JP2004057193A - 4−アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法 - Google Patents
4−アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】4−アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを製造する方法を提供すること。
【解決手段】4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法であって、
一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力及び該能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞に、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを作用させる工程、並びに生成した一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを採取する工程
を有することを特徴とする製造方法等が提供可能になった。
【選択図】 なし
【解決手段】4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法であって、
一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力及び該能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞に、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを作用させる工程、並びに生成した一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを採取する工程
を有することを特徴とする製造方法等が提供可能になった。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、4−アセトキシ−3−ヒロドキシブタン酸エステルの製造方法等に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
3,4−ジヒドロキシブタン酸の誘導体は医農薬中間体等として有用な化合物であり、例えば、抗高脂血症剤等の鍵中間体として重要である(特許特許文献1参照)。上記の誘導体を効率的に合成するには、4位のヒドロキシル基が保護された3,4−ジヒドロキシブタン酸の誘導体である4−アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルは極めて有用である。
このような4−アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを製造する方法としては、ブロモニトリルオキサイドをアリルアルコールに付加させ、イソオキサゾリン化合物を構築した後、さらに3工程を経る方法による、合計4工程での製造方法が知られている(非特許文献番号1)が、より効率的又は簡便な方法が求められている。
【0003】
【特許文献1】
特許第3241723号公報(第2頁)
【0004】
【特許文献2】
特開平10−94399号公報
【0005】
【非特許文献1】
Tetrahedron Letters(1986)4647
【0006】
【非特許文献2】
Journal of Molecular Catalysis B 6,1999,41
【0007】
【非特許文献3】
Appl.Envir.Microbiology 1997,3783
【0008】
【非特許文献4】
Appl.Biol.Biotech 52,1999,386
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような状況下、本発明者等は、4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法について鋭意検討した結果、一般式(1)
(式中、RはC1−C8アルキル基を表す。)
で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)
(式中、RはC1−C8アルキル基、*は不斉炭素原子を示す。)
で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力及び該能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞に、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを作用させる工程、並びに生成した一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを採取することにより、目的とする4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを効率的又は簡便に製造できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明は、
1.4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法であって、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力及び該能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞に、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを作用させる工程、並びに生成した一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを採取する工程を有することを特徴とする製造方法(以下、本発明製造方法と記すこともある。);
2.形質転換体が、下記の2つの人為的に付与される能力を同時に有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有する1つのプラスミド、下記(i)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA及び下記(ii)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを同時に有する1つのプラスミド、あるいは、
下記(i)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有するプラスミド及び下記(ii)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを有するプラスミドからなる2つのプラスミド、
が少なくとも導入されてなる形質転換体であることを特徴とする請求項1記載の製造方法
<人為的に付与される能力>
(i)一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力
(ii)上記(i)の能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力;
3.形質転換体が大腸菌であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
4.補酵素が、NADH/NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)もしくはNADPH/NADP+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
5.脂肪族アルコールの存在下、形質転換体又はその死菌化細胞に一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを作用させることを特徴とする前項1記載の製造方法;
6.脂肪族アルコールが200℃以下の沸点を持つアルコールであることを特徴とする前項5記載の製造方法;
7.脂肪族アルコールが2−プロパノールであることを特徴とする前項5記載の製造方法;
8.グルコースの存在下、形質転換体又はその死菌化細胞に一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを作用させることを特徴とする前項1記載の製造方法;
9.一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号2又は4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号2又は4で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)コリネバクテリウム属又はペニシリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される4‐アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列;
10.一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項1記載の製造方法
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号2で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)コリネバクテリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される4‐アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列;
11.一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項1記載の製造方法
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号3で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号4で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)ペニシリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される4‐アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
12.一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
13.一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、配列番号3で示されるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項1記載の製造方法;
14.一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
15.一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、配列番号4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
16.一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成させるための触媒としての、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力及び該能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞の使用;
17.前工程として、4−ハロ−3−オキソブタン酸エステルの4位にあるハロゲン原子をアセトキシ基に置換することにより一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを得る工程を付加的に有することを特徴とする前項1記載の製造方法;
等を提供するものである。
【0011】
本発明製造方法で用いられる形質転換体は、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力及び該能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力を人為的に付与されてなる形質転換体である(以下、本形質転換体と記すこともある。)。このような形質転換体としては、例えば、下記の2つの人為的に付与される能力を同時に有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有する1つのプラスミド、
下記(i)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA及び下記(ii)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを同時に有する1つのプラスミド、あるいは、
下記(i)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有するプラスミド及び下記(ii)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを有するプラスミドからなる2つのプラスミド、
が少なくとも導入されてなる形質転換体等をあげることができる。
<人為的に付与される能力>
(i)一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力
(ii)上記(i)の能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力
【0012】
このような形質転換体は、通常、(1)一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力及び当該能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力
の2つの人為的に付与される能力を同時に有する酵素、や(2)一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素及び当該酵素が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素の2種類の酵素、を含有している。(以下、前記(1)及び(2)の酵素を総じて本酵素と記すこともある。)。
【0013】
また、「一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力」の具体的な例としては、例えば、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力をあげることができる。
<アミノ酸配列群>
(a1)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(a2)配列番号3で示されるアミノ酸配列
(b1)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(b2)配列番号3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c1)配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(c2)配列番号4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d1)配列番号2で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(d2)配列番号4で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e1)コリネバクテリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e2)ペニシリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
【0014】
本形質転換体は、遺伝子工学的な手法を用いて作製すればよい。尚、このような形質転換体を作製する際に用いられる、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を少なくとも有する酵素(以下、本還元酵素と記すこともある。)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子(以下、本還元酵素遺伝子と記すこともある。)は、(1)天然に存在する遺伝子の中からクローニングされたものであってもよいし、(2)天然に存在する遺伝子であっても、このクローニングされた遺伝子の塩基配列において、その一部の塩基の欠失、置換又は付加が人為的に導入されてなる遺伝子(即ち、天然に存在する遺伝子を変異処理(部分変異導入法、突然変異処理等)を行ったものであってもよいし、(3)人為的に合成されたものであってもよい。
【0015】
ここで、前記(b)、(b1)又は(b2)にある「アミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」や前記(d)、(d1)又は(d2)にある「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAに対し相補性を有するDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列」には、例えば、配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列を有する酵素が細胞内で受けるプロセシング、該酵素が由来する生物の種差、個体差、組織間の差異等により天然に生じる変異や、人為的なアミノ酸の変異等が含まれる。
前記(b)、(b1)又は(b2)にある「(アミノ酸が)欠失、置換若しくは付加(された)」(以下、総じてアミノ酸の改変と記すこともある。)を人為的に行う場合の手法としては、例えば、配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAに対して慣用の部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441−9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を見出すことのできる範囲であればよい。
また前記欠失、置換若しくは付加のうち、特にアミノ酸の置換に係る改変が好ましい。当該置換は、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似した性質を有するアミノ酸への置換がより好ましい。このような置換としては、例えば、▲1▼グリシン、アラニン;▲2▼バリン、イソロイシン、ロイシン;▲3▼アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;▲4▼セリン、スレオニン;▲5▼リジン、アルギニン;▲6▼フェニルアラニン、チロシンのグループ内での置換が挙げられる。
【0016】
本発明において「(アミノ酸が)欠失、置換若しくは付加(された)」には、例えば、2つの蛋白質間のアミノ酸配列に関する高い配列同一性(具体的には、80%以上の配列同一性、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性)が存在している必要がある。また「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」には2つのDNA間の塩基配列に関する配列同一性(具体的には、80%以上の配列同一性、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性)が存在している必要がある。
ここで「配列同一性」とは、2つのDNA又は2つの蛋白質間の配列の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のDNA又は蛋白質は、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。このような配列同一性に関しては、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,22(22):4673−4680(1994)を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。尚、配列同一性は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYX−MACや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えば、ホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般的に利用可能である。
前記(d)、(d1)又は(d2)にある「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」に関して、ここで使用されるハイブリダイゼーションは、例えば、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)に記載される方法や、「クローニングとシークエンス」(渡辺格監修、杉浦昌弘編集、1989年、農村文化社発行)に記載されているサザンハイブリダイゼーション法等の通常の方法に準じて行うことができる。また「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、6×SSC(900mM NaCl、90mM クエン酸三ナトリウムを含む溶液。尚ここでは、NaCl175.3g、クエン酸三ナトリウム88.2gを含む溶液を水800mlで溶解し、10N NaClでpHを調製した後、全量を1000 mlとした溶液を20×SSCとする。)中で65℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley &Sons, N. Y. (1989), 6.3.1−6.3.6)等を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2×SSCで50℃の条件(低ストリンジェンシーな条件)から0.1×SSCで65℃までの条件(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温(低ストリンジェンシーな条件)から65℃(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
