JP2004052619A - 液体噴射装置 - Google Patents

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大西 孝生
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Abstract

【課題】周囲環境の変動が大きくても、燃料等の液体を均一に微粒子化して噴射することができ、かつ、高圧の液体を噴射する必要がある環境で使用する場合においても消費電力の増大を抑制できる液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】この液体噴射装置10は、内燃機関の吸気管20等により形成される液体噴射空間21に取り付けられた噴射ユニット14と、液体貯蔵タンク22からの液体を噴射可能な圧力にまで加圧し、前記噴射ユニットに供給する加圧ポンプ11とを備えている。噴射ユニットは、加圧ポンプにより供給された液体を微粒子化するために、その壁面に圧電/電歪素子を固着したチャンバーと、液体吐出用ノズルとを複数個備えている。チャンバーの壁を介して圧電/電歪素子が同チャンバー内の液圧により受ける力は、同チャンバー内の液圧と略等しい反力供給室内の液圧により発生する反力により殆ど全てが相殺される。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体噴射空間に噴射された液体原料、及び燃料等を利用する各種機械に適用され、前記液体噴射空間内に液体を微粒子化して噴射する液体噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の液体噴射装置には、内燃機関用燃料噴射装置が知られている。内燃機関用燃料噴射装置は、液体を加圧するための加圧ポンプと、電磁式噴射弁とを有してなる所謂電気制御燃料噴射装置であり、広く実用化されている。ところが、電気制御燃料噴射装置においては、加圧ポンプで加圧された燃料が電磁式噴射弁の噴射口より噴射されるようになっているため、噴射された燃料の液滴の大きさは、一般に、最小でも100μm程度と比較的大きく、またその大きさが均一でない。このような燃料の液滴の大きさや大きさの不均一性は、燃焼時の未燃燃料を増加させることになり、ひいては有害排出ガスの増加をまねいている。
【0003】
一方、特開昭54−90416号公報に開示されているように、ピエゾ電歪素子(圧電/電歪素子)の作動により液体供給通路を構成する壁の一部を変形させることで同液体供給通路内の液体を加圧し、同液体の液圧に圧力変動を生じさせて同液体を微小液滴として吐出口から吐出する液滴吐出装置が提案されている。このような装置は、例えば、特開平6−40030号公報等に開示されたインクジェット吐出装置の原理を応用していて、吐出液滴(噴射される燃料の液滴)を上記電気制御燃料噴射装置に比べて小さく、且つ均一とすることができるので、燃料の微粒子化の点で優れた装置であるといえる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、インクジェット吐出装置は、温度、圧力等の変動が少なく、比較的定常的な周囲環境下(例えば、事務所、学校等の室内)で使用された場合、液体を微細な粒子として噴射するという所期の性能を発揮し得る。しかしながら、内燃機関等の様に、運転条件等の変動等により激しく変動する周囲環境下で使用された場合、上記燃料を微粒子化する性能を十分に発揮することが一般に困難である。従って、インクジェット吐出装置の原理を応用した装置であって、内燃機関のように周囲環境が激しく変化する機械装置に対し、液体の微粒子化を十分に達成した上で同液体を噴射し得る液体(燃料)噴射装置は未だ提供できていないのが現状である。
【0005】
また、上記した液滴吐出装置のようにピエゾ電歪素子の作動により液体供給通路を構成する壁の一部を変形させる場合、ピエゾ電歪素子は液体供給通路内の液体の液圧による力に抗しながら同液体供給通路の壁を変形させるので、同ピエゾ電歪素子の作動に要求される力(電歪素子の消費電力)の大きさは同液体供給通路内に発生し得る最大液圧(吐出口から吐出される微小液滴の最大吐出圧)の増加に応じて大きくなる。従って、上記装置においては、吐出される微小液滴の最大吐出圧が高い環境(例えば、液体が噴射される液体噴射空間内の圧力が高い環境)で使用される場合、同最大吐出圧の増加に応じて同装置の消費電力が増大するとともにより高出力のピエゾ電歪素子を使用する必要が生じ、或いは、噴射される液体の液圧に十分な圧力変動を発生させることができず、ひいては同液体を微粒子化する性能が低下するという問題がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、噴射する液体の液滴が小さく、且つその大きさが均一であり、液体の微粒子化を安定的に達成して同液体を噴射することができる液体噴射装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、液体噴射空間等の液体噴射装置の使用環境が、激しく且つ突然に変動するような条件下でも、安定して液体を噴射できる構造を備えた液体噴射装置を提供することにある。更に、本発明の他の目的は、高圧の液体を噴射する必要がある環境で使用する場合においても消費電力の増大を抑制できる構造を備えた液体噴射装置を提供することにある。
【0007】
【発明の概要】
本発明は、上記課題に対処すべくなされたものであって、液体噴射空間に一端が露呈した液体吐出用ノズルと、同液体吐出用ノズルの他端と液体供給管の一端とが連通したチャンバーとを含んでなる流路形成部を備えた噴射ユニットと、所定の周波数を有する駆動電圧信号を発生する駆動電圧発生手段と、前記液体供給管の他端が接続された吐出部を有するとともに、液体貯蔵タンクと連通した導入部を有し、同導入部から導入した同液体貯蔵タンク内の液体を加圧して同吐出部から吐出することにより、同液体を前記噴射ユニットのチャンバー及び液体吐出用ノズルを介して前記液体噴射空間に噴射する加圧手段と、を備えた液体噴射装置であって、前記噴射ユニットは、前記チャンバーの壁の外面に固着されるとともに同壁を介して同チャンバー内の液圧による力を受ける固着面を有し同固着面に沿った方向に主として伸縮することにより同チャンバーの壁を変形させて同チャンバーの容積を変化させる圧電/電歪素子と、前記圧電/電歪素子の非固着面に対して前記固着面に向けた反力を付与する反力付与手段とを含む加圧部を備え、前記駆動電圧発生手段からの駆動電圧信号により前記圧電/電歪素子を伸縮させて前記液体吐出用ノズルから噴射される液体を微粒子化するように構成された液体噴射装置である。なお、「連通」とは、直接、又は間接的に接続されていることを意味する。また、本明細書において、「管」は「通路」と同義であるものとして使用される。
