JP2004048717A - 双晶の形成方法、水晶振動片の製造方法、水晶振動片および水晶デバイス - Google Patents
双晶の形成方法、水晶振動片の製造方法、水晶振動片および水晶デバイス Download PDFInfo
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Abstract
【課題】逆メサ型水晶振動片の強度を確保しつつ、エネルギー閉じ込め効果を得ることが可能な、水晶振動片およびその製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】水晶振動片における所定部位の表面に金属被膜を形成し、前記金属被膜の表面に低融点金属を配置し、加熱して前記低融点金属を溶融させることにより、前記所定部位を双晶化する構成としたので、水晶振動片の所定部位を、選択的かつ確実に双晶化することができる。そして、逆メサ型水晶振動片20の励振電極26形成部分の周辺部に、双晶部30を形成した構成としたので、逆メサ型水晶振動片20の強度を確保しつつ、エネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】水晶振動片における所定部位の表面に金属被膜を形成し、前記金属被膜の表面に低融点金属を配置し、加熱して前記低融点金属を溶融させることにより、前記所定部位を双晶化する構成としたので、水晶振動片の所定部位を、選択的かつ確実に双晶化することができる。そして、逆メサ型水晶振動片20の励振電極26形成部分の周辺部に、双晶部30を形成した構成としたので、逆メサ型水晶振動片20の強度を確保しつつ、エネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、双晶の形成方法、水晶振動片の製造方法、水晶振動片および水晶デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気回路において一定の周波数を得るため、水晶振動片が広く利用されている。水晶振動片は、水晶表面に励振電極を形成したものである。
【0003】
図5に逆メサ型水晶振動片の説明図を示す。なお、同図(1)は平面図であり、同図(2)はE−E線における断面の拡大図である。一般に、ATカット水晶振動片では、水晶平板の厚さが薄いほど共振周波数が高くなる。そこで、水晶平板121の中央部に凹部(逆メサ部)124を形成して水晶を薄肉化し、その逆メサ部124の表面に励振電極126を形成した、逆メサ型水晶振動片120が開発されている。
【0004】
ところで、水晶の薄肉化とともに、不要なスプリアス振動を抑制するため、励振電極の厚さを薄くする必要がある。しかし、励振電極の厚さを薄くすると、励振電極形成部分におけるエネルギー閉じ込め効果が十分に得られなくなる。一方、励振電極形成部分における水晶の共振周波数は、その周辺部における共振周波数より低くなる。ここで、励振電極形成部分の共振周波数よりその周辺部の共振周波数が高くなると、励振電極形成部分の周辺部がエネルギーバリアとして機能し、励振電極形成部分におけるエネルギー閉じ込め効果が得られる。そこで、励振電極126形成部分の周辺部に溝部130を形成して、周辺部における水晶の共振周波数をより高周波化している。これにより、励振電極126形成部分の共振周波数より溝部130の共振周波数がより高くなり、すなわち共振周波数の差を大きくして、励振電極形成部分におけるエネルギー閉じ込め効果を得ている。以下、このような関係において、共振周波数の差、と表現する。
【0005】
また、図6にコンベックス加工を施した水晶振動片の説明図を示す。なお、同図(1)は斜視図であり、同図(2)はF−F線における断面図である。一般に、低周波数のATカット水晶振動片150では、水晶平板151の肉厚に対する励振電極152の膜厚の比率が小さいので、エネルギー閉じ込め効果が十分に得られない。しかし、水晶平板151をレンズ状(コンベックス形状)に形成することにより、水晶平板の端部が薄肉化され、当該端部と励振電極形成部分との共振周波数の差が大きくなって、エネルギー閉じ込め効果を得ることができる。そこで、図6に示すように、厚みすべり水晶振動片150の両端部に、面取り加工(コンベックス加工)155を施している。面取りはバレル加工によって行う。バレル加工は、一例としては、パイプ状のポットの中に水晶振動片と研磨剤とを入れ、ポットをその中心軸のまわりに回転させることによって、水晶平板の角部に面取りを施すものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図5に示す逆メサ型水晶振動片120の逆メサ部124は、例えば10μm程度の薄さに形成されている。そして、エネルギー閉じ込め効果を得るため、逆メサ部124における励振電極126形成部分の周辺部に溝部130を形成すると、溝部における水晶が極端に薄くなって、強度の確保が困難になるという問題がある。そこで本発明は、強度を確保しつつエネルギー閉じ込め効果を得ることが可能な、水晶振動片の製造方法および水晶振動片の提供を目的とする。
【0007】
また、図6に示す水晶振動片150の面取り155を、バレル加工によって形成する場合には、加工精度の確保が困難であり、安定したエネルギー閉じ込め効果を得ることができないという問題がある。そこで本発明は、安定したエネルギー閉じ込め効果を得ることが可能な、水晶振動片の製造方法および水晶振動片の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水晶基板の表面に金属被膜を形成し、前記金属被膜の表面に低融点金属を配置し、加熱して前記低融点金属を溶融させることにより、金属被膜下の水晶基板を双晶化することができるという知見に基づいている。一般に、水晶は573℃にαβ転移点を有し、これを越えると双晶化することが知られている。もっとも、水晶基板の所定部位のみを573℃以上とし、それ以外の部位を573℃未満とするように、厳密に区別するのは不可能であるから、水晶を選択的に双晶化することはできなかった。しかし、本願発明者は、上述した方法を使用すれば、金属被膜や溶融した低融点金属による蓄熱効果等により、573℃以下の加熱温度でも水晶が双晶化することを見出した。これは、水晶基板の一部のみを選択的に双晶化し得ることを意味する。そして、水晶が双晶化すると共振周波数が高くなる。
これにより、水晶を薄肉化した場合と同様の効果を得ることができるのである。
【0009】
