JP2004052002A - 金属酸化物の還元方法並びにこれに用いる樹脂固形物とその成形装置 - Google Patents

金属酸化物の還元方法並びにこれに用いる樹脂固形物とその成形装置 Download PDF

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Katsumasa Komatsuzaki
小松崎 克正
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MITSUI BUSSAN RAW MATERIALS DEVELOPMENT CORP
Izumi Cosmo Co Ltd
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Abstract

【課題】電気炉製鋼過程で発生する製鋼ダスト等の金属酸化物を低コストで簡単に再利用し得る方法、前記金属酸化物を効率良く還元し得る樹脂固形物、該樹脂固形物を簡単に製造し得る装置を提供する。
【解決手段】水素原子と炭素原子を含む粉状プラスチック5をスクリューコンベヤ1aで混練して半溶融プラスチックにし、これをリボンコンベヤ1bで混練して得た溶融プラスチックに粉状金属酸化物6を略均一に分散して混合させ、これをスクリューコンベア1cで加圧しながら鉄粉末7をその表面層部分に略均一に含有させ、略円柱状の樹脂固形物Bを押出し成形する。この樹脂固形物Bを電気炉中に投入すると、粉状金属酸化物中の酸素と粉状プラスチック中の水素原子,炭素原子が反応し金属酸化物が効率良く還元される。樹脂固形物Bの表面層部分には鉄粉末7が略均一に分散しているので、マグネット搬送機で吸着して容易に取り扱うことができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気炉製鋼過程において発生する製鋼ダスト(集塵ダスト)や圧延スケール、酸化鉄等の金属酸化物を容易に還元することができる還元方法、並びにその還元に用いる樹脂固形物、及びその樹脂固形物の成形装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
製鋼精錬工程において、FeやZnOなどを主成分とした金属酸化物が粉塵状態で生成され、これら粉塵状態の金属酸化物は、所謂集塵ダストとして、製鋼量の1.6%程度が集塵機などに回収されている。
これらの粉塵状の金属酸化物は、日本国内において年間約50万トン発生しており、その処理方法は下記4種に大別されるが、以下に記すような問題を有する。
▲1▼亜鉛精錬メーカーによる金属亜鉛の回収;普通鋼電気炉から発生するものは亜鉛分が高いので、一定濃度以上のものは亜鉛原料としてリサイクルされているが、一定濃度に満たないものは回収費用がかかり、濃度が低いものは回収対象から外れ、リサイクル率は全体の50%程度に留まっている。加えて現状の処理方法では、回収後に残った鉄滓が産業廃棄物となり、埋め立て処分されている。
▲2▼埋め立て処分;鉛、カドミウム等の重金属は、薬品で安定化処理をした後、管理型産業廃棄物として埋め立て処分されているが、近年における処分場の枯渇から処分費用が高騰し、製造コストのアップに繋がっている。
▲3▼電気炉へのリサイクル;コークス、アルミドロス等の還元剤と一緒に電気炉に投入し、酸化鉄を還元したり、ダスト中の亜鉛分の濃縮を図っているが、電力原単位の上昇、溶解時間の延長を招き、さらにスラグ量が増加するなど、製鋼コストの上昇を避けることはできない。
▲4▼セメントの酸化鉄原料としての利用;値段が安いためセメントの酸化鉄原料としての利用が可能であるが、品質が不安定であることに加え、他に品質が安定した安価な原料があるため、利用量はごくわずかである。