【0008】
この装置によれば、圧電/電歪素子の伸縮(作動)によりチャンバーの容積が変動し、これにより噴射される液体に振動エネルギー(単に、「振動」と云うこともある。)が付与されるので、液体は液体吐出用ノズルから微粒子化された液滴として噴射される。
【0009】
この場合、微粒子化された液滴の大きさは、液体に印加される圧力、圧電/電歪素子の振動の振幅・周波数、流路の形状、流路の寸法、及び液体の粘度・表面張力等の物性等により変化するが、液体に加わる振動の周期が、液体が液体吐出用ノズル内の同ノズルの端部(液体噴射空間に露呈した開口)近傍において、同ノズルの端部の直径分に相当する長さだけ移動する時間より小さい場合、同噴射される液滴の大きさは、おおよそ液体吐出ノズルの端部の直径以下となる。従って、例えば、前記液体吐出用ノズルの液体噴射空間に露呈した端部(開口)の直径を数十μm以下に設計すれば、上記液体噴射装置は極めて均一に微細化された液滴を噴射することが可能となり、例えば、内燃機関用燃料噴射装置として使用した場合、噴射する燃料を適切な径の液滴に微粒子化できるので、内燃機関の燃費の向上、及び有害排出ガスの低減を実現することができる。
【0010】
また、上記構成によれば、液体の噴射に必要な圧力は加圧手段により発生されることから、適用する機械の運転条件等の変動などにより、液体噴射空間の環境(例えば、圧力や温度)が激しく変動しても、同液体を所望の微細な粒子として安定して噴射、供給することができる。
【0011】
更に、従来のキャブレター(気化器)は、液滴吐出空間(液体噴射空間)である吸気管内の空間の空気流速に応じて燃料(液体)流量が決定され、霧化の程度も同空気流速に依存して変化したが、上記本発明の液体噴射装置によれば、空気流速に拘らず良好な霧化状態を維持した燃料(液体)を必要量だけ吐出することができる。加えて、本発明による液体噴射装置によれば、従来の燃料噴射用インジェクタのノズル部にアシストエアを供給することで燃料の霧化を促進する装置のように、アシストエアを供給するためのコンプレッサを必要としないので、装置を廉価なものとすることができる。
【0012】
加えて、上記構成によれば、チャンバーの壁の変形方向は圧電/電歪素子の固着面に向けた方向(例えば、固着面が平面である場合、同固着面に略垂直な方向)であって、反力付与手段により圧電/電歪素子の非固着面に付与される反力は同圧電/電歪素子の固着面に向けた力であるので、同反力には少なくともチャンバーの壁の変形方向の成分が存在する。従って、圧電/電歪素子の固着面がチャンバーの壁(の変形)を介して受ける同チャンバー内の液圧による力における同チャンバーの壁の変形方向の成分(の一部)は、前記反力における同チャンバーの壁の変形方向の成分により相殺される。
【0013】
従って、圧電/電歪素子がチャンバー内の液圧による力に抗しながら同チャンバーの壁を所定量だけ変形させるときに圧電/電歪素子の伸縮(縮み作動)に要求される力の大きさが上記相殺された分に相当する大きさだけ低減される。この結果、圧電/電歪素子に印加する駆動電圧信号の電圧を低くすることができるので、同圧電/電歪素子、ひいては液体噴射装置の消費電力が低減される。よって、高圧の液体を噴射する必要がある環境(チャンバー内の液圧が高い環境)で使用する場合においても液体噴射装置の消費電力の増大を抑制できる。
【0014】
この場合、前記反力付与手段は、前記反力における前記チャンバーの壁の変形方向の成分の大きさが、前記固着面が受ける同チャンバー内の液圧による力における同壁の変形方向の成分の大きさと略同一になるように同反力の大きさを調整するように構成されることが好適である。
【0015】
これによれば、圧電/電歪素子の固着面がチャンバーの壁を介して受ける同チャンバー内の液圧による力における同チャンバーの壁の変形方向の成分の殆ど全てが前記反力における同チャンバーの壁の変形方向の成分により相殺される。この結果、チャンバーの壁を所定量だけ変形させるときに圧電/電歪素子の伸縮(縮み作動)に要求される力の大きさを、同チャンバー内の液圧に拘わらず、同チャンバー内の液圧が極低圧のときに要求される力の大きさまで安定して低減できる。よって、相当に高圧の液体を噴射する必要がある環境で使用する場合においても液体を安定して噴射することが可能になるとともに、液体噴射装置の消費電力を小さくすることができる。
【0016】
また、上記した液体噴射装置において、前記反力付与手段は、前記加圧手段の吐出部から吐出される液体が導入される反力供給室を備え、前記反力供給室内の液圧による力を前記反力として前記圧電/電歪素子の非固着面に付与するように構成されることが好適である。
【0017】
これによれば、液体を噴射するために必要である加圧手段の吐出部から吐出される液体の液圧を反力として併用することができるので、同反力を圧電/電歪素子の非固着面に付与するための専用の反力発生装置等を液体噴射装置に新たに追加する必要がない。従って、液体噴射装置を簡易な構成且つ安価とすることができる。
【0018】
また、加圧手段の吐出部から吐出される液体は、直接的に又は間接的に(例えば、レギュレター等を介して)チャンバー及び反力供給室に導入される。従って、チャンバー内の液圧と反力供給室内の液圧とを略同一とすることが容易となるので、反力における同チャンバーの壁の変形方向の成分の大きさを同チャンバー内の液圧による力における同壁の変形方向の成分の大きさと略同一に調整することも容易となる。この結果、簡易な構成で、上記と同様、相当に高圧の液体を噴射する必要がある環境で使用する場合においても液体を噴射することが可能になり得るとともに、液体噴射装置の消費電力を小さくすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による液体噴射装置の実施形態を詳細に説明する。図1に概略的にその構成を示した本発明の実施形態に係る液体噴射装置(液体噴霧装置、液体供給装置、液滴吐出装置)10は、例えば、内燃機関の吸気管20等により形成される燃料噴射空間21に微粒子化された液体(液体燃料、例えばガソリン、以下、単に「燃料」と云うこともある。)を噴射するためのものであって、加圧手段としての加圧ポンプ11、液体供給管12、液体供給管12の一端と連通され、噴射する燃料を微粒子化するために少なくともその壁面に圧電/電歪素子を形成したチャンバーと液体吐出用ノズルとを複数個備えた噴射ユニット(噴霧ユニット)13、液体供給管12に介装されたレギュレター14、レギュレター14と噴射ユニット13の間の液体供給管12に介装された燃料噴射用インジェクタ15、レギュレター14と燃料噴射用インジェクタ15の間の液体供給管12から分岐して噴射ユニット13と連通する反力供給用配管16、反力供給用配管16に介装された反力供給用電磁式開閉弁17、噴射ユニット13と連通するとともに液体貯蔵タンク22に通じる反力開放用配管18、反力開放用配管18に介装された反力開放用電磁式開閉弁19、及び電気制御装置30とを備えている。
