JP2004059385A - セメント強化用ポリプロピレン繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリオレフィン樹脂繊維に対して親水性を付与でき、セメントマトリックスとの接着性に優れ、セメント成形物を強化することができ、セメント成形物の曲げ強度や衝撃強度を向上させるセメント強化用ポリオレフィン樹脂繊維を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリプロピレン繊維に対し、表面処理剤としてスルホン酸化合物またはカルボン酸化合物の少なくとも1種の化合物を0.3〜10重量%付着させてなることを特徴とするセメント強化用ポリプロピレン繊維、に存する。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリプロピレン繊維に対し、表面処理剤としてスルホン酸化合物またはカルボン酸化合物の少なくとも1種の化合物を0.3〜10重量%付着させてなることを特徴とするセメント強化用ポリプロピレン繊維、に存する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメントマトリックスとの接着性に優れ、セメント成形物を強化するために用いるセメント強化用ポリプロピレン繊維に関するものである。
【0002】
【従来技術】
セメント成形品の補強材として長年使用されていたアスベストの代わりに、合成樹脂繊維として、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂等が用いられている。
しかしながら、セメント成形品の養生は寸法安定性向上、養生時間の短縮等の目的でオートクレーブで行うことが近年は増加しており、こうしたオートクレーブ養生を行う場合には、ポリオレフィン系以外の繊維は耐熱アルカリ性の不足から劣化してしまうために補強繊維として用いることができなかった。
これらのことより、ポリオレフィン樹脂繊維は、耐熱アルカリ性があるため多用されているが、ポリオレフィン樹脂は、その分子構造内に親水性基やセメントとの接着性に有効な官能基がほとんど存在しないため、セメントマトリックスとの接着性が極めて悪く、ポリオレフィン樹脂繊維で補強したセメント成形体を破壊すると容易に繊維が引き抜けてしまい、繊維の引き抜き抵抗による衝撃強度や曲げ破壊エネルギーの増大は認められても、曲げ強度を大きく向上させるには至らない欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
かかるポリオレフィン樹脂繊維のセメントとの親和性を改良するために、界面活性剤、例えば、ノルマルアルキルホスフェートアルカリ金属塩からなる界面活性剤、または、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステルとポリオキシアルキレン脂肪酸エステルからなる界面活性剤等をそれぞれ塗布する方法が提案されている(特開平5−170497号公報及び特開平10−236855号公報等)。
しかしながら、上記提案の界面活性剤はポリオレフィン系樹脂繊維との接着性がないため、セメントマトリックスと界面活性剤が接着したとしても、繊維とマトリックス間で十分接着力が得られないという欠点があった。
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解消するためになされたもので、ポリオレフィン樹脂繊維に対して親水性を付与でき、セメントマトリックスとの接着性に優れ、セメント成形物を強化することができ、セメント成形物の曲げ強度や衝撃強度を向上させるセメント強化用ポリオレフィン樹脂繊維を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を技術的に解決するために、ポリオレフィン樹脂繊維に対して特定の表面処理剤で塗布処理することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、ポリプロピレン繊維に対し、表面処理剤としてスルホン酸化合物またはカルボン酸化合物の少なくとも1種の化合物を0.3〜10重量%付着させてなることを特徴とするセメント強化用ポリプロピレン繊維、に存する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるポリプロピレンとは、プロピレン単独重合体、エチレンープロピレンブロック共重合体あるいはランダム共重合体などの公知のポリプロピレン共重合体またはそれらの混合物を使用することができるが、これらの内でも高強度、耐熱性を要求されるセメント強化用としてはプロピレン単独重合体が望ましく、特にアイソタクチックペンタッド率0.95以上のものを選択することが望ましい。
