JP2004058613A - 塗装面を備えた成形体の連続製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗装面と繊維強化熱硬化性樹脂成形体との接着性を向上させることが可能な、塗装面を備えた繊維強化熱硬化性樹脂成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】連続した強化繊維を未硬化の熱硬化性樹脂に含浸させて樹脂含浸強化繊維を得る含浸工程と、前記樹脂含浸強化繊維を、加熱された引抜金型内部の通路を通過させて引抜くことにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させて成形体を得る硬化成形工程と、前記成形体の表面に、電極間にガスを流通させながら該電極間に高電圧を印加して該電極の間隙から外側に突出させた炎を接触させる接触工程と、前記炎を接触させた前記成形体の前記表面にコーティング剤を塗布する塗装工程と、を含むことを特徴とする、塗装面を備えた成形体の連続製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】連続した強化繊維を未硬化の熱硬化性樹脂に含浸させて樹脂含浸強化繊維を得る含浸工程と、前記樹脂含浸強化繊維を、加熱された引抜金型内部の通路を通過させて引抜くことにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させて成形体を得る硬化成形工程と、前記成形体の表面に、電極間にガスを流通させながら該電極間に高電圧を印加して該電極の間隙から外側に突出させた炎を接触させる接触工程と、前記炎を接触させた前記成形体の前記表面にコーティング剤を塗布する塗装工程と、を含むことを特徴とする、塗装面を備えた成形体の連続製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗装面を備えた成形体の連続製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
長尺で断面形状がほぼ一定な繊維強化熱硬化性樹脂成形体を製造する方法として、引抜き成形法が知られている。引抜き成形法により成形体(FRP引抜成形体)を得る場合においては、先ず、強化繊維(ガラス繊維ロービング等)が巻かれた複数のロールから強化繊維を所定の速度で引き出し、引き出した強化繊維群を所定間隔に引き揃えながら一方向に進行させ、液状の熱硬化性樹脂を満たした槽に浸漬する。そして、浸漬して得られた樹脂含浸強化繊維を、加熱された引抜金型の通路を引き通して、通路の断面形状に外形を規制しつつ熱硬化性樹脂を加熱硬化させて成形する。
【0003】
かかる引抜成形法においては、樹脂含浸強化繊維と引抜金型との間で摩擦が発生して成形体表面に凹凸等が生じたり、過大な抵抗力に引抜きの牽引力が敵わずに成形が不可能になる場合があるために、成形金型に外部離型剤を塗布しておく一方で、熱硬化性樹脂には予め内部離型剤を混合することが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、FRP引抜成形体には、成形体の耐久性の向上や表面の美麗さを向上させるため、成形体表面に塗料等のトップコートを形成させる場合が多く、FRP成形体が上記の方法で作製された場合には、表面に存在する離型剤のため、トップコートの濡れ性が低下して、FRP引抜成形体の表面に塗装面(トップコート層)を形成させることが困難である。
【0005】
かかる問題点を解決するために、別工程でFRP引抜成形体の表面をサンドペーパーや研磨機械でサンディングして、外部離製剤や内部離型剤が付着した表面層を削除する方法や、プライマーを塗布する方法があるものの、前者の方法においては表面に残留した切削粉によりFRP引抜成形体と塗装面との接着性が低下することが多く、後者の方法ではFRP引抜成形体とプライマー層界面で剥離が生じる場合があった。これらに加えて、工程を別にしたことで、コスト、品質管理、ストック品の保管及び設備投資の点からも種々の不都合が生じていた。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、塗装面を備えた繊維強化熱硬化性樹脂成形体を連続的に製造する製造方法であって、当該成形体を構成する熱硬化性樹脂が離型剤を含有する場合や、引抜金型内部に離型剤を適用した場合であっても、これらの離型剤を別工程で除去する必要がなく、塗装面と繊維強化熱硬化性樹脂成形体との接着性を顕著に向上させることが可能な製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明にかかる、塗装面を備えた成形体の連続製造方法(以下「第1の製造方法」という。)は、(1)連続した強化繊維を未硬化の熱硬化性樹脂に含浸させて樹脂含浸強化繊維を得る含浸工程と、(2)前記樹脂含浸強化繊維を、加熱された引抜金型内部の通路を通過させて引抜くことにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させて成形体を得る硬化成形工程と、(3)前記成形体の表面に、電極間にガスを流通させながら該電極間に高電圧を印加して該電極の間隙から外側に突出させた炎を接触させる接触工程と、(4)前記炎を接触させた前記成形体の前記表面にコーティング剤を塗布する塗装工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる、塗装面を備えた成形体の連続製造方法(以下「第2の製造方法」という。)