JP2004059848A - 大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と改質不飽和脂肪酸含有油脂との混合物、および同加工大豆と改質不飽和脂肪酸含有油脂とを使用して製造される食品 - Google Patents
大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と改質不飽和脂肪酸含有油脂との混合物、および同加工大豆と改質不飽和脂肪酸含有油脂とを使用して製造される食品 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂とでなる混合物、およびそれらを用いて製造される食品を提供する。
【解決手段】改質不飽和脂肪酸含有油脂中の不飽和脂肪酸としては、ドコサヘキサエン酸(DHA)およびイコサペンタエン酸(EPA)の少なくとも一種とすることが好ましい。また、加工大豆は、Bacillus属の微生物が産生するペクチナーゼを使用して大豆に酵素処理を施すことにより製造することが好ましい。この混合物は、大豆と不飽和脂肪酸に特有の臭いがほとんどしないので、消費者は、この混合物を所望の食材に添加して調理することで、大豆成分と不飽和脂肪酸を種々の調理品から美味しく摂取することが可能になる。
【選択図】 なし
【解決手段】改質不飽和脂肪酸含有油脂中の不飽和脂肪酸としては、ドコサヘキサエン酸(DHA)およびイコサペンタエン酸(EPA)の少なくとも一種とすることが好ましい。また、加工大豆は、Bacillus属の微生物が産生するペクチナーゼを使用して大豆に酵素処理を施すことにより製造することが好ましい。この混合物は、大豆と不飽和脂肪酸に特有の臭いがほとんどしないので、消費者は、この混合物を所望の食材に添加して調理することで、大豆成分と不飽和脂肪酸を種々の調理品から美味しく摂取することが可能になる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大豆成分とDHAやEPA等の不飽和脂肪酸とを含有する栄養強化食品に関するものであり、特に、細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂とでなる混合物、および同加工大豆と改質不飽和脂肪酸含有油脂を使用して製造される食品に関するものである。
【0002】
【従来技術】
大豆は、たんぱく質、糖質、脂質、ビタミンをバランスよく含む栄養価の高い食品素材であるとともに、癌や骨粗しょう症等の予防効果、および生活習慣病(成人病)の予防効果を有するイソフラボンやリジン等を含有する優れた食材である。しかしながら、その大豆臭のために料理用の食品素材としての用途は限られていた。
【0003】
そこで、本発明者は、国際出願公開公報WO01/10242号に記載されている酵素を使用した大豆の加工方法により大豆の食品素材としての利用可能性を大幅に広げることに成功した。すなわち、この方法は、Bacillus属の微生物が産生するペクチナーゼを大豆に添加することを本質とするものであり、得られたパウダー状もしくはピューレ状の加工大豆には、細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散され、大豆臭がほとんどしないという特徴を備えている。
【0004】
一方、健康維持の観点から、近年、食生活における不飽和脂肪酸のバランスとれた摂取が重要であるとの認識が高まっている。不飽和脂肪酸としては、魚類に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が特に注目を集めている。これらの不飽和脂肪酸には、心筋梗塞や動脈硬化の予防効果があるとともに、制ガン作用、血中脂質低下作用、血圧降下作用、抗血栓作用、抗アレルギー作用等の多くの優れた生理機能のあることが報告されている。また、DHAには、記憶学習機能の向上効果や網膜反射機能の向上効果があるとされており、EPAは抗血栓効果が高いとされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、DHAが上記のような効果を発現するには、数百mg〜数g程度の量のDHAを毎日摂取することが必要であると言われているが、その独得の臭い(魚臭)のため、単独で摂取する場合は香料等で臭いや味を変えることが行われている。また、調理用の食品素材として使用する場合も、調理後の料理にDHAやEPAの独得の臭いが残留して食味を損なうためその利用は限定されている。さらに、DHA含有パスタ等のDHA含有食品を作成しても、その調理時にDHAやEPAが溶け出し、調理後の料理に含まれるDHAが大幅に減少するために目的としていた量でDHAを含有する食品を得ることが困難であった。
【0006】
このように、DHAやEPAは多くの優れた生理機能を有するものの、消費者が摂取しやすい食品として未だ供給されていないのが現状である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、健全な大豆単細胞が分散してなる加工大豆と改質された不飽和脂肪酸含有油脂とを混合することにより、その臭いが大豆単細胞内に取り込まれ、結果として人間の臭覚では感知できないレベルにまで無臭化された大豆と不飽和脂肪酸の混合物を提供することを目的とする。
【0008】
すなわち、本発明の混合物は、細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂とでなることを特徴とする。
【0009】
本発明の混合物は、大豆と不飽和脂肪酸に特有の臭いがほとんどしないので、混合物それ自体を摂取する場合であっても、香料などを添加して臭いを調整する必要がない。また、他の食材に添加して調理した場合であっても、大豆と不飽和脂肪酸の臭いは人間の臭覚では殆ど感じることができないレベルに維持される。また、調理中に不飽和脂肪酸成分が料理から溶出しにくいという効果もある。特に、改質不飽和脂肪酸含有油脂を用いたことで、従来の不飽和脂肪酸含有油脂を使用する場合に比べて不飽和脂肪酸に特有の臭いの発生を防ぎながら、混合物中における不飽和脂肪酸の含有量を高めることができるという長所がある。
【0010】
本発明の混合物において、改質不飽和脂肪酸含有油脂は、不飽和脂肪酸としてドコサヘキサエン酸(DHA)およびイコサペンタエン酸(EPA)の少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0011】
本発明の混合物中における不飽和脂肪酸の量は、混合物の全重量に関して50%もしくはそれ以下であることが好ましく、より好ましくは0.5〜30%である。不飽和脂肪酸の含有量が50%を超えると、不飽和脂肪酸の臭いを十分に消臭できない恐れがある。また不飽和脂肪酸の下限量については特に限定はないが、不飽和脂肪酸による栄養強化を図る上では0.5%以上であることが好ましい。尚、本発明の混合物中の不飽和脂肪酸量が1〜30%の範囲内にある場合は、加工大豆による不飽和脂肪酸の良好な消臭効果が安定して得られる。
【0012】
本発明の混合物において、上記加工大豆は、Bacillus属の微生物が産生するペクチナーゼを使用して大豆に酵素処理を施すことにより得られるものを使用することが好ましい。この場合、加工大豆は、パウダー状およびピューレ状の一形態にて提供することができる。
【0013】
