JP2004047924A - 磁性薄膜の形成方法、磁気記録媒体およびその製造方法、ならびに熱処理装置 - Google Patents
磁性薄膜の形成方法、磁気記録媒体およびその製造方法、ならびに熱処理装置 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】磁気記録媒体1は、基板2と、この基板2の一方の面の上に順に配置された下地層3、磁性層4、保護層5および潤滑層6を備えている。磁性層4は、面心正方晶系の結晶構造を有する規則相のFePt合金を含む磁性薄膜よりなる。この磁性薄膜は、スパッタリング法によって、面心立方晶系の結晶構造を有する不規則相のFePt合金を含む薄膜を形成した後、この薄膜を熱処理することによって形成する。熱処理では、薄膜と基板2のうち、薄膜の方を熱源の近くに配置し、基板2の温度が所定の温度に達するまでの期間における基板2の昇温速度を7℃/分以上とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体の磁性層として用いるのに適した磁性薄膜の形成方法、基板とその上に配置された磁性層とを有する磁気記録媒体およびその製造方法、ならびに上記磁性薄膜を形成する際に利用される熱処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、ハードディスク装置等の磁気ディスク装置に用いられる磁気記録媒体は、基板とその上に配置された磁性層とを有している。近年、磁気記録媒体では、面記録密度の向上に伴い、熱揺らぎによる記録の劣化が問題になってきている。そのため、磁気記録媒体の磁性層の材料としては、保磁力の大きな磁性材料が求められている。そのような磁性材料の一つとして、面心正方晶系の結晶構造を有する規則相のFe−Pt(鉄−白金)系合金やCo−Pt(コバルト−白金)系合金が注目されている。これらの規則相の合金は大きな一軸磁気異方性を有する。そのため、これらの規則相の合金の薄膜は、大きな面内方向の保磁力を有する。例えば、規則相のFe−Pt系合金の薄膜は、10kOe(=×79.6×103A/m)を超えるような面内方向の保磁力を有する。
【0003】
ところで、磁気記録媒体の磁性層の形成方法としては、一般的に、量産性に優れた方法である物理的気相成長法、例えばスパッタリング法が用いられている。しかし、スパッタリング法によって、Fe−Pt系合金を含む薄膜を成膜すると、保磁力が極めて小さい面心立方晶系の結晶構造を有する不規則相のFe−Pt合金を含む薄膜が形成される。ただし、不規則相のFe−Pt合金は、500℃程度の温度での熱処理を施すことにより、その結晶構造が不規則相の結晶構造から規則相の結晶構造に変化することが知られている。従って、磁気記録媒体の磁性層として規則相のFe−Pt系合金を含む薄膜を用い、且つこの薄膜をスパッタリング法を用いて形成する場合には、スパッタリング後の薄膜を熱処理することが必要になる。以上のことは、規則相のCo−Pt系合金を含む薄膜を形成する場合も同様である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一方、磁気記録媒体の基板には、アルミニウム基板やガラス基板やプラスチック基板がある。このうち、プラスチック基板には、低コストで製造できるという利点がある。従って、プラスチック基板の上に、スパッタリング法による成膜と熱処理とを用いて、規則相の合金を含む薄膜よりなる磁性層を形成することができれば、高い面記録密度に対応可能で、且つ低コストで製造可能な磁気記録媒体を実現することが可能になる。
【0005】
しかしながら、プラスチック基板は熱に対して弱い。例えば、プラスチック基板の材料としてよく用いられるポリカーボートのガラス転移温度は145〜150℃程度である。そのため、従来は、熱によるプラスチック基板の損傷を防止しながら、プラスチック基板の上に、上述のようにスパッタリングによる成膜と熱処理とを用いて、規則相の合金を含む薄膜よりなる磁性層を形成することが困難であった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、熱による下地の損傷を防止しながら、熱処理工程を経て、下地の上に面心正方晶系の結晶構造を有する規則相の合金を含む磁性薄膜を形成することができるようにした磁性薄膜の形成方法を提供することにある。
【0007】
本発明の第2の目的は、熱による基板の損傷を防止しながら、熱処理工程を経て、基板の上に面心正方晶系の結晶構造を有する規則相の合金を含む磁性薄膜よりなる磁性層を形成することができるようにした磁気記録媒体の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の第3の目的は、高い面記録密度に対応可能で、且つ低コストで製造可能な磁気記録媒体を提供することにある。
【0009】
本発明の第4の目的は、熱による基板の損傷を防止しながら、基板の上に形成された薄膜に対して熱処理を行うことができるようにした熱処理装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の磁性薄膜の形成方法は、面心正方晶系の結晶構造を有する規則相の合金を含む磁性薄膜を形成する方法であって、
下地の上に、面心立方晶系の結晶構造を有する不規則相の合金を含む薄膜を形成する工程と、
薄膜中の合金の結晶構造を不規則相の結晶構造から規則相の結晶構造に変化させるために薄膜を熱処理する工程とを備え、
熱処理する工程は、薄膜と下地のうち、薄膜の方を熱源の近くに配置し、下地の温度を、所定の温度に達するまで7℃/分以上の昇温速度で上昇させるものである。
【0011】
本発明の第1の磁性薄膜の形成方法では、面心立方晶系の結晶構造を有する不規則相の合金を含む薄膜が形成される。この薄膜は、熱処理されることによって、薄膜中の合金の結晶構造が不規則相の結晶構造から規則相の結晶構造に変化して、規則相の合金を含む磁性薄膜となる。本発明では、薄膜を熱処理する際に、薄膜と下地のうち、薄膜の方を熱源の近くに配置し、下地の温度を、所定の温度に達するまで7℃/分以上の昇温速度で上昇させる。これにより、基板の温度を比較的低い温度に保ちながら、合金の結晶構造を不規則相の結晶構造から規則相の結晶構造に変化させることが可能になる。
【0012】
本発明の第1の磁性薄膜の形成方法において、合金は、Fe−Pt系の合金またはCo−Pt系の合金であってもよい。
【0013】
また、本発明の第1の磁性薄膜の形成方法において、薄膜を形成する工程は、物理的気相成長法によって薄膜を形成してもよい。この場合、薄膜を形成する工程は、物理的気相成長法としてスパッタリング法を用いてもよい。
【0014】
また、本発明の第1の磁性薄膜の形成方法において、薄膜を形成する工程は、非磁性材料の膜中に合金の粒子が分散されたグラニュラ構造の薄膜を形成してもよい。
【0015】
また、本発明の第1の磁性薄膜の形成方法において、薄膜を形成する工程は、それぞれ磁性材料よりなり、互いに分離された複数の微小な構造物を有する薄膜を形成してもよい。
【0016】
また、本発明の第1の磁性薄膜の形成方法において、薄膜を形成する工程は、合金を構成する元素以外の元素を含むように薄膜を形成してもよい。
【0017】
また、本発明の第1の磁性薄膜の形成方法において、昇温速度を13℃/分以上としてもよいし、17℃/分以上としてもよい。
【0018】
本発明の第1の磁気記録媒体の製造方法は、基板とその上に配置された磁性層とを有し、磁性層は面心正方晶系の結晶構造を有する規則相の合金を含む磁性薄膜よりなる磁気記録媒体を製造する方法であって、本発明の第1の磁性薄膜の形成方法を用いて、下地としての基板の上に、磁性薄膜よりなる磁性層を形成するものである。
【0019】