は、また、(1)連続した強化繊維を、未硬化の第1の熱硬化性樹脂に含浸させて樹脂含浸強化繊維を得る含浸工程と、(2)前記樹脂含浸強化繊維を、未硬化の第2の熱硬化性樹脂を含浸させた強化繊維布で被覆して、加熱された引抜金型内部の通路を通過させて引抜くことにより、前記第1及び第2の熱硬化性樹脂を硬化させて成形体を得る硬化成形工程と、(3)前記成形体の表面に、電極間にガスを流通させながら該電極間に高電圧を印加して該電極の間隙から外側に突出させた炎を接触させる接触工程と、(4)前記炎を接触させた前記成形体の前記表面にコーティング剤を塗布する塗装工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明にかかる第1の製造方法及び第2の製造方法のいずれにおいても、硬化成形工程における引抜き成形直後の成形体に上記炎を接触させるために、成形体の表面が活性化され、塗装工程におけるコーティング剤の成形体に対する濡れ性や密着性が大幅に向上する。このためにコーティング剤からなる塗装面と成形体の接着性が向上する。そして、第1の製造方法における熱硬化性樹脂や、第2の製造方法における第2の熱硬化性樹脂が離型剤を含む場合であっても、当該離型剤が上記炎により焼失するか、化学反応(酸化等)を生じて離型性を喪失するために、コーティング剤からなる塗装面と成形体との接着性が優れるようになる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る成形体の連続製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、同一要素には同一符号を用いるものとし、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、第1の製造方法により成形体を連続製造するために好適な連続製造装置10の概略構成図である。図1に示すように、連続製造装置10は、強化繊維22を巻き取ってなる巻糸体20と、内部に未硬化の熱硬化性樹脂42を収容した熱硬化性樹脂槽40と、未硬化の熱硬化性樹脂42に強化繊維22を浸漬して得られる樹脂含浸強化繊維32を引抜くための引抜金型50と、引抜により得られた長尺成形体34に対して炎64を接触させるための放電炎発生装置66と、炎64を接触させた長尺成形体34の表面にコーティング剤74を塗布するための塗布装置76と、長尺成形体34を引抜金型50から引抜くプーラー80と、塗装面が形成された長尺成形体34を所望の長さに切断して、塗装面を備えた成形体84を得る切断機82とを備えている。
【0012】
連続製造装置10における上記構成の好適例及び更に詳細な構成は、以下のとおりである。
【0013】
連続製造装置10の強化繊維22としては、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維等が使用できる。強化繊維はガラス繊維が好ましく、強化繊維は繊維のモノフィラメントが複数の集合してなる強化繊維束であることが好ましい。強化繊維束としては、強化繊維ヤーン、強化繊維ストランド、強化繊維ロービング等が挙げられる。
【0014】
熱硬化性樹脂槽40中の熱硬化性樹脂42としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂42は、硬化剤や離型剤を含有していてもよく、更に、硬化促進剤、反応性希釈剤、着色剤、充填剤、増粘剤、低収縮剤等を含んでいてもよい。離型剤としては、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、高級脂肪酸、パラフィン、高級脂肪酸アミド、脂肪酸フロロカーボンが挙げられ、これらの離型剤は、熱硬化性樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部(更には0.5〜5重量部)であることが好ましい。
【0015】
引抜金型50は、上型50aと下型50bとからなっており、これらを締結することで通路が形成される。通路の断面形状は、最終的に得られる成形体84の形状等に基づき、例えば、三角形、四角形、六角形等の多角形状としてもよく、或いは、円形状、楕円形状、T字型、L字型、としてもよい。また、引抜金型50の通路表面には、流動パラフィン、溶剤系ワックス、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール溶液等の離型剤が塗布されていてもよい。
【0016】
放電炎発生装置66は、内部に対極電極を備え当該対極電極間にガスを流通させて炎64を突出させることができるヘッド62と、ヘッド62中の対極電極に対する電圧の印加とガスの流通とを制御する制御装置60と、を備えている。長尺成形体34の微細な部位にも炎64を接触させる必要があることから、ヘッド62は小型のものが好ましい(例えば、縦2〜3cm、横1〜2cm)。そして、炎64はコロナ炎(例えば、特開平7−18101号公報が参照できる。)又はプラズマ炎(例えば、特開昭60−201239号公報が参照できる。)が好ましい。かかる炎を発生させ得る放電炎発生装置66としては、市販品として、進光電気計装社製「コロナマスター」(商品名)や、日本電池社製「スパジェット」(商品名)、日本スタチティック社製「プラズマジェット」(商品名)が適用可能である。
【0017】
塗布装置76は、コーティング剤74を塗布するためのノズル72と、コーティング剤74を収容するタンク及びコーティング剤74をノズル72まで送るためのポンプを有する供給装置70と、を備えている。ノズル72はロボットアーム等に取り付けることで、長尺成形体34の所定の部位だけにコーティング剤74を塗布するようにしてもよい。そして、ノズル72が設置されたロボットアームには、更にヘッド62を設置してもよい。なお、コーティング剤74は、塗料、熱硬化性樹脂、接着剤等、長尺成形体34上に塗装面を形成可能な材料であればよく、その種類は制限されない。
【0018】
プーラー80は、長尺成形体34を回転するローラで上下から挟み込むいわゆるキャタピラ方式のものである。プーラー80は、機械的、油圧的に往復動する2台のクランプで長尺成形体34を引抜くいわゆるクランプユニット方式としてもよい。そして、切断機82は、ブレードをモータMの駆動力で回転させて、塗装面が形成された長尺成形体34を切断し、塗装面を備える成形体84を形成せしめるものである。
【0019】