【0017】
本還元酵素遺伝子は、例えば、下記のような調製方法に準じて調製すればよい。
コリネバクテリウム・シュードジフテリティカム(Corynebacterium pseudodiphteriticum)等のコリネバクテリウム属に属する微生物等から通常の遺伝子工学的手法に準じて染色体DNAを調製し、調製された染色体DNAを鋳型として、かつ適切なプライマーを用いてPCRを行うことにより、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号2で示される塩基配列を有するDNA等を増幅して本還元酵素遺伝子を調製する。
ここでコリネバクテリウム・シュードジフテリティカム由来の染色体DNAを鋳型として、かつ配列番号5に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号6に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いてPCRを行う場合には、配列番号2で示される塩基配列からなるDNAを増幅して本還元酵素遺伝子を調製することになる。
当該PCRの条件としては、例えば、4種類のdNTPを各々20μM、2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを各々15pmol、Taqpolymeraseを1.3U及び鋳型となるcDNAライブラリーを混合した反応液を97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)‐50℃(0.5分間)‐72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)‐55℃(0.5分間)‐72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持する条件が挙げられる。
尚、当該PCRに用いるプライマーの5’末端側には、制限酵素認識配列等を付加していてもよい。
上記のようにして増幅されたDNAを、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO−471−50338−X等に記載されている方法に準じてベクターにクローニングして組換ベクターを得ることができる。用いられるベクターとしては、具体的には、例えば、pUC119(宝酒造社製)、pTV118N(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)、pCR2.1−TOPO(Invitrogen社製)、pTrc99A(Pharmacia社製)、pKK223−3(Pharmacia社製)等が挙げられる。このようにしてベクターに組み込んだ形態で本還元酵素遺伝子を調製すれば、後の遺伝子工学的手法における使用において便利である。
【0018】
また、ペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)等のペニシリウム属に属する微生物等から通常の遺伝子工学的手法(例えば、「新 細胞工学実験プロトコール」(東京大学医科学研究所制癌研究部編、秀潤社、1993年)に記載された方法)に準じてcDNAライブラリーを調製し、調製されたcDNAライブラリーを鋳型として、かつ適切なプライマーを用いてPCRを行うことにより、配列番号3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号4で示される塩基配列を有するDNA等を増幅して本還元酵素遺伝子を調製する。
ここでペニシリウム・シトリナム由来のcDNAライブラリーを鋳型として、かつ配列番号7に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号8に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いてPCRを行う場合には、配列番号4で示される塩基配列からなるDNAを増幅して本還元酵素遺伝子を調製することになる。
当該PCRの条件としては、例えば、4種類のdNTPを各々20μM、2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを各々15pmol、Taqpolymeraseを1.3U及び鋳型となるcDNAライブラリーを混合した反応液を97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)‐50℃(0.5分間)‐72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)‐55℃(0.5分間)‐72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持する条件が挙げられる。
尚、当該PCRに用いるプライマーの5’末端側には、制限酵素認識配列等を付加していてもよい。
上記のようにして増幅されたDNAを、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO−471−50338−X等に記載されている方法に準じてベクターにクローニングして組換ベクターを得ることができる。用いられるベクターとしては、具体的には、例えば、pUC119(宝酒造社製)、pTV118N(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)、pCR2.1−TOPO(Invitrogen社製)、pTrc99A(Pharmacia社製)、pKK223−3(Pharmacia社製)等が挙げられる。このようにしてベクターに組み込んだ形態で本還元酵素遺伝子を調製すれば、後の遺伝子工学的手法における使用において便利である。
【0019】
一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素(以下、本補酵素再生酵素遺伝子と記すこともある。)は、例えば、本補酵素再生酵素遺伝子が本還元酵素とは異なる酵素である場合には、下記のような調製方法に準じて調製すればよい。
バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)等のバシラス属に属する微生物等から通常の遺伝子工学的手法に準じて染色体DNAを調製し、調製された染色体DNAを鋳型として、かつ適切なプライマーを用いてPCRを行うことにより、配列番号12で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号12で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号11で示される塩基配列を有するDNA等を増幅して本補酵素再生酵素遺伝子を調製する。
ここでバシラス・メガテリウム由来の染色体DNAを鋳型として、かつ配列番号9に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号10に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いてPCRを行う場合には、配列番号11で示される塩基配列からなるDNAを増幅して本補酵素再生酵素遺伝子を調製することになる。
当該PCRの条件としては、例えば、4種類のdNTPを各々20μM、2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを各々15pmol、Taqpolymeraseを1.3U及び鋳型となるcDNAライブラリーを混合した反応液を97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)‐50℃(0.5分間)‐72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)‐55℃(0.5分間)‐72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持する条件が挙げられる。
尚、当該PCRに用いるプライマーの5’末端側には、制限酵素認識配列等を付加していてもよい。
上記のようにして増幅されたDNAを、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO−471−50338−X等に記載されている方法に準じてベクターにクローニングして組換ベクターを得ることができる。用いられるベクターとしては、具体的には、例えば、pUC119(宝酒造社製)、pTV118N(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)、pCR2.1−TOPO(Invitrogen社製)、pTrc99A(Pharmacia社製)、pKK223−3(Pharmacia社製)等が挙げられる。このようにしてベクターに組み込んだ形態で本還元酵素遺伝子を調製すれば、後の遺伝子工学的手法における使用において便利である。
【0020】
本形質転換体を調製する方法としては、例えば、(1)本還元酵素遺伝子と本補酵素再生酵素遺伝子との両遺伝子及び宿主細胞で機能可能なプロモーターが機能可能な形で接続されてなるDNAのような、本遺伝子が宿主細胞中で発現できるような単一な組換プラスミドを作製し、これを宿主細胞に導入することにより作製する方法、(2)本還元酵素遺伝子と本補酵素再生酵素遺伝子との両遺伝子のうちの一方の遺伝子及び宿主細胞で機能可能なプロモーターが機能可能な形で接続されてなるDNAのような、本遺伝子のうちの一方の遺伝子が宿主細胞中で発現できるような組換プラスミドを上記遺伝子毎に別々に作製し、これらを宿主細胞に導入することにより作製する方法等があげられる。さらに、一方の遺伝子又は両遺伝子を宿主細胞の染色体中に導入する方法も利用することができる。
尚、上記単一な組換プラスミドを宿主細胞に導入することにより作製する方法としては、例えば、プロモーター、ターミネーター等の発現制御に関わる領域をそれぞれの両遺伝子に連結して組換プラスミドを構築したり、ラクトースオペロンのような複数のシストロンを含むオペロンとして発現させるような組換プラスミドを構築する方法等をあげることができる。
ここで上記の組換プラスミドとしては、例えば、宿主細胞中で複製可能な遺伝情報を含み、自立的に増殖できるものであって、宿主細胞からの単離・精製が容易であり、宿主細胞中で機能可能なプロモーターを有し、検出可能なマーカーを持つ発現ベクターに、本酵素をコードする遺伝子が機能可能な形で導入されたものを好ましく挙げることができる。尚、発現ベクターとしては、各種のものが市販されている。
ここで、「機能可能な形で」とは、上記の組換プラスミドを宿主細胞に導入することにより宿主細胞を形質転換させた際に、本遺伝子(又は本遺伝子のうちの一方の遺伝子)が、プロモーターの制御下に発現するようにプロモーターと結合された状態にあることを意味する。プロモーターとしては、大腸菌のラクトースオペロンのプロモーター、大腸菌のトリプトファンオペロンのプロモーター、又は、tacプロモーターもしくはtrcプロモーター等の大腸菌内で機能可能な合成プロモーター等をあげることができる。またコリネバクテリウム・シュードジフテリティカム、ペニシリウム・シトリナム、バシラス・メガテリウムにおいて本遺伝子の発現を制御しているプロモーターを利用してもよい。
また発現ベクターとしては、選択マーカー遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等の抗生物質耐性付与遺伝子等)を含むベクターを用いると、当該ベクターが導入された形質転換体を当該選択マーカー遺伝子の表現型等を指標にして容易に選択することができる。
さらなる高発現を導くことが必要な場合には、本還元酵素及び/又は本補酵素再生酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子の上流にリボゾーム結合領域を連結してもよい。用いられるリボゾーム結合領域としては、Guarente L.ら(Cell 20, p543)や谷口ら(Genetics of Industrial Microorganisms,
p202, 講談社)による報告に記載されたものを挙げることができる。
宿主細胞としては、原核生物(例えば、Escherichia属、Bacillus属、Corynebacterium属、Staphylococcus属、Streptomyces属)もしくは真核生物(例えば、Saccharomyces属、Kluyveromyces属、Aspergillus属)である微生物細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞等を挙げることができる。例えば、本形質転換体の大量調製が容易になるという観点では、大腸菌等を好ましく挙げることができる。
本還元酵素及び/又は本補酵素再生酵素が宿主細胞中で発現できるようなプラスミドを宿主細胞に導入する方法としては、用いられる宿主細胞に応じて通常使われる導入方法であればよく、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO−471−50338−X等に記載される塩化カルシウム法や、「Methods in Electroporation:Gene Pulser /E.coli Pulser System」 Bio−Rad Laboratories, (1993)等に記載されるエレクトロポレーション法等をあげることができる。
宿主細胞において本還元酵素遺伝子及び/又は本補酵素再生酵素遺伝子が宿主細胞中で発現できるようなプラスミドが導入された形質転換体を選抜するには、前記の如く、例えば、ベクターに含まれる選択マーカー遺伝子の表現型を指標にして選抜すればよい。
プラスミドが導入された宿主細胞(即ち、形質転換体)が本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生酵素遺伝子を保有していることは、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press等に記載される通常の方法に準じて、制限酵素部位の確認、塩基配列の解析、サザンハイブリダイゼーション、ウエスタンハイブリダイゼーション等を行うことにより、確認することができる。
【0021】
本形質転換体の培養は、微生物培養、昆虫細胞もしくは哺乳動物細胞の培養に使用される通常の方法によって行うことができる。例えば大腸菌の場合、適当な炭素源、窒素源およびビタミン等の微量栄養物を適宜含む培地中で培養を行う。培養方法としては、固体培養、試験管振盪式培養、往復式振盪培養、ジャーファーメンター(Jar Fermenter)培養、タンク培養等の液体培養のいずれの方法でもよく、好ましくは、通気撹拌培養法等の液体培養を挙げることができる。
培養温度は、本形質転換体が生育可能な範囲で適宜変更できるが、通常約10〜50℃、好ましくは約20〜40℃である。培地のpHは約6〜8の範囲が好ましい。培養時間は、培養条件によって異なるが通常約1日〜約5日が好ましい。
本形質転換体を培養するための培地としては、例えば、微生物等の宿主細胞の培養に通常使用される炭素源や窒素源、有機塩や無機塩等を適宜含む各種の培地を用いることができる。
炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、シュークロース等の糖類、グリセロール等の糖アルコール、フマル酸、クエン酸、ピルビン酸等の有機酸、動物油、植物油及び糖蜜が挙げられる。これらの炭素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1〜30%(w/v)程度である。
窒素源としては、例えば、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーン・スティープ・リカー(Corn Steep Liquor)、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸等の天然有機窒素源、アミノ酸類、硝酸ナトリウム等の無機酸のアンモニウム塩、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸のアンモニウム塩及び尿素が挙げられる。これらのうち有機酸のアンモニウム塩、天然有機窒素源、アミノ酸類等は多くの場合には炭素源としても使用することができる。これらの窒素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1〜30%(w/v)程度である。
有機塩や無機塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩及びリン酸塩を挙げることができる。具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素一カリウム及びリン酸水素二カリウムが挙げられる。これらの有機塩及び/又は無機塩の培地への添加量は培養液に対して通常0.0001〜5%(w/v)程度である。
さらに、tacプロモーター、trcプロモーター及びlacプロモーター等のアロラクトースで誘導されるタイプのプロモーターと、本酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子とが機能可能な形で接続されてなるDNAが導入されてなる形質転換体の場合には、本酵素の生産を誘導するための誘導剤として、例えば、isopropyl thio−β−D−galactoside(IPTG)を培地中に少量加えることもできる。
【0022】
本形質転換体の取得は、例えば、前記の培養により得られた培養物を遠心分離等により形質転換体を沈殿物として回収すればよい。必要に応じて、回収前に当該形質転換体を、例えば、100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH6.5)等の緩衝液等を用いて洗浄してもよい。
【0023】
さらに本形質転換体から、その死菌化細胞を下記の方法により調製することもできる。
死菌化処理方法としては、例えば、物理的殺菌法(加熱、乾燥、冷凍、光線、超音波、濾過、通電)や、化学薬品を用いる殺菌法(アルカリ、酸、ハロゲン、酸化剤、硫黄、ホウ素、砒素、金属、アルコール、フェノール、アミン、サルファイド、エーテル、アルデヒド、ケトン、シアン及び抗生物質)をあげることができる。尚、これらの殺菌法のうちできるだけ本酵素の酵素活性を失活させず、かつ反応系への残留、汚染などの影響が少ない処理方法を各種の反応条件に応じて適宜選択することがよい。
【0024】
このようにして調製された形質転換体又はその死菌化細胞は、例えば、凍結乾燥細胞、有機溶媒処理細胞、乾燥細胞等の形態、あるいは、固定化された形態(固定化物)で利用してもよい。
【0025】
固定化物を得る方法としては、例えば、担体結合法(シリカゲルやセラミック等の無機担体、セルロース、イオン交換樹脂等に本形質転換体又はその死菌化細胞を吸着させる方法)及び包括法(ポリアクリルアミド、含硫多糖ゲル(例えばカラギーナンゲル)、アルギン酸ゲル、寒天ゲル等の高分子の網目構造の中に本形質転換体又はその死菌化細胞を閉じ込める方法)が挙げられる。
【0026】
続いて、本発明製造方法における触媒反応について説明する。
本発明製造方法において一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルに変換する反応は、4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルに本形質転換体又はその死菌化細胞を作用させることによって達成される。
当該反応は、通常、水の存在下で行われる。水は緩衝液の形態であってもよく、この場合に用いられる緩衝剤としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
尚、緩衝液を溶媒として用いる場合、その量は一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステル1重量部に対して、通常、1〜300重量倍、好ましくは5〜100重量倍である。
当該反応に際しては、一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルを反応系内に連続又は逐次加えてもよい。
【0027】
反応温度としては、本形質転換体又はその死菌化細胞に含まれた本酵素の安定性、反応速度の点から0〜70℃程度をあげることができ、好ましくは約10〜40℃があげられる。
反応pHとしては、反応が進行する範囲内で適宜変化させることができるが、例えば、pH5〜8をあげることができる。
【0028】
反応は、水の他に有機溶媒の共存下に行うこともできる。この場合の有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、デカン等の炭化水素類、t−ブタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、ジメチルスルホキサイドなどのスルホキサイド類、アセトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類及びこれらの混合物が挙げられる。