なお、水晶基板の表面に金属被膜を形成する方法には、蒸着法やスパッタ法、CVD法、めっき法等を単独で、または複合して採用することができる。なお、ハードマスクや、フォトリソグラフィによりパターニングされたレジストマスクなどを介して、蒸着法やスパッタ法を行うことにより、水晶基板表面の所定部位に金属被膜を形成することができる。また、水晶基板の表面全体に金属被膜を形成した後に、フォトリソグラフィによりパターニングしたレジストをマスクとして、前記金属被膜のエッチングを行うことによっても、水晶基板表面の所定部位に金属被膜を形成することができる。一方、金属被膜の表面に低融点金属を配置する方法には、乾式メッキ(蒸着法、スパッタ法等)や湿式メッキ、スクリーン印刷方式等を採用することができる。なお、金属皮膜の表面に、部分的に固体の低融点金属を配置してもよく、低融点金属のメッキなど表面に低融点金属の付着した線材等を配置してもよい。さらに、加熱して前記低融点金属を溶融させる方法には、熱風の吹き付けや、低融点金属に吸収されやすい波長のレーザを照射する方法を採用することができる。
【0010】
上述した知見をふまえて、本発明に係る水晶振動片の製造方法は、水晶振動片における所定部位の表面に金属被膜を形成し、前記金属被膜の表面に低融点金属を配置し、加熱して前記低融点金属を溶融させることにより、前記所定部位を双晶化する構成とした。これにより、水晶振動片の所定部位を選択的かつ確実に双晶化することができる。
【0011】
また、請求項4に記載の水晶振動片の製造方法において、前記所定部位は、逆メサ型水晶振動片の励振電極形成部分の周辺部である構成とした。これにより、水晶振動片の強度を確保しつつ、エネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【0012】
また、請求項4に記載の水晶振動片の製造方法において、前記所定部位は、厚みすべり水晶振動片の端部である構成とした。これにより、安定したエネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【0013】
一方、本発明に係る水晶振動片は、逆メサ型水晶振動片の励振電極形成部分の周辺部を双晶化した構成とした。これにより、水晶振動片の強度を確保しつつ、エネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【0014】
また、厚みすべり水晶振動片の端部を双晶化した構成とした。これにより、安定したエネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【0015】
また、請求項4ないし8のいずれかに記載の水晶振動片の製造方法を使用して製造した構成とした。これにより、水晶振動片の所定部位を選択的かつ確実に双晶化することができる。
【0016】
一方、本発明に係る水晶デバイスは、請求項9ないし11のいずれかに記載の水晶振動片を使用して製造した構成とした。これにより、上記効果をともなった水晶デバイスを提供することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に係る双晶の形成方法、水晶振動片の製造方法、水晶振動片および水晶デバイスの好ましい実施の形態を、添付図面に従って詳細に説明する。なお以下に記載するのは本発明の実施形態の一態様にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
最初に、第1実施形態について説明する。図1に、第1実施形態に係る水晶振動片の説明図を示す。なお、同図(1)は平面図であり、同図(2)はA−A線における断面の拡大図である。第1実施形態に係る水晶振動片は、逆メサ型水晶振動片の励振電極形成部分の周辺部に、双晶部を形成したものである。
【0019】
図1に示すように、逆メサ型水晶振動片20では、水晶平板21の中央部に凹部(逆メサ部)24を設けて、当該部分における水晶の厚さを周縁部より薄く形成する。一例をあげれば、板厚100μmのウエハより周波数167MHzの逆メサ型水晶振動片を形成する場合、周縁部の厚さを100μmのままで、逆メサ部の厚さを10μmに形成する。なお図1では、水晶振動片20の両側に逆メサ部24を設けているが、片側のみに逆メサ部を設けてもよい。そして、逆メサ部の表面に励振電極26を形成する。励振電極26は、水晶振動片20の表裏両面に相対して形成する。さらに、水晶振動片20の一辺における両端角部には接続電極27を設けて、それぞれ表裏の励振電極26との導通を確保する。
【0020】
また、励振電極形成部分の周辺部には、励振電極26を取り囲むように、双晶部30を形成する。なお、水晶の表層のみに双晶を形成してもよいし、厚さ方向全体に双晶を形成してもよい。上述したように、水晶が双晶化すると共振周波数が高くなるので、励振電極26形成部分と双晶部30との共振周波数の差が大きくなり、双晶部がエネルギーバリアとして機能する。これにより、励振電極形成部分におけるエネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【0021】
上述した水晶振動片の製造方法について、図1を用いて説明する。なお逆メサ型水晶振動片20は、水晶ウエハにおいて複数個を同時に形成する。
【0022】
最初に、逆メサ型水晶振動片20の逆メサ部24を形成する。具体的には、まず水晶ウエハの表面全体に、Au/Cr等の耐蝕膜を、スパッタリング等により形成する。次に、耐蝕膜の表面全体にレジストを塗布し、露光および現像して、逆メサ部形成部分のレジストを除去する。次に、残したレジストをマスクとして耐蝕膜をエッチングし、逆メサ部形成部分の耐蝕膜を除去する。そして、残した耐蝕膜をマスクとして、水晶ウエハをエッチングし、逆メサ部を形成する。なお、水晶ウエハのエッチングは、エッチング液としてフッ酸とフッ化アンモニウムの混合液を使用したウエットエッチングによって行い、時間管理を伴ったハーフエッチングとする。その後、残したレジストおよび耐蝕膜を除去すれば、逆メサ型水晶振動片20の逆メサ部24が完成する。
【0023】