以上が、第1の製造方法の実施形態で用いる連続製造装置10の構成である。次に、係る連続製造装置10を用いた成形体の連続製造方法について説明する。
【0020】
先ず、プーラー80を回転駆動させ、巻糸体20から強化繊維22を解舒して引き出す。引き出された強化繊維22を引き揃え手段(図示せず)で引き揃えた後、熱硬化性樹脂槽40中の未硬化の熱硬化性樹脂42に浸漬し、ローラ群54により余剰の熱硬化性樹脂42を取り除いて樹脂含浸強化繊維32を得る(含浸工程)。
【0021】
次に、ヒータ52により熱硬化性樹脂42の硬化温度に加熱された引抜金型50の通路に、樹脂含浸強化繊維32を導入し、引抜金型52中で樹脂含浸強化繊維32を硬化させると共に引抜いて、通路断面の断面形状を有する長尺成形体34を得る(硬化成形工程)。この場合において、引抜き速度は0.2〜2m/分(更には1m/分)とすることが好ましい。上述のように熱硬化性樹脂42には離型剤を添加することができ、通路表面に離型剤を付着させることも可能であることから、かかる場合は長尺成形体34の表面には離型剤が存在する。
【0022】
次に、長尺製成形体34の表面に、放電炎発生装置66のヘッド62から突出させた炎64を接触させる(接触工程)。炎64の接触により長尺成形体34の表面は活性化される。活性化は、長尺成形体34表面の原子に、例えば酸素原子が結合して水酸基等の極性基が形成されることに基づくものであり、かかる極性基の存在によりコーティング剤74との接着性が顕著に向上する。長尺成形体34の表面に離型剤が存在する場合には、炎64との接触により離型剤が燃焼して表面から除去される。また、燃焼が生じない場合であっても、例えば酸素原子等が離型剤に結合したり離型剤の分子の一部が脱離して、長尺成形体34と離型剤との結合が生じたり、離型剤の変質により離型性が消失する。このために、表面に離型剤が存在する場合であっても長尺成形体34とコーティング剤74との接着強度が大幅に向上する。なお、長尺成形体34の表面に炎64を接触させる場合においては、ヘッド62と長尺成形体34との間隔を一定に保つようにして(例えば、10mm)、均一な処理を行うことが好ましい。
【0023】
上記のようにして表面が活性化された長尺成形体34に対して、塗布装置76のノズル72からコーティング剤74が塗布される(塗装工程)。コーティング剤74は硬化タイプのものであっても未硬化タイプのものであってもよく、その種類に合わせて長尺成形体34の表面に塗装面を形成させる。例えば、コーティング剤74が未硬化タイプであるアクリルエマルジョンである場合には、公知の手段により水等の揮発成分を除去させることにより塗装面を形成させる。一方、コーティング剤74が紫外線硬化タイプのものであれば、例えば窒素雰囲気下で紫外線を照射して塗装面を形成させ、コーティング剤74が熱硬化性樹脂である場合は公知の加熱手段を適用することにより塗装面を形成させる。
【0024】
炎64の接触からコーティング剤74の塗布までの間隔は、炎64による長尺成形体34の表面改質効果(例えば、上述の酸素原子の付加)が残存している間隔とすることが好ましい。当該間隔は長尺成形体34の構成成分や炎64の種類及び強度等に基づいて適宜決定することができるが、10分以下であることが好ましく、5分以下であることがより好ましい。
【0025】
上記の塗装工程を実施することにより、表面に塗装面を備えた長尺成形体34が得られる。そして、当該成形体を切断機82で所望の長さに切断することにより、塗装面を備えた成形体84を製造することができる。
【0026】
以上が、第1の製造方法による成形体の連続製造方法についての説明である。次に、第2の製造方法の好適な実施形態について説明する。
【0027】
図2は、第2の製造方法により成形体を連続製造するために好適な連続製造装置12の概略構成図である。図2に示すように、連続製造装置12は、強化繊維22を巻き取ってなる巻糸体20と、内部に未硬化の第1の熱硬化性樹脂43を収容した熱硬化性樹脂槽40と、強化繊維布91を巻き取ってなる強化繊維布ロール90と、内部に未硬化の第2の熱硬化性樹脂94を収容した熱硬化性樹脂槽92と、未硬化の第1の熱硬化性樹脂43に強化繊維22を浸漬して得られる樹脂含浸強化繊維32を、未硬化の第2の熱硬化性樹脂94に強化繊維布91を浸漬して得られる樹脂含浸強化繊維布96で被覆した被覆物を引抜くための引抜金型50と、引抜により得られた長尺成形体34に対して炎64を接触させるための放電炎発生装置66と、炎64を接触させた長尺成形体34の表面にコーティング剤74を塗布するための塗布装置76と、長尺成形体34を引抜金型50から引抜くプーラー80と、塗装面が形成された長尺成形体34を所望の長さに切断して、塗装面を備えた成形体84を得る切断機82とを備えている。
【0028】
連続製造装置12の構成は、引抜金型50に樹脂含浸強化繊維32と共に樹脂含浸強化繊維布96を導入するようにした他は、基本的に連続製造装置10の構成と同等である。したがって、強化繊維22、引抜金型50、放電炎発生装置66、塗布装置76、プーラー80及び切断機82の好適例及び詳細構成については連続製造装置10におけるのと同様である。また、第1の熱硬化性樹脂43の好適例については連続製造装置10における熱硬化性樹脂42と同様である。
【0029】
連続製造装置12における第2の熱硬化性樹脂94としては、第1の熱硬化性樹脂43と同様の樹脂が使用できる。第1の熱硬化性樹脂43と第2の熱硬化性樹脂94の種類は同一でも異なっていてもよいが、樹脂含浸強化繊維32と樹脂含浸強化繊維布96との間の接着強度を向上させる観点からは、両者は同一種類の熱硬化性樹脂であることが好ましい。なお、強化繊維布91を構成する強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維等が挙げられ、これらの繊維の編物、織物、不織布等が強化繊維布として使用可能である。
【0030】
