JP4252778B2 - 成形体の連続製造方法及び成形体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形体の連続製造方法及び成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維強化発泡樹脂成形体は、枕木や建築材として使用される人工木材等の土木・建築資材として利用されている。かかる繊維強化発泡樹脂成形体は、通常、引抜成形により製造されるが、強度、表面硬度、耐候性等の向上を目的として、以下の(1)〜(3)に示す製造方法が試みられている。
(1)熱可塑性樹脂を筒状に押出すとともに、筒内部に発泡硬化性樹脂を含浸した強化繊維を導入して、当該発泡硬化性樹脂を発泡、硬化する方法(特公昭48−30138号公報)。
(2)発泡硬化性樹脂を含浸した強化繊維の周囲を紫外線硬化性樹脂で被覆し、内部の樹脂を発泡、硬化させた後、紫外線照射により紫外線硬化性樹脂を硬化させて成形する方法(特公昭59−35768号公報)。
(3)発泡硬化性樹脂を含浸した強化繊維の周囲を熱硬化性樹脂で被覆し、周囲の熱硬化性樹脂を硬化させた後、内部の発泡硬化性樹脂を発泡、硬化させる方法(特開平11−216737号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示された製造方法による成形体は、表面層に発泡硬化性樹脂の発泡時に生じた気泡や成形時に生じた亀裂や破断を有しているため、人工木材等の土木・建築資材に使用した場合に要求される曲げ剛性や、釘抜き強度が不充分であるという問題点があった。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、人工木材等の土木・建築資材に使用した場合に要求される、曲げ剛性や釘抜き強度に優れた成形体を得ることが可能な成形体の製造方法を提供することを目的とする。また、上記製造方法を用いた成形体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、3つの引抜金型を用いて、特定条件で引抜成形を行うことにより、上記目的が達成可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明の成形体の連続製造方法は、(1)連続した第1の強化繊維を、未硬化の発泡硬化性樹脂が供給されている第1の引抜金型内部の通路を通過させて引抜くことにより、前記第1の強化繊維が未硬化の前記発泡硬化性樹脂で含浸された第1の樹脂含浸強化繊維を得る工程と、(2)前記第1の樹脂含浸強化繊維を、加熱された第2の引抜金型内部の通路を通過させて引抜くことにより、前記発泡硬化性樹脂を硬化させて繊維強化樹脂発泡体を得る工程と、(3)前記繊維強化樹脂発泡体を、室温に冷却することなく第2の強化繊維が未硬化の熱硬化性樹脂で含浸された第2の樹脂含浸強化繊維で被覆して、加熱された第3の引抜金型内部の通路を通過させ引抜くことにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させて成形体を得る工程と、を含み、第2の引抜金型内において、繊維強化樹脂発泡体の表面に凹凸又は溝を形成させ、且つ、第2の強化繊維が、ガラス繊維布であることを特徴とする。
【0007】
本発明の成形体の連続製造方法においては、繊維強化樹脂発泡体が温かいうちに第2の樹脂含浸強化繊維で被覆されることから、室温で被覆する場合に比べて濡れ性が向上し、繊維強化樹脂発泡体と第2の樹脂含浸強化繊維との接着性が優れるようになり、曲げ剛性や釘抜き強度の特性が優れた成形体を得ることが可能となる。また、発泡硬化性樹脂を硬化させた後に、得られた繊維強化樹脂発泡体を第2の樹脂含浸強化繊維で被覆して引抜成形を行うため、発泡硬化性樹脂を硬化させずに第2の樹脂含浸強化繊維で被覆する場合に比べて、引抜金型内部で第2の樹脂含浸強化繊維をより強い圧力で繊維強化樹脂発泡体に圧着することができる。このために、繊維強化樹脂発泡体と第2の樹脂含浸強化繊維との接着性が向上し、得られる成形体の曲げ剛性や釘抜き強度が向上する。