反応に使用する有機溶媒の量は、一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルに対して、通常、100重量倍以下であり、好ましくは70重量倍以下である。
【0029】
反応はさらに、例えば、NADH、NADPHのような補酵素を加えて通常行うことがよい。
反応に用いられる補酵素の量は、一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルに対して、通常、0.5重量倍以下、好ましくは0.1重量倍以下である。
【0030】
本発明製造方法における触媒反応では、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの還元反応において化学量論量の還元型補酵素(電子供与体)が消費された結果生じた酸化型補酵素(電子受容体)を、再び還元型補酵素(電子供与体)に変換する能力、即ち、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力、を有する酵素(即ち、本補酵素再生酵素)の利用が不可欠となる。この場合には、本補酵素再生酵素は、前記還元反応を行う本還元酵素とは異なる酵素であってもよいし、また本還元酵素が補酵素再生酵素としての機能を合わせ持つものであってもよい。もちろん両者の組み合わせであってもよい。
ここで、「本還元酵素が補酵素再生酵素としての機能を合わせ持つもの」であることは、例えば、単離された本還元酵素を用いて酸化型補酵素(電子受容体)の存在下で、補酵素再生酵素の基質である再生系原料化合物を酸化させる反応を行うことにより還元型補酵素(電子供与体)を生じるか否かを調べることにより確認すればよい。
本補酵素再生酵素としては、例えば、グルコース脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素及び有機脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素等)等が挙げられる。中でも、脂肪族アルコール(例えば、2−プロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール等の200℃以下の沸点をもつアルコール等)を還元することにより補酵素再生を行う補酵素再生酵素が好ましい。この場合に用いられる脂肪族アルコールの量は、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルに対して100モル倍以下、好ましくは10モル倍以下である。
【0031】
反応は、例えば、水、一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステル、本形質転換体又はその死菌化細胞、及び必要に応じて補酵素、有機溶媒等を混合し、攪拌、振盪することにより行うことができる。
【0032】
反応の終点は、例えば、反応液中の原料化合物の存在量を液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等により追跡することにより決定することができる。反応時間の範囲としては、通常、5分間〜10日間、好ましくは30分間〜4日間の範囲をあげることができる。
【0033】
反応終了後は、触媒として酵素を使用して化合物を製造する方法において通常用いられる化合物の回収方法により目的物を採取すればよい。例えば、まず反応液をヘキサン、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、トルエン等の有機溶媒で抽出する。必要に応じて反応液を濾過したり、又は遠心分離等の処理により不溶物を除去した後に前記抽出操作を行なえばよい。次に抽出された有機層を乾燥した後、濃縮物として目的物を回収することができる。目的物は、必要によりカラムクロマトグラフィー等によりさらに精製することができる。
【0034】
本発明製造方法では、その前工程として、4−ハロ−3−オキソブタン酸エステルの4位にあるハロゲン原子をアセトキシ基に置換することにより一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルを得る工程を付加的に有してもよい。具体的には、本発明製造方法は、種々の医農薬の中間体に誘導されており、工業的に利用可能な化合物である、一般式(3)
(式中、RはC1−C8アルキル基、Xは塩素、臭素又はヨウ素を表す。)
で示される4−ハロ−3−オキソブタン酸エステルの4位ハロゲン原子をアセトキシ基に置換することにより一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルを得る工程を前工程として付加的に有し、得られた一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルから一般式(2)で示される4−アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを得る製造方法であってもよい。
【0035】
ここで出発化合物として用いられる一般式(3)で示される4−ハロ−3−オキソブタン酸エステルにおいて、Rで示されるC1−C8アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基等をあげることができる。一般式(3)で示される4−ハロ−3−オキソブタン酸エステルの具体的な例としては、4−ブロモ−3−オキソブタン酸エステル等をあげることができる。因みに、当該化合物は、アセト酢酸エステルのブロム化により容易に製造可能である。
【0036】
一般式(3)で示される4−ハロ−3−オキソブタン酸エステルの4位ハロゲン原子をアセトキシ基に置換することにより一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルを得る工程において用いられるアセトキシ化の反応試剤としては、例えば、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸アンモニウム等の酢酸塩をあげられる。当該工程は、通常有機溶媒の存在下で行うが、必要に応じて無溶媒で実施することもできる。かかる溶媒として、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、トルエン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、メチル t‐ブチル エーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N‐ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒、シクロヘキサン、ヘプタン等の炭化水素溶媒、等を、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。当該工程の反応温度は、反応を進行させるのに十分な温度であれば制限はないが、通常、0〜100℃程度、好ましくは10〜80℃程度、より好ましくは20〜70℃である。
【0037】
このようにして生成された一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルは、必要に応じて、一旦採取・精製してから次の工程に供してもよいしそのまま次の工程に供してもよい。採取・精製には、例えば、反応混合物に対し洗浄分液、濃縮等の処理操作を行う方法・クロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の精製操作等の通常の方法を用いればよい。
【0038】
【実施例】
以下、製造例等により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1 (本還元酵素遺伝子の調製(その1)及び本還元酵素遺伝子を含有する形質転換体の調製)
配列番号2で示される塩基配列からなるDNAを含有するプラスミドpKARを以下のようにして調製した。
まず、Appl Microbial Biotechnol(1999)52:386−392等に記載される公知のプラスミドpUAR(受託番号FERM P−18127)から、配列番号2で示されるDNAを含むDNA断片を、PstI及びSmaIを用いて切り出した。切り出されたDNA断片を、PstI/SmaI処理したpKK223‐3ベクター(Amersham Pharmacia Biotech社製)のTacプロモーターの下流に挿入した。このようにしてプラスミドpKARを構築した。
構築されたプラスミドpKARを用いてE. coli JM109株を形質転換した。
次に、フラスコに液体培地(水1000mlにトリプトン10g、酵母エキス5g及び塩化ナトリウム5gを溶解した。この溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpHを7.0に調整した。)100mlを入れ、滅菌した後、アンピシリンを100μg/ml、ZnCl2を0.01%(w/v)、isopropyl thio−β−D−galactoside(IPTG)を0.4mMになるように加えた。このようにして調製された培地に、上記で得られた形質転換体(E. coli JM109/pKAR株)が前記組成の液体培地で予め培養された培養液0.3mlを接種し、これを30℃で14時間振盪培養した。
培養後、得られた培養液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、菌体を回収した。回収された菌体を、50mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)30mlに懸濁し、この懸濁液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、本還元酵素遺伝子を含有する形質転換体である洗浄菌体を得た。
【0040】
実施例2 (本還元酵素遺伝子の調製(その2))
(2−1)染色体DNAの調製
フラスコに液体培地(水1000mlにトリプトン5g、酵母エキス2.5g、塩化ナトリウム4g、ゼラチン2.5g、酢酸ナトリウム1.5g及びスレオニン2.4gを溶解する。この溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpHを7.0に調整する。)100mlを入れ、滅菌する。このようにして調製された培地に、特開平10−94399等に記載される公知のコリネバクテリウム・シュードジフテリティカム亜種(Corynebacterium pseudodiphteriticum)ST−10株(受託番号FERM P−13150)が前記組成の液体培地で予め培養された培養液0.3mlを接種し、これを30℃で10時間振盪培養する。
培養後、得られた培養液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、菌体を回収する。回収された菌体を、50mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)30mlに懸濁し、この懸濁液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、洗浄菌体を得る。
このようにして得られる洗浄菌体を用いて、J.C.Wangらの方法(Appl Microbiol Biotechnol (1999)52:386−392)によって染色体DNAを調製する。
【0041】
(2−2)本還元酵素遺伝子を含有するプラスミドの調製(プラスミドpTrcPARの構築)
配列番号5で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号6で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに、前記(2−1)で調製される染色体DNAを鋳型にして下記反応液組成、反応条件でPCRを行う。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
【0042】
[反応液組成]
染色体DNA 1μl
dNTP(各2.5mM−mix) 0.4μl
プライマー(20pmol/μl) 各0.75μl
10xbuffer(with MgCl2) 5μl
enz.expandHiFi (3.5x103U/ml) 0.375μl
超純水 41.725μl
【0043】
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持する。
【0044】
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片に2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該DNA断片を2重消化する。次いで得られるDNA断片を精製する。
一方、ベクターpTrc99A(Pharmacia製)を2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化する。次いで得られるDNA断片を精製する。
このようにして精製して得られる2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションする。得られるライゲーション液でE.coliDH5αを形質転換する。
得られる形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて本還元酵素遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpTrcPARと記すこともある。)を取り出す。
【0045】
実施例3 (本還元酵素遺伝子の調製(その3))
(3−1)cDNAライブラリーの調製
500mlフラスコに培地(水にポテト・デキストロース・ブロース(ベクトン・ディッキンソン社製)を24g/Lの割合で溶解したもの)100mlを入れ、121℃で15分間滅菌した。ここに同組成の培地中で培養(30℃、48時間、振盪培養)したペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)IFO4631株の培養液0.5mlを加え、30℃で72時間振盪培養した。その後、得られた培養液を遠心し(8000xg、10分)、生じた沈殿を集めた。この沈殿を20mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)50mlで3回洗浄して、約1.0gの洗浄菌体を得た。
ペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)IFO4631株の洗浄菌体を用いて、チオシアン酸グアニジンフェノールクロロホルム法で全RNAを調製した。調製された全RNAから、Oligotex(dT)30−Super(宝酒造社製)を用いてpoly(A)を有するRNAを得た。
cDNAライブラリーの作製は、Gubler and Hoffman法に基づいて実施した。まず、上記のようにして得られたpoly(A)を有するRNA、Oligo(dT)18−リンカープライマー((含XhoIサイト)宝酒造社製)、RAV−2 Rtase及びSuperScriptII Rtaseを用いて一本鎖cDNAを調製した。調製された一本鎖cDNA(を含む前記反応液)にE. coli DNA polymerase、E. coli Rnase/E. coli DNA Ligase Mixture及びT4 DNA Polymeraseを加えることにより、二本鎖cDNAの合成及び当該二本鎖cDNAの平滑末端化処理を行った。
このようにして得られた二本鎖cDNAとEcoRI−NotI−BamHIアダプター(宝酒造社製)とのライゲーションを行った。ライゲーション後に得られたDNAを、以下の順で、リン酸化処理、XhoIでの切断処理、スピンカラム(宝酒造社製)を用いる低分子量DNAの除去処理、λZapII(EcoRI−XhoI切断)とのライゲーションした後、in vitro packaging kit (STRATAGENE社製)を用いてパッケージングすることにより、cDNAライブラリー(以下、cDNAライブラリー(A)と記すこともある。)を調製した。
【0046】
(3−2)本還元酵素遺伝子を含有するプラスミドの調製(プラスミドpTrcRPcの構築)
配列番号7で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号8で示されるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、前記(3−1)で調製されたcDNAライブラリーを鋳型にして下記反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
【0047】
[反応液組成]
cDNAライブラリー原液 1μl
dNTP(各2.5mM−mix) 0.4μl
プライマー(20pmol/μl) 各0.75μl
10xbuffer(with MgCl2) 5μl
enz.expandHiFi (3.5x103U/ml) 0.375μl
超純水 41.725μl
【0048】
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持した。
【0049】
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片に2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該DNA断片を2重消化させた。次いで得られたDNA断片を精製した。
一方、ベクターpTrc99A(Pharmacia製)を2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coliDH5αを形質転換した。
得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて本還元酵素遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpTrcRPcと記すこともある。)を取り出した。
【0050】
実施例4 (本補酵素再生酵素遺伝子の調製)
(4−1)酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド等を還元型に変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子を調製するための準備
フラスコにLB培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%塩化ナトリウム)100mlを入れ、滅菌した。このようにして調製された培地に、Bacillus megaterium IFO12108株が前記組成の液体培地で予め培養された培養液0.3mlを接種し、これを30℃で10時間振盪培養した。
培養後、得られた培養液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、菌体を回収した。回収された菌体を、50mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)30mlに懸濁し、この懸濁液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、洗浄菌体を得た。
このようにして得られた洗浄菌体からQiagen Genomic Tip (Qiagen社製)を用い、それに付属するマニュアルに記載される方法に従って染色体DNAを精製した。
【0051】
(4−2)酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド等を還元型に変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子の調製(その1:プラスミドpSDGDH12の構築)
The Journal of Biological Chemistry Vol.264, No.11, 6381−6385(1989)に記載された公知のBacillus megaterium IWG3由来のグルコース脱水素酵素のアミノ酸配列に基づいて配列番号9で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号10で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとを合成する。配列番号9で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号10で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、前記(4−1)で精製された染色体DNAを鋳型にして実施例2(2−2)に記載させる反応液組成、反応条件でPCRを行う。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片を、Invitrogen社製TOPOTMTA cloningキットを用いてpCR2.1−TOPOベクターの既存「PCR Product挿入サイト」にライゲーションする。得られるライゲーション液でE.coliDH5αを形質転換する。
得られる形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてグルコース脱水素酵素を含有するプラスミド(以下、プラスミドpSDGDH12と記すこともある。)を取り出す。
次に、取り出されるプラスミドpSDGDH12を鋳型として、Dye Terminator Cycle sequencing FS ready Reaction Kit(パーキンエルマー製)を用いたシークエンス反応を行った後、得られるDNAの塩基配列をDNAシーケンサー373A(パーキンエルマー製)で解析する。その結果を配列番号11に示す。
【0052】
