JP2004051574A - ショ糖脂肪酸エステルと水溶性高分子を含有する水中油型ゲル組成物 - Google Patents

ショ糖脂肪酸エステルと水溶性高分子を含有する水中油型ゲル組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な安定性を示し、製造も容易であり、化粧料に用いて好適な透明ないしは半透明な水中油型ゲル組成物を提供する。また、かかるゲル組成物を用いた化粧料及び皮膚外用剤も提供する。
【解決手段】脂肪酸の炭素数が14以下でHLB値が10以上のショ糖脂肪酸エステルと多価アルコールと水溶性高分子とを含有せしめて透明ないしは半透明の水中油型ゲル組成物とする。好適なショ糖脂肪酸エステルはショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル又はその混合物である。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般には化粧料等に使用できる水中油型のゲル組成物に係り、より詳細にはメーク落とし等に用いて好適な、透明ないしは半透明の水中油型ゲル組成物に関する。また、本発明は、かかるゲル組成物を用いた化粧料又は皮膚外用剤をも対象とする。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
現在、メーク落としとして広く商品化されている化粧料には、クリーム状、乳液状、オイル状、ゲル状のものが知られている。オイル状、乳液状等、液状のものにはボタボタとたれてしまうという欠点があるが、透明なゲルには、そのような欠点がない上に、見た目の清潔感と純粋なイメージがあり、また指や顔面に付着しやすい等、使用性に優れていることから、多くの女性に特に好まれている。
【0003】
従来、透明なゲルとしては様々なものが製剤化されている。例えば、非水系ゲル及び油中水型ゲル(例えば、特開平9−175938号公報、特開昭56−24477号公報)、油成分を含まないで界面活性剤を溶解した水性ゲル(特開昭63−179817号公報、特開平7−215842号公報)、液晶型ゲル又はD相乳化型ゲル(特開平1−176444号公報、特開昭56−55306号公報)が挙げられる。
【0004】
しかし、非水系ゲル及び油中水型ゲルは、連続相が油であるため、メーク落とし効果は高いが、洗い流した後の残存感が残る。このため、洗い流すより、コットン等で拭き取る方が適している。ところが、我が国など、国によってはさっぱり感があり浴室での使用ができる水で洗い流すタイプのものが好まれる。そこで、洗い流しを可能にするために親水性の界面活性剤を高配合することも考えられるが、それにより肌への刺激性が上がることが懸念される。
【0005】
一方、油成分を含まないで界面活性剤を溶解した水性ゲルは、界面活性剤の水溶液を水溶性高分子でゲル状にしたものであるが、このタイプは、油成分がないため、界面活性剤の量が少ないとメークの落ちが非常に悪い。また、メークの落ちをよくするために界面活性剤の量を多くすると、肌への刺激が懸念される。また界面活性剤の配合率を高くすると、水溶性高分子での増粘が十分にはできなくなる不具合もある。
【0006】
更に、液晶型ゲル又はD相乳化型ゲル(多価アルコール中油型乳化物で水分量が少ないゲル)は、通常はメークの落ちが非常に良く、水による洗い流しも良好にできる。しかし、一方で界面活性剤/多価アルコール/油相/水の組み合わせ及びその配合量は非常に限られていて特殊であり、その組成が僅かに変化しただけでもその特性を失ってしまう。すなわち、良好な性質が維持されるゾーンが限られている。なかでも水分量にはセンシティブで、少しの変動でゲルの特性が大きく変化する。そのため、製造中や使用中の水の蒸発によってゲルの安定性が損なわれる恐れがあり、また濡れた手で使用すると、メーク落とし効果が失われることもある。また、ある種の液晶組成では、界面活性剤の配合量を高濃度とする必要があり、これは肌への安全性にとっては好ましいことではない。更に、この種の製剤は、製造工程が非常にデリケートで、温度、撹拌、成分の添加順序、添加速さ等の条件が細かく、厳しいという不具合もある。
【0007】
このように従来のゲルは何れも何らかの不具合を持っており、必ずしも満足できるものではなかった。
これに対して、最近、特開2000−212040号公報において、メーク落とし効果に優れ、皮膚に対する安全性が高い上、経時的安定性も良好である等の利点を持っている水中油型の透明ゲルが提案されている。このゲルは2相の屈折率を一致させることにより得られるもので、60〜95%の油相と、0.5〜30%の、HLBが10を越えるポリグリセリンと脂肪酸のエステルと、0.1〜25%の水と、40%未満の多価アルコールを含有する。