このような状況に加えて、電気炉で発生する製鋼ダストはわずかながらもダイオキシンを含有しており、安定化処理はダイオキシンに対しては効果がない。また、亜鉛回収のために工場外へ持ち出し、一般道を利用して精錬メーカーまで輸送する必要があり、このような埋め立て処理や搬送方法は、将来的に環境問題に繋がる可能性がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述したような従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、電気炉製鋼過程において発生する製鋼ダストや圧延スケール等の金属酸化物を、低コストで簡単に再利用することができるようにする方法、前記金属酸化物を効率良く還元することができる樹脂固形物、その樹脂固形物を簡単に製造することができる成形装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願発明者は鋭意研究を重ねた結果、近年、産業廃棄物として大量に処理されている使用済みプラスチックが、電気炉製鋼過程で発生する金属酸化物の還元に必要な水素原子及び炭素原子を含有していることに着目し、これら使用済みプラスチックを段階的に溶融させて得た溶融プラスチックに、前記金属酸化物を混合混練して樹脂固形物を成形し、これを電気炉に投入することで、前記プラスチック中の水素原子及び炭素原子が金属酸化物中の酸素と反応して、効率良く酸化金属を元の金属に還元し得ることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、請求項1記載のように、水素原子及び炭素原子を含むプラスチックを比較的低温(例えば100〜340℃)で加熱混練して半溶融プラスチックにした後、該半溶融プラスチックを比較的高温(例えば130〜360℃)で加熱混練して溶融プラスチックにすると共に該溶融プラスチックに金属酸化物を混合混練し、次いで所定の圧力をかけて所要形状の樹脂固形物を成形し、該樹脂固形物を電気炉中に投入して、前記プラスチック中の水素原子及び炭素原子により前記金属酸化物を還元することを特徴とする金属酸化物の還元方法である。
【0006】
本発明において、前記金属酸化物の還元には、理論上、金属酸化物に対し約7%のプラスチックが必要であることを後述の通り確認済みであるが、樹脂固形物に成形するためのプラスチックの必要量を考えると、プラスチックを10%以上添加し、金属酸化物を90%以下添加することが好ましく、この範囲内において、目的とする金属の必要還元量に応じて、プラスチックと金属酸化物の添加量を任意に調整するものである。
【0007】
本発明に係る樹脂固形物を効率良く成形するには、所定の粒径になるよう粉砕した粉状プラスチックと粉状金属酸化物を、溶融混練成形機を用いて加熱しながら混合混練し、所定形状の樹脂固形物に加圧成形することが好ましい。またこの場合、樹脂固形物を効率良く成形するための粉状プラスチックの好ましい添加量は、成形上50%である。但し、プラスチックの添加量が70%を超えると金属酸化物の添加量が少なくなり、還元効率が悪くなる。
【0008】
また、プラスチックと金属酸化物以外に、石灰、コークスなどの他の成分を、必要に応じて添加しても良い。
【0009】
本発明が対象とする金属酸化物としては、例えば製鋼ダスト(集塵ダスト)、圧延スケール、溶断スケール、酸化鉄などをあげることができるが、特に、電気炉製鋼過程において生成される製鋼ダストの還元に有用である。
【0010】
また、本発明で用いるプラスチックは、水素原子及び炭素原子を持つプラスチックであればどのようなプラスチックでも良いが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリビニルアルコール(PVA)、その他、塩素,フッ素などのハロゲン元素を含むプラスチックを除く各種の使用済みプラスチック(廃棄プラスチック)及びプラスチック原料を用いることができる。
使用済みプラスチックを用いた場合、コスト低減に極めて有用であることは言うまでもない。
【0011】