(4−3)酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸等を還元型に変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子の調製(その2:プラスミドpAGDH12の構築)
(4−3−1)プラスミドpTGDH12の構築
配列番号11で示される塩基配列を基にして配列番号13で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号14で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとを合成した。
配列番号13で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号14で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、前記(4−1)で精製された染色体DNAを鋳型にして以下の反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
【0053】
[反応液組成]
染色体DNA原液 1μl
dNTP(各2.5mM−mix) 0.4μl
プライマー(20pmol/μl) 各0.75μl
10xbuffer(with MgCl2) 5μl
enz.expandHiFi (3.5x103U/ml) 0.375μl
超純水 41.725μl
【0054】
[PCR反応条件]
上記組成に反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(2.5分間)のサイクルを20回、さらに72℃で7分間保持した。
【0055】
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片に2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該DNA断片を2重消化させた。次いで得られたDNA断片を精製した。
一方、ベクターpTV118N(宝酒造社製)を2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coliDH5αを形質転換した。
得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて本還元酵素遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpTGDH12と記すこともある。)を取り出した。
【0056】
(4−3−2)プラスミドpCGDH12の構築
ベクターpTV118N(宝酒造社製)の塩基配列を基にして配列番号15で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成した。
配列番号15で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号14で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、プラスミドpTGDH12を鋳型にして以下の反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
【0057】
[反応液組成]
プラスミドpTGDH12溶液 1μl
dNTP(各2.5mM−mix) 0.4μl
プライマー(20pmol/μl) 各0.75μl
10xbuffer(with MgCl) 5μl
enz.expandHiFi (3.5x103U/ml) 0.375μl
超純水 41.725μl
【0058】
[PCR反応条件]
上記組成に反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(2.5分間)のサイクルを20回、さらに72℃で7分間保持した。
【0059】
得られたPCR反応液とInvitrogen社製TOPOTMTA cloningキットVer.Eとを用いて、PCRによって得られた約1000bpのDNA断片をpCR2.1−TOPOベクターの既存「PCR Product挿入サイト」にライゲーションし、そのライゲーション液でE.coliDH5αを形質転換した。
得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて本還元酵素遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpCGDH12と記すこともある。)を取り出した。
【0060】
(4−3−3)プラスミドpAGDH12の構築)
プラスミドpCGDH12に制限酵素(BamHI)を加えることにより、当該プラスミドを消化した。次いで、得られるDNA断片(約1000bp)を精製した。
一方、ベクターpACYC184(ニッポンジーン社製)に制限酵素(BamHI)を加えることにより、当該ベクターを消化した。次いで得られるDNA断片を精製した。さらに、セルフライゲーションを防ぐため、Alkaline Phospatase(宝酒造社製)を用いて脱リン酸化処理を行った。
【0061】
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coliDH5αを形質転換した。
得られた形質転換体を20μg/mlのクロラムフェニコールを含有するLB寒天培地で培養し、生育してきたコロニーの中から4コロニーを無作為に選抜した。この選抜されたコロニーをそれぞれ20μg/mlのクロラムフェニコールを含有する滅菌LB培地(2ml)に接種し、試験管中で振盪培養した(30℃、24時間)。それぞれの培養菌体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてプラスミドを取り出した。取り出したプラスミドのそれぞれの一部を制限酵素(BamHI)により消化した後、当該消化物を電気泳動することにより、取り出されたプラスミド全てには前記DNA断片(約1000bp)が挿入されていることを確認した。(以下、取り出されたプラスミドをプラスミドpAGDH12と記すこともある。)
【0062】
実施例5 (本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生酵素遺伝子を含有するプラスミドの調製(その1):プラスミドpTrcPARSbGの構築)
実施例4(4−2)で調製されたプラスミドpSDGDH12に2種類の制限酵素(BamHIとXbaI)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させる。次いで消化されたDNA断片を精製する。
一方、実施例2で調製されるプラスミドpTrcPARに2種類の制限酵素(BamHIとXbaI)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させる。次いで得られるDNA断片を精製する。
このようにして精製して得られる2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションする。得られるライゲーション液でE.coli DH5αを形質転換する。
得られる形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpTrcPARSbGと記すこともある。)を取り出す。
【0063】
実施例6 (本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生遺伝子を含有するプラスミドの調製(その2):プラスミドpTrcRSbG12の構築)
実施例4(4−2)で調製されたプラスミドpSDGDH12に2種類の制限酵素(BamHIとXbaI)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
一方、実施例3で調製されるプラスミドpTrcRPcに2種類の制限酵素(BamHIとXbaI)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli DH5αを形質転換した。
得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生酵素遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpTrcRSbG12と記すこともある。)を取り出した。
【0064】
実施例7 (本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生酵素遺伝子を含有する形質転換体の調製(その1))
実施例5で調製されるプラスミドpTrcPARSbGを用いてE.coli HB101を形質転換する。得られる形質転換体を0.4mMのIPTG、0.01%(W/V)のZnCl2及び50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(100ml×3本)に接種した後、これを振盪培養する(30℃、18時間)。培養後、培養液を遠心分離・洗浄することにより、洗浄菌体を回収する。
【0065】
実施例8 (本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生酵素遺伝子を含有する形質転換体の調製(その2))
実施例6で調製されたpTrcRSbG12プラスミドを用いてE.coli HB101を形質転換した。得られた形質転換体を0.1mMのIPTG及び50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(100ml×3本)に接種した後、これを振盪培養した(30℃、18時間)。培養後、培養液を遠心分離・洗浄することにより、洗浄菌体1.2gを回収した。
【0066】
実施例9 (本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生酵素遺伝子を含有する形質転換体の調製(その3))
実施例3で調製されるプラスミドpTrcRPc及び実施例4(4−3)で調製されたプラスミドpAGDH12を用いてE.coli HB101を形質転換する。得られる形質転換体を0.4mMのIPTG、20μg/mlのクロラムフェニコール及び50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(100ml×3本)に接種した後、これを振盪培養する(30℃、18時間)。培養後、培養液を遠心分離・洗浄することにより、洗浄菌体を回収する。
【0067】
実施例10 (4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法)
100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)1.5mlに、実施例1で調製された洗浄菌体15mg、NAD+1.3mg及び5%(v/v)の2−プロパノールを加えた。この混合物に、さらに15mgの4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸メチルを加えた。このようにして得られた混合物(反応液)を30℃で21時間攪拌することにより反応を行った。反応終了後、反応液に酢酸ブチル1.5mlを注加攪拌し、次いで遠心分離することにより有機層及び水層を別々に回収した。回収された水層に再度酢酸エチル1.5mlを加えて同様な操作を行った。このようにして得られた有機層を合一濃縮した後、これをクロロホルム30mlに溶解し、無水Na2SO4を用いて乾燥した。乾燥後、クロロホルムを留去することにより、4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸メチルを得た。収率27%(GC分析)であった。
GC条件
カラム:DB−1(0.53mmΦ×30m、1.5μm)
注入口温度:170℃
検出器(FID):300℃
カラム室温度:50℃(保持:5分)→5℃/分→170℃(保持:0分)→(昇温:30℃/分)→290℃(保持:0分)
キャリアガス 10mL/分
4−アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチルの保持時間 10分
【0068】
実施例11 (4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法(その2))
100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)1.5mlに、実施例1で調製された洗浄菌体15mg、NAD+1.3mg及び5%(v/v)の2−プロパノールを加える代わりに、100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH6.5)20mlに、実施例8で調製された洗浄菌体15mg、NADP+1.2mg及びグルコース2.5gを加えること以外は実施例10記載の方法と同様な方法によって4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸メチルを得た。収率31%(GC分析)であった。
【0069】
実施例12 (4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法(その3))
100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH6.5)20mlに、実施例9で得られる洗浄菌体1g、NADP+12mg及びグルコース2.5gを加える。この混合物に、さらに240mgの2‐オキソシクロヘキサンカルボン酸エチルを加えた後、当該混合物のpHを15%炭酸ナトリウム水溶液で6.5に調製する。このようにして得られる混合物(反応液)を30℃で4時間攪拌することにより反応を行う。反応終了後、反応液に酢酸エチル25mlを注加攪拌し、次いで遠心分離することにより有機層及び水層を別々に回収する。回収される水層に再度酢酸エチル25mlを加えて同様な操作を行う。このようにして得られる有機層を合一濃縮した後、これをクロロホルム30mlに溶解し、無水Na2SO4を用いて乾燥する。乾燥後、クロロホルムを留去することにより、2‐ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸エチルを得る。
【0070】
参考例1 (一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する微生物の取得)
(1−1) 洗浄菌体の調製
市販の微生物又は土壌などから単離した微生物を滅菌LB培地(10ml)に接種した後、これを振盪培養する(30℃、18時間)。培養後、培養液を遠心分離・洗浄することにより、洗浄菌体を回収する。
(1−2) スクリーニング
100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH6.5)20mlに、上記(1−1)で調製された洗浄菌体1g、NADP+12mg、NAD+12mg及びグルコース2.5gを加える。この混合物に、さらに一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステル240mgを加えた後、当該混合物のpHを15%炭酸ナトリウム水溶液で6.5に調製する。このようにして得られる混合物(反応液)を30℃で4時間攪拌することにより反応を行う。反応終了後、反応液に酢酸エチル25mlを注加攪拌し、次いで遠心分離することにより有機層及び水層を別々に回収する。回収される水層に再度酢酸エチル25mlを加えて同様な操作を行う。このようにして得られる有機層を合一濃縮した後、これをクロロホルム30mlに溶解し、無水Na2SO4を用いて乾燥する。乾燥後、クロロホルムを留去することにより残渣を得る。得られる残渣に、4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルが含まれていることを液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーにて定性及び/定量分析により確認する。
【0071】
参考例2 (4−アセトキシ−3−オキソブタン酸メチルの調製)
NN−ジメチルホルムアミド25gに溶解した4−ブロモ−3−オキソブタン酸メチル5gに酢酸カリウム2.8gを加え、20℃で攪拌2時間攪拌した。氷冷下、反応液に酢酸エチル100mL、ヘキサン15mL、水60mLを加えて洗浄分液した。水層にさらに酢酸エチル20mL、ヘキサン15mLを加え抽出分液をおこなった。油層を合一し濃縮することにより目的の4−アセトキシ−3−オキソブタン酸メチルを得た(3.4g、GC純度84%)。目的物の同定はH−NMRにより行った。
GC条件
カラム:DB−1(0.53mmΦ×30m、1.5μm)
注入口温度:170℃
検出器(FID):300℃
カラム室温度:50℃(保持:5分)→5℃/分→170℃(保持:0分)→(昇温:30℃/分)→290℃(保持:0分)
キャリアガス 10mL/分
4−アセトキシ−3−オキソブタン酸メチルの保持時間 8.7分
H−NMR(δ,ppm,CDCl3);2.2(3H, s),3.5(2H, s),3.8(3H, s),4.8(2H, s)
【0072】
【発明の効果】
本発明により、4−アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを効率的又は簡便に製造することができる。
[配列表フリーテキスト]
配列番号5
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号6
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号7
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号8
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号9
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号10
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号13
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号14
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号15
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
【0073】
【配列表】
【発明の属する技術分野】
本発明は、4−アセトキシ−3−ヒロドキシブタン酸エステルの製造方法等に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
3,4−ジヒドロキシブタン酸の誘導体は医農薬中間体等として有用な化合物であり、例えば、抗高脂血症剤等の鍵中間体として重要である(特許特許文献1参照)。上記の誘導体を効率的に合成するには、4位のヒドロキシル基が保護された3,4−ジヒドロキシブタン酸の誘導体である4−アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルは極めて有用である。
このような4−アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを製造する方法としては、ブロモニトリルオキサイドをアリルアルコールに付加させ、イソオキサゾリン化合物を構築した後、さらに3工程を経る方法による、合計4工程での製造方法が知られている(非特許文献番号1)が、より効率的又は簡便な方法が求められている。
【0003】
【特許文献1】
特許第3241723号公報(第2頁)
【0004】
【特許文献2】
特開平10−94399号公報
【0005】
【非特許文献1】
Tetrahedron Letters(1986)4647
【0006】
【非特許文献2】
Journal of Molecular Catalysis B 6,1999,41
【0007】
【非特許文献3】
Appl.Envir.Microbiology 1997,3783
【0008】
【非特許文献4】
Appl.Biol.Biotech 52,1999,386
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような状況下、本発明者等は、4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法について鋭意検討した結果、一般式(1)
(式中、RはC1−C8アルキル基を表す。)
で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)
(式中、RはC1−C8アルキル基、*は不斉炭素原子を示す。)
で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力及び該能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞に、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを作用させる工程、並びに生成した一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを採取することにより、目的とする4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを効率的又は簡便に製造できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明は、
