地盤等の地質調査が容易となり、精度の高い地質調査が可能となる。
【0117】
本発明のコアバーレルの第2の構成によれば、アウターチューブ先端部の管内には掘削水を通すことなくコアビットの外壁側から掘削水を供給することが可能となるため、アウターチューブの管内に採取されたコアが掘削水で洗い流されて流亡することを防止することが可能となる。また、通水穴をアウターチューブの間壁に設けているため、アウターチューブの管内部に配管を設ける必要がなく、構造的に簡素化され、耐久性も高くすることができる。
【0118】
本発明のコアバーレルの第3の構成によれば、アウターチューブ先端部の管内には掘削水を通すことなくコアビットの外壁から掘削水を供給することが可能となるため、アウターチューブの管内に採取されたコアが掘削水で洗い流されて流亡することを防止することが可能となる。また、通水穴を内管の外壁に形成された通水溝と外管の内壁とで囲まれた空間として形成したため、アウターチューブの製作が容易であり、低廉なコストでアウターチューブを製造することができる。
【0119】
本発明のコアバーレルの第4の構成によれば、アウターチューブの先端面の水溝に供給された水は、水溝を通ってアウターチューブの先端面全体に廻ることができるため、掘削水供給の路下流側端部の開口とコアビットに設けられる通水路との間に位置ずれが生じても、掘削水をコアビットの先端に噴射させることができる。
【0120】
本発明のコアバーレルの第5の構成によれば、先行ビット切刃に少量の掘削水しか供給されないため、採取するコアに掘削水が混入したり、掘削水によりコアが流亡したりすることを避けることができ、自然状態のままでコアを採取することが可能となる。また、掘削水がコアとともにコアビットの筒内に流入することが極力防止されるため、自然状態のままの地質標本をきれいな形で採取することが可能となる。また、掘削時におけるコアビットの振動が極めて小さくなるため、コアチューブ(アウターチューブ等)やコアチューブに回転動力を伝えるボーリングロッド、等のボーリング機械が振動により破損したり、ボルトやナットが緩んで事故の原因となったりすることが防止される。また、ボーリング作業時の騒音も小さくすることができる。更に、コアビットが軟弱地盤、砂礫地盤、破砕地盤等の型崩れしやすい軟質地盤にも硬質地盤にも使用することができるため、軟質地盤と硬質地盤とが多層に渡って重なった地層構造を有する地盤を掘削する場合にも、いちいちコアビットを取り替える必要がなく、コア採取作業における作業性が向上する。
【0121】
本発明のコアバーレルの第6の構成によれば、先行ビット切刃に少量の掘削水しか供給されないため、採取するコアに掘削水が混入したり、掘削水によりコアが流亡したりすることを避けることができ、自然状態のままでコアを採取することが可能となる。また、掘削水がコアとともにコアビットの筒内に流入することが極力防止されるため、自然状態のままの地質標本をきれいな形で採取することが可能となる。掘進時のコアチューブの回転抵抗を小さくすることができ、また、スライムが効率よく排出されビット荷重が減少するため、過剰なトルクによるコアチューブ(アウターチューブ等)の切断やボーリングロッドの切断などの切断事故、スライムの閉塞によりコアチューブが動かなくなる抑留事故や掘削水の循環不良事故等のトラブルを防止することができる。また、掘削時におけるコアビットの振動が極めて小さくなるため、コアチューブ(アウターチューブ等)やコアチューブに回転動力を伝えるボーリングロッド、等のボーリング機械が振動により破損したり、ボルトやナットが緩んで事故の原因となったりすることが防止される。また、ボーリング作業時の騒音も小さくすることができる。更に、コアビットが軟弱地盤、砂礫地盤、破砕地盤等の型崩れしやすい軟質地盤にも硬質地盤にも使用することができるため、軟質地盤と硬質地盤とが多層に渡って重なった地層構造を有する地盤を掘削する場合にも、いちいちコアビットを取り替える必要がなく、コア採取作業における作業性が向上する。
【0122】
本発明のコアバーレルの第7の構成によれば、切り出されたコアが貫通孔の最小孔径部分の上部に達すると、コアビットの間壁と接触することはないため、コアがコアビットからアウターチューブの内部にスムーズに取り込まれる。また、コアと貫通孔内壁との間の摩擦熱の発生が少ないため、コアビットの焼き付き、コアの熱変成、コアビットの摩耗が最小限に抑えられる。また、コアビットに加わるトルクが小さくなり、ビット荷重が減少するため、過剰なトルクによるコアチューブ(アウターチューブ等)の切断やボーリングロッドの切断などの切断事故を防止することができる。さらに、地盤中から切り出したコアに加わるトルクが小さくなるため、コアが撚回されて切断することが防止され、軟弱地盤や砂礫地盤、破砕地盤においても自然状態のままでのコアの採取が容易となる。