次に、励振電極26形成部分の周辺部に双晶部を形成する。図2に双晶部形成工程の説明図を示す。なお図2の各図は、図1のA−A線に相当する部分の断面の拡大図である。まず、図2(1)に示すように、水晶ウエハ40の表面にハードマスク41を配置する。なお、このハードマスク41には、双晶部に相当する部分に、開口部41aが形成されている。そして、このハードマスク41を介して蒸着やスパッタリング等を行うことにより、双晶部形成部分の表面に金属被膜42を形成する。金属被膜42は2層構造(不図示)とするのが好ましい。この場合、下層には水晶との密着性に優れたCrまたはNi被膜を形成し、上層には次述するはんだの濡れ性に優れたAuまたはAg被膜を形成する。さらに、同じハードマスク41を介して蒸着やスパッタリング等を行うことにより、金属被膜42の表面にはんだ44を配置する。なお、本実施形態では、双晶の形成に、組成がSn50%、Pb50%のはんだ44を使用するが、融点が水晶のαβ転移点である573℃未満の低融点金属であれば双晶を形成することができる。次に、図2(2)に示すように、水晶ウエハ40の表面に熱風45を吹き付ける。熱風45の温度は350〜400℃程度とする。はんだの融点は215℃程度であるから、熱風45による加熱ではんだ44が溶融して、金属被膜42の表面に濡れ広がる。さらに、はんだ44の熱が金属被膜42を介して水晶ウエハ40に伝達され、金属被膜42の下に選択的に蓄熱される。これにより、金属被膜42の下の水晶が双晶化して、双晶部30が形成される。その後、はんだ44および金属被膜42を除去すれば、図2(3)に示す状態となる。
【0024】
次に、図1に示す励振電極26や接続電極27等の電極を形成する。具体的には、まず水晶ウエハの表面全体に、Au/Cr等の電極膜を、蒸着やスパッタリング等により形成する。次に、電極膜の表面全体にレジストを塗布し、露光および現像して、電極形成部分以外の部分のレジストを除去する。そして、残したレジストをマスクとして電極膜をエッチングし、電極形成部分以外の部分の電極膜を除去する。その後、残したレジストを除去すれば、励振電極26や接続電極27等の電極が完成する。
【0025】
最後に、水晶ウエハから各水晶振動片を分離する。分離方法には、ダイシング、ブレーキング、水晶エッチング等の方法がある。以上により、第1実施形態に係る水晶振動片が完成する。
【0026】
上記のように形成した第1実施形態に係る水晶振動片は、水晶振動子等の水晶デバイスに使用することができる。図3に、本実施形態に係る水晶振動片を実装した水晶振動子の説明図を示す。同図(1)はC−C線における平面断面図であり、同図(2)はB−B線における側面断面図である。図3の水晶振動子1では、水晶振動片20を、パッケージ5のキャビティ6内に実装している。パッケージ5はセラミックシート等を積層して形成する。また、キャビティ6の底面にはマウント電極8を形成して、パッケージ5の裏面に形成した外部端子9との導通を確保する。そして、マウント電極8上に導電性接着剤7を塗布した上で、水晶振動片20の接続電極27を配置して、水晶振動片20を片持ち状態で実装する。なお、接続電極27は励振電極26と導通しているので、上記により、外部端子9から励振電極26に対して通電可能となる。なお、パッケージ5の上部には蓋部材10を装着し、キャビティ6の内部を必要に応じて窒素雰囲気等に保持する。
【0027】
また、第1実施形態に係る水晶振動片は、水晶発振器等の水晶デバイスにも使用することができる。水晶発振器は、発振回路を構成する集積回路素子と水晶振動子とを組み合わせたものである。例えば、図3に示す水晶振動子1と集積回路素子(不図示)とを、配線パターンを形成したモジュール基板上に実装することにより、水晶発振器モジュールを形成することができる。また、図3に示すパッケージ5の内部に、水晶振動片20とともに集積回路素子を実装することにより、水晶発振器パッケージを形成することができる。
【0028】
上述した第1実施形態に係る水晶振動片により、逆メサ型水晶振動片の強度を確保しつつ、エネルギー閉じ込め効果を得ることができる。この点、従来の逆メサ型水晶振動片では、励振電極形成部分の周辺部に溝部を形成して、エネルギー閉じ込め効果を得ていた。この場合、逆メサ部に溝部を形成するので、溝部における水晶が極端に薄くなり、強度の確保が困難であった。
【0029】
しかし、第1実施形態に係る水晶振動片では、励振電極形成部分の周辺部に双晶部を形成して、エネルギー閉じ込め効果を得る構成とした。この場合、逆メサ部における水晶の肉厚がさらに薄くなることはないので、強度を確保することができる。また、第1実施形態に係る水晶振動片の製造方法では、励振電極形成部分の周辺部の表面に金属被膜を形成し、金属被膜の表面にはんだを配置し、加熱して前記はんだを溶融させることにより、励振電極形成部分の周辺部を双晶化する構成とした。これにより、励振電極形成部分の周辺部のみを選択的かつ確実に双晶化することができる。
【0030】
なお、第1実施形態では、水晶をエッチングして逆メサ部を形成することにより、水晶を薄肉化して水晶振動片を高周波化したが、水晶を双晶化することによっても水晶振動片を高周波化することが可能である。そこで、逆メサ部を形成する代わりに、水晶振動片の振動部(逆メサ部に相当する部分)に双晶部を形成してもよい。その方法は、水晶振動片における振動部の表面に金属被膜を形成し、前記金属被膜の表面にはんだを配置し、加熱して前記はんだを溶融させることにより、前記振動部を双晶化する。これにより、水晶振動片に薄肉部がなくなるので、水晶振動片の強度を向上させることができる。
【0031】
次に、第2実施形態について説明する。図4に、第2実施形態に係る水晶振動片の断面図を示す。なお図4は、図6のF−F線に相当する部分における断面図である。第2実施形態に係る水晶振動片は、矩形状ATカット水晶振動片の長手方向両端部に、双晶部を形成したものである。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、その説明を省略する。
【0032】
図4に示す矩形状ATカット水晶振動片50では、水晶平板51の中央部に励振電極52を形成するとともに、長手方向両端部に双晶部55を形成している。なお、水晶平板51の表面のみに双晶部55を形成してもよいし、厚さ方向全体に双晶部を形成してもよい。第1実施形態で述べたように、水晶が双晶化すると共振周波数が高くなるので、励振電極52の形成部分と双晶部55との共振周波数の差が大きくなり、励振電極形成部分におけるエネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【0033】
第2実施形態に係る水晶振動片の製造方法は、矩形状ATカット水晶振動片50の長手方向両端部の表面に金属被膜を形成し、その金属被膜の表面にはんだを配置し、加熱して前記はんだを溶融させることにより、長手方向両端部を双晶化して双晶部55を形成する。その具体的な方法は、第1実施形態と同様である。