1.4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法であって、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力及び該能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞に、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを作用させる工程、並びに生成した一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを採取する工程を有することを特徴とする製造方法(以下、本発明製造方法と記すこともある。);
2.形質転換体が、下記の2つの人為的に付与される能力を同時に有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有する1つのプラスミド、下記(i)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA及び下記(ii)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを同時に有する1つのプラスミド、あるいは、
下記(i)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有するプラスミド及び下記(ii)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを有するプラスミドからなる2つのプラスミド、
が少なくとも導入されてなる形質転換体であることを特徴とする請求項1記載の製造方法
<人為的に付与される能力>
(i)一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力
(ii)上記(i)の能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力;
3.形質転換体が大腸菌であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
4.補酵素が、NADH/NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)もしくはNADPH/NADP+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
5.脂肪族アルコールの存在下、形質転換体又はその死菌化細胞に一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを作用させることを特徴とする前項1記載の製造方法;
6.脂肪族アルコールが200℃以下の沸点を持つアルコールであることを特徴とする前項5記載の製造方法;
7.脂肪族アルコールが2−プロパノールであることを特徴とする前項5記載の製造方法;
8.グルコースの存在下、形質転換体又はその死菌化細胞に一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを作用させることを特徴とする前項1記載の製造方法;
9.一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号2又は4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号2又は4で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)コリネバクテリウム属又はペニシリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される4‐アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列;
10.一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項1記載の製造方法
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号2で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)コリネバクテリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される4‐アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列;
11.一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項1記載の製造方法
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号3で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号4で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)ペニシリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される4‐アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
12.一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
13.一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、配列番号3で示されるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項1記載の製造方法;
14.一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
15.一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、配列番号4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする前項1記載の製造方法;
16.一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成させるための触媒としての、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力及び該能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞の使用;
17.前工程として、4−ハロ−3−オキソブタン酸エステルの4位にあるハロゲン原子をアセトキシ基に置換することにより一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを得る工程を付加的に有することを特徴とする前項1記載の製造方法;
等を提供するものである。
【0011】
本発明製造方法で用いられる形質転換体は、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力及び該能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力を人為的に付与されてなる形質転換体である(以下、本形質転換体と記すこともある。)。このような形質転換体としては、例えば、下記の2つの人為的に付与される能力を同時に有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有する1つのプラスミド、
下記(i)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA及び下記(ii)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを同時に有する1つのプラスミド、あるいは、
下記(i)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有するプラスミド及び下記(ii)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを有するプラスミドからなる2つのプラスミド、
が少なくとも導入されてなる形質転換体等をあげることができる。
<人為的に付与される能力>
(i)一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力
(ii)上記(i)の能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力
【0012】
このような形質転換体は、通常、(1)一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力及び当該能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力
の2つの人為的に付与される能力を同時に有する酵素、や(2)一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素及び当該酵素が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素の2種類の酵素、を含有している。(以下、前記(1)及び(2)の酵素を総じて本酵素と記すこともある。)。
【0013】
また、「一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力」の具体的な例としては、例えば、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力をあげることができる。
<アミノ酸配列群>
(a1)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(a2)配列番号3で示されるアミノ酸配列
(b1)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(b2)配列番号3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c1)配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(c2)配列番号4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d1)配列番号2で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(d2)配列番号4で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e1)コリネバクテリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e2)ペニシリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
【0014】
本形質転換体は、遺伝子工学的な手法を用いて作製すればよい。尚、このような形質転換体を作製する際に用いられる、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を少なくとも有する酵素(以下、本還元酵素と記すこともある。)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子(以下、本還元酵素遺伝子と記すこともある。)は、(1)天然に存在する遺伝子の中からクローニングされたものであってもよいし、(2)天然に存在する遺伝子であっても、このクローニングされた遺伝子の塩基配列において、その一部の塩基の欠失、置換又は付加が人為的に導入されてなる遺伝子(即ち、天然に存在する遺伝子を変異処理(部分変異導入法、突然変異処理等)を行ったものであってもよいし、(3)人為的に合成されたものであってもよい。
【0015】
ここで、前記(b)、(b1)又は(b2)にある「アミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」や前記(d)、(d1)又は(d2)にある「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAに対し相補性を有するDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列」には、例えば、配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列を有する酵素が細胞内で受けるプロセシング、該酵素が由来する生物の種差、個体差、組織間の差異等により天然に生じる変異や、人為的なアミノ酸の変異等が含まれる。
前記(b)、(b1)又は(b2)にある「(アミノ酸が)欠失、置換若しくは付加(された)」(以下、総じてアミノ酸の改変と記すこともある。)を人為的に行う場合の手法としては、例えば、配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAに対して慣用の部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441−9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCRによる方法等が挙げられる。
前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を見出すことのできる範囲であればよい。
また前記欠失、置換若しくは付加のうち、特にアミノ酸の置換に係る改変が好ましい。当該置換は、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似した性質を有するアミノ酸への置換がより好ましい。このような置換としては、例えば、▲1▼グリシン、アラニン;▲2▼バリン、イソロイシン、ロイシン;▲3▼アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;▲4▼セリン、スレオニン;▲5▼リジン、アルギニン;▲6▼フェニルアラニン、チロシンのグループ内での置換が挙げられる。
【0016】
本発明において「(アミノ酸が)欠失、置換若しくは付加(された)」には、例えば、2つの蛋白質間のアミノ酸配列に関する高い配列同一性(具体的には、80%以上の配列同一性、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性)が存在している必要がある。また「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」には2つのDNA間の塩基配列に関する配列同一性(具体的には、80%以上の配列同一性、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の配列同一性)が存在している必要がある。
ここで「配列同一性」とは、2つのDNA又は2つの蛋白質間の配列の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のDNA又は蛋白質は、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。このような配列同一性に関しては、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,22(22):4673−4680(1994)を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。尚、配列同一性は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYX−MACや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えば、ホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般的に利用可能である。
前記(d)、(d1)又は(d2)にある「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」に関して、ここで使用されるハイブリダイゼーションは、例えば、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)に記載される方法や、「クローニングとシークエンス」(渡辺格監修、杉浦昌弘編集、1989年、農村文化社発行)に記載されているサザンハイブリダイゼーション法等の通常の方法に準じて行うことができる。また「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、6×SSC(900mM NaCl、90mM クエン酸三ナトリウムを含む溶液。尚ここでは、NaCl175.3g、クエン酸三ナトリウム88.2gを含む溶液を水800mlで溶解し、10N NaClでpHを調製した後、全量を1000 mlとした溶液を20×SSCとする。)中で65℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley &Sons, N. Y. (1989), 6.3.1−6.3.6)等を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2×SSCで50℃の条件(低ストリンジェンシーな条件)から0.1×SSCで65℃までの条件(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温(低ストリンジェンシーな条件)から65℃(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
【0017】
本還元酵素遺伝子は、例えば、下記のような調製方法に準じて調製すればよい。
コリネバクテリウム・シュードジフテリティカム(Corynebacterium pseudodiphteriticum)等のコリネバクテリウム属に属する微生物等から通常の遺伝子工学的手法に準じて染色体DNAを調製し、調製された染色体DNAを鋳型として、かつ適切なプライマーを用いてPCRを行うことにより、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号2で示される塩基配列を有するDNA等を増幅して本還元酵素遺伝子を調製する。
ここでコリネバクテリウム・シュードジフテリティカム由来の染色体DNAを鋳型として、かつ配列番号5に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号6に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いてPCRを行う場合には、配列番号2で示される塩基配列からなるDNAを増幅して本還元酵素遺伝子を調製することになる。
当該PCRの条件としては、例えば、4種類のdNTPを各々20μM、2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを各々15pmol、Taqpolymeraseを1.3U及び鋳型となるcDNAライブラリーを混合した反応液を97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)‐50℃(0.5分間)‐72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)‐55℃(0.5分間)‐72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持する条件が挙げられる。
尚、当該PCRに用いるプライマーの5’末端側には、制限酵素認識配列等を付加していてもよい。
上記のようにして増幅されたDNAを、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO−471−50338−X等に記載されている方法に準じてベクターにクローニングして組換ベクターを得ることができる。用いられるベクターとしては、具体的には、例えば、pUC119(宝酒造社製)、pTV118N(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)、pCR2.1−TOPO(Invitrogen社製)、pTrc99A(Pharmacia社製)、pKK223−3(Pharmacia社製)等が挙げられる。このようにしてベクターに組み込んだ形態で本還元酵素遺伝子を調製すれば、後の遺伝子工学的手法における使用において便利である。
【0018】
また、ペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)等のペニシリウム属に属する微生物等から通常の遺伝子工学的手法(例えば、「新 細胞工学実験プロトコール」(東京大学医科学研究所制癌研究部編、秀潤社、1993年)に記載された方法)に準じてcDNAライブラリーを調製し、調製されたcDNAライブラリーを鋳型として、かつ適切なプライマーを用いてPCRを行うことにより、配列番号3で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号4で示される塩基配列を有するDNA等を増幅して本還元酵素遺伝子を調製する。
ここでペニシリウム・シトリナム由来のcDNAライブラリーを鋳型として、かつ配列番号7に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号8に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いてPCRを行う場合には、配列番号4で示される塩基配列からなるDNAを増幅して本還元酵素遺伝子を調製することになる。
当該PCRの条件としては、例えば、4種類のdNTPを各々20μM、2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを各々15pmol、Taqpolymeraseを1.3U及び鋳型となるcDNAライブラリーを混合した反応液を97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)‐50℃(0.5分間)‐72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)‐55℃(0.5分間)‐72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持する条件が挙げられる。
