JP2004052732A - 筒内噴射式火花点火内燃機関及びその燃料噴射弁 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料混合気を点火プラグの付近に集中させて安定した成層燃焼を実現することができ、かつ、ピストンへの燃料付着を抑えてHC等の排出量を確実に低減することができる筒内噴射式火花点火内燃機関を提供する。
【解決手段】燃料噴射弁11からシリンダ3内に噴射される燃料噴霧12の一端部12aが燃料噴射弁11の噴孔25から点火プラグ6の方向に延び、前記一端部12aからピストン4側に向かって燃料噴霧12が中実に広がる。燃料噴霧12の貫徹力は、点火プラグ6側の一端部12aからピストン4側の他端部12bに向かって連続的に減少させる。
【選択図】 図1
【解決手段】燃料噴射弁11からシリンダ3内に噴射される燃料噴霧12の一端部12aが燃料噴射弁11の噴孔25から点火プラグ6の方向に延び、前記一端部12aからピストン4側に向かって燃料噴霧12が中実に広がる。燃料噴霧12の貫徹力は、点火プラグ6側の一端部12aからピストン4側の他端部12bに向かって連続的に減少させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリンダ内に燃料を噴射する火花点火内燃機関及びその燃料噴射弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
筒内噴射式火花点火内燃機関において成層燃焼を実現する場合には、混合気を点火プラグ付近に集中させるとともに、ピストンへの燃料の付着を抑える必要がある。
【0003】
そこで、特開2000−110568号公報に開示された内燃機関では、燃料噴射弁の先端に設けたスプリッタにより、燃料噴霧を順タンブル流に沿って点火プラグ方向に向かう貫徹力の大きい燃料噴霧と、順タンブル流に逆らってピストン方向に向かう貫徹力の小さい燃料噴霧とに分割することにより、点火プラグ付近への燃料混合気の集中と、ピストンへの燃料付着の抑制とを図っている。
【0004】
また、特開平11−159421号公報に開示された内燃機関では、燃料噴射弁の内部を通過する燃料に、燃料噴射弁の軸線を中心とする旋回力を付与するとともに、燃料噴射口を燃料噴射弁の軸線に対してプラグ側に斜めに傾けることにより、中空コーン状でかつ点火プラグ側への貫徹力が大きく、ピストン側への貫徹力が小さい燃料噴霧を形成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特開2000−110568号公報に記載された内燃機関では、燃料噴霧がスプリッタを境として不連続に分割されるので、燃焼時に火炎伝播不良が発生して燃焼が不安定になるおそれがある。また、燃料噴霧を分割した場合、必要な燃料噴射量を確保するためには燃料噴霧の長さを増加させる必要がある。このため、シリンダ内で成層混合気が細長く分布し、貫徹力の大きい側の燃料噴霧による可燃混合気の形成が遅れてオーバーリッチ領域が出現する一方、貫徹力の小さい側の燃料噴霧については火炎が届くまでに拡散が進み、オーバーリーン領域が形成されて火炎伝播不良が生じるおそれがある。このような燃焼の不良は、燃費を悪化させ、HCの排出量を増加させる。また、内燃機関の運転制御について、所定の基準状態(適合状態)からのずれに対する余裕度を示すいわゆるロバスト性(堅牢性)を低下させる。
【0006】
また、燃料噴霧の分割によりピストンへの燃料付着が抑えられても、その代わりにスプリッタへ燃料が付着するため、HC等の排出量の低減効果が期待したほど得られない。
【0007】
特開平11−159421号公報に記載された内燃機関においても、燃料噴霧が中空コーン状であるため、燃料噴霧の内部において燃料の分布に不連続性が生じ、燃料噴霧を分割した場合と同様の問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、燃料混合気を点火プラグの付近に集中させて安定した成層燃焼を実現することができ、かつ、ピストンへの燃料付着を抑えてHC等の排出量を確実に低減することができる筒内噴射式火花点火内燃機関、及びそれに適した燃料噴射弁を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の筒内噴射式火花点火内燃機関は、燃料噴射弁からシリンダ内に噴射される燃料噴霧の一端部が前記燃料噴射弁の噴孔から点火プラグの方向に延び、前記一端部からピストン側に向かって前記燃料噴霧が中実に広がるとともに、前記燃料噴霧の貫徹力が前記点火プラグ側の前記一端部から前記ピストン側の前記他端部に向かって連続的に減少することにより、上述した課題を解決する(請求項1)。
【0010】
この発明の内燃機関によれば、燃料噴霧が中実に広がり、かつその貫徹力も点火プラグ側からピストン側に向かって連続的に減少している。従って、燃料噴霧によって形成される成層混合気が不連続に分布するおそれがなく、着火性及び火炎伝播のいずれも良好に保たれ、成層燃焼の安定性が向上する。燃料噴霧を分割し、あるいは中空形状に形成する場合のように細長い燃料噴霧を形成する必要がなく、燃料噴霧が全体として密にまとまって可燃混合気が早期に形成され、その結果、着火性が向上し、かつ火炎も良好に伝播して燃焼が安定する。さらに、ピストン側の貫徹力が小さく制限されるのでピストンへの燃料付着が防止されてHC等の排出量も低減される。ピストンに代えてスプリッタのような障害物に燃料が付着するおそれもなく、HC等の排出量の低減効果が損なわれることもない。
【0011】
本発明の内燃機関において、燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧が前記シリンダの中心線と直交する方向に広がる角度として定義される横広がり角を、前記一端部から前記他端部に向かって連続的に減少させてもよい(請求項2)。
【0012】
この場合には、ピストン側に向かって噴射された燃料噴霧の横広がり角が小さく制限されるので、点火プラグにて着火された火炎がピストン側の燃料噴霧に伝播するまでの燃料噴霧の過剰な拡散が抑えられ、オーバーリーン化による燃焼不良が防止される。
【0013】
前記燃料噴霧の密度は、前記一端部から前記他端部に向かって連続的に増加させてもよい(請求項3)。この場合には、点火プラグ側において燃料噴霧の密度が相対的に小さいので燃料と空気とがよく混ざり合い、可燃混合気が早期に形成されて着火性が安定する。その一方、ピストン側においては燃料の密度が高くて十分な量の燃料が含まれているので、火炎が伝播するまでにこれらの燃料噴霧が拡散してもオーバーリーン化は抑制され、良好な火炎伝播特性が得られる。
【0014】
本発明の内燃機関においては、前記シリンダ内に点火プラグに向かう吸気流を形成する吸気流形成手段を具備し、前記燃料噴霧の一端部は前記吸気流に沿う方向に噴射されてもよい(請求項4)。そして、前記吸気流はシリンダの中心線と平行な面内で旋回するタンブル流であってもよい(請求項5)。これにより、燃料噴霧の一端部を点火プラグの付近に効率よく集中させて可燃混合気を早期に形成できる。また、吸気流によって燃料噴霧が搬送される傾向の高いエアーガイド時には、ピストン側に噴射された燃料噴霧が吸気流の抵抗を受けるのでピストンへの燃料付着がさらに生じ難くなる。しかも、燃料噴霧が吸気流によって押し返されることにより、全体として燃料噴霧が密にまとまるようになり、成層燃焼に好適な燃料混合気が形成される。
【0015】