本発明の第2の磁性薄膜の形成方法は、面心正方晶系の結晶構造を有する規則相の合金を含む磁性薄膜を形成する方法であって、
下地の上に、面心立方晶系の結晶構造を有する不規則相の合金を含む薄膜を形成する工程と、
薄膜中の合金の結晶構造を不規則相の結晶構造から規則相の結晶構造に変化させるために、薄膜を所定の温度で熱処理する工程とを備え、
熱処理する工程は、下地の温度を所定の温度よりも低くするするものである。
【0020】
本発明の第2の磁性薄膜の形成方法では、面心立方晶系の結晶構造を有する不規則相の合金を含む薄膜が形成される。この薄膜は、所定の温度で熱処理することによって、薄膜中の合金の結晶構造が不規則相の結晶構造から規則相の結晶構造に変化して、規則相の合金を含む磁性薄膜となる。本発明では、薄膜を熱処理する際に、下地の温度を所定の温度よりも低くする。これにより、熱による下地の損傷を防止しながら、合金の結晶構造を不規則相の結晶構造から規則相の結晶構造に変化させることが可能になる。
【0021】
本発明の第2の磁性薄膜の形成方法において、合金は、Fe−Pt系の合金またはCo−Pt系の合金であってもよい。
【0022】
また、本発明の第2の磁性薄膜の形成方法において、薄膜を形成する工程は、物理的気相成長法によって薄膜を形成してもよい。この場合、薄膜を形成する工程は、物理的気相成長法としてスパッタリング法を用いてもよい。
【0023】
また、本発明の第2の磁性薄膜の形成方法において、薄膜を形成する工程は、非磁性材料の膜中に合金の粒子が分散されたグラニュラ構造の薄膜を形成してもよい。
【0024】
また、本発明の第2の磁性薄膜の形成方法において、薄膜を形成する工程は、それぞれ磁性材料よりなり、互いに分離された複数の微小な構造物を有する薄膜を形成してもよい。
【0025】
また、本発明の第2の磁性薄膜の形成方法において、薄膜を形成する工程は、合金を構成する元素以外の元素を含むように薄膜を形成してもよい。
【0026】
また、本発明の第2の磁性薄膜の形成方法において、所定の温度は500℃以上であってもよい。
【0027】
また、本発明の第2の磁性薄膜の形成方法において、熱処理する工程における下地の温度は150℃以下であってもよい。
【0028】
また、本発明の第2の磁性薄膜の形成方法において、熱処理する工程における所定の温度と下地の温度との差は350℃以上であってもよい。
【0029】
また、本発明の第2の磁性薄膜の形成方法において、熱処理する工程は、薄膜の温度を、所定の温度に達するまで、10℃/分以上の昇温速度で上昇させてもよい。
【0030】
また、本発明の第2の磁性薄膜の形成方法において、熱処理する工程は、薄膜の温度を、所定の温度に達するまで、60℃/分以上の昇温速度で上昇させてもよい。
【0031】
また、本発明の第2の磁性薄膜の形成方法において、熱処理する工程は、薄膜の温度を、所定の温度に達するまで、300℃/分以上の昇温速度で上昇させてもよい。
【0032】
また、本発明の第2の磁性薄膜の形成方法において、熱処理する工程は、薄膜の温度を、所定の温度に達するまで、3000℃/分以上の昇温速度で上昇させてもよい。
【0033】
また、本発明の第2の磁性薄膜の形成方法において、熱処理する工程は、薄膜に赤外線を照射して薄膜を加熱してもよい。この場合、熱処理する工程は、下地を冷却用部材に接触させた状態で、薄膜に赤外線を照射してもよい。あるいは、熱処理する工程は、下地を、冷却用部材との間に空隙が生じるように冷却用部材に接近させた状態で、薄膜に赤外線を照射してもよい。また、熱処理する工程は、下地および薄膜を、減圧された空間内に収納した状態で、薄膜に赤外線を照射してもよい。この場合、減圧された空間内の圧力は、1〜33Paの範囲内であってもよい。
【0034】
本発明の第2の磁気記録媒体の製造方法は、基板とその上に配置された磁性層とを有し、磁性層は面心正方晶系の結晶構造を有する規則相の合金を含む磁性薄膜よりなる磁気記録媒体を製造する方法であって、本発明の第2の磁性薄膜の形成方法を用いて、下地としての基板の上に、磁性薄膜よりなる磁性層を形成するものである。
【0035】
また、本発明の磁気記録媒体は、プラスチック基板と、プラスチック基板の上に配置された磁性層とを備え、磁性層は、面心正方晶系の結晶構造を有する規則相の合金を含む磁性薄膜よりなるものである。本発明の磁気記録媒体は、本発明の第1または第2の磁気記録媒体の製造方法によって製造することができる。
【0036】
本発明の磁気記録媒体において、合金は、Fe−Pt系の合金またはCo−Pt系の合金であってもよい。
【0037】
また、本発明の磁気記録媒体において、磁性薄膜は、非磁性材料の膜中に合金の粒子が分散されたグラニュラ構造を有していてもよい。
【0038】
また、本発明の磁気記録媒体において、磁性薄膜は、それぞれ磁性材料よりなり、互いに分離された複数の微小な構造物を有していてもよい。
【0039】
また、本発明の磁気記録媒体において、磁性薄膜は、合金を構成する元素以外の元素を含んでいてもよい。
【0040】
また、本発明の熱処理装置は、下地の上に形成された薄膜を熱処理するための装置であって、下地を冷却する冷却手段と、薄膜を加熱するための赤外線を薄膜に照射する赤外線照射手段とを備えたものである。
【0041】
本発明の熱処理装置によれば、熱による下地の損傷を防止しながら、薄膜に対する熱処理を行うことが可能になる。
【0042】
本発明の熱処理装置は、更に、下地および薄膜を減圧された空間内に収納するための収納室を備えていてもよい。
【0043】
本発明の熱処理装置において、冷却手段は、下地を支持すると共に、下地から熱を放散させる支持台を有していてもよい。この場合、冷却手段は、更に、支持台を冷却する冷却装置を有していてもよい。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1の断面図を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気記録媒体の構成について説明する。本実施の形態に係る磁気記録媒体1は、例えばハードディスクとして用いられる。磁気記録媒体1は、基板2と、この基板2の一方の面の上に配置された下地層3と、この下地層3の上に配置された磁性層4と、この磁性層4の上に配置された保護層5と、この保護層5の上に配置された潤滑層6とを備えている。なお、磁気記録媒体1は、図1に示した例では基板2の一方の面の上に上記各層3〜6が配置されたものになっているが、基板2の両面にそれぞれ各層3〜6が配置されたものであってもよい。
【0045】
基板2は、例えば、アルミニウムやガラスによって形成されていてもよいし、ポリカーボネート等のプラスチックによって形成されていてもよい。以下の説明では、基板2は、プラスチックによって形成されているものとする。下地層3は、磁性層4における結晶の配向を制御するための金属または合金よりなる層である。なお、下地層3は省いてもよい。磁性層4は、情報が磁気的に記録される層である。磁性層4における磁化容易方向は、磁性層4の面に平行な方向でもよいし、磁性層4の面に垂直な方向でもよい。この磁性層4については後で詳しく説明する。保護層5は、記録層4を保護する層である。保護層5の材料には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等が用いられる。潤滑層6は、磁気記録媒体1と磁気ヘッドとが摺動する際における両者の磨耗を抑制するものである。潤滑層6の材料には、フッ素系の液体潤滑材等が用いられる。
【0046】
磁性層4は、面心正方晶系の結晶構造を有する規則相の合金を含む磁性薄膜よりなる。磁性層4に用いられる合金としては、Fe−Pt系の合金や、Co−Pt系の合金がある。このような規則相の合金は大きな一軸磁気異方性を有し、そのため、この規則相の合金を含む磁性薄膜は大きな面内方向の保磁力を有する。以下の説明では、合金として、Fe−Pt系の合金、例えばFePt(Fe:50原子%,Pt:50原子%)合金を用いるものとする。