【0034】
そして、第2実施形態に係る水晶振動片により、安定したエネルギー閉じ込め効果を得ることができる。この点、低周波の矩形状ATカット水晶振動片では、その長手方向両端部にバレル加工により面取りを施して、エネルギー閉じ込め効果を得ていた。具体的には、周波数が4〜15MHzであって、長辺の長さが5〜8mmであり、短辺の長さが1.5〜2mmである矩形状ATカット水晶振動片では、コンベックス加工が必要となる。ところが、バレル加工は加工精度の確保が困難であり、安定したエネルギー閉じ込め効果を得ることはできなかった。
【0035】
しかし、第2実施形態に係る水晶振動片では、矩形状ATカット水晶振動片の長手方向両端部に、双晶部を形成した構成とした。この場合、フォトリソグラフィ等を用いて精度よく双晶部を形成できるので、双晶部では安定した共振周波数を得ることができる。したがって、安定したエネルギー閉じ込め効果を得ることができる。また、第2実施形態に係る水晶振動片の製造方法では、矩形状ATカット水晶振動片の長手方向両端部の表面に金属被膜を形成し、金属被膜の表面にはんだを配置し、加熱して前記はんだを溶融させることにより、矩形状ATカット水晶振動片の長手方向両端部を双晶化する構成とした。これにより、矩形状ATカット水晶振動片の長手方向両端部のみを選択的かつ確実に双晶化することができる。
【0036】
なお、第2実施形態では、矩形状ATカット水晶振動片の長手方向両端部を双晶化する場合について述べたが、BT、FC、IT、SCカットなど、ATカット以外の厚みすべり水晶振動片の場合にも同様に適用することができる。
【0037】
なお、第1から第2実施形態では、水晶基板の表面に金属被膜を形成し、その金属被膜の表面にはんだを配置し、加熱して前記はんだを溶融させることにより、金属被膜下の水晶基板を双晶化する方法を採用した。しかし、低融点金属を介することなく、水晶基板を双晶化することも可能である。すなわち、水晶基板の表面に金属被膜を形成し、その金属被膜を直接加熱することにより、前記金属被膜下の水晶基板を双晶化するのである。この場合、金属被膜を加熱する方法には、熱風の吹き付けや、金属被膜に吸収されやすい波長のレーザを照射する方法などを採用することができる。上記の方法により、はんだが不要となり、またはんだ塗布工程が不要となるので、製造コストを削減することができる。
【0038】
なお、スパッタ法を行う際に雰囲気温度が上昇することを利用して、上述した加熱工程を省略しても、水晶基板を双晶化することができる。すなわち、水晶基板の表面に、金属被膜をスパッタリングにより連続的に形成することにより、前記金属被膜下の水晶基板を双晶化するのである。一例を挙げれば、金属被膜をAu/Crの2層構造とし、まず、Crの下層を120オングストローム程度の厚さに形成する。次に、Auの上層を、1800オングストローム以上となるまで、連続的にスパッタリングにより形成する。ここで、Auの厚さが1800オングストローム未満で1000オングストローム以上の場合には双晶の形成が不安定となり、1000オングストローム未満の場合には本願の効果を奏するに足る双晶が形成されないことが確認されている。また、断続的にスパッタリングした場合には、本願の効果を奏するに足る双晶が形成されないことが確認されている。なお、スパッタリングの条件は、真空度3.8×10−1Pa、Arガス流量20sccm、電流1A、および電力0.64kWである。この方法により、加熱手段が不要となり、また加熱工程が不要となるので、製造コストを削減することができる。
【0039】
なお、第1、2実施形態中では、双晶を形成する低融点金属として組成がSn50%、Pb50%のはんだを使用した場合について説明したが、この低融点金属は、融点が水晶のαβ転移点である573℃未満の低融点金属であればよい。そのような低融点金属としては、例えばSn、Pb、Zn等の単体金属の他、Au−Sn系合金、Au−Si系合金、Au−Ge系合金、Sn−Pb系合金で代表される低融点のろうづけ用合金の総称であるはんだ等の合金がある。
【0040】
水晶振動片における所定部位の表面に金属被膜を形成し、前記金属被膜の表面に低融点金属を配置し、加熱して前記低融点金属を溶融させることにより、前記所定部位を双晶化する構成としたので、水晶振動片の所定部位を選択的かつ確実に双晶化することができる。
【0041】
また、逆メサ型水晶振動片の励振電極形成部分の周辺部を双晶化した構成としたので、水晶振動片の強度を確保しつつ、エネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【0042】
また、厚みすべり水晶振動片の端部を双晶化した構成としたので、安定したエネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る水晶振動片の説明図であり、(1)は平面図であり、(2)はA−A線における断面の拡大図である。
【図2】双晶化工程の説明図である。
【図3】本実施形態に係る水晶振動片を実装した水晶振動子の説明図であり、(1)はC−C線における平面断面図であり、(2)はB−B線における側面断面図である。
【図4】第2実施形態に係る水晶振動片の断面図である。
【図5】従来技術に係る水晶振動片の説明図であり、(1)は平面図であり、(2)はE−E線における断面の拡大図である。
【図6】従来技術に係る水晶振動片の断面図である。
【符号の説明】
1………水晶振動子
5………パッケージ
6………キャビティ
7………導電性接着剤
8………マウント電極
9………外部端子
10………蓋部材
20………逆メサ型水晶振動片
21………水晶平板
24………逆メサ部
26………励振電極
27………接続電極
30………双晶部
40………水晶ウエハ
41………ハードマスク
41a………開口部
42………金属被膜
44………はんだ
45………熱風
50………ATカット水晶振動片
51………水晶平板
52………励振電極
55………双晶部
120………逆メサ型水晶振動片
121………水晶平板
124………逆メサ部
126………励振電極
130………溝部
150………ATカット水晶振動片
151………水晶平板
152………励振電極
155………面取り
【発明の属する技術分野】