本発明の内燃機関においては、前記燃料噴霧の前記一端部における到達位置が前記点火プラグの位置に略一致することが望ましい(請求項6)。燃料噴霧の到達位置は、燃料噴霧に含まれている燃料の微細な液滴が略全て気化する位置として把握することができる。従って、点火プラグに向かって噴射される燃料噴霧の到達位置を点火プラグと略一致させたならば、気化した燃料と空気とが混ざり合って形成される燃料混合気がシリンダ内で拡散する前にこれに着火させることができ、良好な成層燃焼を実現できる。
【0016】
本発明の内燃機関においては、前記点火プラグが前記シリンダの略中心線上に位置し、前記燃料噴射弁は前記シリンダの外周に前記噴孔を前記シリンダの中心線に向けて取り付けられてもよい(請求項7)。このように点火プラグと燃料噴射弁とが配置されている場合には、燃料噴射弁と点火プラグとの間に十分な距離を確保できる。そのため、点火プラグ側に向けて噴射される燃料噴霧の貫徹力を十分に大きくしてそれらの燃料噴霧に含まれる燃料量を増加させ、その効果として、ピストン側に向けて噴射される燃料噴霧の貫徹力を十分に小さくしてピストンへの燃料の付着を確実に回避することができる。
【0017】
本発明の内燃機関の燃料噴霧は、好適には以下の燃料噴射弁を設けることによって実現することができる。
【0018】
本発明の第1の燃料噴射弁は、噴射される燃料流が互いに衝突するように設けられた複数の噴孔の組が所定方向に複数設けられている燃料噴射弁において、同一組の噴孔の軸線同士が交差する角度として定義される噴流衝突角が前記所定方向の一端の組から他端の組に向かうほど漸次増加することにより、前記所定方向の一端側から他端側に向かって貫徹力が連続的に減少する燃料噴霧が形成されるように構成されているものである(請求項8)。
【0019】
噴流衝突角が大きいほど、衝突後の燃料噴霧の貫徹力は小さくなるので、上記のように噴流衝突角を変化させることにより、本発明の貫徹力の特徴を備えた燃料噴霧を形成することができる。しかも、噴孔の組を前記所定方向に多数設けることにより燃料噴霧を容易に中実化することができる。
【0020】
本発明の第2の燃料噴射弁は、噴射される燃料流が互いに衝突するように設けられた複数の噴孔の組が所定方向に複数設けられている燃料噴射弁において、前記噴孔の直径が前記所定方向の一端の組から他端の組に向かうほど漸次減少することにより、前記所定方向の一端側から他端側に向かって貫徹力が連続的に減少する燃料噴霧が形成されるように構成されているものである(請求項9)。
【0021】
噴孔の直径が小さいほど、衝突後の燃料噴霧の貫徹力は小さくなるので、上記のように直径を変化させることにより、本発明の貫徹力の特徴を備えた燃料噴霧を形成することができる。しかも、噴孔の組を前記所定方向に多数設けることにより燃料噴霧を容易に中実化することができる。
【0022】
本発明の第3の燃料噴射弁は、噴射される燃料流が互いに衝突するように設けられた複数の噴孔の組が所定方向に複数設けられている燃料噴射弁において、各組の噴孔間の距離が前記所定方向の一端の組から他端の組に向かうほど漸次減少することにより、前記所定方向の一端側から他端側に向かって貫徹力が連続的に減少する燃料噴霧が形成されるように構成されているものである(請求項10)。
【0023】
同一組における一対の噴孔間の距離が小さいほど、衝突後の燃料噴霧の貫徹力は小さくなるので、上記のように距離を変化させることにより、本発明の貫徹力の特徴を備えた燃料噴霧を形成することができる。しかも、噴孔の組を前記所定方向に多数設けることにより燃料噴霧を容易に中実化することができる。
【0024】
本発明の第4の燃料噴射弁は、上記の第2の燃料噴射弁において、同一組の噴孔の軸線同士が交差する角度として定義される噴流衝突角が前記所定方向の一端の組から他端の組に向かうほど漸次増加することにより、前記燃料噴霧の前記所定方向と直交する方向の広がり角が前記所定方向の一端側から他端側に向かって連続的に減少するように構成されたものである(請求項11)。
【0025】
噴流衝突角は燃料噴霧の横広がり角に影響し、噴流衝突角が大きいほど横広がり角が増加する。従って、第2の燃料噴射弁において直径を変化させることによって実現した貫徹力の変化を完全には打ち消さない範囲で噴流衝突角を上記の通りに変化させたならば、前記所定方向の一端から他端に向かって貫徹力及び横広がり角が連続的に減少する燃料噴霧を形成することができる。
【0026】
本発明の第5の燃料噴射弁は、上述した第1又は第3の燃料噴射弁において、前記噴孔の直径が前記所定方向の一端の組から他端の組に向かうほど漸次増加し、かつ前記所定方向に関する前記噴孔の配置が前記所定方向の一端側で密に他端側で粗となるように変化することにより、燃料噴霧の燃料密度が前記所定方向の一端側から他端側に向かって連続的に増加するように構成されたものである(請求項12)。
【0027】
この燃料噴射弁によれば、噴孔の直径が所定方向の一端側で小さくなるので、燃料噴霧に含まれる燃料の液滴の直径が減少して燃料の密度が低下する。従って、燃料密度は所定方向の一端から他端に向かって漸次増加することになる。さらに、噴孔が所定方向の一端側で密に、他端側で粗に配置されるので、燃料密度が小さい所定方向の一端側でも十分な量の燃料を供給することができる。
【0028】
さらに、本発明の各燃料噴射弁においては、前記所定方向の一端側の噴孔の組から噴射される燃料噴霧が点火プラグ側に向かって延び、前記所定方向の他端側の噴孔の組から噴射される燃料噴霧が前記点火プラグから離れてピストン側に向かって延びるように、前記内燃機関に対する取り付け方向が設定されてもよい(請求項13)。このように燃料噴射弁の内燃機関に対する取り付け方向を定めることにより、本発明の燃料噴射弁を利用して本発明の内燃機関を実現することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1は本発明が適用される筒内噴射式火花点火内燃機関の一実施形態を示している。図1の内燃機関1は自動車に搭載される4サイクル式ガソリンエンジンとして構成されている。内燃機関1のシリンダブロック2には複数のシリンダ3(図1では一つのみ示す。)が形成され、各シリンダ3にはピストン4が上下動自在に挿入される。各シリンダ3の開口部はシリンダヘッド5にて閉じられ、そのシリンダヘッド5には点火プラグ6がその電極部(スパーク形成部)を各シリンダ3の中心線CL1に略一致させて取り付けられている。シリンダヘッド5には、点火プラグ6を挟むようにして吸気通路7及び排気通路8がシリンダ3毎に形成されるとともに、その吸気通路7を開閉する吸気バルブ9と、排気通路8を開閉する排気バルブ10とが1つのシリンダ3に対して2本ずつ取り付けられている。なお、点火プラグ6の位置からみたときに2本の吸気バルブ9は図1の紙面と直交する方向に関して左右対称に配置されるが、図1では片側の吸気バルブ9のみを示している。排気バルブ10についても、吸気バルブ9と同様に点火プラグ6からみたときにシリンダ3の中心線CL1を挟んで左右対称に並べられる。
【0030】
吸気通路7は隔壁7cによって上部通路7a及び下部通路7bに分割され、下部通路7bには当該下部通路7bの開口面積を変化させる吸気流制御弁7dが設けられている。吸気流制御弁7dを閉じたときは専ら上部通路7aからシリンダ3の中心付近に吸気が導入され、その結果、図1に矢印で示したようにシリンダ3内をシリンダ3の中心線と平行な面に沿って旋回する吸気流(順タンブル流)が形成される。吸気流制御弁7dを開くと吸気通路7の全域からシリンダ3内に均等に吸気が導入され、タンブル流は相対的に弱められる。このように、吸気流制御弁7dはシリンダ3内のタンブル流を形成する手段として機能する。但し、そのような制御弁7dは下部通路7bに代えて上部通路7aに設けられてもよい。吸気流制御弁7dとは異なる手段によりタンブル流を制御してもよい。なお、図1においてピストン4の頂面にはタンブル流を損なわないように凹部4aが形成されている。但し、ピストン4の頂面は凹部4aを有しないフラットな形状であってもよい。