また、本発明のさらなる目的は、細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂と、水および水性溶媒のうちの一種とでなる混合物を提供することにある。この場合は、加工大豆と、改質不飽和脂肪酸含有油脂に関しては上記と同様のものを用いることができる。水性溶媒としては、レモン汁やミカン汁等の果汁を用いることが好ましい。
【0014】
尚、この混合物中における不飽和脂肪酸の量は、上記混合物中の加工大豆と改質不飽和脂肪酸含有油脂の全重量に関して、50%もしくはそれ以下であることが好ましく、より好ましくは0.5〜30%である。
【0015】
本発明の別の目的は、細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂とを使用して製造される食品を提供することにある。このような食品としては、とくに限定されるものではないが、例えば、スパゲッティ、パン等の小麦粉利用食品を挙げることができる。
【0016】
本発明のさらなる特徴およびそれがもたらす効果は、以下に述べる発明の実施の形態および実施例に基いてより詳細に理解されるだろう。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の加工大豆と改質不飽和脂肪酸含有油脂とでなる混合物について詳細に説明する。
【0018】
本発明に使用される加工大豆は、細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散されてなる。このような加工大豆は、上記したように、本発明者による国際出願公開公報WO01/10242号に記載されている酵素を使用した大豆の加工方法により得ることができる。
【0019】
すなわち、所定量の原料大豆を水洗した後、所定時間、例えば、10〜20時間水に浸漬する。この工程は、大豆の個々の細胞内に十分量の水分を供給し、後に実施される酵素処理を行い易くするためのものである。尚、この浸漬ステップにおいて、後述する酵素処理に使用されるペクチナーゼを前もって微量添加した水を使用しても良い。次に、大豆を水の存在下で加熱処理する。この加熱処理は、大豆に含まれるリポキシゲナ―ゼの作用を失活させるとともに、大豆タンパクを熱変性させて人体への消化吸収性を改善し、さらに細胞間物質を軟化させて後に実施される酵素処理を行い易くする。これらの目的を効率良く達成する上で、大豆を蒸煮処理することが好ましい。蒸煮条件としては、例えば、110℃もしくはそれ以下で30分以上とすることが好ましい。
【0020】
蒸煮した大豆を所定温度に冷却した後、水およびBacillus属の微生物が産生するペクチナーゼを大豆に添加する。蒸煮した大豆は、酵素処理が実施される温度、例えば、約60℃に冷却することが好ましい。また、大豆加工に際してはできるだけ廃棄物あるいは排水を出さないゼロエミッションの観点から、浸漬工程中に大豆から流出した微量の大豆成分(主として蛋白質)さえ捨てることなく利用することが好ましい。すなわち、この工程において大豆に添加される水には、前述した浸漬工程において使用済みの水を利用することが好ましい。また、添加する水の量は、蒸煮後の大豆重量とほぼ同量とすることが好ましい。ペクチナーゼの添加量は特に限定されないが、例えば、浸漬工程前の大豆重量に対して0.5〜0.8wt%とすることが好ましい。
【0021】
得られた混合物を攪拌しながら、例えば、60℃で30分間保持することにより酵素処理を実施する。このような酵素処理条件においては、Bacillus属の微生物が産生するペクチナーゼが大豆の細胞同士を結合するペクチン質であるプロトペクチンに対して強力に作用するので、大豆細胞壁を破壊することなく原料大豆を構成する大豆細胞を個々の大豆単細胞に効率よく分離することが可能となる。
【0022】
尚、攪拌は、例えば、攪拌翼を20〜30回転/分程度の速度で回転させるようなマイルドな条件を採用することが好ましい。このような条件であれば、分離された大豆の単細胞を攪拌によってほぐしながら、大豆細胞に対して均一にペクチナーゼを作用させることができるので、酵素処理をよりスムーズに実施することができる。この酵素処理により大豆単細胞が分散するピューレが得られる。
【0023】
次いで、ペクチナーゼの酵素作用を失活させるためにスラリーに熱処理を施す。例えば、約100℃、15分間スラリーを加熱することが好ましい。加工大豆を液体状態(ピューレ)にて供給する場合は、ここまでの工程で得られたものを使用する。尚、粉末状に加工大豆を供給する場合は、得られたピューレをスプレードライヤー等の噴霧乾燥法により乾燥/粉体化することが好ましい。
【0024】
不飽和脂肪酸としては、生理活性等の点で高度不飽和脂肪酸を挙げることができ、なかでも、カツオやマグロ等の魚類に多く含まれているDHAおよび/あるいはEPAが一般によく知られている。DHAやEPAを健康食品として利用する試みは多くなされているが、これらの高度不飽和脂肪酸は非常に酸化されやすいため、天然トコフェロール、茶抽出物、アスコルビン酸、クエン酸等の酸化防止剤、抑臭材の使用では十分な消臭が達成されていない。特に、時間の経過とともに高度不飽和脂肪酸の酸化が進行して臭いが益々強くなる傾向がある。このため、これらの高度不飽和脂肪酸を主成分とする魚油の食品への添加は、かまぼこや竹輪のような本来ある程度の魚臭を有する食品分野に限定されている。本発明は、このような従来法では消臭困難であった高度不飽和脂肪酸含有魚油であっても、以下に述べるように不飽和脂肪酸含有油脂を改質してなる改質不飽和脂肪酸含有油脂と、大豆単細胞が分散されてなる上記の加工大豆との併用により、より高い含有量でDHAやEPAを使用した場合でも、人間の臭覚では感知できないレベルにまで無臭化できることを見出したものである。
【0025】
すなわち、本発明で使用される改質不飽和脂肪酸含有油脂は、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有することを特徴とするものであり、例えば、市販の不飽和脂肪酸含有油脂に、室温で、ゴマ油、δ−トコフェロール、及び大豆レシチンを添加し、攪拌/混合して得られたものをろ過することにより得ることができる。原料である不飽和脂肪酸含有油脂としては、EPA、DHAを含有する魚油、イカ油等を挙げることができる。例えば、DHAツナオイルのような市販品あるいはこれらの精製油を用いてもよい。あるいは、不飽和脂肪酸の遊離酸、そのエステルおよびリン脂質(リゾ体を含む)等を添加、混合したものであってもよい。
【0026】
ゴマ油としては、通常入手しうるゴマ油を用いることができ、目的とする食品にあわせて適宜選択しうる。その使用量は、不飽和脂肪酸含有油脂に対して2%以上、好ましくは4%以上、より好ましくは6%以上であり、多量に使用すればするほど魚臭の抑制効果が高くなる。通常は25%程度までの範囲内で、望まれる不飽和脂肪酸含有量を考慮して、使用量を適宜選択することができる。
【0027】
界面活性剤としては、食品添加用の界面活性剤であれば用いることができるが、その中でもとくにレシチンの使用が好ましい。レシチンとしては、動物性、植物性のいずれであってもよいが、コスト、入手性等の点で、大豆レシチンが好適である。その使用量は、不飽和脂肪酸含有油脂に対して0.5%〜10%、好ましくは1%〜5%である。上記の量より少ない量では効果が小さく、多く使用するとコスト面で不利になる。
【0028】
