JP2004047585A - 太陽光発電システム - Google Patents

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JP2004047585A
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Fumitaka Toyomura
豊村 文隆
Nobuyoshi Takehara
竹原 信善
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Abstract

【課題】低コストで部分影や特性のばらつきの影響を低減する。
【解決手段】太陽電池セル1及び該太陽電池セルから出力された直流電圧を昇圧する直流−直流変換装置2とから構成される太陽光発電装置を複数備え、これら複数の太陽光発電装置の出力を並列接続してインバータ3に出力する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は太陽光発電システムに関し、特に、太陽電池セル及び該太陽電池セルから出力された直流電圧を昇圧する直流−直流変換装置を有する太陽光発電装置を複数備えた太陽光発電システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、化石燃料の使用に伴う二酸化炭素等の排出による地球温暖化や、原子力発電所の事故や放射性廃棄物による放射能汚染などの問題が深刻となり、地球環境とエネルギに対する関心が高まっている。このような状況の下、無尽蔵かつクリーンなエネルギ源として太陽光を利用する太陽光発電、地熱を利用する地熱発電、風力を利用する風力発電等が世界中で実用化されている。
【0003】
このうち、太陽電池を利用した太陽光発電の形態としては、数Wから数千kWまでの出力規模に応じた種々の形態がある。太陽電池を使用した代表的なシステムとしては、太陽電池によって発電された直流電力をインバータ等により交流電力に変換(直交変換)して需要家の負荷や商用電力系統(以下、単に「系統」とも呼ぶ)に供給する太陽光発電システムがある。
【0004】
図2は、従来の一般的な太陽光発電システムの概略構成を示す図である。図示されたように、太陽光発電システム8としては、太陽電池セルが複数枚直列接続された太陽電池モジュール6を一単位として、更にその太陽電池モジュール6を複数枚直列接続した太陽電池ストリング7(太陽電池アレイとも称する)を構成し、更にそれら太陽電池ストリング7を複数並列接続した太陽電池アレイを構成し、太陽電池アレイからの直流出力を集電箱9で集電し、集電された電力をインバータ3により交流電力に変換して、負荷4あるいは系統5に連系するものが一般的である。
【0005】
このような太陽光発電システム8においては、太陽電池の出力特性のばらつき、建物などによる部分影の影響により、複数の太陽電池ストリング7間の出力が異なる場合、太陽光発電システム8が最適電力点での運転を行なうことができない場合がある。
【0006】
このような問題に対処すべく、特開2000−112545号公報には、太陽電池アレイ毎に接続箱を介して直流−直流変換装置を設け、更に各々の直流出力電力を一括してインバータに入力して交流電力への変換を行う太陽光発電システムが開示されている。この構成によると、各直流−直流変換装置がそれぞれに接続された太陽電池アレイに対して最適電力点追従制御を行うことにより、太陽光発電システムの最適電力点追従制御の精度が向上する。
【0007】
また、特開平8−70533号公報には、太陽電池アレイ、太陽電池モジュールあるいは太陽電池セル毎にインバータを設けることにより、太陽電池アレイ、太陽電池モジュールあるいは太陽電池セル間の出力ばらつきや部分影による電力効率の差を少なくすると共に、太陽電池モジュールあるいは太陽電池セルの単位でインバータを取り付けることで、太陽電池による発電量を増加、削減する際に低コストで対応できることが開示されている。
【0008】
更に、特開平6−309047号公報には、太陽電池と該太陽電池の出力を異なる電圧の直流電圧に変換するDC/DCコンバータ、及び該DC/DCコンバータの直流出力電力を交流電力に変換するインバータを有する構成とすることにより、DC/DCコンバータのスイッチング素子がデューティ比の固定されたパルスによって制御され、更にインバータへの入力電圧を一定にするように制御が行われ、DC/DCコンバータの制御部を簡略化でき、装置のコストダウンと信頼性を向上させられることが開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来例には以下のような課題がある。
【0010】
特開2000−112545号、及び特開平6−309047号に記載されているような、太陽電池アレイや太陽電池モジュールの直流出力を直流−直流変換装置(DC/DCコンバータ)に入力する太陽光発電システムにおいては、複数の太陽電池セルを直列接続して太陽電池モジュールを作成する必要がある。
【0011】
複数の太陽電池セルを使用する場合、各セルはそれぞれの端部に太陽電池セル間の絶縁のためにエッチング等により非発電領域を設ける必要がある。従って、そのような太陽電池セルを多数用いれば、太陽電池セルの発電に利用されない非発電領域を多数有することとなり、太陽電池モジュールの開口部に占める発電可能領域の割合、すなわち、太陽電池モジュールの面積発電効率が低下する要因となってしまう。
【0012】
また、インターコネクタなどの配線部材を使用して太陽電池セルを直列接続する構成とすると、太陽電池セル間にインターコネクタを挿入するためのギャップが必要となり、該ギャップが太陽電池セルの直列接続数に伴い増加するので、発電に利用されない非発電領域が太陽電池モジュール内で大きくなる。その結果、太陽電池モジュールの面積発電効率が低下してしまう。
【0013】
加えて、太陽電池セルを直列接続しているため、部分影による発電効率への影響も大きくなる。例えば、直列接続している太陽電池セルの一つが部分影で覆われると、そのセルの発電電流が減り、それ以外のセルの発電電流もこのセルによって律速されてしまう。
【0014】
この部分影の影響を減らすためには、直列接続された太陽電池セルの各々にバイパスダイオードを並列に接続する必要がある。しかしながら、この方法を用いても、部分影の影響による他の発電しているセルへの影響は完全には無くせない。
【0015】
更に、太陽電池セルを直列接続する場合、あるいは直列接続した複数の太陽電池セルをモジュール化する場合には、組み立て作業が増大するとともに、直列接続に伴うインターコネクタによる表面の凸凹の増大に対応するため、被覆材を厚くする必要があり、これによりモジュール化に必要な材料のコストが上昇してしまう。
【0016】
更に、特開平8−70533号公報に記載されたように、太陽電池セル毎にインバータを設ければ、上記の問題点である面積発電効率の低下及び直列接続によるコストの上昇は解決されるかもしれないが、直流−直流変換部及び直流−交流変換部と、それに関わる全ての制御部をそれぞれの太陽電池セルごとに設ける必要があり、全体としてはコストが非常にかかってしまう。
【0017】
本発明は以上のような状況に鑑みてなされたものであり、低コストで部分影や特性のばらつきの影響を低減することのできる太陽光発電システムを提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の太陽光発電システムは、太陽電池セル及び該太陽電池セルから出力された直流電圧を昇圧する直流−直流変換装置を有する太陽光発電装置を複数備え、
前記複数の太陽光発電装置の出力が並列接続されていることを特徴とする。
【0019】
すなわち、本発明では、太陽電池セル及び該太陽電池セルから出力された直流電圧を昇圧する直流−直流変換装置とから構成される太陽光発電装置を複数備え、これら複数の太陽光発電装置の出力を並列接続する。
【0020】
このようにすると、太陽電池セルの直列接続、モジュール化などの工程が不要になる。更に、直列接続に伴う部分影への影響を少なくするためのバイパスダイオードが不要となり、太陽光発電システム全体のコストが低下する。
【0021】
加えて、部分影や個々の太陽電池セルの特性のばらつきに起因する影響は、その太陽電池セルを含む太陽光発電装置のみにとどまることになり、他の太陽光発電装置には影響しない。従って、従来の直列接続された太陽電池セルを有するシステムに比べ、部分影や特性のばらつきによる影響をはるかに少なくできる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る太陽光発電システムの好適な実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
<第1の実施形態>
図1は本発明に係る太陽光発電システムの第1の実施形態の構成を示す概要図である。図中1は太陽電池セル、2は直流−直流変換装置、3はインバータ、4は負荷、5は商用系統である。