【0020】
加圧ポンプ11は、液体貯蔵タンク22に連通されるとともに同液体貯蔵タンク22から燃料が供給される導入部11aと、液体供給管12の他端に接続される吐出部11bとを備えている。この加圧ポンプ11は、前記導入部11aから導入した液体貯蔵タンク22からの燃料を、レギュレター14、燃料噴射用インジェクタ15、及び噴射ユニット13を介して(仮に、噴射ユニット13の圧電/電歪素子が作動されていない場合であっても)燃料噴射空間21に対し噴射し得る圧力まで加圧し、前記吐出部11bから液体供給管12内に吐出するようになっている。
【0021】
噴射ユニット13は、その平面図である図2、図2の1−1線に沿った平面で同噴射ユニット13を切断した断面図である図3、及び図3の2−2線に沿った平面で同噴射ユニット13を切断した断面図である図4に示したように、各辺が互いに直交するX,Y,Z軸に平行に延びる直方体形状を有し、順に積層・圧着される複数のジルコニアセラミックスの薄板体(以下、「セラミックシート」と称呼する。)13a〜13eからなる流路形成部13A、並びに、流路形成部13Aの上面(Z軸正方向のX−Y平面に沿った平面)に順に積層・圧着される複数のステンレス鋼(SUS304)の薄板体(以下、「ステンレスシート」と称呼する。)13f〜13kからなる反力付与機構部13B1(反力付与手段)、及びセラミックシート13eの上面(Z軸正方向のX−Y平面に沿った平面)(チャンバーの壁の外面)に固着された複数(ここでは各列9個で、合計18個)の圧電/電歪素子13B2からなる加圧部13B、とから構成されている。
【0022】
流路形成部13Aは、その内部に液体供給通路13−1と、互いに独立した複数(ここでは各列9個で、合計18個)のチャンバー13−2と、各チャンバー13−2と液体供給通路13−1とを連通する複数の液体導入孔13−3と、各チャンバー13−2と噴射ユニット13の外部とを連通させるように各一端が液体噴射空間21に露呈してなる複数の液体吐出用ノズル13−4と、液体供給管12の一端が連結される液体注入口13−5(の下側部)とを備えている。
【0023】
加圧部13Bの反力付与機構部13B1は、その内部に前記液体注入口13−5(の上側部)と、反力供給通路13−6と、互いに独立した複数(ここでは各列9個で、合計18個)の反力供給室13−7と、各反力供給室13−7と反力供給通路13−6とを連通する複数の反力導入孔13−8と、反力開放用通路13−9と、各反力供給室13−7と反力開放用通路13−9とを連通する複数の反力開放用孔13−10と、反力供給用配管16が連結される反力供給口13−11と、反力開放用配管18が連結される反力開放口13−12と、圧電/電歪素子収容室13−13とを備えている。
【0024】
液体供給通路13−1は、セラミックシート13bに形成されるとともに、Z軸方向に延在する円筒形の貫通孔の側壁により形成された空間である液体注入口13−5の最下端(Z軸負方向の端)と連通する部位からY軸正方向及びY軸負方向にそれぞれ延びた後にX軸負方向にそれぞれ延びたX−Y平面に沿う略U字形の切欠き部の側壁面、セラミックシート13aの上面、及びセラミックシート13cの下面により画定された空間であって、液体注入口13−5、燃料噴射用インジェクタ15を介装した液体供給管12、及び加圧ポンプ11を介して液体貯蔵タンク22と連通されていて、燃料噴射用インジェクタ15が開弁されたとき、噴射(噴霧)すべき燃料が加圧ポンプ11により加圧された状態にて供給されるようになっている。
【0025】
複数のチャンバー13−2の各々は、セラミックシート13dに形成されるとともに長軸及び短軸がそれぞれY軸方向及びX軸方向に沿う長円形の切欠き部の側壁面、セラミックシート13cの上面、及びセラミックシート13eの下面により画定された長尺空間である。各チャンバー13−2の一の端部は、液体供給通路13−1の上部にまで延びていて、各チャンバー13−2は、この一の端部にてセラミックシート13cに設けられた直径dを有する中空円筒状の液体導入孔13−3により液体供給通路13−1と連通している。なお、以下においては、前記直径dを単に「導入孔直径d」とも称呼する。また、各チャンバー13−2の他の端部は、前記液体吐出用ノズル13−4の他端に接続されている。以上の構成により、前記チャンバー13−2には、液体供給管12側から液体吐出用ノズル13−4側に向けて燃料が流れるようになっている。
【0026】
複数の液体吐出用ノズル13−4の各々は、セラミックシート13aに設けられた直径がDである中空円筒状の貫通孔であって前記液体噴射空間21に露呈した一端(液体噴射口,液体噴射空間に露呈した開口又は開口部,吐出孔)13−4aと、同液体噴射口13−4aからチャンバー13−2に向かって順次大きさ(直径)が大きくなる各セラミックシート13b,13cに形成された中空円筒状の連通孔13−4b,13−4cとにより形成されている。各液体吐出用ノズル13−4の軸線はZ軸と平行となっている。なお、以下においては、前記直径Dを単に「ノズル直径D」とも称呼する。
【0027】
各チャンバー13−2の形状、及び大きさについて付言すると、各チャンバー13−2は、それぞれの長手方向(Y軸方向)中央部(流路部)において、液体の流れる方向と直交する平面(X−Z平面)にて切断した同流路部の断面の形状が略長方形となっている。また、長尺形状である流路部の長軸L(Y軸に沿った長さ)及び短軸W(X軸に沿った長さ)は、それぞれ3.5mmと0.35mmであり、その高さT(Z軸に沿った長さ)は、0.15mmである。即ち、流路部の断面の形状である長方形において、圧電/電歪素子を備えた一辺(短軸W)の長さに対する、同一辺に直交する辺の長さ(高さT)の比(T/W)は、0.15/0.35=0.43であり、この比(T/W)は0より大きく1より小さいことが望ましい。