ここでアイソタクチックペンタッド分率とは、A.Zambelli 等によって Macromolecules 6 925(1973) に発表された、13C−NMRを使用して測定されるポリプロピレン分子内のペンタッド単位でのアイソタクチック分率を意味する。
上記ポリプロピレンのメルトフローレート(以下、MFRと略す)は0.1〜50g/10分、好ましくは1〜40g/10分、さらに好ましくは5〜30g/10分の範囲から選択するのがよい。
【0006】
ポリプロピレン繊維の製造方法としては、公知の溶融紡糸方法を採用できるが、高倍率の延伸処理の可能な連糸形状ダイスを用いて紡糸を行なうポリプロピレン繊維がより好ましい。この方法はポリプロピレンを連糸形状ダイスから溶融押出し、次に押出された連糸形状テープのまま延伸処理を施し繊維を形成する。
連糸形状ダイスは少なくとも2個のノズルをシリーズに連結した形状を有しているが、通常5〜20個、好ましくは10〜15個のノズルを連結した形状である。
【0007】
ポリプロピレン繊維の延伸処理はポリプロピレンの融点以下、軟化点以上の温度下に行われるが、加熱方式としては、熱ロール式、熱板式、赤外線式、熱風式等いずれの方式も採用でき、これらの内では内部から電熱加熱されたコンベックス状熱板上で加熱される熱板式が高速生産性、安定性の上で好ましい。
加熱されたポリプロピレン繊維は、前後ロールの周速度差により延伸を行う。延伸倍率は通常3〜20倍、好ましくは5〜15倍、さらに好ましくは8〜12倍の範囲である。
延伸された繊維の引張強度は5g/dt以上でらり、好ましくは7g/dt以上である。引張強度が5g/dt未満では、補強効果が不十分となる。
【0008】
形成されるポリプロピレン繊維の単糸繊度は5〜100デシテクス(dtと略す)の範囲であり、好ましくは10〜60dtの範囲である。上記単糸繊度が5dt未満では、繊維が細すぎて分散が不均一になり、また、100dtを越えると、セメントとの接触面積が減少し補強効果が劣る。
【0009】
本発明においては、ポリプロピレン繊維に対して、下記表面処理剤を用いて、ポリプロピレン繊維表面に塗布して付着させ、表面処理を施す。上記表面処理前には、必要に応じてコロナ処理や電子線照射等を施してもよい。
【0010】
本発明に用いる表面処理剤は、スルホン酸化合物またはカルボン酸化合物の少なくとも1種の化合物を主成分とするものであり、これらの一種又は二種以上が使用される。
スルホン酸化合物としては、リグニンスルホン酸系化合物、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、アントラセンスルホン酸ホルマリン縮合物、芳香族アミノスルホン酸系化合物等が挙げられる。また、カルボン酸化合物としては、オキシカルボン酸系化合物、ポリカルボン酸系化合物等が挙げられる。
これらの中で、リグニンスルホン酸系化合物、特にリグニンスルホン酸化合物及びポリオール複合体が好ましい。
具体的には、これらの表面処理剤として、生コンクリートの高流動性を付与させる目的で使用されるAE減水剤や高性能AE減水剤、例えば、エヌエムビー社のポゾリスシリーズのAE減水剤、レオビルドSPシリーズの高性能AE減水剤等が挙げられ、これらを本発明の表面処理剤として好適に用いることができる。
【0011】
上記表面処理剤のポリプロピレン繊維に対する付着方法としては、一般に表面処理剤をポリプロピレン繊維に塗布する方法により行われる。この塗布方法としては、表面処理剤溶液中にポリプロピレン繊維を浸漬して塗布するディップコート法、ポリプロピレン繊維に表面処理剤溶液をスプレーして塗布するスプレーコート法、刷毛塗りやロールコータを用いてポリプロピレン繊維に表面処理剤溶液を塗布する方法等が挙げられ、これらのうちディップコート法が好ましい。
【0012】
上記表面処理剤のポリプロピレン繊維に対する付着量は、総繊維に対して0.3〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。付着量が総繊維に対して0.3重量%未満ではポリプロピレン繊維に親水性が十分付与されず、5重量%を超えるとポリプロピレン繊維の親水性の付与効果がそれ以上向上せず、逆にコストが上昇するので、好ましくない。