しかし、このゲルでも、油相の配合量を60%以上、好ましくは70%以上と多くしなければならず、よって水相の配合量が少なくなってしまい(例えば実施例では9〜11%)、油性感が問題となる。また、油相を高配合にする場合には、油をゆっくりと添加する必要があり、製造工程にも制約がある。
【0008】
更に、特開平05−229916号公報には、好ましくはエステル置換度が1.8以下のショ糖脂肪酸エステルと分子内に3個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールと油分とを含有するゲル状洗浄剤組成物が開示されており、均一透明ないしは半透明なゲル状で、安定性に優れ、洗い流しやすい組成物が得られた旨が記載されている。しかし、この公報に記載されている処方では、水相の配合量が少なく、洗い流した後の油性感を更に低減するには水相の配合量を増加させることが望ましい。しかし、単に水相を増やしただけでは安定性が損なわれる恐れがあり、またその防止のために水相にゲル化剤等を加えると、今度は透明ないしは半透明な組成物を得ることができなくなる、又はかえって製剤の安定性が悪くなる等の問題があった。
【0009】
しかして、本発明は上に挙げた様々な問題の一部又は全てを解消しうる水中油型のゲル組成物を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、化粧料に用いて好適な透明ないしは半透明な水中油型ゲル組成物を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、メーク落とし効果に優れ、残存感がなく水で洗い流すことができ、肌又は粘膜への刺激が少なく、好ましくは顔の上でマッサージをするのが容易なゲル組成物を提供することにある。
更に別の目的は、良好な安定性を示し、製造も容易であるという利点を持つゲル組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、このような水中油型のゲル組成物を用いた化粧料又は皮膚外用剤をも提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段と発明の実施の形態】
本発明者らは、上記事情に鑑みて鋭意研究を行った結果、意外にも特定の炭素数範囲の脂肪酸から誘導される特定の範囲のHLB値を持つショ糖エステルと水溶性高分子とを組み合わせると、上に挙げた様々な目的の一部又は全てを達成できることを見出した。
しかして、本発明では、脂肪酸の炭素数が14以下でHLB値が10以上のショ糖脂肪酸エステルと、多価アルコールと、水溶性高分子とを含有することを特徴とする水中油型ゲル組成物が提供される。
かかる水中油型ゲル組成物は、本発明の好適な一実施態様では、組成物の全重量に対して、1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは1.5〜10重量%の上述の特定のショ糖脂肪酸エステルと、1〜50重量%、好ましくは1.5〜40重量%の多価アルコールと、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%の水溶性高分子を含有する。また、本発明に係るゲル組成物は水中油型であるから、油相と水相とを当然に含むが、油相は組成物の全重量の好ましくは20〜60重量%、より好ましくは30〜50重量%であり、水相は組成物の全重量の好ましくは40〜80重量%、より好ましくは50〜70重量%である。
【0011】
従来、ショ糖脂肪酸エステルを透明ゲルへ配合することは、数多く提案されているが、ほとんどの場合、1種又はそれ以上の別の界面活性剤と組み合わせるか、異なるタイプのショ糖脂肪酸エステル、特に異なるHLB又はIOBのショ糖脂肪酸エステルと組み合わせるものである。また組み合わせではない場合でも、ショ糖脂肪酸エステルの種類については曖昧なものが多く、せいぜいHLB又はIOBの範囲で特定されているにとどまる。
これに対して、本発明者らは、HLB又はIOBの範囲の特定だけでは本発明の目的においては必ずしも十分ではなく、実際には脂肪酸の炭素数が所望する効果に有意な影響を及ぼすことを突き止めた。例えば後の実施例で示されるように同等のHLB16のエステルでも、炭素数が18の脂肪酸のエステルと炭素数が14の脂肪酸のエステルでは、得られる結果が大いに異なることを見出した。
【0012】
しかして、本発明では、炭素数が14以下の脂肪酸から誘導されるHLBが10以上のショ糖脂肪酸エステルを水溶性高分子と組み合わせて用いている。ショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸は、炭素数が14以下のものであれば、飽和でも不飽和でも、直鎖状でも分枝状のものでもよく、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等が挙げられる。しかし、本発明において好ましく使用されるショ糖脂肪酸エステルは、炭素数が12〜14の脂肪酸から誘導されたエステル、より好ましくは直鎖状の飽和脂肪酸のショ糖脂肪酸エステルであり、最も好ましくはショ糖ミリスチン酸エステルとショ糖ラウリン酸エステル又はそれらの混合物である。また本発明のショ糖脂肪酸エステルは10以上のHLB値を有していることが必要である。これらのショ糖脂肪酸エステルは、1.0以上のIOB値を有していることが好ましい。IOBは無機性値/有機性値である。