抗酸化剤としては、食品添加用の抗酸化剤であれば用いることができるが、とくにトコフェロールの使用が好ましい。トコフェロールはα−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロールのいずれでもよく、またこれらの混合物であってもよい。ただし、コスト及び効果を勘案すると、これらの混合物あるいはδ−トコフェロールの使用が好ましい。これらは、市販品をそのまま使用することができる。その使用量は、不飽和脂肪酸含有油脂に対して0.05%〜5%、好ましくは0.3%〜1%である。上記の量より少ない量では効果が小さく、多く使用しても効果が飽和するのでコスト面で不利になる。
【0029】
前記したように、この改質不飽和脂肪酸含有油脂を使用することで、市販の不飽和脂肪酸含有油脂を使用する場合に比べ、不飽和脂肪酸に特有の臭いを低減しながら、本発明の混合物中における不飽和脂肪酸の含有量をさらに高めることができる。
【0030】
尚、その消臭メカニズムは現在も解明中であるが、現在のところ、上記成分の添加によって不飽和脂肪酸含有油脂に特有の魚臭が低減されるとともに、大豆単細胞内に不飽和脂肪酸が取り込まれてその臭い成分が細胞内に吸着され、細胞内において不飽和脂肪酸のさらなる酸化が防止されるため、比較的高い含有量で不飽和脂肪酸を混合してもその魚臭を殆どなくすことができたものと考えている。
【0031】
また、本発明は、細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂とを使用して製造される食品を提供する。ここに、本発明の食品の特に好ましい実施形態として、加工大豆および改質DHA含有油脂とを使用して製造されるスパゲッティについて紹介する。
【0032】
スパゲッティは、通常、小麦粉(デュラム小麦のセモリナ)、食塩、水のみで作られ、通常は他の添加物を加えることはないとされている。したがって、強い臭いを有する魚油を添加してスパゲッティを作製することは、その臭いがスパゲッティに残留して食味を損なうという理由からこれまで全く試みられたことがないといっても過言ではない。しかし、本発明はこれまでのスパゲッティ業界の常識を覆し、DHAやEPAを含有する魚油を添加したにもかかわらず、DHAやEPAが茹で湯中に溶出せず、食味をほとんど損なわず、時間経過に伴う食感の低下を防止でき、さらに冷凍保存が可能になる等の複数のこれまでにない長所を備えたスパゲッティを提供することが可能になったものである。
【0033】
以下に、本発明の加工大豆粉末と、ゴマ油、レシチン及びトコフェロールを添加して作製した改質DHA含有油脂とを含有するスパゲッティの製造方法の一例を紹介する。表1に本発明のスパゲッティの原料およびその配合量範囲を示す。改質DHA含有油脂中のDHA含有率は約20〜30%である。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示す配合量範囲に基づいて、改質DHA含有油脂に、少量の水を加えて乳化水を作成し、さらに加工大豆粉末が均一に分散するように混合する。一方、水に食塩を添加して混捏水を作成し、デュラム小麦のセモリナ及び先に作成しておいた改質DHA含有油脂と加工大豆粉末を含有する混合物に混捏水を徐々に添加して混捏する。混捏後、生地を熟成させて分割を行う。この後、原料生地計量〜混合プレス成形〜予備乾燥〜本乾燥〜切断〜計量〜包装と工程は進む。
【0036】
本乾燥は、60℃〜80℃の高温チェーンコンベアで熱風乾燥を強制的に行う(6〜10時間)のが一般的であるが、原料生地計量〜混合〜練込〜熟成〜プレス成形〜予備乾燥〜本乾燥〜切断〜計量〜包装でなる工程を採用しても良い。乾燥条件は、30〜35℃以下のファンによる空気の循環を利用した自然乾燥条件を作り上げて製品の水分値が13%以下になるまで長時間(72時間以上)かけて行うのが好ましい。これは、DHA・EPAの性質から低温乾燥の方が好ましいからである。尚、改質DHA含有油脂は優れた酸化防止能力を有するので、長時間乾燥を採用することができる。
【0037】
本発明の加工大豆とDHAを含有するスパゲッティのさらなる長所に関しては、以下に述べる実施例によりさらに具体的に理解されるだろう。
【0038】
尚、大豆単細胞が分散してなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂とを使用して製造される本発明の食品は、上記したスパゲッティに限定されない。例えば、マカロニ、パーミセリ、ペンネ、リゾニ、プリメリーナ、ツイスト、ネスト、ラビオリ、ヌードル、ピザ生地、パン類等の小麦粉利用食品においても同様の効果が得られる。また、スパゲッティ以外のうどんや蕎麦等の麺類にも適している。さらに、これら以外にも、例えば、菓子類等の小麦粉利用食品、ハンバーグやミートボール等の加工肉食品、豆腐、豆乳、豆乳ヨーグルトといった既存の大豆食品、ロールパン、ハンバーガーバンズ、イングリッシュマフィンといったパン類、クリーム、味噌、植物性チーズ、シリアル、ビスケット、クラッカー、ドレッシング、健康食品、こんにゃくゼリー等のダイエットフーズ、餡、クリーム、ジャム、カレー、アイスクリーム、シャーベット等の種々の食品を挙げることができる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
(実施例1)
本実施例で使用した大豆単細胞が分散されてなる加工大豆粉末は、以下のようにして作成した。まず、原料大豆を水洗し、さらに水に12時間浸漬した後、110℃で30分間蒸煮した。これを約60℃まで冷却して0.5wt%のBacillus属の微生物が産生するペクチナーゼを添加し、攪拌しながら35分間放置して酵素処理を行った。その後、スラリーを100℃で15分間加熱して酵素作用を失活させ、大豆ピューレを得た。次に、得られたピューレをスプレードライヤーにて乾燥/粉体化した。このようにして、100%大豆単細胞でなる加工大豆粉末を得た。
【0040】
一方、本実施例で使用した改質不飽和脂肪酸含有油脂には、ゴマ油、レシチン及びトコフェロールを添加して製造した改質DHA含有油脂を用いた。この改質DHA含有油脂は、DHA27%含有精製油脂(日本化学飼料株式会社製)に、室温下でゴマ油(かどや製油株式会社製)を7.8重量%、δ−トコフェロールを0.56重量%、大豆レシチンを3.35重量%添加し、攪拌/混合して得られたものをろ過することにより得た。
【0041】
本実施例のスパゲッティを以下の手順にて製造した。まず、改質DHA含有油脂に混捏用の水27.4重量部のうち0.2重量部を少量づつ加えながら攪拌して乳化水を作成した。さらに、分散型のミキサーを用いて大豆パウダー7.0重量部をこの乳化水に混合分散させた。次いで、デュラム小麦93.0重量部と、加工大豆粉末および改質DHA含有油脂を含有する乳化水を混捏型リボンミキサーに投入し、残り27.2重量部の混捏用の水を拡散させながら添加した。混捏は毎分60回転の速度で4分間行った。混捏により得られた生地を10.0重量部づつに分割してポリエチレン製の袋に取り分け、約25分間常温下で熟成させた。
【0042】
次に、熟成後の生地をパスタ用の製麺機に投入して、スパゲッティを抽出、製麺した。抽出時の圧力は90〜100kg/cm2であった。抽出時のスパゲッティは竿に掛けて乾燥室にて乾燥させた。この時、乾燥の条件は、35℃以下のファンによる空気の循環で72〜75時間かけて行った。乾燥の終了は、製品の水分値が13%以下となることを目安とした。
【0043】
(実施例2)
