JP2004051762A - 作物への重金属吸収抑制方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アパタイト含有物質、特に、ハイドロキシアパタイトを、さらに、骨灰であるハイドロキシアパタイトを、そして、ブレーン比表面積が2,000cm2/g以上であるアパタイト含有物質を土壌に添加する、作物への重金属吸収抑制方法、該作物への重金属吸収抑制方法により処理された土壌を用いた農耕方法、及び該農耕方法により栽培された作物を構成とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カドミウム、水銀、及び鉛等の重金属で汚染された土壌から、環境へ二次的に重金属汚染が進行するのを軽減し、かつ、作物への重金属の吸収を低減する方法に関するものである。
本発明の方法では、汚染土壌を固めることなく改良できることから、改良土を用いて作物を栽培することが可能である。
さらに、栽培された作物中には有害重金属が含有することがなく、改良土の利用にも配慮した汚染土壌の改良工法である。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来、カドミウム、水銀、及び鉛等の重金属、特に可溶性の重金属を含有する土壌の無害化処理方法として、この土壌を、セメントなどの水硬性物質と混合し固形化する方法、汚染土壌に電極を埋め込み通電分離する方法、酸又は陽イオン交換溶液である塩溶液で抽出分離する方法、並びに、硫化物や硫酸鉄等の重金属不溶化剤を加え混合する方法等によって、無害化し、有害物は除去する方法が提案されている(特開昭48−083114号公報、特開平11−033531号公報、特開平11−019633号公報、特開平12−325936号公報、特開平12−157964号公報、特開平11−207314号公報、及び特開平11−010139号公報)。
【0003】
このうち、セメントなどの水硬性物質と混合し固形化する方法は、環境への二次的な重金属汚染の影響をかなりの程度抑えることが可能である。
しかしながら、汚染された土壌をその場所で固形化処理する場合、農地として土壌を再利用できない。このため、汚染された土壌を他の場所に移動して処理することが行われており、その土壌量だけ廃棄物が生じ、その処分地を確保しなければならない他、処理後の土地を周囲と同じ水準に保つには新たな客土が必要となり、処理費用が高価となるという課題があった。
【0004】
汚染土壌に電極を埋め込み通電分離する方法は、処理後の土壌は再利用が可能で、その場所での処理ができるという利点を持つが、重金属の通電分離という処理方法の特性上、処理に長時間を要し、それに伴い多大な電力コストがかかるという課題があった。
【0005】
酸又は陽イオン交換溶液である塩溶液で抽出分離する方法は、その場所での処理は困難であり、また、処理する土壌を充分に洗浄抽出できる程度に高濃度で、大量の酸又は塩溶液と混合されることから、処理後の土壌の利用価値はほとんどなくなってしまう。また、多量に排出される洗浄液中の重金属を改めて処理する必要があり、手間がかかるなどの課題があった。
【0006】
硫化物や硫酸鉄等の重金属不溶化剤を加えて混合する方法は、他の処理法に比較し、その場所で処理でき、重金属不溶化剤を汚染土壌と混合するだけというシンプルな方法であるため処理費用は安価であり、広範囲の汚染にも対応できるという利点を持っているが、土壌に対する影響の大きい薬品を比較的多量に(土壌1立方メートルあたり最低1kg、多くの場合10kg以上)用いるため、農耕地又は草地としての転用が困難であり、適正な添加量を選択しないと効果が安定しないという課題があった。
【0007】
一方、アパタイト類が重金属のイオン交換特性に優れることが知られている(「ハイドロキシアパタイトの陽イオン交換特性」、石膏と石灰、1986年、No204、p314−320)。
しかしながら、従来のハイドロキシアパタイトは非常に高価であり、農耕地又は草地などの改良に使用するには多額の費用がかかるという課題があった。
【0008】
また、畜産分野では食肉用として加工した後の解体廃棄物の処理が問題となっている。特に、その大部分を占める骨は、焼却に多額の費用がかかるうえ、焼却後の灰には有効な利用先もなく、その大半が埋め立て処分されているのが現状である。
【0009】
本発明者は、土壌への影響が小さいアパタイトを利用することにより、土壌中のカドミウム、水銀、及び鉛等の作物への吸収が抑制されることを知見して本発明を完成するにいたった。
【0010】
本発明の目的は、カドミウム、水銀、及び鉛等の重金属で汚染された土壌で栽培される作物の重金属吸収を抑制する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、アパタイト含有物質を土壌に添加する作物への重金属吸収抑制方法であり、アパタイト含有物質がハイドロキシアパタイトである該重金属吸収抑制方法であり、ハイドロキシアパタイトが骨灰である該重金属吸収抑制方法であり、アパタイト含有物質のブレーン比表面積が2,000cm2/g以上である該重金属吸収抑制方法であり、該作物への重金属吸収抑制方法により処理された土壌を用いた農耕方法であり、該農耕方法により栽培された作物である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明で使用するアパタイト含有物質は特に限定されるものではなく、天然に存在するものでも使用可能であり、合成したものでも使用可能である。
アパタイト含有物質の中でも特に好ましいのがハイドロキシアパタイトである。
ハイドロキシアパタイトには水酸型と言われるCa10(PO4)6(OH)2や、フッ素型と言われるCa10(PO4)6(F)2、さらには塩素型と言われるCa10(PO4)6(Cl)2などがあり、本発明においてはいづれも使用可能である。
ハイドロキシアパタイトとして天然に存在するものとしてはリン灰石等が挙げられる。
