JP2004059826A - ポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物並びにフィルム及びシート - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリエーテル芳香族ケトン樹脂の電器特性を改良し、適切な帯電防止性能を有し、成形性に優れた樹脂成形品の製造を製造する。
【解決手段】ポリエーテル芳香族ケトン樹脂100重量部に対して、導電性フィラーを3重量部〜50重量部を含有してなるポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物及び該樹脂組成物からなるフィルムまたはシートであり、導電性フィラーが板状導電性フィラーまたはカーボンナノチューブ、もしくは両者の組み合わせであるのが好ましい。
【解決手段】ポリエーテル芳香族ケトン樹脂100重量部に対して、導電性フィラーを3重量部〜50重量部を含有してなるポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物及び該樹脂組成物からなるフィルムまたはシートであり、導電性フィラーが板状導電性フィラーまたはカーボンナノチューブ、もしくは両者の組み合わせであるのが好ましい。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエーテル芳香族ケトンを基材とし、機械強度、耐熱性、帯電防止性能等の優れた特性を有する樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂は機械的、化学的、熱的性質および耐摩耗性に優れたエンジニアリングプラスチックとして良く知られている。ポリエーテル芳香族ケトン樹脂単独では絶縁性であるが、ケッチェンブラックやアセチレンブラック等のカーボンブラックを添加することで適切な帯電防止性能を有する樹脂組成物の検討がなされている。これらの樹脂組成物は成形品として使用されることがほとんどである。
【0003】
ポリエーテル芳香族ケトン樹脂にケッチェンブラック等のカーボンブラックを添加した材料をもちいてフィルム、シート加工を行う場合において、帯電防止性能を発現させ、かつシート加工性において満足されるものを得るのは困難である。これは、カーボンブラックの添加により樹脂の軟化溶融挙動が樹脂本来の流動性を悪化させ、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂本来の優れ加工性を失う事になる。
【0004】
また繊維状の導電材料を用いる場合、得られた樹脂成形品の収縮率の異方性が大きく、使用環境下における雰囲気温度が上昇したときの寸法安定性が低下する。その為精度の高い寸法精度を必要とする用途においては使用が困難であった。これらの繊維状強化材は樹脂の流動方向に大きく配行する為、特に溶融押出加工においては、得られるフィルム、シートの寸法変化の異方性という欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、帯電防止性に優れ、かつフィルム、シート製品に加工する時の加工性に優れる樹脂材料を提供する事である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、
[1] ポリエーテル芳香族ケトン樹脂100重量部に対して、導電性フィラー3重量部〜80重量部を含有し、体積抵抗率が1×104Ω・cm以上、1×1013Ω・cm未満の帯電防止性能を有することを特徴とするポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物、
[2] ポリエーテル芳香族ケトン樹脂が式(1)または式(2)で表される繰り返し単位を有するポリエーテル芳香族ケトン樹脂である[1]項記載のポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物、
【0007】
【化3】
【化4】
[3] 導電性フィラーが板状導電性フィラーまたはカーボンナノチューブもしくは両者の組み合わせからなる[1]または[2]項記載のポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物、
[4] [1][2]または[3]項記載のポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物よりなるフィルムまたはシート
である。
【0008】
本発明において使用されるポリエーテル芳香族ケトン樹脂は、特に式(1)または式(2)で表される繰り返し単位を有するポリエーテル芳香族ケトン樹脂を好ましく用いることができる。例えば、式(1)の構造を持つものとしてICI社製PEEK(商品名)等がある。
【0009】