本発明は、双晶の形成方法、水晶振動片の製造方法、水晶振動片および水晶デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気回路において一定の周波数を得るため、水晶振動片が広く利用されている。水晶振動片は、水晶表面に励振電極を形成したものである。
【0003】
図5に逆メサ型水晶振動片の説明図を示す。なお、同図(1)は平面図であり、同図(2)はE−E線における断面の拡大図である。一般に、ATカット水晶振動片では、水晶平板の厚さが薄いほど共振周波数が高くなる。そこで、水晶平板121の中央部に凹部(逆メサ部)124を形成して水晶を薄肉化し、その逆メサ部124の表面に励振電極126を形成した、逆メサ型水晶振動片120が開発されている。
【0004】
ところで、水晶の薄肉化とともに、不要なスプリアス振動を抑制するため、励振電極の厚さを薄くする必要がある。しかし、励振電極の厚さを薄くすると、励振電極形成部分におけるエネルギー閉じ込め効果が十分に得られなくなる。一方、励振電極形成部分における水晶の共振周波数は、その周辺部における共振周波数より低くなる。ここで、励振電極形成部分の共振周波数よりその周辺部の共振周波数が高くなると、励振電極形成部分の周辺部がエネルギーバリアとして機能し、励振電極形成部分におけるエネルギー閉じ込め効果が得られる。そこで、励振電極126形成部分の周辺部に溝部130を形成して、周辺部における水晶の共振周波数をより高周波化している。これにより、励振電極126形成部分の共振周波数より溝部130の共振周波数がより高くなり、すなわち共振周波数の差を大きくして、励振電極形成部分におけるエネルギー閉じ込め効果を得ている。以下、このような関係において、共振周波数の差、と表現する。
【0005】
また、図6にコンベックス加工を施した水晶振動片の説明図を示す。なお、同図(1)は斜視図であり、同図(2)はF−F線における断面図である。一般に、低周波数のATカット水晶振動片150では、水晶平板151の肉厚に対する励振電極152の膜厚の比率が小さいので、エネルギー閉じ込め効果が十分に得られない。しかし、水晶平板151をレンズ状(コンベックス形状)に形成することにより、水晶平板の端部が薄肉化され、当該端部と励振電極形成部分との共振周波数の差が大きくなって、エネルギー閉じ込め効果を得ることができる。そこで、図6に示すように、厚みすべり水晶振動片150の両端部に、面取り加工(コンベックス加工)155を施している。面取りはバレル加工によって行う。バレル加工は、一例としては、パイプ状のポットの中に水晶振動片と研磨剤とを入れ、ポットをその中心軸のまわりに回転させることによって、水晶平板の角部に面取りを施すものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図5に示す逆メサ型水晶振動片120の逆メサ部124は、例えば10μm程度の薄さに形成されている。そして、エネルギー閉じ込め効果を得るため、逆メサ部124における励振電極126形成部分の周辺部に溝部130を形成すると、溝部における水晶が極端に薄くなって、強度の確保が困難になるという問題がある。そこで本発明は、強度を確保しつつエネルギー閉じ込め効果を得ることが可能な、水晶振動片の製造方法および水晶振動片の提供を目的とする。
【0007】
また、図6に示す水晶振動片150の面取り155を、バレル加工によって形成する場合には、加工精度の確保が困難であり、安定したエネルギー閉じ込め効果を得ることができないという問題がある。そこで本発明は、安定したエネルギー閉じ込め効果を得ることが可能な、水晶振動片の製造方法および水晶振動片の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水晶基板の表面に金属被膜を形成し、前記金属被膜の表面に低融点金属を配置し、加熱して前記低融点金属を溶融させることにより、金属被膜下の水晶基板を双晶化することができるという知見に基づいている。一般に、水晶は573℃にαβ転移点を有し、これを越えると双晶化することが知られている。もっとも、水晶基板の所定部位のみを573℃以上とし、それ以外の部位を573℃未満とするように、厳密に区別するのは不可能であるから、水晶を選択的に双晶化することはできなかった。しかし、本願発明者は、上述した方法を使用すれば、金属被膜や溶融した低融点金属による蓄熱効果等により、573℃以下の加熱温度でも水晶が双晶化することを見出した。これは、水晶基板の一部のみを選択的に双晶化し得ることを意味する。そして、水晶が双晶化すると共振周波数が高くなる。
これにより、水晶を薄肉化した場合と同様の効果を得ることができるのである。
【0009】
なお、水晶基板の表面に金属被膜を形成する方法には、蒸着法やスパッタ法、CVD法、めっき法等を単独で、または複合して採用することができる。なお、ハードマスクや、フォトリソグラフィによりパターニングされたレジストマスクなどを介して、蒸着法やスパッタ法を行うことにより、水晶基板表面の所定部位に金属被膜を形成することができる。また、水晶基板の表面全体に金属被膜を形成した後に、フォトリソグラフィによりパターニングしたレジストをマスクとして、前記金属被膜のエッチングを行うことによっても、水晶基板表面の所定部位に金属被膜を形成することができる。一方、金属被膜の表面に低融点金属を配置する方法には、乾式メッキ(蒸着法、スパッタ法等)や湿式メッキ、スクリーン印刷方式等を採用することができる。なお、金属皮膜の表面に、部分的に固体の低融点金属を配置してもよく、低融点金属のメッキなど表面に低融点金属の付着した線材等を配置してもよい。さらに、加熱して前記低融点金属を溶融させる方法には、熱風の吹き付けや、低融点金属に吸収されやすい波長のレーザを照射する方法を採用することができる。
【0010】
上述した知見をふまえて、本発明に係る水晶振動片の製造方法は、水晶振動片における所定部位の表面に金属被膜を形成し、前記金属被膜の表面に低融点金属を配置し、加熱して前記低融点金属を溶融させることにより、前記所定部位を双晶化する構成とした。これにより、水晶振動片の所定部位を選択的かつ確実に双晶化することができる。
【0011】
また、請求項4に記載の水晶振動片の製造方法において、前記所定部位は、逆メサ型水晶振動片の励振電極形成部分の周辺部である構成とした。これにより、水晶振動片の強度を確保しつつ、エネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【0012】