【0013】
ショ糖脂肪酸エステルにおけるエステル化度は特に制限はなく、モノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタエステルの何れの形態でも、また複数の形態の混合物でも構わない。好ましくは、モノエステルとジエステルの混合物、又はモノエステル、ジエステル及びトリエステルの混合物等、低エステル化度のエステルの混合物が用いられる。また、エステル化度の異なるエステルの混合物を利用する場合のエステルの組成についても、特に制限はないが、好ましくは、HLB値の制限から、低エステル化度の多いもの、例えばモノエステルの含有量がエステルの全重量に対して50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上のものが使用される。
【0014】
更に、本発明のショ糖脂肪酸エステルは、炭素数が14以下、好ましくは12〜14の脂肪酸から主として誘導されるものであれば、本発明の組成物に所望される特性を変化させない限りにおいて、他の脂肪酸を含んでいても構わない。すなわち、本発明に使用されるショ糖脂肪酸エステルには、ショ糖ステアリン酸エステルのような炭素数が14以下ではない他の種類の脂肪酸のエステルを一部に含むものも包含される。許容される他の種類の脂肪酸のエステルの量は、本発明の効果を損なわない範囲であることは無論であるが、一般には、本発明のショ糖脂肪酸エステルでは、炭素数が14以下の脂肪酸が脂肪酸全体の好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更により好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上を占めるものである。
【0015】
ショ糖脂肪酸エステルは従来から化粧料によく使用されている成分であるが、上記の本発明における種々の要求に合致するものは実際には多くはない。本発明において使用できるショ糖脂肪酸エステルの市販品を幾つか例示すると、例えば三菱化学フーズ株式会社から販売されているサーフホープ(登録商標)SE COSMEシリーズのC−1416又はC−1216、C−1215Lが挙げられる。C−1416はショ糖ミリスチン酸エステルで、モノエステルが約80%、残りがジ以上のエステルからなるHLB16(IOBは約1.48)のものである。C−1216はHLB16(IOBは約1.62)でモノエステルが約80%、残りがジ以上のエステルからなり、C−1215LはHLB15でモノエステルが約70%、残りがジ以上のエステルからなるショ糖ラウリン酸エステルである。
その他の例としては、第一工業製薬株式会社のDKエステルS−L18Aが挙げられ、これは17のHLBを有し、モノエステル70%、ジ・トリエステル30%からなるショ糖ラウリン酸エステルである。
【0016】
前述の特開平05−229916号公報では、好ましくはエステル置換度が1.8以下のショ糖脂肪酸エステルが記載され、具体的には炭素数16のパルミチン酸と炭素数18のステアリン酸の混合エステルが使用されているが、本明細書の実施例に示すように、この炭素数の多い脂肪酸のショ糖エステルでは、水溶性高分子を加えない時点で既に透明性が劣り、水溶性高分子を加えた場合に組成物が不透明になってしまうという問題がある。これに対して、本願の特定範囲の炭素数の脂肪酸から誘導されるショ糖脂肪酸エステルを用いれば、透明ないしは半透明なゲルを得ることができる。従って、安定性と透明性を保ちながら水相の配合量を多くして油性感を低減させることが可能になる。
【0017】
なお、ショ糖脂肪酸エステルとガラクタンあるいはガラクトマンナン骨格を有する水溶性高分子を組み合わせることは特開平09−175989号公報に開示されている。しかし、この文献では、IOB値が0.2〜0.8の範囲のショ糖脂肪酸エステルを用いているので、従ってHLBは本発明の範囲外となり、本発明に係るショ糖脂肪酸エステルとは異なる。また、本発明とは全く異なる耐水性に優れた組成物を得ることを課題とするものであり、得られた組成物は透明性を有するものでもない。
【0018】