連続製造装置12を用いた成形体の連続製造方法は以下の通りである。すなわち、先ず、プーラー80を回転駆動させ、巻糸体20から強化繊維22を解舒して引き出し、引き揃え手段(図示せず)で引き揃えた後、熱硬化性樹脂槽40中の未硬化の第1の熱硬化性樹脂43に浸漬し、ローラ群54により余剰の熱硬化性樹脂42を取り除いて樹脂含浸強化繊維32を得る(含浸工程)。
【0031】
これと並行して、プーラー80の回転駆動により強化繊維布ロール90から強化繊維布91を引き出して、未硬化の第2の熱硬化性樹脂94に浸漬する。ローラ群56により余剰の第2の熱硬化性樹脂94を取り除くことにより樹脂含浸強化繊維布96とし、樹脂含浸強化繊維32を樹脂含浸強化繊維布96で被覆(被覆は樹脂含浸強化繊維32の全周でも一部でもよい)して、ヒータ52により第1の熱硬化性樹脂43及び第2の熱硬化性樹脂94の硬化温度に加熱された引抜金型50の通路に導入し、両硬化性樹脂を硬化させると共に引抜いて(引抜き時の好適条件は第1の製造方法におけるのと同様である)、通路断面の断面形状を有する長尺成形体34を得る(硬化成形工程)。
【0032】
得られた長尺成形体34に対して炎64を接触させた後(接触工程)、コーティング剤74を塗布し(塗装工程)、切断機82で切断することにより、塗装面を備えた成形体84を製造することができる。なお、接触工程及び塗装工程の好適条件等は第1の製造方法におけるのと同様である。第2の製造方法においては長尺成形体34の表面は第2の熱硬化性樹脂の硬化物であるが、当該硬化物の表面が炎64との接触により上述と同様にして活性化されるため、長尺成形体34の表面に離型剤が存在する場合であっても、長尺成形体34とコーティング剤74との接着強度が大幅に向上する。
【0033】
第1及び第2の製造方法において、コーティング剤74として接着剤を用いた場合は、接着剤の固化が終了する前に被着体(プラスチックフィルム等)を貼り付けることもできる。かかる場合に好適なコーティング剤74としては、エポキシ樹脂系、ポリウレタン系、シアノアクリレート系、ホットメルト系、アクリルエマルジョン系、酢酸ビニル系、α−オレフィン系、反応型アクリル系、水性高分子/イソシアネート系の接着剤が挙げられ、これらを用いて、塩化ビニル、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンのプラスッチクフィルムを被着体として貼り付けることができる。これにより、成形体表面の傷を防ぐことができ、耐食性、耐水性、耐光性等を付与したり、模様や光沢などを出すことも可能となる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
図2に示す連続製造装置12と同様の構成を有する製造装置を用いて、塗装面を備えた成形体を製造した。なお、以下の実施例及び比較例において用いた材料は以下の表1のとおりであった。
【表1】
【0036】
(実施例1)
強化繊維を第1の熱硬化性樹脂中に浸漬して樹脂含浸強化繊維とし、これに第2の熱硬化性樹脂中に浸漬して得られた強化繊維布を被覆して、150℃に加熱された引抜金型(通路には、離型剤であるTSM−621(東芝シリコーン社製)を付着させた。)に導入して、1m/分で引抜くことにより、硬化・成形して、直径10mmの丸棒を得た。この丸棒の表面に日本電池社製、スパジェットGC−100により発生させたコロナ炎を接触させ、接触後丸棒にコーティング剤を塗布した。なお、上記工程は同一の製造装置を用い連続して行った。また、コロナ炎の接触時には丸棒を1m/分で移動させ、コロナ炎の接触からコーティング剤の塗布までの間隔は1分とし、上記装置のヘッドと丸棒との間隔は10mmに固定した。
【0037】
(比較例1)
コロナ炎を接触させなかった他は実施例1と同様にして、丸棒にコーティング剤を塗布した。
【0038】
(比較例2)
実施例1と同様にして引抜金型から引抜くことにより丸棒を成形した。得られた丸棒に、別の製造装置を用いて実施例1と同様のコロナ炎を接触させた。更に、別の製造装置を用いて、コロナ炎を接触させた丸棒に実施例1で用いたのと同様のコーティング剤を塗布した。なお、コロナ炎の接触からコーティング剤の塗布までの間隔は20時間であった。
【0039】
実施例1、比較例1〜2で最終的に得られた丸棒を比較したところ、実施例1ではコーティング剤が均一に塗布され良好な塗装面が形成されており、塗装面は丸棒に充分な接着強度で接着していた。一方、比較例1〜2においては、コーティング剤のはじきが見られ均一な塗装面が形成されていなかった。また、塗装面と丸棒との接着性は不充分であった。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、塗装面を備えた繊維強化熱硬化性樹脂成形体を連続的に製造する製造方法であって、当該成形体を構成する熱硬化性樹脂が離型剤を含有する場合や、引抜金型内部に離型剤を適用した場合であっても、これらの離型剤を別工程で除去する必要がなく、塗装面と繊維強化熱硬化性樹脂成形体との接着性を顕著に向上させることが可能な製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の製造方法により成形体を連続製造するために好適な連続製造装置の概略構成図である。
【図2】第2の製造方法により成形体を連続製造するために好適な連続製造装置の概略構成図である。
【符号の説明】
10…第1の製造方法に用いられる連続製造装置、12…第2の製造方法に用いられる連続製造装置、20…巻糸体、22…強化繊維、32…樹脂含浸強化繊維、34…長尺成形体、40…熱硬化性樹脂槽、42…熱硬化性樹脂、43…第1の熱硬化性樹脂、50…引抜金型、50a…上型、50b…下型、52…ヒータ、60…制御装置、62…ヘッド、64…炎、66…放電炎発生装置、70…供給装置、72…ノズル、74…コーティング剤、76…塗布装置、80…プーラー、82…切断機、84…成形体、90…強化繊維布ロール、91…強化繊維布、92…熱硬化性樹脂槽、94…第2の熱硬化性樹脂、96…樹脂含浸強化繊維布。