【0024】
太陽電池セル1から出力された直流電力は、直流−直流変換装置2により所望の直流電圧に昇圧され、一括された直流電力がインバータ3に入力され、それをインバータ3は商用周波数の交流電力に変換し、負荷4に供給すると共に余剰の電力は商用系統5に送電される。
【0025】
以下、本実施形態の太陽光発電システムで用いられる構成要素について詳しく説明する。
【0026】
[太陽電池セル]
図3は太陽電池セル1の一構成例を説明する発電領域の断面図である。太陽電池セル1は、非受光面側に第1電極である導電性基板10があり、その上に下部電極層11、半導体層12、上部電極層13からなる光起電力層15が形成され、更にその上に第2電極である集電電極14が形成される。
【0027】
ここで集電電極14は太陽光を受光する受光面に設けられる。また、導電性基板10の構成によっては下部電極層11を省略することも可能である。
【0028】
ここで用いられる下部電極層11、半導体層12、上部電極層13については、本願と同じ出願人による、特開平11−186572号の明細書により詳細に記述されている。本発明においてはこれらの構成要素は本質的な部分でないため詳細な記述を省略する。
【0029】
半導体層12としては薄膜シリコンが好ましく、なかでもアモルファスシリコンが好ましく、アモルファスシリコンを半導体層として用いる場合には、導電性基板10側からn型半導体、i型半導体、p型半導体の順に積層したpin接合を通常用いる。
【0030】
そして、上記のようなpin接合またはpn接合を2層あるいは3層積み重ねたダブルそしてトリプル構成を用いるのも好適である。
【0031】
更に本実施形態においては、導電性基板10側からp型半導体、i型半導体、n型半導体の順に積層されたnip接合のものも、場合に応じ好適に用いられる。
【0032】
また、各層の成膜方法としては、蒸着法、スパッタ法、高周波プラズマCVD法、マイクロプラズマCVD法、ECR法、熱CVD法、LPCVD法など公知公用の様々な方法から適宜選択することができる。
【0033】
次に、このようにして成膜された太陽電池セルを複数のセルに切断して分割を行い、分割切断時に発生する導電性基板と上部電極層との短絡の影響を有効受光範囲に及ぼさないように、上部電極層上にFeCl、AlClなどを含むエッチングペーストをスクリーン印刷法により塗布し加熱後洗浄することにより、該太陽電池セルの上部電極層の一部を線状に除去しエッチングライン44を形成する。
【0034】
図4は、図3に示した太陽電池セル1の集電電極14に、銅箔などの導電性材料で作製された受光面側端子部材16を接続して、プラス側の取り出し電極を設けたものであり、該取り出し電極は必要に応じて太陽電池セル1の非受光面17側に折り返される。
【0035】
具体的には受光面側端子部材16は、図5に示すように、太陽電池セル1の端部において非受光面17や側部19に電気的に接触しないように折り曲げられ、絶縁部材20の上に配置され、非受光面17において正負の電極が取り出せる構成としてもよい。
【0036】
また、図6A及び6Bに示すように、太陽電池セル1の受光面21の発電領域上にのみコーティングなどにより透明薄膜樹脂層23を塗布し、受光面側端子部材16には塗布しない構成としてもよい。
【0037】
このように必要なところにのみ透明薄膜樹脂層23を形成することにより、余計な絶縁材料が不要となるためコストダウンが図れる。
【0038】
なお、透明薄膜樹脂層の材料、構成及び形成方法については後で詳細に述べる。
【0039】
上記、図6A及び6Bに示されたような活電部が露出している非絶縁型の太陽電池セルを用いた場合、後の実施形態で述べるように本発明は更に効果を発揮するものである。
【0040】
具体的には、透明薄膜樹脂層を太陽電池セル表面全てに被覆するのではなく、屋外環境での発電性能に影響がでないよう最低限必要な部分だけに留める。つまり、受光面側端子部材あるいはエッチングラインには塗布せず、少なくとも太陽電池セルの入射光に対して光電変換特性を有する部分(アクティブエリア)のみを被覆する。
【0041】
尚、本明細書において太陽電池セルは少なくとも光起電力層を有し、直列接続されていないものと定義する。更に集電電極、受光面側端子部材、非受光面側端子部材あるいは透明薄膜樹脂層などを設けたものも太陽電池セルと定義する。また、耐候性フィルム、充填材、裏面補強材などで封止して屋外環境から保護した絶縁型のものも本明細書において太陽電池セルと定義する。
【0042】
また、結晶シリコンウエハ、多結晶シリコンウエハを用いたものも太陽電池セルとして使用できる。
【0043】
まず、太陽電池セル1のそれぞれの構成要素について説明する。
【0044】
[導電性基板]
本実施形態に係る太陽電池セルで用いられる導電性基板は、光電変換のための半導体層を機械的に支持する部材であり、かつ太陽電池セルの非受光面側の電極として使用できる。該基板は半導体層を成膜するときの加熱温度に耐える耐熱性を有するものが好ましい。
【0045】
また、導電性基板は太陽電池セルを支持体上に接着する場合の被接着体となるため、使用される接着剤との接着性が良好な材料が好ましい。
【0046】
また、導電性基板を固定部材を用いて支持材上に固定する場合は、固定に耐える機械的強度、耐候性、耐腐食性を有することが好ましい。
【0047】
導電性基板の材料としては、例えば、Fe、Ni、Cr、Al、Mo、Au、Nb、Ta、V、Ti、Pt、Pb等の金属またはこれらの合金、例えば真ちゅう、ステンレス鋼等の薄板及びその複合体やカーボンシート、亜鉛メッキ鋼板が挙げられる。
【0048】
また、基材として電気絶縁性の材料を用いたものでもよく、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、エポキシなどの耐熱性合成樹脂のフィルムまたはシートまたはこれらとガラスファイバー、カーボンファイバー、ホウ素ファイバー、金属繊維などとの複合体、及びこれらの薄板、樹脂シートなどの表面に異種材質の金属薄膜を蒸着あるいは積層したものも用いられる。
【0049】
[集電電極]
集電電極は、一般的には太陽電池セルの半導体層または上部電極層上に櫛状に形成され、半導体層や上部電極層のシート抵抗の値から好適な幅やピッチが決定される。
【0050】
また、集電電極は比抵抗が低く太陽電池の直列抵抗とならないことが要求され、好ましい比抵抗としては10−2Ωcm〜10−6Ωcmである。集電電極の材料としては、例えば、Ti、Cr、Mo、W、Al、Ag、Ni、Cu、Sn、Pt等の金属またはこれらの合金や半田あるいは導電性の接着剤を表面に塗布した金属線などが用いられる。一般的には、金属粉末と高分子樹脂バインダーがペースト状になった金属ペーストが用いられているが、これに限られたものではない。
【0051】
[端子部材]
端子部材は集電電極と電気接続してプラスまたはマイナスの取り出し電極を形成する部材である。端子部材は導電性基板または太陽電池セルの上部電極層が取り除かれたエッチング面に、レーザー溶接、導電性接着剤、ろう付けなどにより電気的に低抵抗となるように、また機械的に強固に取付けられる。または集電電極上にプレスにより取付けられる。本明細書では端子部材が取付けられる太陽電池セルの位置に応じて、「受光面端子部材」「非受光面端子部材」と区別している。
【0052】
該端子部材に求められる電気的性能、材料などは上記集電電極とほぼ同じであるが、その形状は太陽電池セルの平面性を保ち、かつ低抵抗にできる箔形状のものが好ましい。
【0053】
また、非受光面端子部材は非受光面全体にくし状、あるいは放射状などの形状で張り巡らせて集電効率を向上することもできる。
【0054】
[絶縁部材]
本実施形態に係る太陽電池セルに用いられる絶縁部材は、例えば図5に20で示すように受光面端子部材16と非受光面端子部材54の間に位置し、太陽電池セルの正極と負極が短絡することを防止するものであり、あるいは図5のポリイミド基材両面テープ25のように端子部材と太陽電池セルの半導体層または上部電極層の間に位置する。また、端子部材の裏面にも位置し、太陽電池セル端の折り返し部における光起電力層、上部電極層、下部電極層あるいは導電性基板と端子部材との接触を防止する。以上の目的から絶縁部材としては端子部材との接着性が良好で、曲げに対する機械的強度が高く、また、封止された太陽電池セルの場合には後工程の熱プロセスに耐える材料が好ましい。
【0055】
具体的な絶縁部材の材料としては、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリイミド系、塩化ビニル系、シリコーン系、フッ素系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の有機高分子樹脂、あるいはガラスクロス等特に限定はなく用いることができる。
【0056】
