JP2004047619A - 放熱部品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】セラミックス回路基板との半田接合や樹脂封止等のパッケージ化後にも放熱フィンとの密着性が高い放熱部品を提供する。
【解決手段】炭化けい素とアルミニウムを主成分とした反りを有する平板状の放熱部品の製造方法であって、該放熱部品を450℃以上の表面温度を有する1対の対向する球面を有する凹凸型で挟み、10KPa以上の応力で、該放熱部品の温度が実質的に450℃以上の温度で30秒以上プレスすることにより、反りを付与することを特徴とする放熱部品の製造方法。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、高い熱伝導性を有しかつ熱膨張係数も小さいことから、近年、大電力モジュールの放熱板に使用されているアルミニウム−炭化けい素質複合体からなる放熱部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子の高集積化、大型化に伴い、半導体素子からの発熱量は増加の一途をたどっているが、半導体素子からの熱の放散を十分に行うために、近年、高絶縁性でしかも高放熱性を有するセラミックス基板が使用されている。
【0003】
このなかにあって、窒化アルミニウム基板は100W/mK以上の高熱伝導率を有し、しかも熱膨張率がシリコンに近いことから、とくに大電力用途には多用されている。図2は、セラミックス基板として窒化アルミニウム基板を使用した通常の放熱構造を示すものであり、半導体素子(1)が活性金属法またはDBC法により接合された銅回路を有するセラミックス基板(2)(セラミックス回路基板ともいう)に、半田を介して接合されており、さらに前記回路基板(2)は、半田を介して銅からなるベ−ス板(3)に接合されている。これらの接合構造は樹脂(4)封止等のパッケージ化の後、最終的に放熱フィンにネジ止めされる。
【0004】
しかしながら、従来から使用されてきた銅製のベ−ス板と窒化アルミニウム等からなるセラミックス回路基板を接合させた構造においては、両者を接合する半田層にクラックが発生する、いわゆる半田クラックの問題があった。半田層は使用環境下で熱膨張係数の大きな銅ベ−ス板(17ppm/K)とセラミックス基板の熱膨張係数差により発生する応力を吸収、緩和させる機能を果たしているが、高温低温を繰り返すサイクルが増加していくと疲労のためクラックが発生、進展し破壊してしまい信頼性が劣るという問題である。
【0005】
このため、高熱伝導性を有し、かつ熱膨張係数が銅のそれに比べて小さいベ−ス板材の開発が望まれてきたが、最近アルミニウムと炭化けい素からなる複合体が開発された。
【0006】
アルミニウムと炭化けい素からなる複合体は、熱膨張係数が8ppm/K程度と従来の銅の17ppm/Kよりかなり小さく、上記半田クラックの問題点を解決し、信頼性ある放熱部品として使用されはじめている。
【0007】
しかしながら、最近の半導体素子の大電力化に伴うさらなる熱放散性向上の要望に対して、上述した技術では対応しきれない状況になりつつあり、アルミニウム−炭化けい素複合体からなる放熱部品においては以下の検討がなされている。
【0008】
まず、第1にアルミニウム−炭化けい素質複合体の熱伝導率を向上させる試みであり、従来のものは銅のそれの半分程度ではあったが、200W/mK を越す熱伝導率を有するものも開発されている。
【0009】
第2の試みは、半導体素子から放熱フィンに至る一連の構造において、いかに熱を放散しやすい構造にするかであり、これまでにも様々な構造が提案されている。このなかにあって、前記アルミニウム−炭化けい素質複合体からなる放熱部品にあらかじめ反りを付けることが注目されている。
【0010】
図2に代表される放熱構造を作製するにあたっては、放熱フィンより上の構造部分が予め接合されたのち、前記構造部分が放熱フィンにグリースを介してネジ止めにより固定されるが、得られる構造体(以下モジュール構造体という)の高放熱性を維持するためには、放熱フィンとアルミニウム−炭化けい素質複合体からなる放熱部品(以下、単にベ−ス板と呼ぶことがある)とがグリースを介して十分に密着しいていることが必要である。
【0011】
従来の方法で作られる平坦なベ−ス板を用いる場合、前記ベ−ス板とセラミックス回路基板との熱膨張差から両者の接合時に発生する応力やその後の樹脂封止等によるパッケージ化の際発生する応力のため、ベ−ス板の放熱フィンと密着させる側の面が凹型に反ってしまい、放熱フィンをベ−ス板に固定する際、十分な接触面積が取れず、満足な放熱性を得るには至っていないという問題がある。