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗装面を備えた成形体の連続製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
長尺で断面形状がほぼ一定な繊維強化熱硬化性樹脂成形体を製造する方法として、引抜き成形法が知られている。引抜き成形法により成形体(FRP引抜成形体)を得る場合においては、先ず、強化繊維(ガラス繊維ロービング等)が巻かれた複数のロールから強化繊維を所定の速度で引き出し、引き出した強化繊維群を所定間隔に引き揃えながら一方向に進行させ、液状の熱硬化性樹脂を満たした槽に浸漬する。そして、浸漬して得られた樹脂含浸強化繊維を、加熱された引抜金型の通路を引き通して、通路の断面形状に外形を規制しつつ熱硬化性樹脂を加熱硬化させて成形する。
【0003】
かかる引抜成形法においては、樹脂含浸強化繊維と引抜金型との間で摩擦が発生して成形体表面に凹凸等が生じたり、過大な抵抗力に引抜きの牽引力が敵わずに成形が不可能になる場合があるために、成形金型に外部離型剤を塗布しておく一方で、熱硬化性樹脂には予め内部離型剤を混合することが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、FRP引抜成形体には、成形体の耐久性の向上や表面の美麗さを向上させるため、成形体表面に塗料等のトップコートを形成させる場合が多く、FRP成形体が上記の方法で作製された場合には、表面に存在する離型剤のため、トップコートの濡れ性が低下して、FRP引抜成形体の表面に塗装面(トップコート層)を形成させることが困難である。
【0005】
かかる問題点を解決するために、別工程でFRP引抜成形体の表面をサンドペーパーや研磨機械でサンディングして、外部離製剤や内部離型剤が付着した表面層を削除する方法や、プライマーを塗布する方法があるものの、前者の方法においては表面に残留した切削粉によりFRP引抜成形体と塗装面との接着性が低下することが多く、後者の方法ではFRP引抜成形体とプライマー層界面で剥離が生じる場合があった。これらに加えて、工程を別にしたことで、コスト、品質管理、ストック品の保管及び設備投資の点からも種々の不都合が生じていた。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、塗装面を備えた繊維強化熱硬化性樹脂成形体を連続的に製造する製造方法であって、当該成形体を構成する熱硬化性樹脂が離型剤を含有する場合や、引抜金型内部に離型剤を適用した場合であっても、これらの離型剤を別工程で除去する必要がなく、塗装面と繊維強化熱硬化性樹脂成形体との接着性を顕著に向上させることが可能な製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明にかかる、塗装面を備えた成形体の連続製造方法(以下「第1の製造方法」という。)は、(1)連続した強化繊維を未硬化の熱硬化性樹脂に含浸させて樹脂含浸強化繊維を得る含浸工程と、(2)前記樹脂含浸強化繊維を、加熱された引抜金型内部の通路を通過させて引抜くことにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させて成形体を得る硬化成形工程と、(3)前記成形体の表面に、電極間にガスを流通させながら該電極間に高電圧を印加して該電極の間隙から外側に突出させた炎を接触させる接触工程と、(4)前記炎を接触させた前記成形体の前記表面にコーティング剤を塗布する塗装工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる、塗装面を備えた成形体の連続製造方法(以下「第2の製造方法」という。)は、また、(1)連続した強化繊維を、未硬化の第1の熱硬化性樹脂に含浸させて樹脂含浸強化繊維を得る含浸工程と、(2)前記樹脂含浸強化繊維を、未硬化の第2の熱硬化性樹脂を含浸させた強化繊維布で被覆して、加熱された引抜金型内部の通路を通過させて引抜くことにより、前記第1及び第2の熱硬化性樹脂を硬化させて成形体を得る硬化成形工程と、(3)前記成形体の表面に、電極間にガスを流通させながら該電極間に高電圧を印加して該電極の間隙から外側に突出させた炎を接触させる接触工程と、(4)前記炎を接触させた前記成形体の前記表面にコーティング剤を塗布する塗装工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明にかかる第1の製造方法及び第2の製造方法のいずれにおいても、硬化成形工程における引抜き成形直後の成形体に上記炎を接触させるために、成形体の表面が活性化され、塗装工程におけるコーティング剤の成形体に対する濡れ性や密着性が大幅に向上する。このためにコーティング剤からなる塗装面と成形体の接着性が向上する。そして、第1の製造方法における熱硬化性樹脂や、第2の製造方法における第2の熱硬化性樹脂が離型剤を含む場合であっても、当該離型剤が上記炎により焼失するか、化学反応(酸化等)を生じて離型性を喪失するために、コーティング剤からなる塗装面と成形体との接着性が優れるようになる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る成形体の連続製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、同一要素には同一符号を用いるものとし、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、第1の製造方法により成形体を連続製造するために好適な連続製造装置10の概略構成図である。図1に示すように、連続製造装置10は、強化繊維22を巻き取ってなる巻糸体20と、内部に未硬化の熱硬化性樹脂42を収容した熱硬化性樹脂槽40と、未硬化の熱硬化性樹脂42に強化繊維22を浸漬して得られる樹脂含浸強化繊維32を引抜くための引抜金型50と、引抜により得られた長尺成形体34に対して炎64を接触させるための放電炎発生装置66と、炎64を接触させた長尺成形体34の表面にコーティング剤74を塗布するための塗布装置76と、長尺成形体34を引抜金型50から引抜くプーラー80と、塗装面が形成された長尺成形体34を所望の長さに切断して、塗装面を備えた成形体84を得る切断機82とを備えている。