また、合成品の製法は特に限定されるものではなく、乾式法でも、湿式法でも、水熱法でも、溶融法でも製造することが可能である。
また、食肉用の家畜等の残渣として排出される骨等を熱処理して得たものは、一般に骨灰といい、他の製造方法に比べて非常に安価でしかも純度の高いハイドロキシアパタイトを得ることが可能であり、作物への重金属吸収抑制効果も優れるので好ましい。
アパタイト含有物質のブレーン比表面積は特に限定されるものではないが、2,000cm2/g以上が好ましく、4,000cm2/g以上がより好ましい。2,000cm2/g未満では作物への重金属の吸収を抑制する効果が低下する場合がある。
【0014】
土壌へのアパタイト含有物質の添加方法は特に限定されるものではなく、例えば、ドラム式混合機内で掘削した土壌と混合する、固形物である場合にはスラリー状にして、液状の場合はそのまま土中に注入するなど、従来より用いられている方法を使うことが可能である。
また、簡易的なその場所での処理の実施、たとえば、アパタイト含有物質を土壌に散布し、そこをトラクターなどで耕耘するなどの処理をすることも可能である。
【0015】
アパタイト含有物質の添加量は、重金属汚染土壌の処理を目的とする場合特に制限されるものではないが、目安としては、アパタイトとしての添加量が土壌1立方メートル当たり1.2kg程度が好ましい。
【0016】
重金属は特に限定されるものではないが、例えば、カドミウム、水銀、及び鉛等が挙げられるが、特に可溶性重金属に対して有効である。
【0017】
土壌としては、土質や用途等は特に限定されるものではない。例えば、すでに農耕地として利用されている場合においても、本発明の方法を施すことにより、重金属の含有量の少ない作物を栽培することが可能となる。
【0018】
作物としては特に限定されるものではなく、水稲、畑作物、及び牧草等、いずれに対しても用いることが可能である。
【0019】
【実施例】
以下、実施例、比較例を挙げてさらに具体的に本発明を説明する。
【0020】
実験例1
内径20cm、高さ60cmの円筒に土壌を充填し、そのうち表層の10cmに塩化カドミウムをカドミウムとして50mgと、表1に示すアパタイトとを混和し、土壌水分量を最大容水量の60%に調整し、20℃の恒温室に静置した。その上から、水を1週間に3リットルの割合で滴下させ、試験開始から2か月経過時の、底面から浸出した水中のカドミウム濃度を測定した。
【0021】
<使用材料>
アパタイト含有物質a:リン酸ハイドロキシアパタイト、関東化学社製、試薬1級、ブレーン比表面積6,000cm2/g
アパタイト含有物質b:リン酸ハイドロキシアパタイト、骨灰、ブレーン比表面積1,000cm2/g
アパタイト含有物質c:リン酸ハイドロキシアパタイト、骨灰、ブレーン比表面積2,000cm2/g
アパタイト含有物質d:リン酸ハイドロキシアパタイト、骨灰、ブレーン比表面積4,000cm2/g
アパタイト含有物質e:リン酸ハイドロキシアパタイト、骨灰、ブレーン比表面積6,000cm2/g
【0022】
<測定方法>
カドミウム溶出量:土壌底面から浸出した水を5Aのろ紙を用いてろ過し、ろ液をICP発光分光分析法で測定した。
【0023】
【表1】
【0024】
表1から明らかなように、アパタイト含有物質を添加した実施例は、添加しなかった比較例よりもカドミウムの溶出量が少なかった。
また、アパタイト含有物質の粉末度が高まるにつれてカドミウム溶出量が減少した。さらに、アパタイト含有物質の添加量が多い方がよりカドミウムの溶出量が少なかった。
【0025】
実験例2
プランターに土壌を充填し、塩化カドミウムをカドミウムとして50mg、表2に示す量のアパタイト含有物質dを混和し、土壌水分量を最大容水量の60%に調整し、こまつな種子を4つ播種した。
草丈22cm以上になるまで生育させ、作物1kg当たりのカドミウム吸収量を測定した。結果を表2に併記する。
【0026】
<測定方法>
カドミウム吸収量:栽培されたこまつな200gと純水1,000mlを、ジューサーを用いて液状にした。この液を5Aのろ紙を用いてろ過し、ろ液をICP発光分光分析法で測定した。
【0027】
【表2】
【0028】
表2から明らかなように、アパタイト含有物質を添加した実施例は、添加しなかった比較例よりもカドミウムの吸収量が少なかった。
また、アパタイト含有物質dの添加量が多い実験No.2− 2が、実験No.2− 1に比べより吸収量が少なかった。
なお、実施例、比較例のいずれにも、生育障害は見られなかった。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、土壌中のカドミウム、水銀、及び鉛等の可溶性重金属の溶出や、作物への重金属の吸収をアパタイト含有物質を添加することにより、土壌への影響を最小限に保ったまま抑制することができる。
本発明の方法では、汚染土壌を固めることなく改良できることから、改良土を用いて作物を栽培することが可能である。
さらに、栽培された作物中には有害重金属が含有することがなく、改良土の利用にも配慮して汚染土壌を改良することが可能である。
Claims (6)
- アパタイト含有物質を土壌に添加することを特徴とする作物への重金属吸収抑制方法。
- アパタイト含有物質がハイドロキシアパタイトであることを特徴とする請求項1に記載の作物への重金属吸収抑制方法。
- ハイドロキシアパタイトが骨灰であることを特徴とする請求項2に記載の作物への重金属吸収抑制方法。
- アパタイト含有物質のブレーン比表面積が2,000cm2/g以上であることを特徴とする請求項1〜3のうちの一項に記載の作物への重金属吸収抑制方法。
- 請求項1〜4のうちの一項に記載の作物への重金属吸収抑制方法により処理された土壌を用いた農耕方法。
- 請求項5に記載の農耕方法により栽培された作物。
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