上記各プラスチックの溶融温度は100〜360℃程度であり、使用するプラスチックの溶融温度に合せて所定の加熱温度を選択し、比較的低温(100〜340℃)で一次加熱と混練を行って半溶融プラスチックとした後、比較的高温(130〜360℃)で二次加熱と混練を行って溶融プラスチックを得、該溶融プラスチック中に粉状金属酸化物を投入して混合する。
このようにして、半溶融状態から溶融状態に至るよう二段階で加熱溶融させた溶融プラスチック中に金属酸化物を混合,混練して得られた樹脂固形物は、プラスチックの溶融が確実になされ、且つその溶融プラスチック中に金属酸化物が均一に分散して混合し、該金属酸化物の周囲をプラスチックが均一に取り囲んでいるので、該樹脂固形物を、電気炉に投入した際、金属酸化物分子中の酸素とプラスチック分子中の水素原子及び炭素原子が速やかに反応し、該金属酸化物を効率良く還元することができるものと推定される。
【0012】
樹脂固形物を成形するにあたり、前記したように、金属酸化物の周囲に、プラスチックが均一に分散して取り囲むよう存在させるには、粉状金属酸化物と粉状プラスチックを用いることが好ましい。また、粉状金属酸化物の粒径は10μm〜5mm程度、粉状プラスチックの粒径は0.1mm〜5mm程度であることが、前記金属酸化物を効率良く還元する上で好ましい。但し、本発明において、粉状金属酸化物の粒径、粉状プラスチックの粒径は前記範囲に限定されるものではない。
【0013】
また、上記金属酸化物には、Cr,MnO,Fe,NiO,CuO,ZnO,SnO,PbO等の溶解温度1600℃以下で還元できる各種の酸化物が含まれ、理論上は、これら金属酸化物が持っている酸素量に合わせた水素原子及び炭素原子を含むプラスチックを用いれば還元可能である。
【0014】
本発明で用いるプラスチック自体は、主成分が水素と炭素であり、該プラスチックを電気炉中に投入しても、溶解中に悪さをする成分を含まないので、スラグ等の発生がない。プラスチックはおおよそ300℃から分解をはじめ、約800℃で分解が終る。その際生成する水素原子、炭素原子が上記金属酸化物を効率良く元の金属に還元する。
【0015】
本発明に係る樹脂固形物を効率良く成形するには、略水平方向へ延びる混合混練コンベヤを内蔵した溶融混練成形機に上記粉状プラスチックを投入し、例えば100〜340℃程度の比較的低温で加熱しながら前記混合混練コンベヤで混練して半溶融プラスチックにした後、該半溶融プラスチックを例えば130〜360℃程度の比較的高温で加熱溶融しながら、上記粉状金属酸化物を投入し前記混合混練コンベヤで混合混練して、溶融プラスチック中に粉状金属酸化物を略均一に分散混合させ、しかる後、所定圧力をかけて所要形状の樹脂固形物を成形することが好ましい。
【0016】
さらに、上記粉状金属酸化物が上記溶融プラスチック中に略均一に分散混合された後に、例えば120〜200℃程度の比較的中温で加熱しながら、磁性をもつ金属粉末を上記溶融混練成形機に投入し混合混練コンベヤで混合混練して、表面に磁性金属粉末含有層を有する樹脂固形物を形成することが好ましい。この場合、溶融プラスチックの表面層部分にのみ磁性金属粉末が混合されて、樹脂固形物の表面に磁性金属粉末含有層が形成されるので、マグネットによるハンドリングが可能になり、電気炉への投入作業がより効率良く行えるようになる。
また、磁性をもつ金属粉末として鉄粉末を用いた場合、鉄の磁力性を生かして上記ハンドリング効果を確実に得ることができる。また、その鉄が酸化されることなく無駄なく鉄として回収できることは、前述したとおりである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面を参照しながら詳述する。
図1中の(i)は本発明に係る樹脂固形物の成形装置である溶融混練成形機Aを簡略して示す縦断面図、(ii)はその溶融混練成形機Aで成形した樹脂固形物Bを拡大して示す縦断面図である。
【0018】