【0008】
更に、上記圧着により、熱硬化性樹脂が第2の強化繊維の内部まで充分に浸透するため、成形体表面に形成される、第2の樹脂含浸強化繊維の硬化物からなる表面層に、ボイド等に基づく欠陥が発生し難く、緻密性が向上するため、曲げ剛性及び釘抜き強度の特性が特に優れる成形体を得ることが可能となる。
【0009】
本発明において、第1の強化繊維はガラス繊維束であることが好ましく、第2の強化繊維はガラス繊維布であることが好ましい。第1の強化繊維にガラス繊維を用いた場合や、第2の強化繊維にガラス繊維布を用いる場合は、曲げ剛性や釘抜き強度の特性に優れた成形体を得ることが可能となる。本発明は上記に加え、本発明の成形体の連続製造方法を用いて得られた成形体を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る成形体の連続製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、同一要素には同一符号を用いるものとし、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明の成形体の連続製造方法に適用可能な連続製造装置1の概略構成図である。図1に示すように、連続製造装置1は、第1の強化繊維20を巻き取った第1の巻糸体10と、発泡硬化性樹脂槽34から供給された未硬化の発泡硬化性樹脂32を第1の強化繊維20に含浸させ第1の樹脂含浸強化繊維38を得るための第1の引抜金型30と、第1の樹脂含浸強化繊維38を加熱し未硬化の発泡硬化性樹脂32を硬化させて繊維強化樹脂発泡体48を得るための第2の引抜金型40と、第2の巻糸体90から供給された第2の強化繊維98に未硬化の熱硬化性樹脂92を含浸させ第2の樹脂含浸強化繊維100を得るための樹脂含浸部102と、第2の樹脂含浸強化繊維100で被覆された繊維強化樹脂発泡体48を加熱し第2の樹脂含浸強化繊維100に含浸された未硬化の熱硬化性樹脂92を硬化させて長尺成形体58を得るための第3の引抜金型50と、長尺成形体58を第3の引抜金型50から引抜くプーラー60と、長尺成形体58を所望の長さに切断して成形体80を得る切断機70とを備えている。
【0012】
第1の引抜金型30は、上型30aと下型30bとからなり、これらを締結することにより通路36が形成される。そして、通路36には、上型30aに接続されたチューブ37を通じて発泡硬化性樹脂槽34から未硬化の発泡硬化性樹脂32が導入されている。通路36の断面形状は、最終的に得られる成形体80の形状に基づいて選択することができ、例えば、三角形、四角形、六角形等の多角形状としてもよく、円形状、楕円形状、I字型、T字型としてもよい。
【0013】
第1の引抜金型30としては、SKDやSCMのダイス鋼等からなる金属製の金型、シリコン樹脂等からなる樹脂製の金型、セラミック製の金型、繊維強化樹脂(FRP)製の金型等を用いることができる。通路36に導入することができる発泡硬化性樹脂32としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂に加熱発泡性の物質を添加したものや、加熱反応時にガス成分が発生する樹脂(ポリウレタン樹脂等)等が挙げられる。
【0014】
第2の引抜金型40は、第1の引抜金型30と同様に、上型40aと下型40bとからなり、これらを締結することにより通路46が形成される。また、第2の引抜金型40としては、第1の引抜金型30と同様にSKDやSCMのダイス鋼等からなる金属製の金型、シリコン樹脂等からなる樹脂製の金型、セラミック製の金型、繊維強化樹脂(FRP)製の金型等を用いることができる。
【0015】