【0028】
また、液体吐出用ノズルの端部13−4aの直径Dと、液体導入孔13−3の直径dは、それぞれ0.031mm、0.025mmとした。この場合、前記チャンバー13−2の流路の断面の面積S1(=W×T)は、液体吐出用ノズルの端部13−4aの断面積S2(=π・(D/2))よりも大きく、且つ、液体導入孔13−3の断面積S3(=π・(d/2))よりも大きいことが望ましい。また、液体の微粒子化のためには、断面積S2は断面積S3より大きいことが望ましい。
【0029】
反力供給通路13−6は、ステンレスシート13jに形成されるとともに、Z軸方向に延在する円筒形の貫通孔の側壁により形成された空間である反力供給口13−11の最下端(Z軸負方向の端)と連通する部位からY軸正方向及びY軸負方向にそれぞれ延びた後にX軸正方向にそれぞれ延びたX−Y平面に沿う略U字形の切欠き部の側壁面、ステンレスシート13iの上面、及びステンレスシート13kの下面により画定された空間であって、反力供給口13−11、反力供給用電磁式開閉弁17を介装した反力供給用配管16、液体供給管12、及び加圧ポンプ11を介して液体貯蔵タンク22と連通されていて、反力供給用電磁式開閉弁17が開弁されたとき、加圧ポンプ11の吐出部11bから吐出され加圧された状態となっている(噴射(噴霧)すべき燃料と同圧の)燃料が供給されるようになっている。
【0030】
複数の反力供給室13−7の各々は、ステンレスシート13hに形成されるとともに長軸及び短軸がそれぞれY軸方向及びX軸方向に沿う長円形の切欠き部の側壁面、ステンレスシート13gの上面、及びステンレスシート13iの下面により画定された長尺空間である。各反力供給室13−7の一部は、反力供給通路13−6の下部に存在していて、各反力供給室13−7は、この一部にてステンレスシート13iに設けられた中空円筒状の反力導入孔13−8により反力供給通路13−6と連通している。従って、複数の反力供給室13−7の各々にも、反力供給通路13−6と同様、反力供給用電磁式開閉弁17が開弁されたとき、加圧ポンプ11の吐出部11bから吐出され加圧された状態となっている(噴射(噴霧)すべき燃料と同圧の)燃料が供給されるようになっている。各反力供給室13−7の形状、及び大きさは、それぞれ各チャンバー13−2の形状、及び大きさと同一となっている。
【0031】
反力開放用通路13−9は、反力供給通路13−6と同様、ステンレスシート13jに形成されるとともに、Z軸方向に延在する円筒形の貫通孔の側壁により形成された空間である反力開放口13−12の最下端(Z軸負方向の端)と連通する部位からY軸正方向及びY軸負方向にそれぞれ延びた後にX軸正方向にそれぞれ延びたX−Y平面に沿う略U字形の切欠き部の側壁面、ステンレスシート13iの上面、及びステンレスシート13kの下面により画定された空間である。反力開放用通路13−9は、各反力供給室13−7の他の一部の各々の上部に存在していて、反力開放用通路13−9は、ステンレスシート13iに設けられた中空円筒状の反力開放用孔13−10により各反力供給室13−7の前記他の一部の各々と連通している。
【0032】
また、反力開放用通路13−9は、反力開放口13−12、及び反力開放用電磁式開閉弁19を介装した反力開放用配管18を介して液体貯蔵タンク22と連通されていて、反力開放用電磁式開閉弁19が開弁されたとき、各反力供給室13−7内の液体が液体貯蔵タンク22に戻されるようになっている。
【0033】
圧電/電歪素子収容室13−13は、ステンレスシート13fに形成されるとともにX−Y平面に沿う略長方形の切欠き部の側壁面、セラミックシート13eの上面、及びステンレスシート13gの下面により画定されるとともに密閉された一つの空間であって、その内部には各列9個で合計18個の各圧電/電歪素子13B2が全て収容されている。
【0034】
各圧電/電歪素子13B2は、平面視で(Z軸正方向から見て)各チャンバー13−2及び各反力供給室13−7よりも僅かに小さく、その下面である固着面13B2a(Z軸負方向のX−Y平面に沿った平面)は、同平面視でチャンバー13−2の内側に配設されるようにセラミックシート13eの上面に固着(焼成により接合)されている。また、各圧電/電歪素子13B2の上面である非固着面13B2b(Z軸正方向のX−Y平面に沿った平面)は、平面視で(Z軸正方向から見て)反力供給室13−7の内側に配設されるようにステンレスシート13gの下面に接着固定されている。
【0035】
従って、圧電/電歪素子13B2の固着面13B2aはセラミックシート13eを介してチャンバー13−2内の液圧によるZ軸正方向の力を受けるようになっているとともに、同圧電/電歪素子13B2の非固着面13B2bはステンレスシート13gを介して(間接的に)反力供給室13−7内の液圧によるZ軸負方向の力を反力として受けるようになっている。換言すれば、反力供給室13−7内の液圧によるZ軸負方向の力(固着面13B2aに向けた反力)が間接的に圧電/電歪素子13B2の非固着面13B2bに付与されるようになっている。
【0036】
また、各圧電/電歪素子13B2の上面近傍及び下面近傍には、それぞれ図示しないプラス電極及びマイナス電極が配設されている。この電極間に電気制御装置30の駆動電圧発生手段(回路)によって付与される駆動電圧信号DVに基き周期的に電位差が付与されると、圧電/電歪素子13B2は、同電位差が付与されている間は元の大きさから主としてX軸方向に縮み(Y軸方向及びZ軸方向にも僅かに縮む)、同電位差が付与されていない間は元の大きさに復帰する(従って、X軸方向に伸縮する)ようになっている。これにより、圧電/電歪素子13B2は、セラミックシート13e(及びステンレスシート13g)を周期的にZ軸負方向に変形(振動)させるようになっていて、この結果、チャンバー13−2の容積をΔVだけ変化させるようになっている。
【0037】
以上の構成により、燃料噴射用インジェクタ15から液体注入口13−5を介して液体供給通路13−1に吐出・供給された燃料は、各液体導入孔13−3を介して各チャンバー13−2内に導入されるようになっている。そして、燃料は、各チャンバー13−2内において振動エネルギーが与えられ、液体吐出用ノズル13−4を介して液体噴射口13−4aから微細な(微粒子化された)液滴として吸気管20内に噴射されるようになっている。