尚、当該PCRに用いるプライマーの5’末端側には、制限酵素認識配列等を付加していてもよい。
上記のようにして増幅されたDNAを、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO−471−50338−X等に記載されている方法に準じてベクターにクローニングして組換ベクターを得ることができる。用いられるベクターとしては、具体的には、例えば、pUC119(宝酒造社製)、pTV118N(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)、pCR2.1−TOPO(Invitrogen社製)、pTrc99A(Pharmacia社製)、pKK223−3(Pharmacia社製)等が挙げられる。このようにしてベクターに組み込んだ形態で本還元酵素遺伝子を調製すれば、後の遺伝子工学的手法における使用において便利である。
【0019】
一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素(以下、本補酵素再生酵素遺伝子と記すこともある。)は、例えば、本補酵素再生酵素遺伝子が本還元酵素とは異なる酵素である場合には、下記のような調製方法に準じて調製すればよい。
バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)等のバシラス属に属する微生物等から通常の遺伝子工学的手法に準じて染色体DNAを調製し、調製された染色体DNAを鋳型として、かつ適切なプライマーを用いてPCRを行うことにより、配列番号12で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号12で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA、配列番号11で示される塩基配列を有するDNA等を増幅して本補酵素再生酵素遺伝子を調製する。
ここでバシラス・メガテリウム由来の染色体DNAを鋳型として、かつ配列番号9に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号10に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いてPCRを行う場合には、配列番号11で示される塩基配列からなるDNAを増幅して本補酵素再生酵素遺伝子を調製することになる。
当該PCRの条件としては、例えば、4種類のdNTPを各々20μM、2種類のオリゴヌクレオチドプライマーを各々15pmol、Taqpolymeraseを1.3U及び鋳型となるcDNAライブラリーを混合した反応液を97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)‐50℃(0.5分間)‐72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)‐55℃(0.5分間)‐72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持する条件が挙げられる。
尚、当該PCRに用いるプライマーの5’末端側には、制限酵素認識配列等を付加していてもよい。
上記のようにして増幅されたDNAを、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO−471−50338−X等に記載されている方法に準じてベクターにクローニングして組換ベクターを得ることができる。用いられるベクターとしては、具体的には、例えば、pUC119(宝酒造社製)、pTV118N(宝酒造社製)、pBluescriptII (東洋紡社製)、pCR2.1−TOPO(Invitrogen社製)、pTrc99A(Pharmacia社製)、pKK223−3(Pharmacia社製)等が挙げられる。このようにしてベクターに組み込んだ形態で本還元酵素遺伝子を調製すれば、後の遺伝子工学的手法における使用において便利である。
【0020】
本形質転換体を調製する方法としては、例えば、(1)本還元酵素遺伝子と本補酵素再生酵素遺伝子との両遺伝子及び宿主細胞で機能可能なプロモーターが機能可能な形で接続されてなるDNAのような、本遺伝子が宿主細胞中で発現できるような単一な組換プラスミドを作製し、これを宿主細胞に導入することにより作製する方法、(2)本還元酵素遺伝子と本補酵素再生酵素遺伝子との両遺伝子のうちの一方の遺伝子及び宿主細胞で機能可能なプロモーターが機能可能な形で接続されてなるDNAのような、本遺伝子のうちの一方の遺伝子が宿主細胞中で発現できるような組換プラスミドを上記遺伝子毎に別々に作製し、これらを宿主細胞に導入することにより作製する方法等があげられる。さらに、一方の遺伝子又は両遺伝子を宿主細胞の染色体中に導入する方法も利用することができる。
尚、上記単一な組換プラスミドを宿主細胞に導入することにより作製する方法としては、例えば、プロモーター、ターミネーター等の発現制御に関わる領域をそれぞれの両遺伝子に連結して組換プラスミドを構築したり、ラクトースオペロンのような複数のシストロンを含むオペロンとして発現させるような組換プラスミドを構築する方法等をあげることができる。
ここで上記の組換プラスミドとしては、例えば、宿主細胞中で複製可能な遺伝情報を含み、自立的に増殖できるものであって、宿主細胞からの単離・精製が容易であり、宿主細胞中で機能可能なプロモーターを有し、検出可能なマーカーを持つ発現ベクターに、本酵素をコードする遺伝子が機能可能な形で導入されたものを好ましく挙げることができる。尚、発現ベクターとしては、各種のものが市販されている。
ここで、「機能可能な形で」とは、上記の組換プラスミドを宿主細胞に導入することにより宿主細胞を形質転換させた際に、本遺伝子(又は本遺伝子のうちの一方の遺伝子)が、プロモーターの制御下に発現するようにプロモーターと結合された状態にあることを意味する。プロモーターとしては、大腸菌のラクトースオペロンのプロモーター、大腸菌のトリプトファンオペロンのプロモーター、又は、tacプロモーターもしくはtrcプロモーター等の大腸菌内で機能可能な合成プロモーター等をあげることができる。またコリネバクテリウム・シュードジフテリティカム、ペニシリウム・シトリナム、バシラス・メガテリウムにおいて本遺伝子の発現を制御しているプロモーターを利用してもよい。
また発現ベクターとしては、選択マーカー遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等の抗生物質耐性付与遺伝子等)を含むベクターを用いると、当該ベクターが導入された形質転換体を当該選択マーカー遺伝子の表現型等を指標にして容易に選択することができる。
さらなる高発現を導くことが必要な場合には、本還元酵素及び/又は本補酵素再生酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子の上流にリボゾーム結合領域を連結してもよい。用いられるリボゾーム結合領域としては、Guarente L.ら(Cell 20, p543)や谷口ら(Genetics of Industrial Microorganisms,
p202, 講談社)による報告に記載されたものを挙げることができる。
宿主細胞としては、原核生物(例えば、Escherichia属、Bacillus属、Corynebacterium属、Staphylococcus属、Streptomyces属)もしくは真核生物(例えば、Saccharomyces属、Kluyveromyces属、Aspergillus属)である微生物細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞等を挙げることができる。例えば、本形質転換体の大量調製が容易になるという観点では、大腸菌等を好ましく挙げることができる。
本還元酵素及び/又は本補酵素再生酵素が宿主細胞中で発現できるようなプラスミドを宿主細胞に導入する方法としては、用いられる宿主細胞に応じて通常使われる導入方法であればよく、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBNO−471−50338−X等に記載される塩化カルシウム法や、「Methods in Electroporation:Gene Pulser /E.coli Pulser System」 Bio−Rad Laboratories, (1993)等に記載されるエレクトロポレーション法等をあげることができる。
宿主細胞において本還元酵素遺伝子及び/又は本補酵素再生酵素遺伝子が宿主細胞中で発現できるようなプラスミドが導入された形質転換体を選抜するには、前記の如く、例えば、ベクターに含まれる選択マーカー遺伝子の表現型を指標にして選抜すればよい。
プラスミドが導入された宿主細胞(即ち、形質転換体)が本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生酵素遺伝子を保有していることは、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press等に記載される通常の方法に準じて、制限酵素部位の確認、塩基配列の解析、サザンハイブリダイゼーション、ウエスタンハイブリダイゼーション等を行うことにより、確認することができる。
【0021】
本形質転換体の培養は、微生物培養、昆虫細胞もしくは哺乳動物細胞の培養に使用される通常の方法によって行うことができる。例えば大腸菌の場合、適当な炭素源、窒素源およびビタミン等の微量栄養物を適宜含む培地中で培養を行う。培養方法としては、固体培養、試験管振盪式培養、往復式振盪培養、ジャーファーメンター(Jar Fermenter)培養、タンク培養等の液体培養のいずれの方法でもよく、好ましくは、通気撹拌培養法等の液体培養を挙げることができる。
培養温度は、本形質転換体が生育可能な範囲で適宜変更できるが、通常約10〜50℃、好ましくは約20〜40℃である。培地のpHは約6〜8の範囲が好ましい。培養時間は、培養条件によって異なるが通常約1日〜約5日が好ましい。
本形質転換体を培養するための培地としては、例えば、微生物等の宿主細胞の培養に通常使用される炭素源や窒素源、有機塩や無機塩等を適宜含む各種の培地を用いることができる。
炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、シュークロース等の糖類、グリセロール等の糖アルコール、フマル酸、クエン酸、ピルビン酸等の有機酸、動物油、植物油及び糖蜜が挙げられる。これらの炭素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1〜30%(w/v)程度である。
窒素源としては、例えば、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーン・スティープ・リカー(Corn Steep Liquor)、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸等の天然有機窒素源、アミノ酸類、硝酸ナトリウム等の無機酸のアンモニウム塩、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸のアンモニウム塩及び尿素が挙げられる。これらのうち有機酸のアンモニウム塩、天然有機窒素源、アミノ酸類等は多くの場合には炭素源としても使用することができる。これらの窒素源の培地への添加量は培養液に対して通常0.1〜30%(w/v)程度である。
有機塩や無機塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛等の塩化物、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩及びリン酸塩を挙げることができる。具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素一カリウム及びリン酸水素二カリウムが挙げられる。これらの有機塩及び/又は無機塩の培地への添加量は培養液に対して通常0.0001〜5%(w/v)程度である。
さらに、tacプロモーター、trcプロモーター及びlacプロモーター等のアロラクトースで誘導されるタイプのプロモーターと、本酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子とが機能可能な形で接続されてなるDNAが導入されてなる形質転換体の場合には、本酵素の生産を誘導するための誘導剤として、例えば、isopropyl thio−β−D−galactoside(IPTG)を培地中に少量加えることもできる。
【0022】
本形質転換体の取得は、例えば、前記の培養により得られた培養物を遠心分離等により形質転換体を沈殿物として回収すればよい。必要に応じて、回収前に当該形質転換体を、例えば、100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH6.5)等の緩衝液等を用いて洗浄してもよい。
【0023】
さらに本形質転換体から、その死菌化細胞を下記の方法により調製することもできる。
死菌化処理方法としては、例えば、物理的殺菌法(加熱、乾燥、冷凍、光線、超音波、濾過、通電)や、化学薬品を用いる殺菌法(アルカリ、酸、ハロゲン、酸化剤、硫黄、ホウ素、砒素、金属、アルコール、フェノール、アミン、サルファイド、エーテル、アルデヒド、ケトン、シアン及び抗生物質)をあげることができる。尚、これらの殺菌法のうちできるだけ本酵素の酵素活性を失活させず、かつ反応系への残留、汚染などの影響が少ない処理方法を各種の反応条件に応じて適宜選択することがよい。
【0024】
このようにして調製された形質転換体又はその死菌化細胞は、例えば、凍結乾燥細胞、有機溶媒処理細胞、乾燥細胞等の形態、あるいは、固定化された形態(固定化物)で利用してもよい。
【0025】
固定化物を得る方法としては、例えば、担体結合法(シリカゲルやセラミック等の無機担体、セルロース、イオン交換樹脂等に本形質転換体又はその死菌化細胞を吸着させる方法)及び包括法(ポリアクリルアミド、含硫多糖ゲル(例えばカラギーナンゲル)、アルギン酸ゲル、寒天ゲル等の高分子の網目構造の中に本形質転換体又はその死菌化細胞を閉じ込める方法)が挙げられる。
【0026】
続いて、本発明製造方法における触媒反応について説明する。
本発明製造方法において一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルに変換する反応は、4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルに本形質転換体又はその死菌化細胞を作用させることによって達成される。
当該反応は、通常、水の存在下で行われる。水は緩衝液の形態であってもよく、この場合に用いられる緩衝剤としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
尚、緩衝液を溶媒として用いる場合、その量は一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステル1重量部に対して、通常、1〜300重量倍、好ましくは5〜100重量倍である。
当該反応に際しては、一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルを反応系内に連続又は逐次加えてもよい。
【0027】
反応温度としては、本形質転換体又はその死菌化細胞に含まれた本酵素の安定性、反応速度の点から0〜70℃程度をあげることができ、好ましくは約10〜40℃があげられる。
反応pHとしては、反応が進行する範囲内で適宜変化させることができるが、例えば、pH5〜8をあげることができる。
【0028】
反応は、水の他に有機溶媒の共存下に行うこともできる。この場合の有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、デカン等の炭化水素類、t−ブタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、ジメチルスルホキサイドなどのスルホキサイド類、アセトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類及びこれらの混合物が挙げられる。
反応に使用する有機溶媒の量は、一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルに対して、通常、100重量倍以下であり、好ましくは70重量倍以下である。
【0029】
反応はさらに、例えば、NADH、NADPHのような補酵素を加えて通常行うことがよい。
反応に用いられる補酵素の量は、一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルに対して、通常、0.5重量倍以下、好ましくは0.1重量倍以下である。
【0030】
本発明製造方法における触媒反応では、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの還元反応において化学量論量の還元型補酵素(電子供与体)が消費された結果生じた酸化型補酵素(電子受容体)を、再び還元型補酵素(電子供与体)に変換する能力、即ち、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力、を有する酵素(即ち、本補酵素再生酵素)の利用が不可欠となる。この場合には、本補酵素再生酵素は、前記還元反応を行う本還元酵素とは異なる酵素であってもよいし、また本還元酵素が補酵素再生酵素としての機能を合わせ持つものであってもよい。もちろん両者の組み合わせであってもよい。
ここで、「本還元酵素が補酵素再生酵素としての機能を合わせ持つもの」であることは、例えば、単離された本還元酵素を用いて酸化型補酵素(電子受容体)の存在下で、補酵素再生酵素の基質である再生系原料化合物を酸化させる反応を行うことにより還元型補酵素(電子供与体)を生じるか否かを調べることにより確認すればよい。
本補酵素再生酵素としては、例えば、グルコース脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素及び有機脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素等)等が挙げられる。中でも、脂肪族アルコール(例えば、2−プロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール等の200℃以下の沸点をもつアルコール等)を還元することにより補酵素再生を行う補酵素再生酵素が好ましい。この場合に用いられる脂肪族アルコールの量は、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルに対して100モル倍以下、好ましくは10モル倍以下である。
【0031】
反応は、例えば、水、一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステル、本形質転換体又はその死菌化細胞、及び必要に応じて補酵素、有機溶媒等を混合し、攪拌、振盪することにより行うことができる。
【0032】
反応の終点は、例えば、反応液中の原料化合物の存在量を液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等により追跡することにより決定することができる。反応時間の範囲としては、通常、5分間〜10日間、好ましくは30分間〜4日間の範囲をあげることができる。
【0033】
反応終了後は、触媒として酵素を使用して化合物を製造する方法において通常用いられる化合物の回収方法により目的物を採取すればよい。例えば、まず反応液をヘキサン、ヘプタン、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、トルエン等の有機溶媒で抽出する。必要に応じて反応液を濾過したり、又は遠心分離等の処理により不溶物を除去した後に前記抽出操作を行なえばよい。次に抽出された有機層を乾燥した後、濃縮物として目的物を回収することができる。目的物は、必要によりカラムクロマトグラフィー等によりさらに精製することができる。
【0034】
本発明製造方法では、その前工程として、4−ハロ−3−オキソブタン酸エステルの4位にあるハロゲン原子をアセトキシ基に置換することにより一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルを得る工程を付加的に有してもよい。具体的には、本発明製造方法は、種々の医農薬の中間体に誘導されており、工業的に利用可能な化合物である、一般式(3)
(式中、RはC1−C8アルキル基、Xは塩素、臭素又はヨウ素を表す。)
で示される4−ハロ−3−オキソブタン酸エステルの4位ハロゲン原子をアセトキシ基に置換することにより一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルを得る工程を前工程として付加的に有し、得られた一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルから一般式(2)で示される4−アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを得る製造方法であってもよい。
【0035】