しかして、本発明に係る水中油型ゲル組成物は、上記ショ糖脂肪酸エステルの使用により、水溶性高分子を併用した場合にも、透明ないしは半透明な性状を好適に維持できる。ここで、「透明ないしは半透明」という表現は、当該分野、特に化粧品の分野において当業者によって一般に理解されるところの透明性又は半透明性を意味するものであるが、より詳細には、色彩色差計による測定において、CIE(国際照明委員会)L表色系における明度L値が30以上、好ましくは40以上のものであると定義する。この明度は、具体的には透過液体色測定用の色彩色差計(ミノルタ株式会社のCT−210)を用いて測定することができ、測定は、最終製品を希釈せずに10mmセルに充填し、測定部の感度切り替えスイッチを「NORMAL」モードにして行われる。測定は室温(約25℃)で行われる。
【0019】
本発明のゲル組成物においては、好適には界面活性剤としては上記のショ糖脂肪酸エステルのみが添加される。しかし、肌への刺激等を考慮しながら、特に刺激性の低いものを選択するという前提であれば、他の界面活性剤を含有させることを排除するものではないし、また、組成物の用途に応じても他の界面活性剤が含有される場合もある。
【0020】
本発明に係るゲル組成物において、水溶性高分子はゲルの粘度を高め安定性を達成するために不可欠である。この点で、本発明のゲル組成物は、水溶性高分子を含有しない液晶ゲルや、D相乳化型ゲルにようにそれ自体がゲル化しているものと異なる。
また水中油型ゲルで水溶性高分子を配合していないものには、従来は高濃度の油相が配合されており、更に多くの場合、水の含有量が非常に低い。このようなゲル組成物は、例えば前述の特開2000−212040号公報に記載されているものである。
【0021】
これに対して、本発明では、特定のショ糖脂肪酸エステルと組み合わせて水溶性高分子を配合しているため、透明なクレンジングジェルとして効果の高い製品を、高濃度の水相配合で実現させることが可能である。これは、製品のコストを下げるばかりでなく、皮膚に対する安全性や洗い流した後の残存感の低減にも有効である。すなわち、本発明に係るゲル組成物では、好ましくは約60%以下、より好ましくは50%以下、最も好ましくは約45%以下の低濃度の油相配合で、充分なメーク落とし効果を発揮する。従って、本発明のゲル組成物では、油相を少なくした分、水相の配合量を多くすることができ、上述の利点が得られる。
【0022】
また、一般に、カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子は酸との相性が悪く、酸の混合で乳化が破壊されたり、粘度が得られなかったりするが、本発明の水中油型ゲル組成物では、水相に酸を例えばpH4になるまで加えてもゲルの特性が失われないという利点もある。従って、水相にα−ヒドロキシ酸のような角質剥離作用のある酸を加えることも可能になる。
【0023】
本発明において使用される水溶性高分子としては、十分なゲル化特性を有しているものであれば、当業者に知られている如何なるものを用いてもよい。
例えば、カルボキシビニルポリマー;天然ゴム;多糖類;アクリルアミドポリマー及びコポリマー;ビニルエーテルコポリマー;アクリル酸又はメタクリル酸のコポリマー;又はカチオン性ポリマー、例えばクアテルニウム、又はこれらのポリマーの混合物が挙げられる。
カルボキシビニルポリマーとしては、特に、アクリル酸の架橋ポリマー、例えばBF Goodrich社から市販されているカーボポール980、981、2984、5984(CTFA名:カルボマー)、カーボポール1382、カーボポールETD 2001、3V Sigma社から市販されているSynthalen K及びSynthalen Lを挙げることができる。
【0024】
天然ゴムとしては、例えば、キサンタンガム、ジェランガム又はローカストビーンガムを挙げることができる。
多糖類としては、例えば、グアーガム、セルロース及びその誘導体、例えば、メチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース又はカルボキシメチルセルロース、及びカルボキシプロピルグアーを挙げることができる。
アクリルアミドポリマーとしては、例えば、 架橋ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)又はカルボキシビニルポリマーが挙げられる。
【0025】
アクリルアミドコポリマーとしては、アクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との架橋コポリマーを挙げることができる。
ビニルエーテルコポリマーとしては、例えば、架橋PVM/MAデカジエンコポリマーを挙げることができる。
アクリル酸又はメタクリル酸のコポリマーとしては、特にC10−C30アルキルアクリラートと、アクリル又はメタクリル酸との、又はそのエステルとのコポリマーであって、BF Goodrich社から市販されているPemulen TR1、Pemulen TR2を挙げることができる。
【0026】
特に、アクリルアミドポリマーとしては、例えば本出願人名義の特許2922176号(特開平10−87428)に詳細に記載されているような、架橋され、実質的又は完全に中性化されたポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)ポリマー、例えばClariant社から販売されているホスタセリン(Hostacerin)AMPSを挙げることができる。これは、