【0047】
磁性層4は、上記の合金のみからなる薄膜で構成されていてもよいし、上記の合金の他に、その合金を構成する元素以外の元素(以下、添加元素という。)を含む薄膜で構成されていてもよい。添加元素としては、Ag、B、Cu、Ir等がある。薄膜中の添加元素の割合は、10原子%以下が好ましい。
【0048】
また、磁性層4は、非磁性材料の膜中に上記の合金の粒子が分散されたグラニュラ構造の薄膜で構成されていてもよい。この場合、非磁性材料としては、例えばSiO2が用いられる。
【0049】
また、磁性層4は、パターンド・メディアに用いられる磁性層であってもよい。この場合の磁性層4は、それぞれ磁性材料よりなり、互いに分離され且つ緻密に、規則的あるいは不規則的に配列された複数の微小な構造物を有している。隣接する構造物の間には、例えば非磁性層が設けられている。複数の微小な構造物は、例えば、平坦な上面を有する薄膜をリソグラフィ等を用いてパターニングすることによって形成される。
【0050】
次に、本実施の形態に係る磁気記録媒体1の製造方法について説明する。この製造方法では、まず、材料として樹脂を用い、例えば射出成形によって基板2を作製する。
【0051】
次に、基板2の上に、下地層3、磁性層4、保護層5および潤滑層6を順に形成する。下地層3は例えばスパッタリング法によって形成される。なお、下地層3は省いてもよい。磁性層4の形成方法については後で詳しく説明する。保護層5は例えばスパッタリング法によって形成される。潤滑層6は例えば塗布によって形成される。
【0052】
次に、本実施の形態における磁性層4の形成方法について詳しく説明する。この形成方法では、まず、基板2の上に、直接あるいは下地層3を介して、面心立方晶系の結晶構造を有する不規則相のFePt合金を含む薄膜を形成する。この薄膜は、物理的気相成長法によって形成してもよいし、めっき法等の他の方法で形成してもよい。以下の説明では、上記薄膜を物理的気相成長法によって形成するものとする。基板2の上に直接、FePt合金を含む薄膜を形成する場合には、基板2が本発明における下地に対応する。基板2の上に下地層3を介して、FePt合金を含む薄膜を形成する場合には、基板2および下地層3が本発明における下地に対応する。物理的気相成長法としては、例えばスパッタリング法や真空蒸着法を用いる。
【0053】
ここで、図2を参照して、スパッタリング法によって、上記のFePt合金を含む薄膜を形成する方法のいくつかの例について説明する。まず、FePt合金のみからなる薄膜の形成方法の例について説明する。この例では、スパッタリング装置におけるターゲットとして、図2に示したターゲットを用いてスパッタリングを行って、FePt合金のみからなる薄膜を形成する。図2に示したターゲットは、Feよりなるターゲット材11の上に複数のPtよりなるチップ12を貼り付けたものである。FePt合金の他に添加元素を含む薄膜を形成する場合には、ターゲットとして、図2に示したターゲットにおけるターゲット材11の上に、Ptよりなるチップ12の他に、添加元素よりなる複数のチップを貼り付けたものを用いてスパッタリングを行えばよい。また、グラニュラ構造の薄膜を形成する場合には、ターゲットとして、図2に示したターゲットにおけるターゲット材11の上に、Ptよりなるチップ12の他に、SiO2等の非磁性材料よりなる複数のチップを貼り付けたものを用いてスパッタリングを行えばよい。
【0054】
本実施の形態における磁性層4の形成方法では、次に、上述のようにして形成された薄膜中の合金の結晶構造を、不規則相の結晶構造から規則相の結晶構造に変化させるために、薄膜を熱処理する。図3は、不規則相のFePt合金の結晶構造、すなわち面心立方晶系の結晶構造を示している。この不規則相のFePt合金の保磁力は極めて小さい。図4は、規則相のFePt合金の結晶構造、すなわち面心正方晶系の結晶構造を示している。熱処理によって、FePt合金の結晶構造は、図3に示した不規則相の結晶構造から図4に示した規則相の結晶構造へ変化する。図4に示した規則相のFePt合金では、図4において記号EAで示した矢印の方向が磁化容易軸の方向となる。この規則相のFePt合金は、大きな一軸磁気異方性を有し、その結果、大きな保磁力を有する。
【0055】
なお、磁性層4を、パターンド・メディアに用いられる磁性層とする場合には、不規則相のFePt合金を含む薄膜をパターニングして、複数の微小な構造物を有する薄膜を形成した後に、薄膜を熱処理してもよいし、不規則相のFePt合金を含む薄膜を熱処理した後に、薄膜をパターニングして、複数の微小な構造物を有する薄膜を形成してもよい。
【0056】
次に、薄膜を熱処理する工程について説明する。この熱処理工程は、例えば、減圧可能な抵抗加熱炉を用いて、真空下で行われる。この熱処理工程において、不規則相のFePt合金を含む薄膜が形成された基板2は、薄膜が上を向く姿勢で、支持台に載置される。支持台は、熱伝導率の大きな材料、例えば銅によって形成されている。抵抗加熱炉において、熱源は支持台の上方に配置されている。従って、熱処理工程において、薄膜と基板2のうち、薄膜の方が熱源の近くに配置される。
【0057】
ここで、図5を参照して、上記の熱処理工程の条件について説明する。図5は、熱処理工程における経過時間と基板2の温度との関係を概念的に表わしている。図5に示したように、本実施の形態における熱処理工程では、まず、基板2の温度が所定の基板保持温度Tbに達するまで、基板2および薄膜の温度を急激に上昇させる。基板2の温度が基板保持温度Tbに達したら、一定時間HTだけ、基板2の温度を基板保持温度Tbに保持する。一定時間HTが経過したら、基板2の温度を降下させて、熱処理を終了する。温度の降下は、例えば自然の放熱に委ねて行う。なお、基板2は支持台の上面に接しているため、基板2の温度は支持台の上面の温度とほぼ等しい。そこで、本実施の形態では、例えば、支持台の上面の温度を測定し、この温度を基板2の温度とみなし、支持台の上面の温度を制御することによって基板2の温度を制御してもよい。
【0058】
上記の熱処理工程において、薄膜と基板2のうち、薄膜の方が熱源の近くに配置されているので、基板2の温度が上昇する際、薄膜の昇温速度は基板2の昇温速度よりも大きくなる。また、基板2の温度を基板保持温度Tbに保持している間、薄膜の温度は、基板2の温度よりも高くなっている。この熱処理工程において、薄膜の温度は、薄膜中の合金の結晶構造を、不規則相の結晶構造から規則相の結晶構造に変化させることのできる所定の温度、例えば500℃以上にまで上げる。
【0059】
上記の熱処理工程では、基板2の温度が基板保持温度Tbに達するまでの期間における昇温速度Vbを7℃/分以上とする。これにより、基板保持温度Tbを比較的低くしながら、FePt合金の結晶構造を、不規則相の結晶構造から規則相の結晶構造へ変化させることが可能になる。これは、以下に示す実験より分かったことである。
【0060】
この実験では、薄膜の熱処理の条件と、熱処理後の薄膜の面内方向の保磁力(以下、面内方向保磁力と言う。)との関係を調べた。実験では、薄膜として、スパッタリング法によって形成された、厚さ200nmのFePt合金の薄膜を用いた。また、実験では、熱処理において基板2の温度を基板保持温度Tbに保持する時間HTを30分とした。実験では、それぞれ基板保持温度Tbが450℃、300℃、250℃、170℃の場合について、昇温速度Vbと、熱処理後の薄膜の面内方向保磁力Hcとの関係を調べた。実験の結果を図6に示す。図6において、横軸は昇温速度Vbを示し、縦軸は面内方向保磁力Hcを示す。また、図6において、四角の点は基板保持温度Tbが450℃の場合の実験結果を示し、丸印の点は基板保持温度Tbが300℃の場合の実験結果を示し、三角の点は基板保持温度Tbが250℃の場合の実験結果を示し、×印の点は基板保持温度Tbが170℃の場合の実験結果を示している。また、図6中の4つの曲線は、上記の各基板保持温度毎の昇温速度Vbと面内方向保磁力Hcとの関係を表わしている。これらの曲線は、上記の各基板保持温度毎の実験結果に基づいて最小自乗法によって求めた。
