JP2004058077A - アルミニウム基複合材製ライナ及びその鋳包み方法 - Google Patents

アルミニウム基複合材製ライナ及びその鋳包み方法 Download PDF

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Abstract

【課題】所定圧力で型内へ溶湯を充填しても、ライナの内周面にばりが生じ難く、後工程での内周面加工に手間がかからず生産効率の向上させる方法の提供。
【解決手段】アルミニウム基複合材製ライナ10は、ライナ10の基部11の一端12にアルミニウム溶湯の圧力でライナ中心15へ変形させる薄肉部13を設けた。アルミニウム基複合材製ライナの鋳包み方法は、ライナに鋳包み材支持軸26を挿入して鋳型27の型35内にライナを固定し、型35内へ溶湯を充填し、この溶湯の圧力で薄肉部13を曲げることで、鋳包み材支持軸26へ密着させる。鋳包み材支持軸との間には、着脱のためのすきまを設ける。ライナの薄肉部は圧力で変形してすきまを塞ぐので、ライナの内周面にばりが発生するのを抑制することができる。鋳包み方法では、溶湯の圧力で薄肉部を曲げることで鋳包み材支持軸へ密着させるので、漏れ難くなる。
【選択図】    図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はシリンダブロックに用いるアルミニウム基複合材製ライナ及びその鋳包み方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリンダブロックに鋳包んだライナには、例えば、特開平11−182341公報「エンジンのシール構造」に示されたものがある。このエンジンのシール構造に採用したライナを次図で説明する。
図10は従来のライナの説明図であり、上記公報の図11を写したものである。
ライナとしてのスリーブ27(符号は同公報に記載されたものを流用した。以下同様。)は、シリンダヘッド23側端部に外周面を段落ちさせてなる抜け止め用薄肉部27dを有し、この抜け止め用薄肉部27dを設けたことにより、シリンダ本体部27c側のシリンダヘッド合面22f部分は厚肉となり、ガスケット91のビード部91aの当接スペースを容易に確保できるというものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記図10のスリーブ27を用いてシリンダブロックを鋳造する場合、スリーブ27のシリンダヘッド23側端部にばりが発生することがある。ばりを次図で説明する。
図11(a),(b)は課題の説明図であり、(a)は鋳型の要部断面図、(b)はばりの斜視図である。
【0004】
(a)において、鋳型101にライナ102(図10のスリーブ27)を支持軸103で取り付けて、型内に溶湯を注湯すると、ライナ102の端部104と鋳型101との間から溶湯が矢印aの如く漏れることがあり、内周面105と支持軸103の間に入る。支持軸103の外径Dkとライナ102の内径dkとの間には着脱のためのすきまs(s=dk−Dk)を設定するが、半径でのすきまをs/2で表わすと、s/2は例えば、0.2mm〜0.5mmで、このすきま(s/2)に厚さが0.2mm〜0.5mm程度のばりが発生する。
【0005】
(b)において、ライナ102の内周面105にばり106が発生すると、ばり106の除去に手間がかかり、生産コストが嵩む。例えば、研削または手作業で取り除くが、研削の場合には、研削する量(体積)が多くなり、研削に時間がかかる。一方、手作業で剥がす場合には、厚いばり106を剥がすことになり、手間がかかる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ライナの内周面にばりが発生するのを抑制し、生産効率の向上を図るアルミニウム基複合材製ライナ及びその鋳包み方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、ライナの周囲へアルミニウム溶湯を注ぐことで製造するシリンダブロックにおいて、ライナは、アルミニウム基複合材で構成するとともに、ライナの基部の一端にアルミニウム溶湯の圧力でライナ中心へ変形させる薄肉部を設けたことを特徴とする。
