JP2004059915A - ポリエステル組成物及びそれからなる成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガスバリヤ−性および/または香味保持性に優れた成形体を与え、さらには成形時での金型汚れを発生させにくいポリエステル組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】熱可塑性ポリエステル(A)100重量部と、部分芳香族ポリアミド(B)0.01〜100重量部とからなるポリエステル組成物であって、該部分芳香族ポリアミド(B)中の分子量1000以下の化合物の含有量が3.5重量%以下であることを特徴とするポリエステル組成物。
【解決手段】熱可塑性ポリエステル(A)100重量部と、部分芳香族ポリアミド(B)0.01〜100重量部とからなるポリエステル組成物であって、該部分芳香族ポリアミド(B)中の分子量1000以下の化合物の含有量が3.5重量%以下であることを特徴とするポリエステル組成物。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲料用ボトルをはじめとする中空成形容器、フィルム、シ−トなどの成形体の素材として好適に用いられるポリエステル組成物およびそれからなる香味保持性(フレバ−性)に優れた成形体に関するものである。また、中空成形体を成形する際の熱処理金型からの離型性が良好で、金型汚れが少ないポリエステル組成物を与える。特に本発明のポリエステル組成物から得られた成形体は、香味保持性および/またはガスバリヤ−性に優れており、また耐熱寸法安定性に優れた中空成形体や成形後の寸法安定性に優れたシ−ト状物および延伸フィルムを与える。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレ−ト(以下、PETと略称することがある)などのポリエステルは、機械的性質及び化学的性質が共に優れているため、工業的価値が高く、繊維、フィルム、シ−ト、ボトルなどとして広く使用されている。
【0003】
調味料、油、飲料、化粧品、洗剤などの容器の素材としては、充填内容物の種類およびその使用目的に応じて種々の樹脂が採用されている。
これらのうちでポリエステルは機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリヤ−性に優れているので、特にジュ−ス、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填用容器等の成形体の素材として最適である。
【0004】
このようなポリエステルは、例えば、射出成形機械などの成形機に供給して中空成形体用プリフォ−ムを成形し、このプリフォ−ムを所定形状の金型に挿入し延伸ブロ−成形した後ボトルの胴部を熱処理(ヒ−トセット)して中空成形容器に成形され、さらには必要に応じてボトルの口栓部を熱処理(口栓部結晶化)させるのが一般的である。
【0005】
しかしながら、PETは、溶融重縮合時の副生物としてアセトアルデヒド(以下、AAと略称することがある)を含有する。また、PETは、中空成形体等の成形体を熱成形する際に熱分解によりアセトアルデヒドを生成し、得られた成形体の材質中のアセトアルデヒド含有量が多くなり、中空成形体等に充填された飲料等の風味や臭いに影響を及ぼす。
【0006】
したがって、従来よりポリエステル成形体中のアセトアルデヒド含有量を低減させるために種々の方策が採られてきた。一般的には、溶融重縮合したポリエステルを固相重合することによってAA含有量を低下させる方法、融点がより低い共重合ポリエステルを使用して成形時のAA生成を低下させる方法、熱成形時における成形温度を可及的に低くする方法および熱成形時におけるせん断応力を可及的に小さくする方法等がとられている。
【0007】
近年、ポリエチレンテレフタレ−トを中心とするポリエステル製容器は、ミネラルウオ−タやウ−ロン茶等の低フレ−バ−飲料用の容器として使用されるようになってきた。このような飲料の場合は、一般にこれらの飲料を熱充填したり、あるいは充填後加熱して殺菌されるが、前記の方法によるポリエステル成形体材質中のAA含有量低減だけでは、これらの容器内容物の風味や臭いが改善されないことがわかってきた。
【0008】
また、例えば、ポリエステル樹脂100重量部に対して、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂0.05重量部以上、1重量部未満を添加したポリエステル組成物を用いる方法(特許文献1参照)や、熱可塑性ポリエステルに、末端アミノ基濃度をある範囲に規制した特定のポリアミドを含有させたポリエステル組成物からなるポリエステル製容器(特許文献2参照)が提案されているが、ミネラルウオ−タ等の低フレ−バ−飲料用の容器の材料としては不十分な場合があることが判ってきた。
【0009】
一方、PETを主体とするポリエステル成形体は前記の通りガスバリヤ−性に優れているが、ビタミンC等のように酸素に非常に敏感な化合物を含有する内容物用の中空成形体等としては不満足である。
【0010】
このような問題点を解決するために、例えば、我々は、ポリエステル樹脂100重量部に対して、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂1〜100重量部を含有させたポリエステル中空成形体(特許文献3参照)を提案した。しかしながら、このようなポリエステル組成物からなる中空成形体に充填された飲料、特に低フレーバ−飲料の風味や臭いが問題となることがあることが判ってきた。
【0011】
また、このようなポリエステル組成物を用いて耐熱性中空成形体を製造する際に前記の中空成形体の胴部を熱処理するが、金型内面や金型のガスの排気口、排気管に異物が付着する金型汚れが、ポリエステル樹脂のみを用いて成形する場合に比べて非常に発生しやすいと言う問題があり、未解決である。
【0012】
【特許文献1】
特公平6−6662号公報
【特許文献2】
特公平4−71425号公報
【特許文献3】
特公平4−54702号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の従来技術の問題点を解決することにあり、ガスバリヤ−性および/または香味保持性に優れた成形体を提供することを目的としている。また、本発明は、成形時での金型汚れを発生させにくいポリエステル組成物を提供することも目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のポリエステル組成物は、熱可塑性ポリエステル(A)100重量部と、部分芳香族ポリアミド(B)0.01〜100重量部とからなるポリエステル組成物であって、該部分芳香族ポリアミド(B)中の分子量1000以下の化合物の含有量が3.5重量%以下であることを特徴とするポリエステル組成物である。
【0015】
この場合において、前記熱可塑性ポリエステル(A)が、エチレンテレフタレ−トを主たる繰り返し単位とするポリエステルであることができる。
【0016】
この場合において、部分芳香族ポリアミド(B)が、メタキシリレンジアミンとジカルボン酸とから誘導される構成単位を分子鎖中に20モル%以上含有するポリアミドであることができる。
この場合において、DSC(示差走査熱量計)で測定した、前記部分芳香族ポリアミド(B)の二次転移点が、50〜120℃であることが好ましい。
【0017】
この場合において、前記のポリエステル組成物中のアセトアルデヒド含有量が20ppm以下であることができる。
【0018】
この場合において、前記の主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステル(A)が含有する環状エステル3量体の含有量が、0.7重量%以下であることができる。
この場合において、前記の主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(A)を290℃の温度で60分間溶融した時の環状エステル3量体の増加量が、0.50重量%以下であることができる。
【0019】
この場合において、本発明の成形体は、上記のいずれかに記載のポリエステル組成物を成形してなることを特徴とする成形体である。
この場合において、ポリエステル組成物を成形してなる成形体中のメタキシリレン基含有環状アミド1量体の含有量が0.5重量%以下であることができる。また前記の本発明の成形体は、中空成形体、シ−ト状物あるいはこのシート状物を少なくとも一方向に延伸してなる延伸フイルムのいずれかであることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリエステル組成物およびそれからなる成形体の実施の形態を具体的に説明する。
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)は、芳香族ジカルボン酸成分とグリコ−ル成分とからなる構成単位を50モル%以上含む熱可塑性ポリエステルであり、好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の70モル%以上含む熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくは85モル%以上、特に好ましくは芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の90モル%以上、最も好ましくは95モル%以上含む熱可塑性ポリエステルである。
【0021】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)を構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体等が挙げられる。
【0022】
また本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)を構成するグリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ル、トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ルなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル等が挙げられる。
【0023】
前記熱可塑性ポリエステル(A)中に共重合して使用される酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマ−酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0024】
前記熱可塑性ポリエステル(A)中に共重合して使用されるグリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ル、1,3−トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリブチレングリコ−ル等のポリアルキレングリコ−ルなどが挙げられる。
【0025】
さらに、熱可塑性ポリエステル(A)が実質的に線状である範囲内で多官能化合物、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、グリセリン、ペンタエリスリト−ル、トリメチロ−ルプロパン等を共重合してもよく、また単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0026】
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)としては、芳香族ジカルボン酸と炭素数が2〜4の脂肪族グリコールから選ばれる少なくとも一種のグリコールとから誘導される構成単位を50モル%以上含むポリエステルが好ましい。
【0027】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)の好ましい一例は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含み、共重合成分としてイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4―シクロヘキサンジメタノールなどを含む線状共重合熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上、最も好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を95モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルである。
これら線状熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称)、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート−エチレン−2,6−ナフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレン−2,6−ナフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−ジオキシエチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−1,3−プロピレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレンシクロヘキシレンジカルボキシレート)共重合体などが挙げられる。
【0028】
また本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)の好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン−2、6−ナフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2、6−ナフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2、6−ナフタレ−ト単位を90モル%以上、最も好ましくはエチレン−2,6−ナフタレ−ト単位を95モル%以上含む含む線状熱可塑性ポリエステルである。
これら線状熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリエチレン−2,6―ナフタレート(PEN)、ポリ(エチレン−2,6―ナフタレート−エチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6―ナフタレート−エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6―ナフタレート−エチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6―ナフタレート−ジオキシエチレン−2,6―ナフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート−1,3−プロピレン−2,6−ナフタレート)共重合体などが挙げられる。
【0029】
また本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)の好ましいその他の例としては、主たる構成単位が1,3−プロピレンテレフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくは1,3−プロピレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましくは1,3−プロピレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上、最も好ましくは1,3−プロピレンテレフタレ−ト単位を95モル%以上含む含む線状熱可塑性ポリエステルである。
これら線状熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリプロピレンテレフタレート(PTT)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート−1,3−プロピレンイソフタレート)共重合体、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート−1,3−プロピレンー2,6−ナフタレート)共重合体などが挙げられる。
【0030】
さらにまた本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)の好ましいその他の例としては、主たる構成単位がブチレンテレフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくはブチレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状共重合熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましいくはブチレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上、最も好ましくはブチレンテレフタレ−ト単位を95モル%以上含む含む線状熱可塑性ポリエステルである。
これら線状熱可塑性ポリエステル(A)の例としては、ポリブチレンテレフタレ−ト(PBT)、ポリ(ブチレンテレフタレート−ブチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(ブレンテレフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(ブレンテレフタレート−ブチレン−2,6−ナフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンテレフタレート−1,3−プロピレンテレフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンテレフタレート−ブチレンシクロヘキシレンジカルボキシレート)共重合体などが挙げられる。
【0031】
前記以外の本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)の好ましいその他の例としては、1,3−プロピレン−2、6−ナフタレ−トから構成される構成単位を30モル%以上含む熱可塑性ポリエステル、ブチレン−2、6−ナフタレ−トから構成される構成単位を30モル%以上含む熱可塑性ポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレーから構成される構成単位を30モル%以上含む熱可塑性ポリエステルなどが挙げられる。
【0032】
前記の熱可塑性ポリエステル(A)は、従来公知の製造方法によって製造することが出来る。即ち、PETの場合には、テレフタ−ル酸とエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Ti化合物またはAl化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、またはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分をエステル交換触媒の存在下で反応させてメチルアルコ−ルを留去しエステル交換させた後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Ti化合物またはAl化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて、主として減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。
【0033】
さらにポリエステルの極限粘度を増大させ、アセトアルデヒド含有量を低下させるために固相重合を行ってもよい。
前記のエステル化反応、エステル交換反応、溶融重縮合反応および固相重合反応は、回分式反応装置で行っても良いし、また連続式反応装置で行っても良い。
これらいずれの方式においても、溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様、回分式装置や連続式装置で行うことが出来る。溶融重縮合と固相重合は連続で行っても良いし、分割して行ってもよい。
【0034】
前記の出発原料である芳香族ジカルボン酸ジメチルエステル、芳香族ジカルボン酸またはエチレングリコールなどのグリコール類としては、パラキシレンから誘導されるバージンのジメチルテレフタレート、テレフタル酸あるいはエチレンから誘導されるエチレングリコールは勿論のこと、使用済みPETボトルからメタノール分解やエチレングリコール分解などのケミカルリサイクル法により回収したジメチルテレフタレート、テレフタル酸、ビスヒドロキシエチルテレフタレートあるいはエチレングリコールなどの回収原料も、出発原料の少なくとも一部として利用することが出来る。前記回収原料の品質は、使用目的に応じた純度、品質に精製されていなければならないことは言うまでもない。
【0035】
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)の製造に使用されるSb化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレ−ト、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。Sb化合物は、生成ポリマ−中のSb残存量として50〜250ppmの範囲になるように添加する。
【0036】
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)の製造に使用されるGe化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等が挙げられる。Ge化合物を使用する場合、その使用量はポリエステル中のGe残存量として5〜150ppm、好ましくは10〜100ppm、更に好ましくは15〜70ppmである。
【0037】
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)の製造に使用されるTi化合物としては、テトラエチルチタネ−ト、テトライソプロピルチタネ−ト、テトラ−n−プロピルチタネ−ト、テトラ−n−ブチルチタネ−ト等のテトラアルキルチタネ−トおよびそれらの部分加水分解物、酢酸チタン、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン、チタンハロゲン化物の加水分解物、シュウ化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸アンモニウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、チタンアセチルアセトナート等が挙げられる。Ti化合物は、生成ポリマ−中のTi残存量として0.1〜50ppmの範囲になるように添加する。