【0061】
図6に示した実験結果から、基板保持温度Tbが450℃の場合には、昇温速度Vbが約5〜20℃/分の範囲内で、10kOe程度の面内方向保磁力Hcが得られることが分かる。また、図6に示した実験結果から、基板保持温度Tbが450℃の場合には、昇温速度Vbが約5〜20℃/分の範囲内で、面内方向保磁力Hcは、昇温速度Vbによってほとんど変化しないことが分かる。
【0062】
これに対し、基板保持温度Tbが300℃、250℃、170℃のいずれかの場合には、昇温速度Vbがある値よりも小さいときには面内方向保磁力Hcは0kOeに近いが、昇温速度Vbがある値以上になると、昇温速度Vbの増加に伴って面内方向保磁力Hcは急激に増加することが分かる。このことから、基板保持温度Tbが170〜300℃のような比較的低い温度であっても、昇温速度Vbを大きくすることにより、FePt合金の結晶構造を不規則相の結晶構造から規則相の結晶構造へ変化させることが可能になるということが分かる。
【0063】
具体的に示すと、図6に示した実験結果から、基板保持温度Tbが300℃の場合には、昇温速度Vbが約7℃/分のときに2kOeの面内方向保磁力Hcが得られ、昇温速度Vbが約7.5℃/分のときに4kOeの面内方向保磁力Hcが得られ、昇温速度Vbが約9℃/分のときに6kOeの面内方向保磁力Hcが得られることが分かる。
【0064】
また、図6に示した実験結果から、基板保持温度Tbが250℃の場合には、昇温速度Vbが約13℃/分のときに2kOeの面内方向保磁力Hcが得られ、昇温速度Vbが約14℃/分のときに4kOeの面内方向保磁力Hcが得られ、昇温速度Vbが約15℃/分のときに6kOeの面内方向保磁力Hcが得られることが分かる。
【0065】
また、図6に示した実験結果から、基板保持温度Tbが170℃の場合には、昇温速度Vbが約17℃/分のときに2kOeの面内方向保磁力Hcが得られ、昇温速度Vbが約17.5℃/分のときに4kOeの面内方向保磁力Hcが得られ、昇温速度Vbが約19℃/分のときに6kOeの面内方向保磁力Hcが得られることが分かる。
【0066】
また、図6に示した実験結果から、基板保持温度Tbが300℃、250℃、170℃のいずれの場合においても、所定の範囲内では昇温速度Vbが大きいほど面内方向保磁力Hcが大きくなることが分かる。また、同じ昇温速度Vbで比較すると、基板保持温度Tbが高くなるほど、面内方向保磁力Hcが大きくなることが分かる。これらのことから、基板保持温度Tbと昇温速度Vbを制御することによって、熱処理後の薄膜の面内方向保磁力Hcを制御することが可能であることが分かる。
【0067】
なお、図6に示した実験結果から、基板保持温度Tbが、300℃より低く、250℃より高い範囲内の温度である場合における昇温速度Vbと面内方向保磁力Hcとの関係を表わす曲線は、基板保持温度Tbが300℃のときの曲線と基板保持温度Tbが250℃のときの曲線との間に存在することは容易に推測できる。同様に、基板保持温度Tbが、250℃より低く、170℃より高い範囲内の温度である場合における昇温速度Vbと面内方向保磁力Hcとの関係を表わす曲線は、基板保持温度Tbが250℃のときの曲線と基板保持温度Tbが170℃のときの曲線との間に存在することは容易に推測できる。
【0068】
図6に示した実験結果から分かるように、昇温速度Vbを7℃/分以上とすることにより、2kOe以上の面内方向保磁力Hcを得るために必要な基板保持温度Tbを300℃にまで下げることができる。言い換えると、昇温速度Vbを7℃/分以上、基板保持温度Tbを300℃以上とすることにより、2kOe以上の面内方向保磁力Hcを得ることができる。
【0069】
また、昇温速度Vbを13℃/分以上とすることにより、2kOe以上の面内方向保磁力Hcを得るために必要な基板保持温度Tbを250℃にまで下げることができる。言い換えると、昇温速度Vbを13℃/分以上、基板保持温度Tbを250℃以上とすることにより、2kOe以上の面内方向保磁力Hcを得ることができる。
【0070】
また、昇温速度Vbを17℃/分以上とすることにより、2kOe以上の面内方向保磁力Hcを得るために必要な基板保持温度Tbを170℃にまで下げることができる。言い換えると、昇温速度Vbを17℃/分以上、基板保持温度Tbを170℃以上とすることにより、2kOe以上の面内方向保磁力Hcを得ることができる。
【0071】
図7は、図6に示した実験結果に基づいて、それぞれ面内方向保磁力Hcが2kOe、4kOe、6kOeとなるときの基板保持温度Tbと昇温速度Vbとの関係を表わした特性図である。この図に示された6つの直線をL1〜L6で表わす。直線L1は、基板保持温度Tbが170〜250℃の範囲内で、面内方向保磁力Hcが2kOeとなるときの基板保持温度Tbと昇温速度Vbとの関係を表わす。直線L2は、基板保持温度Tbが250〜300℃の範囲内で、面内方向保磁力Hcが2kOeとなるときの基板保持温度Tbと昇温速度Vbとの関係を表わす。直線L3は、基板保持温度Tbが170〜250℃の範囲内で、面内方向保磁力Hcが4kOeとなるときの基板保持温度Tbと昇温速度Vbとの関係を表わす。直線L4は、基板保持温度Tbが250〜300℃の範囲内で、面内方向保磁力Hcが4kOeとなるときの基板保持温度Tbと昇温速度Vbとの関係を表わす。直線L5は、基板保持温度Tbが170〜250℃の範囲内で、面内方向保磁力Hcが6kOeとなるときの基板保持温度Tbと昇温速度Vbとの関係を表わす。直線L6は、基板保持温度Tbが250〜300℃の範囲内で、面内方向保磁力Hcが6kOeとなるときの基板保持温度Tbと昇温速度Vbとの関係を表わす。
【0072】
上記の直線L1〜L6は、それぞれ以下の式(1)〜(6)で表わされる。
【0073】
V=−0.05Ta+25.5 …(1)
V=−0.12Ta+43 …(2)
V=−0.044Ta+25 …(3)
V=−0.13Ta+46.5 …(4)
V=−0.05Ta+27.5 …(5)
V=−0.12Ta+45 …(6)
【0074】
上記の式(1)〜(6)に基づいて、以下のことが言える。まず、必要な面内方向保磁力Hcが2〜4kOeのときには、基板保持温度Tbが170〜250℃の範囲内では、以下の式(7)を満足するように基板保持温度Tbおよび昇温速度Vbを選択すればよい。
【0075】
−0.05Ta+25.5≦V≦−0.044Ta+25 …(7)
【0076】
また、必要な面内方向保磁力Hcが2〜4kOeのときには、基板保持温度Tbが250〜300℃の範囲内では、以下の式(8)を満足するように基板保持温度Tbおよび昇温速度Vbを選択すればよい。
【0077】
−0.12Ta+43≦V≦−0.13Ta+46.5 …(8)
【0078】
また、必要な面内方向保磁力Hcが4〜6kOeのときには、基板保持温度Tbが170〜250℃の範囲内では、以下の式(9)を満足するように基板保持温度Tbおよび昇温速度Vbを選択すればよい。
【0079】
−0.044Ta+25≦V≦−0.05Ta+27.5 …(9)
【0080】
また、必要な面内方向保磁力Hcが4〜6kOeのときには、基板保持温度Tbが250〜300℃の範囲内では、以下の式(10)を満足するように基板保持温度Tbおよび昇温速度Vbを選択すればよい。
【0081】