尚、繰り返し単位(1)、(2)の他に以下の繰り返し単位を含ませることも可能である。
【0010】
【化5】
(また式中、Aは直接結合、O、S、SO2、COまたは二価の炭化水素基を示し、QおよびQ’はそれぞれSO2またはCOであり、Ar’は二価の芳香族基であり、mは0,1,2または3である。)
【0011】
本発明に係る樹脂組成物はポリエーテル芳香族ケトン樹脂100重量部に対して、導電性フィラーを3重量部〜80重量部を含有することで、生産性が高く、低コストで適切な帯電防止性能、耐熱性、耐磨耗性、耐薬品性に優れ、かつ成形性に優れた樹脂組成物を得ることが可能になる。
【0012】
本発明における導電性フィラーの添加量はポリエーテル芳香族ケトン樹脂100重量部に対して、3重量部〜80重量部を含有する。好ましくは3重量部〜50重量部である。
【0013】
本発明における導電性フィラーの添加量がポリエーテル芳香族ケトン樹脂に対して3重量部より少ない場合は、得られる樹脂組成物の帯電防止性能が発現しにくくなり好ましくない。また、80重量部より多い場合には樹脂組成物の成形加工性が悪くなり好ましくない。
【0014】
ポリエーテル芳香族ケトン樹脂は、優れた耐熱性、耐磨耗性、耐薬品性、機械強度を有し、かつ射出成形や溶融押出し成形が可能である優れた溶融特性を有している。
【0015】
本発明に用いる導電性フィラーは、板状導電性フィラーまたはカーボンナノチューブもしくは両者の組み合わせからなるカーボンナノチューブ導電フィラーであることが好ましい。
本発明において、導電性フィラーとして、板状導電性フィラーまたはカーボンナノチューブもしくは両者の組み合わせからなるカーボンナノチューブを用いる場合、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂100重量部に対して、カーボンナノチューブ導電フィラーを2重量部〜15重量部、板状導電フィラーを1重量部〜65重量部含有することで、低コストで帯電防止性、耐熱性、耐磨耗性、耐薬品性に優れ、かつ成形性に優れた樹脂組成物を得ることが可能になる。
【0016】
本発明における板状導電フィラーの平均サイズは30μm以下のものを用いる。好ましくは20μm以下である。さらに好ましくは10μm以下である。
【0017】
本発明における板状導電フィラーの平均サイズが30μmより大きな場合、成形品の外観が好ましくなく表面の平滑性が得られにくくなる。また、溶融加工時の流動性が悪化し加工が困難となる。
【0018】
本発明における樹脂組成物は、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂と導電性フィラーが均一に混合していることが望ましい。
【0019】
本発明の効果を阻害しない限り、必要に応じて繊維補強材(ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、セラミック質繊維、アラミド繊維、ボロン繊維等)、粒状または鱗片状強化材(炭酸カルシウム、クレー、タルク、マイカ、グラファイト炭素系、二硫化モリブデン等)、導電性向上材(カーボン系、酸化亜鉛、酸化チタン等)、熱伝導性向上剤(粉末状金属酸化物等)、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑材、離型剤、染料、顔料、他の熱可塑性樹脂(ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリアセタール系、PET系、PBT系、ポリアリレート系、ポリフェニレンサルファイド系、ポリエーテルサルフォン系、ポリサルフォン系、ポリアリレート系、ポリエーテルイミド系、ポリイミド系、フッ素系、ポリエーテルニトリル系、液晶ポリマー系等)、熱硬化性樹脂(フェノール系、エポキシ系、ポリイミド系、シリコン系、ポリアミドイミド系等)を併用しても良い。また、各充填材に対してシランカップリング系等の表面処理を行っても良い。
【0020】
本発明における導電ポリエーテル芳香族ケトン材の添加混合・混錬方法は特に限定されることはなく各種混合・混錬手段が用いられる。例えば、各々別々に溶融押出し機に供給して混合しても良い、またあらかじめ紛体原料のみをヘンシェルミキサー、ボールミキサー、ブレンダー、タンブラー等の混合機を利用して乾式予備混錬し、溶融混錬機にて溶融混錬することができる。成形方法としては基材となる樹脂に適当な成形方法を適用することができる。たとえば射出成形、溶融押出し成形、注型成形、圧縮成形、焼結成形、粉体塗装等の各種成形方法である。
好ましい実施形態としては導電ポリエーテル芳香族ケトン材は溶融押出成形によりフィルムシート化されるものが好ましいが、その押出方法、引き取り方法については特に限定するものではない。