【0031】
燃料噴射弁11は、吸気バルブ9よりもシリンダ3の外周側にてそのノズル部11aをシリンダ3の中心線CL1側に向けた状態でシリンダヘッド5に取り付けられている。図3にも示すように、燃料噴射弁11は、上端部(一端部)12aが点火プラグ6の方向に延び、下端部(他端部)12bがピストン4側に延びる燃料噴霧12をシリンダ3内に噴射する。シリンダ3の中心線CL1の方向に関する燃料噴霧12の広がり角(縦広がり角)をθVとし、図2に示すようにシリンダ3の中心線CL1と直交する方向に関する燃料噴霧12の広がり角(横広がり角)をθHとすれば、燃料噴霧12の形状は、θV>θHとなる上下方向(シリンダ3の中心線CL1の方向)に扁平な形状に設定されている。
【0032】
燃料噴霧12は、その中心部から外周まで燃料の液滴(以下、燃料滴と呼ぶことがある。)が連続的に分散されて広がる中実な燃料噴霧として構成されている。燃料噴霧12の貫徹力(噴霧到達距離に等しい)は、上端部12aの貫徹力L1が最も大きく、下端部12bに向かうほど貫徹力が連続的に減少して下端部12bの貫徹力L2が最小となる。上端部12aの貫徹力L1は、燃料噴霧12の到達位置が点火プラグ6に略一致する程度に設定され、下端部12bの貫徹力L2は燃料がピストン4に達しない程度に設定される。なお、この到達位置は上端部12aに含まれる略全ての燃料滴が気化する位置として把握できる。下端部12bの貫徹力L2は燃料噴射時期に応じたピストン4の位置の変化を考慮して定める必要がある。
【0033】
以上のような燃料噴霧12においては、上端部12aから下端部12bまで燃料噴霧12が中実に広がり、かつ貫徹力が連続的に変化しているので、燃料滴が気化して形成される燃料混合気も連続的に広がるようになり、燃料混合気の着火性及び火炎伝播のいずれも良好に保たれて成層燃焼の安定性が向上する。例えば、燃焼の安定性を燃料噴射時期と点火時期との組み合わせで判定した場合には燃焼安定領域が拡大する。燃料噴霧12を分割し、あるいは中空形状に形成する場合のように燃料噴霧を細長く噴射する必要がなく、燃料噴霧12が全体として密にまとまるようになり、可燃混合気が早期に形成されて着火性が向上し、かつ火炎も良好に伝播して燃焼が安定する。さらに、ピストン4への燃料付着も防止され、HC等の排出量も低減される。
【0034】
以上の内燃機関1において、燃料噴霧12の横広がり角θHは、縦広がり角θVよりも小さい一定値としてもよい。好ましくは、図4(a)に示すように、上端部12aから下端部12bに向かうほど横広がり角θHを漸次減少させてもよい。なお、図4は、図3のA−B断面(上端部12a)における横広がり角θH1と、図3のA−C断面(下端部12b)における横広がり角θH2とを対比して示したものである。
【0035】
このように、燃料噴霧12の横広がり角θHを上端部12aから漸次減少させた場合には、下端部12bに含まれて順タンブル流により運ばれる燃料噴霧の拡散する範囲が横広がり角θHを一定とした場合と比較して狭くなり、その結果、燃料混合気が球形に近いまとまった形状となる。従って、先行して点火プラグ6に達する上端部12a側の燃料噴霧によって可燃混合気が早期に形成されて着火性が安定し、混合気の未燃部分のオーバーリーン化も抑制されて良好な火炎伝播特性が得られる。
【0036】
燃料噴霧12の各部における密度(単位体積に占める燃料の質量)は燃料噴霧12の全域に亘って一定としてもよいが、上端部12aから下端部12bに向かうほど連続的に密度を増加させてもよい(図4(b)参照)。このように燃料噴霧12の密度を上端部12a側で小さくした場合には、上端部12a側において燃料噴霧12の密度が相対的に小さいので燃料と空気とがよく混ざり合い、先行して点火プラグ6に達する上端部12a側の燃料噴霧によって可燃混合気が早期に形成されて着火性が安定する。その一方、下端部12b側には十分な量の燃料が含まれているので、下端部12b側の燃料噴霧12が拡散してもオーバーリーン化し難く、良好な火炎伝播特性が得られる。
【0037】
なお、図4(b)では横広がり角θHを一定としたが、図4(a)と同様に、上端部12a側ほど横広がり角θHを大きく、下端部12b側ほど横広がり角θHを小さく設定してもよい。
【0038】
次に、上記の燃料噴霧を実現するための燃料噴射弁11の詳細を説明する。
【0039】
図5は、燃料噴射弁11の特にノズル部11aを中心とした内部の構成を示した図である。燃料噴射弁11は、バルブボディ20と、そのバルブボディ20の中空部20aに挿入され、燃料噴射弁11の中心線CL2と平行な方向に摺動自在かつ中心線CL2と同軸に設けられたニードル弁21と、ニードル弁21を先端側(図3の下方)に押し付けるコイルばね22と、コイルばね22に抗してニードル弁21を後方(図5の上方)に駆動する電磁コイル23とを備えている。コイルばね22によって押されたニードル弁21がバルブボディ20内の弁座24と密着することにより、ニードル弁21の内部流路21aから中空部20aを介して噴孔25に至る燃料の供給経路が遮断される。電磁コイル23が励磁されるとニードル弁21が弁座24から離れ、燃料の供給経路が連通して燃料噴霧12が噴孔25から噴霧される。
【0040】
図6にも示したように、燃料噴射弁11には複数の噴孔25…25が設けられている。噴孔25は図6の左右方向に関して2列に分けて設けられ、各列には5個の噴孔25が図6の上下方向(所定方向)と平行に並べて設けられている。図6の左右方向に並ぶ二つの噴孔25,25は一つの噴孔の組26を構成する。ノズル部11aの先端面11b(図5参照)を基準としたとき、噴孔25,25の左右方向のピッチPaは各組26において互いに等しい。図6の上下方向における各組26のピッチPbは、燃料噴霧12の各部において燃料の密度がほぼ均一となるように調整される。
【0041】
燃料噴射弁11をシリンダヘッド5に取り付けた状態において、図6の上端側は点火プラグ6側に、下端側はピストン4側にそれぞれ向けられる。従って、図6の上端の噴孔25,25から噴射される燃料が燃料噴霧12の上端部12aを形成し、下端の噴孔25,25から噴射される燃料が燃料噴霧12の下端部12bを形成する。
【0042】
図7に示したように、各組26の噴孔25,25は、それぞれの軸線XL,XRが燃料噴射弁11の外部において交点Pを有するように、燃料噴射弁11の内側から外側へ向かうほど互いに接近するように傾けられている。これにより同一組26の噴孔25,25から噴射される燃料は交点Pで衝突し、合流されて燃料噴霧12を形成する。
【0043】
噴孔25,25から噴射されて合流した燃料噴霧12の貫徹力は、噴孔25,25の軸XL,XRが交差する角度として定義される噴流衝突角φ及び噴孔25の直径dに応じて変化する。すなわち、燃料噴霧12の貫徹力は噴流衝突角φが大きいほど減少し、直径dが大きいほど増加する。図6の例では、噴流衝突角φは図6の上端の組26が最小で、下端の組26に向かうほど漸次増加するように設定される。従って、燃料噴射弁11の先端面11bから交点Pまでの距離Sは図6の上側の組26ほど大きくなる。また、各噴孔25の直径dは互いに等しい。従って、図6の場合、燃料噴霧12の貫徹力は、点火プラグ6側ほど大きくピストン4側ほど小さくなる。これにより、図1に示すように貫徹力が変化する燃料噴霧12が形成される。
【0044】
但し、噴流衝突角φを一定とし、各噴孔25の直径dを図6の上端側で大きく、下端側で小さくなるよう連続的に変化させることによっても図1の通りに貫徹力が変化する燃料噴霧12が得られる。さらに、貫徹力は各組26の噴孔25,25のピッチ(距離)Paによっても変化させることができる。すなわち、ピッチPaが大きいほど距離Sが増加して貫徹力が大きくなるから、図6の例において各噴孔25の噴流衝突角φ及び直径dを一定とし、上側の組26から下側の組26に向かうほどピッチPaを減少させることによっても図1の通りに貫徹力が変化する燃料噴霧12が得られる。