第2の引抜金型40は、第1の樹脂含浸強化繊維38を加熱して未硬化の発泡硬化性樹脂32を発泡、硬化させるためのヒーター42を備えている。第2の引抜金型40における通路46の断面形状は、最終的に得られる成形体80の形状に基づいて選択することができ、例えば、三角形、四角形、六角形等の多角形状としてもよく、円形状、楕円形状、I字型、T字型としてもよい。なお、通路46の形状は必ずしも通路36と同様の形状でなくてもよい。
【0016】
樹脂含浸部102は、第2の強化繊維98を巻き取ってなる第2の巻糸体90と、未硬化の熱硬化性樹脂92を第2の強化繊維98に含浸させるための熱硬化性樹脂槽94と、ローラ群96と、を備えている。
【0017】
第2の強化繊維98に用いる強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維等が挙げられ、ガラス繊維を用いることが好ましい。第2の強化繊維98は、ガラス繊維布であることがより好ましく、かかるガラス繊維布としては、ガラス繊維の編物、織物、不織布等が使用可能である。また、熱硬化性樹脂92としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。なお、発泡硬化性樹脂32及び熱硬化性樹脂92は、同一の樹脂を用いてもよく、異なる樹脂を用いてもよいが、繊維強化樹脂発泡体48と第2の樹脂含浸強化繊維100との接着性の観点からは同一の樹脂を用いることが好ましい。
【0018】
第3の引抜金型50は、第1及び第2の引抜金型と同様に、上型50aと下型50bとからなり、これらを締結することにより通路56が形成される。第3の引抜金型50としては、第1及び第2の引抜金型と同様にSKDやSCMのダイス鋼等からなる金属製の金型、シリコン樹脂等からなる樹脂製の金型、セラミック製の金型、繊維強化樹脂(FRP)製の金型等を用いることができる。
【0019】
また、第3の引抜金型50は、第2の樹脂含浸強化繊維100で被覆された繊維強化樹脂発泡体48を加熱し、第2の樹脂含浸強化繊維100中の熱硬化性樹脂92を硬化させるためのヒーター52を備えている。第3の引抜金型50における通路56の断面形状は、最終的に得られる成形体80の形状に基づいて選択することができ、第2の引抜金型40における通路46と同様の形状とすることが好ましい。
【0020】
第1の引抜金型30の上流側には、第1の引抜金型30に導入すべき第1の強化繊維20を巻き取ってなる第1の巻糸体10が配置されている。なお、第1の強化繊維20としては、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維等が挙げられ、ガラス繊維を用いることが好ましい。また、第1の強化繊維20は、強化繊維のモノフィラメントが複数集合してなる強化繊維束であることが好ましく、ガラス繊維からなるガラス繊維束であることがより好ましい。強化繊維束としては、強化繊維ヤーン、強化繊維ストランド、強化繊維ロービング等が挙げられる。なお、第1の強化繊維20及び第2の強化繊維98は、同一の強化繊維を用いてもよく、異なる強化繊維を用いてもよい。
【0021】
第3の引抜金型50の下流には、長尺成形体58を引抜くプーラー60が配置されている。プーラー60は、長尺成形体58を回転するローラで上下から挟み込むキャタピラ方式のものであるが、機械的、油圧的に往復動する2台のクランプで長尺成形体58を引抜くクランプユニット方式としてもよい。そして、プーラー60の下流には切断機70が配置されており、切断機70はブレードをモータMの駆動力で回転させて長尺成形体58を切断して、成形体80を得ることができる。
【0022】
以上が、本発明の成形体の連続製造方法に適用可能な連続製造装置1の構成である。次に、係る連続製造装置1を用いた成形体80の連続製造方法について説明する。
【0023】