【0123】
本発明のコアバーレルの第8の構成によれば、貫通孔の最小孔径部分の内壁に設けられた水溝に掘削水が流入し、当該最小孔径部分におけるコアと貫通孔内壁との摩擦が減少するとともに貫通孔内壁が冷却されるため、コアビットの最小孔径部分の焼き付き、摩耗、及び切り出したコアの摩擦熱による変性を最小限に抑えることが可能となる。
【0124】
本発明のコアバーレルの第9の構成によれば、地殻内部から切り出したコアを型崩れさせずに自然状態のままのきれいな状態で採取することが容易となる。
【0125】
本発明のコアビットの第1の構成によれば、掘削時におけるコアビットの振動が極めて小さくなるため、コアチューブ(アウターチューブ等)やコアチューブに回転動力を伝えるボーリングロッド、等のボーリング機械が振動により破損したり、ボルトやナットが緩んで事故の原因となったりすることが防止される。また、ボーリング作業時の騒音も小さくすることができる。
【0126】
本発明のコアビットの第2の構成によれば、大径円筒部の外側面に形成された水溝から供給される掘削水によりスライムが効率よく排出されるため、ビット荷重が減少し、過剰なトルクによるコアチューブ(アウターチューブ等)の切断やボーリングロッドの切断などの切断事故、スライムの閉塞によりコアチューブが動かなくなる抑留事故や掘削水の循環不良事故等のトラブルを防止することができる。また、コアビットの先端には最小限の量の掘削水のみが供給されるため、先行ビット切刃が切り出したコアが掘削水により洗い流されることが防止され、自然状態のままのきれいな状態でコアを採取することが可能となる。
【0127】
本発明のコアビットの第3の構成によれば、切り出されたコアが貫通孔の最小孔径部分の上部に達すると、コアビットの間壁と接触することはないため、コアがコアビットからアウターチューブの内部にスムーズに取り込まれる。また、コアと貫通孔内壁との間の摩擦熱の発生が少ないため、コアビットの焼き付き、コアの熱変成、コアビットの摩耗が最小限に抑えられる。また、コアビットに加わるトルクが小さくなり、ビット荷重が減少するため、過剰なトルクによるコアチューブ(アウターチューブ等)の切断やボーリングロッドの切断などの切断事故を防止することができる。さらに、地盤中から切り出したコアに加わるトルクが小さくなるため、コアが撚られて切断することが防止され、軟弱地盤や砂礫地盤、破砕地盤においても自然状態のままでのコアの採取が容易となる。
【0128】
本発明のコアビットの第4の構成によれば、貫通孔の最小孔径部分の内壁に設けられた水溝に掘削水が流入し、当該最小孔径部分におけるコアと貫通孔内壁との摩擦が減少するとともに貫通孔内壁が冷却されるため、コアビットの最小孔径部分の焼き付き、摩耗を最小限に抑えることが可能となる。
【0129】
本発明のコアビットの第5の構成によれば、先行ビット切刃が摩耗した場合、又は削孔ビット切刃が摩耗した場合、小径円筒部と大径円筒部とを分離して何れか一方を新品のものに交換することができる。また、掘削する地層の土質により、先行ビット切刃を最適なものに交換することができる。例えば、超硬岩層を掘削する場合には、先行ビット切刃をダイヤモンドビットに交換して掘削し、砂礫層を掘削する場合には、先行ビット切刃をメタルビットに交換するというように、簡単に交換が可能となる。
【0130】
本発明のコアビットの第6の構成によれば、アウターチューブの掘削水供給路から供給される掘削水を、環状の水溝を通してコアビットの周囲全体に廻すことができるため、各通水路から均等に掘削水を噴射することができる。また、アウターチューブの掘削水供給路の下流側端部の開口とコアビットの各通水路の位置がずれていても、環状の水溝を通してコアビットの各通水路に掘削水を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係るコアバーレルの外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るコアバーレルの分解図である。
【図3】図2のインナーチューブの分解斜視図である。
【図4】図2のアウターチューブの先端部分の拡大図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るコアバーレルの断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るコアバーレルの掘削時の状態を表す図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係るコアビットの斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係るコアバーレルのアウターチューブの分解斜視図である。