また、請求項4に記載の水晶振動片の製造方法において、前記所定部位は、厚みすべり水晶振動片の端部である構成とした。これにより、安定したエネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【0013】
一方、本発明に係る水晶振動片は、逆メサ型水晶振動片の励振電極形成部分の周辺部を双晶化した構成とした。これにより、水晶振動片の強度を確保しつつ、エネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【0014】
また、厚みすべり水晶振動片の端部を双晶化した構成とした。これにより、安定したエネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【0015】
また、請求項4ないし8のいずれかに記載の水晶振動片の製造方法を使用して製造した構成とした。これにより、水晶振動片の所定部位を選択的かつ確実に双晶化することができる。
【0016】
一方、本発明に係る水晶デバイスは、請求項9ないし11のいずれかに記載の水晶振動片を使用して製造した構成とした。これにより、上記効果をともなった水晶デバイスを提供することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に係る双晶の形成方法、水晶振動片の製造方法、水晶振動片および水晶デバイスの好ましい実施の形態を、添付図面に従って詳細に説明する。なお以下に記載するのは本発明の実施形態の一態様にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
最初に、第1実施形態について説明する。図1に、第1実施形態に係る水晶振動片の説明図を示す。なお、同図(1)は平面図であり、同図(2)はA−A線における断面の拡大図である。第1実施形態に係る水晶振動片は、逆メサ型水晶振動片の励振電極形成部分の周辺部に、双晶部を形成したものである。
【0019】
図1に示すように、逆メサ型水晶振動片20では、水晶平板21の中央部に凹部(逆メサ部)24を設けて、当該部分における水晶の厚さを周縁部より薄く形成する。一例をあげれば、板厚100μmのウエハより周波数167MHzの逆メサ型水晶振動片を形成する場合、周縁部の厚さを100μmのままで、逆メサ部の厚さを10μmに形成する。なお図1では、水晶振動片20の両側に逆メサ部24を設けているが、片側のみに逆メサ部を設けてもよい。そして、逆メサ部の表面に励振電極26を形成する。励振電極26は、水晶振動片20の表裏両面に相対して形成する。さらに、水晶振動片20の一辺における両端角部には接続電極27を設けて、それぞれ表裏の励振電極26との導通を確保する。
【0020】
また、励振電極形成部分の周辺部には、励振電極26を取り囲むように、双晶部30を形成する。なお、水晶の表層のみに双晶を形成してもよいし、厚さ方向全体に双晶を形成してもよい。上述したように、水晶が双晶化すると共振周波数が高くなるので、励振電極26形成部分と双晶部30との共振周波数の差が大きくなり、双晶部がエネルギーバリアとして機能する。これにより、励振電極形成部分におけるエネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【0021】
上述した水晶振動片の製造方法について、図1を用いて説明する。なお逆メサ型水晶振動片20は、水晶ウエハにおいて複数個を同時に形成する。
【0022】
最初に、逆メサ型水晶振動片20の逆メサ部24を形成する。具体的には、まず水晶ウエハの表面全体に、Au/Cr等の耐蝕膜を、スパッタリング等により形成する。次に、耐蝕膜の表面全体にレジストを塗布し、露光および現像して、逆メサ部形成部分のレジストを除去する。次に、残したレジストをマスクとして耐蝕膜をエッチングし、逆メサ部形成部分の耐蝕膜を除去する。そして、残した耐蝕膜をマスクとして、水晶ウエハをエッチングし、逆メサ部を形成する。なお、水晶ウエハのエッチングは、エッチング液としてフッ酸とフッ化アンモニウムの混合液を使用したウエットエッチングによって行い、時間管理を伴ったハーフエッチングとする。その後、残したレジストおよび耐蝕膜を除去すれば、逆メサ型水晶振動片20の逆メサ部24が完成する。
【0023】
次に、励振電極26形成部分の周辺部に双晶部を形成する。図2に双晶部形成工程の説明図を示す。なお図2の各図は、図1のA−A線に相当する部分の断面の拡大図である。まず、図2(1)に示すように、水晶ウエハ40の表面にハードマスク41を配置する。なお、このハードマスク41には、双晶部に相当する部分に、開口部41aが形成されている。そして、このハードマスク41を介して蒸着やスパッタリング等を行うことにより、双晶部形成部分の表面に金属被膜42を形成する。金属被膜42は2層構造(不図示)とするのが好ましい。この場合、下層には水晶との密着性に優れたCrまたはNi被膜を形成し、上層には次述するはんだの濡れ性に優れたAuまたはAg被膜を形成する。さらに、同じハードマスク41を介して蒸着やスパッタリング等を行うことにより、金属被膜42の表面にはんだ44を配置する。なお、本実施形態では、双晶の形成に、組成がSn50%、Pb50%のはんだ44を使用するが、融点が水晶のαβ転移点である573℃未満の低融点金属であれば双晶を形成することができる。次に、図2(2)に示すように、水晶ウエハ40の表面に熱風45を吹き付ける。熱風45の温度は350〜400℃程度とする。はんだの融点は215℃程度であるから、熱風45による加熱ではんだ44が溶融して、金属被膜42の表面に濡れ広がる。さらに、はんだ44の熱が金属被膜42を介して水晶ウエハ40に伝達され、金属被膜42の下に選択的に蓄熱される。これにより、金属被膜42の下の水晶が双晶化して、双晶部30が形成される。その後、はんだ44および金属被膜42を除去すれば、図2(3)に示す状態となる。
【0024】
次に、図1に示す励振電極26や接続電極27等の電極を形成する。具体的には、まず水晶ウエハの表面全体に、Au/Cr等の電極膜を、蒸着やスパッタリング等により形成する。次に、電極膜の表面全体にレジストを塗布し、露光および現像して、電極形成部分以外の部分のレジストを除去する。そして、残したレジストをマスクとして電極膜をエッチングし、電極形成部分以外の部分の電極膜を除去する。その後、残したレジストを除去すれば、励振電極26や接続電極27等の電極が完成する。
【0025】