【0045】
なお、図7から明らかなように、一組26の噴孔25,25は、燃料噴射弁11の中心線CL2に関して対称に設けられている。但し、噴孔26は中心線CL2に対して非対称に設けられてもよい。例えば、いずれか一方の噴孔25を中心線CL2と平行に形成し、他方の噴孔25を中心線CL2に対して斜めに傾けて形成してもよい。いずれにせよ、各噴孔25の方向は、図6の上端の組26の噴孔25から噴射された燃料噴霧12が点火プラグ6に向かって進むように定められていればよい。
【0046】
図8は燃料噴射弁11の噴孔25の他の例を示す。図8(a)の例では、点火プラグ6側からピストン4側に向かうほど噴孔25の直径dを漸次減少させることにより、燃料噴霧12の貫徹力を点火プラグ6側で大きく、ピストン4側で小さく設定している。そして、その貫徹力の変化を完全には打ち消さない範囲で、噴流衝突角φを点火プラグ6側からピストン4側に向かうほど漸次減少させている。噴孔25のピッチPa、Pbは図6の例と同じである。噴流衝突角φは燃料噴霧の横広がり角θHにも影響し、噴流衝突角φが大きいほど横広がり角θHも増加する。従って、図8(a)の例によれば、横広がり角θHが点火プラグ6側で大きく、ピストン4側で小さくなる。これにより、図4(a)に示した燃料噴霧12が得られる。
【0047】
図8(b)の例では、噴流衝突角φを図6の例と同様に点火プラグ6側からピストン4側に向かうほど漸次増加させることにより、燃料噴霧12の貫徹力を点火プラグ6側で大きく、ピストン4側で小さく設定している。そして、その貫徹力の変化を完全には打ち消さない範囲で、噴孔25の直径dを点火プラグ6側からピストン4側に向かうほど漸次増加させている。さらに、図6の例と比較して、噴孔の組26が並ぶ方向(図9の上下方向)における噴孔25のピッチPbを、点火プラグ6側からピストン4側に向かうほど漸次増加させている。つまり、噴孔25の配置が点火プラグ6側では密に、ピストン4側では粗となるように変化している。なお、各組26における噴孔25のピッチPaは一定である。
【0048】
図8(b)のような燃料噴射弁11によれば、直径dが大きいほど燃料の液滴の大きさが増加するから、点火プラグ6側では燃料の密度が小さく、ピストン4側では燃料の密度が大きくなる。また、燃料噴霧12の貫徹力が点火プラグ6側で大きく設定されているので、噴孔25の直径dを小さくすれば必要な燃料量を供給することができないおそれがあるが、点火プラグ6側でピッチPbを狭めることにより、十分な量の燃料を点火プラグ6側に噴射させることができる。これにより、図4(b)に示した燃料噴霧12が得られる。
【0049】
本発明は上述した実施形態に限定されることなく種々の形態にて実施してよい。例えば燃料噴射弁11は吸気バルブ9の外周側に配置される例に限らず、排気バルブ10側に配置されてもよい。吸気通路7と排気通路8との間に燃料噴射弁11が配置されてもよい。点火プラグ6もシリンダ3の中央に限定されることなく種々の位置に配置してよい。成層燃焼時において吸気流制御弁7dは閉じてもよいし開いてもよい。上述したように、吸気流制御弁7dを閉じているときは吸気流が強くなるので、燃料噴霧が吸気流に載って点火プラグ6まで搬送されるエアーガイド要素が強くなり、吸気流制御弁7dが開いているときは吸気流が弱くなるので、燃料噴霧が噴霧自身の力で点火プラグ6の周辺に供給されるスプレーガイド要素が強くなる。吸気バルブの本数は2本に限らず、1本又は3本以上でもよい。燃料噴射弁11の一つの組26には3個以上の噴孔25が含まれてもよい。その場合には、同一組26内の最大の噴流衝突角φが上記の関係を満たせばよい。
【0050】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の内燃機関によれば、燃料噴霧が中実に広がり、かつその貫徹力も点火プラグ側からピストン側に向かって連続的に減少しているから、燃料噴霧によって形成される成層混合気が不連続に分布するおそれがなく、点火プラグの付近に燃料混合気を十分に集中させて着火性及び火炎伝播のいずれも良好に維持し、成層燃焼の安定性が向上する。燃料噴霧を分割し、あるいは中空形状に形成する場合のように細長い燃料噴霧を形成する必要がなく、燃料噴霧が全体として密にまとまって可燃混合気が早期に形成され、その結果、着火性が向上し、かつ火炎も良好に伝播して燃焼が安定する。さらに、ピストン側の貫徹力が小さく制限されるのでピストンへの燃料付着が防止されてHC等の排出量も低減される。ピストンに代えてスプリッタのような障害物に燃料が付着するおそれもなく、HC等の排出量の低減効果が損なわれることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の内燃機関の一実施形態を示す縦断面図。
【図2】図1の内燃機関のシリンダ内の横断面図。
【図3】図1の内燃機関における燃料噴霧と点火プラグとの関係を示す図。
【図4】図3のA−B線及びA−C線に沿った燃料噴霧の横断面を示す図。
【図5】図1の内燃機関にて使用される燃料噴射弁のノズル部の断面図。
【図6】図5の燃料噴射弁の先端(下端)に設けられた噴孔を図5の矢印VI方向からみた状態を示す図。
【図7】図6のVII−VII線に沿った断面図。
【図8】燃料噴射弁の噴孔の他の例を図6の場合と同一の方向からみた状態を示す図。
【符号の説明】
1 内燃機関
3 シリンダ
4 ピストン
6 点火プラグ
7d 吸気流制御弁(吸気流形成手段)
9 吸気バルブ
10 排気バルブ
11 燃料噴射弁
11a 燃料噴射弁のノズル部
12 燃料噴霧
12a 燃料噴霧の上端部(一端部)
12b 燃料噴霧の下端部(他端部)
25 噴孔
26 噴孔の組
CL1 シリンダの中心線
CL2 燃料噴射弁の中心線
L1,L2 燃料噴霧の貫徹力
θH,θH1,θH2 横広がり角
φ 噴流衝突角
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリンダ内に燃料を噴射する火花点火内燃機関及びその燃料噴射弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
筒内噴射式火花点火内燃機関において成層燃焼を実現する場合には、混合気を点火プラグ付近に集中させるとともに、ピストンへの燃料の付着を抑える必要がある。
【0003】
そこで、特開2000−110568号公報に開示された内燃機関では、燃料噴射弁の先端に設けたスプリッタにより、燃料噴霧を順タンブル流に沿って点火プラグ方向に向かう貫徹力の大きい燃料噴霧と、順タンブル流に逆らってピストン方向に向かう貫徹力の小さい燃料噴霧とに分割することにより、点火プラグ付近への燃料混合気の集中と、ピストンへの燃料付着の抑制とを図っている。
【0004】
また、特開平11−159421号公報に開示された内燃機関では、燃料噴射弁の内部を通過する燃料に、燃料噴射弁の軸線を中心とする旋回力を付与するとともに、燃料噴射口を燃料噴射弁の軸線に対してプラグ側に斜めに傾けることにより、中空コーン状でかつ点火プラグ側への貫徹力が大きく、ピストン側への貫徹力が小さい燃料噴霧を形成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特開2000−110568号公報に記載された内燃機関では、燃料噴霧がスプリッタを境として不連続に分割されるので、燃焼時に火炎伝播不良が発生して燃焼が不安定になるおそれがある。また、燃料噴霧を分割した場合、必要な燃料噴射量を確保するためには燃料噴霧の長さを増加させる必要がある。このため、シリンダ内で成層混合気が細長く分布し、貫徹力の大きい側の燃料噴霧による可燃混合気の形成が遅れてオーバーリッチ領域が出現する一方、貫徹力の小さい側の燃料噴霧については火炎が届くまでに拡散が進み、オーバーリーン領域が形成されて火炎伝播不良が生じるおそれがある。このような燃焼の不良は、燃費を悪化させ、HCの排出量を増加させる。また、内燃機関の運転制御について、所定の基準状態(適合状態)からのずれに対する余裕度を示すいわゆるロバスト性(堅牢性)を低下させる。