まず、プーラー60を回転駆動させ、第1の巻糸体10から第1の強化繊維20を解舒して引き出す。引き出された第1の強化繊維20を、引き揃え手段(図示せず)で引き揃え、第1の引抜金型30の通路36に導入する。通路36には、発泡硬化性樹脂槽34からチューブ37を通じて導入された未硬化の発泡硬化性樹脂32が供給されているため、第1の強化繊維20は、通路36内において未硬化の発泡硬化性樹脂32で含浸される。そして、未硬化の発泡硬化性樹脂32で含浸された第1の強化繊維20を引抜くことにより第1の樹脂含浸強化繊維38が得られる。
【0024】
第1の引抜金型30では、加熱を行わないか、未硬化の発泡硬化性樹脂32の硬化温度以下の加熱を行うことにより、第1の引抜金型30内部における未硬化の発泡硬化性樹脂32の硬化を防止する。また、通路36内には、発泡硬化性樹脂槽34からの未硬化の発泡硬化性樹脂32を継続的に供給するようにして、第1の強化繊維20に継続的に未硬化の発泡硬化性樹脂32を含浸させる。
【0025】
第1の引抜金型30から引抜かれた第1の樹脂含浸強化繊維38は、第2の引抜金型40の通路46に導入される。第2の引抜金型40は、ヒーター42により、発泡硬化性樹脂32の硬化温度に加熱されており、第1の樹脂含浸強化繊維38に含浸された発泡硬化性樹脂32は第2の引抜金型40内で発泡硬化反応を生じ、繊維強化樹脂発泡体48が形成される。
【0026】
第2の引抜金型40においては、第1の樹脂含浸強化繊維38が通路46内を移動しながら発泡、硬化する。第2の引抜金型40内において、繊維強化樹脂発泡体48の表面には、多少の凹凸や溝を形成させることが好ましく、これにより第3の引抜金型50内部で繊維強化樹脂発泡体48と第2の樹脂含浸強化繊維100との接着性をより向上させることができる。すなわち、繊維強化樹脂発泡体48の表面に多少の凹凸や溝を形成させることにより、第2の樹脂含浸強化繊維100に含浸された熱硬化性樹脂92が付着する面積が拡大され、接着性を大きくすることができる。繊維強化樹脂発泡体48表面に、凹凸や溝を形成させる方法としては、プーラー60による引抜き速度を低下させない程度に第2の引抜金型40と第1の樹脂含浸強化繊維38との摩擦を大きくする方法が挙げられる。
【0027】
第2の強化繊維98は、プーラー60の回転駆動により、第2の巻糸体90から引き出され、未硬化の熱硬化性樹脂92中に浸漬される。ローラ群96により第2の強化繊維98へ未硬化の熱硬化性樹脂92が浸透すると共に、余剰の未硬化の熱硬化性樹脂92が取り除かれ、第2の樹脂含浸強化繊維100が形成される。
【0028】
そして、第2の樹脂含浸強化繊維100で繊維強化樹脂発泡体48を被覆して、第3の引抜金型50の通路56に導入させる。第3の引抜金型50は、ヒーター52により、熱硬化性樹脂92の硬化温度に加熱されており、第2の樹脂含浸強化繊維100に含浸された未硬化の熱硬化性樹脂92は、第3の引抜金型50内で硬化反応を生じ、長尺成形体58が形成される。
【0029】
第2の引抜金型40から引抜かれた繊維強化樹脂発泡体48は、室温に冷却されることなく第2の樹脂含浸強化繊維100で被覆されることから、室温で被覆される場合に比べて濡れ性が向上し、繊維強化樹脂発泡体48と第2の樹脂含浸強化繊維100との接着性が優れるようになる。これにより、得られる成形体80の曲げ剛性や釘抜き強度等の特性を向上させることが可能となる。
【0030】
繊維強化樹脂発泡体48は、発泡体全体として室温まで冷却させなければよい。例えば、表面が室温付近まで冷却されていたとしても、内部が室温以上の温度であれば、第2の樹脂含浸強化繊維100を被覆した際に、内部からの熱が表面に伝導し、上記と同様に、濡れ性を向上させることができる。
【0031】
繊維強化樹脂発泡体48を、第2の樹脂含浸強化繊維100で被覆するときの繊維強化樹脂発泡体48の表面温度は、熱硬化性樹脂92の硬化温度をTとし、室温をTRとしたとき、引抜直後の繊維強化樹脂発泡体48の温度から、T−TRの7割以上低下させないことが好ましく、5割以上低下させないことがより好ましく、3割以上低下させないことが更に好ましい。
【0032】