最後に、水晶ウエハから各水晶振動片を分離する。分離方法には、ダイシング、ブレーキング、水晶エッチング等の方法がある。以上により、第1実施形態に係る水晶振動片が完成する。
【0026】
上記のように形成した第1実施形態に係る水晶振動片は、水晶振動子等の水晶デバイスに使用することができる。図3に、本実施形態に係る水晶振動片を実装した水晶振動子の説明図を示す。同図(1)はC−C線における平面断面図であり、同図(2)はB−B線における側面断面図である。図3の水晶振動子1では、水晶振動片20を、パッケージ5のキャビティ6内に実装している。パッケージ5はセラミックシート等を積層して形成する。また、キャビティ6の底面にはマウント電極8を形成して、パッケージ5の裏面に形成した外部端子9との導通を確保する。そして、マウント電極8上に導電性接着剤7を塗布した上で、水晶振動片20の接続電極27を配置して、水晶振動片20を片持ち状態で実装する。なお、接続電極27は励振電極26と導通しているので、上記により、外部端子9から励振電極26に対して通電可能となる。なお、パッケージ5の上部には蓋部材10を装着し、キャビティ6の内部を必要に応じて窒素雰囲気等に保持する。
【0027】
また、第1実施形態に係る水晶振動片は、水晶発振器等の水晶デバイスにも使用することができる。水晶発振器は、発振回路を構成する集積回路素子と水晶振動子とを組み合わせたものである。例えば、図3に示す水晶振動子1と集積回路素子(不図示)とを、配線パターンを形成したモジュール基板上に実装することにより、水晶発振器モジュールを形成することができる。また、図3に示すパッケージ5の内部に、水晶振動片20とともに集積回路素子を実装することにより、水晶発振器パッケージを形成することができる。
【0028】
上述した第1実施形態に係る水晶振動片により、逆メサ型水晶振動片の強度を確保しつつ、エネルギー閉じ込め効果を得ることができる。この点、従来の逆メサ型水晶振動片では、励振電極形成部分の周辺部に溝部を形成して、エネルギー閉じ込め効果を得ていた。この場合、逆メサ部に溝部を形成するので、溝部における水晶が極端に薄くなり、強度の確保が困難であった。
【0029】
しかし、第1実施形態に係る水晶振動片では、励振電極形成部分の周辺部に双晶部を形成して、エネルギー閉じ込め効果を得る構成とした。この場合、逆メサ部における水晶の肉厚がさらに薄くなることはないので、強度を確保することができる。また、第1実施形態に係る水晶振動片の製造方法では、励振電極形成部分の周辺部の表面に金属被膜を形成し、金属被膜の表面にはんだを配置し、加熱して前記はんだを溶融させることにより、励振電極形成部分の周辺部を双晶化する構成とした。これにより、励振電極形成部分の周辺部のみを選択的かつ確実に双晶化することができる。
【0030】
なお、第1実施形態では、水晶をエッチングして逆メサ部を形成することにより、水晶を薄肉化して水晶振動片を高周波化したが、水晶を双晶化することによっても水晶振動片を高周波化することが可能である。そこで、逆メサ部を形成する代わりに、水晶振動片の振動部(逆メサ部に相当する部分)に双晶部を形成してもよい。その方法は、水晶振動片における振動部の表面に金属被膜を形成し、前記金属被膜の表面にはんだを配置し、加熱して前記はんだを溶融させることにより、前記振動部を双晶化する。これにより、水晶振動片に薄肉部がなくなるので、水晶振動片の強度を向上させることができる。
【0031】
次に、第2実施形態について説明する。図4に、第2実施形態に係る水晶振動片の断面図を示す。なお図4は、図6のF−F線に相当する部分における断面図である。第2実施形態に係る水晶振動片は、矩形状ATカット水晶振動片の長手方向両端部に、双晶部を形成したものである。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、その説明を省略する。
【0032】
図4に示す矩形状ATカット水晶振動片50では、水晶平板51の中央部に励振電極52を形成するとともに、長手方向両端部に双晶部55を形成している。なお、水晶平板51の表面のみに双晶部55を形成してもよいし、厚さ方向全体に双晶部を形成してもよい。第1実施形態で述べたように、水晶が双晶化すると共振周波数が高くなるので、励振電極52の形成部分と双晶部55との共振周波数の差が大きくなり、励振電極形成部分におけるエネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【0033】
第2実施形態に係る水晶振動片の製造方法は、矩形状ATカット水晶振動片50の長手方向両端部の表面に金属被膜を形成し、その金属被膜の表面にはんだを配置し、加熱して前記はんだを溶融させることにより、長手方向両端部を双晶化して双晶部55を形成する。その具体的な方法は、第1実施形態と同様である。
【0034】
そして、第2実施形態に係る水晶振動片により、安定したエネルギー閉じ込め効果を得ることができる。この点、低周波の矩形状ATカット水晶振動片では、その長手方向両端部にバレル加工により面取りを施して、エネルギー閉じ込め効果を得ていた。具体的には、周波数が4〜15MHzであって、長辺の長さが5〜8mmであり、短辺の長さが1.5〜2mmである矩形状ATカット水晶振動片では、コンベックス加工が必要となる。ところが、バレル加工は加工精度の確保が困難であり、安定したエネルギー閉じ込め効果を得ることはできなかった。
【0035】
しかし、第2実施形態に係る水晶振動片では、矩形状ATカット水晶振動片の長手方向両端部に、双晶部を形成した構成とした。この場合、フォトリソグラフィ等を用いて精度よく双晶部を形成できるので、双晶部では安定した共振周波数を得ることができる。したがって、安定したエネルギー閉じ込め効果を得ることができる。また、第2実施形態に係る水晶振動片の製造方法では、矩形状ATカット水晶振動片の長手方向両端部の表面に金属被膜を形成し、金属被膜の表面にはんだを配置し、加熱して前記はんだを溶融させることにより、矩形状ATカット水晶振動片の長手方向両端部を双晶化する構成とした。これにより、矩形状ATカット水晶振動片の長手方向両端部のみを選択的かつ確実に双晶化することができる。
【0036】
なお、第2実施形態では、矩形状ATカット水晶振動片の長手方向両端部を双晶化する場合について述べたが、BT、FC、IT、SCカットなど、ATカット以外の厚みすべり水晶振動片の場合にも同様に適用することができる。
【0037】