【0006】
また、燃料噴霧の分割によりピストンへの燃料付着が抑えられても、その代わりにスプリッタへ燃料が付着するため、HC等の排出量の低減効果が期待したほど得られない。
【0007】
特開平11−159421号公報に記載された内燃機関においても、燃料噴霧が中空コーン状であるため、燃料噴霧の内部において燃料の分布に不連続性が生じ、燃料噴霧を分割した場合と同様の問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、燃料混合気を点火プラグの付近に集中させて安定した成層燃焼を実現することができ、かつ、ピストンへの燃料付着を抑えてHC等の排出量を確実に低減することができる筒内噴射式火花点火内燃機関、及びそれに適した燃料噴射弁を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の筒内噴射式火花点火内燃機関は、燃料噴射弁からシリンダ内に噴射される燃料噴霧の一端部が前記燃料噴射弁の噴孔から点火プラグの方向に延び、前記一端部からピストン側に向かって前記燃料噴霧が中実に広がるとともに、前記燃料噴霧の貫徹力が前記点火プラグ側の前記一端部から前記ピストン側の前記他端部に向かって連続的に減少することにより、上述した課題を解決する(請求項1)。
【0010】
この発明の内燃機関によれば、燃料噴霧が中実に広がり、かつその貫徹力も点火プラグ側からピストン側に向かって連続的に減少している。従って、燃料噴霧によって形成される成層混合気が不連続に分布するおそれがなく、着火性及び火炎伝播のいずれも良好に保たれ、成層燃焼の安定性が向上する。燃料噴霧を分割し、あるいは中空形状に形成する場合のように細長い燃料噴霧を形成する必要がなく、燃料噴霧が全体として密にまとまって可燃混合気が早期に形成され、その結果、着火性が向上し、かつ火炎も良好に伝播して燃焼が安定する。さらに、ピストン側の貫徹力が小さく制限されるのでピストンへの燃料付着が防止されてHC等の排出量も低減される。ピストンに代えてスプリッタのような障害物に燃料が付着するおそれもなく、HC等の排出量の低減効果が損なわれることもない。
【0011】
本発明の内燃機関において、燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧が前記シリンダの中心線と直交する方向に広がる角度として定義される横広がり角を、前記一端部から前記他端部に向かって連続的に減少させてもよい(請求項2)。
【0012】
この場合には、ピストン側に向かって噴射された燃料噴霧の横広がり角が小さく制限されるので、点火プラグにて着火された火炎がピストン側の燃料噴霧に伝播するまでの燃料噴霧の過剰な拡散が抑えられ、オーバーリーン化による燃焼不良が防止される。
【0013】
前記燃料噴霧の密度は、前記一端部から前記他端部に向かって連続的に増加させてもよい(請求項3)。この場合には、点火プラグ側において燃料噴霧の密度が相対的に小さいので燃料と空気とがよく混ざり合い、可燃混合気が早期に形成されて着火性が安定する。その一方、ピストン側においては燃料の密度が高くて十分な量の燃料が含まれているので、火炎が伝播するまでにこれらの燃料噴霧が拡散してもオーバーリーン化は抑制され、良好な火炎伝播特性が得られる。
【0014】
本発明の内燃機関においては、前記シリンダ内に点火プラグに向かう吸気流を形成する吸気流形成手段を具備し、前記燃料噴霧の一端部は前記吸気流に沿う方向に噴射されてもよい(請求項4)。そして、前記吸気流はシリンダの中心線と平行な面内で旋回するタンブル流であってもよい(請求項5)。これにより、燃料噴霧の一端部を点火プラグの付近に効率よく集中させて可燃混合気を早期に形成できる。また、吸気流によって燃料噴霧が搬送される傾向の高いエアーガイド時には、ピストン側に噴射された燃料噴霧が吸気流の抵抗を受けるのでピストンへの燃料付着がさらに生じ難くなる。しかも、燃料噴霧が吸気流によって押し返されることにより、全体として燃料噴霧が密にまとまるようになり、成層燃焼に好適な燃料混合気が形成される。
【0015】
本発明の内燃機関においては、前記燃料噴霧の前記一端部における到達位置が前記点火プラグの位置に略一致することが望ましい(請求項6)。燃料噴霧の到達位置は、燃料噴霧に含まれている燃料の微細な液滴が略全て気化する位置として把握することができる。従って、点火プラグに向かって噴射される燃料噴霧の到達位置を点火プラグと略一致させたならば、気化した燃料と空気とが混ざり合って形成される燃料混合気がシリンダ内で拡散する前にこれに着火させることができ、良好な成層燃焼を実現できる。
【0016】
本発明の内燃機関においては、前記点火プラグが前記シリンダの略中心線上に位置し、前記燃料噴射弁は前記シリンダの外周に前記噴孔を前記シリンダの中心線に向けて取り付けられてもよい(請求項7)。このように点火プラグと燃料噴射弁とが配置されている場合には、燃料噴射弁と点火プラグとの間に十分な距離を確保できる。そのため、点火プラグ側に向けて噴射される燃料噴霧の貫徹力を十分に大きくしてそれらの燃料噴霧に含まれる燃料量を増加させ、その効果として、ピストン側に向けて噴射される燃料噴霧の貫徹力を十分に小さくしてピストンへの燃料の付着を確実に回避することができる。
【0017】
本発明の内燃機関の燃料噴霧は、好適には以下の燃料噴射弁を設けることによって実現することができる。
【0018】
本発明の第1の燃料噴射弁は、噴射される燃料流が互いに衝突するように設けられた複数の噴孔の組が所定方向に複数設けられている燃料噴射弁において、同一組の噴孔の軸線同士が交差する角度として定義される噴流衝突角が前記所定方向の一端の組から他端の組に向かうほど漸次増加することにより、前記所定方向の一端側から他端側に向かって貫徹力が連続的に減少する燃料噴霧が形成されるように構成されているものである(請求項8)。
【0019】
噴流衝突角が大きいほど、衝突後の燃料噴霧の貫徹力は小さくなるので、上記のように噴流衝突角を変化させることにより、本発明の貫徹力の特徴を備えた燃料噴霧を形成することができる。しかも、噴孔の組を前記所定方向に多数設けることにより燃料噴霧を容易に中実化することができる。
【0020】
本発明の第2の燃料噴射弁は、噴射される燃料流が互いに衝突するように設けられた複数の噴孔の組が所定方向に複数設けられている燃料噴射弁において、前記噴孔の直径が前記所定方向の一端の組から他端の組に向かうほど漸次減少することにより、前記所定方向の一端側から他端側に向かって貫徹力が連続的に減少する燃料噴霧が形成されるように構成されているものである(請求項9)。
【0021】
噴孔の直径が小さいほど、衝突後の燃料噴霧の貫徹力は小さくなるので、上記のように直径を変化させることにより、本発明の貫徹力の特徴を備えた燃料噴霧を形成することができる。しかも、噴孔の組を前記所定方向に多数設けることにより燃料噴霧を容易に中実化することができる。
【0022】
本発明の第3の燃料噴射弁は、噴射される燃料流が互いに衝突するように設けられた複数の噴孔の組が所定方向に複数設けられている燃料噴射弁において、各組の噴孔間の距離が前記所定方向の一端の組から他端の組に向かうほど漸次減少することにより、前記所定方向の一端側から他端側に向かって貫徹力が連続的に減少する燃料噴霧が形成されるように構成されているものである(請求項10)。