【0012】
この問題を解決する手段として、ベ−ス板の放熱フィンと密着させる側の面を予め凸型に反らしておき、セラミックス回路基板の接合及び樹脂封止等のパッケージ化後も、放熱フィンと密着させる側の面を凸型の反りのまま維持させておき、これを放熱フィンにネジ止めにより固定し十分な接触面積を確保しつつ放熱を図ることが行われている。
【0013】
反りを有するアルミニウム−炭化けい素質ベース板の作製方法については、様々な提案がなされており、作製後の前記ベース板に機械加工を施し反りを付与する方法、ベース板の表裏にアルミニウムを被覆したベース板においては、ベース板作製時表裏のアルミニウム厚みを変え、表裏のアルミニウム厚み差から生じる応力により反りを付与する方法及び前記ベース板の分散相となっている炭化けい素質プリフォームの密度や組成をあらかじめ傾斜させたのちベース板を作製、組成差、密度差から反りを付与する方法、さらにはベース板に応力を掛けつつ加熱処理し、塑性変形により反りを付ける方法等があげられる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、以上のような方法のうち、機械加工にて反りを付ける方法は、反り量及び形状の精度がよい反面、生産性に劣るという欠点がある。また、表裏のアルミニウム厚みに差を付け反りを付与する方法は、ヒートサイクル等の環境下では、表裏のアルミニウム厚み差により発生する熱応力のため、ベース板の反りが変動するという問題点がある。また、プリフォームに組成差、密度差から反りを付与する方法は、プリフォーム自体の作製が複雑であり、生産性が著しく低いものとなる。
【0015】
一方、ベース板に応力を掛けつつ加熱処理して反りを付与する方法は、その応力の掛け方により所望の反り量が得られることや方法が簡便なことから有効な方法である。しかしながら、この反り付け法において得られるベース板は、たとえ反り付与後において、放熱フィンを密着させる側の面が凸型形状であったとしても、前記セラミックス基板とベース板との半田接合及び樹脂封止等のパッケージ化後には反り形状が、本来目的とする放熱フィンと密着させる側の面が凸型ではなく凹型となるケース、いわゆる反りの戻りがしばしばみとめられ、著しく生産性等を害するものであった。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、応力負荷方法及び加熱処理条件をかえて反り付けを行い、これを一般的な半田付け温度下におき、反りの戻りについて検討を重ねた結果、単にベース板の平板表面の一部もしくは特定の面積の領域に応力を付与し加熱処理しただけでは、目的の反り量は得られるものの、平板面内に存在する歪みの不均一が原因で、半田付け温度に相当する温度にベース板を加熱すると、反りが大きく戻ってしまう場合が多いこと、この反りの戻り量の小さいベース板は、特定以上の応力を特定時間、できる限り全面に付与する方法、すなわち、型間で挟み加圧する方法をとり、かつ特定温度以上に加熱して反りが付与されたベース板であること、さらに反りの形状としては、回転面形状、しかもできる限り球面形状に近い方がよく、そのためには型面が回転面形状、しかも球面形状を有することが有効であるという知見を得て、本発明を完成したものである。
【0017】
すなわち、本発明は炭化けい素とアルミニウムを主成分とした反りを有する平板状の放熱部品の製造方法であって、該放熱部品を450℃以上の表面温度を有する1対の対向する回転面状の凹凸型で挟み、10KPa以上の応力で、該放熱部品の温度が実質的に450℃以上の温度で30秒以上プレスすることにより、反りを付与することを特徴とする放熱部品の製造方法である。
【0018】
さらに、本発明は、反り付与前の反り量をX、これに反りを付与した後の反り量を(X+Y)とし、前記の反り付与後の放熱部品を320℃以下の温度で1時間以上加熱処理した後の反り量が(X+Z)のとき、YとZとの間に(Y−Z)<0.5Yなる関係を満たすことを特徴とする前記の放熱部品の製造方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0020】
本発明は、炭化けい素とアルミニウムを主成分とした反りを有する平板状の放熱部品を450℃以上の表面温度を有する1対の対向する回転面状の凹凸型で挟み、10KPa以上の応力で、該放熱部品の温度が実質的に450℃以上の温度で30秒以上プレスすることにより、反りを付与することを特徴としている。