【0012】
連続製造装置10における上記構成の好適例及び更に詳細な構成は、以下のとおりである。
【0013】
連続製造装置10の強化繊維22としては、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維等が使用できる。強化繊維はガラス繊維が好ましく、強化繊維は繊維のモノフィラメントが複数の集合してなる強化繊維束であることが好ましい。強化繊維束としては、強化繊維ヤーン、強化繊維ストランド、強化繊維ロービング等が挙げられる。
【0014】
熱硬化性樹脂槽40中の熱硬化性樹脂42としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂42は、硬化剤や離型剤を含有していてもよく、更に、硬化促進剤、反応性希釈剤、着色剤、充填剤、増粘剤、低収縮剤等を含んでいてもよい。離型剤としては、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、高級脂肪酸、パラフィン、高級脂肪酸アミド、脂肪酸フロロカーボンが挙げられ、これらの離型剤は、熱硬化性樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部(更には0.5〜5重量部)であることが好ましい。
【0015】
引抜金型50は、上型50aと下型50bとからなっており、これらを締結することで通路が形成される。通路の断面形状は、最終的に得られる成形体84の形状等に基づき、例えば、三角形、四角形、六角形等の多角形状としてもよく、或いは、円形状、楕円形状、T字型、L字型、としてもよい。また、引抜金型50の通路表面には、流動パラフィン、溶剤系ワックス、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール溶液等の離型剤が塗布されていてもよい。
【0016】
放電炎発生装置66は、内部に対極電極を備え当該対極電極間にガスを流通させて炎64を突出させることができるヘッド62と、ヘッド62中の対極電極に対する電圧の印加とガスの流通とを制御する制御装置60と、を備えている。長尺成形体34の微細な部位にも炎64を接触させる必要があることから、ヘッド62は小型のものが好ましい(例えば、縦2〜3cm、横1〜2cm)。そして、炎64はコロナ炎(例えば、特開平7−18101号公報が参照できる。)又はプラズマ炎(例えば、特開昭60−201239号公報が参照できる。)が好ましい。かかる炎を発生させ得る放電炎発生装置66としては、市販品として、進光電気計装社製「コロナマスター」(商品名)や、日本電池社製「スパジェット」(商品名)、日本スタチティック社製「プラズマジェット」(商品名)が適用可能である。
【0017】
塗布装置76は、コーティング剤74を塗布するためのノズル72と、コーティング剤74を収容するタンク及びコーティング剤74をノズル72まで送るためのポンプを有する供給装置70と、を備えている。ノズル72はロボットアーム等に取り付けることで、長尺成形体34の所定の部位だけにコーティング剤74を塗布するようにしてもよい。そして、ノズル72が設置されたロボットアームには、更にヘッド62を設置してもよい。なお、コーティング剤74は、塗料、熱硬化性樹脂、接着剤等、長尺成形体34上に塗装面を形成可能な材料であればよく、その種類は制限されない。
【0018】
プーラー80は、長尺成形体34を回転するローラで上下から挟み込むいわゆるキャタピラ方式のものである。プーラー80は、機械的、油圧的に往復動する2台のクランプで長尺成形体34を引抜くいわゆるクランプユニット方式としてもよい。そして、切断機82は、ブレードをモータMの駆動力で回転させて、塗装面が形成された長尺成形体34を切断し、塗装面を備える成形体84を形成せしめるものである。
【0019】
以上が、第1の製造方法の実施形態で用いる連続製造装置10の構成である。次に、係る連続製造装置10を用いた成形体の連続製造方法について説明する。
【0020】
先ず、プーラー80を回転駆動させ、巻糸体20から強化繊維22を解舒して引き出す。引き出された強化繊維22を引き揃え手段(図示せず)で引き揃えた後、熱硬化性樹脂槽40中の未硬化の熱硬化性樹脂42に浸漬し、ローラ群54により余剰の熱硬化性樹脂42を取り除いて樹脂含浸強化繊維32を得る(含浸工程)。
【0021】
次に、ヒータ52により熱硬化性樹脂42の硬化温度に加熱された引抜金型50の通路に、樹脂含浸強化繊維32を導入し、引抜金型52中で樹脂含浸強化繊維32を硬化させると共に引抜いて、通路断面の断面形状を有する長尺成形体34を得る(硬化成形工程)。この場合において、引抜き速度は0.2〜2m/分(更には1m/分)とすることが好ましい。上述のように熱硬化性樹脂42には離型剤を添加することができ、通路表面に離型剤を付着させることも可能であることから、かかる場合は長尺成形体34の表面には離型剤が存在する。
【0022】
次に、長尺製成形体34の表面に、放電炎発生装置66のヘッド62から突出させた炎64を接触させる(接触工程)。炎64の接触により長尺成形体34の表面は活性化される。活性化は、長尺成形体34表面の原子に、例えば酸素原子が結合して水酸基等の極性基が形成されることに基づくものであり、かかる極性基の存在によりコーティング剤74との接着性が顕著に向上する。長尺成形体34の表面に離型剤が存在する場合には、炎64との接触により離型剤が燃焼して表面から除去される。また、燃焼が生じない場合であっても、例えば酸素原子等が離型剤に結合したり離型剤の分子の一部が脱離して、長尺成形体34と離型剤との結合が生じたり、離型剤の変質により離型性が消失する。このために、表面に離型剤が存在する場合であっても長尺成形体34とコーティング剤74との接着強度が大幅に向上する。なお、長尺成形体34の表面に炎64を接触させる場合においては、ヘッド62と長尺成形体34との間隔を一定に保つようにして(例えば、10mm)、均一な処理を行うことが好ましい。