本発明の樹脂材料からなるシートの製法は、溶融押出直後に引き取り冷却ロールにより冷却固化させる方法が好ましい。冷却ロールの表面を平滑にしておくことで、溶融軟化した導電ポリエーテル芳香族ケトン樹脂が固化する際にロール表面の平滑性をシート表面へ転写させることが可能である。冷却ロールの表面をマット加工し、所定の表面粗さを有するシート表面を得る事も可能である。
【0021】
冷却固化工程においては冷却ロールを用いる方法の他に、ベルトコンベア式の引き取りベルトを用いる方法がある。引き取りベルトの表面を平滑にしておくことで、溶融軟化した導電ポリエーテル芳香族ケトン樹脂が固化する際にベルト表面の平滑性をシート表面へ転写させることが可能である。
冷却ロールを用いる場合、シートの片面冷却を行う方法やシート両表面を2台以上のロールを用いて同時に冷却固化させる方法がある。
ベルトコンベア式に引き取る場合、シート片面をベルト搬送により引き取る方法や2台以上のベルトを用いてシート両表面をベルトで挟み込みながら冷却固化搬送する方法がある。
【0022】
導電ポリエーテル芳香族ケトン材の形状としては、特に限定しないが、フィルム、シート形状のまま使用される場合もあるが、熱溶着等の手法でシームレスベルト化して用いる事も可能である。この点はポリエーテル芳香族ケトン樹脂が熱可塑性樹脂であるが故の特徴である。
【0023】
【実施例】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0024】
実施例にて使用した原材料に関しては以下のとおりである。
*1:ポリエーテル芳香族ケトン樹脂
VICTREX製 PEEK380P(商品名)
*2:ケッチェンブラック
ライオン(株)製 ケッチェンブラックEC
*3:アセチレンブラック
電気化学工業(株)製 デンカブラック
*4:炭素繊維
三菱化学(株)製 ダイヤリードK223QG
*5:繊維状導電材
大塚化学(株)製 デントールBK400
*6:板状導電材
大塚化学(株)製 デントールBK400M
*7:カーボンナノチューブ
大塚化学(株)製
【0025】
表に示す各材料を2軸混錬押出機を用いて溶融混錬し、ペレットを製造した。各実施例、および比較例の組成欄の数値は重量部を示す。製造したペレットを単軸押出機とT型ダイス等を用いて溶融押出加工により、また熱プレス加工によりシート状サンプルを得た。
【0026】
各種評価については下記に基づき実施した。
体積抵抗率:JIS K 6911に従い測定した。
成形性:二軸混錬機および単軸混錬機でのストランド加工およびシート加工成形を行い得られたサンプルの外観を目視で評価。外観良好なものを○、表面粗さの大きいもの、または安定した成形品が得られないものについて×とした。
【0027】
本発明の実施例1〜4と比較例1を比較すると、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂単独で用いた比較例1に比較して、導電性フィラーを添加することで成形性を損なわずに帯電防止性能が向上することがわかる。
【0028】
本発明の比較例2について、導電性の小さなフィラーかつその添加量が少ない場合には帯電防止性能を発揮できず、また比較例5について添加量が多すぎる場合には成形性が非常に悪い為加工が困難となることがわかる。
【0029】
本発明の比較例3,4,6について、導電性の小さなフィラーでかつ従来からもちいられているカーボンブラック、また、加工性に悪影響を与える繊維状導電性フィラーでは成形性が悪化し、加工が困難な事が分かる。
【0030】
本発明の比較例7,8について、カーボンブラック、炭素繊維からなる組み合わせでは、加工性が確保できる添加量域においては、十分な帯電防止性能を発現しない事が分かる。
【0031】
【表1】
体積抵抗率(VR):表中の数値単位[log10(VR) Ωcm]
【0032】
【表2】
体積抵抗率(VR):表中の数値単位[log10(VR) Ωcm]
【0033】
【表3】
体積抵抗率(VR):表中の数値単位[log10(VR) Ωcm]
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明における樹脂組成物は適切な帯電防止性能を有し、成形性に優れた樹脂成形品の製造が可能になる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエーテル芳香族ケトンを基材とし、機械強度、耐熱性、帯電防止性能等の優れた特性を有する樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂は機械的、化学的、熱的性質および耐摩耗性に優れたエンジニアリングプラスチックとして良く知られている。ポリエーテル芳香族ケトン樹脂単独では絶縁性であるが、ケッチェンブラックやアセチレンブラック等のカーボンブラックを添加することで適切な帯電防止性能を有する樹脂組成物の検討がなされている。これらの樹脂組成物は成形品として使用されることがほとんどである。