実施例1と同じ改質DHA含有油脂に混捏用の水27.4重量部のうち0.2重量部を少量づつ加えながら攪拌して乳化水を作成した。さらに、分散型のミキサーを用いて大豆パウダー5.0重量部をこの乳化水に混合分散させた。次いで、デュラム小麦95.0重量部と、加工大豆粉末および改質DHA含有油脂を含有する乳化水を混捏型リボンミキサーに投入し、残り27.2重量部の混捏用の水を拡散させながら添加した。混捏は毎分60回転の速度で4分間行った。混捏により得られた生地を10.0重量部づつに分割してポリエチレン製の袋に取り分け、約23分間常温下で熟成させた。
【0044】
次に、実施例1と同じ条件下で熟成後の生地をパスタ用の製麺機を用いて作成した。尚、比較例として、市販のDHA含有油脂(改質なし)のみを含有するスパゲッティを作成した。実施例1、2および比較例1のスパゲッティの製造に用いた原材料の配合組成を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
(評価)
得られたスパゲッティを試食したところ、比較例1のスパゲッティは、魚臭が残っており、DHAが添加されていることを明確に認識でき、食品としては採用できないという評価であった。これに対して、実施例1および2で得られたスパゲッティは、どちらもおいしくDHA由来の魚臭を全く感じさせなかった。また、加工大豆粉末の使用量を5重量部および7重量部とした実施例1および2のスパゲッティの間で食味の差に大きな違いはなかったが、食感を含めた総合的な評価においては7重量部の方が良好であった。
【0047】
尚、予備実験で加工大豆粉末の使用量を15重量部以上にした場合、食味の低下が試食者によって指摘されたので、本実験条件下ではスパゲッティの良好な食味を得るには、加工大豆粉末の使用量は15重量部までであった。また、加工大豆粉末が0.5重量部より少ない場合には、改質DHA含有油脂の消臭効果が十分でなかった。一方、改質DHA含有油脂に関しては、3重量部の配合であっても十分美味しく、その臭いはDHA添加なしのスパゲッティと変わらなかった。
【0048】
以上より、従来はDHA油を用いたスパゲッティの製造では、DHA由来の魚臭の残留が大きな問題となっていたが、大豆単細胞が分散してなる加工大豆粉末の所定量と併用することで、DHAの魚臭のほとんどが加工大豆粉末に吸着され、デラム小麦のセモリナ粉に混ぜ込んで製造すれば食味の問題は完全に解消できた。また、生スパゲッティを作製した場合(製品の水分値:約30%)の冷凍保存テストでは、解凍した後でもDHA由来の魚臭を感じることなく、良好な食感が維持されることが確認されている。このように、本発明によれば、味および臭いの点ではるかに完成度の高いスパゲッティの製造が可能であることがわかった。
【0049】
ところで、本発明のスパゲッティには、上記した効果に加えて、調理時におけるスパゲッティからのDHA成分の溶出防止効果があることもわかっている。すなわち、スパゲッティを茹でて調理する前後においてスパゲッティに含まれるDHA量の変化、すなわち、DHAの溶出量を測定した。
【0050】
測定方法は以下の通りである。まず、スパゲッティ100gを所定時間茹でた後、湯切りして重量を測定した。この時の重量は水分を吸収して233gになっていた。これをフードカッタで細断して58.3g(=233/4)を採取し、これにクロロホルムおよびメタノールを2/1の割合で混合した溶媒290mlとともにホモミキサーにて3000rpmで5分間混合した。
【0051】
得られた混合液を濾紙No.2で濾過して第1濾液を得た。残渣については、再度クロロホルムおよびメタノールを2/1の割合で混合した溶媒290mlとともにホモミキサーにて3000rpmで5分間混合し、得られたものを第2濾液として第1濾液に混ぜた。その後、第1濾液と第2濾液の混合液を濃縮し、石油エーテル200ml中に溶解し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。得られたものをさらに濃縮した後で重量測定した。この時の重量は0.9gであった。この操作を4回(58.3x4=233)繰返し、合計で3.6gの抽出物を得た。この抽出物にヘキサン/メタノールを1/1の割合で混合した溶媒10mlに分散させ、そのうち1mlを採取してBF3法でメチルエステル化した後、ガスクロマトグラフィー分析を実施した。
【0052】
ガスクロマトグラフィー分析の結果、脂肪酸組成中のDHAは9%であり、調理前のパスタ100gからの抽出物(脂質)3.6g中にDHAは320mg含有しており、茹であげ後においては、スパゲッティ100g中に含まれるDHAは300mgであった。このように、茹であげ後において、茹で上げ前のスパゲッティのDHA量の約94%が保持されており、茹であげ時のDHAの溶出(損失)は極めて少ないことがわかった。
【0053】
(実施例3)
本実施例では、実施例1で作製したのと同じ加工大豆粉末と、以下の改質DHA含有油脂を添加して食パンを製造した。使用した原料およびその配合量を表3に示す。本実施例で使用した改質DHA含有油脂は、DHA27%含有精製油脂(日本化学飼料株式会社製)に、室温下でゴマ油(かどや製油株式会社製)を7.8重量%、α―トコフェロール、β―トコフェロールおよびδ−トコフェロールの混合物を0.56重量%、大豆レシチンを3.35重量%添加し、攪拌/混合して得られたものをろ過することにより得た。
【0054】
本実施例の食パンは以下の手順で作製した。まず、表3に示す量に秤量した原材料を捏上温度28℃で所定時間混合してパン生地を得た。パン生地を90分間発酵させ、所定量に分割、ベンチタイムを経た後、ホイロに38℃、湿度80%、40分保持して焼成を行った。このようにして、本実施例の食パンを得た。
【0055】
【表3】
【0056】
以上のようにして得られた実施例3の食パンを被験者10人に試食してもらい、大豆臭およびDHAの不飽和脂肪酸由来の魚臭が感じられるかどうかをチェックした。結果は、被験者全員が大豆臭もしくは魚臭が全く感じられないとの答えであった。
【0057】
【発明の効果】
上記したように、本発明によれば、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有させることにより不飽和脂肪酸に特有の臭いを低減した改質不飽和脂肪酸含有油脂を、大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と併用することにより、大豆単細胞内にDHAやEPAを吸着させてさらに消臭効果を上げることができる。また、時間経過に伴う酸化も抑制することができるので、単独でも、また他の食品素材と混ぜて調理する場合においても、大豆および不飽和脂肪酸のどちらの臭いもほとんど気にすることなく消費者は摂取することが可能になった。特に、これまでに利用が控えられていたパスタや食パン等の比較的味の薄い小麦粉利用食品への大豆およびDHAやEPAの添加が可能になったことで、大豆本来の栄養成分に加えてDHAやEPAが強化された各種栄養強化食品をその食品本来の味を損なうことなく消費者に提供することができる。
【0058】
このように、本発明の大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂との混合物、および同加工大豆と改質不飽和脂肪酸含有油脂を使用して製造される食品は、これまでにない次世代の栄養強化食品として産業上の利用可能性の極めて高いものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、大豆成分とDHAやEPA等の不飽和脂肪酸とを含有する栄養強化食品に関するものであり、特に、細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂とでなる混合物、および同加工大豆と改質不飽和脂肪酸含有油脂を使用して製造される食品に関するものである。