溶融混練成形機Aは、略水平方向へ延びる混合混練コンベヤ1を筒状ケーシング2内に、不図示の駆動源の動力により回転駆動するよう内蔵し、その混合混練コンベヤ1と筒状ケーシング2とは、混練部a、混合混練部b、成形部cに三分割すると共に、筒状ケーシング2の全長にわたって不図示の加熱ヒータを内設し、且つ筒状ケーシング2の出口側に切断部dを配設してなる。
【0019】
混練部aは、第一ケーシング2a内にスクリューコンベヤ1aを内蔵すると共に、第一ケーシング2aの上面に開設した投入口2a’にホッパー4aを接続したもので、投入口2a’から投入される粉状プラスチック5を前記加熱ヒータにより、100〜340℃程度の比較的低温で加熱しながらスクリューコンベヤ1aで混練して半溶融プラスチックにし、且つその半溶融プラスチックを混合混練部bに供給するよう構成されている。
【0020】
混合混練部bは、第二ケーシング2b内にリボンコンベヤ1bを内蔵すると共に、第二ケーシング2bの上面に開設した投入口2b’にホッパー4bを接続したもので、混練部aから供給される半溶融プラスチックを前記加熱ヒータにより、130〜360℃程度の比較的高温で加熱しながらリボンコンベヤ1bで混練して溶融状にし、且つ投入口2b’から投入される粉状金属酸化物6をその溶融プラスチック中に略均一に分散して混合させると共に、その溶融プラスチックを成形部cに供給するよう構成されている。
【0021】
成形部cは、第三ケーシング2c内にスクリューコンベヤ1cを内蔵すると共に、第三ケーシング2c内にて前記溶融プラスチックを前記加熱ヒータにより、120〜200℃程度の比較的中温で加熱しながら、スクリューコンベヤ1cにより所定の圧力をかけて筒状ケーシング2の出口8から略円柱形状の樹脂固形物が押し出されるよう、スクリューコンベヤ1cの螺旋ピッチを前記排出方向へ向けて漸次狭くなるようにし、且つ第三ケーシング2cの上面に開設した投入口2c’にホッパー4cを接続したものである。そうして、混合混練部bから供給される溶融プラスチックをスクリューコンベヤ1cで混練しながら、投入口2c’から投入される磁性をもつ金属粉末7をその溶融プラスチックの表面層部分に略均一に分散して混合させると共に、該溶融プラスチックを所定の押し出し圧力をかけながら加圧成形して、略円柱形状の樹脂固形物を切断部dに供給するよう構成されている。
【0022】
切断部dは、成形部cから押し出される略円柱形状の樹脂固形物を所定長さの樹脂固形物Bに切断する切断機からなっている。
【0023】
上記スクリューコンベヤ1aとリボンコンベヤ1b、リボンコンベヤ1bとスクリューコンベヤ1cは、夫々ボルト締め等の締結手段で着脱自在に連結されて混合混練コンベヤ1を形成し、また上記第一ケーシング2aと第二ケーシング2b、第二ケーシング2bと第三ケーシング2cは、夫々ボルト締め等の締結手段で着脱自在に連結されて筒状ケーシング2を形成しており、これにより、任意のコンベヤ1a,1b,1cを交換することができるようになっている。
すなわち、長期の使用により消耗したコンベヤ1a,1b,1c、特に成形圧(押し出し圧)がかかるため消耗が激しい成形部cのスクリューコンベヤ1cを適時に交換し得るようになっている。
【0024】
投入口2a’から投入される粉状プラスチック5は、水素原子及び炭素原子を持つプラスチック、例えばポリプロピレンなどの使用済みプラスチックを粉砕機により粉砕して粉状にしたもので、本例では粒径が約5mmの粉状プラスチックを用いる。
【0025】
投入口2b’から投入される粉状金属酸化物6は、電気炉製鋼過程において生成される、例えば粒径が10μm以下である製鋼ダストを用いる。
【0026】
投入口2c’から投入される金属粉末7は、磁性をもつ金属粉末(マグネットによる吸着が可能な金属の粉末)であれば良いが、本例では粒径が5mm以下の鉄の粉末を用いる。
【0027】