【0021】
本発明者は、炭化けい素とアルミニウムを主成分とする複合体からなる放熱部品を用いたモジュール構造体について、いろいろ検討を重ねた結果、パッケージ化された後に放熱部品の回路を接合していない方の面が凹面となり、のちの放熱フィンの取り付けに支障をきたす問題が生じること、そして、その原因のひとつが放熱部品自体の半田付け時の加熱による反りの戻りにあること、更に、半田付けは一般的に320℃以下の温度域で行われるため、その温度間での反りの戻りをできる限り小さくすることが重要であることを見い出し、本発明に至ったものである。
【0022】
また、本発明者は、前記モジュール構造体に関する検討を通じて、放熱部品の反り形状によっては、回路基板接合後、放熱部品の一部で凹面領域が発生してしまう問題があること、とくに放熱部品の反り形状が直線的な、いわゆるV字形状のもので、その問題が顕著であることを見い出すとともに、放熱部品に回転面状、ことに球面に近い形状を付与するときに前記問題を解決できることを見い出し、本発明に至ったものである。ここで、前記回転面については、型面の中央部に垂直な軸を回転させたときに滑らかな曲面を示すものであればどのようなものでも構わないが、典型的にものとしては、前記した球面以外に、回転楕円体面、回転放物体面が挙げられる。
【0023】
更に、本発明者は、様々な方法にてアルミニウムと炭化けい素複合体からなる放熱部品に反りを付け、それを半田付け温度及びその近傍温度まで加熱し、反りの戻りを観察した結果、特定の方法でかつ特定加熱温度、時間及び応力下で反りを付与された放熱部品のみ、半田付け温度、具体的には320℃以下の温度域でたとえ1時間以上保持したとしても反りの戻りが小さいことを見い出し、本発明に至ったものである。
【0024】
即ち、本発明は、炭化けい素とアルミニウムを主成分とした反りを有する平板状の放熱部品について、これを450℃以上の表面温度を有する1対の対向する回転面状の凹凸型で挟み、10KPa以上の応力で、該放熱部品の温度が実質的に450℃以上の温度で30秒以上プレスすることにより反りを付与することを特徴としており、前記構成を採用することで、反りの戻りが小さく、放熱フィン等に接したときに密着性に優れ、その結果、半導体素子等を実装して高信頼性のモジュールを安定して得ることができる放熱部品を提供できる効果を奏するものである。
【0025】
尚、一般に、反りとはベース板表面上に任意の2点をとったとき、この2点を結ぶ表面線上の1点から、2点を結ぶ線分におろした垂線の長さで定義されるが、本発明においては、図1に示す通りに、2点間に存在する垂線中、最大の値を示すもの、すなわち最大反り量をもって反り量と定義する。
【0026】
また、反りの付与については、仮に付与前の反り量がXμmであって、付与後の反り量が(X+Y)μmとなった場合には、付与した反り量はYμmとなる。また、反り量の戻りについては、前記の反り量が(X+Y)μmであったものを320℃以下の温度で1時間以上加熱処理し、反り量が(X+Z)μmとなった場合には、(Y−Z)μmと定義される。本発明では、理由は不明であるが、本発明の効果を一層達成するために反り量の戻り(Y−Z)について、(Y−Z)<0.5Yとなる関係を満足することが好ましい。
【0027】
以下、本発明の放熱部品の反り付け方法について詳述する。
【0028】
本発明では、ベース板表面全面に応力を付与するに際し、回転面、例えば球面形状を有する凹型と前記球面と同じ曲率半径を有する凸型の2個からなる型(以下、この一対の型を凹凸型と呼ぶ)を用いる。凹凸型の前記球面の間にベース板を挟み、ベース板が挟まれる方向に応力を付与しながら(いわゆるプレスを行いながら)加熱する方法が採用される。
【0029】
前記の方法については、予めベース板を挟み込んだ1対の型を加熱しておき、プレス機にてプレスする方法、若しくは荷重をかける方法や予め所定温度に加熱した1対の型にベース板を投入し、プレスする方法、さらにはこの際、予めベース板を加熱しておく方法等が採用される。
【0030】
本発明者らは、上記方法にて加熱温度、負荷応力、及び応力負荷時間とベース板厚み及び反り付け量、形状との関係、さらには反り付け後のベース板の半田付け温度に相当する320℃までの各温度下における反りの戻り量等につき、詳細に検討を重ねた結果、本発明の条件を満足しない場合には、反りの戻り量が大きくなり、さらには球面に近い形状の反りが得られないこと、また、1時間以上半田付け温度で加熱すると、付与した反り量の半分を越えて反りが戻ってしまうことが多いことが判った。これに対し、本発明の前記条件を満たすとき、付与した反り量の50%以上が維持でき、そのためセラミックス回路基板等を実際に半田付けし、さらに樹脂封止等のパッケージした後も、放熱部品の放熱フィン固定側が凸面の状態に維持され、放熱性に優れたモジュールを得ることができることを見出した。