【0038】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)の製造に使用されるAl化合物としては、蟻酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム等のカルボン酸塩、酸化物、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム等の無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド等のアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネ−ト、アルミニウムアセチルアセテ−ト等とのアルミニウムキレ−ト化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物等があげられる。これらのうち酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネ−トが特に好ましい。Al化合物は、生成ポリマ−中のAl残存量として5〜200ppmの範囲になるように添加する。
【0039】
また、本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)の製造において、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を併用してもよい。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、これら元素の酢酸塩等のカルボン酸塩、アルコキサイド等があげられ、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液等として反応系に添加される。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、生成ポリマ−中のこれらの元素の残存量として1〜50ppmの範囲になるように添加する。
前記の触媒化合物は、前記のポリエステル生成反応工程の任意の段階で添加することができる。
【0040】
また、安定剤として種々のリン化合物を使用することができる。本発明で使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。リン化合物は、生成ポリマ−中のリン残存量として5〜100ppmの範囲になるように前記のポリエステル生成反応工程の任意の段階で添加する。
【0041】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)の製造において、グリコールから副生するジアルキレングリコールの生成を抑制するために塩基性窒素化合物を用いることが好ましい。塩基性窒素化合物としては、脂肪族、脂環式、芳香族および複素環式窒素化合物のいずれでもかまわない。具体例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ジメチルアニリン、ピリジン、キノリン、ジメチルベンジルアミン、ピペリジン、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイド、イミダゾール、イミダゾリン等が挙げられる。これらの化合物は遊離形で用いてもよいし、低級脂肪酸やTPAの塩として用いてもよい。またこれらの塩基性窒素化合物の反応系への添加は、初期重縮合反応が終了するまでの任意の段階で適宜選ぶことが出来、単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
【0042】
これらの塩基性窒素化合物の配合量は、ポリエステル当り0.01〜1モル%、好ましくは0.05〜0.7モル%、更に好ましくは0.1〜0.5モル%である。塩基性窒素化合物の配合量が0.01モル%未満では得られたポリエステルからの中空成形体、特に延伸熱固定中空成形体の透明性が非常に悪くなる。また、1モル%を超えるとポリエステルの色調が悪くなる。
【0043】
また、本発明のポリエステル組成物の溶融時の粘度低下を抑制したり、成形前の乾燥や熱処理時に刺激臭の強いアセトアルデヒドやアリルアルデヒド等の熱分解によって生成する低分子量の副生を抑えるためには、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を添加することも好ましい。このようなヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、公知のものを使用してよく、例示するならばペンタエリスリトール−テトラエキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒド3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチ3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンゼン)イソフタル酸、トリエチルグリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキ3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレン−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフ3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を例示することができる。中でもペンタエリスリトール−テトラエキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒ[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフ3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。この場合ヒンダードフェノール系酸化安定剤は、熱可塑性ポリエステルに結合していてもよく、 ヒンダードフェノール系酸化安定剤のポリエステル組成物中の量としては、ポリエステル組成物の重量に対して、1重量%以下が好ましい。これは、1重量%を越えると着色する場合があることと、1重量%以上添加しても溶融安定性を向上させる能力が飽和するからである。好ましくは、0.02〜0.5重量%である。
【0044】
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)の極限粘度は、好ましくは0.55〜1.50デシリットル/グラム、より好ましくは0.58〜1.10デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.60〜0.90デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.55デシリットル/グラム未満では、得られた成形体等の機械的特性が悪い。また1.50デシリットル/グラムを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、成形体が黄色に着色する等の問題が起こる。
【0045】
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)のチップの形状は、シリンダ−型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は通常1.3〜5mm、好ましくは1.5〜4.5mm、さらに好ましくは1.6〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダ−型の場合は、長さは1.3〜4mm、径は1.3〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は10〜30mg/個の範囲が実用的である。
【0046】
一般的にポリエステルは、製造工程中で発生する、共重合成分及び前記の共重合成分含量がポリエステルのチップと同一のファインをかなりの量含んでいる。このようなファインはポリエステルの結晶化を促進させる性質を持っており、多量に存在する場合には、このようなファインを含むポリエステル組成物から成形した成形体の透明性が非常に悪くなったり、またボトルの場合には、ボトル口栓部結晶化時の収縮量が規定値の範囲内に収まらずキャップで密栓できなくなるという問題が生じる。
【0047】
したがって、本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)中のファインの含有量は1000ppm以下、好ましくは500ppm以下が望ましい。含有量が1000ppmを超える場合は、結晶化速度が早くなり、例えば、中空成形容器の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮量が規定値の範囲内に収まらず、口栓部のキャッピング不良となり、内容物の漏れが生じたり、また中空成形用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる場合がある。
【0048】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)は、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンとから誘導される単位を主構成単位とするポリアミド、または芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとから誘導される単位を主構成単位とするポリアミドである。
【0049】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)を構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸及びその機能的誘導体等が挙げられる。
【0050】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)を構成する脂肪族ジカルボン酸成分としては、直鎖状の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、さらに炭素数4〜12のアルキレン基を有する直鎖状脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。このような直鎖状脂肪族ジカルボン酸の例としては、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スぺリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカジオン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸およびこれらの機能的誘導体などを挙げることができる。
【0051】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)を構成する芳香族ジアミン成分としては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、パラ−ビス−(2−アミノエチル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0052】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)を構成する脂肪族ジアミン成分としては、炭素数2〜12の脂肪族ジアミンあるいはその機能的誘導体である。脂肪族ジアミンは直鎖状の脂肪族ジアミンであっても分岐を有する鎖状の脂肪族ジアミンであってもよい。このような直鎖状の脂肪族ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、1−メチルエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0053】
また本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)を構成するジカルボン酸成分として、上記のような芳香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸以外に脂環族ジカルボン酸を使用することもできる。脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
【0054】
また本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)を構成するジアミン成分として、上記のような芳香族ジアミンや脂肪族ジアミン以外に脂環族ジアミンを使用することもできる。脂環族ジアミンとしては、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4‘−アミノヘキシル)メタン等の脂環族ジアミンが挙げられる。
【0055】
前記のジアミン及び、ジカルボン酸以外にも、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等も共重合成分として使用できる。とりわけ、ε−カプロラクタムの使用が望ましい。
【0056】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)の好ましい例としては、メタキシリレンジアミン、もしくはメタキシリレンジアミンと全量の30%以下のパラキシリレンジアミンを含む混合キシリレンジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから誘導される構成単位を分子鎖中に少なくとも30モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、特に好ましくは70モル%以上、最も好ましくは80モル%以上含有するメタキシリレン基含有ポリアミドである。
【0057】
また本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)は、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3塩基以上の多価カルボン酸から誘導される構成単位を実質的に線状である範囲内で含有していてもよい。
【0058】
これらポリアミドの例としては、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスペラミド等のような単独重合体、及びメタキシリレンジアミン/アジピン酸/イソフタル酸共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピペラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体、メタキシリレンジアミン/アジピン酸/イソフタル酸/ε−カプロラクタム共重合体、メタキシリレンジアミン/アジピン酸/イソフタル酸/ω―アミノカプロン酸共重合体等が挙げられる。
【0059】
また本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)の好ましいその他の例としては、脂肪族ジアミンとテレフタル酸またはイソフタル酸から選ばれた少なくとも一種の酸とから誘導される構成単位を分子鎖中に少なくとも30モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、特に好ましくは70モル%以上、最も好ましくは80モル%以上含有するポリアミドである。
【0060】
これらポリアミドの例としては、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/イソフタル酸共重合体、ポリノナメチレンテレフタルアミド、ポリノナメチレンイソフタルアミド、ノナメチレンジアミン/テレフタル酸/イソフタル酸共重合体、ノナメチレンジアミン/テレフタル酸/アジピン酸共重合体等が挙げられる。
【0061】
また本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)の好ましいその他の例としては、脂肪族ジアミンとテレフタル酸またはイソフタル酸から選ばれた少なくとも一種の酸以外に、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等を共重合成分として使用して得た、脂肪族ジアミンとテレフタル酸またはイソフタル酸から選ばれた少なくとも一種の酸とから誘導される構成単位を分子鎖中に少なくとも30モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、特に好ましくは70モル%以上含有するポリアミドである。
【0062】
これらポリアミドの例としては、ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/ε−カプロラクタム共重合体、ヘキサメチレンジアミン/イソフタル酸/ε−カプロラクタム共重合体、ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/アジピン酸/ε−カプロラクタム共重合体等が挙げられる。
【0063】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)は、DSC(示差走査熱量計)で測定した、前記部分芳香族ポリアミド(B)の二次転移点が、50〜120℃であることが好ましい。二次転移点が50℃未満の場合は、乾燥工程や熱可塑性ポリエステルとの押出し時に融着したり、また定量的に押出せなかったりするので好ましくない。また120℃を越える場合には、ポリエステル組成物を延伸する際に均一に延伸されないで厚み斑などが生じて好ましくない。
【0064】
本発明に係わる部分芳香族ポリアミド(B)中の分子量1000以下の化合物の含有量は3.5重量%以下であることが好ましい。より好ましい上限は3.3%であり、更に好ましい上限は3.1%である。部分芳香族ポリアミド(B)中の分子量1000以下の化合物の含有量が3.5重量%より多いと、本発明のポリエステル組成物から得られた中空成形体等に充填された飲料の風味や臭いに影響を及ぼすだけでなく、加熱処理条件によっては加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化することがある。
【0065】
部分芳香族ポリアミド(B)中の分子量1000以下の化合物とは、例えば、部分芳香族ポリアミド(B)が芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとから構成されるポリアミドである場合には、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジアミン、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとからなる分子量1000以下の線状オリゴマー、ならびに環状オリゴマーなどである。具体例としては、部分芳香族ポリアミド(B)が、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とから構成されるメタキシリレン基含有ポリアミドである場合は、前記の分子量1000以下の化合物とは、メタキシリレンジアミン、アジピン酸、メタキシリレンジアミンとアジピン酸からなる分子量1000以下の線状オリゴマー、ならびに環状オリゴマーなどである。
【0066】
前記の部分芳香族ポリアミド(B)は、ジアミンとジカルボン酸から生成するアミノカルボン酸塩の水溶液を加圧下および常圧下に加熱し、水および重縮合反応で生ずる水を除去しながら溶融状態で重縮合させる方法、あるいはジアミンとジカルボン酸を加熱し、溶融状態で常圧下に、あるいは引き続き真空下に直接反応させて重縮合させる方法等により製造することができる。
本発明に好適に用いることが出来る、分子量1000以下の化合物含有量が3.5重量%以下の部分芳香族ポリアミド(B)の製造方法について、代表的な例として、メタキシリレン基含有ポリアミドについて以下に説明するが、これに限定されるものではない。
例えば、メタキシリレン基含有ポリアミドは、ジカルボン酸に対してジアミンを過剰に添加することにより、分子量1000以下の化合物の含有量を本発明の範囲内に抑制でき、且つ末端基濃度を調整できる。具体的な方法としては、ジアミンとジカルボン酸から生成するアミノカルボン酸塩をPH値=7.52±0.5の範囲に調整することで製造することができる。また、これらの溶融重縮合反応により得られた前記ポリアミドのチップを固相重合することによって、さらに高粘度のメタキシリレン基含有ポリアミドを得ることができる。
また、ジカルボン酸とジアミンのほぼ等モルの混合物を用いて重縮合して得られたメタキシリレン基含有ポリアミドチップを水やエタノール水溶液などで加熱下に抽出処理を行なうことによっても得ることができる。
前記の部分芳香族ポリアミドの重縮合反応は、回分式反応装置で行っても良いしまた連続式反応装置で行っても良い。
【0067】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)の相対粘度は、下限は好ましくは1.3、より好ましくは1.4、さらに好ましくは1.5、最も好ましくは1.6であり、上限は好ましくは4.0、より好ましくは3.7、特に好ましくは3.5、最も好ましくは3.0である。相対粘度が1.3以下では分子量が小さすぎて、本発明のポリエステル組成物からなる成形体の機械的性質が劣ることがある。逆に相対粘度が4.0以上では、前記ポリアミドの重合に長時間を要し、ポリマーの劣化や好ましくない着色の原因となることがあるだけでなく、生産性が低下しコストアップ要因となることがある。
【0068】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)のチップの形状は、シリンダ−型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は通常1.0〜5mm、好ましくは1.2〜4.5mm、さらに好ましくは1.5〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダ−型の場合は、長さは1.0〜4mm、径は1.0〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は5〜30mg/個の範囲が実用的である。
【0069】
本発明のポリエステル組成物を構成する部分芳香族ポリアミド(B)のゲル化時間は3時間(180分)以上、好ましくは5時間以上、さらに好ましくは7時間以上である。ゲル化時間が3時間未満の部分芳香族ポリアミド(B)を含むポリエステル組成物を用いて得た成形体は、ゲル化物による着色した異物状物を含み、また色も悪くなる。特に延伸成形して得た延伸フィルムや二軸延伸中空成形体では、ゲル状物の存在する個所は正常に延伸されずに肉厚となって、厚み斑の原因となり、商品価値のない成形体が多く発生し、歩留まりを悪くする場合があり、最悪の場合は商品価値のない成形体しか得られないことがある。