a)下記の一般式(I):
【化2】
Figure 2004051574
[上式中、Xはカチオン又はカチオン混合物を示し、Xカチオンは最高で10mol%がHプロトンとなりうる]
の単位を90から99.9重量%;
b)少なくとも二のオレフィン性二重結合を有する少なくとも一のモノマーから生成する架橋単位を0.01から10重量%;
をランダムに分布して含み、前記重量割合がポリマー全重量に対して決定されることを特徴とするものである。
【0027】
このポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)は、化学式(I)の単位を、ポリマー粒子の水溶液中での流体力学的容積を10から500nmの範囲とし、該粒子の分散を均一かつ単峰形とするのに十分な数で含むものが好ましい。
化学式(I)中では、Xは、特にプロトン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンと等価なカチオン、又はアンモニウムイオンから選択される。より詳細には、カチオンの90から100mol%はNH であり、0から10mol%はプロトン(H)である。
【0028】
少なくとも二のオレフィン性二重結合を含む架橋単位モノマーは、例えばジプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリグリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキノンジアリルエーテル、テトラアリルオキシエタノイル又は他のアリル又はビニルエーテル多価アルコール、テトラエチレングリコールジアクリラート、トリアリルアミン、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、メチレンビスアクリルアミド、及びジビニルベンゼンから選択される。少なくとも二のオレフィン性二重結合を含む架橋単位モノマーは、特に、下記一般式(II):
【化3】
Figure 2004051574
[上式中、Rは水素原子またはC−Cアルキルを示す]で表されるものが好ましく、特に、トリメチロールプロパン−トリアクリラートが好ましい。
【0029】
上記のように、本発明においては、種々の水溶性高分子を使用することができるが、本発明の目的に特に適しているものはアニオン性又はノニオン性、特にアニオン性のものであり、マッサージ性に優れたものである。
前述したもののなかでは、特にカルボキシビニルポリマー、特にアクリル酸の架橋ポリマー、又はアクリルアミドポリマー、特にポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)ポリマーが好適である。
【0030】
また本発明に係るゲル組成物おいて好適に使用される多価アルコールは、少なくとも2個のフリーなヒドロキシル基を持つものであれば、特に限定するものではないが、例えばグリコール、特にグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、イソプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどが挙げられる。
【0031】
更に本発明に係るゲル組成物において油相を構成するために使用される油剤は、水中油型ゲル組成物の調製に使用されうるものであれば如何なるものでも構わず、当業者に一般的に知られている任意の油剤、すなわち、種々の脂肪物質、植物、動物、合成、又は鉱物由来のオイル、天然又は合成ワックス等から、単独に又は混合物として、適宜選択することができる。
本発明で用いられる油剤としては、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、例えば、COGNIS社によりMyritol 318の名称で販売されている製品、揮発性又は不揮発性シリコーン油、例えば、ポリメチルシロキサン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、ポリメチルフェニルポリシロキサン、フッ素化シリコーン類、及び脂肪アルコール又はポリオキシアルキレンで修飾されたポリシロキサン、ミリスチン酸イソプロピル、パルチミン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸イソプロピル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル等のエステル油、C12−C15脂肪アルコールの安息香酸エステル、ラウリル、セチル、ミリスチル、ステアリル、パルミチル、及びオレイルアルコールなどの脂肪アルコール、及びC10−C18飽和脂肪酸のトリグリセリドなどの脂肪酸トリグリセリド、フッ素化及び過フッ化オイル、ラノリン、水素添加ラノリン、アセチル化ラノリンを挙げることができる。