【0023】
上記のようにして表面が活性化された長尺成形体34に対して、塗布装置76のノズル72からコーティング剤74が塗布される(塗装工程)。コーティング剤74は硬化タイプのものであっても未硬化タイプのものであってもよく、その種類に合わせて長尺成形体34の表面に塗装面を形成させる。例えば、コーティング剤74が未硬化タイプであるアクリルエマルジョンである場合には、公知の手段により水等の揮発成分を除去させることにより塗装面を形成させる。一方、コーティング剤74が紫外線硬化タイプのものであれば、例えば窒素雰囲気下で紫外線を照射して塗装面を形成させ、コーティング剤74が熱硬化性樹脂である場合は公知の加熱手段を適用することにより塗装面を形成させる。
【0024】
炎64の接触からコーティング剤74の塗布までの間隔は、炎64による長尺成形体34の表面改質効果(例えば、上述の酸素原子の付加)が残存している間隔とすることが好ましい。当該間隔は長尺成形体34の構成成分や炎64の種類及び強度等に基づいて適宜決定することができるが、10分以下であることが好ましく、5分以下であることがより好ましい。
【0025】
上記の塗装工程を実施することにより、表面に塗装面を備えた長尺成形体34が得られる。そして、当該成形体を切断機82で所望の長さに切断することにより、塗装面を備えた成形体84を製造することができる。
【0026】
以上が、第1の製造方法による成形体の連続製造方法についての説明である。次に、第2の製造方法の好適な実施形態について説明する。
【0027】
図2は、第2の製造方法により成形体を連続製造するために好適な連続製造装置12の概略構成図である。図2に示すように、連続製造装置12は、強化繊維22を巻き取ってなる巻糸体20と、内部に未硬化の第1の熱硬化性樹脂43を収容した熱硬化性樹脂槽40と、強化繊維布91を巻き取ってなる強化繊維布ロール90と、内部に未硬化の第2の熱硬化性樹脂94を収容した熱硬化性樹脂槽92と、未硬化の第1の熱硬化性樹脂43に強化繊維22を浸漬して得られる樹脂含浸強化繊維32を、未硬化の第2の熱硬化性樹脂94に強化繊維布91を浸漬して得られる樹脂含浸強化繊維布96で被覆した被覆物を引抜くための引抜金型50と、引抜により得られた長尺成形体34に対して炎64を接触させるための放電炎発生装置66と、炎64を接触させた長尺成形体34の表面にコーティング剤74を塗布するための塗布装置76と、長尺成形体34を引抜金型50から引抜くプーラー80と、塗装面が形成された長尺成形体34を所望の長さに切断して、塗装面を備えた成形体84を得る切断機82とを備えている。
【0028】
連続製造装置12の構成は、引抜金型50に樹脂含浸強化繊維32と共に樹脂含浸強化繊維布96を導入するようにした他は、基本的に連続製造装置10の構成と同等である。したがって、強化繊維22、引抜金型50、放電炎発生装置66、塗布装置76、プーラー80及び切断機82の好適例及び詳細構成については連続製造装置10におけるのと同様である。また、第1の熱硬化性樹脂43の好適例については連続製造装置10における熱硬化性樹脂42と同様である。
【0029】
連続製造装置12における第2の熱硬化性樹脂94としては、第1の熱硬化性樹脂43と同様の樹脂が使用できる。第1の熱硬化性樹脂43と第2の熱硬化性樹脂94の種類は同一でも異なっていてもよいが、樹脂含浸強化繊維32と樹脂含浸強化繊維布96との間の接着強度を向上させる観点からは、両者は同一種類の熱硬化性樹脂であることが好ましい。なお、強化繊維布91を構成する強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維等が挙げられ、これらの繊維の編物、織物、不織布等が強化繊維布として使用可能である。
【0030】
連続製造装置12を用いた成形体の連続製造方法は以下の通りである。すなわち、先ず、プーラー80を回転駆動させ、巻糸体20から強化繊維22を解舒して引き出し、引き揃え手段(図示せず)で引き揃えた後、熱硬化性樹脂槽40中の未硬化の第1の熱硬化性樹脂43に浸漬し、ローラ群54により余剰の熱硬化性樹脂42を取り除いて樹脂含浸強化繊維32を得る(含浸工程)。
【0031】
これと並行して、プーラー80の回転駆動により強化繊維布ロール90から強化繊維布91を引き出して、未硬化の第2の熱硬化性樹脂94に浸漬する。ローラ群56により余剰の第2の熱硬化性樹脂94を取り除くことにより樹脂含浸強化繊維布96とし、樹脂含浸強化繊維32を樹脂含浸強化繊維布96で被覆(被覆は樹脂含浸強化繊維32の全周でも一部でもよい)して、ヒータ52により第1の熱硬化性樹脂43及び第2の熱硬化性樹脂94の硬化温度に加熱された引抜金型50の通路に導入し、両硬化性樹脂を硬化させると共に引抜いて(引抜き時の好適条件は第1の製造方法におけるのと同様である)、通路断面の断面形状を有する長尺成形体34を得る(硬化成形工程)。
【0032】
得られた長尺成形体34に対して炎64を接触させた後(接触工程)、コーティング剤74を塗布し(塗装工程)、切断機82で切断することにより、塗装面を備えた成形体84を製造することができる。なお、接触工程及び塗装工程の好適条件等は第1の製造方法におけるのと同様である。第2の製造方法においては長尺成形体34の表面は第2の熱硬化性樹脂の硬化物であるが、当該硬化物の表面が炎64との接触により上述と同様にして活性化されるため、長尺成形体34の表面に離型剤が存在する場合であっても、長尺成形体34とコーティング剤74との接着強度が大幅に向上する。
【0033】