【0038】
また、同時に、反力供給用電磁式開閉弁17から反力供給口13−11を介して反力供給通路13−6に供給された燃料は、各反力導入孔13−8を介して各反力供給室13−7内に導入されて、各反力供給室13−7内の液圧によるZ軸負方向の力がステンレスシート13gを介して間接的に各圧電/電歪素子13B2の非固着面13B2bに付与されるようになっている。
【0039】
さらには、各反力供給室13−7内の燃料は、反力開放用電磁式開閉弁19が開弁されたとき、各反力開放用孔13−10、反力開放用通路13−9、反力開放口13−12、反力開放用電磁式開閉弁19を介装した反力開放用配管18を介して液体貯蔵タンク22に戻るようになっている。
【0040】
噴射ユニット13の作製方法は以下のとおりである。まず、上記セラミックシート13a〜13eと、その積層体である流路形成部13Aの形成方法については、下記の方法を採用した。
1;粒径が0.1〜数μmのジルコニア粉末を用いてセラミックグリーンシートを形成する。
2;このセラミックグリーンシートに対し、金型パンチとダイを用いた打ち抜き加工を施し、図3に示したセラミックシート13a〜13eに対応する切欠き部(液体供給通路13−1、チャンバー13−2、液体導入孔13−3、液体吐出用ノズル13−4、液体注入口13−5(図4を参照)に対応する空隙)を形成する。
3;各セラミックグリーンシートを積層、加熱圧着後、1450℃−2hにて焼成、一体化する。
【0041】
上記ステンレスシート13f〜13kと、その積層体である反力付与機構部13B1の形成方法については、下記の方法を採用した。
1;ステンレス鋼(SUS304)を用いて汎用のステンレスシートを形成する。
2;この汎用のステンレスシートに対し、エッチングを施し、図3に示したステンレスシート13f〜13kに対応する切欠き部(液体注入口13−5(図1を参照)、反力供給通路13−6、反力供給室13−7、反力導入孔13−8、反力開放用通路13−9、反力開放用孔13−10、反力供給口13−11(図1を参照)、反力開放口13−12(図1を参照)に対応する空隙)を形成することで、ステンレスシート13f〜13kを形成する。
3;各ステンレスシート13f〜13kを積層した後、拡散接合にて一体化する。
【0042】
そして、上記のように形成された流路形成部13Aにおけるセラミックシート13eのチャンバー部分に相当する個所の上面に、電極に挟持された圧電/電歪素子13B2を形成した後、上記のように形成された反力付与機構部13B1におけるステンレスシート13fの下面全域及び圧電/電歪素子13B2の非固着面13B2b(上面)に接着材を塗布し、流路形成部13Aの最上面(セラミックシート13eの上面)に反力付与機構部13B1の最下面(ステンレスシート13fの下面)を接着固定すると同時に、圧電/電歪素子13B2の非固着面13B2bとステンレスシート13gの下面とを接着固定する。以上のようにして、噴射ユニット13を作製した。
【0043】
再び、図1を参照すると、レギュレター14は、図示しない配管により吸気管20内の圧力が与えられていて、この圧力に基づいて加圧ポンプ11により加圧された燃料の圧力を減圧(又は、調圧)し、同レギュレター14と燃料噴射用インジェクタ15との間の液体供給管12内の燃料の圧力が同吸気管20内の圧力よりも所定(一定)圧力だけ高い圧力(この圧力を「調整圧」と云う。)となるように調整するように構成されている。この結果、燃料噴射用インジェクタ15が所定時間だけ開弁されると、同所定時間に略比例した燃料量の燃料が吸気管20内の圧力に拘らず同吸気管20内に噴射されるようになっている。
【0044】
燃料噴射用インジェクタ15は、従来より電気制御式燃料噴射装置に広く採用されている周知のインジェクタであって、ここでは電磁式開閉弁(電磁式開閉吐出弁)として機能するもので、レギュレター14により調整圧に調整された燃料が導入される図示しない液体導入口と、図示しない液体通路と、その液体通路を開閉する図示しない電磁開閉式ニードル弁(電磁弁)と、図示しない液体吐出口とを備えている。そして、燃料噴射用インジェクタ15は、電磁開閉式ニードル弁が電気制御装置30からの駆動信号INJのハイレベル信号により開弁されたときのみ、調整圧に調整された燃料を液体吐出口から吐出するようになっている。
【0045】
反力供給用電磁式開閉弁17は、電気制御装置30からの駆動信号SVのハイレベル信号により開弁されたときのみ、レギュレター14により調整圧に調整された燃料を噴射ユニット13(反力供給室13−7)に向けて供給するようになっている。また、反力開放用電磁式開閉弁19は、電気制御装置30からの駆動信号RVのハイレベル信号により開弁されたときのみ、反力供給室13−7内の燃料を液体貯蔵タンク22に戻す(開放する)ようになっている。
【0046】
電気制御装置30は、図1に示したように、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ31、エンジンの回転速度を検出するエンジン回転数センサ32、及びアクセル開度を検出するアクセル開度センサ33と接続されていて、これらのセンサからエンジン回転数Nやアクセル開度Accpを入力して内燃機関に必要な燃料量を決定するようになっている。
【0047】
そして、電気制御装置30は、その燃料量に応じた時間だけ燃料噴射用インジェクタ15に駆動信号INJとしてハイレベル信号(開弁信号)を送出するようになっているとともに、同駆動信号INJがハイレベル信号となっているタイミングに応じて、後述するように反力供給用電磁式開閉弁17及び反力開放用電磁式開閉弁19に、それぞれ駆動信号SV及び駆動信号RVを送出するようになっている。
【0048】
また、電気制御装置30は、圧電/電歪素子13B2の図示しない電極間に周波数f(周期T)の駆動電圧信号DVを与える駆動信号発生回路を内蔵している。この場合、駆動周波数fは、チャンバー13−2の構造、液体吐出用ノズル13−4の構造、ノズル直径D、導入孔直径d、圧電/電歪素子13B2のセラミックシート13e(及びステンレスシート13g)の変形を発生させる部分の形状、及び燃料の種類等により決定される噴射ユニット13の共振周波数(固有振動数)と等しい、例えば、50kHz近傍の周波数に設定されている。
【0049】