−0.13Ta+46.5≦V≦−0.12Ta+45 …(10)
【0082】
以上説明したように、本実施の形態によれば、スパッタリング法による成膜と、基板2の温度を比較的低い温度に保った熱処理とを用いて、面心正方晶系の結晶構造を有する規則相のFePt合金を含む磁性薄膜を形成することができる。これにより、プラスチック基板のように熱に弱い基板2の熱による損傷を防止しながら、基板2の上に、スパッタリング法による成膜と熱処理とを用いて、面心正方晶系の結晶構造を有する規則相のFePt合金を含む磁性薄膜よりなる磁性層4を形成することが可能になる。従って、本実施の形態によれば、高い面記録密度に対応可能で、且つ低コストで製造可能な磁気記録媒体1を実現することができる。
【0083】
また、本実施の形態によれば、スパッタリング法による成膜された不規則相のFePt合金を含む磁性薄膜に対する熱処理時の基板の温度とその昇温速度とを制御することによって、熱処理後に得られる規則相のFePt合金を含む磁性薄膜の面内方向保磁力を制御することできる。
【0084】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る磁気記録媒体の製造方法について説明する。なお、本実施の形態における磁気記録媒体の構成は、第1の実施の形態と同様である。また、本実施の形態に係る磁気記録媒体の製造方法において、磁性層4を形成する工程以外の工程は、第1の実施の形態と同様である。
【0085】
以下、本実施の形態における磁性層4を形成する工程について詳しく説明する。本実施の形態における磁性層4を形成する工程では、まず、基板2の上に、直接あるいは下地層3を介して、面心立方晶系の結晶構造を有する不規則相のFePt合金を含む薄膜を形成する。この薄膜の形成方法は、第1の実施の形態と同様である。
【0086】
次に、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、上述のようにして形成された薄膜中の合金の結晶構造を、不規則相の結晶構造から規則相の結晶構造に変化させるために、薄膜を所定の温度で熱処理する。本実施の形態では、この薄膜の熱処理工程において、基板2の温度を薄膜の温度よりも低くする。熱処理工程における基板2の温度は、熱による基板2の損傷が生じない温度とする。一方、熱処理工程における薄膜の温度は、薄膜中の合金の結晶構造を、不規則相の結晶構造から規則相の結晶構造に変化させることのできる温度とする。
【0087】
次に、図8を参照して、本実施の形態において上記の熱処理に用いるのに適した熱処理装置について説明する。この熱処理装置は、基板2を支持すると共に基板2から熱を放散させる支持台21と、この支持台21を収納するチャンバ22と、このチャンバ22の上方に配置された赤外線放射部23と、この赤外線放射部23の上方に配置された反射板24とを備えている。支持台21は、熱伝導率の大きな材料、例えば銅によって形成されている。支持台21の上面には、基板2を収納する凹部25が形成されている。チャンバ22の上面部は、耐熱性がよく、透明な材料、例えば石英によって形成されている。赤外線放射部23としては、ハロゲンランプ、アークランプ、グラファイトヒータ等を用いることができる。赤外線放射部23は、本発明における赤外線照射手段に対応する。また、チャンバ22は、本発明における収納室に対応し、基板および薄膜を減圧された空間内に収納する。
【0088】
熱処理装置は、更に、チャンバ22を貫通し、一部が支持台21の内部を通過するようにループ状に配置された冷却管26と、チャンバ22の外部において冷却管26の途中に挿入された冷却水温度制御装置27と、チャンバ22の外部において冷却管26の途中に挿入されたポンプ28とを備えている。冷却管26には冷却水が通されるようになっている。この冷却水は、ポンプ28によって循環されるようになっている。また、冷却水の温度は、冷却水温度制御装置27によって制御されるようになっている。冷却管26、冷却水温度制御装置27およびポンプ28は、支持台21を冷却する冷却装置を構成している。また、この冷却装置および支持台21は、本発明における冷却手段に対応する。
【0089】
熱処理装置は、更に、赤外線放射部23と冷却水温度制御装置27を制御する制御装置29を備えている。
【0090】
次に、図8に示した熱処理装置の作用について説明する。不規則相のFePt合金を含む薄膜20が形成された基板2は、薄膜20が上を向く姿勢で、支持台21の凹部25内に収納される。チャンバ22内は減圧される。冷却管26には冷却水が通され、これにより支持台21が冷却され、更にこの支持台21によって基板2が冷却される。冷却水の温度は冷却水温度制御装置27によって制御され、これにより基板2の温度も制御される。
【0091】
赤外線放射部23は赤外線を放射する。この赤外線は薄膜20に照射され、これにより薄膜20が加熱され、薄膜20の温度は上昇する。このとき、基板2は支持台21によって冷却されているので、基板2の温度の上昇は、薄膜20の温度の上昇に比べて抑えられる。その結果、薄膜20の熱処理時に、基板2の温度を薄膜20の温度よりも低くすることができる。
【0092】
制御装置29は、薄膜20の熱処理時に、赤外線放射部23と冷却水温度制御装置27を制御して、薄膜20の温度と基板2の温度を制御する。薄膜20の熱処理は、熱電対等を用いて薄膜20の温度と基板2の温度を測定しながら行ってもよい。あるいは、薄膜20の温度と基板2の温度を測定することなく、予め決められた条件に従って、薄膜20の熱処理を行ってもよい。
【0093】
なお、図8に示した熱処理装置において、凹部25は必ずしも必要ではなく、支持台21の上面は平坦であってもよい。この場合には、基板2は、薄膜20が上を向く姿勢で、支持台21の上面に載置される。
【0094】
また、図8に示した熱処理装置において、冷却管26、冷却水温度制御装置27およびポンプ28を設けずに、熱伝導率の大きな材料よりなる支持台21によって基板2から熱を放散させることだけにより、基板2を冷却するようにしてもよい。
【0095】
以下、本実施の形態における薄膜の熱処理の条件と、熱処理後の薄膜の面内方向保磁力との関係を調べた実験について説明する。
【0096】
まず、図9を参照して、この実験の条件について説明する。この実験では、縦7mm、横7mm、厚さ1.1mmのガラス製の基板2上に、スパッタリング法によって厚さ105nmのFePt(Fe:50原子%,Pt:50原子%)合金の薄膜20が形成されてなる試料を用いた。実験では、この試料を、銅よりなる支持台21の上に、薄膜20が上を向く姿勢で載置した。図示しないが、支持台21および試料は、チャンバ22内に収納される。また、薄膜20には、赤外線放射部23によって、赤外線30が照射される。実験では、薄膜20の熱処理時に、薄膜20の温度を熱電対31によって測定すると共に、支持台21の上面の温度を熱電対32によって測定した。基板2は支持台21の上面に接しているため、基板2の温度は、支持台21の上面の温度とほぼ等しい。
【0097】
実験では、以下のようにして、熱電対31によって測定される薄膜20の温度を制御しながら薄膜20の熱処理を行った。すなわち、実験では、薄膜20の温度を、所定の熱処理温度Taに達するまで、所定の昇温速度Vaで上昇させた後、30秒間、薄膜20の温度を熱処理温度Taに保持し、その後、薄膜20の温度を降下させた。また、実験では、熱処理後の薄膜20の面内方向保磁力Hcを測定した。実験は、昇温速度Vaが10℃/分、60℃/分、300℃/分、3000℃/分の各場合について行った。
【0098】
実験の結果を図10に示す。図10の下半分は、熱処理温度Taと、熱処理後の薄膜20の面内方向保磁力Hcとの関係を示している。図10の上半分は、熱処理温度Taと、薄膜20の温度を熱処理温度Taに保持している期間における支持台21の上面の温度(図では支持台温度と記す。)との関係を示している。