【0002】
【従来技術】
大豆は、たんぱく質、糖質、脂質、ビタミンをバランスよく含む栄養価の高い食品素材であるとともに、癌や骨粗しょう症等の予防効果、および生活習慣病(成人病)の予防効果を有するイソフラボンやリジン等を含有する優れた食材である。しかしながら、その大豆臭のために料理用の食品素材としての用途は限られていた。
【0003】
そこで、本発明者は、国際出願公開公報WO01/10242号に記載されている酵素を使用した大豆の加工方法により大豆の食品素材としての利用可能性を大幅に広げることに成功した。すなわち、この方法は、Bacillus属の微生物が産生するペクチナーゼを大豆に添加することを本質とするものであり、得られたパウダー状もしくはピューレ状の加工大豆には、細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散され、大豆臭がほとんどしないという特徴を備えている。
【0004】
一方、健康維持の観点から、近年、食生活における不飽和脂肪酸のバランスとれた摂取が重要であるとの認識が高まっている。不飽和脂肪酸としては、魚類に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が特に注目を集めている。これらの不飽和脂肪酸には、心筋梗塞や動脈硬化の予防効果があるとともに、制ガン作用、血中脂質低下作用、血圧降下作用、抗血栓作用、抗アレルギー作用等の多くの優れた生理機能のあることが報告されている。また、DHAには、記憶学習機能の向上効果や網膜反射機能の向上効果があるとされており、EPAは抗血栓効果が高いとされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、DHAが上記のような効果を発現するには、数百mg〜数g程度の量のDHAを毎日摂取することが必要であると言われているが、その独得の臭い(魚臭)のため、単独で摂取する場合は香料等で臭いや味を変えることが行われている。また、調理用の食品素材として使用する場合も、調理後の料理にDHAやEPAの独得の臭いが残留して食味を損なうためその利用は限定されている。さらに、DHA含有パスタ等のDHA含有食品を作成しても、その調理時にDHAやEPAが溶け出し、調理後の料理に含まれるDHAが大幅に減少するために目的としていた量でDHAを含有する食品を得ることが困難であった。
【0006】
このように、DHAやEPAは多くの優れた生理機能を有するものの、消費者が摂取しやすい食品として未だ供給されていないのが現状である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、健全な大豆単細胞が分散してなる加工大豆と改質された不飽和脂肪酸含有油脂とを混合することにより、その臭いが大豆単細胞内に取り込まれ、結果として人間の臭覚では感知できないレベルにまで無臭化された大豆と不飽和脂肪酸の混合物を提供することを目的とする。
【0008】
すなわち、本発明の混合物は、細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂とでなることを特徴とする。
【0009】
本発明の混合物は、大豆と不飽和脂肪酸に特有の臭いがほとんどしないので、混合物それ自体を摂取する場合であっても、香料などを添加して臭いを調整する必要がない。また、他の食材に添加して調理した場合であっても、大豆と不飽和脂肪酸の臭いは人間の臭覚では殆ど感じることができないレベルに維持される。また、調理中に不飽和脂肪酸成分が料理から溶出しにくいという効果もある。特に、改質不飽和脂肪酸含有油脂を用いたことで、従来の不飽和脂肪酸含有油脂を使用する場合に比べて不飽和脂肪酸に特有の臭いの発生を防ぎながら、混合物中における不飽和脂肪酸の含有量を高めることができるという長所がある。
【0010】
本発明の混合物において、改質不飽和脂肪酸含有油脂は、不飽和脂肪酸としてドコサヘキサエン酸(DHA)およびイコサペンタエン酸(EPA)の少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0011】
本発明の混合物中における不飽和脂肪酸の量は、混合物の全重量に関して50%もしくはそれ以下であることが好ましく、より好ましくは0.5〜30%である。不飽和脂肪酸の含有量が50%を超えると、不飽和脂肪酸の臭いを十分に消臭できない恐れがある。また不飽和脂肪酸の下限量については特に限定はないが、不飽和脂肪酸による栄養強化を図る上では0.5%以上であることが好ましい。尚、本発明の混合物中の不飽和脂肪酸量が1〜30%の範囲内にある場合は、加工大豆による不飽和脂肪酸の良好な消臭効果が安定して得られる。
【0012】
本発明の混合物において、上記加工大豆は、Bacillus属の微生物が産生するペクチナーゼを使用して大豆に酵素処理を施すことにより得られるものを使用することが好ましい。この場合、加工大豆は、パウダー状およびピューレ状の一形態にて提供することができる。
【0013】
また、本発明のさらなる目的は、細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂と、水および水性溶媒のうちの一種とでなる混合物を提供することにある。この場合は、加工大豆と、改質不飽和脂肪酸含有油脂に関しては上記と同様のものを用いることができる。水性溶媒としては、レモン汁やミカン汁等の果汁を用いることが好ましい。
【0014】
尚、この混合物中における不飽和脂肪酸の量は、上記混合物中の加工大豆と改質不飽和脂肪酸含有油脂の全重量に関して、50%もしくはそれ以下であることが好ましく、より好ましくは0.5〜30%である。
【0015】
本発明の別の目的は、細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂とを使用して製造される食品を提供することにある。このような食品としては、とくに限定されるものではないが、例えば、スパゲッティ、パン等の小麦粉利用食品を挙げることができる。
【0016】
本発明のさらなる特徴およびそれがもたらす効果は、以下に述べる発明の実施の形態および実施例に基いてより詳細に理解されるだろう。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の加工大豆と改質不飽和脂肪酸含有油脂とでなる混合物について詳細に説明する。
【0018】
本発明に使用される加工大豆は、細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散されてなる。このような加工大豆は、上記したように、本発明者による国際出願公開公報WO01/10242号に記載されている酵素を使用した大豆の加工方法により得ることができる。
【0019】
すなわち、所定量の原料大豆を水洗した後、所定時間、例えば、10〜20時間水に浸漬する。この工程は、大豆の個々の細胞内に十分量の水分を供給し、後に実施される酵素処理を行い易くするためのものである。尚、この浸漬ステップにおいて、後述する酵素処理に使用されるペクチナーゼを前もって微量添加した水を使用しても良い。次に、大豆を水の存在下で加熱処理する。この加熱処理は、大豆に含まれるリポキシゲナ―ゼの作用を失活させるとともに、大豆タンパクを熱変性させて人体への消化吸収性を改善し、さらに細胞間物質を軟化させて後に実施される酵素処理を行い易くする。これらの目的を効率良く達成する上で、大豆を蒸煮処理することが好ましい。蒸煮条件としては、例えば、110℃もしくはそれ以下で30分以上とすることが好ましい。