【0070】
ゲル化時間は理想的には無限大であるが、500時間以下、さらには200時間以下、特には100時間以下であることが好ましい。ゲル化時間が500時間以上の部分芳香族ポリアミド(B)を製造しようとする際には、高度に精製した原料を用いる、劣化防止剤を大量に必要とする、重合温度を低く保つ必要がある等の生産性に問題が起こることがある。
【0071】
本発明のポリエステル組成物を構成する熱可塑性ポリエステル(A)と部分芳香族ポリアミド(B)との混合割合は、前記熱可塑性ポリエステル(A)100重量部に対して前記部分芳香族ポリアミド(B)0.01重量部〜100重量部であることが好ましい。前記のポリエステル組成物からAA含有量が非常に少なく香味保持性に優れた成形体を得たい場合の部分芳香族ポリアミド(B)の添加量は、前記熱可塑性ポリエステル(A)100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、下限はより好ましくは0.1重量部、さらに好ましくは0.5重量部であり、上限はより好ましくは4重量部、さらに好ましくは3重量部である。またガスバリヤ−性が非常に優れ、かつ実用性を損なわない透明性を持ち、かつAA含有量が非常に少なく香味保持性に優れた成形体を得たい場合は、前記熱可塑性ポリエステル(A)100重量部に対して好ましくは1〜100重量部、下限はより好ましくは3重量部、さらに好ましくは5重量部であり、上限はより好ましくは60重量部、さらに好ましくは30重量部である。
【0072】
部分芳香族ポリアミド(B)の混合量が、熱可塑性ポリエステル(A)100重量部に対して0.01重量部未満の場合は、得られた成形体のAA等の含有量が低減されにくく、成形体内容物の香味保持性が非常に悪くなる場合がある。また、部分芳香族ポリアミド(B)の混合量が、熱可塑性ポリエステル(A)100重量部に対して100重量部を超える場合は、得られた成形体の透明性が非常に悪くなり易く、また成形体の機械的特性も低下することがある。
【0073】
さらには熱劣化によるゲル化を防止するため、リン系の安定剤(C)を添加して重合することも効果的である。
リン系の安定剤(C)は部分芳香族ポリアミド(B)中のリン原子含有量をXとすると、0<X≦400ppmの範囲であることが好ましい。下限は好ましくは0.01ppmであり、より好ましくは0.1ppmであり、さらにより好ましくは、1ppmであり、特に好ましくは3ppmであり、最も好ましくは5ppmで添加することが好ましい。上限は好ましくは300ppmであり、更に好ましくは250ppmであり、特に好ましくは230ppmである。
【0074】
前記、部分芳香族ポリアミド(B)中のリン系の安定剤(C)としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸エチル、上記ホスフィン酸化合物の縮合物などのホスフィン酸化合物、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチルなどの亜ホスホン酸化合物、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウムなどのホスホン酸化合物、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸などの亜リン酸化合物が挙げられる。
また、下記化学式(D)で表されるアルカリ化合物を添加すると、熱安定性が更に向上する。
Z−OR8 (D)
(ただし、Zはアルカリ金属、R8は水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、−C(O)CH3または−C(O)OZ’、(Z’は水素、アルカリ金属))
【0075】
化学式(D)で表されるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、およびアルカリ土類金属を含むアルカリ土類化合物などが挙げられるが、いずれもこれらの化合物に限定されるものではない。
【0076】
本発明に用いられる部分芳香族ポリアミド(B)中の全アルカリ金属の含有量(リン系安定剤(C)に含まれるアルカリ金属原子の量と化学式(D)で表される化合物のアルカリ金属原子の量との合計量)が、同ポリアミド(B)中のリン原子の含有量の1.0〜6.0倍モルであることが好ましい。下限はより好ましくは1.5、さらに好ましくは2.0、特に好ましくは2.3、最も好ましくは2.5倍モルであり、上限はより好ましくは、5.5倍モル、更に好ましくは5.0倍モルである。全アルカリ金属の含有量がリン原子含有量の1.0倍モルより少ないと、ゲル化が促進されやすくなる。一方、全アルカリ金属の含有量がリン原子含有量の6.0倍モルより多いと、重合速度が遅くなり、粘度も充分に上がらず、かつ特に減圧系ではかえってゲル化が促進され不経済である。
【0077】
本発明で使用するリン系の安定剤(C)及び化学式(D)で表される化合物はそれぞれ単独で用いてもよいが、特に併用して用いる方が、ポリエステル組成物の熱安定性が向上するので好ましい。
上記の手段を単独あるいは組み合わせて用いることで、本発明に用いる部分芳香族ポリアミド(B)を得ることができる。
【0078】
また、本発明に用いられる部分芳香族ポリアミド(B)の末端アミノ基濃度(μmol/g)をAEG、また部分芳香族ポリアミド(B)の末端カルボキシル基濃度(μmol/g)をCEGとした場合、CEGに対するAEGの比(AEG/CEG)が、1.0以上であることが好ましい。部分芳香族ポリアミド(B)中の末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比(AEG/CEG)が1.0より小さい場合は、本発明のポリエステル組成物から得られる中空成形体の風味保持性が乏しくなり、このようなポリエステル組成物は低フレーバー飲料用の容器の原材料としては実用性に乏しい場合がある。また、部分芳香族ポリアミド(B)中の末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比(AEG/CEG)が20を超える場合は、得られた成形体の着色が激しくなり商品価値がなくなるので好ましくない。
【0079】
本発明のポリエステル組成物あるいは成形体中のアルデヒド類の含有量は50ppm以下、好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下であることが望ましい。本発明のポリエステル組成物あるいは成形体中のアルデヒド類の含有量が50ppmを超える場合には、ポリエステル成形体の内容物の味や臭いに影響を与え、実用上問題となる。ここで、アルデヒド類とは、熱可塑性ポリエステル(A)がエチレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルの場合はアセトアルデヒドであり、1,3−プロピレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルの場合はアリルアルデヒド(以下、ALAと称することがある)である。
【0080】
特に、本発明のポリエステル組成物の中で、エチレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルやエチレン−2、6−ナフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステル組成物がミネラルウオータや紅茶等の低フレーバー飲料用の容器の材料として用いられる場合には、これらのポリエステル組成物あるいは成形体中のアセトアルデヒド含有量は20ppm以下、好ましくは15ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下であることが好ましい。本発明のポリエステル組成物中のアセトアルデヒド含有量が20ppmを超える場合には、得られた中空成形体等に充填された飲料の風味や臭いに影響を及ぼす場合がある。
【0081】
また本発明のポリエステル成形体中の熱可塑性ポリエステル由来の環状エステルオリゴマーの含有量は、成形体成形時の加熱金型や冷却ロールなどの汚れ、あるいは成形体の内容物の香味保持性などに関係があり、この環状エステルオリゴマーの含有量を低減さすことが重要である。
ここで、熱可塑性ポリエステルは、一般に種々の重合度の環状エステルオリゴマーを含有しているが、本発明でいう環状エステルオリゴマーとは、熱可塑性ポリエステルが含有している環状エステルオリゴマーのうちで最も含有量が高い環状エステルオリゴマーを意味し、例えば、エチレンテレフタレートを主繰返し単位とするポリエステルの場合には、テレフタル酸とエチレングリコールとから構成される環状エステル3量体のことである。
本発明のポリエステル成形体を構成するポリエステルが、エチレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルの場合には、本発明に係る、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トである熱可塑性ポリエステル(A)の環状エステル3量体の含有量は好ましくは0.7重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.4重量%以下である。本発明のポリエステル組成物から耐熱性の中空成形体等を成形する場合、環状エステル3量体の含有量が0.7重量%を超える含有量のポリエステルを使用する場合には、請求項1記載のような、分子量1000以下の化合物の含有量が3.5重量%以下の部分芳香族ポリアミド(B)を用いたとしても、加熱処理条件によっては加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する場合がある。なお、環状エステル3量体の含有量の下限は経済的な製造の面から0.01重量%が好ましく、より好ましくは0.1重量%である。
【0082】
また、本発明に係る、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トである熱可塑性ポリエステル(A)を290℃の温度で60分間溶融した時の環状エステル3量体の増加量が0.50重量%以下であることが望ましい。環状エステル3量体の増加量は好ましくは0.3重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下であることが望ましい。
【0083】
290℃の温度で60分間溶融した時の環状エステル3量体の増加量が0.50重量%を越えるポリエステルを用いると、ポリエステル組成物を成形する際の樹脂溶融時に環状エステル3量体量が増加し、加熱処理条件によっては加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。
なお、290℃の温度で60分間溶融した時の環状エステル3量体の増加量の下限は経済的な製造の面から0.01重量%以上である。
【0084】
290℃の温度で60分間溶融した時の環状エステル3量体の増加量が0.50重量%以下である、本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)は、溶融重縮合後や固相重合後に得られたポリエステルに残存する重縮合触媒を失活処理することにより製造することができる。ポリエステル中の重縮合触媒を失活処理する方法としては、溶融重縮合後や固相重合後にポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。
【0085】
前記の目的を達成するためにポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法を次に述べる。
熱水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えないが、工業的に行うためには連続方式の方が好ましい。
【0086】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水処理する場合は、サイロタイプの処理槽が挙げられる。すなわちバッチ方式でポリエステルのチップをサイロへ受け入れ水処理を行う。ポリエステルのチップを連続方式で水処理する場合は、塔型の処理槽に継続的又は間欠的にポリエステルのチップを上部より受け入れ、水処理させることができる。
【0087】
またポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエチレンテレフタレ−ト1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエチレンテレフタレ−トと水蒸気とを接触させる。
【0088】
この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えない。
ポリエステルのチップをバッチ方式で水蒸気と接触処理をする場合は、サイロタイプの処理装置が挙げられる。すなわちポリエステルのチップをサイロへ受け入れ、バッチ方式で、水蒸気または水蒸気含有ガスを供給し接触処理を行なう。
【0089】
ポリエステルのチップを連続的に水蒸気と接触処理する場合は塔型の処理装置に連続で粒状ポリエチレンテレフタレ−トを上部より受け入れ、並流あるいは向流で水蒸気を連続供給し水蒸気と接触処理させることができる。
上記の如く、水又は水蒸気で処理した場合は、粒状ポリエチレンテレフタレ−トを必要に応じて振動篩機、シモンカ−タ−などの水切り装置で水切りし、コンベヤ−によって次の乾燥工程へ移送する。
【0090】
水又は水蒸気と接触処理したポリエステルのチップの乾燥は、通常用いられるポリエステルの乾燥処理を用いることができる。連続的に乾燥する方法としては、上部よりポリエステルのチップを供給し、下部より乾燥ガスを通気するホッパ−型の通気乾燥機が通常使用される。
バッチ方式で乾燥する乾燥機としては大気圧下で乾燥ガスを通気しながら乾燥してもよい。
乾燥ガスとしては大気空気でも差し支えないが、ポリエステルの加水分解や熱酸化分解による分子量低下を防止する点からは乾燥窒素、除湿空気が好ましい。
【0091】
また重縮合触媒を失活させる別の手段として、リン化合物を溶融重縮合後または固相重合後のポリエステルの溶融物に添加、混合して重合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0092】
また、本発明に用いられる主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トである熱可塑性ポリエステル(A)は、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂0.1ppb〜1000ppmを配合することができる。
【0093】
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)中での前記のポリオレフィン樹脂等の配合割合は、0.1ppb〜1000ppm、好ましくは0.3ppb〜100ppm、より好ましくは0.5ppb〜1ppm、さらに好ましくは0.5ppb〜45ppbである。配合量が0.1ppb未満の場合は、結晶化速度が非常におそくなり、中空成形体の口栓部の結晶化が不十分となるため、サイクルタイムを短くすると口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となったり、また、耐熱性中空成形体を成形する延伸熱固定金型の汚れが激しく、透明な中空成形体を得ようとすると頻繁に金型掃除をしなければならない。また1000ppmを超える場合は、結晶化速度が早くなり、中空成形体の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたり、また中空成形体用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。また、シ−ト状物の場合、1000ppmを越えると透明性が非常に悪くなり、また延伸性もわるくなって正常な延伸が不可能で、厚み斑の大きな、透明性の悪い延伸フィルムしか得られない。
【0094】
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)に配合されるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはα−オレフィン系樹脂が挙げられる。
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)に配合されるポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等(分岐状又は直鎖状)のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン系樹脂が挙げられる。
【0095】
また本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)に配合されるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンと、エチレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、ブロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体等のプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0096】
また本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)に配合されるα−オレフィン系樹脂としては、4−メチルペンテン−1等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、ブテン−1単独重合体、4−メチルペンテン−1単独重合体、ブテン−1−エチレン共重合体、ブテン−1−プロピレン共重合体等のブテン−1系樹脂や4−メチルペンテン−1とC2〜C18のα−オレフィンとの共重合体、等が挙げられる。
【0097】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)に配合されるポリアミド樹脂としては、例えば、ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタムの重合体、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸単位との重縮合体、及びこれらの共重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン8、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/12、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等が挙げられる。
【0098】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)に配合されるポリアセタ−ル樹脂としては、例えばポリアセタ−ル単独重合体や共重合体が挙げられる。ポリアセタ−ル単独重合体としては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.40〜1.42g/cm3、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトフロー比(MFR)が0.5〜50g/10分の範囲のポリアセタ−ルが好ましい。
【0099】
また、ポリアセタ−ル共重合体としては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.38〜1.43g/cm3、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトフロー比(MFR)が0.4〜50g/10分の範囲のポリアセタ−ル共重合体が好ましい。これらの共重合成分としては、エチレンオキサイドや環状エ−テルが挙げられる。
【0100】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)に配合されるでポリブチレンテレフタレ−ト樹脂としては、例えばテレフタル酸と1,4−ブタンジオ−ルからなるポリブチレンテレフタレ−ト単独重合体やこれにナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル等を共重合した共重合体が挙げられる。
【0101】
また、本発明において用いられる前記のポリオレフィン樹脂等を配合した熱可塑性ポリエステルは、前記ポリエステルに前記のポリオレフィン等の樹脂を、その含有量が前記範囲となるように、直接に添加し溶融混練する方法、または、マスタ−バッチとして添加し溶融混練する方法等の慣用の方法によるほか、前記のポリオレフィン等の樹脂を、前記ポリエステルの製造段階、例えば、溶融重縮合時、溶融重縮合直後、予備結晶化直後、固相重合時、固相重合直後等のいずれかの段階、または、製造段階を終えてから成形段階に到るまでの間に粉粒体として直接に添加するか、或いは、ポリエステルチップの流動条件下に前記のポリオレフィン等の樹脂製の部材に接触させる等の方法で混入させた後、溶融混練する方法等によることもできる。
【0102】
ここで、ポリエステルチップ状体を流動条件下に前記のポリオレフィン等の樹脂製の部材に接触させる方法としては、前記のポリオレフィン等の樹脂製の部材が存在する空問内で、ポリエステルチップを前記の部材に衝突接触させることが好ましく、具体的には、例えば、ポリエステルの溶融重縮合直後、予備結晶化直後、固相重合直後等の製造工程時、また、ポリエステルチップの製品としての輸送段階等での輸送容器充填・排出時、また、ポリエステルチップの成形段階での成形機投入時、等における気力輸送配管、重力輸送配管、サイロ、マグネットキャッチャ−のマグネット部等の一部を前記のポリオレフィン等の樹脂製とするか、または、前記のポリオレフィン等の樹脂をライニングするとか、或いは前記移送経路内に棒状又は網状体等の前記のポリオレフィン等の樹脂製部材を設置する等して、ポリエステルチップを移送する方法が挙げられる。ポリエステルチップの前記部材との接触時間は、通常、0.01秒〜数分程度の極短時間であるが、ポリエステルに前記のポリオレフィン等の樹脂を微量混入させることができる。
【0103】