以上の構成になる本例の溶融混練成形機Aによる樹脂固形物Bの製造について説明すれば、まず、ホッパー4aに投入された粉状プラスチック5が投入口2a’から混練部aに供給され、混練部aにて、その粉状プラスチック5を、比較的低温で一次加熱しながらスクリューコンベヤ1aで混練して半溶融プラスチックにする。次いで、ホッパー4bに投入された粉状金属酸化物6が投入口2b’から混合混練部bに供給され、混合混練部bでは、混練部aから供給される半溶融プラスチックを、比較的高温で二次加熱しながらリボンコンベヤ1bで混練して溶融プラスチックにし、且つその溶融プラスチック中に前記粉状金属酸化物6を略均一に分散して混合させる。さらに、ホッパー4cに投入されたFe粉末7が投入口2c’から成形部cに供給され、成形部cでは、混合混練部bから供給される溶融プラスチックを比較的中温で三次加熱すると共にスクリューコンベア1cで加圧しながら混練し、且つその溶融プラスチックの表面層部分に鉄粉末7を略均一に含有させる。さらに、成形部cから押し出される略円柱状に成形された樹脂固形物を、切断部dにて、形状、寸法等を自由に選択して、所要形状・所要寸法に切断して樹脂固形物Bを得る。
【0028】
このようにして成形された樹脂固形物Bは、粉状金属酸化物6の周囲に、プラスチック5が均一に分散されて取り囲むように存在し、該プラスチック中の水素原子及び炭素原子が、樹脂固形物Bを電気炉中で溶解させた際、金属酸化物の分子中の酸素と速やかに反応し該酸化物を効率良く還元することができる。
また、樹脂固形物Bの表面層部分には、鉄粉末7が略均一に分散しているので、該樹脂固形物Bをマグネット搬送機で吸着して容易に取り扱うことが可能になる。
【0029】
尚、上述した実施形態では、溶融混練成形機Aの末端部を成形部cとし、該成形部cにて溶融プラスチックに所定の押し出し圧力をかけて略円柱状の樹脂固形物を押し出し、加圧成形するようにしたが、この場合、成形部cのスクリューコンベヤ1cの消耗が激しくなる。
よって、この成形部cに代えて、スクリューコンベヤ1cの螺旋ピッチを均等にするなどして押し出し圧力を小さくし、溶融プラスチックの表面層部分に鉄粉末7を略均一に含有させる混合のみを行う混合部を混合混練部bの二次側に連結しても良い。またこの場合、前記成形部cに代えた混合部から供給される溶融プラスチックに所定の圧力をかけて所要形状の固形物に加圧成形するプレス成形機からなる成形部を、上述の切断部dに代えて筒状ケーシング2の出口8に配設する。
【0030】
また、本発明による金属酸化物の還元効果を得るためには、樹脂固形物の成形に際し、上述した磁性をもつ金属粉末7は必ずしも添加する必要はない。
また、還元しようとする金属酸化物の特性の違いに対応したり、樹脂固形物Bに製鋼用助剤としての各種機能等を付与するために、磁性をもつ金属粉末7に代えて、所望の還元特性や助剤機能を発揮する他の金属粉末やコークス、石灰などを添加することもできる。
またその場合、第一〜第三ケーシング2a〜2cに内蔵するコンベヤは、前述のスクリューコンベヤやリボンコンベヤ1a〜1cに限定されるものではなく、添加する材料の性質や硬度、粒径などに応じて、適宜なコンベヤを任意に選択して用いることができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例を参照して、本発明をさらに具体的に説明する。
まず、電気炉製鋼過程で発生する製鋼ダスト中に含まれる成分とその含有量(%)を分析すると共に、その成分中の金属酸化物における還元が可能なもの(可)と困難なもの(否)を判別し、且つ、還元可能な金属酸化物において還元される酸素の量を算出した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
Figure 2004052002
【0033】
表中記載のように、MgO,Al,TiO等の金属酸化物は、一般の方法では還元が困難なため還元否とし、Cr,MnO,Fe,NiO,CuO,ZnO,SnO,PbO等の金属酸化物は、溶解温度1600℃程度で容易に還元するので還元可と判別した。
【0034】