【0031】
前記の特定条件下での反り付与処理により反り量の戻りの小さい放熱部品が得られる理由については未だ明らかではないが、一般に、反りはマトリックスとなるAl合金相の転位が移動して起こること、転位を移動させるには、反り付与に際し、特定温度以上に温度を上げ、移動のための活性化エネルギーを下げる必要があること、さらに移動自体の駆動力は負荷する応力によることを考慮し、本発明者は、前記条件が歪の小さな状況下で転位が移動するのに好適なためと考えている。
【0032】
更に、回路基板接合時には、その熱膨張係数差により、放熱部品には凸面が凹面に向かうような力が一般的には働き、そのため放熱部品の形状によっては、一部で凹型の領域が発生しやすくなるが、回転面に近い形状の反りとすることによって、前記した力が作用しても、一部の領域が凹型となるまでには変形しないので、モジュールとしたときに放熱フィン等の接合が十分に維持され、高信頼性のモジュールを得ることができると考えている。
【0033】
本発明において、アルミニウムと炭化けい素を主成分とする複合体であることから反りの付与にあたっては、そのマトリックスとなるアルミニウム或いはアルミニウム合金部が溶融しない範囲内の温度で、できるだけ高い温度を採用することが好ましく、具体的には500℃〜570℃程度の温度域で処理することが好適である。また、応力は10KPa以上でよく、好ましくは30KPa以上であるが、ベース板の板厚や反り付与時の温度等に応じて最適応力を実験的に決めればよい。
【0034】
本発明では、放熱部品が加熱された対向する回転面型間に挟まれることにより加熱されるのが一般的である。したがって、複合体自体が450℃以上の温度になるには、複合体の厚み、面積等により影響を受けるが、放熱部品自体の温度が実質的に450℃以上の温度下で30秒以上、プレスされれば、本発明の特性を有する放熱部品が得られる。
【0035】
なお、本発明に使用される1対の凹凸型の材質としては、本発明の加熱処理温度で特定時間その形状を維持できるものであれば材質を問わないが、カーボン、窒化ほう素等のセラミックスや超硬、ステンレス鋼といった金属材料が好ましく使用される。
【0036】
本発明で用いられるアルミニウム−炭化けい素複合体としては、主成分がアルミニウムと炭化けい素から構成されていればどのようなものでも構わないが、アルミニウム、炭化けい素の両者が三次元的に網目構造を有する複合体が好ましく適用でき、中でも、炭化けい素粉粒を成形体とし前記成形体中の空隙部にアルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金を含浸させて得られる複合体は高熱伝導率でしかも低膨張率を有することから一層好ましい。
【0037】
以下、本発明を高圧鍛造法によるアルミニウムー炭化けい素複合体の例を通して、より具体的に説明する。なお、本発明は以下の方法に限定されないことはいうまでもない。
【0038】
高圧鍛造法においては、後述するアルミニウム又はアルミニウム合金(以下、単にアルミニウムという)を含浸する工程での割れ等の異常発生を防止したり、得られる複合体が高熱伝導率、低膨張率、高強度等の特性を満足することを目的に、炭化けい素を予め成形体(プリフォーム)とし、これにアルミニウムを含浸させることが一般的である。
【0039】
炭化けい素のプリフォームを作製する方法としては、炭化けい素粉末と有機バインダー及び焼成後の強度を維持するために無機バインダー等を混合した混合粉末をプレス成形後、空気中もしくは不活性雰囲気中で焼成しプリフォーム化する方法、前記混合粉末にさらに水や溶剤及び可塑剤、分散剤等を添加し混練後、押し出し成形、焼成する方法、前記混合物を低粘度のスラリーとし、型に注入成形し、焼成するインジェクション法、さらにはスラリーを所定の吸水性を有する型に充填し、加圧成形する湿式加圧成形法等の公知の方法が採用できる。
【0040】
本発明に利用する場合、炭化けい素含有率は、その用途に応じて適宜選択できるが、高い熱伝導率を有し、かつ熱膨張係数が6〜9ppm/K程度のアルミニウム−炭化けい素質ベース板を得るには、いずれの方法でプリフォームを作製するにしても、プリフォームの相対密度を50%以上、より好ましくは60%以上とすることが望ましい。そのために、炭化けい素原料として異なった粒径を有する2種以上の原料粉末を適宜混合することが効果的である。