【0013】
上記で得られたポリプロピレン繊維は、所定長さにカットされる。カットされる繊維長は3〜30mmの範囲であり、好ましくは5〜15mmの範囲である。繊維長が3mm未満では、セメントからの抜けが生じ、30mmを越えると分散性が不良となるので、好ましくない。
【0014】
上記ポリプロピレン繊維には、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、無機充填材、有機充填材、架橋剤、発泡剤、核剤等の添加剤を配合してもよい。
【0015】
本発明のポリプロピレン繊維を混合し得るセメントとしては、ポルトランドセメント、白色ッポルトランドセメント、アルミナセメント等の水硬性セメントまたは石膏、石灰等の気硬性セメント等のセメント類を挙げることができる。
上記ポリプロピレン繊維の配合量は、セメントに対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。配合量が0.1重量%未満では補強効果が劣り、10重量%以上では均一な分散が困難である上に、曲げ強度が低下するので、好ましくない。
【0016】
本発明のポリプロピレン繊維をセメントに混合する方法としては、セメント粉体にポリプロピレン繊維を分散する方法、セメントスラリー中にポリプロピレン繊維を分散するプレミックス法、セメントとポリプロピレン繊維および水を同時に吹き付けるスプレーアップ法などの公知の方法を用いることができる。
これらの方法によって得られたセメントスラリーを、用途により抄造成形法、押出成形法、注入成形法等公知の成形法にしたがって成形し、常温で数十日間大気中または水中に放置する自然養生法または2〜3日常温で放置後100〜200℃の温度で処理されるオートクレーブ養生法により養生硬化しセメント成形品とする。
【0017】
本発明のポリプロピレン繊維を用いて製造されるセメント成形品の用途としては、あらゆるセメント製品にわたるものであるが、例えば建造物の壁材、床材コンクリート、仕上げモルタル、防水コンクリート、スレート屋根材等、あるいは土木関係部材としては道路、滑走路等の舗装、道路標識、側溝等の道路部材、下水管、ケーブルダクト等のパイプ類、漁礁、護岸ブロック、テトラポット等、その他各種構築物として枕木、ベンチ、フラワーポット等に使用できる。
【0018】
(試験方法)
(1)MFR:JISK6922−1準拠
(2)曲げ強度:JISA1408準拠
(3)シャルピー衝撃強度:JISB7722準拠
(4)分散性評価:ポリプロピレン繊維とセメントを混練しセメントスラリーを作成し、表面の状態を目視により評価した。
【0019】
以下、実施例により、さらに詳細に説明する。
実施例1:
ポリプロピレン(MFR=1.0g/10min.)を押出機に供給し、樹脂温度230℃で、2mmφ×10孔の連糸形状ノズルから押出し、熱板接触式延伸法で延伸温度130℃、アニーリング温度135℃、延伸倍率12倍に延伸した。得られた延伸糸の単糸繊度は50dtであった。
この延伸糸を表面処理剤として、リグニンスルホン酸化合物及びポリオール複合体からなる処理液((株)エムエムビー製ポゾリスNo.70)に浸漬処理後、乾燥して表面処理剤1重量%を塗布させた。
上記延伸糸を10mm長になるようにカットし、短繊維を得た。
セメント成形品の成形はJISR5201に準拠して行った。すなわちポルトランドセメント100重量部と標準砂200重量部とを十分混合し、上記配合物を5重量部添加し、水65重量部を加えて全体が均一になるように混練した後、40mm×40mm×160mmの型枠に流し込み、大気中、常温で48時間放置した後、オートクレーブ中で165℃、20時間養生を行った。
得られた成形物の曲げ強度は22.5MPa、シャルピ衝撃強度は8.0KJ/m2、分散性は良好であった。
【0020】
実施例2:
表面処理剤として、リグニンスルホン酸化合物からなる処理液((株)エムエムビー製ポゾリスNo.72)に浸漬処理後、乾燥して表面処理剤1重量%を塗布させたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
得られた成形物の曲げ強度は22.0MPa、シャルピ衝撃強度は7.5KJ/m2、分散性は良好であった。
【0021】
比較例1