【0032】
他の例としては以下のものを挙げることができる:
− 流動パラフィン及び液体ペトロラタム等の鉱物油;
− ペルヒドロスクアレンなどの動物起源の油;
− スィート・アーモンド油、アボカド油、ヒマシ油、オリーブ油、ホホバ油、ゴマ油、アメリカホドイモ油、ブドウ種油、ナタネ油、コプラ油、ハシバミ油、シェアバター、パーム油、杏仁油、米穀油、コーン胚芽油、小麦胚芽油、大豆油、ヒマワリ油、マツヨイグサ油、紅花油、トケイソウ油、及びライ麦油等の植物起源の油;
− パーセリン油、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、アジピン酸エチルヘキシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、ラウリン酸ヘキシル、ジカプリン酸ポロピレングリコール、及び、ラノリン酸イソプロピル及びラノリン酸イソセチル等のラノリン酸エステル、イソパラフィン、及び、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−α−オレフィン)などの合成油。
本発明において、水相は前述のように、好適には、組成物の全重量の40〜80重量%、より好ましくは50〜70重量%を占める。この水相は、好ましくは精製水等の水と多価アルコールが水溶性高分子と共に含有されてなるが、場合によっては、エタノール、イソプロパノールをはじめとするC−C低級モノアルコール等を更に含有させることもできる。
このように水溶性成分を高配合することにより、バルクの大幅なコスト減と、洗い流した後の油性感を軽減できる。また、ゆっくりと油相を添加する必要がなく、簡便に製造することができる。
【0033】
本発明に係る水中油型ゲル組成物は、当業者には周知の通常の方法によって調製される。具体的には、実施例に記載する。
また、本発明に係る水中油型ゲル組成物は、前述のように透明ないしは半透明の組成物とされるが、透明性の調整は、例えば多価アルコールの量又は油相中の油剤を調節する等して、油相と水相の屈折率を一致させることによりなされる。すなわち、本発明においては、好適には油相と水相の屈折率がほぼ一致させられ、例えば±0.01以内になるように調節される。この場合、本発明に係るショ糖脂肪酸エステル以外の、例えばショ糖ステアリン酸エステルのようなショ糖脂肪酸エステルを使用する場合には、水相の屈折率は大きくは変化しないが、水相そのものの透明性が低下し、得られる組成物が不透明になってしまう。
【0034】
本発明の水中油型組成物は、特に化粧品又は皮膚科用の組成物としてもよい。このような組成物は生理学的に許容可能な媒体を含む。「生理学的に許容可能」なる表現は、皮膚又は毛髪に適用できる非毒性の媒体を意味する。
従って、本発明においては、本発明に係る上記水中油型ゲル組成物からなる化粧料並びに皮膚外用剤も提供される。化粧料の場合は、特に、顔又はボディ等の皮膚に対して、クレンジング、保護、トリートメント又は手入れ等の目的で使用され、クレンジング又はマッサージ用のゲル状化粧料とされる。またシェービングゲルとしても使用可能である。よって、本発明では、本発明に係る化粧料を、皮膚、粘膜又は毛髪に適用することを特徴とする、皮膚、粘膜又は毛髪の美容処理方法も提供される。
また、本発明に係る化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般的に化粧料に許容され配合されている各種の有効成分、防腐剤、色素、粉体等を含有させることが可能である。
特に挙げることのできる活性剤としては、保湿剤、例えば、タンパク質加水分解物、及びグリセリン、グリコール等のポリオール、例えば、ポリエチレングリコール、及び糖誘導体;天然の抽出物;プロシアニドール(procyanidol)オリゴマー;ビタミン類、例えばビタミンA(レチノール)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンPP(ナイアシンアミド)、ビタミンB5(パンテノール)、及びその誘導体、例えばエステル;尿素;カフェイン;コウジ酸及びコーヒー酸等の美白剤;サリチル酸及びその誘導体等のβ−ヒドロキシ酸;酪酸及びグリコール酸等のα−ヒドロキシ酸;カロテノイド等のレチノイド;遮蔽剤;及びその混合物である。活性剤は、例えば、組成物の全重量の0.001%〜20%、好ましくは0.01%〜5%、さらに好ましくは0.5%〜3%の濃度範囲である。
【0035】
【実施例】
以下に本発明を実施例によってより詳細に説明する。ここで、特記しない限り、%は重量%を表す。
実施例1
本発明に係る組成物を得るために、先ず、次の組成のA〜D相を調製する。
A相
精製水           14.22%