絶縁部材の形態としては、溶融、溶解した樹脂、フィルムあるいはゴム形状の樹脂、接着材、発泡体、テープ形状になっているものなど各種形態を用いることができるが、本実施形態に係る太陽電池セルの場合、両面粘着テープが好ましく、使用部にあるいは端子部材にあらかじめ貼着しておくなど簡単な工程で載置することができるとともに、量産装置に対応しやすい。
【0057】
フィルム、あるいはテープ基材としては、具体的には例えば、ポリエチレンテレフタレート、PVC、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PPS、ポリプロピレン、ポリウレタン、アクリル、PEN、PFA、PTFE、ポリエステル不織布、ガラス不織布、及び上記の複合基材を用いることができる。
【0058】
特に数mm程度の厚みを有する基材とその両面に粘着層を有する両面粘着テープを使用することにより、端子部材同士の接続部あるいは端子部材とそこから延出する部材の接続部などの凹凸を吸収することができる。
【0059】
絶縁部材の厚みに関しては、極端に薄い場合には、端子部材の接続部などの段差により破れる場合があり、この兼ね合いから、基材厚みとしては25μm以上が好ましい。また、絶縁部材の色としては、特に限定はなく様々な色を用いることができる。
【0060】
[透明薄膜樹脂層]
本実施形態における太陽電池セルの受光面に位置する透明薄膜樹脂層は、透明で、その下側の集電電極、上部電極層などを被覆保護できるものであれば、特に限定されるものではない。
【0061】
しかし、好ましくは、塗布性に優れ、耐候性、接着性に優れるものが好ましく、特に防水性に優れるものが求められる。
【0062】
具体的な材料としては、フッ素系樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネートなどがある。より具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、ポリフッ化ビニル(PVF)樹脂あるいは四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)樹脂などがある。耐候性の観点ではポリフッ化ビニリデン樹脂が優れているが、耐候性及び機械的強度の両立と透明性では四フッ化エチレン−エチレン共重合体樹脂が優れている。更に、コスト低減を図る為には、フィルム材料ではなく、アクリル系、フッ素系等の透明塗料を用いることが好ましい。この場合には、通常塗布するために利用されるカーテンコートなどのコーティング法によって行う。
【0063】
製造工程上の要求から、カーテンフロー法を用いることができる樹脂塗料は0.3Pa・s程度以下の低い粘度のものを用いることが好ましい。また、より生産性をあげるという観点からは、スプレーコート法が好ましく、この場合は、0.05Pa・s以下の低粘度の樹脂塗料が好ましい。
【0064】
なお、粘度の下限値には、特に限定はなく所望の膜厚から適宜選択することが可能であるが、粘度を低くすれば低くするほど、必要な膜厚を形成するのに複数回の塗布を必要とするので、現実的には0.001Pa・s程度以上であることが好ましい。
【0065】
薄膜樹脂層を形成した後の厚みについては、ピンホールなしに塗布できる厚みとして1μm以上が好ましく、更に以下の観点から200μm程度以下であることが好ましい。樹脂層による集電電極、上部電極層あるいは光起電力層の被覆保護という面から考えれば、より厚い方が好ましいが、厚くなれば、その分、太陽光の透過が低下して発電性能が低下する。また、厚く層を形成することによって樹脂層の可撓性が損なわれる可能性がある。また、厚くなれば、硬化時の収縮により集電電極、上部電極層あるいは光起電力層を破壊する場合がある他、屋外で使用する際に、樹脂層が厚い場合、200μm程度以上になると、熱膨張や設置時の力に追従できなくなり、樹脂層が応力を受けて亀裂が発生したり、集電電極、上部電極層あるいは光起電力層との界面で剥がれたりする可能性がある。
【0066】
但し、透明薄膜樹脂層は必ずしも一種類の材料で形成する必要は無い。例えば、二種類の材料を用いて二層に形成することも考えられる。太陽電池セルの上部電極層直上には、上部電極層と接着性の良い材料を、そして、その上には耐候性に優れた材料を選択することも考えられる。
【0067】
この場合の代表的形成方法としては、塗布工程を2回行うことが考えられる。
【0068】
[耐候性フィルム]
耐候性フイルムは太陽電池セルの最表層に位置するため、耐候性、耐汚染性、機械強度をはじめとして、太陽電池セルの屋外暴露における長期信頼性を確保するための性能が必要である。本実施形態に係る太陽電池セルに用いられる耐候性フィルムとしてはフッ素樹脂、アクリル樹脂などがある。なかでもフッ素樹脂は耐候性、耐汚染性に優れているため好んで用いられる。具体的にはポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂あるいは四フッ化エチレン−エチレン共重合体などがある。耐候性の観点ではポリフッ化ビニリデン樹脂が優れているが、耐候性及び機械的強度の両立と透明性では四フッ化エチレン−エチレン共重合体が優れている。
【0069】
充填材との接着性の改良のために、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、UV照射、電子線照射、火炎処理等の表面処理を表面フィルムに行うことが望ましい。具体的には、光起電力素子側の、ぬれ指数が34〜45dyneであることが好ましい。ぬれ指数が34dyne以下であると、耐候性フィルムと充填材との接着力が十分ではないため、充填材と耐候性フィルムの剥離がおこる。また、耐候性フィルムとして四フッ化エチレン−エチレン共重合体樹脂フィルムを用いる場合、ぬれ指数45dyne以上にすることは難しい。
【0070】
更に、耐候性フィルムは、延伸処理されたフィルムではクラックを生じる。太陽電池モジュールの端部を折り曲げ加工する際には、折り曲げ部分でフィルムが切れるため、その部分での被覆材の剥離及び水分の侵入を促し信頼性の低下をきたす。このことより、延伸処理されていないフィルムのほうが望ましい。具体的には、ASTMD−882試験法における、引っ張り破断伸びが縦方向、横方向ともに200〜800%であることが好ましい。
【0071】
[充填材]
充填材は、集電電極、絶縁部材、受光面側端子部材あるいは非受光面端子部材などの凹凸を被覆し、光起電力を温度変化、湿度、衝撃などの過酷な外部環境から守り、かつ透明フィルムあるいはガラスと集電電極、上部電極層、半導体層、絶縁部材、受光面側端子部材あるいは非受光面端子部材との接着を確保するために必要なものである。したがって、耐候性、接着性、充填性、耐熱性、耐寒性、耐衝撃性等が要求される。これらの要求を満たす樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、ブチラール樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。なかでも、EVAは太陽電池用途としてバランスのとれた物性を有していることから、好んで用いられる。また、EVAは、そのままでは熱変形温度が低いために容易に高温使用下で変形やクリープを呈するので、架橋して耐熱性を高めておくことが望ましい。
【0072】
また、充填材には紫外線吸収剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤としては公知の化合物が用いられるが、太陽光発電システムの使用環境を考慮して低揮発性の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。紫外線吸収剤の他に光安定化剤も同時に添加すれば、光に対してより安定な充填材となる。
【0073】
より厳しい環境下で使用が想定される場合には、充填材が接する部材との密着力を向上することが好ましい。シランカップリング剤や有機チタネート化合物を充填材に添加することによって密着力を改善することが可能である。添加量は、充填材樹脂100重量部に対して0.1〜3重量部が好ましく、0.25〜1重量部がより好ましい。
【0074】
一方、光起電力層に到達する光量の減少をなるべく抑えるために、表面封止材は透明でなくてはならず、具体的には光透過率が、400nm以上800nm以下の可視光波長領域において80%以上であることが望ましく、90%以上であることがより望ましい。また、大気からの光の入射を容易にするために、摂氏25度における屈折率が1.1〜2.0であることが好ましく、1.1〜1.6であることがより好ましい。
【0075】
[裏面補強材]
太陽電池セルの封止材料である裏面補強材については特に限定はないが、機械的強度が高く、温度変化による歪、ソリが少ないものが良く、例えば、強化ガラスや金属板などを用いることができる。
【0076】