なお、第1から第2実施形態では、水晶基板の表面に金属被膜を形成し、その金属被膜の表面にはんだを配置し、加熱して前記はんだを溶融させることにより、金属被膜下の水晶基板を双晶化する方法を採用した。しかし、低融点金属を介することなく、水晶基板を双晶化することも可能である。すなわち、水晶基板の表面に金属被膜を形成し、その金属被膜を直接加熱することにより、前記金属被膜下の水晶基板を双晶化するのである。この場合、金属被膜を加熱する方法には、熱風の吹き付けや、金属被膜に吸収されやすい波長のレーザを照射する方法などを採用することができる。上記の方法により、はんだが不要となり、またはんだ塗布工程が不要となるので、製造コストを削減することができる。
【0038】
なお、スパッタ法を行う際に雰囲気温度が上昇することを利用して、上述した加熱工程を省略しても、水晶基板を双晶化することができる。すなわち、水晶基板の表面に、金属被膜をスパッタリングにより連続的に形成することにより、前記金属被膜下の水晶基板を双晶化するのである。一例を挙げれば、金属被膜をAu/Crの2層構造とし、まず、Crの下層を120オングストローム程度の厚さに形成する。次に、Auの上層を、1800オングストローム以上となるまで、連続的にスパッタリングにより形成する。ここで、Auの厚さが1800オングストローム未満で1000オングストローム以上の場合には双晶の形成が不安定となり、1000オングストローム未満の場合には本願の効果を奏するに足る双晶が形成されないことが確認されている。また、断続的にスパッタリングした場合には、本願の効果を奏するに足る双晶が形成されないことが確認されている。なお、スパッタリングの条件は、真空度3.8×10−1Pa、Arガス流量20sccm、電流1A、および電力0.64kWである。この方法により、加熱手段が不要となり、また加熱工程が不要となるので、製造コストを削減することができる。
【0039】
なお、第1、2実施形態中では、双晶を形成する低融点金属として組成がSn50%、Pb50%のはんだを使用した場合について説明したが、この低融点金属は、融点が水晶のαβ転移点である573℃未満の低融点金属であればよい。そのような低融点金属としては、例えばSn、Pb、Zn等の単体金属の他、Au−Sn系合金、Au−Si系合金、Au−Ge系合金、Sn−Pb系合金で代表される低融点のろうづけ用合金の総称であるはんだ等の合金がある。
【0040】
水晶振動片における所定部位の表面に金属被膜を形成し、前記金属被膜の表面に低融点金属を配置し、加熱して前記低融点金属を溶融させることにより、前記所定部位を双晶化する構成としたので、水晶振動片の所定部位を選択的かつ確実に双晶化することができる。
【0041】
また、逆メサ型水晶振動片の励振電極形成部分の周辺部を双晶化した構成としたので、水晶振動片の強度を確保しつつ、エネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【0042】
また、厚みすべり水晶振動片の端部を双晶化した構成としたので、安定したエネルギー閉じ込め効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る水晶振動片の説明図であり、(1)は平面図であり、(2)はA−A線における断面の拡大図である。
【図2】双晶化工程の説明図である。
【図3】本実施形態に係る水晶振動片を実装した水晶振動子の説明図であり、(1)はC−C線における平面断面図であり、(2)はB−B線における側面断面図である。
【図4】第2実施形態に係る水晶振動片の断面図である。
【図5】従来技術に係る水晶振動片の説明図であり、(1)は平面図であり、(2)はE−E線における断面の拡大図である。
【図6】従来技術に係る水晶振動片の断面図である。
【符号の説明】
1………水晶振動子
5………パッケージ
6………キャビティ
7………導電性接着剤
8………マウント電極
9………外部端子
10………蓋部材
20………逆メサ型水晶振動片
21………水晶平板
24………逆メサ部
26………励振電極
27………接続電極
30………双晶部
40………水晶ウエハ
41………ハードマスク
41a………開口部
42………金属被膜
44………はんだ
45………熱風
50………ATカット水晶振動片
51………水晶平板
52………励振電極
55………双晶部
120………逆メサ型水晶振動片
121………水晶平板
124………逆メサ部
126………励振電極
130………溝部
150………ATカット水晶振動片
151………水晶平板
152………励振電極
155………面取り
Claims (12)
- 水晶基板の表面に金属被膜を形成し、前記金属被膜の表面に低融点金属を配置し、加熱して前記低融点金属を溶融させることにより、前記金属被膜下の前記水晶基板を双晶化することを特徴とする双晶の形成方法。
- 請求項1に記載の双晶の形成方法において、前記低融点金属は融点が水晶のαβ転移点未満の温度であることを特徴とする双晶の形成方法。
- 請求項1または2に記載の双晶の形成方法において、前記低融点金属ははんだであることを特徴とする双晶の形成方法。
- 水晶振動片における所定部位の表面に金属被膜を形成し、前記金属被膜の表面に低融点金属を配置し、加熱して前記低融点金属を溶融させることにより、前記所定部位を双晶化することを特徴とする水晶振動片の製造方法。
- 請求項4に記載の双晶の形成方法において、前記低融点金属は融点が水晶のαβ転移点未満の温度であることを特徴とする水晶振動片の製造方法。
- 請求項項4または5に記載の双晶の形成方法において、前記低融点金属ははんだであることを特徴とする水晶振動片の製造方法。
- 請求項4ないし6のいずれかに記載の水晶振動片の製造方法において、
前記所定部位は、逆メサ型水晶振動片の励振電極形成部分の周辺部であることを特徴とする水晶振動片の製造方法。 - 請求項4ないし6のいずれかにに記載の水晶振動片の製造方法において、
前記所定部位は、厚みすべり水晶振動片の端部であることを特徴とする水晶振動片の製造方法。 - 逆メサ型水晶振動片の励振電極形成部分の周辺部に、双晶部を形成したことを特徴とする水晶振動片。
- 厚みすべり水晶振動片の端部に、双晶部を形成したことを特徴とする水晶振動片。
- 請求項4ないし8のいずれかに記載の水晶振動片の製造方法を使用して製造したことを特徴とする水晶振動片。
- 請求項9ないし11のいずれかに記載の水晶振動片を使用して製造したことを特徴とする水晶デバイス。
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