表面処理剤として、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸エステル(HLB=8.0)50重量%とポリオキシエチレンオレイン酸エステル(HLB=9.0)50重量%を混合した表面処理剤水溶液を作成し、浸漬処理後、乾燥して表面処理剤1重量%を塗布させたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
得られた成形物の曲げ強度は19.0MPa、シャルピー衝撃強度は6.5KJ/m2、繊維の分散性は良好であった。
【0022】
比較例2
表面処理剤として、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸エステル(HLB=8.0)70重量%とポリオキシエチレンオレイン酸エステル(HLB=9.0)30重量%を混合して表面処理剤水溶液を作成し、浸漬処理後、乾燥して表面処理剤1重量%を塗布させたこと以外は実施例1と同様にセメント成形品を成形した。
得られた成形物の曲げ強度は16.5MPa、シャルピー衝撃強度は3.5KJ/m2、繊維の分散性は不良であった。
【0023】
比較例3
表面処理剤として、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸エス
テル(HLB=8.0)30重量%とポリオキシエチレンオレイン酸エステル(HLB=9.0)70重量%を混合して表面処理剤水溶液を作成し、浸漬処理後、乾燥して表面処理剤1重量%を塗布させたこと以外は実施例1と同様にセメント成形品を成形した。
得られた成形物の曲げ強度は17.5MPa、シャルピー衝撃強度は2.8KJ/m2、繊維の分散性はやや不良であった。
【0024】
【発明の効果】
本発明のセメント強化用ポリプロピレン繊維は、ポリプロピレン繊維に対し、スルホン酸化合物またはカルボン酸化合物からなる表面処理剤を塗布して付着させてなるものであって、ポリプロピレン繊維とセメントとの界面における優れた親和性を付与でき、セメントマトリックスとの接着性に優れ、セメント成形物を強化することができ、セメント成形物の曲げ強度、衝撃強度に優れたセメント成形物の製造が可能となるポリプロピレン繊維を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメントマトリックスとの接着性に優れ、セメント成形物を強化するために用いるセメント強化用ポリプロピレン繊維に関するものである。
【0002】
【従来技術】
セメント成形品の補強材として長年使用されていたアスベストの代わりに、合成樹脂繊維として、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂等が用いられている。
しかしながら、セメント成形品の養生は寸法安定性向上、養生時間の短縮等の目的でオートクレーブで行うことが近年は増加しており、こうしたオートクレーブ養生を行う場合には、ポリオレフィン系以外の繊維は耐熱アルカリ性の不足から劣化してしまうために補強繊維として用いることができなかった。
これらのことより、ポリオレフィン樹脂繊維は、耐熱アルカリ性があるため多用されているが、ポリオレフィン樹脂は、その分子構造内に親水性基やセメントとの接着性に有効な官能基がほとんど存在しないため、セメントマトリックスとの接着性が極めて悪く、ポリオレフィン樹脂繊維で補強したセメント成形体を破壊すると容易に繊維が引き抜けてしまい、繊維の引き抜き抵抗による衝撃強度や曲げ破壊エネルギーの増大は認められても、曲げ強度を大きく向上させるには至らない欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
かかるポリオレフィン樹脂繊維のセメントとの親和性を改良するために、界面活性剤、例えば、ノルマルアルキルホスフェートアルカリ金属塩からなる界面活性剤、または、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステルとポリオキシアルキレン脂肪酸エステルからなる界面活性剤等をそれぞれ塗布する方法が提案されている(特開平5−170497号公報及び特開平10−236855号公報等)。
しかしながら、上記提案の界面活性剤はポリオレフィン系樹脂繊維との接着性がないため、セメントマトリックスと界面活性剤が接着したとしても、繊維とマトリックス間で十分接着力が得られないという欠点があった。