【0020】
蒸煮した大豆を所定温度に冷却した後、水およびBacillus属の微生物が産生するペクチナーゼを大豆に添加する。蒸煮した大豆は、酵素処理が実施される温度、例えば、約60℃に冷却することが好ましい。また、大豆加工に際してはできるだけ廃棄物あるいは排水を出さないゼロエミッションの観点から、浸漬工程中に大豆から流出した微量の大豆成分(主として蛋白質)さえ捨てることなく利用することが好ましい。すなわち、この工程において大豆に添加される水には、前述した浸漬工程において使用済みの水を利用することが好ましい。また、添加する水の量は、蒸煮後の大豆重量とほぼ同量とすることが好ましい。ペクチナーゼの添加量は特に限定されないが、例えば、浸漬工程前の大豆重量に対して0.5〜0.8wt%とすることが好ましい。
【0021】
得られた混合物を攪拌しながら、例えば、60℃で30分間保持することにより酵素処理を実施する。このような酵素処理条件においては、Bacillus属の微生物が産生するペクチナーゼが大豆の細胞同士を結合するペクチン質であるプロトペクチンに対して強力に作用するので、大豆細胞壁を破壊することなく原料大豆を構成する大豆細胞を個々の大豆単細胞に効率よく分離することが可能となる。
【0022】
尚、攪拌は、例えば、攪拌翼を20〜30回転/分程度の速度で回転させるようなマイルドな条件を採用することが好ましい。このような条件であれば、分離された大豆の単細胞を攪拌によってほぐしながら、大豆細胞に対して均一にペクチナーゼを作用させることができるので、酵素処理をよりスムーズに実施することができる。この酵素処理により大豆単細胞が分散するピューレが得られる。
【0023】
次いで、ペクチナーゼの酵素作用を失活させるためにスラリーに熱処理を施す。例えば、約100℃、15分間スラリーを加熱することが好ましい。加工大豆を液体状態(ピューレ)にて供給する場合は、ここまでの工程で得られたものを使用する。尚、粉末状に加工大豆を供給する場合は、得られたピューレをスプレードライヤー等の噴霧乾燥法により乾燥/粉体化することが好ましい。
【0024】
不飽和脂肪酸としては、生理活性等の点で高度不飽和脂肪酸を挙げることができ、なかでも、カツオやマグロ等の魚類に多く含まれているDHAおよび/あるいはEPAが一般によく知られている。DHAやEPAを健康食品として利用する試みは多くなされているが、これらの高度不飽和脂肪酸は非常に酸化されやすいため、天然トコフェロール、茶抽出物、アスコルビン酸、クエン酸等の酸化防止剤、抑臭材の使用では十分な消臭が達成されていない。特に、時間の経過とともに高度不飽和脂肪酸の酸化が進行して臭いが益々強くなる傾向がある。このため、これらの高度不飽和脂肪酸を主成分とする魚油の食品への添加は、かまぼこや竹輪のような本来ある程度の魚臭を有する食品分野に限定されている。本発明は、このような従来法では消臭困難であった高度不飽和脂肪酸含有魚油であっても、以下に述べるように不飽和脂肪酸含有油脂を改質してなる改質不飽和脂肪酸含有油脂と、大豆単細胞が分散されてなる上記の加工大豆との併用により、より高い含有量でDHAやEPAを使用した場合でも、人間の臭覚では感知できないレベルにまで無臭化できることを見出したものである。
【0025】
すなわち、本発明で使用される改質不飽和脂肪酸含有油脂は、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有することを特徴とするものであり、例えば、市販の不飽和脂肪酸含有油脂に、室温で、ゴマ油、δ−トコフェロール、及び大豆レシチンを添加し、攪拌/混合して得られたものをろ過することにより得ることができる。原料である不飽和脂肪酸含有油脂としては、EPA、DHAを含有する魚油、イカ油等を挙げることができる。例えば、DHAツナオイルのような市販品あるいはこれらの精製油を用いてもよい。あるいは、不飽和脂肪酸の遊離酸、そのエステルおよびリン脂質(リゾ体を含む)等を添加、混合したものであってもよい。
【0026】
ゴマ油としては、通常入手しうるゴマ油を用いることができ、目的とする食品にあわせて適宜選択しうる。その使用量は、不飽和脂肪酸含有油脂に対して2%以上、好ましくは4%以上、より好ましくは6%以上であり、多量に使用すればするほど魚臭の抑制効果が高くなる。通常は25%程度までの範囲内で、望まれる不飽和脂肪酸含有量を考慮して、使用量を適宜選択することができる。
【0027】
界面活性剤としては、食品添加用の界面活性剤であれば用いることができるが、その中でもとくにレシチンの使用が好ましい。レシチンとしては、動物性、植物性のいずれであってもよいが、コスト、入手性等の点で、大豆レシチンが好適である。その使用量は、不飽和脂肪酸含有油脂に対して0.5%〜10%、好ましくは1%〜5%である。上記の量より少ない量では効果が小さく、多く使用するとコスト面で不利になる。
【0028】
抗酸化剤としては、食品添加用の抗酸化剤であれば用いることができるが、とくにトコフェロールの使用が好ましい。トコフェロールはα−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロールのいずれでもよく、またこれらの混合物であってもよい。ただし、コスト及び効果を勘案すると、これらの混合物あるいはδ−トコフェロールの使用が好ましい。これらは、市販品をそのまま使用することができる。その使用量は、不飽和脂肪酸含有油脂に対して0.05%〜5%、好ましくは0.3%〜1%である。上記の量より少ない量では効果が小さく、多く使用しても効果が飽和するのでコスト面で不利になる。
【0029】
前記したように、この改質不飽和脂肪酸含有油脂を使用することで、市販の不飽和脂肪酸含有油脂を使用する場合に比べ、不飽和脂肪酸に特有の臭いを低減しながら、本発明の混合物中における不飽和脂肪酸の含有量をさらに高めることができる。
【0030】
尚、その消臭メカニズムは現在も解明中であるが、現在のところ、上記成分の添加によって不飽和脂肪酸含有油脂に特有の魚臭が低減されるとともに、大豆単細胞内に不飽和脂肪酸が取り込まれてその臭い成分が細胞内に吸着され、細胞内において不飽和脂肪酸のさらなる酸化が防止されるため、比較的高い含有量で不飽和脂肪酸を混合してもその魚臭を殆どなくすことができたものと考えている。
【0031】
また、本発明は、細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂とを使用して製造される食品を提供する。ここに、本発明の食品の特に好ましい実施形態として、加工大豆および改質DHA含有油脂とを使用して製造されるスパゲッティについて紹介する。
【0032】
スパゲッティは、通常、小麦粉(デュラム小麦のセモリナ)、食塩、水のみで作られ、通常は他の添加物を加えることはないとされている。したがって、強い臭いを有する魚油を添加してスパゲッティを作製することは、その臭いがスパゲッティに残留して食味を損なうという理由からこれまで全く試みられたことがないといっても過言ではない。しかし、本発明はこれまでのスパゲッティ業界の常識を覆し、DHAやEPAを含有する魚油を添加したにもかかわらず、DHAやEPAが茹で湯中に溶出せず、食味をほとんど損なわず、時間経過に伴う食感の低下を防止でき、さらに冷凍保存が可能になる等の複数のこれまでにない長所を備えたスパゲッティを提供することが可能になったものである。