また本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)中に共重合されたジアルキレングリコール含有量は、前記熱可塑性ポリエステルを構成するグリコ−ル成分の好ましくは0.5〜5.0モル%、より好ましくは1.0〜4.0モル%、さらに好ましくは1.5〜3.0モル%である。ジアルキレングリコ−ル量が5.0モル%を越える場合は、熱安定性が悪くなり、成型時に分子量低下が大きくなったり、またホルムアルデヒド、アセトアルデヒドやアリルアルデヒドなどのアルデヒド類の含有量の増加量が大となり好ましくない。またジアルキレングリコ−ル含有量が0.5モル%未満の熱可塑性ポリエステルを製造するには、エステル交換条件、エステル化条件あるいは重合条件として非経済的な製造条件を選択することが必要となり、コストが合わない。ここで、熱可塑性ポリエステル(A)中に共重合されたジアルキレングリコールとは、例えば、主たる構成単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルの場合には、グリコールであるエチレングリコールから製造時に副生したジエチレングリコ−ルのうちで、前記熱可塑性ポリエステル(A)に共重合したジエチレングリコ−ル(以下、DEGと略称する)のことであり、1,3−プロピレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルの場合には、グリコールである1,3−プロピレングリコールから製造時に副生したジ(1,3−プロピレングリコ−ル)(またはビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル)のうちで、前記熱可塑性ポリエステル(A)に共重合したジ(1,3−プロピレングリコ−ル(以下、DPGと称する))のことである。
【0104】
本発明のポリエステル組成物において、部分芳香族ポリアミドとしてメタキシリレン基含有環状アミドを用いる場合は、前記ポリエステル組成物を成形してなる成形体中のメタキシリレン基含有環状アミド1量体の含有量が0.5重量%以下、好ましくは0.4重量%以下、さらに好ましくは0.3重量%以下であることが望ましい。メタキシリレン基含有環状アミド1量体の含有量が0.5重量%を超える場合は、得られた成形体内容物の香味保持性が悪くなることがあり、また本発明のポリエステル組成物から耐熱性の中空成形体等を成形する場合には、成形体成形時の金型内面や金型のガスの排気口、排気管に異物が付着するために生じる金型汚れが非常に激しくなる場合があることが判った。なお、メタキシリレン基含有環状アミド1量体の含有量は経済的な製造の面から0.001重量%以上が好ましく、より好ましくは0.01重量%以上である。
【0105】
ここで、メタキシリレン基含有ポリアミドがメタキシリレンジアミンとアジピン酸とから構成されるポリアミドである場合は、前記のメタキシリレン基含有環状アミド1量体の化学式は下記の式で表される。
【0106】
【化1】
(上記式1中、n=1(整数)を表す。)
【0107】
本発明のポリエステル組成物は、従来公知の方法により前記の熱可塑性ポリエステル(A)と前記の部分芳香族ポリアミド(B)を混合して得ることができる。例えば、前記のポリアミドチップと前記のポリエステルチップとをタンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等でドライブレンドしたもの、さらにドライブレンドした混合物を一軸押出機、二軸押出機、ニーダー等で1回以上溶融混合したもの、さらには必要に応じて溶融混合物を高真空下または不活性ガス雰囲気下で固相重合したものなどが挙げられる。また、あらかじめ前記の熱可塑性ポリエステル(A)と前記の部分芳香族ポリアミド(B)を溶融混合したものを、前記の熱可塑性ポリエステル(A)とドライブレンドしたもの、さらにドライブレンドした混合物を溶融混合したものが挙げられる。
【0108】
本発明のポリエステル組成物に飽和脂肪酸モノアミド、不飽和脂肪酸モノアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等を同時に併用することも可能である。
飽和脂肪酸モノアミドの例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。不飽和脂肪酸モノアミドの例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドリシノ−ル酸アミド等が挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド等が挙げられる。また、不飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられる。好ましいアミド系化合物は、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等である。このようなアミド化合物の配合量は、10ppb〜1×105ppmの範囲であることが好ましい。
【0109】
また炭素数8〜33の脂肪族モノカルボン酸の金属塩化合物、例えばナフテン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、リノ−ル酸等の飽和及び不飽和脂肪酸のリチュウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、及びコバルト塩等を同時に併用することも可能である。これらの化合物の配合量は、10ppb〜300ppmの範囲であることが好ましい。
【0110】
本発明のポリエステル組成物には、必要に応じて他の添加剤、例えば、公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸素吸収剤、酸素捕獲剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、顔料などの各種の添加剤を配合してもよい。また、紫外線遮断性樹脂、耐熱性樹脂、使用済みポリエチレンテレフタレ−トボトルからの回収品等を適当な割合で混合することも可能である。
【0111】
また、無色透明の樹脂が望ましい用途においては、溶融加工の間に発生するかすかな黄色い色を青色着色剤の添加によって消すことができる。着色剤は重合の間、又は配合の間にブレンド物に直接添加することができる。配合の間に添加される場合には、着色剤はそのまま添加することもできるし、マスターバッチなどのような濃縮物として添加することもできる。着色剤の量は、その吸光係数およびその用途に望ましい色に調整することができる。好ましい着色剤としては、1−シアノ−6−(4−(2−ヒドロキシエチル)アニリノ)−3−メチル−3H−ジベンゾ(F,I,J)−イソキノリン−2,7−ジオンが挙げられる。着色剤の添加量は2〜30ppmの範囲であることが好ましい。
【0112】
また、本発明のポリエステル組成物をフィルム用途に使用する場合には、滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性を改善するために、ポリエステル組成物中に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の無機粒子、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等の有機塩粒子やジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体等の架橋高分子粒子などの不活性粒子を含有させることが出来る。
【0113】
本発明のポリエステル組成物は、一般的に用いられる溶融成形法を用いてフィルム、シート、容器、その他の包装材料を成形することができる。本発明のポリエステル組成物からなる延伸フィルムは射出成形もしくは押出成形して得られたシート状物を、通常PETの延伸に用いられる一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のうちの任意の延伸方法を用いて成形される。また圧空成形、真空成形によリカップ状やトレイ状に成形することもできる。
【0114】
延伸フィルムを製造するに当たっては、延伸温度は通常は80〜130℃である。延伸は一軸でも二軸でもよいが、好ましくはフィルムの実用物性の点から二軸延伸である。延伸倍率は一軸の場合であれば通常1.1〜10倍、好ましくは1.5〜8倍の範囲で行い、二軸延伸であれば縦方向および横方向ともそれぞれ通常1.1〜8倍、好ましくは1.5〜5倍の範囲で行えばよい。また、縦方向倍率/横方向倍率は通常0.5〜2、好ましくは0.7〜1.3である。得られた延伸フィルムは、さらに熱固定して、耐熱性、機械的強度を改善することもできる。熱固定は通常緊張下、120℃〜240、好ましくは150〜230℃で、通常数秒〜数時間、好ましくは数十秒〜数分間行われる。
【0115】
中空成形体を製造するにあたっては、本発明のPETから成形したブリフォームを延伸ブロー成形してなるもので、従来PETのブロー成形で用いられている装置を用いることができる。具体的には例えば、射出成形または押出成形で一旦プリフォームを成形し、そのままあるいは口栓部、底部を加工後、それを再加熱し、ホットパリソン法あるいはコールドパリソン法などの二軸延伸ブロー成形法が適用される。この場合の成形温度、具体的には成形機のシリンダー各部およびノズルの温度は通常260〜290℃の範囲である。延伸温度ば通常70〜120℃、好ましくは90〜110℃で、延伸倍率は通常縦方向に1.5〜3.5倍、円周方向に2〜5倍の範囲で行えばよい。得られた中空成形体は、そのまま使用できるが、特に果汁飲料、ウーロン茶などのように熱充填を必要とする飲料の場合には一般的に、さらにブロー金型内で熱固定処理を行い、耐熱性を付与して使用される。熱固定は通常、圧空などによる緊張下、100〜200℃、好ましくは120〜180℃で、数秒〜数時間、好ましくは数秒〜数分間行われる。
【0116】
また、口栓部に耐熱性を付与するために、射出成形または押出成形により得られたプリフォ−ムの口栓部を遠赤外線や近赤外線ヒ−タ設置オ−ブン内で結晶化させたり、あるいはボトル成形後に口栓部を前記のヒ−タで結晶化させる。
【0117】
また、本発明のポリエステル組成物は、積層成形体や積層フィルム等の一構成層としても用いることが出来る。特に、PETとの積層体の形で容器等の製造に使用される。積層成形体の例としては、本発明のポリエステル組成物からなる外層とPET内層との二層から構成される二層構造あるいは本発明のポリエステル組成物からなる内層とPET外層との二層から構成される二層構造の成形体、本発明のポリエステル組成物を含む中間層とPETの外層および最内層から構成される三層構造あるいは本発明のポリエステル組成物を含む外層および最内層とPETの中間層から構成される三層構造の成形体、本発明のポリエステル組成物を含む中間層とPETの最内層、中心層および最内層から構成される五層構造の成形体等が挙げられる。PET層には、他のガスバリア−性樹脂、紫外線遮断性樹脂、耐熱性樹脂、使用済みポリエチレンテレフタレ−トボトルからの回収品等を適当な割合で混合使用することができる。
【0118】
また、その他の積層成形体の例としては、ポリオレフィン等のポリエステル以外の樹脂との積層成形体、紙や金属板等の異種の基材との積層成形体が挙げられる。
前記の積層成形体の厚み及び各層の厚みには特に制限は無い。また前記の積層成形体は、シ−ト状物、フィルム状物、板状物、中空体、容器等、種々の形状で使用可能である。
【0119】
前記の積層体の製造は、樹脂層の種類に対応した数の押出機と多層多種ダイスを使用して共押出しにより行うこともできるし、また樹脂層の種類に対応した数の射出機と共射出ランナ−および射出型を使用して共射出により行うこともできる。
【0120】
本発明のポリエステル組成物は、中空成形体、トレ−、二軸延伸フィルム等の包装材、金属缶被覆用フィルム等として好ましく用いることが出来る。
また、本発明の組成物は、電子レンジおよび/またはオ−ブンレンジ等で食品を調理したり、あるいは冷凍食品を加熱するためのトレイ状容器の用途にも用いることができる。この場合は、ポリエステル組成物からのシ−ト状物をトレイ形状に成形後、熱結晶化させて耐熱性を向上させる。
なお、本発明における、主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0121】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定させるものではない。なお、本明細書中における主な特性値の測定法を以下に説明する。
(評価方法)
【0122】
(1)ポリエステルの極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0123】
(2)ポリエステル中に共重合されたジエチレングリコ−ル含有量(以下[DEG含有量」という)
メタノ−ルにより分解し、ガスクロマトグラフィ−によりDEG量を定量し、全グリコ−ル成分に対する割合(モル%)で表した。
【0124】
(3)ポリエステルの環状エステル3量体の含有量(以下「CT含有量」という)(重量%)
試料300mgをヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロフォルム混合液(容量比=2/3)3mlに溶解し、さらにクロロフォルム30mlを加えて希釈する。これにメタノ−ル15mlを加えてポリマ−を沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミド10mlで定容とし、高速液体クロマトグラフ法により環状エステル3量体を定量した。
【0125】
(4)ポリエステルのアセトアルデヒド含有量(以下「AA含有量」という)(ppm)
試料/蒸留水=1グラム/2ccを窒素置換したガラスアンプルに入れた上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドおよびホルムアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィ−で測定し、濃度をppmで表示した。なお、試料がボトルの場合はボトル胴部を切り取り、約3mm角に切ったものを用いた。
【0126】
(5)ポリエステルの溶融時の環状エステル3量体増加量(△CT量)(重量%)乾燥したポリエステルチップ3gをガラス製試験管に入れ、窒素雰囲気下で290℃のオイルバスに60分浸漬させ溶融させる。溶融時の環状エステル3量体増加量は、次式により求める。
溶融時の環状エステル3量体増加量(重量%)=溶融後の環状エステル3量体含有量(重量%)−溶融前の環状エステル3量体含有量(重量%)
【0127】
(6)メタキシリレン基含有ポリアミドの相対粘度(RV)
試料0.25gを96%硫酸25mlに溶解し、この溶液10mlをオストワルド粘度管にて20℃で測定、下式より求めた。
Rv=t/t0
t0:溶媒の落下秒数
t :試料溶液の落下秒数
【0128】
(7)メタキシリレン基含有ポリアミドの末端アミノ基濃度(AEG,μmol/g)
試料0.5gをフェノール/エタノール混合溶媒(容積比4/1)50mlに室温で溶解させた後、水/エタノール混合溶媒(容積比3/2)20mlを加え、撹拌する。その後、塩酸を用いて中和滴定を行い、末端アミノ基濃度を求めた。
【0129】
(8)メタキシリレン基含有ポリアミドの末端カルボキシル基濃度(CEG,μmol/g)
試料0.5gにベンジルアルコール20mlを加え、170〜180℃のオイルバス中で加熱溶解後、水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定を行い、末端カルボキシル基濃度を求めた。
【0130】
(9)メタキシリレン基含有環状アミド1量体の含有量(CM含有量)(重量%)
試料100mgをヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロフォルム混合液(容量比=2/3)3mlに溶解し、さらにクロロフォルム20mlを加えて希釈し、メタノ−ル10mlを加える。これをエバポレ−タにより濃縮し、ジメチルフォルムアミド20mlに再溶解する。遠心濾過後、高速液体クロマトグラフ法により定量した。
【0131】
(10)メタキシリレン基含有ポリアミド中の分子量1000以下の化合物の含有量(以下「LM含有量」と称する)(重量%)
トリフルオロ酢酸ナトリウムを10mMの濃度で溶解させたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に試料を2mg/mlの濃度で溶解させたものを測定溶液とし、ゲル浸透型クロマトグラフィー(GPC)により測定を行った。測定装置には東ソー(株)製HLC−8220、カラムにTSKgel Super AWM−H(6.0mmID×15cm、東ソー(株)製)×2本を用いた。移動相に上記と同一組成のトリフルオロ酢酸ナトリウムを含むHFIPを用い、注入量20μl、カラム温度40℃、流速0.3ml/minの条件で測定を行った。分子量の算出は標準ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いて、PMMA換算で算出した。この際、得られたクロマトグラムのベースライン設定において、ベースラインの終点をPMMA換算分子量1000以下の成分の溶出が終わる保持時間に設定した。LM含有量は、全成分ピーク面積に対するPMMA換算分子量1000以下の成分ピーク面積比で求めた。
【0132】
(11)ファインの含有量の測定(ppm)
樹脂約0.5kgを、JIS−Z8801による呼び寸法1.7mmの金網をはった篩(直径30cm)の上に乗せ、テラオカ社製揺動型篩い振トウ機SNF−7で1800rpmで1分間篩った。この操作を繰り返し、樹脂を合計20kg篩った。
篩の下にふるい落とされたファインは、イオン交換水で洗浄し岩城硝子社製G1ガラスフィルターで濾過して集めた。これらをガラスフィルターごと乾燥器内で100℃で2時間乾燥後、冷却して秤量した。再度、イオン交換水で洗浄、乾燥の同一操作を繰り返し、恒量になったことを確認し、この重量からガラスフィルターの重量を引き、ファイン重量を求めた。ファイン含有量は、ファイン重量/篩いにかけた全樹脂重量、である。
【0133】
(12)金型汚れの評価
窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥したポリエステルの所定量および窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥したメタキシリレン基含有ポリアミドチップの所定量を用いて、各機製作所製M−150C(DM)射出成型機により樹脂温度285℃でプリフォ−ムを成形した。このプリフォ−ムの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた後、コ−ポプラスト社製LB−01E延伸ブロ−成型機を用いて二軸延伸ブロ−成形し、引き続き約145℃に設定した金型内で熱固定し、1000ccの中空成形体を得た。同様の条件で2000本の中空成形体を連続的に延伸ブロ−成形し、その前後における金型表面の状態を目視で観察し、下記のように評価した。
○ : 連続成形試験の前後において変化なし
△ : 連続成形試験後にかなり付着物あり
× : 連続成形試験後に付着物が非常に多い
【0134】
(13)中空成形体の透明性
(12)の2000本成形後に得られた中空成形体の外観を目視で観察し、下記のように評価した。
◎ : 透明である
○ : 実用的な範囲で透明である
× : 透明性に劣る
【0135】
(14)官能試験
上記の中空成形体に沸騰した蒸留水を入れ密栓後30分保持し、室温へ冷却し室温で1ヶ月間放置し、開栓後風味、臭いなどの試験を行った。比較用のブランクとして、蒸留水を使用。官能試験は10人のパネラーにより次の基準により実施し、平均値で比較した。
(評価基準)
0:異味、臭いを感じない
1:ブランクとの差をわずかに感じる
2:ブランクとの差を感じる
3:ブランクとのかなりの差を感じる
4:ブランクとの非常に大きな差を感じる
【0136】
(15)酸素透過量(cc/容器1本・24hr・atm)
Modern Controls社製酸素透過量測定器OX−TRAN100により、1000ccのボトル1本当りの透過量として20℃、0%RHで測定した。
【0137】
(実施例および比較例に使用したポリエチレンテレフタレ−ト(PET))
試験に用いたPET(チップの密度=1.398〜1.420g/cm3、Ge残存量=約42ppm、P残存量=約36ppm)の特性を表1に示す。これらは、すべて連続溶融重縮合−固相重合装置で重合したものである。
PET(a)は、固相重合後イオン交換水中で約90℃で3時間、熱水処理したものである。
なお、PET(a)、PET(b)のDEG含有量はすべて約2.5モル%、ファイン含有量はすべて約30ppm以下であった。
【0138】
【表1】
【0139】
(実施例および比較例に使用したメタキシリレン基含有ポリアミド(Ny−MXD6))
【0140】
MXD6(c)の製造方法
攪拌機、分縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた内容積250リットルの調製缶に、精秤したメタキシリレンジアミン27.66kg、アジピン酸29.65kg、を内温85℃にて調合し、スラリー状の透明な溶液とした。缶内のPH値を7.98に調製した後、末端停止剤としてNaOH 34.09g、NaH2PO2・H2O 25.81gを投入して15分攪拌した。その溶液を内容積270リットルの反応缶に移送し、缶内温度260℃、缶内圧1.0MPaの条件下で攪拌して反応させた。留出する水を系外に除き、缶内温度が235℃になった時点で、缶内圧を60分間かけて常圧に戻した。常圧で攪拌を行い、目標粘度に達した時点で攪拌を停止し、20分間放置した。その後、反応缶下部の取り出し口より溶融樹脂を取り出し、冷却固化させてストランドカッターにて樹脂チップを得た。得られた樹脂の特性を表2に示す。
【0141】
MXD6(d)の製造方法
缶内のPH値を7.02に調整した以外は、MXD6(c)の製造方法と同様にして樹脂チップを得た。得られた樹脂の特性を表2に示す。
【0142】
MXD6(e)の製造方法
缶内のPH値を6.87に調整した以外は、MXD6(c)の製造方法と同様にして樹脂チップを得た。得られた樹脂の特性を表2に示す。
【0143】
【表2】
【0144】
(実施例1)
PET(a)100重量部に対してNy−MXD6(c)0.5重量部を用いて、評価方法(12)の方法により中空成形体を成形し、また金型汚れ評価も行った。
得られた中空成形体の特性及び金型汚れ評価結果を表3に示す。
中空成形体のAA含有量は8ppm、官能試験評価は0.8、外観は実用的な範囲で透明であり、また金型汚れは認められなかった。
【0145】
(実施例2−5、比較例1−3)
実施例1と同様にして、評価方法(12)の方法により中空成形体を成形し、また金型汚れ評価も行った。
得られた中空成形体の特性及び金型汚れ評価結果を表3に示す。
【0146】
【表3】
【0147】
【発明の効果】