ここで、駆動信号INJ、駆動信号SV、駆動信号RV、及び駆動電圧信号DVの間の時間的関係について図5を参照して説明する。電気制御装置30は、図5(D)に示すように、駆動電圧信号DVを、図5(A)に示した燃料噴射用インジェクタ15への駆動信号INJの立ち上がり(ローレベル信号からハイレベル信号へと変化する)時点t1と同一の時点t1、又は時点t1の直前の時点t0から圧電/電歪素子13B2に印加し始め、燃料噴射用インジェクタ15への駆動信号INJの立ち下がり(ハイレベル信号からローレベル信号へと変化する)時点t2よりも所定時間だけおくれた時点であって、液体供給通路13−1内の液体の圧力が燃料噴射用インジェクタ15が閉弁しているときの定常的な圧力にまで低下する時点t3まで、駆動電圧信号DVの圧電/電歪素子13B2への印加を継続し、同時点t3にて駆動電圧信号DVの印加を終了するようになっている。
【0050】
また、電気制御装置30は、図5(B)に示すように、駆動信号SVを、図5(A)に示した駆動信号INJの立ち上がり時点t1と同一の時点t1でローレベル信号からハイレベル信号へと変化させ、駆動信号INJの立ち下がり時点t2と同一の時点t2までハイレベル信号に維持し、同時点t2にてハイレベル信号からローレベル信号へと変化させるようになっている。
【0051】
また、電気制御装置30は、図5(C)に示すように、駆動信号RVを、図5(A)に示した駆動信号INJの立ち下がり時点t2と同一の時点t2でローレベル信号からハイレベル信号へと変化させ、上記時点t3までハイレベル信号に維持し、同時点t3にてハイレベル信号からローレベル信号へと変化させるようになっている。
【0052】
次に、上記のように構成した液体噴射装置の作動について説明すると、電気制御装置30はエンジン回転速度N、及びアクセル開度Accp等のエンジン運転状態に基づいて駆動信号INJ(ハイレベル信号の長さ)を決定するとともに、同駆動信号INJを出力するタイミング(図5の時点t1)を決定する。そして、電気制御装置30は、時点t1から所定時間だけ前の時点t0となると、周波数fの駆動電圧信号DVを圧電/電歪素子13B2の電極間に付与し始め、時点t1にて駆動信号INJを燃料噴射用インジェクタ15に付与する。
【0053】
時点t1となると、燃料噴射用インジェクタ15が開弁し、レギュレター14により調整圧に調整された燃料が燃料噴射用インジェクタ15の液体吐出口から噴射ユニット13の液体注入口13−5を介して同噴射ユニット13の液体供給通路13−1内に吐出・供給され始める。この結果、液体供給通路13−1内の燃料の圧力は上昇を開始するとともに、各チャンバー13−2内の燃料の圧力が十分な圧力(調整圧近傍)まで上昇すると、図6に示したように、燃料は各液体噴射口13−4aの端面から吸気管20内の液体噴射空間21に向けて押し出される(噴射される)。このとき、各圧電/電歪素子13B2の作動による振動エネルギーが同チャンバ−13−2内において燃料に加えられているから、同燃料にくびれ部が発生し、同燃料はその先端部において同くびれ部からちぎれるように離脱する。この結果、均一で精細に微粒子化された燃料が所定の噴射速度で吸気管20内に噴射される。
【0054】
同時に、時点t1になると、反力供給用電磁式開閉弁17が開弁し、レギュレター14により調整圧に調整された燃料が反力供給用電磁式開閉弁17から噴射ユニット13の反力供給口13−11を介して同噴射ユニット13の各反力供給通路13−6内に供給され始める。このとき、反力開放用電磁式開閉弁19は閉弁されているので各反力供給通路13−6内の燃料の圧力は上昇を開始するとともに、各反力供給室13−7内の液圧がレギュレター14により調整された調整圧まで直ちに加圧される。
【0055】
これにより、上記調整圧に達した各反力供給室13−7内の液圧によるZ軸負方向の力がステンレスシート13gを介して反力として間接的に各圧電/電歪素子13B2の非固着面13B2bに付与される。一方、このとき、各圧電/電歪素子13B2の固着面13B2aにも、上記調整圧近傍に達した各チャンバー13−2内の液圧によるZ軸正方向の力がセラミックシート13eを介して間接的に付与される。
【0056】
換言すれば、上記反力供給室13−7内の液圧による力におけるZ軸負方向(チャンバー13−2の壁(セラミックシート13e)の変形方向)の成分の大きさが、チャンバー13−2内の液圧による力におけるZ軸正方向(チャンバー13−2の壁の変形方向)の成分の大きさと略同一になる。従って、各圧電/電歪素子13B2に働く上記反力のZ軸方向(チャンバー13−2の壁の変形方向)の成分と各圧電/電歪素子13B2に働く上記各チャンバー13−2内の液圧による力のZ軸方向の成分は、セラミックシート13eのZ軸方向の変形に関する剛性とステンレスシート13gのZ軸方向の変形に関する剛性とが同一であれば、レギュレター14により調整された調整圧に拘わらず、互いに殆ど全てが相殺される。
【0057】
時点t2になると、燃料噴射用インジェクタ15が閉弁して液体供給通路13−1内(及びチャンバー13−2内)の液体の圧力が減少を開始することにより燃料の噴射速度が減少を開始し、一方で、反力供給用電磁式開閉弁17が閉弁するとともに反力開放用電磁式開閉弁19が開弁し、反力供給室13−7への調整圧の燃料の供給が終了するとともに同反力供給室13−7内の燃料の液体貯蔵タンク22への開放が開始され、同反力供給室13−7内の燃料の液圧が直ちに大気圧まで減少する。
【0058】
そして、時点t3になると、液体供給通路13−1内(及びチャンバー13−2内)の液体の圧力が燃料噴射用インジェクタ15が閉弁しているときの定常的な圧力にまで低下して、燃料の噴射が完全に終了する。
【0059】
なお、上記実施形態において、燃料に与える振動の強さは、圧電/電歪素子13B2の上面及び下面に設けられた図示しない電極間に付与される電位差(即ち、駆動電圧信号DVの最高電圧、圧電/電歪13B2に加わる電界の強さ)や、セラミックシート13e(チャンバー13−2の壁)及びステンレスシート13gの厚さ等により変化する。本例においては、圧電/電歪素子13B2の作動によりセラミックシート13e(及びステンレスシート13g)をZ軸方向に変形させ、これにより得られるチャンバー13−2の容積変化量ΔVは、チャンバー13−2の容積Vに関する比V/ΔV(即ち、チャンバー容積/容積変化量)で表すと、同比V/ΔVが1500となるようにした。なお、この比V/ΔVは、2以上で3000以下の値、特に、2以上で1500以下の値であることが好ましい。