【0008】
ライナは、予め鋳包み材支持軸を挿入した状態で鋳型内に固定される。そして、アルミニウム溶湯を注ぐと、薄肉部はアルミニウム溶湯の圧力でライナ中心へ変形し鋳包み材支持軸に密着する。その結果、鋳包み材支持軸と薄肉部のすきまは無くなり、ライナの内周面にばりが発生し難くなる。
【0009】
請求項2は、請求項1記載のアルミニウム基複合材製ライナに鋳包み材支持軸を挿入して鋳型内にライナを固定し、型内へ溶湯を充填し、この溶湯の圧力で薄肉部を曲げることで、鋳包み材支持軸へ密着させることを特徴とする。
【0010】
薄肉部は鋳包み材支持軸へ密着するので、溶湯は鋳包み材支持軸と薄肉部の間から漏れ難くなる。その結果、所定圧力で型内へ溶湯を充填しても、ライナの内周面にばりが生じ難く、後工程での内周面加工に手間がかからない。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係るアルミニウム基複合材製ライナの斜視図であり、ライナ10は、基部11を筒状に形成するとともに、基部11の一端12に薄肉部13を一体に設けたものである。14は内周面、15はライナ中心、dはライナ10の内径を示す。
薄肉部13は、アルミニウム溶湯の圧力でライナ中心15へ変形させるもので、厚さをt,長さをbに設定した。
ライナ10の材質は、アルミニウム基複合材である。
【0012】
図2(a)、(b)は本発明に係るライナを鋳包んだシリンダブロックを示す図であり、(a)はシリンダブロックの斜視図、(b)は(a)のb−b線断面図である。
(a)において、シリンダブロック21は、水冷直列4気筒のエンジンの一部で、中央のシリンダ部22に鋳包んだ4個のライナ10・・・(・・・は複数を示す。以下同様。)と、ライナ10の外方に形成したウォータジャケット部23と、上端に形成したシート面24とを有し、アルミニウム基複合材製ライナ10を取り付けることで、耐摩耗性の向上を図ったものである。
【0013】
(b)において、シリンダブロック21はまた、シリンダの直径(ボア)をdbに形成し、シート面24にライナ10の一端12が露出しない、一端12をシリンダ部22の上部25で覆い、一端12側の結合力を高めて熱による変形を抑制したものである。シリンダの直径dbは、db>d(ライナの内径)である。
次にライナ10の鋳包み方法について説明する。
【0014】
図3は本発明に係るライナの鋳包み方法の第1説明図である。
まず、ライナ10、鋳包み材支持軸26および鋳型27を用意する。
鋳包み材支持軸26は、ライナ10に挿入する軸部31と、軸部31の一端に形成したフランジ部32と、他端に形成し、鋳型27に嵌る嵌合部33と、からなる。
【0015】
軸部31の直径はDで、直径Dはライナ10の内径dより所定のすきまcだけ小さく、D=d−cである。すきまcを設けることで、鋳包み材支持軸26の着脱は容易なり、且つ所定の位置決め精度を確保することができる。
鋳型27は、型35と、鋳包み材支持軸26を嵌める嵌合孔36と、を備える。この鋳型27にライナ10を鋳包み材支持軸26で矢印▲1▼,▲1▼の如く固定する。
【0016】
図4は本発明に係るライナの鋳包み方法の第2説明図である。
鋳型27にライナ10を鋳包み材支持軸26で固定し、鋳包み材支持軸26のフランジ部32を溶湯の圧力で抜けない程度に押圧する。
【0017】
次に鋳型27に取り付けた鋳包み材支持軸26とライナ10の薄肉部13との関係を詳しく説明する。
図5は図4の5部詳細図であり、薄肉部13と、ライナ10に挿入した鋳包み材支持軸26とを示すとともに、ライナ10と鋳包み材支持軸26との間に設定したすきまc(c=d−D)を示す。半径に対するすきまは、c/2で、例えば、0.2〜0.5mmに設定する。