【0003】
ポリエーテル芳香族ケトン樹脂にケッチェンブラック等のカーボンブラックを添加した材料をもちいてフィルム、シート加工を行う場合において、帯電防止性能を発現させ、かつシート加工性において満足されるものを得るのは困難である。これは、カーボンブラックの添加により樹脂の軟化溶融挙動が樹脂本来の流動性を悪化させ、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂本来の優れ加工性を失う事になる。
【0004】
また繊維状の導電材料を用いる場合、得られた樹脂成形品の収縮率の異方性が大きく、使用環境下における雰囲気温度が上昇したときの寸法安定性が低下する。その為精度の高い寸法精度を必要とする用途においては使用が困難であった。これらの繊維状強化材は樹脂の流動方向に大きく配行する為、特に溶融押出加工においては、得られるフィルム、シートの寸法変化の異方性という欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、帯電防止性に優れ、かつフィルム、シート製品に加工する時の加工性に優れる樹脂材料を提供する事である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、
[1] ポリエーテル芳香族ケトン樹脂100重量部に対して、導電性フィラー3重量部〜80重量部を含有し、体積抵抗率が1×104Ω・cm以上、1×1013Ω・cm未満の帯電防止性能を有することを特徴とするポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物、
[2] ポリエーテル芳香族ケトン樹脂が式(1)または式(2)で表される繰り返し単位を有するポリエーテル芳香族ケトン樹脂である[1]項記載のポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物、
【0007】
【化3】
【化4】
[3] 導電性フィラーが板状導電性フィラーまたはカーボンナノチューブもしくは両者の組み合わせからなる[1]または[2]項記載のポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物、
[4] [1][2]または[3]項記載のポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物よりなるフィルムまたはシート
である。
【0008】
本発明において使用されるポリエーテル芳香族ケトン樹脂は、特に式(1)または式(2)で表される繰り返し単位を有するポリエーテル芳香族ケトン樹脂を好ましく用いることができる。例えば、式(1)の構造を持つものとしてICI社製PEEK(商品名)等がある。
【0009】
尚、繰り返し単位(1)、(2)の他に以下の繰り返し単位を含ませることも可能である。
【0010】
【化5】
(また式中、Aは直接結合、O、S、SO2、COまたは二価の炭化水素基を示し、QおよびQ’はそれぞれSO2またはCOであり、Ar’は二価の芳香族基であり、mは0,1,2または3である。)
【0011】
本発明に係る樹脂組成物はポリエーテル芳香族ケトン樹脂100重量部に対して、導電性フィラーを3重量部〜80重量部を含有することで、生産性が高く、低コストで適切な帯電防止性能、耐熱性、耐磨耗性、耐薬品性に優れ、かつ成形性に優れた樹脂組成物を得ることが可能になる。
【0012】
本発明における導電性フィラーの添加量はポリエーテル芳香族ケトン樹脂100重量部に対して、3重量部〜80重量部を含有する。好ましくは3重量部〜50重量部である。
【0013】
本発明における導電性フィラーの添加量がポリエーテル芳香族ケトン樹脂に対して3重量部より少ない場合は、得られる樹脂組成物の帯電防止性能が発現しにくくなり好ましくない。また、80重量部より多い場合には樹脂組成物の成形加工性が悪くなり好ましくない。
【0014】
ポリエーテル芳香族ケトン樹脂は、優れた耐熱性、耐磨耗性、耐薬品性、機械強度を有し、かつ射出成形や溶融押出し成形が可能である優れた溶融特性を有している。
【0015】
本発明に用いる導電性フィラーは、板状導電性フィラーまたはカーボンナノチューブもしくは両者の組み合わせからなるカーボンナノチューブ導電フィラーであることが好ましい。
本発明において、導電性フィラーとして、板状導電性フィラーまたはカーボンナノチューブもしくは両者の組み合わせからなるカーボンナノチューブを用いる場合、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂100重量部に対して、カーボンナノチューブ導電フィラーを2重量部〜15重量部、板状導電フィラーを1重量部〜65重量部含有することで、低コストで帯電防止性、耐熱性、耐磨耗性、耐薬品性に優れ、かつ成形性に優れた樹脂組成物を得ることが可能になる。