ここで出発化合物として用いられる一般式(3)で示される4−ハロ−3−オキソブタン酸エステルにおいて、Rで示されるC1−C8アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基等をあげることができる。一般式(3)で示される4−ハロ−3−オキソブタン酸エステルの具体的な例としては、4−ブロモ−3−オキソブタン酸エステル等をあげることができる。因みに、当該化合物は、アセト酢酸エステルのブロム化により容易に製造可能である。
【0036】
一般式(3)で示される4−ハロ−3−オキソブタン酸エステルの4位ハロゲン原子をアセトキシ基に置換することにより一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルを得る工程において用いられるアセトキシ化の反応試剤としては、例えば、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸アンモニウム等の酢酸塩をあげられる。当該工程は、通常有機溶媒の存在下で行うが、必要に応じて無溶媒で実施することもできる。かかる溶媒として、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、トルエン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、メチル t‐ブチル エーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N‐ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒、シクロヘキサン、ヘプタン等の炭化水素溶媒、等を、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。当該工程の反応温度は、反応を進行させるのに十分な温度であれば制限はないが、通常、0〜100℃程度、好ましくは10〜80℃程度、より好ましくは20〜70℃である。
【0037】
このようにして生成された一般式(1)で示される4−アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルは、必要に応じて、一旦採取・精製してから次の工程に供してもよいしそのまま次の工程に供してもよい。採取・精製には、例えば、反応混合物に対し洗浄分液、濃縮等の処理操作を行う方法・クロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の精製操作等の通常の方法を用いればよい。
【0038】
【実施例】
以下、製造例等により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1 (本還元酵素遺伝子の調製(その1)及び本還元酵素遺伝子を含有する形質転換体の調製)
配列番号2で示される塩基配列からなるDNAを含有するプラスミドpKARを以下のようにして調製した。
まず、Appl Microbial Biotechnol(1999)52:386−392等に記載される公知のプラスミドpUAR(受託番号FERM P−18127)から、配列番号2で示されるDNAを含むDNA断片を、PstI及びSmaIを用いて切り出した。切り出されたDNA断片を、PstI/SmaI処理したpKK223‐3ベクター(Amersham Pharmacia Biotech社製)のTacプロモーターの下流に挿入した。このようにしてプラスミドpKARを構築した。
構築されたプラスミドpKARを用いてE. coli JM109株を形質転換した。
次に、フラスコに液体培地(水1000mlにトリプトン10g、酵母エキス5g及び塩化ナトリウム5gを溶解した。この溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpHを7.0に調整した。)100mlを入れ、滅菌した後、アンピシリンを100μg/ml、ZnCl2を0.01%(w/v)、isopropyl thio−β−D−galactoside(IPTG)を0.4mMになるように加えた。このようにして調製された培地に、上記で得られた形質転換体(E. coli JM109/pKAR株)が前記組成の液体培地で予め培養された培養液0.3mlを接種し、これを30℃で14時間振盪培養した。
培養後、得られた培養液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、菌体を回収した。回収された菌体を、50mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)30mlに懸濁し、この懸濁液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、本還元酵素遺伝子を含有する形質転換体である洗浄菌体を得た。
【0040】
実施例2 (本還元酵素遺伝子の調製(その2))
(2−1)染色体DNAの調製
フラスコに液体培地(水1000mlにトリプトン5g、酵母エキス2.5g、塩化ナトリウム4g、ゼラチン2.5g、酢酸ナトリウム1.5g及びスレオニン2.4gを溶解する。この溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpHを7.0に調整する。)100mlを入れ、滅菌する。このようにして調製された培地に、特開平10−94399等に記載される公知のコリネバクテリウム・シュードジフテリティカム亜種(Corynebacterium pseudodiphteriticum)ST−10株(受託番号FERM P−13150)が前記組成の液体培地で予め培養された培養液0.3mlを接種し、これを30℃で10時間振盪培養する。
培養後、得られた培養液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、菌体を回収する。回収された菌体を、50mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)30mlに懸濁し、この懸濁液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、洗浄菌体を得る。
このようにして得られる洗浄菌体を用いて、J.C.Wangらの方法(Appl Microbiol Biotechnol (1999)52:386−392)によって染色体DNAを調製する。
【0041】
(2−2)本還元酵素遺伝子を含有するプラスミドの調製(プラスミドpTrcPARの構築)
配列番号5で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号6で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに、前記(2−1)で調製される染色体DNAを鋳型にして下記反応液組成、反応条件でPCRを行う。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
【0042】
[反応液組成]
染色体DNA 1μl
dNTP(各2.5mM−mix) 0.4μl
プライマー(20pmol/μl) 各0.75μl
10xbuffer(with MgCl2) 5μl
enz.expandHiFi (3.5x103U/ml) 0.375μl
超純水 41.725μl
【0043】
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持する。
【0044】
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片に2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該DNA断片を2重消化する。次いで得られるDNA断片を精製する。
一方、ベクターpTrc99A(Pharmacia製)を2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化する。次いで得られるDNA断片を精製する。
このようにして精製して得られる2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションする。得られるライゲーション液でE.coliDH5αを形質転換する。
得られる形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて本還元酵素遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpTrcPARと記すこともある。)を取り出す。
【0045】
実施例3 (本還元酵素遺伝子の調製(その3))
(3−1)cDNAライブラリーの調製
500mlフラスコに培地(水にポテト・デキストロース・ブロース(ベクトン・ディッキンソン社製)を24g/Lの割合で溶解したもの)100mlを入れ、121℃で15分間滅菌した。ここに同組成の培地中で培養(30℃、48時間、振盪培養)したペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)IFO4631株の培養液0.5mlを加え、30℃で72時間振盪培養した。その後、得られた培養液を遠心し(8000xg、10分)、生じた沈殿を集めた。この沈殿を20mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)50mlで3回洗浄して、約1.0gの洗浄菌体を得た。
ペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)IFO4631株の洗浄菌体を用いて、チオシアン酸グアニジンフェノールクロロホルム法で全RNAを調製した。調製された全RNAから、Oligotex(dT)30−Super(宝酒造社製)を用いてpoly(A)を有するRNAを得た。
cDNAライブラリーの作製は、Gubler and Hoffman法に基づいて実施した。まず、上記のようにして得られたpoly(A)を有するRNA、Oligo(dT)18−リンカープライマー((含XhoIサイト)宝酒造社製)、RAV−2 Rtase及びSuperScriptII Rtaseを用いて一本鎖cDNAを調製した。調製された一本鎖cDNA(を含む前記反応液)にE. coli DNA polymerase、E. coli Rnase/E. coli DNA Ligase Mixture及びT4 DNA Polymeraseを加えることにより、二本鎖cDNAの合成及び当該二本鎖cDNAの平滑末端化処理を行った。
このようにして得られた二本鎖cDNAとEcoRI−NotI−BamHIアダプター(宝酒造社製)とのライゲーションを行った。ライゲーション後に得られたDNAを、以下の順で、リン酸化処理、XhoIでの切断処理、スピンカラム(宝酒造社製)を用いる低分子量DNAの除去処理、λZapII(EcoRI−XhoI切断)とのライゲーションした後、in vitro packaging kit (STRATAGENE社製)を用いてパッケージングすることにより、cDNAライブラリー(以下、cDNAライブラリー(A)と記すこともある。)を調製した。
【0046】
(3−2)本還元酵素遺伝子を含有するプラスミドの調製(プラスミドpTrcRPcの構築)
配列番号7で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号8で示されるオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、前記(3−1)で調製されたcDNAライブラリーを鋳型にして下記反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
【0047】
[反応液組成]
cDNAライブラリー原液 1μl
dNTP(各2.5mM−mix) 0.4μl
プライマー(20pmol/μl) 各0.75μl
10xbuffer(with MgCl2) 5μl
enz.expandHiFi (3.5x103U/ml) 0.375μl
超純水 41.725μl
【0048】
[反応条件]
上記組成の反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(2.5分間)のサイクルを20回行い、さらに72℃で7分間保持した。
【0049】
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片に2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該DNA断片を2重消化させた。次いで得られたDNA断片を精製した。
一方、ベクターpTrc99A(Pharmacia製)を2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coliDH5αを形質転換した。
得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて本還元酵素遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpTrcRPcと記すこともある。)を取り出した。
【0050】
実施例4 (本補酵素再生酵素遺伝子の調製)
(4−1)酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド等を還元型に変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子を調製するための準備
フラスコにLB培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%塩化ナトリウム)100mlを入れ、滅菌した。このようにして調製された培地に、Bacillus megaterium IFO12108株が前記組成の液体培地で予め培養された培養液0.3mlを接種し、これを30℃で10時間振盪培養した。
培養後、得られた培養液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、菌体を回収した。回収された菌体を、50mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)30mlに懸濁し、この懸濁液を遠心分離(15000×g、15分、4℃)することにより、洗浄菌体を得た。
このようにして得られた洗浄菌体からQiagen Genomic Tip (Qiagen社製)を用い、それに付属するマニュアルに記載される方法に従って染色体DNAを精製した。
【0051】
(4−2)酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド等を還元型に変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子の調製(その1:プラスミドpSDGDH12の構築)
The Journal of Biological Chemistry Vol.264, No.11, 6381−6385(1989)に記載された公知のBacillus megaterium IWG3由来のグルコース脱水素酵素のアミノ酸配列に基づいて配列番号9で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号10で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとを合成する。配列番号9で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号10で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、前記(4−1)で精製された染色体DNAを鋳型にして実施例2(2−2)に記載させる反応液組成、反応条件でPCRを行う。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片を、Invitrogen社製TOPOTMTA cloningキットを用いてpCR2.1−TOPOベクターの既存「PCR Product挿入サイト」にライゲーションする。得られるライゲーション液でE.coliDH5αを形質転換する。
得られる形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてグルコース脱水素酵素を含有するプラスミド(以下、プラスミドpSDGDH12と記すこともある。)を取り出す。
次に、取り出されるプラスミドpSDGDH12を鋳型として、Dye Terminator Cycle sequencing FS ready Reaction Kit(パーキンエルマー製)を用いたシークエンス反応を行った後、得られるDNAの塩基配列をDNAシーケンサー373A(パーキンエルマー製)で解析する。その結果を配列番号11に示す。
【0052】
(4−3)酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸等を還元型に変換する能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子の調製(その2:プラスミドpAGDH12の構築)
(4−3−1)プラスミドpTGDH12の構築
配列番号11で示される塩基配列を基にして配列番号13で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号14で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとを合成した。
配列番号13で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号14で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、前記(4−1)で精製された染色体DNAを鋳型にして以下の反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
【0053】
[反応液組成]
染色体DNA原液 1μl
dNTP(各2.5mM−mix) 0.4μl
プライマー(20pmol/μl) 各0.75μl
10xbuffer(with MgCl2) 5μl
enz.expandHiFi (3.5x103U/ml) 0.375μl
超純水 41.725μl
【0054】
[PCR反応条件]
上記組成に反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(2.5分間)のサイクルを20回、さらに72℃で7分間保持した。
【0055】
PCR反応液を精製して得られたPCR増幅DNA断片に2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該DNA断片を2重消化させた。次いで得られたDNA断片を精製した。
一方、ベクターpTV118N(宝酒造社製)を2種類の制限酵素(NcoI及びBamHI)を加えることにより、当該ベクターを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coliDH5αを形質転換した。
得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて本還元酵素遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpTGDH12と記すこともある。)を取り出した。
【0056】
(4−3−2)プラスミドpCGDH12の構築
ベクターpTV118N(宝酒造社製)の塩基配列を基にして配列番号15で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成した。
配列番号15で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号14で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマーに用いて、プラスミドpTGDH12を鋳型にして以下の反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
【0057】
[反応液組成]
プラスミドpTGDH12溶液 1μl
dNTP(各2.5mM−mix) 0.4μl
プライマー(20pmol/μl) 各0.75μl
10xbuffer(with MgCl) 5μl
enz.expandHiFi (3.5x103U/ml) 0.375μl
超純水 41.725μl
【0058】
[PCR反応条件]
上記組成に反応液が入った容器をPERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(2.5分間)のサイクルを20回、さらに72℃で7分間保持した。
【0059】
得られたPCR反応液とInvitrogen社製TOPOTMTA cloningキットVer.Eとを用いて、PCRによって得られた約1000bpのDNA断片をpCR2.1−TOPOベクターの既存「PCR Product挿入サイト」にライゲーションし、そのライゲーション液でE.coliDH5αを形質転換した。
得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて本還元酵素遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpCGDH12と記すこともある。)を取り出した。
【0060】
(4−3−3)プラスミドpAGDH12の構築)
プラスミドpCGDH12に制限酵素(BamHI)を加えることにより、当該プラスミドを消化した。次いで、得られるDNA断片(約1000bp)を精製した。
一方、ベクターpACYC184(ニッポンジーン社製)に制限酵素(BamHI)を加えることにより、当該ベクターを消化した。次いで得られるDNA断片を精製した。さらに、セルフライゲーションを防ぐため、Alkaline Phospatase(宝酒造社製)を用いて脱リン酸化処理を行った。
【0061】