【図9】実施の形態3に係るコアバーレルの掘削水供給路の流路形状の他の例を示す図である。
【図10】実施の形態3に係るコアバーレルの掘削水供給路の流路形状の他の例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態4に係るコアバーレルの先端部分の断面図である。
【図12】本発明の実施の形態4に係るコアバーレルのアウターチューブの先端部分の平面図である。
【図13】図12のA−A線断面図である。
【図14】実施の形態4に係るコアバーレルのアウターチューブの先端部分の斜視破断面図である。
【図15】実施の形態4に係るコアビットの側面図である。
【図16】実施の形態4に係るコアビットの断面図である。
【図17】実施の形態4に係るスリーブチューブの側面図である。
【図18】実施の形態4に係るスリーブチューブの断面図である。
【図19】本発明の実施の形態5に係るコアビットの平面図である。
【図20】実施の形態5に係るコアビットの側面図である。
【図21】実施の形態5に係るコアビットの底面図である。
【図22】図19のA−A線矢視断面図である。
【図23】本発明の実施の形態6に係るコアビットの側面図である。
【図24】本発明の実施の形態7に係るコアビットの平面図である。
【図25】実施の形態7に係るコアビットの側面図である。
【図26】実施の形態7に係るコアビットの底面図である。
【図27】図24のA−A線矢視断面図である。
【図28】実施の形態7に係るコアビットの分解斜視図である。
【図29】従来の軟質地盤に使用されるコアバーレルの先端部分を表す断面図である。
【図30】従来の硬質地盤に使用するコアバーレルの先端部分を表す図である。
【符号の説明】
1 コアバーレル
2 アウターチューブ
2a 通水穴
2b 下流側端部
2c 先端面
2d 上流側端部
2e 雌螺子
2f 内管
2h 通水溝
2i 外管
2j 水溝
2k 先端部分
2l 段差面
3 インナーチューブ
4 コアビット
4a 貫通孔
4b 大径円筒部
4c 小径円筒部
4d 先端面
4e 段差面
4f 雄螺子
4g,4g’,4i,4j 水溝
4h 最小孔径部分
4k 段差面
4l 基端面
4m 通水路
4n 水溝
5 先行ビット切刃
6 削孔ビット切刃
7 スイベルヘッド
7a 蓋部
7b 止水部
7c 緩衝軸
7d ボルト
7e,7f 抜気孔
7g 止水蓋
7h 整水筒
7i フランジ部
7j スプリング
7k Oリング
7l 抜気孔
8 スリーブチューブ
8a フランジ
8b 挿入部
8c 先端部分
8d 脱着部
8e 先端面
8f 先端側
8g 基端側
9 ヘッドカップリング
10,11 蓋球
12 地盤
12a コア
12b,12c 掘削孔壁
13,14 間隙
15 ビニール袋
16,17 ボールベアリング
100,110 コアバーレル
101,111 アウターチューブ
102,112 インナーチューブ
103,113 コアビット
103a,113a,114a 切刃
104,114 シュー
105,115 軟質地盤
105a,115a 掘削孔の外壁
115b コア
106,116 間隙

Claims (16)

  1. 筒状のコアビットと、先端に前記コアビットが固定され、かつ、前記コアビットの筒内に連通しているコア収容部を内部に有する筒状のアウターチューブとを備えたコアバーレルにより、地盤内部から地質試料であるコアを採取するためのコア採取方法であって、
    前記コア収容部とは隔離して設けられた掘削水供給路を通して、前記コアビットの筒外側に掘削水を供給するとともに、前記掘削水供給路の下流側端部から、前記コアビットの先端方向に向けて掘削水を噴射させつつ、前記コアバーレルを回転させることにより地盤を掘進しながら前記コア収容部の内部にコアを採取するコア採取方法。
  2. 筒状のコアビットと、
    先端に前記コアビットが固定され、かつ、前記コアビットの筒内に連通するコア収容部を内部に有する筒状のアウターチューブと、
    を備えたコアバーレルにおいて、
    前記コア収容部とは隔離して設けられ、掘削水を通水する掘削水供給路を具備し、
    前記掘削水供給路は、下流側端部が前記コアビットの筒外側に開口し、かつ、前記下流側端部から噴射される掘削水の噴流軸線が、前記コアビットの先端方向に向くように形成されていることを特徴とするコアバーレル。