【0033】
以下に、本発明の加工大豆粉末と、ゴマ油、レシチン及びトコフェロールを添加して作製した改質DHA含有油脂とを含有するスパゲッティの製造方法の一例を紹介する。表1に本発明のスパゲッティの原料およびその配合量範囲を示す。改質DHA含有油脂中のDHA含有率は約20〜30%である。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示す配合量範囲に基づいて、改質DHA含有油脂に、少量の水を加えて乳化水を作成し、さらに加工大豆粉末が均一に分散するように混合する。一方、水に食塩を添加して混捏水を作成し、デュラム小麦のセモリナ及び先に作成しておいた改質DHA含有油脂と加工大豆粉末を含有する混合物に混捏水を徐々に添加して混捏する。混捏後、生地を熟成させて分割を行う。この後、原料生地計量〜混合プレス成形〜予備乾燥〜本乾燥〜切断〜計量〜包装と工程は進む。
【0036】
本乾燥は、60℃〜80℃の高温チェーンコンベアで熱風乾燥を強制的に行う(6〜10時間)のが一般的であるが、原料生地計量〜混合〜練込〜熟成〜プレス成形〜予備乾燥〜本乾燥〜切断〜計量〜包装でなる工程を採用しても良い。乾燥条件は、30〜35℃以下のファンによる空気の循環を利用した自然乾燥条件を作り上げて製品の水分値が13%以下になるまで長時間(72時間以上)かけて行うのが好ましい。これは、DHA・EPAの性質から低温乾燥の方が好ましいからである。尚、改質DHA含有油脂は優れた酸化防止能力を有するので、長時間乾燥を採用することができる。
【0037】
本発明の加工大豆とDHAを含有するスパゲッティのさらなる長所に関しては、以下に述べる実施例によりさらに具体的に理解されるだろう。
【0038】
尚、大豆単細胞が分散してなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂とを使用して製造される本発明の食品は、上記したスパゲッティに限定されない。例えば、マカロニ、パーミセリ、ペンネ、リゾニ、プリメリーナ、ツイスト、ネスト、ラビオリ、ヌードル、ピザ生地、パン類等の小麦粉利用食品においても同様の効果が得られる。また、スパゲッティ以外のうどんや蕎麦等の麺類にも適している。さらに、これら以外にも、例えば、菓子類等の小麦粉利用食品、ハンバーグやミートボール等の加工肉食品、豆腐、豆乳、豆乳ヨーグルトといった既存の大豆食品、ロールパン、ハンバーガーバンズ、イングリッシュマフィンといったパン類、クリーム、味噌、植物性チーズ、シリアル、ビスケット、クラッカー、ドレッシング、健康食品、こんにゃくゼリー等のダイエットフーズ、餡、クリーム、ジャム、カレー、アイスクリーム、シャーベット等の種々の食品を挙げることができる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
(実施例1)
本実施例で使用した大豆単細胞が分散されてなる加工大豆粉末は、以下のようにして作成した。まず、原料大豆を水洗し、さらに水に12時間浸漬した後、110℃で30分間蒸煮した。これを約60℃まで冷却して0.5wt%のBacillus属の微生物が産生するペクチナーゼを添加し、攪拌しながら35分間放置して酵素処理を行った。その後、スラリーを100℃で15分間加熱して酵素作用を失活させ、大豆ピューレを得た。次に、得られたピューレをスプレードライヤーにて乾燥/粉体化した。このようにして、100%大豆単細胞でなる加工大豆粉末を得た。
【0040】
一方、本実施例で使用した改質不飽和脂肪酸含有油脂には、ゴマ油、レシチン及びトコフェロールを添加して製造した改質DHA含有油脂を用いた。この改質DHA含有油脂は、DHA27%含有精製油脂(日本化学飼料株式会社製)に、室温下でゴマ油(かどや製油株式会社製)を7.8重量%、δ−トコフェロールを0.56重量%、大豆レシチンを3.35重量%添加し、攪拌/混合して得られたものをろ過することにより得た。
【0041】
本実施例のスパゲッティを以下の手順にて製造した。まず、改質DHA含有油脂に混捏用の水27.4重量部のうち0.2重量部を少量づつ加えながら攪拌して乳化水を作成した。さらに、分散型のミキサーを用いて大豆パウダー7.0重量部をこの乳化水に混合分散させた。次いで、デュラム小麦93.0重量部と、加工大豆粉末および改質DHA含有油脂を含有する乳化水を混捏型リボンミキサーに投入し、残り27.2重量部の混捏用の水を拡散させながら添加した。混捏は毎分60回転の速度で4分間行った。混捏により得られた生地を10.0重量部づつに分割してポリエチレン製の袋に取り分け、約25分間常温下で熟成させた。
【0042】
次に、熟成後の生地をパスタ用の製麺機に投入して、スパゲッティを抽出、製麺した。抽出時の圧力は90〜100kg/cm2であった。抽出時のスパゲッティは竿に掛けて乾燥室にて乾燥させた。この時、乾燥の条件は、35℃以下のファンによる空気の循環で72〜75時間かけて行った。乾燥の終了は、製品の水分値が13%以下となることを目安とした。
【0043】
(実施例2)
実施例1と同じ改質DHA含有油脂に混捏用の水27.4重量部のうち0.2重量部を少量づつ加えながら攪拌して乳化水を作成した。さらに、分散型のミキサーを用いて大豆パウダー5.0重量部をこの乳化水に混合分散させた。次いで、デュラム小麦95.0重量部と、加工大豆粉末および改質DHA含有油脂を含有する乳化水を混捏型リボンミキサーに投入し、残り27.2重量部の混捏用の水を拡散させながら添加した。混捏は毎分60回転の速度で4分間行った。混捏により得られた生地を10.0重量部づつに分割してポリエチレン製の袋に取り分け、約23分間常温下で熟成させた。
【0044】
次に、実施例1と同じ条件下で熟成後の生地をパスタ用の製麺機を用いて作成した。尚、比較例として、市販のDHA含有油脂(改質なし)のみを含有するスパゲッティを作成した。実施例1、2および比較例1のスパゲッティの製造に用いた原材料の配合組成を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
(評価)
得られたスパゲッティを試食したところ、比較例1のスパゲッティは、魚臭が残っており、DHAが添加されていることを明確に認識でき、食品としては採用できないという評価であった。これに対して、実施例1および2で得られたスパゲッティは、どちらもおいしくDHA由来の魚臭を全く感じさせなかった。また、加工大豆粉末の使用量を5重量部および7重量部とした実施例1および2のスパゲッティの間で食味の差に大きな違いはなかったが、食感を含めた総合的な評価においては7重量部の方が良好であった。
【0047】
尚、予備実験で加工大豆粉末の使用量を15重量部以上にした場合、食味の低下が試食者によって指摘されたので、本実験条件下ではスパゲッティの良好な食味を得るには、加工大豆粉末の使用量は15重量部までであった。また、加工大豆粉末が0.5重量部より少ない場合には、改質DHA含有油脂の消臭効果が十分でなかった。一方、改質DHA含有油脂に関しては、3重量部の配合であっても十分美味しく、その臭いはDHA添加なしのスパゲッティと変わらなかった。
【0048】
以上より、従来はDHA油を用いたスパゲッティの製造では、DHA由来の魚臭の残留が大きな問題となっていたが、大豆単細胞が分散してなる加工大豆粉末の所定量と併用することで、DHAの魚臭のほとんどが加工大豆粉末に吸着され、デラム小麦のセモリナ粉に混ぜ込んで製造すれば食味の問題は完全に解消できた。また、生スパゲッティを作製した場合(製品の水分値:約30%)の冷凍保存テストでは、解凍した後でもDHA由来の魚臭を感じることなく、良好な食感が維持されることが確認されている。このように、本発明によれば、味および臭いの点ではるかに完成度の高いスパゲッティの製造が可能であることがわかった。