【0016】
本発明における板状導電フィラーの平均サイズは30μm以下のものを用いる。好ましくは20μm以下である。さらに好ましくは10μm以下である。
【0017】
本発明における板状導電フィラーの平均サイズが30μmより大きな場合、成形品の外観が好ましくなく表面の平滑性が得られにくくなる。また、溶融加工時の流動性が悪化し加工が困難となる。
【0018】
本発明における樹脂組成物は、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂と導電性フィラーが均一に混合していることが望ましい。
【0019】
本発明の効果を阻害しない限り、必要に応じて繊維補強材(ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、セラミック質繊維、アラミド繊維、ボロン繊維等)、粒状または鱗片状強化材(炭酸カルシウム、クレー、タルク、マイカ、グラファイト炭素系、二硫化モリブデン等)、導電性向上材(カーボン系、酸化亜鉛、酸化チタン等)、熱伝導性向上剤(粉末状金属酸化物等)、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑材、離型剤、染料、顔料、他の熱可塑性樹脂(ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリアセタール系、PET系、PBT系、ポリアリレート系、ポリフェニレンサルファイド系、ポリエーテルサルフォン系、ポリサルフォン系、ポリアリレート系、ポリエーテルイミド系、ポリイミド系、フッ素系、ポリエーテルニトリル系、液晶ポリマー系等)、熱硬化性樹脂(フェノール系、エポキシ系、ポリイミド系、シリコン系、ポリアミドイミド系等)を併用しても良い。また、各充填材に対してシランカップリング系等の表面処理を行っても良い。
【0020】
本発明における導電ポリエーテル芳香族ケトン材の添加混合・混錬方法は特に限定されることはなく各種混合・混錬手段が用いられる。例えば、各々別々に溶融押出し機に供給して混合しても良い、またあらかじめ紛体原料のみをヘンシェルミキサー、ボールミキサー、ブレンダー、タンブラー等の混合機を利用して乾式予備混錬し、溶融混錬機にて溶融混錬することができる。成形方法としては基材となる樹脂に適当な成形方法を適用することができる。たとえば射出成形、溶融押出し成形、注型成形、圧縮成形、焼結成形、粉体塗装等の各種成形方法である。
好ましい実施形態としては導電ポリエーテル芳香族ケトン材は溶融押出成形によりフィルムシート化されるものが好ましいが、その押出方法、引き取り方法については特に限定するものではない。
本発明の樹脂材料からなるシートの製法は、溶融押出直後に引き取り冷却ロールにより冷却固化させる方法が好ましい。冷却ロールの表面を平滑にしておくことで、溶融軟化した導電ポリエーテル芳香族ケトン樹脂が固化する際にロール表面の平滑性をシート表面へ転写させることが可能である。冷却ロールの表面をマット加工し、所定の表面粗さを有するシート表面を得る事も可能である。
【0021】
冷却固化工程においては冷却ロールを用いる方法の他に、ベルトコンベア式の引き取りベルトを用いる方法がある。引き取りベルトの表面を平滑にしておくことで、溶融軟化した導電ポリエーテル芳香族ケトン樹脂が固化する際にベルト表面の平滑性をシート表面へ転写させることが可能である。
冷却ロールを用いる場合、シートの片面冷却を行う方法やシート両表面を2台以上のロールを用いて同時に冷却固化させる方法がある。
ベルトコンベア式に引き取る場合、シート片面をベルト搬送により引き取る方法や2台以上のベルトを用いてシート両表面をベルトで挟み込みながら冷却固化搬送する方法がある。
【0022】
導電ポリエーテル芳香族ケトン材の形状としては、特に限定しないが、フィルム、シート形状のまま使用される場合もあるが、熱溶着等の手法でシームレスベルト化して用いる事も可能である。この点はポリエーテル芳香族ケトン樹脂が熱可塑性樹脂であるが故の特徴である。
【0023】
【実施例】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0024】
実施例にて使用した原材料に関しては以下のとおりである。
*1:ポリエーテル芳香族ケトン樹脂
VICTREX製 PEEK380P(商品名)
*2:ケッチェンブラック
ライオン(株)製 ケッチェンブラックEC
*3:アセチレンブラック
電気化学工業(株)製 デンカブラック
*4:炭素繊維
三菱化学(株)製 ダイヤリードK223QG
*5:繊維状導電材
大塚化学(株)製 デントールBK400
*6:板状導電材
大塚化学(株)製 デントールBK400M
*7:カーボンナノチューブ
大塚化学(株)製
【0025】