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解消するためになされたもので、ポリオレフィン樹脂繊維に対して親水性を付与でき、セメントマトリックスとの接着性に優れ、セメント成形物を強化することができ、セメント成形物の曲げ強度や衝撃強度を向上させるセメント強化用ポリオレフィン樹脂繊維を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を技術的に解決するために、ポリオレフィン樹脂繊維に対して特定の表面処理剤で塗布処理することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、ポリプロピレン繊維に対し、表面処理剤としてスルホン酸化合物またはカルボン酸化合物の少なくとも1種の化合物を0.3〜10重量%付着させてなることを特徴とするセメント強化用ポリプロピレン繊維、に存する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるポリプロピレンとは、プロピレン単独重合体、エチレンープロピレンブロック共重合体あるいはランダム共重合体などの公知のポリプロピレン共重合体またはそれらの混合物を使用することができるが、これらの内でも高強度、耐熱性を要求されるセメント強化用としてはプロピレン単独重合体が望ましく、特にアイソタクチックペンタッド率0.95以上のものを選択することが望ましい。
ここでアイソタクチックペンタッド分率とは、A.Zambelli 等によって Macromolecules 6 925(1973) に発表された、13C−NMRを使用して測定されるポリプロピレン分子内のペンタッド単位でのアイソタクチック分率を意味する。
上記ポリプロピレンのメルトフローレート(以下、MFRと略す)は0.1〜50g/10分、好ましくは1〜40g/10分、さらに好ましくは5〜30g/10分の範囲から選択するのがよい。
【0006】
ポリプロピレン繊維の製造方法としては、公知の溶融紡糸方法を採用できるが、高倍率の延伸処理の可能な連糸形状ダイスを用いて紡糸を行なうポリプロピレン繊維がより好ましい。この方法はポリプロピレンを連糸形状ダイスから溶融押出し、次に押出された連糸形状テープのまま延伸処理を施し繊維を形成する。
連糸形状ダイスは少なくとも2個のノズルをシリーズに連結した形状を有しているが、通常5〜20個、好ましくは10〜15個のノズルを連結した形状である。
【0007】
ポリプロピレン繊維の延伸処理はポリプロピレンの融点以下、軟化点以上の温度下に行われるが、加熱方式としては、熱ロール式、熱板式、赤外線式、熱風式等いずれの方式も採用でき、これらの内では内部から電熱加熱されたコンベックス状熱板上で加熱される熱板式が高速生産性、安定性の上で好ましい。
加熱されたポリプロピレン繊維は、前後ロールの周速度差により延伸を行う。延伸倍率は通常3〜20倍、好ましくは5〜15倍、さらに好ましくは8〜12倍の範囲である。
延伸された繊維の引張強度は5g/dt以上でらり、好ましくは7g/dt以上である。引張強度が5g/dt未満では、補強効果が不十分となる。
【0008】
形成されるポリプロピレン繊維の単糸繊度は5〜100デシテクス(dtと略す)の範囲であり、好ましくは10〜60dtの範囲である。上記単糸繊度が5dt未満では、繊維が細すぎて分散が不均一になり、また、100dtを越えると、セメントとの接触面積が減少し補強効果が劣る。
【0009】
本発明においては、ポリプロピレン繊維に対して、下記表面処理剤を用いて、ポリプロピレン繊維表面に塗布して付着させ、表面処理を施す。上記表面処理前には、必要に応じてコロナ処理や電子線照射等を施してもよい。
【0010】
本発明に用いる表面処理剤は、スルホン酸化合物またはカルボン酸化合物の少なくとも1種の化合物を主成分とするものであり、これらの一種又は二種以上が使用される。
スルホン酸化合物としては、リグニンスルホン酸系化合物、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、アントラセンスルホン酸ホルマリン縮合物、芳香族アミノスルホン酸系化合物等が挙げられる。また、カルボン酸化合物としては、オキシカルボン酸系化合物、ポリカルボン酸系化合物等が挙げられる。
これらの中で、リグニンスルホン酸系化合物、特にリグニンスルホン酸化合物及びポリオール複合体が好ましい。
具体的には、これらの表面処理剤として、生コンクリートの高流動性を付与させる目的で使用されるAE減水剤や高性能AE減水剤、例えば、エヌエムビー社のポゾリスシリーズのAE減水剤、レオビルドSPシリーズの高性能AE減水剤等が挙げられ、これらを本発明の表面処理剤として好適に用いることができる。