このように、鋳型27の型35内にライナ10をセットした後、アルミニウム溶湯を湯口から型35内に流し込む。
【0018】
図6(a)〜(c)は本発明に係るライナの鋳包み方法の第3説明図である。(a):型35内にアルミニウム溶湯41を充填すると、アルミニウム溶湯41はライナ10の周囲を圧力Pで覆うとともに、薄肉部13を圧力Pで矢印▲2▼の如く覆い始める。
【0019】
(b):薄肉部13とアルミニウム溶湯41との接触面積が増加すると、圧力Pで薄肉部13は内側(矢印▲3▼の方向)へ曲がり、鋳包み材支持軸26へ密着し、密着後に隅42にアルミニウム溶湯41が達する。
【0020】
(c):鋳包み材支持軸26に薄肉部13が密着するので、鋳包み材支持軸26と薄肉部13とのすきま(c/2)は無くなり、アルミニウム溶湯41は漏れ難く、ばりの発生を抑えることができる。アルミニウム溶湯41が凝固した後、鋳包み材支持軸26を矢印▲4▼の如く抜き取り、シリンダブロックの鋳物を取り出す。
【0021】
このように、本発明に係るライナの鋳包み方法では、アルミニウム溶湯41の圧力Pで薄肉部13を曲げる(矢印▲3▼の方向)ことで、鋳包み材支持軸26へ密着させるので、薄肉部13の端からアルミニウム溶湯41は漏れ難くなる。その結果、所定圧力Pで型35内へアルミニウム溶湯41を充填しても、ライナ10の内周面14にばりが生じ難く、後工程での内周面加工に手間がかからない。
従って、生産効率の向上を図ることができる。
【0022】
次に鋳造後の後工程を説明する。
図7(a)〜(c)は本発明に係るライナを鋳包んだシリンダブロックの加工方法の説明図である。
(a):ばり43が生じた場合には、当然ばり43の除去工程が発生する。
ばり43は微小で、ばり43の厚さδは、非常に薄く、ここの例では、0.01mm以下である。
【0023】
(b):ばり43を研削または手作業で除去する。具体的には、シリンダブロックの鋳物44のばり43の厚さδは、非常に薄く(0.01mm以下)、ばり43の研削量(体積)は少なくなり、研削時間を短縮することができる。
手作業で剥がす場合は、非常に薄いばり43を矢印▲4▼の如く剥がすので手間がかからない。
【0024】
(c):ライナ10の内周面14をホーニング装置で研削代kだけ研削し、シリンダブロックのシリンダ壁45を仕上げる。研削代kは薄肉部の厚さt(図1参照)にほぼ等しい。その他の部位を他の装置で加工して図2のシリンダブロック21を得る。
【0025】
次に本発明に係るライナの作用を説明する。
図6に示すように、ライナ10は、アルミニウム基複合材で構成するとともに、ライナ10の基部11の一端12にアルミニウム溶湯41の圧力Pでライナ中心15(図1参照)へ変形させる薄肉部13を設けたので、変形と同時に薄肉部13は鋳包み材支持軸26に密着し、鋳包み材支持軸26と薄肉部13のすきま(c/2)は無くなる。従って、ライナ10の内周面14にばりが発生するのを抑制することができる。
【0026】
図8は本発明に係る薄肉部の厚さとばりの厚さの関係を示したグラフであり、横軸を薄肉部の厚さtとし、縦軸をばりの厚さδとしたものである。この試験に用いた薄肉部の長さは4mm、すきまは半径に対するすきま(c/2)で0.2mmである。
薄肉部の厚さtが厚くなると比例して、ばりの厚さδは厚くなる。
薄肉部の厚さtが0.5mm未満になると、薄肉部の形成が難しくなるとともに、ライナの生産効率が低下する。
薄肉部の厚さtが2mmを超えると、薄肉部の強度が高くなり、アルミニウム溶湯の圧力では変形し難くなり、所望のばりの厚さδ、例えば、0.1mm以下を確保できない。
つまり、加工性の点から薄肉部の厚さtを0.5mm以上とし、ばり防止の点から薄肉部の厚さtを2mm以下とした。
その結果、ライナの内周面にばりが発生するのを抑制することができる。
【0027】
なお、ばりの厚さδは0.4mm以上になることもある。薄肉部が外方(図6の矢印▲3▼の逆方向)に開いてラッパ状になると、ばりの厚さδは0.4mm以上になり、全体に開くか一部分が開くかは一定ではない。