これら還元可の各金属酸化物において、還元される金属の原子量、すなわち、Cr:52.01,Mn:54.94,Fe:55.85,Ni:58.71,Cu:63.54,Zn:65.38,Sn:118.70,Pb:207.21,O:16に基づき、各金属酸化物1kg中の酸素の量を算出し、その算出値に基づき製鋼ダスト1kg中の各金属酸化物における各金属元素と化合している酸素の量(還元される酸素量)を算出した。
【0035】
例えば、Cr 1kg中の酸素の量は、
(16×3)/(52.01×2+16×3)=0.315kg
であり、従って、製鋼ダスト1kg中のCrと化合している酸素の量は、
0.67/100×0.3157=0.002116kg(約0.212%)
である。
【0036】
また、MnO 1kg中の酸素の量は、
16/(54.94+16)=0.2255kg
であり、従って、製鋼ダスト1kg中のMnと化合している酸素の量は、
2.1/100×0.2255=0.004736kg(約0.474%)
である。
【0037】
同様にして、Fe,NiO,CuO,ZnO,SnO,PbO等の1kg中の酸素の量と、これに基づく製鋼ダスト1kg中のFe,Ni,Cu,Zn,Sn,Pbと化合している酸素の量を算出し、さらにこれら算出値を加算して、製鋼ダスト1kg中に含まれるCr,MnO,Fe,NiO,CuO,ZnO,SnO,PbO等の金属酸化物と化合している酸素量の合計:15.511%=0.15511を算出した。
【0038】
次いで、上記金属酸化物の還元に必要なプラスチックの量を、ポリプロピレン(PP)を用いた場合について、以下の化学式に基づき算出した。
反応式
6nO2−+〔CH−CH(CH)〕=3nCO+3nH
反応する重量比酸素
酸素:PP=96n:42n=1:0.438
従って、酸素1kgを還元するために必要とするPPの量は0.438kgであり、製鋼ダスト1kgを還元するために必要な理論上のPP量は、
0.15511×0.438=0.0679kg
すなわち、約68g(約7%)であるとの結論を得た。
【0039】
このようにして、電気炉製鋼過程において生成される製鋼ダスト等の金属酸化物の還元には、理論上、金属酸化物に対し約7%のプラスチックが必要であることを確認した。
さらに、上記した溶融混練成形機Aにより、粉状プラスチックと粉状金属酸化物の配合比率を代えた成形テストを繰り返し、粉状プラスッチックの添加量が10%未満(粉状金属酸化物が90%を超える)であると樹脂固形物への成形が困難であるとの知見を得、粉状プラスチックを10%以上添加し、粉状金属酸化物を90%以下添加することが好ましいことを確認すると共に、樹脂固形物を効率良く成形するには粉状プラスチックの添加量が50〜70%程度であることが好ましいことを確認した。
【0040】
次に、上記した溶融混練成形機Aを用いて、使用済みポリプロピレンを粒径約5mmに粉砕した粉状プラスチックと、粉状金属酸化物としての製鋼ダスト(粒径約10μm)と、それ以外の添加物として石灰を添加してこれらを混練し、配合成分、配合割合の異なる樹脂固形物(試料No.1〜14)を得た。各試料における添加成分とその割合を表2に示す。
【0041】
【表2】
Figure 2004052002
【0042】
これら各試料について、溶融混練成形機Aによる樹脂固形物への成形性能試験を行った。粉状プラスチックの配合割合が10%以上である場合(試料No.2〜6)は、スクリューコンベヤ,リボンコンベヤ1a〜1cに対する負担が軽減され、短時間での成形が可能であると共に、装置に係る負担が少なくて済むので、成形性能良しと判定した。粉状プラスチックの配合割合が50%以上である場合(試料No.7〜12)は、前記効果が顕著であるため、成形性能良好と判定した。
【0043】
また、これら各試料を、出力50kwの高周波誘導加熱装置に投入して金属還元性能試験を行った。粉状プラスチックの配合割合が10%以上である場合(試料No.2〜12)は、所定量の金属の還元がなされていることが確認できたので、還元性能良しと判定した。