利用可能な材料の一例としては、金属、カーボンファイバー、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)、セラミックあるいはポリカーボネート、ガラス、テドラ/Al/テドラ等を使用することができるが、特に金属性の板などは、太陽電池セルの受光面の熱が伝導しやすいので有効である。
【0077】
例えば、アルミニウム板、ステンレス鋼板、チタン板等の他に、亜鉛メッキ鋼板、ガルバリウム鋼板などのメッキ鋼板を使用することができるが、これらに限られたものではない。
【0078】
また上記材料は、必要に応じて、その表面が陽極酸化処理あるいはポリエステル樹脂、アクリル樹脂等で樹脂コーティングし、耐久性を増して使用することもできる。
【0079】
また、本実施形態に係る太陽電池セルにおいては支持体との接着に用いられる接着剤との接着性が良いことが好ましい。
【0080】
次に、太陽電池セル1を複数枚並列接続して太陽光発電システムを構築する場合に必要な並列接続部材及び支持体について詳細に述べる。
【0081】
[並列接続部材]
太陽電池セルを用いた太陽光発電装置を用いて本発明に係る太陽光発電システムを構成するには、太陽光発電装置間の並列接続が必要である。これらの接続を行う為の部材が、並列接続部材である。同部材はそれぞれの直流−直流変換装置2の出力端子を接続して、一括した電力をインバータ3に送電するための部材であり、汎用の絶縁電線、絶縁ケーブル等を用いてもよいが、本実施形態の例としては絶縁被覆のない裸導線なども用いる。裸導線としては、銅ワイヤー、銅撚り線、銅帯等が好ましい。
【0082】
また、本実施形態では直流−直流変換装置とインバータを接続する装置間接続部材を並列接続部材として兼用することができる。
【0083】
[支持体]
支持体とは太陽電池セルを固定する部材のことを表しており、一般的には架台、あるいは設置面を形成している部材のことである。
【0084】
本実施形態では構造が簡単で、設置作業が簡易になることから、好適にコンクリート材料を使用することが好ましい。支持体がコンクリートなどの重量の大きな材質であれば地面に置くだけで支持体(架台)の配置は完了するからである。またコンクリートは屋外耐久性が高く、安価であるため、太陽電池の架台として使用するには都合がよい。
【0085】
また、太陽電池固定用の例えば板状の固定支持体(支持体)と、この固定支持体を設置する裏面支持体とに分けて、支持体を構成することが好ましい。これは、例えば立方体形状等の裏面支持体を設置してから、この裏面支持体に板状等の固定支持体を立て掛けるように配置することで、太陽電池の設置角度を任意に変えられるので都合がよいからである。
【0086】
更に、本実施形態における直流−直流変換装置、インバータについて詳細に説明する。
【0087】
[直流−直流変換装置]
一般に太陽電池セルに接続される直流−直流変換装置は、直流電圧をインバータ回路の入力電圧に昇圧する昇圧回路、並びに、電力変換の起動/停止、太陽電池の動作点の最適化、運転モードなどを制御する制御回路、系統連系保護回路、通信回路、入出力端子などから構成され、その出力が直接負荷へ接続されてもよいが、一般的には複数台の出力をひとつのインバータに入力し、変換した交流電力を負荷で使用するかあるいは系統連系する。
【0088】
昇圧回路としては、絶縁、非絶縁を問わず公知公用の様々な回路構成を用いることができる。制御回路は、例えば、CPU、PWM波形制御回路、最適電力点追従制御回路、制御電源生成回路、周波数・電圧基準発生器及びスイッチング制御回路などを備える。また、制御回路は、通信線などを介して外部から操作できるようにしてもよく、制御回路の一部機能を直流−直流変換装置外に配置して、複数の電力変換装置を一括制御することもできる。
【0089】
しかし、本実施形態における直流−直流変換装置は、構造をできるだけ簡素化しコストダウンと信頼性の向上を図るために、制御回路としては、制御電源生成回路、スイッチング周波数を規定するスイッチング基準波形生成回路及び固定デューティでスイッチング素子を駆動可能なスイッチング素子駆動回路を少なくとも有する構成が好ましい。
【0090】
また、主回路としては、上記スイッチング素子駆動回路によりON/OFFされるスイッチング素子と、所定の巻数比で作成されたスイッチングトランスを有することが好ましい。
【0091】
このような複数の直流−直流変換装置が並列接続されたシステムでは、後段のインバータの入力電圧を変化させることにより直流−直流変換装置の入力電圧を変化させることができ、これにより太陽電池セルの動作点を動かすことができる。
【0092】
また、直流―直流変換装置をチップ化し、太陽電池セルの製造工程中に表面配線部材及び導電性基板に電気的接続を行うことにより、直流−直流変換装置を太陽電池セルに接続する一連の作業を簡略化することもできる。
【0093】
また、直流−直流変換装置は太陽電池セルからの出力を効率的に入力するために太陽電池セル近傍に設置されることが望ましく、太陽電池セルに直接付着することが望ましい。
【0094】
また、直流−直流変換装置の外装材はその使用条件に応じて、耐熱性、耐湿性、耐水性、電気絶縁性、耐寒性、耐油性、耐候性、耐衝撃性、防水性などの性能を有する必要がある。また、太陽電池セルあるいは裏面補強材に強固に固定するために好ましくは接着剤との接着性が良い材質が良い。
【0095】
上記の要素を考慮にいれると外装材としては、プラスチックでは例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、変性PPO(PPE)、ポリエステル、ポリアリレート、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ナイロンなどの樹脂、エンジニアリング・プラスチック等がある。また、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性プラスチックも使うことができる。
【0096】
また、直流−直流変換装置を受光面側に取り付ける場合には、耐紫外線性向上の為に、顔料としてカーボンブラックを用いる、あるいは紫外線を吸収する樹脂塗料を表面に塗布することが好ましい。
【0097】
[インバータ]
一般的に太陽光発電システムで用いられるインバータの場合、入力される直流電圧をインバータ回路の入力電圧に昇圧する昇圧回路、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路、並びに、電力変換の起動/停止、太陽電池の動作点の最適化、運転モードなどを制御する制御回路、系統連系保護回路、通信回路、入出力端子などから構成され、その出力は負荷で使用されるかあるいは系統連系される。
【0098】
昇圧回路としては、絶縁、非絶縁を問わず公知公用のさまざまな回路方式を用いることができる。インバータ回路としては、IGBTやMOSFETをスイッチング素子に使用する電圧型インバータが好ましい。制御回路の制御信号により、スイッチング素子のゲートを駆動することで、所望する周波数、位相及び電圧を有する交流電力を得ることができる。
【0099】
制御回路は、例えば、CPU、PWM波形制御回路、周波数・電圧基準発生器、最適電力点追従制御回路、電流基準発生器、モード切換器及びスイッチング制御回路などを備える。また、本実施形態におけるインバータを複数の太陽電池セルに各々複数接続する場合には、制御回路は、通信線などを介して外部から操作できるようにしてもよく、制御回路自体はインバータ外に集中配置して、複数のインバータを一括制御することもできる。
【0100】
また、本実施形態におけるインバータを太陽電池セルと電気的接続する場合には、太陽電池セルからの出力を効率的に入力するために太陽電池セル近傍に設置されることが望ましく、太陽電池セルに直接接続することが望ましい。
【0101】
また、インバータ3としては絶縁トランスの有るタイプと無いタイプとが存在し、その用途によりどちらを使用しても構わないが、直流−直流変換装置とインバータ間の装置間配線部材を接地する場合には、絶縁トランスを有するインバータを用いる。
【0102】
インバータはその使用条件に応じて、耐熱性、耐湿性、耐水性、電気絶縁性、耐寒性、耐油性、耐候性、耐衝撃性、防水性などの性能を有する必要がある。また、太陽電池セルに強固に固定するために好ましくは接着剤との接着性が良い材質が良い。
【0103】
上記の要素を考慮にいれると外装材としてはプラスチックでは例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、変性PPO(PPE)、ポリエステル、ポリアリレート、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ナイロンなどの樹脂、エンジニアリング・プラスチック等がある。また、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性プラスチックも使うことができる。
【0104】
また、インバータを受光面側に取り付ける場合には、耐紫外線性向上の為に、顔料としてカーボンブラックを用いる、あるいは紫外線を吸収する樹脂塗料を表面に塗布することが好ましい。