【0028】
図9は本発明に係る薄肉部の長さとばりの厚さの関係を示したグラフであり、横軸を薄肉部の長さbとし、縦軸をばりの厚さδとしたものである。この試験に用いた薄肉部の厚さは1.5mm、すきまは半径に対するすきま(c/2)で0.2mmである。
薄肉部の長さbが長くなると反比例して、ばりの厚さδは薄くなる。
薄肉部の長さbが1mm未満になると、薄肉部の強度が高くなり、アルミニウム溶湯の圧力では変形し難くなり、所望のばりの厚さδ、例えば、0.1mm以下を確保できない。
薄肉部の長さbが10mmを超えると、薄肉部の形成が難しくなるとともに、ライナの生産効率が低下する。
つまり、ばり防止の点から薄肉部の長さbを1mm以上とし、加工性の点から薄肉部の長さbを10mm以下とした。
その結果、ライナの内周面にばりが発生するのを抑制することができる。
【0029】
尚、本発明の実施の形態に示した図2のシリンダブロック21は一例である。
ここでは、シート面24にライナ10の一端12が露出しないものであるが、薄肉部13を残し、シート面24に薄肉部13の端を出すことも可能である。V型6気筒や単気筒に採用することも可能である。
鋳包み材支持軸26や鋳型27は一例であり、構成は任意である。
【0030】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1では、ライナの周囲へアルミニウム溶湯を注ぐことで製造するシリンダブロックにおいて、ライナは、アルミニウム基複合材で構成するとともに、ライナの基部の一端にアルミニウム溶湯の圧力でライナ中心へ変形させる薄肉部を設けたので、変形と同時に薄肉部は予めライナに挿入した鋳包み材支持軸に密着し、鋳包み材支持軸と薄肉部のすきまは無くなる。従って、ライナの内周面にばりが発生するのを抑制することができる。
【0031】
請求項2では、請求項1記載のアルミニウム基複合材製ライナに鋳包み材支持軸を挿入して鋳型内にライナを固定し、型内へ溶湯を充填し、この溶湯の圧力で薄肉部を曲げることで、鋳包み材支持軸へ密着させるので、鋳包み材支持軸と薄肉部の間から漏れ難くなる。その結果、所定圧力で型内へ溶湯を充填しても、ライナの内周面にばりが生じ難く、後工程での内周面加工に手間がかからない。
従って、生産効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアルミニウム基複合材製ライナの斜視図
【図2】本発明に係るライナを鋳包んだシリンダブロックを示す図
【図3】本発明に係るライナの鋳包み方法の第1説明図
【図4】本発明に係るライナの鋳包み方法の第2説明図
【図5】図4の5部詳細図
【図6】本発明に係るライナの鋳包み方法の第3説明図
【図7】本発明に係るライナを鋳包んだシリンダブロックの加工方法の説明図
【図8】本発明に係る薄肉部の厚さとばりの厚さの関係を示したグラフ
【図9】本発明に係る薄肉部の長さとばりの厚さの関係を示したグラフ
【図10】従来のライナの説明図
【図11】課題の説明図
【符号の説明】
10…ライナ、11…基部、12…基部の一端、13…薄肉部、15…ライナ中心、21…シリンダブロック、26…鋳包み材支持軸、27…鋳型、35…型、41…アルミニウム溶湯、P…アルミニウム溶湯の圧力。

Claims (2)

  1. ライナの周囲へアルミニウム溶湯を注ぐことで製造するシリンダブロックにおいて、
    前記ライナは、アルミニウム基複合材で構成するとともに、ライナの基部の一端に前記アルミニウム溶湯の圧力でライナ中心へ変形させる薄肉部を設けたことを特徴とするアルミニウム基複合材製ライナ。
  2. 請求項1記載のアルミニウム基複合材製ライナに鋳包み材支持軸を挿入して鋳型内に前記ライナを固定し、型内へ溶湯を充填し、この溶湯の圧力で前記薄肉部を曲げることで、鋳包み材支持軸へ密着させることを特徴とするアルミニウム基複合材製ライナの鋳包み方法。
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