【0099】
図11は、図10に示した実験結果のうち、昇温速度Vaが3000℃/分であって、熱処理温度Taが600℃以上の場合における実験結果のみを示したものである。
【0100】
図12および図13は、上記実験の熱処理時における薄膜20および支持台21の上面のそれぞれについての温度と経過時間との関係(以下、温度プロファイルという。)の例を示している。図12は、図11に示した実験結果のうち、符号P1で示した実験結果、すなわち熱処理温度Taが650℃の場合の実験結果を得たときの温度プロファイルの例を示している。図13は、図11に示した実験結果のうち、符号P2で示した実験結果、すなわち熱処理温度Taが675℃の場合の実験結果を得たときの温度プロファイルを示している。図12および図13において、点線は薄膜20の温度プロファイルを表わし、実線は支持台21の上面の温度プロファイルを表わしている。
【0101】
この実験の結果から、以下のことが分かる。まず、2kOe以上の面内方向保磁力Hcを得るためには、熱処理温度Taは、500℃以上であることが好ましい。基板2の材料として、例えばポリカーボネートを使用する場合には、熱による基板2の損傷が生じないように、基板2の温度は150℃以下であることが好ましい。よって、熱処理温度Taを500℃以上とし、基板2の温度は150℃以下とするために、熱処理温度Taと基板2の温度との差は350℃以上であることが好ましい。
【0102】
また、実験結果から、昇温速度Vaが大きいほど、熱処理温度Taと基板2の温度との差が大きくなることが分かる。従って、昇温速度Vaは大きいほど、好ましい。
【0103】
実験結果から、昇温速度Vaが10℃/分の場合には、2kOe以上の面内方向保磁力Hcを得るために必要な基板2の温度(支持台21の上面の温度)を約320℃にまで下げることができる。従って、昇温速度Vaを10℃/分以上、基板2の温度を320℃以上とすることにより、2kOe以上の面内方向保磁力Hcを得ることができる。
【0104】
また、実験結果から、昇温速度Vaが60℃/分の場合には、2kOe以上の面内方向保磁力Hcを得るために必要な基板2の温度(支持台21の上面の温度)を約160℃にまで下げることができる。従って、昇温速度Vaを60℃/分以上、基板2の温度を160℃以上とすることにより、2kOe以上の面内方向保磁力Hcを得ることができる。
【0105】
また、実験結果から、昇温速度Vaが300℃/分の場合には、2kOe以上の面内方向保磁力Hcを得るために必要な基板2の温度(支持台21の上面の温度)を約140℃にまで下げることができる。従って、昇温速度Vaを300℃/分以上、基板2の温度を140℃以上とすることにより、2kOe以上の面内方向保磁力Hcを得ることができる。
【0106】
また、実験結果から、昇温速度Vaが3000℃/分の場合には、2kOe以上の面内方向保磁力Hcを得るために必要な基板2の温度(支持台21の上面の温度)を約125℃にまで下げることができる。従って、昇温速度Vaを3000℃/分以上、基板2の温度を125℃以上とすることにより、2kOe以上の面内方向保磁力Hcを得ることができる。
【0107】
以上のことから、昇温速度Vaは、10℃/分以上が好ましく、60℃/分以上が更に好ましく、300℃/分以上が更に好ましく、3000℃/分以上が更に好ましい。
【0108】
以上説明したように、本実施の形態によれば、薄膜20の熱処理時に、基板2の温度を薄膜20の温度よりも低くするようにしたので、第1の実施の形態と同様に、プラスチック基板のように熱に弱い基板2の熱による損傷を防止しながら、基板2の上に、スパッタリング法による成膜と熱処理とを用いて、面心正方晶系の結晶構造を有する規則相のFePt合金を含む磁性薄膜よりなる磁性層4を形成することが可能になる。従って、本実施の形態によれば、高い面記録密度に対応可能で、且つ低コストで製造可能な磁気記録媒体1を実現することができる。
【0109】
ところで、基板2の材料として例えばアルミニウムのように熱伝導率の大きな材料を用いた場合には、薄膜20の熱処理時に、薄膜20から基板2を経て支持台21へ熱が容易に伝わる。そのため、この場合には、薄膜20の温度を所望の温度にまで上昇させにくい。そこで、このような場合には、図14に示したように、薄膜20の熱処理時に、基板2を、支持台21との間に空隙が生じるように支持台21に接近させた状態で、薄膜20に赤外線を照射してもよい。基板2と支持台21との間に空隙を生じさせる方法としては、例えば、図14に示したように、支持台21の上面にセラミックパウダー51を介して基板2を載置するという方法がある。
【0110】
次に、図15を参照して、熱処理時のチャンバ22内の圧力が熱処理の条件に与える影響について説明する。図15は、この影響を調べるために行った実験の結果を示す特性図である。この実験では、厚さ1.1mmのガラス製の基板2上に、スパッタリング法によって厚さ200nmのFePt(Fe:50原子%,Pt:50原子%)合金の薄膜20が形成されてなる試料を用いた。実験では、この試料を、図9に示したように、銅よりなる支持台21の上に、薄膜20が上を向く姿勢で載置した。支持台21および試料は、チャンバ22内に収納される。また、薄膜20には、赤外線放射部23によって、赤外線30が照射される。チャンバ22内にはArガスが封入され、且つチャンバ22内は減圧される。この実験では、図9に示した熱電対32によって測定される支持台21の上面の温度を基板2の温度とみなし、この基板2の温度を制御しながら薄膜20の熱処理を行った。すなわち、実験では、基板2の温度を、所定の基板保持温度に達するまで、120℃/分の昇温速度で上昇させた後、1分間、基板2の温度を所定の温度に保持し、その後、基板2の温度を降下させた。また、実験では、熱処理後の薄膜20の面内方向保磁力Hcを測定した。実験は、チャンバ22内の圧力が8mTorr(約1Pa)と250mTorr(約33Pa)の各場合について行った。
【0111】
図15は、上記の基板保持温度と、熱処理後の薄膜20の面内方向保磁力Hcとの関係を示している。図15から、チャンバ22内の圧力が高い方が、2kOe以上の面内方向保磁力Hcを得るために必要な基板保持温度を低くすることができることが分かる。この実験から、薄膜20の熱処理時におけるチャンバ22内の圧力が1〜33Paの範囲内であれば、2kOe以上の面内方向保磁力Hcを得るために必要な基板保持温度を150℃以下にまで下げることが可能で、且つ1〜33Paの範囲内でチャンバ22内の圧力は高い方が好ましいことが分かる。
【0112】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0113】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、合金を含む薄膜を形成する方法としてスパッタリング法以外の物理的気相成長法を用いた場合にも、実施の形態における説明と同様のことが言える。また、磁性層4に含まれる合金として、熱処理によって結晶構造が不規則相の結晶構造から規則相の結晶構造へ変化する合金であって、Fe−Pt系の合金以外の合金、例えばCo−Pt系の合金を用いた場合にも、実施の形態における説明と同様のことが言える。
【0114】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし9のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法では、下地の上に形成された不規則相の合金を含む薄膜を熱処理することによって、規則相の合金を含む磁性薄膜に変える。本発明では、熱処理する工程において、薄膜と下地のうち、薄膜の方を熱源の近くに配置し、下地の温度を、所定の温度に達するまで7℃/分以上の昇温速度で上昇させる。これにより、本発明によれば、熱による下地の損傷を防止しながら、熱処理工程を経て、下地の上に面心正方晶系の結晶構造を有する規則相の合金を含む磁性薄膜を形成することができるという効果を奏する。