【0023】
同一組における一対の噴孔間の距離が小さいほど、衝突後の燃料噴霧の貫徹力は小さくなるので、上記のように距離を変化させることにより、本発明の貫徹力の特徴を備えた燃料噴霧を形成することができる。しかも、噴孔の組を前記所定方向に多数設けることにより燃料噴霧を容易に中実化することができる。
【0024】
本発明の第4の燃料噴射弁は、上記の第2の燃料噴射弁において、同一組の噴孔の軸線同士が交差する角度として定義される噴流衝突角が前記所定方向の一端の組から他端の組に向かうほど漸次増加することにより、前記燃料噴霧の前記所定方向と直交する方向の広がり角が前記所定方向の一端側から他端側に向かって連続的に減少するように構成されたものである(請求項11)。
【0025】
噴流衝突角は燃料噴霧の横広がり角に影響し、噴流衝突角が大きいほど横広がり角が増加する。従って、第2の燃料噴射弁において直径を変化させることによって実現した貫徹力の変化を完全には打ち消さない範囲で噴流衝突角を上記の通りに変化させたならば、前記所定方向の一端から他端に向かって貫徹力及び横広がり角が連続的に減少する燃料噴霧を形成することができる。
【0026】
本発明の第5の燃料噴射弁は、上述した第1又は第3の燃料噴射弁において、前記噴孔の直径が前記所定方向の一端の組から他端の組に向かうほど漸次増加し、かつ前記所定方向に関する前記噴孔の配置が前記所定方向の一端側で密に他端側で粗となるように変化することにより、燃料噴霧の燃料密度が前記所定方向の一端側から他端側に向かって連続的に増加するように構成されたものである(請求項12)。
【0027】
この燃料噴射弁によれば、噴孔の直径が所定方向の一端側で小さくなるので、燃料噴霧に含まれる燃料の液滴の直径が減少して燃料の密度が低下する。従って、燃料密度は所定方向の一端から他端に向かって漸次増加することになる。さらに、噴孔が所定方向の一端側で密に、他端側で粗に配置されるので、燃料密度が小さい所定方向の一端側でも十分な量の燃料を供給することができる。
【0028】
さらに、本発明の各燃料噴射弁においては、前記所定方向の一端側の噴孔の組から噴射される燃料噴霧が点火プラグ側に向かって延び、前記所定方向の他端側の噴孔の組から噴射される燃料噴霧が前記点火プラグから離れてピストン側に向かって延びるように、前記内燃機関に対する取り付け方向が設定されてもよい(請求項13)。このように燃料噴射弁の内燃機関に対する取り付け方向を定めることにより、本発明の燃料噴射弁を利用して本発明の内燃機関を実現することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1は本発明が適用される筒内噴射式火花点火内燃機関の一実施形態を示している。図1の内燃機関1は自動車に搭載される4サイクル式ガソリンエンジンとして構成されている。内燃機関1のシリンダブロック2には複数のシリンダ3(図1では一つのみ示す。)が形成され、各シリンダ3にはピストン4が上下動自在に挿入される。各シリンダ3の開口部はシリンダヘッド5にて閉じられ、そのシリンダヘッド5には点火プラグ6がその電極部(スパーク形成部)を各シリンダ3の中心線CL1に略一致させて取り付けられている。シリンダヘッド5には、点火プラグ6を挟むようにして吸気通路7及び排気通路8がシリンダ3毎に形成されるとともに、その吸気通路7を開閉する吸気バルブ9と、排気通路8を開閉する排気バルブ10とが1つのシリンダ3に対して2本ずつ取り付けられている。なお、点火プラグ6の位置からみたときに2本の吸気バルブ9は図1の紙面と直交する方向に関して左右対称に配置されるが、図1では片側の吸気バルブ9のみを示している。排気バルブ10についても、吸気バルブ9と同様に点火プラグ6からみたときにシリンダ3の中心線CL1を挟んで左右対称に並べられる。
【0030】
吸気通路7は隔壁7cによって上部通路7a及び下部通路7bに分割され、下部通路7bには当該下部通路7bの開口面積を変化させる吸気流制御弁7dが設けられている。吸気流制御弁7dを閉じたときは専ら上部通路7aからシリンダ3の中心付近に吸気が導入され、その結果、図1に矢印で示したようにシリンダ3内をシリンダ3の中心線と平行な面に沿って旋回する吸気流(順タンブル流)が形成される。吸気流制御弁7dを開くと吸気通路7の全域からシリンダ3内に均等に吸気が導入され、タンブル流は相対的に弱められる。このように、吸気流制御弁7dはシリンダ3内のタンブル流を形成する手段として機能する。但し、そのような制御弁7dは下部通路7bに代えて上部通路7aに設けられてもよい。吸気流制御弁7dとは異なる手段によりタンブル流を制御してもよい。なお、図1においてピストン4の頂面にはタンブル流を損なわないように凹部4aが形成されている。但し、ピストン4の頂面は凹部4aを有しないフラットな形状であってもよい。
【0031】
燃料噴射弁11は、吸気バルブ9よりもシリンダ3の外周側にてそのノズル部11aをシリンダ3の中心線CL1側に向けた状態でシリンダヘッド5に取り付けられている。図3にも示すように、燃料噴射弁11は、上端部(一端部)12aが点火プラグ6の方向に延び、下端部(他端部)12bがピストン4側に延びる燃料噴霧12をシリンダ3内に噴射する。シリンダ3の中心線CL1の方向に関する燃料噴霧12の広がり角(縦広がり角)をθVとし、図2に示すようにシリンダ3の中心線CL1と直交する方向に関する燃料噴霧12の広がり角(横広がり角)をθHとすれば、燃料噴霧12の形状は、θV>θHとなる上下方向(シリンダ3の中心線CL1の方向)に扁平な形状に設定されている。
【0032】
燃料噴霧12は、その中心部から外周まで燃料の液滴(以下、燃料滴と呼ぶことがある。)が連続的に分散されて広がる中実な燃料噴霧として構成されている。燃料噴霧12の貫徹力(噴霧到達距離に等しい)は、上端部12aの貫徹力L1が最も大きく、下端部12bに向かうほど貫徹力が連続的に減少して下端部12bの貫徹力L2が最小となる。上端部12aの貫徹力L1は、燃料噴霧12の到達位置が点火プラグ6に略一致する程度に設定され、下端部12bの貫徹力L2は燃料がピストン4に達しない程度に設定される。なお、この到達位置は上端部12aに含まれる略全ての燃料滴が気化する位置として把握できる。下端部12bの貫徹力L2は燃料噴射時期に応じたピストン4の位置の変化を考慮して定める必要がある。
【0033】
以上のような燃料噴霧12においては、上端部12aから下端部12bまで燃料噴霧12が中実に広がり、かつ貫徹力が連続的に変化しているので、燃料滴が気化して形成される燃料混合気も連続的に広がるようになり、燃料混合気の着火性及び火炎伝播のいずれも良好に保たれて成層燃焼の安定性が向上する。例えば、燃焼の安定性を燃料噴射時期と点火時期との組み合わせで判定した場合には燃焼安定領域が拡大する。燃料噴霧12を分割し、あるいは中空形状に形成する場合のように燃料噴霧を細長く噴射する必要がなく、燃料噴霧12が全体として密にまとまるようになり、可燃混合気が早期に形成されて着火性が向上し、かつ火炎も良好に伝播して燃焼が安定する。さらに、ピストン4への燃料付着も防止され、HC等の排出量も低減される。
【0034】
以上の内燃機関1において、燃料噴霧12の横広がり角θHは、縦広がり角θVよりも小さい一定値としてもよい。好ましくは、図4(a)に示すように、上端部12aから下端部12bに向かうほど横広がり角θHを漸次減少させてもよい。なお、図4は、図3のA−B断面(上端部12a)における横広がり角θH1と、図3のA−C断面(下端部12b)における横広がり角θH2とを対比して示したものである。
【0035】