【0044】
一方、粉状プラスチックの配合割合が10%未満である場合(試料No.1)は、スクリューコンベヤ,リボンコンベヤ1a〜1cに対する負担が大きく、成形に時間がかかると共に、装置に係る負担が大きいので、成形性能悪いと判定した。
また、粉状プラスチックの配合割合が10%以上であっても、最初から溶融プラスチックとしたものに粉状金属酸化物を混合させた場合(試料No.13,14)は、粉状金属酸化物の混合が均一になされないので成形性悪いと判定すると共に、この試料を、出力50kwの高周波誘導加熱装置に投入して金属還元性能試験を行った場合、得られた還元金属の量が試料No.6,7よりも少なかったので、還元性能がやや落ちると判定した。
【0045】
また、上記各試料について鉄粉末を添加して得た樹脂固形物に対し、マグネット搬送機による吸着を試みたところ、ハンドリング作業を良好に行えることが確認できた。
【0046】
【発明の効果】
本発明は以上説明したように構成したので、以下のような効果を奏する。
(請求項1、5)
プラスチックを二段階で溶融した後にその溶融プラスチックに金属酸化物を混合混練して樹脂固形物を成形し、この樹脂固形物を電気炉中に投入することで、前記金属酸化物を確実に還元することができる。従って、再利用が難しく最終処理にコストがかかっていた電気炉製鋼過程等で生成される金属酸化物を、低コストで効率良く還元し、再利用することができる。
【0047】
(請求項2)
電気炉製鋼過程で生成される粉状金属酸化物の還元材料として使用済みプラスチックを用いたので、従来廃棄処理されていた金属酸化物と廃プラスチックを有効に活用して、極めて低コストで効率良く還元効果を得ることができる。また、粉状プラスチックを二段階で溶融した後に粉状金属酸化物を混合混練して得られた樹脂固形物は、粉状金属酸化物の周囲に、プラスチックが均一に取り囲むように存在し、そのプラスチック中の水素原子及び炭素原子が、樹脂固形物を電気炉中に投入した際、金属酸化物の分子中の酸素と速やかに反応し該金属酸化物を極めて効率良く確実に還元することができる。
【0048】
(請求項3、6、7)
溶融混練成形機を用いることで、請求項2の効果を得られる樹脂固形物を低コストで簡単に成形することができる。また、プラスチックを二段階で溶融することで、混練成形機による溶融時間、混合混練コンベヤの長さを短縮することができ、装置コスト、製造コストの低減を図ることができる。
加えて、請求項6では、長期の使用により消耗したコンベヤ、特に成形圧(押し出し圧)がかかるため消耗が激しい第二スクリューコンベヤを適時に交換することができる。また請求項7では、各コンベヤにかかる押し出し圧が低減されるので、コンベヤの消耗を少なくすることができる。
【0049】
(請求項4)
溶融プラスチックを比較的中温で加熱しながら磁性金属粉末を混合混練することで、表面に磁性金属粉末含有層を有する樹脂固形物が確実に得られるので、マグネット搬送機によるハンドリングが可能になり、溶解炉や熱炉等への投入作業などを効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(i)は本発明に係る金属酸化物の還元に用いる樹脂固形物の成形装置の簡略断面図、(ii)はその成形装置で成形した樹脂固形物の断面図である。
【符号の説明】
A:溶融混練成形機
a:混練部
b:混合混練部
c:成形部
1:混合混練コンベヤ
1a:スクリューコンベヤ
1b:リボンコンベヤ
1c:スクリューコンベヤ(第二スクリューコンベヤ)
2:筒状ケーシング
2a’,2b’,2c’:投入口
5:粉状プラスチック
6:粉状金属酸化物
7:鉄粉末(磁性をもつ金属粉末)
B:樹脂固形物

Claims (7)