【0105】
[製造方法]
以下、本実施形態の製造方法について詳細に説明する。
【0106】
まず、図3、5、6、7を用いて本実施形態の太陽電池セルの製造方法について詳細に説明する。
【0107】
図6の太陽電池セル1としては、図3に示すように下部電極層11、半導体層12、上部電極層13を担うアモルファスシリコン太陽電池を200×250mmの大きさに切断したものを使用した。
【0108】
具体的には、まず導電性基板として洗浄した厚さ0.1mm、幅250mmのロール状の300mの長さをもつ長尺ステンレス基板を搬送し、まず下部電極層11としてSiを1%含有するAlを、スパッタ法により膜厚5000Å形成した。次に、p/i/n型非晶質シリコン半導体層12を、n型半導体としてはPH、SiH、Hのガスを、i型半導体としてはSiH、Hのガスを、またP型半導体としてはB、SiH、Hのガスをそれぞれ用いて、プラズマCVD法によってn型半導体層を300Å、i型半導体層を4000Å、p型半導体層を100Å、それぞれステンレス基板が通過する製膜装置ごとに順次形成した。
【0109】
その後、上部電極層13として膜厚800ÅのITOを、抵抗加熱蒸着により形成した。
【0110】
次にこのようにして作成された太陽電池セルを200mmの幅で切断し、複数の太陽電池セルに分割する。
【0111】
そして、切断面と、受光面端子部材が接続する面の上部電極上にFeCl、AlClなどを含むエッチングペーストをスクリーン印刷法により塗布し加熱洗浄することにより、太陽電池セルの上部電極の一部を線状に除去して、太陽電池セルの周囲に幅1mmでエッチングライン44を形成し太陽電池セル1を構成する。
【0112】
そして非受光面には非受光面端子部材54として幅7.5mm、長さ245mm、厚み100μmの軟質銅箔をレーザー溶接にて導電性基板10に接続した。
【0113】
そのあと受光面において、非受光面端子部材54が接続された辺と対向する辺に、まずポリイミド基材両面粘着テープ25を貼った。(幅7.5mm、長さ255mm、厚み200μm(基材100μm))。このとき、このテープを太陽電池セル1の端部をカバーするように5mmはみ出させて貼着した。
【0114】
そのあと予めカーボンペーストをφ100μmの銅ワイヤーにコートしたカーボンワイヤーを5.6mmピッチで太陽電池セル1及びポリイミド基材両面粘着テープ25上に形成し集電電極14とした。
【0115】
更に、ポリイミド基材両面粘着テープ25の上部に受光面端子部材16を取付ける。
【0116】
受光面端子部材16としては幅5mm、長さ510mm、厚さ100μmの銀メッキ銅箔を用いてポリイミド基材両面粘着テープ25上に載置したあと200℃、3kg/cm、180秒の条件で集電電極14と同時に加熱圧着する。
【0117】
そのあと、受光面端子部材16が設けられている領域に相対する非受光面側の領域に絶縁部材20であるポリエステル基材両面粘着テープ(幅7.5mm、長さ255mm、厚さ70μm(基材50μm))を貼着する。
【0118】
そして更に、ポリエステル基材両面粘着テープの剥離紙を剥がし太陽電池セル端部で受光面端子部材16を折り曲げることにより非受光面の端部に受光面端子部材を貼着して図5と同様な形態の太陽電池セルを作成した。
【0119】
更に本実施形態においては、図20に示すように耐候性フィルム69、充填材70、裏面補強材71により太陽電池セル1を樹脂封止して使用する。具体的には耐候性フィルム69にはETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)を用い、裏面補強材71にはポリエステル樹脂コートされた0.4mm厚の鋼板を用い、充填材70にはEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合ポリマ、耐候性グレード)を用いる。
【0120】
封止する方法としては、裏面補強材、充填材、太陽電池セル、充填材、耐候性フィルムの順に積層した積層体を真空ラミネータを用いて150℃で充填材を溶融させることにより封止する。
【0121】
ここでは、図23に示すように、あらかじめ軟質銅箔で作成された延出部材を半田付けにより受光面端子部材及び非受光面端子部材に接続し、直流−直流変換装置への接続端子を形成しておき、裏面補強材71上の延出部材に重複する部分に直径15mmの孔74をあけておく。
【0122】
そして、封止された太陽電池セル1における裏面補強材71に開けられた孔74より充填材のみをカッターナイフなどにより切り出し、延出部材を露出する。そして、直流−直流変換装置2をその延出部材の上に覆い被せるように太陽電池セル1上に接着剤により据置し、該延出部材と直流−直流変換装置の入力端子を接続したあとに、電力変換装置の蓋をして、直流−直流変換装置が取付けられた太陽電池セル26を作成した。
【0123】
このようにして作成された直流−直流変換装置が取付けられた太陽電池セル26(以下太陽光発電装置とする)の外観図を図7に、そのX−X’断面図を図20に示す。図7において18は並列配線部材である接続ケーブルが接続されるコネクタ部を示す。
【0124】
以上の工程により本実施形態で使用する太陽光発電装置を製造した。なお、このとき使用する太陽電池セルの最大出力は、5W(最適動作電圧1V、最適動作電流5A)である。
【0125】
[動作の説明]
上記のようにして製造した太陽光発電装置26を、図10に示すように接続ケーブル24により電気的に接続して200枚を並列接続し、各々の出力電力を一括してインバータ3に入力し、インバータ3によって直流電力を交流電力に変換して負荷4あるいは商用系統5に系統連系を行う。
【0126】
ここで、図8に示す直流−直流変換装置2及び図9に示すインバータ3の回路図を用いて、各々の主回路、制御回路及びそれぞれの動作について詳細に説明する。
【0127】
図8に示す直流−直流変換装置2では、太陽電池セル1の出力電力は直流−直流変換装置2の入力端子27を通して、コンデンサ28に蓄積され、MOSFET29及び30を交互にON/OFFすることにより交流電力に変換される。
【0128】
そして、スイッチングトランス31に入力された交流電力は所定の変圧比(本実施形態では1:175)に応じた交流電力に変換され、更にダイオードブリッジ32により整流され、フィルタコンデンサ33を通過後、直流−直流変換装置2からインバータ3へ出力される。
【0129】
尚、本実施形態では用いていないが、ダイオードブリッジ32とフィルタコンデンサ33の間にフィルタ用のコイルを設けてもよく、システムの構成によってはフィルタコンデンサとフィルタ用コイルの双方とも省略することもできる。
【0130】
次に直流−直流変換装置2の制御回路34について説明する。本実施形態の制御回路34は、制御電源生成回路35、基準波形生成回路36、MOSFETドライバ37により構成され、制御電源生成回路35の入力がコンデンサ28の両端に接続されるとともに、MOSFETドライバ37の制御信号出力がMOSFET29及び30のゲートに接続されている。
【0131】
制御回路34の詳細な動作を以下に示す。太陽電池セル1の電圧が制御電源生成回路35の起動電圧に達すると、制御電源生成回路35の出力電圧が基準波形生成回路36とMOSFETドライバ37に入力される。
【0132】
そして、まず基準波形生成回路36が動作し、あらかじめ設定してある基準周波数の矩形波がMOSFETドライバ37の波形入力部に入力され、MOSFETドライバ37からゲートドライブ信号S1及びS2がMOSFET29及び30のゲート部に入力され、MOSFET29及び30を固定デューティで交互にON/OFFする。
【0133】
更にインバータ3の主回路は、図9に示すように、複数の直流−直流変換装置2の出力電力が入力される入力端子38と、平滑コンデンサ39と、トランジスタ40a、40b、40c、40dで構成されるフルブリッジ回路41と、コイル42と、コンデンサ43により構成される。
【0134】
また、インバータ3の制御回路は、電力変換の起動/停止、太陽電池の動作点の最適化、運転モードなどを制御する部分などに分けられるが、ここでは、本発明に関係があるPWM制御に関する部分についてのみ、図11を用いて詳細な説明を行うこととする。
【0135】
図示されたように、PWM制御部は入力電圧検出回路45、バンドパスフィルタ(BPF)46、出力電流検出器47(図9に図示)、直流電圧一定制御回路48、直流電圧基準電圧源49、乗算器50、出力電流制御用誤差増幅器51、PWM変調回路52及びフルブリッジ回路41のトランジスタ40a〜dを駆動するゲートドライブ回路53から構成されている。
【0136】