本発明のポリエステル組成物によれば、ガスバリヤ−性および/または香味保持性に優れており、成形時での金型汚れを発生させにくいポリエステル組成物が得られる。また耐熱寸法安定性に優れた中空成形体や成形後の寸法安定性に優れたシ−ト状物および延伸フィルムが得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲料用ボトルをはじめとする中空成形容器、フィルム、シ−トなどの成形体の素材として好適に用いられるポリエステル組成物およびそれからなる香味保持性(フレバ−性)に優れた成形体に関するものである。また、中空成形体を成形する際の熱処理金型からの離型性が良好で、金型汚れが少ないポリエステル組成物を与える。特に本発明のポリエステル組成物から得られた成形体は、香味保持性および/またはガスバリヤ−性に優れており、また耐熱寸法安定性に優れた中空成形体や成形後の寸法安定性に優れたシ−ト状物および延伸フィルムを与える。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレ−ト(以下、PETと略称することがある)などのポリエステルは、機械的性質及び化学的性質が共に優れているため、工業的価値が高く、繊維、フィルム、シ−ト、ボトルなどとして広く使用されている。
【0003】
調味料、油、飲料、化粧品、洗剤などの容器の素材としては、充填内容物の種類およびその使用目的に応じて種々の樹脂が採用されている。
これらのうちでポリエステルは機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリヤ−性に優れているので、特にジュ−ス、清涼飲料、炭酸飲料などの飲料充填用容器等の成形体の素材として最適である。
【0004】
このようなポリエステルは、例えば、射出成形機械などの成形機に供給して中空成形体用プリフォ−ムを成形し、このプリフォ−ムを所定形状の金型に挿入し延伸ブロ−成形した後ボトルの胴部を熱処理(ヒ−トセット)して中空成形容器に成形され、さらには必要に応じてボトルの口栓部を熱処理(口栓部結晶化)させるのが一般的である。
【0005】
しかしながら、PETは、溶融重縮合時の副生物としてアセトアルデヒド(以下、AAと略称することがある)を含有する。また、PETは、中空成形体等の成形体を熱成形する際に熱分解によりアセトアルデヒドを生成し、得られた成形体の材質中のアセトアルデヒド含有量が多くなり、中空成形体等に充填された飲料等の風味や臭いに影響を及ぼす。
【0006】
したがって、従来よりポリエステル成形体中のアセトアルデヒド含有量を低減させるために種々の方策が採られてきた。一般的には、溶融重縮合したポリエステルを固相重合することによってAA含有量を低下させる方法、融点がより低い共重合ポリエステルを使用して成形時のAA生成を低下させる方法、熱成形時における成形温度を可及的に低くする方法および熱成形時におけるせん断応力を可及的に小さくする方法等がとられている。
【0007】
近年、ポリエチレンテレフタレ−トを中心とするポリエステル製容器は、ミネラルウオ−タやウ−ロン茶等の低フレ−バ−飲料用の容器として使用されるようになってきた。このような飲料の場合は、一般にこれらの飲料を熱充填したり、あるいは充填後加熱して殺菌されるが、前記の方法によるポリエステル成形体材質中のAA含有量低減だけでは、これらの容器内容物の風味や臭いが改善されないことがわかってきた。
【0008】
また、例えば、ポリエステル樹脂100重量部に対して、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂0.05重量部以上、1重量部未満を添加したポリエステル組成物を用いる方法(特許文献1参照)や、熱可塑性ポリエステルに、末端アミノ基濃度をある範囲に規制した特定のポリアミドを含有させたポリエステル組成物からなるポリエステル製容器(特許文献2参照)が提案されているが、ミネラルウオ−タ等の低フレ−バ−飲料用の容器の材料としては不十分な場合があることが判ってきた。
【0009】
一方、PETを主体とするポリエステル成形体は前記の通りガスバリヤ−性に優れているが、ビタミンC等のように酸素に非常に敏感な化合物を含有する内容物用の中空成形体等としては不満足である。
【0010】
このような問題点を解決するために、例えば、我々は、ポリエステル樹脂100重量部に対して、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂1〜100重量部を含有させたポリエステル中空成形体(特許文献3参照)を提案した。しかしながら、このようなポリエステル組成物からなる中空成形体に充填された飲料、特に低フレーバ−飲料の風味や臭いが問題となることがあることが判ってきた。
【0011】
また、このようなポリエステル組成物を用いて耐熱性中空成形体を製造する際に前記の中空成形体の胴部を熱処理するが、金型内面や金型のガスの排気口、排気管に異物が付着する金型汚れが、ポリエステル樹脂のみを用いて成形する場合に比べて非常に発生しやすいと言う問題があり、未解決である。
【0012】
【特許文献1】
特公平6−6662号公報
【特許文献2】
特公平4−71425号公報
【特許文献3】
特公平4−54702号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の従来技術の問題点を解決することにあり、ガスバリヤ−性および/または香味保持性に優れた成形体を提供することを目的としている。また、本発明は、成形時での金型汚れを発生させにくいポリエステル組成物を提供することも目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のポリエステル組成物は、熱可塑性ポリエステル(A)100重量部と、部分芳香族ポリアミド(B)0.01〜100重量部とからなるポリエステル組成物であって、該部分芳香族ポリアミド(B)中の分子量1000以下の化合物の含有量が3.5重量%以下であることを特徴とするポリエステル組成物である。
【0015】
この場合において、前記熱可塑性ポリエステル(A)が、エチレンテレフタレ−トを主たる繰り返し単位とするポリエステルであることができる。
【0016】
この場合において、部分芳香族ポリアミド(B)が、メタキシリレンジアミンとジカルボン酸とから誘導される構成単位を分子鎖中に20モル%以上含有するポリアミドであることができる。
この場合において、DSC(示差走査熱量計)で測定した、前記部分芳香族ポリアミド(B)の二次転移点が、50〜120℃であることが好ましい。
【0017】
この場合において、前記のポリエステル組成物中のアセトアルデヒド含有量が20ppm以下であることができる。
【0018】
この場合において、前記の主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステル(A)が含有する環状エステル3量体の含有量が、0.7重量%以下であることができる。
この場合において、前記の主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル(A)を290℃の温度で60分間溶融した時の環状エステル3量体の増加量が、0.50重量%以下であることができる。
【0019】
この場合において、本発明の成形体は、上記のいずれかに記載のポリエステル組成物を成形してなることを特徴とする成形体である。
この場合において、ポリエステル組成物を成形してなる成形体中のメタキシリレン基含有環状アミド1量体の含有量が0.5重量%以下であることができる。また前記の本発明の成形体は、中空成形体、シ−ト状物あるいはこのシート状物を少なくとも一方向に延伸してなる延伸フイルムのいずれかであることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリエステル組成物およびそれからなる成形体の実施の形態を具体的に説明する。
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)は、芳香族ジカルボン酸成分とグリコ−ル成分とからなる構成単位を50モル%以上含む熱可塑性ポリエステルであり、好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の70モル%以上含む熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくは85モル%以上、特に好ましくは芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の90モル%以上、最も好ましくは95モル%以上含む熱可塑性ポリエステルである。
【0021】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)を構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体等が挙げられる。
【0022】
また本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)を構成するグリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ル、トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ルなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル等が挙げられる。
【0023】
前記熱可塑性ポリエステル(A)中に共重合して使用される酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマ−酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0024】
前記熱可塑性ポリエステル(A)中に共重合して使用されるグリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ル、1,3−トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコ−ル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリブチレングリコ−ル等のポリアルキレングリコ−ルなどが挙げられる。
【0025】
さらに、熱可塑性ポリエステル(A)が実質的に線状である範囲内で多官能化合物、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、グリセリン、ペンタエリスリト−ル、トリメチロ−ルプロパン等を共重合してもよく、また単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0026】
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)としては、芳香族ジカルボン酸と炭素数が2〜4の脂肪族グリコールから選ばれる少なくとも一種のグリコールとから誘導される構成単位を50モル%以上含むポリエステルが好ましい。
【0027】
本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)の好ましい一例は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含み、共重合成分としてイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4―シクロヘキサンジメタノールなどを含む線状共重合熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上、最も好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を95モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルである。
これら線状熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称)、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート−エチレン−2,6−ナフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレン−2,6−ナフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−ジオキシエチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−1,3−プロピレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレンシクロヘキシレンジカルボキシレート)共重合体などが挙げられる。
【0028】
また本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)の好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン−2、6−ナフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2、6−ナフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2、6−ナフタレ−ト単位を90モル%以上、最も好ましくはエチレン−2,6−ナフタレ−ト単位を95モル%以上含む含む線状熱可塑性ポリエステルである。
これら線状熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリエチレン−2,6―ナフタレート(PEN)、ポリ(エチレン−2,6―ナフタレート−エチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6―ナフタレート−エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6―ナフタレート−エチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6―ナフタレート−ジオキシエチレン−2,6―ナフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート−1,3−プロピレン−2,6−ナフタレート)共重合体などが挙げられる。
【0029】
また本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)の好ましいその他の例としては、主たる構成単位が1,3−プロピレンテレフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくは1,3−プロピレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましくは1,3−プロピレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上、最も好ましくは1,3−プロピレンテレフタレ−ト単位を95モル%以上含む含む線状熱可塑性ポリエステルである。
これら線状熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリプロピレンテレフタレート(PTT)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート−1,3−プロピレンイソフタレート)共重合体、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート−1,3−プロピレンー2,6−ナフタレート)共重合体などが挙げられる。
【0030】
さらにまた本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)の好ましいその他の例としては、主たる構成単位がブチレンテレフタレ−トから構成される熱可塑性ポリエステルであり、さらに好ましくはブチレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状共重合熱可塑性ポリエステルであり、特に好ましいくはブチレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上、最も好ましくはブチレンテレフタレ−ト単位を95モル%以上含む含む線状熱可塑性ポリエステルである。
これら線状熱可塑性ポリエステル(A)の例としては、ポリブチレンテレフタレ−ト(PBT)、ポリ(ブチレンテレフタレート−ブチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(ブレンテレフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(ブレンテレフタレート−ブチレン−2,6−ナフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンテレフタレート−1,3−プロピレンテレフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンテレフタレート−ブチレンシクロヘキシレンジカルボキシレート)共重合体などが挙げられる。
【0031】
前記以外の本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)の好ましいその他の例としては、1,3−プロピレン−2、6−ナフタレ−トから構成される構成単位を30モル%以上含む熱可塑性ポリエステル、ブチレン−2、6−ナフタレ−トから構成される構成単位を30モル%以上含む熱可塑性ポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレーから構成される構成単位を30モル%以上含む熱可塑性ポリエステルなどが挙げられる。
【0032】
前記の熱可塑性ポリエステル(A)は、従来公知の製造方法によって製造することが出来る。即ち、PETの場合には、テレフタ−ル酸とエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Ti化合物またはAl化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、またはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルおよび必要により上記共重合成分をエステル交換触媒の存在下で反応させてメチルアルコ−ルを留去しエステル交換させた後、重縮合触媒としてSb化合物、Ge化合物、Ti化合物またはAl化合物から選ばれた1種またはそれ以上の化合物を用いて、主として減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。
【0033】
さらにポリエステルの極限粘度を増大させ、アセトアルデヒド含有量を低下させるために固相重合を行ってもよい。
前記のエステル化反応、エステル交換反応、溶融重縮合反応および固相重合反応は、回分式反応装置で行っても良いし、また連続式反応装置で行っても良い。
これらいずれの方式においても、溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様、回分式装置や連続式装置で行うことが出来る。溶融重縮合と固相重合は連続で行っても良いし、分割して行ってもよい。
【0034】
前記の出発原料である芳香族ジカルボン酸ジメチルエステル、芳香族ジカルボン酸またはエチレングリコールなどのグリコール類としては、パラキシレンから誘導されるバージンのジメチルテレフタレート、テレフタル酸あるいはエチレンから誘導されるエチレングリコールは勿論のこと、使用済みPETボトルからメタノール分解やエチレングリコール分解などのケミカルリサイクル法により回収したジメチルテレフタレート、テレフタル酸、ビスヒドロキシエチルテレフタレートあるいはエチレングリコールなどの回収原料も、出発原料の少なくとも一部として利用することが出来る。前記回収原料の品質は、使用目的に応じた純度、品質に精製されていなければならないことは言うまでもない。
【0035】
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)の製造に使用されるSb化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレ−ト、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。Sb化合物は、生成ポリマ−中のSb残存量として50〜250ppmの範囲になるように添加する。
【0036】
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)の製造に使用されるGe化合物としては、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等が挙げられる。Ge化合物を使用する場合、その使用量はポリエステル中のGe残存量として5〜150ppm、好ましくは10〜100ppm、更に好ましくは15〜70ppmである。
【0037】
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)の製造に使用されるTi化合物としては、テトラエチルチタネ−ト、テトライソプロピルチタネ−ト、テトラ−n−プロピルチタネ−ト、テトラ−n−ブチルチタネ−ト等のテトラアルキルチタネ−トおよびそれらの部分加水分解物、酢酸チタン、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン、チタンハロゲン化物の加水分解物、シュウ化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸アンモニウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、チタンアセチルアセトナート等が挙げられる。Ti化合物は、生成ポリマ−中のTi残存量として0.1〜50ppmの範囲になるように添加する。
【0038】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)の製造に使用されるAl化合物としては、蟻酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム等のカルボン酸塩、酸化物、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム等の無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド等のアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネ−ト、アルミニウムアセチルアセテ−ト等とのアルミニウムキレ−ト化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物等があげられる。これらのうち酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネ−トが特に好ましい。Al化合物は、生成ポリマ−中のAl残存量として5〜200ppmの範囲になるように添加する。
【0039】