【0115】
また、請求項10記載の磁気記録媒体の製造方法では、請求項1ないし9のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法を用いて、基板の上に磁性薄膜よりなる磁性層を形成する。従って、本発明によれば、熱による基板の損傷を防止しながら、熱処理工程を経て、基板の上に面心正方晶系の結晶構造を有する規則相の合金を含む磁性薄膜よりなる磁性層を形成することができるという効果を奏する。
【0116】
また、請求項11ないし29のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法では、下地の上に形成された不規則相の合金を含む薄膜を、所定の温度で熱処理することによって、規則相の合金を含む磁性薄膜に変える。本発明では、熱処理の際に下地の温度を薄膜の温度よりも低くする。これにより、本発明によれば、熱による下地の損傷を防止しながら、熱処理工程を経て、下地の上に面心正方晶系の結晶構造を有する規則相の合金を含む磁性薄膜を形成することができるという効果を奏する。
【0117】
また、請求項30記載の磁気記録媒体の製造方法では、請求項11ないし29のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法を用いて、基板の上に磁性薄膜よりなる磁性層を形成する。従って、本発明によれば、熱による基板の損傷を防止しながら、熱処理工程を経て、基板の上に面心正方晶系の結晶構造を有する規則相の合金を含む磁性薄膜よりなる磁性層を形成することができるという効果を奏する。
【0118】
また、請求項31ないし35のいずれかに記載の磁気記録媒体によれば、高い面記録密度に対応可能で、且つ低コストで製造可能な磁気記録媒体を実現することができるという効果を奏する。
【0119】
また、請求項36ないし39のいずれかに記載の熱処理装置によれば、熱による下地の損傷を防止しながら、薄膜に対する熱処理を行うことが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る磁気記録媒体の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態においてスパッタリング法によってFePt合金を含む薄膜を形成する際に用いられるターゲットを示す平面図である。
【図3】不規則相のFePt合金の結晶構造を示す説明図である。
【図4】規則相のFePt合金の結晶構造を示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における熱処理工程の経過時間と基板の温度との関係を概念的に表わす説明図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における熱処理の条件と熱処理後の薄膜の面内方向保磁力との関係を調べた実験の結果を示す特性図である。
【図7】図6に示した実験結果に基づいて面内方向保磁力が所定の値となるときの熱処理温度と昇温速度との関係を表わした特性図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における熱処理装置の構成を示す説明図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における熱処理の条件と熱処理後の薄膜の面内方向保磁力との関係を調べる実験の条件について説明するための説明図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における熱処理の条件と熱処理後の薄膜の面内方向保磁力との関係を調べた実験の結果を示す特性図である。
【図11】図10に示した実験結果の一部を示す特性図である。
【図12】図10に示した実験結果を得たときの温度プロファイルの一例を示す特性図である。
【図13】図10に示した実験結果を得たときの温度プロファイルの他の例を示す特性図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態の変形例を説明するための断面図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態における熱処理時のチャンバ内の圧力が熱処理の条件に与える影響について説明するための特性図である。
【符号の説明】
1…磁気記録媒体、2…基板、3…下地層、4…磁性層、5…保護層、6…潤滑層。
Claims (39)
- 面心正方晶系の結晶構造を有する規則相の合金を含む磁性薄膜を形成する方法であって、
下地の上に、面心立方晶系の結晶構造を有する不規則相の合金を含む薄膜を形成する工程と、
前記薄膜中の前記合金の結晶構造を不規則相の結晶構造から規則相の結晶構造に変化させるために前記薄膜を熱処理する工程とを備え、
前記熱処理する工程は、前記薄膜と下地のうち、薄膜の方を熱源の近くに配置し、前記下地の温度を、所定の温度に達するまで7℃/分以上の昇温速度で上昇させることを特徴とする磁性薄膜の形成方法。 - 前記合金は、Fe−Pt系の合金またはCo−Pt系の合金であることを特徴とする請求項1記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記薄膜を形成する工程は、物理的気相成長法によって前記薄膜を形成することを特徴とする請求項1または2記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記薄膜を形成する工程は、物理的気相成長法としてスパッタリング法を用いることを特徴とする請求項3記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記薄膜を形成する工程は、非磁性材料の膜中に前記合金の粒子が分散されたグラニュラ構造の薄膜を形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記薄膜を形成する工程は、それぞれ磁性材料よりなり、互いに分離された複数の微小な構造物を有する薄膜を形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記薄膜を形成する工程は、前記合金を構成する元素以外の元素を含むように前記薄膜を形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記昇温速度を13℃/分以上とすることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記昇温速度を17℃/分以上とすることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法。
- 基板とその上に配置された磁性層とを有し、前記磁性層は面心正方晶系の結晶構造を有する規則相の合金を含む磁性薄膜よりなる磁気記録媒体を製造する方法であって、
請求項1ないし9のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法を用いて、下地としての前記基板の上に、前記磁性薄膜よりなる前記磁性層を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。 - 面心正方晶系の結晶構造を有する規則相の合金を含む磁性薄膜を形成する方法であって、
下地の上に、面心立方晶系の結晶構造を有する不規則相の合金を含む薄膜を形成する工程と、