更に、PWM制御の具体的な方法としては、まずインバータ入力電圧VDCを入力電圧検出回路45によって検出し、直流電圧一定制御回路48においてインバータ入力電圧VDCと直流電圧基準電圧源49の基準電圧Vrefとの誤差信号S7を生成し、この誤差信号S7を乗算器50の一方の入力とする。また、商用系統電圧VCSを検出し、BPF46によって基本波成分を抽出しその基準正弦波信号S8を乗算器50の他方の入力とする。乗算器50は入力した誤差信号S7と基準正弦波信号S8とを乗算し、インバータ出力電流基準信号S9を生成する。
【0137】
更に、誤差増幅器51は乗算器50からのインバータ出力電流基準信号S9と出力電流検出器47で検出したインバータ出力電流IOUTとを入力し、両者の差分を増幅した変調基準誤差信号S10をPWM変調回路52に出力する。PWM変調回路52は入力した変調基準信号S10に基づいてPWM制御を行い、ゲートドライブ回路53を介してゲート駆動信号S3〜S6によりトランジスタ40a〜dを駆動することし、基準電圧Vrefに一致したインバータ入力電圧VDCが得られるように制御する。
【0138】
なお、フルブリッジ回路の動作についてはよく知られているためここでの説明は省略する。
【0139】
このように、固定デューティでMOSFETをスイッチング動作させて昇圧比が一定となるような制御を行う複数台の直流−直流変換装置2の出力を、入力電圧一定制御を行うインバータ3に接続すると、直流−直流変換装置2の入力電圧が一定で動作する。これは、固定デューティで昇圧比一定制御を行う直流−直流変換装置がインピーダンス変換器として作用するためであり、その結果、太陽電池セルの動作電圧が一定となるような制御が行われることとなる。
【0140】
つまり、本実施形態においてはインバータ3の入力電圧を175Vに設定した場合、インバータ3の入力側に接続された全ての直流−直流変換装置2の出力電圧が略175Vとなり、スイッチングトランスの昇圧比により太陽電池セル1の動作電圧は最適動作電圧である約1Vで動作することになる。
【0141】
また、上記ではインバータ3が入力電圧一定制御を行う場合について述べたが、インバータ3の入力部に電流検出回路(不図示)を用いることにより、インバータ3入力部の電圧及び電流から電力を測定し、この電力の大きさを最大にするような最大電力追従制御を行うようにインバータ2の入力電圧を制御してもよい。
【0142】
この場合、インバータ3の入力電圧を変化させることにより直流−直流変換装置2の入力電圧を変化させる、つまりは太陽電池セル1の出力電圧を変化させることができるため、日射の変動が起こった場合などにおいても、インバータ3の最大電力追従制御のみで、インバータ3への入力電力が最大となるような太陽電池セル1の出力電圧を設定できる。
【0143】
以上のように本実施形態では、複数の太陽電池セルの各々に直流−直流変換装置を接続し、更にそれらを並列接続したものをインバータに入力して太陽光発電システムを構成することにより、太陽電池セルの直列接続、モジュール化などの工程が不要になる。更に、そもそも直列接続を行なわないので直列接続に伴う部分影への影響を少なくするためのバイパスダイオードが不要となり、太陽光発電システム全体のコストが低下する。
【0144】
加えて、直列接続された太陽電池セルが存在しないことにより、部分影の影響は部分影の生じた太陽電池セルを含む太陽光発電装置のみにとどまることになり、他の太陽光発電装置には影響しない。従って、従来の直列接続された太陽電池セルを有するシステムに比べ、部分影による影響のはるかに少ない太陽光発電システムを構築できる。同じ発電容量の従来システムと比べると、この効果は発電容量の大きさに比例して顕著になる。
【0145】
また、上述のように従来の直列接続された太陽電池セルを有するシステムでは、個々の太陽電池セルの出力特性にばらつきがある場合、出力特性の悪い太陽電池セルの影響が他の太陽電池セルに及び、太陽光発電システム全体の出力低下を招く。しかしながら、本実施形態の太陽光発電システムによると、上記の部分影の場合と同様に、影響が出力特性の悪い太陽電池セルを含む太陽光発電装置のみにとどまるため、個々の太陽電池セルの出力特性に応じた出力を取り出すことができ、出力特性ばらつきによる損失を最小限に留めることができる。
【0146】
このように本実施形態による太陽光発電システムによれば、影損失あるいは特性ばらつきによる損失が低減できるという従来達成できなかった特別な効果が得られる。
【0147】
また、太陽電池セルに接続された直流−直流変換装置を固定デューティで一定の昇圧比となるように制御し、このような直流−直流変換装置が複数並列接続されたインバータが入力電圧一定制御あるいは最大電力追従制御を行うことにより、1つのインバータでそれぞれの太陽電池セルの動作点を制御でき、これにより、各々の直流−直流変換装置の制御部が簡素化でき、信頼性が向上するとともに低コストとなる。
【0148】
また、個々の太陽電池セルに直流−直流変換装置を接続することで、太陽電池セルを配線部材により複数枚並列接続してその出力を一括してインバータに接続する場合と比べると、直流−直流変換装置での電圧の昇圧比を約n倍とすると、同じ断面積の配線(同抵抗)を使用した場合には、集電損失を(1/n)程度まで低下できる。
【0149】
すなわち、太陽電池セルを並列接続する部材の断面積を小さくすることができ、部材にかかるコストを大幅に低減できる。
【0150】
また、本実施形態においてはトランスレス方式のインバータを用いているが、絶縁トランス方式のインバータを用いても構わない。また、インバータの入力部に昇圧回路を設けても構わない。
【0151】
<第2の実施形態>
以下、本発明に係る太陽光発電システムの第2の実施形態について説明する。なお、以下においては上記第1の実施形態と同様な部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
【0152】
図12は第2の実施形態の概略構成を示す図であり、図21は本実施形態の等価回路図を示す図である。本実施形態も、太陽電池セル55、直流−直流変換装置2、インバータ3、負荷4、及び商用系統5で構成されている。
【0153】
本実施形態で用いる直流−直流変換装置2、インバータ3は第1の実施形態と同様のものを用いるため説明を省略する。
【0154】
また、本実施形態で使用される太陽電池セル55は、図3、5、6A、6B及び7に示した第1の実施形態と同様な大きさと構造をもつアモルファスシリコン太陽電池を用い、同様に非受光面端子部材54を接続し、受光面側端子部材16としては第1の実施形態と長さが異なる幅5mm、長さ245mm、厚さ100μmの銀メッキ銅箔を用いた。
【0155】
そして、受光面端子部材16以外の受光面に厚さ100μmでフッ素樹脂塗料をコーティングすることにより、アクティブエリアの透明薄膜樹脂層23とし、第1の実施形態のように太陽電池セル全体を封止することは行っていない。そのため、受光面端子部材16、非受光面端子部材、更に導電性基板10の活電部が露出した構造となっている。
【0156】
更に、受光面端子部材16及び非受光面端子部材(不図示)に延出部材(不図示)を接続し、直流−直流変換装置2への接続端子を形成し、直流−直流変換装置2を受光面側端子部材16の一部を覆い隠すようにシリコーン接着剤により接着し、直流−直流変換装置内部で延出部材と入力端子を接続し、直流−直流変換装置の蓋をすることにより、図15に示すような直流−直流変換装置が取付けられた太陽電池セル(太陽光発電装置)55を作成した。
【0157】
このようにして作成された複数枚の太陽光発電装置55を、図12に示すように支持体56上にエポキシ系接着剤を用いて順次接着固定し、並列接続部材である絶縁被覆付きの接続ケーブル24により順次、太陽光発電装置間を並列接続する。このようにすることで、一括された直流−直流変換装置の出力直流電力はインバータ3に入力されて交流電力に変換され、負荷に供給あるいは商用系統に連系される。
【0158】
ここで、インバータ3には第1の実施形態と同様にトランスレス方式のインバータを用いた。
【0159】
また本実施形態では、第1の実施形態のように封止材を使用せず、アクティブエリア上だけを透明薄膜樹脂層によりコーティングし、太陽電池セルの受光面端子部材、非受光面及び配線部材を露出した状態として、一層低コストとなるようにしている。
【0160】
図21は、本実施形態の太陽光発電システムのインバータ3への接続部分を示す等価回路図である。ここで、太陽電池セル1と直流−直流変換装置2との接続部材72の部分は露出した構造になっており、接続ケーブル24により隣り合った直流−直流変換装置2が接続され、隣り合った直流−直流変換装置同士が直流−直流変換装置2の内部で電気的に接続されるよう構成されている。
【0161】
従来の直列接続された太陽電池セルを有する太陽光発電システムにおいて、このような活電部が露出した構造とすると、例えば、太陽電池セルの耐環境性被覆の簡略化及び/又は太陽電池セル間の直並列接続する部材を絶縁被覆なしで剥き出しで使用するという形態となるが、この場合、以下のような問題が発生する。
【0162】