また、本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル(A)の製造において、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を併用してもよい。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、これら元素の酢酸塩等のカルボン酸塩、アルコキサイド等があげられ、粉体、水溶液、エチレングリコ−ル溶液等として反応系に添加される。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、生成ポリマ−中のこれらの元素の残存量として1〜50ppmの範囲になるように添加する。
前記の触媒化合物は、前記のポリエステル生成反応工程の任意の段階で添加することができる。
【0040】
また、安定剤として種々のリン化合物を使用することができる。本発明で使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。具体例としてはリン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニ−ルエステル、リン酸モノメチルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸モノブチルエステル、リン酸ジブチルエステル、亜リン酸、亜リン酸トリメチルエステル、亜リン酸トリエチルエステル、亜リン酸トリブチルエステル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジメチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジエチルエステル、フェニ−ルホスホン酸ジフェニ−ルエステル等であり、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。リン化合物は、生成ポリマ−中のリン残存量として5〜100ppmの範囲になるように前記のポリエステル生成反応工程の任意の段階で添加する。
【0041】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)の製造において、グリコールから副生するジアルキレングリコールの生成を抑制するために塩基性窒素化合物を用いることが好ましい。塩基性窒素化合物としては、脂肪族、脂環式、芳香族および複素環式窒素化合物のいずれでもかまわない。具体例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ジメチルアニリン、ピリジン、キノリン、ジメチルベンジルアミン、ピペリジン、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイド、イミダゾール、イミダゾリン等が挙げられる。これらの化合物は遊離形で用いてもよいし、低級脂肪酸やTPAの塩として用いてもよい。またこれらの塩基性窒素化合物の反応系への添加は、初期重縮合反応が終了するまでの任意の段階で適宜選ぶことが出来、単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
【0042】
これらの塩基性窒素化合物の配合量は、ポリエステル当り0.01〜1モル%、好ましくは0.05〜0.7モル%、更に好ましくは0.1〜0.5モル%である。塩基性窒素化合物の配合量が0.01モル%未満では得られたポリエステルからの中空成形体、特に延伸熱固定中空成形体の透明性が非常に悪くなる。また、1モル%を超えるとポリエステルの色調が悪くなる。
【0043】
また、本発明のポリエステル組成物の溶融時の粘度低下を抑制したり、成形前の乾燥や熱処理時に刺激臭の強いアセトアルデヒドやアリルアルデヒド等の熱分解によって生成する低分子量の副生を抑えるためには、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を添加することも好ましい。このようなヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、公知のものを使用してよく、例示するならばペンタエリスリトール−テトラエキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒド3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチ3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンゼン)イソフタル酸、トリエチルグリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキ3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレン−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフ3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を例示することができる。中でもペンタエリスリトール−テトラエキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒ[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフ3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。この場合ヒンダードフェノール系酸化安定剤は、熱可塑性ポリエステルに結合していてもよく、 ヒンダードフェノール系酸化安定剤のポリエステル組成物中の量としては、ポリエステル組成物の重量に対して、1重量%以下が好ましい。これは、1重量%を越えると着色する場合があることと、1重量%以上添加しても溶融安定性を向上させる能力が飽和するからである。好ましくは、0.02〜0.5重量%である。
【0044】
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)の極限粘度は、好ましくは0.55〜1.50デシリットル/グラム、より好ましくは0.58〜1.10デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.60〜0.90デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.55デシリットル/グラム未満では、得られた成形体等の機械的特性が悪い。また1.50デシリットル/グラムを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、成形体が黄色に着色する等の問題が起こる。
【0045】
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)のチップの形状は、シリンダ−型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は通常1.3〜5mm、好ましくは1.5〜4.5mm、さらに好ましくは1.6〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダ−型の場合は、長さは1.3〜4mm、径は1.3〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は10〜30mg/個の範囲が実用的である。
【0046】
一般的にポリエステルは、製造工程中で発生する、共重合成分及び前記の共重合成分含量がポリエステルのチップと同一のファインをかなりの量含んでいる。このようなファインはポリエステルの結晶化を促進させる性質を持っており、多量に存在する場合には、このようなファインを含むポリエステル組成物から成形した成形体の透明性が非常に悪くなったり、またボトルの場合には、ボトル口栓部結晶化時の収縮量が規定値の範囲内に収まらずキャップで密栓できなくなるという問題が生じる。
【0047】
したがって、本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)中のファインの含有量は1000ppm以下、好ましくは500ppm以下が望ましい。含有量が1000ppmを超える場合は、結晶化速度が早くなり、例えば、中空成形容器の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮量が規定値の範囲内に収まらず、口栓部のキャッピング不良となり、内容物の漏れが生じたり、また中空成形用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる場合がある。
【0048】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)は、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンとから誘導される単位を主構成単位とするポリアミド、または芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとから誘導される単位を主構成単位とするポリアミドである。
【0049】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)を構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニ−ル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸及びその機能的誘導体等が挙げられる。
【0050】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)を構成する脂肪族ジカルボン酸成分としては、直鎖状の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、さらに炭素数4〜12のアルキレン基を有する直鎖状脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。このような直鎖状脂肪族ジカルボン酸の例としては、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スぺリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカジオン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸およびこれらの機能的誘導体などを挙げることができる。
【0051】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)を構成する芳香族ジアミン成分としては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、パラ−ビス−(2−アミノエチル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0052】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)を構成する脂肪族ジアミン成分としては、炭素数2〜12の脂肪族ジアミンあるいはその機能的誘導体である。脂肪族ジアミンは直鎖状の脂肪族ジアミンであっても分岐を有する鎖状の脂肪族ジアミンであってもよい。このような直鎖状の脂肪族ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、1−メチルエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0053】
また本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)を構成するジカルボン酸成分として、上記のような芳香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸以外に脂環族ジカルボン酸を使用することもできる。脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
【0054】
また本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)を構成するジアミン成分として、上記のような芳香族ジアミンや脂肪族ジアミン以外に脂環族ジアミンを使用することもできる。脂環族ジアミンとしては、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4‘−アミノヘキシル)メタン等の脂環族ジアミンが挙げられる。
【0055】
前記のジアミン及び、ジカルボン酸以外にも、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等も共重合成分として使用できる。とりわけ、ε−カプロラクタムの使用が望ましい。
【0056】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)の好ましい例としては、メタキシリレンジアミン、もしくはメタキシリレンジアミンと全量の30%以下のパラキシリレンジアミンを含む混合キシリレンジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから誘導される構成単位を分子鎖中に少なくとも30モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、特に好ましくは70モル%以上、最も好ましくは80モル%以上含有するメタキシリレン基含有ポリアミドである。
【0057】
また本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)は、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3塩基以上の多価カルボン酸から誘導される構成単位を実質的に線状である範囲内で含有していてもよい。
【0058】
これらポリアミドの例としては、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスペラミド等のような単独重合体、及びメタキシリレンジアミン/アジピン酸/イソフタル酸共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピペラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体、メタキシリレンジアミン/アジピン酸/イソフタル酸/ε−カプロラクタム共重合体、メタキシリレンジアミン/アジピン酸/イソフタル酸/ω―アミノカプロン酸共重合体等が挙げられる。
【0059】
また本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)の好ましいその他の例としては、脂肪族ジアミンとテレフタル酸またはイソフタル酸から選ばれた少なくとも一種の酸とから誘導される構成単位を分子鎖中に少なくとも30モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、特に好ましくは70モル%以上、最も好ましくは80モル%以上含有するポリアミドである。
【0060】
これらポリアミドの例としては、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/イソフタル酸共重合体、ポリノナメチレンテレフタルアミド、ポリノナメチレンイソフタルアミド、ノナメチレンジアミン/テレフタル酸/イソフタル酸共重合体、ノナメチレンジアミン/テレフタル酸/アジピン酸共重合体等が挙げられる。
【0061】
また本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)の好ましいその他の例としては、脂肪族ジアミンとテレフタル酸またはイソフタル酸から選ばれた少なくとも一種の酸以外に、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等を共重合成分として使用して得た、脂肪族ジアミンとテレフタル酸またはイソフタル酸から選ばれた少なくとも一種の酸とから誘導される構成単位を分子鎖中に少なくとも30モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、特に好ましくは70モル%以上含有するポリアミドである。
【0062】
これらポリアミドの例としては、ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/ε−カプロラクタム共重合体、ヘキサメチレンジアミン/イソフタル酸/ε−カプロラクタム共重合体、ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/アジピン酸/ε−カプロラクタム共重合体等が挙げられる。
【0063】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)は、DSC(示差走査熱量計)で測定した、前記部分芳香族ポリアミド(B)の二次転移点が、50〜120℃であることが好ましい。二次転移点が50℃未満の場合は、乾燥工程や熱可塑性ポリエステルとの押出し時に融着したり、また定量的に押出せなかったりするので好ましくない。また120℃を越える場合には、ポリエステル組成物を延伸する際に均一に延伸されないで厚み斑などが生じて好ましくない。
【0064】
本発明に係わる部分芳香族ポリアミド(B)中の分子量1000以下の化合物の含有量は3.5重量%以下であることが好ましい。より好ましい上限は3.3%であり、更に好ましい上限は3.1%である。部分芳香族ポリアミド(B)中の分子量1000以下の化合物の含有量が3.5重量%より多いと、本発明のポリエステル組成物から得られた中空成形体等に充填された飲料の風味や臭いに影響を及ぼすだけでなく、加熱処理条件によっては加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化することがある。
【0065】
部分芳香族ポリアミド(B)中の分子量1000以下の化合物とは、例えば、部分芳香族ポリアミド(B)が芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとから構成されるポリアミドである場合には、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジアミン、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとからなる分子量1000以下の線状オリゴマー、ならびに環状オリゴマーなどである。具体例としては、部分芳香族ポリアミド(B)が、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とから構成されるメタキシリレン基含有ポリアミドである場合は、前記の分子量1000以下の化合物とは、メタキシリレンジアミン、アジピン酸、メタキシリレンジアミンとアジピン酸からなる分子量1000以下の線状オリゴマー、ならびに環状オリゴマーなどである。
【0066】
前記の部分芳香族ポリアミド(B)は、ジアミンとジカルボン酸から生成するアミノカルボン酸塩の水溶液を加圧下および常圧下に加熱し、水および重縮合反応で生ずる水を除去しながら溶融状態で重縮合させる方法、あるいはジアミンとジカルボン酸を加熱し、溶融状態で常圧下に、あるいは引き続き真空下に直接反応させて重縮合させる方法等により製造することができる。
本発明に好適に用いることが出来る、分子量1000以下の化合物含有量が3.5重量%以下の部分芳香族ポリアミド(B)の製造方法について、代表的な例として、メタキシリレン基含有ポリアミドについて以下に説明するが、これに限定されるものではない。
例えば、メタキシリレン基含有ポリアミドは、ジカルボン酸に対してジアミンを過剰に添加することにより、分子量1000以下の化合物の含有量を本発明の範囲内に抑制でき、且つ末端基濃度を調整できる。具体的な方法としては、ジアミンとジカルボン酸から生成するアミノカルボン酸塩をPH値=7.52±0.5の範囲に調整することで製造することができる。また、これらの溶融重縮合反応により得られた前記ポリアミドのチップを固相重合することによって、さらに高粘度のメタキシリレン基含有ポリアミドを得ることができる。
また、ジカルボン酸とジアミンのほぼ等モルの混合物を用いて重縮合して得られたメタキシリレン基含有ポリアミドチップを水やエタノール水溶液などで加熱下に抽出処理を行なうことによっても得ることができる。
前記の部分芳香族ポリアミドの重縮合反応は、回分式反応装置で行っても良いしまた連続式反応装置で行っても良い。
【0067】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)の相対粘度は、下限は好ましくは1.3、より好ましくは1.4、さらに好ましくは1.5、最も好ましくは1.6であり、上限は好ましくは4.0、より好ましくは3.7、特に好ましくは3.5、最も好ましくは3.0である。相対粘度が1.3以下では分子量が小さすぎて、本発明のポリエステル組成物からなる成形体の機械的性質が劣ることがある。逆に相対粘度が4.0以上では、前記ポリアミドの重合に長時間を要し、ポリマーの劣化や好ましくない着色の原因となることがあるだけでなく、生産性が低下しコストアップ要因となることがある。
【0068】
本発明に係る部分芳香族ポリアミド(B)のチップの形状は、シリンダ−型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は通常1.0〜5mm、好ましくは1.2〜4.5mm、さらに好ましくは1.5〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダ−型の場合は、長さは1.0〜4mm、径は1.0〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は5〜30mg/個の範囲が実用的である。
【0069】
本発明のポリエステル組成物を構成する部分芳香族ポリアミド(B)のゲル化時間は3時間(180分)以上、好ましくは5時間以上、さらに好ましくは7時間以上である。ゲル化時間が3時間未満の部分芳香族ポリアミド(B)を含むポリエステル組成物を用いて得た成形体は、ゲル化物による着色した異物状物を含み、また色も悪くなる。特に延伸成形して得た延伸フィルムや二軸延伸中空成形体では、ゲル状物の存在する個所は正常に延伸されずに肉厚となって、厚み斑の原因となり、商品価値のない成形体が多く発生し、歩留まりを悪くする場合があり、最悪の場合は商品価値のない成形体しか得られないことがある。
【0070】
ゲル化時間は理想的には無限大であるが、500時間以下、さらには200時間以下、特には100時間以下であることが好ましい。ゲル化時間が500時間以上の部分芳香族ポリアミド(B)を製造しようとする際には、高度に精製した原料を用いる、劣化防止剤を大量に必要とする、重合温度を低く保つ必要がある等の生産性に問題が起こることがある。
【0071】