フェノニプ(防腐剤)    1%
グリセリン         28%
ショ糖ミリスチン酸     6%
B相
Hostacerin AMPS       0.4%
グリセリン         3%
精製水           7%
C相
Myritol 318         20%
シクロヘキサシロキサン   20%
D相
精製水           0.342%
乳酸            0.038%
【0036】
すなわち、B相において、グリセリンと水の混合物中にRayneri(ディスパー型攪拌機)で撹拌しながらHostacerin AMPSを室温にて振り入れた。D相は、乳酸を室温にて精製水に溶解させた。
ついで、A相の精製水とグリセリンとフェノニプの混合物を80℃に加熱し、Rayneri(ディスパー型攪拌機)で撹拌しながらショ糖ミリスチン酸を振り入れた。ショ糖ミリスチン酸が完全に溶解したところで、温度を60℃に下げ、油相であるC相をホモジナイザー(Untra Turrax)を用いて15000rpmで撹拌しながら添加し、3分間撹拌を続けた。その後、40℃まで冷却した後、B相をRayneri(ディスパー型攪拌機)で撹拌しながら添加した。続いてD相を加えてpHを4に下げ、また室温まで温度を下げ、これにより本発明組成物1を得た。
【0037】
次に、A相のショ糖ミリスチン酸エステルに代えてショ糖ラウリン酸エステルを用いて、上記と同様にして本発明組成物2を調製し、またHostacerin AMPSに代えてカーボポール及び中和用の水酸化ナトリウムを使用して、上記と同様にして本発明組成物3を製造した。
また比較のために、水溶性高分子としてHostacerin AMPSを用い、ショ糖脂肪酸エステルとしてはHLBが16のショ糖ステアリン酸エステルとHLBが15のショ糖ステアリン酸エステルを用いて比較組成物1及び比較組成物2を調製した。更に、ショ糖ミリスチン酸エステルを含有するが水溶性高分子を含有しない比較組成物3も調製した。それぞれの組成物の組成を表1にまとめる。
【表1】
Figure 2004051574
(1)三菱化学フード株式会社のサーフホープ(登録商標)SE COSME C−1416
(2)三菱化学フード株式会社のサーフホープ(登録商標)SE COSME C−1216
(3)三菱化学フード株式会社のサーフホープ(登録商標)SE COSME C−1816
(4)三菱化学フード株式会社のサーフホープ(登録商標)SE COSME C−1815
(5)クラリアント社のフェノニプ
(6)クラリアント社のHostacerin AMPS
(7)BF Goodrich社のカーボポール980
(8)コグニス社のMyritol 318
(9)ダウコーニング社のDC Fluid 246
【0038】
上記のようにして調製した本発明組成物1〜3と比較組成物1〜3について、それぞれの性状、安定性等を常法により調べた。結果を、使用したショ糖脂肪酸エステルの特性と共に表2に示す。
【表2】
Figure 2004051574
 粘度計RM180 RHEOMAT(RHEOMETRIC SCIENTIFIC)を用いて200s−1のせん断速度、時間t=10分で測定した。表中の測定結果は、スピンドルNo.2(M2)又はNo.4(M4)を用いて測定した粘度読取値(Pa・s)を表す。
表2から分かるように、本発明組成物1〜3は何れも半透明の外観を示す安定なゲルであった。これに対して、ショ糖ステアリン酸エステルを用いる比較組成物1及び2は安定ではあったが、不透明であった。すなわち、比較組成物1及び2ではショ糖ステアリン酸エステルを用いているが、ショ糖ミリスチン酸エステル又はショ糖ラウリン酸エステルの場合と比較して、水相の屈折率は大きくは変化しないが、水相そのものの透明性が下がり、最終組成物も不透明となっている。一方、比較組成物3は半透明であったが、流動性があり、時間が経つと分離してしまった。比較組成物3は、遠心分離によっても分離が見られた。
このように、本発明に係る組成物は何れも半透明で安定な性状を示すが、ショ糖脂肪酸エステルと水溶性高分子の何れかが本願の範囲から外れると、透明性か安定性の何れかが損なわれることが理解される。
【0039】
実施例2
組成物の透明性に対する多価アルコールの及ぼす影響について調べた。すなわち、実施例1の本発明組成物1において、グリセリンの量を26%、24%、21%、10%と順次減少させていって比較組成物4〜7を調製し、グリセリンの配合量と水相の透明性の関係を調べ、またに水溶性高分子の添加の影響も調べた。
各組成物の組成を表3に、屈折率と透明性を表4にまとめる。透明性については、色彩色彩計測定L値で30以下を不透明、30〜80を半透明、80以上を透明とした。
【表3】
Figure 2004051574
【表4】
Figure 2004051574