このように、燃料噴霧12の横広がり角θHを上端部12aから漸次減少させた場合には、下端部12bに含まれて順タンブル流により運ばれる燃料噴霧の拡散する範囲が横広がり角θHを一定とした場合と比較して狭くなり、その結果、燃料混合気が球形に近いまとまった形状となる。従って、先行して点火プラグ6に達する上端部12a側の燃料噴霧によって可燃混合気が早期に形成されて着火性が安定し、混合気の未燃部分のオーバーリーン化も抑制されて良好な火炎伝播特性が得られる。
【0036】
燃料噴霧12の各部における密度(単位体積に占める燃料の質量)は燃料噴霧12の全域に亘って一定としてもよいが、上端部12aから下端部12bに向かうほど連続的に密度を増加させてもよい(図4(b)参照)。このように燃料噴霧12の密度を上端部12a側で小さくした場合には、上端部12a側において燃料噴霧12の密度が相対的に小さいので燃料と空気とがよく混ざり合い、先行して点火プラグ6に達する上端部12a側の燃料噴霧によって可燃混合気が早期に形成されて着火性が安定する。その一方、下端部12b側には十分な量の燃料が含まれているので、下端部12b側の燃料噴霧12が拡散してもオーバーリーン化し難く、良好な火炎伝播特性が得られる。
【0037】
なお、図4(b)では横広がり角θHを一定としたが、図4(a)と同様に、上端部12a側ほど横広がり角θHを大きく、下端部12b側ほど横広がり角θHを小さく設定してもよい。
【0038】
次に、上記の燃料噴霧を実現するための燃料噴射弁11の詳細を説明する。
【0039】
図5は、燃料噴射弁11の特にノズル部11aを中心とした内部の構成を示した図である。燃料噴射弁11は、バルブボディ20と、そのバルブボディ20の中空部20aに挿入され、燃料噴射弁11の中心線CL2と平行な方向に摺動自在かつ中心線CL2と同軸に設けられたニードル弁21と、ニードル弁21を先端側(図3の下方)に押し付けるコイルばね22と、コイルばね22に抗してニードル弁21を後方(図5の上方)に駆動する電磁コイル23とを備えている。コイルばね22によって押されたニードル弁21がバルブボディ20内の弁座24と密着することにより、ニードル弁21の内部流路21aから中空部20aを介して噴孔25に至る燃料の供給経路が遮断される。電磁コイル23が励磁されるとニードル弁21が弁座24から離れ、燃料の供給経路が連通して燃料噴霧12が噴孔25から噴霧される。
【0040】
図6にも示したように、燃料噴射弁11には複数の噴孔25…25が設けられている。噴孔25は図6の左右方向に関して2列に分けて設けられ、各列には5個の噴孔25が図6の上下方向(所定方向)と平行に並べて設けられている。図6の左右方向に並ぶ二つの噴孔25,25は一つの噴孔の組26を構成する。ノズル部11aの先端面11b(図5参照)を基準としたとき、噴孔25,25の左右方向のピッチPaは各組26において互いに等しい。図6の上下方向における各組26のピッチPbは、燃料噴霧12の各部において燃料の密度がほぼ均一となるように調整される。
【0041】
燃料噴射弁11をシリンダヘッド5に取り付けた状態において、図6の上端側は点火プラグ6側に、下端側はピストン4側にそれぞれ向けられる。従って、図6の上端の噴孔25,25から噴射される燃料が燃料噴霧12の上端部12aを形成し、下端の噴孔25,25から噴射される燃料が燃料噴霧12の下端部12bを形成する。
【0042】
図7に示したように、各組26の噴孔25,25は、それぞれの軸線XL,XRが燃料噴射弁11の外部において交点Pを有するように、燃料噴射弁11の内側から外側へ向かうほど互いに接近するように傾けられている。これにより同一組26の噴孔25,25から噴射される燃料は交点Pで衝突し、合流されて燃料噴霧12を形成する。
【0043】
噴孔25,25から噴射されて合流した燃料噴霧12の貫徹力は、噴孔25,25の軸XL,XRが交差する角度として定義される噴流衝突角φ及び噴孔25の直径dに応じて変化する。すなわち、燃料噴霧12の貫徹力は噴流衝突角φが大きいほど減少し、直径dが大きいほど増加する。図6の例では、噴流衝突角φは図6の上端の組26が最小で、下端の組26に向かうほど漸次増加するように設定される。従って、燃料噴射弁11の先端面11bから交点Pまでの距離Sは図6の上側の組26ほど大きくなる。また、各噴孔25の直径dは互いに等しい。従って、図6の場合、燃料噴霧12の貫徹力は、点火プラグ6側ほど大きくピストン4側ほど小さくなる。これにより、図1に示すように貫徹力が変化する燃料噴霧12が形成される。
【0044】
但し、噴流衝突角φを一定とし、各噴孔25の直径dを図6の上端側で大きく、下端側で小さくなるよう連続的に変化させることによっても図1の通りに貫徹力が変化する燃料噴霧12が得られる。さらに、貫徹力は各組26の噴孔25,25のピッチ(距離)Paによっても変化させることができる。すなわち、ピッチPaが大きいほど距離Sが増加して貫徹力が大きくなるから、図6の例において各噴孔25の噴流衝突角φ及び直径dを一定とし、上側の組26から下側の組26に向かうほどピッチPaを減少させることによっても図1の通りに貫徹力が変化する燃料噴霧12が得られる。
【0045】
なお、図7から明らかなように、一組26の噴孔25,25は、燃料噴射弁11の中心線CL2に関して対称に設けられている。但し、噴孔26は中心線CL2に対して非対称に設けられてもよい。例えば、いずれか一方の噴孔25を中心線CL2と平行に形成し、他方の噴孔25を中心線CL2に対して斜めに傾けて形成してもよい。いずれにせよ、各噴孔25の方向は、図6の上端の組26の噴孔25から噴射された燃料噴霧12が点火プラグ6に向かって進むように定められていればよい。
【0046】
図8は燃料噴射弁11の噴孔25の他の例を示す。図8(a)の例では、点火プラグ6側からピストン4側に向かうほど噴孔25の直径dを漸次減少させることにより、燃料噴霧12の貫徹力を点火プラグ6側で大きく、ピストン4側で小さく設定している。そして、その貫徹力の変化を完全には打ち消さない範囲で、噴流衝突角φを点火プラグ6側からピストン4側に向かうほど漸次減少させている。噴孔25のピッチPa、Pbは図6の例と同じである。噴流衝突角φは燃料噴霧の横広がり角θHにも影響し、噴流衝突角φが大きいほど横広がり角θHも増加する。従って、図8(a)の例によれば、横広がり角θHが点火プラグ6側で大きく、ピストン4側で小さくなる。これにより、図4(a)に示した燃料噴霧12が得られる。
【0047】
図8(b)の例では、噴流衝突角φを図6の例と同様に点火プラグ6側からピストン4側に向かうほど漸次増加させることにより、燃料噴霧12の貫徹力を点火プラグ6側で大きく、ピストン4側で小さく設定している。そして、その貫徹力の変化を完全には打ち消さない範囲で、噴孔25の直径dを点火プラグ6側からピストン4側に向かうほど漸次増加させている。さらに、図6の例と比較して、噴孔の組26が並ぶ方向(図9の上下方向)における噴孔25のピッチPbを、点火プラグ6側からピストン4側に向かうほど漸次増加させている。つまり、噴孔25の配置が点火プラグ6側では密に、ピストン4側では粗となるように変化している。なお、各組26における噴孔25のピッチPaは一定である。
【0048】
図8(b)のような燃料噴射弁11によれば、直径dが大きいほど燃料の液滴の大きさが増加するから、点火プラグ6側では燃料の密度が小さく、ピストン4側では燃料の密度が大きくなる。また、燃料噴霧12の貫徹力が点火プラグ6側で大きく設定されているので、噴孔25の直径dを小さくすれば必要な燃料量を供給することができないおそれがあるが、点火プラグ6側でピッチPbを狭めることにより、十分な量の燃料を点火プラグ6側に噴射させることができる。これにより、図4(b)に示した燃料噴霧12が得られる。