第1及び第2の製造方法において、コーティング剤74として接着剤を用いた場合は、接着剤の固化が終了する前に被着体(プラスチックフィルム等)を貼り付けることもできる。かかる場合に好適なコーティング剤74としては、エポキシ樹脂系、ポリウレタン系、シアノアクリレート系、ホットメルト系、アクリルエマルジョン系、酢酸ビニル系、α−オレフィン系、反応型アクリル系、水性高分子/イソシアネート系の接着剤が挙げられ、これらを用いて、塩化ビニル、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンのプラスッチクフィルムを被着体として貼り付けることができる。これにより、成形体表面の傷を防ぐことができ、耐食性、耐水性、耐光性等を付与したり、模様や光沢などを出すことも可能となる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
図2に示す連続製造装置12と同様の構成を有する製造装置を用いて、塗装面を備えた成形体を製造した。なお、以下の実施例及び比較例において用いた材料は以下の表1のとおりであった。
【表1】
【0036】
(実施例1)
強化繊維を第1の熱硬化性樹脂中に浸漬して樹脂含浸強化繊維とし、これに第2の熱硬化性樹脂中に浸漬して得られた強化繊維布を被覆して、150℃に加熱された引抜金型(通路には、離型剤であるTSM−621(東芝シリコーン社製)を付着させた。)に導入して、1m/分で引抜くことにより、硬化・成形して、直径10mmの丸棒を得た。この丸棒の表面に日本電池社製、スパジェットGC−100により発生させたコロナ炎を接触させ、接触後丸棒にコーティング剤を塗布した。なお、上記工程は同一の製造装置を用い連続して行った。また、コロナ炎の接触時には丸棒を1m/分で移動させ、コロナ炎の接触からコーティング剤の塗布までの間隔は1分とし、上記装置のヘッドと丸棒との間隔は10mmに固定した。
【0037】
(比較例1)
コロナ炎を接触させなかった他は実施例1と同様にして、丸棒にコーティング剤を塗布した。
【0038】
(比較例2)
実施例1と同様にして引抜金型から引抜くことにより丸棒を成形した。得られた丸棒に、別の製造装置を用いて実施例1と同様のコロナ炎を接触させた。更に、別の製造装置を用いて、コロナ炎を接触させた丸棒に実施例1で用いたのと同様のコーティング剤を塗布した。なお、コロナ炎の接触からコーティング剤の塗布までの間隔は20時間であった。
【0039】
実施例1、比較例1〜2で最終的に得られた丸棒を比較したところ、実施例1ではコーティング剤が均一に塗布され良好な塗装面が形成されており、塗装面は丸棒に充分な接着強度で接着していた。一方、比較例1〜2においては、コーティング剤のはじきが見られ均一な塗装面が形成されていなかった。また、塗装面と丸棒との接着性は不充分であった。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、塗装面を備えた繊維強化熱硬化性樹脂成形体を連続的に製造する製造方法であって、当該成形体を構成する熱硬化性樹脂が離型剤を含有する場合や、引抜金型内部に離型剤を適用した場合であっても、これらの離型剤を別工程で除去する必要がなく、塗装面と繊維強化熱硬化性樹脂成形体との接着性を顕著に向上させることが可能な製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の製造方法により成形体を連続製造するために好適な連続製造装置の概略構成図である。
【図2】第2の製造方法により成形体を連続製造するために好適な連続製造装置の概略構成図である。
【符号の説明】
10…第1の製造方法に用いられる連続製造装置、12…第2の製造方法に用いられる連続製造装置、20…巻糸体、22…強化繊維、32…樹脂含浸強化繊維、34…長尺成形体、40…熱硬化性樹脂槽、42…熱硬化性樹脂、43…第1の熱硬化性樹脂、50…引抜金型、50a…上型、50b…下型、52…ヒータ、60…制御装置、62…ヘッド、64…炎、66…放電炎発生装置、70…供給装置、72…ノズル、74…コーティング剤、76…塗布装置、80…プーラー、82…切断機、84…成形体、90…強化繊維布ロール、91…強化繊維布、92…熱硬化性樹脂槽、94…第2の熱硬化性樹脂、96…樹脂含浸強化繊維布。
Claims (6)
- 連続した強化繊維を未硬化の熱硬化性樹脂に含浸させて樹脂含浸強化繊維を得る含浸工程と、
前記樹脂含浸強化繊維を、加熱された引抜金型内部の通路を通過させて引抜くことにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させて成形体を得る硬化成形工程と、
前記成形体の表面に、電極間にガスを流通させながら該電極間に高電圧を印加して該電極の間隙から外側に突出させた炎を接触させる接触工程と、
前記炎を接触させた前記成形体の前記表面にコーティング剤を塗布する塗装工程と、を含むことを特徴とする、塗装面を備えた成形体の連続製造方法。 - 前記未硬化の熱硬化性樹脂は、離型剤を含有することを特徴とする請求項1記載の連続製造方法。
- 連続した強化繊維を、未硬化の第1の熱硬化性樹脂に含浸させて樹脂含浸強化繊維を得る含浸工程と、
前記樹脂含浸強化繊維を、未硬化の第2の熱硬化性樹脂を含浸させた強化繊維布で被覆して、加熱された引抜金型内部の通路を通過させて引抜くことにより、前記第1及び第2の熱硬化性樹脂を硬化させて成形体を得る硬化成形工程と、
前記成形体の表面に、電極間にガスを流通させながら該電極間に高電圧を印加して該電極の間隙から外側に突出させた炎を接触させる接触工程と、
前記炎を接触させた前記成形体の前記表面にコーティング剤を塗布する塗装工程と、を含むことを特徴とする、塗装面を備えた成形体の連続製造方法。 - 前記未硬化の第2の熱硬化性樹脂は、離型剤を含有することを特徴とする請求項3記載の連続製造方法。
- 前記強化繊維は、ガラス繊維であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の連続製造方法。
- 前記炎は、コロナ炎又はプラズマ炎であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の連続製造方法。
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