前記薄膜中の前記合金の結晶構造を不規則相の結晶構造から規則相の結晶構造に変化させるために、前記薄膜を所定の温度で熱処理する工程とを備え、
前記熱処理する工程は、前記下地の温度を前記所定の温度よりも低くすることを特徴とする磁性薄膜の形成方法。 - 前記合金は、Fe−Pt系の合金またはCo−Pt系の合金であることを特徴とする請求項11記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記薄膜を形成する工程は、物理的気相成長法によって前記薄膜を形成することを特徴とする請求項11または12記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記薄膜を形成する工程は、物理的気相成長法としてスパッタリング法を用いることを特徴とする請求項13記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記薄膜を形成する工程は、非磁性材料の膜中に前記合金の粒子が分散されたグラニュラ構造の薄膜を形成することを特徴とする請求項11ないし14のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記薄膜を形成する工程は、それぞれ磁性材料よりなり、互いに分離された複数の微小な構造物を有する薄膜を形成することを特徴とする請求項11ないし14のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記薄膜を形成する工程は、前記合金を構成する元素以外の元素を含むように前記薄膜を形成することを特徴とする請求項11ないし14のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記所定の温度は、500℃以上であることを特徴とする請求項11ないし17のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記熱処理する工程における前記下地の温度は、150℃以下であることを特徴とする請求項11ないし18のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記熱処理する工程における前記所定の温度と前記下地の温度との差は、350℃以上であることを特徴とする請求項11ないし19のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記熱処理する工程は、前記薄膜の温度を、前記所定の温度に達するまで10℃/分以上の昇温速度で上昇させることを特徴とする請求項11ないし18のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記熱処理する工程は、前記薄膜の温度を、前記所定の温度に達するまで60℃/分以上の昇温速度で上昇させることを特徴とする請求項11ないし18のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記熱処理する工程は、前記薄膜の温度を、前記所定の温度に達するまで300℃/分以上の昇温速度で上昇させることを特徴とする請求項11ないし18のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記熱処理する工程は、前記薄膜の温度を、前記所定の温度に達するまで3000℃/分以上の昇温速度で上昇させることを特徴とする請求項11ないし18のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記熱処理する工程は、前記薄膜に赤外線を照射して薄膜を加熱することを特徴とする請求項11ないし24のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記熱処理する工程は、前記下地を冷却用部材に接触させた状態で、前記薄膜に赤外線を照射することを特徴とする請求項25記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記熱処理する工程は、前記下地を、冷却用部材との間に空隙が生じるように冷却用部材に接近させた状態で、前記薄膜に赤外線を照射することを特徴とする請求項25記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記熱処理する工程は、前記下地および前記薄膜を、減圧された空間内に収納した状態で、前記薄膜に赤外線を照射することを特徴とする請求項25ないし27記載の磁性薄膜の形成方法。
- 前記減圧された空間内の圧力は、1〜33Paの範囲内であることを特徴とする請求項28記載の磁性薄膜の形成方法。
- 基板とその上に配置された磁性層とを有し、前記磁性層は面心正方晶系の結晶構造を有する規則相の合金を含む磁性薄膜よりなる磁気記録媒体を製造する方法であって、
請求項11ないし29のいずれかに記載の磁性薄膜の形成方法を用いて、下地としての前記基板の上に、前記磁性薄膜よりなる前記磁性層を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。 - プラスチック基板と、前記プラスチック基板の上に配置された磁性層とを備え、
前記磁性層は、面心正方晶系の結晶構造を有する規則相の合金を含む磁性薄膜よりなることを特徴とする磁気記録媒体。 - 前記合金は、Fe−Pt系の合金またはCo−Pt系の合金であることを特徴とする請求項31記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性薄膜は、非磁性材料の膜中に前記合金の粒子が分散されたグラニュラ構造を有することを特徴とする請求項31または32記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性薄膜は、それぞれ磁性材料よりなり、互いに分離された複数の微小な構造物を有することを特徴とする請求項31または32記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性薄膜は、前記合金を構成する元素以外の元素を含むことを特徴とする請求項31または32記載のいずれかに記載の磁気記録媒体。
- 下地の上に形成された薄膜を熱処理するための熱処理装置であって、
前記下地を冷却する冷却手段と、
前記薄膜を加熱するための赤外線を前記薄膜に照射する赤外線照射手段と
を備えたことを特徴とする熱処理装置。 - 更に、前記下地および前記薄膜を減圧された空間内に収納するための収納室を備えたことを特徴とする請求項36記載の熱処理装置。
- 前記冷却手段は、前記下地を支持すると共に、前記下地から熱を放散させる支持台を有することを特徴とする請求項36または37記載の熱処理装置。
- 前記冷却手段は、更に、前記支持台を冷却する冷却装置を有することを特徴とする請求項38記載の熱処理装置。
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CN100369121C (zh) * | 2005-03-28 | 2008-02-13 | 中国科学院物理研究所 | 一种基于FePt磁性层的磁记录介质及其制备方法 |
JP2010140592A (ja) * | 2008-12-11 | 2010-06-24 | Korea Advanced Inst Of Science & Technol | L10規則化構造のFePtナノドットアレイの製造方法、それを使用して製造されたL10規則化構造のFePtナノドットアレイ及びL10規則化構造のFePtナノドットアレイを使用した高密度磁気記録媒体 |
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