すなわち、太陽電池セルの電極や配線部材及び太陽電池セル同士の直並列接続部材の少なくとも一部の活電部が剥き出しで、非絶縁であるため、雨水等によって湿潤状態(太陽電池セル活電部と大地との抵抗が水分により低下する状態)になり、その後に日射状態があると[太陽電池セル活電部]−[雨水]−[湿潤した支持材]−[雨水]−[大地]、もしくは、[太陽電池セル活電部]−[雨水]−[大地]の経路でリーク電流経路が形成される。
【0163】
その結果、活電部から活電部を構成する金属イオンが流出し、電極、配線部材もしくは直並列接続部材の腐食が促進されるという問題が生じる。特に、直並列接続部材に銅を使用した場合、電流経路の形成によって銅がイオン化し溶出が著しく、接続部材の寿命が大幅に低下する事がわかっている。
【0164】
つまり、上記従来の太陽光発電システムにおいては、太陽電池セル複数枚を直列接続していくと直列接続体の最も正極端では大地との電位差が非常に大きくなり接続部材の腐食が進行しやすくなってしまう。これに対処するため、太陽電池セルを並列接続することが考えられるが、この場合には並列接続するセルの数が増えるとともに流れる電流が増大する。集電損失は電流の二乗に比例するため、集電損失を一定値以下に抑えようとすると、並列接続部材の断面積がかなり大きくなってしまうという問題がある。
【0165】
本実施形態は、低コスト化を促進すべく太陽光発電システムを活電部が露出した構造とした場合においても、太陽電池セル毎に直流−直流変換装置を接続する。その結果、直列接続を行なう従来のシステムに比べて、大地に対しての太陽電池セルの電位が非常に小さくなるため、配線部材の腐食促進を防止することができ、信頼性が向上する。
【0166】
また、太陽電池セルの各々に直流−直流変換装置が設けられて並列接続されているため、第1の実施形態で述べたように並列接続部材の断面積が小さくてすむため、部材費の低減が可能となる。
【0167】
また、仮に第1の実施形態で用いられたような耐候性フィルム、充填材、裏面補強材などを使用して、樹脂封止された活電部を露出していない太陽電池セルを用いた場合においても、飛来物などで封止が破損された場合には、配線部材あるいは封止が破れた部分からの腐食が懸念される。
【0168】
これに対しても本実施形態の構成とすることにより、直流−直流変換装置を太陽電池セルの裏面などに配置して高電位を有する活電部が飛来物の衝突などにより露出することを防ぐことができる。加えて、直列接続を行なう従来のシステムに比べて、大地に対しての太陽電池セルの電位が非常に小さくなるため、例え飛来物などで封止が破損されたとしても、その箇所からの腐食促進を防止することができる。
【0169】
また、本実施形態の太陽光発電システムによると、直列接続されていない太陽電池セル各々に直流−直流変換装置を接続し、それらを複数個並列接続した構成とすることにより、第1の実施形態と同様に損失低下、信頼性向上、コストダウンの効果がある。
【0170】
<第3の実施形態>
以下、本発明に係る太陽光発電システムの第3の実施形態について説明する。なお、以下においては上記第1及び第2の実施形態と同様な部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
【0171】
本実施形態で用いる太陽電池セル及び直流−直流変換装置としては、第2の実施形態で用いたものとほぼ同様のものを用いる。
【0172】
図16は、本実施形態で用いられる直流−直流変換装置を取付けた太陽電池セル(太陽光発電装置)58の概略構造を示している。図示された太陽光発電装置58において、直流−直流変換装置2の取付けられる位置は第2の実施形態と同じであるが、以下で説明する2つの出力端子が直流−直流変換装置の外装部より延出されているところが第2の実施形態と異なっている。
【0173】
第一の端子59は、直流−直流変換装置2の高電圧側出力端子から延出される端子部材であり、第二の端子60は、直流−直流変換装置2の低電圧側出力端子から延出される端子部材であり、第1の端子59と同じ面から延出されている。
【0174】
これら2つの端子の延出部から直流−直流変換装置内に水分などが侵入しないように、直流−直流変換装置2の内部は充填剤により充填されている。
【0175】
また、直流−直流変換装置2内部の主回路としては、図8に示した第1の実施形態とほぼ同様の回路を用いるが、本実施形態ではスイッチングトランス31の1次側と2次側の高電圧側とを短絡部材73により短絡して、図22に2202で示した回路を直流−直流変換装置の主回路として用いる。
【0176】
次に、上記太陽光発電装置58を支持体56上に設置する方法について、図13を参照して説明する。
【0177】
まず、支持体56上に並列接続部材である絶縁被覆されていない第一の銅帯62と第二の銅帯63とをエポキシ接着剤により接着固定する。このとき、第一の銅帯62と第二の銅帯63との間隔を、上述の第一の端子59と第二の端子60の間隔と同じにしておく。
【0178】
そして、次に第2の実施形態と同様に、所定枚数の太陽光発電装置58を支持体56上に接着固定した後、第一の銅帯62及び第二の銅帯63に上述の第一の端子59及び第二の端子60をそれぞれ電気的に接続して、複数の太陽光発電装置58の並列接続を行なう。このようにして、複数の太陽光発電装置58の直流−直流変換装置から出力された直流電力は、第一の銅帯62と第二の銅帯63とに一括して集められてインバータに入力される。そして、交流電力に変換され、負荷あるいは商用系統に連系される。
【0179】
このように電気的接続を行うようにすることで、製造の際の作業性が改善され製造コストが低減される。
【0180】
一方、このようにすると、直流−直流変換装置2で昇圧した後の配線が剥き出しの状態で施工するため、第2の実施形態においても指摘したような配線部材の腐食が懸念される。
【0181】
これに対処するため、本実施形態ではインバータとして、図17に示す方式の高周波トランス方式のインバータ64を用いる。このインバータ64においては直流−直流変換装置2から出力された直流を高周波インバータ65で高周波の交流に変換した後、小型の高周波変圧器66で絶縁をとり、その後いったんAC/DCコンバータ67により直流に変換し、更にDC/ACコンバータ68により商用周波数の交流に変換して出力する。
【0182】
そして更に本実施形態においては、図18に示すように、各太陽光発電装置58の第一の端子が接続される第一の銅帯62を接地して太陽光発電システムを完成させる。
【0183】
このようにして本実施形態では高周波変圧器66により、交流系統と太陽光発電装置とを電気的に絶縁している。そのため本実施形態の太陽光発電システムの等価回路は、図19に示すようになり、並列接続部材の一方の第一の銅帯62を接地することにより、太陽電池セルの高電圧側と並列接続部材の高電圧側が大地に対してゼロ電位となる。
【0184】
このため太陽電池セルと直流−直流変換装置間の接続部材、直流−直流変換装置とインバータの間の装置間配線部材、並列接続部材のすべてが大地に対して負電位となり、配線部材の腐食促進を防止することができる。
【0185】
本実施形態では接続部材及び装置間配線部材として銅(Cu)を使用しているが、銅の物性として、図14に示す電位−pHダイアグラムのように、正電位がかかるときに銅が溶出しやすいことが分かっている。本実施形態ではこの特性に鑑みて銅を材料とする配線部材を大地に対して常にゼロまたは負電位に保つようにして、銅の溶出を防止するようにしたものである。
【0186】
本実施形態の太陽光発電システムによれば、複数の太陽電池セル各々の直流−直流変換装置を並列接続した構成とすることにより、第1の実施形態と同様に損失低下、信頼性向上及びコストダウンの効果が得られる。
【0187】
また、大地に対する太陽電池セル及び配線部材の電位がゼロまたは負電位になるため、配線電極などの腐食が起こりにくくなり信頼性や耐久性が向上する。
【0188】
なお、ここでは、直流−直流変換装置2内部で第一の銅帯62と太陽電池セル1の高電圧側とを短絡部材73によって接続して同電位となるようにしたが、もちろん太陽電池セル1の高電圧側を各々接地しても同様の作用効果が得られる。
【0189】
また、本実施形態では、並列接続部材として絶縁被覆のない銅帯を使用してその一方を接地する構成としたが、上記太陽電池セル1の高電圧側を各々接地する場合は、並列接続部材として絶縁ケーブルを用いても良く、その場合は直流−直流変換装置2の主回路2202の短絡部材73を省略してもよい。更に、直流−直流変換装置2が非絶縁型の場合にも短絡部材73を省略することができる。
【0190】
<他の実施形態>
尚、以上の実施形態においては、太陽電池セルを直流電源として用いる太陽光発電システムを例に挙げて説明したが、本発明は、直流電源として燃料電池や熱電対またはプラズマ発電装置など、太陽電池以外の様々な電源を用いる電力変換システムにも適用できる。特に、複数の直流電源の出力特性にばらつきがある場合に本発明は効果を発する。
【0191】