また、繊維強化樹脂発泡体48を室温に冷却することなく第2の樹脂含浸強化繊維100で被覆することから、室温まで冷却させた場合と比較して、熱硬化性樹脂92が硬化温度に到達し易くなり、第3の引抜金型50において、熱硬化性樹脂92を硬化させるための昇温時間を短縮することができるようになる。
【0033】
繊維強化樹脂発泡体48は、第3の引抜金型50に導入する際に充分な硬度を有しているため、硬化を行わずに第2の樹脂含浸強化繊維100で被覆する場合に比べて、第3の引抜金型50内部で第2の樹脂含浸強化繊維100をより強い圧力で繊維強化樹脂発泡体48に圧着することができる。従って繊維強化樹脂発泡体48と第2の樹脂含浸強化繊維100との接着性が優れるようになり、得られる成形体80の曲げ剛性や釘抜き強度等の特性を向上させることが可能となる。
【0034】
また、上記圧着により、熱硬化性樹脂92が第2の強化繊維98内部まで充分に浸透するため、成形体80表面に形成される第2の樹脂含浸強化繊維100からなる表面層にボイド等に基づく欠陥が発生し難く、緻密な表面層が形成され、曲げ剛性及び釘抜き強度の特性が特に優れる成形体80を得ることが可能となる。
【0035】
これに対し、第1の樹脂含浸強化繊維38を未硬化の状態で第2の樹脂含浸強化繊維100で被覆し、発泡硬化性樹脂32と熱硬化性樹脂92とを一度に硬化させる場合は、第1の樹脂含浸強化繊維38の硬度が低いために、圧着による熱硬化性樹脂92の接着効果が低くなるのみならず、ボイド等も発生しやすく、曲げ剛性や釘抜き強度が低下する。
【0036】
また、上記したように、第2の引抜金型40において繊維強化樹脂発泡体48の表面に多少の凹凸や溝を形成させた場合は、第2の樹脂含浸強化繊維100に含浸された未硬化の熱硬化性樹脂92が、凹凸や溝に入り込んで硬化するため、アンカー効果が生じ、繊維強化樹脂発泡体48と第2の樹脂含浸強化繊維100との接着性がより優れるものとなる。
【0037】
本実施形態の連続製造装置1は、第1から第3の引抜金型が直列(直線状)に配置されており、第1の強化繊維20の発泡硬化性樹脂32の含浸から長尺成形体58を切断するまでの工程を直線的なラインで連続して行うことができる。従って、それぞれの引抜金型に導入する際に、製造途中の材料の中心位置の調整を行う必要がなく、センター出しが極めて容易となる。また、一連の工程を直線的に行うことができることから、得られる長尺成形体58のそり及びねじれの発生を抑制することが可能となる。
【0038】
これに対し、各工程が別々の装置で実施される場合は、それぞれの引抜金型に導入する際に中心位置の調整を行う必要があるため、センターを出す治具等が必要となり、センター出しに手間がかかる。また、第2の樹脂含浸強化繊維100との接着性を向上させるために、いったん室温に冷却された繊維強化樹脂発泡体48を、第2の樹脂含浸強化繊維100で被覆する前に加熱する場合は、この加熱によってそり及びねじれが発生する場合がある。
【0039】
本実施形態における連続製造装置1は、センター出しの治具や加熱装置等が必要なく、各工程が分断されている場合と比較して製造コストの点においても優位性を有している。
【0040】
上記のようにして得られた長尺成形体58は、切断機70により所望の長さに切断され、繊維強化発泡樹脂成形体である成形体80となる。図2に、一例として、得られる成形体80の斜視図を示す。成形体80は、芯材である繊維強化樹脂発泡体48と、第2の樹脂含浸強化繊維100からなる表面層104とから構成され、全体として直方体をなしている。そして、繊維強化樹脂発泡体48においては、発泡硬化性樹脂32の硬化物中に引き揃えられた第1の強化繊維20が存在しており、表面層104においては、熱硬化性樹脂92の硬化物中に第2の強化繊維98が存在している。かかる成形体80は、繊維強化樹脂発泡体48と表面層104との接着性が極めて良好であるために、特に優れた曲げ剛性及び釘抜き強度を発揮するようになる。
【0041】