【0041】
次に、炭化けい素質プリフォームを金型にセットしたのち、金型に溶融したアルミニウムを投入、溶融アルミニウムをプレスすることによりプリフォームの空隙内にアルミニウムが含浸され、冷却を通してアルミニウム−炭化けい素質複合体が作製される。この際、含浸を円滑に行うため、プリフォームは予め予熱される。また、含浸するアルミニウム原料としては、低溶融温度化、含浸のしやすさ及び含浸後の機械特性の向上等を目的に、けい素を6〜18質量%含有するアルミニウム−けい素系合金やさらにプリフォームとの濡れ性向上を目的としてマグネシウムを3質量%まで添加したアルミニウム−けい素−マグネシウム系合金等が使用される。いずれの合金を使用するかは任意に選択できるが、一般には800℃〜900℃で溶融したアルミニウム合金が含浸される。上記方法で作製されたアルミニウム−炭化けい素質複合体は、そのままの状態、もしくはその後所定の形状にその表面及び外周を加工され、更に必要に応じてメッキ等の表面処理を施され、放熱部品となる。
【0042】
以上の工程により得られた放熱部品は、前述した通りに、平坦であったり、制御されていない反りが存在するが、本発明の方法により、回転面、好ましい実施態様においては球状の反り量が制御された放熱部品となる。より具体的な一例としては、前記放熱部品の寸法より面積の大きな所定の曲率半径を有する球面部を有する1対の凹凸型を装着したプレス機に、前記放熱部品を挿入後、50KPaの圧力で数分間プレスし、冷却後取り出す方法が挙げられる。尚、前記操作において、凹凸型の表面は450℃以上に加熱保持されている。この操作を経て得られる放熱部品は、前述した通りに、反りの戻りが小さく、放熱フィン等に接したときに密着性に優れ、その結果、半導体素子等を実装して高信頼性のモジュールを安定して得ることができる放熱部品を提供できる。
【0043】
以下、実施例、比較例に基づき、本発明を一層詳しく説明する。
【0044】
【実施例】
(実施例1)
相対密度が65%の炭化けい素からなる厚みが3.9mmで寸法が179mm×129mmのプリフォ−ムを、182mm×132mmの寸法で深さが4.0mmのキャビティーを有する湯口付きの金型内にセットした。これを600℃で1時間加熱後、すぐに12質量%のけい素と0.7%のマグネシウムを含有する溶融アルミニウムを注入し、高圧プレスすることにより、プリフォ−ム内の空隙にアルミニウム合金を含浸し、冷却後、金型から脱型してアルミニウム−炭化けい素質複合体を得た。得られた複合体の外周を加工することにより、寸法が180mm(長手と呼ぶ)×130mm(短手と呼ぶ)で厚みが4mmのベ−ス板とした。なお、このときの表面はアルミニウム合金で覆われていた。
【0045】
前記ベース板について反りを測定した。反り測定は面粗さ計で行い、測定スパンは長手方向で170mm、短手方向で110mmとした。なお、長手方向、短手方向とも測定位置はベ−ス板の中心を通るラインとした。反りを測定した結果、片面が長手方向、短手方向ともに凸状、反対面が凹状の反り形状を示すとともに、凸面について、両端をゼロに換算した際のライン中の最高高さ、すなわち反り量を調べたところ長手方向で50μm、短手方向で30μmであった。
【0046】
前記ベース板に反りを付与するため、SUS製で曲率半径が10000mmの球面を設けた凹凸型を準備した。この凹凸型を熱プレス機に装着し、加熱して型の表面温度を560℃とした。この凹凸型の間に前記ベ−ス板を配置し40KPaでプレスした。この際、ベース板の側面に熱電対を接触させ測温した。ベース板の温度が550℃になった時点から3分間保持後、急冷し、加圧を解除した。得られたベース板の凸面側の反りを測定した結果、長手方向が341μm、短手方向は122μmであった。
【0047】
前記ベース板をさらに320℃で2時間加熱後、反りを測定した結果、長手方向が310μm、短手方向は111μmであった。これらの結果を表1に示した。
【0048】
【表1】
Figure 2004047619
【0049】
(実施例2)
型の表面温度を465℃にしたこと、プレス圧力を10KPaにしたこと、ベース板の温度が450℃になった時点から30秒保持したこと、さらに反り付与後の加熱処理を320℃、1時間としたこと以外は、すべて実施例1と同じ方法でベース板を処理した。各段階での反り量を表1に示した。
【0050】
(実施例3)