また、本発明のシステムは商用電力系統に電力を供給するものとしたが、工場などにおける自家交流発電設備など、商用交流電力系統以外の交流電力系統に電力を供給するようにしてももちろんかまわない。
【0192】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、太陽電池セルの直列接続、モジュール化などの工程が不要になる。更に、直列接続に伴う部分影への影響を少なくするためのバイパスダイオードが不要となり、太陽光発電システム全体のコストが低下する。
【0193】
加えて、部分影や個々の太陽電池セルの特性のばらつきに起因する影響は、その太陽電池セルを含む太陽光発電装置のみにとどまることになり、他の太陽光発電装置には影響しない。従って、従来の直列接続された太陽電池セルを有するシステムに比べ、部分影や特性のばらつきによる影響をはるかに少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る太陽光発電システムの第1の実施形態の構成を示す概要図である。
【図2】従来の一般的な太陽光発電システムの概略構成を示す図である。
【図3】太陽電池セルの一構成例を説明する発電領域の断面図である。
【図4】太陽電池セルの別の構成例を説明する発電領域の断面図である。
【図5】太陽電池セルの更に別の構成例を説明する発電領域の断面図である。
【図6A】太陽電池セルを受光面側より見た概略図である。
【図6B】図6Aに示した太陽電池セルのA−A’断面図である。
【図7】太陽電池セルの裏面に直流−直流変換装置を取付けた例を示す概略図である。
【図8】直流−直流変換装置の一例を示す回路図である。
【図9】インバータの一例を示す回路図である。
【図10】第1の実施形態の太陽光発電システムの概略図である。
【図11】第1の実施形態で用いられるPWM制御を説明するための図である。
【図12】第2の実施形態の太陽光発電システムの概略構成を示す図である。
【図13】第3の実施形態の太陽光発電システムで、太陽光発電装置を支持体上に設置する方法を説明するための図である。
【図14】銅の電位−pHダイアグラムを示す図である。
【図15】第2の実施形態の太陽電池セルの概略図である。
【図16】第3の実施形態の太陽電池セルの概略図である。
【図17】第3の実施形態の高周波トランス方式インバータの構成を示す概略図である。
【図18】第3の実施形態の太陽光発電システムの概要構成を示す図である。
【図19】第3の実施形態の太陽光発電システムの部分等価回路図である。
【図20】図7の太陽光発電装置のX−X’断面図である。
【図21】第2の実施形態の太陽光発電システムの部分等価回路図である。
【図22】第3の実施形態の直流−直流変換装置の主回路の回路図である。
【図23】第1の実施形態の太陽電池セルへの直流−直流変換装置の取り付けを説明するための図である。
【符号の説明】
1 太陽電池セル
2 直流−直流変換装置
3 インバータ
4 負荷
5 商用電力系統
6 太陽電池モジュール
7 太陽電池ストリング
8 太陽光発電システム
9 集電箱
10 導電性基板
11 下部電極層
12 半導体層
13 上部電極層
14 集電電極
15 光起電力層
16 受光面側端子部材
17 非受光面
18 コネクタ部
19 側部
20 絶縁部材
21 受光面
23 透明薄膜樹脂層
24 接続ケーブル
25 ポリイミド基材両面テープ
26 太陽電池セル
27 入力端子
28 コンデンサ
29、30 MOSFET
31 スイッチングトランス
32 ダイオードブリッジ
33 フィルタコンデンサ
34 直流−直流変換装置の制御回路
35 制御電源生成回路
36 基準波形生成回路
37 MOSFETドライバ
38 入力端子
39 平滑コンデンサ
40a〜d トランジスタ
41 フルブリッジ回路
42 フィルタコイル
43 フィルタコンデンサ
44 エッチングライン
45 入力電圧検出回路
46 バンドパスフィルタ(BPF)
47 出力電流検出器
48 直流電圧一定制御回路
49 直流電圧基準電圧源
50 乗算器
51 出力電流制御用誤差増幅器
52 PWM変調器
53 ゲートドライブ回路
54 非受光面端子部材
55 太陽電池セル
56 支持体
57 太陽光発電システム
58 太陽電池セル
59、60 端子
62、63 銅帯
64 高周波トランス方式インバータ
65 高周波インバータ
66 高周波変圧器
67 AC/DCコンバータ
68 DC/ACコンバータ
69 耐候性フィルム
70 充填材
71 裏面補強材
72 接続部材
73 短絡部材
74 孔
301、401、501、601 太陽電池セル
2202 直流−直流変換装置の主回路

Claims (20)

  1. 太陽電池セル及び該太陽電池セルから出力された直流電圧を昇圧する直流−直流変換装置を有する太陽光発電装置を複数備え、
    前記複数の太陽光発電装置の出力が並列接続されていることを特徴とする太陽光発電システム。
  2. 並列接続された前記複数の太陽光発電装置から出力された直流電力を交流電力に変換するインバータを更に備え、該インバータから出力された交流電力が負荷又は商用電力系統に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
  3. 前記直流−直流変換装置は、スイッチング素子によって昇圧を行なう主回路部と、前記スイッチング素子の固定デューティ制御を行なう制御部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
  4. 前記インバータが、自身の入力電圧が一定となるように入力電圧一定制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の太陽光発電システム。
  5. 前記インバータが、自身の入力電力が最大となるように最大電力追従制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の太陽光発電システム。
  6. 前記インバータが、自身の入力電圧を制御することにより前記直流−直流変換装置の入力電圧を制御することを特徴とする請求項2に記載の太陽光発電システム。
  7. 前記太陽電池セルと前記直流−直流変換装置とが、活電部の少なくとも一部に露出部を有する配線部材で接続されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
  8. 前記太陽電池セルは、光電変換層、該光電変換層の受光面側に設けられた集電電極、表面配線部材及び透明薄膜樹脂層を有し、前記集電電極又は前記表面配線部材の少なくとも一部が、前記透明薄膜樹脂層で覆われていない露出部を有することを特徴とする請求項1記載の太陽光発電システム。
  9. 前記複数の太陽光発電装置の直流−直流変換装置同士が、一部に露出分を有する装置間接続部材で接続されていることを特徴とする請求項2に記載の太陽光発電システム。
  10. 前記直流−直流変換装置と前記インバータとが、一部に露出部を有する装置間配線部材で接続されていることを特徴とする請求項2記載の太陽光発電システム。
  11. 前記インバータが絶縁変圧器を含むことを特徴とする請求項2に記載の太陽光発電システム。
  12. 前記直流−直流変換装置の高電圧側出力が接地されていることを特徴とする請求項11に記載の太陽光発電システム。
  13. 前記直流−直流変換装置がスイッチングトランスを有し、該スイッチングトランスの高電圧側入力と高電圧側出力が電気的接続されていることを特徴とする請求項12に記載の太陽光発電システム。
  14. 前記直流−直流変換装置の高電圧側入力が接地されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
  15. 前記透明薄膜樹脂層が、樹脂材料により形成されていることを特徴とする請求項8に記載の太陽光発電システム。
  16. 前記直流−直流変換装置が前記太陽電池セルに取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
  17. 前記太陽電池セルが支持体上に設置されており、前記直流−直流変換装置及びインバータが該支持体上又は支持体内に設置されていることを特徴とする請求項2に記載の太陽光発電システム。
  18. 前記支持体がコンクリート架台であることを特徴とする請求項17に記載の太陽光発電システム。
  19. 前記太陽電池セルが、薄膜シリコンの光電変換層を有することを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
  20. 前記太陽電池セルが、導電性基板上に形成された光電変換層を有することを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
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