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coliDH5αを形質転換した。
得られた形質転換体を20μg/mlのクロラムフェニコールを含有するLB寒天培地で培養し、生育してきたコロニーの中から4コロニーを無作為に選抜した。この選抜されたコロニーをそれぞれ20μg/mlのクロラムフェニコールを含有する滅菌LB培地(2ml)に接種し、試験管中で振盪培養した(30℃、24時間)。それぞれの培養菌体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてプラスミドを取り出した。取り出したプラスミドのそれぞれの一部を制限酵素(BamHI)により消化した後、当該消化物を電気泳動することにより、取り出されたプラスミド全てには前記DNA断片(約1000bp)が挿入されていることを確認した。(以下、取り出されたプラスミドをプラスミドpAGDH12と記すこともある。)
【0062】
実施例5 (本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生酵素遺伝子を含有するプラスミドの調製(その1):プラスミドpTrcPARSbGの構築)
実施例4(4−2)で調製されたプラスミドpSDGDH12に2種類の制限酵素(BamHIとXbaI)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させる。次いで消化されたDNA断片を精製する。
一方、実施例2で調製されるプラスミドpTrcPARに2種類の制限酵素(BamHIとXbaI)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させる。次いで得られるDNA断片を精製する。
このようにして精製して得られる2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションする。得られるライゲーション液でE.coli DH5αを形質転換する。
得られる形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpTrcPARSbGと記すこともある。)を取り出す。
【0063】
実施例6 (本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生遺伝子を含有するプラスミドの調製(その2):プラスミドpTrcRSbG12の構築)
実施例4(4−2)で調製されたプラスミドpSDGDH12に2種類の制限酵素(BamHIとXbaI)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
一方、実施例3で調製されるプラスミドpTrcRPcに2種類の制限酵素(BamHIとXbaI)を加えることにより、当該プラスミドを2重消化させた。次いで消化されたDNA断片を精製した。
このようにして精製して得られた2種類のDNA断片を混合し、T4 DNAリガーゼでライゲーションした。得られたライゲーション液でE.coli DH5αを形質転換した。
得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いて本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生酵素遺伝子を含有するプラスミド(以下、プラスミドpTrcRSbG12と記すこともある。)を取り出した。
【0064】
実施例7 (本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生酵素遺伝子を含有する形質転換体の調製(その1))
実施例5で調製されるプラスミドpTrcPARSbGを用いてE.coli HB101を形質転換する。得られる形質転換体を0.4mMのIPTG、0.01%(W/V)のZnCl2及び50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(100ml×3本)に接種した後、これを振盪培養する(30℃、18時間)。培養後、培養液を遠心分離・洗浄することにより、洗浄菌体を回収する。
【0065】
実施例8 (本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生酵素遺伝子を含有する形質転換体の調製(その2))
実施例6で調製されたpTrcRSbG12プラスミドを用いてE.coli HB101を形質転換した。得られた形質転換体を0.1mMのIPTG及び50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(100ml×3本)に接種した後、これを振盪培養した(30℃、18時間)。培養後、培養液を遠心分離・洗浄することにより、洗浄菌体1.2gを回収した。
【0066】
実施例9 (本還元酵素遺伝子及び本補酵素再生酵素遺伝子を含有する形質転換体の調製(その3))
実施例3で調製されるプラスミドpTrcRPc及び実施例4(4−3)で調製されたプラスミドpAGDH12を用いてE.coli HB101を形質転換する。得られる形質転換体を0.4mMのIPTG、20μg/mlのクロラムフェニコール及び50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(100ml×3本)に接種した後、これを振盪培養する(30℃、18時間)。培養後、培養液を遠心分離・洗浄することにより、洗浄菌体を回収する。
【0067】
実施例10 (4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法)
100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)1.5mlに、実施例1で調製された洗浄菌体15mg、NAD+1.3mg及び5%(v/v)の2−プロパノールを加えた。この混合物に、さらに15mgの4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸メチルを加えた。このようにして得られた混合物(反応液)を30℃で21時間攪拌することにより反応を行った。反応終了後、反応液に酢酸ブチル1.5mlを注加攪拌し、次いで遠心分離することにより有機層及び水層を別々に回収した。回収された水層に再度酢酸エチル1.5mlを加えて同様な操作を行った。このようにして得られた有機層を合一濃縮した後、これをクロロホルム30mlに溶解し、無水Na2SO4を用いて乾燥した。乾燥後、クロロホルムを留去することにより、4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸メチルを得た。収率27%(GC分析)であった。
GC条件
カラム:DB−1(0.53mmΦ×30m、1.5μm)
注入口温度:170℃
検出器(FID):300℃
カラム室温度:50℃(保持:5分)→5℃/分→170℃(保持:0分)→(昇温:30℃/分)→290℃(保持:0分)
キャリアガス 10mL/分
4−アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸メチルの保持時間 10分
【0068】
実施例11 (4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法(その2))
100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH7.0)1.5mlに、実施例1で調製された洗浄菌体15mg、NAD+1.3mg及び5%(v/v)の2−プロパノールを加える代わりに、100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH6.5)20mlに、実施例8で調製された洗浄菌体15mg、NADP+1.2mg及びグルコース2.5gを加えること以外は実施例10記載の方法と同様な方法によって4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸メチルを得た。収率31%(GC分析)であった。
【0069】
実施例12 (4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法(その3))
100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH6.5)20mlに、実施例9で得られる洗浄菌体1g、NADP+12mg及びグルコース2.5gを加える。この混合物に、さらに240mgの2‐オキソシクロヘキサンカルボン酸エチルを加えた後、当該混合物のpHを15%炭酸ナトリウム水溶液で6.5に調製する。このようにして得られる混合物(反応液)を30℃で4時間攪拌することにより反応を行う。反応終了後、反応液に酢酸エチル25mlを注加攪拌し、次いで遠心分離することにより有機層及び水層を別々に回収する。回収される水層に再度酢酸エチル25mlを加えて同様な操作を行う。このようにして得られる有機層を合一濃縮した後、これをクロロホルム30mlに溶解し、無水Na2SO4を用いて乾燥する。乾燥後、クロロホルムを留去することにより、2‐ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸エチルを得る。
【0070】
参考例1 (一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する微生物の取得)
(1−1) 洗浄菌体の調製
市販の微生物又は土壌などから単離した微生物を滅菌LB培地(10ml)に接種した後、これを振盪培養する(30℃、18時間)。培養後、培養液を遠心分離・洗浄することにより、洗浄菌体を回収する。
(1−2) スクリーニング
100mMリン酸1カリウム−リン酸2カリウムバッファー(pH6.5)20mlに、上記(1−1)で調製された洗浄菌体1g、NADP+12mg、NAD+12mg及びグルコース2.5gを加える。この混合物に、さらに一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステル240mgを加えた後、当該混合物のpHを15%炭酸ナトリウム水溶液で6.5に調製する。このようにして得られる混合物(反応液)を30℃で4時間攪拌することにより反応を行う。反応終了後、反応液に酢酸エチル25mlを注加攪拌し、次いで遠心分離することにより有機層及び水層を別々に回収する。回収される水層に再度酢酸エチル25mlを加えて同様な操作を行う。このようにして得られる有機層を合一濃縮した後、これをクロロホルム30mlに溶解し、無水Na2SO4を用いて乾燥する。乾燥後、クロロホルムを留去することにより残渣を得る。得られる残渣に、4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルが含まれていることを液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーにて定性及び/定量分析により確認する。
【0071】
参考例2 (4−アセトキシ−3−オキソブタン酸メチルの調製)
NN−ジメチルホルムアミド25gに溶解した4−ブロモ−3−オキソブタン酸メチル5gに酢酸カリウム2.8gを加え、20℃で攪拌2時間攪拌した。氷冷下、反応液に酢酸エチル100mL、ヘキサン15mL、水60mLを加えて洗浄分液した。水層にさらに酢酸エチル20mL、ヘキサン15mLを加え抽出分液をおこなった。油層を合一し濃縮することにより目的の4−アセトキシ−3−オキソブタン酸メチルを得た(3.4g、GC純度84%)。目的物の同定はH−NMRにより行った。
GC条件
カラム:DB−1(0.53mmΦ×30m、1.5μm)
注入口温度:170℃
検出器(FID):300℃
カラム室温度:50℃(保持:5分)→5℃/分→170℃(保持:0分)→(昇温:30℃/分)→290℃(保持:0分)
キャリアガス 10mL/分
4−アセトキシ−3−オキソブタン酸メチルの保持時間 8.7分
H−NMR(δ,ppm,CDCl3);2.2(3H, s),3.5(2H, s),3.8(3H, s),4.8(2H, s)
【0072】
【発明の効果】
本発明により、4−アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを効率的又は簡便に製造することができる。
[配列表フリーテキスト]
配列番号5
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号6
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号7
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号8
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号9
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号10
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号13
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号14
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
配列番号15
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレオチド
【0073】
【配列表】
Claims (17)
- 4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法であって、一般式(1)
(式中、RはC1−C8アルキル基を表す。)
で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)
(式中、RはC1−C8アルキル基、*は不斉炭素原子を示す。)
で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力及び該能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力を人為的に付与されてなる形質転換体又はその死菌化細胞に、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを作用させる工程、並びに生成した一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを採取する工程を有することを特徴とする製造方法。 - 形質転換体が、
下記の2つの人為的に付与される能力を同時に有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有する1つのプラスミド、
下記(i)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA及び下記(ii)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを同時に有する1つのプラスミド、あるいは、
下記(i)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを含有するプラスミド及び下記(ii)の人為的に付与される能力を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNAを有するプラスミドからなる2つのプラスミド、
が少なくとも導入されてなる形質転換体であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
<人為的に付与される能力>
(i)一般式(1)
(式中、RはC1−C8アルキル基を表す。)
で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)
(式中、RはC1−C8アルキル基、*は不斉炭素原子を示す。)
で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力
(ii)上記(i)の能力を有する酵素が依存する補酵素を再生する能力 - 形質転換体が大腸菌であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 補酵素が、NADH/NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)もしくはNADPH/NADP+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 脂肪族アルコールの存在下、形質転換体又はその死菌化細胞に一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを作用させることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 脂肪族アルコールが200℃以下の沸点を持つアルコールであることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
- 脂肪族アルコールが2−プロパノールであることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
- グルコースの存在下、形質転換体又はその死菌化細胞に一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを作用させることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1又は3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号2又は4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号2又は4で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)コリネバクテリウム属又はペニシリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される4‐アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列 - 一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号2で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)コリネバクテリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される4‐アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列 - 一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、下記のアミノ酸配列群の中から選ばれるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
<アミノ酸配列群>
(a)配列番号3で示されるアミノ酸配列
(b)配列番号3で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列であって、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(c)配列番号4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列
(d)配列番号4で示される塩基配列からなるDNAに対し相補性を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列がコードするアミノ酸配列を有し、かつ、一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列
(e)ペニシリウム属に属する微生物由来の、一般式(1)で示される4‐アセトキシ−3−オキソブタン酸エステルを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力を有する酵素のアミノ酸配列 - 一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、配列番号3で示されるアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、配列番号2で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルの3位にあるケトンを還元して一般式(2)で示される4‐アセトキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸エステルを生成する能力が、配列番号4で示される塩基配列がコードするアミノ酸配列を有する酵素が持つ能力であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 前工程として、4−ハロ−3−オキソブタン酸エステルの4位にあるハロゲン原子をアセトキシ基に置換することにより一般式(1)で示される4‐アセトキシ‐3‐オキソブタン酸エステルを得る工程を付加的に有することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
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JP2002271294A JP2004057193A (ja) | 2002-06-05 | 2002-09-18 | 4−アセトキシ−3−ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法 |
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