【0060】
以上の条件にて噴射されるガソリンの液滴径は30μmで均一となり、その結果、燃費の向上、有害排出ガスの低減が実現できた。
【0061】
以上、説明したように、本発明の各実施形態に係る液体噴射装置によれば、均一に微粒子化された液体(ガソリン)を、エンジンの運転状態(即ち、液体噴射装置の周囲環境)に拘らず、安定して噴射することができた。また、従来のキャブレター(気化器)は、液滴吐出空間である吸気管内の空間の空気流速に応じて燃料流量が決定され、霧化の程度も同空気流速に依存して変化したが、上記各実施形態によれば、同空気流速に拘らず良好な霧化状態を維持した燃料を必要量だけ吐出することができた。更に、本発明による液体噴射装置によれば、従来の燃料噴射量用インジェクタのノズル部にアシストエアを供給することで燃料の霧化を促進する装置のように、アシストエアを供給するためのコンプレッサを必要としないので、装置のコストを廉価なものとすることができた。
【0062】
また、燃料が加圧ポンプ11で加圧され、燃料がその圧力によって吸気管20内の液体噴射空間21に噴射されるから、液体噴射空間21内の圧力(吸気圧)が変動した場合であっても、所望の燃料量の燃料を安定的に噴射することができた。
【0063】
また、燃料には噴射ユニット13のチャンバー13−2の容積変化により振動エネルギーが与えられ、同燃料は微粒子化された後に液体吐出用ノズル13−4aから噴射される。この結果、本液体噴射装置は、極めて精細に微細化された液滴を噴射することができた。更に、噴射ユニット13は、複数のチャンバー13−2と複数の吐出用ノズル13−4を備えているから、仮に燃料中に気泡が発生した場合でも、同気泡が細かく分断され易く、その結果、気泡の存在による噴射量の大きな変動を回避することができた。
【0064】
また、反力供給室13−7内の液圧による力におけるZ軸負方向(チャンバー13−2の壁(セラミックシート13e)の変形方向)の成分の大きさが、チャンバー13−2内の液圧による力におけるZ軸正方向(チャンバー13−2の壁の変形方向)の成分の大きさと略同一になる。従って、各圧電/電歪素子13B2に働く上記反力のZ軸方向(チャンバー13−2の壁の変形方向)の成分と各圧電/電歪素子13B2に働く上記各チャンバー13−2内の液圧による力のZ軸方向の成分は、セラミックシート13eのZ軸方向の変形に関する剛性とステンレスシート13gのZ軸方向の変形に関する剛性とが同一であれば、レギュレター14により調整された調整圧に拘わらず、互いに殆ど全てが略相殺される。
【0065】
従って、セラミックシート13eのZ軸方向の変形に関する剛性(チャンバー13−2内の液圧に対する変形の程度)とステンレスシート13gのZ軸方向の変形に関する剛性(反力供給室13−7内の液圧に対する変形の程度)とが略同一になるように本装置を構成することが好適である。
【0066】
この結果、チャンバー13−2の壁を所定量だけ変形させるとき(チャンバー13−2の容積をΔVだけ変形させるとき)に圧電/電歪素子13B2の伸縮(縮み作動)に要求される力の大きさを、同チャンバー13−2内の液圧に拘わらず、同チャンバー13−2内の液圧が極低圧のときに要求される力の大きさまで安定して低減できる。よって、相当に高圧の液体を噴射する必要がある環境で使用する場合においても液体を安定して噴射することが可能になるとともに、液体噴射装置10の消費電力を小さくすることができた。
【0067】
また、上記液体噴射装置は、駆動信号INJの発生開始よりも駆動電圧信号DVの発生開始を早めるとともに、駆動信号INJの消滅よりも駆動電圧信号DVの消滅を遅めている。この結果、噴射される燃料に振動エネルギーが常に与えられるから、噴射開始時及び終了時においても、確実に燃料を微細化して噴射することができるとともに、駆動電圧信号DVを必要なときにのみ発生させているので、電力消費量を低減することができた。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態の液体噴射装置は内燃機関に適用されていたが、微粒子化された液体原料の液滴で材料を形成する他の機械装置等に適用することもできる。
【0069】
また、上記実施形態の液体噴射装置の噴射ユニット13を形成する流路形成部13Aは、複数のジルコニアセラミックスの薄板体13a〜13eにより構成されているが、例えば、反力付与機構部13B1と同様、複数のステンレス鋼の薄板体により構成してもよい。これによれば、圧電/電歪素子13B2の作動により変形・振動する振動板として機能する各チャンバー13−2の壁の靭性が向上し、その結果、同壁の耐久性が向上する。
【0070】
また、上記実施形態の液体噴射装置は、圧電/電歪素子13B2の非固着面13B2b(上面)とステンレスシート13gの下面とを接着固定しているが、同非固着面13B2bと同ステンレスシート13gの下面とを互いに固定しなくてもよい。この場合、圧電/電歪素子収容室13−13内に非圧縮性流体(流動中に密度が一定として扱える流体)を充填しておくことが好適である。この理由は以下のとおりである。
【0071】
即ち、上記非固着面13B2bとステンレスシート13gの下面とを互いに固定しない状態で本装置を作動し燃料を噴射させると、上記非固着面13B2bの曲率とステンレスシート13gの下面の曲率が互いに相違することにより両面が点接触する場合がある。このとき、圧電/電歪素子収容室13−13内に非圧縮性流体が充填されていないと、反力供給室13−7内の液圧による力が上記非固着面13B2bとステンレスシート13gの下面との接触点のみを介して同非固着面13B2bに伝達されることになり、この結果、反力供給室13−7内の液圧による力が上記非固着面13B2bに適切に伝達されず上記反力が小さくなる恐れがある。
【0072】
これに対し、圧電/電歪素子収容室13−13内に非圧縮性流体が充填されていれば、反力供給室13−7内の液圧に近い液圧が同非圧縮性流体に発生し、この非圧縮性流体による液圧(静水圧)が上記非固着面13B2bの全域に均一に作用するので、反力供給室13−7内の液圧による力が非固着面13B2bに適切に伝達され、非固着面13B2b(上面)とステンレスシート13gの下面とを接着固定した上記実施形態と同等の反力が得られることが期待できる。
【0073】