本発明のポリエステル組成物を構成する熱可塑性ポリエステル(A)と部分芳香族ポリアミド(B)との混合割合は、前記熱可塑性ポリエステル(A)100重量部に対して前記部分芳香族ポリアミド(B)0.01重量部〜100重量部であることが好ましい。前記のポリエステル組成物からAA含有量が非常に少なく香味保持性に優れた成形体を得たい場合の部分芳香族ポリアミド(B)の添加量は、前記熱可塑性ポリエステル(A)100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、下限はより好ましくは0.1重量部、さらに好ましくは0.5重量部であり、上限はより好ましくは4重量部、さらに好ましくは3重量部である。またガスバリヤ−性が非常に優れ、かつ実用性を損なわない透明性を持ち、かつAA含有量が非常に少なく香味保持性に優れた成形体を得たい場合は、前記熱可塑性ポリエステル(A)100重量部に対して好ましくは1〜100重量部、下限はより好ましくは3重量部、さらに好ましくは5重量部であり、上限はより好ましくは60重量部、さらに好ましくは30重量部である。
【0072】
部分芳香族ポリアミド(B)の混合量が、熱可塑性ポリエステル(A)100重量部に対して0.01重量部未満の場合は、得られた成形体のAA等の含有量が低減されにくく、成形体内容物の香味保持性が非常に悪くなる場合がある。また、部分芳香族ポリアミド(B)の混合量が、熱可塑性ポリエステル(A)100重量部に対して100重量部を超える場合は、得られた成形体の透明性が非常に悪くなり易く、また成形体の機械的特性も低下することがある。
【0073】
さらには熱劣化によるゲル化を防止するため、リン系の安定剤(C)を添加して重合することも効果的である。
リン系の安定剤(C)は部分芳香族ポリアミド(B)中のリン原子含有量をXとすると、0<X≦400ppmの範囲であることが好ましい。下限は好ましくは0.01ppmであり、より好ましくは0.1ppmであり、さらにより好ましくは、1ppmであり、特に好ましくは3ppmであり、最も好ましくは5ppmで添加することが好ましい。上限は好ましくは300ppmであり、更に好ましくは250ppmであり、特に好ましくは230ppmである。
【0074】
前記、部分芳香族ポリアミド(B)中のリン系の安定剤(C)としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸エチル、上記ホスフィン酸化合物の縮合物などのホスフィン酸化合物、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチルなどの亜ホスホン酸化合物、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウムなどのホスホン酸化合物、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸などの亜リン酸化合物が挙げられる。
また、下記化学式(D)で表されるアルカリ化合物を添加すると、熱安定性が更に向上する。
Z−OR8 (D)
(ただし、Zはアルカリ金属、R8は水素、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、−C(O)CH3または−C(O)OZ’、(Z’は水素、アルカリ金属))
【0075】
化学式(D)で表されるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、およびアルカリ土類金属を含むアルカリ土類化合物などが挙げられるが、いずれもこれらの化合物に限定されるものではない。
【0076】
本発明に用いられる部分芳香族ポリアミド(B)中の全アルカリ金属の含有量(リン系安定剤(C)に含まれるアルカリ金属原子の量と化学式(D)で表される化合物のアルカリ金属原子の量との合計量)が、同ポリアミド(B)中のリン原子の含有量の1.0〜6.0倍モルであることが好ましい。下限はより好ましくは1.5、さらに好ましくは2.0、特に好ましくは2.3、最も好ましくは2.5倍モルであり、上限はより好ましくは、5.5倍モル、更に好ましくは5.0倍モルである。全アルカリ金属の含有量がリン原子含有量の1.0倍モルより少ないと、ゲル化が促進されやすくなる。一方、全アルカリ金属の含有量がリン原子含有量の6.0倍モルより多いと、重合速度が遅くなり、粘度も充分に上がらず、かつ特に減圧系ではかえってゲル化が促進され不経済である。
【0077】
本発明で使用するリン系の安定剤(C)及び化学式(D)で表される化合物はそれぞれ単独で用いてもよいが、特に併用して用いる方が、ポリエステル組成物の熱安定性が向上するので好ましい。
上記の手段を単独あるいは組み合わせて用いることで、本発明に用いる部分芳香族ポリアミド(B)を得ることができる。
【0078】
また、本発明に用いられる部分芳香族ポリアミド(B)の末端アミノ基濃度(μmol/g)をAEG、また部分芳香族ポリアミド(B)の末端カルボキシル基濃度(μmol/g)をCEGとした場合、CEGに対するAEGの比(AEG/CEG)が、1.0以上であることが好ましい。部分芳香族ポリアミド(B)中の末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比(AEG/CEG)が1.0より小さい場合は、本発明のポリエステル組成物から得られる中空成形体の風味保持性が乏しくなり、このようなポリエステル組成物は低フレーバー飲料用の容器の原材料としては実用性に乏しい場合がある。また、部分芳香族ポリアミド(B)中の末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比(AEG/CEG)が20を超える場合は、得られた成形体の着色が激しくなり商品価値がなくなるので好ましくない。
【0079】
本発明のポリエステル組成物あるいは成形体中のアルデヒド類の含有量は50ppm以下、好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下であることが望ましい。本発明のポリエステル組成物あるいは成形体中のアルデヒド類の含有量が50ppmを超える場合には、ポリエステル成形体の内容物の味や臭いに影響を与え、実用上問題となる。ここで、アルデヒド類とは、熱可塑性ポリエステル(A)がエチレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルの場合はアセトアルデヒドであり、1,3−プロピレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルの場合はアリルアルデヒド(以下、ALAと称することがある)である。
【0080】
特に、本発明のポリエステル組成物の中で、エチレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルやエチレン−2、6−ナフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステル組成物がミネラルウオータや紅茶等の低フレーバー飲料用の容器の材料として用いられる場合には、これらのポリエステル組成物あるいは成形体中のアセトアルデヒド含有量は20ppm以下、好ましくは15ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下であることが好ましい。本発明のポリエステル組成物中のアセトアルデヒド含有量が20ppmを超える場合には、得られた中空成形体等に充填された飲料の風味や臭いに影響を及ぼす場合がある。
【0081】
また本発明のポリエステル成形体中の熱可塑性ポリエステル由来の環状エステルオリゴマーの含有量は、成形体成形時の加熱金型や冷却ロールなどの汚れ、あるいは成形体の内容物の香味保持性などに関係があり、この環状エステルオリゴマーの含有量を低減さすことが重要である。
ここで、熱可塑性ポリエステルは、一般に種々の重合度の環状エステルオリゴマーを含有しているが、本発明でいう環状エステルオリゴマーとは、熱可塑性ポリエステルが含有している環状エステルオリゴマーのうちで最も含有量が高い環状エステルオリゴマーを意味し、例えば、エチレンテレフタレートを主繰返し単位とするポリエステルの場合には、テレフタル酸とエチレングリコールとから構成される環状エステル3量体のことである。
本発明のポリエステル成形体を構成するポリエステルが、エチレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルの場合には、本発明に係る、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トである熱可塑性ポリエステル(A)の環状エステル3量体の含有量は好ましくは0.7重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.4重量%以下である。本発明のポリエステル組成物から耐熱性の中空成形体等を成形する場合、環状エステル3量体の含有量が0.7重量%を超える含有量のポリエステルを使用する場合には、請求項1記載のような、分子量1000以下の化合物の含有量が3.5重量%以下の部分芳香族ポリアミド(B)を用いたとしても、加熱処理条件によっては加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する場合がある。なお、環状エステル3量体の含有量の下限は経済的な製造の面から0.01重量%が好ましく、より好ましくは0.1重量%である。
【0082】
また、本発明に係る、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トである熱可塑性ポリエステル(A)を290℃の温度で60分間溶融した時の環状エステル3量体の増加量が0.50重量%以下であることが望ましい。環状エステル3量体の増加量は好ましくは0.3重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下であることが望ましい。
【0083】
290℃の温度で60分間溶融した時の環状エステル3量体の増加量が0.50重量%を越えるポリエステルを用いると、ポリエステル組成物を成形する際の樹脂溶融時に環状エステル3量体量が増加し、加熱処理条件によっては加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。
なお、290℃の温度で60分間溶融した時の環状エステル3量体の増加量の下限は経済的な製造の面から0.01重量%以上である。
【0084】
290℃の温度で60分間溶融した時の環状エステル3量体の増加量が0.50重量%以下である、本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)は、溶融重縮合後や固相重合後に得られたポリエステルに残存する重縮合触媒を失活処理することにより製造することができる。ポリエステル中の重縮合触媒を失活処理する方法としては、溶融重縮合後や固相重合後にポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法が挙げられる。
【0085】
前記の目的を達成するためにポリエステルチップを水や水蒸気または水蒸気含有気体と接触処理する方法を次に述べる。
熱水処理方法としては、水中に浸ける方法やシャワ−でチップ上に水をかける方法等が挙げられる。処理時間としては5分〜2日間、好ましくは10分〜1日間、さらに好ましくは30分〜10時間で、水の温度としては20〜180℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えないが、工業的に行うためには連続方式の方が好ましい。
【0086】
ポリエステルのチップをバッチ方式で水処理する場合は、サイロタイプの処理槽が挙げられる。すなわちバッチ方式でポリエステルのチップをサイロへ受け入れ水処理を行う。ポリエステルのチップを連続方式で水処理する場合は、塔型の処理槽に継続的又は間欠的にポリエステルのチップを上部より受け入れ、水処理させることができる。
【0087】
またポリエステルのチップと水蒸気または水蒸気含有ガスとを接触させて処理する場合は、50〜150℃、好ましくは50〜110℃の温度の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気を好ましくは粒状ポリエチレンテレフタレ−ト1kg当り、水蒸気として0.5g以上の量で供給させるか、または存在させて粒状ポリエチレンテレフタレ−トと水蒸気とを接触させる。
【0088】
この、ポリエステルのチップと水蒸気との接触は、通常10分間〜2日間、好ましくは20分間〜10時間行われる。
また処理方法は連続方式、バッチ方式のいずれであっても差し支えない。
ポリエステルのチップをバッチ方式で水蒸気と接触処理をする場合は、サイロタイプの処理装置が挙げられる。すなわちポリエステルのチップをサイロへ受け入れ、バッチ方式で、水蒸気または水蒸気含有ガスを供給し接触処理を行なう。
【0089】
ポリエステルのチップを連続的に水蒸気と接触処理する場合は塔型の処理装置に連続で粒状ポリエチレンテレフタレ−トを上部より受け入れ、並流あるいは向流で水蒸気を連続供給し水蒸気と接触処理させることができる。
上記の如く、水又は水蒸気で処理した場合は、粒状ポリエチレンテレフタレ−トを必要に応じて振動篩機、シモンカ−タ−などの水切り装置で水切りし、コンベヤ−によって次の乾燥工程へ移送する。
【0090】
水又は水蒸気と接触処理したポリエステルのチップの乾燥は、通常用いられるポリエステルの乾燥処理を用いることができる。連続的に乾燥する方法としては、上部よりポリエステルのチップを供給し、下部より乾燥ガスを通気するホッパ−型の通気乾燥機が通常使用される。
バッチ方式で乾燥する乾燥機としては大気圧下で乾燥ガスを通気しながら乾燥してもよい。
乾燥ガスとしては大気空気でも差し支えないが、ポリエステルの加水分解や熱酸化分解による分子量低下を防止する点からは乾燥窒素、除湿空気が好ましい。
【0091】
また重縮合触媒を失活させる別の手段として、リン化合物を溶融重縮合後または固相重合後のポリエステルの溶融物に添加、混合して重合触媒を不活性化する方法が挙げられる。
【0092】
また、本発明に用いられる主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トである熱可塑性ポリエステル(A)は、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂0.1ppb〜1000ppmを配合することができる。
【0093】
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)中での前記のポリオレフィン樹脂等の配合割合は、0.1ppb〜1000ppm、好ましくは0.3ppb〜100ppm、より好ましくは0.5ppb〜1ppm、さらに好ましくは0.5ppb〜45ppbである。配合量が0.1ppb未満の場合は、結晶化速度が非常におそくなり、中空成形体の口栓部の結晶化が不十分となるため、サイクルタイムを短くすると口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となったり、また、耐熱性中空成形体を成形する延伸熱固定金型の汚れが激しく、透明な中空成形体を得ようとすると頻繁に金型掃除をしなければならない。また1000ppmを超える場合は、結晶化速度が早くなり、中空成形体の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたり、また中空成形体用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。また、シ−ト状物の場合、1000ppmを越えると透明性が非常に悪くなり、また延伸性もわるくなって正常な延伸が不可能で、厚み斑の大きな、透明性の悪い延伸フィルムしか得られない。
【0094】
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)に配合されるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはα−オレフィン系樹脂が挙げられる。
本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)に配合されるポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等(分岐状又は直鎖状)のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン系樹脂が挙げられる。
【0095】
また本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)に配合されるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンと、エチレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、ブロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体等のプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0096】
また本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)に配合されるα−オレフィン系樹脂としては、4−メチルペンテン−1等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、ブテン−1単独重合体、4−メチルペンテン−1単独重合体、ブテン−1−エチレン共重合体、ブテン−1−プロピレン共重合体等のブテン−1系樹脂や4−メチルペンテン−1とC2〜C18のα−オレフィンとの共重合体、等が挙げられる。
【0097】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)に配合されるポリアミド樹脂としては、例えば、ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタムの重合体、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸単位との重縮合体、及びこれらの共重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン8、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/12、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等が挙げられる。
【0098】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)に配合されるポリアセタ−ル樹脂としては、例えばポリアセタ−ル単独重合体や共重合体が挙げられる。ポリアセタ−ル単独重合体としては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.40〜1.42g/cm3、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトフロー比(MFR)が0.5〜50g/10分の範囲のポリアセタ−ルが好ましい。
【0099】
また、ポリアセタ−ル共重合体としては、ASTM−D792の測定法により測定した密度が1.38〜1.43g/cm3、ASTMD−1238の測定法により、190℃、荷重2160gで測定したメルトフロー比(MFR)が0.4〜50g/10分の範囲のポリアセタ−ル共重合体が好ましい。これらの共重合成分としては、エチレンオキサイドや環状エ−テルが挙げられる。
【0100】
また、本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)に配合されるでポリブチレンテレフタレ−ト樹脂としては、例えばテレフタル酸と1,4−ブタンジオ−ルからなるポリブチレンテレフタレ−ト単独重合体やこれにナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル等を共重合した共重合体が挙げられる。
【0101】
また、本発明において用いられる前記のポリオレフィン樹脂等を配合した熱可塑性ポリエステルは、前記ポリエステルに前記のポリオレフィン等の樹脂を、その含有量が前記範囲となるように、直接に添加し溶融混練する方法、または、マスタ−バッチとして添加し溶融混練する方法等の慣用の方法によるほか、前記のポリオレフィン等の樹脂を、前記ポリエステルの製造段階、例えば、溶融重縮合時、溶融重縮合直後、予備結晶化直後、固相重合時、固相重合直後等のいずれかの段階、または、製造段階を終えてから成形段階に到るまでの間に粉粒体として直接に添加するか、或いは、ポリエステルチップの流動条件下に前記のポリオレフィン等の樹脂製の部材に接触させる等の方法で混入させた後、溶融混練する方法等によることもできる。
【0102】
ここで、ポリエステルチップ状体を流動条件下に前記のポリオレフィン等の樹脂製の部材に接触させる方法としては、前記のポリオレフィン等の樹脂製の部材が存在する空問内で、ポリエステルチップを前記の部材に衝突接触させることが好ましく、具体的には、例えば、ポリエステルの溶融重縮合直後、予備結晶化直後、固相重合直後等の製造工程時、また、ポリエステルチップの製品としての輸送段階等での輸送容器充填・排出時、また、ポリエステルチップの成形段階での成形機投入時、等における気力輸送配管、重力輸送配管、サイロ、マグネットキャッチャ−のマグネット部等の一部を前記のポリオレフィン等の樹脂製とするか、または、前記のポリオレフィン等の樹脂をライニングするとか、或いは前記移送経路内に棒状又は網状体等の前記のポリオレフィン等の樹脂製部材を設置する等して、ポリエステルチップを移送する方法が挙げられる。ポリエステルチップの前記部材との接触時間は、通常、0.01秒〜数分程度の極短時間であるが、ポリエステルに前記のポリオレフィン等の樹脂を微量混入させることができる。
【0103】
また本発明に係る熱可塑性ポリエステル(A)中に共重合されたジアルキレングリコール含有量は、前記熱可塑性ポリエステルを構成するグリコ−ル成分の好ましくは0.5〜5.0モル%、より好ましくは1.0〜4.0モル%、さらに好ましくは1.5〜3.0モル%である。ジアルキレングリコ−ル量が5.0モル%を越える場合は、熱安定性が悪くなり、成型時に分子量低下が大きくなったり、またホルムアルデヒド、アセトアルデヒドやアリルアルデヒドなどのアルデヒド類の含有量の増加量が大となり好ましくない。またジアルキレングリコ−ル含有量が0.5モル%未満の熱可塑性ポリエステルを製造するには、エステル交換条件、エステル化条件あるいは重合条件として非経済的な製造条件を選択することが必要となり、コストが合わない。ここで、熱可塑性ポリエステル(A)中に共重合されたジアルキレングリコールとは、例えば、主たる構成単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルの場合には、グリコールであるエチレングリコールから製造時に副生したジエチレングリコ−ルのうちで、前記熱可塑性ポリエステル(A)に共重合したジエチレングリコ−ル(以下、DEGと略称する)のことであり、1,3−プロピレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルの場合には、グリコールである1,3−プロピレングリコールから製造時に副生したジ(1,3−プロピレングリコ−ル)(またはビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル)のうちで、前記熱可塑性ポリエステル(A)に共重合したジ(1,3−プロピレングリコ−ル(以下、DPGと称する))のことである。