  3. 前記掘削水供給路は、前記アウターチューブの管壁内部を貫いて形成された一又は二以上の通水穴であることを特徴とする請求項2に記載のコアバーレル。
  4. 前記アウターチューブは、外管と、前記外管の内部に密接して挿入された内管とを具備する二重円筒壁構造を有し、
    前記掘削水供給路は、前記内管の外壁に形成された一又は二以上の通水溝と外管の内壁とで囲まれた空間として形成されていることを特徴とする請求項2に記載のコアバーレル。
  5. 前記アウターチューブの先端面又は前記アウターチューブの先端面と接触する前記コアビットの基端側の面に形成された環状の水溝を具備していることを特徴とする請求項2に記載のコアバーレル。
  6. 前記コアビットは、
    中心部に貫通孔が設けられ、外周径が基端側から先端側へ向かうに従って段階的に縮径する複数の円筒部からなる多段円筒形状に形成されたコアビット本体と、
    前記コアビット本体の先端面に設けられた先行ビット切刃と、
    前記コアビット本体の外側壁の各段の段差面のそれぞれに設けられた削孔ビット切刃と、
    を備えていることを特徴とする請求項2に記載のコアバーレル。
  7. 前記コアビットは、
    中心部に貫通孔が設けられ、基端側の大径円筒部と前記大径円筒部の外周径よりも小さい外周径を有する先端側の小径円筒部との2つの円筒部からなる2段円筒形状に形成されたコアビット本体と、
    前記コアビット本体の先端面に設けられた先行ビット切刃と、
    前記大径円筒部と前記小径円筒部との段差面に設けられた削孔ビット切刃と、前記コアビット本体の大径円筒部の外側壁に溝状又は管状に形成されており、前記掘削水供給路の下流側端部と連通する一又は二以上の通水路と、
    を具備していることを特徴とする請求項2に記載のコアバーレル。
  8. 前記貫通孔は、前記コアビットの先端部分に、前記貫通孔全体の中で最も孔径が小さい最小孔径部分が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のコアバーレル。
  9. 前記貫通孔の前記最小孔径部分の内壁に溝状に形成された一又は二以上の水溝を備えていることを特徴とする請求項8に記載のコアバーレル。
  10. 前記アウターチューブの管内に、前記アウターチューブと同軸に配設された円管状のインナーチューブと、
    前記インナーチューブの基端部に接続され、前記インナーチューブを前記アウターチューブの内部に回転自在に接続するスイベルヘッドと、を備え、
    前記インナーチューブの先端側は前記コアビットと連通しており、
    前記インナーチューブの孔径は前記コアビットの前記最小孔径部分の孔径よりも大きい孔径に形成されていることを特徴とする請求項8又は9に記載のコアバーレル。
  11. 中心部に貫通孔が設けられ、外周径が基端側から先端側へ向かうに従って段階的に縮径する複数の円筒部からなる多段円筒形状に形成されたコアビット本体と、
    前記コアビット本体の先端面に設けられた先行ビット切刃と、
    前記コアビット本体の外側壁の各段の段差面のそれぞれに設けられた削孔ビット切刃と、
    を備えていることを特徴とするコアビット。
  12. 中心部に貫通孔が設けられ、基端側の大径円筒部と前記大径円筒部の外周径よりも小さい外周径を有する先端側の小径円筒部との2つの円筒部からなる2段円筒形状に形成されたコアビット本体と、
    前記コアビット本体の先端面に設けられた先行ビット切刃と、
    前記大径円筒部と前記小径円筒部との段差面に設けられたビット切刃と、
    前記コアビット本体の大径円筒部の外側壁に溝状又は管状に形成された一又は二以上の通水路と、
    を備えたことを特徴とするコアビット。
  13. 前記貫通孔は、前記コアビットの先端部分に、前記貫通孔全体の中で最も孔径が小さい最小孔径部分が形成されていることを特徴とする請求項11又は12に記載のコアビット。
  14. 前記貫通孔の前記最小孔径部分の内壁に溝状に形成された一又は二以上の水溝を備えていることを特徴とする請求項13に記載のコアビット。
  15. 前記小径円筒部は、前記大径円筒部に取り外し可能に螺着されていることを特徴とする請求項12に記載のコアビット。
  16. 前記アウターチューブの先端面と接触する前記コアビットの基端側の面に形成された環状の水溝を具備していることを特徴とする請求項12に記載のコアビット。
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