また、表面層104は、第2の樹脂含浸強化繊維100を硬化させてなるものであるため強度に優れ、これにより、成形体80は、表面に亀裂や破断等を有しないという点で、表面美麗性に優れたものとなる。
【0042】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例について更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
第1の強化繊維としてガラス繊維束(ガラスバルキーロービングFY202、日東紡績(株)製)、発泡硬化性樹脂として発泡性フェノール樹脂[フェノール樹脂であるFOL−800(昭和高分子(株)製)100重量部に対して硬化剤であるFOL−801(昭和高分子(株)製)20重量部及び発泡剤である塩化メチレン11重量部を加えたもの]、第2の強化繊維としてガラス繊維束(ガラスロービングRS440RR−520、日東紡績(株)製)、熱硬化性樹脂として非発泡性フェノール樹脂[フェノール樹脂であるフェノライト1196(大日本インキ化学工業(株)製)100重量部に対して水を7重量部加えたもの]を用い、以下の製造方法で成形体の製造を行った。
【0044】
(実施例1)
以下の(1)〜(3)の工程を、図1に示したものと同様の装置により連続して行った。
(1)第1の強化繊維を引き揃えた後、未硬化の発泡硬化性樹脂が供給された引抜金型に導入させ、引抜速度0.5m/分で引抜くことにより第1の強化繊維に発泡硬化性樹脂を含浸させ、第1の樹脂含浸強化繊維を得た。
(2)得られた第1の樹脂含浸強化繊維を100℃に加熱された引抜金型に導入し、発泡硬化性樹脂を発泡硬化させ、引抜速度0.5m/分で引抜くことにより繊維強化樹脂発泡体を得た。
(3)得られた繊維強化樹脂発泡体に熱硬化性樹脂で含浸された第2の強化繊維を被覆して180℃に加熱された引抜金型に導入し、熱硬化性樹脂を硬化させ、引抜速度0.5m/分で引抜くことにより長尺成形体を得、これを切断して成形体を得た。
【0045】
(比較例1)
実施例1における(1)の工程を行った後、(2)の工程は行わずに、得られた第1の樹脂含浸強化繊維に熱硬化性樹脂で含浸された第2の強化繊維を被覆して、180℃に加熱された引抜金型に導入し、発泡硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂を硬化させ、引抜速度0.5m/分で引抜くことにより長尺成形体を得、これを切断して成形体を得た。
【0046】
(比較例2)
実施例1における(1)及び(2)の工程の後、得られた繊維強化樹脂発泡体を取り出し、1時間放置して繊維強化樹脂発泡体全体を室温に冷却させた後、冷却された繊維強化樹脂発泡体を用いて(3)の工程を行った。
【0047】
以上の実施例1、比較例1及び2の製造方法における昇温時間について評価を行い、また、それぞれの製造方法で得られた成形体について、曲げ剛性、釘抜き強度、表面層の接着性、そり及びねじれ、表面美麗性、センター出しの程度の評価を行った。評価は表2に示した評価基準(○、△、×の評価基準)に基づいて行い、得られた評価結果をまとめて表1に示した。
【0048】
なお、表2において「曲げ剛性」及び「釘抜き強度」はJIS Z 2101に準拠した方法で測定した曲げ弾性率及び釘抜き抵抗値により評価を行い、「表面層の接着性」は、表面層と繊維強化樹脂発泡体との接着面の面積に占める剥離及びボイドの面積の割合により評価を行った。
【0049】
また、「そり及びねじれ」はJIS K 7015に準拠した方法で測定した曲がり度合いにより評価を行い、「表面美麗性」は成形体表面に発生したボイドやクラックを観察することにより評価を行った。そして、「昇温時間」は第2の樹脂含浸強化繊維に含浸された熱硬化性樹脂が硬化温度に到達するまでの時間により評価を行い、「センター出し」は、繊維強化樹脂発泡体のセンターと成形体とのセンターのずれの大きさにより評価を行った。
【0050】
【表1】
Figure 0004252778
【0051】
【表2】
Figure 0004252778
【0052】