【0104】
本発明のポリエステル組成物において、部分芳香族ポリアミドとしてメタキシリレン基含有環状アミドを用いる場合は、前記ポリエステル組成物を成形してなる成形体中のメタキシリレン基含有環状アミド1量体の含有量が0.5重量%以下、好ましくは0.4重量%以下、さらに好ましくは0.3重量%以下であることが望ましい。メタキシリレン基含有環状アミド1量体の含有量が0.5重量%を超える場合は、得られた成形体内容物の香味保持性が悪くなることがあり、また本発明のポリエステル組成物から耐熱性の中空成形体等を成形する場合には、成形体成形時の金型内面や金型のガスの排気口、排気管に異物が付着するために生じる金型汚れが非常に激しくなる場合があることが判った。なお、メタキシリレン基含有環状アミド1量体の含有量は経済的な製造の面から0.001重量%以上が好ましく、より好ましくは0.01重量%以上である。
【0105】
ここで、メタキシリレン基含有ポリアミドがメタキシリレンジアミンとアジピン酸とから構成されるポリアミドである場合は、前記のメタキシリレン基含有環状アミド1量体の化学式は下記の式で表される。
【0106】
【化1】
(上記式1中、n=1(整数)を表す。)
【0107】
本発明のポリエステル組成物は、従来公知の方法により前記の熱可塑性ポリエステル(A)と前記の部分芳香族ポリアミド(B)を混合して得ることができる。例えば、前記のポリアミドチップと前記のポリエステルチップとをタンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等でドライブレンドしたもの、さらにドライブレンドした混合物を一軸押出機、二軸押出機、ニーダー等で1回以上溶融混合したもの、さらには必要に応じて溶融混合物を高真空下または不活性ガス雰囲気下で固相重合したものなどが挙げられる。また、あらかじめ前記の熱可塑性ポリエステル(A)と前記の部分芳香族ポリアミド(B)を溶融混合したものを、前記の熱可塑性ポリエステル(A)とドライブレンドしたもの、さらにドライブレンドした混合物を溶融混合したものが挙げられる。
【0108】
本発明のポリエステル組成物に飽和脂肪酸モノアミド、不飽和脂肪酸モノアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等を同時に併用することも可能である。
飽和脂肪酸モノアミドの例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。不飽和脂肪酸モノアミドの例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドリシノ−ル酸アミド等が挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド等が挙げられる。また、不飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられる。好ましいアミド系化合物は、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等である。このようなアミド化合物の配合量は、10ppb〜1×105ppmの範囲であることが好ましい。
【0109】
また炭素数8〜33の脂肪族モノカルボン酸の金属塩化合物、例えばナフテン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、リノ−ル酸等の飽和及び不飽和脂肪酸のリチュウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、及びコバルト塩等を同時に併用することも可能である。これらの化合物の配合量は、10ppb〜300ppmの範囲であることが好ましい。
【0110】
本発明のポリエステル組成物には、必要に応じて他の添加剤、例えば、公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸素吸収剤、酸素捕獲剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、顔料などの各種の添加剤を配合してもよい。また、紫外線遮断性樹脂、耐熱性樹脂、使用済みポリエチレンテレフタレ−トボトルからの回収品等を適当な割合で混合することも可能である。
【0111】
また、無色透明の樹脂が望ましい用途においては、溶融加工の間に発生するかすかな黄色い色を青色着色剤の添加によって消すことができる。着色剤は重合の間、又は配合の間にブレンド物に直接添加することができる。配合の間に添加される場合には、着色剤はそのまま添加することもできるし、マスターバッチなどのような濃縮物として添加することもできる。着色剤の量は、その吸光係数およびその用途に望ましい色に調整することができる。好ましい着色剤としては、1−シアノ−6−(4−(2−ヒドロキシエチル)アニリノ)−3−メチル−3H−ジベンゾ(F,I,J)−イソキノリン−2,7−ジオンが挙げられる。着色剤の添加量は2〜30ppmの範囲であることが好ましい。
【0112】
また、本発明のポリエステル組成物をフィルム用途に使用する場合には、滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性を改善するために、ポリエステル組成物中に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の無機粒子、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等の有機塩粒子やジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体等の架橋高分子粒子などの不活性粒子を含有させることが出来る。
【0113】
本発明のポリエステル組成物は、一般的に用いられる溶融成形法を用いてフィルム、シート、容器、その他の包装材料を成形することができる。本発明のポリエステル組成物からなる延伸フィルムは射出成形もしくは押出成形して得られたシート状物を、通常PETの延伸に用いられる一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のうちの任意の延伸方法を用いて成形される。また圧空成形、真空成形によリカップ状やトレイ状に成形することもできる。
【0114】
延伸フィルムを製造するに当たっては、延伸温度は通常は80〜130℃である。延伸は一軸でも二軸でもよいが、好ましくはフィルムの実用物性の点から二軸延伸である。延伸倍率は一軸の場合であれば通常1.1〜10倍、好ましくは1.5〜8倍の範囲で行い、二軸延伸であれば縦方向および横方向ともそれぞれ通常1.1〜8倍、好ましくは1.5〜5倍の範囲で行えばよい。また、縦方向倍率/横方向倍率は通常0.5〜2、好ましくは0.7〜1.3である。得られた延伸フィルムは、さらに熱固定して、耐熱性、機械的強度を改善することもできる。熱固定は通常緊張下、120℃〜240、好ましくは150〜230℃で、通常数秒〜数時間、好ましくは数十秒〜数分間行われる。
【0115】
中空成形体を製造するにあたっては、本発明のPETから成形したブリフォームを延伸ブロー成形してなるもので、従来PETのブロー成形で用いられている装置を用いることができる。具体的には例えば、射出成形または押出成形で一旦プリフォームを成形し、そのままあるいは口栓部、底部を加工後、それを再加熱し、ホットパリソン法あるいはコールドパリソン法などの二軸延伸ブロー成形法が適用される。この場合の成形温度、具体的には成形機のシリンダー各部およびノズルの温度は通常260〜290℃の範囲である。延伸温度ば通常70〜120℃、好ましくは90〜110℃で、延伸倍率は通常縦方向に1.5〜3.5倍、円周方向に2〜5倍の範囲で行えばよい。得られた中空成形体は、そのまま使用できるが、特に果汁飲料、ウーロン茶などのように熱充填を必要とする飲料の場合には一般的に、さらにブロー金型内で熱固定処理を行い、耐熱性を付与して使用される。熱固定は通常、圧空などによる緊張下、100〜200℃、好ましくは120〜180℃で、数秒〜数時間、好ましくは数秒〜数分間行われる。
【0116】
また、口栓部に耐熱性を付与するために、射出成形または押出成形により得られたプリフォ−ムの口栓部を遠赤外線や近赤外線ヒ−タ設置オ−ブン内で結晶化させたり、あるいはボトル成形後に口栓部を前記のヒ−タで結晶化させる。
【0117】
また、本発明のポリエステル組成物は、積層成形体や積層フィルム等の一構成層としても用いることが出来る。特に、PETとの積層体の形で容器等の製造に使用される。積層成形体の例としては、本発明のポリエステル組成物からなる外層とPET内層との二層から構成される二層構造あるいは本発明のポリエステル組成物からなる内層とPET外層との二層から構成される二層構造の成形体、本発明のポリエステル組成物を含む中間層とPETの外層および最内層から構成される三層構造あるいは本発明のポリエステル組成物を含む外層および最内層とPETの中間層から構成される三層構造の成形体、本発明のポリエステル組成物を含む中間層とPETの最内層、中心層および最内層から構成される五層構造の成形体等が挙げられる。PET層には、他のガスバリア−性樹脂、紫外線遮断性樹脂、耐熱性樹脂、使用済みポリエチレンテレフタレ−トボトルからの回収品等を適当な割合で混合使用することができる。
【0118】
また、その他の積層成形体の例としては、ポリオレフィン等のポリエステル以外の樹脂との積層成形体、紙や金属板等の異種の基材との積層成形体が挙げられる。
前記の積層成形体の厚み及び各層の厚みには特に制限は無い。また前記の積層成形体は、シ−ト状物、フィルム状物、板状物、中空体、容器等、種々の形状で使用可能である。
【0119】
前記の積層体の製造は、樹脂層の種類に対応した数の押出機と多層多種ダイスを使用して共押出しにより行うこともできるし、また樹脂層の種類に対応した数の射出機と共射出ランナ−および射出型を使用して共射出により行うこともできる。
【0120】
本発明のポリエステル組成物は、中空成形体、トレ−、二軸延伸フィルム等の包装材、金属缶被覆用フィルム等として好ましく用いることが出来る。
また、本発明の組成物は、電子レンジおよび/またはオ−ブンレンジ等で食品を調理したり、あるいは冷凍食品を加熱するためのトレイ状容器の用途にも用いることができる。この場合は、ポリエステル組成物からのシ−ト状物をトレイ形状に成形後、熱結晶化させて耐熱性を向上させる。
なお、本発明における、主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0121】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定させるものではない。なお、本明細書中における主な特性値の測定法を以下に説明する。
(評価方法)
【0122】
(1)ポリエステルの極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0123】
(2)ポリエステル中に共重合されたジエチレングリコ−ル含有量(以下[DEG含有量」という)
メタノ−ルにより分解し、ガスクロマトグラフィ−によりDEG量を定量し、全グリコ−ル成分に対する割合(モル%)で表した。
【0124】
(3)ポリエステルの環状エステル3量体の含有量(以下「CT含有量」という)(重量%)
試料300mgをヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロフォルム混合液(容量比=2/3)3mlに溶解し、さらにクロロフォルム30mlを加えて希釈する。これにメタノ−ル15mlを加えてポリマ−を沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミド10mlで定容とし、高速液体クロマトグラフ法により環状エステル3量体を定量した。
【0125】
(4)ポリエステルのアセトアルデヒド含有量(以下「AA含有量」という)(ppm)
試料/蒸留水=1グラム/2ccを窒素置換したガラスアンプルに入れた上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドおよびホルムアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィ−で測定し、濃度をppmで表示した。なお、試料がボトルの場合はボトル胴部を切り取り、約3mm角に切ったものを用いた。
【0126】
(5)ポリエステルの溶融時の環状エステル3量体増加量(△CT量)(重量%)乾燥したポリエステルチップ3gをガラス製試験管に入れ、窒素雰囲気下で290℃のオイルバスに60分浸漬させ溶融させる。溶融時の環状エステル3量体増加量は、次式により求める。
溶融時の環状エステル3量体増加量(重量%)=溶融後の環状エステル3量体含有量(重量%)−溶融前の環状エステル3量体含有量(重量%)
【0127】
(6)メタキシリレン基含有ポリアミドの相対粘度(RV)
試料0.25gを96%硫酸25mlに溶解し、この溶液10mlをオストワルド粘度管にて20℃で測定、下式より求めた。
Rv=t/t0
t0:溶媒の落下秒数
t :試料溶液の落下秒数
【0128】
(7)メタキシリレン基含有ポリアミドの末端アミノ基濃度(AEG,μmol/g)
試料0.5gをフェノール/エタノール混合溶媒(容積比4/1)50mlに室温で溶解させた後、水/エタノール混合溶媒(容積比3/2)20mlを加え、撹拌する。その後、塩酸を用いて中和滴定を行い、末端アミノ基濃度を求めた。
【0129】
(8)メタキシリレン基含有ポリアミドの末端カルボキシル基濃度(CEG,μmol/g)
試料0.5gにベンジルアルコール20mlを加え、170〜180℃のオイルバス中で加熱溶解後、水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定を行い、末端カルボキシル基濃度を求めた。
【0130】
(9)メタキシリレン基含有環状アミド1量体の含有量(CM含有量)(重量%)
試料100mgをヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロフォルム混合液(容量比=2/3)3mlに溶解し、さらにクロロフォルム20mlを加えて希釈し、メタノ−ル10mlを加える。これをエバポレ−タにより濃縮し、ジメチルフォルムアミド20mlに再溶解する。遠心濾過後、高速液体クロマトグラフ法により定量した。
【0131】
(10)メタキシリレン基含有ポリアミド中の分子量1000以下の化合物の含有量(以下「LM含有量」と称する)(重量%)
トリフルオロ酢酸ナトリウムを10mMの濃度で溶解させたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に試料を2mg/mlの濃度で溶解させたものを測定溶液とし、ゲル浸透型クロマトグラフィー(GPC)により測定を行った。測定装置には東ソー(株)製HLC−8220、カラムにTSKgel Super AWM−H(6.0mmID×15cm、東ソー(株)製)×2本を用いた。移動相に上記と同一組成のトリフルオロ酢酸ナトリウムを含むHFIPを用い、注入量20μl、カラム温度40℃、流速0.3ml/minの条件で測定を行った。分子量の算出は標準ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いて、PMMA換算で算出した。この際、得られたクロマトグラムのベースライン設定において、ベースラインの終点をPMMA換算分子量1000以下の成分の溶出が終わる保持時間に設定した。LM含有量は、全成分ピーク面積に対するPMMA換算分子量1000以下の成分ピーク面積比で求めた。
【0132】
(11)ファインの含有量の測定(ppm)
樹脂約0.5kgを、JIS−Z8801による呼び寸法1.7mmの金網をはった篩(直径30cm)の上に乗せ、テラオカ社製揺動型篩い振トウ機SNF−7で1800rpmで1分間篩った。この操作を繰り返し、樹脂を合計20kg篩った。
篩の下にふるい落とされたファインは、イオン交換水で洗浄し岩城硝子社製G1ガラスフィルターで濾過して集めた。これらをガラスフィルターごと乾燥器内で100℃で2時間乾燥後、冷却して秤量した。再度、イオン交換水で洗浄、乾燥の同一操作を繰り返し、恒量になったことを確認し、この重量からガラスフィルターの重量を引き、ファイン重量を求めた。ファイン含有量は、ファイン重量/篩いにかけた全樹脂重量、である。
【0133】
(12)金型汚れの評価
窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥したポリエステルの所定量および窒素ガスを用いた乾燥機で乾燥したメタキシリレン基含有ポリアミドチップの所定量を用いて、各機製作所製M−150C(DM)射出成型機により樹脂温度285℃でプリフォ−ムを成形した。このプリフォ−ムの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた後、コ−ポプラスト社製LB−01E延伸ブロ−成型機を用いて二軸延伸ブロ−成形し、引き続き約145℃に設定した金型内で熱固定し、1000ccの中空成形体を得た。同様の条件で2000本の中空成形体を連続的に延伸ブロ−成形し、その前後における金型表面の状態を目視で観察し、下記のように評価した。
○ : 連続成形試験の前後において変化なし
△ : 連続成形試験後にかなり付着物あり
× : 連続成形試験後に付着物が非常に多い
【0134】
(13)中空成形体の透明性
(12)の2000本成形後に得られた中空成形体の外観を目視で観察し、下記のように評価した。
◎ : 透明である
○ : 実用的な範囲で透明である
× : 透明性に劣る
【0135】
(14)官能試験
上記の中空成形体に沸騰した蒸留水を入れ密栓後30分保持し、室温へ冷却し室温で1ヶ月間放置し、開栓後風味、臭いなどの試験を行った。比較用のブランクとして、蒸留水を使用。官能試験は10人のパネラーにより次の基準により実施し、平均値で比較した。
(評価基準)
0:異味、臭いを感じない
1:ブランクとの差をわずかに感じる
2:ブランクとの差を感じる
3:ブランクとのかなりの差を感じる
4:ブランクとの非常に大きな差を感じる
【0136】
(15)酸素透過量(cc/容器1本・24hr・atm)
Modern Controls社製酸素透過量測定器OX−TRAN100により、1000ccのボトル1本当りの透過量として20℃、0%RHで測定した。
【0137】
(実施例および比較例に使用したポリエチレンテレフタレ−ト(PET))
試験に用いたPET(チップの密度=1.398〜1.420g/cm3、Ge残存量=約42ppm、P残存量=約36ppm)の特性を表1に示す。これらは、すべて連続溶融重縮合−固相重合装置で重合したものである。
PET(a)は、固相重合後イオン交換水中で約90℃で3時間、熱水処理したものである。
なお、PET(a)、PET(b)のDEG含有量はすべて約2.5モル%、ファイン含有量はすべて約30ppm以下であった。
【0138】
【表1】
【0139】
(実施例および比較例に使用したメタキシリレン基含有ポリアミド(Ny−MXD6))
【0140】
MXD6(c)の製造方法
攪拌機、分縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた内容積250リットルの調製缶に、精秤したメタキシリレンジアミン27.66kg、アジピン酸29.65kg、を内温85℃にて調合し、スラリー状の透明な溶液とした。缶内のPH値を7.98に調製した後、末端停止剤としてNaOH 34.09g、NaH2PO2・H2O 25.81gを投入して15分攪拌した。その溶液を内容積270リットルの反応缶に移送し、缶内温度260℃、缶内圧1.0MPaの条件下で攪拌して反応させた。留出する水を系外に除き、缶内温度が235℃になった時点で、缶内圧を60分間かけて常圧に戻した。常圧で攪拌を行い、目標粘度に達した時点で攪拌を停止し、20分間放置した。その後、反応缶下部の取り出し口より溶融樹脂を取り出し、冷却固化させてストランドカッターにて樹脂チップを得た。得られた樹脂の特性を表2に示す。
【0141】
MXD6(d)の製造方法
缶内のPH値を7.02に調整した以外は、MXD6(c)の製造方法と同様にして樹脂チップを得た。得られた樹脂の特性を表2に示す。
【0142】
MXD6(e)の製造方法
缶内のPH値を6.87に調整した以外は、MXD6(c)の製造方法と同様にして樹脂チップを得た。得られた樹脂の特性を表2に示す。
【0143】
【表2】
【0144】
(実施例1)
PET(a)100重量部に対してNy−MXD6(c)0.5重量部を用いて、評価方法(12)の方法により中空成形体を成形し、また金型汚れ評価も行った。
得られた中空成形体の特性及び金型汚れ評価結果を表3に示す。
中空成形体のAA含有量は8ppm、官能試験評価は0.8、外観は実用的な範囲で透明であり、また金型汚れは認められなかった。
【0145】
(実施例2−5、比較例1−3)
実施例1と同様にして、評価方法(12)の方法により中空成形体を成形し、また金型汚れ評価も行った。
得られた中空成形体の特性及び金型汚れ評価結果を表3に示す。
【0146】
【表3】
【0147】
【発明の効果】
本発明のポリエステル組成物によれば、ガスバリヤ−性および/または香味保持性に優れており、成形時での金型汚れを発生させにくいポリエステル組成物が得られる。また耐熱寸法安定性に優れた中空成形体や成形後の寸法安定性に優れたシ−ト状物および延伸フィルムが得られる。
Claims (4)
- 熱可塑性ポリエステル(A)100重量部と、部分芳香族ポリアミド(B)0.01〜100重量部とからなるポリエステル組成物であって、該部分芳香族ポリアミド(B)中の分子量1000以下の化合物の含有量が3.5重量%以下であることを特徴とするポリエステル組成物。
- 前記熱可塑性ポリエステル(A)が、エチレンテレフタレ−トを主たる繰り返し単位とするポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル組成物。
- 請求項1または2に記載のポリエステル組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
- 請求項3に記載の成形体が、中空成形体、シ−ト状物あるいはこのシート状物を少なくとも一方向に延伸してなる延伸フイルムのいずれかであることを特徴とする成形体。
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