【0049】
本発明は上述した実施形態に限定されることなく種々の形態にて実施してよい。例えば燃料噴射弁11は吸気バルブ9の外周側に配置される例に限らず、排気バルブ10側に配置されてもよい。吸気通路7と排気通路8との間に燃料噴射弁11が配置されてもよい。点火プラグ6もシリンダ3の中央に限定されることなく種々の位置に配置してよい。成層燃焼時において吸気流制御弁7dは閉じてもよいし開いてもよい。上述したように、吸気流制御弁7dを閉じているときは吸気流が強くなるので、燃料噴霧が吸気流に載って点火プラグ6まで搬送されるエアーガイド要素が強くなり、吸気流制御弁7dが開いているときは吸気流が弱くなるので、燃料噴霧が噴霧自身の力で点火プラグ6の周辺に供給されるスプレーガイド要素が強くなる。吸気バルブの本数は2本に限らず、1本又は3本以上でもよい。燃料噴射弁11の一つの組26には3個以上の噴孔25が含まれてもよい。その場合には、同一組26内の最大の噴流衝突角φが上記の関係を満たせばよい。
【0050】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の内燃機関によれば、燃料噴霧が中実に広がり、かつその貫徹力も点火プラグ側からピストン側に向かって連続的に減少しているから、燃料噴霧によって形成される成層混合気が不連続に分布するおそれがなく、点火プラグの付近に燃料混合気を十分に集中させて着火性及び火炎伝播のいずれも良好に維持し、成層燃焼の安定性が向上する。燃料噴霧を分割し、あるいは中空形状に形成する場合のように細長い燃料噴霧を形成する必要がなく、燃料噴霧が全体として密にまとまって可燃混合気が早期に形成され、その結果、着火性が向上し、かつ火炎も良好に伝播して燃焼が安定する。さらに、ピストン側の貫徹力が小さく制限されるのでピストンへの燃料付着が防止されてHC等の排出量も低減される。ピストンに代えてスプリッタのような障害物に燃料が付着するおそれもなく、HC等の排出量の低減効果が損なわれることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の内燃機関の一実施形態を示す縦断面図。
【図2】図1の内燃機関のシリンダ内の横断面図。
【図3】図1の内燃機関における燃料噴霧と点火プラグとの関係を示す図。
【図4】図3のA−B線及びA−C線に沿った燃料噴霧の横断面を示す図。
【図5】図1の内燃機関にて使用される燃料噴射弁のノズル部の断面図。
【図6】図5の燃料噴射弁の先端(下端)に設けられた噴孔を図5の矢印VI方向からみた状態を示す図。
【図7】図6のVII−VII線に沿った断面図。
【図8】燃料噴射弁の噴孔の他の例を図6の場合と同一の方向からみた状態を示す図。
【符号の説明】
1 内燃機関
3 シリンダ
4 ピストン
6 点火プラグ
7d 吸気流制御弁(吸気流形成手段)
9 吸気バルブ
10 排気バルブ
11 燃料噴射弁
11a 燃料噴射弁のノズル部
12 燃料噴霧
12a 燃料噴霧の上端部(一端部)
12b 燃料噴霧の下端部(他端部)
25 噴孔
26 噴孔の組
CL1 シリンダの中心線
CL2 燃料噴射弁の中心線
L1,L2 燃料噴霧の貫徹力
θH,θH1,θH2 横広がり角
φ 噴流衝突角
Claims (13)
- 燃料噴射弁からシリンダ内に噴射される燃料噴霧の一端部が前記燃料噴射弁の噴孔から点火プラグの方向に延び、前記一端部からピストン側に向かって前記燃料噴霧が中実に広がるとともに、前記燃料噴霧の貫徹力が前記点火プラグ側の前記一端部から前記ピストン側の前記他端部に向かって連続的に減少することを特徴とする筒内噴射式火花点火内燃機関。
- 燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧が前記シリンダの中心線と直交する方向に広がる角度として定義される横広がり角が、前記一端部から前記他端部に向かって連続的に減少していることを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関。
- 前記燃料噴霧の密度が、前記一端部から前記他端部に向かって連続的に増加していることを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関。
- 前記シリンダ内に点火プラグに向かう吸気流を形成する吸気流形成手段を具備し、前記燃料噴霧の一端部は前記吸気流に沿う方向に噴射されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関。
- 前記吸気流がシリンダの中心線と平行な面内で旋回するタンブル流であることを特徴とする請求項4に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関。
- 前記燃料噴霧の前記一端部における到達位置が前記点火プラグの位置に略一致していること特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関。
- 前記点火プラグが前記シリンダの略中心線上に位置し、前記燃料噴射弁は前記シリンダの外周に前記噴孔を前記シリンダの中心線に向けて取り付けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関。
- 噴射される燃料流が互いに衝突するように設けられた複数の噴孔の組が所定方向に複数設けられている燃料噴射弁において、
同一組の噴孔の軸線同士が交差する角度として定義される噴流衝突角が前記所定方向の一端の組から他端の組に向かうほど漸次増加することにより、前記所定方向の一端側から他端側に向かって貫徹力が連続的に減少する燃料噴霧が形成されるように構成されたことを特徴とする燃料噴射弁。 - 噴射される燃料流が互いに衝突するように設けられた複数の噴孔の組が所定方向に複数設けられている燃料噴射弁において、
前記噴孔の直径が前記所定方向の一端の組から他端の組に向かうほど漸次減少することにより、前記所定方向の一端側から他端側に向かって貫徹力が連続的に減少する燃料噴霧が形成されるように構成されたことを特徴とする燃料噴射弁。 - 噴射される燃料流が互いに衝突するように設けられた複数の噴孔の組が所定方向に複数設けられている燃料噴射弁において、
各組の噴孔間の距離が前記所定方向の一端の組から他端の組に向かうほど漸次減少することにより、前記所定方向の一端側から他端側に向かって貫徹力が連続的に減少する燃料噴霧が形成されるように構成されたことを特徴とする燃料噴射弁。 - 同一組の噴孔の軸線同士が交差する角度として定義される噴流衝突角が前記所定方向の一端の組から他端の組に向かうほど漸次増加することにより、前記燃料噴霧の前記所定方向と直交する方向の広がり角が前記所定方向の一端側から他端側に向かって連続的に減少するように構成されたことを特徴とする請求項9に記載の燃料噴射弁。
- 前記噴孔の直径が前記所定方向の一端の組から他端の組に向かうほど漸次増加し、かつ前記所定方向に関する前記噴孔の配置が前記所定方向の一端側で密に他端側で粗となるように変化することにより、燃料噴霧の燃料密度が前記所定方向の一端側から他端側に向かって連続的に増加するように構成されたことを特徴とする請求項8又は10に記載の燃料噴射弁。
- 前記所定方向の一端側の噴孔の組から噴射される燃料噴霧が点火プラグ側に向かって延び、前記所定方向の他端側の噴孔の組から噴射される燃料噴霧が前記点火プラグから離れてピストン側に向かって延びるように、前記内燃機関に対する取り付け方向が設定されていることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の燃料噴射弁。
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