  1. 水素原子及び炭素原子を含むプラスチックを比較的低温で加熱混練して半溶融プラスチックにした後、該半溶融プラスチックを比較的高温で加熱混練して溶融プラスチックにすると共に該溶融プラスチックに金属酸化物を混合混練し、次いで所定の圧力をかけて所要形状の樹脂固形物を成形し、該樹脂固形物を電気炉中に投入して、前記プラスチック中の水素原子及び炭素原子により前記金属酸化物を還元することを特徴とする金属酸化物の還元方法。
  2. 上記プラスチックが、使用済みプラスチックを粉砕して得た粉状プラスチックであり、上記金属酸化物が電気炉製鋼過程で発生する製鋼ダスト等の粉状金属酸化物であり、前記粉状プラスチックの添加量が10%以上、前記粉状金属酸化物の添加量が90%以下である請求項1記載の金属酸化物の還元方法。
  3. 上記粉状プラスチックと上記粉状金属酸化物とを、略水平方向へ延びる混合混練コンベヤを内蔵した溶融混練成形機に投入して上記樹脂固形物を成形するものであって、前記溶融混練成形機に上記粉状プラスチックを投入し、比較的低温で加熱しながら前記混合混練コンベヤで混練して半溶融プラスチックにした後、該半溶融プラスチックを比較的高温で加熱しながら上記粉状金属酸化物を投入し前記混合混練コンベヤで混合混練して、溶融プラスチック中に前記粉状金属酸化物を略均一に分散混合させ、しかる後、所定圧力をかけて所要形状の樹脂固形物を成形することを特徴とする請求項2記載の金属酸化物の還元方法。
  4. 上記粉状金属酸化物が上記溶融プラスチック中に略均一に分散混合された後、比較的中温で加熱しながら、磁性をもつ金属粉末を投入し前記混合混練コンベヤで混合混練して、表面に磁性金属粉末含有層を有する樹脂固形物を成形することを特徴とする請求項3記載の金属酸化物の還元方法。
  5. 電気炉製鋼過程で発生する粉状金属酸化物と、水素原子及び炭素原子を含む粉状プラスチックとを、所定温度で加熱しながら混合混練した後、所定の圧力をかけて所要形状の固形物に成形してなる金属酸化物の還元に用いる樹脂固形物。
  6. 略水平方向へ延びる混合混練コンベヤを内蔵した溶融混練成形機からなる成形装置であって、
    第一の投入口から投入される粉状プラスチックを、比較的低温で加熱しながらスクリューコンベヤで混練して半溶融プラスチックにする混練部と、
    前記半溶融プラスチックを、比較的高温で加熱しながらリボンコンベヤで混練して溶融プラスチックにすると共に、第二の投入口から投入される粉状金属酸化物を該溶融プラスチック中に略均一に分散して混合させる混合混練部と、
    前記溶融プラスチックを比較的中温で加熱しながら第二のスクリューコンベヤで混練すると共に、第三の投入口から投入される磁性をもつ金属粉末を前記溶融プラスチックの表面層部分に混合させ、且つ所要形状の固形物に加圧成形する成形部とを有し、
    前記スクリューコンベヤ、リボンコンベヤ、第二スクリューコンベヤを順次着脱自在に連結して、任意のコンベヤを交換自在に構成してなる請求項5記載の樹脂固形物を成形する成形装置。
  7. 略水平方向へ延びる混合混練コンベヤを内蔵した溶融混練成形機からなる成形装置であって、
    第一の投入口から投入される粉状プラスチックを、比較的低温で加熱しながらスクリューコンベヤで混練して半溶融プラスチックにする混練部と、
    前記半溶融プラスチックを、比較的高温で加熱しながらリボンコンベヤで混練して溶融プラスチックにすると共に、第二の投入口から投入される粉状金属酸化物を該溶融プラスチック中に略均一に分散して混合させる混合混練部と、
    前記溶融プラスチックを比較的中温で加熱しながら第二のスクリューコンベヤで混練すると共に、第三の投入口から投入される磁性をもつ金属粉末を前記溶融プラスチックの表面層部分に混合させる混合部と、
    前記混合部から供給される溶融プラスチックに所定の圧力をかけて所要形状の固形物に加圧成形する成形部とを有する、請求項5記載の樹脂固形物を成形する成形装置。
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