 粘度計RM180 RHEOMAT(RHEOMETRIC SCIENTIFIC)を用いて200s−1のせん断速度、時間t=10分で測定した。表中の測定結果は、スピンドルNo.4(M4)を用いて測定した粘度読取値(Pa・s)を表す。
表4から、グリセリンの量を減らしていっても、水溶性高分子添加前の水相の透明性は変わらないが、屈折率が減少していき、最終組成物の透明度が下がることが分かる。また、水溶性高分子を添加すると、添加前と比べ水相の透明度が下がる。このようにショ糖ミリスチン酸エステルを配合している場合は、水相と油相の屈折率をほぼ一致させることによって組成物を透明にできる。これに対して、実施例1における比較組成物1〜2のようにショ糖ステアリン酸エステルを配合した場合には、水相の屈折率は大きくは変化しないが水相そのものの透明度が下がり、最終組成物が不透明になる。すなわち、油相と水相の屈折率をほぼ一致させても半透明の状態にはならない。

Claims (17)

  1. 脂肪酸の炭素数が14以下でHLB値が10以上のショ糖脂肪酸エステルと、多価アルコールと、水溶性高分子とを含有し、透明ないしは半透明であることを特徴とする水中油型ゲル組成物。
  2. ショ糖脂肪酸エステルが1.0以上のIOB値を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
  3. 油相と水相の屈折率がほぼ同一であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
  4. ショ糖脂肪酸エステルが、炭素数12〜14の脂肪酸のエステルであることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の組成物。
  5. ショ糖脂肪酸エステルが、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル又はその混合物であることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の組成物。
  6. ショ糖脂肪酸エステルが、組成物の全重量の1〜50%の濃度、好ましくは1.5〜10%の濃度であることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の組成物。
  7. 水溶性高分子が、アニオン性の水溶性高分子であることを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の組成物。
  8. 水溶性高分子が、架橋ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)又はカルボキシビニルポリマーであることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
  9. 架橋ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)が、少なくとも90%が中性化され、
    a)高分子の全重量に対して90〜99.9重量%の、下記の一般式(I):
    Figure 2004051574
    [上式中、Xはカチオン又はカチオン混合物を示し、Xカチオンは最高で10mol%がHプロトンとなりうる]の単位と、
    b)高分子の全重量に対して0.01〜10重量%の、少なくとも二のオレフィン二重結合を有する少なくとも一のモノマーから生成される架橋単位とを、
    ランダムに分布した状態で含む高分子であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
  10. 水溶性高分子が、組成物の全重量の0.01〜5%の濃度、好ましくは0.05〜2%の濃度であることを特徴とする請求項1ないし9の何れか1項に記載の組成物。
  11. 多価アルコールが、組成物の全重量の1〜50%の濃度、好ましくは1.5〜40%の濃度であることを特徴とする請求項1ないし10の何れか1項に記載の組成物。
  12. 組成物の全重量の20〜60重量%、好ましくは30〜50重量%の油相を含有することを特徴とする請求項1ないし11の何れかに記載の組成物。
  13. 組成物の全重量の40〜80重量%、好ましくは50〜70重量%の水相を含有することを特徴とする請求項1ないし12の何れか1項に記載の組成物。
  14. 化粧品組成物を構成する請求項1ないし13の何れか1項に記載の組成物。
  15. クレンジング又はマッサージ用であることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
  16. 水相が角質剥離作用のある酸を含有していることを特徴とする請求項14又は15に記載の組成物。
  17. 皮膚外用剤を構成する請求項1ないし13の何れか1項に記載の組成物。
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