型の表面温度を525℃にしたこと、プレス圧力を30KPaにしたこと、ベース板の温度が520℃になった時点から4分保持したこと、さらに反り付与後の加熱処理を320℃、1時間としたこと以外は、すべて実施例1と同じ方法でベース板を処理した。各段階での反り量を表1に示した。
【0051】
(実施例4)
曲率半径が15000mmの型を使用したこと、プレス圧力を10KPaにしたこと及び保持時間を30秒としたこと、さらに反り付与後の加熱処理を270℃、3時間としたこと以外は、すべて実施例1と同じ方法でベース板を処理した。各段階での反り量を表1に示した。
【0052】
(実施例5)
曲率半径が15000mmの型を使用したこと、プレス圧力を40KPaにしたこと及び保持時間を4分としたこと、さらに反り付与後の加熱処理を270℃、3時間としたこと以外は、すべて実施例2と同じ方法でベース板を処理した。各段階での反り量を表1に示した。
【0053】
(実施例6)
曲率半径が15000mmの型を使用したこと、保持時間を3分としたこと、さらに反り付与後の加熱処理を270℃、3時間としたこと以外は、すべて実施例3と同じ方法でベース板を処理した。各段階での反り量を表1に示した。
【0054】
(比較例1)
プレス圧力を5KPaとした以外は、すべて実施例1と同じ方法でベース板を処理した。各段階での反り量を表1に示した。
【0055】
(比較例2)
型の温度を435℃としたこと、ベース板温度を430℃にしたこと以外は、すべて実施例2と同じ方法でベース板を処理した。各段階での反り量を表1に示した。
【0056】
(比較例3)
保持時間を15秒とした以外は、すべて 実施例3と同じ方法でベース板を処理した。各段階での反り量を表1に示した。
【0057】
(比較例4)
保持時間を15秒とした以外は、すべて 実施例4と同じ方法でベース板を処理した。各段階での反り量を表1に示した。
【0058】
(比較例5)
プレス圧力を8KPaとした以外は、すべて実施例5と同じ方法でベース板を処理した。各段階での反り量を表1に示した。
【0059】
(比較例6)
型の温度を411℃としたこと、ベース板温度を400℃にしたこと以外は、すべて実施例6と同じ方法でベース板を処理した。各段階での反り量を表1に示した。
【0060】
(比較例7)
実施例1の含浸方法及び外周加工で得られた、予め反りを測定したベース板を、160mm×120mmで深さが5mmのキャビティー上に置き、ベース板のセンターをネジで締め込んでキャビティーの縁を支点として撓ませた。この状態のまま、炉に投入し、550℃で30分間加熱後、冷却した。この後、ネジ締めを解放し、付与された反りを測定したのち、320℃、2時間加熱処理を施し、再度反りを測定した。結果を表1に示した。
【0061】
(比較例8)
ネジで締め込んだままでの状態の加熱を450℃、30分で行ったこと、ネジ締め解放後の加熱処理を320℃、1時間としたこと以外は、すべて比較例7と同じ条件で処理した。結果を表1に示した。
【0062】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、回路基板接合時等で、反りの戻りが小さくかつ、その後のパッケージ化を通じて、放熱フィン側に凸な安定した形状を有する放熱部品を製造でき、その結果、熱放散性に優れ、長期に渡って信頼性の高いモジュールを安定して提供できる効果があり、産業上非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】反り量を説明する図。
【図2】本発明に係る放熱部品並びに従来公知の放熱部品を用いたモジュールの一例を示す図。
【符号の説明】
1 半導体素子
2 セラミックス回路基板
3 ベース板
4 樹脂

Claims (2)

  1. 炭化けい素とアルミニウムを主成分とした反りを有する平板状の放熱部品の製造方法であって、該放熱部品を450℃以上の表面温度を有する1対の対向する回転面を有する凹凸型で挟み、10KPa以上の応力で、該放熱部品の温度が実質的に450℃以上の温度で30秒以上プレスすることにより、反りを付与することを特徴とする放熱部品の製造方法。
  2. 反り付与前の反り量をX、これに反りを付与した後の反り量を(X+Y)とし、前記の反り付与後の放熱部品を320℃以下の温度で1時間以上加熱処理した後の反り量が(X+Z)のとき、YとZとの間に(Y−Z)<0.5Yなる関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の放熱部品の製造方法。
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