表に示す各材料を2軸混錬押出機を用いて溶融混錬し、ペレットを製造した。各実施例、および比較例の組成欄の数値は重量部を示す。製造したペレットを単軸押出機とT型ダイス等を用いて溶融押出加工により、また熱プレス加工によりシート状サンプルを得た。
【0026】
各種評価については下記に基づき実施した。
体積抵抗率:JIS K 6911に従い測定した。
成形性:二軸混錬機および単軸混錬機でのストランド加工およびシート加工成形を行い得られたサンプルの外観を目視で評価。外観良好なものを○、表面粗さの大きいもの、または安定した成形品が得られないものについて×とした。
【0027】
本発明の実施例1〜4と比較例1を比較すると、ポリエーテル芳香族ケトン樹脂単独で用いた比較例1に比較して、導電性フィラーを添加することで成形性を損なわずに帯電防止性能が向上することがわかる。
【0028】
本発明の比較例2について、導電性の小さなフィラーかつその添加量が少ない場合には帯電防止性能を発揮できず、また比較例5について添加量が多すぎる場合には成形性が非常に悪い為加工が困難となることがわかる。
【0029】
本発明の比較例3,4,6について、導電性の小さなフィラーでかつ従来からもちいられているカーボンブラック、また、加工性に悪影響を与える繊維状導電性フィラーでは成形性が悪化し、加工が困難な事が分かる。
【0030】
本発明の比較例7,8について、カーボンブラック、炭素繊維からなる組み合わせでは、加工性が確保できる添加量域においては、十分な帯電防止性能を発現しない事が分かる。
【0031】
【表1】
体積抵抗率(VR):表中の数値単位[log10(VR) Ωcm]
【0032】
【表2】
体積抵抗率(VR):表中の数値単位[log10(VR) Ωcm]
【0033】
【表3】
体積抵抗率(VR):表中の数値単位[log10(VR) Ωcm]
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明における樹脂組成物は適切な帯電防止性能を有し、成形性に優れた樹脂成形品の製造が可能になる。
Claims (4)
- ポリエーテル芳香族ケトン樹脂100重量部に対して、導電性フィラー3重量部〜50重量部を含有し、体積抵抗率が1×104Ω・cm以上、1×1013Ω・cm未満の帯電防止性能を有することを特徴とするポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物。
- 導電性フィラーが板状導電性フィラーまたはカーボンナノチューブもしくは両者の組み合わせからなる請求項1または2記載のポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物。
- 請求項1、2または3記載のポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物よりなるフィルムまたはシート。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002222412A JP2004059826A (ja) | 2002-07-31 | 2002-07-31 | ポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物並びにフィルム及びシート |
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JP2002222412A JP2004059826A (ja) | 2002-07-31 | 2002-07-31 | ポリエーテル芳香族ケトン樹脂組成物並びにフィルム及びシート |
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JP2004059826A true JP2004059826A (ja) | 2004-02-26 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2005042617A1 (ja) | 2003-10-31 | 2005-05-12 | Fuji Xerox Co. Ltd. | 主鎖にケトン基を有する脂肪族ポリマーの製造方法及び主鎖にケトン基を有する脂肪族ポリマー含有組成物の製造方法 |
WO2005042618A1 (ja) * | 2003-10-31 | 2005-05-12 | Fuji Xerox Co. Ltd. | 主鎖にケトン基とエーテル結合を有する脂肪族ポリマー、および樹脂組成物 |
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2002
- 2002-07-31 JP JP2002222412A patent/JP2004059826A/ja active Pending
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