【0049】
ところで、本発明のスパゲッティには、上記した効果に加えて、調理時におけるスパゲッティからのDHA成分の溶出防止効果があることもわかっている。すなわち、スパゲッティを茹でて調理する前後においてスパゲッティに含まれるDHA量の変化、すなわち、DHAの溶出量を測定した。
【0050】
測定方法は以下の通りである。まず、スパゲッティ100gを所定時間茹でた後、湯切りして重量を測定した。この時の重量は水分を吸収して233gになっていた。これをフードカッタで細断して58.3g(=233/4)を採取し、これにクロロホルムおよびメタノールを2/1の割合で混合した溶媒290mlとともにホモミキサーにて3000rpmで5分間混合した。
【0051】
得られた混合液を濾紙No.2で濾過して第1濾液を得た。残渣については、再度クロロホルムおよびメタノールを2/1の割合で混合した溶媒290mlとともにホモミキサーにて3000rpmで5分間混合し、得られたものを第2濾液として第1濾液に混ぜた。その後、第1濾液と第2濾液の混合液を濃縮し、石油エーテル200ml中に溶解し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。得られたものをさらに濃縮した後で重量測定した。この時の重量は0.9gであった。この操作を4回(58.3x4=233)繰返し、合計で3.6gの抽出物を得た。この抽出物にヘキサン/メタノールを1/1の割合で混合した溶媒10mlに分散させ、そのうち1mlを採取してBF3法でメチルエステル化した後、ガスクロマトグラフィー分析を実施した。
【0052】
ガスクロマトグラフィー分析の結果、脂肪酸組成中のDHAは9%であり、調理前のパスタ100gからの抽出物(脂質)3.6g中にDHAは320mg含有しており、茹であげ後においては、スパゲッティ100g中に含まれるDHAは300mgであった。このように、茹であげ後において、茹で上げ前のスパゲッティのDHA量の約94%が保持されており、茹であげ時のDHAの溶出(損失)は極めて少ないことがわかった。
【0053】
(実施例3)
本実施例では、実施例1で作製したのと同じ加工大豆粉末と、以下の改質DHA含有油脂を添加して食パンを製造した。使用した原料およびその配合量を表3に示す。本実施例で使用した改質DHA含有油脂は、DHA27%含有精製油脂(日本化学飼料株式会社製)に、室温下でゴマ油(かどや製油株式会社製)を7.8重量%、α―トコフェロール、β―トコフェロールおよびδ−トコフェロールの混合物を0.56重量%、大豆レシチンを3.35重量%添加し、攪拌/混合して得られたものをろ過することにより得た。
【0054】
本実施例の食パンは以下の手順で作製した。まず、表3に示す量に秤量した原材料を捏上温度28℃で所定時間混合してパン生地を得た。パン生地を90分間発酵させ、所定量に分割、ベンチタイムを経た後、ホイロに38℃、湿度80%、40分保持して焼成を行った。このようにして、本実施例の食パンを得た。
【0055】
【表3】
【0056】
以上のようにして得られた実施例3の食パンを被験者10人に試食してもらい、大豆臭およびDHAの不飽和脂肪酸由来の魚臭が感じられるかどうかをチェックした。結果は、被験者全員が大豆臭もしくは魚臭が全く感じられないとの答えであった。
【0057】
【発明の効果】
上記したように、本発明によれば、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有させることにより不飽和脂肪酸に特有の臭いを低減した改質不飽和脂肪酸含有油脂を、大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と併用することにより、大豆単細胞内にDHAやEPAを吸着させてさらに消臭効果を上げることができる。また、時間経過に伴う酸化も抑制することができるので、単独でも、また他の食品素材と混ぜて調理する場合においても、大豆および不飽和脂肪酸のどちらの臭いもほとんど気にすることなく消費者は摂取することが可能になった。特に、これまでに利用が控えられていたパスタや食パン等の比較的味の薄い小麦粉利用食品への大豆およびDHAやEPAの添加が可能になったことで、大豆本来の栄養成分に加えてDHAやEPAが強化された各種栄養強化食品をその食品本来の味を損なうことなく消費者に提供することができる。
【0058】
このように、本発明の大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂との混合物、および同加工大豆と改質不飽和脂肪酸含有油脂を使用して製造される食品は、これまでにない次世代の栄養強化食品として産業上の利用可能性の極めて高いものである。
Claims (13)
- 細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂とでなる混合物。
- 上記改質不飽和脂肪酸含有油脂は、不飽和脂肪酸としてドコサヘキサエン酸(DHA)およびイコサペンタエン酸(EPA)の少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1に記載の混合物。
- 上記混合物中の不飽和脂肪酸の量は、上記混合物の全重量に関して50%もしくはそれ以下であることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の混合物。
- 上記混合物中の不飽和脂肪酸の量は、上記混合物の全重量に関して0.5〜30%であることを特徴とする請求項3に記載の混合物。
- 上記加工大豆は、Bacillus属の微生物が産生するペクチナーゼを使用して大豆に酵素処理を施すことにより得られるものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の混合物。
- 細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂と、水および水性溶媒のうちの一種とでなる混合物。
- 上記混合物中の不飽和脂肪酸の量は、混合物中の加工大豆と改質不飽和脂肪酸含有油脂の全重量に関して50%もしくはそれ以下であることを特徴とする請求項6に記載の混合物。
- 上記混合物中の不飽和脂肪酸の量は、混合物中の加工大豆と改質不飽和脂肪酸含有油脂の全重量に関して0.5〜30%であることを特徴とする請求項7に記載の混合物。
- 上記水性溶媒は、果汁であることを特徴とする請求項6に記載の混合物。
- 細胞壁・細胞膜の損傷がほとんどなく、細胞内部に蛋白顆粒と脂肪球が健全な状態に保たれている大豆単細胞が分散されてなる加工大豆と、ゴマ油、界面活性剤及び抗酸化剤を含有する改質不飽和脂肪酸含有油脂とを使用して製造される食品。
- 上記食品は、小麦粉利用食品であることを特徴とする請求項10に記載の食品。
- 上記小麦粉利用食品は、スパゲッティ含むことを特徴とする請求項11に記載の食品。
- 上記小麦粉利用食品は、パンを含むことを特徴とする請求項11に記載の食品。
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2002
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