【発明の効果】
本発明の成形体の連続製造方法は、第1〜第3の引抜金型を用いて行うものであり、第2の引抜金型から引抜かれた繊維強化樹脂発泡体が、室温に冷却されることなく第2の樹脂含浸強化繊維で被覆され第3の引抜金型に導入されるため、室温で行う場合に比べて濡れ性が向上し、繊維強化樹脂発泡体と第2の樹脂含浸強化繊維との接着性が極めて良好となり、得られる成形体の曲げ弾性や釘抜き強度等の特性が優れるようになる。
【0053】
また、第3の引抜金型で引抜成型する際に、芯材である繊維強化樹脂発泡体が充分な硬さを有しているため、第2の樹脂含浸強化繊維が繊維強化樹脂発泡体に強く圧着され、繊維強化樹脂発泡体と第2の樹脂含浸強化繊維との接着性が極めて良好となるため、得られる成型体の上記特性が特に優れるようになる。
【0054】
更に、上記圧着により、熱硬化性樹脂が第2の強化繊維の内部まで充分に浸透するため、成形体表面に形成される第2の樹脂含浸強化繊維からなる表面層に、ボイド等に基づく欠陥が発生し難く、緻密な表面層が形成され、曲げ剛性及び釘抜き強度の特性が特に優れる成形体を得ることが可能となる。
【0055】
上記に加えて、本発明の成形体の連続製造方法は、直線的なラインで成形体の製造を連続的に行うことができることから、それぞれの引抜金型導入前における中心位置の調整が不要となり、センター出しが容易となる。また、得られる成形体のそり及びねじれが発生し難くなる。
【0056】
そして、第2の樹脂含浸強化繊維による被覆の際、加熱やセンター出しを行う必要が無いことから装置を簡略化でき、製造の際のコストも低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成形体の連続製造方法に適用可能な連続成型装置の概略構成図である。
【図2】連続製造装置1で得られた成形体の斜視図である。
【符号の説明】
1・・・連続製造装置、10・・・第1の巻糸体、20・・・第1の強化繊維、30・・・第1の引抜金型、30a・・・上型、30b・・・下型、32・・・発泡硬化性樹脂、34・・・発泡硬化性樹脂槽、36・・・通路、37・・・チューブ、38・・・第1の樹脂含浸強化繊維、40・・・第2の引抜金型、40a・・・上型、40b・・・下型、42・・・ヒーター、46・・・通路、48・・・繊維強化樹脂発泡体、50・・・第3の引抜金型、50a・・・上型、50b・・・下型、52・・・ヒーター、56・・・通路、58・・・長尺成形体、60・・・プーラー、70・・・切断機、80・・・成形体、90・・・第2の巻糸体、92・・・熱硬化性樹脂、94・・・熱硬化性樹脂槽、96・・・ローラ群、98・・・第2の強化繊維、100・・・第2の樹脂含浸強化繊維、102・・・樹脂含浸部、104・・・表面層。

Claims (2)

  1. 連続した第1の強化繊維を、未硬化の発泡硬化性樹脂が供給されている第1の引抜金型内部の通路を通過させて引抜くことにより、前記第1の強化繊維が未硬化の前記発泡硬化性樹脂で含浸された第1の樹脂含浸強化繊維を得る工程と、
    前記第1の樹脂含浸強化繊維を、加熱された第2の引抜金型内部の通路を通過させて引抜くことにより、前記発泡硬化性樹脂を硬化させて繊維強化樹脂発泡体を得る工程と、
    前記繊維強化樹脂発泡体を、室温に冷却することなく、第2の強化繊維が未硬化の熱硬化性樹脂で含浸された第2の樹脂含浸強化繊維で被覆して、加熱された第3の引抜金型内部の通路を通過させ引抜くことにより、前記熱硬化性樹脂を硬化させて成形体を得る工程と、を含み、
    前記第2の引抜金型内において、前記繊維強化樹脂発泡体の表面に凹凸又は溝を形成させ、且つ、
    前記第2の強化繊維が、ガラス繊維布である、ことを特徴とする成形体の連続製造方法。
  2. 前記第1の強化繊維が、ガラス繊維束であることを特徴とする請求項1記載の成形体の連続製造方法。
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