【0011】
上記表面処理剤のポリプロピレン繊維に対する付着方法としては、一般に表面処理剤をポリプロピレン繊維に塗布する方法により行われる。この塗布方法としては、表面処理剤溶液中にポリプロピレン繊維を浸漬して塗布するディップコート法、ポリプロピレン繊維に表面処理剤溶液をスプレーして塗布するスプレーコート法、刷毛塗りやロールコータを用いてポリプロピレン繊維に表面処理剤溶液を塗布する方法等が挙げられ、これらのうちディップコート法が好ましい。
【0012】
上記表面処理剤のポリプロピレン繊維に対する付着量は、総繊維に対して0.3〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。付着量が総繊維に対して0.3重量%未満ではポリプロピレン繊維に親水性が十分付与されず、5重量%を超えるとポリプロピレン繊維の親水性の付与効果がそれ以上向上せず、逆にコストが上昇するので、好ましくない。
【0013】
上記で得られたポリプロピレン繊維は、所定長さにカットされる。カットされる繊維長は3〜30mmの範囲であり、好ましくは5〜15mmの範囲である。繊維長が3mm未満では、セメントからの抜けが生じ、30mmを越えると分散性が不良となるので、好ましくない。
【0014】
上記ポリプロピレン繊維には、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、無機充填材、有機充填材、架橋剤、発泡剤、核剤等の添加剤を配合してもよい。
【0015】
本発明のポリプロピレン繊維を混合し得るセメントとしては、ポルトランドセメント、白色ッポルトランドセメント、アルミナセメント等の水硬性セメントまたは石膏、石灰等の気硬性セメント等のセメント類を挙げることができる。
上記ポリプロピレン繊維の配合量は、セメントに対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。配合量が0.1重量%未満では補強効果が劣り、10重量%以上では均一な分散が困難である上に、曲げ強度が低下するので、好ましくない。
【0016】
本発明のポリプロピレン繊維をセメントに混合する方法としては、セメント粉体にポリプロピレン繊維を分散する方法、セメントスラリー中にポリプロピレン繊維を分散するプレミックス法、セメントとポリプロピレン繊維および水を同時に吹き付けるスプレーアップ法などの公知の方法を用いることができる。
これらの方法によって得られたセメントスラリーを、用途により抄造成形法、押出成形法、注入成形法等公知の成形法にしたがって成形し、常温で数十日間大気中または水中に放置する自然養生法または2〜3日常温で放置後100〜200℃の温度で処理されるオートクレーブ養生法により養生硬化しセメント成形品とする。
【0017】
本発明のポリプロピレン繊維を用いて製造されるセメント成形品の用途としては、あらゆるセメント製品にわたるものであるが、例えば建造物の壁材、床材コンクリート、仕上げモルタル、防水コンクリート、スレート屋根材等、あるいは土木関係部材としては道路、滑走路等の舗装、道路標識、側溝等の道路部材、下水管、ケーブルダクト等のパイプ類、漁礁、護岸ブロック、テトラポット等、その他各種構築物として枕木、ベンチ、フラワーポット等に使用できる。
【0018】
(試験方法)
(1)MFR:JISK6922−1準拠
(2)曲げ強度:JISA1408準拠
(3)シャルピー衝撃強度:JISB7722準拠
(4)分散性評価:ポリプロピレン繊維とセメントを混練しセメントスラリーを作成し、表面の状態を目視により評価した。
【0019】
以下、実施例により、さらに詳細に説明する。
実施例1:
ポリプロピレン(MFR=1.0g/10min.)を押出機に供給し、樹脂温度230℃で、2mmφ×10孔の連糸形状ノズルから押出し、熱板接触式延伸法で延伸温度130℃、アニーリング温度135℃、延伸倍率12倍に延伸した。得られた延伸糸の単糸繊度は50dtであった。
この延伸糸を表面処理剤として、リグニンスルホン酸化合物及びポリオール複合体からなる処理液((株)エムエムビー製ポゾリスNo.70)に浸漬処理後、乾燥して表面処理剤1重量%を塗布させた。
上記延伸糸を10mm長になるようにカットし、短繊維を得た。
セメント成形品の成形はJISR5201に準拠して行った。すなわちポルトランドセメント100重量部と標準砂200重量部とを十分混合し、上記配合物を5重量部添加し、水65重量部を加えて全体が均一になるように混練した後、40mm×40mm×160mmの型枠に流し込み、大気中、常温で48時間放置した後、オートクレーブ中で165℃、20時間養生を行った。