また、上記実施形態の液体噴射装置において、ステンレスシート13gを省略してもよい。この場合も、上記した非圧縮性流体を充填した場合と同様、反力供給室13−7内の液圧が非固着面13B2bの全域に均一に作用するので、非固着面13B2b(上面)とステンレスシート13gの下面とを接着固定した上記実施形態と同等の反力が得られることが期待できる。
【0074】
また、上記実施形態の液体噴射装置においては、反力供給室13−7内の液圧による力を反力として圧電/電歪素子13B2の非固着面13B2bに付与しているが、同反力を付与するための専用の電気的反力発生装置(例えば、電動モータ等を構成に含んだ装置)等により同非固着面13B2bに反力を付与するように構成してもよい。
【0075】
また、上記実施形態の液体噴射装置は、吸気管20内に燃料を噴射する形式のガソリン内燃機関に適用されていたが、本発明による液体噴射装置を、気筒内に燃料を直接噴射する所謂「直噴式ガソリン内燃機関」に適用することも有効である。即ち、従来のフューエルインジェクタを用いた電気制御式燃料噴射装置により気筒内に直接的に燃料を噴射すると、シリンダーとピストンとの隙間(クレビス)に燃料が溜まることがあり、未燃HC(ハイドロカーボン)量が増大する場合があったのに対し、本発明による液体噴射装置を用いて気筒内に直接的に燃料を噴射すると、燃料が微粒子化された状態で気筒内に噴射されるので、気筒内壁面への燃料付着量が低減でき、あるいはシリンダーとピストンとの隙間に侵入する燃料量を低減できるから、未燃HCの排出量を低減することができる。
【0076】
また、「直噴式ガソリン内燃機関」においては、高圧の圧縮空気が充填された状態にある気筒内に燃料を直接噴射する必要があるので、「直噴式ガソリン内燃機関」に液体噴射装置を適用する場合、同圧縮空気の高圧以上の圧力の液体を噴射する必要がある。しかしながら、上記したように、本発明による液体噴射装置によれば、上記圧縮空気の高圧以上の圧力の液体を噴射することが可能となり、また、この場合に必要な消費電力を小さくすることができる。
【0077】
更に、本発明による液滴噴射装置を、ディーゼルエンジン用の直噴インジェクタとして用いることも有効である。即ち、従来のインジェクタによれば、特にエンジンの低負荷時には燃料圧力が低いことから、微粒子化した燃料を噴射することができないという問題がある。この場合、コモンレール方式の噴射装置を用いれば、エンジン低回転時でもある程度まで燃料圧力を高圧化できるので噴射燃料の微粒子化を促進できるものの、エンジン高回転時に比べれば燃料圧力は低いから、燃料を十分に微粒子できない。これに対し、本発明による液体噴射装置は、エンジンの負荷に拘らず(即ち、エンジンが低負荷時であっても)、圧電/電歪素子13B2の作動により燃料を微粒子化するものであるから、十分に微粒子化された燃料を噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る液体噴射装置の概略を示した図である。
【図2】図1に示した液体噴射装置の噴射ユニットの平面図である。
【図3】図2の1−1線に沿った平面にて噴射ユニットを切断した断面図である。
【図4】図3の2−2線に沿った平面にて噴射ユニットを切断した断面図である。
【図5】駆動信号INJ、駆動信号SV、駆動信号RV、及び駆動電圧信号DVの間の時間的関係を示したタイムチャートである。
【図6】図1に示した液体噴射装置から噴射される液体の状態を示した図である。
【符号の説明】
10…液体噴射装置、11…加圧ポンプ、11a…導入部、11b…吐出部、12…液体供給管、13…噴射ユニット、13A・・・流路形成部、13B・・・加圧部、13B1・・・反力付与機構部、13B2…圧電/電歪素子、13a〜13e…セラミックシート、13f〜13k・・・ステンレスシート、13−1…液体供給通路、13−2…チャンバー、13−3…液体導入孔、13−4…液体吐出用ノズル、13−4a…液体噴射口、13−5…液体注入口、13−6・・・反力供給通路、13−7・・・反力供給室、13−8・・・反力導入孔、13−9・・・反力開放用通路、13−10・・・反力開放用孔、13−11・・・反力供給口、13−12・・・反力開放口、13−13・・・圧電/電歪素子収容室、14・・・レギュレター、15・・・燃料噴射用インジェクタ、17・・・反力供給用電磁式開閉弁、19・・・反力開放用電磁式開閉弁、20…吸気管、21…燃料噴射空間、22…液体貯蔵タンク、30・・・電気制御装置。

Claims (3)

  1. 液体噴射空間に一端が露呈した液体吐出用ノズルと、同液体吐出用ノズルの他端と液体供給管の一端とが連通したチャンバーとを含んでなる流路形成部を備えた噴射ユニットと、
    所定の周波数を有する駆動電圧信号を発生する駆動電圧発生手段と、
    前記液体供給管の他端が接続された吐出部を有するとともに、液体貯蔵タンクと連通した導入部を有し、同導入部から導入した同液体貯蔵タンク内の液体を加圧して同吐出部から吐出することにより、同液体を前記噴射ユニットのチャンバー及び液体吐出用ノズルを介して前記液体噴射空間に噴射する加圧手段と、
    を備えた液体噴射装置であって、
    前記噴射ユニットは、前記チャンバーの壁の外面に固着されるとともに同壁を介して同チャンバー内の液圧による力を受ける固着面を有し同固着面に沿った方向に主として伸縮することにより同チャンバーの壁を変形させて同チャンバーの容積を変化させる圧電/電歪素子と、前記圧電/電歪素子の非固着面に対して前記固着面に向けた反力を付与する反力付与手段とを含む加圧部を備え、前記駆動電圧発生手段からの駆動電圧信号により前記圧電/電歪素子を伸縮させて前記液体吐出用ノズルから噴射される液体を微粒子化するように構成された液体噴射装置。
  2. 請求項1に記載の液体噴射装置において、
    前記反力付与手段は、前記反力における前記チャンバーの壁の変形方向の成分の大きさが、前記固着面が受ける同チャンバー内の液圧による力における同壁の変形方向の成分の大きさと略同一になるように同反力の大きさを調整するように構成された液体噴射装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置において、
    前記反力付与手段は、前記加圧手段の吐出部から吐出される液体が導入される反力供給室を備え、前記反力供給室内の液圧による力を前記反力として前記圧電/電歪素子の非固着面に付与するように構成された液体噴射装置。
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