得られた成形物の曲げ強度は22.5MPa、シャルピ衝撃強度は8.0KJ/m2、分散性は良好であった。
【0020】
実施例2:
表面処理剤として、リグニンスルホン酸化合物からなる処理液((株)エムエムビー製ポゾリスNo.72)に浸漬処理後、乾燥して表面処理剤1重量%を塗布させたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
得られた成形物の曲げ強度は22.0MPa、シャルピ衝撃強度は7.5KJ/m2、分散性は良好であった。
【0021】
比較例1
表面処理剤として、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸エステル(HLB=8.0)50重量%とポリオキシエチレンオレイン酸エステル(HLB=9.0)50重量%を混合した表面処理剤水溶液を作成し、浸漬処理後、乾燥して表面処理剤1重量%を塗布させたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
得られた成形物の曲げ強度は19.0MPa、シャルピー衝撃強度は6.5KJ/m2、繊維の分散性は良好であった。
【0022】
比較例2
表面処理剤として、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸エステル(HLB=8.0)70重量%とポリオキシエチレンオレイン酸エステル(HLB=9.0)30重量%を混合して表面処理剤水溶液を作成し、浸漬処理後、乾燥して表面処理剤1重量%を塗布させたこと以外は実施例1と同様にセメント成形品を成形した。
得られた成形物の曲げ強度は16.5MPa、シャルピー衝撃強度は3.5KJ/m2、繊維の分散性は不良であった。
【0023】
比較例3
表面処理剤として、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸エス
テル(HLB=8.0)30重量%とポリオキシエチレンオレイン酸エステル(HLB=9.0)70重量%を混合して表面処理剤水溶液を作成し、浸漬処理後、乾燥して表面処理剤1重量%を塗布させたこと以外は実施例1と同様にセメント成形品を成形した。
得られた成形物の曲げ強度は17.5MPa、シャルピー衝撃強度は2.8KJ/m2、繊維の分散性はやや不良であった。
【0024】
【発明の効果】
本発明のセメント強化用ポリプロピレン繊維は、ポリプロピレン繊維に対し、スルホン酸化合物またはカルボン酸化合物からなる表面処理剤を塗布して付着させてなるものであって、ポリプロピレン繊維とセメントとの界面における優れた親和性を付与でき、セメントマトリックスとの接着性に優れ、セメント成形物を強化することができ、セメント成形物の曲げ強度、衝撃強度に優れたセメント成形物の製造が可能となるポリプロピレン繊維を得ることができる。
Claims (4)
- ポリプロピレン繊維に対し、表面処理剤としてスルホン酸化合物またはカルボン酸化合物の少なくとも1種の化合物を0.3〜10重量%付着させてなることを特徴とするセメント強化用ポリプロピレン繊維。
- スルホン酸化合物がリグニンスルホン酸系化合物、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、アントラセンスルホン酸ホルマリン縮合物、芳香族アミノスルホン酸系化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項1に記載のセメント強化用ポリプロピレン繊維。
- カルボン酸化合物がオキシカルボン酸系化合物、ポリカルボン酸系化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物であるである請求項1に記載のセメント強化用ポリプロピレン繊維。
- 表面処理剤がリグニンスルホン酸化合物及びポリオール複合体である請求項1に記載のセメント強化用ポリプロピレン繊維。
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2002
- 2002-07-30 JP JP2002221595A patent/JP2004059385A/ja active Pending
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